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● ワークショップ開会挨拶
司会 司会を務める政治経済学部教授の武田巧です。本学部は過去10年ほどにわた
ってグローバル化に向けて舵をとり、変革を遂げて参りました。短期留学プログラ
ムの変革においてリーダーシップを発揮されたのが、こちらの政治経済学部学部長、
大六野耕作先生です。
大六野 短期留学プログラムは2007年、ボストンのノースイースタン大学から学生を
迎えたのが、その第一歩でした。07年以降は「短期留学プログラムで学生の考え方
が変わるのではないか」、「キャリア設計の幅も広がるのではないか」と考え、多様
なプログラムを展開してきました。本日は3名の留学経験者によるプレゼンテーショ
ンの後、各大学代表者にお話をしていたただき、パネルディスカッションは「短期
留学から得る成果」「留学前と後に生じる変化」について考えます。学生の意識に
変化が起きれば、学生の世界観が変わり、行動様式も変わってくる。そんな観点か
ら短期留学プログラムについて考えていきます。政治経済学部としては、学生に留
学させるなら、単なる言語習得ではなく、留学先の国や地域の政治、経済、社会に
つい学ばせたい。こうした観点から、それぞれの学部や大学が望む短期留学のあり
方を考えてみたいと思います。
●留学経験者のプレゼンテーション
積田 積田和茂です。1年間マンチェスター大学で開発学を学び、国連機関で国連
ユースボランティアとして6ヵ月間のインターンシップを経験しましたが、そのき
っかけかは1年次の短期留学でした。夏休みの1ヵ月30名以上の本学学生と共にイギ
リスのシェフィールド大学に留学しました。目的は、まず英語を話せるようになる
こと。次に、違う国や文化の経験を楽しむこと。海外に行くのは初めてで大変楽し
みでした。海外への漠然とした夢や憧れがあったにせよ、明確な目標があったわけ
でも、それを支える論理的根拠もなかったのですが、自分が何を学び、感じられる
のか、そうした事を単純に経験したかったというのが本当のところです。
帰国後は自分の英語力が不十分であると実感、英語学習のモチベーションが上が
りました。留学を心から楽しんだので、次にいつ留学できるか考えるようになり、
留学は難しくないと思えるようになりました。「夢や憧れ」が「本当の目標」にな
り、自分の態度や考え方に変化が起こりました。私は次の留学準備に取り組みまし
た。大学では政治経済学部にしかない ACE(Advanced Communicative English)の授
業を受け、英語力は劇的に改善しました。ピア・アシスタントとして日本で英語の
コミュニケションを続け、スカイプによる英会話の個人レッスン、英語の映画も何
度も見ましたそんな努力の結果、交換留学生としてマンチェスター大学に行けたの
です。夢が叶ったのです。開発経済学で知られる マンチェスター大学では、教授と
の毎週のディスカッションを通して多様な視点から理解を深め、その後 ルワンダの
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UVVとILO世界各国の方と仕事をしながら実践的に学びました。途上国での仕事に生
きがいを感じて帰国、就職活動を開始しました。ルワンダでは車の多くが日本製
で、日本車を海外に提供し人々の生活を豊かにしたいと考え、トヨタに就職しまし
た。最初の短期留学がなければ、イギリス留学もインターンシップもなかったしょ
う。第一歩を踏み出せば学びがある。短期留学を是非お勧めします。
司会 次は 2 年生の荻原沙理さんです。UCバークレーでは、2年生でありながら
3・4 年生の授業をとったと聞いています。非常に頑張ったのだと思います。
荻原 留学は私を大きく変える決定的な経験でした。最初に参加したのは 3 ヵ月間
の夏季コースです。授業の質は通常の講座と同じか、それより高く、政治経済学
部の勧めもありました。大学間の学部間協定で少し有利に入学できました。私は明
治大学に入る前にかなり勉強しましたが「アメリカの大学は入りやすいが、卒業す
るのは難しい」と見聞きしたことで、アメリカのトップレベルの教育を受けたいと
思い、UC バークレーを選びました。
バークレーでの3 ヵ月間はすばらしく、日米の違いや類似点が見えてきました。
まず、インタラクティブ型の学習です。授業中は自分で考えアウトプットしなけれ
ばなりません。事実や知識、正しい答えを述べるだけではなく、コミュニケーショ
ンを図ることが求められました。当初は難しかったものの、徐々にみんなが私の発
言を傾聴してくれると、居心地がよくなりました。この学習スタイルのおかげで、
より深く知識を獲得でき、論理的に意見交換できるようになりました。ほとんどの
学生が具体的なキャリアプランを持ち、はっきりとした将来の夢を持っていたこと
も大きな驚きの一つです。彼らは将来の夢を見据えて一生懸命勉強しています。モ
チベーションがとても高く刺激を受けました。これも違いの一つです。
留学を経て学ぶことの本当の意味がわかった気がします。それまで私は自分の名
誉や優越感のために勉強していたので、他者にアピールする姿勢が強かった。た
だ、この学びと 自分の夢や関心事の間に連関がないことに気付きました。留学
後、私の学びは楽しくなりました。短期留学は次なる段階への一歩。一緒に行った
友人はビジネスを学ぶ長期留学を決めたそうです。私は、現場を感じられるイン
ターンシップに進みたい。私は UC バークレーで移民や難民問題に関心があると
気付きました。将来はそんな人々の役に立ちたいです。
司会 私たちも、人生を変える経験を皆さんに提供したいと思います。3人目はジ
ョン・ カールソン君です。南カリフォルニア大学(USC)の卒業生で、本学の短期留
学経験者です。
カールソン ミシガンの小さな町で育った私は、中学生のときに姉妹都市の交換留
学生として2週間、岩手に留学しました。大学の専攻は生化学、副専攻は東アジア
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文化と言語で、 いつか日本に戻りたかったものの 1〜4 年まで生化学の講義が、
びっしりあり、海外留学する機会がありませんでした。一方、副専攻には明治大学
との提携があり交換留学が可能です。
USCの教授が4週間教え、大六野教授も教えるというもので、年度初めに申し込み
合格、USCの単位を得ました。留学と同時に自国の単位がとれるのは大変いいと思
いました。明治大学では国際関係を勉強しました。その間、1週間ほど広島や京都を
訪れたり、日本銀行や東京証券取引所に行き、日米などのグローバル関係について
経済発展という視点から学べました。プログラムの学生は 18名いましたが、早朝か
ら昼間まで授業があり日本語の授業もありました。日本語の授業がないときは博物
館や靖国神社など、グローバルに注目されている場所へも行きました。東京の日常
生活はアメリカ人には新鮮です。ラーメン屋さんやカレー屋さんでは、人にではな
く自動販売機にお金を払う。びっくりしました。
私にとって一番よかったのは、山中湖での研修です。明治の学生たちと交流を深
められました。夜は先生も学生も一緒に日米関係を熱く語り、私たちが日本で何を
感じているのか、日本人学生がアメリカに何を思っているかをオープンに、温かい
雰囲気で語り合えました。日本の伝統、習字も習いました。このときの友達は一生
続く友達となりました。
その後、USCへ4年生として戻った後、早稲田大学に出願、今は早稲田大学で1年
間、日本語と経済とビジネスを勉強しています。明治大学には戻っていませんが、
日本には帰ってきました(笑)。そして東アジアで働きたいと強く思うようにりまし
た。早稲田の後はワシントンDCで製薬会社に勤め、その会社の東京オフィスでイ
ンターンのオファーがあり、医療企画調査部に勤務、学術的にもビジネス的にも日
本の方と日々交流を深めています。実は先週、社長から東京に残らないかと提案を
いただき、日本に残ることになりました。これは明治大学と USC のプログラムの
おかげだと思っています。
私は TOMODADHI イニシアチブの奨学生でもありますが、先週、日米カウンシ
ルの一環で ケネディー米国大使、岸田外務大臣とお会いし日米関係の今後や交換
留学制度について話し合いできました。大使は、貿易、日米の軍事関係、そして学
生などの交換を重要視すると語り、2020 年までに交換留学生を 2 倍にする目標を
掲げています。交換留学により日本は学術面でも産業界でも国際的な競争力をつ
け、経済の拡大が可能になり、人々にとって大きな希望とインスピレーションにな
ると思います。明治大学と USC が私をグローバルな将来へ導いてくれました皆さ
んがプレゼンしたように、研究対象のみならず仕事、人生に大きな影響を与えます。
私も日本の将来の一端を担えることをうれしく思っています。
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●招聘者からの発表
司会
ここからは、5名の招聘者の方々に学術的な側面から、もしくはコーディネ
ーター としての視点から、短期留学プログラムの設計者者としてお話をしていた
だきます。まず、ノースイースタン大学政治学部の准教授フィリップ・ダガティ先
生です。
ダガティ 私は民族対立、ナショナリズムが専門で、スポーツとオリンピックが研究
テーマです。本学の短期留学プログラムは、われわれの経験から、幅広い教育の必
要性を感じて始めました。教室の中だけではなく世界に飛び出して学ぼうというイ
ンタラクティフブで実践的な学習です。本校でプログラムが作られた経緯ですが、
最初は会議に学生を連れて行き、そこで文化的な経験も積ませるという短期的なも
のでした。途上国でのコミュニティー・サービス同様、アメリカ人学生の春休みの
過ごし方の1つでした。
毎年エジプトで開催していた IRC(国際関係委員会)プログラムが終わったことも
あり、同僚と私は「これをやめてはならない」とカイロのアメリカン大学との提携
を模索しました。教室を準備してもらい、アメリカから学生を送り3 日間、シナリ
オテディベートやインタラクティブな文化体験、 博物館やピラミッド訪問を重ね、
学習経験のモデルが出来上がりました。北京の大学とパートナーシップを組み同様
のプロジェクトを中国でも開催しました。その後、日本向けとジュネーブでの 2 つ
が立ち上がり、期間も延びプログラムのテーマも幅広いものになりました。
明治大学とは 4~5週間の日程で教授が引率しTAも連れていきます。TA一人あたり
の学生数を決め、明治大学が教室を提供、TAや明治の先生によるレクチャー、学生
とのやりとりを通して学習経験を積みます。山中(湖)プロジェクトは、カイロのアメ
リカン大学での学生対話をモデルに始め、ブルース・ウォリン先生(故人)と明治
の大六野先生が協力して、アイディアをふくらませて実現させたものです。学習経験
だけではなく、文化的エマージョンも狙っています。たとえば、どんな幼少時だっ
たか、初めてのデートはどんな具合だったか、などのシンプルな質問から初めて、質
問をぶつけ合います。さらに、アジアにおける中国の役割や広島の原爆などについ
て日米相互の視点から議論し、互いの理解を深めました。
以来、エジプト・モデル、日本モデルを土台として多彩なプロジェクトが展開し
ています。今年はアジアで6つ、アフリカで 5つ、北米で1 つ、南米で4つのプロ
ジェクト、ヨーロッパでは19のセッションと、全ての大陸でプロジェクを行ってい
ます。規模や形式などは、それぞれのプロジェクト毎に違います。トピックは、政治
だけではありません。私のプロジェクトは日本の文化に根差したもので、日本にお
ける政治の役割、アジアを領域としてみた場合の国際政治を取り上げます。さらに
例を挙げましょう。第二次世界大戦中の大量虐殺を学ぶため、ドイツ、ポーランド
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を訪問するプログラムもあります。イタリアの写真セッションでは、アートメディ
ア・アンド・デザイン学部の教授とともに、写真を学ぶ学生が撮影を行います。エネ
ルギーに関するブラジル・ツアーも人気が高いプロジェクトです。南アフリカでは
アントレプレナーシップの状況を学び、その経験を実際の現場で生かします。同様の
プロジェクトはインドネシアにもあります。宗教学のプログラムでは、スペインにお
ける宗教の役割変化や巡礼教徒について学びます。幅広い学習経験のチャンスが用意
されていますが、一度だけで終わる国もある一方、明治のプログラムのように毎年開
催されるものもあります。実際、明治とのプログラムはノースイ ースタン大学の中
で最も長期間続いているプログラムです。
難しいのは教授陣の確保ですが、明治大学とのダイアログは、帯同の先生がいな
いために停止されたことは一度もありません。私も今年で3年目ですが、中身が充実
しているので、退職まで続けたいと思っているほどです。プログラムに帯同する教
員は大体1・2名ですが、2つの学習領域がある場合は2人必要です。プログラムには
TAを3名つけます。私の場合、院生や卒業生3人で、より幅広い視点を提供してもら
うためです。学生の視点を持つアドバイザー、メンター的な役割を期待して去年参加
した学生を連れて行くこともあり、大きな成功をおさめています。最小催行人数は
15名、最大でも32名。既に日本語が十分に話せる学生向けと、そうでないものにプ
ログラムは分かれており、言語ベースでないものもあります。
私のプログラムは、滞在することによって新しい視点を得るものであって、日本に
育った人々への深い理解が豊かなコミュニケーションにつながります。また、海外旅
行が初めてという学生も毎年いますが、彼らはとても大きな学習経験を得る傾向にあ
ります。
プログラムにどんな成果があるのか。これは非常に複雑なです。個人差があるか
らです。一般的には「構造的な文化的体験」です。なぜプログラムがツーリズムで
はないのか。旅行会社の旅や単なるレジャーでもいいところをそれで済ませないの
は、構造的な形の文化体験、すなわち歴史的重要性の高い場所を訪れ、その重要性
を経験的に知るためだからです。明治の学生ですら、その場所を初めて訪れること
もあり、自国の文化的体験を必ずしも積んでいない場合がありますが、だからこそ
2 つの視点を 2 種類の学生が2つの形で経験する場になり、社会が見えてくる。つ
まり相手の立場を追体験するということです。
具体的な影響としては、学術的な好奇心が高まります。行ったことがないから、
寿司や アニメが好きだからと参加する人もいますが、最終的に学術的な好奇心が高
まることは大きな成果です。また、プログラムが終わるころには非言語的なコミュ
ニケーション力が高まります。興味深いことに専攻を変える学生もいます。入学時
は専攻に確信が持てなかった学生でも、プログラムが変容的な役割を果たしていま
す。学術的好奇心からでなくとも、 学生の視線は変わります。友情の構築も重要で
す。明治の学生が本学に来ることをリバース・ダイアログと呼びますが、それは学
びと友情のサイクルです。自分を自分たらしめる友と出会い、時とともに成功や失
敗を共有する友人になっていきます。
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ノースイースタン大学の2人の学生のうち 1 人は明治大学に戻りたいと考え、その
手段としてTAに申し込みます。学校側はあまりよしとはしませんが、私はとても
いいと思います。短期留学が長期的に影響を及ぼすことで長期的な雇用につながる
可能性もある。短期留学は学生の社会や人生を変えていきます。このプログラムは
私にも有意義で、明治大学とプログラムを確立する上で私の部局が大きな役割を果
たせたのはうれしいことです。このモデルが山中セッションの柱となり、セミナー
スタイルで行われ、多くの学生が参加しています。当初の狙いにとどまらず、多く
の学生をさらに価値ある学習経験に誘ったという点ですばらしいと思います。
司会 ありがとうございます。2020年のオリンピックを東京が主催することにもな
りましたので、学部はまさに適者者を任命しました。次は USC のグレース・リュ
ー教授です。ノー スイースタン大学、シーナカリンウィロート大学、西シドニー
大学は交換留学形式ですが、 USCとの関係は一方向です。今後は交換留学に発展
するかもしれません。
リュー 私は日本、韓国、中国などに関する学術研究を行う独立のユニットである
東アジア センターのアソシエートテディレクターで、どちらかというと事務方の
役割ですが、担当して約10年です。短期留学プログラムは 2004 年以降続けていま
す。
調査によると最近の留学の傾向は夏または 8 週間以下の短期が6割を占めていま
す。1 学年など長期の留学は残りの 4 割。短期留学が劇的に増えている一方、長期
留学は 2008 年から横ばいです。本学の文化系留学生は 2009 年が166 名、2014
年が 413 名、今夏は 3 倍になる見通しです。ではなぜ増えたのか。やはり学部が
提供するプログラム数が増えたからです。このプログラムには、アジアの認知度を
高めアメリカの学生にもっとアジアを研究してほしいという目的でフリーマン財団
から助成金が出ています。再度追加予算が出たので、 2004 年に東アジアプログラ
ムが始まりました。これまでに241名が参加しました。
USC の先生が引率、海外で4 週間の授業を行います。TAはもちろん現地の言語
が話せる人です。韓国、中国、日本で実施、10〜14 名規模と少人数ですが、一人
一人に注意を払えるし、生徒間の絆が深まります。奨学金プログラムとして旅費や
30日間の宿泊費、現地交 通費、食事代が含まれるので大変人気です。米国の学費
は本当に高く 年間に約 6 万ドルかかりますが、奨学金プログラムにすることでよ
り多くの学生に単位をとらせるのが狙いです。成績もつきますが難しいですね。東
アジアの講座に人気が出るよう、ジョンのようにブログも書いてもらいます。USC
には映像学、コミュニケーションなど専門性の高い学部があり二重専攻や副専攻の
学生も多く忙しいため、1学期分の留学をできない現実がありますが、このプログ
ラム で卒業年度をずらさずに十分な経験を積めています。
スライドをご覧ください。このウエブサイトでオンライン申請でき、山中湖から
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富士山や明治の学生との交流も載っています。明治大学が手配する東京証券所訪問、
これも人気です。2014年の学生にはより深い内容を掲載するよう頼んだところ日本
食、ダンスやJポップ、猫カフェの話題が集まりました。学生には、興味に沿ってい
ろんなところに行くよう促します。ジョンと同じ年に来たジャイロは、アメリカを出
たことがなかった学生ですが、現在 JETプログラムに参加中です。漫画やアニメに興
味があり日本は エキゾチックなのだろうとロマンチックな思いを抱いて来たイヴァ
ンは東京のグーグルに採用が決定。現実の日本を見て日本の抱えている問題も学べ、
彼の日本の見方はバランスがとれたと思います。言語学専攻のエミリーもJETに参加
するなど、4週間にもかかわらずとても影響力があります。プログラム後の定期的な調
査では、55%の学生が帰国後にアジアに関する授業をより多くとっていますが、ミュ
ニケーションのために言語を学ぶ意欲が高まっていると思われます。いずれ戻りたい
という長期目標を持つ人も多く、43%が日本に関する追加講座をり、30%がUSC戻っ
た後、主専攻に変わっています。
今はソーシャルメディアがあるので、友情が長続きします。だからこそ影響力が強
い。学生は「明治の学生のおかげでプログラムが素晴らしいものになった」「授業の
外に、自分たちだけでは絶対に行けない場所にも連れていってくれた」「歓迎されて
いると感じた。彼らがいなかったらこんなに素晴らしくなかっただろう」と語 って
います。
司会 次はタイのシーナカリンウィロート大学教授、ワナシン・サッタヤヌワット先
生です。
ワナシン 私は2000年にJICAの奨学金を受け ASEAN日本友好21世紀プログラムに参
加しました。それまでは経営工学を専攻、タイ南部の大学で勉強していました.JICA
がなければ日本のような国に留学できなかったと思います。学士号取得後は開発経済
学を学び、日本からの大学教授(京大の阿部先生だったと思います)にお会いして日本
への理解が深まりました。タイで修士をとり、タイの研究財で研究職につき、アメリ
カ で経済学の博士号をとりました。2011 年に卒業し 2014 年に本学に奉職、8 ヵ月
間、国際関係の仕事をするチャンスに恵まれ、そこで明治大学とのご縁をいただきま
した。
今年明治に来るのは25人、私のいる経済公共政策学でも2011年は1人だったが、12
年には19人、2013年は13人です。留学はたやすいことではありません。その障壁とし
て まずコストが高い。それで参加できない学生もいます。JASSOなど日本の支援が
必ずしも約束されているわけではないので、学生には「100%の支援ではないがすばら
しいチャンス」と説明します。一方、資金がある学生は、買い物や観光に気をとら
れ、経済的な経験ではなく消費的な経験にとどまってしまうことかが少なくあり
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ません。奨学金を全額出すと消費目的の留学が増えてしまうかもしれず、本当に学び
たい学生が参加できる仕組みをつくることが必要です。
本学は公立で超一流ではありません。トップ校に入りやすいのは裕福な家庭の学
生で、中下層の学生ではない。学生ローンで進学、生きていくだけで精一杯で留学
は難しいというのもあります。もう1つの問題は英語です。家で英語を話さないタ
イでは多くの学生が外国人と会話できず、留学前後の準備が不十分です。単位もカ
キュラム的に難しい側面があるので、選択肢を増やすことが重要です。大六野先生
や武田先生には私たちの状況を見てもらってプログラムを実施しています。国際関
係の構築なしに存続できないタイにとって ASEAN 型の経済統合は重要な原力で
す。日中韓印との連携も必要で、今後もこのプロジェクトを推進していきたいと思
います。
留学後の学生の変化ですが「自分たちは1人ではない」というグローバル市民の
感覚に気づくという意味で、学生の能力を広げ、成熟度も高めます。よりオープン
になり交渉力もつき、別人のように成長します。視点が変わり、来る前よりも日本
を好きになって帰る学生がほとんどです。また、プログラムの副産物として明治大
学の地位も上がっています。本学のキャンパスに明治大学がアセアンセンターを開
設したこともあり、評判も高まって います。
外国に行くと英語の重要性を改めて思い知らされます。英語の能力を高め、姿勢
も変える必要かあります。多国籍企業に応募する学生は、海外のルートで応募する
ことが多かったのですが、この短期留学を通してチャンスを得る学生も出て来てい
ます。
提言としては、単位の共有に障壁があることですが、これは本学の問題であり、
最終試験終了後に行うべきだと思います。学力測定が狙いなのではなく、視点につ
いて理解するためです。ただ、本学の一部の先生は疑問視しています。学生にもよ
くいうのですが、海外でカルチャーショックを受けるかもしれないが、情報自体の
善悪ではなく、そこから学びを得られるかどうかが大切だと、私は思っています。
また英会話のパートナー学生が重要です。このプログラムを始める前は日本語専攻
の本学学生が参加していましたが、明治大学はタイ人と英語でコミュニケーション
をとりたい意向なので、それに応えようとしています。現在も流動的で教務の問題
もあり、先生間の視点が阻害要因となっている部分もありますが、これが本日お話
をしたかったところです。
司会 今、明治大学はタイとの交換留学生数が最も多い学校になり、2013 年にシー
ナカリンウィロート大学に明治大学アセアンセンターを開設するという成果が上
がっています。続いて西シドニー大学(UWS)のウォルトン教授です。人文学コミュ
ニケーションアーツ部、アジア研究国際関係の専任講師です。
ウォルトン 公立大学である本学は4万 2000名の学生がいる国内最大規模の大学で
す。この2 年間、明治大学から短期留学生を受け入れています。文化的多様性に富
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シドニーは学生も多様です。6 つのキャンパスの留学生数は 4,000 名以上です
む
が、最近就任したバーニー・グラバー副学長の意向で、今後さらに増える見込みで
す。私の一番のお気に入りはパラマッタキャンパスで、(日欧の基準では決して古
くないが)イギリス連邦設立間もない 1788年建造、豪州で最も歴史ある3階建校舎
があります。学生はフェリーや電車で中心部に移動します。
本学でも短期留学の人気は増加中です。スタテディー・ツアーやインターンシッ
プ、長期の交換留学もあります。2014 年は 20%増加の 119名が留学73 名が1学期
間の交換留学をします。短期の学生の数は今後数年で劇的に増えると見ています。
先頃発表された「ニュー ・コロンボ・プラン」では豪州の学生がアジアで勉強で
きるよう学生一人当たり6 万 7,000 ドルの助成金を設けましたが、連邦政府も交換
留学を重要なイニシアチブとしています。オズヘルプローンという金利なしの学生
ローンは、5万3,000 ドル以上の給料を得るまで返さなくてよく低所得の家庭の学生
にはすばらしいものです。このような助成金があるからこそ留学生の数が増えてお
り、財務的支援は大切です。また、社会保障機関からの給付金や、本学でも奨 学金
を提供、サポートも整っています。最初は政府からの助成金で49 名の学生が短期
留学、 その後 52 名を追加し大学が資金を出しました。もちろん明治大学に行っ
た学生もいます。
具体的には、例えがイスラムを理解するインドネシア短期留学、看護学生や助産
婦を目 指す学生が参加するタイ短期留学があります。私自身は、学生たちがアジ
ア各都市でアジア関係について語る「ハーバード・プロジェクト・フォー・アジ
ア」(1999 年から開催)と 国際関係を担当、本学から学生を派遣しています。ま
た、ソウル大学客員教授として教鞭 をとった経験があり、ソウル大学とサマープ
ログラムを提携しています。
会場にシドニーで見た方がいます。最近の明治大学の学生さんたち、3週間コー
スが終わったところですね。コースでは授業のほか各種ツアーやキャンパス内外の
研究機関にも行きます。ボランティア学生がバディ務め、明治の学生が歓迎される
よう町を案内したり寄宿舎に送ったり、夜の12 時でも私に報告が来ます。「無事
に帰りました」という連絡ですが、このような個人的な絆はすばらしい。ウォーキ
ヒグツアーではシドニーの観光名所を5つ選ばせ、学生が英語でプレゼンします。
楽しい経験で、多くを学べます。豪州の学生は短期留学で本当に成長します。3、
4週間でも人生を変える経験です。初めての海外でさまざまなことに目が開き、文
化の違いを理解する。国際的な視野を持つことで、また海外に行ってみたいと思う
わけです。
海外経験をすることは国際化を促します。ある学生は余りに楽しかったためフェ
イスブックのグループを立ち上げ、2001 年から旅行記の交換をしています。た、
帰国後の勉強に対するモチベーションも高まります。主専攻を変えたり、長期の留
学をしたり、国際化に対してコミットメントを強め、態度が本当 に変わってく
る。キャリアや進路、より幅広い人生観も変わるのかもしれません。ミシガン大学
による、留学経験のある豪州の卒業生 226 名を対象にした調査を紹介します。 「就職先に影響はあったか」という質問に対し 66%が「はい」、 60%以上が「留
学経験 により長期的キャリアの進路に影響があった」と回答。ただし「職種や所
得には余り影響がなかった」という回答で興味深いと思いました。自信がついた
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ことが明らかにわかります。自分の履歴書に人よりも目立つエッジができると自信が
生まれます。面接で「あなた は問題解決能力がありますか」と聞かれたら「はい、
シンガポールに行ったときパスポートをなくし、このように解決しました」と語るこ
とができるわけです。「 教育的にためになったか」という質問には 90%以上が「は
い」と回答。「コミュニケーション能力が高まった」「自国に対して新しい見方がで
きた」という回答からは、アジア太平洋地域における豪州の存在を考える機会に
なったことがわかり、これはとても重要です。問題解決能力も 60%以上が「影響が
あった」と高い結果が出ています。私も、海外経験のある学生から FB でコメント
を集め、簡単な調査をしました。
2011 年 の HPAIR の会議に参加した学生は「リアリティーチェックだった。毎日
の学生生活がグローバルでリアルタイムな勉強につながった。帰国後の私は自信にあ
ふれ少し賢くなった気がする」と語っています。この会議ディスカ ッションやワー
クショップをしますが、 そのプレッシャーの中でも自分が役割を果たせて自信がつ
いたでしょう。2014 年にソウ ル大学に行った学生は「さまざまなトピックを話し
もっと勉強したいと思った。同様の海 外経験をもっとしたい」と語ります。外国の
学生を受け入れることは、日本人学生にもプラスの影響があります。豪州の学生は日
本の学生がよく勉強しているのを見てショックを 受け、多くを学んでいます。ほか
には「リーダーシップスキルやチームワークが伸びた」
「海外の学生の勉強を見て競争
が激しいことを再認識した「」将来どのように成功するかを 南京大学で勉強し驚い
た」なども。豪州がアジア太平洋地域の一員だと認識し、自国だけ ではなくグロー
バルな視点で自分の進路を考えるようになっていると思います。
「留学経験 からどんな友情が生まれたか」という質問には、2009 年ソウルでの会
議に参加した学生が 「FB を通してインド、シンガポール、韓国、インドネシアの
友達と今もつながっている。 あのすばらしい経験は忘れない」と答えまし
た。2014 年ソウル大学夏期コースの学生は「短期留学のよさは友情、海外を旅する経
験、異文化にどっぷり浸ること。違う言語を学び、 自分の大学では経験できない
授業を位を得ることができる」。同じテーマの講義でも、 視点が違う。地域的な受
け単視点を得られる可能性がある。それも利点です。短期留学は多様な経験を学生
に提供するとともに、時間通りに学位を取れるので中断を 最小限に抑えられます。
経験者は各大学の大使となり将来羽ばたいていくことでしょう。
司会 皆さま、ありがとうございました。それでは、大六野先生をお迎えします。
大六野 2008年、私たちは政治経済学部に国際関係の委員会を立ち上げ、中長期的
な留学プログラムの展開を強化してきました。08年に学部間パートナーシップが
あったのは1校でしたが、現在は 30 校以上のパートナー大学があり約 40 プログラ
ム近くが展開されています。パートナー校があると作業がとても楽です。学生や教
職員の実際の交流がないことがよくありますが、私とども政治経済学部に有名無実
のパートナーシップ協定は存在していません。08年の大学全体の数と学部間の受け
入れ側の数字です(パワーポイント)。毎年、海外に出かけていく学生 が 150 人
超。ざっくりとした数字ですが、学部間の学期ごとの留学または1学年の留学などを
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含め短期間にかなり増えました。留学前の TOEIC 平均点は 570点ほどでしたが、
留学経験後は平均で724点まで高まり、英語力は確実に伸びています。また、短期
留学した学生の22%が留学後より長期の留学を志すようになっています。本学部で
はノースイースタン大学との提携で、政治経済学部の学生が3年生の春学期の後、
ノースイースタン大学に転入、明治大学入学からほぼ4年間で両大学を卒業し、2
つの大学の学位をとることが可能です。さらにデュアルディグリーのプログラムも
あります。4 年生の 1 学期を終えた後、テンプル大学の修士課程に入り、合わせ
て5年間で学士と修士の2 つの学位をとることもできます。私のゼミ生で、現在こ
のプログラムに挑戦している学生がいます。
明治大学で短期留学を経験した学生に「日本に来てよかったか。それは何故かと聞
くと「明治大学に来て多くを学べ、今後役に立つ経験が積めた。「日本文化がますま
す好きになった」という回答がありました。ノースイースタン大学の学生は「日本に
来ると決めたのは人生最良の決断だった」と言ってくれました。USC
からは「どんなキャリアを積みたいかまだわからないが視野が広がった。どんな仕事
に就くにしても重要なことだと思う」とありました。明治からオーストラリアに留学
した学生は「日豪関係や豪州の歴史についてUWSで多くを学べた。宿題もプ
レゼンテーションも難しかったが刺激を受けた」、「学生サポーターがよく手伝って
くれ、とても仲よくなれた。ゴールド・コーストでの経験も含めとても満足のいく旅
となった」とあります。
全体的に言えることは、たとえ短期であってもよく準備されたプログラムは非常に
大きな影響を学生の心に残すということです。よく練られた、学生の自主性と提供側
の意図とのバランスのとれたプログラムで、その狙いやそのビジョンがはっきりして
いると、素晴らしい効果を発揮します。
短期留学に欠かせない要素として、学生サポーターの存在があります。政治経済学
部では、毎年 100〜150人の学生さんが応募し、面接による選抜をしなければならない
ほど人気があります。彼らはオンキャンパスでもオフキャンパスでも来日した学生さ
んたちの支援をします。教室の授業だけが大事なのではなく、文化的エマ−ジョンとい
う意味では、学生間のオフキャンパスのやりとりがさらに重要です。学生たちが語っ
ているように、短期プログラムは次の次元や活動へのステップなので、学生たちが将
来を見据え、多様な価値観や文化に触れることが重要です。それができれは、本当の
意味でのグローバル人材育成に繋がっていくと思います。 11
●パネルディスカッション
モデレーター(大六野) それでは早速、議論に入って行きましょう。まず、皆さ
んにお聞きします。短期留学を充実させるために大事な条件は何だとお思いにな
りますか。
ダガティ や は り 、 パートナーの存在でしょう。プレゼンからもわかるよう
に、学生同士が友情を結び、何年も続く関係を保つことです。だからこそ大学間の
パートナーシッフが大事です。実際に支える学生が大勢いることも重要で、すなわ
ちプログラムに人気があるか。私の場合は約50名の応募がありSNSで拡散し人気
が上がる。こういうことも大切な条件です。
リュー 前年度の留学生と経験を共有してもらうことも大事だと思います。
ワ
ナシン本学も PRが十分ではありませんが、大学間の国際協力では、武田教授
や大六野教授のようなコーディネーターの存在は、素晴らしいプラス要因です。
ウォルトン 短期留学をきちんと制度化することです。1人を運営責任者にせず
大学全体で継承していける制度にする。学生の選考基準も大切です。考え方が適し
ているか、やる気があるのか、旅行気分じゃないのか、スクリーニングして送り出
すことが大事です。
モデレーター パートナー探しは難しいことですが、アドバイスはありますか。
ダガティ どのように大学の賛同を得るか、制度化するかも大事です。制度が整
わずに提案すると、こんなに受け入れて大丈夫か、付加価値はあるのか、教育とし
て成り立つのか、慈善活動なのかと身構えられてしまう。パートナーに売り込む際
は「学生たちが何を得られるか」を重視すべき。うまくいけば、両方が賛同して
くれることになります。
リュー 教授が個人的な関係を持っていることが大切です。明治大学とも個人的
な関係から始まりました。中国、韓国との関係は、実は日本ほど深くありませ
ん。相手側のリーダーシッフが常に変わり、求められることも変わるので韓国では
日本ほどうまくいかず、中国ではエンゲージメントが全くない。教授が退職して
しまうと参加率が急に下がってしまう。
ウォルトン 出発点は、そもそも大学が提携していることです。UWS には 140 の
提携機関がありますが、そこに着眼してはどうでしょうか。戦略的にどんなとこ
ろに学生を送りたいのか。大学や学部にとっての戦術的な利点を考え、主要な人
物にコンタクトするのです。
ワナシン 本学も国際関係で20以上の大学と提携していますが、実際に動いてい
るプログラムは明治大学、ユタ大学とあと1つなので、覚書だけでは足りない。や
はり私たち大学の努力が必要です。生徒たちをもっと押し出す制度を整えるとい
うことが必要だと思います。
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モデレーター 個人的な要素と、学校という要素がありますが、教職員の交流が始
まらないことが課題かもしれません。私もパーソナルな関係からプログラムの構築
を始めました。先ごろ逝去されましたが親しい友人だったウォリン教授に「明治大
学は学生を受け入れられるか」と聞かれたのは10年ほど前のことです。始めて3年
後からは誰もが運営できる制度として確立しました。さて、お金についてですか、ど
のように費用を工面していますか。
ダガティ 学生が全額を負担しています。学部や教授陣も支援金や助成金につい
て学部長にかけ合いましたが、学生が2講座分の授業料を払うことで参加できるよ
うにしました。フライトやホテルのコストはプログラムによって違いますが、フラ
イトやホテルのコストはプログラムによって違いますが、2 講座分の授業料を通常
の授業料から少し割り当てる仕組にしました。本カリキュラムは単位認定プログラ
ムですから、奨学金やローンで工面が可能になる。数%の資金を予算として振り向
けたわけです。学生の自腹分として何らかの支援が得られるときで、来日に2,000
ドルほど、一番高いのは ブラジル行きで 3,000ドルちょっと、そのほとんどが宿
泊費と交通費。コストのかかる都市に行くけれど、付加価値の高い経験を積ませ
る。学費を一部振り向けて安価に抑えることで、多くの学生にとって日本に来る
唯一のチャンスになる。8 単位 1.1 万ドル程です。
モデレーター 助成金や支給金が減ってきた場合には。どうするのでしょうか。
リュー それが問題ですね。資金はフリーマン財団ですが、維持運営はこちらの責
任です。プログラム・ウィズアウト・パスポートという研究目的のプロシジェクト
では奨学金で 3,000 ドルを充てられます。それにプラス 3,000 ドルを学校から工
面、あるいはプロボスト側のリサーチスカラーシップもあり旅費も確保して、滞在
期間2 週間をどうにか確保しました。それでも、昨年の半分です。これを 2010 年
以降維持しており、今夏は日本と中国にそれぞれ10人が行く予定です。
ワナシン 明治大学との関係ですが、本学だけでなくタイの他大学も参加していま
す。本学の公共政策学部からは約 20 人、その多くは裕福な家庭の出身です。その
解決策として何らかのプログラムで大学に対する勤労で支払える仕組みをつくるべ
きではないか。裕福でなくても海外への道を開きたい。それが途上国のやり方で、
可能性があると思います。
ウォルトン 戦略として、大学トップにプレッシャーをかけて資金を引き出すこと
です。予算の問題ですから数年かけてお願いや宣伝をすると有効ですね。もう 1つ
の戦略は、事前に 学生にもよく周知することです。プロモーション前からEメール
やFBで学生に周知する。授業前にも「貯金を始めて」と声かけする。学生も一部の
負担をするし、政府から資金が出る場合もある。長期的には大学が旅費を持つイニ
シアチブもあり、学生がアルバイトを増やし学業の邪魔にならない範囲でお金を捻
出することもあります。
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モデレーター 日本では JASSO が留学生に奨学金を出していますが、明治大学で
は、政府や財団頼みではなく自らお金を集めることを考えています。さて、短期留
学はスプリングボードになる効果があることがわかりました。いかに財源を確保、
持続可能にし、やる気のある学生を選考し送り出すか。これらが短期留学の成功に
とっては重要な要素のようです。では、質疑応答に移ります。
●質疑応答
質問者 A 明治大学 ASEAN センター(バンコク)担当の林です。短期・長期留学
の予算配分について、アドバイスをお願いします。
ダガティ 大学は、最大の資金を長期プログラムに割くべきなのか。必ずしもそ
うとはいえないですね。なぜなら短期プログラムはその集合的なメリットにより多
くの学生に資するからです。長期留学のきっかけになることから短期留学はゲート
ウェイになります。個人で行く長期留学では生活や言葉のバリアに腰が引けてしま
いがちです。短期留学ならTAのようなサポーター制度があり友達もでき、生き延
びていく知恵も得られる。そして、もう少し長期的にやってみようかなという気持
ちも湧いてきます。
長期留学は無理でも短期留学ならできる場合がある。ならば、より多くの学生を
短期留学に出すこと。グローバル市民を育成したいなら、大学の資源は短期留学に
優先的に割くべきではないでしょうか。
リュー USCでは各学部長の範疇という所で封建的な部分があり、各種の協定も要
件を充たさなければいけません。また、単位に互換性があり既に学校間で取り組み
かがありますのでエンゲージメントのレベルが多少違うとは思います。集中度に
も違いがあり、現在 6つのアーティキュレーションプログラムが日本の大学と結ば
れています。
ウォルトン UWSでは7つ程のアーティキュレーションプログラムがあります。短期
留学は戦略的には追加的要素がありますね。明治との提携は伊藤剛先生と私で進
め、その結果できたモデルは本学にとてもメリットがあり、客員教授システムや研
究交流と多層的です。長期留学では学生数や学術的なエンゲージメントのチャンス
の減少がありますが、短期なら多層的なアプローチが可能で、さまざまなチャンス
になる。戦略的に重要です。
質問者 B 名古屋外国語大学です。短期留学で有意義な相互効果を引き出すコツ
は?
ワナシン 途上国での短期プログラムはうまくいくと思います。教育システムが不
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十分な部分がありますが、AEC、ASEANができるとタイとラオスなどは経済コストも
低いので互換性もできるでしょう。西欧諸国は、日本がどう ASEAN と関わるか
注目しています。日本の学生がいかに AEC、ASEAN からメリットを得るか、プロ
グラムでも考えていくべきです。
ウォルトン 現地コミュニティーとの関わりには、バディなる現地の学生がとても
大切です。明治の学生には、オーストラリアらしい夏のバーベキューやビーチを経
験してもらいながら、彼らの関心を探り、学外のコミュニティーと交流できるチャ
ンスも用意していま す。学生も人々の温かさに感動、日本では得がたい経験が強
い思い出になるようです。
ダガティ 私の場合、秘訣は山中ハウスのセミナーです。最初の日はスポーツやパ
ーティーで緊張感をほぐします。5対5の部屋割りや議論を通して友情が芽生え、イ
ンタラクションや学びが必ず起きます。学生にツアーガイドをしてもらうのもいい
ですね。こちらでピックアッフした行き先の歴史的重要性について現場でレチャー
してもらう。彼らの発表の場をつくるとコミュニケーションが促されます。山中セ
ミナーのようなカジュアルな環境は、友情を育みバリアをなくし、文化イマージョ
ンを引き起こすので重要です。
リュー 従来型の留学では、日本人学生との交流がないのです。でも短期留学には
現地学生との関係があり、これが学生によい影響を与えます。USC に来ているあ
る中国人留学生は、日本に短期留学したことでアメリカ人の友達ができ、前向きに
なり自信が持てたと語っています。日本に対する意見も変わるなど、プラスの結果
が出たケースです。
質 問者 C 新潟県立大学です。パートナー探しに苦戦しております。地方の大学
は学生に魅力的でしょうか。露・中・韓の学生を招いた本学プログラムでは高齢化
や少子化について討論、交流を通じて地域の問題解決提案などをしましたが、皆さ
んとはパートナーシップを持てますか。また、今は 2 大学間ですが、3 大学にわ
たるプロクグラムもありえますか。
モデレーター ご苦労をお察し申し上げます。各大学の規則、責任やコストの分担
の課題がありますが、大学のコンソーシアムを作ることで解決の可能性があると思
います。
ダガティ 大学がどんな学びを提供できるかです。オリンピック研究をする私にと
って長野は重要な都市ですが、普通の外国人観光客は行かないかもしれない。です
から、地方だから魅力がないということではありません。大学や地域が何を提供で
きるか、特定の知識に関心のある相手を探すことです。東京よりも多くのことを提
供できるかもしれません。
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質問者 D 芝浦工業大学の橘です。本学も同様の短期留学制度をこの 2、3 年で
立ち上げ、運営中です。プログラムをカリキュラムに入れ込みたいのですが、も
し意図的に正課外プログラムにしているなら、その理由を教えてください。
モ デレーター 明治大学では通常カリキュラムの一部として留学コースがあり、
単位が認定されます。短期でも単位認定はあるべきで、そうしないと学生の参加
も進みません。
ワ ナ シ ン 現在は開発学と経済学にのみ単位を認定していますが、長期的には明
治大学のようなカリキュラムに変えていきたいと考えています。
ウォルトン
本学でもカリキュラムの一部として単位が認定されており、好評
を得ています。国際経験を積むだけではなく単位ももらえることは、留学のデメ
リットを緩和します。
リ ュ ー 本学も4単位とれます。専攻単位ではありませんが、卒業単位に認定さ
れます。
ダガティ 2 つのコースで 8 単位になります。アブロードという単位認定のない
ものもあります。いずれにせよ単位の有無を問わず、成績証明書に掲載される公
式の記録にすべきです。大学院進学や就職時、教育資金の拠出金を受ける際にメ
リットになりますから。単位については、学生がどのように資金を工面している
のか吟味する必要があります。参加できる学生の幅を狭めないよう、資金拠出の
仕組に考慮する必要があると思います。
モデレーター 短期留学はとても有効ですが、幾つかのハードルをクリアしない
と持続可能性は担保できません。引き続き取り組む必要があると思います。
司会 本日のワークショッフを通じてわかったことは、私たちの努力は報われたと
いうことです。と同時に更なる制度化をしていく必要があります。これからも最
善を尽くして参りましょう。最後に、国際交流担当の勝副学長から閉会のご挨拶
です。
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●閉会挨拶
勝 昨年、文科省によって明治大学はスーパーグローバル大学の1つに選ばれまし
た。本学には多彩な国際プログラムがありますが、政治経済学部は、短期留学プロ
グラムからダブルディグリーまで 35以上のプログラムを展開しています。先生方に
御礼を申し上げます。
また、明治大学は日加コンソーシアムという、日本とカナダの各10大学による学
術的な対話を行うプログラム、日加学術フォーラムを通じ、グローバルな対話の場
を形成しています。期間は1週間ですが、コミュニケーション、考え方やリーダーシ
ップという点でも 非常に大きい成果があります。それは学生のみならず大学の先生
方にも大きな変化を巻き起こしています。ウォレン先生と大六野先生とのつながり
からもわかるように、大学同士の友情と信頼関係あってこその短期留学です。この
ワークショップが弾みとなり、日本の大学と海外の大学との恊働がさらに進むこと
を祈ります。たくさんの質問が出たことも、うれしいことでした。今後とも続けて
いきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
司会 生産的なワークショップになりました。皆様、本日はありがとうございまし
た。
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