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札幌市オンブズマン 活動状況報告書 札幌市オンブズマン 活動状況報告書
平成 24 年度
札幌市オンブズマン
活動状況報告書
2012.4.1∼2013.3.31
平成25年
(2013年)
6月
札幌市オンブズマン
行政のプロとしての市民対応
札幌市代表オンブズマン
相澤
重明
札幌市にオンブズマン制度ができてから 12 年が経過しました。平成 24 年度の苦情申
立て受理件数は、これまでで最も多い 135 件に達し、オンブズマン制度に対する市民の
理解と期待が着実に根付いているように思います。
オンブズマン制度は、市民の権利利益を擁護し、市政を監視し、市政の改善を図るこ
とにより、開かれた市政を推進し、市民の市政に対する理解と信頼を得て、市民の意向
が的確に反映された市政運営に役立てることを目的としています。
苦情申立ての内容を見ますと、市の仕事に対する具体的な苦情とともに、それに伴う
市職員の対応に関する苦情が多くなっています。その中には、「それはできない」、「法
令で決まっている」、「あなたの方にも責任がある」などと上から目線で言われ、申立
人は怒りや悔しさ、不信感を募らせて苦情の申立てに至るものもあります。申立人の中
に一度わき起こった不信感や怒りは容易に消えず、しだいに増幅させて、言動が一層激
しさを増し、公正中立なオンブズマンの調査結果に対してさえも、時には納得がいかな
いと不満を訴えたりします。
平成 24 年度の札幌市市政世論調査報告書を見ますと、「市職員の仕事への取り組みで
よくやっていること」として、「市民対応や接客態度を親切・丁寧なものとする」が 23.4
パーセントと最も高くなっています。確かに区役所等の職員の市民への対応は、親切、
丁寧でとてもすがすがしく、市が市民対応や接客態度に力を入れていることが分かりま
す。しかし、オンブズマンへの苦情申立てに見られるように、市の仕事によって市民に
利害が及びトラブルになるような場合、市職員の対応に対する市民の目は、対立関係に
あるだけに相当に厳しいものがあります。
もちろん、苦情を申し立てる市民の事情は様々であり、市民の側にトラブルの原因の
一端が認められる場合もあります。市職員としては、法令に則り市民の目線で職務に励
んでいるつもりであるにもかかわらず、市民から一方的に非難を受けることは心外な話
であり、つらいことだと思います。しかし、市民の目線に立つ行政はサービス機関であ
り、いかなる場合においても、行政のプロとして市民の主張をしっかり受け止め、冷静
に客観的に問題解決を目指す姿勢が求められるように思います。
激しい調子で市を非難する申立人の話の中に、自分と同じように苦しむ市民をこれ以
上生み出したくないという思いや、苦情を申し立てることによって、少しでも市政の改
善に役に立ちたいという思いを感じることがあります。これは申立人の心の奥に、主張
の是非はともかく、「もっと札幌を良くしたい」という思いがあることを窺わせ、申立
人のこの思いは、日頃、札幌市民のために職務に精励している市職員の熱い思いと、基
底の部分において共通するところがあるように思います。
市職員は行政のプロとして、苦情を訴える市民の心情をもっと深く理解し、札幌を良
くするパートナーである市民に、もっと適切な対応を行えるよう、一層磨きを掛けてい
ただくことを期待しています。
オンブズマンは、苦情の申立てを通して関わることになる市民と市職員の両方が、建
設的な方向で前に進めるように努力したいと思っていますので、今後ともご支援をお願
いいたします。
●
現在のオンブズマンの紹介
代表オンブズマン
あいざわ
しげあき
み き
まさとし
家事調停委員
平成 24 年 3 月 1 日~
弁護士
平成 25 年 3 月 1 日~
大学教授
平成 25 年 3 月 1 日~
相澤 重明
三木 正俊
よしだ
か よ こ
吉田 かよ子
もくじ
巻頭言
行政のプロとしての市民対応
Ⅰ
1
2
3
4
5
6
7
8
Ⅱ
札幌市代表オンブズマン
相澤
重明
平成 24 年度活動概況
7
苦情処理の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
苦情申立ての趣旨に沿ったもの ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
発意調査の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
是正勧告等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
現地調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
フォローアップ調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
その他の活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
苦情申立ての状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
実際の苦情申立て事例(平成 24 年度)
1
苦情申立ての趣旨に沿った事例(要約) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2
市の業務に不備がなかった事例(要約) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
3
調査をしなかった事例(要約) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
Ⅲ
オンブズマンの発意による調査(平成 24 年度) ・・・・・・・ 37
Ⅳ
制度の概要等
1
札幌市オンブズマン制度の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63
2
苦情処理の流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65
3
札幌市オンブズマン制度のあゆみ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66
4
歴代オンブズマン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67
5
札幌市オンブズマン条例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68
Ⅰ
平成 24 年度活動概況
1
苦情申立ての状況
2
苦情処理の状況
3
苦情申立ての趣旨に沿ったもの
4
発意調査の状況
5
是正勧告等
6
現地調査
7
フォローアップ調査
8
その他の活動
-5-
1
苦情申立ての状況
平成 24 年 4 月1日から平成 25 年 3 月 31 日までの1年間に、オンブズマンが受け付
けた苦情申立ての件数は 135 件と、過去最高を記録し、前年度より 10 件(8.0%)増
加しました。
苦情申立ての手段別では、来訪によるものが 72 件と最も多く、全体の 53.3%を占
めています。以下、ホームページからの申立て 34 件(25.2%)
、郵送 24 件(17.8%)
、
ファクシミリ 5 件(3.7%)となっています(表1参照)。
表1
月別手段別苦情申立て状況
(単位:件)
年
月
手段内訳
申立て
平成 24 年
来訪
ホームページ
郵送
ファクシミリ
4月
8
3
3
1
1
5月
8
5
3
0
0
6月
15
8
4
3
0
7月
15
9
4
2
0
8月
6
2
3
1
0
9月
13
8
3
1
1
10 月
13
10
0
3
0
11 月
5
1
3
0
1
12 月
6
3
1
1
1
1月
12
7
2
3
0
2月
13
4
4
5
0
3月
21
12
4
4
1
平成 24 年度合計
135
72
34
24
5
【参考】前年度合計
125
73
31
18
3
平成 25 年
表2
年度別苦情申立て件数、受付総件数(過去 5 年分)
(単位:件)
年
度
20
21
22
23
24
苦情申立て件数
117
133
130
125
135
問合せ・要望等
678
898
766
785
725
受付総件数
795
1,031
896
910
860
-7-
苦情申立ての件数を行政機構別に見ると、区役所が最も多く、53 件の申立てがあり
ました。次いで、都市局(13 件)、教育委員会(12 件)、保健福祉局(10 件)
、財政局
(8 件)、建設局(8 件)となっています。
申立てを分野別に見ると、生活保護関係(20 件)、障がい者福祉関係(9 件)
、市税
関係(8 件)、学校管理関係(8 件)が多くなっています(表3参照)
。
表3
機
機構別・分野別苦情申立て状況(平成 24.4.1~25.3.31 受付分)
構
件数
構成比
分
野
総務局
2
1.5% 庁舎管理 1 件、個人情報保護 1 件
市民まちづくり局
3
2.2% 市民活動 1 件、広報 1 件、消費者相談 1 件
財政局
8
5.9% 道・市民税 6 件、固定資産税 2 件
保健福祉局
10
7.4%
障がい者福祉 5 件、高齢者福祉 1 件、精神保健 1 件、
生活保護 1 件、職員対応 1 件、施設指導 1 件
子ども未来局
2
1.5% 保育所 1 件、子育て支援 1 件
環境局
3
2.2% 清掃工場 1 件、産業廃棄物 1 件、職員対応 1 件
経済局
1
0.7% 中央卸売市場 1 件
観光文化局
1
0.7% 出資団体 1 件
建設局
8
5.9%
道路管理 2 件、放置自転車 2 件、用地取得 2 件、
河川管理 1 件、工事被害 1 件
都市局
13
9.6%
市営住宅 7 件、建築指導 2 件、市街地整備 1 件、
区画整理事業 1 件、指定道路 1 件、入札業務 1 件
水道局
5
3.7% 水道工事 3 件、水道料金 1 件、水道事業 1 件
病院局
3
2.2% 病院の対応 2 件、個人情報保護 1 件
消防局
4
3.0% 防火指導 1 件、消防団 1 件、施設管理運営 1 件、救急車 1 件
区
53
市民部
6
土木部
11
保健福祉部
36
39.3%
4.4% 戸籍・住民票 3 件、町内会 2 件、地区センター1 件
8.1%
道路管理 5 件、街路樹管理 1 件、工事騒音 1 件、
除排雪 3 件、公園の維持管理 1 件
生活保護 19 件、国民健康保険 6 件、障がい者福祉 4 件、
26.7% 個人情報保護 2 件、職員対応 2 件、母子・児童福祉 1 件
国民年金 1 件、民生委員 1 件
教育委員会
12
8.9% 学校管理 8 件、図書館運営 3 件、学校新・改築 1 件
その他の機構
1
0.7% 職員採用 1 件
市の業務外
6
4.4%
135
100.0%
合
計
※ 平成 24 年度の機構による。2 つ以上の局にまたがるときは、主な所管局に掲載している。
※ 端数処理のため、構成比の合計は 100.0 にならない。
-8-
2
苦情処理の状況
申立てがあった苦情のうち、調査結果が苦情申立ての趣旨に沿ったもの(市の業務
に何らかの不備があったもの)が 33 件(24.4%)
、市の業務に不備がなかったものが
77 件(57.0%)でした(表4参照)。
表4
苦情処理の状況
区
分
件 数
割 合
調査結果を
1
苦情申立ての趣旨に沿ったもの
33
24.4%
通知したもの
2
市の業務に不備がないもの
77
57.0%
調査結果を
3
調査を中止(取下げ等による)※条例第 18 条
13
9.6%
通知しなかっ 4
管轄外(市の業務外等)※条例第 3 条
6
4.4%
たもの
その他(1年以上経過等)※条例第 16 条
6
4.4%
135
100.0%
苦情申立ての趣旨に沿ったもの
33
30.0%
市の業務に不備がないもの
77
70.0%
110
100.0%
5
合
計
※ 端数処理のため、割合の合計は 100.0 にならない。
表 4-1 調査結果を通知したもののみで集計した場合
合
計
また、苦情の処理に要した日数の状況は、次のとおりです(表5参照)。
表5
苦情処理日数の状況
(単位:件)
処理日数
区
分
30 日
31~
61 日
以内
60 日
以上
合計
調査結果を
1 苦情申立ての趣旨に沿ったもの
25
7
1
33
通知したもの
2 市の業務に不備がないもの
54
23
0
77
3 調査を中止(取下げ等による)
13
0
0
13
4 管轄外(市の業務外等)
6
0
0
6
5 その他(1年以上経過等)
6
0
0
6
調査結果を通知
しなかったもの
合
計
104
30
1
135
割
合
77.0%
22.2%
0.7%
100.0%
※ 端数処理のため、割合の合計は 100.0 にならない。
3
苦情申立ての趣旨に沿ったもの(33 件)
苦情申立ての趣旨に沿った(市の業務に何らかの不備があった)33 件の案件の約5
割が説明や事務処理などの対応に不備があったものとなっています(表6参照)。
-9-
表6「苦情の趣旨に沿ったもの」の案件 ※本文中に掲載されている案件は掲載事例と
記載しています。
(1)対応に不備(接遇、説明不足、事務処理の誤り等)があったもの
・ 住民票交付窓口の職員体制
・ 生命保険解約返戻金の差押え
・ 入院患者に対する市立病院の対応
・ 「さっぽろえきバスナビ」の表示運賃の誤り
掲載事例 P15
・ 配水管工事後の赤水に対する市の対応
・ 所得税還付金の差押えに係る通知文書
・ 生活保護受給者の転居に関する市の対応
・ 療育手帳の記載ミス
16 件
掲載事例 P20
・ 救急隊員の配慮を欠いた言動
・ 貸出図書の返却期限前の督促
(48.5%)
掲載事例 P21
・ 子供の嫌がらせ等に関する学校の対応
・ 市政要望に対する回答の遅延
・ 業務仕様書の不備による入札の有効性
・ 証明書交付窓口での誤った説明
掲載事例 P28
・ ケースワーカーの配慮を欠いた言動
・ 民生委員の訪問
(2)制度運用などに関して改善すべき点があったもの
・ 中央卸売市場への内部告発に関する対応
・ 「こころの健康づくり電話相談」の相談体制
・ 広告事業受注時における協賛金調達の要請
・ 市営住宅内のトラブルに関する対応
・ 市が行った縁石工事の瑕疵による車の損傷
掲載事例 P18
・ 教師の暴言等に関する学校及び教育委員会の対応
14 件
・ ケースワーカーによる名誉毀損行為
・ 市の残土置場から飛んでくる粉塵の被害
掲載事例 P26
(42.4%)
・ 市に相談した内容の漏えい
・ アンダーパス内の街灯の無駄な点灯
掲載事例 P22
・ パークゴルフ場の管理委託契約に関する市の対応
・ 市道の不公平な除雪
・ 国保料納付相談時のプライバシーの保護
・ 市立病院における院内の連携体制
(3)法令等の解釈・運用が適切ではなかったもの
3件
・ 職員による個人情報の取扱い
・ 自分が納税した固定資産税の不動産共有者への勝手な還付
・ 母子寡婦福祉資金貸付の申請要件
掲載事例 P24
-10-
掲載事例 P16 (9.1%)
4
発意調査の状況
オンブズマンの発意により、
「損害賠償金の支払」、
「パークゴルフ場の管理運営と有
効利用のあり方」、「所得激減を理由とする国民健康保険料の減免」について調査を行
いました(「Ⅲ オンブズマンの発意による調査」P37 参照)
。
5
是正勧告等
平成 24 年度の調査においては、是正勧告や意見表明に至ったものはありませんでし
た。
6
現地調査
苦情の内容によっては、現地を確認し状況を把握するため、オンブズマン自身が現
地に赴き、調査を行っています。
建設残土の管理状況調査
道路の傾斜に関する調査
区役所の相談ブースに関する調査
7
フォローアップ調査(事後の改善状況についての追跡調査)
平成 24 年度中に調査結果を通知したもののうち、趣旨に沿ったもの 17 件、不備は
なかったがオンブズマンが何らかの要望を出したもの4件について、調査結果通知に
係る改善等の状況について追跡調査を行いました。その結果、市から、ほぼすべての
案件について、何らかの改善が行われ、あるいは、何らかの改善の実施について検討
中であるとの回答を得ました。
-11-
8
その他の活動
(1) 高齢者大学や出前講座の実施
豊平区で出前講座(10 月)を実施したほか、
中央区のシルバーセミナー(高齢者教室)(2
月)にオンブズマンが講師として出向くなど、
オンブズマンや事務局がオンブズマン制度に
ついての講義を行いました。
中央区シルバーセミナーでの講義(25.2.15)
(2) 大学生との交流
札幌大学の学生とオンブズマンの交流会を
開催し、意見交換を行いました(12 月)。
(3) 職員研修
厚別区役所で実施された職員研修において、
オンブズマンが講義を行いました(2月)
。
札幌大学の学生との交流会(24.12.20)
(4) パネル展の実施
大通地下ふれあい広場「展示コーナー」にお
いてパネル展を実施し、札幌市オンブズマン制
度の周知に努めました(11 月)。
(5) 広告掲載等
2月に、中央バス及びじょうてつバスの市内
運行全路線において、車内広告(ステッカー)
を掲示したほか、地下鉄全線において、車内に
帯広告を掲示しました。また、7 月と 12 月に地
下鉄駅に制度PRのポスターを掲示しました。
(6) 第 14 回全国行政苦情救済・オンブズマン制度連絡会
11 月に東京で開催された全国行政苦情救済・オンブズマン制度連絡会にオンブ
ズマン1名が参加し、国や他の自治体の行政苦情救済機関との意見・情報交換を
行いました。
-12-
Ⅱ
実際の苦情申立て事例(平成 24年度)
実際に申し立てられた苦情の中から、オンブズマンの活
動状況を知っていただくうえで参考になると思われる案件
の一部を紹介します。なお、
「市の改善等の状況」について
は、フォローアップ調査(平成 24 年度に調査結果通知をし
た事案を対象に、その後の改善等の状況を追跡調査したも
の)に対する市の回答等を掲載しています。
1
苦情申立ての趣旨に沿った事例
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(9)
「さっぽろえきバスナビ」の表示運賃の誤り
自分が納税した固定資産税の不動産共有者への勝手な還付
市が行った縁石工事の瑕疵による車の損傷
療育手帳の記載ミス
貸出図書の返却期限前の督促
アンダーパス内の街灯の無駄な点灯
母子寡婦福祉資金貸付の申請要件
市の残土置場から飛んでくる粉塵の被害
証明書交付窓口での誤った説明
2
市の業務に不備がなかった事例
(1)
(2)
(3)
(4)
3
落雷から避難している間の自転車の撤去
妊婦健診手続の不十分な説明と費用の返還
海外転出時の課税に関する職員の誤った説明
「さっぽろ保育ルーム」の選考基準
調査をしなかった事例
店舗前道路の除雪に伴う被害
-13-
1
苦情申立ての趣旨に沿った事例(要約)
(1) 「さっぽろえきバスナビ」の表示運賃の誤り
市がホームページに掲載している札幌市内公共交通案内サイト「さっぽ
ろえきバスナビ」でバス路線の目的の停留所までの料金を検索したとこ
ろ、運賃は 200 円と表示された。
しかしながら、翌日、実際に乗車したところ、料金は 230 円であり、ホ
ームページで検索した料金よりも高い金額を支払うことになった。
市には、その差額の返還を求めるとともに、他の路線にも同様の誤りが
ないか確認した上で、正しい情報となるように訂正してほしい。
オンブズマンの判断
「さっぽろえきバスナビ」は、ホームページ上から、誰でも簡単に公共交通
機関の時刻表や乗換案内等の情報提供が受けられる、とても有益な行政サービ
スの一つで、市によれば、1日に平均 12,000 を超える人がこのサービスにアク
セスしているとのことです。従って、市は誤った情報を提供して利用者を混乱
に陥れないように、提供する情報内容の正確を期し、システムの安定的な運用
を確保するよう求められています。
市は、本件の苦情について、料金表示に誤りがあったことを認めて修正を行い、
他の路線についても同様の誤りがないか確認するため、管理運営を委託してい
る業者を通じて、全件調査を行うとしています。
オンブズマンは、市が本件申立てを機に、本件
の誤表示を正し、直ちに全件調査を実施したこと
は評価します。市においては、利用者が信頼でき
安心して利用できるために、より一層適切な運営
管理に努めることを期待しています。
なお、申立人が求める差額運賃の返還について、市は、申立人が支払った乗
車運賃は、当該乗車区間の正規の運賃であり、利用規約に市の免責条項がある
ことから、返還には応じられないとしていますが、オンブズマンとしても、や
むを得ないと考えます。
市の改善等の状況 ※平成 24 年 9 月フォローアップ調査
苦情申立てのあった運賃表示の誤表示については、当日中に修正を行いま
した。また、同様の誤りについて、全件調査を実施したところ、本件以外に
12 件の誤りが判明し、全て修正を行いました。
-15-
(2) 自分が納税した固定資産税の不動産共有者への勝手な還付
過去に自分が納めた固定資産税について、再度請求されて困っている。
この税は、私が親を亡くした後、親の代わりに支払っていたものである
が、市はそれを不動産の共有者に勝手に還付してしまい、その分も含めて
再度請求してきた。
今後、税金を払っても、また、請求されるのではないかと不安になり、
未払い分の固定資産税を支払うことができない。
オンブズマンの判断
1
具体的な経緯について
オンブズマンが市に確認したところ、苦情の対象である不動産は、申立人の
親であるAともう1名のBが共有しており、固定資産税の納税通知書は、
「納税
義務者B外 1 名」として、Aの住所に送付されていたとのことです。数年前に
Aが亡くなられた後、Aの持分について相続登記や固定資産現所有者届の提出
がなかったことから、引き続きAを共有者として課税し、相続登記が終了した
ら連絡をいただけるよう、申立人にお願いしていたとのことです。
その後、最近になって、故人であるAを共有者とする課税を改めるため、課
税を一旦取消し、これにより生じた過納金を納税義務者Bに還付したとのこと
です。そして、約2か月後、依然として相続登記や現所有者届の提出がないた
め、申立人を代表とした相続人全員に対し、新たに課税を行ったとのことです。
2
過納金が発生した際の取扱いについて
地方税法の規定によれば、税の過納金について、充当すべき徴収金(税)が
ある場合は、還付ではなく、まず充当を行わなければなりません。申立人が納
めたという固定資産税が、新たに課税された税に充当されていれば、その分に
ついて請求がなされることはなく、本件のような苦情も生じなかったと思われ
ます。では、なぜ充当されず、Bへの還付が行われたのか、オンブズマンは疑
問を持ち、検証しました。
本件においては、課税の取消しから新たな課税が行われるまで、約2か月を
要しています。そのため、その間、誰にも課税していない空白の期間が生じて
しまっています。従って、課税を取り消したことにより、発生した過納金を充
当できる税額がないこととなり、充当できなかったものと思われます。
しかしながら、相続は死亡によって開始し、遺産の分割は、相続開始の時に
遡ってその効力を生ずるとした民法の趣旨、地方団体の徴収金があるときは還
付の規定にかかわらず充当しなければならないという地方税法の趣旨に照らし
てみると、課税の取消しと新規課税を同時に行い、還付より先にまず新規課税
-16-
した税額に充当することで円滑に税の徴収を行えるよう努めるべきだったので
はないでしょうか。
3
過納金の還付先について
課税の取消しにより生じた過納金について、市は、Aが亡くなった後、Aに
代わってなされたという申立人による納付は、法令上、第三者による納付とな
り、この時点で納税義務を負っていなかった申立人にではなく、納税義務者B
に還付を行った、と主張しています。しかしながら、前述の民法の趣旨からす
れば、Aが亡くなられた時点で、Aの子である申立人も相続人の一人であり、
申立人による納付が、単に第三者による納付であったと言い切れるのかどうか、
オンブズマンは疑問に感じたところです。
この点については、申立人による納付がなされたという事実確認が必要であ
るとともに、複雑な法律問題を含んでいることから、十分な資料に基づき慎重
に検討することが必要であり、簡易迅速に苦情の処理を行う機関であるオンブ
ズマンが軽々に判断することは妥当ではないと考え、判断を差し控えることに
しました。
なお、不動産所有者の死亡により納税義務者が不在となる場合、相続人の特
定など、税の徴収事務において難しい問題は多いと思われますが、本件のよう
な事後の賦課の取消しを避けるためにも、死亡者への課税は極力避けるように
努力していただきたいと思います。
※ この事例は、まだフォローアップ調査を実施していないことから、市の改
善状況を掲載しておりません。
-17-
(3) 市が行った縁石工事の瑕疵による車の損傷
市内にある店舗の駐車場から、自動車で市道に出ようとしたところ、
縁石で車の底を擦った。その縁石は普通より高い状態で作られており、
他にも車が擦った跡があった。
後日、縁石の工事を行った市に対して苦情を申し出たところ、職員
から、「車を運転する者には、安全運転義務があるから、100%市が責
任を負うことにはならない」と言われた。
納得がいかないため、後日、市の職員立会いの下、現場を確認する
ことになったが、その際、職員から、本当に車の底を擦るか確かめる
ので、同じ場所で再度車を運転してみるように指示された。私は、ま
た車の底を擦ってしまうと忠告したが、信用されず、実際に車を運転
したところ、案の定、車の底を擦った。
市は、この現場検証の際に損傷した2回目の分は 100%負担するが、
1回目の分は、100%負担にはならないと言う。しかしながら、そもそ
も市が縁石の工事を行った際に、きちんと確認していれば、車を擦る
ことはなく、1回目の分も含めて、修理費用は、すべて市が負担すべ
きである。また、現場検証の際、市が私の忠告を聞きいれていれば、
2回目の分の修理費用はかからず、公費の無駄遣いである。
オンブズマンの判断
1
本件物損事故の責任について
本件駐車場の出入口は、種々の車両が通行するので、通行車両の安全確保の
要請は極めて高く、その安全を妨げるような工事方法や管理は許されません。
申立人の車両は、車高も保安基準を満たしており、特別なタイヤを装着して
いたわけでもなく、当該縁石に衝突した原因は、縁石の高さに問題があったと
考えられます。従って、当該縁石の設置工事をした市の責任は免れることはで
きません。市も一定の過失があるとして、責任を一部認めています。
過失割合については、市に対して 100%の責任を求める申立人に対して、市は
道路交通法における運転者の安全運転義務の履行を理由に、市の 100%の責任は
認めていません。
オンブズマンとしては、負担割合の認定は専門的であることから、その判断
を行うことはできません。市と申立人の側での協議を通じ、両者が納得のいく
解決がなされることを望みます。
-18-
2
市による本件物損事故の検証方法について
本件物損事故の検証(再現)の結果、市は申立人に対して、1回目と同様の
車両底部を擦る物損被害を与えてしまいました。これに対して、市は2回目の
修理費用は市の方で 100%負担すると述べていますが、申立人は公費の無駄遣い
であると主張しています。
オンブズマンは、本件物損事故の検証は必要であったと思いますが、申立人
に二重の被害を与える可能性があることも考慮して、申立人の車両と同型のも
のを用意するなど、検証の方法として、慎重な配慮が必要であったと考えます。
市の改善等の状況 ※平成 25 年 5 月フォローアップ調査
本件事故の発生場所については、今後同様の事故が起きないよう、段差の
解消を図るため、縁石を撤去し舗装で擦り付ける補修工事を実施しました。
また、今後、本件のような事故が発生した場合の検証方法については、誠
意をもって慎重に対応することを部内の全体会議の場において、職員に周知
し、徹底を図ることとしました。
-19-
(4) 療育手帳の記載ミス
私の子どもは、障がいにより療育手帳を取得しており、その手帳に区
役所から「有料道路割引」の証明を受けている。
この証明は、現在は2年ごとの更新が必要であるが、以前は有効期限
の記入はなく、事実上、期限は問われない状態であった。
平成 22 年に証明を更新した際、有効期限として記載された日付の真ん
中に赤線が引かれており、私はこれが期限を抹消したものであると考え、
以前と同様に期限を問わない取扱いになったのだと考えた。
ところが、最近になり、高速道路を利用したところ、料金所で有料道
路割引の証明が期限切れであることを指摘された。やむを得ず、割引の
ない正規料金を支払ったが、これは、区役所による手帳の記入ミスが原
因である。市には、不利益を被った金額の支払を求めたい。
オンブズマンの判断
有料道路料金の割引制度は、通勤、通学、通院等の日常生活において、有料
道路を利用する障がい者に対し、自立と社会経済活動への参加を促すため、有
料道路事業を行う会社が料金の割引措置を講ずるものであり、市は、申請者が
その対象であることを証明することで、制度の運用に協力しています。
本件の苦情に際して、オンブズマンも、実際に手帳の記載を確認しましたが、
本来、有効期限を強調するために下線が引かれるべきところ、あたかも、有効
期限を抹消するかのように、日付の真上に赤線が引かれていました。
市は、不適切な事務処理であったことを認め、申立人に謝罪しておりますが、
今後、事務手続に遺漏なきよう、万全を期されることを要請します。
なお、申立人が負担した金額に関しては、市が証明の更新申請の際に、有効
期限を記した申請書の控えやその旨を記載した文書を交付していることや、市
が本件有料道路の管理運営を行っている会社に対し、本件割引の遡及適用につ
いて検討をお願いするなど、できる限りのことは行っていることを考えると、
その負担に応じられないという市の見解に問題があるとはいえません。
市の改善等の状況 ※平成 25 年 5 月フォローアップ調査
各種手帳への記載を行う際には、誤解を与える表記とならないよう、記載
位置等について十分注意し、記載内容を申請者と一緒に再確認するととも
に、有効期限や更新手続の必要性について、確実に説明を行うよう努めてい
ます。
-20-
(5) 貸出図書の返却期限前の督促
地区センターで受け取った図書館の書籍に関し、センターの職員から、
「本日が返却期限の書籍が返却されていない」という電話を受けた。
しかし、まだ期限前ではないかと疑問を感じたため、インターネットで
貸出状況を確認したところ、返却期限はまだ数日先であった。そこで、担
当者にその旨連絡したが、「こちらのデータでは、本日が返却日となって
いる」の一点張りであった。なぜ、返却期限前であるのに督促の連絡がき
たのか納得がいかない。
オンブズマンの判断
苦情のあった地区センターは、指定管理者である法人が管理運営を担ってお
り、図書カウンターの業務も当該法人の職員が従事しています。
今回、申立人は返却期限前に利用図書の返却を求められたとして、苦情を申
し立てられました。
市によれば、その原因は、職員の勤務交代の際の引継ぎがうまくなされず、別
の図書の「取置期限」について連絡すべきところ、
「返却期限」と取り違えてし
まったということです。そのような事務処理が不適切であることは言うまでも
ありません。
その後、センターから市に対し、改善
の方法についての報告がなされていま
すが、市において、今後、同種の誤りが
生じることがないよう、適切な指導がな
されることを期待します。
市の改善等の状況 ※平成 25 年 4 月フォローアップ調査
本件地区センターの指定管理者である法人に対し、図書カウンター業務に
従事する職員へ、同業務の取扱要領等の内容について、再度、周知を行うよ
う指導しました。
なお、本件苦情申立てを受け、当該法人では、次のとおり、事務の改善が
なされています。
① 業務引継ぎの際は、口頭だけではなく文書でも行う。
② 業務を後継した者は、不明な点やトラブルの発生について、前任者へ
の確認や責任者への報告を速やかに行う。
-21-
(6) アンダーパス内の街灯の無駄な点灯
自宅近くのアンダーパスの歩道には、片側 12 本、計 24 本の街灯があ
り、24 時間ずっと点灯されているが、無駄であるので、センサーをつけ
るなどして、太陽が出ている時間帯は消すべきである。
さらに、この歩道は、冬季の間、片側しか排雪されないため、片側の
歩道しか歩行する人がおらず、歩道の両側の街灯を点ける必要はないと
考える。
私は、これらのことについて、担当部局に再三にわたって伝えてきた
が、一向に改善がなされない。札幌市では、市民に対して節電を呼び掛
け、市役所本庁舎や区役所、市の関連施設等において、不要な電気を消
す等の節電対策を行っている最中であるのに、このような対応には納得
できない。
オンブズマンの判断
1
札幌市における節電対策について
札幌市は全市を挙げて節電対策を呼び掛け、それを実施しております。
節電対策は、大規模な施設はもとより、小さな規模のものについても、いわ
ば、「塵も積もれば山となる」の精神による工夫と努力が必要となります。
申立人が、身近な市の施設の節電対策について苦情を申し立てられたのは、
誠に時宜を得ていると思います。
2
本件アンダーパスの街灯に関する具体的な対応について
(1) 街灯の 24 時間点灯について
本件アンダーパスの歩道について、太陽が出ている日中にまで点灯してお
く必要があるかどうかは、一考に値することは確かであり、申立人の言い分
は、十分に理由があると言えます。
ただ、市が、常時点灯の解消の方法があるものの、その方法の導入を検討
するにあたり、その効果への疑問や防犯対策の観点から、一旦は常時点灯の
維持の態度を示したことも、あながち否定しがたいと考えます。
市は、当初、本件アンダーパスの街路灯については、防犯灯の意味合いが
強く、常時点灯している方がより安全であると判断し、申立人に対しても、
そう説明していましたが、その後、再考を重ね、街灯にソーラータイマーを
導入し、日の出・日の入り時刻で調整し、夜間のみ点灯することを試行する
ことになりました。
申立人のご意見が、このような市の対応を生み出したことになります。
-22-
(2) 冬期間における未除雪側歩道の街灯点灯について
除雪されておらず、歩行者が通行できない側の歩道の街灯の点灯は無駄だ
との申立人のご意見は全くそのとおりです。市は、配線経路を変更してブレ
ーカーを増設し、未除雪部分の歩道については、冬期間は街灯を点灯しない
こととするそうです。
この対応についても、申立人のご意見から生み出されたものであり、この
ような市の対応は当然のことと思います。
(3) 街灯の蛍光灯からLED灯への変更について
市によれば、トンネル内に設置するLED灯は、一般の家庭用と異なり、
まだ種類が少なく、高額であることから、今回は導入を見送ったとのことで
すが、LED灯でも防犯灯としての照度は確保でき、消費電力を現行の4割
程度に抑えられるという利点もあるとのことです。
この点については将来の課題として、市の更なる検討に期待しております。
市の改善等の状況 ※平成 25 年 5 月フォローアップ調査
本件アンダーパスの歩道部分における街路灯の常時点灯の解消として、次
の工事を実施いたしました。
① 日の出・日の入り時刻で調整し夜間のみ点灯する機器(ソーラータ
イマー)を設置
② 冬期間の未除雪歩道部の消灯を行うため、手動により電源の切り替え
ができるブレーカーを増設
なお、昼間の消灯及び冬期間の片側歩道の消灯については、今回実施した
試行状況を踏まえ、今後も継続して行っていく予定です。
また、蛍光灯からLED灯への変更については、設置後のメンテナンス回
数の減少や、消費電力抑制等のメリットもありますが、費用が高額であるこ
とから、引き続き今後の課題として検討していきます。
-23-
(7) 母子寡婦福祉資金貸付の申請要件
私は、現在、生活保護を受けているが、自立のため、保育士の資格を
取れる学校を受験して合格した。その入学金や学費を借りるため、母子
寡婦福祉資金貸付(技能修得資金)を申請しようと区の窓口で相談した
が、連帯保証人がいないという理由で断られた。
私は身内もおらず、連帯保証人を頼める人はいない。厚生労働省によ
ると、連帯保証人の有無を、母子寡婦福祉資金貸付の必須条件とはして
おらず、各自治体の判断によるとのことだった。連帯保証人がいないと
いう理由で貸付を受けられないことに納得がいかない。
また、窓口でこのことを訴え、一度申請を受理し、検討を行った上で
判断してほしいと申し出たが、申請すらさせてもらえず、門前払いされ
た。このことについても不満である。
オンブズマンの判断
1
連帯保証人の要件について
札幌市では、母子寡婦福祉資金の中の技能修得資金の貸付けについて、生活
保護を受給されている方を「借主単独で償還が困難である」と判断し、連帯保
証人を立てることを必須要件としています。
国は、母子寡婦福祉資金貸付における連帯保証人について、
「自治体が借主単
独での償還は困難と判断する場合には、連帯保証人を付けて貸すことができる」
との見解を示しています。このことからすると、市の取扱いに問題があるとは
言えませんが、他の政令指定都市の中には、連帯保証人を立てられない場合、
有利子での貸付けを認めている都市もあります。
また、市の要領では、連帯保証人の要件として、一定の基準が定められてい
ますが、その運用については、連帯保証人が得られないために貸付けが受けら
れないようなことがないよう配慮するとされており、さらに、生活保護受給世
帯については、貸付けを行うことにより、その自立更生に効果があると認めら
れる場合、貸付けができると規定されています。
母子寡婦福祉資金貸付は、母子家庭と寡婦の経済的自立を支援する制度であ
り、申立人の、保育士の資格を取り、一日も早く自立したいという意思は、オ
ンブズマンとしても十分理解できるところです。
市に対しては、申立人のような、自立に向けて前向きに動きだそうとしてい
る方々をサポートするためにも、連帯保証人を立てられない生活保護受給世帯
について、有利子での貸付けを認める等、上記要領の適切な運用を含め、再度
検討していただきたいと思います。
-24-
2
申請要件を欠いている場合の対応について
市の要領では、窓口で対応を行う母子・婦人相談員は、
「貸付資格の有無、申
請内容が関係法令等に適合するか否かを確認した後、貸付希望者に『母子・寡
婦福祉資金貸付申請書』を交付する」とされています。相談員は、この規定に
基づいて対応していることから、この対応に問題があったとは言えません。
しかし、窓口において、申請者から、連帯保証人がいないことを聴取したと
しても、その後、連帯保証人が見つかるなど、事情が変化する可能性も考えら
れます。また、申請を受け、その上で却下処分(行政処分)がなされた場合、
その処分に不服がある者は、行政不服審査法に基づく不服申立てをすることが
できますが、申請自体が受け付けられなければ、その機会がはく奪されること
になります。窓口では、申請者が要件を満たしていないことが判明した場合、
貸付要件等の説明を口頭で行うことに加え、それを示した書面をお渡しすると
ともに、申請者が希望する場合には、一旦は申請を受け付けて判定結果を通知
するといった対応についても、ぜひ検討していただきたいと思います。
※ この事例は、まだフォローアップ調査を実施していないことから、市の改
善状況を掲載しておりません。
-25-
(8) 市の残土置場から飛んでくる粉塵の被害
私の会社が経営する施設の近くに、市が建設残土を置いている場所が
あるが、そこに火山灰が高く積み上げられるようになってから、粉塵が
施設に飛んでくるようになった。
その粉塵のせいで、ICカードシステムが故障し、修理のために多額
の費用がかかるなど、損害を被っている。
市に伝えたところ、①火山灰残土にシートをかける、②防塵剤をまく、
と回答されたが、シートが風で捲れて意味をなさない状況である。
市は、システム基板に入り込んだ粉塵が建設残土置場から飛んできた
ものかどうか分からないと、因果関係を認めようとしない。
残土の飛散と我が社の被害の因果関係を認め、損害を賠償してほしい。
オンブズマンの判断
市は、申立人の会社から被害の連絡を受けた
後、火山灰残土にシートをかぶせ、粉塵の飛散
防止策を取っており、シートが風で捲れる度に
修正しているとのことです。
しかしながら、シートによる被覆状態が決し
て十分でないことは、申立人の言うとおりです。
被覆実行後に、申立人が撮影した現場写真や、オンブズマン自身が残土置場
に赴き見分したところでは、シートは捲れたままになっておりました。
市は、シートによる被覆状態について、委託業者任せにせず、常に確認する
ことを心がけるべきです。
市の対応として、①施設に飛来付着した粉塵が、市の残土置場からのものな
のかどうか、特定できておらず、②残土から飛来した粉塵が施設の機器に付着
したとしても、機器の不具合との因果関係が不明であること、を理由に、現時
点において応じていないのは正論と言えます。
オンブズマンとしては、これらを踏まえ、市に対して、今ひとつ柔軟な対応
策を講ずることができないかを検討することを望みます。理由は、以下のとお
りです。
施設と建設残土置場の位置関係や距離、残土の堆積状況からすると、その残
土から生じた粉塵が大量に施設に飛来し、機器類に付着していることは間違い
ないと思われます。近隣の農地からのものも考えられますが、残土と比較すれ
ば、その程度はかなり低いものと考えられます。
そうであればこそ、市は、通報後ただちにシートによる被覆や砂利の敷設を
-26-
実施し、防塵ネットを設けたものと言えましょう。
電子部品を用いた機器が、目に見えないような極めて微細な粉塵に極めて弱
いことはよく知られているところです。
オンブズマンが施設の器具を見分したところ、土砂より生じた微細な粉塵の
存在を確認しました。細かな粉塵が機器の不具合に、何らかの影響を与えてい
る可能性、蓋然性は極めて高いように思えます。
市の前記対応に問題はないとしても、施設へ飛来している粉塵の特定などの
究明に関して、それに要する費用や段取りについて、申立人との間で、もっと
柔軟な対応もあり得ると考えます。
そのことによって、市が他から咎められるような事態となる可能性は低いと
思われます。市の顧問弁護士が申立人側との協議を示唆しているとのことです
が、これはオンブズマンの意向と通底しているものとも思えます。
現地調査の様子
市の改善等の状況 ※平成 25 年 5 月フォローアップ調査
本件の申立て以降、現場では防塵対策を今まで以上に十分に行い、粉塵が
飛散しないように心がけています。
今後、土砂を置く場合は、散水の強化、防塵剤散布の強化などの防塵対策
を、これまで以上に注意して行っていきます。
なお、本件施設への影響について、市が調査や検証を行うことを検討しま
したが、原因の特定に必要な分析や鑑定を行うとした場合、それにかかる費
用や効果の面で問題が多いことが分かり、現時点では難しい状況です。
建設残土の粉塵と機器の不具合についての因果関係が明らかになるか、あ
るいは裁判で決定されたなどの場合には、補償を含め誠実に対応していきた
いと考えています。
-27-
(9) 証明書交付窓口での誤った説明
亡き祖父の戸籍の証明書が必要になり、区役所へ申請に行った。
私は、窓口で、「古い戸籍の証明書が必要である」と伝えたが、対応し
た職員は、失笑したような表情で「戸籍謄本で大丈夫」と言った。心配に
なって、何度も確認したが職員は取り合ってくれなかった。
念のため、後日、書類の提出先に問い合わせたところ、やはり必要なの
は、戸籍謄本ではなく、従前の古い戸籍の証明書であった。
職員の誤った説明により、必要な書類を発行してもらえなかったこと
と、対応した職員の態度に不満がある。
オンブズマンの判断
戸籍や住民票に関する仕組みは、一般市民にとってなじみがあるものではあ
りません。従って、どのような証明書が必要であるのか確定できないままに窓
口に来られる方も珍しいことではないと考えられます。このような方に対する
適切な対応が必要です。
申立人の申立て内容とその後の経緯からすると、申立人においても当初どの
ような証明書が必要であるのか、必ずしも確定できていなかったものと解され
ます。この場合、申立人から詳しく事情を伺い、請求内容の確認を徹底すべき
でした。
また、申立人は市の職員の接遇についても、苦情を述べています。その時の
具体的な事実関係についてオンブズマンとして確認はできませんが、前記のと
おり、請求内容の確認が不十分であったことからすると、接遇においても何ら
かの問題があった可能性は否定できません。
オンブズマンとしては、戸籍や住民票に関する証明書の請求内容の確認の徹
底を図るためには、担当職員自身の知識の向上と、職員間の適切な連携が必要
であることを指摘し、請求内容の確認が丁寧になされるよう、また接遇が適切
になされるよう、市に対しより一層の努力を希望します。
※
この事例は、まだフォローアップ調査を実施していないことから、市の改
善状況を掲載しておりません。
-28-
2
市の業務に不備がなかった事例(要約)
(1)落雷から避難している間の自転車の撤去
落雷を避けるため、緊急避難として自転車を市内の自転車等放置禁止区
域にやむを得ず駐輪し、天候の回復を屋内で待っていた。
天候が回復した頃、自転車を取りに戻ったところ、放置車両として撤去
されていた。そこで、市の担当部局に電話して事情を話したが、「落雷を
避けることは緊急避難にあたらず、撤去費用は免除できない」と言われた。
結局、撤去料を支払って自転車を引き取ったが、今後、このような場合
には、撤去費用が免除されるように改善してほしい。
オンブズマンの判断
1
本件の経緯について
申立人は、当日の午前 11 時過ぎに雷鳴を聞き、落雷を避けるために放置禁止
区域内に自転車を置き、最寄りの店舗に避難し、その後、同店内で時間を過ご
してから、午後3時頃に自転車を置いた場所に戻っています。
市は所定の手続により、12 時 45 分頃、本件自転車に移動を命じる警告札を付
け、午後2時頃、市職員が立ち合い、委託業者により、本件自転車の撤去が行
われています。このとき、雷鳴は聞こえず、雨もほとんど降っていなかったと
思われます。
2
撤去費用免除規定の適用について
市の要領によれば、放置自転車の撤去費用が免除されるのは、当該自転車が
盗難にあったものである場合のほか、急病等緊急やむを得ない事情が確認でき
る場合に限られています。
本件のような「緊急避難」も、事態が極めて緊急性を要し、他に講ずるべき
手段がなく、駐輪後も可能な限り正常な状態に復帰できる体勢を取っているこ
となどの要件を満たす限り、この事情に該当し得ると考えられます。
本件自転車の駐輪が、これらの要件を満たしてい
るかどうかですが、雷鳴が聞こえたことが極めて緊
急であったか、放置禁止区域内に駐輪する以外に講
ずるべき手段がなかったか、正常な状態に復帰でき
る体勢でいたかなどについて、いずれも積極的な肯
定はできかねます。従って、本件における市の対応
に特に問題はないと考えます。
-29-
(2)妊婦健診手続の不十分な説明と費用の返還
札幌市に転入後、市内の病院で妊婦健康診査を受診した。後日、区の
保健センターに電話し、
「病院での妊婦健診の助成手続をしたい」と伝え
たところ、職員から、「妊婦健康診査受診票の申込みをしていないので、
助成は受けられない」と言われた。
私は、札幌市に転入した際、一度で全ての手続を済ませられるよう、
あらかじめ区役所のホームページで、必要な書類を確認してから、手続
に行ったが、ホームページには、妊婦健康診査受診票について、一切記
載されておらず、区役所や保健センターで諸手続を行った際も、職員か
ら何も説明はなかった。
このような市の対応は、極めて不十分であり、私が負担した妊婦健診
の費用を返還してほしい。
オンブズマンの判断
1
妊婦健康診査費用の償還について
市によれば、妊婦健康診査の受診票は、市民が保健センターに妊娠届を提出
した際に母子手帳と共に交付されるものですが、妊婦が市外から転入した場合
は、転入前の市町村で交付された受診票と母子手帳を保健センターに持参して、
札幌市の受診票の交付手続をする必要があるとのことです。
そして、妊婦健康診査費用の助成(償還)については、札幌市の受診票の交
付を受けた妊婦が、里帰り出産等により札幌市外に所在する産科婦人科医療機
関等において健康診査を受診した場合は対象となるが、本件のように、札幌市
に住民登録をしていながら札幌市の受診票の交付を受けていない場合は、対象
にはならないとのことです。
オンブズマンは、健康診査費用の償還の可能性について、関係要綱等を精査
しましたが市の回答のとおりであり、現行制度において、申立人に対して健康
診査費用の償還を不可能とした市の対応に不備はないと考えます。
ただ、オンブズマンが他市町村での健康診査費用の償還払いの対象について
調べたところ、本件のように、市外から転入された方が受診票の交付手続を行
うことを忘れてしまった場合であっても、償還払いの対象になる自治体もあり
ました。今後、札幌市においても、要綱等の改正を含め、本件のような場合の
救済策を検討していただきたいと思います。
-30-
2
制度の周知方法について
妊婦健康診査費用の助成は、妊婦の健康管理の充実及び経済的負担の軽減を
図り、安心して妊娠・出産ができる体制を確保することを目的とする国の施策
です。妊婦には確実に健康診査を受診できるようきめ細かな配慮が必要です。
市は、現在、この助成制度について、ホームページ、転入者用リーフレット、
母子手帳交付時の説明、ポスター掲示などによって手続の周知を図っていると
のことです。
本件苦情を受けて、市は市外からの転入者に対してより分かりやすい説明と
なるように、ホームページの掲載内容について再検討し、改善していきたいと
のことですが、それに加えて医療機関等の委託機関に対して、受診票によらず
に自費で健康診査を受診する妊婦については、受診票の交付申請の有無を確認
するよう依頼するなど、妊婦に直接的に注意喚起する工夫が必要であると考え
ます。
3
職員の説明について
申立人は、健康診査費用助成制度について、職員から説明があれば、本件の
ようなことは起こらなかったと述べています。
市は、職員に必要な指導を行い、健康診査に関する手続や問合せに日々対応
しているとのことであり、本件についても、申立人が保健センターに来られた
際に、申立人の方から健康診査について、問合せがあれば、十分対応ができた
とのことです。
オンブズマンは、市のこのような対応は通常の職務行為であり、不適切な対
応であったとは言えないと考えます。ただし、本件のようなことが二度と起こ
らないようにするために、職員は市民の立場に立って考え、また、市民が気軽
に職員に分からないことを聞ける環境にしていく努力が一層求められていると
考えます。
市の改善等の状況
※平成 24 年 10 月フォローアップ調査
① 区のホームページの内容を見直し、市外から転入した場合の必要な手続
として、妊婦健康診査受診票の交付申請手続に関する項目と説明を追加し
ました。
② 産科婦人科医療機関等の委託機関に対して、市外から転入された方で受
診票によらずに自費で健康診査を受診する妊婦について、受診票の交付申
請の有無を確認するよう依頼文書を発送する予定です(平成 24 年 11 月発
送済み)。
-31-
(3)海外転出時の課税に関する職員の誤った説明
1年間の予定で海外に行くことになり、区役所の戸籍住民課で国外転
出の手続を行い、その際に住民税の取扱いを質問したところ、
「1月1日
現在日本に居住していない場合は非課税となる」との説明を受けた。
その後、当初の予定よりも早く帰国して札幌に戻り、転入手続の後、
保健福祉関係の窓口で諸手続を行ったところ、1月1日は日本に住所が
ないことから、収入はゼロの取扱いになると言われた。
ところが、その後、給与から住民税が差し引かれていることが分かり、
市税事務所に電話したところ、
「1年未満の海外勤務の場合は、日本にい
たこととして計算される」と説明され、その根拠は、昭和 43 年の国の通
達だと言われた。
出国前に、職員から「非課税になる」と説明を受けたのに、40 年以上
も前に出された通達に基づいて課税されることに納得がいかない。
オンブズマンの判断
1
区役所戸籍住民課窓口での説明について
申立人によれば、窓口で対応した職員が、住民税について、
「1月1日現在日
本に居住していない場合は非課税となる」と説明したとのことですが、もしそ
のように説明したとすれば、それは正確性を欠くものです。
ただし、窓口では日々多数の問合せが寄せられており、職員がこうした説明
をしたか否かについて、事実の確認が難しく詳細を確かめることはできません
でした。
市では、今後とも、市民に対して親切かつ丁寧な説明を心がけるとともに、
転出者に対して案内パンフレットを渡す等の対応をしていくとのことです。
オンブズマンとしては、市に対し、国内はもとより、海外との関係での転出
入について、よりきめ細かい案内文書等を工夫することを要望します。
2
住民税の課税について
本件において、市は、申立人の海外滞在期間が 1 年未満であることから、賦
課期日(1月1日)現在、日本に住所がないものの、住民税を課税しています。
市の説明によれば、国外転出者に対する住所の認定に当たっては、総務省
(旧・自治省)からの個別通知「外国人等に対する個人の住民税の取扱いにつ
いて」(昭和 41 年自治省税務局長通達)に基づき、その者の生活の本拠地を個
別の実情に応じて客観的に判断することによって行うとのことです。
-32-
そして、当該通達では、地方税法の施行地外で継続して 1 年以上居住するこ
とを通常必要とする職業を有する場合は、住所を有しないと推定してさしつか
えないことが示されており、本件の住民税課税は、これに基づいて行っている
とのことです。
通達は、行政の統一性を確保するために、国等が地方自治体等に対して発す
る法令解釈であり、地方自治体等はその通達に拘束されます。従って、市が、
本件通達に基づき、申立人に課税したことについて、特に問題はないことにな
ります。
今後、申立人のように、勤務等で海外に転出される方が増えて行くことが予
想されます。市には、海外転出される際の住民税の取扱いについて、周知徹底
を図っていただきたいと思います。
市の改善等の状況
※平成 25 年 4 月フォローアップ調査
1 区役所戸籍住民課の改善状況
(1) 市外へ転出する方にお渡ししているパンフレットの内容を見直し、国
外に転出する方への市税に関する問合せ先を掲載します。
(2) 他の部署の業務に関する質問に対しては、一般的な内容をお答えし、
詳細は、直接担当課に確認していただくようにご案内しています。
2 財政局市民税課の改善状況
(1) 市のホームページの内容を更新し、国外転出の際の住所地の判断方法
や、住民税の取扱いについて記載しました。
(2) 市税のパンフレット「私たちの市税」に国外転出の際の住民税の取扱
い等について掲載します(平成 25 年度版に掲載)。
-33-
(4)「さっぽろ保育ルーム」の選考基準
私は、保育所を経営しており、昨年度の「さっぽろ保育ルーム」の募
集にB型(札幌市が独自に定めた基準を満たす施設)で申請したが、認定
されなかった。市が保育の質と安全性の高いA型(国が定める認可保育所
の基準を満たす施設)を重視した結果、A型が多く認定された。
そこで、今年度の募集に際し、A型の基準を満たすための保育施設の
改善計画を添え、A型として申請を行った。
ところが、今年度はA型よりもB型が多く選考され、私の経営する保
育所は、認定されなかった。募集要項では、A型優先で認定するとしな
がら、なぜ、B型を多く認定する結果になったのか納得がいかない。
A型として認定できないのであれば、その施設を再度B型として認定
するといった柔軟なシステムを考えるべきではないか。
オンブズマンの判断
1
A型認定よりもB型認定の方が多い選考結果について
市の説明によれば、選考方法は、申請のあったA型、B型ともに選考基準を
満たすものの中から評価順位を付け、まず初めに、A型施設について順位の高
い順に、各施設の状況に応じた想定補助額を予算の範囲内で割り振って認定し
ていくとのことです。そして、予算残額ではこれ以上A型認定ができない場合、
補助額がA型よりも低いB型の中から評価順位の高い順に、予算残額の範囲内
で想定補助額を割り振って認定していくとのことです。
この結果、今年度は、結果としてA型よりもB型認定の方が多くなりました
が、補助額の予算は限られており、市の選考方法に問題はないと考えます。
2
A型として認定できないのであればB型として認定することについて
市の説明では、A型の認定を申請する施設は、その基準を満たすための人的、
物的整備を行うことになるが、結果として、A型ではなくB型の認定を受ける
ということになると、A型の半額の補助しか受けられず、また子どもの年齢に
よっては、まったく補助が受けられないこともあり、施設の負担が大きくなる
のでA型認定に代えてB型で認定するのは適当ではないとのことです。
オンブズマンは、上記の市の説明は十分に理解できます。
待機児童の解消は国の喫緊の課題となっています。市においても待機児童の
解消に向け、また保育の質の向上と安全性の確保の上から、保育所施策の一層
の充実を期待します。
-34-
3
調査をしなかった事例(要約)
店舗前道路の除雪に伴う被害
国道沿いで店舗を構え商売をしているが、除雪により、店舗前の駐車ス
ペースが使えなくなるくらい、高い雪山を盛られることがある。
そのため、除雪について、北海道開発局に再三お願いしているものの、
改善されることはなく、連絡をした際の対応も悪い。
オンブズマンの判断
今回、申立てのあった苦情は、北海道開発局という、国の機関が行った除雪
に関するものです。
札幌市オンブズマンが所轄する事項は、札幌市の業務に関するものに限られ
ておりますので、今回の苦情について、オンブズマンは調査を行わないことに
いたしました。
-35-
Ⅲ
オンブズマンの発意による調査(平成 24年度)
1 損害賠償金の支払
札幌市の瑕疵により人身事故や物損事故が発生した際の損賠賠償等
の事務は、ルールに従い適正かつ厳格に行われる必要があります。
そのルールとして、市は要綱を定め運用していますが、その規定の
中で市が支払うべき損害賠償金が「見舞金等」と表記されています。
この表記は極めてあいまいで、責任の有無が明確ではありません。
要綱を始めとする市の損害賠償事務を定める各文書の「見舞金」の
表記に問題があると考え調査を実施しました。
2 パークゴルフ場の管理運営と有効利用
オンブズマンがある苦情申立てを契機に、パークゴルフ場の整備に
関する調査を行ったところ、市や委託を受けた団体の管理運営が必ず
しも十分でなかったことが分かりました。
また、苦情の調査等を通じ、現在、高齢者のパークゴルフ愛好家が
増えつつあることや、市内で開催されるパークゴルフの大会が幅広い
年齢層の人々が集まり交流を図る絶好の場であることを知りました。
こうした場を高齢者の保健福祉増進に資する事業などに活用するこ
とはできないかと考え、市のパークゴルフ場の管理運営の現状と今後
の有効利用のあり方について、調査を行いました。
3 所得激減を理由とする国保料の減免
これまで、オンブズマンに対して寄せられた苦情の中に、所得の激
減を理由とした国民健康保険料の減免措置に関する申立てが少なか
らずありました。
現在、市が行っているこの減免制度について、2つの課題に着目し、
調査を実施しました。
-37-
発意による調査1 「損害賠償金の支払」
札幌市オンブズマン
岩本
勝彦
調査の趣旨(要約)
札幌市の施設管理の瑕疵による人身事故又は物損事故の損害賠償等の事故処理は、
ルールに従って適正かつ厳格に行われなければなりません。
そのルールとして、
「札幌市事故賠償等事務処理要綱」
(平成 16 年 3 月 29 日総務
局長決裁。以下、「要綱」という。)があります。
要綱は、主に、事故処理の方法、見舞金及び賠償金の算定基準、そして相手方との
示談交渉について定めています。
その第 4 条(相手方との交渉)では、市が損害賠償義務を負う場合には、損害賠償
算定基準を用いるなどして、その額を適正に算定して、交渉に当たるものとしていま
す。そして、市が支払うべき損害賠償金について、
「見舞金、賠償金等(以下、
「見舞
金等」という。)」と表記しています。
この表記に問題があります。
法律用語は、出来る限り一義的、確定的であるべきです。
ところが、「見舞金等」という言葉は、その意味が極めてアイマイであって、責任
があるのかないのかが明確ではありません。
市に賠償責任があることを前提とする規定において、上記のとおり意味不明確な
「見舞金等」という言葉を用いるのは、決して好ましいことではありません。
そして、要綱の第 12 条では、人身事故の特定の場合に、市が責任の有無を問わず
に相手方に贈る「見舞金品」と表記しております。
つまり、同じ「見舞金」という言葉が、市に責任がある場合と、市に責任があるか
否かを問われない場合とで、二様に用いられています。
同じ言葉が二つの意味を持つことになれば、その適用の場で誤解や混乱等が生ずる
こととなり、実際に市民からオンブズマンに対して苦情の申立てがなされた事例もあ
ります。
オンブズマンは、要綱を始めとする市の損害賠償事務を定める各文書の「見舞金」
の表記に問題があると考え、調査を開始することにしました。
見舞金?
-39-
市の回答(要約)
1
市の要綱の規定上「見舞金等」という表記を用いている理由及びその経緯
要綱第 4 条の規定では、本市が人身事故の処理に当たり、相手方に支払う金額に
ついて、「見舞金、賠償金等(以下、「見舞金等」という。)」と表記しています。
こうした表記となったのは、現要綱の前身である昭和 53 年に制定された要綱の
表記にならったものと考えられます。なお、昭和 53 年の要綱の表記は、さらに前
に定められた取扱基準等の内容等を踏まえたものと推察されます。
2
実際の運用状況
(1) 見舞金の支払(道路における物損事故に対する見舞金支払いの例)
平成 22 年度示談締結分として 35 件(計 7,248,172 円)、平成 23 年度示談締結
分として 36 件(計 4,227,661 円)が支払われています。なお、市に責任がない
場合において、見舞金が支払われた事例はありません。
(2) 損害賠償金としての支払
「法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること」は、地方自治法第 96
条第 1 項第 13 号において、議会の議決事項とされております。また、本市にお
いては、100 万円未満の損害賠償の額を定めることについては、市長の専決処分
事項とされており(専決処分事項指定の件・昭和 29 年 7 月 24 日市議会議決)、そ
の場合、議会への報告が必要となります(地方自治法第 180 条第 2 項)。
今回、調べた限り、本市がこれらの規定に基づく損害賠償金として支払を行っ
たという事例は、指定都市となった昭和 47 年以降では確認できませんでした。
3
見舞金として支出している理由及び根拠
これまで、市に責任がある事故が発生した場合には、相手方が一方的に市の責任
を追及し、市が損害を賠償するといった対立関係ではなく、円満に紛争の解決を図
ることが望ましいとの考えのもとに、誠実に交渉を行ってきました。このような考
え方について相手方の理解を得られた場合には、相手方は自ら行使し得る損害賠償
請求権を放棄する一方、市は要綱第 4 条にいう見舞金として損害相当額を任意に支
払うという内容で示談書を取り交わし、これに基づき見舞金を支出しています。
この点について、行政実例(昭和 26 年 10 月 15 日付け地自行発第 330 号静岡市議
会事務局長宛て行政課長回答)の注釈においては、
「被害者が法律上市に対して有す
る損害賠償請求権を放棄し、一方、市が自発的に医療費及び見舞金を支出する」場
合には、地方自治法第 96 条第 1 項第 13 号の規定による議会の議決は不要であり、
「予算措置だけで足りる」とされています。
従って、本市の見舞金の支出については、地方自治法第 96 条第 1 項第 13 号の規
定の適用はないと考えています。
4
現状の問題点及び今後の改善について
これまでは、上記3で説明した理由により、要綱に基づき、見舞金としての支出
を行ってきましたが、今回のオンブズマン調査によるご指摘を受け、本市に責任の
ある事故の対応について、市民にとってより分かりやすく、誤解を招くことのない
よう、改善を図っていきたいと考えています。
-40-
オンブズマンの判断(要約)
オンブズマンは、市の回答を踏まえ、以下のとおり判断します。
1
はじめに
オンブズマンは、当初、札幌市における事故による損害賠償に関する手続を定め
る諸規定中の損害賠償金を示す文言について、その矛盾ないし混乱の是正を求める
べく調査を開始しましたが、調査を進めるうちに、これは単なる文言上のものとい
うよりは、むしろ、損害賠償金の取扱いそのものに関わるものであるということに
気づかされました。
そこで、オンブズマンは、市における事故による損害賠償に関する手続の現状と
問題点について考えてみることにします。
2
議会の議決事件(地方自治法第 96 条第 1 項第 13 号)
地方自治法第 96 条に、普通地方公共団体の議会の議決事件が定められており、
立法、財政(予算、決算)に関することなど、地方公共団体の根幹に関する事項が
列挙されています。
その中には、
「法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること(第 13 号)」も
含まれています。
金額の多寡によっては、当該地方公共団体の大きな財政負担となり、また、責任
の所在を明らかにし、賠償額の適正を図るという趣旨からも議会の議決を要するこ
とにしたものです。
3 首長の専決処分(地方自治法第 180 条第 1 項、第 2 項)
(1) 専決処分
普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指
定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分とすることがで
きます(地方自治法第 180 条第 1 項)。
軽易な事項についてまで、逐一議会にはかることの繁雑さを避けることや、地
方公共団体に大きな負担を与えないとの考えに基づきます。
そして、この規定により専決処分を行ったときは、普通地方公共団体の長は、
これを議会に報告しなければなりません(同条第 2 項)。
専決処分が、議会の行政抑制、監視機能を緩和する作用を持つことから、それ
を補完するために、首長が議会に報告することにした訳です。
(2) 市の専決処分の定め方
札幌市議会は、昭和 29 年 7 月 24 日、当時の市長による提案を受けて、市の専
決処分事項を指定する議決をしております(その後、3 回にわたり一部改正)。
その第 3 号に「価格が 100 万円未満の法律上の市の義務に属する損害賠償の額
を定めること」とあります。
つまり、市が損害賠償の額を定めるにつき、100 万円未満ならば、専決処分と
して後に議会に報告することで足りるが、100 万円以上ならば、議会の議決を要
することになっています。
-41-
4 市の事故による損害賠償の現状
(1) 損害賠償に関する定め
要綱第 4 条において、
「市の責任で支払う見舞金、賠償金等(以下、
「見舞金等」
という。)の額を適正に算定」することとしています。
この「見舞金等」が、法的には、損害賠償金であることは、発意に基づく調査
の趣旨に記載のとおりです。
(2) 運用実態
市は、市に責任のある見舞金等の支払について、被害者との手続の席上におい
て、被害者が損害賠償請求権を放棄し、その上で、見舞金名目で支払うという方
法をとっています。
つまり、市は、地方自治法の規定による損害賠償金としての支払とは異なる方
法をとっており、少なくとも、市が政令指定都市となった昭和 47 年以降現在ま
での 40 年間において、市が法の規定に基づく損害賠償金を支払った事例があっ
たとの確認はできないというのが市の回答です。
5 上記現状の問題点
(1) 原則(議会の議決事件ないし市長の専決処分)と例外の逆転現象
地方自治法第 96 条第 1 項第 13 号と同第 180 条第 1 項、第 2 項の規定の趣旨は
前述のとおりです。
ところが、市は、上記のとおり、市が法律上その義務に属する損害賠償(要綱
の「見舞金等」)の額を定めることが、議会の議決ないし市長の専決処分は不要
であるとする運用を実施しております。
この運用の妥当性について、市は、昭和 26 年 10 月 15 日付け行政実例の注釈
に依拠していると説明しますが、この行政実例の本文部分では、名目の如何を問
わず、支払われる金員が、損害賠償のためのものであれば、議会の議決を要する
か、あるいは専決処分となるとされており、これが原則です。
これに関する注釈において、議会の議決は不要で予算措置だけで足りるとした
のは、例外的なものとして止むを得ないとした救済的な判断であると考えられ、
市の現行運用は、原則と例外を逆転させているということになります。
時にそのようなことが容認されることもありましょう。しかし、こうした取扱
いについては、法の趣旨・目的に鑑みると、決して好ましいものではありません。
(2) 損害賠償請求権の放棄に関する問題点
市は、市の責任で支払う損害賠償金について、被害者が損害賠償請求権を放棄
したうえで見舞金として金員を支払っています。
被害者からすれば、実質的に損害賠償金が支払われるのであれば、その名目は
問わないのが普通です。従って、市から一旦損害賠償請求権を放棄することを求
められれば、それに応ずるのは当然です。そのことをもって、全ての被害者が自
ら進んで上記請求権を放棄したと見做すことには無理があります。
(3) 議会による抑制と監視について
市の支払うべき損害賠償の額を定めることが議会の議決事件、あるいは市長の
専決処分となるものであるのに、市はそのような取扱いをしてきていません。
このことが、意図的なものではないとしても、結果的には、議会の行政に対す
-42-
る抑制と監視をまぬかれることになっていることは否定できません。
6 オンブズマンの意見
(1) 現行の運用の転換について
現行の運用では、原則と例外が逆転していますから、それを本来のあるべき形
へ転換すべきです。
市の責任で支払う見舞金・損害賠償金等は、地方自治法の言う「法律上その義
務に属する損害賠償」として、議会の議決を経ること、あるいは、専決処分とし
て議会に報告することが、法の趣旨・目的に則することになります。
そして、要綱第 4 条における「見舞金、賠償金等(以下、
「見舞金等」という。)」
との表記を「賠償金」に改め、これに準じる他条文も同様に書きかえるべきです。
(2) 専決処分の上限の増額について
現在、損害賠償額の決定に関する市の専決処分の上限は 100 万円未満となって
いますが、この数字は、昭和 29 年当時としては、かなりの高額であったと言え
ます。
オンブズマンとしては、現状の物価水準その他を勘案するとともに、今回の発
意調査で生じた問題を明確にすることで、件数、金額が増えることを想定し、市
長の専決処分の上限を増額することも必要なのではないかと考えます。
そして、専決処分の上限の変更は、議会自らの意思で行い、その議決を要する
ことは言うまでもありません。
(3) 前例踏襲の見直しについて
市の行政のあらゆる分野において、法律や条例に基づいた執行がなされている
と考えております。
しかしながら、それらの執行手続がはたしてどのような根拠に基づいているの
かについて、余り深く考えないままに、従前行われてきたことをそのまま踏襲し
ているという例は、本件だけではないのではないかと思われます。
長年続けられ、慣例となっていることのほとんどに問題の無いことは確かと思
われますが、それを無批判に受け入れるのではなく、常にその拠って立つところ
は何なのかを問う姿勢を忘れないでほしいと思います。
市の改善等の状況 ※平成 25 年 5 月フォローアップ調査
「札幌市事故賠償等事務処理要綱」(平成 16 年 3 月 29 日総務局長決裁)
を改正し、改正前の同要綱第4条における「見舞金、賠償金等(以下「見舞
金等」という。)」との表記を「賠償金」に改め、併せて関連する規定も改正
しました(平成 25 年 3 月)。
また、見舞金ではなく損害賠償金として支払を行うこととしたことに伴
い、専決処分事項指定の件(昭和 29 年 7 月 24 日議決)により専決処分を行
った件について議会へ報告等を行います(平成 25 年第 2 回定例市議会から
報告)。
なお、現在 100 万円である市長の専決処分の上限を増額することについて
は、議会に関する事項ではありますが、他都市の状況等について調査研究を
行っていきたいと考えています。
-43-
発意による調査2 「パークゴルフ場の管理運営と有効利用のあり方」
札幌市オンブズマン
井上
宏子
調査の趣旨(要約)
平成 23 年度、オンブズマンに対し、パークゴルフ場の整備に関する苦情が寄せら
れました。申立てを受けて市が調査したところ、コースの一部が、当初、市が設置許
可した場所とは違う場所に造成されていることがわかり、市はその事実を 10 年以上
も把握していませんでした。
市では、平成 19 年度に、全市のパークゴルフ場の管理運営の実態調査を行うとと
もに、その運営及び利用に関するルールづくりが行われました。それにもかかわらず、
上述のような事実が何年にも渡って見落とされておりました。これには様々な原因が
あるのでしょうが、オンブズマンは、パークゴルフ場の複雑な管理運営体制にその一
因があるのではないかと考えています。
市内に約 62 カ所ある市営パークゴルフ場のほとんどは公園や緑地内に設置されて
おり、それぞれの公園や緑地を管理している部署(環境局みどりの管理課や各区の土
木部)が管理運営しているところが多いようですが、中には区の地域振興課が管理運
営に関わっているところもあり、維持管理業務を委託しているところもあるなど、
様々な管理運営体制が取られているようです。
市が直接管理している場合はもちろん、維持管理業務を委託している場合であって
も、ルールに基づいて適切に管理運営されているかを把握するには、まず、区によっ
て管理運営を行う部署を明確にし、更に、その部署を統括する仕組みが必要ではない
かと思います。
また、市のホームページや各区役所で配付しているパークゴルフ場マップには、パ
ークゴルフ場の場所や利用時間等が掲載されています。普段からパークゴルフ場を利
用されている方にとっては十分な情報かもしれませんが、全くの初心者にとっては、
どのように利用すればいいのか、少々わかりづらい部分があるように思います。市民
に提供する情報の内容についても改善の余地があるように思われます。
そこで、1 点目に、市がどのような考えのも
とでパークゴルフ場の管理運営を行っている
のか、また、今後の管理運営方針とともに、パ
ークゴルフ場の利用に関する情報提供のあり
方について伺いたいと思います。
-44-
次に、札幌市では、「札幌市スポーツ振興計画」(平成15 年策定)の中で、「健康
づくり運動とスポーツ振興の連携」を重点施策として掲げ、保健・福祉分野とスポー
ツ分野の密接な連携を図っていくとしています。パークゴルフは、世代を問わずに楽
しめるスポーツですが、中でも高齢者の愛好者が年々増えつつあります。その一方、
高齢化が進んでいるにも関わらず、北海道内の老人クラブの加入率は減少傾向にあり、
平成 22 年の札幌市における加入率はわずか 6%です。このことから、高齢者自身が
求める地域活動等が変化してきているのではないかと思われます。
このような状況の中、市内で開かれているパークゴルフ大会は幅広い年齢層の人々
が集い、交流を図る絶好の場であり、こうした場を利用して、高齢者に対して保健・
医療にかかわる実態・意識調査を行うなどの活用も考えられるでしょう。また、市が
パークゴルフの環境整備や分かりやすい情報の発信に努め、支援することでパークゴ
ルフを行う高齢者が増え、その結果、元気な高齢者が増えれば、医療費や介護サービ
ス費の削減にもつながるのではないでしょうか。
オンブズマンは、市内で開催されたパークゴルフ大会の参加者に対し、2つの会場
でアンケート調査を実施しました。その結果、参加者の約 5 割が 70 歳以上の高齢者
で占められており、友人や知人からの誘いでパークゴルフを始めた方が 5 割を超えて
いました。また、約 9 割の方が、パークゴルフをすることで健康になったと答えてお
り、パークゴルフが、高齢者にとって、友人・知人との交流を深め、健康づくりに大
いに役立っていることがわかりました。
そこで、2 点目に、現在、保健・福祉分野とスポーツ分野の連携と言う観点から、
市とパークゴルフとの関わりについて、また、高齢社会におけるスポーツのあり方に
ついて伺いたいと思います。
市の回答(要約)
1
公的パークゴルフ場の管理運営の現状(環境局みどりの推進部みどりの管理課)
札幌市の公的パークゴルフ場は、管理運営が指定管理者により行われているもの
から地域の町内会等により行われているものまであり、利用料金についても、有
料・無料のものと、様々な形態で維持されています。市では、平成 21 年に「公的
パークゴルフ場の整備及び運営の基本的な考え方について」を定め、公的パークゴ
ルフ場を分類し、より適切な設置及び管理を図ることとしました。
具体的な分類としては、まず、市が設置条例を定めて設置している公の施設とそ
れ以外の施設に分かれ、その中でも公園・緑地内にあるか否か、使用料金が有料か
無料かでさらに分類がされます。
そして、これらのパークゴルフ場の管理運営は、各施設により所管する部局が異
-45-
なっており、例えば、公園内の施設であっても、環境局みどりの推進部や各区によ
り直接管理運営が行われるもののほか、指定管理者に管理運営を委託しているもの
等があり、公園以外の市の所管施設についても、それぞれ施設を所管する部局が直
接管理運営を行っているもののほか、指定管理者に管理運営を委託しているもの等
があります。
さらに、本市が直接所管していない施設については、地域の団体(町内会や同好
会等)により管理運営が行われており、また、本市所管の施設でも地域の団体(町
内会や同好会等)の協力を得て管理運営を行っているという施設もあります。
パークゴルフ場利用の情報提供に関しては、札幌市公園検索システムや各区のホ
ームページのほか、全市のパークゴルフ場マップを作成し、各区役所に配置するな
どによって行っております。なお、今後もよりわかりやすい情報の発信に努めるこ
ととし、例えば、パークゴルフ場マップをホームページ上で閲覧できるようにする
等の改善を検討してまいりたいと考えております。
2
スポーツと保健・福祉分野との連携に関する現状
(1) 高齢者を対象とした施策(保健福祉局高齢保健福祉部高齢福祉課)
札幌市では、保健・福祉分野での高齢者を対象としたスポーツに関連する施策
として、①高齢者スポーツ大会の開催、②高齢者ゲートボール大会決勝大会の開
催、③全国健康福祉祭(ねんりんピック)への選手団派遣、④札幌市老人クラブ
連合会の運営費や単位老人クラブの活動費の支援などを行っております。
なお、高齢者の健康の保持や保健・福祉の向上に向けた施策は、介護予防や引
きこもりの防止、社会参加の促進や生きがいの向上など、目的が多岐にわたって
おり、スポーツと関連した施策以外にも、様々な手法によって進めていく必要が
あると考えております。
(2) スポーツ振興計画における施策(観光文化局スポーツ部企画事業課)
札幌市では、平成 15 年、
「札幌市スポーツ振興計画」を策定しました。その中
で、スポーツ振興の新たな環境づくりを進めるうえで有効かつ緊急性の高い 6 つ
の事業を重点施策としています。本調査の趣旨で挙げられている「健康づくり運
動とスポーツ振興の連携」は、この重点施策のうちの一つです。
市では、この施策に基づく取組として、全国的な子どもの体力低下という大き
な問題を背景に、多様な運動体験過程にある子どもたちが体を動かし、スポーツ
をする楽しさを発見し、日常生活においても自ら運動に取り組む姿勢を育成する
ことが必要であると考え、子どもに主眼を置いた事業を進めてきました。
なお、市では、現在、
「札幌市スポーツ推進計画(平成 25 年度~平成 34 年度)」
を策定中ですが、この計画においても、市民、誰もが生涯にわたりスポーツを通
じて健康や生きがいを得る機会を保障し、世代や体力に応じて、気軽にスポーツ
に触れられる機会を充実させることを施策に取り入れていく予定です。
市としては、子どものみならず、高齢者の健康づくりのための施策も重要であ
ると考えており、高齢者にとってパークゴルフは気軽に楽しめるスポーツと捉え
ております。例えば、要望があれば、パークゴルフ大会の際に、準備運動を指導
する指導員の派遣を行うなど、可能な範囲で対応していきたいと考えております。
-46-
3
札幌市における健康づくり事業の現状(保健福祉局保健所健康企画課)
札幌市では、21 世紀の市民一人ひとりが生涯を通じて健康を実現するための指針
として、平成 14 年、健康づくり基本計画「健康さっぽろ 21」を策定し、幼児から
高齢者までの全て世代を対象とした健康づくりを目指しています。
現在、保健所が所管する事業で、高齢者のみを対象とする事業はありませんが、
実際に行っている健康づくり事業の参加者の多くは高齢者であるという実態です。
例えば、市民の健康づくりの場として、市内 3 カ所に設置されている健康づくり
センターの平成 23 年度の延べ利用者数は 25 万人ですが、その中でも、50 歳以上の
利用者が全体の 65.0%を占め、特に、60 歳代と 70 歳代で 44.5%の利用があるなど、
高齢者の利用が多い状況にあります。
また、各区では、健康づくり促進期間事業として、毎年、健康フェアを開催して
おりますが、その中で、健康度測定(血管年齢測定、骨密度測定等)の実施のほか、
医師、看護師、栄養士等による健康相談や介護予防コーナー等を設けており、参加
された多くの高齢者の方から好評を得ております。また、これ以外にも、各区で行
う健康教育の参加者の約 6 割は 65 歳以上の高齢者となっています。
本調査の趣旨にあるように、多くの高齢者が集まるパークゴルフ大会において、
パークゴルフをすることで、実際にどのような健康効果がもたらされたか等の調査
を行い、把握することは、市としても有用だとは考えておりますが、実効性のある
データを収集していくためには一定の期間やコストが必要となり、また、高齢者以
外の年齢層に対する施策とのバランスなどを考慮すると、その実現には課題が多い
ものと考えております。
オンブズマンの判断(要約)
オンブズマンは、市の回答を踏まえ、以下のとおり判断します。
1
公的パークゴルフ場の管理運営について
今回の調査を通じ、市内のパークゴルフ場は、様々な体制で管理運営が行われて
いることがわかりました。また、市が直接管理運営を行っている場合でも、環境局
みどりの管理課が行っているものや区が行っているものなど、様々な部署が管理運
営に携わっていますが、それらを一括して管理する部署はないようです。
設置の経緯等から、様々な管理運営体制が取られているにしても、市が直接管理
を行っているものはもちろん、委託しているものについても、委託先に任せきりに
するのではなく、管理運営方針等に基づいて適切に管理運営されているかどうかを、
市が主体となって定期的にチェックし、その情報を一括で管理することは重要であ
ると思います。そして、他のパークゴルフ場でも参考にしてほしい点や、注意すべ
き点などについて、管理者同士で情報共有できる仕組みも必要であると思います。
また、パークゴルフを楽しむ市民が増えつつある中、パークゴルフ場の管理運営
に関する苦情や要望が多々寄せられることと思います。市としてそれらを把握して
おくことは、今後、パークゴルフ場の管理運営を行ううえでも有用であると思います。
これらのことから、市に対しては、市有地(公園、緑地、河川等)の利用かつ管
理運営方法を含め、様々な視点から有効・公正になされているかを把握できるよう、
-47-
管理運営を行う部署(委託している場合は委託元の部署)を更に統括する部署を定
めて、委託先も含め、管理運営を行う部署が一堂に会して情報交換を行うことがで
きるような場を作ることを是非検討していただきたいと思います。
次に、市民に対する情報提供についてですが、札幌市では、各区のホームページ
や札幌市公園検索システムにおいて、公的パークゴルフ場の案内を掲載しています。
しかし、各区のホームページを見ると、パークゴルフ場について、詳しい情報を掲
載している区もあれば、そうではない区もありますし、各区のホームページと札幌
市公園検索システムとで、同じパークゴルフ場について、異なる情報が掲載されて
いる箇所がいくつか見られました。また、平成 16 年度のお知らせが掲載されてい
るものもあるなど、情報の古さも気になりました。市民にとってタイムリーな情報
となるよう常にチェックし、改善に向けた努力をしていただきたいと思います。
2
高齢者の健康づくりや高齢者スポーツに関する市の施策について
札幌市は、平成 25 年 1 月 1 日現在、65 歳以上の高齢者が市全体の人口に占める
割合が 21.7%に達し、年々高齢化が進んでいます。それと同時に、医療費や介護費
も増大し、市の財政を圧迫する一つの要因となっています。その増大に何とか歯止
めをかけられないか、そのためには、健康で元気な高齢者を増やすことが最善の策
ではないかと考え、今回、愛好者に高齢者が多いパークゴルフに着目しました。そ
こで、高齢者の健康づくりや高齢者スポーツに関して、市がどのような施策を行っ
ているかについても、調査することにしました。
(1) 高齢者の健康づくりについて
平成 24 年、厚生労働省は「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基
本的方針」の全部改正を行うことを告示し、平成 25 年 4 月 1 日から適用される
「21 世紀における第 2 次国民健康づくり運動(健康日本 21(第二次))」の内容
を公表しました。その中で、「健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限される
ことなく生活できる期間)の延伸を実現する」や「社会生活を営むために必要な
機能の維持及び向上」等が国民の健康の増進に関する基本的な方向として掲げら
れており、高齢化に伴う機能の低下を遅らせるためには、高齢者の健康に焦点を
当てた取組を強化する必要があるとして、介護保険サービス利用者の増加の抑制、
認知機能及びロコモティブシンドローム(運動器の障がいのために自立度が低下
し、介護が必要となる危険性の高い状態)の予防、身体活動量の増加等を目標と
して挙げています。また、健康を支え、守るための社会環境が整備されるために
は、国民、企業、民間団体等の多様な主体が自発的に健康づくりに取り組むこと
が重要であり、居住地域での助け合いといった地域のつながりの強化(居住地域
でお互いに助け合っていると思う国民の割合の増加)について、平成 34 年度に
65%に引き上げる(平成 19 年は 45.7%)ことを目標にしています。
オンブズマンが市内パークゴルフ大会参加者(2 区、計 238 名)を対象に行っ
たアンケートでは、パークゴルフを始めたきっかけとして、
「リハビリのため」
「体
調管理のため」「運動不足解消のため」を挙げる方が多く、このことから、健康
に関心のある高齢者が多いことがうかがえます。そして、回答者の約 9 割の方が、
パークゴルフをすることで「足腰が丈夫になった」
「膝の痛みがなくなった」
「よ
-48-
く眠れるようになった」等と答えており、現実に、健康面にプラスの効果を感じ
ている方が多く見られました。しかし、その一方で、日常的に病院に通い、投薬
を受けている方も半数以上おり、このことから、単純に、パークゴルフをする=
健康になる、と言い切ることはできませんが、「生活に張りが出て楽しい」とい
った生きがいを感じている方や、「精神が安定した」など、体だけではなく、心の
健康にも効果を感じている方が多いようです。
そのほかに、上記調査の趣旨にあるとおり、友人や知人からの誘いでパークゴ
ルフを始めた方が 5 割を超えており、パークゴルフをすることで「友人が増えた」
と答えている方や「自宅のすぐ近くにパークゴルフ場があるので、近所の人たち
との交流の場となっている」と答えている方がいました。このことから、老人ク
ラブのような組織に加入せずとも、パークゴルフを通じて友人・知人との交流を
深めたり、パークゴルフが新たな人間関係を構築する場になっていることがわか
りました。
札幌市では、保健・福祉分野での高齢者を対象としたスポーツ関連施策として、
高齢者スポーツ大会の開催や老人クラブに対する支援等を行っていますが、これ
らの施策は、高齢者スポーツを推進するというよりは、高齢者の生きがい向上や
引きこもり防止という観点から行われています。また、高齢者を対象にした事業
ではないものの、市民の健康づくりという観点からは、各区で、毎年健康フェア
を行い、健康相談を実施する等を行っています。
市は、多くの高齢者が参加するパークゴルフ大会において健康に関する調査を
行い、その結果を把握することは有用であるとしながらも、コスト等の面から、
その実現は難しいとしています。
しかしながら、高齢者が充実した生活を送るためには、健康が何より重要です
し、健康で元気であってこそ生きがいや周囲の人々との交流が生まれ、その結果、
引きこもりの防止にもつながるでしょう。このように、高齢者の健康が、介護予
防や生きがい向上等とも密接につながっていること、また、市民の 5 分の 1 以上
が高齢者であり、今後、その割合は増え続けるであろうことからすると、高齢者
の健康等の施策について、様々な実効性のあるデータを収集し、それに基づいた
対策を考える時期に来ているのではないかと思います。
(2) 高齢者スポーツについて
パークゴルフは、北海道幕別町で生まれたスポーツですが、今や、北海道内の
みならず、全国各地に愛好者が増えています。それにともない、パークゴルフ場
の数も徐々に増え、札幌市内においては、公的なパークゴルフ場だけでも 60 カ
所以上ありますし、民間のパークゴルフ場の中には屋内のものもあるなど、一年
中楽しめる環境が整備されつつあります。また、札幌市内においては、町内会の
大会、区大会、更には、区大会で上位の者が出場できる札幌市長杯など、大小様々
な大会が開かれています。このことから、パークゴルフは、健康づくりや家族・
友人たちとの交流といった楽しみを感じられるだけでなく、スコアを上げる、大
会に出る、大会で好成績を収める、といった目標を持ちつつ行うことができるス
ポーツです。つまり、パークゴルフは、単に高齢者スポーツというだけではなく、
競技性の高いスポーツといってもよいでしょう。
-49-
札幌市スポーツ振興計画の重点施策である「健康づくり運動とスポーツ振興の
連携」について、市は、子どもの体力低下を背景に、多様な運動体験過程にある
子どもたちが体を動かし、スポーツをする楽しさを発見し、日常生活においても
自ら運動に取り組む姿勢を育成することが必要であると考え、子どもに主眼を置
いた事業を進めています。そして、市では、高齢者にとって、パークゴルフは気
軽に楽しめるスポーツと捉えており、パークゴルフ大会の際に、準備運動を指導
する指導員を派遣するなど、可能な範囲で対応していきたいとしています。しか
し、パークゴルフ大会は、せっかく大勢の高齢者が集まる機会なのですから、準
備運動の指導に加え、運動時の注意点、高齢期における機能低下を防ぐために普
段から自宅で気軽に行える運動や体操を指導することも考えられるでしょうし、
また、大会時でなくとも、パークゴルフを専門的に指導できる指導員を派遣し、
パークゴルフの上達に貢献できるような場を設ける等も考えられるでしょう。
市においては、もっと積極的に高齢者スポーツを支援し、その普及や発展に向
けて取り組むとともに、パークゴルフの生涯スポーツとしての位置付けを検討し
ていただきたいと思います。
上述のとおり、高齢者スポーツと高齢者の健康づくりや生きがい向上等には密接な
関係がありますが、今回の調査を通じ、オンブズマンは、これらに対する市の対策が
担当課ごとに行われており、他の部局や課との連携が乏しいように感じられました。
高齢者に関する施策については、それぞれの担当課が別々に行うよりは、市のビジョ
ンの実現に向け、関係する部局が参加した横断的な検討会議を設置するなどして、市
全体で連携して取り組む方が効果的であると思います。
また、パークゴルフについては、最近は、旅行会社で様々なパークゴルフツアーの
企画があるほか、札幌市でも、民間企業が市有地を借りて道内最大級のパークゴルフ
場を造成し、平成 25 年 4 月の開業を目指しています。これは、民間企業もパークゴ
ルフの集客力に注目しているという現れでしょう。これらを参考に、例えば、市が主
体となって、梅雨がない札幌の気候を活かし、その時期に道外や海外からの観光客に
パークゴルフを楽しんでもらうというような取組も考えられるのではないでしょう
か。このことからすると、パークゴルフは、高齢者スポーツや健康づくりの枠を超え、
札幌市の産業活性化にもつながる大きな可能性を秘めているともいえます。
高齢期は、人間が生まれてから成人になるのと同じくらいの長い期間です。市にお
いては、その長い期間を、生きがいを持ち、いかに健康で元気に過ごすために、行政
がどのような手助けができるのかといった高齢福祉の面のみならず、パークゴルフの
スポーツとしての可能性、更には、産業としての可能性にも着目していただきたいと
思います。今回は、オンブズマンに寄せられた苦情をきっかけに、パークゴルフに焦
点を当てて発意調査に臨みましたが、パークゴルフに限定することなく、札幌市の恵
まれた自然環境を活かした高齢者への政策を、市内部だけではなく、産学官が連携し、
検討していただきたいと思います。
※
この発意調査は、まだフォローアップ調査を実施していないことから、市の改善
状況を掲載しておりません。
-50-
発意による調査3 「所得激減を理由とする国保料の減免」
札幌市オンブズマン
井上
宏子
調査の趣旨(要約)
1
札幌市における所得激減を理由とする国民健康保険料減免の取扱いの概要
市の国民健康保険制度は、前年の所得に基づいて、翌年度の保険料が決定される
仕組みとなっています。しかし、その年の所得額が前年と比べ大きく減った場合に
は、保険料を負担することが困難になる事態が発生します。そこで、市では、所得
激減による、保険料の減免を制度化しています。
この所得激減を理由とする保険料減免を受けるには、二つの条件を満たす必要が
あります。一つが、その年の所得が前年と比べて激減したことです(要件 1)。も
う一つが、「生活が著しく困窮し、かつ、資力が近い将来回復する見込みがないた
め、保険料を納付することが困難である世帯」であることです(要件 2)。
2
保険料減免に関するオンブズマンへの苦情
この所得激減による保険料の減免については、過去、オンブズマンに苦情が寄せ
られたことがあります。
あるケースでは、減免が適用される可能性があるとして、納付誓約に基づく分割
納付をしていた苦情申立人が、後日、資産調査の結果、減免の適用対象外であるこ
とが判明したとして、市から差額分の納付を求められたことについて、申立てがあ
りました(ケース1)。
また、あるケースでは、所得激減を理由とする保険料減免の適用可能性があると
して、納付誓約に基づく分割納付をしていた苦情申立人が、当該分割納付をするこ
とで保険料納付の義務を果たしたと信じ、後日、正式の減免手続を取らなかったと
ころ、市から減額されたはずの保険料の支払いを求められたとして、申立てがあり
ました(ケース2)。
3
今回の発意調査の趣旨
市が行っている、所得激減を理由とする保険料減免は、一つの制度的難点を抱え
ています。それは、所得激減という要件を判断しようにも、年内はその年の所得額
が確定していないことから、前年の所得との比較に困難が生じる場合がある、とい
うことです。
そのため、市ではそのようなケースについて、その年の所得額が確定した後、正
式に所得激減による保険料減免の申請をすることを条件に、当面、減免が認められ
-51-
た場合に納付することになる保険料額について、納付誓約に基づく分割納付を認め
る扱いをしているということです。
この取扱いには、次のような課題がある、と考えています。
第一の点は、札幌市国民健康保険条例では、「保険料の減免を受けようとする者
は、納期限までに申請書に減額又は免除を受けようとする理由を証明する書類を添
付して市長に提出しなければならない」
(第 24 条第 2 項)と定めていることです。
この条項からすると、後日、正式に減免申請手続を取ることで保険料の減免を認
める、という取扱いは、すでに納期を経過した保険料額を減免する扱いとなり、条
例の明文の規定に反しているのではないか、という疑問を生じさせます。
この点、前述の苦情調査(ケース2)における担当部局の説明は、条例が定める
「納期限」とは、当該年度の「最終納期限」であるというものでした。その一方で、
減免申請の遡及適用は認められない、とのことでしたので、条例解釈についての市
の説明は、一貫性を欠くように思われます。
第二の点が、減免を認めるための要件 2(資産要件)は、具体的にどのような基
準で、いつの時点でその該当性の判断をするのか、ということです。
前述の苦情(ケース1)では、いったん減免の適用可能性を認めながら、後日、
資産の保有を理由として、減免の適用が否定され、苦情につながっています。
この点、分割納付を認める際に交付する、
「納付誓約に基づく分割納付について」
及び「納付約束における注意事項」等の書面には、「預貯金や生命保険などの財産
調査を行います。」という記述があります。
納付すべき保険料総額が変わらない分割納付と、保険料総額が減少する減免とで
は減免の方がより厳しい基準が適用されるものと思われますが、保有資産が両者の
基準の狭間にある場合には、分割納付は認められるものの、減免は受けられない、
という事態が生ずることが考えられます。
また、分割納付を認める際、減免が認められる基準で一元的に判断するならば、
「正式の手続」がない段階で、減免申請の可否を判断することになります。
これに対し、条例の文言どおり、減免申請があった時点でその世帯の「所得」
(要
件 1)及び「資産」(要件 2)の双方を確認し、減免の可否を判断するならば、こ
うした課題を克服できると考えますが、その反面、申請時点で「所得」が確定して
おらず、激減したか否かの判断がつかないケースがあるのは、前述のとおりです。
現在の運用が直面していると考えられる上記の課題について、市の考え方をお伺い
するため、本件調査に着手することにいたしました。
-52-
市の回答(要約)
1
札幌市の保険料算定における「所得」の位置づけ
市町村が運営する国民健康保険(国保)は、その区域内に住所を有する者が、健
康保険の被保険者である等、適用除外に該当しない限り、加入義務がある公的医療
保険制度です。
その運営の費用に充てるため、札幌市では、国保加入者(被保険者)のいる世帯
から、保険料を徴収しています。各世帯が負担する保険料の額は、各世帯が等しく
負担する平等割(世帯割額)、各世帯における国保の被保険者数に応じて負担する
均等割(人数割額)、各世帯の被保険者の所得額に応じて負担する所得割の 3 つか
ら構成されており、札幌市全体でみた場合、保険料として全世帯に賦課される総額
のうち、平等割が 27.5%、均等割が 22.5%、所得割が 50%となっています。
また、所得割の額は、保険料を納付する年度の前年における被保険者の所得に基
づいて算定します。たとえば、平成 24 年度の保険料の額は、平成 23 年の所得に基
づき、所得割を算定することになります。
2
札幌市において保険料減免が認められる場合について
国保の保険料は、被保険者の前年の所得に基づき決定されるわけですが、その後
の事情によっては、保険料の負担が困難になることがあります。
そこで、市では国民健康保険法(以下、「法」という。)第 77 条に基づき、札幌
市国民健康保険条例(以下、
「条例」という。
)において、
「保険料の納付義務者が、
災害等により、著しい損害を受けたとき。」(条例第 24 条第 1 項第 1 号)及び「そ
の他市長が別に定める事由に該当するとき。」
(同項第 2 号)で、市長が必要と認め
るときに減免できると定めています。
そして、その詳細については、保険料の減免事務に関し必要な事項について定め
た要綱に定めがあり、
「災害世帯」
(要綱第 2 条第 1 号)、
「所得激減世帯」
(同条第 2
号)、「生活保護世帯」(同条第 3 号)、「法 59 条世帯」(同条第 4 号)及び「旧被扶
養者世帯」
(同条第 5 号)の 5 つの類型の世帯において、
「生活が著しく困窮し、か
つ、資力が近い将来回復する見込みがないため、保険料を納付することが困難であ
る」(要綱第 3 条第 2 号)ならば、保険料減免の対象としています。
3
所得激減による保険料減免について
札幌市では、「重大な事故(負傷、疾病等)又は失業などの理由で所得が激減し
た世帯」(要綱第 2 条第 2 号)を所得激減による保険料減免の対象としています。
(1) 所得激減の判断基準について
所得激減による保険料減免の対象となるのは、①世帯の被保険者全員の見込所
得金額(以下、「見込総所得金額」という。)が、前年の総所得金額の 8 割以下で
あること(要綱第 14 条第 1 項第 1 号)、②見込総所得金額が限度基準額([536
万円―被保険者数(擬制世帯主を除く)×18 万円])以下であること(同項第 2 号)
等の条件を満たす世帯です。
そして、見込所得を算定する際には、原則として、①収入金額が確定している
もの及び推定できるものは、その金額を年間収入金額とし(要綱第 8 条第 1 項第
-53-
1 号)
、②収入金額が一定していないが現に継続しているもの、又は、継続する見
込みのあるものは、申請前 3 カ月の平均月収にその年の継続すると予想される月
数を乗じた額をその年間収入金額とします(同項第 2 号)。
また、①②により推計するのが困難な場合には、③申請者の申告する額を年間
収入金額とします。
(2) 減免額について
保険料の減免額は、減免を申請した世帯の事情等を聴取した結果、納付するこ
とが困難と認められる金額(以下、
「納付困難額」という。)と、以下で説明する
減免判定基準額を比較し、いずれか低い額となります(要綱第 9 条第 1 項)。
また、減免判定基準額は、世帯の前年の総所得金額が、(1)で説明した限度基
準額未満の場合と、限度基準額以上の場合で算定方法が異なっています。
ア
世帯の前年の総所得金額が限度基準額未満の場合
この場合、見込総所得金額を世帯の前年の総所得金額で除した数値に、賦課
額を乗じて得た額と賦課額の差が減免判定基準額となります。
たとえば、被保険者数が 1 名の世帯において、前年の総所得金額が 400 万円、
見込総所得金額が 300 万円で、保険料の賦課額が 50 万円(説明上の仮定の金
額です。)の場合には、[300 万円/400 万円×50 万円]=37.5 万円と、賦課額 50
万円の差額である 12.5 万円が減免判定基準額となります。
イ
世帯の前年の総所得金額が限度基準額以上の場合
この場合、見込総所得金額を限度基準額で除して得た数値に、賦課額を乗じ
て得た額と、賦課額との差額が減免判定基準額となります。
たとえば、被保険者数が 1 名の世帯において、前年の総所得金額が 600 万円、
見込総所得金額が 300 万円で、保険料の賦課額が 65 万円(説明上の仮定の金
額です。)だった場合には、前年の総所得金額が限度基準額([536 万円-18 万
円]=518 万円)を上回っていることから、[300 万円/518 万円×65 万円]=37 万
6447 円と、賦課額 65 万円の差額 27 万 3553 円が減免判定基準額となります。
ウ
減免判定基準額の上限について
上述のア、イの場合ともに、減免判定基準額には上限があります。
すなわち、下線を付した、見込総所得金額をア世帯の前年の総所得金額又は
イ限度基準額で除した数値に賦課額を乗じて得た額が、保険料の平等割額及び
均等割額の合計金額に 10 分の 3 を乗じて得た額(以下「最少基準額」という。)
を下回る場合には、最少基準額と賦課額の差額が減免判定基準額となります。
4
所得激減減免に対する市の考え方
(1) 所得激減減免について相談があった場合の対応について
札幌市では、所得激減を理由とする保険料減免について相談があった場合には、
まず、その世帯に関する生活状況を調査します。
その上で、減免が認められるケースに該当すると判断した場合には、負傷・疾
病等により就労等が困難であることが明らかな場合を除けば、後日、「所得が確
定」してから正式に減免申請することとして、当面、減免が認められた場合に納
-54-
付することになる保険料額について、納付誓約に基づく分割納付をして頂くとい
う取扱いをしています。
その際、すでに納付済みの保険料がある場合は、減免申請が認められた場合に
納付すべき保険料の総額から納付額を控除し、その残額を分割納付して頂くこと
になります。
また、減免が適用されるのは、あくまで納付が困難な保険料に対してであるこ
とから、保険料の一部を納付済みであり、その残額が「減免判定基準額」を下回
っている場合に減免が認められるのは、その残額の範囲に限られます。すでに納
付済みの保険料を返還することはありません。
たとえば、3(2)アに例示した、保険料の賦課額が 50 万円、減免判定基準額が
12.5 万円というケースを考えます。
現在、札幌市では、年間保険料を 10 期に分割して納付して頂く扱いになって
います。そのため、各期 5 万円ずつ 10 期にわたり、合計 50 万円の保険料を納付
して頂くのが原則ですが、所得激減による減免が認められると、納付すべき保険
料の総額が減額されます。
そして、1~3 期までの保険料合計 15 万円を納付した後、残額の 35 万円の納付
が困難であるとして納付相談がなされた場合であれば、保険料の残額から減免額
となる減免判定基準額(12.5 万円)を控除した 22.5 万円について、残りの 7 期
で分割納付して頂く取扱いとなります(一期当たりの納付額は 32,142 円)。
また、1~3 期まで保険料を納付することなく、50 万円全額の納付が困難であ
るとして納付相談がされた場合であれば、その額から減免額となる減免判定基準
額(12.5 万円)を控除した 37.5 万円について、残りの 7 期で分割納付して頂く
取扱いとなります(一期当たりの納付額は 53,571 円)。
さらに、1~8 期まで保険料を合計 40 万円納付した後、残額の 10 万円の納付が
困難であるとして納付相談がされた場合であれば、減免が認められるのは最大で
10 万円です。そして、10 万円の減免が認められた場合には、残りの 2 期に納付
して頂く保険料はありません。
(2) 条例が定める減免申請を行うべき「納期限」について
市では、保険料減免手続の期限として、条例の定める「納期限」
(条例第 24 条
第 2 項)を当該年度の「最終納期限」(要綱第 5 条第 2 項)と解釈しています。
世帯主が各期の保険料を納付しないまま納期限が過ぎた場合には、当該納期分
の保険料の督促が行われ、時効の管理も納期ごとに行われますが、保険料額は、
年度単位で決定されるものであり、保険料減免についても、その年度に賦課され
た保険料額が減免になるか否かの判断を行います。したがたって、納期ごとに保
険料減免の判断を行うものではありません。
また、条例の納期限の解釈を厳格に行い、既に納期が経過した部分の保険料を
減免の対象としないならば、被保険者にとっては不利益な取扱いとなります。
以上のことから、上述のような条例の解釈に問題があるとは考えておりません。
なお、保険料減免の申請は、当該年度の最終納期限までに行うこととされてい
ることから(条例第 24 条第 2 項、要綱第 5 条第 2 項)、過年度分の保険料が減免
の対象となることはありません。
-55-
(3) 「保険料の納付が困難」の判断基準について
国保の保険料は、賦課額をすべて納付するのが原則であり、所得激減を理由と
する減免は、被保険者世帯において、所得が激減し、保険料の納付が困難となっ
た場合(要綱第 3 条第 2 号参照)にそれを減免する、あくまで例外的な措置です。
「納付が困難となった」か否かの判断は、過去の所得、預貯金、家族構成、固
定資産、疾病の状況等、各々の世帯の個別の事情に基づいて行われるものです。
従って、札幌市では、減免申請の相談を受ける担当者が相談者の話を聞き、様々
な事情について挙証書類を確認した上で、その点を総合的に判断しています。
オンブズマンは、基準の明確性に疑問を持たれたようですが、減免申請をする
世帯の事情は多様であり、一律の基準を作成することは困難です。また、基準を
作成することで、かえって制度の運用が硬直化し、減免が認められるべきである
にもかかわらず、認められないケースが生じることも考えられます。
従って、「納付が困難となった」か否か、個別の事情に応じて総合的に判断す
る現在の運用に問題があるとは考えておりません。
5
今後の対応
これまでも、「所得激減減免の制度」が分かりにくいという指摘を受けることが
あり、できる限り、わかりやすい説明に努めてきましたが、今後はそうした説明は
もちろん、保険料減免の運用等、札幌市国保が適切に運営されるよう、鋭意、努力
を継続いたします。
オンブズマンの判断(要約)
オンブズマンは、市の回答を踏まえ、以下のとおり判断します。
今回の発意調査は、所得激減を理由とする保険料の減免について、二つの論点を対
象としています。
第一の点が、所得激減を理由とする保険料の減免申請を行うべき時期について、条
例は「納期限」
(条例第 24 条第 2 項)までに行うべきことを定めていることと、実際
の取扱いの関係についてです。
第二の点が、減免を認められるための被保険者の「資産要件」は、具体的にどのよ
うな基準であり、いつの時点でその該当性の判断をするのか、ということです。
以下、順に検討します。
1
条例が定める「納期限」の意義について
(1) 現在の取扱いへの疑問
札幌市では、保険料は、10 期に分けて納付する扱いになっています。そのため、
所得激減を理由とする保険料の減免について、所得が「確定」した後、「正式」
の手続を行うのでは、すでに、各期の納期限を過ぎているのではないか、という
疑問が生じるということは、「調査の趣旨」で指摘した通りです。
また、後日「正式」の申請を行うにしても、減免申請が「納期限」までとされ
ていることから、納付相談の時点において、納期限が過ぎている保険料について
は、減免の対象とならないのではないか、ということも疑問となります。
-56-
(2) 疑問の前提にある制度理解
こうした疑問は、別添の【当初の理解】に記したような、制度理解に基づくも
のです。
ここで想定しているのは、当該年度の保険料賦課額が 50 万円で減免判定基準
額が 12.5 万円、各期 5 万円×10 期に分けて納付することとされていた場合(「市
の回答」3(2)アのケースを参照しています。)において、3 期分を納付した後、
所得激減により、保険料を納付できないという相談がなされたケースです。
この場合、減免申請は「納期限」までに行うことから、①納付相談がなされた
時点では納期が未到来の保険料について、②一期当たりの保険料額に、減免判定
基準額(又は最低基準額)を賦課額で割った数値を掛け合わせ、その期の保険料
の減免額を算出する、という理解です。
ただし、こうした理解をした場合においても、
「納付相談」が条例の定める「減
免申請」に該当するか、という疑問は残ります。
(3) 市の回答
これに対し、市の回答は明確です。すなわち、保険料は、年度単位で賦課され
るものであり、減免も当該年度を単位として、その適用の有無を判断する、とい
うものです。
従って、減免額の決定は、納期ごとに減免額を決定する仕組みにはなっておら
ず、納付困難額と減免判定基準額を比較し、低い方の額をもって当該年度の減免
額とすることになっています(要綱第 9 条第 1 項)。
また、年度単位で保険料の減免額を決定することから、納付相談をした時点で
納付済みの保険料については、減免が認められた後の当該年度の保険料額から控
除し、その残額について、分割納付する取扱いになっています。
市の回答4(1)では、こうした取扱いについて説明していますが、それらを図
にすると、別添の【パターン A】~【パターン C】のようになります。
(4) 保険料減免申請を「最終納期限」までとする取扱いについて
これまで見てきたように、保険料は年度を単位として賦課されるものであり、
保険料の減免についても、年度を単位として、その適用の有無が判断されるもの
です。
このように、保険料の減免は納期ごとに判断されるものではないこと、また、
条例が定める「納期限」の解釈を厳格に行い、既に納期を経過した保険料を減免
の対象としないならば、被保険者にとっては不利益な取扱いとなることからする
と、条例が定める減免申請を行うべき「納期限」を「最終納期限」と解すること
が、明らかに条例の明文の規定に反するとまでは言えません。
むしろ、保険料減免の申請を「最終納期限」までとする市の取扱いは、さまざ
まな事情を考慮して、工夫を凝らした結果であることが窺えます。
ただ、条例の「納期限」という文言が、誤解を招くおそれがあることは否定で
きません。市には、この点に関する市民からの問合せがあった場合には、できる
限り、わかりやすい説明を心がけることを望みます。
-57-
2
保険料の所得激減減免における「資産要件」について
(1) 市の回答
市は、「生活が著しく困窮し、かつ、資力が近い将来回復する見込みがないた
め、保険料を納付することが困難である」(要綱第 3 条第 2 号)ことを判断する
ため、一律の基準を作成することは困難であると説明します。
その理由は、第一に、減免申請をする世帯の事情は多様であるということであ
り、第二に、基準を作成することで制度の運用が硬直化し、減免が認められるべ
き状態であるにもかかわらず、それが認められないケースが生じることも考えら
れるためです。
そこで、市では現在、保険料減免の可否について、個別の事情に基づいた、総
合的な判断をしています。
(2) 「明確性」と「公平性」の要請
保険料の減免は、あくまで例外的な措置であり、恣意的な取扱いとなることが
あってはなりません。そのため、減免が認められるための判断基準には、その内
容の明確性と、運用の公平性が求められます。
この点、市の説明によれば、保険料減免が認められる件数は、年間 1 万件を超
えるということです。これだけの件数があれば、担当者が判断に苦慮するケース
も、相当数含まれることが予想されます。
ケースごとに「個別の事情に基づいた総合的判断」を行っていたのでは、運用
の公平性が確保されているか、市民が疑問を抱く事態が生じることも考えられま
すし、また、個別の事情に応じた判断を行うことで、担当者の負担が増している
のではないかという懸念も生じます。
(3) 市に求められる対応
基準の作成が困難であるとして、市が説明する事情について、それを否定する
ことはできませんが、保険料減免を申請した被保険者世帯が同じような事情にあ
るならば、減免の可否について、その判断を異にすることがあってはならないの
が原則です。
判断を異にするならば、それを正当化できるだけの理由が必要になりますが、
そうした判断が、基準が明確でないままに柔軟な対応をした結果であるならば、
後から説明する理由は一貫性を欠くものになりかねません。そもそも、理由を説
明すること自体、困難になるかもしれません。
また、減免が認められる基準を作成して公表することにより、業務遂行に支障
を生じるということも考えられますが、そうであるならば、少なくとも担当部局
の内部において、運用の公平性を確保するための手段が講じられてしかるべきで
す。
以上のことから、市には今後、基準を作成することによる利点と、それにとも
なう不都合の双方をはかりにかけ、できる限り、多くの市民が納得できるような、
保険料減免の取扱いについて、そのあり方を検討されることを望みます。
※
この発意調査は、まだフォローアップ調査を実施していないことから、市の改善
状況を掲載しておりません。
-58-
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-60-
Ⅳ
制度の概要等
1
札幌市オンブズマン制度の概要
2
苦情処理の流れ
3
札幌市オンブズマン制度のあゆみ
4
歴代オンブズマン
5
札幌市オンブズマン条例
-61-
1
札幌市オンブズマン制度の概要
(1)
制度導入の背景
オンブズマン制度は、複雑化する社会状況に対応した透明性の高い行政運営を行
うとともに、地方分権時代における市民と行政が一体となったまちづくりを進めて
いくため、札幌市オンブズマン条例に基づき、平成 13 年 3 月に発足しました。
また、平成 19 年 4 月に施行された自治基本条例(第 20 条)においても、公正で
信頼の置ける行政運営を確保するための制度として位置づけられています。
*「オンブズマン」という言葉は、スウェーデン語の「ombudsman(代理人)」がもとになって
います。
(2)
オンブズマンの役割
①
オンブズマンは、市政に関する苦情を公正に調査し、市のサービスの内容や制
度について中立な立場で判断します。
②
市政に関することを、自ら取り上げて調査します(発意調査)。
(3)
苦情申立ての対象となるもの
オンブズマンが管轄するのは、市の機関の業務執行に関する事項及び当該業務に
関する職員の行為に関することで、本人に直接利害関係があり、その事実のあった
日から 1 年以内のものです。
例えば、
「税金の使い方など、市政に対する提言や要望に関すること」などは、直
接の利害関係がないため苦情申立てとしては扱えません。
(4)
苦情申立てとして扱えないもの
次の申立ては、オンブズマンの所轄事項から除かれているため取り扱えません。
①
判決、裁決等により係争中又は確定した権利関係に関すること
②
監査委員が監査を実施していること
③
議会に関すること
④
オンブズマンの行為に関すること
⑤
子どもの権利救済委員に救済を申し立てたこと及び同委員の行為に関すること
-63-
(5)
オンブズマンの組織等
①
オンブズマン
オンブズマンは、人格が高潔で、地方行政に関し優れた識見を有する者のうち
から、議会の同意を得て市長が委嘱します。オンブズマンは、次のとおりです。
②
相
澤
重
明(家事調停委員)
三
木
正
俊(弁護士)
吉
田
かよ子(大学教授)
任期
オンブズマンの任期は2年で、1期に限り再任されることができます。
③
その他のスタッフ
オンブズマンの調査部門の補佐として専門調査員3名が民間から就任していま
す。また、制度を運営するオンブズマン事務局に市職員4名と受付を担当する相
談員2名が配置されています。
(6)
苦情申立ての方法
申立ては、本人(代理人も可)が原則として書面により行うことになります。郵
送やFAX、ホームページからも申立てができます。
苦情申立書は、リーフレットとともにオンブズマン室、市民の声を聞く課、各区
総務企画課等に備えてありますが、苦情の内容、住所、氏名、電話番号などの必要
事項の記載があれば、所定の様式以外でも申し立てることができます。
制度利用に要する費用は無料です。
(7)
調査結果の通知
市の関係機関への事情聴取や法令等の検討を行い、オンブズマンの調査結果とし
てまとめたものを、申立人及び市の関係機関に対して文書で通知します。
(8)
活動状況の報告・公表
オンブズマンの活動状況は、毎年、市長と議会に報告するとともに公表します。
-64-
2
苦情処理の流れ
書面で申立て(匿
名では申立てでき
ません)
申立人
オンブズマン室
市の担当部局
苦情申立て
(持参・郵送・FAX・メール)
受付
(希望者のみ)
(郵送・FAX・メールからの申立ての場合)
面談
申立書の受理通知
市の担当部局等を調査
オンブズマンが調査
できない場合も、理由
をつけて通知します
オンブズマンの判断
調査結果を通知
オンブズマンが必要と認めるとき等
市の担当部局
申立人
意見表明・勧告
必要に応じて
フォローアップ調査
市からの
改善状況報告
(改善状況等の調査)
-65-
3
札幌市オンブズマン制度のあゆみ
平成12年
7月
「オンブズマンを考えるシンポジウム」を北大と共催
同
8月
「オンブズマン市民セミナー」開催。電子会議室「私たち
が考えるオンブズマン制度」を開設。市民セミナー参加者
が札幌市に提言書を提出
~10月
同
12月
平成12年第4回定例市議会において全会一致で札幌市オ
ンブズマン条例を制定(平成13年3月1日施行)
平成13年
3月
札幌市オンブズマン室開設(場所:オーク札幌ビル)
同
11月
同
全国行政苦情救済・オンブズマン制度連絡会に加入
勧告第1号(道路幅員の確定について)
平成16年 12月
札幌市オンブズマンに関する市民アンケート調査実施
平成18年
夜間オンブズマン開始(条例附則に基づく見直し措置)
4月
同
オンブズマン事務局が機構上総務局に編入
平成19年
4月
札幌市自治基本条例施行(公正で信頼の置ける行政運営の
確保に向けてオンブズマンを置くことを改めて規定)
同
5月
オンブズマン室が市役所本庁舎15階に移転
平成21年
4月
札幌市オンブズマン条例の一部改正(「札幌市子どもの最
善の利益を実現するための権利条例」制定により「子ども
の権利救済委員」が設置されたことに伴い、相互の関係を
規定したもの)
同
6月
勧告第2号(証明等手数料条例とその運用の不整合な状態
の解消について)
同
8月
オンブズマンへの苦情申立て件数が累計で1,000件を超え
る
平成23年
6月
制度発足10周年を記念し、活動報告書(10周年特集号)を
発行
平成25年
3月
平成24年度の年間苦情申立て件数が、過去最高の135件を
記録
-66-
4
歴代オンブズマン
氏
ひろ
廣
なが
名
おか
岡
とくいちろう
得一郎
長
井
い
けい
み
たに
てつ
さ
とう
じょう
三
佐
ぶん
文
谷
藤
せん
仙
職業等(就任時)
弁護士
こ
敬
子
お
鉄
夫
じ
譲
いち
俊
一
期
平成 13 年 3 月 1 日~15 年 2 月 28 日
平成 15 年 3 月 1 日~17 年 2 月 28 日
代表オンブズマン(平成 13 年 3 月 1 日~17 年 2 月 28 日)
札幌地方・簡易裁
平成 13 年 3 月 1 日~15 年 2 月 28 日
判所民事調停委
平成 15 年 3 月 1 日~17 年 2 月 28 日
員、人権擁護委員
北海道大学名誉教
授
元会社役員
平成 13 年 3 月 1 日~14 年 2 月 28 日
平成 14 年 3 月 1 日~16 年 2 月 29 日
平成 16 年 3 月 1 日~18 年 2 月 28 日
平成 18 年 3 月 1 日~20 年 2 月 29 日
治
しゅん
任
代表オンブズマン(平成 17 年 3 月 1 日~20 年 2 月 29 日)
弁護士
平成 17 年 3 月 1 日~19 年 2 月 28 日
平成 19 年 3 月 1 日~21 年 2 月 28 日
代表オンブズマン(平成 20 年 3 月 1 日~21 年 2 月 28 日)
すぎ の
め
やす
康
子
の
まさ
あき
杉野目
まえ
前
いわ
岩
野
もと
本
こ
正
明
かつ
ひこ
勝
彦
翻訳家
元北海道教育委員
元会社役員
平成 17 年 3 月 1 日~19 年 2 月 28 日
平成 19 年 3 月 1 日~21 年 2 月 28 日
平成 20 年 3 月 1 日~22 年 2 月 28 日
平成 22 年 3 月 1 日~24 年 2 月 29 日
代表オンブズマン(平成 21 年 3 月 1 日~23 年 2 月 28 日)
弁護士
平成 21 年 3 月 1 日~23 年 2 月 28 日
平成 23 年 3 月 1 日~25 年 2 月 28 日
代表オンブズマン(平成 23 年 3 月 1 日~25 年 2 月 28 日)
いの
うえ
ひろ
宏
子
こ
消費生活アドバイ 平成 21 年 3 月 1 日~23 年 2 月 28 日
ザー
平成 23 年 3 月 1 日~25 年 2 月 28 日
あい
ざわ
しげ
あき
札幌家庭裁判所家 平成 24 年 3 月 1 日~26 年 2 月 28 日
事調停委員
井
相
み
三
よし
吉
上
澤
き
木
だ
田
重
明
まさ
とし
正
か
俊
よ
こ
かよ子
代表オンブズマン(平成 25 年 3 月 1 日~)
弁護士
平成 25 年 3 月 1 日~27 年 2 月 28 日
北星学園大学短期
平成 25 年 3 月 1 日~27 年 2 月 28 日
大学部教授
-67-
5
札幌市オンブズマン条例
平成12年12月12日
札 幌 市 条 例 第 5 3 号
改正 平成 15 年 10 月条例第 33 号
改正 平成 20 年 10 月条例第 36 号
第1章
総則
(目的)
第1条
この条例は、札幌市オンブズマンの組織、職務等に関し必要な事項を定めることにより、
市民の権利利益を擁護し、並びに市政を監視し、及び市政の改善を図り、もって開かれた市政
の推進、市民の市政に対する理解と信頼の確保及び市民の意向が的確に反映された市政運営に
資することを目的とする。
(設置)
第2条
前条の目的を達成するため、札幌市オンブズマン(以下「オンブズマン」という。)を置
く。
(所轄事項)
第3条
オンブズマンの所轄事項は、市の機関の業務の執行に関する事項及び当該業務に関する
職員の行為であって、次に掲げる事項に該当しないもの(以下「市の業務」という。)とする。
(1) 判決、裁決等により確定した権利関係に関する事項
(2) 判決、裁決等を求め現に係争中の事項又は監査委員が請求に基づき現に監査を実施してい
る事項
(3) 議会に関する事項
(4) 職員の自己の勤務内容に関する事項
(5) 札幌市子どもの権利救済委員に救済を申し立てた事項
(6) オンブズマン又は札幌市子どもの権利救済委員の行為に関する事項
(オンブズマンの職務)
第4条
オンブズマンの職務は、次のとおりとする。
(1)
市の業務に関する苦情の申立てを受け付け、簡易迅速に処理すること。
(2)
常に市政を監視し、自己の発意に基づき、市の業務に関し事案を取り上げ調査すること。
(3)
市の業務に関し、是正等の措置を講ずるよう勧告し、及び制度の改善を求める意見を表明
すること。
(4)
勧告、意見表明等の内容を公表すること。
第2章
責務
(オンブズマンの責務)
第5条
オンブズマンは、公正かつ適正にその職務を遂行しなければならない。
-68-
2
オンブズマンは、その職務の遂行に当たり、市民の権利利益を擁護し、並びに市政を監視し、
及び市政の改善を図る他の諸制度と有機的な連携を図ることなどにより、その役割を効果的に
果たすよう努めなければならない。
3
オンブズマンは、その地位を政党又は政治的目的のために利用してはならない。
(市の機関の責務)
第6条
市の機関は、オンブズマンの職務の遂行に関し、その独立性を尊重するとともに、積極
的な協力援助に努めなければならない。
(市民等の責務)
第7条
市民その他この制度を利用するものは、この条例の目的を達成するため、この制度の適
正かつ円滑な運営に協力しなければならない。
第3章
オンブズマンの組織等
(オンブズマンの定数、任期等)
第8条
2
オンブズマンの定数は、3人とする。
オンブズマンは、人格が高潔で、行政に関し優れた識見を有する者のうちから、議会の同意
を得て、市長が委嘱する。
3
オンブズマンの任期は2年とし、1期に限り再任されることができる。
(兼職等の禁止)
第9条
オンブズマンは、衆議院議員若しくは参議院議員、地方公共団体の議会の議員若しくは
長又は政党その他の政治団体の役員を兼ねることができない。
2
オンブズマンは、市と特別の利害関係を有する法人その他の団体の役員を兼ねることができ
ない。
(秘密を守る義務)
第10条
オンブズマンは、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、
同様とする。
(解嘱)
第11条
市長は、オンブズマンが心身の故障のため職務の遂行ができないと認めるとき、又は
オンブズマンに職務上の義務違反その他オンブズマンたるに適しない非行があると認めるとき
は、議会の同意を得て解嘱することができる。
2
オンブズマンは、前項の規定による場合を除くほか、その意に反して解嘱されることがない。
(代表オンブズマン)
第12条
オンブズマンのうち1人を代表オンブズマンとし、オンブズマンの互選によってこれ
を定める。
2
代表オンブズマンは、オンブズマンに関する庶務を処理する。
3
代表オンブズマンに事故があるとき、又は代表オンブズマンが欠けたときは、あらかじめ代
-69-
表オンブズマンが定めるオンブズマンがその職務を代理する。
(オンブズマン会議)
第13条
次に掲げる事項を協議するため、オンブズマン会議を設ける。
(1)
オンブズマンの職務執行の一般方針に関すること。
(2)
活動状況の報告に関すること。
(3)
その他オンブズマンの協議により必要と認める事項
2
オンブズマン会議は、代表オンブズマンが招集する。
3
前項に定めるもののほか、オンブズマン会議の運営に関し必要な事項は、代表オンブズマン
がオンブズマン会議に諮って定める。
第4章
苦情の処理等
(苦情の申立て)
第14条
何人も、オンブズマンに対し、市の業務について苦情を申し立てることができる。
(苦情の申立手続)
第15条
前条の規定による苦情の申立て(以下「申立て」という。)は、次に掲げる事項を記載
した書面により行わなければならない。ただし、オンブズマンが当該書面によることができな
い特別の理由があると認めるときは、この限りでない。
(1)
氏名及び住所(法人その他の団体にあっては、名称、事務所又は事業所の所在地及び代表
者の氏名)
(2)
申立ての趣旨及び理由並びに申立ての原因となる事実のあった年月日
(3)
前2号に掲げるもののほか、規則で定める事項
(調査対象外事項)
第16条
オンブズマンは、申立てが、オンブズマンの所轄事項でないもののほか、次の各号の
いずれかに該当するものであると認めるときは、当該申立てに係る苦情について調査しない。
(1)
申立てを行ったもの(以下「苦情申立人」という。)が、申立ての原因となった事実につ
いての利害を有しないとき。
(2)
申立ての原因となった事実のあった日から1年を経過しているとき。ただし、正当な理由
があるときは、この限りでない。
(3)
2
虚偽その他正当な理由がないとき。
オンブズマンは、申立てがオンブズマンの所轄事項であって、かつ、前項各号に該当しない
場合においても、調査することが相当でない特別の事情があると認めるときは、当該申立てに
係る苦情について調査しないことができる。
(調査の開始・非開始に係る通知)
第17条
オンブズマンは、前条の規定により苦情を調査しないときは、苦情申立人に対し、理
由を付してその旨を速やかに通知しなければならない。
-70-
2
オンブズマンは、申立てに係る苦情又は自己の発意に基づき取り上げた事案(以下「苦情等」
という。)について調査を開始するときは、関係する市の機関に対し、その旨を通知しなけれ
ばならない。
(調査の中止)
第18条
オンブズマンは、苦情等について調査を開始した場合においても、調査を続けること
が相当でない特別の事情があると認めるときは、調査を中止することができる。
2
オンブズマンは、前項の規定により苦情等の調査を中止したときは、次の各号に掲げる苦情
等の区分に応じ、当該各号に掲げるものに対し、理由を付してその旨を速やかに通知しなけれ
ばならない。
(1) 申立てに係るもの
苦情申立人及び前条第2項の規定により通知した市の機関(以下「調
査対象機関」という。)
(2) オンブズマンの発意に基づくもの
調査対象機関
(調査の方法)
第19条
オンブズマンは、苦情等の調査のため必要があると認めるときは、調査対象機関に対
し、説明を求め、その保有する文書その他の記録を閲覧し、若しくはその提出を要求し、又は
実地に調査することができる。
2
オンブズマンは、苦情等の調査のため必要があると認めるときは、関係人又は関係機関に対
し、質問し、事情を聴取し、又は実地に調査することについて協力を求めることができる。
3
オンブズマンは、専門的又は技術的な事項について、特に必要があると認めるときは、専門
的機関に対し、調査、鑑定、分析等の依頼をすることができる。
(出資団体等の調査への協力)
第20条
市が出資又は補助その他の財政的援助を行っている団体であって規則で定めるもの及
び地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項に規定する指定管理者は、前
条第2項の規定による調査について、協力するよう努めるものとする。
(調査結果に係る通知)
第21条
オンブズマンは、苦情等の調査の結果について、次の各号に掲げる苦情等の区分に応
じ、当該各号に掲げるものに対し、速やかに通知しなければならない。
(1) 申立てに係るもの
苦情申立人及び調査対象機関
(2) オンブズマンの発意に基づくもの
調査対象機関
(勧告及び意見表明)
第22条
オンブズマンは、苦情等の調査の結果、必要があると認めるときは、関係する市の機
関に対し、当該苦情等に係る市の業務について是正等の措置を講じるよう勧告することができ
る。
2
オンブズマンは、苦情等の調査の結果、その原因が制度そのものに起因すると認めるときは、
関係する市の機関に対し、制度の改善を求める意見を表明することができる。
-71-
3
オンブズマンは、申立てに係る苦情について前2項の規定により勧告し、又は意見を表明し
たときは、苦情申立人に対し、その旨を速やかに通知しなければならない。
(勧告又は意見表明の尊重)
第23条
前条第1項の規定による勧告又は同条第2項の規定による意見表明を受けた市の機関
は、これを尊重しなければならない。
(措置の状況の報告)
第24条
オンブズマンは、第22条第1項の規定による勧告又は同条第2項の規定による意見
表明をしたときは、当該勧告又は意見表明を受けた市の機関に対し、その是正等又は改善の措
置の状況について報告を求めるものとする。
2
前項の報告を求められた市の機関は、当該報告を求められた日の翌日から起算して60日以
内に、オンブズマンに対し、是正等又は改善の措置の状況について報告するものとする。
3
オンブズマンは、申立てに係る苦情について前項の規定による報告があったときは、苦情申
立人に対し、その旨を速やかに通知しなければならない。
(勧告等の公表)
第25条
オンブズマンは、第22条第1項の規定による勧告若しくは同条第2項の規定による
意見表明をしたとき、又は前条第2項の規定による報告があったときは、その内容を公表する
ものとする。
2
オンブズマンは、前項の規定による公表をするに当たっては、個人情報等の保護について十
分な配慮をしなければならない。
第5章
補則
(活動状況の報告)
第26条
オンブズマンは、毎年、その活動状況について、市長及び議会に報告するものとする。
(市民との交流)
第27条
オンブズマンは、前条の規定によりその活動状況を市長及び議会に報告したときは、
これを公表するものとする。
2
オンブズマンは、前項に掲げるもののほか、その活動に関し、積極的に市民に情報を提供す
るとともに、市民の意向を把握する施策を講じるなど市民との交流に努めるものとする。
(専門調査員)
第28条
オンブズマンの職務の遂行を補佐するため、専門調査員を置くことができる。
2
専門調査員は、行政に関し優れた識見を有する者のうちから、市長が委嘱する。
3
第5条、第9条及び第10条の規定は、専門調査員について準用する。
(委任)
第29条
この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。
-72-
附
則
(施行期日)
1
この条例の施行期日は、市長が定める。ただし、附則第3項の規定は、公布の日から施行す
る。
(経過措置)
2
この条例は、この条例の施行の日(以下「施行日」という。)の1年前の日から施行日の前日ま
での間にあった事実に係る苦情についても適用し、当該1年前の日前にあった事実に係る苦情
については、適用しない。
(準備行為)
3
第8条第2項の規定によるオンブズマンの委嘱のために必要な行為は、この条例の施行前に
おいても行うことができる。
(オンブズマンの任期に係る特例)
4
この条例により最初に委嘱されるオンブズマンのうち市長の指定する1人の第1期の任期は、
第8条第3項の規定にかかわらず、これを1年とする。
(検討)
5
市は、施行日から5年以内に、この条例に基づくオンブズマン制度の運営状況について検討
を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附
則(平成 15 年条例第 33 号)抄
(施行期日)
1
この条例は、公布の日から施行する。
附
則(平成 20 年条例第 36 号)抄
(施行期日)
1
この条例の施行期日は、市長が別に定める日から施行する。
-73-
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平成24年度
札幌市オンブズマン活動状況報告書
(2012.4.1~2013.3.31)
編集・発行
平成 25 年6月
札幌市オンブズマン
札幌市総務局オンブズマン事務局
〒060-8611
札幌市中央区北1条西2丁目 札幌市役所本庁舎 15 階
電
話
011-211-3733
FAX
011-211-3732
http://www.city.sapporo.jp/ombudsman/
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OMBUDSMAN REPORT 12.4 ∼13.3
www.city.sapporo.jp/ombudsman/
さっぽろ市
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