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森林保険をめぐる状況について - 林野庁

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森林保険をめぐる状況について - 林野庁
参考2
森林保険をめぐる状況について
(1)森林の多面的機能
かんよう
○ 森林は、国土の保全、地球温暖化の防止、水源の涵養、生物多様性の保全、木材等の生産など、多面的
な機能を発揮。
○ これらの多面的機能は、森林が適正に整備・保全されることにより発揮。
○ 国民の森林に期待する働きは、災害防止、温暖化防止などが上位。
■ 森林の多面的機能
■ 国民の森林に期待する働き
かんよう
水源涵養
生物多様性保全
○約80種の鳥類、約3,400種
の植物をはじめとする野生動
植物種の生育・生息の場
○洪水緩和
○水資源貯留
○水質浄化
土砂災害防止
・土壌保全
○表面侵食防止
○表層崩壊防止
順位
0
S55
(1980)
S61
(86)
H5
(93)
H11
(99)
H15
(2003)
H19
(07)
H23
(11)
1
災害防止
2
温暖化防止
地球環境保全
3
水資源涵養
○二酸化炭素吸収
○化石燃料代替
4
大気浄化・
騒音緩和
5
保健休養
6
木材生産
7
野生動植物
生息の場
8
野外教育
9
林産物生産
物質生産
○木材生産
○食料生産
流出土砂量の比較事例
その他、快適環境形成、保健・
レクリエーション、文化等の機
能を有する
水資源貯留機能
資料:総理府「森林・林業に関する世論調査」(昭和55(1980)年)、「み
どりと木に関する世論調査」(昭和61(1986)年)、「森林とみどり
に関する世論調査」(平成5(1993)年)、「森林と生活に関する世
論調査」(平成11(1999)年)、内閣府「森林と生活に関する世論
調査」(平成15(2003)年、平成19(2007)年、平成23(2011)年)
注1:回答は、選択肢の中から3つまでを選ぶ複数回答である。
注2:選択肢は、特にない、わからない、その他を除き記載している。
1
(2)森林の現状
○ 我が国の森林の約4割が人為的に造成された人工林。人工林1,035万haの樹種別面積の割合は、スギ
が43%と最も多く、次いでヒノキが25%。
○ 森林の蓄積は、人工林を中心に毎年増加し、総蓄積は約44億㎥。
○ 人工林の齢級構成は、9齢級(41~45年生)以下のものが6割以上を占め、保育・間伐等の手入れが必
要な状況であるが、今後、本格的な利用が可能な高齢級の森林に移行。
■ 国土面積と森林面積の内訳
■ 人工林樹種別面積
公有林
283
(11%)
その他
616
(16%)
宅地
190 (5%)
農用地
467
(12%)
(単位:万ha)
国土面積
3,779万ha
森林
2,507
(66%)
国有林
森林面積
2,510万ha
769
(31%)
資料:国土交通省「平成23年度土地に関する動向」
注:国土面積は平成22(2010)年末現在。
1,458
(58%)
人工林
1,035万ha
(41%)
蓄積
2,862
2,000
1,887
1,000
1,329
0
4,040
3,483
3,000
2,186
1,702
558
S41
(1966)
S51
(76)
4,432
資料:林野庁業務資料(平成19(2007)年3月31日現在)
180
158 165
160
1,780
150
140
100
1,892
2,338
2,651
87
80
H7
(95)
資料:林野庁業務資料
注1 :各年の3月31日現在の数値。
注2 :総数と内訳の計の不一致は、単位未満の四捨五入による。
H14
(2002)
H19
(07)
60
20
92
高齢級の人工林
35%
(H19(2007)年現在)
59
40
S61
(86)
現状のまま10年間
推移した場合 6割
114
120
1,591
1,388
798
人工林樹種別面積
(万ha)
1,502
1,361
その他
223万ha(22%)
■ 人工林の齢級別面積
人工林
4,000
カラマツ
102万ha (10%)
森林面積
資料:林野庁業務資料
注:森林面積は平成19(2007)年3月31日現在。
毎年80百万m3 増加
天然林等
ヒノキ
260万ha
(25%)
私有林
■ 我が国の森林資源の推移
(百万m3)
スギ
450万ha
(43%)
天然林等
1,475万ha
(59%)
9
17 23
35
34
20 17 14
11
9
6
12
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19- (齢級)
資料:林野庁業務資料
注:森林法第5条及び第7条2に基づく森林計画の対象となる森林の面積(平成19(2007)年3月31日現在)。
2
(3)森林の自然災害のリスク
○ 地形が急峻でしかもアジアモンスーン地帯に位置する我が国においては、台風や豪雪などの自然災害の発
生の可能性が広範に存在し、さらに近年の世界の異常気象の傾向と相まって、これら災害のリスクへの対処は
林業経営上の重要な課題。
地球温暖化や厳しい自然条件の影響に
よる災害発生リスクの増大
■ 被害別損害額の推移
地球温暖化に伴う大雨の頻度の増加
回/年
300
H10~H20
平均239回
S62~H9
平均177回
S51~S61
平均160回
自然災害による森林被害の発生状況
200
100
S51年
(1976)
S62
(87)
H10
(98)
H20
(08)
1時間降水量50mm以上の発生回数(/1,000地点)
内閣府「防災白書」より (気象庁資料より作成)
頻発する自然災害
国土の面積
世界に占める
日本の割合
0.25%
資料:「森林国営保険事業統計書」より作成
(注)火災は民有林・国有林の合計値。火災以外は、民有林のみ。
自然災害の頻度
7.0%
活火山数
自然災害による
被害額
■主な森林被害の例
11.9%
資料:「平成22年度版防災白書」より作成
火
災
風
害
水
害
雪
害
3
(4)森林保険の必要性
○ 森林保有形態は小規模林家が多数であることや、林業経営コストの増嵩、木材価格の低迷による収益性の
低下が著しい中で、一度災害が発生すれば林業経営の継続が困難になる恐れ。
○ 林業経営による収入が少額となる中、森林保険が適切な水準で提供されることが必要。
■ 林家の保有山林面積規模別戸数と保有面積
10~50ha
9.7万戸
(11%)
5~10ha
776千ha
(15%)
1~5ha
1,423千ha
(27%)
資料:農林水産省「2010年農林業センサス」 (組替集計)
注:1ha以上を保有する林家を対象としている。
100ha以上
0.3万戸
(0.4%)
10~50ha
1,730千ha
(33%)
50~100ha
435千ha
(8%)
100ha以上
848千ha
(16%)
■ 林業所得の内訳
項目
林業粗利益
素材生産
立木販売
その他
林業経営費
請け負わせ料金
雇用労賃
原木費
その他
林業収入
伐採材積
単位
万円
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
m3
H19年度
190
125
28
38
161
54
27
13
68
29
125
資料:農林水産省「林業経営統計調査」
凍害
風害
雪害
5~10ha
11.9万戸
(13%)
1~5ha
68.1万戸
(75%)
林家数
(91万戸)
保有山林面積
(5,213千ha)
50~100ha
0.7万戸
(1%)
■効率的かつ安定的な林業経営のためには、自然災害のリス
クに適切に対応することが重要
H20年度
178
104
21
54
168
56
30
13
69
10
125
増減
▲ 12
▲ 21
▲7
15
7
2
3
0
1
▲ 19
0
森林所有者自らが災害に備える災害対策の一手段で
ある森林保険は、
① 森林所有者が多年にわたり投入した資本と労力の
回収
② 森林所有者の期待利益の回収
(資産価値の保全)
③ 再造林のための自己負担費用の捻出
などの効果を通じ、持続可能な森林経営を進める上で
のセーフティネットとして重要な役割
林業の持続的かつ健全な発展に寄与
4
(5)森林保険制度の概要
○ 森林保険特別会計においては、政府が保険者となり、森林所有者を被保険者として、森林についての火災、気象災及
び噴火災による損害を塡補する森林国営保険を実施。
○ 森林保険は、国土の7割を占める森林から国民が様々な機能を享受できるよう、持続可能な森林経営を進める上での
セーフティネットとして重要な役割を発揮。
○ 森林国営保険は、加入者からの保険料収入のみで運営しており、保険金を活用した被災森林の再造林を通じ、森林経
営の安定等に寄与。
◇ 森林国営保険の主な内容
区 分
内
容
保険者
政府
被保険者
森林所有者
保険契約者
森林所有者(被保険者) ただし、被保険者以外の者も保険契約者となることができる。
保険の目的
人工により生立させた樹木の集団(人工林)
保険事故
火災、気象災(風害、水害、雪害、干害、凍害、潮害に限る。)、噴火災
保険料率
年間あたり保険金額1000円につき、樹種、林齢及び地域ごとに設定
保険金額
樹種、林齢別に定めた1haあたりの標準金額を限度として設定
◇ 森林国営保険の実績
(H23年度末実績)
保険料収入
23億円
保険金支払件数
2千件
保険金支払額
6億円
当年度利益
13億円
積立金
187億円
※積立金は将来の大規模災害に備えて、保険料を原資として積み立てているもの。
(H21年度末時点加入実績)
加入総件数 15万件
加入総面積 106万ha
加 入 率 13.3 %
(民有林人工林面積に対する加入総面積の割合)
責任保険金額 1兆543億円
5
(6)森林国営保険の運営状況
○ 森林保険は自然災害を対象としており巨大災害のリスクを負っている。
○ 近年では平成16年度台風災害により、約81億円の保険金支払を行っており、この影響で平成18~19年度の単年度
損益はマイナスを計上。
○ 森林国営保険の事務は、国、都道府県、経由機関が役割を分担して実施。
○森林保険の保険金支払額と当年度損益の推移
(億円)
○森林国営保険の仕組み
④損害調査
報告書を送付
保険契約
都道府県
(法定受託事務職員70名
③損害調査
経由機関
(森林組合連合会、森林組合、市町村)
①加入申込及び保険
料の納付
②損害発生通知
森林所有者
(契約者、被保険者)
※ 国及び都道府県の職員数はH24の数値。
災害
発生
⑤保険金の支払
事務の委任
国
(森林保険特別会計)職員6名
【国 : 予算事務、保険金支払事務】
a 予算の編成及び執行
b 経理・決算書類の作成
c 交付金・手数料の支払
d 損害調査書類の審査
e 保険金の支払い 等
【都道府県 : 契約事務、塡補事務】
a 保険契約申込書の受理
b 保険契約申込の承諾及び保険証書の交付
c 保険契約継続に関する事務処理
d 保険証書の記載事項の変更
e 損害発生通知書の受理
f 損害の実地調査及び調査結果の報告 等
【経由機関 : 窓口事務】
a 保険契約申込書等の受付、保険契約申込
書等の都道府県知事への送付及び保険料
の国庫への納入
b 保険料の受領・保管及び保険料領収書交付
6
(7)森林国営保険の加入率
○ 森林保険の加入率は近年の森林・林業に対する厳しい状況から低下傾向にある。
○ 今後、「森林・林業再生プラン」を進展させ、路網が入り利用間伐が進むようになると、山の価値は高まり、それを保
全するための森林保険の役割はより高まるものと考えており、これらの取組と合わせて、加入率が増加へ転じるよう
取り組む。
森林保険の加入率等の推移
民有林の造林面積の推移
(千ha)
(%)
3,000
35.0
S59年度
32.2% 2,411千ha
加入率
30.0
2,500
25.0
2,000
全森連共済
H21年度
13.3% 1,058千ha
20.0
1,500
15.0
森林国営保険
1,000
森林共済
セット保険
10.0
ヒノキ
500
0
木材価格の推移
5.0
57
58
59
60
61
62
63 H元
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
0.0
スギ
(年度)
(注1)加入率=森林保険(共済)加入面積/民有人工林面積
(注2)森林国営保険とほぼ同内容の事業を実施してきた全森連共済は、平成13年度に新規引受を停止し、平成14年度に国営
保険へ移 行。平成17年度末に事業を廃止。
(注3)森林共済セット保険は、同一の森林について森林国営保険と全森連共済両者に半分ずつの責任で同時に加入する仕組
みである。全森連共済の新規引受停止、事業廃止に伴い、国営保険に移行された最後の既契約分を平成19年度に支払。
7
(8)森林・林業の再生と森林保険
○ 今後、路網の整備や利用間伐等が進むようになると、森林の価値が高まることが期待。また、国産材の自
給率向上と併せて植林も増加すると考えられる。
○ 自然災害のリスクに適切に対処しつつ、森林の有する多面的機能の発揮と林業の持続的かつ健全な発展
を一体的に実現することが必要。
■ 将来(50年後、100年後)における齢級構成(イメージ)
(万ha)
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
現在(平成22(2010)年)
現在(平成22(2010)年)
50年後(平成72(2060)年)
100年後(平成122(2110)年)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 (齢級)
資料:「森林・林業基本計画に掲げる目標数値について(案)」(平成23(2011)年4月21日林政審議会資料-資料4)
■ 災害事故別の実損面積比率(民有林:H17-21平均値)
100%
100%
干害
100%
壮齢林で主に発生(大規模な災害で顕著に発生)
幼齢林で発生
100%
凍害
50%
50%
0%
0%
20年生以下
21年生以上
93%
100%
風害
50%
7%
0%
0%
0%
20年生以下
21年生以上
20年生以下
21年生以上
8
(9)海外における森林保険の状況
項目/国
保険者
フランス
ドイツ
スイス
スウェ-デン
フィンランド
オーストラリア
ニュージーランド
民間損害保険会社 民間損害保険会社 バーゼル州(他の州 民間損害保険会社 民間損害保険会社 民間損害保険会社 民間損害保険会社
はなし)
無
公的なものは無い。無
民間機関による再
保険は行われてい
る。
公的なものは無い。 公的なものは無い。無
民間機関による再保 民間機関による再
険は行われている。 保険は行われてい
る。
公的なものは無い。
民間機関による再保
険は行われている。
森林所有者
森林所有者
土地所有者
森林所有者
森林所有者
森林所有者
森林所有者
全ての森林
全ての森林
全ての森林
全ての森林
全ての森林
人工林
全ての森林
再保険
被保険者
保険の対象
保険事故
火災、風害、雪害、 火災
落雷、凍害
風害、水害、崩壊、 火災、風害、雪害
地滑り、雪害、雹害、
落雷
火災、風害、雪害、 火災、落雷、風害
落雷、水害、病虫
獣害
火災、風害、雪害
各保険会社で算定 各保険会社で算定 単位面積当たりの 損害軽減策の有無、 林齢による区分は 評価額や希望額に リスクに基づき設定さ
した保険料率。
基本料金。
トウヒの割合などに なく定率である。 リスクを考慮して算 れ、樹種と林齢も考
保険料率の定め方 した保険料率。
よる。
定。
慮に入れて算定。
保険収支の状況
1999年暴風雨に伴 不明
う支払により、収支
は均衡していない。
加入率約4%
最近の森林保険を
巡る状況
大災害時には積立 1999年の大規模な 不明
金で対応。
暴風雨のため収支
が悪化。
不明
不明
自然災害を対象と 1999年の暴風雨 伝統的に民間が森 加入率は約30%。 最近では干ばつが
ひどく森林火災のリ
した公的支援を伴 以来、森林保険の 林保険を運営。
スクが急激に高まっ
う保険の創設が検 価値は高まってい
ているため、保険料
討されたが、保険 る。
が高騰している。
料が高額となること
などから実現して
いない。
備考1:アメリカ、カナダ、イギリスには森林保険はなし。
2:外務省を通じて聞き取ったものである(平成20年度)。
9
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