...

1.2MB - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Transcript

1.2MB - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
欧州調査報告
ZEB・ZEHの最新動向の調査分析ならびに普及に向けた
取り組みに関する検討(成果報告会)
2013年5月30日
株式会社野村総合研究所
コンサルティング事業本部
社会システムコンサルティング部
水石 仁
はじめに
2013年1月下旬に、英国、フランスを中心に、政府関係機関、研究機関、民間企業等
への現地ヒアリング調査を実施
訪問先機関(計12機関)
国際機関
政府系機関
•IEA(国際エネルギー機関)
•BPIE(Buildings Performance Institute Europe)
•MEDDE(フランス環境・持続可能開発・エネルギー省
•DECC(英国エネルギー・気候変動省)
研究機関
•CSTB(フランス建築科学技術センター)
業界団体
•UKGBC(英国グリーンビル協会)
建設・不動産関連企業
ESCO・BEMS関連企業
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
•不動産開発会社(1社)
•総合不動産管理会社(1社)
•設計エンジニアリング会社(1社)
•不動産投資顧問会社(1社)
•ESCO・BEMS関連メーカー(1社)
•システムインテグレーター(1社)
1
ご報告内容
1.政策・規制の動向
2.ラベリング制度の動向
3.ビルオーナーのニーズ
4.技術開発の動向
5.ビジネス事例
<まとめ>
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
2
1.政策・規制の動向
1)EU全体
EPBD(Energy Performance of Buildings
EPBD
Directive、建物のエネルギー性能に関する欧州指令)
2002年施行、2010年改正
EPBDでは、第9条において、EU加盟各国に
対して、「2020年末までに、すべての新築
住宅・建築物をnearly Zero Energy
(nZEB)とする」ことを要求
公的機関が所有・入居する建築物については、
これを2年間前倒し
EU加盟各国は、欧州委員会に対して、2015
年までにnZEBを推進するための計画を提出
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
(出所)EC( http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2010:153:0013:0035:EN:PDF )
3
1.政策・規制の動向
1)EU全体
“nZEB”の定義
現在、BPIE(Buildings Performance Institute Europe)が中心となり、“nZEB”の定義を策
定中。現状案は以下の通り。ECでの検討を経て、3月以降に公開予定
「nZEBとは、高いエネルギー性能を有し、必要とするエネルギー消費量が極めて尐
ないことに加えて、エネルギーソースの大部分を代替可能なエネルギーで賄う建築
物こと。再生可能エネルギーは、オンサイトもしくは近隣(nearby)から調達しなけ
ればならない」
建築物のエネルギー性能は、最低でも暖房、冷房、換気、給湯、照明に必要なエネルギー
に基づき算出。また、Zero EnergyだけでなくZero Carbonも同時に目指す方針
“nealy”の程度を含め、具体的な定義は加盟各国に委任
nZEB普及の課題
加盟各国内での格差(北欧・西欧と東欧)が大きいことが一番の問題
実際にnZEB化が進展した際には、エネルギー消費の大半を家電やOA機器が占めることと
なり、その対策が必要。さらに今後は、改修に対するnZEBの定義、対策の検討等が必要
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
4
1.政策・規制の動向
2)英国
政策の優先順位
既存ストックの方が圧倒的に多いことから、政策の主眼は既存ストック対策
英国全体の政策方針として、エネルギー消費削減よりも、CO2削減を重視
Carbon Dioxide Emissions from UK Delivered Energy Use 2007
40,000
agriculture
1%
transport
30%
家庭部門:28%
業務部門:19%
Number of dwellings (000)
housing
28%
commercial
13%
public sector
3%
industrial
process
22%
Post 2005 Stock
35,000
industrial
building
3%
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
Pre 2005 stock
30%
30,000
25,000
20,000
2050年時点における住宅ストック
15,000
70%
の約7割はすでに建築済み
10,000
5,000
0
2000
2005
2010
2015
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
Year
(出所)BRE(英国建築研究所)
5
1.政策・規制の動向
2)英国
Zero Carbon住宅・建築規制
英国では、DCLG(コミュニティ・地方自治省)の主導により、2016年以降すべての新築住宅、
2019年以降すべての新築建築物をゼロカーボン化することを法制化する予定
ただし、政権交代の影響等により、遅延する可能性
CO2排出量(2006年基準比)
100%
2006年基準
25%削減
75%
44%削減
56%
100%
+α(約50%)削減
省エネ基準で
規定している
CO2排出
暖冷房、換気、
給湯、照明
0%
2006年
2010年
約-50%
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
2013年
2016年
定義を見直し
ゼロカーボン住宅
省エネ基準で
規定していない
CO2排出
(家電製品、厨房等)
(出所)NRI
6
1.政策・規制の動向
2)英国
Zero Carbon住宅・建築規制
英国では、ゼロカーボン化の達成に際して、オフサイトの措置も認める方針
ヒエラルキー・アプローチ
(対策の優先順位)
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
(出所)DCLG(英国コミュニティ・地方自治省)
7
1.政策・規制の動向
2)英国
Zero Carbon住宅・建築規制
C ゼロカーボン化の定義
ゼロカーボン化の定義について、継続的に議論されているが
結論には至っていない
ただし、対象となる用途は暖房、冷房、換気、給湯、照明で、
家電やOA機器等のコンセント負荷は含まれない見込み
C 産業界の反応
省エネ対策によりどこまでエネルギー性能を高め、オンサイトで
どれだけの再生可能エネルギーが必要かという政府の方針が
明示されないため、市場が困惑
「技術開発やデザインの検討が停滞している」
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
8
1.政策・規制の動向
2)英国
CRC(Carbon Reduction Commitment)
2010年から試行が開始された業務部門を対象としたキャップ・アンド・トレード制度。
年間の電力消費量が6,000kWh以上の事業者(事業所単位ではない)が対象
エネルギー請求書上のメーター値に基づき、CO2排出1トンあたり12ポンド課税
“Green
Premium”
•エネルギー性能
に優れたビルの
高い賃料
テナントの判断
により選択
“Brown
Discount”
•エネルギー性能
の低いビルの安
い賃料
(出所)ARUP資料
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
9
1.政策・規制の動向
2)英国
Green Deal(グリーン・ディール)
英国では、2013年1月28日より、“Green Deal”と呼ばれる新しい制度を導入
今後、業務用ビルにも適用される予定
C)Green Dealサービス提供事業者
(金融機関、大手小売事業者等)
②Green Deal
プラン提案
④プランに沿
った設備導入
を指示
③契約
C
A)建物
建物オーナーの
初期費用負担ゼロ
B)アドバイザー
①エネル
ギー性能
評価
オーナー
C
⑤設備の
導入
⑧電気・ガス
料金の一部
を支払い
D)省エネ設備
販売事業者
費用は電気・ガス料金 ⑥サービスの
開始を通知
に上乗せして徴収
⑦電気・ガス料金の支払い
E)エネルギー供給事業者
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
(出所)DECC(英国エネルギー・気候変動省)
10
1.政策・規制の動向
3)フランス
政策目標
政府は、2013~2020年の間に、1,500億kWhのエネルギー消費削減と、1,300~1,500万ト
ンのCO2削減という目標を提示
省エネ基準(RT2012)
住宅:2013年1月より、新しい省エネ基準(RT2012)を施行。新築住宅は、エネルギー消費
量(家電等は含まず)を平均50kWh/㎡以下に抑える必要がある
オフィスビル:2013年3月以降に新基準が施行される見通し。新築オフィスビルは、エネル
ギー消費量(OA機器は含まず)を平均56kWh/㎡以下に抑える必要がある
EPBDにおけるZEB規定(第9条)への対応
2020年から適用予定のRT2020において、新築住宅・建築物に対してnZEB
(フランスでは、Positive Energy Building(PEB)と呼ぶ)が義務づけられる
具体的な定義等は、今後検討していく予定
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
11
1.政策・規制の動向
2.ラベリング制度の動向
3.ビルオーナーのニーズ
4.技術開発の動向
5.ビジネス事例
<まとめ>
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
12
2.ラベリング制度の動向
1)EPCとDEC
EPCとDEC
欧州ではEPBDの規定に基づき、新築、売買、賃貸借等の取引時に、設計値に基づくエネ
ルギー性能評価書(Energy Performance Certificate:EPC)の取得と取引先
への提示が義務づけられており、すでに市場に浸透
また、公共建築物については、実績値に基づくエネルギー性能を、建物の入口等に掲示する
義務を負う(Display Energy Certificate: DEC)
オランダの学者(Brounen氏)によって、EPCでグレードA、B、Cを取得している住宅は
平均して市場価値が2.8%程度上昇し、平均して2カ月程度市場に出回っている期間が
短いという研究成果が発表されている
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
13
2.ラベリング制度の動向
1)EPCとDEC
EPC(エネルギー性能評価書)
25の用途(オフィスビル、店舗など)、20
の活動(執務室、倉庫など)ごとに評価
エネルギー性能は、設計段階における予
測値により評価され(エネルギー使用パ
ターンは標準化)、A~Gの7段階で格付
け
A+ランク
:ゼロエミッションをさらに上回る
A ランク
:ネット・ゼロエミッション
B ランク(50点)
:2006年省エネ基準レベル
D ランク(100点) :既存建築物の平均値
注釈) ①省エネ基準で規定しているCO2排出のみ対象
②平均値は1995年までの約30年間のエネルギー
消費データに基づき設定
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
(出所)BRE(英国建築研究所)
14
2.ラベリング制度の動向
1)EPCとDEC
DEC(エネルギー性能表示)
DECは、運用時のエネルギー消費につい
てベンチマークにより省エネの度合いを
格付けする制度(公共施設は義務)
建築物の運用管理の指標となる。
EPCと異なり、省エネ基準で規定していな
いCO2排出(OA機器、厨房など)も含め
た評価
D ランク(100点) :既存建築物の平均値
注釈) ①省エネ基準で規定していないCO2排出も対象
②平均値は1995年までの約30年間のエネルギー
消費データに基づき設定
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
(出所)BRE(英国建築研究所)
15
2.ラベリング制度の動向
2)建築物の総合環境性能評価手法
BREEAM、HQE、LEED等
ビルの総合的な環境性能(サステナビリティやグリーン)を評価する格付け手法とし
て、英国のBREEAMやフランスのHQE、米国のLEED等が普及しつつある
ただし、認証を取得しているのは、大手デベロッパーが手掛ける大規模な商業ビル
に限られているのが実状。これらの企業は、サステナビリティに係る企業理念や
CSRの観点から、認証取得に積極的
「現在の経済状況を踏まえると、ビルのサステナビリティやグリーン化に対して、
ビル建設コストにさらに5~10%追加的に投賅するという判断は、大半のビ
ルオーナーには難しい」
UKGBCや民間企業からは、ビルの設計時の性能に基づき認証を与えるだけでなく、
運用段階のモニタリングシステムを組み合わせることの重要性が指摘
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
16
1.政策・規制の動向
2.ラベリング制度の動向
3.ビルオーナーのニーズ
4.技術開発の動向
5.ビジネス事例
<まとめ>
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
17
3.ビルオーナーのニーズ
規制主導による市場形成
欧州においては、規制主導により省エネビルの市場が形成されており、規制が省
エネビル普及のキードライバーとなっている
例えば、大手デベロッパーは、特に規制の厳しい市場(国よりも上乗せで厳しい基
準を導入している都市等)に注力する戦略
多くのビルオーナーは、基本的に法令遵守対応に取り組みつつ、経済合理性に見
合った対策に投賅している状況
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
18
3.ビルオーナーのニーズ
省エネ化とグリーン化
大手デベロッパーは、サステナビリティに関する企業理念やCSRの観点から、省エネに留ま
らず、ビルのグリーン化(ここでは、エネルギーだけでなく、水や資源(リサイクル)、室内環
境(快適性・健康性等)の視点も含む)にも積極的
特に既存ストックのグリーン改修(Green Refurbishing)を最重要戦略に掲げ、
光熱費削減に加えて、不況時でも賃料の低下を防げること、メンテナンスコストを抑制できる
こと、従業員の快適性・生産性を改善できることをPRした営業を展開
快適性・生産性向上への期待
大手デベロッパーにおいては、グリーンビルの普及を促すためには、快適性や生産性の向
上の効果を訴求することが不可欠との認識
「英国、米国、豪州におけるオフィスビルの調査結果で、オフィスビルにおいて発生するコ
ストの80%が人件費(給与)、7%が家賃、1%が光熱費という報告がある。」
(大手デベロッパー)
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
19
1.政策・規制の動向
2.ラベリング制度の動向
3.ビルオーナーのニーズ
4.技術開発の動向
5.ビジネス事例
<まとめ>
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
20
4.技術開発の動向
注目技術
基本的には、すでに空調、照明等の既存技術は成熟段階にあり、既存技術
のインテグレートが重要との認識
インテグレーションは、ビル毎、テナント毎、フロア毎に行う必要があり、センサー技
術とそこで集めたデータの分析・制御技術(ソフトウェア)が重要
大手デベロッパーの開発したビルでは、ビル内に約2,000個のセンサーを設置し、
1分間隔でエネルギー消費データや気象データ、室内環境データを収集。
エネルギー性能予測値のシミュレーションを行うとともに、予測値と実績値のバラン
スシートを作成(実証段階)
設計エンジニアリング会社によると、「既存技術のインテグレートにより、一般的な
ビルに比べて建設コストを25%、エネルギー消費量を50%削減することに成功し
た」とのこと
その他、躯体の高断熱化、 Chilled Beam(放射冷暖房システム)、CHP
(Combined Heat and Power)、DHC(District Heating and
Cooling)への関心が高い
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
21
1.政策・規制の動向
2.ラベリング制度の動向
3.ビルオーナーのニーズ
4.技術開発の動向
5.ビジネス事例
<まとめ>
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
22
5.ビジネス事例
商品・サービス
BEMSメーカは、機器売り(プロダクト)だけではなく、EPC(Energy Performance Contract)
と呼ばれるESCOサービス(ソリューション)も提供(7~10年程度の契約)
プロダクトとソリューションの両方を提供することで付加価値を高める
▪ プロダクト:ビルのオートメーション、省エネ、セキュリティ、消防など
▪ ソリューション:ビルのメーターデータの収集、分析、診断、アドバイスなど
メーカ毎に様々な手法で差別化を図っている
【差別化手法の例】
① ファイナンス:金融子会社を持ち、グループの信用力で賅金調達が可能なため、
顧客に有利なファイナンスを提供可能
② 契約形態:合意したパフォーマンスが出なかった場合には、ペナルティを払う。
逆に上回った場合には、利益をシェア
③ インターフェース:顧客の省エネ、セキュリティ、消防等について
トータルソリューションを提供し、コントローラーやスクリーン等を最小化
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
23
1.政策・規制の動向
2.ラベリング制度の動向
3.ビルオーナーのニーズ
4.技術開発の動向
5.ビジネス事例
<まとめ>
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
24
<欧州動向のまとめ>
 政策・規制主導による市場形成。ただし、具体的な検討は進んで
おらず、導入時期は送れる可能性。遵守の担保も課題
 既築対策をより重視する傾向(ラベリング制度の義務化)
 規制回りのファイナンスの仕組みの充実(英国“Green Deal”)
 Non Energy Benefitsの価値認識(メンテナンスコストの削減、
快適性・知的生産性の向上等)
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
25
Copyright(C) 2013 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
26
Fly UP