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眠れないシニアのために

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眠れないシニアのために
【順天堂人のためのメンタルヘルス講座 第20回】
獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授 井原 裕
眠れないシニアのために
今回は、シニア世代の不眠を取り上げてみます。ベテランの皆様におかれては、
年を重ねるごとに、夜の眠りが浅くなってきてはいないでしょうか。夜中によく目が
覚める、トイレに起きた後、眠れない、朝起きてもすっきりしないなどです。
そのような皆さんに申します。まず、第一に、睡眠の目標を少し下方修正してください。
年齢とともに、身体が長い睡眠を要求しなくなります。睡眠時間は一般に年を重ねる
ごとに短くなります。50を過ぎれば7時間を切ることもめずらしくありません。シニア
世代は、8時間もの睡眠は必要ありません。目標を下げて、
「臥 床7時間、そのうち
6から6.5時間程度眠れればよし」としましょう。
第二に、起床・就床時刻を固定しましょう。そして、起床予定時刻の7時間前までは
就床しないようにするのです。6時に起床するご予定ならば、午後11時までは寝ないで
起きていることです。逆に、夕食をすませて、午後9時ごろに布団に入ってしまえば、
午前4 時ごろ目が覚めてしまいます。そして6 時までは「眠れない」という思いを
抱いたまま、布団の上で苦しい思いをすることになります。
「6時起床」と決めたなら、
その7時間前までは寝ないで起きていましょう。
第三に、睡眠薬です。睡眠薬は不眠で苦しいときに頓服で使うにとどめましょう。
毎晩服用するにはおよびません。今日汎用されているベンゾジアゼピン系と呼ばれる
睡眠薬は、決められた通りに服用しても、毎日飲めば依存(「常用量依存」)になります。
それに、これらの薬剤は、
「徐派睡眠」と呼ばれる深い睡眠を減らす作用があり、
浅い眠りばかりがふえてしまいます。睡眠薬を2剤、3剤と重ねていけば、睡眠の質は
劣化します。
第四に、薬よりもお勧めしたいのはからだを動かすことです。運動は徐派睡眠を
ふやします。睡眠は肉体疲労を原動力として深まります。逆にいえば、疲労がないと、
からだは深い眠りを求めません。一般に、からだは、
「7時間睡眠、17時間覚醒」の
リズムを繰り返します。このうちの7時間の睡眠の質を高めようと思えば、17時間の
活動の質を高めることが一番です。そのためには、17 時間中に頭 脳だけでなく、
身体も使うようにしてみましょう。
からだを動かすといっても、激しい運動は必要ありません。歩くことで十分です。
そのための工夫をひとつ。ひと駅分歩いてみてはどうでしょう。順天堂医院にお勤めの
人なら、御茶ノ水まで行かないで、秋葉原、水道橋、神保町、湯島などで降りて、あえて
歩くのです。本郷周辺は坂道ばかりです。ただひと駅分歩くだけでも、汗ばむほどの
運動量です。太ももにすこし疲労を感じてみてください。そして、その疲労をもって
就床してみましょう。からだの重さが、ここちよい眠気をもたらすことでしょう。
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