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基本的人権その3 (精神的自由) 日本国憲法(斎藤司) 第6回 復習テスト ①憲法は重要であるから、憲法に明示されている権利以外はいか なる場合も認めるべきではないというのが現状である→× ②最高裁は、憲法13条について、単なる形式的な規定であるとし ている→× ③現在、プライバシー権は憲法上の権利とされている→○ ④「幸福追求権」から導かれる代表的な権利としては、(自己決定 権)と(プライバシー権)がある。 ⑤最高裁は、自己決定権について(他者の権利や公共の利益)に 反しない限りで尊重されると考えているようである。 ⑥プライバシー権の現代的意義として、(自己情報コントロール)の 存在が指摘できる。 ⑦最高裁は、ノンフィクション「逆転」事件判決において、(私人によ る前科の公表)は許されないとした。 ⑧憲法が保障する「平等」について、最高裁は、(合理的な差別)で あれば許されるとしている。 ⑨最高裁は、民法733条について(合理的な差別)であるから合 2 憲であるとしている。 Ⅰ.「自由権」を再確認しよう 1.「自由権」の概念 古典的な「自由権」の概念 国民の自由を国家権力による干渉や恣意的な 取扱いから防ぐ→「国家権力の活動の場が 少なければ少ないほどよい」→「国家からの自由」 精神的自由 経済的自由 人身の自由 2.自由権の類型化 ①精神的自由 思想・良心の自由(憲法19条)、 信教の自由(憲法20条)、表現の自由(憲法21条)、 集会・結社の自由(憲法21条)、学問の自由 (憲法32条)、通信の秘密(憲法21条1項) ②経済的自由 職業選択の自由(憲法22条1項)、外国の移住・ 居住移転の自由(憲法22条)、国籍離脱の自由 (憲法22条2項)、財産権(憲法29条) ③人身の自由 奴隷的拘束からの自由(憲法18条)、適正手続(憲法 31条)、刑事事件における被疑者・被告人の権利 (憲法32~39条)、拷問・残虐刑禁止(憲法36条) Ⅱ.精神的自由の重要性 「個人の尊重」から「精神的自由」を考えてみると・・・ →個々人が自ら自由に自分の生き方を選択・決定 し、実行していくことを尊重 →個々人が自分の内心でそのことを考えるだけでな く、「他者」との自由なコミュニケーションが必要 →文化や精神的営みの自由=「人間らしい生活」 日本国憲法の規定 ①内心の問題(思想・良心の自由) ②他者とのコミュニケーション(表現の自由など) ③特定の精神活動(信教の自由) Ⅲ.思想・良心の自由 日本国憲法19条「思想及び良心の自由は、 これを侵してはならない」 「思想・良心」=「内心の自由」 ○「広く世界観とか主義を持つこと」に限定するのか、 ○こうした「是非分別の判断に関する事項を外部」 に表現させるか否かの自由も含むのかには争い ←謝罪広告命令事件(最高裁昭和31年7月4日判決) 「侵してはならない」→内心に反する行為の 強制禁止、内心を理由とする不利益処分禁止、 内心告白の強制の禁止、内心の操作の禁止 Ⅳ.信教の自由 1.日本における歴史と日本国憲法 ①徳川時代におけるキリスト教禁止政策 ②戦前における「神勅天皇制」=神道の優遇 ③ポツダム宣言の宗教の自由要請と「人間宣言」 日本国憲法20条 ①「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。 (1項)」「何人も宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に 参加することを強制されない。(2項)」 →国家の干渉なく宗教を選択・実践する権利 ②「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる 宗教的活動もしてはならない。(3項)」 →国家と宗教の結びつき禁止(政教分離) 2.信教の自由 ①信仰の自由→法律等が特定の宗教に有利・不利 ・「エホバの証人」信者の学生が教義に反するとの理由で 剣道受講を拒否し、単位不足・留年・退学となった事例 →「剣道実技への参加を拒否する理由は、被上告人の 信仰の核心部分と密接に関連する真しなもの」 (最高裁平成8年3月8日判決) ②宗教行為の自由→宗教行為の限界はどこか ・精神上治療のために、「線香護摩」を行ったところ、 行き過ぎて死亡させてしまった事例 →「信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。」 今回の行為は他人に危害を及ぼす違法な有形力公使で、 信教の自由の保障の限界を逸脱したものである。 (最高裁昭和38年5月15日判決) 3.政教分離 ①完全な「政教分離」は可能?→例:東大寺修理 や宗教系私学への援助→限界の線引きの必要性 ○目的効果基準テスト(判例・通説) ①明白に世俗目的を反映 ②主要な効果として宗教を促進・圧迫しない ③国と宗教の関わり合いが過度にならないこと ②愛媛県が靖国神社へ玉串料などを公金から 支出した事例(愛媛・玉串料事件) このような支出は、その目的が宗教的意義を持つ ことを免れず、その効果が特定の宗教に対する 援助・促進になると認めるべきであり、愛媛県と靖国 神社等との関わり合いも相当とされる限度を超える ものであり、違憲(最高裁平成9年4月2日判決) Ⅴ.表現の自由 1.表現の自由の内容 日本国憲法の規定→21条 1項「集会及び結社及び言論、出版その他一切 の表現の自由は、これを保障する」 2項「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、 これを侵してはならない。」 ①人は他者とのコミュニケーションを通じて、 人格を形成していく ②社会的な共同決定への参加(民主主義) →自分の意見を伝え、さまざまな情報を受け取る 権利=表現の自由と知る権利 2.現代社会における表現の自由 ①近代→表現の自由=表現を受け取る自由 国家の介入 国民 コミュニケー ション 国民 ②現代→情報を発信する自由と知る権利 国家の介入 マス・メディア 報道・取材の自由 国民 (知る権利) 3.表現の自由の限界 ①表現の自由と名誉毀損→刑法230条との関係 →事実であっても、他人の「名誉権」侵害は犯罪 →公共の利害に関する事実で、公益を図る目的の場 合、真実であることの証明があるときは処罰しない ○最高裁の考え方 ①汚職事件の記事→真実の証明がない場合でも、確実 → な資料・根拠に照らし相当の理由があるときは不処罰 (昭和44年6月25日判決:「夕刊和歌山時事」事件) ②創価学会会長の女性関係の記事→池田氏は社会一般 に対しても少なからぬ影響を及ぼしていたから、その記 事は「公共の利害に関する事実」である (昭和56年4月16日判決:「月刊ペン」事件) 名誉権と表現の自由がほぼ均衡した状況へ ②表現の自由とポルノ規制→刑法175条と関係 ○ポルノ規制の理由は?→性道徳の維持、未成年者 の人格発達権、「みたくないときに見せられない権利」 最高裁の考え方 ①法は性道徳に関してその最小限度を維持することを 任務(昭和32年3月13日判決:チャタレイ事件) ②主に読者の好色的興味をそそるものか等の事情を 総合し、「その時代の健全な社会通念」を基準に判断 (昭和55年11月28日判決:「四畳半襖の下張」事件) 多くの批判 ①「性道徳」「社会通念」って?→誰が判断できる? ②権利を制限する理由が抽象的→誰の権利を侵害 しているのか不明→「公的利益」だけでは… 復習 ①思想・良心の自由の内容については、全く争いはない→○× ②最高裁は、「信教の自由」は無制限に認めている→○× ③最高裁は、愛媛県による玉串料の奉呈を合憲とした→○× ④最高裁は、表現の自由より名誉権をかなり優先している→○× ⑤最高裁は、性的表現について、厳格な判断を行っている→○× ⑥自由権には( )、( )、( )がある。 ⑦憲法20条は、( )、( )を保障している。 ⑧「政教分離」の限界の判断について、判例・通説は、 ( )を採用している。 ⑨現代における表現の自由の中心は、( )権利である。 ⑩表現の自由とポルノ規制の関係に関する最高裁の判断のなが れを簡単に述べ、その問題点を指摘しなさい。