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真空管LCR型 フォノイコライザーアンプ

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真空管LCR型 フォノイコライザーアンプ
初段にE80Fを使用した電源ユニット分離型
真空管LCR型
フォノイコライザ“アンプ
岩村保雄IWAMURAY..S。。
∴ ∴∴ “
∴ ∴
∴ ∴ ∴ 普
∴ ∴
∴
““ − “聾 四 m 翠 曝 露 洩
∴ ∴ ∴  ̄∴ ∴
:
∴
慧\
. ∵ il 着 : 110 ,
∴
.∴ ∴
∴/
ノ
アナログレコードを最大限楽しむためにLCR型の
フォノイコライザーアンプを製作,5極曹E80Fと
12AU7の電圧増幅,回路構成はLCRネットワーク
をトランスドライブするという標準的なものとした.
また,製作に当たって問題となる残留ハムを低減す
るために電源を別筐体とした,LCR型は比較的高
価になるが,NFB型やCR型に比べ回路全般にイ
ンピーダンスが低いだけに,製作は電源を分配すれ
ば難しくはない∴必要十分な特性を持つ,音楽を聴
くツールとしてのフォノイコライザーとなった,
の発表された製作記事も,多くは
NFB型とCR型のRIAAイコラ
近年,ピュアオーディオの世界
にもデジタルパワーアンプが登場
したり,パソコンとネットワーク
イザーです.アナログ再生でもっ
ともアナログらしい音がするとい
の組み合わせが音源として使われ
るようになるなど,デジタル化の
波が次々と押し寄せています.他
われてきたLCR型イコライザー
アンプは,残念ながらこれまでほ
とんど発表されてきませんでした.
それはCDを初めとするデジタル
方,デジタルに飽き足りない方に
機器が普及するに従ってアナログ
は,アナログ回帰の流れが強まり,
デジタルの対極であるアナログ再
生についての関心が高まっている
ようです.
アナログ再生にはプレーヤーと
への関心が低下し,LCRイコラ
イザーの心臓部ともいえるインダ
ともにフォノイコライザー(以下,
イコライザー)が必要となります.
LPプレーヤーは現在も製造され
アンからの要望に応えて,LCR
イコライザー用のインダクターが
ていますし,ビンテージ品も比較
的容易に手に入れることができま
す.ところが,現在市販されてい
るイコライザーアンプの多くはア
ナログICを使ったもので,真空
管を使ったものは非常に高価であ
るのが現状です.振り返って,製
作記事はといえばイコライザー関
係のものは少数にすぎません.そ
44
クターが市販されなくなってしま
ったからです.
それでも最近は一部の熱心なフ
橋本電気,ノダチトランス,アム
トランスから市販されるようにな
ってきました.2年以上前から橋
本電気にお願いした結果,インダ
クターを試作していただきました,
それを使ってRIAAイコライザ
ー付きプリアンプとして製作を始
上でも,イコライザーとラインア
ンプは別にしたほうがよいと方針
を転換,改めて電源も別筐体とし
てシンプルなイコライザーとして
作り直すことにしましだ
本機はLCRイコライザーが走
インピーダンス型であるという特
徴を活かすように,ラインアウト
トランスを使ってLCRイコライ
ザーをドライブするという,定石
に従った回路構成となっています.
前述のように,ハム雑音の影響を
できるだけ受けないように電源部
分を別筐体にし,製作に当たって
のトラブルを避けるようにしまし
イ聴おりうか いかなと必
はじめに
だ また,MCカートリッジの使
用に対してはMCトランスを内
蔵するすることで対応しています.
RIAA特性
RIAA特性はアメリカ・レコー
ド協会(RecordingIndustry
AssociationofAmerica)によっ
めたところ,このような構成では
どうしても大型になってしまうこ
録/再生の規格で,3つの時定数
とと,製作する上でも実際に使う
3180/318/75llSで定義されてい
て決められた,LPレコードの記
20
真空管LCR型フォノイコライザーアンプ
ます.JISでもRIAA特性を引用
した形で定義されていますが,面
白いことに特性表の中のいくつか
の周波数で0.01dBの違いが散見
されます.
品品
︹曽︺ K\㌫下Kヽ
ないので,イコライザーを製作す
るに当たって,その部分の処理に
回 路
(1)レベルダイヤグラム
LCRイコライザーアンプは前
ア針して 定特トイ石す索郎てし便内す
そのため,1987年にIECによ
を想定して,レベルダイヤグラム
を決定しなければなりません.
本機ではMCカートリッジへの
対応はMCトランスを内蔵する
聴周波数以上の増幅度を抑える
3.18llS(50kHz)の時定数が加わ
り,−27dB程度となっているよ
うです.これらの特性の違いがわ、
鞠葵
111
“ &iEC
ii】
811IIi
[図1]RiAA特性とIEC特性
段アンプLCRネットワーク,出
力段アンプから構成されます.ま
ず,これら構成要素の信号レベル
す.高域については,たとえばノ
イマンのカッテングマシンでは可
○
旧C
11111
illii
81111
Sllii
81111
81111
まいます.まだ20kHz以上でさ
らに減衰させるとNFB型では安
定性の問題が出てきます.
り改めて定義された規格では,低
域を抑える目的で7950IlS(20Hz)
の時定数の追加が推奨されていま
811111
111111
881111
8111ii
811111
811111
811111
811111
1 10 100 1k lOk∴∴∴∴100k
周波数〔[Z〕
いろいろなバリエーションが考え
られます.多く見られるのは,
20Hz以下はフラットで−20kHz
以上ではそのままの傾斜で減衰す
るというものです.20Hz以下を
フラットにすると低域(サブソニ
ック)のノイズまで再生されてし
1 一 − ︵ ノ ー
RIAA規格では20Hz以下と20
kHz以上の特性は定義されてい
11111
SIlil
ヽ
ことで対応するので,前段アンプ
はMMカートl)ッジの出力レベ
ルを考えればよいことになります.
それを典型的な電圧lkHzで6
mVとすると,10kHzではRIAA
ザーアンプの出力段アンプの出力
インピーダンスはlkQとします.
またイコライザーの定格出力電宜
はCDプレーヤーの出力電圧と同
等の0.6Vとし,アンバランス出
力とします.これらの条件からレ
ベル・ダイヤグラムを図2のよう
に決めました.
(2)前段アンプ
前段の電圧増幅アンプはMM
カートリッジからの微小電圧を
40dB(100倍)増幅することに加
えて,RIAA−LCRネットワーク
をドライブするために出力インピ
カープのプリエンファシスにより
ーダンス6000とする必要があり
ます.これらの機能を2つに分け
かるように図1にまとめました.
LCR型ではIECの低域を抑える
60mVの入力となるので 若干の
余裕を見て150mVまでの耐入力
て実現することにし,電圧増幅部
とラインアウトトランスドライブ
かどうかは,音作りの点で問題と
なるが,高域についてはNFB型
と違ってノイマンのように抑える
必要はありません.
が必要となります.
本イコライザーアンプの後に接
続するラインアンプの入力インピ
部から構成します.
今回使用するラインアウトトラ
ンスHL−20K−6は1次インピーダ
ーダンスが最悪(最も低い)だっ
た場合を10kQと考え,イコライ
ンス20kQ(直列)と5kQ(並列)
で使うことができますが 特性図
MCトランス と80F(5縞)12AU7(並列)ライントランス RiAAフィルター ECC99(SRPP)
l=lk]Z
[図2]イコライザーアンプ
のレベルダイヤグラム
2077/8
▲ i 胸 伽
ーryつ庸敬い
DL103などの
カートリッジ
(20州!)
各段の利得
−拙 → <∴∴∴∴∴川部
45
真空管LCR型フォノイコライザーアンプ
する点で,20Hz∼20kHzと十分
広いとはいえないまでも必要なだ
0、6
0.4
けは確保されています(図3).最
等0・2
大出力電圧(歪率1%)は17Vrms
で,レベルダイヤグラムで想定し
避 0
墓_0、2
ている最大入力電圧150mVrmsを
クリアできています.
i ●
−0、4
−0−8
10 100 1k 10k 100k
(3)RiM−LCRネットワーク
LCRネ\ツトワークには橋本霹
周波数〔]Z〕
[図4]LCR型RiAAイコライザー基板のRLAA偏差
気製のインダクターを使いますが,
本機で使ったものは初期の試作品
i.i、ii
偏差がいくら小さくでも,最終的
なイコライザーアンプとしての
RIAA偏差は,アンプ各段の特性
やラインアウトトランスの周波数
インピーダンスが6000で,イン
ピーダンス整合した条件で使用す
ることが条件となります.
はじめにLCRネットワークの
特性を総合したものである点に日
を向ける必要があります.
いった内部抵抗の小さい双3極管
でその動作を確認しました.これ
らの真空管は,比較的gmが大き
いのでSRPP動作に適していると
考えられます.予備実験の結果,
入手の容易さと歪率の低さから,
ECC99を使うことにしました.
出力段アンプの歪率改善と増幅
(4)出力段アンプ
先に決定したレベルダイヤグラ
率を所定の20dBとするために,
下段のカソードバイパスコンデン
ム(図2)に従って,出力段アン
プは増幅度20dB(10倍),出力イ
ンピーダンスlkQということに
サーを省き,4.5dBの電流帰還
NFBを掛けています.その結果,
増幅度は19.6dB(9.6倍)で予定し
し,C,Rはインダクターの説
明書に記載の簡易型回路の値から
なります.双3極管を使ってこれ
を実現するには,3極管増幅+カ
た値となりました
送り出しアンプ部の周波数特性
始め,微調整をすることで図4の
ようにRIAA特性に対して±
0.2dB以下の偏差とすることがで
ソードフォロワーあるいはSRPP
と歪率特性を図5,6に示します.
RIAA規格の定義されている周波
きました.そのときのLCRの各
値は次の通りです.
PP回路を使うことにし,表2に
示したECC99,6NdP,5687と
みで実現したRIAA特性の偏差
を調べるために,600露の出力イ
ンピーダンスの発振器でドライブ
し,6000の終端抵抗を付けた状
態で周波数特性を測りました
回路が考えられます.
本機では部品点数の少ないSR
数20Hz∼20kHzの範囲で,十
分±0.1dB以内に収まっています.
また,歪率についても定格出力電
Rl,R2=498Q(5100〃33kQ)
塙=100.lQ(120Q〃1.2kQ)
R4,R5=620Q
●
Cl=4.8ljF
○
Q=0.1171月(0.102+0.0151月)
“
Ll=1.8H
L2=45mH
.
︹曾︺ K\缶でMヽ
JiL ヽノ ■﹂︳ヽ rトi 一心. 一〇.
し政馬の約掛増山いほれてまけりせ離れ率効に 続量伸す便所ルこげ市
なので,1.8Hと45mHの2つの
インダクターから構成されていま
す.LCRネットワークは入出力
1 ●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
○
S ,
●
●
●
0、1 1 10 100
周波数〔]Z〕
[図5]出力段アンプの周波数特性
MJ
LCRネットワークのみのRIAA
20日/8
出力電圧〔∨〕
[図61出力段アンプの歪率特性
47
E00F 27kn 12AU7(並列) ECc99
酬
l馴
6 8 ]L−
2 0k・
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0 22㌦
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4
W
▼
、
ヒーター電圧安定化回路
●
注)記入のない抵抗はl/2W.
Ecc99,12AU7
[図7]LCR型RIJ”イコライザーアンプの全回路図
圧の0.6Vrmsでは0.035%,10dB
源回路を別シャシーとしましだ
の余裕を見た2Vrmsでも0.08%と
十分に小さな値となっています.
この回路では,電流帰還NFB
のために出力インピーダンスは
電源回路ユニットからは,B+
電圧とヒーター電源用の直流電圧
を4芯のケーブルを使ってイコラ
1.4kQと増大して,当初の設定よ
りも若干大きくなってしまったの
ですが全体的なバランスからこ
れで問題なしとしました.
B電圧は整流替るX4を使って整流
し,チョークを使ったコンデンサ
ーインプットのリップルフィルタ
(5)電源回路
イザーアンプ本体に供給します.
ーを通します.出力側には電源オ
フしたときの安全のため,放電用
の220kQを入れておきます.ま
パワーアンプと比べて信号レベ
ルの小さいプリアンプ とりわけ
微小信号を扱うイコライザーアン
た,ヒーター電源の直流llVは
電圧ロスの少ないショットキーバ
プで電源由来のハムを排除するこ
た後,簡単なリップルフィルター
を通しています.
とは,腕に自信のある方でも結構
手こずるものです.このようなト
ラブルを避ける一番の方法は,電
源回路を別シャシーとすることで,
まさしくその理由で,本磯でも電
48
リアダイオードブリッジで整流し
B電源は,イコライザー本体内
でハム電圧をさらに減少させるた
めに,チョークを使ったリップル
フィルターを通します.またヒー
クー電源用の直流llVは,同様
に本体内で3端子レギュレーター
LM338を使って6.3Vを作ります.
ヒーター用には合計3Aの電流容
量が必要なので,レギュレータ
ーICからの発熱はかなりの量
(約14W)になります.イコライ
ザーアンプを長時間安定に使うた
めには,この熱を上手に逃がさな
ければならないので,LM338は
十分な大きさの放熱器に取り付け
なければなりません.
ここまで検討した結果をまとめ
ると,イコライザーの全回路は
図7のようになります.
使用部品
前段アンプの電圧増幅部には低
雑音の高信頼管テレフンケンE
80Fを使っています.280Fはフ
は入ス内けイ入い︰ク最初ダム少だ姐ゝ∵ぅ乱加の他種猟摘噺 20
A輌
罵+
ら
∴ 吉
二 _
在位:49801/4W
句∴ 日09〔日/4W
P4,P5:62001/4W
lS
≡
“○○
≡
○●〃
○
●
ノ
否
︹求︺側聞
●
i
l00 [i
/
Hz
10k[Z
i
●
●
g
,
/
“●
ーiS
,
●
○
Sl
0.1 1 TO 100
出力電圧〔∨〕
/
S
S
ノイ
[図14]1kHzの歪率特性(400Hzローカットフィルターを使用)
i 10
めて聴きたかった『The Best of
Max Roach and Cl鯖ord Brown
入力電圧〔mV〕
[図13]入出力特性(100Hz,1kHz.10kHz)
をlkHzで6mV,10kHzで60
mVと考えたので最大入力電圧
は一番条件の厳しい10kHzでも
2.5倍の150mVとすることができ
ました.この入出力特性からは,
100Hzにおける最大入力電圧は,
出力段でlkHzと10kHzにおけ
る最大入力電圧は前段電圧増幅段
で制限されていることがわかりま
す.
イコライザーアンプのMM入
力から出力までの歪率特性をl
kHzで測定しました 歪率特性
は無帰還アンプのように漸増する
傾向を示しています.出力段アン
in Concert!」と,録音がよいこ
とで知られている『キリル・コン
率は増加しているように見えます
が これは残留ノイズの影響です.
ドラシン/シェラザード」を聴い
てみました LCR型イコライザ
入力短絡での残留雑音は,JIS−A
フィルターを掛けた測定で55〟V
でした これは定格出力0.6Vに
ーということで,何かを期待して
いたところがありましたが,出て
きた音は拍子抜けするような普通
対するS/Nは80.8dBであり,問
題のない数値でした.
の音,ただし会場の雰囲気を色濃
く漂わす音で,これでいいんだと
妙に納得させてくれる音です.
試聴とまとめ
完成したイコライザーアンプを
LCR型イコライザーはどうし
ても高価となってしまいますが
下記の機器と組み合わせて試聴し
ました ラインアンプの影響を避
けるためにイコライザーアンプと
NFB型やCR型に比べて,回路
全般にインピーダンスが低いだけ
に,製作そのものは,電源を別筐
メインアンプは直結し,メインア
ンプのボリュームで音量調整しま
した.
プの歪率が,この結果よりも1/4
ほど小さいので,この特性は前段
電圧増幅部で決まっていると考え
イコライザーアンプで真っ先に
体にすれば難しいことはありませ
ん.得られる音を考えればぜひ
ともお勧めしたいイコライザーア
ンプです.
気にかかるハム雑音は,通常の試
試聴は,LPプレーヤー:ガラ
られます.特性の改善のため,前
段にはNFBを掛けているとはい
聴レベルではまったく聴こえず,
まずはホッとしたところでレコー
ード501,カートリッジ:デノン
DLlO3R,トーンアーム:SME
え,わずか4dBなので,歪率特
性は無帰還のような形となるよう
です.
ドを掛けてみました.ポリェーム
3009,アンプ:PX25シングル
(MJ誌2008年12月号発表),ス
定格出力とした0.6Vrmsでの歪
率は0.15%と十分小さくなってい
位置は9時あたりなので,イコラ
イザーとしての利得は十分なよう
です.さらにボリュームを上げて
みましたがハムは気になりません.
ます.出力電圧0.4VmS以下で歪
イコライザーが完成したら,改
58
ピーカー:アルテック604_8Hの
ウーファー+アルテック802D/
811Bホーン+ゴトーSG17Sで行
いました.
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