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2012~2013政策制度要求と提言

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2012~2013政策制度要求と提言
政 策・制 度 要 求 と 提 言
希望と
の
安心
り
くり
づ
づく
社会
2012 ∼ 2013 年度
-2011 年 7月∼ 2013 年 6月-
∼
2
0
1
2
Japanese Trade Union Confederation
( JTUC-RENGO)
年度
2
0
1
3
日本労働組合総連合会
この印刷物で本文に使用している用紙は、
森を元気にするために間伐した木材の
有効活用に役立っています。
はじめに
3 月 11 日、第 18 回中央執行委員会で「2012~2013 年度
政策・制度
要求と提言」の原
案を組織討議に付すことを確認した同日、東日本大震災が起こり「国難」とも言える未曽有
の被害が発生しました。あらためて犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、
被災されたすべての皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。
この「要求と提言」は、2011 年 7 月から向こう 2 年間の連合の政策をとりまとめた政策集
です。この期間では、東日本大震災からの復興・再生をどのように進めていくかが最優先の
政策課題となります。こうした認識の下、「要求と提言」の別冊として新たに「災害復興・
再生に向けた政策」を策定しました。
一方で、少子高齢化や社会保障の機能不全による貧困と格差の拡大、不安定・低賃金労働
者の増大と賃金低下などによる国内消費低迷・デフレ基調の継続など、取り巻く情勢は深刻
さを増しています。そのため、本冊「要求と提言」を堅持しつつ、別冊「災害復興・再生に
向けた政策」を優先させることで、政策の実現をはかっていくこととします。
「要求と提言」の「パート 1」では、要求と提言の基軸として「働くことを軸とする安心
社会」のかたちを記載し、その構築にむけ 5 つの政策理念を堅持することとしています。ま
た、東日本大震災の政策課題なども提起し、「パート 2」および別冊「災害復興・再生に向
けた政策」で各政策課題を詳細に示しています。
2009 年、民主党中心の政権交代が実現し、連合の政策・制度要求実現への期待が高まると
ともに、政府に対して政策・制度実現を提案・要求する連合の責任も今まで以上に問われる
こととなりました。今回の「要求と提言」は、こうした認識に基づき、2010 年秋に構成組織
・地方連合会を対象に実施したアンケートを参考に骨子作成から始め、政策委員会、関係各
委員会等で討議を重ね政策原案を策定しました。3 月 11 日中央執行委員会で原案を組織討議
に付すことを確認、その後「災害復興・再生に向けた政策」を策定し、4 月 25~26 日の政策
・制度中央討論集会での議論等を踏まえた修正・補強を行い、6 月 2 日の中央委員会で最終
決定しました。また、同じ時期に組織討議を行ってきた「連合新 21 世紀社会保障ビジョン」
「第 3 次税制改革基本大綱」も確認・決定しました。
連合は、職場や地域の現状や討議を踏まえ策定した政策の実現に全力で取り組みます。ま
た、重点政策を設定して職場・地域を含め政策実現に向けた運動を幅広く展開し、広く国民
の合意形成に努め、この危機を克服し「働くことを軸とする安心社会」を実現していきます。
2011 年 6 月 2 日
日本労働組合総連合会
事務局長
南雲弘行
~
パート1
パート2
目
次
~
「政策・制度 要求と提言」の基軸
~「働くことを軸とする安心社会の構築に向けて~
1
政策課題
「働くことを軸とする安心社会」の構築に向けて
12
1. 持続可能で健全な経済の発展
・ 経済政策
14
・ 税制改革
23
・ 産業政策
33
・ 資源・エネルギー政策
46
2. 雇用の安定と公正労働条件の確保
・ 雇用・労働政策
56
3. 安心できる社会保障制度の確立
・ 福祉・社会保障政策
78
4. 社会インフラの整備・促進
・ 国土・住宅政策
121
・ 交通・運輸政策
131
・ ICT(情報通信)政策
139
5. くらしの安心・安全の構築
・ 環境政策
145
・ 食料・農林水産政策
163
・ 消費者政策
174
6. 民主主義の基盤強化と国民の権利保障
・ 政治改革
178
・ 行政・司法改革
183
・ 人権・平等政策
197
・ 教育政策
201
7. 公正で持続可能なグローバル社会の実現
・ 国際政策
214
(横断的な項目)
・男女平等政策
223
・中小企業政策
239
・非正規雇用に関わる政策
250
・地方分権・地域活性化に関わる政策
260
※1.~7.の政策課題の中から上記の四分野に関連するものを整理しまとめている
別冊
災害復興・再生に向けた政策
パート1
「政策・制度
要求と提言」の基軸
~「働くことを軸とする安心社会」の構築に向けて~
「2012~2013 年度 政策・制度 要求と提言」の基軸
-「働くことを軸とする安心社会」の構築に向けて-
このたびの東日本大震災で亡くなられた方々に心からご冥福をお祈り
致します。また、被災をされたすべての皆様に、心からお見舞い申し上
げます。
併せて、一日も早い復旧・復興を果たすことができるよう、私たちも、
全力を傾注することを誓います。
はじめに-「要求と提言」と震災の復旧・復興の施策との関係
連合「2012~13 年度 政策・制度要求と提言」は、2011 年 6 月 2 日に開催される
第 60 回中央委員会で確定すべく、その原案を 3 月 11 日に開催した第 18 回中央執行
委員会で組織討議に附すことを確認した。同日、東日本大震災が起こり「国難」とも
言える未曾有の被害が発生した。
震災発生直後から、自衛隊、警察、消防、海上保安庁を始めとする国や地方自治体
の人々や、原発の制御を取り戻すため、東電関係者はじめ多くの作業員が昼夜を分か
たず活動を続けてきた。こうした人たちの使命感と努力に深く敬意を表したい。
また、諸外国から救援のために来日した人々、はげましや見舞いの言葉やお金を送
っていただいたITUC加盟の組合員をはじめとする、世界の人々の連帯に感謝申し
上げたい。
連合は、3 月 14 日に「連合・災害救援対策本部」を設置し、組合員・家族の生命と
財産を守ることのみならず、労働運動の社会的使命として、被災者救援と復旧に組織
の全力をあげて取り組んでいくことを確認するとともに、カンパの実施、支援物資の
提供を行うとともに、政府・政党に対しては、被災者・避難者の生活確保や、国民へ
の情報開示など 6 項目にわたる「緊急要請」を行った。また、4 月上旬には「東日本
大震災への救済・復旧対策」についての第 2 次要請を行った。
災害が発生した場合には、まず、被災者の救援、避難者の救済・支援など初動時の
緊急対応があり、次に電気、ガス、上下水道などのライフラインの復旧、医療、救援
物資の提供、ボランティアによる救援活動、被災者の生活支援、住居の再建、などの
プロセスを経て本格的復興に向かう。被害を受けたシステムを元に戻すことが復旧で
あり、社会のさらなる発展を意図して新たな社会のシステムを構築することが復興で
ある。
連合は、被災者救援についてはボランティア活動を進めており、復旧については、
「連合・災害救援対策本部」の活動としてすでに取り組みを進めている。今後は震災
の復興に向けた政策をどのように進めていくかが政策的課題である。
こうした認識の下、「2012~13 年度 政策・制度 要求と提言」(原案)は、第 18
回中央執行員会で組織内討議に附すことが確認されているものであることから、東日
本大震災に伴う修正は必要最小限にとどめることとし、新たに「災害復興・再生に向
けた政策(仮称)」を策定し、「要求と提言」の別冊として扱うこととする。東日本大
震災の発生以降の「要求と提言」に対する大幅な見直しはこの中に盛り込む。
- 1 -
今回の震災は、被災地が広範囲にわたっており、また地震、津波、原子力事故が重
なって、かつて経験したことのない大規模な被害を与えた。原発事故については、震
災発生直後から予断を許さない状況が続いており、それに伴う意間接被害も発生して
いる。
災害は大別して、市民生活に関わるもの、社会インフラや公共施設に関するもの、
企業活動に関わるものがあるが、今回の地震は、このいずれの分野にも大きな爪跡を
残している。内閣府の試算によれば今回の大震災の直接的被害総額は 16 兆-25 兆円
とされているが、これには原発事故や、それに伴う風評被害、さらには計画停電、夏
場の電力供給不足による経済への影響などは含まれておらず、被害総額はさらに膨ら
む可能性がある。その復旧・復興には、相当の時間と費用がかかることが予想される。
実際の政策の実行に当たっては、復旧と復興に明確な線引きができるものではなく、
復旧・復興が一部重なり合いながら進んでいくものと思われる。また、その際には、
災害の復旧・復興を最優先にして、既存の政策についても優先順位の見直しが求めら
れることになろう。しかし、それは既存の政策そのものが不要になったということで
はない。その意味で、本冊の「要求と提言」を堅持しつつも、別冊の「災害復興・再
生」を優先させることで、政策の実現をはかっていくこととしたい。
今回の震災では、私たちが、電気を使い、快適な生活を享受することを当然のよう
に考えてきたことを、問い直す機会となった。エネルギーを多消費することによって
得られてきた「豊かさ」の見直しも求められている。
同時に、今回の震災で、家族と地域社会(コミュニティ)の持つ力、人と人とのつ
ながりあい、信頼や共助の精神など国民の中にある「連帯」の「絆(きずな)」を重
視する価値観の大切さが再認識された。これこそが連合が掲げてきた「働くことを軸
とする安心社会」を貫く価値観である。
大災害にもかかわらず、日本人が取り乱すことなく、助け合い、秩序ある対応をし
てきたことは、海外でも賞賛の目で見られている。そして日本が、この震災の苦境か
ら必ずや立ち直ってくれるものと期待している。
これまで、わが国は 1923 年の関東大震災、1995 年の阪神・淡路大震災をはじめ、
多くの地震を経験し、その経験を生かしながら従前以上の復興を成し遂げてきた。
被災者の苦難を分かち合い、先人の知恵や行動に学びながら、この災害をバネにし
て、世界から注目される復興を成しとげよう。
「がんばろう日本」
「つながろう日本」。
Ⅰ
「働くことを軸とする安心社会」の構築
1.世界的な潮流変化の中で
連合は、第 59 回中央委員会(2010 年 12 月 2 日)において、これまで連合が目指す
べき社会のあり方として掲げてきた「労働を中心とした福祉型社会」を再定義、深化
した「働くことを軸とする安心社会」を新たなビジョンとして確認した。
「労働を中心とした福祉型社会」は「働くということに最も重要な価値を置き、す
べての人に働く機会と公正な労働条件を保障し、安心して自己実現に挑戦できるセー
フティネットがはめこまれた社会」の構想であった。そこでは、これまでのしっかり
した雇用保障を維持しつつも、男性正社員に限らず、女性や非正規労働者を含めて、
すべての個人が働き自立できるように、社会的連帯を広げ、公的な支援を徹底するこ
とが目指された。「労働を中心とした福祉型社会」のビジョンが示す大きな方向性や
問題指摘は、今日に至ってもいささかも古くなってはいない。それどころか、現実の
様々な困難が積み増す中で、ますますその先見性、妥当性が明らかになっている。
- 2 -
しかし今や、均等・均衡処遇も実現しないままに非正規雇用で働く人たちは急速に
増加し、雇用労働者の 3 割を大きく超えている。社会保障制度も十分に機能せず、貧
困が拡大し、ワーキングプアの増大など、富の分配がゆがみ、10 年前と比べても事態
は深刻化している。
2008 年秋のリーマン・ショックは、それまでの市場万能主義、新自由主義的政策や、
グローバル金融資本主義の暴走によってもたらされた格差や貧困、社会の不条理に対
する反省を世界と日本に促し、根本から問い直させる大きな機会となった。
労働の尊厳、労働の価値を軽視してきた、これまでの経済政策や社会政策を転換さ
せるべく「時代の潮流」は変わっている。ILOが提起するディーセント・ワーク(働
きがいのある人間らしい仕事)はこのような背景を踏まえた世界へのメッセージでも
ある。また、地球温暖化問題や資源・エネルギー問題、国際間の貧富の格差と平和の
問題も、世界の人々に突きつけられた持続可能性の問題として無視できないものとな
っている。
こうした世界的な潮流変化の中で、21 世紀日本の変化はますます加速し、政治の流
動化も進行し、パラダイムの転換が始まっている。すべての働く者、そして働くこと
を願う者の利益を結びつけ、新しい社会のかたちを切り開いていく、連合の主体性の
発揮が求められている。
このような問題意識から、連合は、すべての労働者の拠りどころとして、その力を
結集し、
「働くことを軸とする安心社会」――すなわち、働くことを通じて支え合う希
望と安心の社会を築くために全力をあげることとした。
2.「働くことを軸とする安心社会」のかたち
「働くことを軸とする安心社会」は、働くことに最も重要な価値を置き、誰もが公
正な労働条件のもと多様な働き方を通じて社会に参加でき、社会的・経済的に自立す
ることを軸とし、それを相互に支え合い、自己実現に挑戦できるセーフティネットが
組み込まれている活力あふれる参加型の社会である。「誰もがいつでも働く機会、参
加の場を得ることができる」という安心が、人々の希望につながる社会の要となる。
それは、以下の4つでかたち作られている。
(1)みんなが働き、つながり、支え合う
すべての人々に人間的で誇りの持てる働く機会が提供されなければならない。しか
し、多くの人々がやりがいのある仕事に就きたいと願いながら、様々な困難がその願
いの前に立ちはだかっている。安定した職が得られないでいる若者、育児や介護のた
めに就労をあきらめざるを得ない労働者。公的職業訓練を受けたくても受けられない
失業者、障がいのある人々、年をとってこれまでのようなかたちでは働くことが困難
になった人々などが抱えている困難を取り除き、
「働くこと」に人々を結びつける「安
心の橋」(制度や政策)が架けられなければならない。それは、意思があれば自由に
往き来できる橋である。私たちの目指す社会は、困難を抱えた人々に「恩恵」や「保
護」を与えるだけで、結局は隠遁やあきらめを促す社会ではない。目指すべきは、
「参
加すること」に困難を感じているすべての人々に対して、その困難を除去し、一人で
も多くの人々を包摂し、迎え入れていく社会である。
- 3 -
※2010.12.2 第 59 回中央委員会確認「
『働くことを軸とする安心社会』に向けて」より
(2)ディーセント・ワークの実現
人々を雇用に結びつけていくと同時に、その雇用が人間的で誇りの持てるもの、す
なわちディーセント・ワークの実現が求められる。
ディーセント・ワークとは、職業生活における人々の願望を示したもので、生産的
で公正な所得をもたらす仕事の機会、職場における保障と家族に対する社会的保護、
個人としての能力開発と社会的統合へのより良い見通し、人々が不安や心配を表現す
る自由、自分たちの生活に影響を及ぼす決定に団結して参加すること、すべての男女
のための機会と待遇の平等、などを意味する。
わが国でこれを実現するためには、①仕事の価値に見合った所得、②職場コミュニ
ティとそれを支えるワークルールの確立、③ワーク・ライフ・バランスの実現が不可
欠である。
働くことを軸に支え合う安心社会と、ワーク・ライフ・バランスを追求するという
ことは矛盾しない。ワーク・ライフ・バランスこそが雇用の質を高め、より多くの人
の就労を可能にする。男女平等参画社会の実現をも可能にする。労働力の質の向上が、
労働生産性を向上させ、従業員のより豊かな暮らしにつながるとともに、やりがい・
働きがいのある職場を作り、それが企業価値の向上にもつながるという、労使にとっ
ての好循環をもたらす。
(3)雇用の質的強化と機会創出
職業訓練などの積極的労働市場政策を充実させ、生涯教育を拡大し、ワーク・ライ
フ・バランスを定着させるならば、質の高い労働力による成長戦略=「ハイロード・
アプローチ」が可能になる。
国際的にも質の高い労働力により培ってきたわが国のすぐれた技術力、開発力を維
持・強化しつつ、それをベースに成長が期待できる産業分野に積極的に進出し、雇用
機会を創出していく必要がある。情報通信部門などの先端部門に限らず、多様な産業
分野で、付加価値の高い財やサービスを生み出す雇用への転換を進めていかなければ
ならない。
- 4 -
新しい分野で雇用機会を創り出していくことも重要である。低炭素社会への転換を
進めて温暖化に歯止めをかけることが求められる中、環境関連技術、再生可能エネル
ギー分野、住宅、施設のエネルギー効率改善、リサイクル事業、公共交通の拡充など
に関わるグリーン・ジョブは新たな成長分野となりつつある。また、福祉・医療の分
野で就労する労働者もこれから大きく増大していくと予想される。これまで地域経済
を支えてきた建設業や、農林水産業などの第 1 次産業などにも新しい可能性が芽生え
ている。既存施設の修繕、維持管理に加え、省エネ化や建築物の耐震化工事など環境
保全や安全を高める分野の公共事業には強いニーズが生まれている。農林水産業など
の第 1 次産業についても、商工との連携による第 6 次産業化や国産材の活用などで雇
用を拡大し、地域を活性化させる。
(4)希望につながる安心・切れ目のない安心
「働くことを軸とする安心社会」は、誰もが自己実現に挑戦できるセーフティネッ
トが整備されている安心を提供する社会である。それは、生涯を通した切れ目のない
安心であり、それゆえに人々の人生における選択肢を広げるものである。
「切れ目のない安心」が必要な政策の 1 つに、出産から子育てに至る一連の課題が
挙げられる。わが国の総人口は 2005 年に戦後初めて減少に転じており、減少傾向に
今も歯止めがかからない。子育て費用、教育費の負担が大きいこと、貧困層の増大、
不安定雇用の増大による将来不安などにより養育費用が確保できないこと、また、出
産や育児のための休業がとりにくいこと、託児所、保育園の確保が困難であることな
ど、少子化の原因は多岐にわたる。まさに、切れ目のない安心を実現するための総合
的な対策が必要である。
集団的労使関係は、資本主義社会において富の公正な分配を担保する最も基本的な
インフラ・公共財であり、それを機能させることが「働くことを軸とする安心社会」
にとって不可欠である。
連合は、自らの活動の質と量を向上させ、構成組織、地方組織との合意を得つつ、
かつ志を同じくする労働者福祉事業やNPOなど多くの団体や個人とネットワーク
型の連携をつくり上げて、「働くことを軸とする安心社会」の確立をめざす。
Ⅱ
連合が求める政策の理念
連合「2010~11 年度 要求と提言」で、以下の 5 つの政策理念を確認した。改めて
この 5 つの理念を再確認したい。
第 1 は、「連帯」である。社会は国家と個人、企業と個人という二極で成り立って
いるわけではない。家族、地域共同体、労働組合、NPO、各種団体、政党など様々
な中間組織が市民社会、健全な民主政治を支えている。これまでの市場原理主義指向
の中で、企業においても、個人の価値や能力も市場価値で測定するという風潮が広ま
った。雇用関係、労働関係の個別化、個人化も進んだ。しかし、個人主義からは、ぬ
くもりのある社会は生まれない。「お互いさま」という、協力原理を社会の中心に据
えることが重要である。
第 2 は、「公正」である。健全な市民社会は、層の厚い中間層で成り立っている。
この中間層が、雇用社会を支え、社会保障を支え、消費の主役であった。格差の拡大
は、富める人と貧しい人を作るだけでなく、社会を支える人と社会から支えてもらう
- 5 -
人という二極化社会を作ることになる。格差を是正し、公正な社会を実現することで、
誰もが努力すれば普通に暮らせる社会を取り戻し、もう一度日本を、厚みのある中間
層の国にしなければならない。
第 3 は、「規律」である。倫理なき、欲望の追求が未曾有の金融危機を招き、世界
経済を混乱に陥れた。2008 年のリーマン・ショックを教訓として、こうした混乱を再
び繰り返すことのないように、必要な規律を政策体系に組み込むべきである。適切な
ワークルールの設定、従業員を含むすべてのステークホルダー(利害関係者)との信
頼関係の構築による倫理的な企業行動の追求、規制逃れの防止、コンプライアンス(法
令遵守)の徹底を促す仕組みづくりが求められる。
第 4 は、「育成」である。公正な処遇と人材育成という視点を欠いたまま雇用形態
の多様化を先行させたことが格差社会の大きな要因にもなっている。グローバル化が
急速に進んだ 90 年代後半以降、企業行動には、雇用削減、総額人件費抑制というバ
イアスがかかり、人材育成という理念、戦略が軽視されてきた。労働の価値を置き去
りにした低価格志向社会への暴走も人材軽視に拍車をかけてきた。労働の価値が正当
に評価され、労働の尊厳が保たれる社会、すなわち労働者が、働くことを通じて社会
に貢献していることに自信と誇りを持ち、労働を通じて、産業・企業の健全な発展と、
生産性の向上をめざし、ひいては、国民経済の発展に貢献するという社会を築く必要
がある。それを支えるのは人材である。
第 5 は、
「包摂(インクルージョン)」である。失業、低所得、家族の崩壊などの問
題は、原因まで遡って障害を取り除かなければ真の解決にならない。職業を必要とし
ている人々には訓練の機会と、その間の生活保障を提供し、より質の高い雇用機会を
提供する必要があろう。障がいのある人々にはくらしやすい生活空間を提供するとと
もに、就労に向けたきめ細やかな支援が必要である。すべての人が、ディーセント・
ワークを求める権利を有している。社会的弱者を排除するのではなく、参加を促し、
包摂するという政策理念を追求する。
連合「2012~13 年度 要求と提言」においても、この 5 つの政策理念を堅持する。
Ⅲ
政治の現状と連合の政策課題
1.民主党を中心とした政権確立と連合の立場
2009 年 9 月、それまで 50 余年続いた自民党中心の政治に終止符が打たれ、民主党
を中心とする政権交代がなされた。この政権交代は、新自由主義、マネー資本主義の
暴走によって世界経済が危機的状況に陥る中で実現したものであった。したがって新
政権には、格差拡大や貧困の増加に歯止めをかけるべく、「効率と競争」最優先の社
会から、「公正と連帯」を基礎とする社会へのパラダイムシフト(政策軸の転換)に
よる政策実現が期待された。
2009 年 9 月に成立した鳩山内閣は、「国民の生活が第一」を掲げて、①官僚依存か
ら政治主導への政治、②政府・与党の二元体制から政策決定の一元化を掲げ、国家戦
略室、行政刷新会議を立ち上げるとともに、各省政務三役を中心とした大臣チームに
よる政治主導による政策決定の仕組みを作り上げ、民主党が掲げた政策課題を実行し
てきた。
- 6 -
子ども手当の創設や高校の授業料の実質無償化は、「社会全体で子どもを育てる」
という重要なメッセージを政府が示したものであった。雇用に関しては、政権発足間
もない 2009 年 10 月に、
「緊急雇用対策本部」を設置し、
「雇用戦略対話」という政府
と労使、民間有識者による政策対話の枠組みを構築するとともに、雇用保険の適用範
囲の拡大、第 2 のセーフティネット、雇用調整助成金の要件緩和、労働者派遣法改正
案の取りまとめなどを行った。こうした雇用重視の姿勢は、連合にとって大いに評価
できるものであった。
連合は、民主党政権とは、首相、会長レベルでの「政府・連合トップ会談」、官房
長官、事務局長レベルの「定期協議」、さらには、各省大臣との協議など重層的な協
議態勢を構築する中で、政策実現に向けた連携を強化してきた。また、2010 年 7 月か
ら、民主党に政策調査会が復活したことを受けて、民主党政調との政策協議も随時実
施してきた。
政権交代の期待は高かったものの、鳩山内閣は、政治とカネをめぐる問題や、沖縄
の普天間基地の移転をめぐる混乱などで 2010 年 6 月に退陣した。
鳩山内閣の後を受けて成立した菅内閣は、6 月に、環境、健康、アジア、観光の分
野で 2020 年までに 123 兆円の需要と約 500 万人の雇用を創出することを柱とする「新
成長戦略」の工程表を決定した。
急速な円高など、足下の景気不透明感が漂う中で、政府は、9 月には「3 段構えの
経済対策」を掲げ、予備費の活用、2010 年度補正予算を成立させるとともに、2011
年度予算では、需要・雇用創出効果の高い施策への重点配分を柱とした新成長戦略の
推進を目指している。
菅内閣は、当初は国民の高い支持を受けて、参議院選挙に突入したが、消費税増税
をめぐる発言が国民の誤解や混乱を引き起こし、7 月に行われた参院選では、民主党
は惨敗し、民主党単独過半数はもとより、連立政権での過半数割れという事態に陥っ
た。その後に行われた、2010 年 9 月 14 日の民主党代表選挙では菅直人衆議院議員
が再選され、9 月 17 日に菅改造内閣が発足した。
しかし、第176臨時国会では、野党の攻勢によって、補正予算の成立に時間を要し、
多くの法案が、廃案または継続審議となった。さらには、参議院における野党の問責
決議案の可決によって、閣僚の更迭も余儀なくされた。
2010 年の参院選での敗北以降も民主党の政権運営に対する世論の見方は厳しく、民
主党は与野党対決の大型選挙で敗北を重ねてきた
2011 年 1 月に招集された第 177 通常国会は、民主党政権が初めて一から手がけた予
算である 2011 年度予算案をはじめ、求職者支援法案など、円高・デフレ状況を早期
に脱却し、日本経済を持続的成長軌道に乗せるとともに、国民に将来の希望と安心を
示すために極めて重要な法案が審議されている。さらには、「社会保障と税の一体改
革」TPP参加を検討する「平成の開国」など多くの重要課題が山積している。
こうした中、民主党が初めて政権与党として臨んだ今回の統一地方選挙も厳しい結
果となったが、政権運営のみならず、東日本大震災や原発事故への対応に十分な理解
と評価が得られていないことも敗因のひとつと言わざるをえない。また、地域政党の
躍進は、国民生活を置き去りにしたまま政局に明け暮れる政治への、国民の失望の顕
著な現れであると言える。与野党ともに反省し、国民の声を厳粛かつ真摯に受け止め
るべきである。
- 7 -
2. 東日本大震災と政策課題
2011 年度予算案を参議院で審議している最中に大激震が発生した。2011 年 3 月 11
日午後 2 時 46 分頃、マグニチュード 9.0 の地震が東北・関東地方を襲い、大津波も
加わって死者・行方不明者が 2 万 7000 人を超える大災害となった。
政府は地震発生直後に、菅首相を本部長とする「緊急災害対策本部」を設置し、激
甚災害地域の指定や大規模な自衛隊の災害出動などをはじめ、被災者救援の対策を展
開した。さらに、福島第 1 原発で事故が発生したことから、原子力災害対策本部を設
置するなど、危機対応に追われた。
今回の震災は、被災地が広範囲にわたっており、また地震、津波、原子力事故が重
なって、かつて経験したことのない大規模な被害を与えた。災害は大別して、市民生
活に関わるもの、社会インフラや公共施設に関するもの、企業活動に関わるものがあ
るが、今回の地震は、このいずれの分野にも大きな爪痕を残しており、その復旧・復
興には、相当の時間と費用がかかることが予想される。
震災対策については、野党も協力する姿勢を示している。政党間合意によって、各
党幹事長と政府の防災担当大臣、国家戦略担当大臣、官房副長官らによる「各党・政
府震災対策合同会議」による協議も進められている。しかし、ねじれ国会であること
に変わりはない。復興に向けたビジョンの提示や財源についての国民的な合意形成な
ど、政治が全うすべき責務は重大である。政策を前に進めるためには、与野党の枠を
超えた協議と合意が不可欠である。
こうした未曾有の国難に国を挙げて立ち向かうべき時に、政権与党たる民主党内の
対立が絶えないことは極めて遺憾である。民主党は一致結束し、野党とも協力して誠
実に合意形成をはかりながら、復興に向けて着実に歩みを進め、国民の期待に応えて
いかなければならない。政府・民主党は、国民の生命・生活を守るとの決意を国民に
示すとともに、オールジャパン体制の確立を早急に行うべきである。
3. 実現すべき政策課題
「国難」を乗り越え、復興・再生を何としても成し遂げなくてはならない。こうし
た想いを共有し、連合は、政策軸を明確にして、政府の果たすべき役割を追求してい
く。
まずは、震災の復旧を急がねばならない。さらには、今回の震災を教訓とした新た
な復興に向けて歩み始めなければならない。連合は、2008 年 9 月に起こった世界同時
金融危機(リーマンショック)に際して、「希望の国日本へ舵を切れ」というメッセ
ージを発した。そこでは、行き過ぎた市場原理主義によって、競争は熾烈を極め、個
人に必要以上の責任を負わせ、ゆとりのない不安と不信の社会を招来、コミュニティ
も崩壊したことを指摘し、社会的公正や安心・安全が社会の岩盤であり、これまでの
政策軸の転換(パラダイムシフト)が必要であると訴えた。こうした「むき出しの競
争」の弊害を少なくする取り組みは、世界各国で行われている。その 1 つに、欧州で
始まっている「連帯経済」という考え方がある。「連帯経済」は、競争の論理だけで
はなく、人々の経済活動に、倫理や連帯という価値観を取り入れようとするもので、
①倫理的金融、②フェアトレード、③責任消費の考え方で成り立っている。これは、
地球全体の持続可能な経済社会に導くことをねらいとしたもので、グローバルな発想
に基づくものであるが、この考え方は今回の震災にもあてはめることができる。
すなわち、「倫理的金融」は、被災者の立場に立った復興の視点で、資金を融通す
- 8 -
ることである。これは産業金融だけでなく、コミュニティ開発のための金融や、社会
的企業、NPO融資をもカバーするものである。また、寄付やカンパによる復興支援
も含まれる。「フェアトレード」は、本来は途上国の産物を適正な価格で購入するこ
とを意味するが、震災にあてはめて考えると、復興に伴って発生する需要に適正な価
格、公正な取引によって契約し、執行することとなる。「責任消費」は、風評にまど
わされない消費行動、買い占めや買いだめに走らない消費行動、被災地の励ましにな
る消費行動などを意味する。
こうした考え方に基づいて、別冊で提起している「災害復興・再生に向けた政策」
を推進しつつ、従来から、連合が掲げてきた以下の政策課題にも取り組む必要がある。
(1)新成長戦略の推進によるデフレ脱却と雇用の創出・維持
バブル崩壊以降 20 年にわたって続いているデフレから早期に脱却する必要がある。
そのため、政府がまとめた「新成長戦略」を着実に推進し、わが国経済を持続的、安
定的な成長軌道に乗せ、雇用の創出・維持をはかる。また、成長の成果を地域や国民
きんてん
生活に均霑させることで、地域の活性化、国民生活の向上をはかる。
(2)ディーセント・ワークの実現
①仕事の価値に見合った所得の確保、②職場コミュニティとそれを支えるワークル
ールの確立、③ワーク・ライフ・バランスの実現させることで、ディーセント・ワー
クの実現をはかる。
(3)セーフティネットの構築と切れ目のない安心社会の実現
誰もが自己実現に挑戦できるセーフティネットが整備され、生涯を通した切れ目の
ない安心を提供する社会の実現をはかる。それを通じて人々の人生における選択肢を
広げる。
(4)安心社会を支える負担の分かち合い
安心社会を支えるための健全な税財政と持続可能な社会保障制度の構築をめざす。
税と社会保険のバランスを確保しつつ、少子・高齢化に対応していかなければならな
い。税については、「納税は社会を支える分かちあい」という思想が共有できる社会
にする。社会保険については、リスクの分散という保険原理が機能でき、負担と給付
のバランスが見える制度を追求する。また、分かちあいの思想を形成するための基盤
である、政治と政府の信頼性の回復を求めていく。
(5)国際連帯によるグローバル化の負の側面の克服
グローバル化の負の側面を克服し、環境悪化に歯止めをかけ、地球レベルでの貧困
の撲滅などに、国際社会の一員としてのわが国の責任を果たす。
以
- 9 -
上
パート2
政策課題
~「
働
く
こ
と
を
軸
と
す
る
【我々を取り巻く経済・社会・政治情勢】
●日本における人口減少社会への変化、デフレ基調の長期継続
●均衡・均等処遇も実現しないままでの非正規労働者の増加、貧困の拡大、格差の拡大、ワ
ーキングプアの増大などに対する反省
●労働の尊厳、労働の価値を軽視してきた経済・社会政策の転換など世界的潮流変化の動き
●自民党中心の政権から民主党を中心とする政権への政権交代が実現
●地球温暖化問題、資源・エネルギー問題、投機マネー流入による食料・エネルギーなどの
価格高、国際間の貧富の格差などグローバル化の中での諸問題
●中東地域における政治的混乱など旧来の世界的秩序の崩壊、グローバル化の中での新たな
世界的秩序の必要性
今こそ求められる社会全体の価
値観の転換(パラダイムシフト)
「働くことを軸とする安心社会」の構築へ!
みんなが働き、つながり、
支え合う
ディーセント・ワークの
実現
雇用の質的強化と
希望につながる安心・
切れ目のない安心
帯
公
•人間的で誇りの持てる雇用・労働を実現
•積極的労働市場政策の充実、質の高い労働力に
よる成長戦略(ハイロード・アプローチ)
機会創出
連
•働くことへの困難を除去し、すべての人々を
「働くこと」に結び付ける
正
•誰もが自己実現に挑戦できるセーフティネット
が整備され安心を提供する
規
律
育
包
成
摂
「支え合い」による
公正さを取り戻し、
必要な規律、倫理的
人材育成の重視、労
社会的に排除する
協力原理を社会の
拡大した格差を是
な企業行動を呼び
働価値を適正に評
のではなく包摂す
中心に据える
正する
さます
価する
る
「働くことを軸とする安心社会」を支える 5 つの政策理念
- 12 -
安
心
社
会
」 の
構
築
に
む
け
て~
【実現すべき政策課題】
新成長戦略推進によるデフレ脱却と雇用の創出・維持
◆新成長戦略の推進など産業政策と雇用政策の一体的実施(P35;産業)
◆地域特性を活かしたまちづくり推進、地域産業活性化による地域雇用の増大(P36;産業、
)
◆日本の成長と競争力を支える人材育成の強化、社会教育・労働教育の推進(P38;産業、P68;
雇用・労働、P141;ICT(情報通信)
、P205;教育)
◆「グリーン・ジョブ戦略」に関する政策の推進(P49;資源・エネルギー、P157;環境)
◆環境負荷の小さい円滑な交通・運輸体系の構築(P134;交通・運輸)
◆持続可能な農林水産業の確立と就業者の育成と確保(P170;食料・農林水産政策)
ディーセント・ワークの実現
◆雇用労働環境の変化などに対応するワークルールの整備・確立(P61;雇用・労働)
◆多様な雇用・就業形態における雇用の安定と公正処遇の確保(P60;雇用・労働)
◆若年者、女性、高齢者、障がい者の雇用対策の強化(P63;雇用・労働)
◆最低賃金の機能の強化・充実(P74;雇用・労働)
◆公契約基本法の制定など公正な取引関係の実現に向けた整備(P41;産業)
◆民主的公務員制度の確立と公務員の労働基本権の回復(P187;行政・司法)
◆中核的労働基準などの尊重・遵守とILO条約批准の促進(P217;国際)
セーフティネットの構築と切れ目のない安心社会の実現
◆雇用保険と生活保護をつなぐ新たな社会的セーフティネットの構築(P58;雇用・労働、P85;
福祉・社会保障)
◆基礎年金の税方式化や年金一元化など安心と信頼の年金制度の構築(P87;福祉・社会保障)
◆地域医療提供体制の確立と医療保険制度の再構築(P93;福祉・社会保障)
◆「子育て基金(仮称)」の創設など子ども・子育て支援の強化(P113;福祉・社会保障)
◆住宅セーフティネット構築の促進(P126;国土・住宅)
安心社会を支える負担の分かち合い
◆所得再分配機能の強化、消費税の社会保障給付の安定財源化(P25、P27;税制)
◆企業の社会的責任に見合った税・社会保険料の負担(P28;税制)
◆全世代型・すべての国民を対象とする社会保障制度の構築(P83;福祉・社会保障)
国際連帯によるグローバル化の負の側面の克服
◆気候変動対策と国際交渉の強化、国際協力の推進(P149;環境)
◆国際機関や政府間会合の機能強化と社会対話の促進(P216;国際)
◆投資ファンドの透明性向上と課税強化(P21;経済)
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1.持続可能で健全な経済の発展
(経 済 政 策)
1.持続可能で健全な経済の発展
経
済
政
策
<背景と考え方>
(1) 2008 年 9 月のリーマン・ショックによる世界同時不況の影響を受け、日本経済は大きく
落ち込んだ。それまでの景気回復が、一部の大企業を中心とする輸出と、リストラ効果を
通じた企業業績の改善が中心であった日本は、他の国に比べ特に大きな影響を受けたと言
える。実質GDP成長率が第一次石油危機以来の大幅なマイナスになるとともに、有期契
約労働者に対する派遣切りや雇い止めが社会問題となった。失業率も 2010 年 7 月に 5.6%
と過去最悪を記録し、現在も 5%台で高止まりしている。このような結果を招いたのは、
企業の業績回復による収益の拡大が、中小企業や家計への所得移転につながらず、個人消
費の回復力も弱く、地方経済も疲弊したままで、力強い内需をともなう本格的な経済成長
に至っていなかったことによる。
(2) 最近の日本経済は、新興国の活発な需要を背景とする輸出やエコカー補助金制度、エコ
ポイント制度などの政策効果などもあり、実質GDPが 2009 年 10-12 月期から 2010 年 7-9
月期まで 4 四半期連続で拡大するなど、回復の兆しは見えてきていた。各国の自国通貨安
容認策などよって進行した急速な円高による企業収益の悪化や、政策効果の反動による消
費の落ち込みなどにより、2010 年 10-12 月期の実質GDP成長率は▲0.3%(年率換算▲
1.3%)となったものの、今後は生産や輸出の回復を受け、踊り場を脱却し緩やかな景気回
復基調をたどると見込まれていた。しかしながら、3 月 11 日に発生した東日本大震災は、
被害総額が約 16~25 兆円と推計されるなど、まさに日本にとって国難とも言える甚大な被
害を及ぼした。経済活動の停滞や消費マインドの悪化は必至であり、当面経済成長はマイ
ナスとなることが予想されている。
(3) また、日本経済は、1990 年代前半のバブル経済崩壊以降、長期間にわたってデフレ基調
が継続しているという問題を抱えている。2009 年 11 月の政府のデフレ宣言以降、日本銀
行が金融緩和政策を継続するとともに、国債購入額の増額などの新たなオペレーションを
行っているが、2011 年でのデフレからの明確な脱却は見えていない状況である。このよう
な深刻な状況となった背景には、バブル経済崩壊以後続いている長期間に及ぶ家計と企業
の分配構造の歪みがある。そのため、地域間格差、産業間格差、企業規模間格差、雇用・
就労形態による格差など、あらゆる分野に格差が拡大し、消費の低迷、国内需要の縮小、
デフレの進行といった悪循環に陥っている。今後さらにデフレが進行するようなことにな
れば、企業はさらなるリストラに走り、家計・企業間の配分の歪みの一層の拡大、さらな
る消費低迷、内需縮小につながりかねず、震災復興・再生を進めていく上での障害にもな
りかねない。また、震災復興・再生に伴う財政支出は不可欠であり、デフレ下での低経済
成長・税収の落ち込みといった循環からの脱却が求められる。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(経 済 政 策)
(4) 今、日本経済に求められていることは、震災からの復興・再生を早期かつ着実に進めて
いくことであり、そのためにもデフレから早期に脱却し、安定的・持続的な経済成長軌道
への道筋をつける必要がある。デフレ脱却のためには、雇用の安定・質の向上と社会的セ
ーフティネット機能の強化を通じた国民の将来不安の払拭が不可欠であり、連合が求める
「働くことを軸とする安心社会」を実現することにほかならない。
デフレ脱却にむけた当面の対応としては、政府が 2010 年 6 月に策定した新成長戦略を着
実に推進して新たな雇用創出をはかり、最低賃金の引き上げなどを通じた雇用の質の向上、
所得再分配機能の強化により内需を活性化する必要がある。そのためにも、金融政策と経
済・財政政策が一体となった政策運営が重要である。また、社会的セーフティネット機能
を強化するためには、予算の組み替え、歳出構造の見直しを行うとともに、社会保障制度
と一体となった税制改革を実施し、歳入構造の見直しを行うことが必要である。
<要求の項目>
1. 安定した名目成長と公正な配分を最優先とする、マクロ経済政策を実施する。
(1) 政府は、「働くことを軸とする安心社会」構築のため、以下の点に基づいた経済政策を
実施する。
①基本的な政策目標を名目 3%以上の経済成長とし、デフレからの早期脱却をめざす。
②失業率の 3%台前半への引下げをめざす。
③経済成長による恩恵は、公正な配分が行われるような施策を実施する。
(2) 政府は、デフレ脱却を最優先に、雇用の創出・安定、消費回復・内需拡大につながる経
済活性化策を実施する。
(3) 政府・日銀は、デフレを脱却し安定的な名目成長軌道に乗せるため、以下の対応を行う。
①政府は、日銀の独立性を尊重しつつ、日銀との金融政策・財政政策の連携をはかる。
②日銀は、政府との協調のもと、デフレ脱却と安定的な名目成長が明確となるまで金融緩
和を継続する。また、金融システムの危機など不測の事態に備えた緩和策などの措置も
検討する。
(4) 政府は、為替レートの安定・適正化、国際金融市場の安定策の構築にむけ、以下の施策
を実施する。
①為替レートの安定・適正化をはかる。とりわけ、中国人民元に関しては、中国の経済力
に即した為替水準となるよう、中国政府に対し適正な為替相場制度導入を促す。
②G8各国と連携をはかりつつ、経済実態からかけ離れた急激な為替変動に対しては、機
動的かつ強力な市場介入を実施する。
③国際協調体制の強化に向けて、日本が積極的役割を果たし、緊急金融支援メカニズムの
構築や東アジア地域における金融資本市場の整備を進める。
(5) 政府は、新成長戦略実現会議など経済財政政策を決定する会議において、労働組合など
- 15 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(経 済 政 策)
幅広い民間有識者が参加し、各層の意見が公正に反映されるような運営を行う。
2.政府は、雇用創出・安定化、社会保障制度の改革による生活・将来不安の解消、地域活
性化・中小企業支援策の実施等の政策に重点を置き、デフレ脱却・内需主導による自律
的な経済成長を実現する。
(1) 新成長戦略(注 1)に示された 21 項目の国家戦略プロジェクトを中心として、国民生活
にとって将来にわたり特に発展が求められる新技術開発分野(情報通信、住宅、環境、電
池、省・新エネ、福祉・医療、バイオナノテクノロジーなど)に資源を集中投資し、新規
産業・雇用を創出する。また、介護・福祉分野、農林水産業、教育、観光など地域雇用の
創出につながる分野を育成・活性化し、そのために必要な環境整備を行う。( P33~「産業
政策」参照 )
(2) 低炭素社会の構築、持続可能な雇用・労働を実現する「グリーン・ジョブ」に関する政
策を推進する。(P145~「環境政策」参照 )
(3) 求職者支援制度の訓練内容・訓練期間の拡充・強化、「日本版NVQ」の早期構築・普
及、産業政策・雇用政策・教育政策と連携した職業能力開発施策の推進などにより、すべ
ての働く者に対する職業能力開発施策と日本の成長と競争力を支える人材の育成を強化す
る。( P56~「雇用・労働政策」参照)
(4) 多様な雇用・就業形態の労働者の雇用の安定と公正な処遇を確保するとともに、若年者
・女性・高齢者・障がい者の雇用対策を強化する。( P56~「雇用・労働政策」参照 )
(5) 全世代型・すべての国民を対象としたセーフティネットへの機能強化を進めるべく、財
源の確保、負担の分かち合い・所得再分配機能の強化など税制と一体となった社会保障制
度改革を行う。(P78~「福祉・社会保障政策」参照)
(6) 地域における「産官学金労」の下、ものづくり技術・技能の維持強化とその支援、人材
強化とその支援、地域特性を活かしたまちづくりの推進など、地域連携を強化した地域経済
・社会の活性化を進める。また、総合特区制度なども活用しさらなる活性化をはかる。(P
33~「産業政策」参照 )
(7) 地域経済を支える中小企業・地場産業の活性化に資する金融環境の整備、金融機関の健
全性強化など、国民にとって安心・信頼できる金融システムを構築する。( P20 4.「国民
にとって安心・信頼でき、地域経済の活性化に資する金融システムを構築する」参照)
(注 1) 新成長戦略 ~ 「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオ~」として 2010 年 6 月に閣議決
定され、環境、健康、アジア、観光の 4 分野で 2020 年までに 123 兆円の需要と約 500 万人の雇用
を創出するという目標が具体的な施策とともに示された。また、7 つの戦略分野から経済成長に
特に貢献度が高いと考えられる 21 の国家戦略プロジェクトを定め、2020 年までの工程表を策定
するなど具体的な道筋も示された。また、2011 年 5 月には、東日本大震災を受けて、震災復興と
並ぶ日本再生の方針(「財政・社会保障の持続可能性確保」及び「新たな成長へ向けた国家戦略
の再設計・最強化」)を提示した「政策推進指針~日本の再生に向けて~」が閣議決定された。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(経 済 政 策)
3.財政再建は、増税や一律的な歳出削減による財政赤字削減を先行させるのではなく、
中長期的な財政再建に向け財政構造の抜本改革を実施する。
(1) 政府は、デフレからの脱却を最優先にしつつ、必要な経済・財政政策を行うために、以
下の点に基づき、中長期的な財政再建を目指す。
①高水準にある債務残高を行財政改革と税制改革で中長期的に圧縮し、「プライマリーバ
ランス( 注 2)の黒字化」をめざす。
②財政運営戦略( 注 3)など一定の目安(期日等)の見直しを行う場合には、経済状況や
社会の状況を総合的に判断して行う。
(2) 政府は、以下の点に基づいた歳入構造の見直しを行う。( P23~「税制改革」参照)
①デフレを脱却し自律的な景気回復・経済成長による自然増収を含め、社会保障制度改革
と一体となった税制改革を行い、中長期的な財政再建・健全化をめざす。そのために予
算配分および行財政の仕組みの抜本的な見直しを通じて財政の自動安定化機能を強化す
る。
②消費税の益税問題を解消し、社会保障関係費の財源としての消費税の役割を明確化する。
③公正な徴税の基盤としての社会保障・税共通番号制度を早期に導入する。ただし、個人
情報の厳格な保護をはじめ、制度に対する国民の信頼を確保する措置を講じる。
(3) 政府・地方自治体は、以下の点に基づいた歳出構造の見直しを行う。
①政府は、一律的な歳出削減を行うのではなく、効率的な歳出構造かつ公正な配分が行わ
れるよう抜本的な見直しを行い、社会保障、教育、環境、防災、地域活性化など国民の
暮らしに直結した歳出項目へ予算配分を重点化する。また、年金・医療・介護など、社
会保障制度を総合的に見直し、国民が納得できる社会保障制度の抜本改革を実現する。
②国と地方の役割分担を明確化し、地方自治体の自主性・自立性を高める地方分権を推進
するために、政府・地方自治体は以下の諸施策を行う。
a) 地方分権にふさわしい地方税・財政にするため、国税と地方税の比率については、将
来的には少なくとも 50 対 50 となるよう引き続き税源移譲を進める。
b)政府は、地方交付税を地方における財政力格差を調整する制度と位置づけ、基準財政
需要額の算定方法の簡素・透明化にあたっては、地方自治体が参加する中で配分方法
や交付税特別会計の予算・決算を決定する。地方交付税の財源として、交付税の対象
税目と地方への配分比率を拡大し、十分な交付税財源を確保するとともに、公共事業
等を中心とした各種補助金の一部を一括交付する仕組み(一括交付金制度)を導入し、
一般財源化をはかる。
c)地方自治体は、住民や地域の労働組合、NPO等、関係団体の参加のもとで、国また
は他の自治体が行うべき業務の仕分け、不要・不急事業の廃止や民間への委託等を行
い、自治体財政の自立に向けた見直しを進める。また、地域独自の政策立案力を高め、
地域の異なる資源を互いに活用し合う地域間の相互連携を一層強化する。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(経 済 政 策)
d)公共サービスの受益者が地域限定的である場合は、原則として地方自治体が自立的に
サービスを供給することとし、政府は、必要に応じて地方へ財源を移譲する。ただし、
国土保全・環境保全等国民全体が将来にわたって便益を受ける事業は、政府(国)が
財源を負担する。
e)政府は、地方債の発行の手続きを大幅に簡素化・短縮し、地方自治体の資金調達ニー
ズに機動的に対応する。財政力が弱く起債できない地方自治体は、複数の自治体と共
同で地方債を発行する等、地方財政の自立をはかる。
③公共事業について、一律的な事業量の削減を行うのではなく、地方の独自性と効率性を
めざし、政府・地方自治体は以下の見直しや体制構築に向けた諸施策を行う。
a)政府は、雇用創出、地域の中小企業・地場産業の活性化に資するもので、福祉型社会
において不可欠なサービス部門や通信、防災、省エネ化などの生活基盤強化につなが
り経済効果も大きい事業を中心に重点化するなど抜本的な見直しを行い、雇用創出量
を明示したうえで、必要なものは速やかに実行する。
b)政府は、公共投資関係予算の効果検証を厳格に行い、不要不急事業を廃止するととも
に、省庁別・事業別の硬直的予算配分を抜本的に見直す。省庁横断的なプロジェクト
予算編成やPFIの手法の活用により、投資効率を引き上げる。
c)政府は、公共事業を地域の実情に即した地方自治体主導に改め、国の直轄事業は、地
方自治体単独では実施が困難な広域事業や大規模災害の復旧事業、国際競争力強化の
ための産業基盤整備事業等に絞り込む。個別補助金は、地方の歳出に対する国の義務
付けを縮小し、整理・統合する。
d)政府・地方自治体は、PFIの手法も活用し、高齢者施設、病院、学校等、機動的か
つ効率的な社会資本整備をはかる。また、事業の適用範囲の拡大や税制の軽減措置の
拡大を行う。対象事業の選択は、公正・透明な手続きで行うとともに、国や地方自治
体が事業を行う場合とのコスト比較を義務づける。ただし、刑務所等、個人情報保護
に特別留意すべき施設整備については、重要情報にかかわらない範囲に民間委託を限
定する等慎重に対応する。
e)政府・地方自治体は、公共施設を国民や地域住民の共有財産と位置づけ、補助金が入
っているために、施設の使用目的が限定されている等の問題を解消し、広く有効に活
用されるよう、必要に応じて、運営方法の改善や利用要件の拡大をはかる。指定管理
者制度を有効に活用するため、施設運営のソフト面の充実や人材育成をはかり、また、
施設の運営状況を適正にチェックし評価する仕組みを導入する。
f)政府は、立法府に「日本版GAO( 注 4)」(行財政監視評価委員会(仮称))を設
置し、公共事業の厳格な評価・審査・公表を行い、その結果を政策の企画立案・執行
に反映させる。
(4) 政府は、資産・負債両面からの視点による債務管理政策の充実をはかり、財政破綻に対
する行き過ぎた懸念を払拭する。また、高水準にある資産・負債を圧縮し財政破綻リスク
の軽減をはかる上で、以下の対応を行う。
- 18 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(経 済 政 策)
①高水準にある資産・負債を同時に圧縮するために、不要な資産を売却し債務を返済する。
その際、場当たり的な資産売却を行わない。国の資産として必要なものなのかどうか仕
分けを行った上、売却する際にはその価格や金利の動向、市場への影響、売却先が適正
かどうかを判断したうえで売却する。
②単に資産・負債残高を圧縮するだけではなく、資産の収益率と負債の調達金利とが見合
うように、資産や負債の質を替える。
資産については、金融資産や知的財産の運用をきちんと行っていく。一方で負債側の資
金調達は、市場性のある国債については、市場との親和性を高めた発行計画を立て、資
金調達コストを軽減する。
③国債管理と土地を除いた金融資産、知的財産、特許等の資産管理の機能を持つ組織の設
置についても検討する。
(5) 政府は、財政投融資制度や特別会計についても、その財政活動を国民にわかりやすく明
示するとともに、以下の対応を行う。
①財政投融資制度は、民業補完を前提として、政府支援の必要性を終えた事業への融資・
投資の廃止等抜本的な改革を進める。財投機関は、情報開示の促進と市場原理との調和
をはかり、公的な役割を終える時期に合わせ、職員の雇用の場を確保しつつ廃止・縮小、
民営化等を計画的に行う。
②特別会計は、仕組みを簡素化してその財政活動を国民にわかりやすく明示し、経済や社
会の環境変化に応じて毎年見直しを行う。
(6) 国会は、一般会計のみならず、特別会計、財政投融資制度を含む財政全般の審議を強化
する。国民の意思に基づいて予算配分や税負担を決定するよう、予算審議、決算審議体制
を改革する。
(注 2) プライマリーバランス ~基礎的財政収支。国債など借入を除いた税収などの歳入から、過去
の借入に対する元利払いを除いた歳出を差し引いた財政収支。2010 年度の国と地方を合わせた基
礎的財政収支は 30.9 兆円の赤字となる見通し。
(注 3) 財政運営戦略 ~2010 年 6 月に中長期的な財政規律のあり方を示す「財政健全化目標」や 2011
~2013 年度予算の骨格を示す「中期財政フレーム」等からなる財政運営戦略を閣議決定した。財
政健全化目標として、遅くとも 2015 年度までに赤字の対 GDP 比を 2010 年度の水準から半減させ、
2020 年度までに黒字化を目指すとしている。また、歳出増を伴う施策を新たに導入する際には、
恒久的な歳出削減・歳入確保措置をとるという財源確保ルールも取り入れることとした。
(注 4) GAO ~General Accounting Office の略。米国では、立法府内に設置され、議会の指示を受
けて、行政に対する調査・提言を行っている。立法府が行政府の行った評価をチェックするとと
もに、行政府が評価し難い分野について評価を行う。分析・評価に関する専門的知識を活用する
ため、民間のシンクタンク、コンサルタント等の活用が求められている。
- 19 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(経 済 政 策)
4.国民にとって安心・信頼でき、地域経済の活性化に資する金融システムを構築する。
(1) 政府は、地域経済を支える中小企業・地場産業の活性化に資する金融環境の整備を進め
る。特に、中小・地域金融機関とその顧客との長期安定的な金融取引機能を強化し、中小
企業・地場産業の事業運営を資金面から支えて「育成、再生」を強力に進め、地域経済の
活性化を実現するための政策を最優先で実行する。そのために、金融機関の企業への融資
姿勢を物的担保主義、個人保証依存から、「事業育成」の視点に立った経営コンサルタン
ト能力を高めることを通じて、融資先企業の将来性・発展性を重視したものに変革するた
めの政策を実行する。
①改正金融機能強化法に基づく公的資金注入行に対しては、中小企業向け貸出比率目標お
よび貸出残高目標達成に向け厳しく指導を行う。さらに、これらの銀行が中小企業・地
場産業への融資継続や新規融資に際しては、人員削減や賃下げ等の労働者の労働条件引
き下げ要件を付すことなく、市場動向や技術力等の評価を取り入れるよう促す。
②金融庁は、中小企業の実態を反映し適切に実施するため、「金融検査マニュアル別冊(中
小企業融資編)」の趣旨・内容を検査官に一層周知徹底する。
③中小企業再生支援協議会、整理回収機構の企業再生機能の一層の強化、企業再生支援機
構の継続活用が可能となるような法的措置などにより、雇用維持・安定を最優先とした
当該企業の再生を進める。
④都道府県の中小企業再生支援協議会は、政府から支援を受けつつ、労働組合の参画を得
て、中小企業の再建計画策定支援を積極的に行う。
⑤信用保証制度の保証枠および対象業種の拡大を通じ、民間金融機関等の融資を促す抜本
拡充をはかる。また、適正な制度運営を通じて、中小企業等の育成、支援、再生をはか
り、倒産を防止する。
⑥政府系金融機関は、地域の民間金融機関と協調のもと担保免除特例制度やDIPファイ
ナンス(事業再生支援融資)を拡充し、中小企業等への事業融資を強化する。
⑦金融機関が地域金融の円滑化にどの程度貢献しているかについて情報公開する「地域金
融円滑化法(金融アセスメント法)」を制定し、中小企業等への円滑な資金供給と地域
経済の健全な発展をはかる。なお、中小企業等に対する金融円滑化対策の総合的パッケ
ージの一環である「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する
法律」については、その目的に沿った運用を行う。
⑧地域金融機関は、債務企業の「再生」「活性化」を最優先に据え、不良債権処理にあた
っては、地域経済を支える中小企業・地場産業の役割・特性を十分に踏まえた上で、不
良債権の直接償却を多用することなく、間接償却も併用し、計画的に進める。不良債権
の直接償却を行う場合は、民事再生法や会社更生法等、法的整理や、「私的整理ガイド
ライン」に則った債権放棄を重視するとともに、必ず労働組合等が関与し、労働債権の
保護をはかる。
- 20 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(経 済 政 策)
(2) 政府は、金融機関の健全性強化と適正な事業運営を実現し、消費者利益を保護・向上さ
せるためのシステム・体制を構築する。
①すべての金融機関を一元的に検査・監督する行政システムを構築する。検査・監督機関
は、経営実態を一層的確に把握し、消費者にも納得できるルールを定めるとともに、機
動的な立入検査(考査)・監督等を確実かつ迅速に行い、問題発生を未然に防ぐ。検査
の結果、問題のある金融機関については、経営改善に向けた適切な措置を講じ、利用者
の被る損害や国民負担を極小化し早期再生をはかる。
②モラルリスクを排除し保険契約者間の公平な保険料分担を確保していく観点から、保険
犯罪対策法制を体系的に整備し、国・事業者の緊密な連携のもと、保険犯罪撲滅に向け
た啓蒙活動の充実や不正請求者に対する罰則強化等をはかる。
③地域金融機関の再編にあたっては、中小企業・地場産業への影響把握、顧客利便性の維
持、従業者の生活や地位の確保等を、十分配慮した上で、慎重に行う。
④金融機関の破綻処理にあたっては、当該金融機関の従業員の雇用に十分に配慮するとと
もに、労働債権を確保する。
⑤保険契約者保護については、経営破綻を未然に防ぐことを原則とし、消費者保護の観点
から、事業者負担を基本にセーフティネットとしての保険契約者保護制度の充実をはか
る。
⑥早期健全化法および金融機能強化法に基づく公的資金注入行に対して「経営健全化計画」
を遵守させるとともに、履行状況を確実に監督し、必要あるときは経営者退陣等の経営
責任、減資による株主責任を問う。また、
⑦金融機関の破綻懸念先以下債権への引当金に対する無税償却制度を導入する。
⑧「銀行等保有株式取得機構」を活用し、銀行が過度に保有する株式の軽減を進める。
⑨日銀は、「銀行保有株式買取り」などリスク資産の購入については、自らの財務健全性
に配慮しつつ行う。
(3)
政府は、アクティビスト的な投資ファンド( 注 5)の行動を規制するため、投資ファン
ドの透明性向上と課税強化等にむけた諸制度を整備する。
(4) 政府は、金融商品取引法施行後の運用状況を踏まえ、各種金融商品・サービスの性格、
中長期的な金融制度のあり方等を引き続き検討する。また、 新たな金融商品の出現に対応
できるよう、すべての金融商品・サービスを対象とした、包括的な日本版「金融サービス
法(仮称)」の将来的な制定をめざす。
(注 5) アクティビスト的な投資ファンド ~ 投資ファンドの定義は広範なものであるが、本「要求
と提言」でいう「アクティビスト的な投資ファンド」とは、企業経営の意思がないにもかかわら
ず、自己資金を上回る借り入れ等により資金調達を行い、株主至上主義を振りかざしながら、高
配当や株価つり上げだけを目的とする投資ファンドをさす。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(経 済 政 策)
<実現に向けた取り組み>
(1) 政府予算編成に向けて、各省庁の概算要求段階における協議・要請活動を強化し、連合
の政策要求・提言の反映に努める。重点政策については、適宜大衆行動を配置しながら、
検討段階での大臣交渉、政府案作成段階での政府・連合トップ会談などを通じて強力に進
めていく。
(2) 国会における予算案審議においては、各政党に対する協議・要請行動および委員への働
きかけを強化する。
(3) 政府に対して、不要不急の事業の精査や仕分けの実施、立法府内における「日本版GA
O」の設置等、政策の厳格・適正な評価を次年度以降の予算策定に反映させるよう要請す
る。
(4) 新成長戦略実現会議、金融審議会など、各種政府主催会議・審議会への積極的な参加を
通じて、連合の意見反映に努める。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
税
制
改
革
<背景と考え方>
(1) 政権交代を契機に、これまでの政権がなしえなかった税制改革が実現し、新自由主義的
な税制改正の流れが変わりつつある。2010 年度税制改正では、「所得控除から税額控除・
給付つき税額控除・手当へ」との考え方のもと、扶養控除等から子ども手当の創設・高校
の授業料実質無償化への振り替えや租特透明化法の制定等がおこなわれた。2011 年度税制
改正大綱には、相続税等の見直しによる税の所得再分配機能の回復や納税者権利憲章の策
定、社会保障・税の共通番号の導入にむけた道筋の明示等が盛り込まれている。
(2) 一方、めざすべき社会像やそのために必要な税制抜本改革の姿をいかに描くか、これか
らが正念場である。民主党は、2010 年 12 月に「税と社会保障の抜本改革調査会
中間整
理」をとりまとめ、政府も、2011 年半ばまでに社会保障と税と一体的改革を検討するとの
閣議決定を行い、野党へも協議参加を呼びかけている。連合は、2010 年 12 月にめざすべ
き社会像として「働くことを軸とする安心社会」を決定、それを具体化するものとして「新
21 世紀社会保障ビジョン」と「第 3 次税制改革基本大綱」の検討を進めている。われわれ
は、社会保障と税の一体改革に積極的に関与し、わが国経済社会の将来展望をきり開いて
いくことを求められている。
(3) 2012~2013 年度は、デフレ脱却・安定成長軌道への復帰を果たし、「働くことを軸とす
る安心社会」への道筋を描く重要な局面となる。連合は、「公平、連帯、納得」をキーワ
ードとして、税の財源調達能力の回復と再分配機能の強化を同時に実現する税制改革をは
かり、その財源を新成長戦略に資する経済政策や積極的社会保障政策等に集中的に投入す
る税財政の抜本改革の実現をめざす。具体的には、①「納得」を高めるための納税者の立
場に立ったわかりやすい税制の実現、②「公平」を高めるための税と社会保障を通じた所
得再分配機能の強化、③「連帯」を強め、少子高齢社会を支えあう税制、④地方分権とバ
ランスのとれた地方税財源改革(負担と給付を身近なところで実感・意見反映できる仕組
みづくり)、⑤経済と環境を両立させるための税制、⑥グローバル化への対応、⑦経済成
長と持続可能な財政基盤の確立等に取り組む。
(4) 税財政の抜本改革の推進は、政治と政府への信頼回復と国民的な議論・合意形成が必要
である。政府は、税金の使い道をわかりやすく国民に提示し、国民のニーズを踏まえた透
明でメリハリのある予算・決算を実現する必要がある。国民の側も、納税者意識を高め、
負担と給付のあり方を真剣に考えなければならない。連合は、納税者を組織する我が国最
大の組織として、勤労者の納税者意識を喚起し、民主主義の基盤を強化していく運動に取
り組む。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
<要求の項目>
1.政府は、納税者の立場に立ったわかりやすい税制を実現する。
(1) 納税者の目線から、納税者の権利と義務をわかりやすく明示した「納税者権利憲章(仮
称)」をつくる。
(2) 納税者意識を高めるとともに、納税者としての権利を確立するため、給与所得者に対し
ても、申告納税制度と年末調整制度との選択を認める。
(3) 税の使途や税に関する情報、債務残高等中央・地方双方の財政の実態、審議会等の公開
等、納税者に対する情報公開を徹底するとともに、税のもつ意義・目的や主権者たる納税
者(担税者:タックスペイヤー)の権利・義務についての租税教育を充実する。
(4) 納税者の権利を保障する観点から、国税の処分に対する不服申し立ては、現行の訴願前
置主義(原則として行政上の不服申し立てを経なければ、裁判所への訴訟ができない)を
基本としつつ、裁判所への直接訴訟の道も開き、選択可能とする。また、国税不服審判所
については、財務省・国税庁から切り離して第三者機関としての独立性を確保する。首席
審判官以上は、国会同意人事とする。
(5) 税務通達については、極力法令化し、通達行政の不透明性を是正する。また、税務関連
の命令・規則の設定・改廃については、可能な限り、行政手続法の意見提出手続(パブリ
ックコメント)等による国民からの意見聴取に努める。
(6) 所得再配分機能の回復・強化と安心と信頼の社会保障の実現の視点から、社会保障・税
共通の番号制度を導入する。
①番号制の早期導入にむけて、丁寧かつ集中的な議論を行い、国民にわかりやすい情報発
信を行う。
②利用範囲については、税務分野に加えて、年金分野(年金給付、国民年金の保険料減免等)
からスタートする。
③利用する番号については、住民票コードと対応させた新たな番号を付番する。
④目的外利用を禁止し、不正行為に罰則を設ける等法制上の措置を講じる。本人が自分の
情報へのアクセスを確認できるしくみとする。また、苦情処理、権利侵害に係る調査・
救済などの機能をもつ第三者機関を設置する。(P78~「福祉・社会保障政策」参照 P183~
「行政・司法改革」参照 )
⑤なお、法人についても、社会保険や法人登記との連携を含め、番号制度を整備する。
(7) 「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」と全自治体での「地方税電子申告サービス
(eLTAX)」の一層の普及をはかる。あわせて、利便性を高めるとともに、電子申告促進のた
めの税制上のメリットを与える。また、適正な税務執行をはかるため、徴税業務の効率化
をはかるとともに、必要な税務職員の人員数を確保し、その専門能力を高める。
(8) 報酬、料金等の支払調書について、本人への交付を義務づける。
(9) 記帳および総収入申告義務の強化、脱税等の違反に対する罰則強化、時効の延長、不正
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1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
申告や記帳義務違反者に対する推計課税制度、悪質な滞納に対する罰則創設等、公正な申
告納税が実現できる環境を整備する。各国と租税条約を締結し、租税に関する国際的な情
報交換・監視体制を整備し、租税回避を防止するとともに、司法・警察と連携し、マネー
ロンダリング等の犯罪撲滅にも役立てる。
(10)電子商取引について、取引の把握方法、国境を越える取引の課税の取り扱い等、国際的
な調和をはかりつつ、課税の仕組みの確立をはかる。
(11)公平な税制の構築に向けた実践的な研究を可能にするため、個人情報の保護を前提とし
て、国税庁が保有する税務統計の基礎情報を調査・研究目的に限って提供する制度を創設
する。また、租特透明化法にもとづく情報公開を着実に実施する。
(12)納税者の中軸を担っている労働者の意見を聞き、その生活実感をふまえた予算編成とす
るため、税財政の決定過程に労働者の代表を参画させる。
2.政府は、所得税を再構築し、所得再分配機能と財源調達機能を高める。
(1) 利子・配当、株式等譲渡益の分離課税制度を廃止し、資産性所得を含めて所得課税を総
合課税化する。政府が進める「金融所得課税の一体化」については、総合課税化を条件と
する。それまでの間は、金融所得にかかる税率を 30%に引き上げる。あわせて、租税回避
につながらないよう、必要な措置を講じる。
(2) 人的諸控除は、原則として所得控除方式から税額控除方式に切り替える。また、社会保
障給付で行うべき控除は社会保障給付に振り替える。
①基礎控除は、基礎税額控除に変える(所得税:3.8 万円
住民税:3.3 万円)。
②配偶者控除は、扶養税額控除に整理統合する。
③成年扶養控除は、扶養税額控除(所得税:3.8 万円/人
住民税:3.3 万円/人。平均所
得以下に対象を限定、ただし、障害等のため就労し独立した生計を維持することが困難
という特別な事情を有する人を扶養している場合は所得制限を設けずに適用する)に変
える。税収の増加分は、就労支援や子育て支援等の財源とする。
同居特別障害者加算は、障害者福祉手当の増額に振り替える。
④特定扶養控除は、扶養税額控除と教育費税額控除(新設:所得税:2.5 万円/人
住民
税:1.2 万円/人)に分割する。新設する教育費税額控除は、大学、専門学校等に通う
扶養者がいる場合、所得制限、年齢制限を設けずに適用する。
⑤平均所得(給与所得 400 万円程度)以下の層において、扶養者が扶養から外れる際に生
じる世帯での「手取りの逆転現象」を調整するため、現状の配偶者特別控除に準じた措
置を講じる。
⑥勤労学生控除、老人扶養親族控除(70 歳以上)、同居老親等加算、障害者控除、寡婦・
寡夫控除は税額控除に変える。
(3) 所得税の税率を 5%ずつ、最高税率から段階的に引き上げる。まず、現行税率 40%ブラ
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1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
ケットを 45%に、33%ブラケットを 38%に引き上げる。なお、5%のブラケット(税率適
用区分)を引き上げる際は、基礎税額控除を引き上げる(所得税:7.6 万円、住民税:6.6
万円)。
(4) 低所得雇用者の社会保険料・雇用保険料(労働者負担分)の半額に相当する金額を所得
税から控除する仕組み(勤労税額控除)を導入する。( 注 1)
(5) 課税最低限以下の層を中心に消費税の逆進性対策として、最低限の基礎的消費にかかる
消費税負担分を給付する制度(消費税税額控除)を導入する。( 注 1)
(6) 特定支出控除については、給与所得者の必要経費の実情に合わせて、職務上の慶弔費・
自動車関係費、能力開発のための費用、周辺機器を含めたパソコン購入費、通信費、書籍
購入費、労働組合費等を対象項目として追加・拡大する。(現行は通勤費、転任のための引
っ越し費用、研修費、資格取得費、単身赴任の帰宅旅費の 5 項目)
(7) 単身赴任者の帰宅旅費については、本人の必要経費であり、非課税とする。
(8) 年俸制や派遣労働の交通費について、通勤にかかる交通費実費は、納税者の申告にもと
づき非課税とする。
(9) 退職金控除は、働き方によって不利が生じないよう、勤続1年あたりの控除額を一律(年
60 万円)とする。
(10)医療費控除については、控除適用の下限額(10 万円または総所得額の 5%のいずれか低い
方)を堅持する。
(11)日本国内に住所を有しているが、職業上の理由により、1年の大半を日本で居住してい
ない者を「準居住者」とし、所得税・住民税の軽減をはかる。
(12)医師の社会保険診療報酬に係る特例(概算経費率による必要経費の計算特例)は廃止す
る。
(注 1)給付つき税額控除~ 給付つき税額控除とは、個人所得課税において税額控除を導入し、その控除
額が引ききれなかった場合に「負の所得税」を給付する仕組みである。「負の所得税」を給付する
ことで、課税最低限以下の層を含めた所得再分配が可能となる。
○「勤労税額控除」のイメージ
給与収入 65~200 万円で社会保険料・雇用保険料を負担している雇用労働者(約 1500 万人)に対し、社会保険料
・雇用保険料(給与の約 14%)の半額に相当する金額を所得税から控除する。給与収入 200 万円から徐々に低減
し、250 万円で消失する措置もあわせて講じる(対象者約 600 万人)。必要財源は、1.5~2 兆円程度を想定して
いる。
○「消費税税額控除」のイメージ
合計所得が課税最低限の人(4000 万人程度)に対し、扶養者数に応じて、最低限の基礎的消費にかかる消費税負
担相当分を定額で給付する。課税最低限の水準から徐々に低減し、消失する措置もあわせて講じる。必要財源は、
消費税収の 1 割弱程度を想定している。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
3.政府は、益税などの制度的な不備を早急に改善する。消費税を社会保障給付の安定財源とし
、段階的に引き上げる。
(1) 消費税の制度的な不備を早急に改善する。
①益税解消のため、税額控除方式は、現行の帳簿方式から税額票方式(インボイス方式)に変
更する。また、記帳義務も強化(記帳義務者の範囲の拡大、罰則の創設)する。
②簡易課税制度は、廃止する。
③法人の免税点は、廃止する。
④消費税の滞納防止のため、公共工事入札、備品調達の際にも納税証明書の添付を求める。
⑤消費税における二重課税については、解消する。また、印紙税の課税対象についても抜本的
に見直す。
⑥納税者が消費税を負担していることをきちんと理解できるものとし、さらに滞納防止のた
め、消費税の小売り段階での表示は「外税方式を原則」とする。また、内税方式の場合は、
価格表示や領収書において税額を明記する。
(2) 消費税を社会保障給付の安定財源とし、安定成長軌道に復帰後遅滞なく、段階的に引き上げ
る。
①消費税(国税)は、基礎年金、高齢者医療、介護、少子化対策(現物給付)に充当する。
基礎年金、高齢者医療、介護、少子化対策(現物給付)に今後必要となる給付費の増加・機
能強化に対応して、消費費税を段階的に引き上げる。
②地方消費税は、一般財源とし、地方における社会保障給付費の増加およびその機能強化等に
対応して、段階的に引き上げる。
(3) 消費税の逆進性緩和策として、低所得層に対する給付制度を導入する。
①課税最低限以下の層を中心に消費税の逆進性対策として、最低限の基礎的消費にかかる消費
税負担分を給付する制度(「消費税税額控除」)を導入する。軽減税率は、導入しない。
②社会保障・税の共通番号の導入を前提に、行政コストを考慮し、具体的な制度設計を行う。
あわせて、税務行政等の体制整備もはかる。
(4) 消費税納税額の圧縮を目的とした正規雇用から派遣・請負への置き換えを防止するため、派
遣労働、請負労働などの対価にかかる「消費税の仕入税額控除」について、そのあり方を見直
す。
4.政府は、相続税、土地税制等資産課税を強化する。
(1) 相続税は、資産の再分配機能、所得税の補完機能として、社会的に重要な制度として位置づ
ける。
①相続税の基礎控除を引き下げ、2,000 万円+400 万円×法定相続人数とする。なお、死亡保
険金の現行の相続税非課税限度額は維持する。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
②相続税および贈与税の最高税率を引き上げる等、累進性を高める税率構造の見直しを行う。
③小規模宅地等の課税特例(相続した住居に引き続き住み続ける場合、240 ㎡まで評価額を 80
%減額する措置)は継続する。事業承継税制は、現行制度を維持する。
④現行の相続時精算課税制度は、将来的には一生累積課税方式(生前贈与を一生にわたって累
積課税し、最終的には相続時に相続税と合わせて課税する方法)とする。
(2) 土地基本法の理念に沿って、保有課税を重視した土地税制の基本を堅持しつつ、譲渡にかか
る税は、土地の流動化が進みデフレが解消されるまで現行水準を維持する。
(3) 地価税は、性格・役割(資産課税や土地政策面)を踏まえて、その基本的枠組みを維持し、
地価の上昇率が2桁を超えるまで凍結を維持する。
(4) 土地等の譲渡に関する税制の簡素化や国税、地方税等の課税標準となる土地の評価のあり方
について検討する。コンパクトシティづくりの促進や市街化調整区域内の土地利用のあり方等
に留意しつつ、租税特別措置を総点検し、課税ベースを拡大する。また、住宅にかかる登録免
許税と不動産取得税のあり方について、簡素化、地方財源化する方向で検討する。
5.政府は、企業の社会的責任に見合った税・社会保険料の負担を課す。
(1) 法人企業の税・社会保険料負担をGDP比 1 割程度に段階的に引き上げる。
(2) 社会保険を原則すべての雇用者に適用する(ペイロールタックス化:支払い総賃金額をベー
スに保険料率を乗じる方式)。当面、適用基準を労働時間要件「2 分の 1(20 時間)以上」、
ないし年収要件「65 万円以上」(給与所得控除の最低保障額)として、いずれかの要件に該当
すれば、社会保険を適用する。なお、必要な経過措置を講じる。
(3) 法人税の租税特別措置および各種引当金、準備金については、ア)政策手段として税が適当か、
イ)政策目的達成のために効果的な措置であるか、ウ)その政策目的が現下の喫緊の政策課題に資
するものであるか、エ)利用実態が特定の者に偏っていないか、オ)創設後長期間にわたってい
ないかについて吟味し、不断の見直しをはかる。また、租特透明化法にそって情報公開を行う。
公表範囲について拡大する方向で検討する。
(4) 法人事業税における外形標準課税を原則すべての法人に適用する。中小企業については、雇
用安定控除の比率を引き上げる。
(5) 欠損金の繰り越し控除を控除前所得の 5 割に制限する。控除期間を 15 年程度に延長する。
(6) 中小企業の支援やディーセントワークを後押しする税制改革を行う。
①中小企業基本法にあわせる方向で、税法における中小企業の定義を見直す。
②中小法人に対する法人税の軽減税率を基本税率の 1/2 の水準とする。
③「雇用促進税制」について、政策効果等を検証し、より効果的な税制となるよう必要な見直
しを行う。中小企業に対する人材投資促進税制を復活させる。
④法定雇用率を上回って障がい者を雇用する企業、重度障がい者などを多数雇用している企業
に対して法人事業税を減税する
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1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
(7) 会社分割等企業組織再編に関わる税制措置は、リストラ支援税制とならないよう、適格組織
再編成の認定にあたって、従業員の引き継ぎ要件、事業継続の確認を厳正に行う。
(8) 企業の使途不明金への重課税、過大な役員報酬や交際費に対する課税を強化する。また、均
等割課税を導入する等、恒常化している赤字法人に対しても課税を行う。
(9) 有限責任事業組合(日本版LLP)制度については、損益算入や通算範囲に制限を設ける等、
出資者(法人・個人)が租税回避の手段として利用しないようにする。
(10)公益法人制度について、公益を担おうとする組織が使いやすい運用を行う。
①新たに創設される公益認定社団・財団法人に係る公益性の判定にあたっては、労働組合等の
果たす社会的影響力を幅広く認める。
②事業活動等に関わる規定は、持続的・安定的な運営ができるよう適正に適用する。
③小規模法人等の実態を踏まえ、提出書類等の簡略化など必要な見直しを行う。
(11)公益法人制度改革に関連する税制の見直しにあたっては、公益的な活動を行う法人(人格な
き社団を含む)に対する課税強化とならないようにする。
6.政府は、社会的課題に対応した公平で簡素な税制措置を行う。
(1) NPO法人等の活動を支援する措置を強化する。
①NPO法人に対する寄付金については、個人所得において、一定金額の範囲内で所得税
の 25%までを税額控除できる制度を創設する。
②NPO法人が行う介護サービス事業については、社会福祉法人の場合と同様、非課税と
する。
③NPO税制の公益性認定のあり方について、抜本的に見直す。
④NPO法人についても、一般社団法人と同様に基金制度(出資金を債務でなく資産に計
上できる仕組み)を使えるようにする。みなし寄付金の控除限度額についても、50%に
引き上げる。
⑤公益財団・社団法人についても、上記に準じた措置を講じる。
⑥各自治体において、NPOなど市民活動団体を支援するため、自分の納税する住民税の
一部について市町村を通じて寄附する仕組みを創設する。
⑦社会的責任投資に関する枠組みを整備し、税制上の措置も含め、普及・促進させる取り
組みを検討する。
(2) 住宅関連の負担軽減措置として、下記の措置を講じる。
①住宅取得に要した借入金がある場合は各年の返済金に係る利子相当額の、賃貸住宅に居
住している場合は支払い家賃額の、それぞれ 20%(上限は年 24 万円)を各年分の所得
税額から控除する、「家賃・ローン利子比例税額控除制度」を創設する。なお、対象は
所得 1,500 万円以下の個人とする。
②新築住宅にかかる固定資産税の軽減期間を 10 年に延長する。
- 29 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
③個人住宅における耐震やバリアフリー、省エネのための改修工事と長期優良住宅に対す
る促進税制について、内容を拡充し、期間を延長する。
④現行の「住宅ローン減税」適用者が家族帯同で転居を伴う転勤をする場合は、減税措置
を中断しないこととする。
⑤ 居住用財産の譲渡損失の繰越控除期間を 5 年に延長する。
(3) 財形貯蓄制度の維持・拡充をはかる。
①財形年金貯蓄および財形住宅貯蓄の利子非課税限度額(現行 550 万円)を 1,000 万円に
引き上げる。
②公的年金支給開始年齢が 65 歳となることに対応し、契約締結時 60 歳までの労働者を対
象とする。
③貯蓄額が利子非課税限度額を超えた場合の課税方法を、非課税貯蓄額を超えた部分のみ
に課税するよう改める。
(4) 国民が将来の不安に備え、社会保障でカバーできない部分について行う自助努力に対して、
税制での支援を積極的に拡充・改善する。そのため、遺族、年金、医療、介護の保障にかかる
各種保険料控除の維持・充実をはかる。
(5) 障害者雇用助成金、特定求職者雇用開発助成金等の益金不算入等、税制面から雇用拡大を支
援する。
(6) 雇用労働者の能力開発を促進させる観点から、研修・資格取得費用の負担を軽減する「自己
啓発税額控除」を検討する。
(7) 自動車関係諸税を軽減・簡素化する抜本改革を行う。
①自動車取得税を廃止する。
②自動車重量税を廃止し、自動車保有に関わる税のあり方を抜本的に見直し、軽減・簡素
化をはかる。税体系は、総合的に環境への負荷の要素を組み込んだものとし、物流・公
共交通機関(バス・タクシー・トラック)及び軽自動車に軽減措置を講じる方向で検討
する。
③走行段階の燃料課税については、いわゆる「暫定税率」を廃止した上で、道路等社会イ
ンフラの整備のための費用の分担、地球温暖化対策の視点等から、課税根拠、税率のあ
り方を検討する。
(8) 総合的な交通政策の視点から、物流・公共交通に対して、適切な税財政上の措置を講ず
る。
①インフラ整備や事業運営についての国・地方・事業者等の責任と役割を明確にし、総合
的な交通政策を推進に資するよう、税と予算のあり方を見直す。
②政策目的を踏まえ、固定資産や燃料に関わる税の軽減措置等を講ずる。
(9) 地球温暖化対策の一環として、政府が 2011 年度から導入を決定した温暖化対策税につい
ては、以下の観点から、政策効果、国民負担の動向などを検証し、改善をはかる。(P145
~「環境政策」参照 )
・導入にあたっては、自動車・エネルギー関係諸税の軽減・簡素化など既存税制の見直し
- 30 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
を行う。
・国民生活への影響に対する配慮と特定の産業・企業に過度な負担とならないよう現実的
な税制とする。
・化石燃料の最終消費段階で広く薄く負担をすることを基本とする。
・税収は、エネルギー対策、技術開発、森林吸収源対策等温暖化対策の強化に使用し、雇
用創出に結びつける。
・国内排出量取引制度等との二重の負担とならないよう調整する。
・原料用の石油・石炭等は引き続き非課税とする。
・物流・公共交通機関、農林漁業、石油化学産業等に負担軽減措置を講ずる。
・税負担の明示やCO2 の見える化をはかり意識喚起を行う。
(10)既存税制のグリーン化(環境への負荷を軽減するために政策誘導する税制)をはかる。
①エネルギー基本計画等を踏まえ、エネルギー需要構造改革推進投資促進税制やグリーン
投資減税等を総合的に見直す。
②住宅や家電等について、税制とエコポイント等の政策効果を検証し、より有効な組み合
わせを検討する。
③車体課税を中心に自動車関係諸税のグリーン化をはかる。
(11)既存の目的税・特定財源については、その目的に照らして、歳出内容を厳格に評価し、かつ、
その役割や税の負担割合についても評価した結果にしたがい、必要な見直し行なう。社会保障
に関して新たに目的税・特定財源を設ける場合は、その趣旨にそって適切に予算・決算管理を
行なう。
(12)労働債権を公租公課より優先するものとするため、国税徴収法第 19 条に「一般先取特権を
有する労働債権は国税より優先するものとする」ことを追加する。
(13)国際レベルで資金の投機的な動きを抑制するため、国際課税制度創設について、早期に国際
合意をはかる。その税収は、貧困撲滅等の財源として活用する。(P214~「国際政策」参照)
7.国と地方は、地方分権にふさわしい地方税・財政をめざして改革を行う。
(1) 地域による偏りが少なく安定的な地方税体系とする。
①所得税改革と歩調を合わせ、地方住民税の人的控除を所得控除から税額控除にかえる。
所得税の基礎税額控除の引き上げと歩調を合わせ、地方住民税の基礎税額控除(3.3 万
円→6.6 万円)と税率(10%→11%)を見直す。
②地方消費税は、一般財源とし、地方における社会保障給付費の増加およびその機能強化
等に対応して、段階的に引き上げる。
③地方法人特別譲与税の仕組みは廃止し、改正前に戻す。
④法人事業税における外形標準課税を原則すべての法人に適用する。中小企業については、
雇用安定控除の比率を引き上げる。
- 31 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(税 制 改 革)
(2) 財政調整機能と財源保障機能の両方を兼ね備えた地方交付税の仕組みと現行の交付税水準を
維持する。
①地方財政計画の仕組みを基本的に維持する。
②国と地方の協議の場等を活用し、地方財政計画の策定や地方交付税算定を行う等、決定
プロセスの透明化をはかる。
(3) 公共事業等に係わるひも付き補助金について、一括交付金化をはかる。地方にとって使い勝
手のよい制度となるよう、2011 年度の結果を検証し、仕組み等必要な見直しを行う。社会保障
や義務教育に係わる国庫補助負担金は、一括交付金化の対象としない。
(4) 住民の納得を得ながら行財政改革を進める。
①住民のニーズをふまえ、住民の立場に立った公共サービスとなるよう不断の見直しを行
う。それに伴う税負担等について情報発信し、租税教育を行う。
②地方行政に関わる情報を広く公開する。あわせて、住民が参加できる行政評価制度を導
入し、結果を公開する。
(5) 地方自治体の課税自主権の活用については、住民の行政参加を促し自治意識を高める観点か
ら、基本的には尊重する。ただし、新たな税を創設する際には、①地方自治体は、財政状況や
行・財政改革の計画を明らかにし、課税の必要性についての説明責任を果たす、②住民(法人
も含む)が参加して意見が反映できる機会を設ける、③既存の地方税との関係を整理する、こ
とを前提とする。
(6) 個人住民税における給与支払報告書の提出対象範囲の拡大にあたっては、年の途中に退職し
た者が翌年以降の納税に支障をきたさないよう、情報提供等の配慮を行う。
(7) 税法上の総所得が基準となる国民健康保険料等については、税法改正による連鎖的な負担増
とならないよう措置を講じる。同様に、総所得を基準として決定される自治体の補助金につい
ても、給付減とならないようにする。
(8) 法人事業税の診療報酬に対する非課税措置を見直す。
<実現に向けた取り組み>
(1) 政府・与党に対して、社会保障と税の一体改革について検討を行い、具体的な改革の姿と実
現に向けた工程表を示し、国民的な議論・合意形成をはかるよう働きかける。
(2) 税制改革全般について、与野党、関係府省への要請・政策協議を行い、勤労者の意見反映に
取り組む。
(3) 税制を通じた所得格差是正の重要性、不公平税制の是正、益税解消等に向けた消費税改革を
はじめとする諸課題について、学習会等を通じて組合員の理解促進をはかり、改革への世論喚
起に努める。
(4) 組合員の税に対する知識を深め、税は「とられるもの」ではなく「納めるもの」という納税
者意識を涵養することを目的として、地域・職場における「確定申告・還付申告の取り組み」
を展開する。
- 32 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
産
業
政
策
<背景と考え方>
(1) わが国経済は、1990 年代初頭のバブル崩壊後、失われた 10 年と言われた経済低迷期、
2002 年頃からの景気回復期を通じて、「地域間」「産業間」「企業規模間」「雇用・就労
形態による労働者間」など各分野ごとに格差の拡大・固定化が進んできた。2008 年秋のリ
ーマンショックを契機に世界金融危機が発生したが、その後の経済対策が不十分だったた
め、世界的にも回復基調にある現在、まだわが国のみデフレ基調からの脱却がはかられて
いない。この 20 年で疲弊し深刻な状況にある地方経済を活性化し、安定的経済成長と雇用
創出を図って、我が国経済を立て直すことが喫緊の課題である。
(2) 政府は、2009 年夏の政権交代を経て、2010 年 6 月に新成長戦略~「元気な日本」復活の
シナリオ~を策定した。これは、わが国が直面している少子高齢化や人口減少、国際競争
の激化に加え、新興国の台頭による世界的経済構造の変革に対応して、経済・財政・社会
保障の立て直しをはかるため、雇用政策と一体となった雇用創出・産業政策を進めるとし
ているものである。今後は、この成長戦略をいかに実現させるかが極めて重要であり、そ
のためには、国民的合意を得ながら計画を実現していく強い政治のリーダーシップと、政
策効果を定期的に検証し見直すための仕組み作りが必要とされる。
(3) 政府は、地域産業の活性化をはかるため、国内の生産や研究機関等、事業活動を支援す
る環境を整備し、国内企業の国際競争力を高めるとともに、地域の特性を活かしたまちづ
くりを推進し、知識・産業集積等による地域雇用の増大をはかる必要がある。また、こう
した取り組みを尚一層加速させる仕組みとしての総合特区については、過去の構造改革特
区制度や地域活性化政策の総括を踏まえた、早期の制度構築と利活用の推進が必要とされ
る。
(4) わが国産業は、知識と経験に裏打ちされた技術、技能、運用ノウハウなどが競争力の源
泉であり、これらを担う人材の確保・育成が至上命題となる。産業自体の持続性、安定性
を鑑みれば、ものづくりと人づくり重視の経済構造を指向すべきである。政府としてはま
ず、ものづくりにおいて、新規技術の開発・実用化、基盤技術の振興、技能・技術の伝承
等を確立すると共に、これら産業・企業を核として、地域社会と連携した経済構造を構築
することで、より一層の強化をはかることが重要である。さらには、こうした産業・企業
を支え、地域経済を担う、人づくりにおいて、より高度な社会的意識の獲得、年代ごとの
勤労観の形成、技術者・技能者の社会的評価システムの確立、技術教育の充実などを社会
システムとして確立しなければならない。同時に、労働政策面として、労働法等の周知徹
底と遵守、労災や職業病撲滅のため、職場環境の改善や労働条件全般の向上が必要である。
(5) 中小企業政策は、雇用政策と密接不可分にあることを、政府として十分認識しておく必
要がある。既に特徴的な技術を持っている、あるいは技術開発に努力している中小企業に
対し、金融面や技術開発、保有技術の保護、公正な取引慣行の確立などの支援策強化が求
- 33 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
められている。また、現在の中小企業支援施策は十分活用されていないことから、支援内
容の広報周知、各種申請手続きの簡素化、身近な場所の一カ所ですむ(ワンストップサー
ビス提供)体制の確立などが必要である。
(6) 政府は、研究・開発立国に活路を求めるための政策を用意しているが、金型をはじめと
する技術・技能やノウハウに対する正当な対価を保証する知的財産保護の仕組みを整備す
る必要がある。また、企業も従業員との間で、機密情報の管理や研究開発の成果に対する
権利関係を事前に整備することが求められる。中小企業では、取引関係の中で権利の主張
が難しいケースもみられるため、知的財産保護にも優越的な地位の濫用を防止する法的な
制度が必要である。
(7) 厳しい財政状況を背景に、公共サービスの効率化、コストダウンの要請が高まり、国や
地方自治体から民間事業への公共工事や委託事業等における低価格・低単価の契約・発注
が増大している。安値受注を可能にしている背景の一つには、元請けが下請け、孫請け、
労働者等に負担を強いている重層的な構造がある。格差、非正規雇用の拡大は社会問題化
しており、政府として、人件費が公契約に入札する企業間で競争の材料にされていること
を一掃し、公契約に労働基準条項を確実に盛り込ませる政策が必要である。
(8) 政府は、公正な取引と透明な市場の確立のための措置を講じているが、不当な値引き要
請や一方的な価格の押しつけ、協力金要求等取引関係における優越的地位の濫用が後を絶
たず、その実効性は十分とはいえない。今後もますます企業間取引の監視を強める政策が
求められる。不公正な取引の結果、労働者に過剰な負荷がかかっている事例の存在も指摘
されており、この観点からも不公正な契約関係の適正化に向けた政策が必要である。
(9) 2010 年 2 月 24 日、法務大臣から法制審議会に対し、「会社を取り巻く幅広い利害関係
者からの一層の信頼を確保する観点から、企業統治の在り方や親子会社に関する規律等を
見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい」との諮問がなされ、2010 年 4
月から会社法制部会での議論が開始されている。
(10)政府は、わが国の貿易・投資環境が他国に劣後すれば、将来の雇用機会の喪失に繋がる
として、新成長戦略のなかで、アジア諸国、新興国、欧米諸国や資源国等との経済関係の
深化を図り、将来に向けた成長・発展基盤を再構築するとしている。また、主要貿易国と
の高いレベルの経済連携協定の推進や、農業を始めとする国内産業の競争力強化に向けた
改革にも先行的に取り組むとしている。特に、2020 年を目標としたアジア太平洋自由貿易
圏(FTAAP)構築に向け、唯一交渉が開始されている環太平洋パートナーシップ(T
PP)協定について、情報収集しながら対応を進めるとしている。連合は、従来より経済
連携協定の締結にあたって、中核的労働基準の遵守条項や環境条項の組み込みなどの必要
性に言及しており、こうした条件を協定に盛り込むためにも、早期参画によるルール策定
が重要と考えている。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
<要求の項目>
1.政府は、新規産業・雇用を創出する経済構造改革を進める。また、新成長戦略の推進な
ど、産業政策と雇用政策を一体的に実施する。
(1) 新規産業・雇用を創出するために、新成長戦略に示された 21 項目の国家戦略プロジェク
トを中心として、国民生活にとって将来にわたり特に発展が求められる新技術開発分野(情
報通信、住宅、環境、電池、省・新エネ、福祉・医療、バイオ・ナノテクノロジー等)にお
いて、人材育成、技術開発、規制改革、予算・税制措置等官民の資源を集中投資する。ま
た、雇用の維持・創出にむけて、企業の国内立地促進と中小企業への対策として政府が策
定した「国内投資促進プログラム」を早期に実現する。
(2) 雇用創出を新規産業の育成策の目標に据えるとともに、産業や事業の再生にあたっては、
雇用の確保を第一義に政策を展開する。また、産業政策や関連する法律案の策定にあたっ
ては、経済合理性の視点に加え、雇用安定や労使協議を前提とした良好な労使関係を活用
できる内容とする。さらに、雇用保険制度の維持・強化、職業訓練の充実などセーフティ
ネットを強化する。
(3) 新規産業を創出するために、技術開発、研究開発を促し、成果を速やかに民間部門へ移
転させる。
①国家戦略プロジェクトなどの遂行にあたり、長期リスクマネー供給や、投資先への必要
な制度対応等、円滑に支援する。
②民間企業における技術開発や研究開発を支援するために、資金、税制、人材育成等の支
援策を講ずる。
③産学官の連携を強化し、技術移転を円滑化させるために、技術移転機関(TLO、 注 1)
を拡充するとともに、コーディネーター役の人材育成を推進する等より使いやすいもの
とする。また、TLOを通じて、企業に技術移転する特許の実用化をはかるために、特
許の価値評価の適切な実施や、実用化に向けた事業企画を募集するなどの積極策を講じ
る。
(4) 介護・福祉分野、農林水産業、教育等地域雇用の創出につながる分野を育成・活性化し、
そのために必要な環境整備を行う。
(5) 雇用創出量が大きく、経済波及効果も見込める観光産業については、新成長戦略で策定
された国家戦略プロジェクトを確実に推進する。
①観光案内所の増設、交通機関等での多言語表記、ICTを活用した多言語情報の提供等
ハード面の整備を進めるとともに、通訳案内士の養成等多言語人材の育成を推進する。
②観光政策に関連する省庁は多岐に亘ることから、観光立国推進本部と観光庁の連携を密
にすると共に、地域と連携した推進体制で取り組む。
(6) 知的財産・標準化戦略に基づき知的財産を有効活用し、技術立国としての地位確立をは
かる。
①ソフトウェアも含め、知的財産の評価・権利を確立し、不正使用の防止を徹底する。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
②特許市場の整備、特許審査期間の短縮化のための審査体制強化、裁判所の知的財産権紛
争処理体制の強化等、知的財産権制度の整備を行う。
③金型をはじめとする中小企業の技術が、特許・実用新案・著作権等知的財産権の枠組み
で保護されるよう法整備を進め、外国への特許出願に対する支援策を強化する。
(7) わが国産業の競争力強化のために、企業の国際標準獲得を支援する。
①多様化する国際標準化活動に的確に対処できる仕組み作りを推進する。
②国際標準の策定にあたっては、技術優位の確保に向けたイニシアチブを得るため、基礎
段階から産学との連携強化を積極的に推進する。
③認証の戦略的活用の促進に繋がる支援策を講じる。
(8) 営業秘密の保護に向けて、不正競争防止法の適正な運用をはかる。なお、労使協議にお
ける情報開示や労働者の権利が影響を受けることの無いよう、事業者に対し営業秘密管理
指針の周知・徹底を行う。
(注 1) 技術移転機関(TLO) ~Technology Licensing Organization の略称。大学の研究者の研究
成果を特許化し、それを民間企業等へ技術移転する法人であり、産と学の「仲介役」の役割を果た
すことを目的に設置される組織。
2.政府は、地域の持てる資源を見直し、地域の特性を活かしたまちづくりを推進すること
で、知識・産業集積等地域産業の活性化による地域雇用の増大をはかると共に、核とな
る企業への支援を行い、地域の連携を強化して、地域産業としての国際競争力を高める。
(1) 国内企業の国際競争力を高めるために、「安心」、「安全」、「エコロジー」をキーワ
ードとした産業・企業の変革を促すと共に、核となる企業への地域連携を主導するなど、
国内における生産や研究開発等、事業活動を支援する環境を整備する。
①地場にある資源見直しや産業の掘り起こしを行い、中核となる地場産業等の企業群を定
め、地域との連携を図り、関連企業の誘致・育成を進める。また、国や地方が企業を支
援する際は、対象企業が雇用環境の改善や地域社会に貢献する事を条件に加える。
②「良い消費者が良い商品を育てる」というわが国日本の特長を活かし、日本でしか作れ
ない、ものづくりにこだわった製品の品質、デザイン、性能や機能の高付加価値性を、
「メイド・イン・ジャパン(日本製)」ブランドとして世界に発信すると共に、政府の
トップセールスを実施する。
③地方自治体と連携し、海外の産業集積地の誘致策を研究し、企業ニーズにマッチするオ
ーダーメイド型の新しい企業誘致策を実施する。同時に、海外企業の誘致を積極的に進
める。
④日本を中心とした国際産業クラスター( 注 2)を構築するため、東アジア・ASEAN
との経済連携をはかり、関税負担の撤廃や技術認証の共通化等を進める。
(2) 地方自治体と連携し、地域の特性を活かした知識・産業集積を促進し、地域雇用の増大
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1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
をはかる。
①国および地方自治体が実施する支援等は、次の観点をふまえ、全国一律的な基準ではな
く、地方の特性・実態を活かしたものとする。
a)関係省庁・地方自治体は地域の各種セクターと連携し、支援等を使いやすいように整
理するとともに周知徹底をはかる
b)支援等の使途・事業年度は事業の特性に応じ柔軟に設定できるようにする
c)支援等の評価・検証は地域住民の理解を得られるよう情報開示を徹底する
②インキュベータ施設( 注 3)、賃貸工場、産学連携施設等、産業支援環境を整備する。
インキュベータ施設においては、地域産業との連携や施設を拠点とした多様な人的ネッ
トワークを生かしたビジネスマッチングを推進する。
③技術を評価し、企業に斡旋する等、コンサルティング能力、技術商社機能をもつNPO
の設立を地域で支援する。
④共同受注グループの活動を活性化させるため、共同受注時の契約書の雛型や権利関係を
まとめた指針を作成する。
⑤ベンチャー・ビジネスを支援するために、融資制度の拡充、地域プラットフォーム等創
業支援体制の拡充、技術開発の促進策の強化等の支援を行う。
⑥NPO・コミュニティビジネス等のいわゆる社会的企業( 注 4)に対する支援を拡充す
る。
(3) 地域の自立的な取り組みに基づいた特色ある地域の活性化並びにわが国全体の経済成長
に資する戦略的拠点としての総合特区について、制度の構築、及び指定・運営の推進をは
かる。
①過去の構造計画特区や地域活性化政策の総括を踏まえ、新たな法制化を含む具体的な制
度設計をはかる。
②地方自治体が、住民や労働組合等の幅広い意見を必ず聞き入れた上で構築し、真に雇用
創出や地域活性化に資するよう進める。
③特区の特例措置が、労働条件の悪化、企業倒産・失業増等に繋がらないよう制度設計に
おいて十分配慮すると共に、そうした状況に陥る恐れが生じた場合は、国・地方自治体
が責任をもってこれを廃止し、復旧させる。
(4) 地域を担うステークホルダーと連携をはかり、中心市街地の活性化に向けては、再開発
や大型施設の誘致等ハード事業に過度に依存することなく、地域固有の資源を活かしたソ
フト事業も重視した取り組みを行う。また、「中心市街地活性化協議会」においては、地
域の様々な主体・人材の参画や、基本計画への意見反映等、実効性を担保した組織・内容
とする。
(5) 地域経済を支える企業の事業再生、地方自治体が主体的に取り組む第三セクター改革を
支援するとともに、企業、公的セクター、地域関係者、労働組合等と十分な協議を踏まえ、
地域の面的再生への支援を行う。
(6) 雇用の安定・創出を実現するために、全都道府県に労使と連携し懇談会・研究会を設置
- 37 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
する。地域の労働組合代表が、地域の産業振興と雇用・労働条件の維持・安定等、地域活
性化策について、地方経済産業局はもとより、47 都道府県に設置されている中小企業再生
支援協議会と意見・情報交換を行う場を設ける。また、従来の産官学の連携に加え、地域
金融機関、地域の労働組合が参加する「産官学金労」が一体となって、地域雇用の創出、
新事業展開、技術開発等の地域産業活性化策を検討する場を設ける。
(注 2)産業クラスター ~ クラスターとは「ぶどうの房」の意。産業クラスターは、特定分野の関連企
業、大学等の関連機関等が地域で競争しつつ協力して相乗効果を生み出す状態を言う。
(注 3)インキュベータ施設 ~ 起業家精神を持つ事業家に、低廉な事務室・工場とともに資金・人材・
経営支援等を提供して、企業の立ち上げ・成長を助ける施設。事業の卵を孵化(インキュベート)
することに由来。
(注 4) 社会的企業 ~ 一般の民間企業と異なり、利益は追求するが、それを株主ではなく地域社会に還
元することを目的に設立された企業体。寄付や補助金に頼らずに事業活動で安定的な資金を集めて
いる。
3.政府は、わが国経済の根幹を担う人材の育成をはかる。
(1) 「ものづくり基盤技術基本計画」の着実な実行を確保するとともに、ものづくりの重要
性を認識し、実感できる初等・中等・高等教育の実施、さらには、生涯にわたる技術・技
能の修得・継承の促進・支援を通じ、国民の勤労観の確立を目指した、人材の育成をはか
る。
①ものづくり基盤技術振興基本法の実効性を確保するため、ものづくり技術・技能の継承
はもとより、世代に偏りのない技術・技能労働者の確保と人材の育成に向けて「基本計
画」を確実に実行する。また、子どもたちや若者が高度熟練技術・技能者に憧れを抱け
るよう、技術・技能評価制度の社会的認知の向上をはかる。さらに、現代の名工等の優
れた人材を社会が評価し活躍できる仕組みをつくる。
②「日本技術技能院(仮称)」を設立して、高度熟練技術・技能労働者に対する評価を高
める社会システムを確立するとともに、「日本技術技能院」は、日本の技能資格をベー
スとしたASEAN向けの技術・技能資格をはじめとする工業標準分野規格や日本版マ
イスター制度の実現に向けた研究を開始させる。
③ものづくりに関連する業種・職種における高度熟練技術・技能労働者を社会全体の財産
と位置づけ、社会的評価を向上させると共に、有効的な活用をはかる。
a)工業系高等学校での技術実習指導や中小企業における技術・技能伝承に対する技能者
派遣事業などへの助成強化。
b)ポリテクセンターや都道府県産業技術専門校、専門高校・高等専門学校・大学の学校
教育において、実践指導員や技能コンサルタントとして採用する。
- 38 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
c)ポリテクセンター・産業技術専門校の教育内容を精査するため、都道府県単位に政労
使三者構成の教育内容検討委員会を設置し、民間ニーズに対応した教育内容を実現す
る。
④若年労働者のものづくり現場への就業意識を高めるため、小学校・中学校段階からのも
のづくり教育の履修時間の拡大と内容を充実させるとともに、職場体験学習の機会を増
やす。また、高校・高専・短大・大学では、インターンシップを単位として認める制度
を普及させると同時に、専門高校・高専・大学の工学教育において、産業界の技術者等
の外部講師を積極的に活用する等、理論に偏らない実践カリキュラムを盛り込む。これ
らの施策を通じて勤労観の確立につながるよう努める。
(2) 産業・企業の発展に資する産業人材の育成のため、産学労と連携を図り、具体的な支援
策を講じる。
①技術や生産を含めた経営課題の処理にたけ、技術の価値を最大限に活用できる技術経営
(MOT( 注 5))人材を育成するために、実践的な技術経営プログラムを開発すると
ともに、企業経営者へのMOT教育の普及に努める。
②国際標準作成の専門家を養成するために、企業や大学の技術者の育成に努める。
③産業人材の確保・育成の観点から、職場等で求められる能力を明確化するとともに、産
官学連携等による人材育成に努める。
(3) 地域活性化に資するまちづくりを担う人材育成のため、地域を担うステークホルダーと
連携を図り、具体的な支援策を講じる。
①地域活性化策を進めるにあたって最大の課題となっている人材不足の打開に向けて、ま
ちづくりを担うリーダーを市民の中から登用するしくみづくりを進めるとともに、地域
リーダーに対する効果的な育成を行う。
②インキュベーションマネジャーの育成を強化し、地域産業を創造し活性化する人材の創
出を支援する。
③ベンチャー・ビジネスを支援するために、起業家のためのセミナーを開催する。
(注 5)MOT ~ イノベーションの創出を目的とするもので、新しい技術を取り入れながら事業を行う企
業・組織が、持続的発展のために、技術を含めて総合的に経営管理を行い、経済的価値を創出して
いくための戦略を立案・決定・実行すること。
4.政府は、自立した中小企業の基盤を確立し、独自の高度な技術と経営基盤の確立に向け
た支援を行う。
(1) 中小企業に対するサービスを一元化する窓口である中小企業支援センターの役割を拡充
し、中小企業向けサービスの向上に努める。
①資金、技術、特許、人材、受発注等中小企業の相談が一カ所で完結できるよう、ワンス
トップサービス化を実現できる体制を整える。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
②支援センター内に「中小企業総合情報センター」を設置し、中小企業に関する総合デー
タベースを構築する。中小企業の保有する技術・設備・製品の検索が行えるようネット
ワーク化を進める。
③海外企業からの受注を増大させるために、外国語に対応したデータベースを構築し、海
外からの問い合わせ、引き合い等を受け付ける窓口を設置する。
④地域の支援センターにおける各種セミナー等では、労働法制についての講座を開設し、
中小企業経営者の遵法精神を向上させる。
⑤支援センターの窓口対応時間の延長や休日開催を行う。
⑥支援センターが開催する弁護士・税理士等の専門家による相談会開催頻度を高めるとと
もに、専門家を企業に派遣する際の企業負担の低廉化を行う。
(2) 中小企業に対する高度な技術支援と生産基盤強化のため、産学官の共同研究を積極的に
推進し、国が持つ技術や特許権を有効に活用できるシステムを構築する。
(3) 中小企業の経営戦略確立のため、中小企業診断士や技術コンサルタントの指導を受ける
際の助成を行う。
(4) 中小企業退職金共済制度への加入促進と勤労者財形制度の普及・啓発を促進する。( P
56~「雇用・労働政策」参照)
(5) 一般の中小企業退職金共済制度では、「掛金納付期間が 1 年未満は支給なし(2 年未満
は掛金納付額を下回る)」となっているが、企業の倒産・廃業の場合には掛金相当額が受
給できるよう措置を講ずる。また、特定業種退職金共済制度においても、一般の中小企業
退職金共済制度と同様に「掛金納付期間が1年未満は支給なし」となるよう措置を講ずる。
( P56~ 「雇用・労働政策」参照 )
(6) 中小企業者による新卒者の採用を支援するため、ハローワークや、雇用・能力開発機構
等行政の外郭諸団体が積極的に採用会を開催する。さらには、業界団体・協同組合等が共
同採用会を開催する団体を支援する。
(7) 中小企業に対し、業務効率化による生産性の向上や、求人時における効果的な企業PR
が可能となるように、ICTの利活用を促進するための支援を行う。
5.政府は、労働者の意見反映システムの確立等を進め、健全な産業・企業体質の構築に向
けた支援を行う。
(1) 企業のCSR(企業の社会的責任)への取り組みを強化させるとともに、地域や消費者
も含めたすべてのステークホルダーに対して情報を公開させる。なお、取り組みにあたっ
ては、雇用・労働・人権・環境分野を重視するとともに、重要なステークホルダーである
労働組合や従業員の意見反映や利益確保が十分に行われるものとする。
①安全・安心で持続可能な社会の実現と組織の社会的責任の促進に向けた環境整備を実現
するため、政府は「社会的責任に関する円卓会議」の運営及び協働戦略の推進に対する
支援に努める。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
(2) 多様なステークホルダーの利益への配慮も含む企業統治や企業再編時の労働者保護を実
現するための会社法制を整備する。また、企業の不祥事や法令違反を抑止するために、監
査役・監査委員会の構成員に労働組合代表あるいは従業員代表を含める等、監査の機能お
よび権限の強化をはかる。なお、現行の株主代表訴訟制度については、ガバナンスを効か
せるために維持する。
(3) 投資ファンドや信託口を介した株式保有の増加に対応するため、上場企業が真の株主を
調査することのできる権利を創設する。
(4) 有価証券報告書上の「コーポレート・ガバナンスの状況」の項において、「企業行動規
範」・「コンプライアンス( 注 6)体制」についての記述を充実させ、企業の法令遵守確約
を徹底させる。悪質な不法行為があった企業に対しては、罰則を厳格に適用する。また、
非上場企業における決算公告制度の運用の徹底をはかる。
(5) 企業結合ガイドラインにおいて独禁法上の考慮要素に関する判断基準を明確化し、国際
競争の実態を踏まえた企業結合審査を行う。
(6) 日本版「シティ・コード」を策定し、企業買収時における交渉過程・内容の透明化をは
かるとともに、被買収企業の労働者代表に対して、買付文書に関する意見表明機会を担保
する。また、日本版「シティ・コード」の運用機関として、法的根拠を持った企業買収規
制専門機関を設置する。企業買収規制専門機関の構成員については、政府、金融機関、民
間企業、弁護士、労働組合等から受け入れる。
(7) 個人情報の保護をはかる際には以下の点に留意する。
①国、地方自治体は、個人情報取扱事業者等における実効ある個人情報保護を支援すると
ともに、個人情報保護状況の把握に努める。
②事業者に対し法・ガイドライン等に基づき、適切な指導・支援を行う。ただし、就業規
則等の改定を求める場合には、労使の十分な協議が前提であることに留意する。
③各省庁は、事業者に対する監督、指導等に関して、事業分野によって内容に過度な差異
が生じないよう連携・調整を行う。特に高度な安全管理措置が求められている分野につ
いては、現場の従業員に過剰な負荷がかかることによって、かえって消費者の利便性を
損なうことのないように、守るべき基準の明確化と不断の見直しを通じて実効性を確保
する。
(注 6)コンプライアンス ~組織の業務や組織が扱う財・サービスに関連する法令や企業倫理も含めた
規則全般を遵守する組織内活動。
6.政府は、ディーセントワークの実現のための公契約基本法、公契約条例の制定等国内法等の
整備および、ILO第 94 号条約の批准をはかる。また、国や地方による入札制度を改革する。
併せて公正な取引関係の実現に向けて、公正取引委員会の強化等を行う。
(1) 公契約(公共工事、サービス、物の調達など)に関する基本法を制定し、そのなかで公
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1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
正労働基準と労働関係法の遵守、社会保険の全面適用等を公契約の基準とする。法整備を
はかることにより、ILO第 94 号条約の批准をはかる。また、違反企業に対する発注の取
り消しや違約金の納付制度等のシステムづくりを進めるとともに、発注者の責任も明確に
する。
①「公共工事の入札および契約の適正化促進に関する法律」等、公契約に関する現行法に
関し、公正労働基準と労働関係法の遵守を盛り込む法改正を行う。労働基準法等の労働
法制に違反した企業を、発注対象から除外する条項を設ける。
②予算決算および会計令、地方自治法施行令を改正して、公共工事等の入札における透明
性確保、ダンピング受注に歯止めをかけるための措置を講ずる。
③努力義務として位置づけられている「予定価格と積算内訳」や「低入札価格調査の基準
価格と最低価格」等の情報開示を、法的に義務づける。
④各自治体においては、「公契約条例」を制定する。また、自治体の工事や業務委託の入
札・契約にかかわる条例や要綱等に、労働基準法等の労働法制や社会保障関連法規に違
反した企業を、発注対象から除外する項目を設けるとともに、発注者の責任も明確にす
る。
⑤ILO第 94 号条約(公契約における労働条項)の批准をはかる。
(2) 国や地方自治体による公共工事や公共調達等の入札にあたっては、透明性確保のための
措置を講ずる。公契約において、公正労働基準の確保、環境や福祉、男女平等参画、安全
衛生等社会的価値も併せて評価する総合評価方式の導入を促進する。
①公共事業等の入札において、労働条件等を含めた総合評価方式の導入を促進する。また、
その際は、明確な評価基準を設定する。( P183~「行政・司法改革」参照 )
②ダンピング受注の判断基準を明確に定める。発注機関において受発注者間で取り交わさ
れる契約には対象範囲を明記し、各々の責任範囲を明確にする。
(3) 国や地方自治体による公共工事の発注にあたっては、労働条件、安全衛生および品質を
確保する観点から適切な工期を設定する。
(4) 優越的地位の濫用を防止し公正な取引と透明な市場を確立するため、独占禁止法、下請
法を強化するとともに、公正取引委員会の体制および権限の強化、企業への周知徹底等に
より法の実効性を高める。
①公正取引委員会や関係省庁担当部門の人員を拡充し、機能・体制の強化をはかる。
②独占禁止法の課徴金強化をはかるとともに、課徴金の対象を優越的地位の濫用、不当廉
売、差別的対価等「不公平な取引」まで広げる。また下請法(下請代金支払遅延等防止
法)については、資本金区分による適用を除外し全取引を対象とするとともに、銀行等
の金融機関による信用供与も対象とする。
③「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(ガイドライン)の周知徹底をは
かる。また下請法(下請代金支払遅延等防止法)については、資本金区分による適用を
廃止し全取引を対象とするとともに、銀行等の金融機関による信用供与も対象とする。
「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」の拡充をはかるとともに、下請法やガ
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1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
イドライン等を周知徹底させる。
④下請企業からの情報提供・申告等に対し親企業からの報復措置をなくすシステムを設け
る。また、単価の過度な水準引き下げ要求に対し、商取引における一定の規制を設ける
ことを検討する。
⑤知的財産についても優越的な地位の濫用を防止する法制度を整備する。
⑥労働基準関係法令違反の背景にいわゆる下請いじめがある場合の、労働基準監督機関か
ら公正取引委員会・経済産業省への通報制度である「中小企業における労働条件の確保
・改善に関する公正取引委員会・経済産業省との通報制度( 注 7)」について、関係者
への周知を図る。
(5) 地方自治体の公共工事において、建築工事と設備工事の「分離発注方式」を徹底させる。
(6) 国や地方自治体におけるソフトウェア、アプリケーション開発の入札では、必要な工数
(人日)に人件費を積算させたものに加え、著作権の帰属のあり方も含めた知的財産として
の価値を付加して価格決定がされるよう制度を改革する。
(7) 改正官製談合防止法を適切に運用し、談合根絶に向けたさらなる改正や天下り規制の強
化を行う。( P183~「行政・司法改革」参照 )
(8) 国際的な経済活動における外国公務員に対する贈賄の防止のため、国外における捜査体
制を強化する。
(注 7)中小企業における労働条件の確保・改善に関する公正取引委員会・経済産業省との通
報制度 ~労働基準監督機関による監督指導の結果、労働基準法違反(賃金不払)などが認められ、
違反の背景に親事業者による下請法第 4 条違反行為(下請代金の減額・短納期発注・不当なやりな
おしなど)が存在しているおそれがある場合、下請事業者の意向を踏まえつつ、かつ、秘密保持に
万全を期した上で、労働基準監督機関から公正取引委員会又は経済産業省(地方経済産業局)に当
該事案を通報する制度。
7.政府は、 公正・透明・自由な国際経済活動の発展を促すとともに、貿易協定に、労働、環
境等社会条項を入れるべく見直しをはかる。また、新規案件については、早期に参入を表明
し、ルール作りから参画するよう努める。
(1) 国際経済活動については、WTOの理念である公正・透明・自由な多角的貿易体制の構
築を念頭に、より質の高いFTA/EPA締結に向けて努力する。また、FTA/EPA
に、労働基本権の保証、環境条項等社会条項の組み込みに努める。
(2) FTA/EPAについては、自由で多角的貿易を促すWTOの理念を念頭とした内容と
なるよう努めるものとし、他国を排除することなく、自由・公正・透明な世界経済活動の
交流を拡大し、各国労働者の生活を改善し、ILOにおける労働基本権をはじめとする中
核的労働基準の遵守を確立するものとする。
①当該国にとって、持続可能な経済発展、国民生活や雇用の改善、環境保護、安全・健康
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1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
の向上等を促すものとする。
②労働基本権の確保、労働者の雇用の安定と創出、公正労働基準の確保が、必ず実施され
るものとする。
③当該国の労使関係の慣行(労使協議等)を尊重したものとする。
④労働分野については、当然、ILOの中核的労働基準やOECDの多国籍企業ガイドラ
インを遵守する。
⑤労働者の移動については、当該両国における雇用との調和と国民的合意を原則とする。
(3) 地域レベル、二国間のFTA締結に向けた共同研究会に労働組合代表を含める。また、
「アジア版OECD」の構想においては、OECD本部における労使の参画を踏まえ、労
働組合との協議を制度化する。
(4) 外国の不当な安値攻勢や知的所有権の侵害等の不公正貿易に対しては、アンチ・ダンピ
ング措置の発動を含め厳正に対処する。また、市場の混乱をもたらす急激な輸入の増大に
対しては、協定の範囲内でのセーフガード措置の機動的な発動を行う。
(5) 国際協定の規定を遵守させるため、各国に公労使三者が参加した委員会を設置し、違反
事例の解消をはかる。
<実現に向けた取り組み>
(1) 産業政策と雇用政策が一体的に行われるよう、政府予算編成時に雇用創出量を明示する
よう求める。また、政府の施策に対しては、新成長戦略実現会議や関係審議会等において
雇用が確保されるように積極的な意見反映に努める。
(2) 各都道府県においても、予算策定時の雇用創出量の明示を求めるとともに、地域産業の
活性化、雇用の安定・創出を検討・実行するために、政労使による懇談会・研究会の設置
を求めると共に、既に、設置された会議において積極的な意見反映に努める。
(3) 産業・事業の再生にあたって、不当な解雇や労働条件の変更が行われないよう監視を行
うとともに、連合の各労働相談窓口へ関連法規の周知を徹底する。
(4) すべての労働組合は、職場の安全衛生の確保、製品・サービスの安全性確保と事故防止、
企業の社会的公正ルール遵守のために、労使協議制の再構築、安全衛生委員会の定期開催
の確実な実施、環境保全・公正取引等企業行動のチェック活動の実施等に取り組み、その
社会的責任を果たす。
(5) 組織の社会的責任に関する国際規格(ISO26000:2010 年 11 月 1 日発行)については、
内容を正確に反映した国内規格を早期に策定するよう関係者に要請していく。また、職場
での普及策等については、政策委員会の下で引き続き検討していく。
(6) 関係審議会の労働側委員との連携をはかり意見反映に努めるとともに、各政党との政策
協議および組織内議員懇談会の関係議員との協議等により、要求実現への取り組みを強め
る。
(7) 中小労働委員会や政策委員会等の活動および構成組織・地方連合会の意見交換・連携を
活発化し、政策立案ならびに実現の取り組みを強める。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(産 業 政 策)
(8) 構成組織では、産業別労使懇談会の活用や各種会議等で格差是正の運動課題、政策課題
についての研修・提言の取り組みを行い、実現をはかる。
(9) 連合本部では、公契約基本法制定の実現に向けた取り組みを行う。地方連合会では、公
契約条例の制定に向けて、自治体への働きかけや地域住民・組合員への理解活動に取り組
む。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
資 源 ・ エ ネ ル ギ ー 政 策
<背景と考え方>
(1) 金融・経済危機により、2009 年の世界のエネルギー消費量は一時的に減少したものの、
長期的には増加を続けると予想されている。特に、中国やインドなどアジアの新興国や中
東諸国における需要増加が見込まれ、各地で台頭する資源ナショナリズムと相まって、世
界規模で激しい資源・エネルギー獲得競争が起こることが予想される。資源・エネルギー
の多くを輸入に頼らざる得ない日本においては、量と価格の両面で資源安全保障・エネル
ギー安全保障(Energy security)の重要性が増している。
(2) 政府は、2009 年 12 月のCOP15 におけるコペンハーゲン合意に基づき、2010 年 1 月
26 日に「すべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築及び意欲的な目標
の合意」を前提として、2020 年の温室効果ガス排出量を 1990 年比で 25% 削減する目標
を国連に提出した。また、2010 年 12 月のCOP16 では、「コペンハーゲン合意」の下に
先進国と途上国が自主目標で温室効果ガス排出削減に取り組み、先進国だけでなく途上国
も国際検証を受けるなどとする「COP決定」ならびに京都議定書の第一約束期間と第二
約束期間の「空白期間」を避けるための早期の交渉妥結を盛り込んだ「CMP決定」から
なる「カンクン合意」が採択された。COP17 を始めとした今後の国際交渉を強化すると
ともに、環境保全(Environmental protection)と整合の取れたエネルギー政策に取り組
んでいく必要がある。
(3) 1990 年代初頭のバブル崩壊以来、日本経済は 20 年にわたり低迷を続けており、労働者
の雇用・労働条件も厳しい状況が続いている。しかし、日本はエネルギー資源が少ない中
で磨いてきた省エネ化・高効率化などの世界最高レベルの環境技術を有している。そして、
こうした強みを適切に活用することで、経済成長(Economic growth)を達成し、労働者の
雇用・労働条件の改善に繋げていくことが求められている。
(4) 政府は、2010 年 6 月 18 日に新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。本計画で
は、基本的視点としてエネルギー政策の基本である 3E(エネルギーセキュリティ、温暖化
対策、効率的な供給)に加え、エネルギーを基軸とした経済成長の実現と、エネルギー産
業構造改革を新たに追加している。また、2030 年に向けた目標として、①エネルギー自給
率及び化石燃料の自主開発比率を倍増、自主エネルギー比率を現状の 38%から 70%程度ま
で向上、②ゼロ・エミッション電源比率を現状の 34%から約 70%に引き上げ、③「暮らし」
(家庭部門)のCO2 を半減、④産業部門での世界最高のエネルギー利用効率の維持・強
化、⑤我が国企業群のエネルギー製品等が国際市場でトップシェア獲得などを掲げている。
(5) わが国のエネルギー需要( 消費)は、2008 年度は景気悪化によって対前年度比 6.7%減
少したものの、80 年代前半からほぼ一貫して増加している( 1973→ 2008 年度の伸び:
産業部門 0.9 倍、民生部門: 2.5 倍、運輸部門: 1.9 倍)。2008 年度の各部門のエネル
ギー消費に占める割合は、産業部門:42.6%
- 46 -
民生部門:33.8%
運輸部門:23.6%であ
1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
り、一次エネルギー国内供給の構成割合は石油:41.9%
%
原子力:10.4%
水力:3.1%
石炭:22.8%
天然ガス:18.6
新エネルギー・地熱等:3.1%となっている。
(6) 2011 年 3 月に発生した東北地方太平洋沖地震と津波により、東京電力福島第一原子力発
電所において爆発および放射性物質の漏えいなどが発生した。本震災により、地震のみな
らず、津波まで含めた設計基準や防災体制が必要なことが明らかになった。原子力発電に
ついては、これらの事故などを教訓とした安全管理体制の再構築や徹底した高経年化対策
を行い、適切な安全規制の審査・検査を実施し、国民の信頼回復に努めていかなければな
らない。
(7) 2011 年 3 月の東北地方太平洋沖地震と津波により発電所や流通設備等が大きな被害を受
け、安定した電気の供給が困難になったため、東京電力管内では、3 月 14 日以降、地域ご
との計画的な停電が実施されている。また、東北電力管内でも計画停電が計画されている。
これに対し、首都圏を中心に大規模な節電活動が行われているものの、発電所の復旧には
相当の時間を要することが想定されるため、今後は、計画停電が長期に亘る場合の国民生
活や経済活動への影響を軽減する対策が求められている
(8) 原子力施設や核物質の防護を巡っては、国際的なテロ脅威の高まり等を受けて、治安情
勢が悪化していることから、2005 年に原子炉等規制法が改正され、核物質防護対策のレベ
ルは国際水準並みに強化された。今後はさらなるテロ対策強化の観点から、原子力施設の
みならずエネルギーインフラ施設の強化対象を拡大する必要がある。
< 東日本 大震 災を踏 まえた 当面 の取り 扱い>
○現在、東 日本大 震災(東北 地方太 平洋沖 地震 とそれに 伴う津 波)によ り、福島原 子力
発電所に おいて 放射性 物質の 拡散を 含む深 刻な 事態が生 じてい る。ま ずは 、政府 に現
状の打開 へ向け たあら ゆる対 策の実 施と被 害者 の適切な 救済を 求めて いく。
○「2012~2013 年 度 政 策・制度 要求 と提言( 資源・エネ ルギー 政策)」およ びその 改
定にあた って基 礎とし た「エネ ルギー 政策に 対 する連合 の考え 方」は、①エネ ルギー
のベスト ミック スの推 進、② エネル ギー政 策に おける国 の主体 的役割 の発揮 、③化 石
エネルギ ーの高 度利用 の推進 、④よ り高度 な安 全確保体 制の確 立と地 域住民 の理解 ・
合意等を 大前提 とした 原子力 発電所 の高経 年化 対策、設備利 用率向 上およ び一定 の新
増設、⑤再 生可能 エネル ギーの 比率拡 大、⑥グ リーン・ジ ョブ戦 略の推 進を柱 とする
ものであ った。
○連合は 、この たびの 原子力 発電所 事故を 受け 、これら の政策 の総点 検・見 直しを 行う。
総点検・見 直しの 開始時 期は、東京電 力が示し た事故収 束に向 けた工 程表(2011 年 4
月 17 日「福 島第一 原子力 発電所 ・事故 の収束 に向けた 道筋」 )の進 捗状況 などを 踏
まえて定 める。
○それま での間 、原子 力エネ ルギー に関す る連 合の政策 につい ては、より高 度な安 全確
保体制の 確立、地 域住民 の理解・合意と いう前 提条件が 確保さ れ難い 状況に 鑑み、凍
結する。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
<要求の項目>
1.資源・エネルギー政策全般に関する国の役割・責任を強化し、長期的な資源・エネルギ
ー安全保障を確立する。
(1)
政府は、多様なエネルギー調達先を確保しつつ、自給(再生)可能エネルギー(太陽光、
風力、水力、地熱、太陽熱、非食用バイオマス等)の導入・普及、省エネルギー技術(高
効率利用技術)の開発・普及を図るなど、エネルギー自給率の向上をめざす。
(2) 政府は、エネルギーのベストミックス( 注 1)に基づき、多様なエネルギーの組み合わせ
について都度最適なあり方を判断・決定する。
(3) 政府は、資源・エネルギー政策全般に関する国の役割・責任を強化する。
①資源・エネルギー政策全般を国家戦略として推進する意思を明示する。
②国・地方自治体と事業者の役割を明確にしつつ、より高度な安全確保体制や利用技術の
確立、国民・住民への理解活動と合意形成に積極的な役割・責任を果たす。
(4) 政府は、原子力施設のみならず、火力発電所、送変電設備、ガス施設、製油所等の主要
なエネルギーインフラ施設の安全対策および大規模災害時におけるライフライン確保・国
民生活の安定化策を強化する。
(5) 政府は、改めてわが国における資源・エネルギー外交の基軸を固め、資源・エネルギー
の長期安定確保・供給の実現に向けて主体的役割を果たす。
①資源供給国との関係強化および海外資源の自主開発・共同開発の拡大に積極的に関与す
る。
②資源・エネルギー供給変動や価格乱高下に備え、国家備蓄の充実および放出態勢・基準
を整備する。
③産油国との関係強化、中東依存度低下、油田の効率的資産買収、石油の安定供給に努め
るとともに、石油価格や輸入量の変動に対応できる体制づくりをめざす。また、独立行
政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」の透明・公正な支援・連携によって、自主
開発体制の強化をはかるとともに、国内資本により透明かつ効率的な運営を行う。
④LNG・LPガスの安定供給確保に向けて、輸入先の分散化と産出国との関係強化に向
けた積極的な資源外交、シェールガス( 注 2)などの非在来型ガスの権益確保ならびに
調達手段の多様化に資する取り組みへの支援、技術開発などに努める。また、LPガス
については国家備蓄目標の早期達成と制度の確立をはかる。
⑤海外産炭国への生産・保安技術協力を通じて海外炭の安定確保をはかり、石炭の安定供給
を確保する。
⑥ウラン鉱山の権益取得も含め、ウラン燃料の安定供給を確保する。
⑦希少金属(レアメタル)、希土類(レアアース)を含めた希少資源の安定調達・供給に
向けて、供給国との関係強化、供給源の多様化など、官民が一体となった総合的かつ戦
略的な取り組みを行う。
⑧希少資源については、いわゆる「都市鉱山」のリサイクルの事業環境整備・技術開発の
- 48 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
促進および代替原材料の開発を進める。
⑨希少金属の海外流出抑制のための制度を創設する。
⑩資源・エネルギー輸送の安定・安全性確保のため、日本籍船舶と日本人船員の確保や海
上輸送ルートの治安改善に向けた国際的な連携・協力等、必要な措置を講じる。( P131
~「交通・運輸政策」参照 )
⑪国内炭鉱閉山後の地域活性化、雇用機会増を実現する。
⑫国内休廃止鉱山の管理については、地域住民の健康保護と環境保全の観点から、助成制
度等による国の支援を強化する。
(6) 政府は、電力、ガス、石油、石炭の安定供給・利用技術開発などをはかる。
①各電源の持つ特性や経済性、立地バランス、需要動向等を考慮して、分散型電源の活用
促進等の施策を行い、最適かつ柔軟な電源構成の確立をめざす。
②電力負荷平準化対策は、電力の安定供給や省エネルギー、CO2 排出抑制に資するもの
であり、蓄熱式空調システム等夜間電力の有効利用等を推進する。
③環境負荷の軽減、ガスの効率的供給を進める観点で、都市ガスのガス種については天然
ガスへの統一を進め、国内パイプライン網を整備し、天然ガスの利用促進をはかる。ま
た、ガス冷房の普及拡大や多様な料金メニューの設定等による季節間・昼夜間の需要の
平準化、保安の強化等を促進しながら、安定供給に努める。
④即時代替困難な石油の活用にあたっては、CO2 削減に向けたさらなる省エネルギー・
効率化の取り組みを推進する。
⑤離島・極端な過疎地においても石油エネルギーのサプライチェーンが維持されるよう努
める。
(7) 政府は、将来にわたって資源を確保していくため、近海を含めて、開発可能な国内資源
の調査・開発を進める。また、海外資源の国際共同調査・開発への支援を強化する。
(8) 政府は、電力・ガス事業の自由化を進めるにあたっては、安定供給・安全確保を前提と
する。
①電力・ガス事業の自由化範囲拡大については、国民各層の意見を踏まえ、消費者の総合
的利益や、すべての産業の競争力強化を考慮して十分な検証を行い、段階的に進める。
また、エネルギー安全保障、安定供給、保安の確保、ユニバーサルサービスを前提とす
る効率的な供給体制が構築・維持されるよう、必要に応じて改善策を講じる。
②自由化の進展にともなう事業者の過度なコスト削減等により、安定供給や、労働者、地
域住民および消費者の安全が損なわれないように、安全性の維持向上に努める。
③エネルギー価格の適正水準の維持に加え、低価格化に向けた事業者の努力を促すため、
設備投資等にかかる過度な規制等は、安定供給と安全確保を前提として緩和する。
④「適正な電力取引についての指針」および「適正なガス取引についての指針」等の運用
を通じて、エネルギー市場における公平かつ公正な競争を確保する。
(注 1)エネルギーのベストミックス~ 化石エネルギー、原子力エネルギーおよび再生可能エネルギー
- 49 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
の特性、社会的要請、経済環境、関連技術の進展などを踏まえ、多様なエネルギーの組み合わせに
ついて、雇用の安定・確保や産業の健全な発展に配慮しつつ、幅広い国民の対話と合意形成により、
都度最適なあり方を判断・決定する考え方とスキーム。
(注 2)シェールガス~ 泥岩に含まれる天然ガス。貯留層が砂岩ではなく、頁岩(シェール)に含まれる
ことから、シェールガスと呼ばれる。シェールガスの原始埋蔵量は極めて大きいと推定されている。
2.グリーン・ジョブ戦略の推進を通じて「世界全体の排出削減」と「雇用の安定・創出」
が両立した地球温暖化対策を進める。
(1) 省エネルギー技術(高効率利用技術)、革新的なエネルギー高度利用技術および再生可
能エネルギー( 注 3)の利用技術等における世界トップレベルの技術開発とその普及による
関連産業の振興と新規雇用の創出に向けて総合的戦略を展開する。特に、低炭素社会への
移行に伴う経済・社会情勢の変化が雇用に悪影響を与えないよう必要な対策(「公正な移
行」)を講じる。
(2) 国および企業は、温室効果ガス排出量の削減のため、両輪となって再生可能エネルギー
(太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、非食用バイオマス等)の革新的利用技術(高効率
化、低コスト化、インフラ整備、各種助成等)の開発、普及を図り、エネルギー供給に占
める比率拡大をめざす。
①公共施設に太陽電池、蓄電池、燃料電池の設置を義務づけるとともに、民間事業者・個
人における設置に対する支援を拡充する。
②電気事業者における固定価格買取り制度等、エネルギー供給事業者に対する再生可能エ
ネルギーの導入促進策を拡充する。
③再生可能エネルギーによる電力の大幅な変動が送電・配電系統に悪影響を及ぼさないよ
うにするため、蓄電池や分散型電源・既存電源などの一体的・効率的運用による系統制
御をはじめ、スマートグリッドなどICTによる先端技術を駆使した次世代送配電シス
テムの確立を支援する。
④風力発電は、さらなる低コスト化、高効率化の技術開発をはかるとともに、立地地域選
定にあたっては、地域住民との合意形成に努め、海岸部、その他立地可能な場所につい
て選択肢の拡大をはかる。
⑤燃料電池は、クリーンエネルギーであると同時に、分散型電源の普及や産業活性化にも
寄与するため、さらなる技術開発を進めるとともに、安全性・耐久性等の技術基準を整備
して可能な限り前倒しで広く本格導入を行う。また、家庭用定置型燃料電池の普及促進
のために、補助金を拡充する。
⑥水素社会に向けた水素供給源・供給設備に関する技術開発やインフラ整備、必要な規制
の見直しを進める。
⑦バイオエタノールについては、世界的な食料需給問題や森林伐採問題とのバランスを十
分踏まえたうえで、石油代替燃料としての利用技術の開発や普及促進を行う。
- 50 -
1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
⑧太陽熱利用、廃棄物熱利用、天然ガスコージェネレーション、クリーンエネルギー自動
車、マイクロ水力等についても、技術開発や普及促進のための積極的な政府支援を行う。
また、地熱利用は、引き続き効率性・経済性向上をめざし、技術開発をはかる。
⑨河川水・海水・生活排水等からの熱等、未利用エネルギー活用の研究・技術開発を進める。
また、GTL( 注 4)やDME( 注 5)は環境面に優れた新たな形態の燃料として期待さ
れていることから、その開発・導入を進める。
(3) 政府は、CO2 削減をはじめとする環境問題への対応として、化石エネルギーから環境
負荷の小さいエネルギーへのシフトを進める。一方、化石エネルギーは、安定供給の確保
や経済性などの観点から、将来的にも主要エネルギー源の1つであることに変わりはなく、
今後は、化石エネルギーの高度利用を進める。
①化石エネルギーの高効率利用(IGCC(石炭ガス化複合発電)、高効率天然ガス火力
発電、家庭用燃料電池等)、石油・石炭よりも環境負荷の小さい天然ガスの利用拡大を
進める。
②環境に配慮した石炭利用の技術(クリーンコールテクノロジー)開発に努める。
③CO2 回収・貯留(CCS)に係る技術の開発・普及をめざす。
④天然ガスの利用度を高めるためのパイプライン網整備への支援、パイプライン敷設コス
トの低減策(安全確保を前提とした敷設に係る規制緩和等)を講じる。
⑤メタンハイドレートは、日本の排他的経済水域内に豊富に存在していると推定される貴
重な国産資源である。メタンガスを安定的に取り出す技術や、空気中への大量のメタン
ガス放出を防ぐ技術が未だ確立していないことから、将来の商業資源化に向けて積極的
に調査研究を進める。
(4) 政府は、エネルギー問題と地球環境問題との両立に際しては、「規制的手法」、「経済
的手法」、「誘因的手法(インセンティブ)」等も含めた各種の対策・施策を組み合わせ、
それぞれの対策・施策が相乗効果を発揮して温室効果ガスの排出を削減させる総合的・一
体的な政策を検討する。(P145~「環境政策」参照)
(5) 政府は、再生可能エネルギーの普及促進策を検討する際には、それに伴うコスト負担の
あり方について国民の生活や産業・企業の国際競争力への影響等に留意しながら検討する。
また、政策を実行する際には、その内容や必要性について国民の十分な理解・合意を得た
上で推進する。
(6) 国、事業者および設置者は、再生可能エネルギーの利活用に伴い各種の問題が生じた場
合には、その解決に向けて適切な対策を講じる。
(7) 政府は、世界最高水準のエネルギー利活用技術を海外においても活用し、世界規模での
エネルギー利用の高効率化に貢献する。また、知的財産保護などに留意しつつ、世界全体
での地球温暖化防止に対する貢献を適切に評価する国際的な仕組みを構築しつつ、途上国
への温室効果ガスの排出削減に係る技術協力、資金援助および投資を強化する。
(8) 政府は、省エネルギーに資する国土インフラの整備(コンパクトシティ化、モーダルシ
フト推進)、省エネルギー製品の開発・普及およびライフスタイルの見直しを進める。
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1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
①トップランナー方式(注 6)については、目標年度を迎えた機器の基準見直し行うととも
に、業務用機器についてのエネルギー消費効率の客観的かつ定量的な測定方法を確立し、
対象機器の拡大をはかる。
②「サマータイム」制度については、地球温暖化防止・省エネの効果とともに、ライフス
タイルの見直しの観点から前向きに検討する。政府は、長時間労働等への懸念や克服す
べき課題に対する対応策を明らかにしたうえで、国民的議論を通じて、環境意識とライ
フスタイル・ワークスタイルの見直しに向けた意識の醸成と合意形成に努める。( P145
~「環境政策」参照 )
(9) 政府は、エネルギー問題と地球環境問題に係る国民意識の涵養をはかる。
①環境とエネルギー問題に係る基本的な知識・意識を身につけるための教育を充実させる。
②初等~高等の教育課程において、「環境」、「エネルギー」、「消費行動」、「エネル
ギー節約型のライフスタイル・ワークスタイル」等に関する教育の充実を図る。環境と
エネルギー問題に係る基本的な知識・意識を身につけるための教育を充実させる。
(10)政府は、民生部門・運輸部門・産業部門すべてにおける省エネルギーを推進する。
①省エネルギーに寄与する製品などの購入を促進させるため、各種優遇措置を拡充すると
ともに、政府・自治体は積極的に購入する
②家電製品などの省エネラベリング制度(注 7)の周知徹底をはかる。
③低燃費車に対する各種優遇措置を拡充(P131~「交通・運輸政策」参照 )する。
④住宅性能表示を義務化し( P121~「国土・住宅政策」参照 )、住宅の断熱性向上を一層進め
る等して省エネルギー住宅の普及をはかる。また、HEMS( 注 8)の開発・普及に努め、
住宅における省エネルギーの実現に取り組む。
⑤オフィスビルの新築・改修時に、省エネルギー型設備の導入をさらに促進するとともに、
BEMS( 注 9)・ESCO( 注 10)等事業育成のための補助金制度を拡充する。
⑥省エネルギーおよびCO2 削減に効果が高い自然冷媒ヒートポンプ式給湯器、潜熱回収型
給湯器、ガスエンジン給湯器の普及を促進する。
⑦エネルギー効率の高い物流体系を構築する等、環境にやさしく省エネルギーにも寄与す
る交通体系の構築に向けた施策を強化する。( P131~「交通・運輸政策」参照)
⑧燃料電池自動車、電気自動車、ハイブリッド車、天然ガス自動車等のクリーンエネルギ
ー自動車や燃費効率の高いディーゼルエンジン等の開発・普及促進のための支援を行う。
⑨より効率的な省エネルギー設備の開発・導入、およびCO2 排出量の少ない燃料への転換
を促し、工場等におけるエネルギー消費・CO2 排出の抑制に努める。
⑩総合的なエネルギー効率の向上のため、産業部門間および産業部門・民生部門間の排熱
融通等、地域における電力・熱の相互融通(エネルギーの面的利用)の導入・普及をは
かる。
(注 3)革新的なエネルギー高度利用技術および再生可能エネルギー~ 2006 年 10 月総合資源エネ
ルギー調査会新エネルギー部会において、新エネルギーの概念の範囲の見直しが行われ、新エネル
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1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
ギーは、再生可能エネルギーのうち、その普及のために支援を必要とするものとして整理された。
また、再生可能エネルギーの供給、エネルギー効率の飛躍的向上、エネルギー源の多様化に資する
新規技術等については、「革新的なエネルギー高度利用技術」として整理された。
(注 4) GTL ~Gas to Liquid の略。天然ガスを原料として液体燃料化した燃料の総称。灯軽油、メタ
ノール、ナフサなどがこれにあたる。
(注 5)DME ~天然ガスなどから製造される液化ガス。用途は発電用、ディーゼルエンジン用、民生用、
燃料電池用など多岐にわたるとともに、簡単に液化できることから、取り扱いは簡便であり、クリ
ーンな新燃料としてその実用化が期待されている。
(注 6)トップランナー方式 ~エアコン・テレビ・ビデオ・冷蔵庫・乗用車などの製品ごとに、エネル
ギー効率が最も優れているものをその製品のエネルギー効率基準(トップランナー)とし、指定し
た製品開発期間のうちにトップの基準に追いつくことをメーカーに対して義務化したもの。
(注 7) 省エネラベリング制度 ~エネルギー消費が大きい製品(エアコン、照明器具、テレビ、冷蔵
庫、冷凍庫)をはじめとする計 13 機種(2003 年6月にストーブ、ガス調理機器、ガス温水機器、
石油温水機器、電気便座、2004 年5月に変圧器、電子計算機、磁気ディスク装置を追加)を対象と
し、省エネ性マーク・省エネ基準達成率・エネルギー消費効率・目標年度をカタログなどにラベル
で表示するもの。省エネ基準に満たない製品は橙色の省エネ性マーク、省エネ基準達成率 100%以
上の製品については、緑色のマークを表示することができる。
(注 8) HEMS ~ Home Energy Management System の略。ICT技術の活用により、一般家庭において
室内環境に応じた照明・空調などの最適運転を行うなど、エネルギー需要の自動管理を行うと同時
に、エネルギー使用量のリアルタイム表示により消費者に省エネルギーに関する行動を促すシステ
ム。
(注 9) BEMS ~ Building Energy Management System の略。ICT技術の活用により、業務用ビルに
おいて室内環境に応じた照明・空調などの最適運転等を行うなど、エネルギー需要の自動管理を行
うと同時に、エネルギー分析・診断機能により、事業者に一層の省エネルギー対策に向けた情報を
提供するシステム。
(注 10) ESCO ~ Energy Service Company の略。工場や事務所、オフィスビルや商業施設、公的施設
などに対して、エネルギー効率の改善策を提案、省エネルギー効果を保証し、削減したエネルギー
コストから報酬を得る事業。
3.国は、国家戦略として原子力エネルギーの位置づけを明示するとともに、安全・安心の
確保や国民・住民に対する理解活動に責任を持って取り組む。また、より高度な安全確
保体制の確立を大前提に、原子力発電所の高経年化対策と設備利用率向上をめざす。
(1) 国は、国家戦略として原子力エネルギーの位置づけを明示するとともに、国・地方自治
体と事業者の役割を明確にしつつ、事故・各種トラブルなどへの対応を含め、安全・安心
確保や国民・住民に対する理解活動に責任を持って取り組む。
①現下のエネルギー需給構造を勘案し、原子力エネルギーをエネルギー安定供給に欠かす
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1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
ことのできない重要なエネルギー源として位置づけるとともに、CO2 削減に有効な手段
として位置づける。
②震災に備えて、津波も含めた対策や活断層評価など耐震安全性に係る技術の高度化を着
実に進めるとともに、地震学など最新の知見を耐震安全性の確保に反映する体制(バッ
クチェックの定期的実施など)を構築する。
③地域住民の安心確保のための瞬時に被害状況を把握できるような被害モニタリング技術
の向上や、耐震安全性を分かりやすく説明できるようにするための安全性の評価方法や
それを定性的・定量的に示す方法を確立する。
④企業と地域住民だけではなく、幅広い国民(生活者・労使・有識者・行政など)から構
成される対話と合意形成の仕組み(安全・安心・持続を基本とした国のエネルギー安全
保障の確立を目指し、最新の知見の迅速・適切な反映、老朽化や地勢的条件に基づく原
子力発電所の継続運用の可否の判断などを行う仕組み)を検討する。
⑤原子炉等規制法の円滑な運用により、テロ対策を含め、原子力施設の安全確保を強化す
る。
(2) 政府は、2030 年前後における原子力発電所の相次ぐ設備寿命の到来に今のうちから備え
る。
①より高度な安全確保体制の確立を大前提に、2008 年 8 月に改正された新検査制度に則っ
た厳正な運用など、安全運転維持に向けた科学的で合理的な高経年化対策を着実に実施
する。
②原子力発電所の設備利用率向上をめざす。
③現在計画中の原子力発電所の新増設については、地域住民の理解・合意と幅広い国民の
理解を前提に、これを着実に進める。
④大学における研究炉などの高経年化については、必要に応じて政府などが補助し、安全
・防災対策を確実なものにする。
(3) 政府は、既設原子炉の廃炉後の更新については、その時点での原子力利用技術の進展の
動向、革新的技術開発による新エネルギー実用化の動向及び原子力発電所新設に要する年
数などを踏まえ、「エネルギーのベストミックス」の考え方に基づく国民的合意のもとで
その当否を見極めていく。
①作業者の安全確保のための技術開発などを急ぎ、安全な廃炉作業体制を早急に確立する。
②解体、廃棄物処理の進捗状況は国民に開示する。
(4) 使用済燃料の再処理など核燃料サイクルについては、資源の有効利用に加え、放射性廃
棄物の処分・貯蔵に係る負荷軽減の観点からも喫緊の課題であることから、国及び事業者
は、その早期確立に向けた研究開発を着実に進める。
①プルサーマル計画については、安全体制・安全確保技術の確立や国民・住民への理解活
動に積極的に取り組む。
②高レベル放射性廃棄物処分、安全な廃炉作業体制の早期確立及びバックエンド事業につ
いては、そのトータルコストを的確に把握・開示し、その負担のあり方について国民的
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1.持続可能で健全な経済の発展
(資源・エネルギー政策)
合意を得る。
③高レベル放射性廃棄物処分については、安全評価手法の確立や必要な技術情報の蓄積を
進めるとともに、保管施設から処分地への搬送区間の安全確保も含め、処分にかかる安
全基準を処分地選定前に法制化する。また、処分地選定にあたっては、選定過程を情報
開示し、国・事業者・地域住民の対話による合意形成を前提に、速やかに処分地を決定
する。
④高速増殖炉については、その将来的な経済性、エネルギー自給率への寄与、より高度な
原子力安全利用技術を世界に先んじて確立することの重要性など、その研究意義を含め
て国民的議論を行うとともに、安全体制確立と十分な国民理解を得ることを前提とし、
拙速を避けつつも確実に進める。
⑤原子力発電のバックエンド事業については、「原子力発電における使用済燃料の再処理
等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」に基づき、適正な積立金の管理を行
う。
(5) 政府や原子力関連事業者などは、公聴会、シンポジウム、施設見学会などを積極的に催
し、安全・防災対策の取り組みなどについて国民へ開示し相互理解をはかるとともに、自ら
も安全意識を維持・向上させる。
(6) 地域において、自治体は原子力地域防災計画を策定し、政府、地方自治体、原子力関連
事業者および地域住民は、合同の防災訓練を定期的継続的に行うなど連携して防災機能を
強化・維持し、万全な防災対策を構築する。
(7) 原子力安全委員会、原子力安全・保安院については、ダブルチェック体制と推進部局から
独立した安全規制機能を強化するとともに、規制と推進の分離について、現状の課題とそ
の効果を検証しつつ議論を行う。また、原子力委員会は、原子力の専門家以外に発電地域
と消費地域の代表者、経済・環境問題などの専門家も加え、多様な観点から検討を行える
体制とする。
(8) 高い安全性を維持するため、現場作業者の人材育成・保安教育を徹底し、人材確保・技
術継承に努めるとともに、安全確保について現場労働者の意見が伝達できる環境をつくる。
<実現に向けた取り組み>
(1) 関係省庁との協議の推進、総合資源エネルギー調査会などの各種審議会への参加を通じ
て意見反映に努める。
(2) 連合は、経済政策小委員会を中心に、省エネルギー、再生可能エネルギー、原子力安全
・防災など、資源・エネルギー政策全般について理解を深め、連合の意見強化に努める。
- 55 -
2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
2.雇用の安定と公正労働条件の確保
雇 用 ・ 労 働 政 策
<背景と考え方>
(1)
2009 年 7 月に過去最悪の 5.5%を記録した完全失業率は徐々に改善し、2010 年 3 月に
は 4.6%となった。有効求人倍率も過去最低の 0.42 倍(2000 年 8 月)から上昇し、2011 年 3
月は 0.63 倍となった(岩手県・宮城県・福島県の集計は含まず)。しかし、2011 年 3 月の
東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故、計画停電、風評被害等により、事業活動の
縮小・企業倒産などが生じ、雇用にも影響を及ぼしている。雇用調整助成金の活用等の施
策も行われているが、雇用・失業情勢は依然として厳しく、今後も予断を許さない状況に
ある。雇用問題の抜本的改善には良質な雇用を日本国内に生み出すことが不可欠であり、
「新成長戦略」をベースとした雇用創出のための政策が重要となる。同時に、非正規労働
から正規労働への転換促進、就労支援策の拡充、最低賃金の引き上げ、社会保険の適用拡
大、新卒者雇用対策の強化など、重層的な積極的雇用対策や社会的セーフティネットの整
備についてさらに取り組む必要がある。
(2) 2011 年 3 月の新規学卒予定者の就職内定率は、高卒は 70.6%(2010 年 11 月末時点)と
前年を上回ったが、大卒は 68.8%(2010 年 10 月 1 日時点)と過去最低水準であり、新規
学卒者・若年者を取り巻く雇用状況は深刻である。3 年以内既卒者の新卒者扱いを求める
施策や企業と学生のミスマッチ解消策など、将来の日本社会を支える人材確保の面からも、
新卒・若年者の雇用対策が引き続き重要である。
高齢者雇用については、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の 2013 年度からの
段階的な引き上げが目前に迫っている。希望する者全員が 65 歳以上まで働ける制度を導入
している企業の割合は 46.2%にとどまっており(2010.6.1 調査)、高年齢者雇用安定法の見
直しなど、希望者全員が 65 歳まで働き続けられる環境整備をはかることが必要である。
障がい者雇用の実雇用率は、民間企業が 1.68%と法定雇用率に近づき、国 2.29%、都道
府県 2.50%、市町村 2.40%といずれも前年を上回っている(2010.6.1 調査)。法定雇用率達
成に向け、障がい者の就労支援の拡充・職域拡大とともに、雇用における障害差別禁止法
の早期制定が必要である。
非正規労働者は男女とも減少したものの、働く女性の過半数(53.3%)は、非正規労働者
である。また、出産前後を機に 62%が退職しており(2005 年実績)、女性の就労継続のため
の環境整備が課題である。
(3) 課題が多かった労働者派遣については、①登録型派遣の原則禁止、②製造業務派遣の原
則禁止、③日雇い派遣の原則禁止とその解釈の拡大、④違法派遣への対処として「直接雇
用申込みみなし規定」の創設などを盛り込んだ労働者派遣法改正法案が、2010 年 4 月に通
常国会に提出された。しかし、2010 年秋の臨時国会、2011 年通常国会においても継続審議
- 56 -
2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
となっており、成立していない。労働者保護の強化に向けて、労働者派遣法改正法案は 1
日も早く成立させることが必要である。
非正規雇用全体にかかわる有期労働契約の課題について、2010 年 10 月から労働政策審
議会における議論がスタートした。雇用の安定と処遇の改善をめざし、契約の締結から終
了にわたる、有期労働契約に関する実効性のある規制の整備が求められている。
また、労働法や労働・社会保険などの適用回避のために、非正規雇用から個人請負に契
約を切り替える動きがある。こうした中で、労組法上の労働者性を否定する下級審の判決
が相次ぎ問題となっていたが、2011 年 4 月、最高裁は就労の実態を踏まえて労働者性を判
断する判決を下した。
(4) 雇用のセーフティネットについては、雇用保険の適用対象拡大(適用基準を週 20 時間以
上労働・「31 日以上雇用見込み」に緩和)や緊急人材育成支援事業など一定の対応がはか
られてきた。さらに、長期失業者等を対象とした、職業訓練と給付金を組みあわせた「求
職者支援法」が 2011 年 5 月に通常国会で成立した。
未就業の若者や非正規労働者など職議訓練の機会に恵まれない労働者の能力開発施策と
して、ジョブ・カードの拡充や日本版 NVQ 制度の導入など、教育訓練と結びついた実戦的
な職業能力評価の仕組みが検討されている。これらとあわせて、日本の競争力の維持向上
に向けたグローバル人材や高度人材の育成強化、新しい成長分野における人材ニーズの把
握や育成に向けた取り組みが重要である。
わが国の雇用・労働政策の多くは、一般会計ではなく労働保険特別会計の使用者負担の
保険料を財源として行われてきている。雇用保険の失業給付に対する国庫負担についても、
本則の 4 分の 1 には戻されていない。雇用・失業情勢が悪化した場合などには、雇用政策
に関する国の責任を示すものとして、一般会計予算からの財政出動も機動的になされるこ
とが必要である。
(5) 2009 年の総実労働時間は、一般労働者および短時間労働者ともに減少したが、一方で二
極化する長時間労働者の労働時間短縮の取り組みは引き続き重要な課題である。
特に、自動車運転業務や新商品等の研究開発業務など「時間外労働限度基準告示」の対
象外となっている業務においては恒常的な長時間労働が問題となっており、ワーク・ライ
フ・バランスの視点からの改善が必要である。
(6) 労働災害は、長期的には減少傾向にあるものの重大災害は 200 件超と高止まりしており、
労災保険給付の新規受給者は 50 万人を超えている。労働者の健康面では強い不安、悩み、
ストレスを感じている労働者の割合は約 6 割にのぼり、「過去1年間にメンタルヘルス上
の理由により連続 1 か月以上休業又は退職した労働者がいる」とする事業場の割合は約 8
%となっている(厚生労働省「労働者健康状況調査」)。自殺者数は 13 年連続で 3 万人を超
え、「勤務問題」が原因・動機の 1 つとなっている者は約 2,500 人である。精神障害など
による労災請求件数、労災支給決定件数とも増加している。こうした中、心の健康対策(メ
ンタルヘルス対策)に取り組んでいる事業所の割合は約 5 割にとどまっている。職場にお
けるメンタルヘルス対策がますます重要となっている。また、類似災害防止を中心とした
- 57 -
2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
労働安全衛生行政のあり方を予防重視・本質安全化へとシフトすることが求められる。
(7) 労働組合の組織率の低下傾向や非正規労働者の増大などを背景に、個別労働紛争解決促
進法や労働審判法、労働契約法の制定など、労働関係の多様化・個別化に軸足をおいた施
策が進められてきた。しかし、労働者全体の利益を考慮し労働条件の維持・向上をはかる
ためにも、また、職場における問題を解決していくためにも、集団的労使関係を重視した
施策の再構築が求められる。
また、合併、分割、事業譲渡、持株会社化などの事業再編に関する商法・会社法の整備
が進められる中で、労働組合との協議が法的に担保されていないことや親会社の使用者性
などの問題への対応をはかる必要がある。
(8) 個別労働紛争は大きく増加している。労働審判制度の運用の改善とともに、労働委員会
の積極的な活用が必要である。また、整備されてきた労働紛争処理システムについて、全
体像を見直し、個々の制度の連携を強化することが必要である。
労働紛争の発生原因のひとつに使用者および労働者の労働法に関する知識・理解の不足
がある。様々なレベルにおいて、労働教育の拡充が必要である。
個別労働紛争の相談事例では、解雇、賃金未払いなどの事案に続いて、近年、増加して
いるのが、いわゆる「パワーハラスメント」に関する相談・紛争である。その予防・早期
発見・早期解決の取り組みが求められるが、職場のコミュニケーション、人事労務管理、
紛争処理など多様な側面からの総合的な検討が必要である。
(9) FTA、EPA、TPPなど、経済連携協定の推進の動きの一方で、「人の移動」の自
由化については慎重な対応が必要である。真に高度な専門的知識・技術を持った外国人労
働者の受け入れは国際競争力の強化に資するものだが、単純労働者の受け入れなど外国人
労働者の受け入れ範囲の安易な拡大は、国内の労働者との競合・代替が生ずるおそれや低
賃金労働者を生み出す懸念がある。また、日本語教育等の社会統合に係る財政負担の在り
方を含め国民的な合意が必要である。
(10)雇用・労働政策に関する立案・決定には、労働政策審議会など、雇用労働の当事者であ
る労使の代表者が関与することが不可欠である。
2010 年秋には、行政刷新会議における事業仕分けにおいて、労働保険特別会計のあり方
が俎上に上り、雇用保険二事業および社会復帰促進等事業について「廃止」との結果が出
された。この事業仕分け結果については、①保険料を財源とする制度のあり方そのものを
対象としていること、②労使の代表者の関与がないこと、など基本的な問題がある。
<要求の項目>
1.セーフティネットを拡充し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)
を中心に据えた雇用の拡大をはかるとともに、劣化した雇用の質を回復させる。
(1) 質の高い雇用による「完全失業率 3%台前半の社会」を実現する。そのために、国の責
任として、雇用政策と一体となった産業政策を推進することで、バブル崩壊以降続くデフ
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
レ状態から早期に脱却し、わが国経済を持続的・安定的な成長軌道に乗せ、雇用の創出・
維持をはかる。
(2) 雇用および労働は、経済と社会の発展を支えるための前提であり、雇用の質の向上と働
く意欲のある労働者の完全雇用実現の方策を、国の基本政策の中心に据える。
(3) 政労使が雇用(ワーク・ライフ・バランスなどの問題を含む)・産業政策などを一体で
議論する社会的対話を進める。とりわけ、地域においては、地域の特色を踏まえた雇用・
産業政策を策定するため、「地域雇用戦略会議」などの場を活用し、定期的な議論を行う。
(4) 質の高い労働力により培ってきた、わが国のすぐれた技術力、開発力を維持・強化しつ
つ、それをベースに成長が期待できる産業分野に積極的に進出し、雇用機会を創出する。
(5) 雇用の原則は「期間の定めのない直接雇用」であることを基本として、人や社会の成長
を促す雇用・労働環境の整備、公平・公正なワークルールの整備と社会保障システムの再
構築、職場における諸課題の解決システムの強化、労働政策を支える基盤の充実をはかる
観点から、「雇用基本法」(仮称)の策定をはかる。また、引き続き非正規雇用から正規雇
用への転換を促進する。
(6) 雇用保険制度などセーフティネットの充実
①失業等給付の受給資格要件を拡大するとともに、給付日額・給付率・給付日数を 2001
年改正前の水準に引き上げる。
②雇用形態にかかわらず、すべての雇用労働者に雇用保険を適用することとし、雇用保険
の適用対象の拡大(週所定労働時間 20 時間未満の労働者など)をはかる。
③育児休業給付については、保育サービス、子ども手当、出産手当など、諸施策の給付と
財源のあり方を総合的に検討し、経済的支援の財源を統合した「子育て基金」(仮称)
による給付を検討する。
④基本手当について、所得再配分と生活保障の観点から、「最低保障手当額(仮称)」を
創設する。水準は、人事院勧告の標準生計費(単身世帯)を参考とし、基本手当日額 3,263
円程度とする。
⑤雇用保険の国庫負担は、雇用政策に対する政府の責任として、1 日も早く本則の 4 分の 1
に戻す。
⑥雇用保険料率(失業等給付および雇用保険二事業)のあり方については、雇用失業情勢
などを十分に踏まえ、雇用保険財政の安定的な運営の確保と給付水準の回復の観点から、
安易な料率の引き下げは行わない。また、雇用・失業情勢が大幅に悪化した場合などに、
雇用保険二事業等への一般財源の投入も機動的になされる仕組みを構築する。
⑦労働保険特別会計の雇用保険二事業および労災保険の社会復帰促進等事業については、
より効率的・効果的な事業として見直しを行いつつも、必要な事業は引き続き実施する。
⑧雇用調整助成金については、雇用失業情勢の変化に応じて要件を緩和するなど、機動的
に運営する。
⑨雇用保険制度ではカバーできない長期失業者などに対する公的扶助制度としての求職者
支援制度については、実効性ある制度の運用に努めるとともに、国として設けるセーフ
- 59 -
2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
ティネットであるという趣旨から、全額一般財源で負担するものへと見直しを行う。
⑩求職者支援制度の要件を満たす雇用保険受給者で、求職者支援法の訓練・生活給付金の
金額(10 万円)に満たない基本手当受給者への差額補填を行う。
(7) 公共職業安定所(ハローワーク)は、以下の原則にもとづく体制とする。
①ILO第 88 号条約(職業安定組織の構成に関する条約)にもとづき、無料職業紹介、雇
用対策(企業指導)、雇用保険(失業認定と失業給付)は国の指揮監督と責任により、
全国ネットワークで一体的に運営する。
②国と地方自治体との協同連携による就労支援・生活支援を含めた一体的運営を行う場合、
地域の労使による参画により、求職者・利用者の利便性向上をはかる。
(8) 地域雇用対策の推進
①地域主体の雇用創出策を実施に向けて、「ふるさと雇用再生特別交付金」や「緊急雇用
創出事業」を延長するとともに、「地域雇用創造推進事業(パッケージ事業)」の継続
・拡充をはかる。
②国(都道府県労働局/地方経済産業局など)・地方自治体・地元経済界などで構成され
る「地域雇用戦略会議」を全都道府県で設置するとともに、同会議への労働組合の参加
を確保し、地域の雇用創出、地域活性化策などについて総合的に検討する。
③国は、地域主体の雇用創出・地域再生に向けて、Iターン、Jターン、Uターンの促進
による人材確保、人材育成、起業促進、企業誘致などについて必要な支援を行う。
2.有期契約、パートタイム、労働者派遣、請負など、多様な雇用・就業形態の労働者の雇
用の安定と公正な処遇を確保する。
(1) 有期労働契約の労働者保護のルールについては、将来的に目指す方向性を見据えつつ、
段階的な整備をはかる。(「有期労働契約に関する連合の考え方」参照)
①有期労働契約の締結には合理的理由を必要とする入り口規制を行う。
②有期労働契約の上限および更新回数について規制する。
③合理的な理由のない差別的取り扱いの禁止など均等・均衡待遇を実現する。
④有期契約労働者に関する雇用保険料についての使用者負担の増額など、使用者にリスク
負担を求める制度とする。
⑤「有期労働契約の締結、更新および雇止めに関する基準」(大臣告示) の法制化をはかる。
(2) パートタイム労働の均等・均衡処遇の確立をはかる。(「男女平等政策」参照 )
①すべてのパートタイム労働者を対象に、「合理的理由」がある場合を除き、処遇につい
てパートタイム労働者であることを理由とする差別的取扱いを禁止する。
②ILO第 111 号条約(雇用と職業についての差別待遇に関する条約)、ILO第 175 号
条約(パートタイム労働に関する条約)を批准する。
③労働条件の時間比例を原則とする「短時間公務員制度」を導入する(「行政・司法改革」参
照 )。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
(3) 労働者派遣法については、労働者保護の視点からの改正を行う。
①改正労働者派遣法案(2010 年閣法)を早期に成立させる。
②残された課題、(派遣先責任の強化、専門 26 業務の見直し、特定労働者派遣事業の届出
制から許可制への変更、マージン率についての情報公開、専ら派遣・グループ企業派遣
の規制、派遣先労働組合への通知事項の拡大など)については、2007 年「労働者派遣法
見直しに関する連合の考え方」など、連合の考え方に基づき、引き続き労働者保護の観
点から対応する。
(4) 偽装請負・違法派遣の一掃に向けた指導・監督を強化するとともに、請負現場における
労働関係法令(職業安定法、労働者派遣法、労働基準法、労働安全衛生法など)の遵守お
よび社会・労働保険の加入徹底に向けて、関連行政機関の連携を強化する。
(5) 労働者派遣法の改正後に役割が拡大することが見込まれる有料職業紹介事業について、
適正な事業運営がなされるよう、指導・監督を強化する。
(6) いわゆる「個人請負」「委託労働者」について就労の実態を踏まえて労働法上の労働者
性が判断されるような行政解釈や立法的解決も含めて必要な措置を講ずる。
(7) 多重就労の場合でも労働者保護が確保されるよう、①労働・社会保険の適用、②労働安
全衛生上の取り扱い、③労働時間管理のあり方などについて、その実現に向けたインフラ
整備のあり方(共通番号など)も含めて、横断的に検討する。
3. 雇用労働環境の変化などに対応するワークルールの整備、確立をはかる。
(1) 労働契約法の内容の強化・充実(「連合・労働契約法案」参照)。
①均等待遇原則を法制化する。
②労働契約法が対象とする労働者の範囲を拡大する。
③有期契約労働者保護のルールを整備する。
④ILO第 158 号条約(使用者の発意による雇用終了に関する条約)を批准する。
(2) 雇用形態や年齢、性別、障がいなどによる不当な差別を禁ずる法律を制定する。
(3) 労働基準法における就業規則の作成・届出義務の対象は、10 人以上から 5 人以上に拡大
する。
(4) 国および地方自治体における労働行政の充実・強化
①労働基準監督官を増員し、法違反への適正・厳格な対応をはかる。また、派遣・請負・
個人請負など、多様化する雇用・就業形態に対応できるよう改革する。
②労働基準監督署の安易な統廃合や労働基準監督官の削減は行わない。
③労働基準監督署およびハローワークの再編整理に関する具体的な計画は、労働政策審議
会の調査・審議事項とする。
④地方自治体が行う労働相談への支援や労働関係調査の委託事業の充実など、集団的労使
関係を扱う地方における労政行政の充実・強化をはかる。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
(5) 国は労働者の基本的な権利・義務の周知・啓発を行う労働者教育施策を行うとともに、
都道府県が行う労働者教育施策について支援を行い、労働者の権利に関する理解を促進す
る。
(6) 事業譲渡、合併など、あらゆる事業再編において、労働者保護をはかるための法制化を
行う。
①事業譲渡を含むすべての事業組織の再編において、労働契約を承継させる。ただし、当
該労働者が、労働契約の承継に対する異議申立をした場合、当該労働者の労働契約は承
継されないものとする。
②労働組合等への事前の情報提供・協議を義務化する。
(7) 不払い残業を撲滅し、労働基準が確実に履行されるため、厚生労働省通達「労働時間の
適正把握基準」、「賃金不払残業総合対策要綱」および「賃金不払残業の解消を図るため
に講ずべき措置等に関する指針」の周知徹底と相談窓口の充実などをはかる。
(8) 労働時間短縮やワーク・ライフ・バランス確保に向けた施策の推進。
<時間外・休日・深夜労働関係>
①時間外労働の法定割増率を時間外 50%、休日労働 100%、深夜労働 50%に引き上げる。
特に、休日労働の割増率は 35%から 50%以上に早期に引き上げる。また、改正労働基準法
第 37 条による月 60 時間超の割増率引き上げについて、中小の適用猶予措置は早期に廃
止する。
②フルタイム労働者のあるべき労働時間として「年間総実労働時間 1,800 時間」など、数
値目標を示す。
③「ワーク・ライフ・バランス憲章」に盛り込まれた「消費者の一人として、サービスを
提供する労働者の働き方に配慮する」との趣旨の周知をはかるなど、深夜化するライフ
スタイルや長時間労働の是正に向けた環境整備を行う。
④時間外労働の「限度基準」の 1 日の限度基準の設定を検討するとともに、多様な勤務形
態などを踏まえつつ、休息時間(勤務間隔)規制の導入に向けた検討を行う。
⑤1 年の限度時間「360 時間」以内の徹底をはかるとともに、仕事と生活のバランスをはか
る観点から、限度時間「150 時間」の法制化のための検討を進める。
⑥「特別条項付き協定」について、労働者の健康を確保した適切な運用がはかられるよう
指導を徹底する。特別条項付き協定を適用する場合の上限時間設定も検討する。
⑦時間外労働の限度基準の適用除外職種、業種、業務の上限時間設定を検討する。特に、
時間外労働限度基準告示中の「工作物の建設等の事業」は削除する。
⑧ワーク・ライフ・バランスおよび安全輸送の観点から、自動車運転者の長時間労働の改
善および公正競争の確保のために、労働環境や賃金体系が適正なものとなるよう関連諸
法の改正を行う。
a)長時間労働による「精神的・肉体的疲労からの回復」と「交通事故の防止」をはかる
ため、「休息期間」と違反事業者に対する罰則を法律に規定し、事業者に自動車運転
者の労働時間等の改善のための基準」(告示)の連続休息期間の確保を義務づける。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
b)業種ごとに総拘束時間の短縮と法整備を行う。
c)過当競争や賃金体系における過度な歩合制が低賃金・長時間労働の原因であるため、
安全輸送の観点から、いわゆる「オール歩合」「累進歩合」の禁止を法律に明記し、不
適切な事業者を排除する制度を構築する。
⑨公務における超過勤務の実態を把握するとともに、実効性ある超過勤務規制をはかる。
⑩医療の安全確保のため、医療現場で働く労働者の夜間交替制労働に関するガイドライン
の策定をはかる。
⑪時間外労働・休日・深夜労働の削減に向けて、「所定外労働削減要綱」、「労働時間等
設定改善指針」の周知徹底をはかる。
⑫常時 10 人未満の労働者を使用する商業・サービス等事業場における労働時間の特例扱い
(労基法 40 条)は廃止する。
⑬情報システムの進化・普及により生じている、退社後・休日の待機・呼び出しや行動範
囲の限定という実態を調査するとともに、このような働き方/働かせ方に対する規制を
検討する。
<休日・休暇関係>
①法定年次有給休暇の最高付与日数を 25 日に引き上げるとともに、最低付与日数 20 日に
引き上げる。
②家族の病気・看護休暇、配偶者出産休暇(5 日間)などの新設をはかる。
③年次有給休暇の取得促進につながる具体的施策の展開や、長期連続休暇の取得、年間休
日確保に向けた施策の整備とその推進をはかる。
(9) 国民のゆとり確保の観点から、国民生活などに欠かせない分野を除き、正月三カ日、特
に「元日」については、特別な日として休業の制度化をはかる。
(10)5 月 1 日を国民の祝日とし、4 月 29 日の「昭和の日」から 5 月 5 日の「こどもの日」 ま
でを連休とする「太陽と緑の週」を制定する。
(11)倒産法制の整備の継続
①労働債権の優先順位を引き上げるとともに、労働債権の一部について、別除権(抵当・
質権等)に優先させる制度(労働債権の特別な先取特権)を新たに創設する。また、国
税徴収法を改正し、労働債権を公租公課より優先する。
②債権譲渡特例法については、労働債権の特別な先取特権に基づいて労働債権の一定の割
合を限度とし、優先的に配当を受けることとする。
③未払賃金の立替払制度について、倒産前 6 ヵ月以内での退職とされている認定要件の緩
和や、限度額引き上げなどによる制度の強化をはかるとともに、ILO第 173 号条約(労
働債権の保護)の趣旨に沿った制度となるよう国内法を整備し、早期に批准する。
4.若年者、女性、高齢者、障がい者の雇用対策を強化する。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
(1) 若年者の雇用対策
①フリーターの正規雇用化に向けて、外部市場での職業能力を証明するジョブ・カード制
度などの就職支援、フリーターの正規雇用化を行う企業への支援、能力開発機会の提供
などの施策を展開する。
②ニート対策として生活支援プログラムを拡充する。
③いわゆる「就職氷河期世代」の年長フリーター対策として、正規雇用化に向けて、きめ
細やかなキャリア・コンサルティングと、職業訓練と就労支援を軸とした施策を強化す
る。
④若者の勤労観・職業観を育むため、学校教育におけるキャリア教育や中学校などにおけ
る職場体験を拡充する。
⑤各省庁の連携強化により、卒業後の雇用を見据えた教育の実施やインターンシップなど
の職業体験等、「学校」から「職場」への円滑な移行、雇用の拡大をはかる。
⑥高等学校における進路指導(就職指導も含む)体制の強化をはかるため、「進路指導ア
ドバイザー(仮称)」(1 校 1 名)の配置や教職員に対する研修実施、企業や労働組合、
ハローワークとの連携強化を行う。
⑦企業の自主規制が破綻している現状から、大学生が学業に専念できるような環境を整え
るため、政府として新卒採用の開始時期のガイドラインを示し適正な指導を行う。また、
卒業後 3 年以内を新卒扱いとすることを徹底して、既卒者を正規雇用で採用する企業に
は助成を継続する。
(2) 女性の就労支援策
①妊娠・出産や育児などを経ながら男女がともに就業継続できる環境の整備に向けて、男
女雇用機会均等法および指針の周知・徹底、育児・介護休業法の周知や制度の充実、企
業によるワーク・ライフ・バランスの取り組みの促進など、施策の拡充をはかる。
②マザーズハローワークの拡充、求人開拓、能力開発の促進、保育・介護サービスの拡充
など、妊娠・出産・育児などにより退職した女性の再就職を支援する施策を行う。また、
求職や職業訓練に際しての託児サービスの提供など、利便性の向上をはかる。
③母子家庭の経済的自立に向けて、「母子家庭等就業自立支援センター事業」の拡充、職
業能力開発支援など、福祉行政と労働行政の連携を強化し、個々の世帯態様に応じた総
合的な施策を行う。
(3) 高齢者の雇用対策
①高年齢者雇用安定法等の見直しを行い、希望する者全員が 65 歳まで働き続けられる環境
整備をはかる。
②2013 年度から老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の段階的な引き上げが開始
され、2025 年度には老齢厚生年金は 65 歳からの支給となることなどから、法定定年年
齢の 65 歳への引き上げについても検討する。
③継続雇用制度における労使協定による対象者の基準設定による制度導入のみなし措置
は、廃止する。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
④高年齢者雇用安定法 9 条に定める高年齢者雇用確保措置をいずれも導入しない場合など
における私法上の効果を規定する。
⑤中小企業における高齢者雇用の促進のため、高齢者の継続雇用や定年引き上げ等に対す
る助成金を継続する。
⑥雇用保険制度の適用対象、高年齢雇用継続給付制度については、現行制度を維持する。
⑦職場環境整備を行う事業主に対する助成措置や税制優遇措置を講ずる。
(4) 障がい者の雇用対策
①障がいの有無、種類および程度にかかわらず、障がい者が差別されることなく働ける社
会の実現に向け、「福祉から雇用へ」の取り組みを進める。また、雇用、福祉、教育の
各行政機関が国および地域レベルで連携し、ハローワークを核とした地域のネットワー
ク、企業に対するサポートなどを重視した就労支援策を行う。
②障がい者雇用の促進のため、法定雇用率の引き上げを行うとともに、特定の業種につい
て雇用義務の軽減をはかる除外率制度については早期に廃止する。
③精神障がい者の場合、「精神障害者保健福祉手帳」の取得強要につながらないよう留意
しつつ、法定雇用率の達成に向けた指導を強化する。
④精神障がい者や発達障がい者を障害者雇用義務の対象とし、精神障がい者や発達障がい
者の雇用が進むよう就労支援策を進める。また、中途障がい者や在職中に難病を発症し
た労働者の雇用継続に向けた施策を早急に検討する。
⑤特例子会社や企業グループ全体の障害者雇用率の適用にあたっては、ノーマライゼーシ
ョンを盛り込んだ企業綱領の策定など、障がい者を特例子会社や企業グループ内の特定
の会社に囲い込むことにならないよう指導を徹底する。
⑥複数の中小企業が事業協同組合等を活用した障害者雇用率制度を適用する際は、雇用主
として責任を確保するよう指導徹底する。
⑦すべてのハローワークにおいて、手話通訳、要約筆記者、視覚障がい者に対する支援者
を2名以上配置するなど、障がい者の就労支援体制を拡充する。
⑧301 人以上の企業は、障がい者の就職支援や雇用後の職場適応支援などを行うジョブコ
ーチを1名以上配置する。
⑨障害者就業・生活支援センターは、早急に全障害保健福祉圏域に設置するとともに、職
員やジョブコーチなど 10 人程度配置する。また、障がい者の就労支援を担う人材の育成
・確保・定着に向けた財政支援を行う。
⑩改正「障害者雇用対策基本方針」(2009 年度~2012 年度)を着実に実行する。
⑪障がい者の施設などに積極的に仕事の発注や物品の購入を行う企業への優遇措置の拡充
をはかる。
(5) 国連「障害者権利条約」の早期締結に向けた国内法を整備する。
①国連「障害者権利条約」を早期に締結する。締結に向けて、国内法を整備する。
②「雇用における障害を理由とする差別禁止法」(仮称)を制定する。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
5.雇用の分野における性差別を禁止し、賃金格差を是正、男女の平等を実現する。
( 1 ) 男 女 雇用機会均等法の実効性を確保するため、都道府県労働局・雇用均等室の人員を増
やし、増加傾向にある相談や救済依頼に対し、迅速に対応できる体制を整える。
( 2 ) 男女雇用機会均等法を以下のように見直す。
①法律の名称を「男女雇用平等法」にする。
②法第6条、事業主が、労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはならない事項に、
賃金差別の禁止について加える。
③法第7条(性別以外の事由を要件とする措置)について、以下のように改正する。
a ) 間接差別( 注1)の禁止の基準を、指針による限定列挙から例示列挙(現行3項目はあ
くまで間接差別の一例とし、一方の性に対して合理的な理由がなく不利益を生じさせ
ることを幅広く禁じる)とする。
b)どのようなことが間接差別にあたるか(福利厚生や各種手当ての支給に関する世帯主
要件等)については「指針」で広く示す。
④法第 14 条(事業主に対する国の援助)、第 30 条(公表)のポジティブ・アクション(積極
的改善措置)について、事業主に「行動計画の策定と実行、公表」を義務づける。
⑤法第 11 条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)につい
て、セクシュアル・ハラスメントの定義に「性別役割分担意識に基づく言動」を加える。
⑥差別救済制度を設け、以下のようにする。
a)政府から独立した性差別救済委員会を都道府県単位で設置する。
b)救済の対象は、労働者の募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職
・解雇、賃金その他の労働条件に関する性差別の他、セクシュアル・ハラスメントと
する。
c)救済申し立てを理由とする不利益取扱いを禁止する。
d)差別の合理的根拠を示す証拠およびその裏付け資料の提出義務が事業主にある。
e)資料の提出がない場合、あるいは資料の提出があっても合理的根拠が認められない場
合には、差別を認定して是正を勧告できるようにする。
f)事業主がこの勧告に従わない場合は刑罰を科す。
⑦差別救済において政府から独立した性差別救済委員会が設置されるまでの間、都道府県
労働局のもとにおかれる均等法に係る紛争調停員会の勧告に従わない企業の企業名を公
表するなどの制裁措置を設ける。
⑧男女雇用機会均等法第 10 条(指針)に基づく「募集および採用並びに配置、昇進および
教育訓練について事業主が適切に対処するための指針」の法違反の判断を雇用管理区分
(同じ区分の男女)ごとに行うことは、差別の温存や差別認定の範囲を狭めること等に
なることから、この部分を削除する。
(3) 男女平等な働き方の基準として「男女労働者の仕事と生活の調和をはかる」ことを法律
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
の理念に示し、働き方の見直しを進める。
(4) 労働基準法を以下のように改正する。
①労働基準法第 3 条(均等待遇)に「性別」を加える。
②労働基準法第 64 条の 3(危険有害業務の就業制限)に基づく女性労働規則第 2 条第 2 項
に関して、同規則第 2 条 1 項第 13 号の「土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが 5
m以上の地穴における業務」および第 14 号「高さが 5m以上の場所で、墜落により労働
者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務」についても、産後 1 年を経過しな
い女性から申し出があれば就業できないこととする。
( 5 ) 男女間および雇用・就業形態間の賃金格差是正の実現へ向け、日本が批准しているIL
O第 1 0 0 号条約「同一価値労働・同一報酬」の実効性を確保のため、職務評価手法の研究
開発を進める。
(6) 男女の職務分離の改善を進め、男性の多い職務への女性の進出、女性の多い職務への男
性の進出を積極的に推進するために学校教育、職業能力開発、職業紹介、男女均等取り扱
い等の関連する行政の連携を進める。
(7) ILO第183号母性保護条約を早期に批准するため、労働基準法第67条(育児時間)によ
る育児時間中の賃金は100%保障することとする。
(8) 出産手当金については、賃金との併給の場合の限度額を雇用保険法の育児休業給付の限
度である80%(標準報酬日額の80/100)まで引き上げる。
(9) 母体保護のため強制休業となっている産後休業期間については100%所得保障をする。
(10)国内法を整備し、ILO第111号条約(雇用および職業についての差別待遇の禁止)、I
LO第105号条約(強制労働の禁止)、ILO第171号条約(夜業禁止)、ILO第175号条
約(平等なパートタイム労働)、ILO第183号条約(母性保護)の早期批准を行う。
(注1)間接差別 ~
雇用分野における性別に関する間接差別とは、①性別以外の事由とする措置であって、
②他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるもので、③合理的な理由
がないときに講ずることである。
具体的には、男女雇用機会均等法の指針において、以下の3点が間接差別として規定されている。
a)労働者の募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること
b)コース別雇用管理における「総合職」の労働者の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じ
ることができることを要件とすること
c)労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること
6.雇用・就業形態の多様化や企業組織の変化に適合できる集団的労使関係システム
を構
築する。
(1) 「過半数代表者」の選出においては、労基法施行規則で定められている公正な手続き(選
挙・挙手など)で選出されるよう周知徹底をはかる。また、過半数代表制の抜本的な見直
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
し・改善と労働者代表制(連合「労働者代表法案要綱骨子(案)」)の法制化をはかる。
①使用者と対等な立場で労働条件などの交渉を担う労働者代表組織は、第一義に労働組合
であることを原則とする。
②複数名による労働者代表委員の選出や、当該事業所に雇用される労働者の意見集約は、
自主的・民主的な方法とする。
(2) 親会社および親会社経営者が子会社従業員の雇用・使用者責任を負うよう、純粋持株会
社や投資ファンド、グループ企業などにおける使用者概念を明確化する。また、グループ
企業などにおける労使関係のあり方について検討を行う。
(3) 労働組合法における労働協約の拡張適用要件を緩和する。
(4) 金融商品取引法のインサイダー取引規制への過剰反応により、団体交渉における労働組
合等への経営情報の提供が阻害されないよう、法の理解促進・周知徹底をはかる。
7.すべての働く者に対する職業能力開発施策と日本の成長と競争力を支える人材の育成を
強化する。
(1) 国としての職業能力開発体制の充実・強化
①職業能力開発は雇用のセーフティネットであることを認識し、国として、これまで以上
に職業能力開発体制の充実・強化をはかる。
②独立行政法人雇用・能力開発機構の廃止、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機
構への移管にあたっては、独立行政法人雇用・能力開発機構が担っているセーフティネ
ットとしての訓練やものづくり分野の訓練の実施など、国の職業訓練機能を堅持した上
で、強化をはかる。その際、国・民間・都道府県の役割分担を明確にするとともに、組
織の運営には労働組合も参加する。
③求職者支援制度における訓練では、キャリア・コンサルタントによる求職者のニーズと
求人のマッチングで就職支援を促進するとともに、企業や地域のニーズ、人材不足分野、
新規雇用創出が期待される分野などにおける職業訓練や研修機会の拡大、訓練内容・訓
練期間の拡充・強化をはかる。その際、柔軟かつ機動的な見直しができるよう、労使の
意見を定期的に反映する場を地域ごとに設定する。
(2) 働く意欲を持つすべての者に対する職業能力開発機会の拡充
①正規雇用への転換を可能とするため、パート労働者、有期契約労働者、派遣労働者、請
負労働者などに対する国の職業能力開発施策を強化する。さらに、各種助成制度を活用
するなどして企業の取り組みを促進し、正社員との職業能力開発機会の格差是正をはか
る。
②「ジョブ・カード制度」について、より効率的・効果的な事業として見直しを行いつつ
も、制度の周知徹底、助成要件の見直し、訓練期間中の所得保障の強化などの見直しに
より、積極的な普及・促進をはかり、非正規労働者の正規雇用化に有効活用する。
③障がい者、母子家庭の母、生活保護受給者などについて、居住地近隣での職業訓練機会
- 68 -
2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
を拡充するとともに、地方自治体・地域の教育訓練機関・公共職業安定機関(ハローワ
ーク)などが一体となり、就労に向けたきめ細かな支援を行う。
④「職業訓練バウチャー」(使途を教育訓練に限定させた利用券)制度を全国的に展開し、
若年者などの雇用保険未加入者や出産・育児・介護などにより職業キャリアを中断して
いる者に対する職業能力開発支援を拡充する。
⑤中小企業労働者や職業能力開発機会が限定されている地域に居住する者について、国・
地方自治体・地域の教育訓練機関などが連携し、職業能力開発に関する機会や情報にお
ける企業間格差・地域間格差の是正をはかる。
⑥個人請負、自営業者、起業を希望する者などについて、公共職業訓練機関において、情
報提供、相談・援助、ニーズに応じた講座・訓練の受講などの支援が受けられるよう、
体制整備を行う。
(3) 「第 9 次職業能力開発基本計画」の着実な実行の確保
①日本の成長と競争力を支える人材を育成する視点で、政府(省庁横断)、都道府県、大
学が連携して、バランスのとれた職業能力開発を行う。
②グローバル人材と高度技能人材の育成では、国と企業の役割のあり方を含め、産・学・
官のリソースを最大限に活用する。
③公共職業訓練は、再就職や在職者の職業能力向上に結びつきやすいものとなるよう、産
業構造の変化、技術革新、企業ニーズなどを踏まえて訓練内容を見直し、高度化をはか
る。
④公共職業訓練施設について、土日・夜間・随時開講や託児施設の設置など、離職者・在
職者が受講しやすい環境整備を行う。
⑤企業の事業転換や技術・技能の陳腐化により業種転換・職種転換・離職を余儀なくされ
る者について、キャリア・コンサルティングを活用するなどして職業訓練・再就職に向
けた支援を強化する。
⑥在職中の労働者個々人の中長期的なキャリア形成を支援するため、企業内職業訓練や自
己啓発支援などに対する「キャリア形成促進助成金」を有効に活用し、キャリア・コン
サルタントの養成や資質の向上をはかるとともに、キャリア・コンサルティングの普及
・定着をはかる。
⑦業種・職種・職務ごとに必要な技能・スキルに関する企業横断的な職業能力評価システ
ムを整備するとともに、国・業界団体・産業別労働組合が連携して積極的な普及をはか
る。
⑧在職者の自己啓発・職業能力開発を促進するため、労働時間面の配慮や有給の教育訓練
休暇を与える事業主への支援を行うとともに、個人が負担した自己啓発の費用について
一定額までの税額控除を認める「自己啓発税額控除制度」の創設をはかる。また、国・
地方自治体・地域の高等専門学校・短期大学・大学・大学院などの教育機関が連携し、
「リカレント教育システム」の構築をはかる。
⑨政府が創設を検討している「日本版NVQ」については、早期に構築・普及をはかって
- 69 -
2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
いくとともに、環境・エネルギー、介護、観光などの新たな成長分野だけでなく、その
ほかの産業についても幅広くその対象とする。また、創設・普及に際しては、労使それ
ぞれの主体的・積極的取り組みや教育界とのさらなる連携を促す。
(4) 産業政策・雇用政策・教育政策と連携した職業能力開発施策を推進する。
①国と地方自治体のハローワーク一体的運営により、国・地方自治体・教育訓練機関・企
業・労働組合などが連携し、無料職業紹介・職業訓練・就職が連動した離職者支援体制
を確立・強化する。
②産業の基盤を支える人材や成長分野における人材、グローバル人材の育成について、政
府(省庁横断)、労使、教育機関などの関係者が連携し、中・長期的視点から国として
の人材育成戦略・施策を構築する。
③地域が主体となり、国・地域の労使・教育機関などの関係者が連携し、地域の特性を活
かした中期的な産業政策、人材育成施策を構築する。
④公共職業能力開発施設(国・都道府県設置)は、地域の「技術・技能センター」として
位置づけ、国、地方自治体、企業が連携して、新規学卒者、離・転職者、在職者などに
対し、ものづくりなどを重視した職業訓練を強化する。
⑤技術・技能の継承や人材の確保・育成などについて課題を抱えるものづくり産業の中小
企業に対し、関係省庁の連携を強化し、人材投資促進税制の継続や高度熟練技能者の活
用、人材の確保・育成に関する支援措置を拡充する。
⑥企業のニーズに合致し、中核を担う労働者を育成するため、各種助成制度の活用などに
より「実践型人材養成システム」の普及・定着をはかる。
⑦男女の職務分離の改善を進め、男性の多い職務への女性の進出、女性の多い職務への男
性の進出を積極的に推進するために、学校教育、職業能力開発、職業紹介、男女均等取
り扱いなどの関連する行政の連携を進める。
8.労働災害の予防と再発防止対策を強化し、労災補償を拡充する。
(1) 労働政策審議会の建議に沿った労働安全衛生法の早期改正と実効性の確保
①職場におけるメンタルヘルス対策については「早期発見」の側面のみならず、治療・職
場復帰といった一連の対策を検討する
②職場における受動喫煙の防止については、すべての職場が全面禁煙または空間分煙とな
るよう、国民的コンセンサスの形成や財政的支援を拡充する
③ガイドラインである「機械の包括的な安全基準」を「規則」に改訂する。機械の機械譲
渡時における危険情報の提供については、リスクアセスメントの取り組みを促進すべく
義務化する。
④職場における化学物質管理については、危険有害性情報の伝達を義務化し、欧州の「化
学品の分類、表示、包装に関する規則」並の規制とする。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
(2) 労働災害の予防対策の強化
①メンタルヘルス教育の実施、適切な医療の確保、パワーハラスメント対策、職場復帰プ
ログラムなどを行う事業場に対して公的支援を行う。
②時間外労働が月 80 時間以上の労働者に対する「医師の面接指導とその結果に伴う事後措
置」を義務づけるとともに、面談後の事後措置の実施を徹底する。また、制度を円滑に
運営するため、産業医の育成を一層促進させる。
③快適職場づくりや、労働安全衛生マネジメントシステム(OSH-MS)導入などによ
り、労災が減少した事業場に対して、さらなるインセンティブ措置を導入する。
④中小企業に対して、労働者への安全衛生教育の充実に向けた支援を行う。また、リスク
アセスメントやOSH-MS導入の支援、安全衛生サービス専門機関や専門家等の無料
紹介などを行う。
⑤作業管理や保健指導、快適職場指針について、事業主責任を強化する。特に、初期対応、
継続対応を重視する。
⑥労働基準監督官による災害時監督・災害調査や指導を強化するとともに、労働安全衛生
法に違反した事業主に対する罰則を強化する。また都道府県労働局安全衛生労使専門家
会議については、機能の強化、予算の増額、専門委員の権限の拡充等を図り、中小事業
場における労災防止に資するものとする。
⑦派遣労働者に対する派遣元・派遣先による効果的で厳格な安全衛生教育の実施と、非正
規労働者も含めた事業主の「安全配慮義務」の履行を確保する法整備を行う。
⑧派遣・請負労働者の安全衛生体制を強化するため、「製造業における元方事業者による
総合的な安全衛生管理のための指針」を義務化するとともに、製造業以外の業種におい
ても適切に適用する。
⑨安全委員会・衛生委員会の設置義務をすべての事業場に拡大する。衛生委員会の設置基
準について、当面は現行の 50 人以上から 30 人以上に変更する。また、事業場内の協力
会社(下請会社、派遣元など)の安全衛生担当者を含めた「合同安全衛生委員会」の創
設義務づけを検討する。
⑩第 11 次労働災害防災計画に基づき、計画実行に必要な予算・人員を確保し、重大災害の
減少とリスク低減対策を一層推進する。
⑪ILO第 155 号条約(安全衛生)、同第 170 号条約(職場における化学物質の使用の安
全に関する条約)、同第 174 号条約(大規模産業災害の防止に関する条約)を早期に批
准し、日本の安全衛生水準の向上に向け関連する国内法を整備する。
⑫ILO第 200 条勧告(HIVおよびエイズと仕事の世界に関する勧告)に基づき、雇用
・職業上の差別禁止に向けた政策を推進する。
⑬自殺対策基本法に則り、職域における自殺の防止計画の策定、遺族や職場同僚へのケア
対策や支援策を強化する。また、過労自殺の労災認定基準を見直す。
⑭地方自治体と、精神科医、自殺予防に取り組むNGO/NPOの連携を強化し、地域ぐ
るみの自殺対策を有効に機能させる体制を整備する。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
(3) 労災補償の拡充
①労災補償の認定について、労使も参画した「認定基準等審査会議(仮称)」を設置し、
労災適用対象疾病の拡大や精神疾患も含めた認定基準の積極的な見直しを行うととも
に、申請者から使用者への立証責任の転換を含む労災保険制度の運用の改善を通じて、
幅広く認定する。
②多重就労者の労災保険給付については、就労している複数の事業所で得ることのできる
収入の合算に対して補償額を決定する。
③労災隠しの摘発を強化する。
④労災保険審査制度の改善にあたっては、対審構造化など行政不服審査法改正案の原則を
導入しつつ、厚生労働大臣所管の「労働保険審査会」を廃止し、地方一審制(労使の参
与制度は存続)とする。
⑤労災保険制度の民営化は行わない。
⑥労災保険特別加入制度について、適用範囲の拡大など必要な見直しを行う。
9.アスベスト予防対策を強化し、関連疾患の早期発見・治療技術を確立する。
(1) アスベストばく露予防対策の強化と補償の充実
①アスベスト関連疾患の労災認定基準を緩和し、幅広く認定するよう改善する。
②石綿障害予防規則の実効性を高めるため、監督・実地調査を強化する。また、労働者・
管理者に対する研修などにより、ばく露予防の実効性を確保するとともに、ばく露に関
する広報を強化する。
③小規模建築物も含めたアスベスト使用の実態調査を実施する。アスベスト含有製品使用
の可能性がある建築物などの解体・撤去作業については、台帳などによる適切な管理を
行うとともに、作業を行う労働者と建築物などの利用者のばく露予防措置を徹底する。
④アスベスト代替素材の開発を支援し、安全性が確認されたものを普及・促進させる。さ
らに、大量のアスベスト含有建材が廃棄物として排出されることから、アスベスト繊維
の安全で安価な無害化技術の開発・普及を支援する。
⑤環境ばく露による石綿救済法の「指定疾病」について、現在は重度のもののみに限定さ
れていることから、さらに対象を拡充する。また、給付水準を労災保険並みに引き上げ
る。
(2) アスベスト関連疾患の早期発見と治療技術の確立
①アスベスト被害に対する国の責任を明確化するとともに、石綿健康被害救済法の「アス
ベスト基金」に対する国の出資を大幅に引き上げ、アスベスト関連疾患対策を充実させ
る。
②中皮腫の治療手法について諸外国と協力して研究するとともに、アスベスト関連疾患の
早期発見のための手法・機材を確立し、医療スタッフに対する研修を充実させる。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
③空気中濃度調査や疫学調査などの各種調査を充実させ、発症・治療対策に活かせる体制
を構築する。
10.外国人労働者の雇用を改善し、外国人技能実習制度の見直しを進める。
(1) 外国人労働者の人権を尊重し、労働者保護を確保する。
①就労資格の有無にかかわらず、外国人労働者の労働基本権、日本人と同等の賃金・労働
時間そのほかの労働条件や、安全衛生、労働保険の適用を確保する。
②労働諸法等について、日本の入国時のパスポートチェックの際に、労働者の理解できる
言語による資料の提供を行う。
(2) 外国人労働者の受入れは、専門的知識・技術・技能を必要とする職種に限定し、在留資
格就労資格の緩和は行わない。医師や看護師など法律上日本の資格を有しなければ就業で
きない「業務独占資格」はもとより、他の国家資格であっても国家間相互認証はしない。
(3) 学校段階からの多文化教育の導入など、外国人に対する差別意識の解消をはかる。
(4) 日本に居住する外国人の子どもの教育を受ける権利と教育機会の確保をはかるため、母
国語学校などの教育実施機関に対する助成措置などを行う。
(5) FTA/EPA/TPPなどを通じ、外国人労働者の受入れを拡大しない。
①相手国の資格を相互承認することで受入れを拡大しない。
②看護・介護分野などでも労働条件や雇用環境、日本語による意思の疎通、出稼ぎによる
家族離散、送出し国の頭脳流出などの課題があり、安易な受入れを行わない。
③看護師・介護福祉士候補者について、実態を検証した上で資格試験に向けた日本語教育
などの更なる支援の充実、制度の抜本的な改善を行う。また、不合格者の母国での就職
支援を要請するなど、残留を合法化する制度改正を行わない。
④プライバシーに配慮しつつEPAにより受入れた労働者の処遇・労働条件などを調査し、
調査結果を公表する。また、労働者への母国語による相談体制を確立する。
(6) 外国人技能実習制度の見直しを進める。
①「国際貢献」という制度本来の趣旨を逸脱し、劣悪な研修・労働条件や賃金未払い、失
踪、人権侵害など、入管法違反や労基法違反の運営が行われないよう、制度改正の効果
を注視するとともに、制度の見直しを進める。
②外国人技能実習制度による在留については、入国時点から「労働者」として労働法規等
の適用の対象とする。
③外国人技能実習制度に関連する劣悪な内容での契約締結などを解決するため、公的機関
・民間企業を問わず、不正行為・違法行為のあった外国人実習生の送出し機関・受入れ
機関がこの制度に関与できないよう、規制を強化する。
④外国人技能実習制度が技術・技能の移転による相手国の発展という制度本来の趣旨に合
致しているか検証するため、実習生が帰国した後の追跡調査を強化する。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
11.最低賃金の機能を強化し・充実し、水準改善をはかる。
(1) 地域別最低賃金は、雇用形態による賃金格差を縮小させ、賃金を底支えする役割を期待
されている。すべての労働者が生活保護水準を上回ることはもとより、必要最低生計費の
実態や一般労働者の賃金水準も考慮して、早期に全ての地域で 800 円を実現し、さらに平
均 1,000 円を達成すべく、審議会の適正な運営にかかる支援を行う。
(2) 特定(産業別)最低賃金は、団体交渉の補完機能として労使関係の安定や事業の公正競
争確保の役割を果たしている。新設や改定の申し出をし易くするための施策を講じ、水準
の改善はもとより、機能の拡充をはかる。特に、介護・福祉分野をはじめ第三次産業にお
ける創設に向けた活動を推進・支援する。
(3) 労働基準監督官の増員などにより監督行政の抜本的強化をはかり、違反事業所の摘発な
どを通じて最低賃金の遵守を徹底する。
(4) 家内労働工賃の業種についての見直しを行い、実態にあった新設をはかる。また、現行
家内労働工賃の審議の充実をはかるとともに、その水準の引き上げと改定サイクルの短縮
を促進する。
12.中小企業における勤労者の福祉の向上をはかる。
(1) 中小企業勤労者の福祉の充実に向け、中小企業勤労者福祉サービスセンターに対する支
援を強化する。また、国からの経費の一部負担が 2010 年度をもって全廃されることから、
事業のあり方等を含め自立化に向けた支援を促進する。
(2) 「人材の確保・育成」の支援のため、中小企業労働力確保法にもとづく各種助成制度の
活用促進や優遇税制等経費の負担軽減措置など、中小企業にとって実効性ある総合的な施
策を構築する。
(3) 中小企業における高齢者雇用の促進のため、高齢者の継続雇用や定年引き上げ等に対す
る助成金を継続する。
(4) 複数の中小企業が事業協同組合等を活用した障害者雇用率制度を適用する際は、雇用主
として責任を確保するよう指導徹底する。
(5) 中小企業労働者や職業能力開発機会が限定されている地域に居住する者について、国・
地方自治体・地域の教育訓練機関等が連携し、職業能力開発に関する機会や情報における
企業間格差・地域間格差の是正をはかる。
(6) 技術・技能の継承や人材の確保・育成などについて課題を抱えるものづくり産業の中小
企業に対し経済産業省・厚生労働省・文部科学省など等の連携を強化し、人材投資促進税
制の継続や人材の確保・育成に関する支援措置を拡充する。
(7) 中小企業退職金共済制度への加入促進と勤労者財形制度の普及・啓発を促進する。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
(8) 一般の中小企業退職金共済制度では、「掛金納付期間が 1 年未満は支給なし(2 年未満
は掛金納付額を下回る)」となっているが、企業の倒産・廃業の場合には掛金相当額が受
給できるよう措置を講ずる。また、特定業種退職金共済制度においても、一般の中小企業
退職金共済制度と同様に「掛金納付期間が1年未満は支給なし」となるよう措置を講ずる。
(9) 中退共と税制適格年金を併用している企業における税制適格年金からの中退共への移行
を可能とする。
(10)時間外労働の法定割増率を時間外 50%、休日労働 100%、深夜労働 50%に引き上げる。
とくに、休日労働の割増率は 35%から 50%以上に早期に引き上げる。また、改正労働基準
法第 37 条による月 60 時間超の割増率引き上げについて、中小の適用猶予措置は早期に廃
止する
13.労働紛争の解決の迅速、適正化に向けて紛争解決機関などの整備・改善を行う。
(1) 労働紛争処理の専門機関としての労働委員会の改革・活性化を促進する。
①改正労働組合法(2005 年 1 月施行)の効果を検証し、審査のさらなる迅速化・的確化を
進めるため、新証拠提出の制限など、必要な見直しを行う。
②物件提出命令や証人出頭命令の運用を見直し改善する。
③労働委員会の出した物件提出命令や証人出頭命令に不服がある場合の行政訴訟を制限す
る。
④労働委員会命令の行政訴訟においては、「実質的証拠法則」を導入して労働委員会の判
断を裁判所に尊重させる。
⑤労働委員会命令の司法審査は、地方裁判所からではなく高等裁判所からとする。
⑥労働委員会の「救済命令」の実効性の観点から、受訴裁判所による「緊急命令(取消訴
訟の進行中に「救済命令」の全部または一部を暫定的に強制履行させる制度)」を見直
し改善する。
⑦都道府県は、専門的知識と経験を持つ職員の育成・配置など、労働委員会の事務局体制
を強化する。
⑧労働委員会では「個別労働紛争の適切な解決の促進」「迅速・的確な審査手続きの充実」
などをテーマに「労働委員会活性化」に向けた取り組みが行われている。労働委員会が
本来の機能と役割を果たすことができるよう、厚生労働省は、労働委員会を所掌する官
庁の責任として、この取り組みを全面的にバックアップし、労使から信頼される労働委
員会制度の確立をはかる。
(2) 労働審判制度開始以降の運用について、検証・分析を行い、適切な見直しを行う。
①労働事件を担当する裁判官・書記官・事務局を増員する。
②一定の要件を満たした労働組合役職員の手続き代理を認める。
③労働審判の定型申立書を作成し、申し立てが簡便にできるようにする。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
④書証などの閲覧については、事前配布もしくは労働審判員用の書証を用意する。
⑤答弁書の提出期限の遵守を徹底するよう、周知徹底をはかる。
⑥出頭期日における当事者の審尋については、迅速な解決のためにも、責任を持って判断
できる当事者が出席するようにする。
⑦労働審判員の能力向上のため、事例研究の機会を増やすとともに、適切な研修を政府予
算により毎年開催する。
⑧健全な労使関係構築のため、審判員経験者が各企業・労働団体の職場でその経験をフィ
ードバックできるよう環境を整備する。
(3) 労働事件を扱う司法制度を充実させる。
①司法制度改革を引き続き実施するとともに、検証・見直しを行う
②労働事件に、労使の専門家が参加する「労働参審制」を全地方裁判所に導入する。なお、
参審員は労使団体から選出された者を裁判所が任命し、裁判官と同じ評決権を持たせる。
③定型訴状を導入し、提訴が簡便にできるようにする。
④組合役職員の訴訟代理を認める。
⑤労働組合の「団体訴訟」を認める。
⑥労働関係訴訟の専門性確保の観点から、主要な高等裁判所に、職業裁判官 1 名と労使団
体の推薦による「労働裁判官」(仮称)2 名の計 3 名により事件処理にあたる「労働高
裁」(仮称)を創設する。
(4) 都道府県労働局の紛争調整委員会による紛争解決の実効性をあげるため、体制を強化す
るとともに出頭命令などの権限を付与する。
(5) 労働者が利用しやすい労働紛争事件解決機関となるよう、労働審判、都道府県労働委員
会、都道府県労働局の紛争調整委員会を強化するとともに、各機関が協力して周知徹底を
はかる。また、労働紛争解決機関の協議・意見交換や紛争解決機関と労働相談を行ってい
る機関(国、自治体、労働組合、NPO、民間ADR)との協議・意見交換ができる場を
設置する。
<実現に向けた取り組み>
取り巻く情勢を勘案し、各年度ごとに要求項目を重点化したうえで、次年度の予算編成に
向けて早い段階から政府との定期協議や各省庁との政策協議を行い、要求実現の働きかけを
行う。
(1) 連合は、政策に関する資料の作成・配布、政府・政党との協議など通じて連合の政策の
周知をはかるとともに、社会的アピールを行う。また、国会で法改正が行われる段階にお
いては、院内集会の開催、国会傍聴行動などを中心に取り組む。また、政党との連携を強
め、機動的な体制を確立して要求の実現をはかる。
(2) 構成組織は、連合が提起する政策実現のために、政策実現集会などを通じて組合員への
理解の浸透に努める。また、学習会の開催や職場決議採択など、職場段階の取り組みを強
化する。
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2.雇用の安定と公正労働条件の確保
(雇用・労働政策)
(3) 地方連合会は、政策実現に向けて自治体要請などの働きかけを強めるとともに、必要な
課題については地方議会における意見書採択を行う。また、社会的広がりをもつ課題につ
いては、経営者団体やNPO団体へ働きかけを行い、幅広い世論形成と運動展開に努める。
(4) 審議会・分科会の各委員は、各審議会において、積極的に発言・提言を行うとともに、
連合も厚生労働省を中心に担当省庁への働きかけを強める。
(5) 学習会、フォーラムなどを通じて、要求内容の相互理解を深め、組合員の参加はもとよ
り、関係団体などとの広範な取り組みを組織し、国民世論の形成をはかる。また、わかり
やすい政策パンフレット、メディアの積極活用、マスコミ対策などを強化する。
以
- 77 -
上
3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
3.安心できる社会保障制度の確立
福 祉 ・ 社 会 保 障 政 策
<背景と考え方>
(1) 急速な少子高齢社会の進行、グローバルな経済や金融の激しい変化、労働市場の規制緩
和と非正規労働者の増大、貧困と社会的格差の拡大、社会保障財源の逼迫など、社会保障
と国民の生活をめぐる状況は大きく変化している。しかし、こうした社会・経済の変化に社
会保障制度が対応できておらず、人々は将来への不安を抱いている。
2010 年 7 月菅政権は、社会保障をコストとしてではなく、「未来への投資」と位置づけ、
「強い経済、強い財政、強い社会保障」を一体的に進める基本的考え方を示した。経済状
況の伸び悩みや財政状況の悪化に伴い、2011 年度予算の編成にあたっては、「ペイ・アズ
・ユーゴー原則」が出されるなど財政制約が一段と厳しくなっており、社会保障と財源を
総合的に改革することが喫緊の課題となっている。
政府社会保障改革検討本部は、社会保障の安定・強化のための具体的な制度改革案と必
要財源を明らかにし、社会保障と税の一体改革について、2011 年夏までに一定のとりまと
め、2012 年 3 月までに、消費税を含めた税制改革法案をとりまとめていくとしている。同
時に、この議論を超党派で進める「社会保障諮問会議(仮称)」の設置なども提起した。
社会の変化や多様化に対応した社会保障の機能強化は待ったなしの状況にあり、2011~
2013 年度は、社会保障と税の一体改革に具体的に着手していく重要な時期となる。持続可
能な社会保障への改革と機能強化のために、国民合意の下に議論をすすめていく必要があ
る。
連合が提起した「働くことを軸とする安心社会」は、「積極的雇用政策」と連携した「積
極的社会保障政策」を軸に、誰もが働くことができる社会、居場所のある参加型の社会で
ある。連合は国民の安心と将来への希望につながる社会保障のあるべき姿と改革の方向へ
の道筋を再整理し、「働くことを軸とする安心社会」の構築をめざす。このトータルビジ
ョンを支える主要な柱として、2011 年 2 月、連合「新 21 世紀社会保障ビジョン(案)」
を提起しているが、社会経済を支える基盤としての社会保障の機能を強化するとともに、
とりわけ子ども・子育て支援、若年者や現役世代への支援等、未来への投資として全世代
型社会保障への転換をめざす。
(2) 経済のグローバル化、労働市場の規制緩和とともに、不安定低賃金の非正規労働者が増
加し続け、全雇用労働者に占める割合は 3 分の 1 を超えた。2008 年秋以降の国際金融危機
による経済の低迷と相まって、将来の基幹労働力となる若年雇用が脅かされている。最低
賃金は国際的にみても依然低水準のままである。年収 200 万円以下の者が 1,000 万人を超
え、その 4 割強が主たる生計者であり、働いていても生活していけるだけの所得が得られ
ないワーキングプアが増大している。特に女性雇用者は 4 割以上が 200 万円以下の給与所
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
得である。
また、非正規労働者等の多くが雇用保険の適用を受けられず、また適用されている場合
でも失業が長期間にわたり雇用保険のセーフティネットから抜け落ちる人が増大してい
る。働くことで経済的自立が叶わなかった人、働くことから排除されることで社会からも
排除される人、低年金・無年金で高齢期に困窮する人々が増加している。そのため、生活
保護世帯数は増加し続けている。また、高齢者女性の 5 割強、母子世帯の 6 割弱が貧困状
態であるなど、女性の貧困も依然として問題となっている。さらに、失業と同時に住宅を
失う「ハウジングプア」も問題となっている。
これまでの日本社会を支えてきた「中間層」が二極化、社会的格差の拡大・貧困層の増
大が進行し、社会的・経済的ストレスが増大している。経済的な理由による自殺の増大、
児童虐待の増大など、社会的病理は一層深刻化している。
2009 年 12 月から始まった「ナショナルミニマム研究会」(厚労省)は、生活保護の対
象となる生活水準より収入が少なく、貯蓄など一定の資産もない「低所得世帯」の世帯数
などを初めて推計した。国民生活基礎調査に基づく推計では、実際に生活保護を受けた世
帯が 108 万世帯だったのに対し、最低生活費未満の低所得でありながら生活保護を受けて
いない世帯数(資産考慮後)は 229 万世帯存在し、生活保護世帯の捕捉率は 32%と推計さ
れた。
生活保護制度のもつ生活保障の機能を発揮させるとともに、社会保険に加入できない非
正規雇用者、失業者等の生活を支援する新たな給付制度を創設するなど、社会的セーフテ
ィネットの再構築が求められている。
(3) 高齢者の約 6 割が年金収入だけで生活していることに加え、高齢者世帯収入に占める年
金の割合が 7 割程度あるなど、年金は高齢期における所得保障の中心になっている。その
一方で、月額 5 万円以下の高齢者が 4 割弱を占めるほか、無年金者が 110 万人程度いるな
ど、高齢期における所得保障の役割が十分に果たされていない。
他方、年金給付を支える財源については、基礎年金の国庫負担割合を 1/3 程度から 1/2
への引き上げが 2004 年年金改正時に決定されたあと、ようやく 2009 年度予算で基礎年金
の国庫負担割合 1/2 への引き上げ関連法案が採決された。しかし、その財源は財政投融資
特別会計の積立金、いわゆる「埋蔵金」によって 2009 年度および 2010 年度の 2 年間のみ
を凌ぐものであった。さらに、政権交代後の民主党政権も国庫負担割合 1/2 の財源確保に
苦心し、2011 年度は鉄道建設・運輸施設整備支援機構の利益剰余金、および財政投融資特
別会計の積立金など、いわゆる「埋蔵金」を活用し、1 年度限りの時限措置とした。もう
一方の年金財源である保険料については、国民年金保険料の納付率は 60.0%(2009 年度)
と低迷が続き、特に若年層の納付率が低下し、国民年金の空洞化に歯止めがかかっていな
い。「国民皆年金」の再構築が重要な課題となっている。
新政府は「新年金制度に関する検討会」および「新年金制度に関する実務者検討チーム」
を立ち上げ、2010 年 6 月に年金制度の一元化や最低保障年金の導入など新年金制度に関す
る7つの基本原則をまとめたものの、国会における与野党協議等は具体的な進展はみられ
- 79 -
3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
ていない。
被用者年金の一元化、パート労働者への厚生年金適用拡大について具体的な進展はない。
国民年金保険料の事後納付期間(現行 2 年)を 10 年に延長するほか、企業型確定拠出年
金における従業員拠出の解禁(マッチング拠出)、厚生年金基金の特例解散などを包括し
た「年金確保支援法案」が第 174 回通常国会へ出されたが、第 177 回通常国会まで継続審
議扱いとなっている。
社会保険庁に代わる年金組織として 2010 年1月に「日本年金機構」が発足した。年金記
録問題に関しては、2010 年 10 月から、年金記録問題への対応策の柱として、厚生年金と
国民年金の紙台帳の記録約 9 億 5,000 万件のうち、重複などを除く約 7 億 2,000 万件に対
し、日本年金機構の職員を増強し、4年間かけてコンピューター上の記録と照合する作業
を開始した。
(4) 医療費抑制政策などにより、地域における病院の廃院、診療科の削減、地域ごとの医療
人材の地域偏在が起き、地域医療提供体制の再建が課題となっている。また、急性期病院
を中心として医療の現場がひっ迫している中で、医師、看護師等の医療人材の確保に困難
を来たしている。いずれの地域においても医療へのアクセスが確保でき安心して暮らせる
よう、地域医療提供体制の再構築が急務となっている。
少子高齢化の進行により、高齢化率(65 歳以上人口の比率)は 2010 年の 23.1%から 2025
年には3割に達する見通しとなっている。人口構造の大きな変化は、疾病構造や地域社会
の構造に大きな変化を及ぼす。どこに暮らす人も安心して医療サービスが受けられる体制
を確保するため、在宅医療、訪問看護の充実など医療と介護の機能分化と連携強化が求め
られている。また、統合失調症のほか認知症、うつ病など精神疾患の患者が急増している
一方、日本の精神疾患の対策は極めて遅れており、予防対策や相談支援、早期から良質な
医療が受けられ、地域で安心して自立した生活を継続できる体制の構築が求められている。
超高齢化により、労働力人口が相対的に減少するとともに、現役世代の所得格差が広が
っており、高齢者医療に係る費用を現役世代の保険料に依存した運営を困難にしている。
また、保険料(税)や窓口負担の重さから、所得格差が結果として「健康格差」を生んで
いるとの指摘がある。超高齢社会、格差社会において、すべての人々に医療サービスへの
アクセスを保障するため、持続可能な「国民皆保険」制度を再構築することが求められて
いる。
医療提供者と患者・家族等の間の「情報の非対称性」は依然として大きく、両者の信頼
関係の構築を支援する環境づくりが課題となっている。2010 年より原則無償発行が義務化
された診療「明細書」をはじめレセプト、カルテ等自己の医療情報へのアクセスの保障、
医療事故の原因究明、再発防止策の確立などにより、「患者本位の医療」の推進が求めら
れている。
国民全体の疾病の発生を抑止し、人々の健康水準を引き上げるため、健康診断の普及や、
食事や日常の活動など生活習慣の見直しに加え、企業行動を含めた健康増進アプローチに
積極的に取り組むことが求められている。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
(5) 超高齢社会において、介護サービスに対する需要の大幅な増加が見込まれる中、「介護
の社会化」という理念を掲げ、2000 年 4 月にスタートした介護保険制度は 10 年が経過し
た。寝たきり、寝かせきりの老人病院など、収容型のかつての高齢期の生活の質は大きく
前進してきたが、超高齢化や認知症、単身高齢者の増大など、新たな課題に直面している。
また、介護サービスを支える介護労働者の安定的な確保、安定的な財源確保などが喫緊の
課題となっている。社会保障国民会議におけるシミュレーションでは、2007 年時点で約
117 万人いる介護労働者が高齢化の進んだ 2025 年には約 133 万人増の約 250 万人必要との
試算を示しており、約倍以上の介護労働者の確保が必要とされている。潜在的介護福祉士
は約 22.5 万人と推計されているが、すべての潜在的介護福祉士が職場復帰を果たしても
マンパワーの必要量に到達するのは難しい状況が明らかになった。介護保険制度を担う人
材がいなければ制度自体成り立たず、介護現場では介護労働者不足によって事業所が閉鎖
される例も増えており、また、労働環境の問題や低賃金を理由とした高い離職率によって、
介護保険制度が人材不足から崩壊しようとしている。介護を必要とする人の尊厳あるくら
しを支えるための制度が安定的に持続するために、介護労働者が果たすべき役割は非常に
大きい。
このような危機意識を受け、2008 年 10 月政府・与党において「介護従事者の処遇改善
のための緊急特別対策」として、2009 年度の介護報酬改定率が 3.0%と決定され、2009 年
4 月より実施されている。同年 10 月には、2011 年度までの時限措置として、全額国費に
よる「介護職員処遇改善交付金(常勤換算一人当たり月額平均 1.5 万円の賃金引き上げに
相当する額)」が処遇改善に取り組む事業者へ交付されている。
こうした状況を踏まえ、2011 年度通常国会で提出される介護保険法改正に向けた「介護
保険制度の見直しに関する意見」は、地域包括ケアシステムの実現、持続可能な介護保険
制度の構築を基本的な考え方としてとりまとめられた。
医療ニーズを抱えた要介護者が安心して住み慣れた地域で生活するためには、地域間格
差の解消と、一層の医療と介護の連携が必要であり、要介護者の在宅生活やそれを支える
家族に対するケアなど、地域包括ケア体制の充実と同時に、円滑な病床の転換を促進する
必要がある。
介護保険制度の被保険者・受給者範囲の拡大については、介護を必要とするすべての人
が、年齢に関わらず必要なサービスを受けることができるよう、普遍的制度への発展をめ
ざす必要がある。
(6) 2009 年秋の政権交代以降、民主党はマニフェストに障害者権利条約の批准と必要な国内
法の整備、障害者自立支援法の廃止とそれに変わる新しい障がい者総合福祉法の制定を掲
げ、鳩山内閣総理大臣を本部長とする推進本部を立ち上げた。
障がい者制度改革に向けた「障がい者制度改革推進会議」が設置され、多面的な議論が
なされ、2010 年 6 月に「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」(第一次意見)、
12 月に同(第二次意見)がまとめられた。この推進会議の期間は 5 年間で必要な改革を行
うとしているが、2011 年は改革の 2 年目にあたり、戦後初めての障害者政策の画期的な見
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
直し作業が進んでいる。委員は、障がい当事者半数以上のメンバーで構成され、2010 年
11 月には、「障がい者差別禁止法制定(仮称)」(2013 年法案提出予定)の策定に向け
て、差別禁止部会が設置された。障がいを理由とするあらゆる差別を撤廃する包括的な枠
組みを構築する必要がある。
障害者権利条約の趣旨をふまえ、障がいの有無にかかわらず地域で共に生活することが
確保されたインクルーシブ社会を実現することが求められている。障がい者のための地域
生活資源や地方自治体の体制整備、財源確保も含めて取り組むことが必要である。また、
障がい者の法定雇用率の向上と就労促進の支援策の拡充が急務となっている。
また、精神障がい者の入院患者は現在 320,000 人でそのうちの半分以上が社会的入院と
いわれているがこの数は世界的にも異例となっている。社会的入院を解消し、地域生活移
行に向けた住居の確保、経済的保障、生活支援などの体制が求められる。
(7) わが国の子どもの相対的貧困率は 14.2%(2009 年 10 月厚生労働省調べ)と先進諸国に
比して高く、「子どもの貧困」が社会問題化している。また、少子化が進行する一方で児
童虐待が多発するなど、子どもの豊かな育ちが脅かされている。
また、一向に解消されない待機児童問題、地方部における幼稚園・保育所閉鎖問題など、
わが国の子育て支援の仕組みが質量ともに不十分であり、切れ目のない子育てサービスの
構築が急務の課題となっている。
さらに、2009 年度および 2010 年度政府予算編成過程においては、私立認可保育所運営
費国庫負担金の一般財源化問題が浮上し、ただでさえ少ない子ども・子育て財源が、子ど
も・子育てに確実に振り向けられない状況が懸念され、保護者や関係者に大きな危機感を
与えた。既に「三位一体改革」の中で 2004 年に運営費の一般財源化が強行された公立保
育所では、非正規保育士が半数を超え、人材確保は困難を極めている。
こうした中、「チルドレン・ファースト」を政策理念に掲げた民主党政権は、「子ども
・子育て新システム」の実現をはじめとした、子ども・子育てを社会全体で支える仕組み
づくりを行っている。この「子ども・子育て新システム」においては、保育・幼児教育の
垣根を越え、永年の悲願とも呼ぶべき「幼保一体化」の検討も進んでいる。連合は子ども
・子育てを社会全体で支える仕組みとして「子育て基金(仮称)」構想を提起してきたが、
今こそ、社会全体で子ども・子育てを支えるという国民的合意を形成したうえで、政策と
財源を一体的に議論し、持続可能で総合的な次世代育成支援策を早急に構築する必要があ
る。
(8) 原爆症認定訴訟の終結に向け、2010 年 4 月に「原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題の
解決のための基金に対する補助に関する法律(原爆症救済法)」が施行された。これを受
け、広島・長崎における集団訴訟は終結したが、国内すべての訴訟終結にはいまだ至って
いない。
一方、被爆二・三世の健康不安等に対する課題については、現在二度目の「被爆二世健
康影響調査」が実施されており、厚生労働省は数年内に蓄積した知見の解析を深め、今後
の被害者援護施策の強化に向けて活用するとしている。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
<要求の項目>
1.国は、社会保障を全世代に広げるとともに、すべての人に就労機会とディーセントな雇
用を保障し、社会連帯を基礎に安全・安心社会を構築するため「働くことを軸とする安
心社会」をめざし、積極的雇用政策との連携による積極的社会保障政策を推進する。
(1) 国は、人々が就労し、健康で文化的な生活を送るための所得を得て、税金や社会保険料
を負担し、みんなで支えあう「働くことを軸とする安心社会」を実現するため、雇用政策、
教育政策、財政施策、税制等関連施策との連携をはかり、社会保障制度の一体的改革を進
める。併せて、地方分権の推進と税・財政制度等の改革、生活に密着した社会基盤(交通
・道路、公共施設、居住環境のユニバーサルデザイン化等)の整備を進める。
(2) 国は、積極的社会保障政策の推進やサービス提供の担い手を確保するためには、財源の
確保と社会連帯の理念による負担の分かち合いの社会的合意形成をはかるべきである。
「公平、連帯、納得」の理念の下、所得再分配機能の強化に向けて、「社会保障と税の一
体改革」を進め、年金、医療、介護、子育て支援、若者支援など全世代型の社会保障体系
に転換する。
(3) 国は、景気の動向や政権政策に左右されることなく、安定的な制度運営と財源を確保す
るため、「社会保障基金(仮称)」の設置を追求する。その運営組織については、制度運営
に被保険者代表や利用者・当事者が参画できる仕組みとし、政府から独立した公的な第三
者機関とする。
(4) 国は、安心と希望を保障するため、社会保障を次世代・若者育成支援を視野に全世代支
援型・すべての国民を対象としたセーフティネットへの機能強化を進める。高齢期の安心
を保障する「年金・医療・介護」に加え、「子ども・子育て」を社会全体で支援するしく
みを強化する。さらに、「居住の権利」を基本的人権として社会保障政策の中に位置づけ、
失業者や高齢者、障がい者、低所得者など住まいの保障を確保する。
(5) 国は、社会保障分野での雇用創出・人材確保については、持続可能な基盤強化や医療・
介護・健康・福祉・子育て分野等での雇用を魅力ある産業とするため、総合的、専門的な
人材確保・育成制度の整備、人員・設備および運営基準の改善、関係労働者の労働条件改
善を進める。特に、政府の「新成長戦略」を視野に入れ、内需主導型産業としての特性を
生かした、雇用創出の具体化を行い、社会保障の基盤整備をはかる。
(6) 国は、すべての労働者に十分対応した社会保険制度に改める。
①パート・派遣労働者や中小・個人事業所等のすべての雇用労働者の均等待遇と格差是正
をはかり、社会保険の「空洞化」解消と違法な未加入・脱退是正、企業の社会的責任の
観点から、すべての雇用労働者に社会保険を原則適用する。そのため、原則適用に相応
しい社会保険料の事業主負担(支払い総賃金額の一定率)とし、さらに、新たな適用形
態(社会保険事務組合、地域・業界ごとの適用等)を制度化するなどの抜本的見直しを
行う。なお当面、適用基準を労働時間要件「2 分の1(20 時間)以上」、ないし年収要
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
件「65 万円以上」(給与所得控除の最低保障額)として、いずれかの要件に該当すれば、
社会保険を適用する。被扶養者の年収要件(第 3 号要件)は 65 万円以下とする。また、
5 人未満および未適用業種の事業所についても社会保険の強制適用を行う。
②派遣労働者の厚生年金や健康保険等社会保険料について、派遣元が納付義務を怠ったと
きに、派遣先が補充責任として連帯債務を負うものとする。
③中小企業等の社会保険からの違法な脱退・未加入問題については、法の厳格な適用を行
う一方で、支払猶予制度や融資制度等の対策を講ずる。また、加入者本人の救済制度を設
ける。
④介護休業中の社会保険料の免除制度を創設する。
(7) 厚生労働省は、さらなる情報公開と透明性の確保をはかり、縦割り行政を是正し、社会
保険と労働保険の適用・保険料徴収の一元化等、福祉・社会保障と雇用・労働政策を総合
的に推進する。併せて、社会保険料拠出者の意見を十分反映するため、社会保険制度に関
わる各種審議会・分科会・部会の委員構成を公労使の三者構成にすることを明確化する。
委員構成については、当事者参加を前提とする。
(8) 国は、グローバル化・国際化時代に対応し、社会保障の相互協定を積極的に進める。ま
た、相互協定や国際関連条約における批准している条約などの国内の実施状況の点検を行
う。
(9) 地域福祉等社会的に重要な役割を担うNPO活動を育成・支援するため、寄付金を所得
税額の 20%まで税額控除できる制度を創設する。また、介護サービス等の福祉事業につい
ては、社会福祉法人と同様、非課税とする。
(10)「みんなのためにみんなでつくり、みんなで支える」「世代間・世代内の支え合い、助
け合い」という社会連帯の必要性、社会保障や福祉の意義・制度についての学校教育を充
実する。
(11)医療・福祉等の分野における規制緩和として、経営形態のあり方(株式会社等の参入)
の検討にあたっては、利用者の立場から、事業の継続性、透明性、安全性とサービスの質
を確保するため、労働関係法令遵守事項の情報開示を行うとともに、他事業との経営・財
務の分離・独立性の明確化等を前提とする。また、公的制度であり、財源も公費(税・保
険料)であることから国民への決算情報開示および収益の国民還元を前提とする。
(12) 所得再配分機能の回復・強化と安心と信頼の社会保障の実現の視点から、社会保障・税
共通の番号制度を導入する。
①番号制の早期導入にむけて、丁寧かつ集中的な議論を行い、国民にわかりやすい情報発
信を行う。
②利用範囲については、税務分野に加えて、年金分野(年金給付、国民年金の保険料減免等)
からスタートする。
③利用する番号については、住民票コードと対応させた新たな番号を付番する。
④目的外利用を禁止し、不正行為に罰則を設ける等法制上の措置を講じる。本人が自分の
情報へのアクセスを確認できるしくみとする。また、苦情処理、権利侵害に係る調査・
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
救済などの機能をもつ第三者機関を設置する。
⑤なお、法人についても、社会保険や法人登記との連携を含め、番号制度の整備ついて検
討する。
(13)国は、2012 年には診療報酬と介護報酬の同時改定を迎えることとなる。医療と介護の連
携を推進するための同時改定にむけた議論と具体化に向けた取り組みを進める。
(14)国は、「居住の権利」を基本的人権として社会保障政策の中に位置づけ、失業者、高齢
者、低所得者など住まいの保障を確立するため、住宅手当制度や住宅の提供など現金給付
・現物給付を含む「住宅支援制度」の創設など居住のセーフティネットを整備する。
(15)保育、介護、児童養護、障がい者福祉、義務教育など、生存権や生命の安全の確保等、
とりわけ人のとしての尊厳や子どもの成長に深くかかわるサービスについては、国の最低
基準の確保を前提とする。その上で、国家としての存立に関わる事務や全国的な視野に立
った施策、国の責任としてのセーフティネット等、国が担うべき事務以外の事務について
は広く地方自治体が担うべく、地方自治体の事務に対する国の義務づけを縮小する。( P183
~「行政・司法改革」参照 )
2.政府は、雇用政策と生活保護制度をつなぐ新たな社会的セーフティネットを構築する。
(1) 社会保険・労働保険によるセーフティネット機能を強化するとともに、新たな生活保障
制度を構築する。
①現在の生活保護制度と雇用保険制度をベースに、積極的な雇用労働政策と連動した社会
保険・労働保険制度の機能強化(第 1 層)、職業訓練や生活支援を内容とする「求職者
支援制度」(第 2 層)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障するための「最
後の砦」としての給付制度(第 3 層)による三層構造のセーフティネットに再構築する。
<第 1 層>
a)積極的な雇用労働政策に転換し社会保険、雇用保険の適用対象を拡大するとともに、
最低賃金や雇用保険の求職者給付の額を引き上げ、セーフティネット機能を強化する。
( P56~「雇用・労働政策」参照 )
b)介護、医療、福祉、保育等福祉型社会において不可欠なサービス部門を中心に、積極
的に雇用・就業機会の創出をはかる。(P14~「経済政策」参照 )
<第 2 層>
c) 職業訓練や生活支援を内容とする「求職者支援制度」を創設する。( P56~「雇用労働
政策」参照 )
<第 3 層>
d)健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障するための「最後の砦」としての給
付制度(「生活保障給付」(仮称))は、以下の内容とする。
ア)「生活保障給付」は、現行の生活保護制度に代わる最低生活保障制度とし、すべて
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
の居住者が受給できるものとする。
イ)給付の基準を法律で定め、制度に国民の意思を反映させる。また、支給審査の判定
基準を可能な限り法令で定め、判定における裁量を小さくする。
ウ)「生活保障給付」の種類は、最低生活費を満たす現金給付、就労自立支援・日常生
活自立支援・社会生活自立支援のための現物給付および現金給付、教育給付(義務
教育および高等学校への就学に要する費用)からなるものとする。
エ)給付水準は現行の生活保護制度における最低生活費を保障する。
オ)給付期間は定めない。また、受給者が「求職者支援制度」への移行を可能とする。
カ)補足制の原理を適用し、給付要件の適合状況の厳格なチェックを行う。また、現金
・預貯金については、現行の生活保護制度における最低生活費の 3 カ月分程度まで
緩和する。
キ)扶養照会の範囲を生活保持義務者(夫婦相互間、親および未成熟の子)に限定し、
扶養義務を強要する運用を改善し、将来的には民法の扶養義務の範囲も縮小する。
ク)「白紙委任的な包括同意書」等を内容とする、いわゆる「123 号通知」とその関連
通知を廃止する。
②国および地方自治体は、「生活保障給付」制度の実施機関を、以下のとおりとする。
a)申請受理、調査、ケースワークは、現行の生活保護制度における福祉事務所が担う。
そのため、生活問題の複雑・多様化等福祉現場の業務拡大等を踏まえ、ケースワーカ
ー(現業員)等職員の人件費、福祉事務所の事務費等について国庫負担に含め、職員
の専門性を高める。
b)ケースごとに福祉事務所、共同出資機関、公共職業安定所、生活支援に必要な専門的
なサービスを提供する機関や専門職等の役割を定め、これらの連携を確実なものとす
る。就労・自立支援プログラムの内容、実施状況、給付の停・廃止の判断等を中立・
客観的に評価できる仕組みとする。
c)給付を必要とする人が申請の権利(保護請求権)を確実に行使できるよう、実施機関
の窓口に申請書式一式を備え置くことを義務づける。
d)受給者の権利擁護をはかるため、苦情や相談、不服申し立て(審査請求)を受付け、
調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。
③「生活保障給付」に要する費用は、国と地方が負担する。
(2) 政府は、生活保護世帯の捕捉率が約 3 割の水準に留まっている(厚生労働省「ナショナ
ルミニマム研究会」の推計(2010 年 4 月))要因について調査し、必要な人に「最後の砦」
としての生活保障給付を確実に行える体制を検討する。
(3) 低所得層の自立支援に向け、国と地方自治体の連携による「住宅支援制度」、「医療・
介護費補助制度」を創設する。
①住宅の現物給付と家賃補助による「住宅支援制度」を構築する。
a)収入が一定基準(生活保護制度の最低生活費の 1.3 倍未満程度)の持ち家のない人を
対象に、住宅の現物または家賃補助等を行う。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
b)給付水準は、地域ごとの家賃相場を勘案し定める単位基準額に基づき、所得に応じ逓
減するものとし、支給期間は設けない。給付対象となる住宅については、最低居住面
積基準を満たしたものを基本とする。
c)特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホーム等の居住費に対して、「住宅支
援制度」を適用する。
d)国が財源を保障し、事務は福祉事務所が行う。「住宅支援制度」の創設により、生活
保護制度の住宅扶助は廃止する。
②国民皆保険による医療・介護サービスを保障するため「医療・介護費補助制度」を構築
する。
a)生活保護受給者を含めた低所得者を国民健康保険および介護保険の被保険者とし、保
険料(税)と自己負担分を手当てするものとする。
b)収入が一定基準(生活保護制度の最低生活費の 1.3 倍未満程度)の人を対象とする。
c)財源は国と福祉事務所を設置する地方自治体の負担とし、事務は福祉事務所が行う。
「医療・介護費補助制度」の創設により、生活保護制度の医療扶助および介護扶助は
廃止する。
(4) 政府が「第二のセーフティネット」と位置づけた支援のうち、社会福祉協議会が申請窓
口となっている総合支援資金貸付について、連帯保証人等の貸付要件を緩和する。また、
雇用保険の基本手当等の給付対象者に対する緊急小口資金について、住所等の貸付要件を
緩和する。併せて、円滑な制度実施のため財政措置を講ずるとともに、生活資金貸付制度
の周知を徹底する。
(5) 国および地方自治体は、住居を持たない生活困窮者に対して生活保護の給付を行い、併
せて社会的なつながりに対する支援を充実させていくほか、緊急一時保護施設(シェルタ
ー)の活用、自立支援センターの整備・拡充等の適切な対応をはかる。
(6)
国および地方自治体は、ホームレスの自立支援にあたっては、新たな貧困層(ワーキン
グ・プア等)等若年層への支援を含めたパーソナル・サポートなど、就業支援事業や自立支
援センターの退所者に対する相談・支援体制を整備・拡充するなど、就業機会の確保によ
る自立支援策を強化する。なお、同法の第 11 条(公共施設の利用が妨げられている場合は、
その管理者が適正利用のための必要な措置を講じる)は、国際人権法に則ったうえでの措
置とする。
3.年金空洞化の解消と真の国民皆年金の確立に向け、基礎年金の税方式化や年金一元化を
実現し、老後生活の基本を支える安心と信頼の年金制度を構築する。
(1) 政府は、 2004 年の年金制度改革によって導入された、14 年連続の保険料引き上げと「マ
クロ経済スライド」を改め、早期に以下の点を柱とした年金制度に抜本改革し、真の皆年
金を確立する。
①基礎年金の「空洞化」を解消し、「皆年金制度」を再構築するため、早期に全額税方式
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
へ転換する。厚生年金等の被用者年金は、所得比例年金として引き続き保険方式とする。
a)基礎年金の財源は、1/2 を一般財源とし、1/2 を「社会保障目的税」から充当して、
高齢者および障がい者の生活費の基礎的部分をまかなう給付水準(月 7 万円程度)を保
障する。なお、一定以上の所得者は所得に応じて逓減する方式を検討する。
b) 基礎年金の 1/2 の財源に充当する「社会保障目的税」は、消費税に換算して 2015 年
時点で、3%程度必要となる。
c)「社会保障目的税」の導入にあたっては、現行消費税の欠陥是正(インボイス方式の
導入、逆進性緩和策)の措置を併せて実施する( P23~「税制改革」参照 )。
d)基礎年金を税方式に転換した場合の受給要件は、以下のとおりとする。
ア)老齢基礎年金の受給要件は、18 歳以後 5 年間日本に居住した者に受給権を与える。
基礎年金は、40 年間居住で満額給付とし、居住期間に比例した年金額(20 年居住で
半額)とする。なお、全額税方式への切り替え時期に国民年金保険料の未納期間(未
加入期間)がある場合は、その期間は基礎年金の算定期間(居住期間)に入れない
制度とする。ただし、給付減額により受給額が少ない人に対しては、最低保障給付
を行う。
イ)遺族基礎年金の受給要件は、18 歳未満の子どもがいる配偶者あるいは 18 歳未満の
子どもであることとし、その子どもが日本に居住していることとする。
ウ)障害基礎年金の受給要件は、18 歳未満に国内で障がいになった場合に 18 歳以降も
引き続き1年以上日本に居住することが見込まれること、また 18 歳以降に国内で障
がいとなった場合にその後も1年以上日本に居住することが見込まれることとす
る。
e)全額税方式に対応した年金運営体制(歳入、所得比例の保険料徴収、給付等)を構築
する。
f) 基礎年金を税方式にすることで、使用者側の保険料負担が現行制度よりも軽減される
に伴い、所得比例年金の労使負担率は使用者側 55%、労働者 45%とする。また、生活
保障の一定水準を確保しつつ負担可能な保険料とするため、所得比例年金の保険料率
は 15%程度とする。
g)全額税方式に移行するまでの間は、以下の措置を直ちに行う。
ア)2009 年度から実施された基礎年金の国庫負担 1/2 への引き上げについて、その財源
を財政投融資特別会計の積立金、いわゆる「埋蔵金」等で一時的に確保することを
早期に改め、一般財源による確保を求める
イ)年金の受給要件である加入期間 25 年を、諸外国の制度との均衡を考慮しつつ 10 年
程度に短縮し、受給権を拡大する。
ウ)国民年金の空洞化によって発生している未納者、免除者、学生納付特例者の保険料
相当分については、第 1 号および第 2 号被保険者の保険料で補てんするのではなく、
国庫負担でまかなう制度に改める。
エ)パート労働者等の厚生年金への適用拡大、被扶養者認定の年収要件の見直しで、第
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
3 号被保険者の対象者を縮小する。
②標準的な年金水準は、介護保険その他の負担が増加する今後の老齢期の生計費の基本部
分を担うものとするため、全給付期間を通じ、税・社会保険料を除く手取りベースで現
役労働者賃金の 50%以上の水準を確保する。
③パート・派遣労働者や中小・個人事業所等のすべての雇用労働者の均等待遇と、年金の
「空洞化」や違法な脱退等を是正するため、すべての雇用労働者が厚生年金に原則適用
とする制度に改める。
a)当面は、適用基準を労働時間要件「2 分の 1(20 時間)以上」、ないし年収要件「65 万
円以上」(給与所得控除の最低保障額)として、いずれかの要件に該当すれば、厚生
年金を適用する。また、5 人未満および未適用業種の事業所についても厚生年金への
強制適用とする。被扶養者の年収要件(第 3 号要件)は 65 万円とする。
b)派遣労働者の厚生年金保険料について、派遣元が納付義務を怠ったときに、派遣先が
補充責任として連帯債務を負うものとする。
④失業中も障害年金や遺族年金等の受給権に結びつく納付要件を確保するため、厚生年金
への「任意継続加入制度」を創設する。
a)継続加入期間の保険料負担は 2 年間を限度に猶予して、再就職後に追加分納する。
b)追納の保険料は、労使分、本人分(給付算定は半額)、免除制度(障害・遺族年金の
対象)との 3 選択制とする。
c)追納期間は猶予期間の 2 倍(4 年)以内とする。
⑤年金制度の一元化にあたっては、以下の点に留意しつつ進める。
a)雇用労働者への厚生年金の完全適用をはかったうえで、2001 年 3 月の閣議決定に基づ
く国家公務員共済年金および地方公務員共済年金の財政単位の一元化の実施を踏ま
え、関係者の合意を得つつ、完全な情報公開のもとで、被用者年金の一元化に向け推
進をはかる。
b)被用者年金一元化にあたっては、厚生年金、共済年金からの拠出が不公平にならない
制度とする。60 歳~65 歳の被用者年金の定額部分(1 階相当分)の給付、および基礎
年金の完全税方式までの間の「基礎年金拠出金」に関わる保険料負担があるため、1986
年以降の加入期間の 2 階部分について各制度が拠出する「被用者年金勘定(仮称)」
から給付を行い、財政単位の一元化をはかる。
c)旧恩給期間に係る追加費用は、国および自治体の責任で負担することを基本とし、厚
生年金の保険料や積立金に転嫁しない。
d)各制度間で加入記録が把握できるようにして、年金相談等のワンストップサービスを
実現し、加入者や受給者にとって利便性を向上させる。
e)社会保障・税の共通番号制度や消費税へのインボイス方式の早期導入等による所得捕
捉の徹底をはかり、自営業者の所得比例年金制度の創設をめざす。
f)自営業者等の保険料負担(事業主負担)のあり方を整理し、被用者年金と自営業者の
所得比例年金との一元化を展望する。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
(2) 政府は、年金記録問題を早期、全面解決をする。
①年金記録問題は国が責任を持って、全面解決にあたる。
②既に受給が始まっている高齢の被害者への救済を優先して行う。
③年金記録の回復は、本人挙証のみならず、税務局との連携や、企業や第三者の協力を求
め、早急に回復させる。
④「ねんきん定期便」で厚生年金、共済年金、国民年金の加入実績が確認できるよう記載
内容を充実させ、被保険者が確実に理解できる内容とする。
(3) 政府および関係諸機関は、労使の参加による年金制度の実施・運用を実現する。
①2010 年 1 月に発足した「日本年金機構」の運営体制のあり方について、保険料を拠出す
る労使の参画、運営責任の明確化、信頼回復、利便性の向上の観点から、以下の運営体
制とする。
a)国が「日本年金機構」の運営責任を負い、保険料を拠出する労使、被保険者の代表等
の意見が運営に反映される体制にする。
b)適用、徴収、裁定、給付、相談、記録管理の一体性を確保し、各事務を行う現場の声
が、年金制度の設計に反映される体制とする。
c)被保険者、受給者の個人情報が確実に保護される体制とする。厚生労働省が個人情報
保護の監督責任を負うこととし、個人情報の一元的な苦情処理体制を整備する。
d)年金運営に係る費用と効果を、運営に携わる機関全体で把握し、毎年度国民に明らか
にするとともに、健康保険との連携等国民のサービスニーズを把握し、業務運営に反
映する。
e)社会保険庁から引き継がれた年金記録問題への対応は、通常業務とは切り離し、専門
部門・部署で対応する。
f)厚生年金の未適用事業所に対する加入指導や職権適用を徹底するとともに、厚生年金
の被保険者に係る届け出が確実に行われるよう事業主に対する指導を強化する。
g)国民年金の保険料徴収について、市町村の税務事務との連携を強化し、保険料徴収を
徹底するなど、収納率を向上させる。
h)民間事業者等に業務委託する場合には、公正かつ適切に委託先を選定し、適宜費用対
効果を検証する。また、委託先の倒産、事故等による損害補償が行われることを条件
とする。
i)市町村と連携し専門実務家の協力を得て信頼ある年金相談業務を充実する。
j)転職等に伴って年金保険料の未納や年金制度からの未加入状態にならないように、被
保険者資格喪失の通知と国民年金第1号被保険者への切り替えを促す通知を行う。
②公的年金積立金の管理運用のあり方については、保険料を拠出する労使が参画する場で
検討する体制を確立し、以下のとおり改革を行う。
a)積立金は逓減して、高齢化のピーク時でも給付総額の 1 年分程度とする。
b) 積立金の運用は、中長期的な視点で債券運用を中心に元本確保、安定運用を基本とす
る。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
c)次世代育成支援策として、年金積立金から若者に対する自己啓発費用等被保険者に対
する還元融資制度を創設し、市場運用枠を縮小する。
d)積立金の管理運用における効率性、リスク分散の観点から、被用者年金一元化後も国
民年金、厚生年金、共済年金の積立金運用業務を、複数の主体に行わせる。
e)年金積立金管理運用独立行政法人の業務運営にあたって、以下のとおりとする。
ア)被保険者と事業主の代表が運用方針の決定等運営に参加し、運用実績を含む業務の
外部チェック機能を持たせる。
イ)運用上のリスクだけでなく、内部管理上のリスク管理を徹底し、公表する。
ウ)四半期ごとの運用実績等を、被保険者および受給者に分かりやすく公表し、年金個
人情報の定期的な通知の際に併せて情報提供を行う。
エ)自主的業務運営と責任の明確化をはかるため、役職員の天下り・出向人事を禁止す
る。
f)労使が拠出した保険料を活用して建設した施設については、運用実態を抜本的に検討
し、労使団体や自治体による利用計画等を含めて、国民資産として積極的な活用をは
かる。
③年金基金の運用に際し、社会的責任投資(SRI)を実施する。
a)連合「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」( 注 1)を基に、ワーカーズキ
ャピタルの最も代表的な年金基金の運用に際し、投資判断に「環境・社会(労働)・
コーポレートガバナンス」(ESG)など非財務的要素を考慮する責任投資を実施する。
b)責任投資が受託者責任の観点から問題ないことを担保するため、国民年金法、厚生年
金法に責任投資について言及するなどの改正を図る。
c)年金積立金管理運用独立行政法人、国家公務員共済組合連合会および地方公務員共済
組合連合会など公的年金の運用について、保険料拠出者の参画の下、公的年金に適切
な責任投資について検討する。
(4) 政府は、雇用と年金の接続を確保する施策を講じる。
①基礎年金の繰上げ受給減額率を、現行の 5 年で 30%から、現在の平均寿命をより反映し
25%へ早急に改善する。
②在職老齢年金非適用者(労働時間要件 3/4 未満、共済年金受給者、賃金以外の収入のあ
る者)との公平性を確保するため、現行の在職老齢年金制度を廃止し、総収入(賃金、
高年齢雇用継続給付金、事業所得、家賃、配当・利子等)をベースに、年金額を調整す
る制度に抜本的に改める。
③在職老齢年金の支給停止額の算定に用いる総報酬月額相当額について、受給時における
実際の賃金を反映する仕組みに改める。
(5) 年金課税の見直しに伴う税収増は、年金財政に全額繰り入れる。
(6) 独立行政法人や民間委託を含む年金事務費については、全額国庫負担を基本とする。
(7) 政府は、遺族厚生年金について、以下のとおり見直す。
①当面、遺族年金の支え手である被保険者の年収とのバランスをはかる観点から、年収 850
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
万円未満の遺族に支給される現行制度について、遺族となった者の年収に応じて、年収
600 万円程度から段階的に年金額を調整する仕組みに改める。また、適用認定について
は、毎年の年収をもとに認定する仕組みに改める。
②遺族厚生年金の支給要件の男女差(男 55 歳以上)については、将来の遺族年金のあり方、
方向性と整合性をはかりつつ、格差解消に向けて見直す。
(8) 雇用労働者である国民年金第1号被保険者についても、育児休業を取得した際の保険料
免除措置を導入する。
(9) 政府は、障がい者の年金について、以下のとおり見直す。
①「特別障害給付金」の一層の適用拡大等、無年金となっている障がい者の解消をはかる。
②障害基礎年金の支給を、障害厚生年金に合わせ 3 級障がい者からとし、給付水準を引き
上げる。
(10)在日外国人が多い国との年金通算協定の締結を急ぐ。また、現行の外国人への脱退一時
金について、在日後帰国する外国人に制度を周知するとともに、脱退一時金の支給率を改
善する。
(11)政府は、賃金の後払いとしての性格と老後の生活保障としての機能を有する企業年金に
ついては、安心して確実な給付を受けられる制度を構築する。
①企業年金の運用に係る特別法人税を廃止する。
②厚生年金基金の「代行」制度を廃止する。
③「確定給付企業年金法」については、受給権保護のため支払保証制度の導入等により、
本来の「企業年金基本法」(仮称)へと抜本的に組み替える。そのうえで、将来的には
退職一時金と企業年金を包括する退職給付保護制度の制定をめざす。
④税制適格年金の廃止に伴う他の企業年金制度への移行にあたっては、加入者および受給
権者の受給権保護の観点から、円滑な移行のための十分な措置を講ずる。特に、2008 年
のリーマンショックは中小企業の業績を悪化させ、他の企業年金制度への移行に支障が
生じていることから、中小企業への支援を検討する。
⑤確定拠出年金については、企業年金の性格を踏まえ、受給権保護の視点から以下のとお
り見直す。
a)事業主が従業員に対して導入時および導入後の継続的な投資教育を行うことを法律で
義務づける。
b)確定拠出年金を導入している企業において、従業員の転退職時に移換手続が確実に行
われるよう、事業主に従業員への説明義務を課す。
c)高齢者雇用の進展を踏まえ、加入対象年齢を引き上げる。
d)生活困窮時等における個人別管理資産の中途引き出しを認める。
e)運営管理機関の業務撤退に伴う資産移管手数料について、運営管理機関の責任である
ことを明確にする。
⑥企業型確定拠出年金における個人拠出(マッチング拠出)の導入については、企業年金
の性格に基づき、事業主拠出分を超えない範囲とする。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
⑦企業年金や退職金が手薄な中小・零細企業で働く労働者の格差是正をはかるため、中小
企業退職金共済(中退共)制度と勤労者財形制度の拡充(公的支援、加入要件の緩和な
ど)をはかる。また、中退共と税制適格年金を併用している企業における税制適格年金
から中退共への移行を可能とする。
( 注1)連合は、2010 年 12 月 「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」を策定した。
このガイドラインには、年金基金などのワーカーズキャピタルの投資判断を行う際に、財務
的要素に加えて、ESG(環境、社会、コーポレート・ガバナンス)
といった非財務的要素
を考慮して投資すること、また、投資先企業に反倫理的または反社会的な企業行動が見られ
た場合、事業主との対話や株主議決権行使など適切な株主行動を行うことなどを記載した。
4.だれもが適切な負担で、良質な医療サービスを受けることができるよう、国民皆保険体
制を堅持し、地域医療提供体制の確立と医療保険制度の再構築をはかる。
(1) 患者の選択を支援する医療情報の充実をはかるとともに、医療・医薬品の安全管理対策
を強化し、安心と信頼の「患者本位の医療」を確立する。
①診療時のインフォームド・コンセント(患者に診療の目的・内容を説明し、同意を得て
治療すること)の着実な普及をめざして、院内掲示等による患者への周知徹底を含めて
療養担当規則等に義務づける。また、患者が納得できる医療を得るため、セカンドオピ
ニオン(特定の医師からの診断だけでなく、複数の専門医から意見を聞き、治療を受け
る前に、判断する材料にすること)の普及推進をはかる。
②医療機関及び保険者等は、個人情報保護法に基づきプライバシーの保護に十分留意しつ
つ、カルテ及びレセプト開示の周知徹底をはかり、患者による自己の医療情報へのアク
セスと利用を保障する。そのため、「診療情報の提供等に関する指針」に基づき適正な
負担額での開示を可能とし、開示理由を問うことで請求が拒否されることのないよう、
開示手続きを見直す。
③医療の透明化と患者と医療機関の信頼関係の構築のため、すべての保険医療機関に対し
て明細書 ( 注 2) の無償発行を義務づける。
④正確で客観的なカルテ記載のため、「診療情報管理士」を国家資格とし、当面 200 床以
上の病院への配置を義務づける。また、すべての医療機関において電子カルテの導入が
可能となるよう体制整備をすすめ、30 年以上の長期保存を医療機関に義務づけるととも
に、データ活用のあり方等についても検討をすすめる。
⑤都道府県の提供する医療情報サービス(医療機能情報提供制度)について、医師の履歴、
技術、経験等や、手術のアウトカム情報(注 3)を含めるなど公開情報を充実させるとと
もに、国民・患者における活用が進むよう広報を強化する。日本医療機能評価機構によ
る評価・認定システムについても、国民・患者への広報を強化する。
⑥患者と医療者の信頼関係の構築のため、EBM(根拠に基づく医療)の手法と国民・患
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
者の参加による診療ガイドラインの作成、利用、普及をさらに推進する。
⑦良質の医療を受ける権利、身体的安全が確保される権利、情報を得る権利、医師や医療
機関、治療方法を選択する権利等を規定した「患者の権利法」を制定する。
⑧医療事故等の防止に向け、全病院、有床診療所に対して医療安全管理者の専従配置を進
める。将来的には、すべての医療機関に医療安全管理委員会と、組織横断的に安全管理
を担う独立した室・部門を設置し、専任「医療安全管理者(リスクマネジャー)」の配
置を義務づける。
⑨医療事故・医療ミスの原因究明と再発防止を目的とした「医療安全調査委員会」(仮称)
を法制化し、万一、事故等が起こった場合にも、医療の透明性が確保できる仕組みを確
立する。
⑩「医道審議会」の委員に保険者と患者代表を入れる。また処分の基準に医療事故・ミス
等医療内容を追加する。医師の処分にあたっては、法律上の刑罰の軽重や、医師の職業
倫理における責任の重大さを勘案する。
⑪保険医療機関・保険医等の指定や取り消しに関する国の権限を強化する。
⑫医療事故、診療報酬の不正請求、脱税、犯罪等による医師免許の取り消しや保険医療機
関・保険医指定取り消しの基準を明確にし厳格に適用する。
⑬国による保険医療機関等に対する指導・監査における不正が起こらないよう、地方支分
部局から厚生労働省本省への報告を徹底し、指導・監査へ弁護士等の外部専門家の参画
などを検討する。また、国や都道府県に寄せられた苦情や、保険医療機関・保険医等に
実施した指導・監査の内容を公開する。
⑭国や各都道府県に医療従事者、保険者と労使代表、弁護士、患者代表等で構成する医療
に関し中立に苦情の処理・解決をはかる第三者機関を設置する。苦情内容については、
原則として公表する。
⑮「産科医療補償制度」について、原因究明、再発防止のため透明な運用と情報公開を徹
底する。保険料水準については、給付の実態に合わせて出産育児一時金と合わせて見直
す。また、過誤のモラルハザードを招かないよう、原因究明結果を踏まえ補償や求償の
あり方を見直す。すべての診療科、診療行為に対象を拡大し、広い範囲で原因分析・再
発防止に対応する無過失補償制度 ( 注 4) の法制化に向けた検討を進める。
⑯患者の尊厳と自己決定権を尊重した医療を推進するため、リビング・ウィル(文書によ
る生前の意思表示)の普及・定着のため相談支援体制を構築するとともに、疼痛緩和や
精神的ケアの充実をはかるなど、終末期における「患者に最善の医療」を選択できる態
勢の整備を進める。
⑰難病対策について、難病認定の基準、医療費に対する公費負担、研究、介護者を含めた
支援措置等について法制化する。なお、難病認定までの間は難病扱いとし、医療費を補
助する。
⑱革新的な新薬、希少疾病用医薬品、医療機器・材料の研究開発促進のため、研究体制の
充実や効果的・効率的な治験のあり方等、必要な条件整備に向けた検討を進める。安全
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
性を確保しつつ「ドラッグラグ」「デバイスラグ」( 注 5)を解消するため、国内治験環
境の整備や国際共同治験の推進、承認審査の効率化・迅速化、審査体制の増員等を進め
る。
⑲新薬創出・適応外薬解消等促進加算( 注 6)が革新的新薬等の開発につながるよう、未承
認薬等開発支援センターの活動状況を含め未承認薬等の導入状況について、中医協で継
続的な検証を行う。先進医療制度による未承認薬の保険外併用にあたっては、患者の安
全に十分留意するとともに薬事承認を前提に検討を進める。開発の必要性や開発状況の
評価等を行う「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬等検討会議」で公正な検討が
行われるよう、患者や薬剤師の代表の参加、情報公開に十分務める。
⑳患者自身が自らの選択により安心・安全な医療サービスを受けられるよう、医療機関、
保険者からの情報提供だけでなく、国や地方自治体、学校等における積極的な患者教育
を行う。
㉑薬害などの医療被害をなくすため、医療人材の養成課程において医療被害者の声を直接
聞く学習を必須とする。患者に対する副作用を含めた正確な薬剤情報を提供する。薬害
被害者救済のため、当面、「独立行政法人・医薬品医療機器総合機構」の機能強化をは
かり、将来的には、国の安全監視体制の責任の下、厚生労働省、総合機構等の監視及び
評価を行い、薬害防止のために適切な措置を講じる医薬品規制行政機関等から独立した
第三者機関を設ける。また、一般用医薬品の販売店におけるリスク分類別の販売管理を
徹底する。
(2) 地域の実情に応じ医療人材や診療科の適正配置を進めるとともに、医療機関間および医
療と介護の機能分担と連携強化に取り組み、良質で安心の地域医療提供体制を確立する。
①地域の医師不足を解消するため、政府・自治体(医療対策協議会等)は、各医療圏ごとに、
産科、小児科等の診療科ごとの偏在に配慮した具体的な必要医師数を定める。診療所を
含めた各医療機関や医科系大学に対して、医師の適正配置に向けた協力を義務づける。
適正配置に協力する医師の対象は、専門医の後期臨床研修医を含め、初期臨床研修(2
年間)終了後の医師とする。また、新たに開業する医師は、一定期間以上の救急医療、
へき地医療での臨床経験等を開業の必要要件とする。
②高齢化の急速な進展を踏まえ、在宅医療提供体制を構築する。そのため、在宅療養支援
診療所を地域における病診連携の中核的医療機関として位置づけ、病院や訪問看護ステ
ーション、介護保険施設、居住系サービス等との連携により、どこに暮らしていても安
心して医療が受けられる医療提供体制を構築する。
③在宅療養支援診療所(注 7)の医師について、国は、初期医療における大きな役割を担う
「家庭医(仮称)」として認定及び制度化をはかり、「総合医」の役割を果たせるための
研修制度や、その役割・責任に見合った診療報酬体系を構築する。
④病院については、教育機能を有する機関、高度先進医療を実施する機関、政策医療を担
う機関、「家庭医」などを支援する機関等、機能別に地域医療計画に位置づける。
⑤地域医療計画に高額医療機器の設置数と診療所を加え、高額医療機器の共同利用をすす
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
める。
⑥医療法上の「病院」と「診療所」の定義づけについては、病床数ではなく、提供される
医療機能で区分する。
⑦各地域において必要な医療サービスを確保するため、都道府県は、無医地区の解消、第
2次医療圏における救急診療や夜間・休日診療体制、周産期医療・小児医療体制の確立
等、整備目標や整備責任を明確にした地域医療計画の策定を進める。その際、必要に応
じて医療圏の見直しを行った上で、すべての第 2 次医療圏に地域医療支援病院( 注 8)を
設置することを基本とする。民間病院、公立病院双方が地域医療の中核を担っている現
状を踏まえつつ、国と地方自治体が連携して、その基盤整備に必要な財政支援措置の確
立をはかる。
⑧入院診療計画( 注 9)の積極的導入をはかり、医師とその他の医療従事者による「チーム
医療」体制を構築する。そのための医師・看護師以外の医療従事者の配置基準の設定と、
適正配置を進める。また、多様な医療従事者が専門性を発揮し、的確な医療を提供でき
るよう、院内外におけるチーム医療連携を確立し、責任関係や報酬のあり方、研修体制
等を明確にし、患者に安心の医療を提供できる体制を確保する。
⑨医師の確保・定着に向け、国は財政支援を拡充する。特に救急医療を担う医療機関につ
いて救命救急センターを拡充するとともに、当直医の複数制を義務づけ、ドクターヘリ
運用施設の増設を含め、その体制強化をはかる。
⑩救急救命士の業務拡大にあたっては、救急医療の質を全国的に確保するため、国の責任
で財源を確保し、研修・実習プログラムと評価システムを確立する。
⑪医師の質の向上をはかるため、医科系大学の「医局講座制」 (注 10) を解消し、教育、
研究、臨床を分離する。また、医師国家資格については、専門的な能力や知識を保つた
めに 5 年ごとの更新制とし、「更新時研修」を義務づける。更新しない場合は資格停止
も含めて検討する。
⑫新医師臨床研修制度について、すべての臨床研修病院の研修プログラムの質を向上させ
るため、全国共通の評価委員会を設置する。また、研修医の処遇については、研修医が
研修に専念できるよう、賃金、労働条件等、適切な環境を確保し、評価委員会での検証
を行う。
⑬地域医療を担う医師を養成するために、医科系大学の地域特別枠を拡大する。
⑭女性医師が妊娠・出産・子育て等を理由に離職することなく、ワーク・ライフ・バラン
スの視点から、働き続けることのできる職場環境づくりを進める。増員される医学部生
への対応や、子育て等で臨床現場を離れていた女性医師のための復職プログラムの整備
等、受入れ医療機関における教育体制も強化する。
⑮医療の安全確保のため、医療現場で働く労働者の夜勤交替制労働に関するガイドライン
の策定をはかる。
⑯医療安全の確保と充実した看護の提供のため、看護師の配置を充実させる。
a) 急性期病院における看護配置基準「7:1」( 注 11) が着実に確保されるよう、看護師
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
が妊娠・出産・子育て等を理由に離職することなく、ワーク・ライフ・バランスの視
点から、働き続けることのできる職場環境づくりを進める。また、子育て等で臨床現
場を離れていた看護師のための復職プログラムの整備等、受入れ医療機関における教
育・研修体制を強化する。また、潜在看護師の活用について検討を進める。看護師不
足の解消をはかった上で、将来的に「5:1」の看護配置をめざす。
b)准看護師養成制度を即時に廃止し、看護制度の一本化を実現する。そのため、看護師
養成課程を統合し、准看の移行教育を直ちに実施する。また、効率的で受講しやすい
内容や勤務時間の保障等、労働環境・条件の整備をはかる。
c)看護補助者に関する法整備をはかり、教育・訓練体制の確立、業務マニュアルの策定
を行う。
d)訪問看護ステーションの整備及び集約化を推進するとともに、キャリアパスのあり方
などを検討し、看護師の確保をすすめる。
e)第7次看護職員需給見通し( 注 12) の達成に向け、看護師の離職防止をはじめとした
確保対策を充実させる。また、その達成状況を検証しつつ、診療報酬と介護報酬の同
時改定等を踏まえ、需給見通しの見直しを行う。将来的には、地域医療計画の策定や
介護保険との十分な連携等を前提とした「需給計画」の策定を進める。
⑰医療機関の未収金問題については、医療機関と保険者の情報の共有化と連携の強化によ
り、一部負担金減免制度や、入院保証金制度等、その周知徹底を含め、十分な未然防止
策と事後対策を講じる。また、医療機関と市町村、福祉事務所との連携によって、生活
困窮のため医療費の支払いが困難である者については、速やかに生活保護申請の手続き
等につなげられる仕組みとする。
⑱要介護高齢者の尊厳ある暮らしのため、療養病床 ( 注 13) の利用者に対して混乱を招か
ないよう、介護保険施設等への計画的な転換・移行をすすめる。
⑲ 国・地方自治体および事業者は、地域保健、学校保健、産業衛生などの立場から「ここ
ろの健康対策」をすすめる。また、精神科入院については、入院日数の短縮、必要な医
師数の配置、社会的入院の解消などをすすめ、早期相談・治療・支援ができる体制を整
備する。
a)国は、精神医療内容を改善し、医師、看護師の配置基準を見直し、充実をはかる。ま
た、精神保健福祉士(PSW)など、専門職による支援を拡充する。
b)国は、精神医療における入院を中心とする治療のあり方を見直し、医療提供だけでな
く、相談・早期支援など、必要な生活支援を充実させるための施策を講じる。併せて、
家族などへの相談・支援体制を整備する。
c)国・地方自治体は、精神病床数が必要最小限となるよう計画的な削減を促進する。
d)国・地方自治体は、精神疾患の予防、早期治療のための対策をはかる。
(3) 診療報酬制度の「包括・定額化」への転換等を進め、だれもが分かりやすく、信頼でき
る保険医療へのアクセスを保障する。
①診療報酬制度は、出来高払いによる患者への過剰診療、過剰請求等へのリスクを防止す
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
るため、出来高払いから定額・包括払い制度を基本とした仕組みへの転換をはかる。た
だし、その際には、必要な医療を平等に確保し、粗診粗療が起きないよう、疾患ごとの
標準的な治療方法とコストを明確化するなど、医療の質と透明性が確実に担保されるこ
とを前提とする。手術の施設基準 (注 14) については、早急に検証を進め、エビデンス
を積み重ねたうえで再評価する。
②2012 年度の診療報酬改定にあたっては、自宅、居住系サービス等で暮らす高齢者が医療
を受けられる体制を確保するため、在宅医療、訪問看護に対する報酬算定上の評価を高
める。また、認知症専門医による早期診断、医療と介護の連携を推進する。
③地域医療の中核を担っている民間病院、公立病院等が継続的に医療機能を果たせるよう、
地域医療支援病院に対する一層の評価を行う。
④診療所については、定額方式を原則とするとともに将来的には家庭医登録制度の採用と
登録患者の数に応じた医療費支払方式である人頭払い制度の導入も検討する。
⑤外来管理加算 (注 15) について、算定状況を検証し、「計画的な医学管理のもと、丁寧
な問診と詳細な身体診察を行なった場合にのみ」適切に算定されるものとする。
⑥地域医療貢献加算 ( 注 16) については、算定診療所の実態などを踏まえ検証し、夜間対
応などを行う診療所を適切に評価する。
⑦病院については、
「特定機能病院等における入院医療に関わる医療機関別の包括評価(D
PC)」 (注 17) の十分な効果測定を行い、実態の検証を進めたうえでさらに対象病院
の拡大を進める。
⑧中央社会保険医療協議会(中医協)委員は、現行の三者構成の維持を基本とし、患者・
被保険者代表が必ず参画できる仕組みとする。また、医師以外の医療従事者代表等を加
える。
⑨「保険外併用療養費」 (注 18)は、患者の安全性の確保を最優先し、安易な拡大を行わ
ない。また、その際、患者の選択に資するように、費用も含めた十分な情報提供と院外
掲示・広告、本人同意、自費部分を含めた明細書発行等を義務づける。
⑩医療保険各制度における患者一部負担について、3 歳以下の乳幼児は無料、70 歳以上の
高齢者は 1 割とし、その他は被用者保険の被扶養者を含め 2 割負担とする。75 歳以上「現
役並み所得者」 (注 19) の 3 割負担、70 歳~74 歳の2割負担は廃止する。
⑪高額療養費については、年齢に関係なく、「上位所得者」( 注 19)区分と定率「1%」を
廃止し、低所得者を除き「一般」に統一する。定率部分を廃止する。また、同一保険者
である場合は自己負担額が 21,000 円未満であっても世帯合算を可能とする。また、電子
請求の普及を踏まえ、歴月をまたぐ場合の高額療養費の支給の実施に向けた検討をすす
める。
⑫子育て支援と、安心・安全な出産のため、妊娠・出産に係る費用については、正常分娩
も含めてすべて健康保険の適用(現物給付)とし、現行の出産育児一時金は廃止する。
具体的な診療報酬の設定等に向けて、現在の分娩方法の実態把握や費用内訳を把握し検
証を進める。その上で、国が全国一律の分娩費用を設定し、医療機関から保険者への分
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
娩費用の請求明細の提出を義務づける等、国や保険者が正常な助産行為の実態を正確に
把握できる仕組みを構築する。
⑬健康保険の傷病手当金、出産手当金については、セーフティネット機能に鑑み、標準報
酬月額の 7 割を原則としつつ給付上限を設定する。また傷病手当金については、任意継
続被保険者への支給を復活する。
⑭出産手当金については、少子化対策の充実をはかるため、賃金との併給の場合の限度額
を雇用保険法の育児休業給付の限度である 80%(標準報酬日額の 80/100)まで引き上げ、
企業努力を反映できる制度とする。
⑮薬価の算定にあたっては、革新的新薬や希少疾病用医薬品を積極的に評価する。その際、
薬価算定過程の透明性・信頼性を高める検討を進めるとともに、調整幅(2%)( 注 20)
の性格を明確化し、透明性を確保したうえで、必要に応じ薬価に算入する。あわせて、
未妥結・仮納入、総価取引 (注 21) 等、薬価の透明性・公平性を阻害する恐れのある商
慣行については、早急に適切な取引ルールを確立し、改善をはかる。
⑯良質な後発医薬品の普及促進のため、情報提供、品質管理、安定的な供給体制などを含
めた評価システムを確立する。
⑰医療機器・材料の開発・輸入の促進や安定供給の確保のため、保険償還価格の機能区分
制度から銘柄別決定への見直しの検討をすすめる。また、保険償還価格の算定における
外国価格調整のあり方に関する調査・研究をすすめ、内外価格差を縮小する。
⑱薬剤1日分の薬価合計額が 175 円以下の場合にレセプトへの傷病名、薬剤名、投与量の
記載を省略できるルールを廃止する。
⑲レセプトの審査支払機関における審査委員会については、社会保険診療報酬支払基金、
国民健康保険連合会とも、厳正かつ適切な審査機能が発揮できるよう、患者・被保険者
代表の参加の検討も含めて、そのあり方を抜本的に見直す。
⑳保険指定医の定年制については、医師国家資格の更新制度と合わせて検討する。
㉑「保険免責制度」や、医療費の総額管理制は、保険給付の切り下げにつながる仕組みで
あるため導入しない。
㉒すべての医療機関においてレセプト電算処理システムの実施が可能となるよう体制整備
を進め、事務処理の効率化や審査の抜本的な強化と、30 年以上の長期保存を保険者に義
務づける。また、被保険者証の発行については、QRコードの添付促進等を進め、資格
過誤によるレセプト返戻の解消に向けたオンライン照会システム等の導入をはかる。
㉓非正規労働者の均等待遇、雇用と社会保障の連携を強化するため、原則としてすべての
雇用労働者に対し社会保険を適用する。
㉔派遣労働者の健康保険料について、派遣元が納付義務を怠ったときに、派遣先が補充責
任として連帯債務を負うものとする。
(4) 被用者保険と地域保険の両立により保険者機能が発揮される医療保険制度体系により、
安定的な「国民皆保険」体制を確立する。
①少子高齢化が進行する中、将来にわたってすべての人に対する医療アクセスを保障する
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
ため、医療保険制度に対する公費を充実させた上で、被用者保険と地域保険がそれぞれ
保険者としての役割を果たし効率的な運営が行えるよう、公的医療保険の再構築をはか
る。
②全国健康保険協会管掌健康保険について、本部の運営委員会と都道府県支部評議会の連
携をはかりつつ、被保険者の意見を事業運営に適切に反映する仕組みを確立する。医療
費適正化の実効性を高めるため、調査権限を付与する。保健事業や医療費適正化の企画
運営等については、地域の特性に応じて、支部評議会が自立できる仕組みとする。都道
府県単位保険料率の設定にあたっては、支部評議会の意見がより反映される仕組みのあ
り方を検討する。また、船員保険事業については、船員労働の特殊性、独自性に鑑み、
自主自立を基本とした管理・運営とする。
③組合管掌健康保険については、適正な保険者規模に関する検証を行い、地域総合型健保
の設立等を含めて必要に応じた再編・整備を進める。また、事業主側の事情による安易
な解散を防止するため、組合の解散に関する認可基準を厳格にしたうえで、周知・徹底
をはかる。
④国民健康保険は、保険料格差の是正、財政運営の安定化のため、都道府県単位に広域化
する。それに伴い、保険料徴収、保健事業、保険者における審査・支払機能の強化等、
新たな保険者機能の体制整備等について検討を進める。その際には、国保の加入者の運
営参画が可能な体制を確立する。また、国保組合については、被用者保険との役割の違
いを明確化させ、被保険者の実態や財政状況に応じて必要な見直しを行う。
⑤高齢者医療制度については、保険者機能が十分に発揮されるしくみとするため、働き続
ける高齢者は被用者保険に加入し続けることとし、退職者は a)被用者保険グループが共
同で支える「退職者健康保険制度」(仮称)への加入、b)被用者保険への任意継続加入、
c)地域の国民健康保険への加入―を選択可能とする。
⑥高齢者を対象とした診療報酬体系は、その目的や効果について客観的な分析のもとにエ
ビデンスを集積し、必要な医療が制限されることのないよう、高齢者の心身の特性等を
十分に留意したものとする。
⑦保険者は、レセプト審査の強化と審査体制の拡充をはかる。被保険者への情報提供の充
実、医療費通知の内容充実、本人・家族申請によるレセプトの開示等を積極的に進める。
また、患者が医療への知識を高めたり、治療を選択するうえで必要な情報が得られるよ
うな教育など、患者のインフォームド・コンセントを支援する機能や、予防・健康相談
と指導体制を強化する。また、医師・医療機関等に対する評価能力を高め、評価結果を
加入者に対し積極的に公表する。
⑧保険者による特定健診と特定保健指導の効果測定を行うとともに、より正確なエビデン
スを得るための未受診者対策を強化する。具体的には「郵送健診」等、すべての加入者
が参加しやすい仕組みづくりについて検討を進める。そのうえで、エビデンスの明確で
ない検査項目については見直しを行う。なお、エビデンスの集積が行われるまでは、特
定健診等の実施状況を高齢者医療制度への支援金に対する加算に反映しない。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
⑨保険者における医療事故や医療費の不正請求に関する苦情処理機能と被害者委任による
代理交渉権を確立する。また、医師・医療機関等との直接契約、費用総額をめぐる交渉
権を確立する。
⑩保険者による保険医療機関および患者等に対する調査権の確立をめざし、当面、都道府
県の医療機関等への調査に保険者を参画させる。
⑪保険者は、レセプトの減額査定 ( 注 22) によって、患者の一部負担に過払いが生じたと
きは、金額が1万円以下であっても医療費通知で被保険者に対し確実に通知する。また、
払い過ぎた患者一部負担の返還を代行する。
⑫低所得者への医療を保障するため、国民健康保険に対する公費負担を拡充し、保険料滞
納者、無保険者に対する対策を強化する。生活保護受給者を含めた低所得者を被保険者
とし、健康保険料と患者一部負担分を手当てする「医療費補助制度」を創設する。
(5) 健康寿命の延伸をめざし、地域ぐるみ、街ぐるみの健康ネットワークを構築し予防・健
康づくりを進めるとともに、一層の公衆衛生の向上をはかる。
①すべての人々に対する健康増進の取り組みを重視し、個人の行動の変化に結び付けてい
くため、行政や保険者だけでなく、産業界、マスコミ、教育機関、NPO、労働組合な
ど社会全体で生活習慣病の予防など健康社会づくりに取り組む。
②メンタルヘルスを含めた様々な疾病への理解と予防や対処法、医薬品等の適切な使用方
法等について、企業、自治体、学校等、あらゆる場での健康教育の徹底をはかる。
③市町村の健康増進事業を促進するため、市町村健康増進計画の策定を義務づけるととも
に、健康づくり、健康管理に対する市民の意識向上をめざす。また、「健康日本 21」に
おける取り組みが積極的に展開されるよう、内容の周知徹底をはかるとともに、企業や
地域からも参加しやすい仕組みを検討する。
④だれもが居住地で健康相談や指導等が受けられるよう、保健所や市町村保健センターを
はじめ、大規模スーパーや駅ビル等に健康相談所を配置する。また、インターネットを
活用した健康相談の仕組みについても個人情報、プライバシー保護の前提として検討を
進める。
⑤予防接種や輸血、血液製剤等を原因とするウイルス肝炎等については、慢性肝炎・肝硬
変等を各医療保険の高額療養制度の「特定疾病」の対象疾病とするなどの医療費負担の
軽減をはかるとともに、国による総合的な対策(肝炎治療休暇の促進、ウイルス性肝炎に
対する差別・偏見の禁止、慢性肝炎患者への障害年金の支給、拠点病院の整備等の治療
支援等)を推進する。
⑥新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)対策については、国、地方自治体、
企業、医療機関等が一体となった連携体制を整備する。国は、すべての国民が適切な治
療や予防処置が受けられるよう、抗インフルエンザ薬、ワクチン等の生産・備蓄体制の
充実をはかる。また、他の感染症について国、地方自治体、企業、医療機関等による連
携体制のもとで、平時から対策の検討をすすめる。
(6) リプロダクティブヘルス/ライツの概念を踏まえ、生涯を通じた健康支援を行う。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
①政府の「第 3 次男女共同参画基本計画」(2010 年 12 月決定)を着実に実行する。
②各市町村や学校、職場で行う健康教育では、リプロダクティブヘルス/ライツの知識の
普及をはかる。
③学校教育において、児童生徒の発達段階に応じた性教育の充実をはかる。
④HIV/エイズについて、児童生徒の発達段階に応じた性感染症予防、薬物乱用防止教
育を推進する。
⑤未成年者の喫煙や飲酒について、防止教育を推進する。
⑥妊娠・出産、月経困難症、女性特有の疾病、更年期障害等について、情報提供と相談体
制を保健所・女性センター等を中心に整備するとともに、性差を考慮した適切な医療体
制を構築する。
⑦医療機関の機能分担と連携強化、救急医療や産科・小児医療体制の確立により、地域の
医療格差、医師・看護師等の不足を解消し、良質で安心の医療サービスを提供できる体
制を確立する。
⑧長時間労働や、深夜労働が妊娠・出産に与える影響についての研究・調査を行う。
⑨母体保護法をリプロダクティブヘルス/ライツに基づいた内容に改正する。刑法第 29
章「堕胎の罪」は廃止する。
⑩女性の生涯を通じた健康支援のニーズに対応するため、18.1%(2008 年)の女性医師割
合を 30%に増やす。
( 注 2 )明細書 ~ 診 療 報 酬 の 電 子 請 求 が 義 務 化 さ れ て い る 保 険 医 療 機 関( 病 院 、歯 科 を 含 む 診 療
所 、 薬 局 な ど ) に つ い て は 、 2010 年 3 月 以 降 段 階 的 に ( 歯 科 診 療 所 は 2011 年 5 月 か ら ) 、
正 当 な 理 由 が な い 限 り 、当 該 費 用 の 計 算 の 基 礎 と な っ た 項 目 ご と に 記 載 し た 明 細 書 を 、領 収
書 と 併 せ て 患 者 に 対 し 交 付 し な け れ ば な ら な い こ と と さ れ た 。し か し 、手 書 き レ セ プ ト で 請
求 し て い る 診 療 所 や 65 歳 以 上 の 医 師 し か い な い 診 療 所 な ど は 発 行 義 務 化 の 対 象 外 と さ れ て
いる。
( 注 3 ) 手 術の ア ウト カム 情報 ~ 手 術 の 成 功 率 や 手 術 に よ る 治 療 効 果 に 基 づ く 効 果 測 定 指 標 の
こと。
( 注 4 ) 無過失補 償制度 ~ 「 無 過 失 あ る い は 過 失 の 証 明 が 困 難 な 事 例 を 含 め 、 医 療 に 伴 い 患 者 が
受 け た す べ て の 障 害 に 対 し て 、迅 速・公 平 な 補 償 が 可 能 に な る 公 的 な 制 度 」が 従 来 の 定 義 で
あり、北欧諸国等ではすでに制度として確立している。日本においても、分娩時において、
一 定 の 要 件 を 満 た す 脳 性 麻 痺 児 に 限 定 し た 無 過 失 補 償 制 度 ( 産 科 医 療 補 償 制 度 ) が 2009 年
1月より実施されているが、その対象範囲は限定的なものとなっている。
( 注 5 ) ドラッ グラグ ・デバ イスラグ ~ 「 ド ラ ッ グ ラ グ 」 は 、 世 界 的 に は 標 準 的 に 使 わ れ て い
る 医 薬 品 で あ る に も 関 わ ら ず 、国 内 で は 使 用 す る こ と が 承 認 さ れ て い な い こ と 、ま た 承 認 が
遅 れ て い る こ と を 指 す 。例 え ば 、あ る 種 の 抗 が ん 剤 が 日 本 以 外 で は 標 準 的 に 使 わ れ 、効 果 を
発 揮 し て い る に も 関 わ ら ず 、日 本 で は ま だ 承 認 さ れ て い な い た め 使 用 す る こ と は で き な い も
のがある。「デバイスラグ」は医療機器における同様の状態のこと。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
( 注 6)新薬創出・適応外薬解消等促進加算 ~ 革新的な新薬の創出や適応外薬の開発等を目的とし
た、値引率の小さい後発品のない新薬に対する一定率までの薬価上の加算。
( 注 7 ) 在宅療養 支援診 療所 ~ 2006 年 度 の 診 療 報 酬 改 定 で 新 し く 設 け ら れ た 。 在 宅 医 療 を 24 時
間 体 制 で 受 け る こ と が で き 、 い つ で も 往 診 ・ 訪 問 看 護 を 提 供 で き る (他 の 医 療 機 関 と の 連 携
も 可 )こ と を 条 件 と す る 。
( 注 8 ) 地域医療支援病院 ~ 紹介患者に対する医療提供、医療機器等の共同利用の実施等を通じて、
地域医療を担うかかりつけ医、かかりつけ歯科医等を支援する能力を備え、地域医療の確保を図
る病院としてふさわしい構造設備等を有するものについて、都道府県知事が個別に承認するもの。
( 注 9 ) 入 院診療 計画 ~ 診 療 計 画 と も い い 、 病 名 、 症 状 、 治 療 方 針 、 検 査 ・ 手 術 の 内 容 と 日 程 、
推 定 入 院 期 間 等 を ま と め た 入 院 患 者 の 診 療 に 関 す る 計 画 。入 院 時 に 医 師 、看 護 婦 等 の 医 療 従
事者が共同で作成する。
( 注 10 )医局講 座制 ~ 「 医 局 」と は 大 学 病 院 の 診 療 科 の こ と で あ り 、「 講 座 」は 大 学 医 学 部 の 各
講 座 を さ す 。医 局 講 座 制 は 講 座 の 教 授 が 診 療 科 の ト ッ プ を 兼 ね 、一 極 集 中 型 の 権 力 構 造 が 問
題視されていた。
( 注 11 )看護 配置基 準 ~ 病 院 に お け る 入 院 患 者 に 対 す る 看 護 職 員 の 比 率 。診 療 報 酬 の 一 般 病 棟 入
院 基 本 料 は 、こ の 比 率 に 応 じ て 算 定 額 が 異 な る 。2006 年 の 診 療 報 酬 改 定 で 、新 た に「 7:1」(患
者 7 人 に 対 し て 、 常 時 (24 時 間 )看 護 職 員 が 1 人 配 置 )が 設 定 さ れ 、 よ り 手 厚 い 看 護 体 制 が 評
価されることとなった。
( 注 12 )第7次看護職員需給見通し ~ 「看護師等人材確保の促進に関する法律」に基づく看護師等
の確保を促進するための措置に関する基本的指針において、医療提供体制を踏まえた需給見通し
に基づいて看護師等の養成を図ることが求められている。
第7次は 2011 年からの5年間について、
需要は 140 万人(2011 年)から 150 万人(2015 年)に、供給は 135 万人から 149 万人に、それぞ
れ増加(共に常勤換算)の見通しを策定。そのための確保対策の必要性が併せて示されている。
( 注 13 )療養病 床 ~ 2001 年 の 改 正 医 療 法 に よ る 病 床 区 分 の 見 直 し で 、「 精 神 病 床 」「 感 染 症 病 床 」
「 結 核 病 床 」以 外 の 病 床 が「 一 般 病 床 」と「 療 養 病 床 」に 分 け ら れ た 。療 養 病 床 は 、「 主 と
し て 長 期 に わ た り 療 養 を 必 要 と す る 患 者 を 入 院 さ せ る た め の 病 床 」と 定 義 さ れ 、医 療 保 険 に
よ る 病 床 を 医 療 療 養 病 床 、介 護 保 険 に よ る 病 床 を 介 護 療 養 病 床 と 呼 ぶ 。介 護 療 養 病 床 に つ い
て は 、2012 年 3 月 末 を も っ て 廃 止 す る こ と と さ れ て い た が 、介 護 保 険 施 設 等 へ の 転 換 が 進 ん
で お ら ず 、政 府 は 、廃 止 期 限 を 2018 年 度 末 ま で 6 年 間 延 期 す る た め の 法 案 を 提 出 す る 予 定 。
( 注 14 ) 手術の 施設基 準 ~ 2006 年 の 診 療 報 酬 改 定 で 廃 止 さ れ た 診 療 報 酬 上 の 評 価 。 年 間 の 手 術
件 数 が 多 い 医 療 機 関 ほ ど 、手 術 成 績 も 向 上 す る と の 考 え 方 に 基 づ き 、一 定 以 上 の 年 間 手 術 件
数 を 実 施 す る 医 療 機 関 が 当 該 手 術 を 実 施 し た 場 合 に 診 療 報 酬 を 加 算 で き る 制 度 で あ っ た 。し
か し 、も と も と 手 術 件 数 に よ る 加 算 に 反 対 し て い た 団 体 が 行 っ た 調 査 で 、手 術 件 数 と 手 術 成
績 の 相 関 関 係 に つ い て 科 学 的 知 見 が 得 ら れ て い な い と の 判 断 が さ れ 、改 め て 客 観 的 な 調 査 を
実施することを前提に一旦廃止された。
( 注 15 )外来管理 加算 ~ 一 定 の 処 置 や 検 査 等 を 必 要 と し な い 患 者 に 対 し 問 診 や 身 体 診 察 を 行 っ た
場 合 に 算 定 が 可 能 な 診 療 報 酬 上 の 加 算( 520 円 )。2008 年 度 診 療 報 酬 改 定 で 、患 者 へ の 懇 切
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
丁 寧 な 説 明 や 計 画 的 な 医 学 管 理 等 を 評 価 す る も の と し て 5 分 と い う 時 間 要 件 を 導 入 。 2010
年度改定では医師の反対で「5分ルール」は廃止された。
( 注 16 ) 地 域医 療貢 献加算 ~ 休 日 ・ 夜 間 に 、 患 者 か ら の 電 話 問 い 合 わ せ や 受 診 等 に 対 応 可 能 な
体 制 を 確 保 し て い る 診 療 所 に お け る 再 診 料 に 対 す る 加 算 ( 30 円 ) 。 2010 年 度 診 療 報 酬 改 定
で は 、 病 院 と 診 療 所 の 再 診 料 を 690 円 を 統 一 し た が 、 そ の 際 診 療 所 の 再 診 料 が 20 円 引 き 下
げられたことに対する代替措置として新設された。
( 注 17 )特定 機能病 院等に おける 入院医 療に関 わる医療 機関別 の包括 評価( DPC ) ~
D P C と は Diagnosis Procedure Combination の 略 で 、 従 来 の 診 療 行 為 ご と に 計 算 す る 「 出
来 高 払 い 」方 式 と は 異 な り 、入 院 患 者 の 病 名 と そ の 症 状・治 療 行 為 を も と に 厚 生 労 働 省 が 定
め た 1 日 あ た の 金 額 か ら な る 包 括 評 価 部 分( 投 薬 、注 射 、処 置 、入 院 料 等 )と 出 来 高 評 価 部
分( 手 術 、麻 酔 、リ ハ ビ リ 、指 導 料 等 )を 組 み 合 わ せ て 計 算 す る 新 し い 計 算 方 式 。出 来 高 に
よ る 過 剰 な 診 療 行 為 を 防 止 し 、請 求・審 査 ・支 払 い 事 務 等 を 簡 素 化 し 、効 率 的 な 医 療 サ ー ビ
スが提供できると期待されている。
( 注 18 ) 保 険外併 用療養 費 ~ 1984 年 の 健 康 保 険 法 改 正 で 導 入 さ れ た 特 定 療 養 費 制 度 を 、 将 来 的
な 保 険 導 入 を 前 提 と す る も の と 患 者 の 選 択 に 資 す る も の と に 再 整 理 し た 制 度 で 2006 年 10 月
よ り 適 用 さ れ て い る 。健 康 保 険 法 で は 、保 険 診 療 と 自 由 診 療 の 併 用 は 原 則 禁 止 さ れ て い る が 、
こ の 保 険 外 併 用 療 養 費 の 16 項 目 に つ い て は 、 保 険 診 療 と の 併 用 が 可 能 で あ る 。
( 注 19 )現役並み 所得者 /上位 所得者 ~「 現 役 並 み 所 得 者 」は 70 歳 以 上 の 高 齢 者 を 対 象 と し 、
課 税 所 得 145 万 円 以 上 の 者 。年 収 ベ ー ス で 520 万 以 上 (同 一 世 帯 内 に 70 歳 以 上 が 2 人 以 上 の
場 合 )、70 歳 以 上 の 単 身 世 帯 の 場 合 は 383 万 円 以 上 と な る 。「 上 位 所 得 者 」は 70 歳 未 満 が 対
象 で 、 月 収 56 万 円 以 上 の 者 。
( 注 20 )調整幅(2%)~ 調 整 幅 は 、薬 価 算 定 の 過 程 に お い て 、薬 剤 流 通 の 安 定 を は か る た め の も
の と さ れ て お り 、現 在 、改 定 前 の 薬 価 の 2 % と 決 め ら れ て い る 。そ の 目 的 は 必 ず し も 明 確 で
は な い が 、一 般 的 に 薬 剤 の 管 理 コ ス ト 、損 耗 廃 棄 に か け る 諸 費 用 の た め と 言 わ れ て い る 。医
薬 品 の 価 格 は 、「 薬 価 算 定 基 準 」に 基 づ き 、薬 価 調 査 の 結 果 等 か ら そ の 品 目 の 税 抜 き 市 場 実
勢 価 格 を 求 め 、 こ れ に 消 費 税 を 加 え て 、 さ ら に 調 整 幅 (改 定 前 の 価 格 の 2% )を 加 え て 算 定 さ
れる。
( 注 21 ) 未妥結・仮納 入、総価 取引 ~ 「 未 妥 結 ・ 仮 納 入 」 と は 、 医 薬 品 卸 が 、 医 療 機 関 な ど と
の間で納入価格を妥結せずに長期間にわたり暫定価格で納入することをいう。「総価取引」
は 、個 々 の 医 薬 品 に つ い て 、個 別 銘 柄 ご と の 価 格 交 渉 を 行 わ ず 、す べ て の 医 薬 品 を ひ と ま と
めで価格交渉を行うこと。各医薬品の市場実勢価格が反映されないといわれている。
( 注 22 ) 減額査定 ~ 医 療 機 関 に よ る 保 険 者 へ の 過 剰 請 求 が 判 明 し た 場 合 、 過 剰 請 求 金 額 で 窓 口 一
部 負 担 を し て い る 被 保 険 者 に 対 し て 、保 険 者 を 通 じ て 過 払 い 分 の 医 療 費 の 通 知 を 受 け 、当 該
医 療 機 関 に 対 し て 返 還 を 求 め ら れ る 。し か し 、減 額 査 定 の 通 知 は 法 律 で 義 務 づ け ら れ て お ら
ず 、減 額 査 定 の 金 額 が 1 万 円 以 上 で あ る と き に 被 保 険 者 へ 通 知 す る よ う 保 険 者 間 で の 確 認 が
さ れ て い る だ け で あ る 。厚 生 労 働 省 は「 減 額 通 知 の 励 行 の 確 保 お よ び 診 療 報 酬 の 減 額 と 一 部
負 担 金 の 返 還 と に か け る 手 続 き の 周 知 を は か る こ と 」を 保 険 者 に 指 導 し て い る が 、実 際 は 保
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
険者から十分な通知が被保険者に行われていない場合も少なくない。
5.介護サービスや支援の安定的な供給を維持・発展させ、地域全体で介護を支える体制を構築
する。
(1) 国は、2009 年度介護報酬改定が確実に介護労働者の処遇改善に繋がるよう、引き続き、
さらなる具体的な検証および支援を行う。
①2009 年度の介護報酬改定ならびに介護労働者の処遇改善交付金が、処遇改善に繋がって
いるかを検証する。検証は第一義的には賃金で行い、賃金引き上げの財政支援を継続さ
せる。
②事業者団体による介護労働者の処遇改善に向けた取り組みに関する情報の公表の手引き
作成については、国が責任を持って支援し、介護労働者の確実な処遇の改善に繋げる。
③介護サービスの質の評価に対する指標の検討を行う。
④サービス提供責任者について、改定後の労働条件について調査を行い、配置の評価につ
いて検証を行う。
⑤2009 年度介護報酬改定により加算が拡大されたサービス、および算定要件が変更になっ
た加算について、その効果を検証し、必要な見直しを行う。
⑥加算の増加により複雑化する事務負担の簡素化をはかる。
⑦2009 年度介護報酬改定において配置基準が緩和されたサービス提供責任者が、緩和に伴
ってどれ程常勤から常勤換算に置き換えられたかを調査するとともに、サービスにどの
ような影響を与えているかを検証する。
(2) 国は、サービスを担う介護労働者の雇用・労働条件を改善するため、以下の見直しおよ
び検討を行い、モチベーションを高めるキャリアアップの仕組み、魅力と働きがいのある
職場づくりを推進する。
①訪問介護員や施設の介護労働者の任用資格の介護福祉士への移行を確実に行い、専門職
としての地位の向上、確立をはかる。そのための十分な移行教育の実施と、受講しやす
い環境の整備を行うとともに、国および地方自治体による事業主・研修受講者への支援
を周知・拡充する。なお、介護福祉士教育の内容についても検討を行い、充実をはかる。
②准介護福祉士制度については、制度の見直しに着手し、廃止する。
③介護労働者の資格取得時、入職時、現任研修での感染症教育を充実させる。
④認知症や障害への専門的な介護について研修し認定を受けた「専門介護福祉士(仮称)」
を導入する。さらに、上位職とするため、国家資格とし、魅力ある職種・職群とする。
⑤サービス提供責任者に対する能力開発プログラムを拡充するなど、キャリアアップの仕
組みを整備する。
⑥施設における正規職員削減と非正規職員への置き換えが進んだ結果、働き方やサービス
にどのような影響を与えているか検証し、人員配置基準の見直しを行う。
⑦介護分野における特定(産業別)最低賃金の創設に向けた活動を支援する。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
⑧国および地方自治体は、労働安全衛生委員会の設置を推進する。
⑨国および地方自治体は、介護現場における利用者からのハラスメント対策、感染症対策
を含めた健康管理の実施を事業者に義務づけ、労働環境の改善をはかる。
⑩国および地方自治体は、利用者だけでなく家族や介護者等からの苦情や要望への対応が
年々増加している実態を踏まえ、利用者と事業者の話し合いに対して斡旋や仲介等の支
援を行う第三者機関の設置を検討する。
⑪国および地方自治体は、訪問介護員や施設の介護労働者の勤務シフトを、遅くとも 1 カ
月前に提示するように事業者に指導する。
(3) 国は、安定的な介護サービスの提供体制を確保し、質を向上させるために、以下の取り
組みを進める。
①ケアマネジメントをはじめ、各サービスの標準化を進める。介護予防や重度化の抑止を
含むケアマネジメントについて、利用者の自立支援に資する質の高いケアプランを策定
するために、ケアマネジャーの独立性を確保し、介護の質を担保できる人員配置と適切
な担当件数に早急に改める。
②認知症ケアの研修を充実させ、認知症ケアの標準化と特性に対応した支援体制の充実強
化をはかる。
③国および地方自治体は、「直行直帰」の訪問介護員が、利用者に関する情報を共有化で
きるよう、サービス提供責任者は、訪問介護員のサービス提供前に文書など確実な方法
で情報伝達し、また、事後報告を受けるよう義務づける。
④国および地方自治体は、ケアマネジャーが、利用者の状態把握やサービス担当者会議な
どを十分行えるように、事務負担を軽減する。また、研修を受講しやすい環境を整える
よう、事業者に対する指導を徹底する。
⑤介護保険施設における介護の質を担保するため、適切な人員配置基準について見直す。
⑥介護保険施設の人員、設備および運営基準を、階数など建築物の構造なども勘案した基
準に改める。
⑦国および地方自治体は、施設での身体拘束を根絶するため、施設の各職種や地域住民で
構成する「身体拘束廃止委員会」を全施設で設置するなど、施設が一体となった取り組
みを進める。
⑧国および地方自治体は、利用者への虐待などハラスメントを根絶するため、事業者、介
護従事者への研修、指導を充実、徹底する。さらに、地域包括支援センターなどに介護
従事者に対する相談窓口を設置する。
⑨国および地方自治体は、介護事故・過誤の防止や感染症対策のため、全事業所での「安
全管理責任者」の配置と「安全管理委員会」の設置を推進する。
⑩「介護サービス情報の報告および公表」の調査情報項目に、従業員に対する健康診断・
感染症対策の実施、夜間を含む労働時間・勤務体制、労働関係法規の遵守状況、社会保
険の加入状況を追加する。
⑪国および地方自治体は、施設ボランティアの活動実態を把握し、ボランティアなどの無
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
資格者が介護などの専門職業務を行わないようにする。
⑫潜在介護福祉士や潜在ホームヘルパーの復職支援を行う。そのため、資格基準の緩和や
研修制度の整備、また労働条件の改善をはかる。
(4) 国は、地域間格差が生じないように、地域包括ケア体制を推進し、自宅・介護施設など
を問わず日常生活圏で必要な医療、介護、福祉サービスの提供を受け、地域で尊厳あるく
らしが送れるよう、医療と介護の機能分化・連携をはかる。
①国および地方自治体は、地域包括ケアシステムを確立し、介護にかかる総合的なコーデ
ィネートとして、地域包括支援センターの機能を拡充する。
②国および地方自治体は、住宅・施設介護の総合相談・支援、寝たきり・認知症予防、レ
スパイトケア、家族など介護者(ケアラー)相談などを充実させる。
③国および地方自治体は、医療と連携した在宅介護サービスを充実させる。
④要介護者が身近で迅速に医療的処置を受けることができるよう、介護福祉士が法律に基
づき介護に伴う医療行為を行えるよう、責任関係や報酬のあり方、研修体制等を明確に
し、要介護者に安心の医療を提供できる体制を確保する。
⑤国および地方自治体は、「地域包括ケアシステムの実現」に向けた地域包括ケア体制の
整備推進に対し、医療保険者、被保険者の声が反映できる仕組みにする。
(5) 国は、介護保険制度を年齢や要介護の理由を問わず、介護が必要になったすべての人を
対象とした総合的・普遍的な制度へ発展させるため、被保険者・受給者の範囲について検
討し、次期改正に向けた対応をはかる。
①給付と負担の両面から介護保険制度の被保険者・受給者範囲について検討を行う。
②介護保険制度は医療保険と同様に国民皆保険制度とし、受給者範囲は介護・介助などを
必要とするすべての人とする。国民健康保険は生活保護受給者を被保険者とする。
③障害者自立支援法に基づく介護給付において、介護保険と共通するサービスについては
介護保険で対応し、その他のサービスは引き続き障がい福祉施策により提供するなど、
利用者の実情に応じた介護サービスを提供する。
④若年障がい者への給付範囲拡大にあたっては、所得保障と就労支援策を拡充する。
(6)
国は、 2011 年介護保険法などの一部改正の進捗状況や 2009 年度介護報酬改定の影響
を検証し、2012 年度介護報酬改定を見据え、めざした理念に基づく介護サービスの実施に
向け必要な改善を行う。
①国および地方自治体は、サービスの普及および適正利用の観点から、利用方法や制度理
念などについて、利用者、事業者に対する広報・啓発活動を充実させる。
②国および地方自治体は、新予防給付、地域包括支援センターの実施状況および運営実態
を、財政基盤も含めて検証し、実効性ある介護予防システムを確立する。
③国および地方自治体は、地域の様々な人材を活用したネットワークの構築について検証
し、地域支援事業の確実な実施を支援する。任意事業の介護給付費適正化事業、家族介
護支援事業は必須事業とする。
④地域の実情に応じた地域密着型サービスの整備を着実に推進するため、地方自治体を支
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
援する。
(7) 国は、実態に見合った利便性・機能性の向上と利用者本位の適切な制度運営のため、以
下の見直しを行う。
①2010 年 8 月から実施されている要介護認定の運用の見直しについて、利用者の実態を反
映した判定となっているか、検証する。
②国および地方自治体は、訪問調査員、認定審査会委員の公正・中立、適正な調査・判定
を行うための研修や調査指導員の養成を拡充する。
③事業計画策定委員会への医療保険者・労使代表の参画を制度化し、第 2 号被保険者が保
険料見直しに関与できる仕組みにする。
④制度運営に住民・被保険者代表の参加・意見を反映させるため、「介護保険運営協議会」
などを全保険者に設置する。
⑤地域包括支援センター運営協議会への被保険者代表の参加を義務づける。
⑥国および地方自治体は、事業者への指導監督などの制度運営のための人材育成と、実施
体制強化のための支援を行う。
⑦国および地方自治体は、福祉用具の価格の適正化をはかり、安価な福祉用具については、
すべて貸与から販売とする。
(8) 国は、介護サービス利用料の自己負担割合は、現行の1割を堅持するとともに、負担の
あり方について、以下の通りの対応をはかる。
①多床室など施設の居住環境改善をはかる。
②低所得者、生計困難者の負担実態を把握し、保険料・施設居住費などの負担軽減措置、
社会福祉法人の利用者負担減免措置制度が適切かどうか検証する。必要に応じて、負担
軽減措置の段階をさらにきめ細かく分けるなど拡充する。
③高齢夫婦世帯の一方が介護保険施設の個室に入所した際に受ける居住費・食費負担の軽
減措置を、多床室でも受けられるよう拡大する。
④低所得者に対する支援策が確立するまでの間は、保険料の滞納に対する給付制限につい
て、特に悪質な場合を除き、凍結する。
⑤第1号被保険者の所得段階別の保険料徴収について、保険料の段階決定の際の課税状況
の認定を個人単位とするとともに、世帯主や配偶者への保険料の連帯納付義務を撤廃す
る。
⑥第 2 号被保険者の介護保険料の負担上限を法定化する。
⑦ケアマネジャーによるケアプラン作成に対する 10 割給付を維持する。
(9) 国は、事業者指定について、以下の通り見直す。
①事業者の指定・取り消し要件に、労働関係法規の遵守と社会保険加入を追加する。
②事業者の新規指定および更新において、事業者に対し不正請求などの指定取消要件や労
働関係法規・通達の遵守を周知・徹底するとともに、労働者の賃金が最低賃金を下回っ
ている場合は、事業者指定の取り消しを行うなど、厳正な指導監査を実施する。
(10)国および地方自治体は、高齢者虐待防止法や地域包括支援センターの役割について住民
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
への周知をはかり、認知症などの高齢者が行うサービス事業者との契約や金銭管理などに
ついての権利擁護システムが積極的に利用されるよう促す。
(11)国は、住宅・特定施設の整備をはかり、尊厳あるくらしを確保する。
①療養病床の再編を一定の猶予期間の中で確実に実施し、社会的入院を解消する。
②再編に伴って適切な介護を受けることができない要介護者が出ないよう、地域医療や居
宅介護サービスの充実を行う。
③国および地方自治体は、有料老人ホームの把握の徹底と指導・監督態勢を確保する。な
お、防火対策や消火設備の設置、防災訓練に関する指導強化についても盛り込むことと
する。
④地域における介護ニーズの実情に応じて、高齢者専用賃貸住宅の質と量を確保するなど
多様な住まいの整備を推進する。また、介護保険施設などの参酌標準の撤廃を踏まえ、
介護福祉施設およびグループホームなどの適正な整備をすすめる。
6.障がい者が地域で生活する権利を保障した、インクルーシブな社会(共生社会)を実現
する。
(1) 障がい者の社会参加と権利を保障するため、国連の障害者権利条約の批准に向け、障害
者基本法改正、「障がい者差別禁止法」(仮称)の制定、障害者雇用促進法の改正、障害
者自立支援法に代わる「障がい者総合福祉法(仮称)」の制定など、障害者権利条約の批
准を可能とする国内法の改正・整備を行う。
①障がい者の権利を確保するため、障害者基本法改正において以下の内容を含める。
a)障がい者を保護の客体であるとする見方からすべての基本的人権の共有主体であると
の見方へ転換する。
b)障がい者の定義については、WHOの「国際生活機能分類」や障害者権利条約に則し、
これまでの医学モデルから社会モデルに基づき規定する。「制度の谷間」におかれて
いる 3 害以外の発達障害、高次脳機能障害、難病者など、社会的支援の必要な人々に
も障がいの範囲を広げ、抜本的に見直す。
c)障がいの定義について当事者参加のもと障がい者制度改革推進会議で検討する。
d)国、地方自治体、事業者等に対し、合理的配慮の提供を含む施策や支援を義務付ける。
e)障害者権利条約に基づく国内モニタリング機関については、勧告権限等をもつ独立し
た組織とし、国および地方自治体に設置する。その際障がい者のほか労使、教育関係
者等の参画による評価、検証、監視を行う。
②障がいに基づくあらゆる差別を禁止し、障がいをもつ人のあらゆる分野における自立と
参加を保障し、権利の確立をはかるために、「障がい者差別禁止法」の制定に向け、障
がい者制度改革推進会議および差別禁止部会で議論を進める。
③生活のあらゆる場面における障がい者に対する虐待を禁止するため「障がい者虐待防止
法」を制定する。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
④都道府県、市区町村の「障害福祉計画」策定においては、障がい者・住民の意見を取り
入れ、地域生活移行に関するサービス基盤の整備に関する数値目標を明記する。
⑤国・地方自治体は、障がいのある子どもの施策は、一般の子ども・子育て施策において
取り組む。更に特別な支援が必要な施策について障がい者施策に組み込む。
⑥障がいのある子どもや、異なる文化・言語を背景とした子どもなどが、普通学校に在籍
し、教育の場で排除されずニーズに合った教育を受けられる、「インクルーシブ教育」を
推進する。( P201~「教育政策」参照 )
⑦インクルーシブの理念を重視し、すべての保育所や放課後児童クラブ等での障がい児の
受け入れについて、制度整備・拡充を行う。
⑧児童養護施設や、乳児院等の児童福祉施設については、障がい児も受け入れ可能な条件
整備を行うとともに、日常生活の場に相応しい施設基準に改善する。
⑨発達障がい児の早期対応のための専門家の育成など、支援基盤を整備する。
⑩国や地方自治体は、障がい者が自立した日常生活や社会参加を行うため、ユニバーサル
デザインの理念をあらゆる施策に反映させ、福祉用具等の研究開発や普及のために必要
な施策を講ずる。
⑪民間企業は、ICT機器等の開発にあたって、障がい当事者が参画し意見を反映できる
ようにするとともに、当事者による評価システムを推進する。また、全放送に字幕放送
や副音声を義務づける等、視聴覚障がい者に対応したサービスを推進し情報へのアクセ
スを保障する。
⑫国や地方自治体は、災害が発生した場合には発生場所、規模、内容、今後の動向など必
要な情報を障がい者に提供する体制を整備する。また、災害時に障がい者と連絡を取り、
必要な支援を提供できるよう、災害情報の提供に当たっては、障がい者の特性に配慮し
た伝達手段やコミュニティネットワークの整備などが提供されるよう必要な施策を講ず
る。
⑬国や地方自治体は、障がい当事者の、障がい者施策に対する評価についての調査を実施
し、結果を施策に反映させる。調査は、障害者手帳を持っていない難病や内部(機能)
障害も対象に含める。
⑭国は、難病についての調査研究を推進する。
⑮障がい者福祉サービスに関わる労働者の処遇の改善をはかり、同サービスの安定的な提
供体制を確保する。
(2) 障がい者が地域で生活する権利を保障し、自ら選択する地域への移行支援と移行後の生
活支援や、障がい福祉サービスが保障される障害者自立支援法に代わる「障がい者総合福
祉法」(仮称)を制定する。
①国は、障がい者が支援を受ける際の費用に関して、現行の応益負担から応能負担に切り
替える。障がい者の生活を支える支援は、障害者手帳の有無にかかわらず、障がいの範
囲を広げ、支援を必要とするあらゆる障がい者に提供する。
②国・地方自治体は、支援サービス等の支給決定に当たって、本人の選択を尊重するとと
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
もに、活用できるサービス資源について本人と協議調整を経る仕組みとする。
③国・地方自治体の支援は、従来の福祉施策の分野にとどまらず、学校、職場、その他社
会参加を促進するための分野を含め、横断的にカバーする。
④医療費負担の軽減をはかるため、障がい者に対する公費負担医療制度を拡充する。
⑤国・地方自治体は、地域移行に向けて、自宅や賃貸住宅における生活支援や 24 時間介助、
過渡的にはグループホームやケアホームなど地域社会における多様な生活を可能とする
支援体制を確保する。
⑥障がい者に特定の生活様式を強いることなく、地域社会で自立した生活を可能とするた
めの支援を強化する。
⑦国・地方自治体は、障がい者の地域移行を計画的に進めることとし、そのための住居の
整備を計画的に推進する。
⑧地方自治体は、障がい者の地域における生活を実現するために相談体制の整備をはかる
など、障がい者及び家族支援を行う。
⑨障がい者の移動やコミュニケーションについて、国が責任をもって保障するとともに、
手話通訳者設置と手話通訳・要約筆記派遣の一体的な実施をあらゆる公共的な場に義務
づける。
⑩「身体障害者補助犬」(盲導犬・介助犬・聴導犬)の施策の大幅な拡充をはかる。「身
体障害者補助犬法」で補助犬の同伴について努力規定となっている民間のマンションや
職場に対しても義務規定の対象とする。また、「身体障害者補助犬法」を社会に浸透・
定着させるために、積極的な啓発・広報を行い、周知徹底をはかる。
⑪社会福祉協議会による日常生活自立支援事業の受け入れ態勢を強化するための支援を充
実させる。また、「成年後見制度利用支援事業」の親族申立について適用可能とするな
ど、成年後見制度の基盤整備を進める。
⑫障がい者の地域生活支援体制を確立する。これら様々なニーズに積極的な対応をはかる
ため、地域ごとに「障がい者総合生活支援センター(仮称)」を設置し、包括的な支援
体制を整備する。
(3) 障がい者の就労支援と所得保障を確立する。
①重度障がい者に対して、新たな手当制度の創設や特別障害者手当の充実等により、現行
の障害基礎年金1級と併せて、生活保護基準(生活扶助、障害者加算、重度障害者加算、
住宅扶助特別基準額等の合計額)を上回る所得を保障する。
②「特別障害給付金」の一層の適用拡大等、障がい者の所得保障を充実する。
③雇用契約のある就労に対する賃金は、原則として最低賃金を遵守するべきものであり、
減額特例の許可にあたっては審査を厳格に行う。
④障がい者の就労施策について「一般就労」と「福祉的就労」のはざまを埋める「社会的
就労」(保護的就労)など新たな働き方についても、先進自治体などにおけるモデル事
業を推進する。
⑤「福祉的就労」について、工賃が利用料を下回ることのないよう支援策を拡充する。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
⑥国は、福祉施策と労働施策を一体的に展開する仕組みを整備し、障がい者が障がいのな
い人と同様に一般労働法規の適用が受けられるようにする。
⑦国は、障害者雇用率制度の法定雇用率の達成をはかりつつ、雇用率を引き上げる。
a)精神障がい者の雇用の拡大、その他の障がい者(難病等)の実雇用率を上げる。
⑧国・地方自治体は、公契約の総合評価方式の得点の中に福祉への配慮の得点の中に知的
障がい者、 精神障がい者の新規雇用、雇用のための支援体制、 障がい者雇用率などを
加点する。
⑨障がい者の雇用対策・就労促進施策を強化する。( P56~「雇用・労働政策」参照 )
(4) 国・地方自治体および事業者は、地域保健、学校保健、産業衛生などの立場から「ここ
ろの健康対策」をすすめる。また、精神科入院については、入院日数の短縮、必要な医師
数の配置、社会的入院の解消などを進め、早期相談・治療・支援ができる体制を整備する。
①国は、精神医療内容を改善し、医師、看護師の配置基準を見直し、充実をはかる。また、
精神保健福祉士(PSW)など、専門職による支援を拡充する。
②国は、精神医療における入院を中心とする治療のあり方を見直し、医療提供だけでなく、
相談・早期支援など、必要な生活支援を充実させるための施策を講じる。併せて、家族
などへの相談・支援体制を整備する。
③国・地方自治体は、精神病床数が必要最小限となるよう計画的な削減を促進する。
④国・地方自治体は、学校のスクールカウンセラー等を充実させ、思春期における精神疾
患などへの情報提供や相談体制を整備するとともに、正しい知識の普及、理解の促進を
はかる。
(5) 「福祉のまちづくり」の推進に向け、保健・福祉、都市環境・住宅、交通、教育、雇用
政策等関係省庁の連携を行い総合的なまちづくりを推進する。
①住生活基本計画(都道府県計画)の実施に際しては、事業者等の関係者だけでなく高齢
者・障がい者等を含む多様な地域住民、NGO(非政府組織)・NPO(非営利組織)
等が参画できる仕組みを保障する。( P121~「国土・住宅政策」参照 )
②国・地方自治体は、高齢者や障がい者を含む、すべての生活者が快適に暮らすことがで
きる、ユニバーサルデザイン(言語・老若男女・能力・障がいの如何を問わずに利用で
きる施設・製品・情報等の設計)に基づいたまちづくりを推進する。( P121~「国土・住
宅政策」参照 )
③高齢者・障がい者等、交通弱者の意見を反映させ、ユニバーサルデザインに基づいた、
高齢者や障がい者等すべての人々が利用できる、交通機関・交通施設の整備を促進する
ため、設備の設置・整備・維持にかかる費用助成を拡充する。( P131~「交通・運輸政策」
参照 )
a)国は、安全輸送の観点から、エレベーター・ホームドアまたは可動式ホーム柵等の設
置・整備、および保守点検等を推進するとともに、バリアフリー化対象旅客施設条件
(現行 1 日平均 3,000 人以上、高低差 5m以上)を段階的に引き下げ、その対象を拡
大する。また併せて、バス・タクシー乗場の確保、乗り換え情報提供の充実、乗り継
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
ぎの利便性向上を推進する。
b)旅客車両等においては、低床バス・リフト付きバス・身障者用タクシー等の導入を促
進するとともに、高齢者・障がい者等にやさしい交通事業を組み合わせて、地域の実
状にあった効果的な運営を支援する。
c)高齢者・障がい者等およびその介護者に対する福祉目的の料金割引を拡充する。
d)移動等の円滑化にかかる事業の重点的かつ一体的な推進に関する「基本構想」につい
て、対象となる市町村はすべて、配置計画等を明記して策定する。策定にあたっては、
高齢者、障がい者の参加を保障する。
e)「基本構想」の内容について、高齢者や障がい者等が市町村へ具体的に提案できる構
想作成提案制度を市民に周知し、制度の活用を促す。
④点字ブロックや誘導ブロックの規格統一、音声案内や画像案内の設備導入、色覚障がい
者にも判読しやすい標識設置等を推進する。( P131~「交通・運輸政策」参照)
⑤不合理な入居制限を受けがちである高齢者・障がい者等に対する住宅支援政策を強化す
る。高齢者に関しては、「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者居住安定確保
法)」の登録住宅制度、滞納家賃保証制度、高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)制度等
を拡充する。また、障がい者に関しては、高齢者居住安定確保法の適用対象を障がい者
まで拡大するよう、同法を「高齢者および障害者の居住の安定確保に関する法律(高齢
者・障害者居住安定確保法)」に改正する。( P121~「国土・住宅政策」参照)
7.すべての子どもの豊かな育ちと男女が協力しながら仕事と子育てを両立することができ
る社会の実現に向け、「子育て基金」(仮称)の創設など、子ども・子育てを社会全体
で支える仕組みを構築する。
(1) 男女が、ともに働きながら子育てができる職場・社会環境を整備するため、「ワーク・
ライフ・バランス憲章」を着実に推進する。「仕事と生活の調和推進のための行動指針」
の数値目標を達成するための工程表を明らかにし、そのための財源措置を講じる。
(2) 結婚や出産は当事者の選択であり、国や行政が介入すべきではないことを基本に、子の
育児・養育の責任は第一義的には保護者にあり、その保護者が安心して産み育てられる条
件や、子どもが健やかに育つ環境の整備が社会の責任であることを明確にする。
(3) 次世代育成支援対策の推進に向け、次の措置を講ずる
①次世代育成支援対策推進法に基づき、自治体および事業所が定めた次世代育成支援対策
推進計画の達成状況を把握し、それらが着実に実施できるよう必要な支援措置を講ずる
とともに、速やかに行動計画策定指針の変更に反映させる。
②地方自治体は、次世代育成支援対策協議会の設置など、自治体における次世代育成支援
対策を推進する。
③国および地方自治体は、「認定マーク」の認知度を向上するなど、企業が積極的に次世
代育成支援を推進することを促す。従業員が 100 人以下の企業に対して「行動計画」の
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
策定を義務づけ、中小企業における次世代育成支援対策を推進する。
(4) 国は、「子ども・子育てビジョン」および「子ども・若者ビジョン」の実施状況の把握、
見直し等に労働者の意見を反映し、計画目標達成のために十分な財政措置を講ずる。財源
については、事業主にとって次世代育成支援が持つ意義と働きの見直しにおける事業主の
役割を考慮し、その負担構造を明らかにする。
(5) 国および地方自治体は、子を持つすべての保護者が、ゆとりと責任を持って子育てがで
きるよう、社会的な支援を強化する。
①小学校就学前の子どもの育つ環境が、保護者の就労や経済状況などによって異なること
なく、すべての子どもに対するより良い保育・教育環境を確保するため、現在の保育所
と幼稚園の一体化を行う。
a)幼保一体化を進めるにあたっては、福祉的機能(児童虐待対策、親支援、子育て相談
支援機能など)を基盤に据える。
b)保育所と幼稚園の保育・幼児教育の実践を活かしつつ、施設基準・人員配置基準の統
一化、資格の統一化、研修機会の保障などの処遇の統一化などを着実且つ現実的に進
める。
c)幼保一体化施設への入所方式や価格設定などについて、すべての子どもおよび保護者
への公平な利用保障する仕組みとする。また、公平な利用を保障するため、市区町村
の責務と権限を強化する。
②多様な保育ニーズに応えるため、保育制度の改善・拡充をはかる。
a)大胆な財政投入を行い、保育サービスの量的拡大を早急に実現する。保育所の設置に
あたっては、最低基準を満たすことを前提に、学校の余裕教室の活用等をすすめる。
b)保育料負担を 3 歳未満児ついては原則無料とし、3 歳以上については利用者負担を2
割程度に引き下げるとともに、応能負担を基本とした仕組みを維持する。
c)児童福祉法にある「保育にかける」を保護者が「保育を希望する」とし、「保育を希
望する」すべての子を受け入れるよう保育サービスを拡充する。市区町村の保育に係
わる責任を明確にし、保育の必要性・必要量の認定、入所の優先順位の決定、受け入
れ保育所の入所調整に関する市町村の関与を維持・強化する。また、保育施設の設備
および運営についての国の最低基準は維持・改善する。
d)保育の質の向上及び保育労働者の確保・定着に向け、保育労働者の処遇改善を促進す
る。保育労働者の賃金水準に与える影響を考慮し、保育所運営費の使途制限は維持す
る。
e)乳児保育、延長保育(幼稚園における預かり保育を含む。)、病児保育、夜間保育、
休日保育等の拡充のため、国や都道府県等の財政支援を強化する。また、家庭的保育
事業(「保育ママ」)、ファミリー・サポート・センターの整備も促進する。
f)待機児童解消「先取り」プロジェクトの推進および更なる拡充など、保育所の待機児
童の解消や兄弟姉妹が同保育園に入所できるよう地域ごとの保育ニーズに対応したサ
ービスの拡充を早急にはかる。その際には併せて保育の質の確保のための対策を講じ
- 114 -
3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
ることとする。
g)過疎地の保育について、安定的にサービス提供ができるよう施策を拡充する。
h)インクルーシブの理念を重視し、保育所での障がい児保育を拡充する。
③無認可保育施設について国として安全基準を定め、財政支援を行い、保育環境を改善し、
向上させる。
④事業所内託児施設への助成金を増額し、支給期間を延長する。
⑤放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童を解消し、保育環境を向上させるため、次の
措置を講ずる。
a)放課後児童クラブを、児童福祉法第 7 条に定める「児童福祉施設」として位置づける。
b)市区町村の放課後児童クラブの実施責任を明確にし、小学校区に最低1つを早急に整
備する。設置にあたっては、学校の余裕教室を利用するなどして、児童の利便と安全
を考慮する。
c)「放課後児童クラブガイドライン」をもとに、設置・運営基準を設ける。対象者の拡
大や適正規模の実現、サービスの利用保障強化、人材の確保とサービスの質の向上を
実現し、量的拡大をはかっていくために、財源保障を強化する。
d)保育時間の延長、入所要件の弾力化、対象年齢を小学 6 年生までとするなど、地域の
ニーズと実情に応じて多様なサービスの提供を推進する。併せて、障がい児を受け入
れることが可能な体制を整備する。
e)指導員の処遇と研修体制の改善を行う。併せて、保育時間の延長や職員体制の強化の
ため、指導員の常勤化および「放課後児童クラブガイドライン」に則した指導員の確
保をはかる。
f)運営にあたって小学校との連携・協力体制を整える。
g)全児童対象の「放課後子ども教室推進事業」を推進するにあたっては、同事業への一
本化により学童保育を廃止するのではなく、両事業の連携をはかるよう自治体に周知
徹底する。
⑥地域の子育て機能回復の観点から、児童館の運営・活動を拡充するため、開設時間の延
長、日曜開設等への支援を強める。
⑦保護者の育児不安、地域での孤立を解消するために、身近な場所での子育て支援相談や
子育てを支える地域ネットワークづくりを推進するとともに、保護者が適切なサービス
を利用できるよう「子育て支援総合コーディネート事業」を推進する。
(6) 国は、出産、子育てにかかる経済的負担を軽減するため、次の措置を講ずる。
①子育て支援と、安心・安全な出産のため、妊娠・出産に係る費用については、正常分娩
も含めてすべて健康保険の適用(現物給付)とし、現行の出産育児一時金は廃止する。
具体的な診療報酬の設定等に向けて、現在の分娩方法の実態把握や費用内訳を把握し検
証を進める。
②特定不妊治療費助成事業の助成額、回数、期間をさらに拡大し、所得制限を緩和する。
また、特定不妊治療(体外受精および顕微鏡受精)以外の不妊治療に対しても、助成制
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
度を設ける。
③18 歳に達する日以降最初の 3 月 31 日までの子どもがいる世帯に対し、公的賃貸住宅の
優先入居を行う。
④子ども手当について、次の措置を講ずる。
a)子ども手当は、義務教育終了までの子どもを養育する保護者に対し、所得制限なしで
支給する。なお、所得再分配については、税制などにおいて対応する。
b)子ども手当は、年少扶養控除の廃止等により、児童手当受給時に比して実質手取額が
減少する世帯が生じない額(3 歳未満児1人あたり月額 20,000 円程度、3 歳以上中学
修了までの子ども1人あたり月額 15,000 円程度)を最低限支給する。
c)ども手当は、単年度法による支給ではなく、恒久的な制度として構築する。なお、そ
の財源は総合的な税制改革を実施し確保する。
(7) 国および地方自治体は、以下の措置を講ずる。
a)地域における小児医療・救急体制を確実なものとするため、財政支援の拡充等の対策
を早急に講ずる。小児医療機関における病児保育を促進する。
b)病児・病後児保育の推進のため、医療機関併設型施設への助成拡充や、医療機関と保
育所および幼保一体化施設などとの連携強化をはかる。同時に、保育所などにおいて、
安静室・調理施設、看護師・担当保育士を確保した病児・病後児保育体制を早急に整
備する。
c)未就学児の医療費および健康診査の完全無料化をはかる。
(8)
国および地方自治体は、児童虐待の予防と対応策を強化するために、次の措置を講ずる。
①児童虐待への対応は、子どもの生命の安全と人権確保を最優先とする。児童相談所等が
虐待の疑いのある家庭に対して 48 時間以内に立ち入り調査を行うことを義務化する。
②児童虐待防止法の国民への周知をはかる。特に、国民の通告義務(児童福祉法第 25 条)
に対し、啓発、広報の徹底をはかる。
③児童福祉関係行政機関である児童相談所、福祉事務所、保健所、保育所、学校、民間団
体、NPO等の連携を強化するため、市町村による要保護児童対策地域協議会の設置を
徹底し、同協議会が児童虐待等の予防・早期発見・早期対応に十分機能することを確保
する。
④各市区町村に児童福祉司の配置を義務づけるとともに、相談業務を行うための職員の研
修を徹底し、児童福祉司の任用資格の取得を促進する。
⑤児童虐待相談処理件数の急増に対応し、児童相談所を増設するとともに、都道府県に対
する児童福祉司の配置基準を大幅に引き上げ児童福祉司を増員し、24 時間 365 日体制の
整備に全力を挙げる。自治体が配置基準を満たしさらに超えて配置するための財政基盤
を確立する。また、相談員、児童心理司等専門職員の配置を増やし、予防的な取り組み
等児童相談所の機能を強化する。
⑥虐待を受けた児童に対するケアの充実、および虐待をした者が二度と虐待を繰り返さず、
養育者としての責務を果たせるようにするためのケア体制を確立するため、カウンセラ
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
ーの育成・計画的配置を進め、財政支援を行う。
⑦児童の人権を保護する観点から、一時保護所、児童養護施設等の設置・運営基準を子ど
もの成長段階に則した基準となるよう改善し、外部の評価機関を設置し、同時にオンブ
ズパーソンを配置する。
(9) 民生委員と児童委員については、兼務規定やその推薦、任命方法を抜本的に見直し、地
域福祉の中心的な担い手とする。
(10)就学前の子どもが学校生活に円滑に移行できるよう、小学校と保育所および幼稚園が連
携し、1年間、共通のカリキュラム・保育内容とした就学前教育を行う。
(11)国および地方自治体は、「認定こども園」の普及のため、財政支援の拡充や二重行政の
解消などを行い、保育と幼児教育の総合的な提供を推進する。
(12)国は、男女がともに仕事と家庭を両立できる環境を整備するため、育児・介護休業法を
改正し、「両立支援法」とする。 (P223~「男女平等政策」参照 )
(13)児童扶養手当などをはじめとした「ひとり親世帯」への支援策を拡充し、保育所への優
先入所、職業訓練等の自立支援策を個々の世帯の態様を踏まえ、総合的かつ強力に取り組
む。また、国は児童扶養手当法から減額措置に係わる規定を削除する。
(14)国および地方自治体は、障がい児支援について、次の措置を講ずる。
①障がいのある子どもの施策は基本的子ども・子育て一般施策に組み込み、更に特別な支
援が必要な施策について、障がい者施策に組み込む。
②児童養護施設や乳児院などの児童福祉施設について、障がい児も受け入れ可能な開かれ
た仕組みにするとともに、日常の生活の場にふさわしい施設水準に改善する。
③発達障がい児の早期発見と早期対応のための基盤整備を強化する。
(15)国および地方自治体は、思春期・青年期における対策を強化する。
①思春期精神疾患に関わる専門家の養成を行うとともに、アウトリーチ(訪問支援)型の
相談支援サービスを強化する。
②ひきこもり地域支援センターの設置を促進するとともに、同センターの周知をはかる。
③思春期に関わる総合相談窓口の設置に向け、学校や児童相談所、ひきこもり地域センタ
ーおよび地域若者サポートステーションなどの関係機関の連携を強化する。
(16)国および地方自治体は、福祉と教育の連携をはかり、子どもの豊かな育ちと社会への1
人立ちを支援するため、次の措置を講ずる。 (P201~「教育政策」参照 )
①子どもの相談相手でもある養護教諭を各学校に複数配置するとともに、スクールカウン
セラーをすべての小・中・高校に常勤配置する。また、必要に応じてスクールカウンセ
ラーの児童館や放課後児童クラブ(学童保育)、その他児童福祉施設への配置を行う。
②市区町村単位でスクールソーシャルワーカーの配置を行い、学校と連携して子どもの豊
かな育ちをサポートする体制を構築する。
③不登校児童・生徒、中途退学者に対する学びやケアの充実などの環境整備を行う。
(17)国および地方自治体は、地域の子育て支援拠点事業を拡充し、保護者からの相談と子ど
もの「心のケア」の双方に対応するための環境・設備を、専門機関・専門家と連携して整
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
備する。 (P201~「教育政策」参照 )
(18)だれもが働きながら、安心して子どもを産み育てられる社会をつくるため、総合的かつ
持続可能な子ども・子育て支援制度の確立に向けて、「子育て基金(仮称)」構想を実現
する。
①保育所運営費、次世代育成支援対策交付金、放課後児童クラブ運営費、児童手当、育児
休業給付、出産手当等、次世代育成支援に係わる財源を統合し、「子育て基金(仮称)」
を創設する。
②「子育て基金」は法律に基づく、独立した公法人とし、労使の代表が直接運営に参画す
る。徴収と給付については現行の仕組みを活用する。
③「子育て基金」は、子ども手当、育児休業給付等を各世帯・個人に給付するとともに、
保育サービス、地域における子育て支援サービス、母子保健事業、ワーク・ライフ・バ
ランスの推進、要保護児童への対応等についての地域行動計画に基づき、地方公共団体
ないしサービス提供施設等に補助を行う。
④「子ども手当」などの現金給付の受け皿となる現物給付の整備を早急に行う。
⑤子ども・子育てに関わる安定財源を確保する。その水準は、OECD 加盟国の平均並みの財
源確保を目指す。
8.すべての被爆者を対象に、国家補償に基づく被爆者支援を実現する。
(1) 被爆者の実情に合わせた原爆症認定基準の見直しを行う。
①被爆者救済を旨とする被爆者援護法の精神に則り、認定訴訟の各高裁、地裁判決を厳粛
に受け止め、控訴は直ちに取り下げる。
②2010 年から施行されている「原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題の解決のための基金
に対する補助に関する法律(原爆症救済法)」について、すべての被爆者の救済に向け
た実効性ある運用をはかる。
③2008 年 4 月から運用されている新・原爆症認定方針(原爆症 5 疾病)の再度の見直しを
行う。
④原爆症認定審査が滞留なく円滑に実施されるよう、審査体制の拡充をはかる。
(2) 被爆二世・三世への援護の推進をはかる。
①被爆二世およびその後世代への適用を明記した「被爆者援護法」に改正し、「被爆二世
健康手帳」を発行するなど被爆二世に対する援護を実施する。
②「被爆二世健康診断」にはガン検診も加えるとともに、検診結果に応じ、医療措置を行
う。
③放射線影響研究所で行われている「被爆二世健康影響調査」を今後も継続的に実施し、
内容の充実をはかり、被爆二世の援護策に反映していく。また被爆三世についての健康
調査とともに援護施策を検討する。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
(3) 在外被爆者の援護の充実をはかる。
①改正被爆者援護法により在外公館での被爆者手帳の申請・交付および健康管理手当等各
種手当等を確実に施行すること。また、在外被爆者の実態把握に努める。
②在外被爆二世に対する「被爆二世検診」については、居住国の医療機関で受診できる措
置を講じる。
(4)「被爆体験者」に関する援護施策の見直しを行う。
①「長崎被爆体験者支援事業」(厚労省委託:被爆体験者精神影響等調査研究事業)にお
ける、被爆体験者医療受給者証の居住条件の撤廃を行う。また、被爆体験者についても、
被爆者と選別することなく被爆者同様の援護施策を講じる。
<実現に向けた取り組み>
(1) 社会保障の抜本改革、社会的セーフティネットの再構築に向け、各種団体、NPO等と
連携をはかり、シンポジウムの開催等世論喚起をはかる。また、引き続き社会保障講座(基
礎編、理論実践編)を開催する。
(2) 求職者支援給付と生活保障制度のあり方に関する学習会を開催し、組合員の理解を深め
るとともに、関係団体等との意見交換等を行い、セーフティネットの再構築の具体的な制
度設計に向けて研究を進める。
(3) パート労働者等への厚生年金の適用拡大や国民年金保険料納付率の向上など現行の年金
制度における課題について、連合の政策提言・要求が十分反映されるよう国会対応を強化
する。
(4) 年金制度改革および社会保障と税の共通番号の導入に向けて、政府・与党の議論に積極
的に参画する。
(5) 「日本年金機構」が保険料を拠出する労使・被保険者の意見が直接反映される運営体制
になるよう世論喚起をはかる。
(6) 診療明細書の発行を医療機関に求め、内容を確認し、保管する習慣を身につけ、自分や
家族の健康や医療の内容に対する関心を高める「明細書をもらって医療費をチェックしよ
う」運動に取り組むとともに、医療費「不正」請求一掃、レセプト開示の取り組みを継続
して展開する。
(7) 地方連合会と連携し、都道府県の医療計画の策定や、全国健康保険協会の運営に対して、
積極的な参画を進める。「健康日本 21」等、健康づくりに向けた各種活動に対しても主体
的に取り組む。また、#8000(小児救急医療電話相談)、#7119(救急相談センター)や地
域の医療や健康に関する相談窓口等を積極的に活用し、救急医療体制の適正な利用をすす
める。
(8) 2012 年度の診療報酬改定にあたっては、2010 年度の診療報酬改定にかかる結果検証を十
分に踏まえたうえで、医療と介護の切れ目のないサービスが安全かつ良質に提供される水
準を確保する。「患者本位の医療を確立する連絡会」との連携を強化するとともに、連合
・健保連・協会けんぽ・日本経団連の4団体を軸に中医協支払側の結束を強める。
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3.安心できる社会保障制度の確立
(福祉・社会保障政策)
(9) 地域包括ケアシステムの実現に向け、介護保険事業(支援)計画の策定、地域包括支援
センター運営協議会などに対する労働組合の参画を一層促進するなど、地域での取り組み
を強化し、利用者、被保険者、労働者の立場から介護保険制度の適切な運営を求める。
(10)医療・福祉の職場で働く労働者に対する患者・利用者からのセクシャルハラスメントや
暴力に関して、関係団体等の調査結果等も参考にしつつ、実態把握を行う。
(11)自治体に対して「次世代育成支援対策地域協議会」の設置および労働組合の参加を求め、
地域の次世代育成支援対策を推進する。
(12)次世代育成支援対策推進法」に基づく行動計画の進捗状況を把握し、改善をはかる。ま
た、100 人以下の企業にも行動計画の策定を求めるとともに、行政も策定を指導するよう
働きかける。
(13)「子ども・子育て新システム」に関する法律案について、連合の政策提言・要求が十分
に反映されるよう、国会対応などを行う。
(14)地域福祉や勤労者自主福祉の充実に向け、労福協・労金・全労済、退職者連合、NPO
等と連携し、労働相談や生活相談等「ワンストップ・サービス」活動を推進する。
(15)障がい者福祉の充実に向け、障がい者団体との交流により取り組みを進める。
(16)障がい者の権利を保障するため、障害者基本法改正に向け、障がい者制度改革推進会議
での意見反映、差別禁止法(仮称)制定に向け、障がい者差別禁止部会での意見反映を行
う。
(17)被爆者援護施策の充実に向け、政府に対し、関係団体および有識者等との意見交換を定
期的に実施するよう求める。
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4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
4.社会インフラの整備・促進
国 土 ・ 住 宅 政 策
<背景と考え方>
(1) 少子高齢化の進展に伴って地域ごとの年齢構成・世帯構成が変化し、地域社会に影響を
及ぼしている。今後の国土開発にあたっては、全国一律の基準ではなく、地域ごとの特性
を反映した、すべての生活者にとって暮らしやすい国土計画・都市計画・まちづくりを進
めていかなければならない。社会資本整備重点計画( 注 1 )の抜本的な見直しが進められ
ている。コンパクトシティづくりなど、低炭素型社会の実現を中心に据えた、生活者にと
って暮らしやすい社会資本の整備や、国会に上程中の交通基本法(仮称)に基づいた交通
基本計画(仮称)における地域公共交通の有効活用・活性化、交通手段のベストミックス
などと合わせて、国土計画・都市計画・まちづくりを推進する必要がある。
(2) 2010 年、世界各地で記録的な猛暑に襲われるとともに、パキスタンの大洪水やロシア
の森林火災などの自然災害が起こった。国内においても、「ゲリラ豪雨」と呼ばれる予測
不可能な局地的集中豪雨や大雪、噴火などが発生し、多くの被害をもたらした。また、ハ
イチやチリ、中国で地震が相次ぎ、特に「ハイチ大地震」では 22 万人以上が死亡した。
今後、東海・東南海・南海をはじめとした大型地震が、近い将来発生する可能性が指摘さ
れている。
これらの自然災害から国土や人命を守り、被害を最小限に抑えるためには、洪水・土砂
災害、高潮、地震等に対する防災・減災対策を早急に行う必要がある。「被災者再建支援
法」における、自然災害の被災者に対する適用範囲と支援金がまだ十分とはいえない内容
であり、共済制度の創設も含め、今後さらに被災者支援策の拡大・充実をはかる必要があ
る。今後の国土計画・都市計画・まちづくりにおいては、森林整備や公共交通の利用促
進、ビルや住宅の省エネ化等、地球環境への負荷が少ない低炭素社会の実現をはかってい
く必要がある。
(3) 「災害対策基本法」では、国および地方公共団体、指定公共機関により必要な体制を確
立するとともに、防災計画を策定することが定められている。同法における体制や防災計
画が取り巻く状況の変化に対応し、不備な点があれば補強する等、被害拡大の防止と迅速
な災害復旧に備える必要がある。併せて、災害発生に際しライフラインを支えることにな
る公共施設や指定公共機関および指定地方公共機関(医療・電気・ガス・輸送・通信・放
送等)の施設を点検・整備し、機能の維持・向上をはからなければならない。また、災害
復旧時の市民生活の早期安定に向け、国および地方自治体の迅速な支援体制の強化が求め
られている。
(4) 直近の住宅統計調査(2008 年)によると、総世帯数が 4,999 万戸に対し総住宅戸数が
5,759 万戸と量的な面での住宅の供給はほぼ充足しているが、室内環境・戸外環境・性能
- 121 -
4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
等、質的な面はまだ不十分な状況である。今後は、質的向上に重点を置いた住宅政策を推
進していく必要がある。
(5) 少子高齢化等の社会変化に伴い、高齢者や夫婦のみの世帯・単身世帯の増加等、住宅の
利用者が変化している。2011 年 2 月、「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者
住まい法)」の改正案が閣議決定された。これまでの高円賃・高専賃・高優賃を廃止し、
新たに医療と介護が連携し高齢者支援サービスを提供する「サービス付き高齢者向け住
宅」に一本化する案となっている。2010 年から 2020 年の 10 年間で、高齢者人口が約
2,900 万人から約 3,600 万人に増加することが見込まれている。今後も、人口や世帯数の
将来推計等をふまえた、多様な住宅の利用者に対応できる住宅の供給とともに、高齢者・
障がい者・低所得者・被災者等の住宅弱者に対する支援策・安全網の充実が求められる。
(6) 2011 年 3 月の住生活基本計画(全国計画)の変更を受け、住生活基本計画(都道府県
計画)が見直されることになる。見直しにあたっては、地域住民が参画した仕組みを整備
する必要がある。今後は、策定を義務付けられていない市区町村における住生活基本計画
の策定を求め、住生活の更なる向上をはかっていく必要がある。
(7) 2009年12月に導入された、エコ住宅の新築と既存住宅のエコリフォームにポイントが付
与される、住宅エコポイント制度により、新築住宅に占めるエコ住宅が2割を超えるなど
成果が上がっている。この制度を継続するとともに、太陽光発電や太陽熱利用、家庭用高
効率給湯器や燃料電池など、初期投資額の大きいエコリフォーム費用の補助、固定資産税
の軽減などによる低炭素社会の実現に向け、環境に配慮した住宅・設備を、適正価格で取
得・改修できるようにする必要がある。
(注1)社会資本整備重点計画 ~国民生活や産業活動の基盤を形成する道路・河川・港湾・航空など
の社会資本について、限られた財源で効果的・効率的に整備を行うため、方向性や政策目標などを
示すもの。
<要求の項目>
1. 低炭素社会の実現を中心に据え、地域の特長を生かした、ひとに優しい多様で柔軟な
まちづくりを推進する。
(1) 国・地方自治体は、国土計画・都市計画・まちづくりは住民参加型を基本とし、地域住
民の理解と合意のもとに推進する。
(2) 地方自治体は、無秩序な市街地拡散を抑制し公共交通を整備・再生する等、環境負荷が
少ないまちづくりを推進する。
①都市部における中心市街地の整備を進め、大型集客施設・業務用ビル・公共施設等を集
約し、都市緑化やエネルギーの共同利用等を促進するとともに、公共交通機関の整備・
再生をはかり、市街地の活性化とあわせてコンパクトシティ( 注 2 )づくりを推進す
- 122 -
4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
る。
②市街地再開発事業施行区域の要件を緩和し、既存建築物の老朽化、敷地細分化の状況等
に応じて対象範囲を拡大し、敷地細分化の防止と既成市街地再開発を推進する。
③用途地域の最終決定権を都道府県から市区町村に委譲し、都道府県・周辺市区町村との
連携・調整をはかる。
④都市計画区域外の乱開発防止と市街地の無秩序な拡大を抑制するため、開発行為等が予
想される地域の市街化調整区域(注 3) への指定を推進する。
(3) 国・地方自治体は、高齢者や障がい者を含む、すべての生活者が快適に暮らすことがで
きる、ユニバーサルデザイン(注 4) に基づいたまちづくりを推進する。( P78~「福祉・社
会保障政策」参照)
(4) 国・地方自治体は、地球温暖化防止・ヒートアイランド現象対策の観点も含め、都市計
画・まちづくりにおいては、都市・建築の緑化および都市近郊の緑地・農地の保全を重視
する。
(5) 国・地方自治体は、老朽化した公的賃貸住宅等の再生を進めるための公的支援を拡大す
るとともに、良好な街並みや景観、再生完了後の維持管理に配慮する等、地域価値が向上
する再生計画を推進する。
(6) 景観法に基づく景観行政団体となった地方自治体は、景観条例制定による景観保護規制
を強化し、景観アセスメントシステムを確立する。
(7) 国・地方自治体は、オフィスビルの新築・改修時に、省エネルギー型設備の導入をさら
に促進するとともに、ビル・エネルギーマネジメントシステム(BEMS:注5)や省エ
ネルギー支援サービス(ESCO: 注6 )などの事業育成のための補助金制度を拡充する。
( P46~「資源・エネルギー政策」、P145~「環境政策」参照 )
(8) 国・地方自治体は、住みやすいまちづくりと国産材活用の観点から、地籍調査を強化す
るとともに、利用優先の土地活用と地価安定により、生活と経済の安定をはかる。
(9) 国・地方自治体は、まちづくりと連動した土地政策を推進するため、土地取引の情報提
供、土地行政の連携強化等を実施し、土地市場の透明化・活性化を推進する。
(注 2) コンパクトシティ ~ 都市の郊外化・拡大化を抑制し、都市機能(住宅、商業、行政等)を都
市中心部に集中させ、環境負荷が小さく、経済効率が高い、住みやすいまちづくりをめざそうと
する構想。
(注 3) 市街化調整区域 ~ 都市計画区域のうち、市街地化を抑制するよう指定された区域。開発行為
は原則禁止であり、許可が必要。
(注 4)ユニバーサルデザイン ~「2008-2009 要求と提言」では、ユニバーサルデザインとバリアフリ
ーを併記していたが、ユニバーサルデザインは『年齢・性別・言語・障害の有無に関わりなく、
すべての人が利用できる製品・建物・空間のデザイン』で、バリアフリーを含めた考え方である
ことから「ユニバーサルデザイン」と標記することとした。但し、バリアフリーが個別の要求項
目となる場合はバリアフリーとして標記する。
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4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
(注 5) BEMS ~ Building Energy Management System の略。ICT技術の活用により、業務用ビル
において室内環境に応じた照明・空調等の最適運転等を行う等、エネルギー需要の自動管理を行
うと同時に、エネルギー分析・診断機能により、事業者に一層の省エネルギー対策に向けた情報
を提供するシステム。
(注 6)ESCO ~Energy Service Company の略。工場や事務所、オフィスビルや商業施設、公的施設
等に対して、エネルギー効率の改善策を提案、省エネルギー効果を保証し、削減したエネルギー
コストから報酬を得る事業。
2.社会資本整備においては、既存社会資本の老朽化対策を行うとともに、公共性・社会
性を重視しつつ、利便性・必要性や投資効果の観点から優先順位をつけた上で整備を進
める。
(1) 国・地方自治体は、橋梁、上下水道施設、港湾岸壁など既存社会資本の老朽化対策を行
うとともに、地域住民の生活・安全・環境に関連した社会資本を優先的・効率的に整備す
る。
①一定期間が経過した橋梁、上下水道施設、港湾岸壁などの維持管理を適切に行い、資源
消費を抑制するとともに、災害時の破損を未然に防ぐ。
②交通安全の確保、都市景観の保全、災害拡大の防止・減災等の観点を重視し、情報通信
回線・上下水道管・ガス管・電線等を一括埋設する共同溝の整備を推進する。
③公的賃貸住宅、公園緑地、排水処理施設の耐震補強等、地域住民の生活・安全・環境に
関連した社会資本を優先的・効率的に整備する。
④社会資本の整備においては、各部門別長期計画との整合性を確保し、優先順位を明示し
た上で、初期投資費用と維持補修費用を合わせた総額費用の視点を強化し、効率的に推
進する。併せて、予算の重点配分により全体で工期を短縮する等、総額費用軽減・投資
効果拡大を追求する。
(2) 国・地方自治体は、公共事業について、国民的な合意を前提とし、限りある財源を有効
に活用するため、重要性や緊急性に応じて、優先順位をつけ対応する。
(3) 国・地方自治体は、交通施設の整備に際しては、都市計画・まちづくりの視点、各交通
機関の役割分担や既存施設の活用、効率化と利便性向上、自然環境への配慮を重視して推
進する。
①交通施設の整備に際しては、納税者・利用者への説明責任、自然環境への配慮を重視し
て推進する。併せて、整備事業に対する事後評価制度の導入も検討する。
②鉄道施設や道路においては、老朽化し安全上問題がある橋梁やトンネル等の構造物に対
し、民間事業者への支援も含め早急に対策を講じる。
③空港整備においては、滑走路延長、ターミナルビルの増設等の追加投資は、既存空港の
効率的な運営と有効活用を前提とし、必要性を厳しく精査する。とりわけ、地方空港に
関しては、離島空港を除き新たな施設整備を抑制すべきである。今後は、空港運営に力
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4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
点を置き、滑走路などの航空系、空港ビルや駐車場などの非航空系を一体的に運営し、
安全の確保と利便性の向上を前提に、効率性を高める必要がある。
④新幹線整備においては、新規の計画決定・工事着工を抑制するとともに、既に着工した
路線・区間も投資の重点化を推進する。また、既に着工した路線・区間については、地
域交通維持の観点から、並行在来線の経営分離問題や貨物路線の維持問題を解決する。
⑤道路整備においては、今後の道路需要を精査し、拠点都市への接続向上、物流の円滑化
等、真に必要な道路を地域住民の意見を踏まえて計画し整備を行う。三大都市圏におい
ては、通過車両削減による渋滞解消等を目的に、環状道路・バイパス道路を拡充する。
⑥首都圏空港、国際拠点港湾、首都圏環状道路等、「国家プロジェクト」として整備すべ
き社会資本については、需要見込等を慎重に精査したうえで必要性の是非を判断し整備
する。その財源については、社会資本整備重点計画の抜本的な見直しを受けた、社会資
本整備事業特別会計全体の見直しと併せて検討する。
⑦空港・港湾・高速道路については、その利用料金を国際比較し、内外価格差を是正す
る。また、大都市拠点空港については、整備財源の大半を利用者・事業者が着陸料等と
して負担する方式を改正する。
⑧民間活力による社会資本整備を推進するためのPFI (注 7) については、その活用の
ための環境整備および「公」と「民」の事業の責任範囲の明確化を実施する。
⑨大都市圏への一極集中とそれに伴う住環境悪化、通勤問題、交通渋滞、防災問題等、様
々な弊害を是正するため、地方分権その他の行政改革について国民的な議論を推進する。
(注 7) PFI~ Private Finance Initiative の略。公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資
金、経営能力および技術的能力を活用して行う新しい手法。
3.防災・減災機能を強化し、自然災害に強い国土づくりを推進する。
(1) 国・地方自治体は、地域防災機能を強化するとともに、自然環境保護との両立を基本に、
流域における森林・農地・河川などを一体とした治水計画を作成・実施する。
①自治会や消防団等の地域コミュニティを支援・強化し、地域防災力の向上をはかる。
②小中学校での教育や地域住民を対象とした防災訓練や勉強会を実施し、地域住民の防災
意識の向上と危険地域の周知徹底をはかる。
③ハザードマップ( 注8)の作成・公表、きめ細かな気象予報と地域住民への緊急情報シ
ステムを早急に確立する。
(2) 国・地方自治体は、地下河川や地下遊水池を含む河川整備を推進するとともに、道路の
透水性・排水性舗装への転換を促進し防災機能を強化する。
(3) 国・地方自治体は、情報通信・上下水道・ガス・電気などのライフラインの安心・安全
を担保するとともに、学校・病院・空港・港湾・旅客施設・主要幹線道路などの公共施設
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4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
における耐震補強や老朽化対策を早期に完了させる。
(4) 国は、被災者生活再建支援法を改正し、被災者の住宅に対する被災者生活再建支援金の
対象・金額を拡大する。また、応急仮設住宅の建設、公営住宅等の提供、被災者が自ら民
間賃貸住宅を仮住居とした場合の家賃補助等、仮住居に関する公的支援を拡充する。なお、
応急仮設住宅での滞在期間が長期化する場合、早急に仮設ではない公営住宅等に移り住む
ことができるよう対策を強化する。
(5) 国・地方自治体は、2005 年に兵庫県が始めた、被災者が自然災害の被害を受けた住宅
を再建・補修するための相互扶助の仕組みである「被災者住宅再建共済制度」を創設す
る。
(6) 地方自治体は、自然災害が発生した後に建築物の敷地・構造および建築設備の安全・衛
生・防火・避難等の状況について、土木・建築に関する公的資格を有する者が検査・判定
し、その結果を報告する現行の「被災宅地危険度判定」・「応急危険度判定」制度を強化
・統合する。
(7) 国・地方自治体は、防災上、緊急整備を要する地域や被害・復旧コストを明確に公表
し、地域住民の自然災害に対する認識を深める。また、「都市防災総合推進事業」の範囲
を拡大し、都市以外においても「災害危険度判定調査」を実施する等、防災整備事業を拡
大する。
(8) 国は、耐震補強工事後の耐震強度や工事費用を国民にとってわかりやすいものとなるよ
うな仕組みづくりを推進する。
(注 8) ハザードマップ ~自然災害による被害を予測し被害範囲を地図化したもの。水害、地震災害、
火山災害、土砂災害、津波災害等目的に応じて作成されている。
4.誰もが安全・安心で快適に住み続けることのできる賃貸住宅を整備するとともに、住宅
セーフティネットの構築を促進する。
(1) 国・地方自治体は、「居住の権利」を基本的人権として位置づけ、低所得者や高齢者、
障がい者、子育て世代等、特に配慮が必要な世帯への公的賃貸住宅の供給を推進する。ま
た、民間の優良賃貸住宅に対する支援を強化する。( P78~「福祉・社会保障政策」参照 )
①218万戸ある公営住宅ストックは、公共の財産である。早急に建替え・改善の必要があ
る90万戸については、高齢者・障がい者・低所得者などの住宅弱者が安心して居住でき
るよう、住宅ストックの整備を推進する。
②公営住宅への入居資格を持つすべての低所得者・住宅困窮者が入居できるよう、入居者
の公平性・効率性を担保した制度の見直しを推進する。
③不合理な入居制限を受けがちである高齢者・障がい者等に対する住宅支援政策を強化す
る。高齢者に関しては、「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者居住安定確保
法)」のサービス付き高齢者向け住宅等を拡充する。障がい者に関しては、高齢者居住
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4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
安定確保法の適用対象を障がい者まで拡大するよう、同法を「高齢者および障がい者の
居住の安定確保に関する法律(高齢者・障がい者居住安定確保法)」に改正する。
④18 歳に達する日以降最初の 3 月 31 日までの子どもがいる世帯に対し、公的賃貸住宅の
優先入居を行う。( P78~「福祉・社会保障政策」参照 )
⑤子育て世帯向けの民間賃貸住宅の供給が不足がちであることから、現行の特定優良賃貸
住宅(特優賃)制度を拡充し、子育て世帯に対する民間賃貸住宅の供給を増大する。
(2) 国は、低所得層の自立生活を支援するため、生活保護制度の生活扶助を見直し、住宅支
援制度や住宅手当制度(住宅の現物支給又は家賃補助)を創設する。( P78~「福祉・社会
保障政策」参照 )
(3) 国は、賃貸住宅における敷金・礼金・敷引等、不透明な各種の制度・習慣を全国適用の
保証金制度に統一することに向けて検討する。併せて、国土交通省が策定した賃貸住宅の
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の周知・広報を強化する。
(4) 国は、年間所得が 1,500 万円以下の個人が、賃貸住宅に居住している場合は、支払い家
賃額 20%(上限は 24 万円)を各年分の所得税額から控除する「家賃比例税額控除制度」
を創設する。(P23~「税制改革」参照 )
(5) 国・地方自治体は、ユニバーサルデザインに基づいた、誰もが安全・安心・快適に暮ら
すことができる、賃貸住宅への改修・建て替えを促進する。
(6) 国・地方自治体は、公的賃貸住宅の建て替え、設備充実(利用者の要求に合致した住宅
設備への改善や居住水準への誘導等)、バリアフリー化(エレベーター・手摺設置等)、
防犯対策等に対して経費補助を実施し、事業期間の短縮を推進する。また、民間賃貸住宅
に対しても、その入居者の状況等、一定の要件のもと、経費補助を実施する。
5. 環境等に配慮した安全で良質な住宅・設備を適正価格で取得・改修できる住宅政策を
推進する。
(1) 国・地方自治体は、住宅に係るトータルコストを抑え、資源消費や産業廃棄物の発生を
抑制するため、「長期優良住宅(いわゆる 200 年住宅)」の普及を促進する。
(2) 国・地方自治体は、 環境(アスベスト対策を含む)・耐震・ユニバーサルデザインに
適応した住宅の建築への転換をはかる。また、転換を促進するため改修・建築に係る税制
優遇や費用補助を拡大する。
①個人住宅における耐震やバリアフリー、省エネのための改修工事に対する促進税制の内
容を充実し、期間を延長する。
a)個人住宅の石綿(アスベスト)使用検査に対する補助制度を全市区町村で早急に条例
制定するとともに、そのための予算を確保する。また、個人住宅の石綿(アスベス
ト)除去工事に対する現行の地域住宅交付金等を用いた補助制度を拡充する。加え
て、その広報・周知を徹底する。
b)「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に基づきすべての市区町村で個人住宅の耐
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4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
震性能診断・耐震改修工事に対する補助制度を早急に条例制定するとともに、そのた
めの予算を確保する。また、個人住宅の耐震改修工事に対する耐震改修促進税制(所
得税控除、固定資産税減額)について、その内容を拡充し、期間を延長する。併せ
て、耐震性能診断・耐震改修工事とも新耐震基準(1981 年 6 月 1 日以降の耐震基
準)による住宅に対しても適用できるよう、その対象を拡大する。加えて、その広報
・周知を徹底する。
②ユニバーサルデザインにもとづく住宅の建設・普及を促進するため、住宅設備の規格統
一を推進する。
(3) 国・地方自治体は、環境に配慮した住宅・設備を適正な価格で取得・改修できるように
するため、税制の優遇や費用の補助を拡大する。
①家庭における二酸化炭素排出量が大幅に増えている。既存住宅の省エネリフォームへの
支援強化や、新築住宅に対する一定の省エネ基準確保の義務化により、省エネルギー住
宅の普及をはかる。また、HEMS( 注 9)の開発・普及に努め、住宅における省エネ
ルギーの実現に取り組む。(P46~「資源・エネルギー政策」参照 )
②地球温暖化防止や環境に優しい住宅建設のため、間伐材の利用等、自然建材の採用を推
進する。また、違法(無計画)伐採の輸入材をなくすため、国産および輸入材認証を受
けた木材使用を促進する。
③住宅の省エネ性能・総合的環境性能を居住者・建築主に分かりやすく示す情報提供シス
テムの導入、「建築物総合環境評価システム(CASBEE)」( 注 10)の普及を推進
する。
④住宅への新エネルギー・省エネルギー導入に関する技術開発を推進するとともに、その
普及に向けた補助事業の継続等、支援体制を確立する。
(4) 国は、建築確認制度における特定行政庁と指定確認検査機関の役割と責任範囲の明確化
をはかるとともに、建築確認に従事する人材の確保・育成と予算の措置を強化する。
(5) 新成長戦略において、2020 年までに既存住宅とリフォームの規模を倍増することが掲
げられている。国は、既存住宅やリフォームの取引に係わる公平なルールづくり及び情報
提供を推進する。
(6) 国・地方自治体は、既存住宅の質や管理状況を反映させた価格査定方法の普及、リフォ
ームにかかる費用を含む既存住宅への融資、新築住宅における固定資産税の軽減などとの
同等化を推進する。
(7) 国は、新築住宅・既存住宅とも瑕疵担保責任の保証、住宅性能表示制度の有効活用と周
知徹底、売買契約等、住宅市場における取引の整備と情報の開示、住宅の性能・品質・管
理状況を反映させた価格査定方法の普及等、住宅流通市場を整備する。
(8) 国は、住宅エコポイント制度を継続するとともに、太陽光発電や太陽熱利用、家庭用高
効率給湯器や燃料電池など、初期投資額の大きいリフォーム費用の補助、固定資産税の軽
減などによりリフォームを推進する。また、リフォームを行うことが住宅ストックの資産
価値を高め、市場において適正に評価される仕組みづくりを推進する。
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4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
(9) 国・地方自治体は、住宅売買時における住宅性能表示、瑕疵担保責任、修繕記録、管理
情報、紛争処理等に関する情報提供と、NGO・NPOおよび住宅・建築の専門家・専門
家団体による相談窓口を整備する。
(10)国・地方自治体は、シックハウス対策に関して、原因物質(ホルムアルデヒド等)以外
の代替物質も含めて総量規制を導入する等、指針策定を促進する。また、建築資材等に含
まれる有害物質に関して、事業者への意識啓発、居住者への情報提供を推進する。
(11)国は、事業者に対する石綿(アスベスト)の代替製品の開発推進および使用されている
石綿(アスベスト)の管理・処理・廃棄に関する安全な処理技術の啓発・指導を徹底する。
(12)国は、「長期優良住宅」の普及を促進するため、税制優遇の拡充、超長期住宅ローンの
開発等、環境整備を推進する
(13)国は、平均的勤労者が年収の20%以内(低所得者は年収の15%以内)の年間ローン返済
額で、良質で安全な住宅取得に必要な資金の80%を調達できる等、住宅取得に関して達成
すべき指標を明記した住宅政策を推進する。
(14)国は、民間金融機関からの融資を受けにくい中・低所得者等に対する住宅ローンの安全
網を確立する。そのため、住宅金融支援機構においては当面の間、中・低所得者に対して、
引き続き長期固定金利ローンの貸付を継続する。
(15)国は、失業や収入の減少、病気等によって、住宅ローンの返済が困難になった者に対す
る、元金返済の猶予や返済期間の延長等の救済制度を設ける。
(16)国は、年間所得が 1,500 万円以下の個人に対して、住宅取得に要した借入金がある場合
は各年の返済金にかかる利子相当額 20%(上限は 24 万円)の「ローン利子比例税額控除制
度」を創設する。( P23~「税制改革」参照 )
(17)国は、新築住宅にかかる固定資産税の軽減期間を 10 年に延長する。( P23~「税制改
革」参照 )
(18)国は、現行の「住宅ローン減税」適用者が家族帯同で転居を伴う転勤をする場合は、減
税措置を中断しない。( P23~「税制改革」参照 )
(19)国は、居住用財産の譲渡損失の繰越控除期間を5年に延長する。( P23~「税制改革」参
照)
(20)国は、介護保険による住宅改修の費用は保険者が全額立て替え、利用者の負担は償還払
いから 1 割負担に改正する。
(21)地方自治体は、サービス付き高齢者向け住宅を活用するなど、高齢者が築いてきたコミ
ュニティを維持しながら、地域に住み続けられる仕組みづくりを推進する。また、居住の
安定と居住用資産の有効活用をはかるため、自己所有の住宅等を担保として高齢者に融資
を行うリバースモーゲージ制度の拡大・普及にむけた検討を進める。
(注 9) HEMS ~Home Energy Management System の略。ICT技術の活用により、一般家庭におい
て室内環境に応じた照明・空調等の最適運転を行う等、エネルギー需要の自動管理を行うと同時
に、エネルギー使用量のリアルタイム表示により消費者に省エネルギーに関する行動を促すシス
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4.社会インフラの整備・促進
(国土・住宅政策)
テム。
(注 10) CASBEE~ Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency
の略。建築物総合環境評価システムのことで、建築物の環境性能(環境負荷の削減、周辺環境・
景観への配慮、室内の快適性等)を総合評価し、格付けする手法。
6.住生活基本計画(都道府県計画)の見直し・実施に際しては、多様な市民が参加できる
仕組みを整備する。
(1) 都道府県は、住生活基本計画(都道府県計画)の見直しにあたって、多様な地域住民、
NGO・NPO等の意見を反映する。
(2) 市区町村は、住生活基本計画を策定する。策定にあたっては、多様な地域住民、NGO
・NPO等の意見を反映する。
<実現に向けた取り組み>
(1) 今後の国土政策(社会資本整備、都市計画、災害対策等)においては、低炭素社会の実
現、既存施設の耐震化・老朽化対策、地域実情に合致した多様なまちづくり、災害に強い
国土形成を目標に、構成組織・地方連合会と連携して国土交通省・地方自治体等への取り
組みを強化する。
(2) 国土政策(社会資本整備、都市計画、災害対策等)に関して、その現状と課題を把握す
るため、視察調査を実施する。
(3) すべての市民が良質・安全な住宅に居住できるよう、構成組織・地方連合会と連携して
国土交通省・地方自治体等への取り組みを強化する。
(4) 住生活基本計画(都道府県計画)の見直し、住生活基本計画(市区町村計画)の策定に
際して、労働者代表としての意見反映と協議参画を要求する。
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4.社会インフラの整備・促進
(交通・運輸政策)
交 通 ・ 運 輸 政 策
<背景と考え方>
(1)「社会資本整備重点計画」の抜本的な見直しが進められており、交通基本法(仮称)に
基づく「交通基本計画(仮称)」と、車の両輪として立案されることとなる。また、新た
な「社会資本整備重点計画」は、地方自治体が、必要な社会資本整備事業等を盛り込んだ
「地域計画」案を提案できるとされており、地域住民やNPO等、多様な主体が計画づく
りに参加できる仕組みをつくることが求められる。
(2) 交通基盤の整備に際しては、総合的な交通・運輸政策に基づき、生活における移動を社
会権・自由権の両面から市民の権利として保障するとともに、安全・環境・効率等へ配慮
することが必要である。その観点から、交通・運輸政策を総合的に推進させ、その基本理
念・政策目標・基本方針等を規定する「交通基本法」の制定が必要である。
(3) 地方自治体は、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づき、地域公共交
通の活性化・再生を総合的かつ一体的に推進するための「地域公共交通総合連携計画」を
作成することができる。規制緩和等に伴い、バス・鉄道・航空の不採算路線が廃止される
等、交通弱者にとって生活における移動手段の確保が困難となっている地域もある。都市
と地方との格差、自家用車を使える人と使えない人との格差等、交通における格差が発生
しており、収益性・採算性を重視しつつも、様々な交通手段のベスト・ミックスを確保し
た上で、地域住民の生活に必要不可欠な交通路線を公共財として、維持・確保及び活性化
することが求められている。
今後も、同法に基づいて設置される「協議会」および、道路運送法に基づいて設置され
る「地域公共交通会議」「運営委員会」は、交通機関を利用する市民と交通産業に従事す
る事業者・労働者、相互の合意・納得に基づくことを基本として運営し、労働者代表の意
見を反映する必要がある。
(4) 2010年6月より、37路線50区間(1652キロ)を対象に、高速道路無料化の社会実験が行
われている。2年目となる2011年6月からは、6区間(329キロ)の無料区間が追加されると
ともに、東北道などの5区間(1493キロ)においては、トラックなど中型車以上について夜
間に無料化が実施される。今後も、他交通機関へ の影響な どにつ いて注 視し、 総合的
な交通・ 運輸政 策の観 点から 、高速 道路の あり 方を検討 する必 要があ る。
(5) 都市と地方の地域間格差が拡大し、地方の公共交通を担う交通事業者の経営が悪化して
いる。特に地方鉄道においては、橋梁やトンネルといった施設を始め、車両、安全通信装
置等の老朽化は深刻な状況となっており、安全対策上早急に対策を講じる必要がある。ま
た、多くの人が利用し働く交通機関における事故・事件を防止し、安全で安心して利用で
きる交通を確立するために、事故防止策の徹底をはかるとともに、犯罪防止策や保安体制
を強化していくことが求められる。
(6) 2009 年 7 月、「総合物流施策大綱」が閣議決定された。環境負荷の少ない運輸体系の
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4.社会インフラの整備・促進
(交通・運輸政策)
実現などが掲げられている。地球温暖化防止の観点から、環境への負荷を低減した自動車
の開発・普及を推進するとともに、モーダルシフト (注 1) による輸送の効率化や ITS(注
2) の推進による交通流対策など、環境への負荷が小さい運輸体系への転換を進めていか
なければならない。
(7)2008年10月、観光庁が国土交通省の外局として設置された。新成長戦略では、訪日外国
人3,000万人の目標達成により新規雇用56万人を見込んでおり、地域活性化や新たな雇用
創出の観点から、目標達成に向け、着実に取り組む必要がある。
(8) 運輸安全委員会は、航空・鉄道・船舶における事故の原因究明を行ったうえで原因関係
者に必要な措置の実施について勧告を行い、勧告に基づいて講じた措置について報告を求
めることができる。しかし、同委員会は国土交通省の外局であり、その独立性・公平性の
確保が懸念される。航空、鉄道及び船舶の事故の未然防止・調査研究・再発防止のために
は、交通行政・刑事警察とは切り離し、官民が一体となった対策強化が必要である。
(9) 交通・運輸産業における過度の競争激化、過積載や長時間労働等の違法行為、事故の増
加等の諸問題に対しては、運転者のワーク・ライフ・バランスおよび安全輸送の観点か
ら、公正競争の確保により、適正な労働環境を確立する必要がある。
(10)貿易物資輸送の基幹を担うわが国の外航海運は、日本籍船が 107 隻、日本人船員が
2,384 人(2009 年)と、全体の約 5%に過ぎない。資源や食料の多くを海外からの輸入に
頼るわが国の安全保障上の観点から、日本籍船の増加と日本人船員の確保・育成をはか
り、安定的な海上輸送を確保することが重要な課題となっている。
(注 1) モーダルシフト ~ 長距離輸送において、トラックや航空機による貨物輸送を、地球に優しく、
大量輸送が可能な海運や鉄道に転換すること。
(注 2) ⅠTS~Intelligent Transport Systems の略。最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両
とを情報でネットワークすることにより、交通事故、渋滞などといった道路交通問題の解決を目
的に構築する新しい交通システムの総称。主なものに、ナビゲーションシステム(VICS)、
自動料金収受システム(ETC)、公共車両優先システム(PTPS)などがある。
<要求の項目>
1. 総合的な交通・運輸政策により、市民が安全かつ適正料金で利用できるようにする。
(1) 政府は、生活における移動を市民の権利として保障し、交通・運輸政策の基本理念・政
策目標・基本方針などを規定する「交通基本法」を制定する。
①交通政策の基本理念として、交通のシビル・ミニマム(生活基盤最低保障基準)の確立、
総合的な交通体系の確立、交通の安全・快適・適正料金での提供等を規定する。
②交通政策の基本方針として、低炭素社会の実現、自家用の交通手段と公共の交通手段と
の最適な組合せ(ベスト・ミックス)の再構築、ユニバーサルデザイン化( P121~「国
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4.社会インフラの整備・促進
(交通・運輸政策)
土・住宅政策」注 4 参照 )の推進、財源と負担の明確化、事業評価方式の確立、安全性の
確保、物流環境の整備、交通労働者の公正労働条件の確保等を規定する。
③地方自治体は、交通基本法に基づく「交通基本計画(仮称)」を策定する際には、交通・
運輸産業に従事する労働者代表の意見を反映する。
(2) 国・地方自治体は、交通基盤整備においては、その公共性・社会性を重視しつつ、収益
性・利便性・必要性の観点から計画の是非を判断し、各交通機関の役割分担に基づき実施
する。
①国・地方自治体は、厳しい財政事情を考慮し、交通基盤の整備は、採択時に評価し、定
期的に事業の可否について再評価を実施する事業評価制度に基づき、優先順位を明確に
して実行する。
②地方自治体は、「地域公共交通会議」・「運営協議会」において、市民生活に必要不可
欠な交通路線の維持について検討するにあたっては、交通・運輸産業に従事する労働者
代表の意見を反映する。また、会議運営にあたっては納得・合意に基づく協議を実施す
る。
③地方自治体は、新たな路線等の入札にあたっては、「安全運行の担保」を明確に位置づ
け、国土交通省が示した入札のガイドライン「地域住民の生活交通を確保するための輸
送サービスの運行主体の選定」を厳守するよう行政指導を行う。
(3) 交通基盤の整備は、国・地方自治体・事業者を含めた利用者等の受益と負担の関係を明
確にした、「受益者負担原則」を維持する。なお、国は、揮発油税、自動車重量税等、自
動車関連諸税については、簡素・軽減する抜本見直しを行う。
(4) 国・地方自治体は、交通のシビル・ミニマム(生活基盤最低保障基準)維持の観点か
ら、経費補助基準を規定し、市民生活に必要不可欠な地域公共交通に対して助成を行い、
路線・航路を維持・確保する。特に山間部・離島等に関しては、地域振興と一体となった
維持対策を行う。
①国は地域公共交通維持改善事業に関係する予算を拡大し、地域における公共交通の維持
・確保を支援する。
②市区町村は、地域公共交通活性化・再生法の積極的活用をはかり、地域住民の移動手段
を確保し、あわせて地域の活性化を推進する。また、設置される「協議会」には労働者
代表の意見反映と協議参画をはかる。
(5) 交通基盤の整備においては、安全性と利便性の向上、低炭素社会の実現などの観点か
ら、必要な情報インフラについても併せて整備する。
(6) 政府は、高速道路無料化の社会実験における地域経済への効果や他交通機関への影響な
どについて、市民、交通・運輸産業の事業者・労働者と共有し、総合的な交通・運輸政策
の観点から、高速道路のあり方を検討する。
- 133 -
4.社会インフラの整備・促進
(交通・運輸政策)
2. 環境負荷の小さい円滑な交通・運輸体系の構築に向けて、各種施策を推進する。
(1) 国・地方自治体は、地域公共交通を有効活用した交通体系を整備する。また、公共交通
機関や自転車、徒歩によるエコ通勤を推進する。
①鉄道の複線化・複々線化・相互乗り入れ等、混雑緩和対策・輸送力増強施策とともに、
その助成を拡充する。また、市街地における路面電車(LRT (注 3) )等については、
地域住民の合意形成をはかった上で整備する。併せて、公共交通機関の相互利用を可能
にする共通ICカードシステムの一層の推進等、利便性の向上を推進する。
②パーク・アンド・ライド (注 4) を推進する。そのため、地方自治体・事業者は駅およ
びバス停に隣接する駐車場(二輪を含む)・駐輪場の整備を推進する。
③バス優先・専用車線の拡充、バス路線の交通規制(時間規制)を推進し、バス走行環境
を改善する。また、国・地方自治体・事業者は一体となり、オムニバスタウン (注 5)
計画を推進する。
④エコ通勤拡大のため、「エコ通勤割引パス」により公共交通機関の料金を割り引くなど、
支援を拡大する。
(2) 国・地方自治体は、環境対応車の開発・普及、交通渋滞の解消、自転車を共有して使う
「コミュニティサイクル」 (注 6) の推進など、環境負荷の小さい交通・運輸体系を構築
する。( P46~「資源・エネルギー政策」)
①環境対応車の開発・普及に向けて各種優遇措置の拡充、インフラ設備の整備を推進する。
また、公用車を環境対応車に代替する。
②ITSの技術開発と整備を促進し、環境負荷の小さい交通・運輸体系を構築する。
③交通・物流を効率化するため、費用対効果を検証した上で、交差点の立体化、道路の拡
幅、環状道路・バイパス道路・物流拠点の適正配置等を早急に実施する。
④違法駐車に対する取り締まりを強化するとともに、駐車場・タクシー乗場の他、集配車
両に関する専用駐車場・荷捌施設等の整備を推進する。なお、市民生活における物流の
重要性・公益性の観点から、集配車両に対しては、上記施設等が整備されるまでの間、
地域の理解・同意を得る等、一定の条件のもと、適用除外とする。
⑤燃費が良く、渋滞緩和にも寄与する自動二輪の通行を可能とするなど、安全性を担保し
た上でバスレーンの効率的な運用を推進する。
(3) 国・地方自治体は、「総合物流施策大綱(2009-2013)」に基づき、自動車・鉄道・航
空・海運等の各物流機関を最適に組み合わせ、安全かつ効率的で、環境負荷の小さい物流
体系の整備を推進する。(P46~「資源・エネルギー政策」)
①長距離貨物輸送におけるモーダルシフトを推進する。
a)港湾での鉄道施設の整備、貨物鉄道と海上大型コンテナ輸送を結合する。
b)大都市間貨物鉄道経路・時間の確保、コンテナヤードの増強、貨物駅を改良する。
c)港湾と道路の一体的整備、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備、環境負荷
- 134 -
4.社会インフラの整備・促進
(交通・運輸政策)
の小さい船舶の普及を促進する。
②都市内・地域内物流の効率化のため、共同配送拠点を整備する。
③物流情報提供設備を整備し、道路交通、求貨・求車、帰り荷検索等の各種情報を提供す
る。
(注 3)LRT ~Light Rail Transit の略。次世代型路面電車システムのことで、低床式車両(LRV)の
活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を
有する次世代の軌道系交通システム。
(注 4) パーク・アンド・ライド ~ 自宅から最寄りの駅やバス停、都市近郊まで、自動車や自転車で
移動し、駅やバス停に隣接した駐車場(二輪を含む)・駐輪場に駐車・駐輪し、公共交通機関に
乗り換えて利用する。
(注 5) オムニバスタウン ~ 交通渋滞・大気汚染・交通事故増加等の都市問題を解決するため、バス
をはじめとする公共交通機関の利用を促進する都市計画・まちづくり。
(注 6) コミュニティサイクル ~自転車を共同利用する、新たな公共交通システム。貸出場所と違う
場所に返却が可能である。全国各地で社会実験が行われている。
3. すべての利用者が交通機関・交通施設等を快適に利用できるよう、各種施策を強化す
る。
(1) 国・地方自治体は、ユニバーサルデザインに基づき、すべての利用者が円滑に移動・乗
換えができる、交通機関・交通施設の整備を促進する。( P 78~「福祉・社会 保障政策」参
照)
①旅客施設等においては、ユニバーサルデザインの推進、バス・タクシー乗場の確保、乗
り換え情報提供の充実、乗り継ぎの利便性向上を推進する。
②旅客車両等においては、低床バス・リフト付きバス・身障者用タクシー等の導入を促進
するとともに、高齢者・障がい者等にやさしい交通事業を組み合わせて、地域の実態に
あった効果的な運営を支援する。
③高齢者・障がい者等およびその介護者に対する福祉目的の料金割引を拡充する。
(2) 国・地方自治体は、点字ブロックや誘導ブロックの規格統一、音声案内や画像案内の設
備導入、色覚障がい者にも判読しやすい標識設置などを推進する。( P78~「福祉・社会保
障政策」参照 )
(3) 国・地方自治体は、歩車分離式交通信号の設置、歩道と自転車道の分離、歩道と車道の
分離、交差点のカラー舗装化、二輪車駐車場の整備、交通信号機の発光ダイオードへの変
更、電線の地中埋設など、安全で人間優先のみちづくりを推進する。
(4) 国・地方自治体は、観光・地域活性化の観点から、案内板や観光案内所などの多言語対
応、主要観光地や交通施設におけるICT環境整備、通訳案内士の充実など、訪日外国人
の受入れ環境を整備する。また、観光マネジメントなど観光人材の育成にも積極的に取り
組む。
- 135 -
4.社会インフラの整備・促進
(交通・運輸政策)
(5) 国・地方自治体・企業は、時差通勤によるオフピーク通勤を推進する。
4. 交通・運輸全般の安全対策を強化する。
(1) 国は、運輸安全委員会を独立した機関とし、事故調査権限の強化と調査優先体制の確立
をはかるとともに、被害者支援機能を強化する。また、事故調査報告書は国際民間航空条
約に添って再発防止を目的とし、刑事裁判の証拠として採用しないこととする。
(2) 国は、ワーク・ライフ・バランスおよび安全輸送の観点から、自動車運転者の長時間労
働を改善しつつ、公正競争の確保をはかり、労働環境や賃金体系が適正になるよう関連諸
法の改正を行う。
①長時間労働による「精神的・肉体的疲労からの回復」と「交通事故の防止」をはかるた
め、「休息期間」と違反事業者に対する罰則を法律に規定し、事業者に改善基準告示の
連続休息期間の確保を義務づける。
②業種ごとに総拘束時間の短縮と法整備を行う。
③すべての事業用自動車にデジタルタコグラフを搭載することを法律に義務づける。中小
事業者向けの「簡易型安全運転解析ソフト」を開発・配布し、定期的な報告を提出させ、
関係省庁で摘発に必要な情報を共有化する。
④過当競争や賃金体系における過度な歩合制が低賃金・長時間労働の原因であるため、安
全輸送の観点から、いわゆる「オール歩合」、「累進歩合」の禁止を法律に明記し、不
適切な事業者を排除する制度を構築する。
⑤「適切な賃金(報酬)・労働時間を無視した」発注(発注業者・荷主・顧客)を規制す
るため必要な法整備を行う。また、事業者が「確保すべき適正な人件費」を道路運送法
などに規定し、各種統計をもとに毎年規定の適正な人件費を改定する。
⑥事業への参入用件を厳格化するとともに、事業者に対する事業継続の許可について、事
業場の労働者の労働・社会保険への加入状況をより厳格に精査する。
(3) 国は、安全輸送の観点から、エレベーター・ホームドアまたは可動式ホーム柵等の設置
・整備をはかるとともに、保守点検等を推進し、バリアフリー化対象旅客施設条件(現行
1日平均 3,000 人以上、高低差 5m以上)を段階的に引き下げ、その対象を拡大する。
(4) 国および地方自治体は、公共交通に関わる施設・設備の老朽化対策に対する支援を拡大
し、公共輸送機関の安全を確保する。
(5) 国は、車内・機内・船内における迷惑行為・危険行為等を規制・抑止するよう乗員の権
限および迷惑行為・危険行為の行為者に対する罰則を強化する。
(6) 国は、飲酒運転による死亡事故等の危険運転に対する運転免許欠格期間の延長等の厳罰
化、必要に応じて実際の運転技能を審査する更新制度や安全教育の徹底等、運転免許制度
の改正を検討する。また、交通事故発生時には、飲酒事実調査を必ず行い、交通事故証明
書に結果を記載する。
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4.社会インフラの整備・促進
(交通・運輸政策)
(7) 国・地方自治体は、交通事故の減少、交通事故死亡者ゼロをめざし、急発進や急ブレー
キをしないエコ運転の推進、交通安全教育の充実、運転技術の維持向上、安全な車とまち
づくりを促進する。
(8) 国・地方自治体、高速道路株式会社は、高速道路・幹線道路等の新規建設・維持修繕に
際しては、雨天時の視認性向上や滑り防止効果によって道路交通の安全向上に寄与すると
ともに一般的な舗装と比較して騒音が軽減される高機能舗装を推進する。
(9) 国は、航空機を利用したテロ・ハイジャック等の犯罪対策として、航空法に航空保安に
関する国の責任を明記し、旅客・荷主各々の義務を明確にする等、航空保安体制を整備す
る。
(10)国は、民間機優先の空域再編を実施するともに、国土交通省・防衛省(自衛隊)・在日
米軍に分かれている航空管制を国土交通省へ一元化し、航空安全を強化する。
(11)国は、日本領海へ立ち入る外国籍船舶に対して、賠償責任保険への加入を義務付ける
等、放置外国籍船舶対策のための「油濁損害賠償保障制度」が実効あるものとして機能す
るよう適切に措置する。
(12)国は、国内の空港・港間における旅客・貨物輸送に外国籍の航空機・船舶を認めないカ
ボタージュ規制 (注 7) については、国内輸送の安全性を担保するため、一元的に制度の
維持・運用をはかる。
(13)国は、混雑が著しい港湾・浅瀬・狭水道における船舶航行の安全対策強化・通航制限解
消のため、航路整備の推進、航路内漁網の排除、新規埋立事業・大型浮体構造物設置に際
しての港湾機能・海上交通との調整、わが国に寄港する外国籍船舶への水先人乗船・タグ
ボート使用の義務化等、各種対策を強化する。事業停止・許可取消も含めた罰則強化・責
任追及を推進する。
(14)国は、コンテナ輸送の安全性を確保するため、積荷内容(重量、危険・有害物質等)・
積付方法等の情報提供を荷主に義務付ける「海上コンテナ安全運送法」を制定する。ま
た、危険・有害物質表示を国際基準に統一し、危険・有害物質輸送に関する国内規制を統
一する。また、「IMO(国際海事機関)/ILO(国際労働機関)/UNECE(国連
欧州経済委員会)貨物輸送ユニットの収納のためのガイドライン」を早期に改定し、コン
テナ輸送の安全確保のための国際基準を強化・整備する。
(15)国は、航空貨物・郵便への無申告危険物の混入を防止するため、国内法で危険物の荷主
責任を明文化するとともに、荷主・梱包業者・代理店への危険物教育を義務化し、違反者
への罰則を強化する。
(16)国は、海上輸送の安定・安全性確保のため、日本籍船舶と日本人船員の確保、海賊・武
装強盗などへの対応強化に向けた国際的な連携・協力等、必要な措置を講じる。
(注 7) カボタージュ規制 ~ 国際的に維持されている規制。この規制を緩和すると、国内における空
港・港間における輸送の安全性に問題が生じる可能性がある。
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4.社会インフラの整備・促進
(交通・運輸政策)
<実現に向けた取り組み>
(1) 交通・運輸政策の基本理念・政策目標・基本方針などを規定する「交通基本法」制定に
向けて、政党・構成組織・地方連合会と連携する。
(2) 交通のシビル・ミニマム(生活基盤最低保障基準)確立の観点から、「地域公共交通活
性化・再生法」および「道路運送法」により設置される各種協議会等へ労働組合代表の参
加や意見反映が行われるよう、構成組織・地方連合会と連携し地方自治体等への取り組み
を強化する。また、連合本部は取り組み状況を確認し、関係機関へ改善を要求するととも
に関係予算の増額を求めていく。
- 138 -
4.社会インフラの整備・促進
(ICT(情報通信)政策)
ICT(情 報 通 信) 政 策
<背景と考え方>
(1)「ICT(情報通信)」は情報を入手し活用するためのものから、近年ではIP化、ブロ
ードバンド化、モバイル化が進むとともに、ICT市場のグローバル化や通信と放送の融
合の進展などによりその位置づけや環境は大きく変化している。
(2) パソコンや携帯電話、ならびに情報家電等の普及と、大容量の情報を高速で伝送できる
ブロードバンド( 注 1)ネットワークの拡大により、高度情報通信の基盤整備が広がり、様
々な分野で利用の拡大に繋がっている。
(3) 産業や暮らしの中で、情報通信の領域は拡大しており、政府はICT政策のあり方を検
討する「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」を立ち上げ、IC
Tの恩恵を迅速、公平、十分に実感・享受できる豊かな社会の実現を目指す「光の道構想」
( 注 2)をとりまとめた。また、経済・社会の発展に向けて、ICT利活用による我が国お
よび諸外国が直面する経済的、社会的課題等の解決にむけた取り組みは、今後も推進すべ
きである。とりわけ、地球規模的課題である温室効果ガスの削減による低炭素型社会の実
現に向け、ICTの果たす役割は大きい。
また、「通信と放送の融合」についても、双方の産業・技術を連携する必要があり、政
府は「電気通信事業法」をはじめとする通信にかかる法律や「放送法」をはじめとする放
送にかかる法律について見直しをはかり、2010 年 11 月「改正放送法」を成立させた。
(4) しかし、「通信と放送の融合」によるメリットを国民が享受し、ブロードバンドの普及
を生活の質の向上に結びつけ、「高度情報通信社会」( 注 3)を実現するためには、技術面
や産業面などを含め多くの解決すべき政策課題がある。とりわけ、ハードウエアや通信イ
ンフラの整備に加え、ブロードバンドコンテンツ(大容量高速通信網における情報内容)
の開発ならびに知的財産権の権利処理に関する法整備など、コンテンツの流通促進に向け
た課題解決が急がれる。
(5) あわせて「高度情報通信社会」による『暮らしの質の向上』の実現に向けては、デジタ
ルデバイド(注 4)の解消を含めた取り組みが重要である。年齢や障害の有無に関わらず、
誰もが簡易にICTを利活用できる接続環境や端末操作環境(ユニバーサルデザイン)や、
どこからでもアクセスできるネットワーク環境(ユビキタス)の整備が求められるととも
に地域による料金・機会等の格差を生じさせない取り組みが重要である。
また、ICT利活用による行政の効率化やワンストップサービスの提供など国民の利便
性の向上が求められる。社会保障と税の共通番号の導入に際しては、利用目的および範囲
の明確化ならびにプライバシーの保護を含めた「情報セキュリティ」を確立し、国民のコ
ンセンサスを得る必要がある。
(6) 我が国の情報通信技術は、世界最高の技術水準に達しているが、その利活用については
先進諸国に遅れをとっている。安全・安心な利活用の推進に向けて、個人情報保護、セキ
- 139 -
4.社会インフラの整備・促進
(ICT(情報通信)政策)
ュリティ強化などの対策を進めつつ、初等段階からのリテラシー(情報機器等を活用する
ために必要な基本的知識・能力)教育とあわせて高齢者に対するリカレント教育( 注 5)体
制の構築が重要である。
(7) また、「高度情報通信」における、ICT事業者による多様なサービスについて第三者
機関による客観的な評価システムの確立や、問い合わせや苦情などに対する受付機関およ
び紛争機関等の整備など、国民の『暮らしの質の向上』を中心に据えた施策が重要である。
(8) 「高度情報通信社会」では、サイバーテロや個人情報の漏洩・流出や詐欺などの犯罪に
巻き込まれる可能性が増大することが考えられる。ウイルス感染への対応も含めた情報セ
キュリティの強化が必要である。
(9) 政府は、地上波テレビ放送のデジタル化にともなう、視聴者に対するフォローを徹底し、
視聴できる環境の確保に向けた適切な対策を講じる必要がある。
(10)また、日本企業が多く進出しているとともに、成長著しいアジア地域において、政府の
新成長戦略における「アジア経済戦略」を踏まえながら、情報通信の高度化への支援を行
うことが求められる。
(注 1)ブロードバンド ~ 高速な通信回線の普及によって実現される次世代のコンピュータネットワー
クと、そのうえで提供される大容量のデータを活用したサービス。光ファイバーやCATV、x
DSL、PLC(電力線搬送通信)などの有線通信技術や、BWA、IMT-2000 といった無線
通信技術を用いて実現される、概ね 500kbps 以上の通信回線。
( 注 2)光の道構想 ~ 2015 年までにすべての世帯におけるブロードバンド利用の実現を目標に、インフ
ラ整備・利活用の加速化を通じて、我が国のさらなる経済発展を目指すとともに、ICTを最大
活用し、誰もがコミュニケーションの権利を保障されたうえで、ICTの恩恵を迅速、公平、十
分に実感・享受できる豊かな社会の実現を目指すという構想。
(注 3)高度情報通信社会 ~ 人間の知的な生産活動が生み出した情報・知識の自由な創造、流通、共有
化を誰もが格差なく享受することができ、生活・文化、産業・経済、自然・環境を全体として調
和し得る新たな社会経済システムのことをさしている。
(注 4)デジタルデバイド ~ パソコンやインターネットなどの情報技術(ICT)を使いこなせる者と
使いこなせない者の間に生じる、待遇や貧富、機会の格差。個人間の格差の他に、国家間、地域
間の格差を指す場合もある。
( 注 5) リカレント 教育 ~ 経済協力開発機構(OECD)が 1970 年代に提唱した、生涯学習の
制度的形態。回帰教育、循環教育などとも訳される。高齢者に対するICT教育は、再
就職や社会参加の促進や高齢者自身の生き甲斐の向上に繋がることが期待される。
- 140 -
4.社会インフラの整備・促進
(ICT(情報通信)政策)
<要求の項目>
1.政府は、情報通信の利用促進とインフラ整備、「通信と放送の融合」などについて、デ
ジタルデバイド対策を進めるとともに社会的側面に十分に配慮しつつ、人材育成を含め、
適切な対策、政策等を進める。
(1) 政府は、高度通信情報社会を支えるインフラ整備・促進をはかり、新たなICT(情報
通信)戦略を推進する。
①政府は社会的インフラであるブロードバンドネットワークの整備に向けて、公平・公正
な市場環境下での事業者間競争を基本とし、官邸主導での省庁横断的な施策立案と実現
を行う。
②基礎研究強化、人材育成強化をはかって行く観点から、大学等の情報通信研究予算を拡
充する。
③国や自治体等の内部における文書電子化など行政部門の業務効率化に加えて、誰もが利
用しやすい、ワンストップ行政サービスの提供等、生活者の利便性向上に寄与する電子
政府を実現する。( P183~「行政・司法改革」参照)
④社会保障と税の共通番号制の導入にあたっては、利用目的および範囲を明確にする。ま
た、その必要性やメリットをアピールするとともに、情報の漏洩を防ぐ対策を講じるな
ど、情報セキュリティに万全を期す。
⑤個人情報を取り扱う行政・企業等には、流出の防止に向けた最大限の取り組みが求めら
れており、情報保護・管理の徹底に向けた取り組み・行政指導を行うとともに、第三者
機関による運用監査等を実施する。
(2) 情報通信の利用促進に向けた一層の規制緩和を行う。
①政府はICTの利活用による技術の効率化に向け、クラウドコンピューテングの活用な
どによる行政システムの見直しをはかるとともに、法令文書類の電子化、情報開示を推
進し、国民の暮らしの利便性の向上をはかる。
②遠隔医療(診断等)、用語・コードの標準化、電子カルテやレセプトの電子化の普及促
進など医療・医療事務におけるICTの活用による国民の利便性向上に向けた法令等を
整備する。
③電波利用料制度の見直しについては、情報家電等の普及を阻害しないよう慎重に対応す
る。
2.国・地方は、ブロードバンドネットワークを高度化するとともに、サービスの中断等による
暮らしへの影響を与えない安定・継続的なサービスを提供する。
(1) インフラ整備にあたっては、公正な競争を通じた基盤整備を原則としつつ、中山間地域
や島嶼部などインフラ整備が遅れている地域や、教育機関における整備を促す助成の仕組
みを十分なものとする。
- 141 -
4.社会インフラの整備・促進
(ICT(情報通信)政策)
(2)ブロードバンドネットワークへの移行期における急速な技術革新の進展のなかで、固定電
話等の利用者に不安と利便性の低下が生じないよう万全の配慮を行う。
(3) ブロードバンドネットワークの安全性や情報保護を確立する。
①技術革新の進展に対応し、不正アクセスや消費者被害の防止、情報セキュリティ確保の
ための対策を推進する。
②国や地方自治体は、大規模災害時等におけるバックアップ体制の構築などを事業者に指
導するとともに、ブロードバンド通信の位置づけや利用方法等を定める。
3.政府は、デジタルデバイド対策を徹底し、誰もが簡易に情報通信を利活用でき、どこからで
もアクセスできるネットワーク環境の整備を進めると同時に地域等を要因とする格差を生じ
させない。あわせて、情報通信リテラシー教育の充実をはかる。
(1) 国民、勤労者が情報通信を十分活用することができるために、情報通信の利用方法につ
いて、誰もが理解し、身につけられるようなインフラや機会を提供する。学校・生涯学習
機関・公民館、駅、空港などの公的施設で、ブロードバンドをはじめ情報通信サービスを
無料または安価に利用できる仕組みを確立する。
(2) 高齢者、障がい者をはじめ、デジタルデバイドに関する不安を持つ割合が高い層につい
て、新しい技術の普及が生活の質の向上をもたらすことが実感できるよう、リカレント教
育の体制整備や、障がい者の利活用促進に向けたユニバーサルサービスの推進に対して支
援をする。
(3) 初等・中等教育において、利用者の立場でのマナー等も含めた情報通信リテラシー教育
の充実をはかる。
(4) ユニバーサルデザイン機器の政府・自治体調達の義務付けを行うとともに、ユニバーサ
ルデザイン機器の開発支援のための税制・補助金制度を整備する。
4.政府は、「高度情報通信社会」を支える人材の確保、育成を進めるとともに、知的財産の保
護を含めた著作権処理の円滑化を推進する。
(1) 「高度情報通信社会」を支える人材の確保に向け、企業に労働環境の整備を含めた対策
を促す。また、高等教育における情報通信専門人材の育成を行い、初等教育から高等教育
までのトータルな情報通信教育を充実させる。
(2) グローバル化に対応する中期的な視野に立った人材育成の将来展望と戦略を確立し、国
際競争力をもつ高度な情報通信技術者や情報セキュリティ人材育成に向けた育成システム
を構築する。
(3) 企業等における情報通信人材育成に関する投資を支援する仕組みを実現する。また、高
度な情報通信技術者を客観的に評価できるシステム(ITスキル標準)を普及させる。
(4) 著作権処理を含むコンテンツの流通促進に向けた課題を解消するとともに、知的財産を
- 142 -
4.社会インフラの整備・促進
(ICT(情報通信)政策)
保護する。
著作権に関する包括的な管理など著作権処理の円滑化の仕組みを確立し、ブロードバン
ドコンテンツの流通促進をはかる。また、デジタルメディア等に関わる著作権のあり方に
ついては、複製の簡易性と著作権保護の両立を前提とし、早急に検討する。
5.政府は、情報通信の高度化に対応した安全対策を確立するとともに、個人情報の保護やハイ
テク犯罪を防止するなどの対策を強化する。
(1) クラウドコンピューテングの拡大に対応し、データセンターのあり方、情報セキュリテ
ィの強化について検討を行う。
(2) ネットワークへの不正アクセスや情報通信利用に伴う消費者被害を未然に防止するた
め、誰もが受講できる各種教育を充実させる
(3) 情報通信利用に伴う様々な問題について、誰もが相談・申告しやすい受付窓口および紛
争解決機関を整備・充実させる。
(4) 情報通信の利用に伴う国民の被害や、犯罪を未然に防止するため、関連法令等の整備を
進める。個人情報の漏洩やサイバーテロ対策などを含めた情報セキュリティの確立、ハイ
テク犯罪防止、未成年者等への有害情報防止、ウイルス感染などへの対応などの対策は、
政官学労が連携し取り組む。
(5) 情報通信事業者が提供する多様なサービスについて、その信頼性や安全性等に対する客
観的な評価を行える仕組みを確立し、利用者が適切に事業者を選択できる環境を整備する。
6.ICTの活用による低炭素型社会の実現をはかる。
(1)民生部門を中心とした温室効果ガスの削減に向け、HEMS/BEMSの推進等、ICT
を活用した家庭や業務部門における削減スキームの確立をはかる。( P121~「国土・住宅政
策」参照 )
(2)我が国における低炭素技術とICTの利活用により、世界へ先駆けて温室効果ガス削減ス
キームの確立するとともに、新興国や途上国への普及・浸透を通じ、世界全体での温室効
果ガスの削減をはかる。
(3)現在、政府が進めている「光の道構想」とも連携し、ICT利活用の促進による低炭素社
会を実現する。
7.政府は、地上波テレビ放送のデジタル化によるアナログ放送の打ち切りにより、視聴者に支
障をきたさないよう、フォローの徹底をはかるとともに、視聴できる環境の整備・促進をは
かる。
- 143 -
4.社会インフラの整備・促進
(ICT(情報通信)政策)
(1) 地上波テレビ放送のデジタル化によるアナログ波の停止について、周知を徹底する。地
上デジタル放送の受信不可能地域への対策としてIPマルチキャスト放送( 注 6)による代
替が可能となるが、視聴者の視点に立って更なる法整備を行う。
(2) 地上波テレビ放送のデジタル化により視聴者が支障を来さないよう、周知徹底も含めフ
ォローを行う。生活保護世帯や高齢者などに対して万全の措置を行う。
(3) 「アナログ停波」に不慣れな高齢者等の、トラブルを回避させるための具体的支援策と
して、説明会の開催、戸別訪問が実施できる体制にする。
(4) 地デジの転換に伴う諸問題について、視聴者が不利益を被らないよう万全な措置を行う。
受信者の自助努力に対する支援、技術的な対処法を周知する。また、BSアナログ停波に
対する支援策を行う。
(注 6) IPマルチキャスト放送 ~ 通信回線を用いて大量の情報を送信することができる技術の一つ
であり、この技術を用いることにより、CATVなどの有線放送とほぼ同様の内容のサービスを
受信者が受けられるものをいう。
8.政府は、アジア域における高度情報化推進への支援を行う。
(1) アジア域内のブロードバンドインフラ整備に対する支援を行う。
(2) 米国経由に偏重しているアジア域内トラフィック( 注 7)については、アジア域内通信は
アジア域内で行えることを基本に、アジア各国と十分に連携しつつ、アジア連携ネットワ
ークの基礎を構築するとともに、人材交流、ネットワーク基盤を構築し、アジア域内開発
途上国に対するインフラの整備を支援する。
(3) デジタルデバイド対策、情報リテラシー教育、情報セキュリティの確保などの分野でア
ジア各国への支援を行う。
(4) 日本の技術力優位分野(ITS(高度道路交通システム)や地上デジタル放送方式)に
おけるインフラ輸出などのアジア域への展開を支援する。
(注 7) トラフィック ~ ネットワーク上を移動する音声や文書、画像などのデジタルデータのこと。
<実現に向けた取り組み>
(1) 連合は、ICTS研究会を中心に情報通信政策全般について理解を深めるとともに、関
係省庁との協議、政府の審議会・研究会等への積極的な参加を通じて、意見反映に努める。
(2) 地方連合会は、リテラシーの向上や格差解消に向け、行政および議員・議会への働きか
けを行う。
- 144 -
5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
5.くらしの安心・安全の構築
環
境
政
策
<背景と考え方>
(1) 京都議定書は、2005年に発効したが、その後、米国は議定書を離脱し、中国やインド、
南アフリカ、ブラジルなどの削減義務が課されていない新興途上国が経済発展とともに排
出量が大量に増加した結果、削減義務が課された国の世界全体に占める排出割合は2008年
には27%に低下した。こうした中、1990年以降2010年までに、世界全体のエネルギー起源
CO2排出量は40%以上増加し、その内訳も、途上国が先進国を逆転した。現状のままで
推移すると、2050年には2倍以上に増大する世界全体の排出量の60%以上を途上国が占め、
最大の排出国となった中国やこれに続く米国を含め、京都議定書上の削減義務を負わない
国の排出量割合は80%を超えると見通されている。
人類共通の課題である気候変動問題に対しては、その目的として気候変動枠組条約第2
条に明記される「環境と経済の両立」に向け、世界各国が結束して取り組み、持続可能な
国際社会を構築することが強く求められている。
(2) 2010年12月にメキシコ・カンクンで開催された「気候変動枠組条約第16回締約国会議
(COP16)」および「京都議定書第6回締約国会合(CMP6)」において日本政府は、
世界全体での温室効果ガス排出量の削減に向けて、「コペンハーゲン合意に基づき、米中
等を含むすべての主要排出国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みを構築する包括的な
法的文書の早期採択を目指す」「世界全体の排出量の30%未満しかカバーせず、一部の先
進国のみが削減義務を負う現行の枠組みを固定化する京都議定書の第二約束期間の設定は
受け入れられない」とした方針を堅持し粘り強く交渉を行った。その結果、「コペンハー
ゲン合意」の下に先進国と途上国が自主目標で温室効果ガス排出削減に取り組み、先進国
だけでなく途上国も国際検証を受けるなどとする「COP決定」ならびに京都議定書の第
一約束期間と第二約束期間の「空白期間」を避けるための早期の交渉妥結を盛り込んだ
「CMP決定」からなる「カンクン合意」が採択された。日本政府は、2011年末に南アフ
リカ・ダーバンで開催される「COP17」を始めとした今後の国際交渉においてもこれま
での方針を堅持し、米中等を含む全ての主要排出国による公平で実効性ある枠組みを構築
する単一の法的文書の早期採択と意欲的目標の合意に向け、より一層、国際交渉を強化す
る必要がある。なお、多くの国内雇用の喪失や競争力低下につながるだけでなく、地球全
体の排出削減にも逆行する京都議定書の延長(第二約束期間の目標設定)は受け入れるべ
きではない。
併せて、「地球全体の削減」を目指すわが国の方針に対する国際的支持を得るためにも、
二国間クレジット制度や途上国・島しょ国の緩和・適応行動に対する技術・資金支援など、
「カンクン合意」に基づく枠組みの具体化に向けた積極的提案を行っていく必要がある。
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
(3) 一方、環境省が2010年末に速報値として発表した2009年度の日本国内における温室効果
ガスの総排出量は12億900万㌧(京都議定書の規定による基準年(以下、基準年:CO 2 、
CH 4 、N 2 Oは1990年度、HFCS 、PFC S 、SF 6 は1995年)比4.1%の減、前年度比
5.7%減)となった。主な温室効果ガスであるCO2の部門別(間接)排出量は、産業部門
(工場等)3億8600万㌧(基準年比19.9%減、前年度比7.9%減)、運輸部門(自動車・
船舶等)2億2900万㌧(基準年比5.4%増、前年度比2.5%減)、業務その他部門(商業・
サービス・事業所等)2億2000万㌧(基準年比33.6%増、前年度比6.6%減)、家庭部門
1億6200万㌧(基準年比26.9%増、前年度比5.5%減)、エネルギー転換部門(発電所等)
7880万㌧(基準年比16.2%増、前年度比0.7%増)となっている。
前年度から排出量が減少した主な原因としては、2008年秋に発生した金融危機の影響に
よる景気後退に伴う産業部門をはじめとする各部門のエネルギー需要の減少が2009年度も
続いたことや、原子力発電所の設備利用率が改善されたことなどが挙げられているが、
2010年度は再び増加に転じることが予測されている。
(4) 2009年度の総排出量は京都議定書第一約束期間(2008~2012年)で初めて基準年を下回
ることとなった。部門別の推移を基準年と比較すると、産業部門19.9%減に対し、民生部
門である業務その他部門33.6%増、家庭部門26.9%増となっており、京都議定書第一約束
期間の目標達成とその後の温室効果ガス排出削減を推進していくためには、民生部門にお
ける対策強化が求められる。さらに、民生部門での温室効果ガス削減スキームを確立し国
外展開することにより、世界全体の温室効果ガス排出削減に貢献していく必要がある。
(5) 気候変動問題は、世界各国が結束して取り組むべき課題である一方、各国にとっては、
自国の雇用や国民生活、経済成長や産業の競争力、一国の安全保障にも密接に関わる課題
である。
気候変動対策のあり方は、広範な当事者が参画する公正で透明な国民的議論を通じた合
意形成のもと、COPなど国際交渉の動向、対策の実施に伴う経済・雇用への影響、資源
・エネルギーの安定供給との整合等を十分に見極めた上で慎重に議論される必要がある。
こうした中、フランスでは、2007年7月から10月までの4ヶ月間これまで政府が音頭を取
る傾向にあった環境政策について、政府と環境NGO、地方自治体、企業代表、労働組合、
専門家らが一堂に会して「環境グルネル会議」を設置し、地球温暖化問題に対する具体的
な方策が検討された。建築や輸送、エネルギー、環境、炭素税などそれぞれの分野に関す
る具体的な方策を検討し、2009年には法案を成立させた。フランスにおいてもかってない
政策決定のアプローチであり、その他にも就業や海洋、電子等様々な分野で取り入れられ
ている。
日本国内においても、気候変動対策について、国民全体の理解と協力のもとで進められ
るよう、その雇用や国民生活との密接な関わり等に鑑み、労働者を含めた広範な当事者が
政策決定プロセスに参加し、公正で透明な国民的議論を通じた合意形成を通じ、これを実
行するという枠組みの確立が強く求められる。
(6) 政府は2010年6月に7つの成長分野を示した「新成長戦略」を閣議決定した。その第一に
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
強みを生かす成長分野として「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦
略」を掲げ、世界最高水準の環境・エネルギー技術を政策パッケージで普及・促進し、
2020年までの環境分野での目標として「50兆円超の環境関連新規市場」、「140 万人の環
境分野の新規雇用」、「日本の民間ベースの技術を活かした世界の温室効果ガス削減量を
13億トン(日本全体の総排出量に相当)以上とすることを目標とする」ことを掲げている。
国内においては、技術力の深化・革新を通じた成長実現と雇用の拡大を図るとともに、国
外においては二国間クレジット制度の確立と途上国に対する支援の実施など、実質的な削
減効果がある制度を推進・拡大し「環境と経済の両立」を図り、世界全体の温室効果ガス
排出量の削減に貢献していく必要がある。
(7) 2010年の通常国会で廃案となった「地球温暖化対策基本法案」が臨時国会に提出され、
2011年の通常国会において継続審議となっている。同法案は「すべての主要国による公平
かつ実効性ある国際的枠組みの構築や意欲的な目標の合意を前提として、2020年に温室効
果ガスを1990年比で25%削減する」との目標を掲げており、雇用の安定や経済の成長、エ
ネルギーの安定供給の確保等との両立、「公正な移行」への配慮、政策決定に過程におけ
る「就業の機会の拡大」や「雇用の安定化」、「民意の反映」など連合がこれまで求めて
きた多くの項目が反映された内容となっている。
同時に、この法案には温室効果ガス削減に向けた基本的施策として、「地球温暖化対策
税」、「再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度」、「国内排出量取引制度」の他、
原子力に係る施策、エネルギー使用の合理化(省エネルギーや化石燃料の高効率利用等)、
交通部門の排出抑制の促進、革新技術の開発促進等が盛り込まれている。
このうち、「地球温暖化対策税」「再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度」「国
内排出量取引制度」の3施策に関しては、2010年12月28日の関係閣僚委員会において、
「税」については2011年10月から段階的に導入、「固定価格買取制度」は2012年度からの
導入を目途に、国民各層との十分な対話を行いながら検討、「国内排出量取引制度」はわ
が国産業の負担や雇用への影響、海外の制度動向と効果、国内で先行する主な対策の運用
評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの成否等を見極め、慎重に検討
を行う、などとする方針が決定された。
また、同時に「内外の状況変化に応じ柔軟かつ戦略的に関連政策を再構築しつつ、国民
各層のより深い理解と強い支持を得ながら、政府と国民が協調し、わが国が有する世界最
高水準の環境・エネルギー技術の強化・革新で気候変動問題の解決に向けた新たな地平を
切り開く」ことも併せて確認された。
地球温暖化対策は国民全体の課題であり、個々の施策に関しては、必要性や効果、公平
性、国民負担や雇用・産業の競争力への影響等の副作用、行政コストなどを明らかにし、
国民的な議論・合意形成を図ったうえで経済情勢と雇用状況を見極めながら導入を判断す
ることが不可欠である。
(8) ILOは2007年6月、気候変動への対応、持続可能な社会、良質な雇用の創出を目的と
する「グリーン・ジョブ構想」を提起し、ITUC、ILO、UNEP(国連環境計画)、
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
IOE(国際使用者連盟)は2008年9月、共同報告書『グリーン・ジョブ』を発表した。
この中で再生可能エネルギー部門では2030年までに2,000万人以上の雇用創出が見込まれ
ることを紹介している。ITUCは2009年に開催されたCOP15に向けての「労働組合声
明」において「Just Transition(公正な移行)」をコペンハーゲン合意の共有ビジョン
として表記することを求めていたが、粘り強い交渉によりCOP16の「カンクン合意」に
おいて盛り込まれることとなったことは大きな前進である。
(9) 2010年秋、名古屋において「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」および
「カルタヘナ議定書第5回締約国会合(MOP5)」が開催された。COP10では、遺伝資
源の取得と利益配分に関する「名古屋議定書」が採択され、途上国と先進国の両方の利益
となる仕組みづくりを目指していくこととなった。また、新戦略計画として「愛知目標」
を採択し、長期目標として「自然と共生する世界」、2020年までの短期目標として、①自
然生息地の損失を半減以下へ、②侵略的外来種の制御・根絶、③サンゴ礁など気候変動等
の影響を受ける脆弱な生態系への悪影響の最小化、④陸域の17%および海域の10%の保護
地域化等、20の個別目標を設定した。
一方、MOP5では、遺伝子組換え生物の国境を越える移動により、生物多様性の保全
及び持続可能な利用に損害が生じた場合の責任と救済に関して、締約国が講ずべき措置を
規定する「名古屋・クアラルンプール補足議定書」が採択された。
COP10 で採択された「名古屋議定書」や「愛知目標」の達成に向け、国内法の整備
とともに議定書の批准と、生物多様性の社会へ対する影響などをについて市民レベルで共
通認識を持つことが求められる。
(10)水に係わる管轄省庁は7省に及び、水関係法および事業法は50を超えて複雑なものとな
っている。また、水の管理体制は公共水域の表流水を公水とし、地下水を含めその他の水
は私水とされている。
地球上に存在する水のうち人類が利用可能な真水は全体の0.01%でしかない。そうした
限られた水資源の中で、世界人口の約1/3にあたる20億人に及ぶ人々が水不足の危機に瀕
している。水の安全や安定の確保は平和と福祉、地域自立の基盤であり、そうした課題に
応えるべく、水行政の一元化を確立し総合的な水管理体制の確立するための「水基本法
(仮称)」の制定が求められている。
(11)廃棄物対策では、廃棄物処理法および政省令が改正され、建設廃材の責任の明確化や、
罰則の強化、優良業者への優遇が図られることとなった。また、都市鉱山と呼ばれる希少
金属の回収など新たな課題も顕在化してきている。廃棄物の適正な処理と再生利用の推進
を効果的に進めていくために「循環型社会形成推進基本法」および5つのリサイクル法
(「容器包装」「家電」「食品」「建設」「自動車」)を常に実態に即して見直すととも
に、発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再資源化(リサイクル)の3つから
なる「3Rイニシアティブ」を推進していく必要がある。併せて、海外における廃棄物処
理やリサイクルに伴う環境汚染を防止するため、途上国に対する技術支援を推進する必要
がある。
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
(12)石綿(アスベスト)対策では、規制と管理と除去および研究の強化、迅速な被害救済・
情報公開等が重要である。石綿は、長期間、幅広く、大量に使用されたため、従事してい
た労働者だけでなく、その家族、工場周辺の住民にも被害者・犠牲者が発生している。し
かも、発症までの潜伏期間が長期間である一方、発症から死亡までが短期間であるのが特
徴であり、今後も被害者・犠牲者の増加が予想される。
2006年3月「石綿健康被害救済法」が施行され、2008年6月、医療費・療養手当の支給対
象期間の拡大等は改正されたが国庫負担は不十分なままであり、「石綿健康被害基金」へ
資金拠出する特別事業場の認定要件や被害者救済制度の拡充等、多くの問題が残されてい
る。
(13)化学物質は数万種類あるが、その有害性が明らかになっているのは一部に過ぎず、危険
性評価や管理データの情報不足が問題になっている。人の健康と生態系に影響をおよぼす
化学物質の知見を収集して情報を早急に充実させること、および化学物質の有害性やリス
クをフォローするとともに、化学物質に起因する被害が発生した場合における救済対策の
強化や化学物質に関連する情報公開の強化が重要である。
<要求の項目>
1.「京都議定書」の目標達成と2013年以降の「ポスト京都議定書」の早期採択と意欲的目標の
合意に向けて、気候変動対策と国際交渉を強化するとともに、国際協力を推進する。
(1) 国は、「京都議定書目標達成計画」の検証に基づき、京都議定書における国内削減目標
の達成に必要な対策を実行する。また、森林吸収源対策(3.8%)については本予算で措
置し着実に実施する。
(2) 国は、2013年以降の「ポスト京都議定書」は、米中等を含む全ての主要排出国が参加す
る公平で実効性ある枠組みを構築する単一の法的文書の早期採択と意欲的目標の合意を目
指す。
(3) 国は、「2050年に世界全体で温室効果ガス排出量を半減する」ことが国際的に合意され
るよう、国際交渉を推進する。
(4) 国は、ポスト京都議定書の交渉にあたっては、森林吸収源対策によるCO2削減効果を
確保する。
(5) 国は、日本の技術力・経済力を活かしたクリーン開発メカニズム(CDM)( 注1 )等
の協力・援助を推進するとともに、新興国・途上国等への技術協力、資金援助および投資
を強化する。
(6) 国は、「地球全体の排出削減と雇用安定、経済成長の同時達成」を図るため、省エネ製
品の普及やわが国の優れた環境・エネルギー技術(高効率石炭火力発電や原子力発電、再
生可能エネルギー等)の導入により世界全体での温室効果ガス排出削減に貢献するため、
民間と一体となって新興国・途上国等への技術協力、資金援助および投資の強化に取り組
む。
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
(7) 国は、新興国や途上国での技術協力や資金援助による温室効果ガスの排出削減が幅広く
柔軟に評価される制度(二国間クレジット)を、国際社会と協調し構築する。その際は、
知的財産権等に留意する。
(8) 国は、国際協調の観点から、海外に進出している日本企業に対し、進出先での環境・労
働安全衛生対策の徹底のため、日本の環境技術を活用するよう要請する。
(9) 国は、COP等、環境問題に関する国際会議において、「社会対話」の観点から労働組
合等を公式参加者とするよう、国際機関に要請する。
(10) 国は、諸外国に対して「グリーン・ジョブ」や「雇用の安定・維持」「公正な移行」
「社会対話」の推進の重要性を呼び掛けるとともに、必要に応じてこれを支援する。
(11) 国は、環境対策強化のためのODA(政府開発援助)を拡充する。また、労働組合が
実施する環境対策分野の国際協力活動を、ODAの対象として支援する。
(12) 国は、 WTO(世界貿易機関)協定やFTA(自由貿易協定)/EPA(経済連携協
定)等の国際協定において、「環境条項」を規定するよう要請する。
(注1) クリーン開発メカニズム(CDM)~ 「京都議定書」で規定された市場メカニズムを活用す
る柔軟措置の一つ。削減義務を負った国が削減義務が負っていない国で温暖化対策のプロジェクト
を実施し、当該プロジェクトを実施しなかった場合と比較して追加的な排出削減があった場合、プ
ロジェクトの実施によって削減されたCO2を削減義務を負った国の削減としてカウントできる仕
組み。手続きに長期間かかることや、プロジェクトに制限があることなどから、活用が停滞してい
る。
2.国内における温室効果ガス排出を削減するための国民の理解と協力のもとに各種施策を強化
・推進する。その際は、「環境と経済の両立」を基本に、各種施策の長所と短所を精査し最
適な組合せ(ポリシーミックス( 注2))とする。
(1) 国は、具体的な温室効果ガス排出削減のための施策の実施にあたっては、わが国の優れ
た環境・エネルギー技術の更なる深化・革新や国内外における削減貢献、「雇用の安定・
創出」や投資促進など、「環境と経済の両立」を基本に、国民負担を最小限としつつ、最
大限の効果と全体最適が確保されるポリシーミックスとする。
(2) 国は、具体的な温室効果ガス排出削減対策の検討にあたっては、技術的な導入の可能性
や費用対効果、短・中・長期の時間軸の観点を踏まえた実効性を重視する。
また、国は、気候変動対策に関し国民負担や雇用、経済・産業活動に与える影響の全体
像等に関するプラス面、マイナス面の正確な情報を統一見解として開示し、働く者も含め
た広範かつ丁寧な国民的議論を通じた合意形成を図る。
①気候変動対策について、府省庁の枠を超え政府全体で認識を共有しつつ国民の理解と協
力のもとで進めるため、労働代表、産業代表、消費者代表など広く国民各界各層が参加
する公正で透明な国民的議論の場として「緑の社会対話(仮称)」を創設し、国民負担の
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
あり方や二国間クレジット制度や途上国支援など「カンクン合意」の具体構想、各部門
における削減施策などに関する議論を尽くす。
②「地球温暖化対策税(仮称)( 注3 )」および「再生可能エネルギーの全量固定価格買
取制度( 注4 )」の導入、「国内排出量取引制度( 注5 )」の検討にあたっては、内外の
状況変化や他の政策手法とのポリシーミックスの観点を踏まえるとともに、それぞれの
政策目的や負担の重複を避け、国民負担の全体像や雇用・産業の国際競争力等への影響
と効果を国民に明らかにした上で、以下の点に留意しつつ慎重に進める。
a)地球温暖化対策税(仮称)
・導入にあたっては、自動車・エネルギー関係諸税の軽減・簡素化など既存税制の見直
しを行う。
・国民生活への影響に対する配慮と特定の産業・企業に過度な負担とならないよう現実
的な税制とする。
・化石燃料の最終消費段階で広く薄く負担をすることを基本とする。
・税収は、エネルギー対策、技術開発、森林吸収源対策等温暖化対策の強化に使用し、
雇用創出に結びつける。
・国民・納税者の理解を得た上で導入するとともに、段階的導入を図りつつ、効果を検
証しながら定着をはかる。
・排出量取引などとの二重負担とならないよう調整する。
・税負担の明示やCO2の見える化をはかり意識喚起を行う。
b)再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度
・制度実施に伴う企業や国民の負担について明らかにし、国民各層と十分対話を行い合
意形成を図る。
・制度導入に伴い生じる負担について国民各層の理解を得るため、負担の公平性を担保
する。
・買取価格は、所得や地域間での格差の拡大や大口需要者等における雇用問題を考慮し
た慎重な検討をおこなう。
・制度導入にあたっては、現行制度からの円滑な移行の観点等も踏まえ、国民生活セン
ターおよび消費生活センターや電気事業者、再生可能エネルギー発電事業者等と協力
しつつ、国の明確な責任のもと国民に対し重点的な周知・広報を行う。
・再生可能エネルギーの大量導入に伴う電力の系統安定化対策について、実証事業の着
実な実施とフォローアップ、太陽光発電の出力抑制や蓄電池技術の開発・導入等を含
めエネルギーの安定供給や公衆・作業安全の確保との整合を図るとともに、系統安定
化対策やこれに要する費用について国民の理解が得られるよう十分な説明を行う。
・制度導入後も、企業や国民負担の妥当性や納得性、再生可能エネルギーの導入量とC
O2削減効果、費用負担方法のあり方、国内産業の成長や雇用の創出効果、海外制度
の動向等を精査し、最大限の政策効果と全体最適が確保されるよう柔軟かつ機動的な
見直しを行う。
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
c)国内排出量取引制度
・国内産業の負担や雇用への影響、海外の制度動向と効果、国内で先行する事例の評価
や経済効果、国際枠組の成否等を見極めた上で、慎重に検討を行う。
・制度の検討にあたっては、キャップ&トレード型のようなトップダウン方式でなく、
「ボトムアップ方式」( 注6)を基本に、限界削減費用などについての定量的分析を
行う。
・国内雇用の海外流出を発生させない国際的バランスのとれた制度とする。
(3) 国は、モデル事業として行った実証実験の経過や結果を検証しながら、国内クレジット
制度を活用した「家庭・オフィス版CDM」や「地域版CDM」を活用し、民生部門にお
ける温室効果ガス排出削減の促進・拡大を図る。
(4) 国・地方自治体は、「環境と経済の両立」に向けて、企業の環境対策を促進するため、
環境対策に関連した技術・事業・産業の育成・支援を強化する。
①環境対策に関連した技術・事業・産業に対する育成・支援を強化し環境技術の研究・
開発・導入に対する助成・優遇を推進する。その際には、政府窓口のワンストップ化
とともに、利用しやすい制度設計と情報の一元化を図る。
②ISO14001等、環境関連規格の取得促進をはかり、システムの運営と監査を進める。
特に人的・費用負担の大きい中小企業に導入が進むよう、情報提供と支援強化をはか
る。
③環境技術の実証・導入段階までの開発プロジェクトを、産官学共同で進める。
④環境会計制度を企業に普及させるとともに、府省も導入し、環境に配慮した政策を展
開する。また、環境報告書のさらなる普及促進とその信頼性向上をはかり、エネルギ
ー消費等の公表事業者の拡大や、環境ラベルによる製品情報の提供を普及させる。
⑤電力系統の安定度を確保しつつ太陽光発電や風力発電等の供給不安定な再生可能エネ
ルギーの大量導入に対応するため、スマートグリッド( 注7)を含めたICT( 注8)
の利活用による世界最先端の次世代送配電システムの構築に向け、費用対効果も踏ま
えつつ、実証事業の着実な実施とフォローアップ、出力抑制や蓄電池など技術的課題
の解決に向けた研究開発を推進する。
(5) 国・地方自治体は、環境・エネルギー技術の深化・革新を通じ国内外の気候変動問題を
解決する観点から、各部門(産業、運輸、業務その他、家庭、エネルギー転換)ごとに、
技術的な導入可能性や費用対効果、短・中・長期の時間軸の観点を踏まえた実効性や国民
の受容性など、その実情を踏まえた対策を推進する。
対策の策定にあたっては、新たに創設する府省庁横断の公正で透明な国民的議論の場に
おいて、労働代表や産業代表、消費者団体など広範な当事者による国民的議論を徹底する。
【産業部門】
」に関する調査・研究を推進し、製品のトータ
①「ライフサイクル評価(LCA)( 注9)
ルの環境への影響を表示する仕組みを構築する。
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
②「省エネルギー法」に準じ、一定規模以上の事業者からの温室効果ガス排出量算定・報
告・公表制度を着実に推進する。
③省エネ・低炭素技術を維持・強化するため、設備更新時における最先端技術の導入や燃
料消費における天然ガス転換、革新的技術の実用化に向けた開発等に対する支援を強化
する。
【運輸部門】
①都市計画やまちづくり、エコ通勤をはじめとした公共交通機関の利用促進等、国・地方
自治体等の対策を強化する。
②様々な交通機関のベストミックスを確保することによる物流の効率化、天然ガスやエタ
ノール入りガソリン燃料への転換、クリーンエネルギー自動車や燃料電池車、低公害車
・低燃費車の普及・促進を強化する。
【エネルギー転換部門】
①太陽光・風力・中小水力・地熱発電やバイオマスエネルギーなど再生可能エネルギーに
ついて、供給安定性の確保や価格低減を実現しつつ、可能な限り普及拡大させるため、
支援措置の有効性等を検証しつつ、初期費用の低減のための措置等を講じるとともに、
出力抑制や蓄電池を含めた技術開発や実証事業、普及促進の障害となっている各種規制
の見直し・緩和を進める。
②原子力発電については、安全確保を大前提として、設備利用率の向上や使用済み核燃料
処理の確立をはかるとともに、現在計画中の新増設については地域住民の理解と合意を
得つつ、着実に進める。
③地球環境保全とエネルギー安全保障の観点から、環境負荷の少ない天然ガスへの燃料転
換の一層の推進やCCS(注10)を含めた世界最先端の石炭利用技術(クリーン・コー
ル・テクノロジー)など化石燃料の高度利用とともに、再生可能エネルギー大量導入時
の系統安定化対策の研究・開発を推進し「環境と経済の両立」を図る。
【業務その他部門】
①商業施設、小売店舗、宿泊施設、飲食店、官公庁、病院、学校、事務所、ビル等、多岐
に渡る対象に対し、それぞれの実情に対応した内容で、省エネ基準の強化やビル・エネ
ルギーマネジメントシステム(BEMS)( 注11)等、建築物の省エネ性能向上の施策を
講じるための支援措置を講じる。
②一定以上の省エネ性能を持つ建築物を新改築する場合には容積率の緩和や税制優遇を行
うなど、省エネ化を促進する優遇策を検討・実施する。
③エコストア化を推進するため環境店舗を認定する制度の導入を検討する。
④OA機器や照明、業務用空調機器等の省エネ性能を向上させる。
【家庭部門】
①既築住宅の省エネリフォームへの支援強化や新築住宅に対する一定の省エネ基準確保の
義務化等により住宅の省エネ性能を向上させるとともに、家庭用エネルギーマネジメン
トシステム(HEMS)( 注12)の開発・普及に向けた支援の施策を講じる。
- 153 -
5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
②トップランナー方式( 注13)の一層の活用等により省エネ機器の性能向上・普及を推進
するとともに、省エネ効果の見える化やスマートメーター( 注14)の普及に向け、費用
対効果を見極めるとともに労働者の雇用安定を図りながら、実証実験の実施とフォロー
アップ、技術的課題の解決に向けた研究開発を進めるなど、消費者意識を高める施策を
推進する。
③住宅用の太陽光発電や太陽熱利用、住宅の省エネ化、高効率給湯器や燃料電池、高効率
照明やスマートメーターやスマートタップなど電力を見える化する機器の普及・促進に
向け、初期投資の軽減等の措置を講じる。
【横断的分野】
①各部門にまたがる横断的分野は、複数の対策・施策を適切に組み合わせ、削減の確実性
を高め、「環境と経済の両立」をはかる。
②トップランナー方式の強化など「省エネルギー法」で定められた各種対策(省エネ計画
の作成、エネルギー消費量の届出、省エネ措置の届出、等)、「温暖化対策法」で定めら
れた各種対策(温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度、等)を通じ、排出量抑制
や国民理解を深める対策を推進する。
③CO2排出量の正確な把握のため、商業・サービス施設を事務所・ビルや中小製造業と
分けるとともに、商業・サービス施設においても業種ごとに分けるなど、出来る限り細
分化し、公表する。
(6) 国は、燃料電池等の新技術開発を進めるとともに、環境対応車の普及・促進に向けた支
援をする。また、効率的・体系的な道路整備等をはじめとする交通流対策を推進する。
(7) 国は、国際的な枠組みを前提としてライフサイクル評価(LCA)に関する調査・研究
や「カーボンフットプリント」( 注15)の導入等、温室効果ガス排出量の「見える化」を
図り、消費者が製品を購入する際に生産から廃棄に至る環境への影響を考慮できる仕組み
を確立・推進する。
(8) 国は、「サマータイム」制度について、地球温暖化防止・省エネの効果とともに、ライ
フスタイル・ワークスタイルの見直しの観点から前向きに検討する。政府は、国民負担や
長時間労働等への懸念や克服すべき課題に対する対応策を明らかにしたうえで、国民的議
論を通じて、環境意識とライフスタイル・ワークスタイルの見直しに向けた意識の醸成と
合意形成に努める。
(9) 国は、深夜化するライフスタイルについて、それに伴うサービス関連業務における長時
間労働や24時間営業の拡大等、ワークスタイルのあり方も含めて見直しを検討する。
(10)国・地方自治体は、CO2に関する森林吸収源対策を強化するため、森林整備にあたっ
ては施業の集約化や路網の整備と機械化、木材市場や加工工場の集約、国産材利用の促進
等、川上から川下まで一貫した対策を支援することで生産性の向上図り、事業として成立
する環境をつくる。
(11)国・地方自治体は、間伐材等の木質バイオマスとしての利用を促進し、CO2削減や山
村の経済活性化を図る。
- 154 -
5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
(12)国・地方自治体は、生活における省エネの推進等、国民の環境意識を高め、家庭・地域
等での環境問題に対する取り組みを強化する。
①家庭、地域、学校、職場で環境教育を行い、「チャレンジ25」の取り組みを推進する。
②「環境保全活動・環境教育推進法」に基づき、行政、国民、事業者、民間団体が環境保
全活動に取り組む他、学校教育・社会教育における必要な施策を講じて自然環境の保護
やリサイクルの実践につながる体験学習等の充実をはかるなど、環境教育を推進する。
③都道府県地球温暖化防止活動推進センターの全県設置と地方自治体、企業、労働組合、
NGO・NPO、国民との連携を強化する。
(13)国・地方自治体は、ヒートアイランド対策として、緑化地域の確保・保存等、地域の温
暖化防止と環境保全の対策を推進する。
(14)地方自治体は、環境に関する実態を把握し、改善目標を定め環境関連条例の制定を推進
する。また、都市計画を策定する場合は、行政、各種事業者、住民が一体となって推進す
るとともに、「地球温暖化対策地域推進計画」を住民参加で作成し、着実に実行する。
(注2)ポリシーミックス~ それぞれ長所・短所を持つ各種の政策手法を効果的に組み合わせることに
より、全体として政策上の相乗効果を発揮させることおよびその考え方。
(注3)地球温暖化対策税(仮称) ~2010年度税制改正要望に盛り込まれ、2011年10月より段階的に実
施することとしている。原油、石油、ガス、石炭を対象に、輸入者、採取者の段階で課税し、ガソ
リンについてはガソリン製造者等の段階で課税されるが、製品原料としての化石燃料(ナフサ)や
鉄鋼製造用の石炭・コークス、セメントの製造に使用する石炭、農林漁業用A重油などは免税とさ
れている。使途は、「チャレンジ25」の実現に向けた政策パッケージに盛り込まれる地球温暖化対
策の歳出・減税に優先的に充てるが、特定財源とはしないとしている。
(注4)再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度~ 対象は太陽光発電、 風力発電、 中小水力
発電(3万kW未満)、地熱発電、バイオマス発電。太陽光発電については、当初は高い買取価格を設
定し、徐々に低減させ、風力、中小水力、地熱、バイオマス発電は、15~20円/kWh程度で15~20年
程度買い取り、買取費用は電気料金に上乗せして回収することとしている。
(注5) 国内排出量取引制度~ 各企業にCO2排出量を設定し、超過した企業が下回った企業から買い取
ることにより、全体の排出量を削減しようとする仕組み。政府は、2010年末に関係閣僚委員会にお
いて、「地球温暖化対策の柱である一方で、企業経営への行き過ぎた介入、成長産業の投資阻害、マ
ネーゲームの助長といった懸念があり、地球温暖化対策のための税や全量固定価格買取制度の負担
に加えて大口の排出者に新たな規制を課すことになる。このため、国内排出量取引制度に関しては、
我が国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその
効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組など)の運用評価、主要
国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行う」とした。
(注6) ボトムアップ方式~ 各企業や産業が技術導入可能性を前提に温室効果ガスの削減目標を自ら設
定する仕組み。
(注7) スマートグリッド~ スマートグリッドについては、各国・地域毎にその構築の目的や背景が多
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
様であり、現時点で国際的に統一された定義等はないが、現在、わが国では、「情報通信技術を最
大限に活用し、太陽光発電等の出力が不安定な再生可能エネルギーの導入拡大に対応するとともに、
電力の需給バランスの調整により、社会的コストを最小限にしつつ、安定的な電力供給を維持する
もの」について「わが国が目指すスマートグリッド(日本型スマートグリッド)」と位置付けてお
り、「次世代送配電システム」などとも称される。
(注8) ICT~ 【Information and Communication Technology】情報や通信に関する技術の総称。日本
では同様の言葉としITの方が普及しているが、国際的にはICTが主に使用されており、総務省
の「IT政策大綱」が2004年から「ICT政策大綱」に名称を変更するなど、日本でも定着しつつある。
(注9) ライフサイクル評価(LCA)~ 製品・サービスの環境負荷を評価する手法。製造から輸送、
販売、使用、廃棄、再利用までの各段階における環境負荷を明示することで、既存の製品・サービ
スと代替・新規の製品・サービスを比較し、より環境負荷の少ない製品・サービスを選別・提供す
る手法。
(注10) CCS~【Carbon Dioxide Capture and Storage】大規模に排出する事業所において排出するC
O2を他から分離して、人為的に回収し、地中深くに、あるいは海中に貯蔵する技術。
(注11) ビル・エネルギーマネジメントシステム(BEMS)~ 【Building Energy
Management
System】ICT技術の活用により、業務用ビルや工場において室内環境に応じた照明・空調などの
最適運転を行いエネルギー需要の自動管理を行うと同時に、エネルギー分析・診断機能により事業
者に一層の省エネルギー対策に向けた情報を提供するシステム。
(注12) 家庭用エネルギーマネジメントシステム(HEMS)~ 【Home
Energy
Management
System】ICT技術の活用により、一般家庭において室内環境に応じた照明・空調などの最適運転
を行いエネルギー需要の自動管理を行うと同時に、エネルギー使用量をリアルタイムに表示するこ
とにより、消費者に省エネルギーに関する行動を促すシステム。
(注13) トップランナー方式~ エアコン・テレビ・ビデオ・冷蔵庫・乗用車などの製品ごとにエネルギ
ー効率が最も優れているものをその製品のエネルギー効率基準(トップランナー)とし、指定した
製品開発期間のうちにトップの基準に追いつくことをメーカーに対して義務化したもので、省エネ
法に規定されている。
(注14) スマートメーター~わが国を含め現在、各国・地域で議論されている「スマートメーター」に
ついては、電気事業者等の検針・料金徴収業務に必要な双方向通信機能や遠隔開閉機能を有した電
子式メーター(いわゆる「狭義のスマートメーター」)であるとして意義付ける考え方が一般的で
ある。これに加え、エネルギー消費量等の「見える化」やホームエネルギーマネジメント(HEM
S)機能等も有したものを「広義のスマートメーター」とする考え方もある。
現在、諸外国では、一部を除き、「狭義のスマートメーター」の導入が目指されており、わが国
においても、メーター導入の時間軸や海外事例、わが国の現状等を踏まえ、当面は、遠隔検針・遠
隔開閉・計測データの収集発信機能を有する「狭義のスマートメーター」の導入を図った上で、
「広義のスマートメーター」については、需要家側の機器制御の必要性、HEMSのニーズ等を踏
まえ、将来時点であらためて検討する、とされている。
(注15)カーボンフットプリント~ 製品の環境負荷を表示する手法。「炭素の足跡」とも言う。製造
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
から販売までの過程における温室効果ガス排出量を表示するもので、温室効果ガスの可視化、見え
る化の一手法。温室効果ガス排出量を表示することで、より温室効果ガス排出量の少ない製品を選
別・提供する手法。
3.「グリーン・ジョブ戦略(注16)」に関する政策を推進する 。
(1) 国・地方自治体は、気候変動に関する政策を進めるにあたっては、雇用の安定・創出を
最優先事項とし、低炭素社会の構築、持続可能な雇用・労働を実現する「グリーン・ジョ
ブ」に関する政策を推進する。
(2) 国・地方自治体は、「グリーン」な雇用の拡大・創出が期待できる下記の分野等に対し、
重点的に投資を行うとともに、産業支援・投資促進の施策を実施する。
①非化石エネルギーの利用拡大(太陽光発電、風力発電、中小水力、地熱、原子力等)に
関連する機器の製造、供給の拡大、設備の整備
②化石エネルギーの高度利用(天然ガスシフト、CCSを含むクリーン・コール・テクノ
ロジー等)
③非食物由来バイオエネルギーの供給
④資源(地下水、雨水、雪等)の有効活用
⑤住宅・オフィス(新築・改築)の断熱仕様化・省エネ化
⑥学校・公共施設の耐震補強・石綿(アスベスト)除去
⑦化石燃料に依存しない自動車等の開発・製造
⑧都市間交通における鉄道利用の拡大
⑨公共交通機関の利便性の向上と有効活用
⑩持続可能な農業・林業・水産業・畜産業の振興
⑪持続可能な都市計画・まちづくり(省資源型の道路・信号・街灯の敷設、円滑な移動手
段(徒歩・自転車利用、渋滞解消)の確立)
(3) 国・地方自治体は、「雇用の維持・安定」を第一義に、低炭素社会の構築、エネルギー
構造の転換に伴う雇用の移動・喪失に対し、労働者の教育・訓練、再就職先の斡旋・確保、
住宅の確保等、移行措置を整備する。
(4) 国・地方自治体は、「グリーン・ジョブ」の推進に際しては、「環境にやさしい働き方」
であると同時に「ディーセント・ワーク」となるよう、賃金、労働安全衛生等、労働条件
に関する対策を強化する。
(注16) グリーン・ジョブ戦略~ 2007年6月、ILOが提起した環境と雇用・労働に関する新しい概念。
2008年9月、ITUC、ILO、UNEP(国連環境計画)、IOE(国際使用者連盟)が発行した
共同報告書『グリーン・ジョブ』では、下記の通り定義している。
①グリーン・ジョブとは企業および経済部門の環境への影響を最終的に持続可能な水準まで削減さ
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
せることに役立つ仕事で、農業・工業・サービス業・行政において、環境の質を維持・回復させ
るのに役立つ仕事である。
②グリーン・ジョブはエネルギー供給からその再生まで、また、農業・建設から輸送まで、さまざ
まな経済部門に存在する。グリーン・ジョブは高効率戦略を通じて、エネルギー、原材料、水、
消費を削減し、経済を脱炭素化して温室効果ガス排出を削減し、あらゆる廃棄物や公害をすべて
最小化または回避し、生態系と生物多様性を保護・回復させるのに役立つ仕事である。
③グリーン・ジョブは「ディーセント・ワーク」でなければならない。
4.自然と共生する社会の実現に向けて、国連「生物多様性条約」に基づく生物多様性の保
全政策を推進する。
(1) 国は、「名古屋議定書」の合意に基づき、遺伝資源利用の国際ルールづくりを推進する。
①名古屋議定書の批准に必要な国内法等を早期に制定する。
②知的財産権の保護について関係国と連携して強化に取り組む。
③IPBES( 注17 )およびTEEB( 注18 )の設立と活動に積極的に関与し、世界全体
での生物多様性保全に貢献する。
(2) 国・地方自治体は、「愛知目標(2020年)」の達成に向け国内施策を推進するとともに、
国際ルールを確立する。
①国は、愛知目標の達成に向け生物多様性国家戦略を改定する。
②国は、生物多様性日本基金による途上国支援にあたっては、効果的な運用に努めること。
③地方公共団体は、生物多様性に関する地域戦略を策定する。
(3) 国・地方自治体は、 生物多様性の保全(絶滅危惧野生動生物の保護、生息自然環境の
保全)と外来生植物駆除を強化する。
①国は、希少野生動植物の保全の在り方について早急に検討を行う。
②国は、動植物の保護区について調査・研究を行い国立公園・国定公園について必要な見
直しを行う。
③国・地方自治体は、外来生植物の駆除を強化する。
(注 17) IPBES~ 【Intergovernmental Science and Policy Platform on Biodiversity and
Ecosystem Services】「生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」
のこと。生物多様性の損失や劣化の現状に関して科学的知見を集め、各国政府の政策や行動を促す
役割を果たす。「生物多様性版IPCC」として期待されている。
(注 18) TEEB~ 【The economics of ecosystems & biodiversity】「生態系と生物多様性の経済学」
のこと。これまで感覚的に理解されてきた生物多様性の価値を金銭的価値に変換し、プロジェクト
のもたらす便益と生物多様性の価値を、政策立案者が定量的に比較することができるようになるこ
とを目指した研究。
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
5.水資源の持続可能な利活用をはじめ水に係わる安全保障を確立し、国民生活の維持向上
と生態系および健全な水循環の保全を図るため、基本理念・政策の基本事項・基本計画
などを規定する「水基本法(仮称)」を制定する。
(1) 国は、水は公共財であり、だれもが良好な水環境および、それがもたらす恩恵を享受す
る等を基本理念とし、水利用のあり方や水環境の保全・確保を図り、水行政の一元化と総
合的な水の管理制度を確立した「水基本法(仮称)」を制定する。
(2) 国・地方自治体は、安全・良質な飲料水の供給、水環境の保全を目的に、水源から各戸
に至る総合的な水質確保対策を推進する。水質基準については、生態系保全を考慮し、規
制を強化する。なお、フッ素が規制物質に指定されていること、人体・水環境全体への影
響等、多くの問題点が指摘されていることから、水道水へのフッ素の添加は行わない。ま
た、水質・環境保全の観点から、森林や農地等に対する農薬等の使用は必要最小限とする。
(3) 国・地方自治体は、生活雑排水を主因とする河川・湖沼の水質低下を防止するため、地
域の実情に応じ、下水道・浄化槽等、生活排水処理施設の整備を推進する。また、節水型
社会をめざし、雨水・再生水の利用を推進する。
(4) 国・地方自治体は、水源の確保、気候変動対策における森林吸収源対策の促進等の観点
から森林整備・保全管理を強化する。
6. 廃棄物対策について、循環型社会形成の観点からの取り組みの強化と、適正な制度設
計を促進する。
(1) 国は、地方自治体に対し「グリーン購入法」( 注19)に基づく環境負荷の小さい商品の
購入を推奨する。
(2) 国・地方自治体は、循環型社会の形成に向け.発生抑制(リデュース)、再使用(リユ
ース)、再資源化(リサイクル)3Rの取り組みを強化する。また、推進にあたっては、
循環型社会形成推進基本法で規定された発生抑制、再使用、再生利用、適正処分という処
理の優先順位を重視するとともに、とりわけ、廃棄物等の発生抑制に資する取り組みを積
極的に推進する。
(3) 国・地方自治体は、希少金属を含む機器をはじめとした使用済みで再利用や再資源化が
可能な商品の回収策として、エコポイントなどインセンティブを付与する制度の充実・拡
大をはかり、再利用・再資源化の取り組みを推進する。
(4) 国・地方自治体は、 産業廃棄物に関して、排出者責任と原状回復義務を徹底するとと
もに、循環型社会形成の観点から「拡大生産者責任」を明確にした制度を強化し、電子マ
ニフェストの添付を義務化する。また、指導権限のある「環境Gメン」制度を全国の自治
体の中に創設し、環境パトロールを徹底する等、監視システムを確立する。
(5) 国・地方自治体は、産業廃棄物処分場周辺の環境負荷を低減するため、モニタリング体
制と公表制度を強化する。併せて、処理品目区分の細分化、他の処分場や住宅・農地等に
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
対する距離規制、搬入される産業廃棄物に対する総量規制等、産業廃棄物処分場に関する
規制を整備・強化する。また、処分場への搬入基準・維持管理基準の遵守を徹底し、不適
正処理を未然に防止する。
(6) 国・地方自治体は、産業廃棄物処分場の新設に際し以下の事項に配慮する。
①処分場の設置は、受け入れ地域の住民の合意を前提とする。さらに施設設置事業者と住
民との間における「運営協議会」の設置や「環境保全協定」の締結等を義務化し、市民
参加による運営を行う。
②処分場の確保は、事業者の責任の所在を明確にしたうえで、地元地方自治体等の関与の
もとで進める。
③広域処理・処分を充実させる場合は、処分場設置場所周辺の万全な環境保全対策の実施、
関係する都道府県・市区町村の合意と事前の計画策定、情報公開を前提とする。
④既にある処分場については、官民を問わず責任の明確化および環境保全と維持管理を徹
底する。また、不法投棄を含む過去の処分状況については、調査と公表を徹底する。
(7) 国・地方自治体は、廃棄物処理場における火災や臭気の発生を防止するため棄物処理法
施行令の見直しを検討する。また、廃プラスチック類の再生利用技術の研究に対する支援
をおこなう。
(8) 国・地方自治体は、一般廃棄物の処理に際しては排出者としての地域住民と収集・運搬
・処理・処分にあたる各事業主体の責任と役割を明らかにし、以下のように取り組む。
①資源循環型社会経済システムの構築に向け、有価物の分別や生ごみのたい肥化等減量努
力の促進と、分別排出・収集を徹底する施策を講じる。
②一般廃棄物の処理費用の徴収を検討する場合は、排出者責任と適正処理のための費用の
あり方を明確にする。家庭ごみ有料化を検討する場合は、住民の合意を前提とする。
③爆発性・毒性・感染性等があり、人の健康や生活環境に被害が生じる恐れのある適正処
理困難物については、拡大生産者責任の観点から、事業者による自己回収・費用負担の
対応を検討する等、原則、行き場のない廃棄物をなくす。
(9) 国・地方自治体は、一般廃棄物処理の広域化による焼却施設については、循環型社会構
築の観点から焼却処分中心の廃棄物行政を見直す。また、構成市町村での分別収集と資源
のリサイクル化を徹底し、ごみの削減をはかることを前提に、最小限規模の施設とする。
このことに関わって焼却施設におけるごみ発電については、過度な計画を立てない。
(10)国・地方自治体は、廃棄物の国内処理原則に則り、現在は規制対象外の中古製品扱いで
廃棄物を国外に持ち出す脱法行為を防止するよう、国内での再利用・資源回収を徹底・強
化する。
(11)国・地方自治体は、自然災害の廃棄物処理については、現行の被災自治体処理費用の2
分の1の国庫補助を確実なものとして、現状被害に合わせて引き上げるよう、制度を改正
する。
(12)国・地方自治体は、食品リサイクルの推進に向けて、「食品リサイクル製品‐認証・普
及制度」の普及・促進を図る。
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
(注 19) グリーン購入法~ 国等の公的機関が率先して環境物品等(環境負荷低減に資する製品・サービ
ス)の調達を推進するとともに、環境物品等に関する適切な情報提供を促進することにより、需要
の転換を図り,持続的発展が可能な社会の構築を推進することを目指しています。また、国等の各
機関の取組に関することのほか、地方公共団体、事業者及び国民の責務などについても定めていま
す。
7.石綿問題(アスベスト)について、「石綿健康被害救済法」による被害者救済制度を拡
充する。
(1) 国は、「石綿健康被害基金」に資金拠出する「特別事業場」について、その認定要件か
ら労災認定件数を除外するとともに、負担のあり方を再検討する。
(2) 国は、「石綿健康被害基金」に対する国の負担を増額する。
(3) 国は、石綿に関する研究および無害化技術の開発・普及を促進する。
(4) 国・地方自治体は、確定診断できる拠点病院を整備し、早期発見と早期治療を迅速に実
施する。
(5) 国・地方自治体は、一般被害者およびその家族に対するメンタルヘルスケアを実施する。
(6) 国・地方自治体は、石綿に起因する疾病について、治療方法の開発・研究を支援する。
また、医師等に対する研修を拡充する。
8.化学物質・大気汚染に関する対策を強化する。
(1) 国は、「持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)」の2020年目標( 注20)お
よび化学物質の登録・評価・許可・制限に関する規則(REACH)、化学品の分類およ
び表示に関する世界調和システム(GHS)、国際的な化学物質管理のための戦略的アプ
ローチ(SAICM)等、国際的な化学物質管理規制を踏まえた化学物質管理対策を推進
する。
(2) 国は、災害で異常事態の発生が予測できる場合における、化学物質による被害低減のた
めの防災指針を作成し、事業場の規模に関係なく企業のマニュアル作成を促進する。
(3) 国は、大気汚染による被害者を救済するため「公害健康被害補償法」等の補償制度を見
直すとともに、複合的な影響を調査し、新たな認定と救済の制度を確立する。
(4) 国・地方自治体は、「化学物質排出把握管理促進法」、「化学物質審査規制法」等、化
学物質に関する法律・制度の周知・遵守を徹底する。
(5) 国・地方自治体は、化学物質の生態系への影響に着目した管理・審査体制を強化する。
(6) 国・地方自治体は、化学物質に関連する情報公開を促進する。また、化学物質に起因す
る被害が発生した際の事業者からの救済の迅速化等、対策を強化する。
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5.くらしの安心・安全の構築
(環 境 政 策)
(注20) 「持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)」の2020年目標~ 2002年9月に南
アフリカ・ヨハネスブルグで開催されたWSSDにおいて合意された化学物質管理に関する世界共
通の中長期目標。「予防的取組方法に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価・
管理手順を用いて、化学物質が、人の健康と環境への著しい影響を最小化する方法で生産・利用さ
れることを、2020年までに達成する」としている。
<実現に向けた取り組み>
(1) 政府に対し、審議会や意見交換などのあらゆる機会を通じて、「米中を含む全ての主要
排出国による公平で実効性ある枠組みを構築する単一の法的文書の早期採択と意欲的目標
の合意」を求めていく。
(2) 気候変動対策の強化、低炭素社会の構築、持続可能な雇用・労働の実現に向け、「グリ
ーン・ジョブ」の取り組みを推進する。
(3) 「連合エコライフ21」運動を職場・地域で実践する。また、「チャレンジ25」に労働組
合も参加する他、「連合の森づくり」や「連合・列島クリーンキャンペーン」等の取り組
みを拡大する。
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
食 料 ・ 農 林 水 産 政 策
<背景と考え方>
(1) 国連世界食糧計画は、 2010年の飢餓人口が9億25百万人であることを発表した。全世界
の7人に1人飢餓状況にあることになる。今後さらに、世界人口の増加や地球温暖化による
異常気象・災害発生、乾燥や水不足による砂漠化、開発途上国の工業化による農地の消失、
肉や魚の需要増大等により世界の食糧需給はますます不安定になっていくのではないかと
見られている。
(2) 農林水産省の発表によると、わが国の2009年度の食料自給率はカロリーベースで40%、
生産額ベースで70%となっており、カロリーベースでは先進諸国30ヵ国の中で最低レベル
でとなっているが、世界でもカロリーベースで計算を行っているのは日本だけであり、国
際比較については様々な指標を使い多面的な評価を行う必要がある。今後、世界の食料需
給が不安定になっていくと思われるなか、食糧安全保障の観点から、わが国の食料自給の
向上に向けた農林水産業の振興と食糧備蓄体制の確立は重要な課題となっている。
食糧自給の向上に向けて、わが国の食料自給の実情を正確に把握し、地域振興も併せて
国産食料の消費拡大の必要性、地産地消の全国展開等について広報活動を推進していく必
要がある。
(3) 政府は、新「食料・農業・農村基本計画」(2010年度~2014年度)を2010年3月30日に閣
議決定した。これまでの農政を大転換策定し「食」と「地域」の再生を図っていくとして
いる。具体的には、「戸別所得保障制度の導入」「『品質』、『安全・安心』といった消
費者ニーズに適った生産体制への転換」「6次産業化による活力ある農産漁村の再生」を一
体的に推進することにより、2020年度の食料自給率をカロリーベースで50%、生産額ベー
スで70%まで引き上げることとしている。
(4) 食品に関する事件・事故は減少してきているものの、ブランド食材に便乗した産地偽装
という問題も発生している。食品に対する信頼の更なる向上に向け、「食品衛生法」等、
食品の安全に係る関連法の周知・徹底や罰則の強化などを検討する必要がある。
消費者庁の発足にともない、食品安全基本法にもとづく「食品安全委員会」のあり方や
担当する範囲等を明確にし、隙間が生じないようにするする必要がある。
(5) 2010年4月に宮崎県において「口蹄疫」が発生した。最初の発症から初動まで一ヶ月近く
を要し、7月の集結宣言までの間、27万頭を超える牛豚を殺処分し埋設するに至った。この
間政府は、5月28日に家畜の殺処分の強制や被害農家の損失補償等を定めた「口蹄疫対策特
別措置法」を成立させた。
また、高病原性鳥インフルエンザについても各地で確認され、海外では人へ感染し死亡
に至ったケースも報告されている。
家畜伝染病に対する対策は、水際で完全に止めることは極めて難しいのではないかと考
えられ、早期発見と初動の迅速化により被害の拡大防止を図る必要が求められる。
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
(6) 食習慣の乱れ、健康障害、食べ残しや食品の廃棄等、国民の食生活をめぐる環境の変化
を背景に、2005年6月に成立した「食育基本法」にもとづき策定された「食育基本計画」
(2006
~2010年度)が最終年度を迎えている。
基本計画で設定した目標値について実績と比較・検証を行い、2011年度がスタートとな
る次期「食育基本計画」(2011~2015年度)に結果を反映する必要がある。
(7) 2010年6月に政府が決定した「新成長戦略」の地域戦略として、農林水産分野の成長産業
化が掲げられている。2020年度までの目標を「食料自給率50%(カロリーベース)」「木
材自給率50%」「2017年までの農林水産物・食品の輸出額を1兆円(2.2倍)」として、地
域資源の活用と技術開発や森林・林業の再生、輸出の拡大、食に関する将来ビジョンの策
定を推進していくこととしている。新成長戦略では同時に実行計画(工程表)が示されて
おり、関係省庁が連携して目標を達成することが求められる。
(8) わが国の農業の状況は、農業就業人口の減少・高齢化が進行する中で、農村の過疎化、
農地の荒廃等が進み耕作面積が縮小している。水田・畑作の土地利用型農業を中心に経営
規模の拡大が遅れており、農業の生産構造の脆弱化が進行している。
農業の担い手を育成・確保するとともに、安定した経営を実現するため、担い手による
農地利用の集積を促進する改革が求められている。同時に、魅力ある農業とするために、
地産地消、国内農産物の消費拡大の取り組みも重要となっている。
(9) 政府は2009年12月に「森林・林業再生プラン」を発表し、2010年11月にかけて森林・林
業基本政策検討委員会などにおいて検討を重ね、「再生プラン」の最終とりまとめである
「森林・林業の再生に向けた改革の姿」を公表し、10年後の木材自給率を50%以上を目指
すことが示された。
また、2010年通常国会において「公共建築物木材利用促進法」が成立し、国および地方
自治体が建設する低層建築物は原則としてすべて木造化を図ること等を定め、民間が整備
する学校、老人ホームなど公共性の高い建築物についてもこれに準じることを求めている。
地球温暖化防止、林業労働力、国産材利用対策などの目標達成に向け、実効性のある「森
林・林業基本計画」
(2011~2015 年度)の作成と「森林・林業再生プラン」の確実な実行
による地域林業の確立と地域振興が求められる。
(10)わが国の水産業・漁村を取り巻く情勢は、食生活における水産物の重要性と消費流通構
造の変化、国際化の進展と水産物の世界的需要の高まり、資源状況の悪化、無秩序な輸入
の拡大、燃料油価格の乱高下等によって、一層厳しさを増している。食料自給の向上に向
け、国内外の情勢変化に対応した水産政策の改革の確実な実行が求められる。
(11)政府は2010年11月に「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定した。EPA/F
TA網が主要国間で拡大しており、
「強い経済」を実現するためにもアジア太平洋地域との
経済関係を深化させるとともに、21世紀型の貿易・投資ルールの形成に向けて主導的に取
り組むとしている。また、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定については、情報収
集を行いながら対応するとともに、国内における環境整備を早急に進め、関係国との協議
を開始するとしている。その一方で、農業分野はもっとも影響を受けやすく大胆な政策対
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
応が不可欠であるとして「食と農林漁業の再生推進本部」を設置し2011年6月をめどに基
本方針を決定し2011年10月をめどに行動計画を策定することとしている。
EPA/FTAなどの包括的経済連携の締結・促進に当たっては、中長期的行程を示し
食料・農林水産分野の競争力強化や輸出の促進などに対し実効性のある対策を実施し、強
い食料・農林水産を実現し食糧安全保障を確立する必要がある。また、輸入食品の安全性
を担保するための仕組みを確立する必要がある。
<要求の項目>
1.食料自給力の向上と安全な食料の安定供給のために農林水産業の競争力強化および地域
振興に向けた対策の強化をはかる。
(1) 国は、地球温暖化や異常気象・災害、世界の人口増加、開発途上国の経済発展による農
地の消失等、21世紀の食料不足に対応した食料・農林水産政策を総合的に展開する。
(2) 国は、食糧安全保障や農地の多面的機能の観点から、その実現に向けて新たに策定され
た「食料・農業・農村基本計画」を確実に実行し、担い手の確保・育成、農地の効果的な活用
促進での生産向上により、食料自給の向上を図る。そのため、コメをはじめとした農・畜・
水産物に至るまでの戸別所得補償制度の充実・強化と6次産業化(注1)の推進による農林
水産業の活性化と体質強化を図る。
(3) 国は、食糧安全保障政策として食糧備蓄体制を確立する。現行の「不測時の食糧安全保
障マニュアル」を見直し、備蓄は、①平素から不測時における供給能力を保持しておく、
②備蓄を効率的に用意しておく、③安定的な輸入を確保しておくことが重要であることを
具体的内容として盛り込む。
(4) 国は、食糧安全保障の観点からODA活用による開発途上国の農業支援や遠洋漁業水域
における漁場確保に資する施策を推進する。
(5) 国は、水産基本法にもとづく水産基本計画の達成、そのための具体的プロジェクトであ
る「水産業体質強化総合対策事業」の拡充と実効性の確保、および適正な生産者魚価を確
立する。
(6) 国は、地産地消の全国展開、フードマイレージ( 注2 )の普及、国産農産物の消費拡大、
農産物輸出の振興、食料自給の向上に係る国民への啓発等の施策を推進する。
(7) 国は、食品廃棄を削減する観点から、食品関連事業者における消費期限・賞味期限の適
切な設定や外食店舗における分量を選択できるメニュー提供の促進、フードバンク( 注3)
への支援、食の大切さに対する国民意識の醸成等、食品廃棄の低減に向けた取り組みを促
す施策を展開する。
(8) 国は、農業者戸別所得補償( 注4)について制度の周知をはかるとともに極力手続きの簡
素化を図り、意欲があり生産性向上を図った農家が報われる制度とする。また、平成23年
度概算要求に盛り込まれた漁業所得補償制度( 注5)については、わが国水産業の中核をな
す遠洋・沖合漁業の実態に即したものとして実現させるとともに、高止まりしている漁船
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
用燃料油に対し実効ある支援を行う。
(9) 国は、農産物の価格は市場機能にもとづいて決定されることを原則とし、流通機構の整
備を進める等、食料品価格の適正化をはかる。また、消費者・生産者保護の立場から、食
料の自給の向上を図るとともに、自給・輸入・備蓄の適正な組み合わせで、安定供給の体
制を確立する。
(10)国は、コメ政策について需給調整による価格の安定と意欲のある生産者を支援する農業
者戸別所得補償による経営の安定を図り、減反水田や耕作放棄地を最大限活用し食料自給
の向上等に引き続き取り組む。
(11)国は、包括的経済連携の推進に当たっては、食料・農林水産分野の競争力強化や輸出の
促進などに対し実効性のある対策を実施し、強い食料・農林水産を実現し、食糧安全保障
を確立するとともに、輸入品の安全性を確立する。
(12)国は、「FOOD
ACTION
NIPPON」( 注6)の取り組みの周知徹底をはか
る。また、「生産」「流通」「販売」における各企業の参加を促進し、国産食料品の流通
を増やすための取り組みを強化すること。
(13)国は、「国産食料品等ポイント活動モデル実証事業」( 注7)の取り組みを拡充し、国産
食料品の消費の促進を図るとともに、流通・販売を含む食品産業と農業との連携を支援促
進する。
(14)国は、小麦粉に代わる米粉の利用拡大を推進し、食料自給の向上と持続可能な農業をめ
ざす。
(15)国および地方自治体は、地域資源を生かした6次産業化を促進するため、起業家を支援
するとともに、起業家を支援するコンサルタントの育成に努める。
(16)国・地方自治体は、必要に応じて強い農業に資する農業施設整備関連及び農業関連公共
事業予算の充実を図る。
(17)国・地方自治体は、非食料資源によるバイオ燃料の普及・促進を推進する。
(18)国・地方自治体は、高齢化・過疎化が進む中山間地域の活性化と国土の均衡ある発展、
環境と景観の保全、都市と農村漁村の交流の推進のため、関係省庁、地方自治体、NPO、
民間団体等が協力してIターン、Jターン、Uターン等により地方で暮らし、生活したい
人のための基盤や受け入れ体制の整備に努める。
(19)地方自治体は、食育を推進するため「食育基本計画」の策定し、学校教育および社会教
育における体験学習等の充実をはかる。特に、地場農産物を使用した学校給食や休耕地を
使用した学習農園等を進め、農・林・漁業の現状を学ぶとともに、食べものへの感謝の心
や地産地消への意識を醸成する機会をつくる。
(注1)6次産業化~ 2010年秋の臨時国会において「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出
等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(6次産業化法)が成立。農林漁業(1次産業)×
加工業(2次産業)×流通業(3次産業)が連携して新しい事業に取り組むという仕組み。農林水産物
等及び農山漁村に存在する土地・水その他の資源を有効に活用した農林漁業者等による事業の多角化
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
及び高度化および、地域の農林水産物の利用の促進に関する施策を総合的に推進することにより、農
林漁業等の振興と食料自給率の向上に寄与することを目的としている。
(注2)フードマイレージ~食料の「量」と、生産地から消費地までの「輸送距離」を掛け合わせて算出
する指標。あるいはこの指標に着目し、なるべく近くで生産された食料を食べることで、輸送に伴う
環境への負荷を軽減しようという運動。
(注3)フードバンク~ 食品関連企業から品質に問題のない食料品(包装破損や賞味期限が近づいたもの
等)を無償で譲り受け、これを「生活弱者」を支援する施設や団体に無償提供することにより、食料
品の有効活用と福祉活動支援を行う運動(もしくはそれを行うNPO・NGO団体)。
(注4)農業者戸別所得補償制度~ 麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ、そば、なたねの生産
数量目標に従って生産を行う農業者に対して、標準的な生産費と標準的な販売価格の差額分に相当す
る交付金を直接交付する制度。農業経営の安定と国内生産力の確保を図るとともに、戦略作物への作
付転換を促し、もって食料自給率の向上と農業の多面的機能の維持を目的としている。
(注 5)漁業所得補償制度~ 漁業所得補償の対象となるのは沿岸、沖合、遠洋漁業と養殖業。不漁な
どで一定以上の減収になった際に一部を補てんする漁業共済で、掛け金に対する国の補助率を平均
45%から同 75%に引き上げる。漁業を営む人と国が共同で積立金を拠出して減収に備える制度にお
いても国の負担割合を増やすとともに、原油高などに対応した従来のコスト対策も活用する。畑作の
一部やコメのように一律の固定額は支給せず、減収分を補てんする
(注 6)「FOOD
ACTION
NIPPON」~ 消費者の啓発と意識改革にとどまらず、「生
産」「流通」「消費」のそれぞれの現場で問題意識を認識・共有し、消費者・企業・団体・地方自治
体など、全ての国民が一体となって国産農産物の消費拡大を具体的に推し進めることを目的として、
農林水産省が 2008 年度より行っている国民運動。
(注7)「国産食料品等ポイント活動モデル実証事業」~ 国産食料品等の購入にポイントを付与する
モデル的な取組を実証・普及し、国産食料品等の消費を拡大するとともに、ポイントの収集・還元を
通じて、消費者の食料・農業への理解促進や地域の活性化など様々な相乗効果を狙い、多角的に食料
自給率の向上を図ろうとする取り組み。
2.安心・安全を重視した食料政策の実現をめざす。
(1) 国は、食品に対する信頼向上に向け、消費者重視の農林水産政策を推進するとともに、
海外を含めた「生産地から食卓まで」の一貫した食品の安全性・品質管理を強化する。ま
た、輸入食品については、輸出国の責任による検査の完全実施を原則とすることとし、日
本国内における監視体制の強化を図る。
(2) 国は、「食品安全基本法」を「国、地方公共団体及び食品関連事業者の責務並びに消費
者の役割を明らかにする」法律から、「消費者の権利」を保障する法体系に改める。
(3) 国は、「食品安全基本法」にもとづく「食品安全委員会」は、独立性・中立性を確保す
るため、EUの欧州食品安全庁を参考に権限を強化し、国家行政組織法第3条にもとづく委
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
員会に改組することを検討する。
(4) 国は、「食品衛生法」で規定されている食品等事業者の販売食品および原材料等の安全
性確保のための必要な措置(知識・技術の習得や検査等)については、努力義務を義務規
定とする。
(5) 国は、食品の表示制度について、各種の表示制度の一元的見直しを行うとともに、食の
安全・安心確保のために消費者にとって必要な情報が正確に分かりやすく伝わる制度を早
急に確立するとともに、中小零細事業者に対し啓発・支援を行う。また、不正表示の一掃
と食品表示ウオッチャー制度の継続・強化をはかる。
(6) 国は、食品の安全・安心を確保するために、トレーサビリティシステム(生産流通履歴
情報把握)やGAP(農業生産工程管理)、HACCP(食品の安全性を確認するため、
これに係る危害を確認し、防除する管理手法)等の導入・普及を促進するとともに、生産
者から消費者までのフードチェーン内の情報交換等のコミュニケーションをはかり、信頼
関係を構築する。
(7) 国は、「有機農業推進法」の具体的な施策の展開にあたり、法律で規定する有機農業に
よる有機農産物の生産・流通については、「農林物質の規格及び品質表示の適正化に関す
る法律」(JAS法)( 注8)にもとづく厳正な表示を徹底する。
(8) 国は、内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)問題については、化学物質によ
る人体をはじめ、土壌、河川、作物等への影響を関係府省が連携して調査・研究を進める。
また、病害虫防除要否の判断基準や施肥基準についても見直し、厳正化をはかる。
(9) 国は、残留農薬等について、2006年5月より実施されたポジティブリスト制度の確実な実
施と、輸入野菜等に含まれる残留農薬の分析・評価、国内基準の早期適用を行う。
(10)国は、遺伝子組換え技術による食品について、国際的な監視・研究機関を設置して、人
体や環境への影響や安全性等を研究し、その情報を各国政府や企業、消費者等に公開する。
また、特に消費者には分かりやすい情報提供を行う。
(11)国は、遺伝子組換えの表示は、表示対象食品を拡大し、原産地、素材、加工品も含めて
行い、消費者に分かりやすく正確な情報を伝え、選択が可能となる施策を講じる。
(12)国は、放射線照射食品の生産・販売について、安全性の確立、照射有無を検知する技術
の確立、消費者に対する情報公開の徹底を前提とする。
(13)国は、食品添加物について、消費者に対して、その有効性、安全性やリスク等に関する
情報提供を行う。また、輸入食品の増加にともない、未承認食品添加物の食品健康影響評
価を速やかに行う。
(14)国は、食品への意図的な毒物・異物混入に対する危機管理体制の確立について研究し、
必要な対策を講じる。
(注8)農林物質の規格及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)~ JAS規格(日本農林
規格)と食品表示(品質表示基準)の2つのことを定めている。この法律で定めたルールにしたがっ
て国民の身の回りの食品等には、JASマークや原産地等の表示が付いている。1950年にJAS法が
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
制定された当時は、JAS規格についてだけの制度であったが、1970年の改正により、食品表示につ
いても定めるようになった。さらに、1999年の改正で消費者に販売されるすべての食品に表示が義務
付けられた。2005年6月に、流通の方法についての基準を内容とする新たなJAS規格の制定、登録
認定機関の民間第三者機関への移行、JASマークを貼付できる者の範囲拡大等を内容とする法改正
が行われ、2006年3月より実施された。
3.食肉に関する安全行政の確立と自給・輸入・需給調整を組み合わせた畜産物の安定供給
を実現する。
(1) 国は、BSEの原因究明に引き続き取り組むとともに、特定危険部位の除去と検査体制
の確立、トレーサビリティシステムを活用した消費者に対する正確な情報の提供、BSE
に関する正しい知識の普及・啓発につとめ、安全・安心の供給体制を確立する。
(2) 国・地方自治体は、口蹄疫および鳥インフルエンザの被害を最小限に抑えるための早期
通報と初動体制の仕組みを整備するとともに、法整備を含め被害補償の充実を図る。また、
公務員獣医師の確保対策を強化する。
(3) 国・地方自治体は、20ヵ月齢以下のBSE検査については、BSEの原因が究明される
とともに、当該検査に代わる安全・安心の確保策が確立されるまでの間、国・都道府県の
責任において検査を継続する。
(4) 国は、BSE発生が確認された場合、国・都道府県等は「牛海綿状脳症対策特別措置法」
にもとづく「牛海綿状脳症対策基本計画」によって、まん延防止対策等を早急かつ確実に
実行する。
(5) 国は、BSEの発生した国からの牛肉の輸入にあたっては、国内と同様の基準とする。
米国・カナダからの輸入再開の条件とした①全頭からの特定危険部位(SRM)の除去、
②20ヵ月齢以下の牛、については厳守する。
(6) 国・地方自治体は、国内畜産物の消費者への安定的な供給体制を確保するため、適正な
需給調整(調整保管等)を行うとともに、飼料増産を図る。
(7) 国・地方自治体は、飼料作物の生産拡大策を推進するとともに稲ワラ等の農業副産物や
未利用・低利用資源の利用を促進する。また、公共牧場、飼料生産受託組織の活用によっ
て、飼料生産の効率化を推進し、労働負担の軽減をはかる。
(8) 国・地方自治体は、飼料・畜舎等の生産コストおよび流通コストの低減等を一層推進す
る。
(9) 国・地方自治体は、経営の安定と生産の効率化をはかるため、地域内・経営内の繁殖・
肥育一貫生産を推進する。
(10)国・地方自治体は、家畜市場の整備、産地における食肉センター、消費地における配送
センター、流通センターの効果的・効率的な整備を進め、食肉流通の近代化を促進する。
産地偽装について、監視・取締りおよび罰則を強化する。
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
4.持続可能な農林水産業の確立と意欲ある農・林・水産就業者の育成と確保をめざす。
(1) 国・地方自治体は、循環型農業を推進するため、家畜ふん尿や食品残さ等の有機性資源
のリサイクル等を推進する。
(2) 国・地方自治体は、循環型社会の構築と資源の有効活用の観点からも食品のリサイクル
を推進する。
(3) 国・地方自治体は、森林整備とあわせて、バイオマス(生物由来の有機性資源)による
非食用資源の利活用等、資源循環型農林漁業をさらに推進する。
(4) 国・地方自治体は、農地の有効利用および新規雇用の創出をはかるため、多様な農業生
産組織(担い手農家・農業生産法人・農業サービス事業体等)の育成を支援する。
(5) 国・地方自治体は、新規就農・林・漁業者を含めた幅広い担い手の育成・確保のため、
都市と農山漁村、および教育機関が連携した広域的な募集をおこなう。
(6) 国・地方自治体は、最低経営面積の縮小等の農地取得条件の緩和、技術経営研修、就労
条件や融資等の支援策の抜本的整備をはかる等、雇用創出の面からも、幅広い希望者が第
一次産業に参入しやすい条件を整備する。
(7) 国・地方自治体は、農業就業人口の約6割を女性が占める等、農村社会の維持・活性化
のために女性の果たす役割が大きいことから、女性の経営参加や起業活動の推進のための
支援を強化する。
(8) 国・地方自治体は、農林水産業における機械化による省力化をさらに進め生産性をあげ
るため、その機能と設備コストダウンの複合的な研究開発を推進する。
(9) 国・地方自治体は、農業および林業経営の条件不利地域に対しては、国土と自然環境の
保全、水資源涵養、景観保全、国土の均衡ある発展をめざす等の見地に立って総合的な政
策を策定、実施する。
(10)国は、農林水産省予算の配分について、地域の実態、生産者や地域住民の要望を踏まえ
た上で、雇用創出や環境に寄与する施策、所得補償対策等、非公共事業分野に重点化する。
(11)国は、農林水産に係る公共事業の実施にあたっては、事業の透明性の確保、府省庁間の
連携、費用対効果や情報公開、事前評価・再評価・事後評価を行う等、評価システムを徹
底する。
(12)国は、環境・漁業補償問題等で長期に休止している事業、事業実施後の利用のめどの立
たない事業については、廃止または凍結の方向で見直す。
(13)国・地方自治体は、地域の特性を活かした農山漁村の振興や活性化のために、公共事業
や非公共事業にとらわれない事業のより一層の拡充をめざす。
5.地球温暖化防止と山村振興が連動した森林整備・保全対策を総合的に推進する。
(1) 国は、温暖化防止対策と環境・国土保全、持続可能な森林管理・経営、公益的機能の重
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
視を柱とする「森林・林業基本計画」および「森林・林業再生プラン」を確実に実行する。
(2) 国は、国際公約である地球温暖化防止の森林吸収源対策により温室効果ガス排出量1,300
万炭素トン(3.8%)を削減するため、保安林の適切な管理・保全、森林整備の推進等、本
予算を確保し確実に実行する。
(3) 国は、違法に伐採された木材を輸入しないよう監視と規制を強化する。
(4) 国は、国土・環境保全の観点から、関係省庁の連携のもと森林行政の効率的・一体的な
運営を行う。
(5) 国・地方自治体は、森林整備の促進および林業における新規雇用の創出に向け、林業労
働者の確保・育成および山村の振興・活性化を目的とした施策を充実させる。
(6) 国・地方自治体は、民有林における不在村森林所有者・不明境界の確定を進めるととも
に、林業事業体(森林組合・林業会社等)を育成する。
(7) 国・地方自治体は、国産材の需給改善に向け、川上と川下が一体となり木材を安定的に
供給するためのシステムを構築するとともに、国産材利用の拡大をはかる。
(8) 国・地方自治体は、流域を保全し木材を安定的に供給するため、国有林は国、民有林は
都道府県が中心となっている現状を改善し、双方が十分に連携する体制をつくる。
(9) 国の指導・支援のもとに各地方自治体が連携し、民有林において未整理となっている森
林簿を早急に整備する。
(10)国・地方自治体は、自然災害による森林の被害について必要な予算措置を講じて早急に
復旧する。
(11)国・地方自治体は、生物多様性の観点から植栽や間伐等により広葉樹と針葉樹を効果的
に配置するなど、生物の生息環境に配慮した森林管理を行うとともに、中山間地域で多発
している鳥獣や病害虫対策を充実し、里山の保全を図る。
(12)国・地方自治体は、スギ花粉の発生を抑制するため、花粉の発生源の調査、無花粉スギ
や花粉の少ないスギ苗木の供給を促進する。
(13)国・地方自治体は、外国資本による山林買収の実態を把握できる仕組みを構築し、適切
な対応を行う。
6.持続可能な資源利用により、水産資源の維持と水産食料の安定供給体制を確立する。
(1) 国は、中長期的に世界の水産物需給が逼迫することが予想される中で、国内漁業生産を
基本とした水産物の供給体制を構築し、「水産基本計画」の確実な実行により、水産物の
自給の向上をはかる。
(2) 国は、わが国の排他的経済水域等( 注9)において、資源水準に見合った漁獲を実現する
ため漁業権・漁業許可制度の運用や漁業可能量(TAC)や漁獲努力可能量(TAE)( 注
10)の設定・管理により漁業活動を適切な水準に管理する。
(3) 国は、資源回復計画(注11)を着実に推進するとともに、回復目標を達成した資源に関し、
- 171 -
5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
その水準の維持安定および合理的な利用を計画的に推進する新たな枠組みを導入する。
(4) 国は、水産資源の管理を強化するため、下記の対策を実施する。
①わが国の排他的経済水域における違反操業の監視・取締り能力を民間船の活用により向
上させるとともに、密漁等に対する罰則の引き上げ、行政処分の厳格化等による違反防
止対策を強化する。
②わが国の周辺水域については、周辺国・地域との連携を強化し、適切な漁業関係を構築
する。併せて、IUU(違法、無報告、無規制)漁業の取締りを強化するとともに、操
業の国際取り決めを遵守する。
③水産資源の保存と持続的利用のために資源の自主管理を進めるとともに、世界第2位の水
産物輸入国・消費国であるわが国自らの責任で、地域漁業管理機関の規制を守らない幼
魚を乱獲する畜養マグロおよびFOC(便宜置籍漁船)( 注12)や密漁船(IUU漁船)
の捕獲したマグロ、および衛生管理が不適切な魚介類等の輸入禁止に向けた取り組みを
強化・推進するとともに、漁業の安全確保、乗組員の雇用と生活の安定に努める。
(5) 国は、国際的なネットワーク・システムによる気候変動や海洋環境劣化の調査や漁業資
源の調査を推進する。
(6) 国は、日本固有の食文化を尊重する立場から、科学的根拠にもとづいた鯨類資源の確保
をはかりながら、資源の合理的利用を基本に、南氷洋およびわが国沿岸を含む北西太平洋
における資源的に問題のない鯨類の捕鯨再開に向け、外交的努力を一層強化する。
(7) 国・地方自治体は、漁業者の漁業技術および経営管理能力の向上や後継者の育成・確保
をはかるとともに、労働環境の改善を促進する。そのため、関係省庁が緊密な連携に努め、
高校・大学等を通じた実践的な専門教育の充実と専門知識を生かした雇用・就業機会の確
保とともに、女性の参画を促進する。
(8) 国・地方自治体は、環境保全、森林整備、河川の生態系に配慮した改修、水質汚染の回
避および削減に努め、河川、湖沼、沿岸における水産資源の保護・回復策を推進する。
(注9)排他的経済水域等~ 沿岸国に経済的な管轄権が与えられているが、他国の航海に際しては自由通
航となっている海域である。領海(主権が及ぶ海域)の外側において領海の基線から200海里(370㎞)
以内の海域である。
*海洋は、国際的に領海、接続海域、排他的経済水域、公海の4つに分類されている。
(注10) 漁業可能量(TAC)や漁獲努力可能量(TAE)~ TAC制度は、1996年、わが国にお
いて「国連海洋法条約」が発効したことに伴い、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律に基づき
導入された水産資源管理の新しい仕組み。それまで行われてきた漁獲能力や漁獲努力量の規制による
資源管理と異なり、“採捕量”そのものに着目して管理する制度。
TAE制度は、2003年に導入された制度である。この制度は、資源状態が悪化している漁業資源を早
急に回復するために資源回復計画の対象となる魚種について、対象となる漁業と海域を定めた上で、
あらかじめ漁獲努力量の上限を「漁獲努力可能量」として定め、その範囲内に漁獲努力量を収めるよ
うに対象漁業を管理するものである。
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5.くらしの安心・安全の構築
(食料・農林水産政策)
(注11)資源回復計画~ 2001年に水産基本法制定とともに、主要な水産関係法制度について水産基本法の
示す施策の方向に即して行われた改正により、新たに示された漁業管理制度。緊急に資源回復をはか
る必要がある魚種について、減船、休漁等を含む漁獲努力量の削減や種苗放流等による資源の積極的
な培養、漁場環境の保全等の資源回復措置を計画的、横断的に講じていくもの。資源回復計画は、国
(一都道府県の範囲にとどまる資源については都道府県)が作成。法律等に基づくものではないが、
海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(TAC・TAE制度)、漁業法等によってその実効を担
保。
(注12) FOC(便宜置籍漁船)~ マグロ類は、海洋を広範囲に移動することから、国際漁業管理機関
において資源管理のための漁獲規制が実施されている。「便宜置籍漁船」とは、このような漁獲規制
から逃れるために、国際漁業管理機関の非加盟国等に便宜的に船籍を移し、無秩序な操業を行ってい
る漁船のことである。国際漁業管理機関の加盟国は、FOCに船籍を許している国からのマグロ類の
取引を自粛することとしている。FOCが漁獲したマグロ類のほとんどは、刺身マグロとして、日本
の輸入業者によって輸入されている。農林水産省は、輸入業者等に対し、FOCが漁獲したマグロ類
の取引を自粛するよう指導している。
<実現に向けた取り組み>
(1) 安全・安心な食料の安定的な確保と国民的合意による食料・農林漁業政策の実現をめざ
して、食品安全委員会の機能・権限の強化をはかるとともに、「食料・農林漁業・環境フ
ォーラム」等とも協力し、引き続き関係府省対策を強化する。
(2) 農林水産業における新たな雇用創出をはじめ、重要な政策課題に関係する構成組織・地
方連合会との意見交換を行うとともに、実態を把握し理解を深めるため、現地視察を行う。
(3) NPO、日本生活協同組合連合会(日生協)、全国農業協同組合中央会(JA全中)等、
関係団体と交流・連携を深め、連合の政策の推進に努める。
- 173 -
5.くらしの安心・安全の構築
(消 費 者 政 策)
消
費
者
政
策
<背景と考え方>
(1) 消費者を取り巻く昨今の状況をみると、食品、製品、施設の各分野で、重大な被害を伴
う消費者事故や事件が後を絶たない。また、高齢者等を狙った悪質商法や詐欺事件が深刻
な社会問題となっている。その背景には、グローバル化や市場原理・効率性を過度に重視
した規制緩和ネット社会の進展、利益最優先の企業モラルの欠如、といった消費者を取り
巻く環境の変化がある。消費者・生活者が安心・安全に暮らしていける社会の確立に向け
た政策の充実が求められている。
(2) 2009 年 5 月に消費者庁及び消費者委員会設置法、消費者庁設置法の施行に伴う関連法律
の整備に関する法律、消費者安全法の 3 法が成立し、消費者庁が内閣府の外局として 2009
年 9 月に設置された。「消費者庁」の主な所管業務は、①消費者の利益の擁護・増進およ
び物価、公益通報者の保護および個人情報保護に関する政策の企画・立案・推進、②関係
行政機関の事務の調整、③消費者安全法に規定する消費者安全の確保等となっている。ま
た、「消費者委員会」も消費者庁と同時に発足し、消費者行政全般をチェックするととも
に、①消費者利益の擁護および増進に関する重要な事項について総理および各大臣、消費
者庁長官への建議、②諮問に応じて重要事項の調査審議等を行うこととなった。
一方、消費者安全法では、消費生活センターを各都道府県に設置(市町村は努力義務)
し、消費者事故等に関する情報の集約や消費者被害防止のための措置が規定された。
法案の成立に際し、附則として、消費生活センターの位置づけや適正配置、人員確保、
職員の処遇改善について検討し、3 年以内に必要な措置を講ずるが規定された。同時に、
多様な相談受理体制の整備や国と地方の役割分担、相談員に対する教育・研修の充実、消
費者被害の救済のための制度検討等、34 項目の付帯決議が定められた。
発足 3 年目となる 2012 年 9 月に向け、消費者行政に関する問題点や課題について再点検
し、消費者庁の設置目的である「消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことがで
きる社会の実現」に向け施策を着実に推進していく必要がある。
(3) 2008 年 6 月に「特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部改正法」が成立し、クレ
ジット・カード被害等の防止および救済範囲が広がることとなった。概ね評価出来る改正
であるが、総量規制による悪影響や被害救済の対象範囲では課題が残っている。
また、高齢者などを狙った悪質商法や詐欺事件が深刻な社会問題となり、若者をターゲ
ットにしたクリック詐欺等も横行している。今後も引き続き関連法を整備するとともに被
害を事前に防止するための消費者教育の充実が求められる。
(4) 2009 年 3 月に「安全・安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」が
発足した。円卓会議の目的である「安全・安心で持続可能な社会の実現」および「組織の
社会的責任を促進する環境の整備」に向けて、多様な主体が協働して社会的課題の解決に
取り組むことが期待される。
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5.くらしの安心・安全の構築
(消 費 者 政 策)
<要求の項目>
1. 消費者の安心・安全の確保のための消費者保護政策を強化する。
(1) 国は、消費者庁や消費者委員会について、発足後の取り組み評価を行い、設置の趣旨と
照らし十分に機能しているかどうか検証し、問題点を是正すること。
(2) 国は、消費者庁 3 法(消費者庁及び消費者委員会設置法、関係法律整備法、消費者安全
法)成立時に附則された 3 年以内の消費者被害救済事項や消費生活相談員の待遇の改善を
はじめとした附帯決議を検証し、未実施項目については対策を講じること。
(3) 国は、消費者の生命・健康に影響を及ぼす商品については、安全基準の設定や、危険な
商品の回収制度等の整備を進める。
(4) 国は、消費者契約の適正化に向けて、消費者への情報提供や表示・勧誘のあり方等に関
する事業者の責務を明確化し、悪質行為に対する罰則を強化する。とりわけ、不当表示、
誇大広告に対する規制を強化するとともに、消費者の誤解や不安を招かないよう、商品の
デメリット表示は情報の過不足なく、分かりやすく見やすいものとするよう義務づける。
(5) 国は、食品の原産地等の表示については、消費者にとって分かりやすい表示方法に改め
るよう改善を行う。
(6) 国は、CO2 排出量の「見える化」の一手段として、商品・サービスのライフサイクル
全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2 換算して、当該商品・サービスに
簡易な方法で分かりやすく表示する制度(カーボンフットプリント制度)を確立し、その
普及促進をはかる。
(7) 国は、安全・安心で持続可能な社会の実現と組織の社会的責任の促進に向けた環境整備
を実現するため、「安全・安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」
の運営にあたり、参加する各主体の行動計画である協働戦略の実施に向けた支援に努める。
(8) 国・地方自治体は、国民生活センターおよび地方自治体等に設置されている消費者相談
センターの態勢・機能を強化する。
(9) 国・地方自治体は、相談員の確保や相談への対応力強化をはかるため、相談員の雇用形
態・処遇を改善するとともに、能力開発を充実させる。
(10)国・地方自治体は、高度情報通信社会の進展に伴い、今後も拡大・発展が見込まれるイ
ンターネット等を通じた商取引に関して、適切な広告・表示の徹底や相談窓口の整備、個
人情報の漏洩・流出や詐欺等の犯罪防止の対策、ウイルス感染の対応も含めた情報セキュ
リティを強化する対策を講ずる等、消費者保護策を強化する。
(11)消費者庁や消費者委員会は、従来の縦割り行政を改革し、JAS法や食品表示法などの
関係法令について、表示の一元化を行うともに、違反企業についての罰則の強化も視野に
入れた検討を行う。
(12)国・地方自治体は、商品・サービスの安全性に係る情報の多言語による表示・提供や、
多言語で対応できる窓口の整備等、多様な消費者に対する保護施策を推進する。
- 175 -
5.くらしの安心・安全の構築
(消 費 者 政 策)
2.消費者被害の抑止・救済に向けた体制整備を進める。
(1) 国は、改正特定商取引法および割賦販売法の実効性が担保されるよう、政令、省令、ガ
イドライン等を整備する。
(2) 国は、消費者団体訴訟制度の導入後、本制度が適格消費者団体によって適切に活用され、
消費者利益の擁護が一層はかられているかどうか動向を注視するとともに、消費者被害の
拡大を抑止するための環境整備を行う。
(3) 国は、公益通報者保護制度について政府のガイドラインの活用や労使協議の促進等を通
じて、制度の周知と普及を徹底させる。特に、中小企業、市区町村への普及が大幅に遅れ
ていることから、改善の取組を強化する。また、公益通報者保護法の見直しに向けて、早
急に施行後の状況と問題点等を十分に把握し、法制定時の課題(①「法令違反のおそれ」
の扱い、②外部通報の保護要件、③手続きや救済の規定の必要性、④違反企業への罰則)
等に加え、新たな課題を整理し、適切な改正を実現する。
(4) 国・地方自治体は、全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)(注 1)
を一層拡充し、サービスや契約・解約を中心に複雑化している消費者契約に係るトラブル
情報を迅速に収集・分析し、公表する。
(5) 国・地方自治体は、改正貸金業法が、目的である多重債務問題の解消と金融市場、雇用
等に与えている影響について検証し、必要な改善を検討・実施する。
(6) 国・地方自治体は、貸出基準の厳格化などにより、個人や自営業者などがいわゆるヤミ
金融などの金融商品を求めることや、市場の縮小による雇用への悪影響が回避されるよう
施行後の実態を検証し、必要な改善を検討・実施する。
(7) 国・地方自治体は、貸金業法および特定商取引法・割賦販売法の改正にともない発生し
ている新たな悪質商法に関する情報収集を強化し、被害防止策を法整備を含め検討する。
(8) 国・地方自治体は、「多重債務問題改善プログラム」にもとづく相談・救済体制を強化
するとともに、ヤミ金融撲滅に向けた取締り強化等を確実に実行する。
(9) 国・地方自治体は、社会問題化している架空請求・不当請求、悪質訪問契約および振り
込め詐欺を防ぐため、新たな手口や形態を迅速に把握して消費者の啓発に努める。
(10)国・地方自治体は、新たな悪質事業者の監視・取締りを強化するとともに、被害者救済
策を早急に整備する。
(11)国・地方自治体は、行政型裁判外紛争処理(ADR)機関( 注 2)の紛争解決機能の強化
に向け、国民生活センター・消費生活センター、都道府県・市町村の連携強化を促すとと
もに、民間型ADR機関を支援・育成する。
(12)国・地方自治体は、個人情報保護法の円滑な運用に向け、適正な要員確保等、苦情受付
体制を整備し、苦情相談窓口を国民・住民に周知する。
(13)国・地方自治体は、国民生活センター・消費生活センター、認定個人情報保護団体、各
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5.くらしの安心・安全の構築
(消 費 者 政 策)
事業者等の実効性ある連絡体制を構築し、苦情処理を迅速に進めるとともに、消費者の利
便性向上を図る。
(14)国・地方自治体は、高齢者の被害防止に向けた対策として、成年後見人制度の充実、振
り込め詐欺を含む高齢者への注意喚起の強化および相談窓口の設置を進める。
(注1)全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)~ 国民生活センターと全国
の消費生活センターをコンピューターのオンラインで結ぶネットワーク・システム。消費生活相談情
報等をデータベース化し、各地の消費生活センターにおける相談処理や消費者行政の企画・立案等に
活用される他、一般消費者への情報提供も行っている。
(注2)行政型裁判外紛争処理(ADR)機関~ 裁判以外の手段で簡易・迅速かつ安価な費用で紛争
を解決する機関。日本では、裁判所で行われている司法型(民事調停、家事調停)、行政型(公正取
引委員会、国税不服審判所、都道府県の消費生活センター、都道府県労働委員会等)、民間型(PL
センター、交通事故紛争処理センター等)がある。
3.消費者の自立につながる消費者教育、広報活動を強化する。
(1) 国・地方自治体は、消費者生活に深く係わる社会保障、金融・証券関連商品等の知識・
情報や悪質商法の最新情報など消費者被害の事前防止との自立につながる消費者教育を、
年齢層に応じて実施する。
(2) 国 ・地 方自治 体は 、民 間団体 の実 施する 消 費者等 を対象 とし た食 品表示 の検 定制度
の普及・ 促進や 小・中 ・高等 学校に おける 消費 者教育の 充実を 図る。
(3) 国・地方自治体は、消費行動が環境問題や都市問題に与える影響を消費者にメリット面
・デメリット面に関する正確な情報を提供・啓発し、資源節約・環境保全等の観点を踏ま
えた消費行動を促進する。
(4) また、食品 ロス削 減に向 け食の 大切さ に対 する国民 意識の 醸成を 図る。
(5) 国・地方自治体は、大学等と連携し消費者教育の担い手となる専門人材を養成する。
<実現に向けた取り組み>
(1) 各種審議会への積極的な参加を通じて、連合の意見反映に努める。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(政 治 改 革)
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
政
治
改
革
<背景と考え方>
(1) わが国の政治は、連合がめざしてきた「政権交代可能な二大政党的体制」へと近づき、
2009 年夏の総選挙で政権交代が実現した。各党はマニフェスト(政権公約)による政策
論争を行い、国民も政権選択的な投票行動をとるようになり、それが政権のあり方を決定
づけるまでになった。
(2) 国民の選択が政治のあり方を決める政治の成熟は日本政治の大きな前進であり、国民と
政治にはより大きな力と責任が伴うこととなった。しかし、総選挙で掲げた政策の実績が
再び総選挙で問われる以上、選挙運動は政党の日常活動であるべきにもかかわらず、公職
選挙法は過度に細かい規制を重ねてきたため、これを制限することとなり、かえって政党
政治の本来的な営みや国民の政治参加の障害となっている。
(3) 2010 年の参議院選挙では「一票の格差」が最大 5.00 倍となり、選挙の無効が争われた
裁判で東京高裁は違憲判決を下した。全国で争われた同様の訴訟で各高裁が下した判決は
異なるものの、いずれも大きな不平等を認め、是正を強く求めるものであった。現在、参
議院を中心に選挙制度改革の論議が行われており、その論点は二院制、とりわけ参議院の
権能のあり方など憲法の規定に及ぶものをも含むが、「一票の格差」の是正と有効に機能
しうる両院制度の確立は喫緊の課題である。
(4) 政治資金規正法も、事件のたびに制限が加えられた一方で、多くの「抜け道」が存在
している。資金の流れが透明性を欠いたまま「規正」が実質的に無効にされた状態は、
絶えざる「政治とカネ」の問題と相まって、国民の政治不信を募らせている。この間の
政治改革の流れに沿った企業・団体献金の見直しを含め、政治に関わる資金はすべて適
切な規正がなされ、全容が明解に国民の監視下に置かれる制度へと根本的に改めること
が求められている。
(5) 民主党政権が掲げた「政治主導」についても、政府は内閣の下での政策決定の一元化
をはかるべく、国家戦略室や行政刷新会議の設置、政務三役の強化・増員などを行って
きた。しかし、ねじれ国会や政権が抱える内外の課題によって政治情勢は混迷し、政治
主導確立法案などは成立に至らず、「政治主導」の政策決定過程の整備は停滞したまま、
事業仕分けや政務三役などをめぐる政策決定の混乱さえ生じる状況となっている。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(政 治 改 革)
<要求の項目>
1.公職選挙法などを改正し、公平・公正でわかりやすく、政党・候補者が政策と実績を
競い合う、国民の立場に立った選挙制度にする。
(1) 政党政治の健全な活動を促進し、政治意識の向上と参加の拡大をはかるため、選挙運動
や投票のあり方を見直すとともに、選挙違反などの不正行為が繰り返されないよう、ルー
ルやその運用の厳格化をはかる。
①公職選挙法の「選挙運動期間」の規定を廃止し、政党政治の本来的な活動である選挙
運動を日常的に行えるようにする。
②文書図画、戸別訪問、公開討論会など、選挙運動の方法に関する制限を撤廃し、原則
的に自由に運動できるようにする。なお、買収供応の禁止など、不正防止の規定は維
持し、運動費用の高騰を招くマスコミCMなどについては、その制限のあり方を検討
する。
③インターネットを利用した選挙運動ができるように見直しを行う。あわせて選挙管理委
員会は、候補者の経歴や主張、マニフェストなどを閲覧できるホームページを開設する。
また、現行の政見放送に加えて、候補者同士による直接討論を、放送やインターネット
で放映・配信できるよう制度改正を行う。
④国・地方自治体は、高齢、障がい、疾病、妊娠などにより、投票所へのアクセスが困難
な人の選挙権行使を保障するため、期日前投票の促進をはかるとともに、郵便投票の対
象者の拡大や巡回投票制度の創設を行う。
⑤国・地方自治体は、障がいのある人がより投票しやすくするために、投票所案内はがき
や投票用紙などの点字化、投票所のバリアフリー化、投票所への移動の保障を行う。
⑥障がいのある人が立候補する際の選挙運動に必要となる手話通訳などの費用について
は、法定選挙費用の上限の弾力化をはかる。
⑦国・地方自治体は、投・開票における利便性と効率性の向上のため、電子投票制度の導
入をはかる。その際は、不正・トラブル防止、機器選定の公平性・透明性の確保、政党
・候補者名の画面表示の公平性の確保などについて必要な措置を講ずる。
⑧投開票の簡素化・効率化、疑問票の減少、障害者の投票参加の拡大などの観点から、投
票方法を自書式から記号式に改める。
⑨船員の選挙権行使を保障するため、現行の洋上投票制度を見直し、指定船舶や対象とす
る選挙の範囲の拡大、立会人条件の緩和をはかる。また、船員も郵便投票制度の対象と
する。
⑩政府は、海外在住者の増加を踏まえ、在外選挙区の設置を検討する。
⑪市区町村選挙管理委員会は、投票率の向上をはかるため、投票者の利便性の観点から、
投票所(期日前投票を含む)を、頻繁に人の往来がある施設に設置する。
(2) 衆参両院および地方の選挙制度について、公平・公正、有権者の権利拡大の観点から制
度改革を進める。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(政 治 改 革)
①国政選挙における「1票の格差」を是正するため、衆議院は小選挙区の「1 人別枠方式」
(注 1) を廃止する。参議院は、比例代表選挙制度の意義、都道府県単位に限定しない
ブロック単位の選挙制度の導入などについて幅広く検討する。
②選挙制度の見直しを行う際は、国会議員の定数についても、削減の方向で見直しの検討
を行う。
③すべての選挙の選挙権・被選挙権と、未成年者の選挙運動禁止の年齢制限を、18 歳以上
へ引き下げる。
④統一地方選挙の投票日については、一定期間経過ののちに再び統一実施となるよう制度
改正を行う。なお当面は、年 2 回行われる国政選挙の補欠選挙投票日との期日統一をは
かる。
⑤立候補者の上限年齢の設定については、各政党での自主的な設定の促進をはかる。
⑥成年後見制度における成年被後見人に対する選挙権・被選挙権の制限を見直す。
⑦永住外国人への地方参政権の付与については、国民的な議論と合意の上で行う。
⑧被雇用者が公職の候補者となる場合に休暇の取得ができ、議員期間中は休職のできる立
候補休暇・公職休職制度を創設する。
⑨公務員が、勤務する自治体以外の議員を兼職できることとし、立候補も在職したまま休
職して行えるようにする。
⑩親などと同じ選挙区から立候補する、いわゆる「世襲候補者」について、立候補や後援
会の継承に関する制限のあり方を検討する。
( 注 1) 1 人別枠方式
衆 議 院 小 選 挙 区 300 議 席 に つ い て 、 は じ め に 各 都 道 府 県 に 1 議 席 を 配 分
した上で、残り議席を人口比で各都道府県に配分する方式。基礎配分方式。
2.政治資金規正法などを改正し、政治資金に対する規制を実効的にするとともに、その
全容について公開と透明性の確保を徹底する。
(1) 政治資金規正法を改正し、 政治家の政治資金の収支については、政治家個人、選挙運
動費用、資金管理団体の政治資金をひとつに統合し、報告義務を課す。
(2) 収支報告は、政治家個人のものもすべて公開することとし、国民が直接その内容にアク
セスして、検証やデータの利用が行えるようにする。
(3) 収支報告書に政治家の署名を義務づけるなど、政治資金の収支への政治家本人の責任
を明確化するとともに、虚偽記載に対する罰則を強化する。
(4) 政治資金の金銭収受は、現金での収受を禁止し、受け手が指定した金融機関の口座を
通じてのみ行うこととする。また、収入も監査の対象とする。
(5) 政党から政治家個人への政治資金の支出は、すべて資金管理団体経由とする。
(6) 国会議員関係政治団体を親族が引き継ぐことを禁止し、解散時の資産は政党や国庫な
どに帰属させる法律を制定する。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(政 治 改 革)
(7) 企業・団体献金については廃止の方向で見直す。なお、政党本部と各都道府県組織以外
への企業・団体献金は直ちに禁止する。
(8) 政治参加の手段としての個人献金を促進するため、税額控除の充実をはかるとともに、
献金手続の簡素化やクレジットカードによる献金制度の導入など、献金しやすい環境の
整備をはかる。
(9) 政治資金や選挙に関する法令遵守の徹底のための独立した専門機関を設置し、選挙運
動の解釈や指導、政治資金収支報告の公開や疑義の調査などを行うものとする。
(10)国会議員在任中の株取引を禁止するとともに、親族・秘書などの名義の株取引は公開し、
違反に対する国会議員本人の責任を明確にする。また、地位利用による収賄の禁止・処罰
について、あっせん利得罪の適用拡大など、実効ある改正を行う。
(11)資産公開については、政治任用された首相補佐官などについても議員と同様の資産公開
を行う。また、知事・都道府県議会議員に加え、市町村長も公開を義務化する。
(12)政治献金の抜け道にもなっている、政党や政治団体の機関誌紙への「広告料」について
は、年間の上限額を定める。
3.政治主導の政党政治を確立するとともに、充実した法案審議と住民の意見反映が行わ
れる国会・地方議会へと改革する。
(1) 内閣は、形骸化した閣議を実質的な政策議論・調整の場とするとともに、少数の閣僚の
論議の場である閣僚委員会を活用することで、閣僚の協議と合意形成の過程を整備し、内
閣の政策決定の強化と合理化をはかる。
(2) 国会法を改正し、通常国会の会期を大幅に延長して国会を実質的に通年化する。また
「会期不継続の原則」を見直し、審議未了案件は後会に自動継続させ、衆議院の任期満
了・解散をもって廃案とする。
(3) 国会の法案審議について、実効性のあるプロセスを確保し、野党による対案提出を促進
するためにも、委員会で「逐条審議」を導入する。
(4)党首討論を適宜開催するとともに、国家基本政策委員会に各大臣と野党の相当職にある
議員との「大臣討論」を創設する。
(5) 議院運営委員会に内閣の代表者を出席させるなど、内閣に対して閣法の審議日程につ
いての公式な協議関与権を保障する。
(6) 国会議員各人の立法責任が明確になるよう、衆議院本会議についても、電子投票による
押しボタン式表決制を導入し、投票結果を公開する。
(7) 議院運営について、議長が主宰し中立的に裁定する運営機関を創設する。
(8) 衆参の議決が異なる場合に設置する両院協議会を実質的な協議機関として機能させる
ため、協議委員を会派人員比で構成するなどの見直しを行う。
(9) 衆参両院は、現在HPで公開されている国会中継を、より一層国民が利用しやすくなる
よう、専用の衛星チャンネルをつくるなど、国会審議を国民にひらかれたものとする。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(政 治 改 革)
(10)政党交付金は、与党のように官僚組織を活用できない野党の立法活動などを支えるた
め、野党に割り増して配分する。
(11)女性の政治への積極的参画に向けて、政党による女性議員の発掘・育成を支援するため
に、女性議員の割合に応じた政党交付金の傾斜配分などの制度支援を行う。また、議員の
仕事と家庭の両立を支える環境整備を行う。
(12)議員の政策立案能力の向上のため、政策秘書などスタッフ制度の確立をはかる。
(13)政党政治の確立、議員立法の活性化に向けて、両院の法制局、常任委員会調査室および
国会図書館等の立法スタッフの強化をはかる。また、情報収集において国政調査権を積極
的に活用する。
(14)地方議会は、勤労者が議員を兼務できる環境を整備するとともに、勤労者、女性、学生
等広く住民の傍聴を促進するため、夜間・休日開催などの多様な開催形態を検討する。ま
た、首長による地域住民対話集会を開催する。
(15)地方議会は、さらなる地方分権社会の実現のため、地方議会の利害調整、政策形成、監
視機関の各機能の充実に向けて、地方議会改革をめざす「議会基本条例」の制定に取り組
む。また、地方議会における「議員立法」推進のための制度や議会事務局の調査機能の拡
充など、「二元代表制 (注 2) 」の機能充実のため環境整備を行う。
(注 2) 二元代表制 首長と議会議員をともに住民が直接選挙で選ぶ制度
<実現に向けた取り組み>
(1) 連合は、公職選挙法や政治資金規正法など政治改革関連法規の改正、内閣や国会の運営、
党規に関する事項の改革を政府と与野党に求める。また、選挙の管理・運営に関する改善
が地方で円滑に進むよう、総務省など関係府省に助言の徹底などを要請する。
(2) 政策要求を実現しうる政権の維持・強化に向け、連合全体で国政・地方選挙に取り組み、
あわせて政治改革の実現に向けた世論喚起もはかる。
(3) 構成組織は、政治教育や政治活動の実践を通じて、組合員の政治に対する関心を高め、
政治への参加を促していく。連合は、構成組織が取り組む政治教育や政治活動を積極的に
支援する。
(4) 地方連合会は、政党や市民団体と連携を強化しつつ議会基本条例の制定などに取り組み、
地方議会改革を促進する。また、地方自治体や選挙管理委員会に、投票率向上や利便性改
善に関する諸項目の実現を要請する。
- 182 -
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
行 政 ・ 司 法 改 革
<背景と考え方>
(1)
国と地方の行財政、公務員制度、公共サービスのあり方が問われている。グローバル化、
少子高齢化、格差拡大等、経済・社会が大きく変化する中で、社会のニーズに対応できる
行政サービスが求められている。そのため民主党政権は、国家戦略室、行政刷新会議、地
域主権戦略会議を設け、行政の抜本改革に取り組んでいるが、これらの改革はまだ緒につ
いたばかりである。政府は国民の安心・安全のためのセーフティネットと公共サービスの
質・水準の確保を前提に、行政改革を積極的かつ強力に進める必要である。
(2) 行政刷新会議のもとで行われた国の一般会計、特別会計、独立行政法人・政府系公益法
人等の事業仕分けは、税金がどのように使われているのか具体的にわかりやすく問題提起
することで、自民党長期政権から引き継いだ「負の遺産」を明らかにし、予算について国
民の関心を高めるきっかけとなった。一方、事業仕分けの法的裏付けや評価結果の取り扱
い方等が曖昧であり、直接的には個別予算の削減に終始した一面があることも否めない。
国民の目線から行財政の現状をチェックし、根本的な見直しに結びつけていく、本来の目
的に立ち返った取り組みが必要である。
(3) 日本社会は、様々な局面で格差の拡大・固定化、将来不安の増大に直面しており、公共
サービスの果たすべき役割は重要である。公共サービスは、社会的セーフティネットの基
盤であり、サービスの質や水準を確保し、誰もが一様にアクセスできるものとすべきであ
る。多様化する社会のニーズに適切に応えるためには、公務員だけではなく、政府・地方
自治体、民間事業者、NPO等それぞれの特性を生かせる形でサービスを提供する「新し
い公共」を進めるべきである。
(4) 「新しい公共」をめざすうえで重要なのが、人と組織の改革である。国・地方自治体は、
公務員による不祥事に対する国民の怒り・不信感を真摯に受けとめ、不祥事の温床除去は
もちろんのこと、説明責任を果たし、国民の信頼を取り戻す真剣な取り組みを急がなけれ
ばならない。公務員に対する国民の信頼回復のため、民間の労使関係に基本的に準拠した
労使関係を確立した上で、早期勧奨退職慣行による「天下り」の原則廃止、キャリア・シ
ステムを前提とした管理職への年功序列型昇進制度の解消、議会や住民によるチェック機
能強化等を推進する必要がある。
(5) 公務員制度改革については、2010 年 6 月にILO理事会が、日本の公務員の労働基本権
問題について、6 度目となる勧告を含む結社の自由委員会第 357 次報告を採択し、総会で
は日本政府を代表して細川律夫厚生労働副大臣が「労働基本権を付与する方向で検討を加
速し、来年の通常国会に法案を提出できるよう努力」することを表明した。現在、政府は
国家公務員制度改革基本法基づき、公務員の労働基本権について「自律的労使関係制度を
措置する」ための関連法案の準備をしている。今回の改革によって、国民の信頼に応える
透明で公正な公務員制度を確立すべきである。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
(6) 民主党政権は、「地域主権改革」を改革の 1 丁目 1 番地と位置づけ、その具体化にむけ
て、地域主権戦略会議を設置した。2010 年 6 月には「地域主権戦略大綱」を閣議決定し、
その中で①義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大、②基礎自治体への権限移譲、
③国の出先機関の原則廃止、④ひも付き補助金の一括交付金化の具体的な方向を示した。
地方分権を進めるための地域主権戦略会議や国と地方の協議の場の設置などを定める地方
主権改革関連法案の早期成立をはじめ、地方分権の着実な推進が求められる。
(7) 総人件費改革や官民競争入札(市場化テスト)、独立行政法人の見直しにあたっては、
サービスの質や雇用労働条件の確保、事務・事業のスリム化・効率化が求められる。また、
規制改革にあたっては、行き過ぎた規制緩和にならないよう、雇用のセーフティネット、
国民への安心・安全を保障する必要がある。
(8) 2001 年、21 世紀の日本を支える司法の姿を示した司法制度改革審議会最終意見書が公
表され、司法制度改革が始まった。改革の各論は司法制度改革審議会に引き続き設置さ
れた司法制度改革推進本部の下の各検討会で詳細な議論が行われ、労使が参加し個別労働
紛争をあつかう「労働審判制度」、刑事裁判への国民参加である「裁判員制度」、司法試
験や修習のあり方を抜本的に変えた法科大学院制度による法律家養成システム、行政に対
する司法審査の機能を強化して国民の権利救済を実効的に保障する行政訴訟改革等が実行
に移された。
これらの改革は、司法制度改革審議会意見書における、①国民の期待に応える司法制度
とする、②司法制度を支える法曹のあり方を改革する、③国民基盤を確立する、という「三
つの柱」を支柱に行われた。今後は、これらの改革が司法制度改革意見書の理念に忠実に
推進され、またこの理念を実現するものとなるよう、国民が監視していくことが重要であ
る。
<要求の項目>
1.政府は、生活と雇用の安定・向上に責任を持ち、労働組合も参加した平等で公正・透明かつ
効率的な中央省庁行政システムを推進する。
(1) 内閣の責任に基づく健全な政治主導による中央省庁行政を行う。
①財政運営の基本、予算編成の基本方針等わが国経済の運営に関する重要な政策について
は、内閣総理大臣の閣議発議権を最大限活用し、閣議を活性化させるとともに内閣機能
を強化し、内閣総理大臣の責任による行政を確立するためにも、国家戦略室(局)の機
能発揮をはかる。
②内閣総理大臣を補佐する内閣官房の補佐機能の充実、内閣機能の強化、大臣の補佐機構
の拡充のため、政治任用の一層の拡大と制度化を進める。
③省庁間調整における政治の指導性を確保するため、適宜、関係閣僚会議を設置し、調整
困難な案件は閣議により調整を行う等、合意形成のための政治調整を活性化させる。
(2) 国の重要施策の策定に労働組合代表を含む民間有識者の意見を反映させるとともに、審
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
議会等におけるジェンダーバランス(男女比率)に配慮する。
①国の重要施策に関する政府の諮問会議・審議会には労働組合代表や消費者代表を参加さ
せる。また、雇用労働政策、社会保障政策については、三者構成で行われている関係審
議会と十分な調整をはかる。
②行政における政策の企画立案に国民や働く者の意見を反映させるため、審議会等に産業
界、専門家、学識経験者等に加え、消費者や労働組合代表を必ず参加させる。特に、国
民生活や雇用労働に重要な影響を及ぼす政策分野の審議会については、労働者、生活者
の意見を重視し、労働組合代表を複数含める。
③審議会等はそのもとに設置される分科会等も含め原則公開とし、インターネットによる
中継の実施や、誰もが傍聴できるようにする。議事録等は「電子政府の総合窓口」等に
より迅速に開示する。
④雇用労働に関する審議を行う審議会等は、ILO第 144 号条約( 注 1)の趣旨を尊重し、
公労使の三者構成とする。また、社会保障に関する審議を行う審議会等は、労働組合代
表を含む被保険者委員の数を増やし、真の三者構成とする。
女性の審議会等への参画については、第 3 次男女共同参画計画に基づき、目標の実現
をはかる。
⑤内閣総理大臣の指導性を補佐する内閣官房および各府省に、労働組合を含む民間等から
人材登用を促進するとともに、各府省からの派遣・出向枠の固定化を排除する。
(3) 経済社会の変化に対応して、公共の役割を見直し、政策や予算の優先順位を組み替える
行政刷新の仕組みを整備する。あわせて、公正・透明・客観的な行政評価制度を確立する。
①政府・与党のリーダーシップのもと行政事業レビューの枠組みを強化する。国民の目線
から事務事業を点検し、予算編成等に反映する。行政刷新会議は、各省で行う行政事業
レビューを監視し、必要な対応をはかる。
②立法府に「日本版GAO」(行財政監視評価委員会( 注 2))を設置し、第三者機関と
して行政のチェックを行う。委員会には消費者、労働組合の各代表も参加させるととも
に、ジェンダーバランスに配慮する。また、会計検査院による会計経理の監督等を強化
する。
③上記の行政府・立法府における行政刷新の仕組みに対応して、「政策評価・独立行政法
人評価委員会」や各府省の独立行政法人評価委員会の役割を見直す。
(4) 効率的かつ公正、透明な中央省庁体制を確立する。
①不明確な許認可基準や事前規制等の不透明な裁量型行政を抜本的に見直し、明確で公正
・公平なルールによる事後チェック型行政への転換を進めるとともに、確実な事後チェ
ック体制を確立・強化する。
②公正取引委員会の法執行機能を充実させるよう、審判機能を強化するため委員および事
務局体制の増強をはかる。公正労働基準については、遵守の厳正化のために、労働基準
監督官の員数増加とともに派遣労働、外国人労働に関する監督機能を付与・強化する。
金融機関等に対する市場監視機能を抜本強化するため、証券取引等監視委員会(SES
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
C)に対し、金融庁が同委員会に委任している権限を直接付与し、会計・監査・開示に
関する権限を与える(日本版SEC( 注 3))。
③行政手続法の趣旨の下、透明で公正かつ効率的な行政を推進するとともに、各府省にお
ける縦割り行政を是正するため、行政手続のオンライン化をさらに進めつつ、省庁間に
おける情報の共有化、中央省庁と地方自治体との間の情報システムの単一化(EDI、
Electronic Data Interchange)を導入する。また、中央省庁における事務・権限の肥大
化を排除し、迅速で効率的な行政を行うため、地方自治体への権限委譲とともに、地方
支分部局への権限委任を一層進める。これらの推進にあたっては、個人情報の保護に十
分配慮する。
④法令適用事前確認手続(ノーアクションレター( 注 4))については、過去の照会事例
をデータベース化し閲覧を可能にすること、照会者の個人名については本人が希望する
場合を除いて公開しないこと等、照会者の利便性向上をはかる。
(5) すべての国民が安心していつでも、どこでも国、地方自治体の提供する公共サービスを
受けられ、行政情報に容易にアクセスできる「電子政府」を構築し、国民生活の充実と経
済の活性化につなげる。
①情報公開法を徹底し、行政情報の開示の実効をはかる。
②住民基本台帳ネットワークは、行政機関個人情報保護法の下、不正アクセス、情報の改
ざん・漏洩、災害やシステム上の不備、過失等による情報の消失等を防止するための十
分な情報セキュリティ対策を不断に強化し、安心してオンラインによる行政手続ができ
る体制を整える。
③行政機関個人情報保護法に基づく行政機関における個人情報保護措置の強化を前提とし
て、国と地方自治体の権限を明確にしつつ、国と地方の垣根を越えた行政のワンストッ
プサービスを一層進める。
また、個人情報の不正使用や漏洩、正当な理由のない開示の拒否等については、罰則
をもってこれを防ぐ。情報公開・個人情報保護審査会(注 5)は事務局を含め体制を強化
する。( P193「5.行政における情報公開と個人情報保護を徹底する」参照)
④地方支分部局等の行政機関の統廃合にあたっては、交通アクセスに不利な地域の住民へ
の配慮等、地域事情や「電子政府」構築の進展状況を十分踏まえ、慎重に検討する。
(6) 公共事業の抜本的な見直しによる歳出の効率化、税制改革による歳入の見直し等、「働
くことを軸とする安心社会」の構築に向けた財政構造改革を早期に実施し、健全な財政を
めざす。( P14~「経済政策」P23~「税制改革」参照)
(7) 「男女共同参画社会基本法」「第 3 次男女共同参画基本計画」(内閣府)に基づく施策
を推進する。(P197~「人権・平等政策」参照)
(8) 行政における公益通報者保護制度の状況については、特に市町村の制度の普及が遅れて
おり、改めてその徹底する。
(注 1)ILO第 144 号条約 ~ 国際労働基準の実施を促進するための三者協議に関する条約。国際労働
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
機関の活動に関する事項について、政府、使用者および労働者の代表者の間で効果的な協議を行
うべきとしている。
(注 2)日本版GAO~(General Accounting Office:行財政監視評価委員会)立法府の下に設置し、
国政調査権を持たせた行財政監視評価委員会の通称。参議院、衆議院の決算委員会の機能・組織
を大幅に拡充し、歳入・歳出の全項目や政府関係機関のすべての業務を調査・分析・評価し、そ
の結果を毎年通常国会で報告する。委員は国会議員とし、スタッフは、各分野の専門知識を有す
る者とする。
(注 3) SEC ~ Securities and Exchange Commission の略。米国の証券取引委員会。大統領や連邦議
会から相対的に独立した独立規制機関であり、2,000 人体制という巨大な組織で、インサイダー取
引、株価操作、情報開示違反等証券関連法規違反事件を捜査し告発する権能をもつ。
(注 4) ノーアクションレター ~民間企業等が新たなビジネスを興したり、新商品を販売しようとし
たりする際に、その行為が法令に抵触しない(違法ではない)かどうか、事前に各府省に確認す
る手続。2001 年 6 月から運用開始されている。
(注 5)情報公開・個人情報保護審査会 ~個人情報保護関連法の一つである情報公開・個人情報保護
審査会法により、情報公開審査会を改組する形で設置された。情報公開法、行政機関個人情報保
護法等に係る不服申し立てに関して調査審議する権限を有し、行政庁は原則として審査会に諮問
しなければならない。現在は内閣府(行政刷新)の下におかれているが、新行政不服審査法が施
行された際は、新たに総務省に設置される行政不服審査会に移管され、情報公開・個人情報保護
審査会は廃止される。
2.政府は、民主的で透明な公務員制度改革を進める。
(1) 国民本位の行政を行うため、ILO勧告(注 6)に従って、公務員の労働基本権を保障し、
公正で能率的に職務を遂行でき、職務能力を高められる公務員制度を構築する。
①一般職の公務員には、原則として労働三権を回復し、民間同様、団体交渉を基本とした
給与・勤務条件決定の仕組みを導入する。また、非現業職員にも不当労働行為救済制度
を適用する。
②刑事施設に勤務する職員・消防職員に団結権を認め、労働組合を結成する権利を回復す
る。
③一般職の公務員に対し、労働組合法、労働基準法、労働関係調整法を適用する。また、
労働基本権の付与を踏まえ、雇用保険の適用について検討を行う。
④行政組織方針や国民のニーズに応える行政のあり方等、団体交渉になじまないものにつ
いて、労使が意思疎通を深めるための労使協議制度を設ける。
⑤労働委員会に公務全体を担当する委員を配置し、賃金等の団体交渉が不調に終わった場
合、労働委員会が斡旋、調停、仲裁を行う制度とする。
(2) 内閣主導の行政システムを確立し、官僚主導の縦割り行政を是正する。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
①内閣主導の行政を確立するため、内閣総理大臣および各大臣が直接任命する政治任用職
を設けることとし、その人数を法定する。
②縦割り行政を是正するため、府省ごとに行っている国家公務員の採用・任免は、内閣総
理大臣が行うよう改める。
(3) 労働組合参加による人事処遇基準、人事評価制度による公平、公正な人事処遇制度を構
築する。
①一般の公務員(含む管理職)の人事処遇は、職務・職責に応じて行うものとし、その職
務・職責に対応する処遇基準を労働組合との交渉・協議を通じて定め、適用する。
②人事評価制度の設計や評価基準、その活用のあり方等は、勤務条件事項またはそれに密
接に関わる事項であることから、労使間で交渉・協議するルールとする。
③縦割り行政を廃し、職務・職責を適切に遂行できる人材を配置・育成するため、各府省
間の人事交流、配置転換、関係団体等への出向・派遣に関わるルールを定める。
④公務員の賃金体系については、「職務給」を基本的に維持しながら、過度に年功的とな
っている現行の給与体系を、労使交渉を通じて、より仕事と業績を反映した体系とする。
(4) 民間等の有為・有能な人材を活用したり、公務能率向上をはかり働く意識の多様化に対
応するため、中途採用、任期付採用の拡大や、短時間勤務制度等多様な勤務形態の導入を
行う。また、公務員の一定期間の民間企業派遣については、労働組合との交渉・協議に基
づいて派遣基準を定める。
(5) 国の非常勤職員の任用は、同一労働・同一賃金を基本とした明確な法規定を設け、法制
度の趣旨に則した業務に限定して採用することとする。
(6)
いわゆる「キャリア制度」や「天下り」といった人事慣行については、抜本的に見直す。
①「キャリア制度」を廃止し、管理職への登用についてはこれまでの採用年次に基づく横
並び昇進慣行を改め、「能力・実績による管理職登用の評価基準」を定める。
②幹部公務員の早期勧奨退職慣行を廃止し、複線型人事システムを整備することとし、そ
の有効活用により、定年までの在職を前提とする人事管理を実現する。
③公務員の予算と権限を背景とした民間企業への再就職及び斡旋、いわゆる「天下り」に
ついては禁止とする。国家公務員の再就職支援は、国民の視点を踏まえ、各省の影響が
排除された個々の職員の能力に応じた再就職支援となるよう監視を行う。
④公務員の特殊法人、独立行政法人等への出向について、出向先で退職金を受け取らない
仕組みとする。
(7) 政府の中央人事行政機関について以下のように整備する。
①新たに設置される公務員庁については、政府全体の統一的人事管理および使用者として
の機能を適格に担える権限と責任を有する組織として整備する。
②公務員制度改革にあたっては、公正・中立な人事行政の確保および職員の利益を保護す
る機能を適格に担えるよう担保する組織を設置し、委構成員は、衆・参両院の同意を得
て任命する。
(8) 公務員に対する基本的人権の制限は、公務員としての職責を果たすために必要最小限の
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
範囲にとどめる。
①不法、不当な職務命令を排除する不利益取り扱いの禁止を法定する。
②政治的行為の制限規定について、一般の公務員(除く管理職)は一定条件の政治活動を
行いうるものに改める。
③信用失墜行為に関する服務規定について、公正公平な基準を示す。
(9)
総人件費改革や行政改革の実施により、行政機関・独立行政法人等に働く者の労働条件、
雇用に影響が予想される場合には、必ず事前に関係労働組合との交渉・協議を行い、労働
条件の維持、雇用の確保に万全の対策を講ずる。
(10)公務員倫理法の厳格な適用・実施をはかるとともに、公務員による公益通報を奨励する
等、公務員による行政不祥事の発生を防ぐ。また、改正官製談合防止法を適切に運用し、
談合根絶に向けたさらなる改正や天下り規制の強化を行う。
(11)国家公務員制度改革にあわせ、地方自治を支える基盤としての地方公務員制度改革を行
う。
①ILOにおける国際労働基準に沿い、地方公務員の労働基本権を確立する。
②地方公務員制度は、地方自治体および労使間の自主性・自律性を尊重するものとする。
③地方自治体の臨時・非常勤等職員に関する公務員制度上の位置づけを整理する。また、
パート労働法の趣旨の適用、諸手当支給制限の撤廃など抜本的な見直しを図ると共に、
任期付短時間勤務職員を含めて、労働時間等に応じた常勤職員との均等待遇をはかる。
(注 6)ILO勧告 ~ 2002 年 2 月に連合がILO結社の自由委員会に提訴した日本の公務員制度改革案
件(第 2177 号案件)に対する同委員会の審査報告書が同年 11 月にILO理事会において採択さ
れ、報告書の中で日本政府に対して、労働側の主張を受け容れ、日本の現行公務員制度と政府が
進めようとしている公務員制度改革はILO条約(結社の自由・団結権保護、団結権・団体交渉
権)に違反しており、すべての関係者と全面的で率直な協議が直ちに実施されるよう勧告したも
の。なお、2003 年 6 月、2006 年 3 月、2008 年 6 月、2009 年 6 月、2010 年 6 月にも同案件に関す
る勧告が出されている。
3.政府は、国民生活の維持・向上につながる政府関係法人の改革を進める。
(1) 特殊法人等の改革については、国民へのサービスの水準の低下を招かず、当該職員の雇
用の場を確保しつつ、国民生活の維持・向上につながる改革を行う。
①独立行政法人の整理・見直しにあたっては、労働組合との協議を尽くし、労働条件の維
持、雇用の場の確保に万全の対策を講ずるとともに職員の雇用不安を引き起こさないよ
う、個別具体化法案に職員の雇用確保の対策について明示する。また、国民のための行
政改革を進めるべきであり、セーフティネットを損なうような安易な廃止・統合・移管
・民営化は行わない。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
②独立行政法人、引き続き見直しの検討対象である特殊法人や認可法人については、財務
内容を含め情報公開を徹底し、公正取引や労働法制を遵守しつつ経費の透明化と事務の
効率化を進めるとともに、経営責任の明確化を徹底する。2008 年度に統廃合された政府
系金融機関については、国の関与のあり方や継承する資産等の課題を整理し、当該職員
の雇用に配慮しつつ、新組織への円滑な運営のために必要な措置を講じる。
また、使命を終えたものについては、雇用問題に十分配慮しつつ整理統合等を進める。
加えて関連「ファミリー企業」の整理を進める。
③独立行政法人については、公益性を堅持しつつ、事業運営における責任体制を明確化し
て過度な行政の介入を排除するとともに、独立性、自主性のある経営を進める。また、
透明で利用しやすい事業とすることを目的として「政策評価・独立行政法人評価委員会」
および各省庁に設置されている政策評価に関する委員会に、事業運営等について幅広い
国民の声を反映できる公労使代表、消費者代表および当該労組が参加する仕組みをつく
る。併せて参加にあたりジェンダーバランスに配慮する。これに加え、各法人運営にお
いて、地域で運営協議会を有するところは、当該地域における消費者、労働組合代表の
参加により、その事業についての評価機能を強化させるとともに、中央の評価委員会と
連携させる。
④監督官庁等からの「天下り」については原則禁止し、役員が特殊法人等を数年ごとに渡
り歩き、その都度退職金を受け取るという悪習を排除する。
(2) 郵政事業のあり方の見直しにあたっては、ユニバーサルサービスとして維持すべきサー
ビスのあり方、経済・財政への影響、公正な競争条件の確保、雇用の確保等に十分配慮し、
真に国民の利益に資するようにする。
(3) 公益法人制度改革については、2013 年 11 月までの円滑な完全移行に向けて、法の周知
・理解を促進するとともに、公益性の認定にあたる公益認定等委員会(有識者で構成され
る合議制の機関)の中立性・独立性・透明性を確保する。新たな非営利法人制度に移行し
ない法人については、その実情に応じ、雇用等に十分配慮しつつ、他の法人形態への移行、
法人間の合併、廃止等の審議の迅速性を確保する
4.国と地方は、役割分担を明確にしつつ、地方自治の本旨に合った地方分権を進める。
(1) 国、都道府県、市町村の役割分担を明確にして国と地方との関係を再検討する。「基礎
自治体優先の原則」による行政に転換、地方自治体の事務範囲や公共サービスのメニュー
・水準等について、住民の意思を反映した制度設計が行える仕組みを整備する。その際、
保育、介護、児童養護、障がい者福祉、義務教育など、生存権や生命の安全の確保等、と
りわけ人のとしての尊厳や子どもの成長に深くかかわるサービスについては、国の最低基
準の確保を前提とする。
①国家としての存立に関わる事務や全国的な視野に立った施策、国の責任としてのセーフ
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
ティネット等、国が担うべき事務以外の事務については広く地方自治体が担うべく、地
方自治体の事務に対する国の義務づけを縮小する。
②国の直轄事業は、「全国的な見地から必要とされる基礎的または広域的事業」に限定す
る。国の直轄事業の範囲は法令に明示し、事業ごとの法的根拠の明示を義務づけるとと
もに地方負担のあり方を見直す。それ以外は原則として地方自治体が実施または管理す
るものとする。
③国の直轄事業については、国と地方の事前の協議制度を確立し、事業実施に際して地方
議会の議決を経る等、地方の合意のもとで必要な事業を実施する。
④法定受託事務( 注 7)はできる限り新設しないこととし、現行の法定受託事務について
も適宜見直し、自治事務を拡大する。
⑤地方自治体の自治事務に対する国の是正の要求については、国の関与を出来る限り抑制
するため、発動要件を厳しく限定する。
⑥都道府県と市町村の争いに関わる「自治紛争処理委員」( 注 8)については、独立した
第三者機関としての機能を十分に持たせる。
(2) 地方自治体は、地方議会の活性化に加えて、行政事務手続きの簡素化、行政情報へのア
クセス向上等に取り組むとともに、地方行政の政策決定過程や行政評価への住民参加を促
進させる。
①都道府県、市町村において情報公開条例、行政手続条例、個人情報保護条例、行政評価
条例の制定を促進するとともに、外部監査制度を確実に導入する。また、行政サービス
の効率化、チェック機能等の役割を果たすNPOの活用を進める。
(3) 国は、地方税財源の充実確保に向け、地方分権と地方税財源のバランスのとれた改革を
行う。( P23~「税制改革」参照)
①地方分権の推進状況を継続的に監視するとともに、国と地方の役割分担をふまえ、地方
税財源の改革を進めていく。見直しにあたっては、人や税財源をセットで検討する。
②国と地方の協議の場等を活用し、地方財政計画の策定や地方交付税算定を行う等、決定
プロセスの透明化をはかる。
③国税と地方税の比率については、将来的には少なくとも 50 対 50 となるよう引き続き税
源移譲を進める。
④新型交付税(人口と面積を基準として交付税額を算定)の算定を検討する場合、人口・
面積で算定しがたい行政需要を十分検討し、安易に拡大しない。
⑤公共事業等に係わるひも付き補助金について、一括交付金化をはかる。地方にとって使
い勝手のよい制度となるよう、2011 年度の結果を検証し、仕組み等必要な見直しを行う。
社会保障や義務教育に係わる国庫補助負担金は、一括交付金化の対象としない。
(4) 行財政基盤の強化および地方分権の推進に資する行政体制の確立を進める。
①地方自治体は、地方行政の基盤強化や行財政運営の効率化をはかるとともに、都道府県
をはじめ区域を越える広域的行政課題に対応するため、住民合意のもと、広域連合制度
( 注 9)を活用する。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
②地方自治体は、合併等地域住民に大きな影響を及ぼす事案については、住民投票を活用
してその是非を問う。その際、あらかじめ住民への情報開示を十分に行う。
③政府は、合併特例法における合併市町村議員の在任特例を廃止する。
④国・地方自治体は、道州制について検討する場合には、地方分権改革に関する諸問題に
ついて、自治と統治のバランスや、地方自治体の自立と相互連帯の観点から十分に検討
を行ったうえで、地方自治を実現するための手段・仕組みとして、そのあり方や具体像
について議論を深める。
(5) 地方自治体は、財政情報や財政運営情報の分かりやすい開示を行うとともに、議会審議
や監査の充実、オンブズマンによるチェック等、地方自治体財政の健全性確保に向けた仕
組みを構築する。
①地方自治体の歳出について、歳出に見合った効果・便益があるかどうか、すべての分野
において住民参加による行政評価を徹底して必要性の少ない公共事業は縮小・廃止する
等歳出構造を見直し、効率的な公共サービスの提供を進める。
②地方自治体の財政再建にあたって、国および地方自治体は、それぞれの役割分担や国の
関与について明確にした上で、財政再建団体に陥る前の事前チェックを厳しく行う。ま
た、住民の代表である地方議会は、実効性ある行政監視の実施等の改革を進め( P175~
「政治改革」参照)、地方自治体の行財政運営についてのチェック機能を強化させる。
③実際に再生団体・早期健全化団体となった場合においては、住民生活への過度な影響を
避けるため、住民の暮らしや安全、安心等に直結する住民サービス等の水準確保に十分
配慮する。
(注 7) 法定受託事務 ~国の行政のうち、法令によって地方自治体の機関(知事、市町村長およびその
他の執行機関)に委任された事務を機関委任事務としていたが、2000 年4月に地方分権一括法が
施行され、機関委任事務を廃止し、地方自治体の事務を自治事務と法定受託事務に整理・再編し
た。地方自治体が担う事務は「自治事務」とすることを基本に、国の利害に関係のある事務(国
民の利便性や事務処理の効率性の観点から法律の規定で地方自治体が行うとされている事務)を
「法定受託事務」と称することになった。これにより国の関与が弱められた。最終的に機関委任
事務の約6割が自治事務に、約4割が法定受託事務に再編された。
(注 8)自治紛争処理委員 ~ 地方自治体は、一定の条件を満たす国の関与に不服がある場合、委員に審
査を申し出ることができる制度を国地方係争処理委員会というが、これは都道府県と市町村との
間の紛争処理のための制度。総務大臣は、市町村長その他の市町村の執行機関から都道府県の関
与に不服がある旨の申出を受けたときは、速やかに、自治紛争処理委員を任命し、当該事件をそ
の審査に付さなければならないことになっている。自治紛争処理委員は審査結果をもとに、合議
によって違法・不当か否かの決定、勧告の決定等を行う。審査の申出をした市町村長その他の市
町村の執行機関は、高等裁判所に対し、都道府県の行政庁を被告として、訴えをもって違法な都
道府県の関与の取り消し又は都道府県の不作為の違法の確認を求めることができる。
(注 9) 広域連合制度 ~広域連合は、権限委譲等の分権の受け皿として、また廃棄物処理や地域振興等
- 192 -
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
の広域行政ニーズに対応するために制度化された特別地方公共団体。一部事務組合と異なり国や
都道府県からの権限・事務の委譲も要請でき、広域計画に関する連合長の市町村への勧告等の機
能を持つ。市町村間だけでなく都道府県と市町村、都道府県間等自由な組み合わせができる。広
域連合により、①一般廃棄物処理(市町村事務)と産業廃棄物処理(都道府県事務)、②防災事
務(都道府県)と消防事務(市町村)、③老人ホーム設置認可(都道府県)と市町村の措置事務、
④流域下水道の設置管理(都道府県)と公共下水道の設置管理(市町村)等、一部事務組合では
実施できなかった複合事務を処理することが可能になる。広域連合の議員は、住民か構成自治体
の議会による選挙で、また長は住民か構成自治体の長による投票で選び、リコール等の直接請求
制度もある。
5.国・地方は、行政における情報公開と個人情報保護を徹底する。
(1) 情報公開法に基づき、行政および独立行政法人等の情報公開を積極的かつ迅速に行い、
行政の透明化を進める。
①国民からの情報公開請求に対し、行政機関および独立行政機関等が不開示の決定をする
際には、行政手続法の規定に従い、請求者に対し不開示理由を提示する。
②開示請求の事案を請求先の行政機関や独立行政法人以外に移送する際には、事案がたら
い回しされ、責任の所在が不明確にならないよう、請求者に対し移送の旨を通知するだ
けでなく、その理由を提示する。
③開示請求者、行政機関、独立行政法人等の所在地にかかわらず、情報公開制度の利用に
過重な負担を強いることがないよう、機関や法人の所在地以外への請求窓口の設置を促
進し、電子情報化の推進によりインターネットによる請求手続きを可能とする。
④情報公開・個人情報保護審査会は事務局体制を含め機能強化をはかり、専門性が求めら
れる審査にも効率的かつ適正な対応ができるようにする。
(2) 行政における個人情報の保護の徹底をはかるとともに、個人情報保護法の適正な運用に
向けた行政自らの取組みと行政指導を行う。
①個人情報保護関連法を改正し、法令等に基づく場合を除き社会的差別を助長するセンシ
ティブ情報の収集を禁止する。また、保護法を盾にした不祥事隠しを防止するため、実
効性のある対策を講じる。
②行政機関・独立行政法人等の個人情報保護法については、職員若しくは職員であった者
等の対象に加え、組織的行為も対象とし罰則を規定する。
③国、地方自治体は、個人情報取扱事業者等における実効ある個人情報保護を支援すると
ともに、個人情報保護状況の把握に努める。
④事業者に対し、法・ガイドライン等に基づき、適切な指導・支援を行う。ただし、就業
規則等の改定を求める場合は、労使の十分な協議が前提であることに留意する。
⑤情報公開・個人情報審査会については、民間事業者に対する勧告・命令機能も付加し、
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
個人による不服申し立てにも応ずる窓口を設置する。
⑥事業者に対する監督、指導等に関して、事業分野によって内容に過度な差異が生じない
よう連携・調整を行う。特に高度な安全管理措置が求められている分野については、現
場の従業員に過剰な負荷がかかることによって、かえって消費者の利便性を損なうこと
のないように、守るべき基準の明確化と不断の見直しを通じて実効性を確保する。
(3) 住民基本台帳の閲覧制度については、個人情報保護の観点から、行政機関が利用する場
合等公共性が認められる場合を除き、原則非公開とする。
(4) すべての地方自治体において貸借対照表を作成する等、会計制度の透明化を進め、財政
状況について情報公開を徹底する。
6.政府は、雇用創出、地域活性化につながる規制改革を進めるとともに、談合を排除し、公正
労働と質の高いサービスを確保できる入札改革を行う。その際、雇用安定のセーフティネット
に配慮し、公正ルールを確立する。
(1)
規制改革については、 先端技術等競争力や新たな雇用・産業の機会創出につながる分
野を優先して規制を見直す。ただし、国民・消費者の安全・健康の確保、環境保全、公正
労働基準の維持等「社会の質」に関わる規制は強化する。規制改革の推進にあたっては、
不公正取引の排除、反競争的行為による独占の禁止、雇用の安定等、公正な競争ルールの
確立をはかる。
規制改革の検討にあたっては、消費者・労働者等様々な立場の代表が参加できる仕組み
をつくり公正な審議を行う。検討作業では、各省庁が行う審議会とも十分に調整する。審
議過程を積極的に公開し、国民が納得できる改革案を提示する。また、行き過ぎた規制改
革が起きないよう、規制改革された結果に関する検証システムを構築する。
(2) 官民競争入札(市場化テスト( 注 10))の事業選定にあたっては、国民に保障されるべ
き公共サービスの質・水準を明示した上で、「官民競争入札等監理委員会」において慎重
に検討する。
(3) 構造改革特区は、地方自治体が住民や労働組合等の幅広い意見を必ず聞き入れた上で構
築し、真に雇用創出や地域活性化に資するよう進める。特区の特例措置が、労働条件の悪
化、企業倒産・失業増等の弊害をもたらす場合は、国・地方自治体が責任をもってこれを
廃止し、復旧させる。
(4) 公契約において、公正労働基準の確保、環境や福祉、男女平等参画、安全衛生等社会的
価値も併せて評価する総合評価方式の導入を促進する。その際は明確な評価基準を設定す
る。( P33~「産業政策」参照 )
(5) 公契約に関する基本法を制定し、そのなかで公正労働基準と労働関係法の遵守、社会保
険の全面適用等を公契約の基準とする。法整備をはかることにより、ILO第 94 号条約の
批准をはかる。また、違反企業に対する発注の取り消しや違約金の納付制度等のシステム
づくりを進める。(P33~「産業政策」参照 )併せて、発注側(国や地方自治体等)について
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
も、改正官製談合防止法の適切な運用や公務員の天下り規制強化等によって、談合等を生
み出さないしくみを強化する。( P187「2.民主的で透明な公務員制度改革を進める」参照 )
(注 10) 官民競争入札(市場化テスト)~ある公共サービスについて、所管する行政機関と民間とが
競争入札を行い、サービス内容や費用、効率面で優れたほうが、そのサービスを実施する仕組み。
2006 年 5 月に公共サービス改革基本法(市場化テスト法)が国会で成立し、同年 7 月より施行さ
れた。市場化テストの本格導入により、2007 年度中には、「人材銀行」での職業紹介サービス、
「私のしごと館」での職業体験、国民年金保険料収納等の7事業が民間事業者により実施される。
今後も対象事業は増える見通し。
7.司法制度改革を着実に推進する。
(1) 司法制度改革審議会意見書の理念を実現する司法制度改革が今後も推進されるよう、平
成 21 年以降開催されていない「司法制度改革実施推進会議」を再開させる。
(2) 裁判員制度の国民への定着を促進する。
①裁判員制度への国民の理解を促進するための取り組みを、学校や企業、地域において引
き続き行う。
②裁判員に選ばれた国民が裁判に参加しやすい環境を整備する。特に、各企業が「裁判員
休暇」を有給で創設するよう啓発活動を推進する。
③スタート後の裁判員制度に関するフォローアップを行い、必要に応じて制度・運用等の
改善を行う。
(3) 強引な取り調べによる冤罪を防止するための必要な措置を講じる。その際は、捜査・摘
発能力を維持させつつ、透明性の向上、供述内容の保護をはかるものとする。
(4) 「法テラス」(司法支援センター( 注 13))が利用者本位の運営となるよう、業務状況
のフォローアップと適時見直しを行う。
(5) 裁判官、検察官、弁護士の法曹人材の質・量(数)を十分に確保する。法科大学院は設
置目的に沿って高度な専門教育を実施し質の高い人材を送り出すことを確保しながら、年
間 3,000 人の目標を確実に達成する。
(6) 法律文言の見直しや訴訟手続きを簡易なものに改善する。また、司法のしくみや働き全
般に関する司法教育を学校教育や社会人教育においても充実させる。
(7) 労働事件を扱う司法制度を充実させる。(P56~「雇用・労働政策」参照)
①労働事件に、労使の専門家が参加する「労働参審制」を全地方裁判所に導入する。なお、
参審員は労使団体から選出された者を裁判所が任命し、裁判官と同じ評決権を持たせる。
②労働関係訴訟の専門性確保の観点から、主要な高等裁判所に、職業裁判官 1 名と労使団
体の推薦による「労働裁判官」(仮称)2 名の計 3 名により事件処理にあたる「労働高
裁」(仮称)を創設する。
- 195 -
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(行政・司法改革)
(8) 民法(債権法)改正にあたっては、労働契約や労働関係をめぐる紛争への影響も十分に
検討し、労働者の権利を保障する。
(注 13) 法テラス ~ 独立行政法人。地方裁判所本庁所在地(全国 50 カ所)に地方事務所を持ち、紛争
解決に役立つ法律情報や紛争解決機関の情報の無料紹介、民事法律扶助、犯罪被害者支援等、国
民に対して法律に関連するサービスの提供を行う。
<実現に向けた取り組み>
(1) 政府の各種審議会等への参加、意見公募手続(パブリックコメント)制度の活用等を通
じて労働組合代表として積極的に発言し、連合意見の反映に取り組む。また、規制改革・
民間開放については、弊害が発生した場合には直ちに是正を求める。
(2) 主体的で特色ある地方分権社会づくりに向け、地方連合会の政策担当者の交流会を行い、
地域における政策の取り組み事例を紹介し合う等、地方連合会における主体的な政策要求
実現運動を強化する。
(3) 司法制度改革の具体化を確実なものとするため、法務省や裁判所等関係諸機関に対する
要請等、さまざまな機会をとらえて意見反映を行うとともに、関係法令の改正等を扱う法
制審議会をはじめとする審議会に対し、対応を強化する。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(人権・平等政策)
人 権 ・ 平 等 政 策
<背景と考え方>
(1) 人種、民族、宗教、肌の色、性別、年齢、疾病、障害、門地、性的指向等による人権侵
害はいまだに続いている。
(2) 日本国憲法第 13 条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由および幸福
追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上
で、最大の尊重を必要とする」と規定。国は人権の尊重を国政上の最重要課題として扱う
ことが要求されている。一方で、人権侵害の救済を目的とする公的「人権救済機関」の設
置については 2010 年に中間報告が出されたものの、いまだ検討段階である。そのため、公
権力による人権侵害、私人間における人権侵害のいずれに対しても、十分かつ迅速な解決
と救済は保障されていない。
(3) 2003 年 9 月の「人権擁護法案」廃案以降、自公政権下で議論の進展はみられず、2005 年
に提出された民主党案も審議に入れず廃案となった。政権交代後、民主党はマニフェスト
実現にむけた取り組みの一環として、2010 年 4 月に党内で「人権政策推進議員連盟」を発
足、同年 6 月には千葉法務大臣より「新たな人権救済機関の設置について(中間報告)」
が提示された。
(4) 2008 年 6 月、北朝鮮は拉致問題の解決に向けた全面的な調査の実施を約束したが、いま
だ具体的行動をとっていない。このような状況を受け、日本政府は 2010 年 4 月に北朝鮮籍
船舶の入港禁止等の措置を実施したほか、同年 10 月に拉致対策本部を一新し、拉致問題解
決に向け総合的な対策を行っている。一方、2011 年 1 月現在、政府が認定している北朝鮮
による日本人拉致被害者 17 名のうち、帰国者はわずか 5 名に留まっている。
(5) 2010 年 12 月、 政府の第 3 次 男女共 同参画 基本計画 が策定 され、 その中 に第 9 分野
として 「女 性に 対す るあら ゆる 暴力 の根 絶」が 盛り込 まれ てい る。女 性に 対す る暴 力
は最大の 人権侵 害であ る。2009 年 4 月~ 2010 年 3 月に 配偶者 暴力相 談支援 センタ ーに
寄せられ た相談 件数は 約 7.3 万件 となっ ている 。女性に 対する 暴力の 根絶を めざし 、
第 3 次基 本計画 に示さ れた施 策を確 実に実 行す ることが 重要で ある。
(6) 政 府の 犯罪対 策閣 僚会 議にお ける 「児童 ポ ルノ排 除総合 対策 」に よると 、児 童ポル
ノ事犯 は、 検挙 件数 ・被害 児童 数い ずれ も増加 傾向に ある 。児 童ポル ノは 、児 童の 性
的搾取 ・性 的虐 待の 記録で あり 、児 童権 利条約 でも児 童の 権利 を踏み にじ るも ので あ
るとさ れて いる 。国 境を越 えて 取り 組む べき世 界的な 課題 とな ってい るが 、日 本は 児
童ポルノ 等への 取り組 みが不 十分で あると 国連 から指摘 されて いる。
性の 商品化 や暴力 、児童 の人権 の冒と くを 許さない 取組み が必要 である 。
- 197 -
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(人権・平等政策)
<要求の項目>
1.人権侵害を廃絶するため、人権侵害への救済制度を確立するとともに、就職差別などの
差別を許さない社会づくりを推進する。
(1) 人権侵害に対する十分かつ迅速な解決と救済を目的とする「人権侵害救済法(仮称)」
の制定を推進する。
(2) 人権侵害からの救済を目的とする人権救済機関(人権委員会)として、国に「中央人権
委員会」、都道府県と政令指定都市に「地方人権委員会」を設置する。
①「中央人権委員会」は国家行政組織法第 3 条に基づくいわゆる「3 条委員会」として内
閣府に設置する。また「地方人権委員会」の窓口は市町村とする。
②上記「人権委員会」の委員と事務局は、その権限・責務・組織・活動の独立性・多様性
・民主性を求めた「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則」に則したものとする。
a) 委員は法曹関係者、学識経験者、NGO/NPOの推薦者、人権問題・差別問題に精
通した人物などをもって構成する。
b) 事務局職員は弁護士、国および地方自治体の職員NGO/NPO職員、労働組合関係
者などから採用する。
(3) 就職差別の廃絶へ向け、応募採用の実態把握を行い企業への指導を強化するとともに、
ILO111 号条約を早期に批准する。
(4) 各国政府との連携を強化し国際的な理解を深め、北朝鮮による日本人拉致事件の全面解
決と拉致被害者全員の即時帰国実現をはかる。
2.人権を冒とくする性の商品化や暴力を許さない社会づくりを推進する。
(1) 政府の「第 3 次男女共同参画基本計画」(2010 年 12 月決定)の「第 9 分野
女性に対
するあらゆる暴力の根絶」に記載されている施策を着実に実行する。
(2) 女性に対するあらゆる暴力を根絶するため、義務教育段階での予防教育導入など、周知
・啓発をさらに進める。
(3) 緊急保護命令制度の導入や、保護命令違反に対する罰則強化等、「配偶者からの暴力の
防止及び被害者の保護に関する法律」の見直しを行う。
(4) 配偶者等からの暴力の被害者に対する支援体制の充実を図る。
①全国共通番号の 24 時間ホットラインを 365 日開設する。
②既存の配偶者暴力相談支援センターや民間団体の活用も含め、夜間・休日を問わず一時
保護の受け入れ可能な施設を増やす。
③心理療法担当職員の増員など、一時保護施設の体制を強化する。
④外国人に対する通訳や在留資格手続き等の支援を進める。
⑤既存の民間団体の活用も含め、市町村における配偶者暴力相談支援センターの設置促進
- 198 -
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(人権・平等政策)
を図る。
⑥女性警察職員の増員など関係各機関における女性担当者の増員や、相談担当者に対する
研修実施等、二次的被害の防止を図る。
⑦国・地方自治体は、国民に対して相談支援対策の周知徹底を図る。
(5) 加害者には、適切な更正プログラムを受講させる等、再発防止の体制を確立する。
(6) 政府は、人権擁護の観点から、人身売買(トラフィッキング)について、以下の取り組
みを実施する。(「国際政策」より再掲 )
①「人身取引対策行動計画 2009」に基づき、未然防止策を強化する。
②2008 年 10 月に出された「国連自由権規約委員会」勧告を踏まえ、人権に配慮した被害
者の保護と帰国、再定住までのきめこまかなフォロー体制を構築する。
③被害者支援の強化に向け、民間シェルター等への積極的な支援を行う。
(7) 既存の民間団体の活用も含め、都道府県に配偶者暴力や性犯罪等、女性に対するあらゆ
る暴力の被害者のためのワンストップ支援センターを設置する。また、同センターは、被
害者への対応を中心とした救急医療として、24 時間対応の産婦人科的診療、さらに証拠採
取等も行うこととする。
(8) 性暴力被害者の人権擁護の強化、二次的被害を受けないよう事件の立証のあり方につい
て改善する。また、教職員、警察官、婦人相談員、人権擁護委員、民生委員、児童委員、
家庭裁判所調停員、裁判官等の対応者側に、セクシュアル・ハラスメント、配偶者からの
暴力、つきまとい行為(ストーカー行為)、児童虐待等についての理解を深める研修と最
新の情報提供を行う。
また、性犯罪を非親告罪化して訴追しやすくするよう刑法見直しを検討する。
(9)性的目的での児童ポルノの単純所持禁止を盛り込んだ「児童買春、児童ポルノ禁止法」の
法改正を早期に実現する。法の確実な履行と施設の充実をはかるため、中央
・地方行政
は、子どもの人権に関する相談・一時保護・広報等を行う窓口または支援センター等を設
置する。
(10) 子どもを有害情報(性の商品化、暴力表現等)から保護するために、報道・表現の自由
に留意しつつ、放送・新聞・出版などマスメディアに対して、自主的な規制機関の設置や
機能の充実を強く求め、受け手側から苦情や意見の申し立てが簡便にできる仕組みを提供
させる。
インターネット上の「子どもポルノ」等有害情報を排除する対策を講じ、子どもの商業
的性的搾取に関する取り組みを強化する。「ネット上のいじめ問題」への対策を強化する。
また、子ども自身のメディア・リテラシー( 注 1)向上のための支援を積極的に行う。
( 注 1)メディア・リテラシー ~メディアからもたらされる膨大な情報を、各人が無批判に受け入れ
るのではなく、批判的に読み解く力をつけること。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(人権・平等政策)
<実現に向けた取り組み>
(1) 政府やNGO/NPO等との意見交換を定期的に実施し、人権問題の解決に向けた連携
体制の強化と情報共有に努める。また、意識の啓発と取り組みの周知をはかるため、構成
組織・地方連合会と協力し学習会等を開催する。
(2) 政党との政策協議や組織内議員との協議を通じ、連合の考え方について理解を求め、今
後の政策への意見反映に努める。
(3) 政府の第 3 次男女共同参画基本計画の確実な実行と、「児童買春、児童ポルノ禁止法」
の早期改正に向けて、ユニセフなどと連携した取り組みを進める。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
教
育
政
策
<背景と考え方>
(1) OECD調査(2007 年)によると、日本のGDPに占める教育費の公財政支出の割合(3.3
%)はOECD加盟国中最下位であり、教育費の家計負担の割合(21.7%)は最高水準に
ある。また、日本政策金融公庫の調査によれば、高等学校入学から大学卒業までの一人あ
たりの教育費(1,059 万円)、世帯年収を占める在学費用の割合(37.6%)ともに増加傾
向にあり、家計負担はますます重くなっている。このような環境下において、高校授業料
無償化の実施などの対策を講じているが、国・地方自治体は教育費に関する公的支援を拡
充し、家庭の経済状況の格差が子どもたちの進学機会や学力の格差を生まないよう取り組
みを継続・強化することが求められる。
(2) 文部科学省の調査(2010 年)によると、小・中・高等学校におけるいじめの認知件数(72,778
件)、高等学校における不登校生徒数(51,726 人)、中途退学者数(56,948 人)は減少し
ているものの、依然として深刻な問題である。いじめの根絶や、不登校・中途退学者に対
するセーフティネットを構築し、学ぶ権利を保障することが求められる。
また、特別支援学級・学校に在籍する、障がいのある子どもの数は増加傾向にある。日
本語指導が必要な外国人児童生徒数についても増加傾向にあり、多様な子どもに対する教
育のあり方に関する検討が進められている。国連「障害者の権利に関する条約」に、イン
クルーシブ教育構築の理念が示されているが、障がいの有無や文化・言語の違いなどに関
わらず、多様な子どもが同じ場でともに学ぶ教育を施すための取り組みを継続・強化する
ことが求められる。
(3) 厚生労働省の調査(2010 年)によると、高校卒新入社員のうち 20%弱並びに大学卒新入
社員のうち 10%強が 1 年以内に離職しており、さらには高校卒新入社員のうち 40%以上並
びに大学卒新入社員のうち 30%強が 3 年以内に離職している。若年労働者が自ら離職する
要因の一つには、仕事内容や労働条件などに対する不満や、ワークルールに関する知識不
足などにもとづくケースがあげられ、根底には教育過程において持っていた職業生活に対
する理想と現実との間に様々なギャップが存在することが指摘されている。また、若年層
の失業率や非正規雇用率の改善に向けた取り組みも求められている。中央教育審議会は「今
後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方」を答申(2011 年)したが、国・地方
自治体は「教育の場から労働の場への円滑な接続」の実現に向けて、勤労観・職業観など
を養うための教育を継続・強化することが求められる。
(4) 核家族化や保護者の長時間労働の増加をはじめとした家庭を取り巻く様々な環境の変
化、都市化や地域のつながりの希薄化などを背景に、基本的な生活習慣や社会のマナー・
ルールなどを身につける教育力の低下が指摘されている。国・地方自治体は、身近な地域
において子育てサポーターなどで構成する「家庭教育支援チーム」を設置し、地域全体で
家庭教育を支えていく基盤の形成を促進しているが、学校・家庭・地域・企業・団体・行
-201-
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
政が一体となった、すべての子どもの教育力を高めるための取り組みや、ワーク・ライフ
・バランスの実現に向けた取り組みを継続・強化することが求められる。
(5) 文部科学省の調査(2010 年)によると、2009 年度に精神疾患で休職している公立学校教
員は 17 年連続で増加している。家庭からの過大な要求への対応や煩雑な事務などによる教
員の長時間労働など、複数の原因が絡み合っていると指摘されている。また、2009 年に教
員免許更新制が導入されたが、文部科学省は 2010 年 8~9 月の時点で対象教員の 6%が免
許更新に必要な講習を受講・終了しておらず、2011 年 3 月末に 5,100 人を超える教員の免
許更新が行われないとの見積を発表している。国・地方自治体は、これらをはじめとした
教職員を取り巻く質・量両面における課題を踏まえ、教職員へのサポートと条件整備を通
じて、教育の質の維持・向上を図ることが求められる。
文部科学省の調査(2010 年)によると、小・中学校施設の耐震化率は 73.3%であり、継
続的に耐震化への改修を進めている。また、現在、学習指導要領改訂、社会状況の変化な
どを踏まえた、今後の学校施設整備のあり方に関する検討が進められている。国・地方自
治体は、安全な学校施設の整備を図ることを基礎に、教育の質の向上、家庭・地域との連
携、環境面への配慮などの観点も含めた施設の整備を図る必要がある。
(6) OECD-PISAの調査(2009 年)によると 15 歳児の読解力・数学的リテラシー・
科学的リテラシーの 3 分野すべてにおいて、わが国は国際的に見て上位グループにあり、
文部科学省は「学力は改善傾向にある」と評価している。一方で、同調査からは上位層と
下位層の学力格差の改善が見られず、学力の底上げ・格差是正や教育の質の面において依
然として課題があるといえる。
2008 年に改訂された「学習指導要領」は、「生きる力」(知・徳・体のバランスのとれ
た力)を育むことを理念に、基礎的・基本的な知識・技能の習得、思考力・判断力・表現
力等の育成を重視する教育を推進することとしており、2013 年度の全面実施に向け 2009
年度から段階的に実施している。また、2011 年度から小学校 1 年生の 35 人学級導入およ
び必要な教職員の増員を実施するなど、教育内容・体制の整備を進めている。これらの制
度改定による教育内容や学校現場への影響を注視していく必要がある。
(7) 「新成長戦略」では、世界をリードするグリーン・イノベーション(環境エネルギー分
野革新)やライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)等を支えるプラットフォーム
の一つに「科学・技術・情報通信立国」を掲げている。また、それを担う人材育成のため
に、大学改革などの必要性を謳っている。中央教育審議会においては、教育の質の保証と
向上、機能別分化と大学間の連携、教育研究の充実のための組織・経営の基盤強化などの
観点から、大学・大学院教育改革に関する検討が進められている。
急激な少子高齢化、都市化、グローバル化といった環境下において、様々な分野におい
て将来の日本・世界を支える厚みのある人材層を形成するためには、多様な学習機会の保
障・拡大を推進する、生涯学習という観点からとらえる必要がある。
(8) 子どもたちの未来を左右する教育政策は、希望と安心の社会を構築するための最重要課
題の一つであり、慎重かつ真摯な国民的議論と合意形成が求められる。
-202-
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
連合は「教育が未来を創る―連合・教育改革 12 の提言―」を踏まえ、子どもたちを地域
全体で支えるコミュニティの再生や、労働時間の短縮を通じたワーク・ライフ・バランス
社会の実現などを通じて、豊かな教育環境の実現をめざしていくことが求められる。
<要求の項目>
1.教育における機会の均等を保障し、格差を是正するための施策を拡充するとともに、多
様な子どもが学ぶ教育環境を整備する。
(1) 家庭の経済状況の格差が教育の格差を生まないよう、教育費に関する公的支援の拡充な
どを通じて環境を整備する。
①国・地方自治体は、義務教育の根幹である国庫負担制度を維持する。また、学習指導上
必要な教材を無償支給とし、教育の機会均等を保障する。
②地方自治体は、就学援助金制度を維持・拡充する。また、援助が必要な家庭に漏れがな
いよう準要保護者(生活保護法)への援助基準を明確化する。
③国・地方自治体は、義務教育終了後の学生に対する公的奨学金制度を充実する。
a)世帯収入や学業成績に関係なく、希望に応じて貸与する。
b)貸与奨学金は全面的に無利子とする。
c)水準を、一定程度の生活費まで保障できるように改善する。
d)意欲・学力等の一定の基準を満たしながら、世帯収入が一定以下の学生に対する、無
償給付型奨学金制度を創設する。
④国・地方自治体は、保護者の失業や大幅な収入減などにより、就学が困難となった学生
に対して、授業料の一部を補填するなどの支援を拡充する。
⑤国・地方自治体は、小学校就学前の子どもが育つ環境が、保護者の就労や経済状況など
によって異なることはない保育・教育環境を確保する。
(2) 学校からいじめを一掃するための取り組み を推進す る。また、不登校の子どもや虐待を
受けた子どもの学ぶ権利を保障する。
①教育委員会・学校は、いじめの未然防止・早期発見・早期対策のための対応および環境
整備を行う。また、発生件数の把握・公表を行う。
a)子どもの相談相手にもなる養護教諭を、各学校に複数配置するとともに、スクールカ
ウンセラーをすべての小・中・高等学校に常勤配置する。また、必要に応じてスクー
ルカウンセラーを児童館・放課後児童クラブ(学童保育)などへの配置を行う。
b)市町村単位でスクールソーシャルワーカーの配置を行い、学校と連携して子どもの豊
かな育ちをサポートする体制を構築する。
c)パソコン・携帯などを利用した「ネットいじめ」の深刻化を受け、情報リテラシーの
醸成などの防止対策を強化する。
②国・地方自治体は、不登校児童・生徒、中途退学者に対する、学びやケアの充実などの
環境整備を行う。
-203-
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
a)中学校卒業程度認定試験・高校卒業程度認定試験制度の活用を通じて、広く進学など
の機会を保障する。
b)学習保障・学び直しの場でもある定時制・通信制高校への支援を強化する。
c)フリースクールや通信制高校で、一定の条件を満たす施設などに対しては、行政、専
門家、保護者、市民などの代表を含む第三者機関の認定のもとで、助成金による財政
支援を行う。
d)フリースクールにおいて、教員免許を有する教員が一定数以上を対象に教授する場合
は、中学校卒業程度認定試験の一部免除を行う。
e)引きこもり状態の子どもに対しては、対面指導に代わるインターネットやテレビ・ラ
ジオなどを活用した学習支援とともに、保護者への社会的な支援を行う。
③教育委員会・学校は、保護者による虐待の早期発見・防止に向け、児童相談所との連携
を強める。
(3) 障がい の ある 子 ども や 、異 な る文 化 ・言 語 を背 景 とし た 子ど も など が、 普 通学 校に
在籍 し、 教育 の場 で排 除さ れず にニ ーズ に合 っ た教 育を 受け られ る「 イン クル ーシ ブ
教育」を 推進す る。
①国・地方自治体は、障がいのある子どもの教育環境を整備する。
a)いじめが発生しないよう教員が適切な指導を行い、通常の学級と特別支援の学級との
弾力的な交流をはかる。
b)児童・生徒の障がいの程度に応じたきめ細かい対応を行うため、通常学級を含めた教
職員の増員や予算の拡充、十分な研修機会を提供するなどの条件整備を行う。
c)特別支援で必要となる教材を、教員の意見を反映して開発を進め、普及をはかる。
d)就学先に つい ては、 本人 ・保 護者 の選 択を原 則とし 、障 がい の程度 、教 育的 ニー
ズ、専 門家の 意見な どを 参考に 、総合 的な 観点 から本 人・保 護者と 学校 が合意 形
成をはか る。
e)障がい者教育には、就労、雇用を通じた自立につながる内容を組み込む。
②国・地方自治体は、異なる文化・言語を背景にした子どもの教育環境を整備する。
a)教員の指導体制および指導力の充実による、留学生および外国人児童・生徒の受け入
れ態勢の強化、また、帰国児童・生徒の入学・編入などの条件を整備・拡充する。
b)日本に居住する外国人の子どもの教育の権利と機会を確保するため、日本語教育の支
援、母国語教育の支援、および外国人学校への運営補助を自治体レベルで行う。
c)インターナショナルスクールや民族学校等の各種学校などで、当該国が本国と同様の
教育を行っていると認定した学校、または日本国内とほぼ同様の教育を行っている学
校については、日本の小・中・高等学校の終了・卒業者と同様の転入学・卒業資格を
認める。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
2.勤労観・職業観を養い、教育の場から労働の場への円滑な接続を実現するための社会教
育・労働教育を推進する。
(1) 幼児期から高等教育段階までのすべての教育課程で「労働の尊厳」を深く理解し行動す
るための教育を行い、子どもの成長段階に応じた勤労観・職業観を養う。
①学校は、「働くことの意義」、「働く者の権利・義務(ディーセントワーク、ワークル
ール)」、「ワーク・ライフ・バランス」などを理解するためのカリキュラムを実施する。
a)「働くことの意義」を学ぶ授業時間を確保する。特に「労働の尊厳」を深く理解すると
ともに、働くことを通じて社会に貢献できることを学ぶ機会を充実する。
b)ILO憲章、日本国憲法や労働関係法にもとづく、「働く者の権利・義務(ディーセン
トワーク、ワークルール)」について学ぶ機会を確保する。
c)健康で働くための諸制度、労働安全の確保の大切さ、「ワーク・ライフ・バランス」
の必要性などについて学ぶ機会を確保する。
d)労働組合の意義や、果たしている役割などについて学ぶ機会を確保する。
②学校は、労働組合、企業、NPO等各種団体と連携し、勤労観・職業観を養うための社
会体験や労働体験の場を積極的に提供する。
a)職場見学や労働体験・インターンシップなどを通じて多様な労働の現場に触れ、「働
くことの意義」ついて学ぶ機会を充実する。
b)「ものづくり教育」や、公共職業能力開発施設での「工作教室」、「技能塾」などを通じ
て、「ものづくり」の大切さについて学ぶ機会を充実する。
(2) 自立した社会人として働くために必要な知識・技能・能力や、進路選択力を高めるため
に、子どもの成長段階に応じた実践的な教育を行う。
①学校は、自立した社会人としての基本的な知識・意識を身につけるための教育を充実す
る。
a)国民の権利・義務である参政権・生存権をはじめ、社会のマナーやルール、生活設計
や経済的自立に必要な「社会保障」、「税」などに関する知識を学ぶ機会を確保する。
b) 「環境」、「食」、「農業」、「資源・エネルギー」、「ICT」、「消費行動」な
どに関する知識を学ぶ機会を確保する。
②学校は、地域の産業界などと連携し、職業能力や進路選択力を高めるための実践的な教
育を充実する。また、そのための環境を整備する。
a)労働体験、インターンシップなどの推進のために、学校、地域、企業などの連携を強
化するしくみや、インターンシップ期間の単位認定など、制度面の拡充を推進する。
b)地域の産業界などにおける人材を、講師やキャリア・アドバイザーとして活用するた
めのしくみづくりを推進する。
c)キャリア・コンサルタントと連携し、本人の希望・意思を尊重した進路指導を進める。
(3) 多様な人材が労働の場で活躍するための、社会教育・労働教育の充実と社会的な環境整
備を推進する。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
①国・地方自治体は、男女比率の偏りがある職業における男女比の是正を積極的に推進す
るため、学校教育、職業能力開発、職業紹介、男女均等取り扱いなどの関連する行政の
連携を進める。
②地方自治体は、学生や不登校生徒、フリーターなどの青少年が多様な文化に触れるとと
もに、職業体験・訓練や多様な学びを通じて実社会とふれあうことができる「青少年文
化・職業体験センター(仮称)」などを設置する。
3.地域に根ざした社会的教育基盤を整備し、家庭・学校・地域が一体となって子育て・教
育を推進する。
(1) 保護者が子どもの成長段階に応じて、基本的な生活習慣や社会のマナー・ルールなどを
身につける子育て・家庭教育を実践するために、「親教育」を推進し、そのための環境整備
を推進する。
①国・地方自治体は、地域子育て支援拠点事業を拡充し、保護者からの相談と子どもの「心
のケア」の双方に対応するための環境・設備を、専門機関・専門家と連携して整備する。
a)地域の子育て支援情報の収集・提供、子育てに関する専門的支援を行う拠点(センタ
ー)の設置を推進する。
b)児童館や学校の余裕教室などを活用して、保護者が集う「保護者学級」を定期的に開催
する。
c)常設の相談窓口の設置を推進する。
②企業は、保護者の教育への参画を後押しするために、職場風土・制度面の整備・拡充を
行う。
a)長時間労働や単身赴任の削減・縮小を進める。また、「保護者学級」や就学説明会、地
域の教育活動に保護者が参加する場合の「子育て・教育休暇(仮称)」を制度化する。
b)保護者の「ワーク・ライフ・バランス」の実現につながる職場風土・制度面の環境整備
を推進する。
(2) 地域コミュニティの拠点として、「開かれた学校」づくりなど、学校・保護者・地域の
コミュニケーションの充実につながる環境・インフラ整備を推進する。
①地方自治体は、学校単位に、教職員、保護者、地域住民の代表などが、学校運営や協力
のあり方に関する協議をする、「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」、
「学校評議員会」などの設置を推進する。また、事務職員の増員など学校の事務体制を
充実する。
②地方自治体は、教育委員会および学校単位に、学校運営に参加・協力・支援できる個人、
団体・企業などで構成する「学校協力員制度(仮称)」を導入する。
③地方自治体は、学校が地域コミュニティの拠点としての機能を発揮するための設備の改
善を推進する。
a)環境を考慮し、ユニバーサルデザイン化を進める。また、耐震化を進めるとともに、
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
災害時の避難場所として災害対応型のトイレや水栓、避難生活に必要な備蓄品を備え
る。
b)地域住民との交流を意識した多機能化・複合施設化を進める。設計・計画段階から教
職員や子ども、保護者、地域住民などの意向が反映された地域住民合意の学校施設を
めざす。
c)地域の特性を生かした学校農園や学校林を整備し、遊びの場や総合学習などに活用す
る。
d)校庭の芝生化は、目的、用途や保守管理手法を明確化したうえで推進する。
④地方自治体は、夏・冬休みのほか、体験活動や保護者とのふれあいなどを重視した「子
どもの休暇制度(仮称)」を創設するなど、家庭・地域の教育機能が発揮できるよう環
境整備を進める。
(3) 学校と地域が連携し、地域に根ざした社会教育が有機的にはかられる環境整備を推進す
る。
①地方自治体 は、公 立小 ・中学 校の学 校選 択制 度を導 入する 場合、 保護 者・地 域住民
の意向を 尊重す る。なお 、既に 実施さ れてい る 自治体・学 校の状 況を把 握し、 学校
間格差の 拡大や 、地域 コミュ ニティ の脆弱 化な どが発生 しない ように 進める 。
②地方自治体は、地域で守られてきた個性豊かな行事や民俗・芸能など伝統文化の継承・
発展をはかる。地域の文化・芸術拠点である美術館・博物館と学校・社会教育機関など
の連携を強める。
(4) 地域において、子どもが安全かつ健全に成長するための環境整備を推進する。
①地方自治体は、安全管理体制を確立するため、学校警備員などの配置を進める。また、
放課後に子どもが安全に過ごせる「放課後子ども教室」などの設置を推進する。
②学校・家庭・地域・行政が一体となり、通学路の安全ネットワークづくりを進めるとと
もに、登下校時の安全確保に向けた施策を推進する。
③地方自治体は、自然の中で子どもたちが自ら考え、工夫して遊び方を学べる施設や、災
害時の避難場所も兼ねた「空き地」を地域に作る。
(5) 地方自治体は、児童(子ども)の権利条約を地域社会に根付かせていくため、「子どもの
権利条例(仮称)」を制定する。
4.教育行政の機能強化、教職員のやりがい・働きがいの向上を通じて、教育の質的向上を
推進する。
(1) 教育行政を地域住民、保護者および教職員の全体で支えるための機能強化をはかる。
①国は都道府県教育委員会や市区町村教育委員会を、都道府県教育委員会は市区町村教育
委員会を支援し、学校の裁量権を拡大する。また、教職員の人事権や給与負担権限の都
道府県から市区町村への移譲については、全国的な教育格差が生じかねないことから慎
重に検討する。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
②教育委員会は、委員の選任方法、会議の運営改善、情報公開などによる委員会の活性化
を図り、教育、文化、スポーツなどの幅広い分野で地域の特性を活かした、生涯学習時
代にふさわしい教育行政を推進する。
(2) 教職員配置の適正化や、教員免許制度の適切な運用など、指導体制の強化を通じて教育
の質的向上をはかる。
①国・地方自治体は、教職員の採用において、総合的な評価による開かれた採用方式をシ
ステム化し、恣意的な判断が入る余地をなくす。選考基準・試験問題と解答・配点など
を明らかにするとともに、基本的に受験者への開示を行う。
②国は、総額裁量制(注 1) にもとづく教職員の給与・配置について、教育予算の増額を前
提に、運用実績を踏まえて地方自治体の裁量を拡大する。
③国・地方自治体は、教員が子どもと向き合う時間の確保、きめ細かい教育を実施するた
めに、少人数学級制や複数担任制を推進する。まずは 35 人学級の対象学年の拡大を進め、
必要な教職員数の確保を行う。
④国・地方自治体は、小学校高学年における教科担任枠を拡大し、教員の専門性を活かし
た指導体制の整備を促進する。
(3) 教職員に対する研修やフォローアップを推進し、教職員の指導力およびやりがいの向上
を通じて教育の質的向上をはかる。
①国・地方自治体は、教職員研修を充実し、本人の希望や適性に応じて目標を持ったキャ
リア形成を進める。その際、採用時の国籍や年齢制限の撤廃、企業やNPOなどでの外
部研修の充実、管理職型、専門職型等のキャリアの複線化、短時間勤務制度の充実など、
条件を整備する。
②国・地方自治体は、「学習指導要領」の段階的な実施に際し、教職員の理解を深めると
ともに、授業時間数増加や授業内容・指導方法の変更などに対応できるよう十分な条件
整備を行う。
③教員免許更新制度については、運用にあたって個々の教員の再学習および気づきの機会
とする。画一的な講習受講や、免許状失効、教員の負担などの課題について、必要な見
直しを行う。
④国・地方自治体は、指導不適切な教員への適切な対応を行う。
a)適格性を判断する場合の評価項目・要素・基準などを明確にして公開する。
b)第三者機関の設置などを通じて、公平性・納得性・透明性のある多面的な評価を行う。
c)評価が不満な場合、不服審査の申し立てが行えるようにする。
d)本人の意思・希望を尊重し、配置後の職種などを選択できるようにする。
⑤カウンセリング機能を充実させるなど、教職員に対するメンタルヘルス対策を強化する。
(4) 国・地方自治体は、「学歴社会」から「学習歴社会」への転換をめざし、入試制度を思考力
・判断力・表現力等の「学力の質」を重視する内容に改革する。
(5) 国は、私立学校が日本の公教育で重要な役割を果たしていることを踏まえ、公費助成制
度を拡充するとともに、財務状況などの情報公開を徹底する。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
(6) 小学校就学前の子どもに対するより良い保育・教育環境を確保する。
①国・地方自治体は、現在の保育所と幼稚園の一体化を行う。(P78~「福祉・社会保障政策」
参照)
a)幼保一体化を進めるにあたっては、福祉的機能(児童虐待対策、親支援、子育て相談
支援機能等)を基盤に据える。
b)保育所と幼稚園の保育・幼児教育の実践を活かしつつ、施設基準・人員配置基準の統
一化、資格の統一化、研修機会の保障等の処遇の統一化などを着実且つ現実的に進め
る。
c)幼保一体化施設への入所方式や価格設定などについて、すべての子どもおよび保護者
への公平な利用を保障する仕組みとする。また、公平な利用を保障するため、市町村
の責務と権限を強化する。
②国・地方自治体は、「認定こども園」の普及のため、財政支援の拡充や二重行政解消など
を行い、保育と幼児教育の総合的な提供を推進する。
(7) 国・地方自治体は、入学式や卒業式で、国旗掲揚・国歌斉唱を強制せず、児童・生徒の
主体的な参画や校旗・校歌、その他建学の精神を象徴するものによって式典を行うことを
保障する。内容は児童・生徒の意向なども取り入れ各学校の判断に委ねる。
(注 1) 総額裁量制 ~ 義務教育費国庫負担金の総額の範囲内で、給与額や教職員配置に関する地方の裁
量を大幅に拡大する制度。
5.責任ある社会人として自立するために必要な、「生きる力」と社会性を育むための基礎
的な教育を推進する。
(1) 子どもの「生きる力」と社会性を育む 18 歳までに、責任ある社会の一員として「自立し
た個人」を確立することを学校教育の目標とし、国の基盤強化に資する教育を推進する。
(2) 子どもの成長段階に応じた、基礎学力向上のための教育を充実する。
①教育委員会・学校は、「学習指導要領」の実施を推進する。
a)カリキュラム編成・授業内容に関する学校の権限を確保し、弾力性のある適用を行う。
b)「学習指導要領」については、一定期間の実施後に適切な検証・評価を行い、必要に
応じて改善のための見直しを行う。
c)授業時間数は、児童・生徒の過重な負担にならないように配慮する。
②教育委員会は、学校の教材選定に関わる権限を拡大する。
a)教科書は、教職員と保護者や地域住民の意見を反映した学校単位の採択を原則とする。
b)採択経過を明らかにし、教科書採択の透明性を確保する。
③国・地方自治体は、「全国学力・学習状況調査」については、学校と生徒間の競争や序
列化につながらないよう慎重に取り扱う。また、実施方法については、教育委員会、並
びに、保護者、教職員の意見を踏まえ、必要に応じた見直しを行う。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
④小学校就学前の子どもが、家庭との連携を図りつつ、基本的な生活習慣・態度、健全な
心身の基礎を培うとともに、学校生活に円滑に移行できるよう、小学校と保育所および
幼稚園が連携し、1 年間、共通のカリキュラム・保育内容とした就学前教育を行う。
(3) 生命・人権・平等の尊重を土台に、社会的な資質・能力・態度を育む教育を進める。
①国・地方自治体は、「自立した個人」としての人格形成に必要な権利・責任関係の意識
を体系的に育てるとともに、あらゆる場を通じて、人権意識を高めるための教育を進め
る。特に、女性、子ども、高齢者、障がい者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HI
V(エイズ)感染者、さらには刑を終えて出所した人々などに対する偏見・差別を解消
するための取り組みを進める。
②国・地方自治体は、男女平等教育のための基本方針を策定し、これに基づいて教育内容
を改善するとともに、教職員や社会教育に携わる者に対する研修を充実させる。またジ
ェンダー(社会的・文化的につくられた性別)平等の視点から、教科書の見直しや教材
開発、「学校の性別で分けない名簿(男女混合名簿)」を進めるとともに、スクールセ
クシュアルハラスメント防止に努める。
③国・地方自治体は、国際化・多文化共生のための教育を推進する。
a)英語その他の外国語教育の充実とともに、留学生および在日外国人児童・生徒などと
の交流を充実する。
b)諸外国の文化などを認識しあい共生できるよう、話し合いや交流の場を設定する。
c)ユネスコその他の国際機関・NPOの活動に関する学習や、近隣諸国との相互理解を
進めるため、対立する意見も含め、現代・近代史にも時間をかけた歴史教育を進める。
④国・地方自治体は、自然災害やそれに伴う事故などから身を守るための防災・減災教育
を推進する。
(4) 子どもの心身の健全な成長を担う教育を充実する。
①学校は、心身の健康保持・増進のための知識・体力の向上を図り、活力ある生活を営む
態度を育てる。
②学校は、性に関する科学的知識や情報を知り、必要なケアを受け、子どもの自らの成長
を保障するうえで重要な性教育の充実をはかる。
③学校は、HIV、性感染症、薬物乱用防止教育を推進するとともに、未成年の喫煙・飲
酒についても防止教育を推進する。
(5) 総合学習の充実をはかり、教科学習への興味や関心につなげる。そのため、総合学習コ
ーディネーター制度などのサポート体制をつくる。
①学校は、社会性や勤労観・職業観等を育むために、総合教育を充実する。
a)社会体験や労働体験、自然体験などの機会を拡充する。
b)地域の伝統文化や文化的遺産などに接する機会を重視する。
c)多民族・多文化との共生やインクルージョンなどの人権意識を高める。
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
6.持続可能な社会やわが国の成長を支える人材を育成するための教育を戦略的に推進す
る。また、そのために必要な教育環境の整備を、生涯教育の視点に立って進める。
(1) 価値観や能力の多様性を認め、社会の成長・発展を担う人材を育成する。
①国・地方自治体は、子どもの成長段階に応じて、わが国の競争力を維持・向上するため
に、国際化・情報化社会における必要な教育を充実する。また、教育・研究施設や、奨
学金等の公的助成制度の充実など、必要な教育環境の整備を推進する。
a)持続可能な社会の基礎となる環境教育を充実する。
b)ものづくりの基礎となる科学技術・理数教育を充実する。
c)情報化社会への対応のためのICT教育を充実する。
d)グローバル社会への対応のための外国語教育を充実する。
②国・地方自治体は、子どもの成長段階に応じて、潜在的な需要を有する成長分野(子育
て、医療・介護、環境、情報通信、農業、林業等)をはじめ、幅広い分野において社会
のニーズをとらえた教育を促進する。
③国・地方自治体は、農業、工業、商業など職業現場のノウハウに関する教育を行う専門
高等学校が、将来のスペシャリストを育成する場であることを重視し、社会状況の変化
や学習ニーズに柔軟に対応できる教育環境を整備する。
④大学・大学院は、国際的な質保障を意識した質の高い高等教育を実践する教育プログラ
ムを確立するとともに、機能別分化ならびに大学間の連携を強化など、教育体制を抜本
的に見直す。
(2) 大学等高等教育機関は、企業・地域との連携を強化し、産学一体となってわが国の成長
を支える厚みのある人材層を戦略的に形成する。
(3) 学生が学習に専念できるよう、新卒採用の会社説明会の開始時期を大学 4 年生の 4 月以
降、面接開始を 8 月以降とする。
(4) 生涯学習(リカレント教育)推進のための環境・体制整備を推進する。
①国は、現行の「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(生涯学習
振興法)」を見直し、国際化・情報化時代にふさわしい、ア)多様な学習機会の保障、イ)能
力・学習成果に対する評価、ウ)生涯学習の普及・啓発と情報提供、エ)国と地方自治体の
責務等の基本理念を明確にした、『生涯学習推進基本法(仮称)』を制定する。
②地方自治体は、住民参加の「地域教育・スポーツ・文化振興基本計画(仮称)」を策定し、
ア)青少年の職業体験の推進、イ)伝統文化・芸能の継承・発展等の文化振興、ウ)国際化や
環境問題などについて具体策を提示し、教育委員会と連携して取り組む。
③大学等高等教育機関は、社会人特別選抜枠の拡大等の編入制度の弾力化、夜間大学院の
拡充、科目等履修制度・研究生制度の活用、通信教育・放送大学の拡充を進め、社会人
の受け入れを促進する。また、公開講座を拡充するとともに、施設の地域開放を進める。
④国・地方自治体は、大学等高等教育機関で学ぶ社会人に対する公的助成制度を充実させ
るとともに、有給教育休暇、教育休職の制度化や時間外労働等を制限するなど、リカレ
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6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
ント教育(社会人が学校で再び学び直しができる教育体制)や生涯学習推進のための支援
を行う。
⑤国・地方自治体は、継続的なキャリア形成を実現するため、社会的に評価するシステム
づくりを進める。
a)国・地方自治体の認可により、職種ごとの社会的資格を創るなど、『日本版マイスタ
ー制度』を導入する。
b)評価基準の設定や教育訓練コースの開発・実施に関しては、労使団体が参加する。
c)資格の認定は、職業団体で構成する第三者機関が行う。
⑥公共職業能力開発施設は、地域の「技術・技能センター」として新たに位置づけ、新規
学卒者、離職・転職者、在職者などへのニーズに即したスキルアップのための機関とす
る。また、インターンシップを通じた企業との連携や高校生の実習の受け入れなど、専
門高校との連携を強めるとともに、ものづくりなどを重視した職業教育を進める。
7.スポーツ・文化芸術振興のための環境を整備する。
(1) 「生涯学習推進基本法(仮称)」にもとづいて、住民参加による「地域教育・スポーツ・
文化振興基本計画(仮称)」を策定し、生涯学習・生涯スポーツを推進する。
①企業・学校は、施設の地域開放を進め、地域との共同利用型への転換を進める。
②地方自治体は、「総合型地域クラブ(仮称)」を設置し、各学校で行っている部活動を地
域に移行する。
③国は、人材を育成するため、アマチュアスポーツの指導者に資格制度を導入する。地方
自治体は、資格を付与した者に対して、スポーツ医学などに関する定期的な研修を行う。
④国は、開催地自治体や生徒・学生に負担となる国民体育大会は廃止する。
a)廃止後のスポーツイベントは、ア)都道府県対抗による総合優勝制度の廃止、イ)全国身
体障害者スポーツ大会との統合など、地域から生涯スポーツを振興・推進することを
基本に検討する。
b)廃止までの開催は、地域の生涯スポーツ振興の視点から抜本的な見直しを進め、ア)国
籍による参加規制の撤廃、イ)競技人口が極端に少ない種目を含む実施種目の見直し、
ウ)国体終了後に遊休化する施設整備の見直し、エ)ブロック持ち回り方式による複数県
による分散開催など、運営の改善・簡素化を進める。運営内容を決定する際の開催自
治体の権限・自由度を高めるため、国体開催基準要領を緩和する。
(2) 子どもたちの文化芸術体験、人材育成、文化財の保存活用などを推進する。
①国・地方自治体は、地域の人々により主体的に文化芸術活動が行われるよう環境を整備
するとともに、各地域の歴史、風土などを反映した特色ある文化芸術の発展に向けた取
り組みを推進する。
-212-
6.民主主義の基盤強化と国民の権利保障
(教 育 政 策)
<実現に向けた取り組み>
(1) 文部科学省や関係省庁、教育委員会、関係団体、政党、経済団体等に対して要請行動な
どを行うとともに、各種審議会や協議会に参画し、連合委員を通じて意見反映を行う。
(2) 地方連合会は、都道府県教育委員会の会議開催や議事録の公開状況など、運営や開催の
実態把握を行い、住民参加の地方教育行政を推し進める。
(3) 地方連合会および構成組織は、「地域で子どもをまもる」取り組みや、「子どもの居場所づ
くり」などの協議会に積極的に参画する。
(4) 地方連合会および構成組織、単位労働組合は、各種の教育機関で、学生・生徒の勤労観
・職業観の形成や、自立した社会人として働くために必要な知識・技能・能力の修得、進
路選択の判断材料に役立つ産業の実態などに関する講座を持てるように働きかける。
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7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
(国 際 政 策)
7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
国
際
政
策
<背景と考え方>
(1) 平和で安定した国際社会は世界の労働者が安心・安全な生活を維持するための前提条件
である。連合は、平和、人権、自由、民主主義、独立を基盤とし、世界中すべての労働者
がディーセントワークを確保できるような「公正で持続可能なグローバル社会の実現」を
めざす。
国連中心主義に立った平和外交の推進、特に核兵器廃絶に向けた核軍縮・不拡散は、世
界平和を希求するうえでも、また被爆国民の立場からも重要課題であり、その必要性を世
界に発信していくことはわが国の使命でもある。
また、地域の平和・安定に向けた近隣諸国との協力体制構築、テロや地域紛争の防止、
領土問題の解決、ビルマなどにおける民主化の推進に向けて、着実な前進を図っていく必
要がある。
(2) 2008 年のリーマンショックに端を発する世界経済危機に対し、2009 年 9 月のG20 ピッ
ツバーグサミットは「質の高い雇用を景気回復の中心に据える」ことを確認した。しかし、
雇用状況の回復を待たずして 2010 年のG20 サミット(カナダ、韓国)の議題は財政再建
策などが中心となり、各国は緊縮財政へと舵をきりはじめている。また、新興国、開発途
上国でも非正規をはじめとする不安定な雇用の増加に著しく偏り、ディーセントワークの
実現からは程遠い状況にある。今回の世界経済危機をもたらした新自由主義的グローバリ
ゼーションと決別し、「公正で持続可能な経済モデル」へのパラダイムシフトを強力に推
し進めることが求められている。その際のキーワードは、ステークホルダーによる社会対
話の促進、所得の公正な分配とディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の
確保、地球環境に配慮したグリーンジョブへの「公正な移行」などである。
ILOは世界的雇用危機に対応するため、2009 年 6 月にグローバル・ジョブズ・パクト
を政労使三者で採択した。新たなグローバルガバナンスの形成が求められる今、ILOの
役割の重要性は益々高まっており、ILOは、G20 においても不可欠の存在として役割を
果たしていくことが期待されている。
(3) WTOのドーハラウンドは、途上国のニーズと関心に重点を置いた持続可能な開発の促
進をテーマに取り上げているが、この数年間は全く進展が無い状況にある。一方でFTA/
EPA、FTAAP、TPPなど二国間、地域間の貿易自由化が急速に進展しつつある。
他方、労働運動にとっての長年の課題である「社会条項の盛り込み」は、WTOにおいて
も、日本がこれまでに締結したFTA/EPAにおいても実現していない。労働者の最低
限の権利と利益を守らず、環境保全に配慮しない経済活動は持続可能でも公正でもない。
そのことをルール化する「社会条項」が、貿易の自由化においても不可欠である。
- 214 -
7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
(国 際 政 策)
2011 年の半ばにはOECD多国籍企業ガイドラインが改定される。多国籍企業における
労使紛争の未然防止に向け、同ガイドラインをILO三者宣言とあわせ、周知・遵守を徹
底することは、政労使がそれぞれに、また連携して取り組むべき重要な課題である。日本
NCP委員会についても、ガイドライン改定における手続き手引きの強化にあわせ、機能
強化が図られる必要がある。
(4) 貧困問題の克服など、国際社会が 2015 年までに達成すべき目標を定めた国連ミレニアム
開発目標(MDGs)について、MDGsレビューサミット(2010 年 9 月)は、進捗状況
を検証し、2015 年に向けた取り組みを議論した。しかしながら、世界経済危機などの影響
で目標達成は益々遠のき、「2015 年までの達成」は不可能な状況にある。国際協調により
安定した財源を得る手法を確立するなど、取り組みの強化が必要になっている。
(5) 国際的な人の移動の増加に伴い、人権擁護などの観点からの外国人に対する支援を強化
していく必要がある。難民の受け入れについては、第三国定住制度、難民認定審査期間の
短縮化が推進されているが、難民認定者数の水準は欧米諸国に比べて著しく低く、日本は
国際的な役割を果たしているとは言えない状況にある。また、難民認定申請中の「保護費」
も十分ではなく、難民への支援制度、生活の自立支援策の充実が必要である。
<要求の項目>
1. 平和・人権を守る外交推進により、くらしの安心・安定・安全を確保する。
(1) 政府は、テロおよび地域・国際紛争を防止し、紛争を平和的に解決するため、以下に取
り組む。
①軍縮に向けた国連機能を強化する。
②人間の安全保障の視点に立った国際協調を進める。
③紛争解決にあたっては、武力の行使および威嚇ではなく、当事者の対話と国際協調によ
る平和解決をめざす。
(2) すべての核兵器の廃絶と未臨界を含む核実験の禁止を求める。
①包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効に向けた取り組みを実施する。
②核兵器用核分裂物質生産禁止条約(カットオフ条約:FMCT)の交渉促進に取り組む。
③2015 年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向け、実効ある合意形成に向けた取
り組みを推進する。
④北朝鮮の核兵器開発放棄を、国連決議と六ヶ国協議の枠組みにより進めるとともに、北
東アジア非核化実現のため非核兵器地帯条約の検討に着手する。
(3) 各国政府との連携を強化し国際的な理解を深め、北朝鮮による日本人拉致事件の全面解
決と拉致被害者全員の即時帰国実現をはかる。
(「人権・平等政策」より再掲)
(4) 日本の固有の領土である北方四島(択捉、国後、歯舞、色丹)の一括返還を実現し、
日ロ平和条約を締結する。
- 215 -
7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
(国 際 政 策)
①「ビザなし交流専用船」を早期建造・運用し、人道支援物資供与事業や北方四島相互訪
問交流事業を従来通りの手続きで継続実施する。
②択捉島に現存する日本建築物である、水産會事務所および紗那郵便局の保存と活用をは
かる。
(5) 日本の固有の領土である竹島の領土問題については、地域の安全確保と安定化をはかり
つつ、周辺諸国の理解を深める。
(6) 在日米軍基地の整理・縮小に向けた取り組みを推進する。
①在日米軍再編に伴う沖縄普天間基地の移転について早期実現をはかり、地域住民の負
担と悪影響を排除する。
②在沖縄米軍の移転実弾演習において、防衛省が約束した地元自治体との協定を遵守し、
住民の安全を確保する。
③移転演習の拡大・固定化を防ぐ。
④基地の整理縮小に際し、基地で働く労働者の雇用・生活に配慮する。
⑤在沖縄米海兵隊のグアム移転に伴う長期に亘る国民の財政負担の軽減をはかる。
(7) 日米地位協定の抜本改定をはかる。
①基地周辺地域の環境保全と原状回復について、米軍への義務付けを求める。
②在日米兵による犯罪に対し、公訴が提起される前の逮捕を可能とするよう改善を求め
る。
(8) 政府は、平和・人権・民主主義が保障された国際社会の実現に向けて、外交的努力を傾
注する。
①ビルマなど、人権や労働者の権利を侵害し地域の安全を脅かしている国に対し、国連な
どの国際機関や関係諸国と連携して、改善につながる措置を講ずる。
2.グローバリゼーションが公正で持続可能な経済・社会構築に向かうようパラダイム転換
をはかり、国際機関や政府間会合の機能強化と社会対話を促進する。
(1) 政府は、国連をはじめとする国際機関やG20などの政府間会合の機能強化をはかり、グ
ローバル化する経済に対する公正なガバナンス確保に一層の役割を果たす。
①国連の経済社会理事会の機能強化をはかる。
②G20雇用労働大臣会合を常設化するとともに、G20雇用作業部会を設置し、そこに社会
的パートナーならびにILOなどの関係国際機関を参加させる。
③グローバルな経済・社会ガバナンスに関する憲章(メルケル憲章)策定について積極的
に関与し、パラダイムシフト推進に寄与する
④APEC、ASEMに「労働フォーラム」を設置する。
⑤IMF(国際通貨基金)、WB(世銀)、ADB(アジア開発銀行)、JBIC(国際
協力銀行)などにおける社会対話を促進するとともに、ディーセントワークを融資条件
にする。
- 216 -
7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
(国 際 政 策)
(2) 政府は、WTOに労働、環境などに関する社会条項を組み込み、WTOを中心とした多
角的自由貿易体制を公正で持続可能なものにする。
①ILOが参加する、貿易、社会開発、労働基準に関する作業部会または常設の作業グル
ープをWTOに設置する。
②WTOのルールに労働者の権利条項を組み込み、これにより各国間で貿易されるすべて
の製品とサービスが、中核的労働基準を順守して製造・提供されることを義務づける。
(3) WTOドーハラウンドについては、当初の趣旨に沿って、開発途上国が独自の産業を育
成することを阻害しない貿易体制を構築する。
①「開発途上国に公正な貿易を保証する真の開発ラウンド」に転換する。
(4) WTO-GATS(サービス貿易に関する一般協定)については、受益者利益を最優先
する。
①情報の提供、社会的側面のアセスメントを前提とした協議を行う。
②とりわけ、水、教育、保健、公共輸送機関などはGATSのもとでの貿易自由化交渉か
ら除外する。
(5) 地域・地域間・二国間・多国間のFTA/EPAの締結にあたっては労働者の権利を保護
するために中核的労働基準遵守条項を組み込む。
①中核的労働基準遵守条項を環境条項とあわせて協定に組み込む。
②交渉の前提となる官民共同研究会に労働組合を参画させる。
(6) IMF、世銀、ADBなどの国際金融機関やJBICの下でのプログラム実施にあたっ
ては、以下の対応を強化する。
①IMF、世銀は緊急融資や構造調整プログラム実施にあたり、労働組合との事前協議を
行うものとし、同様に実施先国政府に対しても労働組合との事前協議を義務づける。
②ADBに労働関係を扱う独自の部門を設置するとともに、職員に対し「中核的労働基準
ハンドブック」を周知させ、中核的労働基準の遵守を推進する。
③国際金融機関が実施する支援やプロジェクトにおいては中核的労働基準の尊重・遵守を
義務づけ、また、その監査は、労働組合を含むステークホルダーと共同で行い、プロジ
ェクト資金により雇用されている労働者への影響の調査を行う。
④JBICが外国政府や外国政府機関などが実施する事業に融資する際は、当該事業にお
ける中核的労働基準の遵守を融資要件とする。
3.中核的労働基準などの尊重・遵守とILO条約批准を促進し、ディーセントワークを実
現する
(1) 政府は、ILO条約の批准を促進する。
①ILO中核 8 条約のうち未批准の 2 条約(105 号、111 号)など、連合が優先的に批准を
求めるILO条約(注 1) を早期に批准する
②そのために政労使協議の加速などの具体的な措置を実施する。
- 217 -
7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
(国 際 政 策)
(2) 政府は、新興国・開発途上国に対して、開発協力を通じた下記の支援を強化する。
①中核的労働基準の批准・遵守や、労働安全衛生対策への支援。
②労使関係分野の人材育成、社会的保護フロア(社会的セーフティネット)拡充などに関
する支援。
(3) 政府は、ILOの実施する下記の活動に対し協力を行う。
①労働における基本的人権の確保、雇用創出、社会保護の拡充、社会対話の推進などに向
けた技術支援活動に対して協力する。
②財政支援も含む技術協力活動に、密接かつ実効的に協力する。
(4) 政府は、ディーセントワーク実現などに向け、また、雇用を中心とした経済回復に向け、
下記の取り組みを行う。
①ILOが提唱するディーセントワーク国内行動計画を策定する。
②政府は、グローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)(注 2) にもとづく政策
を推進する。
(5) 政府は、労働組合や使用者団体が積極的にILO活動に参加できるよう、下記のような
態勢づくりを行う。
①ILO総会などの機関会議における日本語通訳費用の政府負担を拡充する。
(注 1) 連合が優先的に批准を求めるILO条約一覧
条
条約 番号
約
名
採択 年
Ⅰ.
備
批准
考
国数
中核的労働基準
105 号
強制労働の廃止
1957 年
(最優先条約)
169 あらゆる形態の強制労働の廃止を排除する基本的条
約。
111 号
雇用及び職業について
169 人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身、社
1958 年
の差別待遇(最優先条
会的出身他に基づいて行われる全ての雇用及び職業上の
約)
差別を撤廃するよう求める条約。
Ⅱ.
結社の自由
47
151 号
公務における団結権保
1978 年
護及び雇用条件決定の
の参加、紛争処理、政治的権利について規定する官公労働
ための手続き
者の労働基本権回復に不可欠な条約。
Ⅲ.
公務労働における団結権、労働条件決定における労働組合
労働条件
47 号
週 40 労働時間への短縮
14
を達成する。
1935 年
132 号
1970 年
労働者の生活水準低下を伴わずに週 40 時間労働制
年次有給休暇
36
年間最低 3 労働週、うち 2 労働週は非分割を求める
条約。ゆとりのある生活実現のためには重要である。
- 218 -
7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
(国 際 政 策)
140 号
有休教育休暇
34
休暇制度。
1974 年
94 号
1949 年
一般教育、労働組合教育なども対象とする有休教育
公契約における労働条
61
項
公的機関が他の民間会社とある事業に関し契約する
場合の、当該民間企業が雇用する労働者の労働条件
に関する条約。
158 号
1982 年
171 号
使用者の発意による雇
35
用の終了
夜業
使用者は妥当な理由がなければ労働者を解雇できな
い。
11
夜業労働者の健康を保護し、家族的および社会的責
任を果たすことを援助するための措置を義務づける
1990 年
条約。
173 号
使用者の支払不能の場
1992 年
合における労働者債権
19
労働者債権が特権によって優先的に保護されること
を明確にした条約。
の保護
175 号
パートタイム労働
13
等待遇を規定。
1994 年
177 号
在宅形態の労働
7
在宅労働者の労働条件を向上させる政策を策定する
こと、均等待遇の促進することを規定。
1996 年
Ⅳ.
パート労働者に対する社会保障制度や労働条件の均
安全衛生
155 号
労働安全衛生
8
も、条約の批准が必要である。
1981 年
148 号
作業環境
45
空気汚染、騒音および振動など問題のある作業環境
から労働者を保護するための基本的条約。
1977 年
170 号
安全衛生対策の強化、基準の国際化などの観点から
化学物質
17
化学物質の使用による有害な影響から労働者を保護す
るため、有害性の分類評価制度、有害性を示すラベル
1990 年
表示等を義務づけ。
174 号
大規模産業災害の防止
15
危険有害物質を取り扱う大規模危険施設における災害
から、労働者、住民、環境を保護するための国内政策を
1993 年
実施する。
Ⅴ.
社会保障
128 号
障害・老齢・遺族給付
16 障害者、高齢者(65 歳以上)および遺族への給付資格と
1967 年
Ⅵ.
水準に関する条約。
女性雇用
183 号
母性保護
18
改正条約。
2000 年
Ⅶ.
103 号条約(1952 年)の保護規定をさらに強化した
特定産業・業種
137 号
港湾労働における新し
24
常用雇用を奨励し、最低雇用期間および最低収入の
- 219 -
7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
(国 際 政 策)
1973 年
い荷役方法の社会的影
保障を義務づける条約。
響
149 号
1977 年
153 号
1979 年
185 号
看護職員の雇用、労働条
40
件、生活状態
路面運送における労働
件、教育訓練を改善する政策を義務づける条約。
9
時間及び休息期間
船員身分証明書(改正)
住民の健康水準の向上を目的に、看護職員の労働条
4 時間を超える連続運転を禁止するなど、路面運送
における労働・休息時間を規定する条約。
18
108 号条約(1958 年)を改正し、一時上陸や乗下船
等船員の移動について、その円滑化と身分証明書の
2003 年
信頼性の確保を図る。
MLC
2006 年の海事労働(統
2006 年
合)条約
188 号
漁業労働条約
11
68 の海事関連の条約・勧告を統合し、船員の公正な
労働条件の確保や安全の向上等を図る。
1
漁業における労働条件の全般的改善を図る。
2007 年
※批准国数は、ILO全加盟国(183 国)の中で批准している国の数(2011 年 1 月現在)
(注 2) グローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)
2009 年のILO総会で採択され
た文書。雇用を中心とした経済回復に向けて、政労使が取り組むべき基本原則を示している。
4.多国籍企業が社会的責任を果たしていくよう、日系および外資系の多国籍企業に関する
取り組みをより一層強化する。
(1) 政府は、多国籍企業における労使紛争の未然防止のため、以下の取り組みを実施する。
①ILO三者宣言、OECD多国籍企業ガイドラインを遵守するよう、周知を徹底する。
②特に、改定後のOECD多国籍企業ガイドラインについては、政労使による周知徹底を
はかる。
③また、OECD多国籍企業ガイドライン加盟国の在日商工会議所などに対しても周知を
はかる。
(2) 政府は、労使紛争の早期解決に向け、日本NCP委員会をはじめとした日本NCPの機
能を強化する。
①手続き手引きおよびその解説(コメンタリー)の改定にあわせ機能を強化し、実効性を
担保する。
(3) 政府は、責任ある企業活動を奨励し、労使による国際枠組み協定(IFA)の締結を尊
重するとともに、国連グローバルコンパクト登録の取り組みを推奨する。
(4) 政府は、「アジア経済戦略」の実施にあたり、以下の取り組みを実施し、多国籍企業に
おける労使紛争の未然防止と当該国の発展に寄与する。
①アジア諸国におけるソフト面のインフラ整備の一環として「労使関係についての人材育
成」を組み込む。
- 220 -
7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
(国 際 政 策)
5.グローバルにバランスの取れた、持続可能な社会開発に向けた取り組みを推進する。
(1) 政府は、MDGs達成に向けて、取り組みを強化する。
①レビューサミットで表明された「菅コミットメント(保健分野へ 50 億ドル、教育分野へ
35 億ドルを 2011 年から 5 年間で支援)」を確実に実施する。
②ODA(政府開発援助)の量的拡大に努め、「国連が先進諸国に対し目標として求めて
いる、GNI(国民総所得)比 0.7%」に向けた道筋を示す。
(2) 政府は、ODAについて、以下の取り組みを強化する。
①理念・目的・基本原則の確立、手続きの透明性確保、実施体制の強化に向け、ODA基
本法を早期に制定する。
②人間の安全保障を重視し、貧困撲滅、児童労働撲滅、感染症対策や地球環境問題対策な
ど持続的発展に寄与する最適な援助を実施する。
③JILAF、NGOなどの関係機関を主要なODAの実施主体として位置づけ、支援の
規模・内容を抜本的に拡充する。
④ODA事業において、サプライチェーンも含め、中核的労働基準の遵守を徹底する。
⑤ODAを通じて、「社会的保護フロア(社会的セーフティネット)」の構築を推進する。
⑥ビルマなど、国内に深刻な人権問題を抱えている国に対するODAは、使途を人道的支
援に限定し、適切に実施されるようモニタリングを行う。また、国家予算に占める軍事
費比率の高い国に対するODA支援についてはそのあり方を見直す。
(3) 国際レベルで資金の投機的な動きを抑制するため、国際課税制度創設について、早期に
国際合意をはかる。その税収は、貧困撲滅などの財源として活用する。
6.人権擁護など、「国際的な人の移動」の増加にあわせて必要となっている制度を拡充す
る。
(1) 政府は、外国人の人権を守るため、以下の取り組みを行う。
①永住外国人への地方参政権(投票権)付与については、国民的な議論と合意の上で行う。
②外国人の地方公務員としての採用を拡大するとともに、管理職への登用について能力に
応じて対応する。国家公務員についても「公権力を直接行使しない職」など、基準を明
確にした上で採用を拡大する。
③合法的に滞在し、就業している外国人が、滞在の延長、定住、永住などを希望する場合
には、安定的に長期間滞在することを可能とするため、在留許可基準の明確化と手続き
の簡素化をはかる。
④生活分野、労働分野に関する公的支援制度について、外国語文による案内を配布するな
ど、外国人も利用しやすい環境を整備する。
(2) 政府は、人権擁護の観点から、人身売買(トラフィッキング)について、以下の取り組
- 221 -
7.公正で持続可能なグローバル社会の実現
(国 際 政 策)
みを実施する。
①「人身取引対策行動計画 2009」に基づき、未然防止策を強化する。
②2008 年 10 月に出された「国連自由権規約委員会」勧告を踏まえ、人権に配慮した被害
者の保護と帰国、再定住までのきめこまかなフォロー体制を構築する。
③被害者支援の強化に向け、民間シェルターなどへの積極的な支援を行う。
(3) 政府は、人道的見地に立って以下のとおり難民認定制度を運用し、国際社会への責任を
果たす。
①認定基準の客観性、透明性、公平性を確保して適正化をはかる。
②難民認定の受け入れ態勢を整備し、迅速な運用を行う。
③難民認定申請者に対する保護費の拡大など、生活支援を拡充する。
④難民認定者に対する語学訓練や就労支援策を拡充し、自立を促進するとともに、難民認
定者の子どもの教育環境を整備する。
(4) 政府は、国内および関係国の治安改善のため「犯罪人引き渡し条約」の締結あるいは代
理処罰制度の活用を促進する。
(5) 政府は、国際分野における人材育成策を拡充する。
①日本人留学生への奨学金制度を拡充する。
<実現に向けた取り組み>
(1) 国会の関係する委員会の議論をフォローするとともに、政府、政党等と国際政策に関し
て、意見交換を行う。
(2) 外務省や厚生労働省など関係省庁との協議や要請行動等を実施する。
(3) ITUC、GUF、OECD-TUACなどで構成される「グローバルユニオン」の諸
会議への対応や日常的な提携により政策の連携を強める。グローバルユニオンの政策への
理解を広め、その実現につなげるために「グローバルユニオン政策集」等を作成する。
(4) 「グローバルユニオン」との連携のもと、各国際機関や政府間会合に対して働きかけを
強める。
- 222 -
(横断的な項目)男女平等政策
(横断的な項目)男女平等政策
<背景と考え方>
( 1 ) 女性雇用労働者数は2 0 0 9 年には2 , 3 3 2 万人、全雇用労働者の4 2 . 6 % を占めており、女
性労働者は日本経済の成長・発展に欠かせないものとなっている。しかし、雇用形態をみ
ると非正規雇用が1 9 8 5 年に3 2 . 1 % 、 2 0 0 9 年には5 3 . 3 % と なっており、その中でパート
・アルバイトは417万人から903万人と倍以上に増加している。女性の完全失業率は、2 0 1 1
年3 月では4 . 1 % と 厳しい雇用情勢は続いている。非正規雇用から正規雇用への転換、非
正規労働者の処遇改善、均等・均衡待遇の実現が重要である。
女性の勤続年数は、正規労働者は9 . 4 年、非正規労働者は5 . 8 年である。また、民間企業
における女性の管理職は係長相当職で1 1 . 1 % 部長相当職では3 . 1 % 国家公務員では本省
の課長相当職以上は2 . 2 % しかない。勤続年数、職階等の現状を背景に、賃金は、正規労
働者では男性3 3 . 7 4 万円、女性2 4 . 4 8 万円で男女間格差は7 2 . 6 % 全体では男性3 2 . 6 8 万
円、女性2 2 . 8 万円、格差は6 9 . 8 % なっている。男女間賃金格差の解消に向け、募集・採
用、配置・昇進、教育訓練など雇用の全ステージにおける差別禁止の徹底、継続就業率の
向上、同一価値労働同一賃金の原則の確立をはかることが重要である。
(2) 2009年分の「民間給与実態統計調査」(国税庁)から年間の給与所得をみると、いわゆ
る「ワーキングプア」といわれている200万円以下は男性が11%、女性は44.9%と4割以上
である。
また、女性労働者の低賃金、男女間の賃金格差を反映して、2 0 0 8 年の老齢厚生年金受給
平均額は、男性の2 1 2 万円に対し女性は1 2 7 万円、女性受給者の4 9 . 1 % が年間1 2 0 万円以
下である。厚生労働省が2 0 0 8 年に公表した「相対的貧困率」では、高齢単身女性の5割強、
母子世帯の6 割弱が貧困状態にあることが明らかになっている。女性の貧困を防止し固定化
させない施策が喫緊の課題である。
女性労働者の低賃金、男女間賃金格差の解消、非正規雇用から正規雇用への転換、継続
就業率の向上、M字カーブ問題の解消など雇用環境の改善とともに、女性の就業を抑制す
る税・社会保障制度を働き方に中立な制度に改革することが急務になっている。
( 3 ) 男 女 雇 用 機 会 均 等 法 は 、 2 0 0 7 年4 月より改正・施行されている。主な内容は、男女双
方への性差別禁止、間接差別の限定的な禁止、婚姻・妊娠・出産を理由とする不利益取扱
いの禁止、セクシュアル・ハラスメント防止の措置義務化等である。2 0 0 9 年度の都道府県
労働局雇用均等室への相談件数は23,301件であり、セクシュアル・ハラスメントが最も多
く1 1 , 8 9 8 件と全体の5 割を超え、次いで妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いが3 , 6 5 4
件となっている。間接差別については、73件と相談件数が少ない。間接差別の内容が周知
されていないこと、均等法で禁止される間接差別が限定列挙であることに問題があると推
測される。改正均等法施行5 年後の見直し検討に向けて、引き続き改正内容の職場への周
知徹底、点検が重要となっている。
- 223 -
(横断的な項目)男女平等政策
また、2008年4月より改正パートタイム労働法が施行されている。義務化された労働条件
に関する文書の交付等、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの
禁止、通常の労働者への転換など職場への定着状況と、職務内容、人材活用の仕組みや運
用、契約期間による分類が適切かなどの問題点を把握し、法施行(2008年4月)3 年後の見
直しの検討に対応していくことが求められている。
(4) 男女がともに仕事と生活の調和を実現するためには、働き方を見直し、男性も含めた労
働時間の短縮や、仕事と育児や介護等の両立支援に向けた環境整備が不可欠である。
しかし、女性労働者の6 割強が第1 子出産前後で退職していることや、「育休切り」など
育休取得による不利益取扱いも後をたたない。また、2002年からの5年間で家族の介護・看
護のために離転職した労働者は、男性で87,400人、女性が414,700人となっている。さらに、
「6 歳未満の子どもを持つ夫の1 日の家事・育児時間」が60分に満たないこと、男性の育児
休業取得率が1.72%であること、待機児童数が4.6万人を超えていることなど男女がともに
仕事と生活の調和をはかる環境整備は不十分である。
2 0 1 0 年6 月に改正育児・介護休業法が施行され、短時間勤務制度の措置義務化、所定外
労働の免除の義務化、子の看護休暇の拡充、「パパ・ママ育休プラス」、紛争解決の援助
および調停の仕組みの創設等、制度内容は拡充されている。改正法の実効性確保と、男性
の育休取得促進に向けた取り組みが重要となっている。
次世代育成支援対策推進法に基づく仕事と育児に関する「一般事業主行動計画」の策定
状況を見ると、大企業は全体の9 1 . 4 % であるが、2 0 1 1 年4 月から義務化される<1 0 1 人以
上3 0 0 人以下>規模の中小企業では1 0 . 1 % にすぎない。中小企業での行動計画策定の取り
組みを進めなければならない。
(5) 政府は、2010年12月に「第3次男女共同参画基本計画」を閣議決定した。特徴は、経済社
会情勢の変化等に対応し5分野を新たに追加し15重点分野としたこと、国際基準を反映した
こと、2020年に指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とするため、成果目
標を新設したことなどである。
そして、『第1分野
政策・方針決定過程への女性の参画』をはじめ、『第2分野
男女
共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革』では税制・社会保障制度
の見直し、民法改正を求め、『第3分野
男性、子どもにとっての男女共同参画』では男性
の固定的性別役割分担意識の解消をめざしている。『第4分野
雇用等の分野における男女
の均等な機会と待遇の確保』は均等法の履行確保、ポジティブ・アクションの推進による
男女間賃金格差の解消、非正規労働者の雇用環境の整備等を求め、『第9分野
女性に対す
るあらゆる暴力の根絶』をめざしている。各分野について具体的な行動計画が定められて
おり、男女平等社会の実現に向け、計画の確実な実行が重要となっている。
女性に対する暴力は最大の人権侵害である。全国の配偶者暴力相談支援センターへの相
談件数は年間7万件を超えている。被害者の人権確保と救済システムの確立、暴力根絶に向
けた社会的認識の徹底等、DV法の実効性を検証する必要がある。
(6) 国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本政府の報告を審査し、2009年8月に政府
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(横断的な項目)男女平等政策
報告に対する「最終見解」を公表した。「最終見解」では、①女性差別の法的定義がない
こと、②民法における男女差別が解消されていないこと、③職場や政治的・公的活動への
女性参画に関する暫定的特別措置が講じられていないこと、④固定的性別役割分担意識に
基づく態度や意識を解消するための一層の取り組みなどを指摘し、その改善と報告を求め
ている。また、女性差別撤廃条約批准国の個人、団体が条約に定める権利が侵害された時
に通報できる「選択議定書」の批准も強く求めている。「最終見解」で指摘された課題は、
「第3次男女共同参画基本計画」の確実な達成をめざす取り組みを通じて解決されるもので
あり、これらを一体のものとして進めていくことが重要である。
<要求の項目>
1 .雇用の分野における性差別を禁止し、賃金格差の是正、男女の平等を実現する。
(「雇用・労働
政策」より再掲)
( 1 ) 男 女 雇用機会均等法の実効性を確保するため、都道府県労働局・雇用均等室の人員を増
やし、増加傾向にある相談や救済依頼に対し、迅速に対応できる体制を整える。
( 2 ) 男女雇用機会均等法を以下のように見直す。
①法律の名称を「男女雇用平等法」にする。
②法第6条、事業主が、労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはならない事項に、
賃金差別の禁止について加える。
③法第7条(性別以外の事由を要件とする措置)について、以下のように改正する。
a ) 間接差別( 注1)の禁止の基準を、指針による限定列挙から例示列挙(現行3項目はあ
くまで間接差別の一例とし、一方の性に対して合理的な理由がなく不利益を生じさせ
ることを幅広く禁じる)とする。
b)どのようなことが間接差別にあたるか(福利厚生や各種手当ての支給に関する世帯主
要件等)については「指針」で広く示す。
④法第 14 条(事業主に対する国の援助)、第 30 条(公表)のポジティブ・アクション(積極
的改善措置)について、事業主に「行動計画の策定と実行、公表」を義務づける。
⑤法第 11 条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)につい
て、セクシュアル・ハラスメントの定義に「性別役割分担意識に基づく言動」を加える。
⑥差別救済制度を設け、以下のようにする。
a)政府から独立した性差別救済委員会を都道府県単位で設置する。
b)救済の対象は、労働者の募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職
・解雇、賃金その他の労働条件に関する性差別の他、セクシュアル・ハラスメントと
する。
c)救済申し立てを理由とする不利益取扱いを禁止する。
d)差別の合理的根拠を示す証拠およびその裏付け資料の提出義務が事業主にある。
e)資料の提出がない場合、あるいは資料の提出があっても合理的根拠が認められない場
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(横断的な項目)男女平等政策
合には、差別を認定して是正を勧告できるようにする。
f)事業主がこの勧告に従わない場合は刑罰を科す。
⑦差別救済において政府から独立した性差別救済委員会が設置されるまでの間、都道府県
労働局のもとにおかれる均等法に係る紛争調停員会の勧告に従わない企業の企業名を公
表するなどの制裁措置を設ける。
⑧男女雇用機会均等法第 10 条(指針)に基づく「募集および採用並びに配置、昇進および
教育訓練について事業主が適切に対処するための指針」の法違反の判断を雇用管理区分
(同じ区分の男女)ごとに行うことは、差別の温存や差別認定の範囲を狭めること等に
なることから、この部分を削除する。
(3) 男女平等な働き方の基準として「男女労働者の仕事と生活の調和をはかる」ことを法律
の理念に示し、働き方の見直しを進める。
(4) 労働基準法を以下のように改正する。
①労働基準法第 3 条(均等待遇)に「性別」を加える。
②労働基準法第 64 条の 3(危険有害業務の就業制限)に基づく女性労働規則第 2 条第 2 項
に関して、同規則第 2 条 1 項第 13 号の「土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが 5
m以上の地穴における業務」および第 14 号「高さが 5m以上の場所で、墜落により労働
者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務」についても、産後 1 年を経過しな
い女性から申し出があれば就業できないこととする。
( 5 ) 男女間および雇用・就業形態間の賃金格差是正の実現へ向け、日本が批准しているIL
O第 1 0 0 号条約「同一価値労働・同一報酬」の実効性を確保のため、職務評価手法の研究
開発を進める。
(6) 男女の職務分離の改善を進め、男性の多い職務への女性の進出、女性の多い職務への男
性の進出を積極的に推進するために学校教育、職業能力開発、職業紹介、男女均等取り扱
い等の関連する行政の連携を進める。
(7) ILO第183号母性保護条約を早期に批准するため、労働基準法第67条(育児時間)によ
る育児時間中の賃金は100%保障することとする。
(8) 出産手当金については、賃金との併給の場合の限度額を雇用保険法の育児休業給付の限
度である80%(標準報酬日額の80/100)まで引き上げる。
(9) 母体保護のため強制休業となっている産後休業期間については100%所得保障をする。
(10)国内法を整備し、ILO第111号条約(雇用および職業についての差別待遇の禁止)、I
LO第105号条約(強制労働の禁止)、ILO第171号条約(夜業禁止)、ILO第175号条
約(平等なパートタイム労働)、ILO第183号条約(母性保護)の早期批准を行う。
(注1)間接差別 ~
雇用分野における性別に関する間接差別とは、①性別以外の事由とする措置であって、
②他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるもので、③合理的な理由
がないときに講ずることである。
具体的には、男女雇用機会均等法の指針において、以下の3点が間接差別として規定されている。
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(横断的な項目)男女平等政策
a)労働者の募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること
b)コース別雇用管理における「総合職」の労働者の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じ
ることができることを要件とすること
c)労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること
2.パートタイム労働者、有期契約労働者等の均等・均衡処遇の確立、労働条件の向上をは
かる。
( 1 ) すべてのパートタイム労働者の均等・均衡処遇の改善、労働条件の向上に向けて、パー
トタイム労働法を以下のように改正する。
①現行法で4 つに分類されているパートタイム労働者の態様を見直す。
②すべてのパートタイム労働者を対象に、「合理的理由」がある場合を除き、処遇につい
てパートタイム労働者であることを理由とする差別的取扱いを禁止する。
③法第7条(就業規則の作成の手続)について、パートタイム労働者用の就業規則を作成・
変更する場合は、パートタイム労働者の過半数を代表するものから意見を聴取すること
を事業主に義務付ける。
④法第9条(賃金)について、通常の労働者との均衡待遇を義務化する。なお、通勤手当に
ついては通常の労働者と同じとする。
⑤法第11条(福利厚生施設)について、配慮義務の対象となる福利厚生に慶弔見舞金と慶
弔休暇も追加する。
⑥差別的取り扱いの禁止の対象となるパートタイム労働者が希望する場合は、通常の労働
者として優先的に雇用する。
⑦法第13条(待遇の決定に当たって考慮した事項の説明)について、パートタイム労働者
が待遇に関する説明を求めたことを理由とする不利益取扱いを法律で禁止する。
⑧都道府県労働局長の勧告に従わない企業の企業名を公表するなどの制裁措置を設ける。
( 2 ) 労働条件の時間比例を原則とする「短時間公務員制度」等の導入を行い、公務における
臨時職員・非常勤職員の雇用安定と処遇改善をはかる。
(3) 有期労働契約の労働者保護のルールについては、将来的に目指す方向性を見据えつつ、
段階的な整備をはかる。(「有期労働契約に関する連合の考え方」参照 )(「雇用・労働政策より
再掲」)
①有期労働契約の締結には合理的理由を必要とする入り口規制を行う。
②有期労働契約の上限および更新回数について規制する。
③合理的な理由のない差別的取り扱いの禁止など均等・均衡待遇を実現する。
④有期契約労働者に関する雇用保険料についての使用者負担の増額など、使用者にリスク
負担を求める制度とする。
⑤「有期労働契約の締結、更新および雇止めに関する基準」(大臣告示) の法制化をはかる。
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(横断的な項目)男女平等政策
3.男女平等社会実現に向け、男女共同参画社会基本法および「第3 次男女共同参画基本計
画」に基づく施策を推進する。
(1) 「男女共同参画社会基本法」の理念を達成するために以下の施策を推進する。
①第3次男女共同参画基本計画の施策の実施状況を継続的に監視するために、男女共同参画
会議の下に新たに設けられた「監視専門調査会」の権限を強化し実効性を高める。
②「男女共同参画基本法」をあらゆる機会・媒体等を通じ、国民各層に広く周知する。ま
た、基本法(基本計画)の趣旨に沿い、政府は、市町村における基本計画の策定、条例
化に資するよう、情報提供などの支援を行う。
③都道府県の「男女共同参画基本計画」の達成状況を監視し、都道府県に対して勧告する
権限を有する評価委員会を設ける。委員会は、当該地域の労働組合、経済団体、NPO
・NGO、女性団体などで構成する。
(2)「第3次男女共同参画基本計画」を着実に達成する。
①国、地方自治体、公的機関等は、2 0 1 0 年1 2 月閣 議 決 定 し た 「第3次男女共同参画基本
計画」に基づく「社会のあらゆる分野において、2 0 2 0 年までに、指導的地位に女性が占
める割合を30%にする」目標の達成に向けて、ポジティブ・アクションを導入する。
②国は率先してポジティブ・アクションを導入し「本省課室長相当職以上に占める女性の
割合を2015年までに5%とする」成果目標を実現する。都道府県は、本庁課長相当職以上
に占める女性の割合を2015年までに10%を達成する。
③民間部門でも「2020年30%」の目標の周知徹底をはかり、ポジティブ・アクションを導
入するよう、政府は指導する。
④公共調達において、「次世代育成支援対策推進法」に基づく「くるみん」マークの認定
と男性の育児休業取得率が6.5%以上達成を受託企業の評価要件とする。
⑤国は、メディアに関わる業界における女性の参画を拡大するよう働きかける。
⑥国は、個人のライフスタイルの選択に中立的な税・社会保障制度へと見直す。
⑦女性の人権と平等を確保するため、国は、個人通報制度と調査制度を有する女性差別撤
廃条約選択議定書を早期に批准する。
( 3 ) 女性の政治への積極参画をめざし、政党による女性議員の発掘・育成を支援するために、
以下の施策を推進する。(「政治改革」より一部再掲)
①女性議員の割合に応じた政党助成金傾斜配分等の制度的支援を行う。
②女性議員の割合を高めるため、第3次男女共同参画基本計画にもとづき、政府は各政党に
対して、候補者の一定割合を女性に割り当てるクオータ制の導入などポジティブ・アク
ションを働きかける。
③議員活動と家庭の両立を支える環境整備を進める。
( 4 ) 性別に基づく固定観念にとらわれない視点から、公的機関の策定する広報・出版物にお
ける表現は、国の「男女共同参画の視点からの公的広報の手引き」に従うよう周知、徹底
をはかる。また、マスメディアから受ける影響も大きいことから、民間についても準拠す
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(横断的な項目)男女平等政策
るよう指導する。
( 5 ) 男女平等社会実現に向けて、民法を下記のとおり改正する。
① 選択的夫婦別氏制度を導入する。ただし、別氏を選択した夫婦の子の氏については、そ
の出生の際に、父母の協議により、子の称する氏を父又は母いずれかの氏とする。
②相続分与において、婚外子を同等扱いする。
③女性の再婚禁止期間を廃止する。なお、当面は100日に短縮する。
④婚姻年齢を男女とも1 8 歳とする。
⑤親族・扶養義務者の範囲を見直す。
⑥離婚時の財産分与、子どもに対する親の養育費負担を制度化する。
(6) 男女平等の視点に立った学校・社会教育を推進する。(「教育政策」より再掲)
①国・地方自治体は男女平等教育のための基本方針を策定し、これに基づいて教育内容を
改善するとともに、教職員や社会教育に携わる者に対する研修を充実させる。またジェ
ンダー(社会的・文化的につくられた性別)平等の視点から、教科書の見直しや教材開
発、学校の「性別で分けない名簿(男女混合名簿)」を進めるとともに、スクールセク
シュアルハラスメント防止に努める。
②「自立した個人」としての人格形成に必要な権利・責任関係の意識を体系的に育てると
ともに、あらゆる場を通じて、人権意識を高めるための教育を進める。特に、女性、子
ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者、さらには刑
を終えて出所した人々等に対する偏見・差別を解消するための取り組みを進める。
(7) 政府は、 2004 年の年金制度改革によって導入された、14 年連続の保険料引き上げと「マ
クロ経済スライド」を改め、早期に以下の点を柱とした年金制度に抜本改革し、真の皆年
金を確立する。(「福祉・社会保障政策」より再掲)
①基礎年金の「空洞化」を解消し、「皆年金制度」を再構築するため、早期に全額税方式
へ転換する。厚生年金等の被用者年金は、所得比例年金として引き続き保険方式とする。
a)全額税方式に移行するまでの間は、以下の措置を直ちに行う。
ア)2009 年度から実施された基礎年金の国庫負担 1/2 への引き上げについて、その財源
を財政投融資特別会計の積立金、いわゆる「埋蔵金」等で一時的に確保することを
早期に改め、一般財源による確保を求める
イ)年金の受給要件である加入期間 25 年を、諸外国の制度との均衡を考慮しつつ 10 年
程度に短縮し、受給権を拡大する。
ウ)国民年金の空洞化によって発生している未納者、免除者、学生納付特例者の保険料
相当分については、第 1 号および第 2 号被保険者の保険料で補てんするのではなく、
国庫負担でまかなう制度に改める。
エ)パート労働者等の厚生年金への適用拡大、被扶養者認定の年収要件の見直しで、第
3 号被保険者の対象者を縮小する。
②標準的な年金水準は、介護保険その他の負担が増加する今後の老齢期の生計費の基本部
分を担うものとするため、全給付期間を通じ、税・社会保険料を除く手取りベースで現
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(横断的な項目)男女平等政策
役労働者賃金の 50%以上の水準を確保する。
③パート・派遣労働者や中小・個人事業所等のすべての雇用労働者の均等待遇と、年金の
「空洞化」や違法な脱退等を是正するため、すべての雇用労働者が厚生年金に原則適用
とする制度に改める。
a)当面は、適用基準を労働時間要件「2 分の 1(20 時間)以上」、ないし年収要件「65 万
円以上」(給与所得控除の最低保障額)として、いずれかの要件に該当すれば、厚生
年金を適用する。また、5 人未満および未適用業種の事業所についても厚生年金への
強制適用とする。被扶養者の年収要件(第 3 号要件)は 65 万円とする。
b)派遣労働者の厚生年金保険料について、派遣元が納付義務を怠ったときに、派遣先が
補充責任として連帯債務を負うものとする。
④失業中も障害年金や遺族年金等の受給権に結びつく納付要件を確保するため、厚生年金
への「任意継続加入制度」を創設する。
a)継続加入期間の保険料負担は 2 年間を限度に猶予して、再就職後に追加分納する。
b)追納の保険料は、労使分、本人分(給付算定は半額)、免除制度(障害・遺族年金の
対象)との 3 選択制とする。
c)追納期間は猶予期間の 2 倍(4 年)以内とする。
⑤年金制度の一元化にあたっては、以下の点に留意しつつ進める。
a)雇用労働者への厚生年金の完全適用をはかったうえで、2001 年 3 月の閣議決定に基づ
く国家公務員共済年金および地方公務員共済年金の財政単位の一元化の実施を踏ま
え、関係者の合意を得つつ、完全な情報公開のもとで、被用者年金の一元化に向け推
進をはかる。
b)被用者年金一元化にあたっては、厚生年金、共済年金からの拠出が不公平にならない
制度とする。60 歳~65 歳の被用者年金の定額部分(1 階相当分)の給付、および基礎
年金の完全税方式までの間の「基礎年金拠出金」に関わる保険料負担があるため、1986
年以降の加入期間の 2 階部分について各制度が拠出する「被用者年金勘定(仮称)」
から給付を行い、財政単位の一元化をはかる。
( 8 ) 人的諸控除は、原則として所得控除方式から税額控除方式に切り替える。また、社会
保障給付で行うべき控除は社会保障給付に振り替える。(「税制改革」より再掲)
①基礎控除は、基礎税額控除に変える(所得税:3.8 万円
住民税:3.3 万円
②配偶者控除は、扶養税額控除に整理統合する。
③成年扶養控除は、扶養税額控除(所得税:3.8 万円/人
住民税:3.3 万円/人。平均所
得以下に対象を限定、ただし、障害等のため就労し独立した生計を維持することが困難
という特別な事情を有する人を扶養している場合は所得制限を設けずに適用する)に変
える。税収の増加分は、就労支援や子育て支援等の財源とする。
同居特別障害者加算は、障害者福祉手当の増額に振り替える。
④特定扶養控除は、扶養税額控除と教育費税額控除(新設:所得税:2.5 万円/人
住民
税:1.2 万円/人)に分割する。新設する教育費税額控除は、大学、専門学校等に通う
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(横断的な項目)男女平等政策
扶養者がいる場合、所得制限、年齢制限を設けずに適用する。
⑤平均所得(給与所得 400 万円程度)以下の層において、扶養者が扶養から外れる際に生
じる世帯での「手取りの逆転現象」を調整するため、現状の配偶者特別控除に準じた措
置を講じる。
⑥勤労学生控除、老人扶養親族控除(70 歳以上)、同居老親等加算、障害者控除、寡婦・
寡夫控除は税額控除に変える。
4.人間らしい働き方を実現するために、男女が仕事と生活を調和できる環境を整備する。
(1) 労働時間短縮やワーク・ライフ・バランス確保に向けた施策の推進「雇用・労働政策」
より再掲)
<時間外・休日・深夜労働関係>
①時間外労働の法定割増率を時間外 50%、休日労働 100%、深夜労働 50%に引き上げる。
特に、休日労働の割増率は 35%から 50%以上に早期に引き上げる。また、改正労働基準法
第 37 条による月 60 時間超の割増率引き上げについて、中小の適用猶予措置は早期に廃
止する。
②フルタイム労働者のあるべき労働時間として「年間総実労働時間 1,800 時間」など、数
値目標を示す。
③「ワーク・ライフ・バランス憲章」に盛り込まれた「消費者の一人として、サービスを
提供する労働者の働き方に配慮する」との趣旨の周知をはかるなど、深夜化するライフ
スタイルや長時間労働の是正に向けた環境整備を行う。
④時間外労働の「限度基準」の 1 日の限度基準の設定を検討するとともに、多様な勤務形
態などを踏まえつつ、休息時間(勤務間隔)規制の導入に向けた検討を行う。
⑤1 年の限度時間「360 時間」以内の徹底をはかるとともに、仕事と生活のバランスをはか
る観点から、限度時間「150 時間」の法制化のための検討を進める。
⑥「特別条項付き協定」について、労働者の健康を確保した適切な運用がはかられるよう
指導を徹底する。特別条項付き協定を適用する場合の上限時間設定も検討する。
⑦時間外労働の限度基準の適用除外職種、業種、業務の上限時間設定を検討する。特に、
時間外労働限度基準告示中の「工作物の建設等の事業」は削除する。
<休日・休暇関係>
①法定年次有給休暇の最高付与日数を 25 日に引き上げるとともに、最低付与日数 20 日に
引き上げる。
②家族の病気・看護休暇、配偶者出産休暇(5 日間)などの新設をはかる。
③年次有給休暇の取得促進につながる具体的施策の展開や、長期連続休暇の取得、年間休
日確保に向けた施策の整備とその推進をはかる。
(2) 国民のゆとり確保の観点から、国民生活などに欠かせない分野を除き、正月三カ日、特
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(横断的な項目)男女平等政策
に「元日」については、特別な日として休業の制度化をはかる。
(3) 5 月 1 日を国民の祝日とし、4 月 29 日の「昭和の日」から 5 月 5 日の「こどもの日」 ま
でを連休とする「太陽と緑の週」を制定する。
( 4 ) 国 は 、男女がともに仕事と生活を調和できる環境を整備するため、育児・介護休業法を
以下のように改正し、「両立支援法」とする。
①育児・介護休業制度と制度利用による不利益取扱いを禁止について、周知を徹底する。
また、不利益取り扱い禁止の実効性を高めるため、法律に違反した企業について、企業
名を公表し、過料などの罰則を課す。
②実労働時間の短縮をはかるため、時間外労働の規制強化(年間150時間)と年次有給休暇の
取得促進のための措置を講ずる。
③育児・介護休業法第23条に係る指針において、労使協定により短時間勤務制度の適用を
排除できる例として示されている「流れ作業方式による製造業務等」については削除す
る。
④現行の短時間勤務は請求権とする。育児に関する短時間勤務については、子が中学校就
学の始期に達するまで請求できることとする。当面は小学校就学前までとする。
⑤所定外労働の免除は、対象となる子の年齢を3歳までから「中学校就学の始期に達するま
で」へ引き上げる。なお、当面は小学校就学前までとする。
⑥介護休業中の社会保険料の本人負担分を免除する。
⑦有期契約労働者に対する育児・介護休業の適用要件を緩和し、引き続き雇用された期間
が1年以上あれば適用する。
⑧深夜業が免除される者の子の対象年齢は、小学校就学の始期に達するまでから「中学校
就学の始期に達するまで」へ拡大する。
⑨育児・介護を行う者が請求したとき、休日労働・変形労働を免除する措置を設ける。
⑩介護を行う労働者は、請求により所定外労働が免除されることとする。
⑪介護サービスを利用できない場合や看取り介護を行う場合等は、介護休業期間を延長で
きる特例を設ける。
⑫育児・介護休業中の所得保障を60%へ引き上げる。
⑬育児・介護など、多様な労働者のニーズに応じて、フルタイムと転換可能な短時間正社
員制度の導入が進むよう支援を拡充する。
⑭男性の育児休業取得促進に向けて、産後8週以内に男性が20日以上育児休業を取得した場
合、休業中の所得保障が割り増しになる制度を設ける。
(5) 保育所運営費、次世代育成支援対策交付金、放課後児童クラブ運営費、子ども手当、育
児休業給付、出産手当等、次世代育成支援に係わる財源を統合し、「子育て基金」(仮称)
を創設する。(詳細は「福祉・社会保障政策」参照)
( 6 ) 妊娠・出産や育児等を経ながら男女がともに就業継続できる環境の整備に向けて、男女
雇用機会均等法および指針の周知・徹底、育児・介護休業法の周知や制度の充実、企業に
よるワーク・ライフ・バランスの取り組みの促進等、施策の拡充をはかる。
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(横断的な項目)男女平等政策
( 7 ) マザーズハローワークの拡充、求人開拓、能力開発の促進、保育・介護サービスの拡充
等、妊娠・出産・育児、介護等により退職した女性の再就職を支援する施策を行う。
(8)
ひとり親家庭の経済的自立を支援するため、「母子家庭等就業・自立支援センター事業」
を「ひとり親家庭等就業・自立支援センター」へと名称変更し、支援事業の拡充、職業能
力開発支援等、福祉行政と労働行政の連携を強化し、個々の世帯態様に応じた総合的な施
策を行う。
5. す べ て の 子 ど も の 豊 か な 育 ち と 男 女 が 協 力 し な が ら 仕 事 と 子 育 て を 両 立
す る こ と が で き る 社 会 の 実 現 に 向 け 、「 子 育 て 基 金 」( 仮 称 )の 創 設 な ど 、
子 ど も ・ 子 育 て を 社 会 全 体 で 支 え る 仕 組 み を 構 築 す る 。( 「 福 祉 ・ 社 会 保
障政策より再掲」
(1) 国および地方自治体は、子を持つすべての保護者が、ゆとりと責任を持って子育てがで
きるよう、社会的な支援を強化する。
①小学校就学前の子どもの育つ環境が、保護者の就労や経済状況などによって異なること
なく、すべての子どもに対するより良い保育・教育環境を確保するため、現在の保育所
と幼稚園の一体化を行う。
a)幼保一体化を進めるにあたっては、福祉的機能(児童虐待対策、親支援、子育て相談
支援機能など)を基盤に据える。
b)保育所と幼稚園の保育・幼児教育の実践を活かしつつ、施設基準・人員配置基準の統
一化、資格の統一化、研修機会の保障などの処遇の統一化などを着実且つ現実的に進
める。
c)幼保一体化施設への入所方式や価格設定などについて、すべての子どもおよび保護者
への公平な利用保障する仕組みとする。また、公平な利用を保障するため、市区町村
の責務と権限を強化する。
②多様な保育ニーズに応えるため、保育制度の改善・拡充をはかる。
a)大胆な財政投入を行い、保育サービスの量的拡大を早急に実現する。保育所の設置に
あたっては、最低基準を満たすことを前提に、学校の余裕教室の活用等をすすめる。
b)保育料負担を 3 歳未満児ついては原則無料とし、3 歳以上については利用者負担を2
割程度に引き下げるとともに、応能負担を基本とした仕組みを維持する。
c)児童福祉法にある「保育にかける」を保護者が「保育を希望する」とし、「保育を希
望する」すべての子を受け入れるよう保育サービスを拡充する。市区町村の保育に係
わる責任を明確にし、保育の必要性・必要量の認定、入所の優先順位の決定、受け入
れ保育所の入所調整に関する市町村の関与を維持・強化する。また、保育施設の設備
および運営についての国の最低基準は維持・改善する。
d)保育の質の向上及び保育労働者の確保・定着に向け、保育労働者の処遇改善を促進す
る。保育労働者の賃金水準に与える影響を考慮し、保育所運営費の使途制限は維持す
る。
- 233 -
(横断的な項目)男女平等政策
e)乳児保育、延長保育(幼稚園における預かり保育を含む。)、病児保育、夜間保育、
休日保育等の拡充のため、国や都道府県等の財政支援を強化する。また、家庭的保育
事業(「保育ママ」)、ファミリー・サポート・センターの整備も促進する。
f)待機児童解消「先取り」プロジェクトの推進および更なる拡充など、保育所の待機児
童の解消や兄弟姉妹が同保育園に入所できるよう地域ごとの保育ニーズに対応したサ
ービスの拡充を早急にはかる。その際には併せて保育の質の確保のための対策を講じ
ることとする。
g)過疎地の保育について、安定的にサービス提供ができるよう施策を拡充する。
h)インクルーシブの理念を重視し、保育所での障がい児保育を拡充する。
②無認可保育施設について国として安全基準を定め、財政支援を行い、保育環境を改善・
向上する。
③事業所内託児施設への助成金を増額し、支給期間を延長する。
④放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童を解消し、保育環境を向上させるため、次の
措置を講ずる。
a)放課後児童クラブを、児童福祉法第 7 条に定める「児童福祉施設」として位置づける。
b)市区町村の放課後児童クラブの実施責任を明確にし、小学校区に最低1つを早急に整
備する。設置にあたっては、学校の余裕教室を利用するなどして、児童の利便と安全
を考慮する。
c)「放課後児童クラブガイドライン」をもとに、設置・運営基準を設ける。対象者の拡
大や適正規模の実現、サービスの利用保障強化、人材の確保とサービスの質の向上を
実現し、量的拡大をはかっていくために、財源保障を強化する。
d)保育時間の延長、入所要件の弾力化、対象年齢を小学 6 年生までとするなど、地域の
ニーズと実情に応じて多様なサービスの提供を推進する。併せて、障がい児を受け入
れることが可能な体制を整備する。
e)指導員の処遇と研修体制の改善を行う。併せて、保育時間の延長や職員体制の強化の
ため、指導員の常勤化および「放課後児童クラブガイドライン」に則した指導員の確
保をはかる。
f)運営にあたって小学校との連携・協力体制を整える。
g)全児童対象の「放課後子ども教室推進事業」を推進するにあたっては、同事業への一
本化により学童保育を廃止するのではなく、両事業の連携をはかるよう自治体に周知
徹底する。
⑤地域の子育て機能回復の観点から、児童館の運営・活動を拡充するため、開設時間の延
長、日曜開設等への支援を強める。
⑥保護者の育児不安、地域での孤立を解消するために、身近な場所での子育て支援相談や
子育てを支える地域ネットワークづくりを推進するとともに、保護者が適切なサービス
を利用できるよう「子育て支援総合コーディネート事業」を推進する。
(2) 国は、出産、子育てにかかる経済的負担を軽減するため、次の措置を講ずる。
- 234 -
(横断的な項目)男女平等政策
①子育て支援と、安心・安全な出産のため、妊娠・出産に係る費用については、正常分娩
も含めてすべて健康保険の適用(現物給付)とし、現行の出産育児一時金は廃止する。
具体的な診療報酬の設定等に向けて、現在の分娩方法の実態把握や費用内訳を把握し検
証を進める。
②特定不妊治療費助成事業の助成額、回数、期間をさらに拡大し、所得制限を緩和する。
また、特定不妊治療(体外受精および顕微鏡受精)以外の不妊治療に対しても、助成制
度を設ける。
③18 歳に達する日以降最初の 3 月 31 日までの子どもがいる世帯に対し、公的賃貸住宅の
優先入居を行う。
④子ども手当について、次の措置を講ずる。
a)子ども手当は、義務教育終了までの子どもを養育する保護者に対し、所得制限なしで
支給する。なお、所得再分配については、税制などにおいて対応する。
b)子ども手当は、年少扶養控除の廃止等により、児童手当受給時に比して実質手取額が
減少する世帯が生じない額(3 歳未満児1人あたり月額 20,000 円程度、3 歳以上中学
修了までの子ども1人あたり月額 15,000 円程度)を最低限支給する。
c)ども手当は、単年度法による支給ではなく、恒久的な制度として構築する。なお、そ
の財源は総合的な税制改革を実施し確保する。
(3) 国および地方自治体は、以下の措置を講ずる。
a)域における小児医療・救急体制を確実なものとするため、財政支援の拡充等の対策を
早急に講ずる。小児医療機関における病児保育を促進する。
b)児・病後児保育の推進のため、医療機関併設型施設への助成拡充や、医療機関と保育
所および幼保一体化施設などとの連携強化をはかる。同時に、保育所などにおいて、
安静室・調理施設、看護師・担当保育士を確保した病児・病後児保育体制を早急に整
備する。
c)就学児の医療費および健康診査の完全無料化をはかる。
6 .リプロダクティブヘルス/ライツ(性と生殖の健康・権利)を確立する。(「福祉・社
会保障政策」
より再掲)
( 1 ) リプロダクティブヘルス/ライツの概念を踏まえ、女性の生涯を通じた健康支援を行う。
①政府の「第3次男女共同参画基本計画」( 2 0 1 0年1 2 月決定) を着実に実行する。
②各市町村や学校、職場で行う健康教育では、リプロダクティブヘルス/ライツの知識の
普及をはかる。
③学校教育において、すべての児童生徒の発達段階に応じた性教育の充実をはかる。
④HIV/エイズについて、児童生徒の発達段階に応じた性感染症予防、薬物乱用防止教
育を推進する。
⑤未成年者の喫煙や飲酒についても、防止教育を推進する。
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(横断的な項目)男女平等政策
⑥妊娠・出産、月経困難症、女性特有の疾病、更年期障害等について、情報提供と相談体
制を保健所・女性センター等を中心に整備するとともに、性差を考慮した適切な医療体
制を構築する。
⑦医療機関の機能分担と連携強化、救急医療や産科・小児医療体制の確立により、地域の
医療格差、医師・看護師等の不足を解消し、良質で安心の医療サービスを提供できる体
制を確立する。
⑧長時間労働や、深夜労働が妊娠・出産に与える影響についての研究・調査を行う。
⑨母体保護法をリプロダクティブヘルス/ライツに基づいた内容に改正する。刑法第 29
章「堕胎の罪」は廃止する。
⑩女性の生涯を通じた健康支援のニーズに対応するため、18.1%(2008年)の女性医師割
合を30%に増やすことめざす。
7.人権を冒とくする性の商品化や暴力を許さない社会づくりを推進する。
( 1 ) 国 の「第3次男女共同参画基本計画」(2 0 10 年1 2 月決定)の「第9分野
女性に対する
あらゆる暴力の根絶」に記載されている施策を着実に実行する。
( 2 ) 女性に対するあらゆる暴力を根絶するため、義務教育段階での予防教育導入など、周知
・啓発をさらに進める。
( 3 ) 緊急保護命令制度の導入や、保護命令違反に対する罰則強化等、「配偶者からの暴力の
防止及び被害者の保護に関する法律」の見直しを行う。
(4) 配偶者等からの暴力の被害者に対する支援体制の充実を図る。
①全国共通番号の24時間ホットラインを365日開設する。
②既存の配偶者暴力相談支援センターや民間団体の活用も含め、夜間・休日を問わず一時
保護の受け入れ可能な施設を増やす。
③心理療法担当職員の増員など、一時保護施設の体制を強化する。
④外国人に対する通訳や在留資格手続き等の支援を進める。
⑤既存の民間団体の活用も含め、市町村における配偶者暴力相談支援センターの設置促進
を図る。
⑥女性警察職員の増員など関係各機関における女性担当者の増員や、相談担当者に対する
研修実施等、二次的被害の防止を図る。
⑦国・地方自治体は、国民に対して相談支援対策の周知徹底を図る。
(5) 加害者には、適切な更正プログラムを受講させる等、再発防止の体制を確立する。
( 6 ) 国 は、人権擁護の観点から、人身売買(トラフィッキング)について、以下の取り組み
を実施する。(「国際政策」より再掲)
①「人身取引対策行動計画 2009」に基づき、未然防止策を強化する。
②2008 年 10 月に出された「国連自由権規約委員会」勧告を踏まえ、人権に配慮した被害
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(横断的な項目)男女平等政策
者の保護と帰国、再定住までのきめこまかなフォロー体制を構築する。
③被害者支援の強化に向け、民間シェルター等への積極的な支援を行う。
( 7 ) 既存の民間団体の活用も含め、都 道 府 県 に 配 偶 者 暴 力 や 性 犯 罪 等 、 女 性 に 対 す る あ
ら ゆ る 暴 力 の 被 害 者 の た め の ワ ン ス ト ッ プ 支 援 セ ン タ ー を 設 置 す る 。ま た 、同 セ ン
タ ー は 、 被 害 者 へ の 対 応 を 中 心 と し た 救 急 医 療 と し て 、 24時 間 対 応 の 産婦人科的診
療、さらに証拠採取等も行うこととする。
( 8 ) 性暴力被害者の人権擁護の強化、二次的被害を受けないよう事件の立証のあり方につい
て改善する。また、教職員、警察官、婦人相談員、人権擁護委員、民生委員、児童委員、
家庭裁判所調停員、裁判官等の対応者側に、セクシュアル・ハラスメント、配偶者からの
暴力、つきまとい行為(ストーカー行為)、児童虐待等についての理解を深める研修と最
新の情報提供を行う。
また、性犯罪を非親告罪化して訴追しやすくするよう刑法見直しを検討する。
( 9 ) 性的目的での児童ポルノの単純所持禁止を盛り込んだ「児童買春、児童ポルノ禁止法」
の法改正を早期に実現する。法の確実な履行と施設の充実をはかるため、中央・地方行政
は、子どもの人権に関する相談・一時保護・広報等を行う窓口または支援センター等を設
置する。
( 1 0 ) 子どもを有害情報(性の商品化、暴力表現等)から保護するために、報道・表現の自由
に留意しつつ、放送・新聞・出版などマスメディアに対して、自主的な規制機関の設置や
機能の充実を強く求め、受け手側から苦情や意見の申し立てが簡便にできる仕組みを提供
させる。
インターネット上の「子どもポルノ」等有害情報を排除する対策を講じ、子どもの商業
的性的搾取に関する取り組みを強化する。「ネット上のいじめ問題」への対策を強化する。
また、子ども自身のメディア・リテラシー (注2)向上のための支援を積極的に行う。
(注2)メディア・リテラシー ~メディアからもたらされる膨大な情報を、各人が無批判に受け入れる
のではなく、批判的に読み解く力をつけること。
<実現に向けた取り組み>
(1) 政府・与党との協議、野党への要請・協議を通じて政策実現をめざす。
(2) 内閣府および厚生労働省、法務省、文部科学省、外務省等への要請、関係審議会を通じ
て連合の意見反映に努める。
(3) 構成組織は、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム労働法を学習し職
場に定着させる取り組みを初新し、雇用における男女差別の撤廃、男女間賃金格差是正、
両立支援策等環境整備、均等・均衡処遇の職場づくりをめざす。
(4) 構成組織・地方連合会は、連合「第 3 次男女平等参画計画」及び「残り 2 年間の取り組
み」を組織内に周知し、労働組合のあらゆる機関会議、専門委員会等への女性の参画を計
画的に進める。
- 237 -
(横断的な項目)男女平等政策
(5) 男女平等課題についての実態把握を進める。また、学習会、集会等を通じ要求内容の相
互理解を深め、組合員の参加はもとより、関係団体やNGO等との連携を通じ、世論形成
をはかる。
(6)国連、ILO等の国際機関、ITUC、ITUC-APなどと連携し、国の「第 3 次男
女共同参画基本計画」の達成に向けた取り組みを強化する。
- 238 -
(横断的な項目)中小企業政策
(横断的な項目)中小企業政策
<背景と考え方>
(1) 最近の日本経済は、新興国の活発な需要を背景とする輸出やエコカー補助金制度、エコ
ポイント制度などの政策効果などもあり、実質GDPが 2009 年 10-12 月期から 2010 年 7-9
月期まで 4 四半期連続で拡大するなど、回復の兆しは見えてきていた。各国の自国通貨安
容認策などよって進行した急速な円高による企業収益の悪化や、政策効果の反動による消
費の落ち込みなどにより、2010 年 10-12 月期の実質GDP成長率は▲0.3%(年率換算▲
1.3%)となったものの、今後は生産や輸出の回復を受け、踊り場を脱却し緩やかな景気回
復基調をたどると見込まれていた。しかしながら、3 月 11 日に発生した東日本大震災は、
被害総額が約 16~25 兆円と推計されるなど、まさに日本にとって国難とも言える甚大な被
害を及ぼした。経済活動の停滞や消費マインドの悪化は必至であり、当面経済成長はマイ
ナスとなることが予想されている。
(2) 地域産業の活性化のため、国内の生産や研究機関等、事業活動を支援する環境を整備し、
国内企業の国際競争力を高めるとともに、地域の特性を活かしたまちづくりを推進し、知
識・産業集積等による地域雇用の増大をはかる必要がある。また、こうした取り組みを尚
一層加速させる仕組みとしての総合特区については、過去の構造改革特区制度や地域活性
化政策の総括を踏まえた、早期の制度構築と利活用の推進が必要とされる。
(3) 中小企業政策は、雇用政策と密接不可分にあることを認識する必要がある。既に特徴的
な技術を持っている、あるいは技術開発に努力しているが経営資源が不足している中小企
業に対し、金融面や技術開発、保有技術の保護、公正な取引慣行の確立等の支援策強化が
求められている。また、ものづくりと産業技術力を重視した経済にするため、それを担う
人材の育成を充実させるとともに基盤技術の振興、技能・技術の継承、技能・技術者の社
会的評価システムの確立、技術教育の充実等を確立しなければならない。一方、現在の中
小企業支援施策は十分活用されておらず、周知徹底、各種申請手続きの簡素化と身近な場
所の一カ所ですむ(ワンストップサービス提供)体制の確立が必要である。
(4) 厳しい財政状況を背景に、公共サービスの効率化、コストダウンの要請が高まり、国や
地方自治体から民間事業への公共工事や委託事業等における低価格・低単価の契約・発注
が増大している。また安値受注を可能にしている背景の一つに元請けが下請け、孫請け、
労働者等に負担を強いている重層的な構造がある。
非正規雇用の拡大は社会問題化しており、人件費が公契約に入札する企業間で競争の材
料にされていることを一掃し、公契約に労働基準条項を確実に盛り込ませることが必要で
ある。
(5) 政府は、公正な企業間取引と透明な市場の確立のための措置を講じているが、不当な値
引き要請や一方的な価格の押しつけ、協力金要求等取引関係における優越的地位の濫用が
後を絶たず、その実効性は十分とはいえない。今後もますます企業間取引の監視を強める
- 239 -
(横断的な項目)中小企業政策
政策が求められる。不公正な取引の結果、労働者に過剰な負荷がかかっている事例の存在
も指摘されており、この観点からも不公正な契約関係の適正化に向けた政策が必要である。
(6) 中小企業における福利厚生の充実は、安定的な人材確保の面からも特に重要である。税
制適格年金制度の廃止に伴う年金・退職金制度のあり方や、諸規定の見直しの必要性と緊
急性について周知徹底をはかること、また実施を義務づけられている定期健康診断の実施
の徹底をはかること等が重要である。
<要求の項目>
1.自立した中小企業の基盤を確立し、独自の高度な技術と経営基盤の確立に向けて、各種
支援策の強化を行う。(「産業政策」より再掲)
(1) 中小企業に対するサービスを一元化する窓口である中小企業支援センターの役割を拡充
し、中小企業向けサービスの向上に努める。
①資金、技術、特許、人材、受発注等中小企業の相談が一カ所で完結できるよう、ワンス
トップサービス化を実現できる体制を整える。
②支援センター内に「中小企業総合情報センター」を設置し、中小企業に関する総合デー
タベースを構築する。中小企業の保有する技術・設備・製品の検索が行えるようネット
ワーク化を進める。
③海外企業からの受注を増大させるために、外国語に対応したデータベースを構築し、海
外からの問い合わせ、引き合い等を受け付ける窓口を設置する。
④地域の支援センターにおける各種セミナー等では、労働法制についての講座を開設し、
中小企業経営者の遵法精神を向上させる。
⑤支援センターの窓口対応時間の延長や休日開催を行う。
⑥支援センターが開催する弁護士・税理士等の専門家による相談会開催頻度を高めるとと
もに、専門家を企業に派遣する際の企業負担の低廉化を行う。
(2) 中小企業に対する高度な技術支援と生産基盤強化のため、産学官の共同研究を積極的に
推進し、国が持つ技術や特許権を有効に活用できるシステムを構築する。
(3) 中小企業の経営戦略確立のため、中小企業診断士や技術コンサルタントの指導を受ける
際の助成を行う。
(4) 中小企業者による新卒者の採用を支援するため、ハローワークや、雇用・能力開発機構
等行政の外郭諸団体が積極的に採用会を開催する。さらには、業界団体・協同組合等が共
同採用会を開催する団体を支援する。
(5) 政府は、中小企業に対し、業務効率化による生産性の向上や、求人時における効果的な
企業PRが可能となるように、ICTの利活用を促進するための支援を行う。
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(横断的な項目)中小企業政策
2.わが国経済の根幹を担う人材の育成を行う。(「産業政策」より再掲)
(1) 「ものづくり基盤技術基本計画」の着実な実行を確保するとともに、ものづくりの重要
性を認識し、実感できる初等・中等・高等教育の実施、さらには、生涯にわたる技術・技
能の修得・継承の促進・支援を通じ、国民の勤労観の確立を目指した、人材の育成をはか
る。
①ものづくり基盤技術振興基本法の実効性を確保するため、ものづくり技術・技能の継承
はもとより、世代に偏りのない技術・技能労働者の確保と人材の育成に向けて「基本計
画」を確実に実行する。また、子どもたちや若者が高度熟練技術・技能者に憧れを抱け
るよう、技術・技能評価制度の社会的認知の向上をはかる。さらに、現代の名工等の優
れた人材を社会が評価し活躍できる仕組みをつくる。
②「日本技術技能院(仮称)」を設立して、高度熟練技術・技能労働者に対する評価を高め
る社会システムを確立するとともに、
「日本技術技能院」は、日本の技能資格をベースと
したアセアン向けの技術・技能資格をはじめとする工業標準分野規格や日本版マイスタ
ー制度の実現に向けた研究を開始させる。
③高度熟練技術・技能労働者を社会全体の財産として活用するため、
「高度熟練技能者活用
推進事業」を拡大し、登録された技能者への評価を向上させ有効的な活用をはかる。例
えばポリテクセンターや都道府県産業技術専門校、専門高校・高専・大学の学校教育に
おいて、実践指導員や技能コンサルタントとして採用する。また、ポリテクセンター・
産業技術専門校の内容を精査するため、都道府県単位に公労使三者構成の教育内容検討
委員会を設置し、民間ニーズに対応した教育内容を実現する。
④若年労働者のものづくり現場への就業意識を高めるため、小学校・中学校段階からのも
のづくり教育の履修時間の拡大と内容を充実させるとともに、職場体験学習の機会を増
やす。また、高校・高専・短大・大学では、インターンシップを単位として認める制度
を普及させると同時に、専門高校・高専・大学の工学教育において、産業界の技術者等
の外部講師を積極的に活用する等、理論に偏らない実践カリキュラムを盛り込む。これ
らの施策を通じて勤労観の確立につながるよう努める
(2) 産業人材の育成
①技術や生産を含めた経営課題の処理にたけ、技術の価値を最大限に活用できる技術経営
(MOT(注 1))人材を育成するために、実践的な技術経営プログラムを開発するとと
もに、企業経営者へのMOT教育の普及に努める。
②国際標準作成の専門家を養成するために、企業や大学の技術者の育成に努める。
③産業人材の確保・育成の観点から、職場等で求められる能力を明確化するとともに、産
官学連携等による人材育成に努める。
(3) まちづくりを担う人材の育成
①地域活性化策を進めるにあたって最大の課題となっている人材不足の打開に向けて、ま
- 241 -
(横断的な項目)中小企業政策
ちづくりを担うリーダーを市民の中から登用するしくみづくりを進めるとともに、地域
リーダーに対する効果的な育成を行う。
②インキュベーションマネジャーの育成を強化し、地域産業を創造し活性化する人材の創
出を支援する。
③ベンチャー・ビジネスを支援するために、起業家のためのセミナーを開催する。
(注 1)MOT ~イノベーションの創出を目的とするもので、新しい技術を取り入れながら事業を行う
企業・組織が、持続的発展のために、技術を含めて総合的に経営管理を行い、経済的価値を創出
していくための戦略を立案・決定・実行すること。
3.地域の持てる資源を見直し、地域の特性を活かしたまちづくりを推進し、知識・産業集
積等地域産業の活性化による地域雇用の増大をはかると共に、核となる企業への支援を
行い、地域の連携を強化して、地域産業としての国際競争力を高める。(「産業政策」よ
り再掲)
(1) 国内企業の国際競争力を高めるために、核となる企業への地域連携を主導するなど国内
における生産や研究開発等、事業活動を支援する環境を整備する。
①地場にある資源見直しや産業の掘り起こしを行い、中核となる地場産業等の企業群を定
め、地域との連携を図り、関連企業の誘致・育成を進める。また、国や地方が企業を支
援する際は、対象企業が雇用環境の改善や地域社会に貢献する事を条件に加える。
②「良い消費者が良い商品を育てる」という日本の特長を活かし、日本でしか作れない、
日本のものづくりにこだわった製品の品質やデザイン・性能や機能の高付加価値性を、
「メイド・イン・ジャパン(日本製)」ブランドとして世界に発信すると共に、政府のト
ップセールスを実施する。
③政府・地方自治体は、海外の産業集積地の誘致策を研究し、企業ニーズにマッチするオ
ーダーメイド型の新しい企業誘致策を実施する。同時に、政府は地方自治体と連携し、
海外企業の誘致を積極的に進める。
④日本を中心とした国際産業クラスター( 注 2)を構築するため、東アジア・アセアンと
の経済連携をはかり、関税負担の撤廃や技術認証の共通化等を進める。
(2) 地域の特性を活かした知識・産業集積を促進し、地域雇用の増大をはかる。
①政府および地方自治体が実施する支援等は、下記の観点をふまえ、全国一律的な基準で
はなく地方の特性・実態を活かしたものとする。
a) 関係省庁・地方自治体は地域の各種セクターと連携し、支援等を使いやすいように整
理するとともに周知徹底をはかる。
b)支援等の使途・事業年度は事業の特性に応じ柔軟に設定できるようにする
c)支援等の評価・検証は地域住民の理解を得られるよう情報開示を徹底する
②インキュベータ施設(注 3)、賃貸工場、産学連携施設等、産業支援環境を整備する。イ
ンキュベータ施設においては、地域産業との連携や施設を拠点とした多様な人的ネット
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(横断的な項目)中小企業政策
ワークを生かしたビジネスマッチングを推進する。
③技術を評価し、企業に斡旋する等、コンサルティング能力、技術商社機能をもつNPO
の設立を地域で支援する。
④共同受注グループの活動を活性化させるため、共同受注時の契約書の雛型や権利関係を
まとめた指針を作成する。
⑤ベンチャー・ビジネスを支援するために、融資制度の拡充、地域プラットフォーム等創
業支援体制の拡充、技術開発の促進策の強化等の支援を行う。
⑥NPO・コミュニティビジネス等のいわゆる社会的企業( 注 4)に対する支援を拡充す
る。
(3) 地域の自立的な取り組みに基づいた特色ある地域の活性化並びにわが国全体の経済成長
に資する戦略的拠点としての総合特区について、制度の構築、及び指定・運営の推進を図
る。
①過去の構造計画特区や地域活性化政策の総括を踏まえ、新たな法制化を含む具体的な制
度設計を図る。
②地方自治体が、住民や労働組合等の幅広い意見を必ず聞き入れた上で構築し、真に雇用
創出や地域活性化に資するよう進める。
③特区の特例措置が、労働条件の悪化、企業倒産・失業増等に繋がらないよう制度設計に
おいて十分配慮すると共に、そうした状況に陥る恐れが生じた場合は、国・地方自治体
が責任をもってこれを廃止し、復旧させる。
(4) 中心市街地の活性化に向けては、再開発や大型施設の誘致等ハード事業に過度に依存す
ることなく、地域固有の資源を活かしたソフト事業も重視した取り組みを行う。また、
「中
心市街地活性化協議会」においては、地域の様々な主体・人材の参画や、基本計画への意
見反映等、実効性を担保した組織・内容とする。
(5) 政府は、地域経済を支える企業の事業再生、地方自治体が主体的に取り組む第三セクタ
ー改革を支援するとともに、企業、公的セクター、地域関係者、労働組合等と十分な協議
を踏まえ、地域の面的再生への支援を行う。
(6) 雇用の安定・創出を実現するために、全都道府県に政労使による懇談会・研究会を設置
する。地域の労働組合代表が、地域の産業振興と雇用・労働条件の維持・安定等、地域活
性化策について、地方経済産業局はもとより、47 都道府県に設置されている中小企業再生
支援協議会と意見・情報交換を行う場を設ける。また、従来の産官学の連携に加え、地域
金融機関、地域の労働組合が参加する「産官学金労」が一体となって、地域雇用の創出、
新事業展開、技術開発等の地域産業活性化策を検討する場を設ける。
(7) 知的財産・標準化戦略に基づき知的財産を有効活用し、技術立国としての地位確立をは
かる。
①ソフトウェアも含め、知的財産の評価・権利を確立し、不正使用の防止を徹底する。
②特許市場の整備、特許審査期間の短縮化のための審査体制強化、裁判所の知的財産権紛
争処理体制の強化等、知的財産権制度の整備を行う。
- 243 -
(横断的な項目)中小企業政策
③金型をはじめとする中小企業の技術が、特許・実用新案・著作権等知的財産権の枠組み
で保護されるよう法整備を進め、外国への特許出願に対する支援策を強化する。
(注 2) 産業クラスター ~クラスターとは「ぶどうの房」の意。産業クラスターは、特定分野の関連企
業、大学等の関連機関等が地域で競争しつつ協力して相乗効果を生み出す状態をいう。
(注 3)インキュベータ施設 ~ 起業家精神を持つ事業家に、低廉な事務室・工場とともに資金・人材・
経営支援等を提供して、企業の立ち上げ・成長を助ける施設。事業の卵を孵化(インキュベート)
することに由来。
(注 4) 社会的企業 ~一般の民間企業と異なり、利益は追求するが、それを株主ではなく地域社会に還
元することを目的に設立された企業体。寄付や補助金に頼らずに事業活動で安定的な資金を集め
ている。
4.国民にとって安心・信頼でき、地域経済の活性化に資する金融システムを構築する。(「経
済政策」より再掲)
(1) 政府は、地域経済を支える中小企業・地場産業の活性化に資する金融環境の整備を進め
る。特に、中小・地域金融機関とその顧客との長期安定的な金融取引機能を強化し、中小
企業・地場産業の事業運営を資金面から支えて「育成、再生」を強力に進め、地域経済の
活性化を実現するための政策を最優先で実行する。そのために、金融機関の企業への融資
姿勢を物的担保主義、個人保証依存から、
「事業育成」の視点に立った経営コンサルタント
能力を高めることを通じて、融資先企業の将来性・発展性を重視したものに変革するため
の政策を実行する。
①改正金融機能強化法に基づく公的資金注入行に対しては、中小企業向け貸出比率目標お
よび貸出残高目標達成に向け厳しく指導を行う。さらに、これらの銀行が中小企業・地
場産業への融資継続や新規融資に際しては、人員削減や賃下げ等の労働者の労働条件引
き下げ要件を付すことなく、市場動向や技術力等の評価を取り入れるよう促す。
②金融庁は、中小企業の実態を反映し適切に実施するため、
「金融検査マニュアル別冊(中
小企業融資編)」の趣旨・内容を検査官に一層周知徹底する。
③中小企業再生支援協議会、整理回収機構の企業再生機能の一層の強化、企業再生支援機
構の継続活用が可能となるような法的措置などにより、雇用維持・安定を最優先とした
当該企業の再生を進める。
④都道府県の中小企業再生支援協議会は、政府から支援を受けつつ、労働組合の参画を得
て、中小企業の再建計画策定支援を積極的に行う
⑤金融機関が地域金融の円滑化にどの程度貢献しているかについて情報公開する「地域金
融円滑化法(金融アセスメント法)」を制定し、中小企業等への円滑な資金供給と地域経
済の健全な発展をはかる。なお、中小企業等に対する金融円滑化対策の総合的パッケー
ジの一環である「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法
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(横断的な項目)中小企業政策
律」については、その目的に沿った運用を行う。
⑥地域金融機関は、債務企業の「再生」
「活性化」を最優先に据え、不良債権処理にあたっ
ては、地域経済を支える中小企業・地場産業の役割・特性を十分に踏まえた上で、不良
債権の直接償却を多用することなく、間接償却も併用し、計画的に進める。不良債権の
直接償却を行う場合は、民事再生法や会社更生法等、法的整理や、
「私的整理ガイドライ
ン」に則った債権放棄を重視するとともに、必ず労働組合等が関与し、労働債権の保護
をはかる。
(2) 政府は、金融機関の健全性強化と適正な事業運営を実現し、消費者利益を保護・向上さ
せるためのシステム・体制を構築する。
①すべての金融機関を一元的に検査・監督する行政システムを構築する。検査・監督機関
は、経営実態を一層的確に把握し、消費者にも納得できるルールを定めるとともに、機
動的な立入検査(考査)
・監督等を確実かつ迅速に行い、問題発生を未然に防ぐ。検査の
結果、問題のある金融機関については、経営改善に向けた適切な措置を講じ、利用者の
被る損害や国民負担を極小化し早期再生をはかる。
②早期健全化法および金融機能強化法に基づく公的資金注入行に対して「経営健全化計画」
を遵守させるとともに、履行状況を確実に監督し、必要あるときは経営者退陣等の経営
責任、減資による株主責任を問う。
③金融機関の破綻懸念先以下債権への引当金に対する無税償却制度を導入する。
④「銀行等保有株式取得機構」を活用し、銀行が過度に保有する株式の軽減を進める。
⑤日銀は、
「銀行保有株式買取り」などリスク資産の購入については、自らの財務健全性に
配慮しつつ行う。
5.税制面から中小企業経営支援の充実を期す。(「税制改革」より再掲)
(1) 法人事業税における雇用安定控除の比率を引き上げる。
(2) 中小企業の支援やディーセントワークを後押しする税制改革を行う。
①中小企業基本法にあわせる方向で、税法における中小企業の定義を見直す。
②中小法人に対する法人税の軽減税率を基本税率の 1/2 の水準とする。
③「雇用促進税制」について、政策効果等を検証し、より効果的な税制となるよう必要な見
直しを行う。中小企業に対する人材投資促進税制を復活させる。
6.ディーセントワークの実現のための公契約基本法、公契約条例の制定等国内法等の整備
および、ILO第 94 号条約の批准をはかる。また、国や地方による入札制度を改革す
る。併せて公正な取引関係の実現に向けて、公正取引委員会の強化等を行う。(「産業
政策」、「行政・司法改革」より再掲)
(1) 公契約(公共工事、サービス、物の調達など)に関する基本法を制定し、そのなかで公
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(横断的な項目)中小企業政策
正労働基準と労働関係法の遵守、社会保険の全面適用等を公契約の基準とする。法整備を
はかることにより、ILO第 94 号条約の批准をはかる。また、違反企業に対する発注の取
り消しや違約金の納付制度等のシステムづくりを進めるとともに、発注者の責任も明確に
する。
①「公共工事の入札および契約の適正化促進に関する法律」等、公契約に関する現行法に
関し、公正労働基準と労働関係法の遵守を盛り込む法改正を行う。労働基準法等の労働
法制に違反した企業を、発注対象から除外する条項を設ける。
②予算決算および会計令、地方自治法施行令を改正して、公共工事等の入札における透明
性確保、ダンピング受注に歯止めをかけるための措置を講ずる。
③努力義務として位置づけられている「予定価格と積算内訳」や「低入札価格調査の基準
価格と最低価格」等の情報開示を、法的に義務づける。
④各自治体においては、
「公契約条例」を制定する。また、自治体の工事や業務委託の入札・
契約にかかわる条例や要綱等に、労働基準法等の労働法制や社会保障関連法規に違反し
た企業を、発注対象から除外する項目を設けるとともに、発注者の責任も明確にする。
⑤ILO第 94 号条約(公契約における労働条項)の批准をはかる。
(2) 国や地方自治体による公共工事や公共調達等の入札にあたっては、透明性確保のための
措置を講ずる。公契約において、公正労働基準の確保、環境や福祉、男女平等参画、安全
衛生等社会的価値も併せて評価する総合評価方式の導入を促進する。
①公共事業等の入札において、労働条件等を含めた総合評価方式の導入を促進する。また、
その際は、明確な評価基準を設定する。( P176~「行政・司法改革」参照 )
②ダンピング受注の判断基準を明確に定める。発注機関において受発注者間で取り交わさ
れる契約には対象範囲を明記し、各々の責任範囲を明確にする。
(3) 公共工事の発注にあたっては、労働条件、安全衛生および品質を確保する観点から適切
な工期を設定する。
(4) 優越的地位の濫用を防止し公正な取引と透明な市場を確立するため、独占禁止法、下請
法を強化するとともに、公正取引委員会の体制および権限の強化、企業への周知徹底等に
より法の実効性を高める。
①公正取引委員会や関係省庁担当部門の人員を拡充し、機能・体制の強化をはかる。
②独占禁止法の課徴金強化をはかるとともに、課徴金の対象を優越的地位の濫用、不当廉
売、差別的対価等「不公平な取引」まで広げる。
③「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」
(ガイドライン)の周知徹底をはか
る。また下請法(下請代金支払遅延等防止法)については、資本金区分による適用を廃
止し全取引を対象とするとともに、銀行等の金融機関による信用供与も対象とする。
「下
請適正取引等の推進のためのガイドライン」の拡充をはかるとともに、下請法やガイド
ライン等を周知徹底させる。
④下請企業からの情報提供・申告等に対し親企業からの報復措置をなくすシステムを設け
る。また、単価の過度な水準引き下げ要求に対し、商取引における一定の規制を設ける
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(横断的な項目)中小企業政策
ことを検討する。
⑤知的財産についても優越的な地位の濫用を防止する法制度を整備する。
(5) 地方自治体の公共工事において、建築工事と設備工事の「分離発注方式」を徹底する。
(6) 国や地方自治体におけるソフトウェア、アプリケーション開発の入札では、必要な工数
(人日)に人件費を積算させたものに加え、著作権の帰属のあり方も含めた知的財産として
の価値を付加して価格決定がされるよう制度を改革する。
(7) 改正官製談合防止法を適切に運用し、談合根絶に向けたさらなる改正や天下り規制の強
化を行う。(「行政・司法改革」より再掲)
(8) 国際的な経済活動における外国公務員に対する贈賄の防止のため、国外における捜査体
制を強化する。
7.労働災害の予防と再発防止対策を強化し、労災補償を拡充する。(「雇用・労働政策」
より再掲)
(1) 中小企業に対して、労働者への安全衛生教育の充実に向けた支援を行う。また、リスク
アセスメントやOSH-MS導入の支援、安全衛生サービス専門機関や専門家等の無料紹
介等を行う。
(2) 安全衛生委員会の設置義務をすべての事業場に拡大する。当面は、現行の 50 人以上から
30 人以上に変更する。
8.中小企業における勤労者の福祉の向上をはかる。(「雇用・労働政策」より再掲)
(1) 中小企業勤労者の福祉の充実に向け、中小企業勤労者福祉サービスセンターに対する支
援を強化する。また、国からの経費の一部負担が 2010 年度をもって全廃されることから、
事業のあり方等を含め自立化に向けた支援を促進する。
(2) 「人材の確保・育成」の支援のため、中小企業労働力確保法にもとづく各種助成制度の
活用促進や優遇税制等経費の負担軽減措置など、中小企業にとって実効性ある総合的な施
策を構築する。
(3) 中小企業における高齢者雇用の促進のため、高齢者の継続雇用や定年引き上げ等に対す
る助成金を継続する。
(4) 複数の中小企業が事業協同組合等を活用した障害者雇用率制度を適用する際は、雇用主
として責任を確保するよう指導徹底する。
(5) 中小企業労働者や職業能力開発機会が限定されている地域に居住する者について、国・
地方自治体・地域の教育訓練機関等が連携し、職業能力開発に関する機会や情報における
企業間格差・地域間格差の是正をはかる。
(6) 技術・技能の継承や人材の確保・育成などについて課題を抱えるものづくり産業の中小
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(横断的な項目)中小企業政策
企業に対し経済産業省・厚生労働省・文部科学省など等の連携を強化し、人材投資促進税
制の継続や人材の確保・育成に関する支援措置を拡充する。
(7) 中小企業退職金共済制度への加入促進と勤労者財形制度の普及・啓発を促進する。
(8) 一般の中小企業退職金共済制度では、
「掛金納付期間が 1 年未満は支給なし(2 年未満は
掛金納付額を下回る)」となっているが、企業の倒産・廃業の場合には掛金相当額が受給で
きるよう措置を講ずる。また、特定業種退職金共済制度においても、一般の中小企業退職
金共済制度と同様に「掛金納付期間が1年未満は支給なし」となるよう措置を講ずる。
(9) 中退共と税制適格年金を併用している企業における税制適格年金からの中退共への移行
を可能とする。
(10)時間外労働の法定割増率を時間外 50%、休日労働 100%、深夜労働 50%に引き上げる。
とくに、休日労働の割増率は 35%から 50%以上に早期に引き上げる。また、改正労働基準
法第 37 条による月 60 時間超の割増率引き上げについて、中小の適用猶予措置は早期に廃
止する
9.社会的格差を是正し、生きがい・働きがいのある「労働を中心とした福祉型社会」を実
現するため、セーフティネット機能・公的保障の縮小に歯止めをかけ、積極的雇用政策
との連携による積極的社会保障政策に転換する。(「雇用・労働政策」、
「福祉・社会保障
政策」より再掲)
(1) パート・派遣労働者や中小・個人事業所等のすべての雇用労働者の均等待遇と格差是正
をはかり、社会保険の「空洞化」解消と違法な未加入・脱退是正、企業の社会的責務の観
点から、すべての雇用労働者に社会保険を原則適用する。そのため、原則適用に相応しい
社会保険料の事業主負担(支払い総賃金額の一定率)とし、さらに、新たな適用形態(社
会保険事務組合、地域・業界ごとの適用等)を制度化するなどの抜本的見直しを行う。な
お当面、適用基準を労働時間要件「2 分の 1(20 時間)以上」、ないし年収要件「65 万円以
上」
(給与所得控除の最低保障額)として、いずれかの要件に該当すれば、社会保険を適用
する。被扶養者の年収要件(第 3 号要件)は 65 万円以下とする。また、5 人未満および未
適用業種の事業所についても社会保険への強制適用とする。
(2) 中小企業等の社会保険からの違法な脱退・未加入問題については、法の厳格な適用を行
う一方で、支払猶予制度や融資制度等の対策を講ずる。また、加入者本人の救済制度を設け
る。
10.男女が協力しながら仕事と子育てを両立し、それぞれ能力を発揮できるよう、
「子育て
基金」(仮称)の創設など、社会全体で次世代育成支援に全力を挙げる。(「福祉・社会
保障政策」より再掲)
(1) 次世代育成支援対策の推進に向け、次の措置を講ずる。
①次世代育成支援対策推進法に基づき、自治体および事業者が定めた次世代育成支援対策
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(横断的な項目)中小企業政策
推進計画の達成状況を把握し、それらが着実に実施できるよう必要な支援措置を講ずる
とともに、速やかに行動計画策定指針の変更に反映させる。
②次世代育成支援対策協議会の設置など、自治体における次世代育成支援対策を推進する。
③「認定マーク」の認知度を向上するなど、企業が積極的に次世代育成支援を推進するこ
とを促す。従業員が 100 人以下の企業に対して「行動計画」の策定を義務づけ、中小企
業における次世代育成支援対策を推進する。
<実現に向けた取り組み>
(1) 関係審議会の労働側委員との連携を強化し、意見反映に努めるとともに、政党との政策
協議や組織内議員との協議などにおいて連合の考え方について理解を求める。
(2) 中小企業庁をはじめとする関係官庁や中央・地方の経済団体への要請活動を行う。
(3) 中小労働委員会や政策委員会、構成組織・地方連合会との意見交換を活発化し、情報の
共有化を図り連携を強化する。
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(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
<背景と考え方>
(1)
わが国における非正規労働者の数は、2008 年の世界同時不況によって派遣労働者を中
心に一時減少したが、その後再びパート、有期契約、請負等を中心に再び増加傾向にある。
非正規労働者が雇用労働者の 3 分の 1 を超える中で、生計の主たる支え手が非正規雇用で
ある世帯が増え、若年層における非正雇用割合も高まっている。
(2) 不安定な雇用・労働条件で、能力開発や社会保険適用の機会も十分でない労働者の増加
は、給与所得者のおよそ 4 分の 1 が年収 200 万円以下となるなど、働く貧困層の増加の大
きな背景となっている。このことは、所得減と将来不安による需要の減退、未婚化・少子
化、社会保障制度の空洞化、企業における現場力や生産性の低下等、社会の安定や経済の
持続的な成長、そして国の財政基盤の健全化に悪影響を与えている。
(3)
社会・経済の安心・安定に向けて、成長分野での安定した雇用の創出、非正規労働者
の雇用・処遇改善につながるワークルールの確立、そして社会的セーフティネットの整
備は喫緊の課題である。この間、求職者支援法の制定については実現したが、引き続き
労働者派遣法改正の早期実現はもちろん、有期契約労働者の保護に向けた法整備、すべ
てのパート労働者の均等・均衡待遇実現に向けたパート労働法の改正が急がれる。また、
政労使の雇用戦略対話で確認された最低賃金引き上げ目標の実現、ジョブ・カードや日
本版NVQの促進等を通じた非正規労働者の能力開発機会の保障・拡充等の取り組みも
重要となっている。
(4) 公共サービス分野においても非正規労働は拡大している。公務職場における臨時・非常
勤職員の増加、労働基準が顧みられないコスト優先の入札・民間委託によって、官民を問
わず低所得層・非正規労働者の増加を引き起こしている。効率的な公共サービスの提供は
求められるが、地域でそれを支える労働者の労働条件が犠牲にされることは許されない。
この間、千葉県野田市や川崎市で公契約条例が制定され、他の自治体にも動きが広がりつ
つある。地域の公共サービスが公正な労働条件のもとに提供されるべく、公契約に関する
条例、基本法制定に向けた取り組みが重要となっている。
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(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
<要求の項目>
1.セーフティネットを拡充し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)
を中心に据えた雇用の拡大をはかるとともに、劣化した労働の質を回復させる。(雇用・
労働政策より再掲)
(1)
質の高い雇用による「完全失業率 3%台前半の社会」を実現する。そのために、国の責
任として、雇用政策と一体になった産業政策を推進することで、バブル崩壊以降続くデフ
レ状態から早期に脱却し、わが国経済を持続的・安定的な成長軌道に乗せ、雇用の創出・
維持をはかる。
(2)
雇用および労働は、経済と社会の発展を支えるための前提であり、雇用の質の向上と働
く意欲のある労働者の完全雇用実現の方策を、国の基本政策の中心に据える。
(3) 政労使が雇用(ワーク・ライフ・バランスなどの問題を含む)・産業政策などを一体で
議論する社会的対話を進める。とりわけ、地域においては、地域の特色をふまえた雇用・
産業政策を策定するため、地域版雇用戦略対話等の場を活用し、定期的な議論を行う。
(4) 質の高い労働力によって培ってきた、わが国のすぐれた技術力、開発力を維持・強化し
つつ、それをベースに成長が期待できる産業分野に積極的に進出し、雇用機会を創出する。
(5) 雇用の原則は「期間の定めのない直接雇用」であることを基本として、人や社会の成長
を促す雇用・労働環境の整備、公平・公正なワークルールの整備と社会保障システムの再
構築、職場における諸課題の解決システムの強化、労働政策を支える基盤の充実をはかる
観点から、「雇用基本法」(仮称)の策定をはかる。また、引き続き非正規雇用から正規雇
用への転換を促進する。
2.国は、社会保障を全世代に広げるとともに、すべての人に就労機会とディーセントな雇
用を保障し、社会連帯を基礎に安全・安心社会を構築するため「働くことを軸とする安
心社会」をめざし、積極的雇用政策との連携による積極的社会保障政策を推進する。
(1) 雇用保険制度等セーフティネットの充実(「雇用・労働政策」より再掲 )
①失業等給付の受給資格要件を拡大するとともに、給付日額・給付率・給付日数を 2001
年改正前の水準に引き上げる。
②雇用形態にかかわらず、すべての雇用労働者に雇用保険を適用することとし、雇用保険
の適用対象の拡大(週所定労働時間 20 時間未満の労働者など)をはかる。
③基本手当について、所得再配分と生活保障の観点から、「最低保障手当額(仮称)」を
創設する。水準は、人事院勧告の標準生計費(単身世帯)を参考とし、基本手当日額 3,263
円程度とする。
④雇用保険制度ではカバーできない長期失業者などに対する公的扶助制度としての求職者
支援制度については、実効性ある制度の運用に努めるとともに、国として設けるセーフ
ティネットであるという趣旨から、全額一般財源で負担するものへと見直しを行う。
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(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
⑤「求職者支援法」(仮称)の要件を満たす雇用保険受給者で、求職者支援法の訓練・生
活給付金の金額(10 万円)に満たない基本手当受給者への差額補填を行う。
(2) 公共職業安定所(ハローワーク)は、以下の原則にもとづく体制とする。 (「雇用・労働
政策」より再掲 )
①ILO第 88 号条約(職業安定組織の構成に関する条約)にもとづき、無料職業紹介、雇
用対策(企業指導)、雇用保険(失業認定と失業給付)は国の指揮監督と責任により、
全国ネットワークで一体的に運営する。
②国と地方自治体との協同連携による就労支援・生活支援を含めた一体的運営を行う場合、
地域の労使による参画により、求職者・利用者の利便性向上をはかる。
(3) 国は、すべての働く労働者に十分対応した社会保険制度に改める。(「福祉・社会保障政策」
より再掲 )
①パート・派遣労働者や中小・個人事業所等のすべての雇用労働者の均等待遇と格差是正
をはかり、社会保険の「空洞化」解消と違法な未加入・脱退是正、企業の社会的責務の
観点から、すべての雇用労働者に社会保険を原則適用する。そのため、原則適用に相応
しい社会保険料の事業主負担(支払い総賃金額の一定率)とし、さらに、新たな適用形
態(社会保険事務組合、地域・業界ごとの適用等)を制度化するなどの抜本的見直しを
行う。なお当面、適用基準を労働時間要件「2 分の1(20 時間)以上」、ないし年収要
件「65 万円以上」(給与所得控除の最低保障額)として、いずれかの要件に該当すれば、
社会保険を適用する。被扶養者の年収要件(第 3 号要件)は 65 万円以下とする。また、
5 人未満および未適用業種の事業所についても社会保険への強制適用とする。
②派遣労働者の厚生年金や健康保険等社会保険料について、派遣元が納付義務を怠ったと
きに、派遣先が補充責任として連帯債務を負うものとする。
(4) 社会保険・労働保険によるセーフティネット機能を強化するとともに、新たな生活保障
制度を構築する。( 「福祉・社会保障政策」より再掲)
①現在の生活保護制度と雇用保険制度をベースに、積極的な雇用労働政策と連動した社会
保険・労働保険制度の機能強化(第 1 層)、職業訓練や生活支援を内容とする「求職者
支援制度」(第 2 層)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障するための「最
後の砦」としての給付制度(第 3 層)による三層構造のセーフティネットに再構築する。
②国および地方自治体は、「生活保障給付」制度の実施機関を、以下のとおりとする。
a)申請受理、調査、ケースワークは、現行の生活保護制度における福祉事務所が担う。
そのため、生活問題の複雑・多様化等福祉現場の業務拡大等を踏まえ、ケースワーカ
ー(現業員)等職員の人件費、福祉事務所の事務費等について国庫負担に含め、職員
の専門性を高める。
b)ケースごとに福祉事務所、共同出資機関、公共職業安定所、生活支援に必要な専門的
なサービスを提供する機関や専門職等の役割を定め、これらの連携を確実なものとす
る。就労・自立支援プログラムの内容、実施状況、給付の停・廃止の判断等を中立・
客観的に評価できる仕組みとする。
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(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
c)給付を必要とする人が申請の権利(保護請求権)を確実に行使できるよう、実施機関
の窓口に申請書式一式を備え置くことを義務づける。
d)受給者の権利擁護をはかるため、苦情や相談、不服申し立て(審査請求)を受付け、
調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。
③「生活保障給付」に要する費用は、国と地方が負担する。
(5) 政府は、生活保護世帯の捕捉率が約 3 割の水準に留まっている(厚生労働省「ナショナ
ルミニマム研究会」の推計(2010 年 4 月))要因について調査し、必要な人に「最後の
砦」としての生活保障給付を確実に行える体制を検討する。(「福祉・社会保障政策」より再
掲)
(6) 低所得層の自立支援に向け、国と地方自治体の連携による「住宅支援制度」、「医療・
介護費補助制度」を創設する。( 「福祉・社会保障政策」より再掲 )
①住宅の現物給付と家賃補助による「住宅支援制度」を構築する。
a)収入が一定基準(生活保護制度の最低生活費の 1.3 倍未満程度)の持ち家のない人を
対象に、住宅の現物または家賃補助等を行う。
b)給付水準は、地域ごとの家賃相場を勘案し定める単位基準額に基づき、所得に応じ逓
減するものとし、支給期間は設けない。給付対象となる住宅については、最低居住面
積基準を満たしたものを基本とする。
c)国が財源を保障し、事務は福祉事務所が行う。「住宅支援制度」の創設により、生活
保護制度の住宅扶助は廃止する。
②国民皆保険による医療・介護サービスを保障するため「医療・介護費補助制度」を構築
する。
a)生活保護受給者を含めた低所得者を国民健康保険および介護保険の被保険者とし、保
険料(税)と自己負担分を手当てするものとする。
b)収入が一定基準(生活保護制度の最低生活費の 1.3 倍未満程度)の人を対象とする。
c)財源は国と福祉事務所を設置する地方自治体の負担とし、事務は福祉事務所が行う。
「医療・介護費補助制度」の創設により、生活保護制度の医療扶助および介護扶助は
廃止する。
(7) 政府が「第二のセーフティネット」と位置づけた支援のうち、社会福祉協議会が申請窓
口となっている総合支援資金貸付について、連帯保証人等の貸付要件を緩和する。また、
雇用保険の基本手当等の給付対象者に対する緊急小口資金について、住所等の貸付要件を
緩和する。併せて、円滑な制度実施のため財政措置を講ずるとともに、生活資金貸付制度
の周知を徹底する。( 「福祉・社会保障政策」より再掲 )
(8) 国および地方自治体は、住居を持たない生活困窮者に対して生活保護の給付を行い、併
せて社会的なつながりに対する支援を充実させていくほか、緊急一時保護施設(シェルタ
ー)の活用、自立支援センターの整備・拡充等の適切な対応をはかる。( 「福祉・社会保障
政策」より再掲 )
(9) 国および地方自治体は、ホームレスの自立支援にあたっては、新たな貧困層(ワーキング
- 253 -
(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
・プア等)等若年層への支援を含めた就業支援事業や自立支援センターの退所者に対する相
談・支援体制を整備・拡充するなど、就業機会の確保による自立支援策を強化する。なお、
同法の第 11 条(公共施設の利用が妨げられている場合は、その管理者が適正利用のための
必要な措置を講じる)は、国際人権法に則ったうえでの措置とする。(「福祉・社会保障政策」
より再掲 )
(10)所得税・住民税の配偶者控除は、扶養税額控除に整理統合する。( 「税制改革」より再掲 )
(11) 低所得雇用者の社会保険料・雇用保険料(労働者負担分)の半額に相当する金額を所得
税から控除する仕組み(勤労税額控除)を導入する。 注 1(「税制改革」より再掲)
(12)課税最低限以下の層を中心に消費税の逆進性対策として、最低限の基礎的消費にかかる
消費税負担分を還付する制度(消費税税額控除)を導入する。 注 1( 「税制改革」より再掲 )
(13)消費税の逆進性緩和策として、低所得層に対する還付制度を導入する。(「税制改革」よ
り再掲 )
①課税最低限以下の層を中心に消費税の逆進性対策として、最低限の基礎的消費にかかる
消費税負担分を還付する制度(消費税税額控除)を導入する。軽減税率は、導入しない。
②社会保障・税の共通番号の導入を前提に、行政コストを考慮し、具体的な制度設計を行
う。あわせて、税務行政等の体制整備もはかる。
(14)消費税納税額の圧縮を目的とした正規雇用から派遣・請負への置き換えを防止するため、
派遣労働、請負労働などの対価にかかる「消費税の仕入税額控除」について、そのあり方
を見直す。( 「税制改革」より再掲 )
(15)「雇用促進税制」について、政策効果等を検証し、より効果的な税制となるよう必要な
見直しを行う。中小企業に対する人材投資促進税制を復活させる。( 「税制改革」より再掲 )
(注 1) 給付つき税額控除 ~給付つき税額控除とは、個人所得課税において税額控除を導入し、その控
除額が引ききれなかった場合に「負の所得税」を給付する仕組みである。「負の所得税」を給付す
ることで、課税最低限以下の層を含めた所得再分配が可能となる。
○「勤労税額控除(仮称)」のイメージ
給与収入 65~200 万円で社会保険料・雇用保険料を負担している雇用労働者(約 150 万人)に対し、
社会保険料・雇用保険料(給与の約 14%)の半額に相当する金額を所得税から控除する。給与収入 200
万円から徐々に低減し、250 万円で消失する措置もあわせて講じる(対象者約 600 万人)。必要財源は、
1.5~2 兆円程度を想定している。
○「消費税税額控除」のイメージ
合計所得が課税最低限の人(4000 万人程度)に対し、扶養者数に応じて、最低限の基礎的消費にかか
る消費税負担相当分を定額で還付する。課税最低限の水準から徐々に低減し、消失する措置もあわせて講
じる。必要財源は、消費税収の 1 割弱程度を想定している。
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(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
3.最低賃金の機能を強化し・充実し、水準改善をはかる。(「雇用・労働政策」より再掲)
(1) 地域別最低賃金は、雇用形態による賃金格差を縮小させ、賃金を底支えする役割を期待
されている。すべての労働者が生活保護水準を上回ることはもとより、必要最低生計費の
実態や一般労働者の賃金水準も考慮して、早期に全ての地域で 800 円を実現し、さらに平
均 1,000 円を達成すべく、審議会の適正な運営にかかる支援を行う。
(2) 特定(産業別)最低賃金は、団体交渉の補完機能として労使関係の安定や事業の公正競
争確保の役割を果たしている。新設や改定の申し出をし易くするための施策を講じ、水準
の改善はもとより、機能の拡充をはかる。特に、介護・福祉分野をはじめ第三次産業にお
ける創設に向けた活動を推進・支援する。
4.有期契約、パートタイム、労働者派遣、請負等、多様な雇用・就業形態の労働者の雇用
の安定と公正な処遇を確保する。(「雇用・労働政策」より再掲)
(1) 有期労働契約の労働者保護のルールについては、将来的に目指す方向性を見据えつつ、
段階的な整備をはかる。(「有期労働契約に関する連合の考え方」参照 )
①有期労働契約の締結には合理的理由を必要とする入り口規制を行う。
②有期労働契約の上限および更新回数について規制する。
③合理的な理由のない差別的取り扱いの禁止など均等・均衡待遇を実現する。
④有期契約労働者に関する雇用保険料についての使用者負担の増額など、使用者にリスク
負担を求める制度とする。
⑤「有期労働契約の締結、更新および雇止めに関する基準」(大臣告示) の法制化をはかる。
(2) パートタイム労働の均等・均衡処遇の確立をはかる。
①すべてのパートタイム労働者を対象に、「合理的理由」がある場合を除き、処遇につい
てパートタイム労働者であることを理由とする差別的取扱いを禁止する。
②ILO第 111 号条約(雇用と職業についての差別待遇に関する条約)、ILO第 175 号
条約(パートタイム労働に関する条約)を批准する。
③労働条件の時間比例を原則とする「短時間公務員制度」を導入する。
(3) 労働者派遣法については、労働者保護の視点からの改正を行う。
①改正労働者派遣法案(2010 年閣法)を早期に成立させる。
②残された課題、(派遣先責任の強化、専門 26 業務の見直し、特定労働者派遣事業の届出
制から許可制への変更、マージン率についての情報公開、専ら派遣・グループ企業派遣
の規制、派遣先労働組合への通知事項の拡大など)については、2007 年「労働者派遣法
見直しに関する連合の考え方」など、連合の考え方に基づき、引き続き労働者保護の観
点から対応する。
(4) 偽装請負・違法派遣の一掃に向けた指導・監督を強化するとともに、請負現場における
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(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
労働関係法令(職業安定法、労働者派遣法、労働基準法、労働安全衛生法など)の遵守お
よび社会・労働保険の加入徹底に向けて、関連行政機関の連携を強化する。
(5) 労働者派遣法の改正後に役割が拡大することが見込まれる有料職業紹介事業について、
適正な事業運営がなされるよう、指導・監督を強化する。
(6) いわゆる「個人請負」「委託労働者」について就労の実態を踏まえて労働法上の労働者
性が判断されるような行政解釈や立法的解釈も含めて必要な措置を講ずる。
(7) 多重就労の場合でも労働者保護が確保されるよう、①労働・社会保険の適用、②労働安
全衛生上の取り扱い、③労働時間管理のあり方などについて、その実現に向けたインフラ
整備のあり方(共通番号等)も含めて、横断的に検討する。
5.雇用労働環境の変化等に対応するワークルールの整備、確立をはかる。(「雇用・労働
政策」より再掲)
(1) 労働契約法の内容の強化・充実(「連合・労働契約法案」参照)。
①均等待遇原則を法制化する。
②労働契約法が対象とする労働者の範囲を拡大する。
③有期契約労働者保護のルールを整備する。
④ILO第 158 号条約(使用者の発意による雇用終了に関する条約)を批准する。
(2) 雇用形態や年齢、性別、障がいなどによる不当な差別を禁ずる法律を制定する。
(3) 労働基準監督官を増員し、法違反への適正・厳格な対応をはかる。また、派遣・請負・
個人請負など、多様化する雇用・就業形態に対応できるよう改革する。
(4) 国は労働者の基本的な権利・義務の周知・啓発を行う労働者教育施策を行うとともに、
都道府県が行う労働者教育施策について支援を行い、労働者の権利に関する理解を促進す
る。
6.すべての働く者に対する職業能力開発施策と日本の成長と競争力を支える人材の育成を
強化する。(「雇用・労働政策」より再掲)
(1) 国としての職業能力開発体制の充実・強化
①職業能力開発は雇用のセーフティネットであることを認識し、国として、これまで以上
に職業能力開発体制の充実・強化をはかる。
②独立行政法人雇用・能力開発機構の廃止、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機
構への移管にあたっては、独立行政法人雇用・能力開発機構が担っているセーフティネ
ットとしての訓練やものづくり分野の訓練の実施など、国の職業訓練機能を堅持した上
で、強化をはかる。その際、国・民間・都道府県の役割分担を明確にするとともに、組
織の運営には労働組合も参加する。
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(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
③求職者支援制度における訓練では、キャリア・コンサルタントによる求職者のニーズと
求人のマッチングで就職支援を促進するとともに、企業や地域のニーズ、人材不足分野、
新規雇用創出が期待される分野などにおける職業訓練や研修機会の拡大、訓練内容・訓
練期間の拡充・強化をはかる。その際、柔軟かつ機動的な見直しができるよう、労使の
意見を定期的に反映する場を地域ごとに設定する。
(2) 働く意欲を持つすべての者に対する職業能力開発機会の拡充
①正規雇用への転換を可能とするため、パート労働者、有期契約労働者、派遣労働者、請
負労働者などに対する国の職業能力開発施策を強化する。さらに、各種助成制度を活用
する等して企業の取り組みを促進し、正社員との職業能力開発機会の格差是正をはかる。
②「ジョブ・カード制度」について、より効率的・効果的な事業として見直しを行いつつ
も、制度の周知徹底、助成要件の見直し、訓練期間中の所得保障の強化などの見直しに
より、積極的な普及・促進をはかり、非正規労働者の正規雇用化に有効活用する。
③障がい者、母子家庭の母、生活保護受給者などについて、居住地近隣での職業訓練機会
を拡充するとともに、地方自治体・地域の教育訓練機関・公共職業安定機関(ハローワ
ーク)などが一体となり、就労に向けたきめ細かな支援を行う。
④「職業訓練バウチャー」(使途を教育訓練に限定させた利用券)制度を全国的に展開し、
若年者などの雇用保険未加入者や出産・育児・介護などにより職業キャリアを中断して
いる者に対する職業能力開発支援を拡充する。
⑤中小企業労働者や職業能力開発機会が限定されている地域に居住する者について、国・
地方自治体・地域の教育訓練機関などが連携し、職業能力開発に関する機会や情報にお
ける企業間格差・地域間格差の是正をはかる。
⑥個人請負、自営業者、起業を希望する者などについて、公共職業訓練機関において、情
報提供、相談・援助、ニーズに応じた講座・訓練の受講などの支援が受けられるよう、
体制整備を行う。
7.労働災害の予防と再発防止対策を強化し、労災補償を拡充する。(「雇用・労働政策」
より再掲)
(1) 派遣労働者に対する派遣元・派遣先による効果的で厳格な安全衛生教育の実施と、非正
規労働者も含めた事業主の「安全配慮義務」の履行を確保する法整備を行う。
(2) 派遣・請負労働者の安全衛生体制を強化するため、「製造業における元方事業者による
総合的な安全衛生管理のための指針」を義務化するとともに、製造業以外の業種において
も適切に適用する。
(3) 安全委員会・衛生委員会の設置義務をすべての事業場に拡大する。安全衛生委員会につ
いて、当面は現行の 50 人以上から 30 人以上に変更する。また事業場内の協力会社(下請
会社、派遣元など)の安全衛生担当者を含めた「合同安全衛生委員会」の創設義務づけを
検討する。
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(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
(4) 多重就労者の労災保険給付については、就労している複数の事業所で得ることのできる
収入の合算に対して補償額を決定する。
8.政府は、ディーセントワーク実現のための公契約基本法、公契約条例の制定等国内法等
の整備および、ILO第 94 号条約の批准をはかる。また、国や地方による入札制度を改
革する。(「産業政策」より再掲)
(1) 公契約(公共工事、サービス、物の調達など)に関する基本法を制定し、そのなかで公
正労働基準と労働関係法の遵守、社会保険の全面適用等を公契約の基準とする。法整備を
はかることにより、ILO第 94 号条約の批准をはかる。また、違反企業に対する発注の取
り消しや違約金の納付制度等のシステムづくりを進めるとともに、発注者の責任も明確に
する。
①「公共工事の入札および契約の適正化促進に関する法律」等、公契約に関する現行法に
関し、公正労働基準と労働関係法の遵守を盛り込む法改正を行う。労働基準法等の労働
法制に違反した企業を、発注対象から除外する条項を設ける。
②予算決算および会計令、地方自治法施行令を改正して、公共工事等の入札における透明
性確保、ダンピング受注に歯止めをかけるための措置を講ずる。
③努力義務として位置づけられている「予定価格と積算内訳」や「低入札価格調査の基準
価格と最低価格」等の情報開示を、法的に義務づける。
④各自治体においては、「公契約条例」を制定する。また、自治体の工事や業務委託の入
札・契約にかかわる条例や要綱等に、労働基準法等の労働法制や社会保障関連法規に違
反した企業を、発注対象から除外する項目を設けるとともに、発注者の責任も明確にす
る。
⑤ILO第 94 号条約(公契約における労働条項)の批准をはかる。
(2) 国や地方自治体による公共工事や公共調達等の入札にあたっては、透明性確保のための
措置を講ずる。公契約において、公正労働基準の確保、環境や福祉、男女平等参画、安
全衛生等社会的価値も併せて評価する総合評価方式の導入の促進をはかる。
①公共事業等の入札において、労働条件等を含めた総合評価方式の導入を促進する。また、
その際は、明確な評価基準を設定する。( P194「行政・司法改革」参照 )
②ダンピング受注の判断基準を明確に定める。発注機関において受発注者間で取り交わさ
れる契約には対象範囲を明記し、各々の責任範囲を明確にする。
(3) 国や地方自治体による公共工事の発注にあたっては、労働条件、安全衛生および品質を
確保する観点から適切な工期を設定する。
(4) 優越的地位の濫用を防止し公正な取引と透明な市場を確立するため、独占禁止法、下請
法を強化するとともに、公正取引委員会の体制および権限の強化、企業への周知徹底等に
より法の実効性を高める。
①独占禁止法の課徴金強化をはかるとともに、課徴金の対象を優越的地位の濫用、不当廉
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(横断的な項目)非正規雇用に関わる政策
売、差別的対価等「不公平な取引」まで広げる。また下請法(下請代金支払遅延等防止
法)については、資本金区分による適用を除外し全取引を対象とするとともに、銀行等
の金融機関による信用供与も対象とする。
②「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(ガイドライン)の周知徹底をは
かる。また下請法(下請代金支払遅延等防止法)については、資本金区分による適用を
廃止し全取引を対象とするとともに、銀行等の金融機関による信用供与も対象とする。
「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」の拡充をはかるとともに、下請法やガ
イドライン等を周知徹底させる。
③下請企業からの情報提供・申告等に対し親企業からの報復措置をなくすシステムを設け
る。また、単価の過度な水準引き下げ要求に対し、商取引における一定の規制を設ける
ことを検討する。
9.誰もが安全・安心で快適に住み続けることのできる賃貸住宅を整備するとともに、住宅
セーフティネットの構築を促進する。 (「国土・住宅政策」より再掲)
(1) 国・地方自治体は、「居住の権利」を基本的人権として位置づけ、低所得者や高齢者、
障がい者、子育て世代等、特に配慮が必要な世帯への公的賃貸住宅の供給を推進する。ま
た、民間の優良賃貸住宅に対する支援を強化する。
① 公営住宅への入居資格を持つすべての低所得者・住宅困窮者が入居できるよう、入居者
の公平性・効率性を担保した制度の見直しを推進する。
<実現に向けた取り組み>
(1) 連合本部は、アンケートや各種プロジェクト等による実態把握、審議会等における意見
反映、各府省に対する要請行動、政党との連携を通じた要求実現に努める。また、各種集
会、シンポジウム、学習会を開催し、組織内での共有化をはかるとともに、マスコミ対策
やインターネット等を活用した世論形成をはかる。
(2) 構成組織は、職場における非正規雇用の実態把握に努めるとともに、集会、学習会の開
催を通じた組合員への理解促進、職場決議採択等、職場段階の取り組みを強化する。
(3) 地方連合会は、地方自治体、経営者団体に対する要請行動、地方議会における意見書採
択に取り組むとともに、NPO団体等と連携し、地域における世論形成に努める。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
<背景と考え方>
(1) 民 主党政 権は、 「地域主 権改革 」を改 革 の 1 丁目 1 番 地と位 置づけ 、その 具体化 に
向けて、地域主 権戦略 会議を 設置し た。2010 年 6 月に は「地 域主権 戦略大 綱」を 閣議
決定し 、そ の中 で① 義務付 け・ 枠付 けの 見直し と条例 制定 権の 拡大、 ②基 礎自 治体 へ
の権限 移譲 、③ 国の 出先機 関の 原則 廃止 、④ひ も付き 補助 金の 一括交 付金 化の 具体 的
な方向 を示 した 。地 方分権 を進 める ため の地域 主権戦 略会 議や 国と地 方の 協議 の場 の
設置な どを 定め る地 方主権 改革 関連 法案 の早期 成立を はじ め、 地方分 権の 着実 な推 進
が求めら れる。
(2) 日本経済は、1990 年代初頭のバブル崩壊後、「地域間」「産業間」「企業規模間」「雇
用・就労形態による労働者間」など各分野ごとに格差の拡大・固定化が進んできた。この
20 年で疲弊し深刻な状況にある地方経済を活性化し、安定的経済成長と雇用創出を図って
日本経済を立て直すことが喫緊の課題である。 地域産業 の活性 化をは かるた め、国内の
生産 や研 究機 関等 、事 業活 動を 支援 する 環境 を 整備 し、 国内 企業 の国 際競 争力 を高 め
ると とも に、 地域 の特 性を 活か した まち づく り を推 進し 、知 識・ 産業 集積 等に よる 地
域雇用の 増大を はかる 必要が ある。
(3) ものづくりにおいて、新規技術の開発・実用化、基盤技術の振興、技能・技術の伝承等
を確立すると共に、これら産業・企業を核として、地域社会と連携した経済構造を構築す
ることで、より一層の強化をはかることが重要である。さらには、こうした産業・企業を
支え、地域経済を担う、人づくりにおいて、より高度な社会的意識の獲得、年代ごとの勤
労観の形成、技術者・技能者の社会的評価システムの確立、技術教育の充実などを社会シ
ステムとして確立しなければならない。同時に、労働政策面として、労働法等の周知徹底
と遵守、労災や職業病撲滅のため、職場環境の改善や労働条件全般の向上が必要である。
(4) 少 子高 齢化の 進展 に伴 って地 域ご との年 齢 構成・ 世帯構 成が 変化 し、地 域社 会に影
響を及 ぼし てい る。 今後の 国土 開発 にあ たって は、全 国一 律の 基準で はな く、 地域 ご
との特 性を 反映 した 、すべ ての 生活 者に とって 暮らし やす い国 土計画 ・都 市計 画・ ま
ちづく りを 進め てい かなけ れば なら ない 。また 、様々 な交 通手 段のベ スト ミッ クス を
確保し た上 で、 地域 住民の 生活 に必 要不 可欠な 交通路 線を 公共 財とし て維 持・ 確保 及
び活性化 するこ とが求 められ ている 。
(5) 核家族化や保護者の長時間労働の増加をはじめとした家庭を取り巻く様々な環境の変
化、都市化や地域のつながりの希薄化などを背景に、基本的な生活習慣や社会のマナー・
ルールなどを身につける教育力の低下が指摘されている。国・地方自治体は、身近な地域
において子育てサポーターなどで構成する「家庭教育支援チーム」を設置し、地域全体で
家庭教育を支えていく基盤の形成を促進しているが、学校・家庭・地域・企業・団体・行
政が一体となった、すべての子どもの教育力を高めるための取り組みや、ワーク・ライフ
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
・バランスの実現に向けた取り組みを継続・強化することが求められる。
(6) 地域ごとに経済状況や人口構造が大きく変化する中、それぞれの地域の活力を維持・向
上させるためには、住民生活に大きな影響を与える社会保障分野においても地域のニーズ
に対応する必要がある。しかしながら、地方部における病院の廃院や診療科の削減、医療
人材の地域偏在など、その対応は未だ十分ではない。また、介護分野では、医療・福祉サ
ービスとの連携による地域包括ケア体制の確立が急務の課題となっている。さらに、障が
い者が地域で生活するための権利保障や、都市部における保育所待機児童問題と地方部に
おける保育所閉園問題双方の解消など、多様化した福祉ニーズに対しては、地域毎にきめ
細かく対応する必要がある。このため、国が日本全国どこで暮らしていても安心して生活
することができるための「ナショナル・ミニマム」(最低基準)を示した上で、地方自治
体が地域毎の最適なサービスを提供する仕組みの構築が求められている。
<要求の項目>
Ⅰ.地方分権・地方財政に関する項目
1.国と地方の役割分担を明確にしつつ、地方自治の本旨に合った地方分権を進めるとともに、
充実した法案審議と住民の意見反映が行われる地方議会へと改革する。
(1) 国、都道府県、市町村の役割分担を明確にして国と地方との関係を再検討する。「基礎
自治体優先の原則」による行政に転換、地方自治体の事務範囲や公共サービスのメニュー
・水準等について、住民の意思を反映した制度設計が行える仕組みを整備する。その際、
保育、介護、児童養護、障がい者福祉、義務教育など、生存権や生命の安全の確保等、と
りわけ人のとしての尊厳や子どもの成長に深くかかわるサービスについては、国の最低基
準の確保を前提とする。(「行政・司法改革」より再掲 )
①国家としての存立に関わる事務や全国的な視野に立った施策、国の責任としてのセーフ
ティネット等、国が担うべき事務以外の事務については広く地方自治体が担うべく、地
方自治体の事務に対する国の義務づけを縮小する。
②国の直轄事業は、「全国的な見地から必要とされる基礎的または広域的事業」に限定す
る。国の直轄事業の範囲は法令に明示し、事業ごとの法的根拠の明示を義務づけるとと
もに地方負担のあり方を見直す。それ以外は原則として地方自治体が実施または管理す
るものとする。
③国の直轄事業については、国と地方の事前の協議制度を確立し、事業実施に際して地方
議会の議決を経る等、地方の合意のもとで必要な事業を実施する。
④法定受託事務はできる限り新設しないこととし、現行の法定受託事務についても適宜見
直し、自治事務を拡大する。
⑤地方自治体の自治事務に対する国の是正の要求については、国の関与を出来る限り抑制
するため、発動要件を厳しく限定する。
⑥都道府県と市町村の争いに関わる「自治紛争処理委員」については、独立した第三者機
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
関としての機能を十分に持たせる。
(2) 地方自治体は、地方議会の活性化に加えて、行政事務手続きの簡素化、行政情報へのア
クセス向上等に取り組むとともに、地方行政の政策決定過程や行政評価への住民参加を促
進させる。( 「行政・司法改革」より再掲 )
①都道府県、市町村において情報公開条例、行政手続条例、個人情報保護条例、行政評価
条例の制定を促進するとともに、外部監査制度を確実に導入する。また、行政サービス
の効率化、チェック機能等の役割を果たすNPOの活用を進める。
(3) 行財政基盤の強化および地方分権の推進に資する行政体制の確立を進める。( 「行政・司
法改革」より再掲)
①地方自治体は、地方行政の基盤強化や行財政運営の効率化をはかるとともに、都道府県
をはじめ区域を越える広域的行政課題に対応するため、住民合意のもと、広域連合制度
を活用する。
②地方自治体は、合併等地域住民に大きな影響を及ぼす事案については、住民投票を活用
してその是非を問う。その際、あらかじめ住民への情報開示を十分に行う。
③政府は、合併特例法における合併市町村議員の在任特例を廃止する。
④国・地方自治体は、道州制について検討する場合には、地方分権改革に関する諸問題に
ついて、自治と統治のバランスや、地方自治体の自立と相互連帯の観点から十分に検討
を行ったうえで、地方自治を実現するための手段・仕組みとして、そのあり方や具体像
について議論を深める。
(4) 地方自治体は、財政情報や財政運営情報の分かりやすい開示を行うとともに、議会審議
や監査の充実、オンブズマンによるチェック等、地方自治体財政の健全性確保に向けた仕
組みを構築する。( 「行政・司法改革」より再掲 )
①地方自治体の歳出について、歳出に見合った効果・便益があるかどうか、すべての分野
において住民参加による行政評価を徹底して必要性の少ない公共事業は縮小・廃止する
等歳出構造を見直し、効率的な公共サービスの提供を進める。
②地方自治体の財政再建にあたって、国および地方自治体は、それぞれの役割分担や国の
関与について明確にした上で、財政再建団体に陥る前の事前チェックを厳しく行う。ま
た、住民の代表である地方議会は、実効性ある行政監視の実施等の改革を進め、地方自
治体の行財政運営についてのチェック機能を強化させる。
③実際に再生団体・早期健全化団体となった場合においては、住民生活への過度な影響を
避けるため、住民の暮らしや安全、安心等に直結する住民サービス等の水準確保に十分
配慮する。
(5) 地方議会は、勤労者が議員を兼務できる環境を整備するとともに、勤労者、女性、学生
等広く住民の傍聴を促進するため、夜間・休日開催などの多様な開催形態を検討する。ま
た、首長による地域住民対話集会を開催する。( 「政治改革」より再掲 )
(6) 地方議会は、さらなる地方分権社会の実現のため、地方議会の利害調整、政策形成、監
視機関の各機能の充実に向けて、地方議会改革をめざす「議会基本条例」の制定に取り組
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
む。また、地方議会における「議員立法」推進のための制度や議会事務局の調査機能の拡
充など、「二元代表制」の機能充実のため環境整備を行う。( 「政治改革」より再掲 )
2.国と地方は、生活と雇用の安定・向上に責任を持ち、労働組合も参加した平等で公正・透明
かつ効率的な行政システムを推進するとともに、行政における情報公開と個人情報保護を徹
底する。(「行政・司法改革」より再掲)
(1) すべての国民が安心していつでも、どこでも国、地方自治体の提供する公共サービスを
受けられ、行政情報に容易にアクセスできる「電子政府」を構築し、国民生活の充実と経
済の活性化につなげる。(詳細はP186「行政・司法改革」参照 )
(2) 行政における公益通報者保護制度の状況については、特に市町村の制度の普及が遅れて
おり、改めてその徹底する。
(3) 行政における個人情報の保護の徹底をはかるとともに、個人情報保護法の適正な運用に
向けた行政自らの取組みと行政指導を行う。( 詳細はP193「行政・司法改革」参照 )
(4) 住民基本台帳の閲覧制度については、個人情報保護の観点から、行政機関が利用する場
合等公共性が認められる場合を除き、原則非公開とする。
(5) すべての地方自治体において貸借対照表を作成する等、会計制度の透明化を進め、財政
状況について情報公開を徹底する。
3.国と地方は、相続税、土地税制等資産課税の強化や、企業の社会的責任に見合った税・
社会保険料の負担、社会的課題に対応した公平で簡素な税制措置などを行うとともに、
地方分権にふさわしい地方税・財政をめざして改革を行う。(「税制改革」より再掲)
(1) 土地等の譲渡に関する税制の簡素化や国税、地方税等の課税標準となる土地の評価のあり方
について検討する。コンパクトシティづくりの促進や市街化調整区域内の土地利用のあり方等
に留意しつつ、租税特別措置を総点検し、課税ベースを拡大する。また、住宅にかかる登録免
許税と不動産取得税のあり方について、簡素化、地方財源化する方向で検討する。
(2) 地域による偏りが少なく安定的な地方税体系とする。
①所得税改革と歩調を合わせ、地方住民税の人的控除を所得控除から税額控除にかえる。
所得税の基礎税額控除の引き上げと歩調を合わせ、地方住民税の基礎税額控除(3.3 万
円→6.6 万円)と税率(10%→11%)を見直す。
②地方消費税は、一般財源とし、地方における社会保障給付費の増加およびその機能強化
等に対応して、段階的に引き上げる。
③地方法人特別譲与税の仕組みは廃止し、改正前に戻す。
④法人事業税における外形標準課税を原則すべての法人に適用する。中小企業については、
雇用安定控除の比率を引き上げる。
(3) 財政調整機能と財源保障機能の両方を兼ね備えた地方交付税の仕組みと現行の交付税水準を
- 263 -
(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
維持する。
①地方財政計画の仕組みを基本的に維持する。
②国と地方の協議の場等を活用し、地方財政計画の策定や地方交付税算定を行う等、決定
プロセスの透明化をはかる。
(4) 公共事業等に係わるひも付き補助金について、一括交付金化をはかる。地方にとって使い勝
手のよい制度となるよう、2011 年度の結果を検証し、仕組み等必要な見直しを行う。社会保障
や義務教育に係わる国庫補助負担金は、一括交付金化の対象としない。
(5) 住民の納得を得ながら行財政改革を進める。
①住民のニーズをふまえ、住民の立場に立った公共サービスとなるよう不断の見直しを行
う。それに伴う税負担等について情報発信し、租税教育を行う。
②地方行政に関わる情報を広く公開する。あわせて、住民が参加できる行政評価制度を導
入し、結果を公開する。
(6) 地方自治体の課税自主権の活用については、住民の行政参加を促し自治意識を高める観点か
ら、基本的には尊重する。ただし、新たな税を創設する際には、①地方自治体は、財政状況や
行・財政改革の計画を明らかにし、課税の必要性についての説明責任を果たす、②住民(法人
も含む)が参加して意見が反映できる機会を設ける、③既存の地方税との関係を整理する、こ
とを前提とする。
(7) 個人住民税における給与支払報告書の提出対象範囲の拡大にあたっては、年の途中に退職し
た者が翌年以降の納税に支障をきたさないよう、情報提供等の配慮を行う。
(8) 税法上の総所得が基準となる国民健康保険料等については、税法改正による連鎖的な負担増
とならないよう措置を講じる。同様に、総所得を基準として決定される自治体の補助金につい
ても、給付減とならないようにする。
(9) 中小企業の支援やディーセントワークを後押しする税制改革を行う。
①中小企業基本法にあわせる方向で、税法における中小企業の定義を見直す。
②中小法人に対する法人税の軽減税率を基本税率の 1/2 の水準とする。
③「雇用促進税制」について、政策効果等を検証し、より効果的な税制となるよう必要な見直
しを行う。中小企業に対する人材投資促進税制を復活させる。
④法定雇用率を上回って障がい者を雇用する企業、重度障がい者などを多数雇用している企業
に対して法人事業税を減税する
(10)各自治体において、NPOなど市民活動団体を支援するため、自分の納税する住民税の
一部について市町村を通じて寄附する仕組みを創設する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
Ⅱ. 新成 長戦略の推進、地域活性化に関する項目
1.地域の持てる資源を見直し、地域の特性を活かしたまちづくりを推進することで、知識
・産業集積等地域産業の活性化による地域雇用の増大をはかるとともに、核となる企業
への支援を行い、地域の連携を強化して、地域産業としての国際競争力を高める。また
ディーセントワークの実現のための公契約条例の制定など国内法等の整備を行う。(「産
業政策」より再掲)
(1) 国内企業の国際競争力を高めるために、「安心」、「安全」、「エコロジー」をキーワ
ードとした産業・企業の変革を促すと共に、核となる企業への地域連携を主導するなど、
国内における生産や研究開発等、事業活動を支援する環境を整備する。
①地場にある資源見直しや産業の掘り起こしを行い、中核となる地場産業等の企業群を定
め、地域との連携を図り、関連企業の誘致・育成を進める。また、国や地方が企業を支
援する際は、対象企業が雇用環境の改善や地域社会に貢献する事を条件に加える。
③地方自治体と連携し、海外の産業集積地の誘致策を研究し、企業ニーズにマッチするオ
ーダーメイド型の新しい企業誘致策を実施する。同時に、海外企業の誘致を積極的に進
める。
(2) 地方自治体と連携し、地域の特性を活かした知識・産業集積を促進し、地域雇用の増大
をはかる。
①国および地方自治体が実施する支援等は、次の観点をふまえ、全国一律的な基準ではな
く、地方の特性・実態を活かしたものとする。
a)関係省庁・地方自治体は地域の各種セクターと連携し、支援等を使いやすいように整
理するとともに周知徹底をはかる。
b)支援等の使途・事業年度は事業の特性に応じ柔軟に設定できるようにする。
c)支援等の評価・検証は地域住民の理解を得られるよう情報開示を徹底する。
②インキュベータ施設、賃貸工場、産学連携施設等、産業支援環境を整備する。インキュ
ベータ施設においては、地域産業との連携や施設を拠点とした多様な人的ネットワーク
を生かしたビジネスマッチングを推進する。
③技術を評価し、企業に斡旋する等、コンサルティング能力、技術商社機能をもつNPO
の設立を地域で支援する。
④共同受注グループの活動を活性化させるため、共同受注時の契約書の雛型や権利関係を
まとめた指針を作成する。
⑤ベンチャー・ビジネスを支援するために、融資制度の拡充、地域プラットフォーム等創
業支援体制の拡充、技術開発の促進策の強化等の支援を行う。
⑥NPO・コミュニティビジネス等のいわゆる社会的企業に対する支援を拡充する。
(3)
介護・福祉分野、農林水産業、教育等地域雇用の創出につながる分野を育成・活性化し、
そのために必要な環境整備を行う。
(4) 雇用創出量が大きく、経済波及効果も見込める観光産業については、新成長戦略で策定
された国家戦略プロジェクトを確実に推進する。( 詳細はP35「産業政策」参照 )
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
(5) 地域の自立的な取り組みに基づいた特色ある地域の活性化並びにわが国全体の経済成長
に資する戦略的拠点としての総合特区について、制度の構築、及び指定・運営の推進をは
かる。( 詳細はP37「産業政策」参照 )
(6) 地域を担うステークホルダーと連携をはかり、中心市街地の活性化に向けては、再開発
や大型施設の誘致等ハード事業に過度に依存することなく、地域固有の資源を活かしたソ
フト事業も重視した取り組みを行う。また、「中心市街地活性化協議会」においては、地
域の様々な主体・人材の参画や、基本計画への意見反映等、実効性を担保した組織・内容
とする。
(7) 地域経済を支える企業の事業再生、地方自治体が主体的に取り組む第三セクター改革を
支援するとともに、企業、公的セクター、地域関係者、労働組合等と十分な協議を踏まえ、
地域の面的再生への支援を行う。
(8) 雇用の安定・創出を実現するために、全都道府県に労使と連携し懇談会・研究会を設置
する。地域の労働組合代表が、地域の産業振興と雇用・労働条件の維持・安定等、地域活
性化策について、地方経済産業局はもとより、47 都道府県に設置されている中小企業再生
支援協議会と意見・情報交換を行う場を設ける。また、従来の産官学の連携に加え、地域
金融機関、地域の労働組合が参加する「産官学金労」が一体となって、地域雇用の創出、
新事業展開、技術開発等の地域産業活性化策を検討する場を設ける。
(9) 各自治体においては、「公契約条例」を制定する。また、自治体の工事や業務委託の入
札・契約にかかわる条例や要綱等に、労働基準法等の労働法制や社会保障関連法規に違反
した企業を、発注対象から除外する項目を設けるとともに、発注者の責任も明確にする。
2.自立した中小企業の基盤を確立し、独自の高度な技術と経営基盤の確立に向けた支援を
行う。(「産業政策」より再掲)
(1) 中小企業に対するサービスを一元化する窓口である中小企業支援センターの役割を拡充
し、中小企業向けサービスの向上に努める。( 詳細はP39「産業政策」参照 )
(2) 中小企業に対する高度な技術支援と生産基盤強化のため、産学官の共同研究を積極的に
推進し、国が持つ技術や特許権を有効に活用できるシステムを構築する。
(3) 中小企業の経営戦略確立のため、中小企業診断士や技術コンサルタントの指導を受ける
際の助成を行う。
(4) 中小企業者による新卒者の採用を支援するため、ハローワークや、雇用・能力開発機構
等行政の外郭諸団体が積極的に採用会を開催する。さらには、業界団体・協同組合等が共
同採用会を開催する団体を支援する。
(5) 中小企業に対し、業務効率化による生産性の向上や、求人時における効果的な企業PR
が可能となるように、ICTの利活用を促進するための支援を行う。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
3.国・地方は、ブロードバンドネットワークを高度化するとともに、サービスの中断等による
暮らしへの影響を与えない安定・継続的なサービスを提供する。(「ICT(情報通信)政
策」より再掲)
(1) インフラ整備にあたっては、公正な競争を通じた基盤整備を原則としつつ、中山間地域
や島嶼部などインフラ整備が遅れている地域や、教育機関における整備を促す助成の仕組
みを十分なものとする。
(2) 国や地方自治体は、大規模災害時等におけるバックアップ体制の構築などを事業者に指
導するとともに、ブロードバンド通信の位置づけや利用方法等を定める。
4.政府は、デジタルデバイド対策を徹底し、誰もが簡易に情報通信を利活用でき、どこからで
もアクセスできるネットワーク環境の整備を進めると同時に地域等を要因とする格差を生じ
させない。あわせて、情報通信リテラシー教育の充実や個人情報の保護やハイテク犯罪を防
止するなどの対策を強化する。(「ICT(情報通信)政策」より再掲)
(1) 国民、勤労者が情報通信を十分活用することができるために、情報通信の利用方法につ
いて、誰もが理解し、身につけられるようなインフラや機会を提供する。学校・生涯学習
機関・公民館、駅、空港などの公的施設で、ブロードバンドをはじめ情報通信サービスを
無料または安価に利用できる仕組みを確立する。
(2) 高齢者、障がい者をはじめ、デジタルデバイドに関する不安を持つ割合が高い層につい
て、新しい技術の普及が生活の質の向上をもたらすことが実感できるよう、リカレント教
育の体制整備や、障がい者の利活用促進に向けたユニバーサルサービスの推進に対して支
援をする。
(3) 初等・中等教育において、利用者の立場でのマナー等も含めた情報通信リテラシー教育
の充実をはかる。
(4) ネットワークへの不正アクセスや情報通信利用に伴う消費者被害を未然に防止するた
め、誰もが受講できる各種教育を充実させる
(5) 情報通信利用に伴う様々な問題について、誰もが相談・申告しやすい受付窓口および紛
争解決機関を整備・充実させる。
5.「グリーン・ジョブ戦略」に関する政策を推進するとともに、国内における温室効果ガ
ス排出を削減するための国民の理解と協力のもとに各種施策を強化・推進する。その際は、
「環境と経済の両立」を基本に、各種施策の長所と短所を精査し最適な組合せ(ポリシー
ミックス)とする。(「環境政策」より再掲)
(1) 国・地方自治体は、「グリーン」な雇用の拡大・創出が期待できる下記の分野等に対し、
重点的に投資を行うとともに、産業支援・投資促進の施策を実施する。
①非化石エネルギーの利用拡大(太陽光発電、風力発電、中小水力、地熱、原子力等)に
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
関連する機器の製造、供給の拡大、設備の整備
②化石エネルギーの高度利用(天然ガスシフト、CCSを含むクリーン・コール・テクノロ
ジー等)
③非食物由来バイオエネルギーの供給
④資源(地下水、雨水、雪等)の有効活用
⑤住宅・オフィス(新築・改築)の断熱仕様化・省エネ化
⑥学校・公共施設の耐震補強・石綿(アスベスト)除去
⑦化石燃料に依存しない自動車等の開発・製造
⑧都市間交通における鉄道利用の拡大
⑨公共交通機関の利便性の向上と有効活用
⑩持続可能な農業・林業・水産業・畜産業の振興
⑪持続可能な都市計画・まちづくり(省資源型の道路・信号・街灯の敷設、円滑な移動手
段(徒歩・自転車利用、渋滞解消)の確立)
(2) 国・地方自治体は、環境・エネルギー技術の深化・革新を通じ国内外の気候変動問題を
解決する観点から、各部門(産業、運輸、業務その他、家庭、エネルギー転換)ごとに、
技術的な導入可能性や費用対効果、短・中・長期の時間軸の観点を踏まえた実効性や国民
の受容性など、その実情を踏まえた対策を推進する。
対策の策定にあたっては、新たに創設する府省庁横断の公正で透明な国民的議論の場に
おいて、労働代表や産業代表、消費者団体など広範な当事者による国民的議論を徹底する。
( 詳細はP152「環境政策」参照 )
(3) 国・地方自治体は、森林整備事業においては、川上としての施業の集約化や路網の整備
と機械化、川中での木材市場や加工工場の集約、川下での国産材利用の促進等、川上から
川下まで一貫した対策を支援することで生産性の向上図り、事業として成立する環境づく
りを行う。
(4) 国・地方自治体は、間伐材等の木質バイオマスとしての利用を促進し、CO2削減や山村
の経済活性化を図る。
(5) 国・地方自治体は、生活における省エネの推進等、国民の環境意識を高め、家庭・地域
等での環境問題に対する取り組みを強化する。
(6) 国・地方自治体は、ヒートアイランド対策として、緑化地域の確保・保存等、地域の温
暖化防止と環境保全の対策を推進する。
(7) 国・地方自治体は、環境に関する実態を把握し、改善目標を定め環境関連条例の制定を
推進する。また、都市計画を策定する場合は、行政、各種事業者、住民が一体となって推
進するとともに、「地球温暖化対策地域推進計画」を住民参加で作成し、着実に実行する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
6.食料自給力の向上と安全な食料の安定供給のために農林水産業の競争力強化および地域
振興に向けた対策の強化をはかる。(「食料・農林水産政策」より再掲)
(1) 国および地方自治体は、地域資源を生かした6次産業化を促進するため、起業家を支援す
るとともに、起業家を支援するコンサルタントの育成に努める。
(2) 国・地方自治体は、必要に応じて強い農業に資する農業施設整備関連及び農業関連公共
事業予算の充実を図る。
(3) 国・地方自治体は、非食料資源によるバイオ燃料の普及・促進を推進する。
(4) 国・地方自治体は、高齢化・過疎化が進む中山間地域の活性化と国土の均衡ある発展、
環境と景観の保全、都市と農村漁村の交流の推進のため、関係省庁、地方自治体、NPO、
民間団体等が協力してIターン、Jターン、Uターン等により地方で暮らし、生活したい
人のための基盤や受け入れ体制の整備に努める。
(5) 地方自治体は、食育を推進するため「食育基本計画」を策定し、学校教育および社会教
育における体験学習等の充実をはかる。特に、地場農産物を使用した学校給食や休耕地を
使用した学習農園等を進め、農・林・漁業の現状を学ぶとともに、食べものへの感謝の心
や地産地消への意識を醸成する機会をつくる。
(6) 国・地方自治体は、飼料・畜舎等の生産コストおよび流通コストの低減等を一層推進す
る。
(7) 国・地方自治体は、経営の安定と生産の効率化をはかるため、地域内・経営内の繁殖・
肥育一貫生産を推進する。
7.持続可能な農林水産業の確立と意欲ある農・林・水産就業者の育成と確保をめざす。
(「食
料・農林水産政策」より再掲)
(1) 国・地方自治体は、循環型農業を推進するため、家畜ふん尿や食品残さ等の有機性資源
のリサイクル等を推進する。
(2) 国・地方自治体は、循環型社会の構築と資源の有効活用の観点からも食品のリサイクル
を推進する。
(3) 国・地方自治体は、森林整備とあわせて、バイオマス(生物由来の有機性資源)による
非食用資源の利活用等、資源循環型農林漁業をさらに推進する。
(4) 国・地方自治体は、農地の有効利用および新規雇用の創出をはかるため、多様な農業生
産組織(担い手農家・農業生産法人・農業サービス事業体等)の育成を支援する。
(5) 国・地方自治体は、新規就農・林・漁業者を含めた幅広い担い手の育成・確保のため、
都市と農山漁村、および教育機関が連携した広域的な募集をおこなう。
(6) 国・地方自治体は、最低経営面積の縮小等の農地取得条件の緩和、技術経営研修、就労
条件や融資等の支援策の抜本的整備をはかる等、雇用創出の面からも、幅広い希望者が第
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
一次産業に参入しやすい条件を整備する。
(7) 国・地方自治体は、農業就業人口の約6割を女性が占める等、農村社会の維持・活性化の
ために女性の果たす役割が大きいことから、女性の経営参加や起業活動の推進のための支
援を強化する。
(8) 国・地方自治体は、農林水産業における機械化による省力化をさらに進め生産性をあげ
るため、その機能と設備コストダウンの複合的な研究開発を推進する。
(9) 国・地方自治体は、農業および林業経営の条件不利地域に対しては、国土と自然環境の
保全、水資源涵養、景観保全、国土の均衡ある発展をめざす等の見地に立って総合的な政
策を策定、実施する。
(10)国・地方自治体は、地域の特性を活かした農山漁村の振興や活性化のために、公共事業
や非公共事業にとらわれない事業のより一層の拡充をめざす。
(11)国・地方自治体は、漁業者の漁業技術および経営管理能力の向上や後継者の育成・確保
をはかるとともに、労働環境の改善を促進する。そのため、関係省庁が緊密な連携に努め、
高校・大学等を通じた実践的な専門教育の充実と専門知識を生かした雇用・就業機会の確
保とともに、女性の参画を促進する。
8.地球温暖化防止と山村振興が連動した森林整備・保全対策を総合的に推進する。(「食
料・農林水産政策」より再掲)
(1) 国・地方自治体は、森林整備の促進および林業における新規雇用の創出に向け、林業労
働者の確保・育成および山村の振興・活性化を目的とした施策を充実させる。
(2) 国・地方自治体は、民有林における不在村森林所有者・不明境界の確定を進めるととも
に、林業事業体(森林組合・林業会社等)を育成する。
(3) 国・地方自治体は、国産材の需給改善に向け、川上と川下が一体となり木材を安定的に
供給するためのシステムを構築するとともに、国産材利用の拡大をはかる。
(4) 国・地方自治体は、流域を保全し木材を安定的に供給するため、国有林は国、民有林は
都道府県が中心となっている現状を改善し、双方が十分に連携する体制をつくる。
9.国民にとって安心・信頼でき、地域経済の活性化に資する金融システムを構築する。
(「経済政策」より再掲)
(1) 政府は、地域経済を支える中小企業・地場産業の活性化に資する金融環境の整備を進め
る。特に、中小・地域金融機関とその顧客との長期安定的な金融取引機能を強化し、中小
企業・地場産業の事業運営を資金面から支えて「育成、再生」を強力に進め、地域経済の
活性化を実現するための政策を最優先で実行する。そのために、金融機関の企業への融資
姿勢を物的担保主義、個人保証依存から、「事業育成」の視点に立った経営コンサルタン
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
ト能力を高めることを通じて、融資先企業の将来性・発展性を重視したものに変革するた
めの政策を実行する。
①改正金融機能強化法に基づく公的資金注入行に対しては、中小企業向け貸出比率目標お
よび貸出残高目標達成に向け厳しく指導を行う。さらに、これらの銀行が中小企業・地
場産業への融資継続や新規融資に際しては、人員削減や賃下げ等の労働者の労働条件引
き下げ要件を付すことなく、市場動向や技術力等の評価を取り入れるよう促す。
②金融庁は、中小企業の実態を反映し適切に実施するため、「金融検査マニュアル別冊(中
小企業融資編)」の趣旨・内容を検査官に一層周知徹底する。
③中小企業再生支援協議会、整理回収機構の企業再生機能の一層の強化、企業再生支援機
構の継続活用が可能となるような法的措置などにより、雇用維持・安定を最優先とした
当該企業の再生を進める。
④都道府県の中小企業再生支援協議会は、政府から支援を受けつつ、労働組合の参画を得
て、中小企業の再建計画策定支援を積極的に行う。
⑤信用保証制度の保証枠および対象業種の拡大を通じ、民間金融機関等の融資を促す抜本
拡充をはかる。また、適正な制度運営を通じて、中小企業等の育成、支援、再生をはか
り、倒産を防止する。
⑥政府系金融機関は、地域の民間金融機関と協調のもと担保免除特例制度やDIPファイ
ナンス(事業再生支援融資)を拡充し、中小企業等への事業融資を強化する。
⑦金融機関が地域金融の円滑化にどの程度貢献しているかについて情報公開する「地域金
融円滑化法(金融アセスメント法)」を制定し、中小企業等への円滑な資金供給と地域
経済の健全な発展をはかる。なお、中小企業等に対する金融円滑化対策の総合的パッケ
ージの一環である「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する
法律」については、その目的に沿った運用を行う。
⑧地域金融機関は、債務企業の「再生」「活性化」を最優先に据え、不良債権処理にあた
っては、地域経済を支える中小企業・地場産業の役割・特性を十分に踏まえた上で、不
良債権の直接償却を多用することなく、間接償却も併用し、計画的に進める。不良債権
の直接償却を行う場合は、民事再生法や会社更生法等、法的整理や、「私的整理ガイド
ライン」に則った債権放棄を重視するとともに、必ず労働組合等が関与し、労働債権の
保護をはかる。
Ⅲ. まち づく り に関 する 項目
1. 低炭素社会の実現を中心に据え、地域の特長を生かした、ひとに優しい多様で柔軟なま
ちづくりを推進するとともに、住生活基本計画(都道府県計画)の見直し・実施に際し
ては、多様な市民が参加できる仕組みを整備する。(「国土・住宅政策」より再掲)
(1) 国・地方自治体は、国土計画・都市計画・まちづくりは住民参加型を基本とし、地域住
民の理解と合意のもとに推進する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
(2) 地方自治体は、無秩序な市街地拡散を抑制し公共交通を整備・再生する等、環境負荷が
少ないまちづくりを推進する。( 詳細はP122「国土・住宅政策」参照 )
(3) 国・地方自治体は、高齢者や障がい者を含む、すべての生活者が快適に暮らすことがで
きる、ユニバーサルデザインに基づいたまちづくりを推進する。
(4) 国・地方自治体は、地球温暖化防止・ヒートアイランド現象対策の観点も含め、都市計
画・まちづくりにおいては、都市・建築の緑化および都市近郊の緑地・農地の保全を重視
する。
(5) 国・地方自治体は、老朽化した公的賃貸住宅等の再生を進めるための公的支援を拡大す
るとともに、良好な街並みや景観、再生完了後の維持管理に配慮する等、地域価値が向上
する再生計画を推進する。
(6) 景観法に基づく景観行政団体となった地方自治体は、景観条例制定による景観保護規制
を強化し、景観アセスメントシステムを確立する。
(7) 国・地方自治体は、オフィスビルの新築・改修時に、省エネルギー型設備の導入をさら
に促進するとともに、ビル・エネルギーマネジメントシステム(BEMS)や省エネルギ
ー支援サービス(ESCO)などの事業育成のための補助金制度を拡充する。
(8) 国・地方自治体は、住みやすいまちづくりと国産材活用の観点から、地籍調査を強化す
るとともに、利用優先の土地活用と地価安定により、生活と経済の安定をはかる。
(9) 国・地方自治体は、まちづくりと連動した土地政策を推進するため、土地取引の情報提
供、土地行政の連携強化等を実施し、土地市場の透明化・活性化を推進する。
(10)都道府県は、住生活基本計画(都道府県計画)の見直しにあたって、多様な地域住民、
NGO・NPO等の意見を反映する。
(11)市区町村は、住生活基本計画を策定する。策定にあたっては、多様な地域住民、NGO
・NPO等の意見を反映する。
2.社会資本整備においては、既存社会資本の老朽化対策を行うとともに、公共性・社会性
を重視しつつ、利便性・必要性や投資効果の観点から優先順位をつけた上で整備を進め
る。(「国土・住宅政策」より再掲)
(1) 国・地方自治体は、橋梁、上下水道施設、港湾岸壁など既存社会資本の老朽化対策を行
うとともに、地域住民の生活・安全・環境に関連した社会資本を優先的・効率的に整備す
る。( 詳細はP124「国土・住宅政策」参照)
(2) 国・地方自治体は、公共事業について、国民的な合意を前提とし、限りある財源を有効
に活用するため、重要性や緊急性に応じて、優先順位をつけ対応する。
(3) 国・地方自治体は、交通施設の整備に際しては、都市計画・まちづくりの視点、各交通
機関の役割分担や既存施設の活用、効率化と利便性向上、自然環境への配慮を重視して推
進する。( 詳細はP124「国土・住宅政策」参照 )
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
3.防災・減災機能を強化し、自然災害に強い国土づくりを推進する。(「国土・住宅政策」
より再掲)
(1) 国・地方自治体は、地域防災機能を強化するとともに、自然環境保護との両立を基本に、
流域における森林・農地・河川などを一体とした治水計画を作成・実施する。( 詳細はP125
「国土・住宅政策」参照 )
(2) 国・地方自治体は、地下河川や地下遊水池を含む河川整備を推進するとともに、道路の
透水性・排水性舗装への転換を促進し防災機能を強化する。
(3) 国・地方自治体は、情報通信・上下水道・ガス・電気などのライフラインの安心・安全
を担保するとともに、学校・病院・空港・港湾・旅客施設・主要幹線道路などの公共施設
における耐震補強や老朽化対策を早期に完了させる。
(4) 国・地方自治体は、2005 年に兵庫県が始めた、被災者が自然災害の被害を受けた住宅を
再建・補修するための相互扶助の仕組みである「被災者住宅再建共済制度」を創設する。
(5) 地方自治体は、自然災害が発生した後に建築物の敷地・構造および建築設備の安全・衛
生・防火・避難等の状況について、土木・建築に関する公的資格を有する者が検査・判定
し、その結果を報告する現行の「被災宅地危険度判定」・「応急危険度判定」制度を強化
・統合する。
(6) 国・地方自治体は、防災上、緊急整備を要する地域や被害・復旧コストを明確に公表し、
地域住民の自然災害に対する認識を深める。また、「都市防災総合推進事業」の範囲を拡
大し、都市以外においても「災害危険度判定調査」を実施する等、防災整備事業を拡大す
る。
4.誰もが安全・安心で快適に住み続けることのできる賃貸住宅を整備・住宅セーフティネ
ットの構築を促進するとともに、環境等に配慮した安全で良質な住宅・設備を適正価格
で取得・改修できる住宅政策を推進する。(「国土・住宅政策」より再掲)
(1) 国・地方自治体は、「居住の権利」を基本的人権として位置づけ、低所得者や高齢者、
障がい者、子育て世代等、特に配慮が必要な世帯への公的賃貸住宅の供給を推進する。ま
た、民間の優良賃貸住宅に対する支援を強化する。( 詳細はP126「国土・住宅政策」参照 )
(2) 国・地方自治体は、ユニバーサルデザインに基づいた、誰もが安全・安心・快適に暮ら
すことができる、賃貸住宅への改修・建て替えを促進する。
(3) 国・地方自治体は、公的賃貸住宅の建て替え、設備充実(利用者の要求に合致した住宅
設備への改善や居住水準への誘導等)、バリアフリー化(エレベーター・手摺設置等)、
防犯対策等に対して経費補助を実施し、事業期間の短縮を推進する。また、民間賃貸住宅
に対しても、その入居者の状況等、一定の要件のもと、経費補助を実施する。
(4) 国・地方自治体は、住宅に係るトータルコストを抑え、資源消費や産業廃棄物の発生を
抑制するため、「長期優良住宅(いわゆる 200 年住宅)」の普及を促進する。
- 273 -
(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
(5) 国・地方自治体は、 環境(アスベスト対策を含む)・耐震・ユニバーサルデザインに適
応した住宅の建築への転換をはかる。また、転換を促進するため改修・建築に係る税制優
遇や費用補助を拡大する。
(6) 国・地方自治体は、環境に配慮した住宅・設備を適正な価格で取得・改修できるように
するため、税制の優遇や費用の補助を拡大する。( 詳細はP128「国土・住宅政策」参照 )
(7) 国・地方自治体は、既存住宅の質や管理状況を反映させた価格査定方法の普及、リフォ
ームにかかる費用を含む既存住宅への融資、新築住宅における固定資産税の軽減などとの
同等化を推進する。
(8) 国・地方自治体は、住宅売買時における住宅性能表示、瑕疵担保責任、修繕記録、管理
情報、紛争処理等に関する情報提供と、NGO・NPOおよび住宅・建築の専門家・専門
家団体による相談窓口を整備する。
(9) 国・地方自治体は、シックハウス対策に関して、原因物質(ホルムアルデヒド等)以外
の代替物質も含めて総量規制を導入する等、指針策定を促進する。また、建築資材等に含
まれる有害物質に関して、事業者への意識啓発、居住者への情報提供を推進する。
(10)地方自治体は、サービス付き高齢者向け住宅を活用するなど、高齢者が築いてきたコミ
ュニティを維持しながら、地域に住み続けられる仕組みづくりを推進する。また、居住の
安定と居住用資産の有効活用をはかるため、自己所有の住宅等を担保として高齢者に融資
を行うリバースモーゲージ制度の拡大・普及にむけた検討を進める。
5. 総合的な交通・運輸政策により、市民が安全かつ適正料金で利用できるようにする。
(「交
通・運輸政策」より再掲)
(1) 政府は、生活における移動を市民の権利として保障し、交通・運輸政策の基本理念・政
策目標・基本方針などを規定する「交通基本法」を制定する。地方自治体は、交通基本法
に基づく「交通基本計画(仮称)」を策定する際には、交通・運輸産業に従事する労働者代
表の意見を反映する。
(2) 国・地方自治体は、交通基盤整備においては、その公共性・社会性を重視しつつ、収益
性・利便性・必要性の観点から計画の是非を判断し、各交通機関の役割分担に基づき実施
する。( 詳細はP133「交通・運輸政策」参照 )
(3) 国・地方自治体は、交通のシビル・ミニマム(生活基盤最低保障基準)維持の観点から、
経費補助基準を規定し、市民生活に必要不可欠な地域公共交通に対して助成を行い、路線
・航路を維持・確保する。特に山間部・離島等に関しては、地域振興と一体となった維持
対策を行う。(詳細はP133「交通・運輸政策」参照 )
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
6. 環境負荷の小さい円滑な交通・運輸体系の構築やすべての利用者が交通機関・交通施設
等を快適に利用できるよう、各種施策を推進する。(「交通・運輸政策」より再掲)
(1) 国・地方自治体は、地域公共交通を有効活用した交通体系を整備する。また、公共交通
機関や自転車、徒歩によるエコ通勤を推進する。( 詳細はP133「交通・運輸政策」参照 )
(2) 国・地方自治体は、環境対応車の開発・普及、交通渋滞の解消、自転車を共有して使う
「コミュニティサイクル」の推進など、環境負荷の小さい交通・運輸体系を構築する。( 詳
細はP134「交通・運輸政策」参照)
(3) 国・地方自治体は、「総合物流施策大綱(2009-2013)」に基づき、自動車・鉄道・航空
・海運等の各物流機関を最適に組み合わせ、安全かつ効率的で、環境負荷の小さい物流体
系の整備を推進する。( 詳細はP134「交通・運輸政策」参照)
(4) 国・地方自治体は、ユニバーサルデザインに基づき、すべての利用者が円滑に移動・乗
換えができる、交通機関・交通施設の整備を促進する。( 詳細はP135「交通・運輸政策」参照 )
(5) 国・地方自治体は、点字ブロックや誘導ブロックの規格統一、音声案内や画像案内の設
備導入、色覚障がい者にも判読しやすい標識設置などを推進する。
(6) 国・地方自治体は、歩車分離式交通信号の設置、歩道と自転車道の分離、歩道と車道の
分離、交差点のカラー舗装化、二輪車駐車場の整備、交通信号機の発光ダイオードへの変
更、電線の地中埋設など、安全で人間優先のみちづくりを推進する。
(7) 国・地方自治体は、観光・地域活性化の観点から、案内板や観光案内所などの多言語対
応、主要観光地や交通施設におけるIT環境整備、通訳案内士の充実など、訪日外国人の
受入れ環境を整備する。また、観光マネジメントなど観光人材の育成にも積極的に取り組
む。
Ⅳ. 地域 雇用・労働対策、人材育成、教育に関する項目
1.セーフティネットを拡充し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)
を中心に据えた雇用の拡大をはかるとともに、劣化した雇用の質を回復させる。(「雇
用・労働政策」より再掲)
(1) 政労使が雇用(ワーク・ライフ・バランスなどの問題を含む)・産業政策などを一体で
議論する社会的対話を進める。とりわけ、地域においては、地域の特色を踏まえた雇用・
産業政策を策定するため、「地域雇用戦略会議」などの場を活用し、定期的な議論を行う。
(2) 公共職業安定所(ハローワーク)は、以下の原則にもとづく体制とする。
①国と地方自治体との協同連携による就労支援・生活支援を含めた一体的運営を行う場合、
地域の労使による参画により、求職者・利用者の利便性向上をはかる。
(3) 地域雇用対策の推進
①地域主体の雇用創出策を実施に向けて、「ふるさと雇用再生特別交付金」や「緊急雇用
創出事業」を延長するとともに、「地域雇用創造推進事業(パッケージ事業)」の継続
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
・拡充をはかる。
②国(都道府県労働局/地方経済産業局など)・地方自治体・地元経済界などで構成され
る「地域雇用戦略会議」を全都道府県で設置するとともに、同会議への労働組合の参加
を確保し、地域の雇用創出、地域活性化策などについて総合的に検討する。
③国は、地域主体の雇用創出・地域再生に向けて、Iターン、Jターン、Uターンの促進
による人材確保、人材育成、起業促進、企業誘致などについて必要な支援を行う。
(4) 若年者の雇用対策
①ニート対策として生活支援プログラムを拡充する。
②いわゆる「就職氷河期世代」の年長フリーター対策として、正規雇用化に向けて、きめ
細やかなキャリア・コンサルティングと、職業訓練と就労支援を軸とした施策を強化す
る。
③若者の勤労観・職業観を育むため、学校教育におけるキャリア教育や中学校などにおけ
る職場体験を拡充する。
④各省庁の連携強化により、卒業後の雇用を見据えた教育の実施やインターンシップなど
の職業体験等、「学校」から「職場」への円滑な移行、雇用の拡大をはかる。
⑤高等学校における進路指導(就職指導も含む)体制の強化をはかるため、「進路指導ア
ドバイザー(仮称)」(1 校 1 名)の配置や教職員に対する研修実施、企業や労働組合、
ハローワークとの連携強化を行う。
(5) 女性の就労支援策
①マザーズハローワークの拡充、求人開拓、能力開発の促進、保育・介護サービスの拡充
など、妊娠・出産・育児などにより退職した女性の再就職を支援する施策を行う。また、
求職や職業訓練に際しての託児サービスの提供など、利便性の向上をはかる。
(6) 男女の職務分離の改善を進め、男性の多い職務への女性の進出、女性の多い職務への男
性の進出を積極的に推進するために学校教育、職業能力開発、職業紹介、男女均等取り扱
い等の関連する行政の連携を進める。
(7) 都道府県の「男女共同参画基本計画」の達成状況を監視し、都道府県に対して勧告する
権限を有する評価委員会を設ける。委員会は、当該地域の労働組合、経済団体、NPO・
NGO、女性団体などで構成する。
(8) 「第 3 次男女共同参画基本計画」を着実に達成する。( 詳細はP228「男女平等政策」参照)
(9) 偽装請負・違法派遣の一掃に向けた指導・監督を強化するとともに、請負現場における
労働関係法令(職業安定法、労働者派遣法、労働基準法、労働安全衛生法など)の遵守お
よび社会・労働保険の加入徹底に向けて、関連行政機関の連携を強化する。
(10)不払い残業を撲滅し、労働基準が確実に履行されるため、厚生労働省通達「労働時間の
適正把握基準」、「賃金不払残業総合対策要綱」および「賃金不払残業の解消を図るため
に講ずべき措置等に関する指針」の周知徹底と相談窓口の充実などをはかる。
(11)地域別最低賃金は、雇用形態による賃金格差を縮小させ、賃金を底支えする役割を期待
されている。すべての労働者が生活保護水準を上回ることはもとより、必要最低生計費の
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
実態や一般労働者の賃金水準も考慮して、早期に全ての地域で 800 円を実現し、さらに平
均 1,000 円を達成すべく、審議会の適正な運営にかかる支援を行う。
(12)労働基準監督官の増員などにより監督行政の抜本的強化をはかり、違反事業所の摘発な
どを通じて最低賃金の遵守を徹底する。
2.労働災害の予防と再発防止対策を強化し、労災補償を拡充するとともに、労働紛争の解
決の迅速、適正化に向けて紛争解決機関などの整備・改善を行う。(「雇用・労働政策」
より再掲)
(1) 労働災害の予防対策の強化
①労働基準監督官による災害時監督・災害調査や指導を強化するとともに、労働安全衛生
法に違反した事業主に対する罰則を強化する。また都道府県労働局安全衛生労使専門家
会議については、機能の強化、予算の増額、専門委員の権限の拡充等を図り、中小事業
場における労災防止に資するものとする。
②地方自治体と、精神科医、自殺予防に取り組むNGO/NPOの連携を強化し、地域ぐ
るみの自殺対策を有効に機能させる体制を整備する。
③中小企業に対して、労働者への安全衛生教育の充実に向けた支援を行う。また、リスク
アセスメントやOSH-MS導入の支援、安全衛生サービス専門機関や専門家等の無料
照会等を行う。
④安全衛生委員会の設置義務をすべての事業場に拡大する。衛生委員会の設置基準につい
て、当面は現行の 50 人以上から 30 人以上に変更する。
(2) 都道府県は、専門的知識と経験を持つ職員の育成・配置など、労働委員会の事務局体制
を強化する。
(3) 都道府県労働局の紛争調整委員会による紛争解決の実効性をあげるため、体制を強化す
るとともに出頭命令などの権限を付与する。
(4) 労働者が利用しやすい労働紛争事件解決機関となるよう、労働審判、都道府県労働委員
会、都道府県労働局の紛争調整委員会を強化するとともに、各機関が協力して周知徹底を
はかる。また、労働紛争解決機関の協議・意見交換や紛争解決機関と労働相談を行ってい
る機関(国、自治体、労働組合、NPO、民間ADR)との協議・意見交換ができる場を
設置する。
3.中小企業における勤労者の福祉の向上をはかる。(「雇用・労働政策」より再掲)
(1) 中小企業勤労者の福祉の充実に向け、中小企業勤労者福祉サービスセンターに対する支
援を強化する。また、国からの経費の一部負担が 2010 年度をもって全廃されることから、
事業のあり方等を含め自立化に向けた支援を促進する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
(2) 「人材の確保・育成」の支援のため、中小企業労働力確保法にもとづく各種助成制度の
活用促進や優遇税制等経費の負担軽減措置など、中小企業にとって実効性ある総合的な施
策を構築する。
(3) 中小企業における高齢者雇用の促進のため、高齢者の継続雇用や定年引き上げ等に対す
る助成金を継続する。
(4) 複数の中小企業が事業協同組合等を活用した障害者雇用率制度を適用する際は、雇用主
として責任を確保するよう指導徹底する。
(5) 中小企業労働者や職業能力開発機会が限定されている地域に居住する者について、国・
地方自治体・地域の教育訓練機関等が連携し、職業能力開発に関する機会や情報における
企業間格差・地域間格差の是正をはかる。
(6) 技術・技能の継承や人材の確保・育成などについて課題を抱えるものづくり産業の中小
企業に対し経済産業省・厚生労働省・文部科学省など等の連携を強化し、人材投資促進税
制の継続や人材の確保・育成に関する支援措置を拡充する。
(7) 中小企業退職金共済制度への加入促進と勤労者財形制度の普及・啓発を促進する。
(8) 一般の中小企業退職金共済制度では、「掛金納付期間が 1 年未満は支給なし(2 年未満
は掛金納付額を下回る)」となっているが、企業の倒産・廃業の場合には掛金相当額が受
給できるよう措置を講ずる。また、特定業種退職金共済制度においても、一般の中小企業
退職金共済制度と同様に「掛金納付期間が 1 年未満は支給なし」となるよう措置を講ずる。
(9) 中退共と税制適格年金を併用している企業における税制適格年金からの中退共への移行
を可能とする。
(10)時間外労働の法定割増率を時間外 50%、休日労働 100%、深夜労働 50%に引き上げる。
とくに、休日労働の割増率は 35%から 50%以上に早期に引き上げる。また、改正労働基準法
第 37 条による月 60 時間超の割増率引き上げについて、中小の適用猶予措置は早期に廃止
する。
4.わが国経済の根幹を担う人材の育成をはかるとともに、すべての働く者に対する職業能
力開発施策と日本の成長と競争力を支える人材の育成を強化する。
(1) 「ものづくり基盤技術基本計画」の着実な実行を確保するとともに、ものづくりの重要
性を認識し、実感できる初等・中等・高等教育の実施、さらには、生涯にわたる技術・技
能の修得・継承の促進・支援を通じ、国民の勤労観の確立を目指した、人材の育成をはか
る。( 「産業政策」より再掲 )
①ものづくり基盤技術振興基本法の実効性を確保するため、ものづくり技術・技能の継承
はもとより、世代に偏りのない技術・技能労働者の確保と人材の育成に向けて「基本計
画」を確実に実行する。また、子どもたちや若者が高度熟練技術・技能者に憧れを抱け
るよう、技術・技能評価制度の社会的認知の向上をはかる。さらに、現代の名工等の優
れた人材を社会が評価し活躍できる仕組みをつくる。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
②ものづくりに関連する業種・職種における高度熟練技術・技能労働者を社会全体の財産
と位置づけ、社会的評価を向上させると共に、有効的な活用をはかる。( 詳細はP38「産
業政策」参照 )
③若年労働者のものづくり現場への就業意識を高めるため、小学校・中学校段階からのも
のづくり教育の履修時間の拡大と内容を充実させるとともに、職場体験学習の機会を増
やす。また、高校・高専・短大・大学では、インターンシップを単位として認める制度
を普及させると同時に、専門高校・高専・大学の工学教育において、産業界の技術者等
の外部講師を積極的に活用する等、理論に偏らない実践カリキュラムを盛り込む。これ
らの施策を通じて勤労観の確立につながるよう努める。
(2) 地域活性化に資するまちづくりを担う人材育成のため、地域を担うステークホルダーと
連携を図り、具体的な支援策を講じる。(「産業政策」より再掲 )
①地域活性化策を進めるにあたって最大の課題となっている人材不足の打開に向けて、ま
ちづくりを担うリーダーを市民の中から登用するしくみづくりを進めるとともに、地域
リーダーに対する効果的な育成を行う。
②インキュベーションマネジャーの育成を強化し、地域産業を創造し活性化する人材の創
出を支援する。
(3) 政府は、「高度情報通信社会」を支える人材の確保に向け、企業に労働環境の整備を含
めた対策を促す。また、高等教育における情報通信専門人材の育成を行い、初等教育から
高等教育までのトータルな情報通信教育を充実させる。( 「ICT(情報通信)政策」より再
掲)
(4) 政府は、グローバル化に対応する中期的な視野に立った人材育成の将来展望と戦略を確
立し、国際競争力をもつ高度な情報通信技術者や情報セキュリティ人材育成に向けた育成
システムを構築する。( 「ICT(情報通信)政策」より再掲 )
(5) 政府は、企業等における情報通信人材育成に関する投資を支援する仕組みを実現する。
また、高度な情報通信技術者を客観的に評価できるシステム(ITスキル標準)を普及さ
せる。( 「ICT(情報通信)政策」より再掲 )
(6) 国としての職業能力開発体制の充実・強化(「雇用・労働政策」より再掲)
①独立行政法人雇用・能力開発機構の廃止、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機
構への移管にあたっては、独立行政法人雇用・能力開発機構が担っているセーフティネ
ットとしての訓練やものづくり分野の訓練の実施など、国の職業訓練機能を堅持した上
で、強化をはかる。その際、国・民間・都道府県の役割分担を明確にするとともに、組
織の運営には労働組合も参加する。
②求職者支援制度における訓練では、キャリア・コンサルタントによる求職者のニーズと
求人のマッチングで就職支援を促進するとともに、企業や地域のニーズ、人材不足分野、
新規雇用創出が期待される分野などにおける職業訓練や研修機会の拡大、訓練内容・訓
練期間の拡充・強化をはかる。その際、柔軟かつ機動的な見直しができるよう、労使の
意見を定期的に反映する場を地域ごとに設定する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
(7) 働く意欲を持つすべての者に対する職業能力開発機会の拡充(「雇用・労働政策」より再掲 )
①障がい者、母子家庭の母、生活保護受給者などについて、居住地近隣での職業訓練機会
を拡充するとともに、地方自治体・地域の教育訓練機関・公共職業安定機関(ハローワ
ーク)などが一体となり、就労に向けたきめ細かな支援を行う。
②中小企業労働者や職業能力開発機会が限定されている地域に居住する者について、国・
地方自治体・地域の教育訓練機関などが連携し、職業能力開発に関する機会や情報にお
ける企業間格差・地域間格差の是正をはかる。
(8) 産業政策・雇用政策・教育政策と連携した職業能力開発施策を推進する。( 「雇用・労働
政策」、「教育政策」より再掲 )
①国と地方自治体のハローワーク一体的運営により、国・地方自治体・教育訓練機関・企
業・労働組合などが連携し、無料職業紹介・職業訓練・就職が連動した離職者支援体制
を確立・強化する。
②地域が主体となり、国・地域の労使・教育機関などの関係者が連携し、地域の特性を活
かした中期的な産業政策、人材育成施策を構築する。
③公共職業能力開発施設(国・都道府県設置)は、地域の「技術・技能センター」として
位置づけ、国、地方自治体、企業が連携して、新規学卒者、離・転職者、在職者などに
対し、ものづくりなどを重視した職業訓練を強化する。
④技術・技能の継承や人材の確保・育成などについて課題を抱えるものづくり産業の中小
企業に対し、関係省庁の連携を強化し、人材投資促進税制の継続や高度熟練技能者の活
用、人材の確保・育成に関する支援措置を拡充する。
⑤男女の職務分離の改善を進め、男性の多い職務への女性の進出、女性の多い職務への男
性の進出を積極的に推進するために、学校教育、職業能力開発、職業紹介、男女均等取
り扱いなどの関連する行政の連携を進める。
⑥大学等高等教育機関は、企業・地域との連携を強化し、産学一体となってわが国の成長
を支える厚みのある人材層を戦略的に形成する。
5.地域に根ざした社会的教育基盤を整備し、家庭・学校・地域が一体となって子育て・教
育を推進する。(「教育政策」より再掲)
(1) 保護者が子どもの成長段階に応じて、基本的な生活習慣や社会のマナー・ルールなどを
身につける子育て・家庭教育を実践するために、「親教育」を推進し、そのための環境整備
を推進する。
①国・地方自治体は、地域子育て支援拠点事業を拡充し、保護者からの相談と子どもの「心
のケア」の双方に対応するための環境・設備を、専門機関・専門家と連携して整備する。
( 詳細はP206「教育政策」参照 )
(2) 地域コミュニティの拠点として、「開かれた学校」づくりなど、学校・保護者・地域の
コミュニケーションの充実につながる環境・インフラ整備を推進する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
①地方自治体は、学校単位に、教職員、保護者、地域住民の代表などが、学校運営や協力
のあり方に関する協議をする、「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」、
「学校評議員会」などの設置を推進する。また、事務職員の増員など学校の事務体制を
充実する。
②地方自治体は、教育委員会および学校単位に、学校運営に参加・協力・支援できる個人、
団体・企業などで構成する「学校協力員制度(仮称)」を導入する。
③地方自治体は、学校が地域コミュニティの拠点としての機能を発揮するための設備の改
善を推進する。(詳細P206「教育政策」参照 )
④地方自治体は、夏・冬休みのほか、体験活動や保護者とのふれあいなどを重視した「子
どもの休暇制度(仮称)」を創設するなど、家庭・地域の教育機能が発揮できるよう環
境整備を進める。
(3) 学校と地域が連携し、地域に根ざした社会教育が有機的にはかられる環境整備を推進す
る。
①地方自治体は、公立小・中学校の学校選択制度を導入する場合、保護者・地域住民の意
向を尊重する。なお、既に実施されている自治体・学校の状況を把握し、学校間格差が
拡大しないよう進める。
②地方自治体は、地域で守られてきた個性豊かな行事や民俗・芸能など伝統文化の継承・
発展をはかる。地域の文化・芸術拠点である美術館・博物館と学校・社会教育機関など
の連携を強める。
(4) 地域において、子どもが安全かつ健全に成長するための環境整備を推進する。
①地方自治体は、安全管理体制を確立するため、学校警備員などの配置を進める。また、
放課後に子どもが安全に過ごせる「放課後子ども教室」などの設置を推進する。
②学校・家庭・地域・行政が一体となり、通学路の安全ネットワークづくりを進めるとと
もに、登下校時の安全確保に向けた施策を推進する。
③地方自治体は、自然の中で子どもたちが自ら考え、工夫して遊び方を学べる施設や、災
害時の避難場所も兼ねた「空き地」を地域に作る。
(5) 地方自治体は、児童(子ども)の権利条約を地域社会に根付かせていくため、「子どもの
権利条例(仮称)」を制定する。
Ⅴ. 地域 医療、介護・福祉、子育て等に関する項目
1.政府は、雇用政策と生活保護制度をつなぐ新たな社会的セーフティネットを構築する。
(「福祉・社会保障政策」より再掲)
(1) 社会保険・労働保険によるセーフティネット機能を強化するとともに、新たな生活保障
制度を構築する。
①現在の生活保護制度と雇用保険制度をベースに、積極的な雇用労働政策と連動した社会
保険・労働保険制度の機能強化(第 1 層)、職業訓練や生活支援を内容とする「求職者
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
支援制度」(第 2 層)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障するための「最
後の砦」としての給付制度(第 3 層)による三層構造のセーフティネットに再構築する。
( 詳細はP85「福祉・社会保障政策」参照 )
②国および地方自治体は、「生活保障給付」制度の実施機関を、以下のとおりとする。
a)申請受理、調査、ケースワークは、現行の生活保護制度における福祉事務所が担う。
そのため、生活問題の複雑・多様化等福祉現場の業務拡大等を踏まえ、ケースワーカ
ー(現業員)等職員の人件費、福祉事務所の事務費等について国庫負担に含め、職員
の専門性を高める。
b)ケースごとに福祉事務所、共同出資機関、公共職業安定所、生活支援に必要な専門的
なサービスを提供する機関や専門職等の役割を定め、これらの連携を確実なものとす
る。就労・自立支援プログラムの内容、実施状況、給付の停・廃止の判断等を中立・
客観的に評価できる仕組みとする。
c)給付を必要とする人が申請の権利(保護請求権)を確実に行使できるよう、実施機関
の窓口に申請書式一式を備え置くことを義務づける。
d)受給者の権利擁護をはかるため、苦情や相談、不服申し立て(審査請求)を受付け、
調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。
(2) 国および地方自治体は、住居を持たない生活困窮者に対して生活保護の給付を行い、併
せて社会的なつながりに対する支援を充実させていくほか、緊急一時保護施設(シェルタ
ー)の活用、自立支援センターの整備・拡充等の適切な対応をはかる。
(3) 国および地方自治体は、ホームレスの自立支援にあたっては、新たな貧困層(ワーキング
・プア等)等若年層への支援を含めたパーソナル・サポートなど、就業支援事業や自立支援
センターの退所者に対する相談・支援体制を整備・拡充するなど、就業機会の確保による
自立支援策を強化する。なお、同法の第 11 条(公共施設の利用が妨げられている場合は、
その管理者が適正利用のための必要な措置を講じる)は、国際人権法に則ったうえでの措
置とする。
2.だれもが適切な負担で、良質な医療サービスを受けることができるよう、国民皆保険体
制を堅持し、地域医療提供体制の確立と医療保険制度の再構築をはかる。(「福祉・社
会保障政策」より再掲)
(1) 患者の選択を支援する医療情報の充実をはかるとともに、医療・医薬品の安全管理対策
を強化し、安心と信頼の「患者本位の医療」を確立する。
①患者自身が自らの選択により安心・安全な医療サービスを受けられるよう、医療機関、
保険者からの情報提供だけでなく、国や地方自治体、学校等における積極的な患者教育
を行う。
(2) 地域の実情に応じ医療人材や診療科の適正配置を進めるとともに、医療機関間および医
療と介護の機能分担と連携強化に取り組み、良質で安心の地域医療提供体制を確立する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
①地域の医師不足を解消するため、政府・自治体(医療対策協議会等)は、各医療圏ごとに、
産科、小児科等の診療科ごとの偏在に配慮した具体的な必要医師数を定める。診療所を
含めた各医療機関や医科系大学に対して、医師の適正配置に向けた協力を義務づける。
適正配置に協力する医師の対象は、専門医の後期臨床研修医を含め、初期臨床研修(2
年間)終了後の医師とする。また、新たに開業する医師は、一定期間以上の救急医療、
へき地医療での臨床経験等を開業の必要要件とする。
②各地域において必要な医療サービスを確保するため、都道府県は、無医地区の解消、第
2 次医療圏における救急診療や夜間・休日診療体制、周産期医療・小児医療体制の確立
等、整備目標や整備責任を明確にした地域医療計画の策定を進める。その際、必要に応
じて医療圏の見直しを行った上で、すべての第 2 次医療圏に地域医療支援病院( 注 8)を
設置することを基本とする。民間病院、公立病院双方が地域医療の中核を担っている現
状を踏まえつつ、国と地方自治体が連携して、その基盤整備に必要な財政支援措置の確
立をはかる。
(4) 被用者保険と地域保険の両立により保険者機能が発揮される医療保険制度体系により、
安定的な「国民皆保険」体制を確立する。
①国民健康保険は、保険料格差の是正、財政運営の安定化のため、都道府県単位に広域化
する。それに伴い、保険料徴収、保健事業、保険者における審査・支払機能の強化等、
新たな保険者機能の体制整備等について検討を進める。その際には、国保の加入者の運
営参画が可能な体制を確立する。また、国保組合については、被用者保険との役割の違
いを明確化させ、被保険者の実態や財政状況に応じて必要な見直しを行う。
②高齢者医療制度については、保険者機能が十分に発揮されるしくみとするため、働き続
ける高齢者は被用者保険に加入し続けることとし、退職者は a)被用者保険グループが共
同で支える「退職者健康保険制度」(仮称)への加入、b)被用者保険への任意継続加入、
c)地域の国民健康保険への加入―を選択可能とする。
(5) 健康寿命の延伸をめざし、地域ぐるみ、街ぐるみの健康ネットワークを構築し予防・健
康づくりを進めるとともに、一層の公衆衛生の向上をはかる。
①すべての人々に対する健康増進の取り組みを重視し、個人の行動の変化に結び付けてい
くため、行政や保険者だけでなく、産業界、マスコミ、教育機関、NPO、労働組合な
ど社会全体で生活習慣病の予防など健康社会づくりに取り組む。
②メンタルヘルスを含めた様々な疾病への理解と予防や対処法、医薬品等の適切な使用方
法等について、企業、自治体、学校等、あらゆる場での健康教育の徹底をはかる。
③市町村の健康増進事業を促進するため、市町村健康増進計画の策定を義務づけるととも
に、健康づくり、健康管理に対する市民の意識向上をめざす。
④だれもが居住地で健康相談や指導等が受けられるよう、保健所や市町村保健センターを
はじめ、大規模スーパーや駅ビル等に健康相談所を配置する。
⑤新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)対策については、国、地方自治体、
企業、医療機関等が一体となった連携体制を整備する。国は、すべての国民が適切な治
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
療や予防処置が受けられるよう、抗インフルエンザ薬、ワクチン等の生産・備蓄体制の
充実をはかる。また、他の感染症について国、地方自治体、企業、医療機関等による連
携体制のもとで、平時から対策の検討をすすめる。
3.介護サービスや支援の安定的な供給を維持・発展させ、地域全体で介護を支える体制を構築
する。 (「福祉・社会保障政策」より再掲)
(1) 国は、地域間格差が生じないように、地域包括ケア体制を推進し、自宅・介護施設など
を問わず日常生活圏で必要な医療、介護、福祉サービスの提供を受け、地域で尊厳あるく
らしが送れるよう、医療と介護の機能分化・連携をはかる。
①国および地方自治体は、地域包括ケアシステムを確立し、介護にかかる総合的なコーデ
ィネートとして、地域包括支援センターの機能を拡充する。
②国および地方自治体は、住宅・施設介護の総合相談・支援、寝たきり・認知症予防、レ
スパイトケア、家族など介護者(ケアラー)相談などを充実させる。
③国および地方自治体は、医療と連携した在宅介護サービスを充実させる。
④国および地方自治体は、「地域包括ケアシステムの実現」に向けた地域包括ケア体制の
整備推進に対し、医療保険者、被保険者の声が反映できる仕組みにする。
(2) 国および地方自治体は、高齢者虐待防止法や地域包括支援センターの役割について住民
への周知をはかり、認知症などの高齢者が行うサービス事業者との契約や金銭管理などに
ついての権利擁護システムが積極的に利用されるよう促す。
(3) 国は、住宅・特定施設の整備をはかり、尊厳あるくらしを確保する。
①地方自治体は、有料老人ホームの把握の徹底と指導・監督態勢を確保する。なお、防火
対策や消火設備の設置、防災訓練に関する指導強化についても盛り込むこととする。
②地域における介護ニーズの実情に応じて、高齢者専用賃貸住宅の質と量を確保するなど
多様な住まいの整備を推進する。また、介護保険施設の参酌標準の撤廃を踏まえ、介護
保険施設およびグループホームなどの適正な整備をすすめる。
4.障がい者が地域で生活する権利を保障した、インクルーシブな社会(共生社会)を実現
する。(「福祉・社会保障政策」より再掲)
(1) 障がい者の社会参加と権利を保障するため、国連の障害者権利条約の批准に向け、障害
者基本法改正、「障がい者差別禁止法」(仮称)の制定、障害者雇用促進法の改正、障害
者自立支援法にかわる「障がい者総合福祉法(仮称)」の制定など、障がい者権利条約の
批准を可能とする国内法の改正・整備を行う。
①都道府県、市区町村の「障害福祉計画」策定においては、障がい者・住民の意見を取り
入れ、地域生活移行に関するサービス基盤の整備に関する数値目標を明記する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
②国や地方自治体は、災害が発生した場合には発生場所、規模、内容、今後の動向など必
要な情報を障がい者に提供する体制を整備する。また、災害時に障がい者と連絡を取り、
必要な支援を提供できるよう、災害情報の提供に当たっては、障がい者の特性に配慮し
た伝達手段やコミュニティネットワークの整備などが提供されるよう必要な施策を講ず
る。
(2) 障がい者が地域で生活する権利を保障し、自ら選択する地域への移行支援と移行後の生
活支援や、障がい福祉サービスが保障される障害者自立支援法に代わる「障害者総合福祉
法」(仮称)を制定する。
①国・地方自治体の支援は、従来の福祉施策の分野にとどまらず、学校、職場、その他社
会参加を促進するための分野を含め、横断的にカバーする。
②国・地方自治体は、地域移行に向けて、自宅や賃貸住宅における生活支援や 24 時間介助、
過渡的にはグループホームやケアホームなど地域社会における多様な生活を可能とする
支援体制を確保する。
③国・地方自治体は、障がい者の地域移行を計画的に進めることとし、そのための住居の
整備を計画的に推進する。
④地方自治体は、障がい者の地域における生活を実現するために相談体制の整備をはかる
など、障がい者及び家族支援を行う。
⑤障がい者の地域生活支援体制を確立する。これら様々なニーズに積極的な対応をはかる
ため、地域ごとに「障がい者総合生活支援センター(仮称)」を設置し、包括的な支援
体制を整備する。
(3) 障がい者の就労支援と所得保障を確立する。
①障がい者の就労施策について「一般就労」と「福祉的就労」のはざまを埋める「社会的
就労」(保護的就労)など新たな働き方についても、先進自治体などにおけるモデル事
業を推進する。
②国・地方自治体は、公契約の総合評価方式の得点の中に福祉への配慮の得点の中に知的
障がい者、 精神障がい者の新規雇用、雇用のための支援体制、 障がい者雇用率、など
を加点する。
(5) 「福祉のまちづくり」の推進に向け、保健・福祉、都市環境・住宅、交通、教育、雇用
政策等関係省庁の連携を行い総合的なまちづくりを推進する。( 詳細はP112「福祉・社会保
障政策」参照 )
5.すべての子どもの豊かな育ちと男女が協力しながら仕事と子育てを両立することができ
る社会の実現に向け、「子育て基金」(仮称)の創設など、子ども・子育てを社会全体
で支える仕組みを構築する。(「福祉・社会保障政策」より再掲)
(1) 地方自治体は、次世代育成支援対策協議会の設置など、自治体における次世代育成支援
対策を推進する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
(2)国および地方自治体は、子を持つすべての保護者が、ゆとりと責任を持って子育てができ
るよう、社会的な支援を強化する。
①多様な保育ニーズに応えるため、保育制度の改善・拡充をはかる。
a)大胆な財政投入を行い、保育サービスの量的拡大を早急に実現する。保育所の設置に
あたっては、最低基準を満たすことを前提に、学校の余裕教室の活用等をすすめる。
b)市区町村の保育に係わる責任を明確にし、保育の必要性・必要量の認定、入所の優先
順位の決定、受け入れ保育所の入所調整に関する市町村の関与を維持・強化する。ま
た、保育施設の設備および運営についての国の最低基準は維持・改善する。
c)乳児保育、延長保育(幼稚園における預かり保育を含む。)、病児保育、夜間保育、
休日保育等の拡充のため、国や都道府県等の財政支援を強化する。また、家庭的保育
事業(「保育ママ」)、ファミリー・サポート・センターの整備も促進する。
d)待機児童解消「先取り」プロジェクトの推進および更なる拡充など、保育所の待機児
童の解消や兄弟姉妹が同保育園に入所できるよう地域ごとの保育ニーズに対応したサ
ービスの拡充を早急にはかる。その際には併せて保育の質の確保のための対策を講じ
ることとする。
e)過疎地の保育について、安定的にサービス提供ができるよう施策を拡充する。
②放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童を解消し、保育環境を向上させるため、次の
措置を講ずる。
a)市区町村の放課後児童クラブの実施責任を明確にし、小学校区に最低1つを早急に整
備する。設置にあたっては、学校の余裕教室を利用するなどして、児童の利便と安全
を考慮する。
b)保育時間の延長、入所要件の弾力化、対象年齢を小学 6 年生までとするなど、地域の
ニーズと実情に応じて多様なサービスの提供を推進する。併せて、障がい児を受け入
れることが可能な体制を整備する。
③保護者の育児不安、地域での孤立を解消するために、身近な場所での子育て支援相談や
子育てを支える地域ネットワークづくりを推進するとともに、保護者が適切なサービス
を利用できるよう「子育て支援総合コーディネート事業」を推進する。
(3) 国および地方自治体は、児童虐待の予防と対応策を強化するために、次の措置を講ずる。
①児童福祉関係行政機関である児童相談所、福祉事務所、保健所、保育所、学校、民間団
体、NPO等の連携を強化するため、市町村による要保護児童対策地域協議会の設置を
徹底し、同協議会が児童虐待等の予防・早期発見・早期対応に十分機能することを確保
する。
②児童虐待相談処理件数の急増に対応し、児童相談所を増設するとともに、都道府県に対
する児童福祉司の配置基準を大幅に引き上げ児童福祉司を増員し、24 時間 365 日体制の
整備に全力を挙げる。自治体が配置基準を満たしさらに超えて配置するための財政基盤
を確立する。また、相談員、児童心理司等専門職員の配置を増やし、予防的な取り組み
等児童相談所の機能を強化する。
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(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
(4) 国および地方自治体は、思春期・青年期における対策を強化する。
①思春期精神疾患に関わる専門家の養成を行うとともに、アウトリーチ(訪問支援)型の
相談支援サービスを強化する。
②ひきこもり地域支援センターの設置を促進するとともに、同センターの周知をはかる。
③思春期に関わる総合相談窓口の設置に向け、学校や児童相談所、ひきこもり地域センタ
ーおよび地域若者サポートステーションなどの関係機関の連携を強化する。
<実現に向けた取り組み>
(1) 主体的で特色ある地方分権社会づくりに向け、地方連合会の政策担当者の交流会を行い、
地域における政策の取り組み事例を紹介し合う等、地方連合会における主体的な政策要求
実現運動を強化する。
(2) 各都道府県においても、予算策定時の雇用創出量の明示を求めるとともに、地域産業の
活性化、雇用の安定・創出を検討・実行するために、政労使による懇談会・研究会の設置
を求めると共に、既に、設置された会議において積極的な意見反映に努める。
(3) 地方連合会は、政策実現に向けて自治体要請などの働きかけを強めるとともに、必要な
課題については地方議会における意見書採択を行う。また、社会的広がりをもつ課題につ
いては、経営者団体やNPO団体へ働きかけを行い、幅広い世論形成と運動展開に努める。
(4) すべての市民が良質・安全な住居に居住できるよう、構成組織・地方連合会と連携して
国土交通省・地方自治体等への取り組みを強化する。
(5) 住生活基本計画(都道府県計画)の見直し、住生活基本計画(市区町村計画)の策定に
際して、労働者代表としての意見反映と協議参画を要請する。
(6) 交通のシビル・ミニマム(生活基盤最低保障基準)確立の観点から、「地域公共交通活
性化・再生法」および「道路運送法」により設置される各種協議会等へ労働組合代表の参
加や意見反映が行われるよう、構成組織・地方連合会と連携し地方自治体等への取り組み
を強化する。
(7) 地方連合会は、都道府県教育委員会の会議開催や議事録の公開状況など、運営や開催の
実体把握を行い、住民参加の地方教育行政を推し進める。
(8) 地方連合会および構成組織、単位労働組合は、各種の教育機関で、学生・生徒の勤労観
・職業観の形成や、自立した社会人として働くために必要な知識・技能・能力の修得、進
路選択の判断材料に役立つ産業の実態などに関する講座を持てるように働きかける。
(9) 地方連合会と連携し、都道府県の医療計画の策定や、全国健康保険協会の運営に対して、
積極的な参画を進める。「健康日本 21」等、健康づくりに向けた各種活動に対しても主体
的に取り組む。また、#8000(小児救急医療電話相談)、#7119(救急相談センター)や地
域の医療や健康に関する相談窓口等を積極的に活用し、救急医療体制の適正な利用をすす
める。
(10)地域包括ケアシステムの実現に向け、介護保険事業(支援)計画の策定、地域包括支援
センター運営協議会などに対する労働組合の参画を一層促進するなど、地域での取り組み
- 287 -
(横断的な項目)地方分権・地域活性化に関わる政策
を強化し、利用者、被保険者、労働者の立場から介護保険制度の適切な運営を求める。
(11)自治体に対して「次世代育成支援対策地域協議会」の設置および労働組合の参加を求め、
地域の次世代育成支援対策を推進する。
(12)地域福祉や勤労者自主福祉の充実に向け、労福協・労金・全労済、退職者連合、NPO
等と連携し、労働相談や生活相談等「ワンストップ・サービス」活動を推進する。
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政 策・制 度 要 求 と 提 言
希望と
の
安心
り
くり
づ
づく
社会
2012 ∼ 2013 年度
-2011 年 7月∼ 2013 年 6月-
∼
2
0
1
2
Japanese Trade Union Confederation
( JTUC-RENGO)
年度
2
0
1
3
日本労働組合総連合会
この印刷物で本文に使用している用紙は、
森を元気にするために間伐した木材の
有効活用に役立っています。
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