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5 1 米国農務省関連予算は大きく分けて毎年の予算化

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5 1 米国農務省関連予算は大きく分けて毎年の予算化
24
2
2.1
2.2
2.3
CBO
2.4
10
112
2.1
5
1
米国農務省関連予算は大きく分けて毎年の予算化プロセスを経ずに決定する「義務的経費(Mandatory)」
と、毎年の予算化プロセスを経て決定する「裁量的経費(Discretionary)」の二つに分けられる。義務的
経費は、通常 5 年毎に策定される農業法又はその他連邦法によって予算の枠組みが設定されており、裁量
的経費は、毎年策定される農業・地方開発・食品医薬品管理・関連機関歳出予算法(ただし林業局予算に
ついては内務予算法)によって規定される。一部の裁量的経費については、農業法によって枠組みが規定
され、歳出予算法によって最終的な予算が規定される。
議会において、義務的経費を規定する農業法の策定については、上院農業栄養林業委員会と下院農業委
員 会が担当 する。 裁量的経 費を規定 する歳 出予算法 の策定に ついて は、上下 両院の各 予算委 員会
(Committee on appropriations)の傘下に位置づけられる農業・地方開発・食品医薬品管理・関連機関
小委員会が担当している。
近年の農務省関連の支出では、義務的経費が約 8 割、裁量的経費が約 2 割を占める。義務的経費・裁量
的経費を含めた予算全体のうち、約 74%を貧困層向けの栄養支援プログラムが占める。その他の支出項目
のうち、主な義務的経費のプログラムは、作物保険プログラム、農産物プログラム、保全プログラムで、
規模の小さい支出項目にはエネルギープログラム、貿易促進費等が含まれる。裁量的経費のプログラムに
は、地域開発、農業研究・教育、農業融資、海外食料支援、マーケティング、農産物貿易信用供与等の別
会計事業からの繰り入れ等が含まれている。
$320億
$280億
$260億
$260億
$890億
裁量的
$1030億
2009
2010
$1200億
$1170億
2011
2012
図 2 米国農務省予算(各年支出ベース)
出所)(USDA 2011)
義務的
24
2012 年米国農務省予算の 74%を占めたのが栄養支援プログラムである。栄養支援プログラムのうち、
61%を栄養補充支援プログラム(Supplemental Nutrition Assistance Program – SNAP)が占める。旧フ
ードスタンプと呼ばれる制度で、低所得層に対して食品購入の支援のための補助金を支給する制度である。
経済危機の影響等による貧困人口の増加により、2009 年以降受給者数が増加し、支出が急増しており、次
期農業法において何らかの対処が必要とされている。
農家・作物
関連
13%
保全・森林
7%
その他
6%
栄養支援
74%
図 3 米国農務省予算内訳(2012 年)
出所)(USDA 2011)
表 1 栄養支援プログラム関連予算
2010 年確定
裁量的経費
義務的経費
2011 年推計
2012 年予算
7,802
7,799
7,810
計
86,371
97,132
104,167
SNAP
58,278
68,893
73,184
小児栄養プログラム
16,891
17,473
18,959
SNAP 追加(米国再生法)
10,781
10,744
11,910
421
22
114
その他
出所)(USDA 2011)
百万ドル
90,000
80,000
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
2000
2001
2002
2003
2004
図 4
2005
2006
2007
SNAP 支出の推移
出所)FNS ウェブサイト http://www.fns.usda.gov/pd/SNAPsummary.htm
注)農業法の SNAP 及び米国再生法の SNAP 追加措置を含む
2008
2009
2010
2011
2012
24
農業者の支援政策に係る政府支出については、昨年度の事業で報告されている通り、価格所得支持政策
に替わって、作物保険の比重が年々大きくなってきたという特徴がある。価格所得支持政策においては、
作物価格が下落した場合に農家の所得を下支えする価格支持融資や不足払い(価格変動対応型支払い)の
ほか、作物価格とは無関係に一定額が支払われる直接固定支払いがある。作物価格の上昇によって不足払
い(価格変動対応型支払い)や価格支持融資の支出額が大幅に減少している。一方、作物保険においては、
農家に対して保険料の一部補助があるほか、サービスを提供する保険会社に対して事務経費の補助がある。
近年は、従来の収量保険に比べて広い範囲のリスクをカバーする収入保険の普及が進んだことに加えて、
作物価格上昇につれて保険料が全般に高くなり、それに伴い保険料に対する補助額が増加している。2011
年以降、保険料に対する政府補助のみをとっても、価格所得支持政策の支出額を上回っている。また、作
物保険はリスク管理局(RMA)の監督下で様々な新しい保険商品設計・導入を比較的容易に行うことがで
きるため、園芸作物や畜産物、水産養殖等の幅広い分野へも拡大をみせている。
なお、次期農業法の論議の中では農家への保険料補助については現行通りとなる見込みであるが、会社
への事務経費補助は既に 2009 年以降引き下げられており、財政状況によっては次期農業法において削減
ターゲットになる可能性がある。
表 2 価格所得支持に係る政府支出額の推移
会計
年度
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
価格支
持
43.1
12.5
58.1
59.6
41.3
4.5
27.4
3.2
-
-
固定支
払い
41.5
59.8
52.4
49.6
39.6
48.2
52.2
49.0
47.5
39.6
価格変動対
応型支払い
17.4
8.1
27.2
43.6
31.6
3.6
7.3
9.0
1.2
0.1
融資不
足払い
6.9
4.6
38.6
46.3
1.7
0.1
1.5
1.9
0.3
0.0
酪農所
得補償
18.0
2.2
0.1
3.5
1.6
-
7.6
1.8
0.0
1.8
保全留
保計画
18.0
17.9
17.9
18.3
18.7
19.3
18.6
18.4
18.9
20.7
ACRE
-
-
-
-
-
-
-
0.0
4.5
0.2
輸出
計画
3.7
0.7
-14.4
-6.3
1.6
1.1
3.4
4.1
0.0
0.0
総計
174.3
105.8
201.9
207.1
110.4
90.8
114.4
100.2
72.4
62.4
出所)2011、2012 年:FY 2013 USDA Budget Summary and Annual Peformance Plan,
http://www.obpa.usda.gov/budsum/FY13budsum.pdf
2010 年まで:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング 2012 「平成 23 年度海外農業情報調査分析事業 海外農業情報調査分析(米
州)1 章 次期米国大統領選・連邦赤字削減を踏まえた米国次期農業法の論議の現状と方向性について」6 ページ図表 1-7
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/h23/pdf/chapter1.pdf
表 3 作物保険に係る政府負担額の推移
単位)百万ドル
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
保険運営状況
保険料
作物被害
収入①
補填額②
29.5
37.7
31.3
28.3
30.9
28.0
36.2
35.9
45.6
34.9
67.4
50.2
83.1
84.2
52.8
27.6
110.4
134.3
130.6
184.3
出所)RMA ウェブサイト
超過支払
①-②
8.2
-3.1
-2.9
-0.3
-10.7
-17.2
1.1
-25.2
23.9
53.7
保険料補助
(①のうち数)
18.7
23.9
20.7
25.2
35.4
53.0
52.0
46.8
73.8
71.5
政府負担額
事務
経費補助
7.4
9.0
7.8
9.6
13.4
20.2
16.0
13.7
13.8
14.1
http://www.rma.usda.gov/aboutrma/budget/fycost2003-12.pdf
その他
コスト
1.5
1.4
1.4
1.3
1.2
1.4
1.3
1.4
1.4
1.4
合計
35.9
31.3
27.0
35.7
39.4
57.4
70.4
36.7
113.0
140.7
24
2.2
なお、2012 年農業法は上下両院案で共に 12 章で構成され、2008 年農業法の 15 章からは農産物先物(第
13 章)、畜産(第 9 章)、貿易と税(第 15 章)の 3 章が削減されている。下表に、それぞれの章に含まれ
る主要なプログラムを示す。
表 4
2012 年農業法案の章構成
章
主要なプログラム
I 章 農産物
農業リスク補償(ARC)又は
注
直接固定支払い、価格変動対応型支払い
収入損失補償(RLC)
・価格損失補償(PLC) ( CCP )、 平 均 作 物 収 入 選 択 支 払 い
マーケティングローン
(ACRE)等が廃止
災害対応
酪農プログラム
砂糖プログラム
II 章 保全
保全休耕プログラム(CRP)
環境改善奨励プログラム(EQIP)
保全スチュワードシッププログラム(CSP)
その他 20 程度の保全関連プログラム
III 章 貿易
海外食料援助
輸出信用保証
輸出促進活動補助(MAP 及び FMDP)
IV 章 栄養
栄養補充支援プログラム(SNAP)
コミュニティー食料プロジェクト
緊急食料支援プログラム(TEFAP)
作物補助食料プログラム(CSFP)
小児栄養プログラム
V 章 信用
農務省管轄ローン
VI 章 地方開発
農務省管轄地方開発プログラム
VII 章 研究・普及
農務省管轄研究・普及プログラム
VIII 章 森林・林業
森林・林業関連分野
IX 章 エネルギー
エネルギー関連措置
X 章 園芸・有機
園芸関連措置
XI 章 作物保険
作物保険
2012 年農業法では、綿花を ARC、PLC・
綿花プログラム(STAX)
RLC の対象から外し STAX を創設
大災害作物保険(CAT)
XII 章 その他
保険適用外作物支援プログラム(NAP)
畜産・養殖
出所)(Chite 2012)を参照し、プロマー作成
24
2.3
CBO
次期農業法の義務的経費の予算枠は、連邦議会予算事務局(CBO)による将来 10 年間の政府予算のベ
ースライン推計を基礎としている。CBO による予算・経済予測は毎年 1 月に作成され、8 月に中間更新が
あるほか、予算予測については大統領の予算案分析のために毎年 3 月にも更新される。
ベースライン推計は、現在の義務的経費を伴う法律が全て継続した場合に、政府予算が今後どのように
推移するかを予測したものである。義務的経費を伴う新しい法律案が提出された場合、CBO はその法案を
導入した場合の予算額を推計し、その結果とベースライン推計との差が法案導入による影響(予算削減・
増加の度合い)として示される。今回の次期農業法の最大の命題は政府支出削減であり、ベースライン推
計からどれくらい削減するかということが重要な議論の焦点となっている。
2012
3
第 112 議会における上下両院案の支出削減度合の判断のために用いられているのは、2012 年 3 月 13 日
に CBO が発表した「予算推計更新:2012~2022 年7」である。
上下両院次期農業法案の削減度合についても、CBO により、両案それぞれの支出見込みがベースライン
推計からどれくらいの削減となっているかで計算される。CBO との折衝と法案における文言調整を通じて、
次期農業法案の支出削減度合を調整し、目標とする支出削減枠と一致させていく作業は、上下両院農業委
員会の持つ重要な役割の一つとなっている。
CBO の 2012 年 3 月ベースラインは、農業法関連分野で、今後 10 年間で計 9,928 億ドルの財政支出と
推計している。農業法の章別では、第 4 章の栄養支援プログラムが 7,721 億ドル(77.8%)を占めた。次
いで、
第 11 章の作物保険プログラムが 909 億ドル(9.2%)、第 2 章の保全プログラムが 641 億ドル(6.5%)、
第 1 章の農産物プログラムが 629 億ドル(6.3%)、その他が 29 億ドル(0.3%)となった。8
なお、米国での関係者らへのヒアリングによれば、第 113 議会における審議が 2013 年 4 月以降にずれ
込んだ場合に、予算の推計について新しく 2013 年 3 月ベースラインを参照しなければならなくなること
から、2012 年 3 月ベースライン予測を用いた場合よりも、さらなる支出削減が必要になる点が懸念され
ている。
7
CBO ウェブサイト「予算推計更新:2012~2022 年」http://www.cbo.gov/publication/43119
農業法関連予算では、
他に
「USDA の農家プログラムに係る義務的予算に係る CBO2012 年 3 月ベースライン」
(CBO 2012c)、
「栄養補充支援プログラム(SNAP)」(CBO 2012e) 等が一般公開されている。
8
(Chite 2012)
24
2.4
米国では、累積した財政赤字削減のため、政府全体で 10 年間計 2.5 兆ドルの支出削減をするとの財政管
理法(Budget Control Act of 2011)が 2011 年 8 月に成立した。全体でまず 1 兆ドルの削減に加え、更に
1.5 兆ドルの削減案を超党派合同委員会でとりまとめる計画であったが、合意に至らず、代わりに 2013 年
1 月より 1.2 兆ドルの一律削減とする方向となっている。
なお、超党派合同委員会の予算削減案策定に向けて、2011 年 11 月中旬に上下両院農業委員会指導部案
として農業部門全体で 230 億ドルとの削減案をとりまとめたが、超党派合同委員会で全体予算削減案策定
に失敗したことから、上下両院農業委員会指導部案は超党派合同委員会に送られることなく終わった。
112
第 112 議会における次期農業法の審議にあたって、上院では、超党派合同委員会へ提出が予定されてい
た上下両院農業委員会指導部案とほぼ同じ 230 億ドルの削減を目標とし、うち第 1 章 農産物プログラム
の削減で 130 億ドル、第 2 章 保全プログラム削減で 60 億ドル、第 4 章 栄養支援プログラムの削減で 40
億ドルをねん出するとの方向で臨んだ。最終的に、上院議会を通過した上院案(S3240)の CBO による
支出削減額推計では、第 1 章 農産物プログラムで 194 億ドル、第 2 章 保全プログラムで 64 億ドル、第
4 章 栄養支援プログラムで 40 億ドルを削減し、第 11 章 作物保険で 50 億ドル増、その他差し引きして、
計 231 億ドルの支出削減となった(下表・次頁図参照)。
一方、下院では、下院予算決議に従って上院よりも多い 332 億ドルの削減を目標とし、栄養支援プログ
ラムを大幅に削減する方針で臨んだ。農業委員会を可決した下院案(H.R.6083)の CBO による支出削減
額推計では、第 1 章 農産物プログラムで 236 億ドル、第 2 章 保全プログラムで 61 億ドル、第 4 章 栄養
支援プログラムで 160 億ドルを削減し、第 11 章 作物保険プログラムで 95 億ドル増、その他差し引きし
て、計 351 億ドルの削減となった(下表・次頁図参照)。
予算の大枠については、農産物プログラムと作物保険プログラムを相殺した額の上下両院の差は小さく、
全体の差は栄養支援プログラムの削減幅に起因している。栄養支援プログラムの上下両院案の差額は 120
億ドルとなっている。ただし、栄養支援プログラムの削減割合は、ベースラインの 10 年間計 7721 億ドル
の支出総額に比べると、削減幅の大きい下院案でもわずかに 2%に留まっている。
表 5 連邦議会予算事務局(CBO)による上下両院案支出削減額と 2008 年農業法の支出必要額の比較(2013~22 年)
単位:億ドル
2008 年農業法
第 4 章 栄養支援プログラム
第 11 章 作物保険プログラム
第 2 章 保全プログラム
第 1 章 農産物プログラム
その他の章
合計額
純差額
7,721.09
908.67
640.67
629.44
28.55
9,928.42
2008 年農業法
支出割合
77.8%
9.2%
6.5%
6.3%
0.3%
100%
上院案
(S3240)
-40.00
50.36
-63.74
-194.28
16.23
下院案
(HR6083)
-160.75
95.23
-61.48
-235.84
11.41
-231.43
-351.43
出所) 上院案(CBO 2012d), 下院案(CBO 2012b)、CBO ベースライン金額及びシェア(Chite 2012)
200
24
その他, +11
100
その他, +16
作物保険プログラム, +95
作物保険プログラム, +50
0
農産物プログラム, -194
-100
農産物プログラム, -236
億ドル
-200
保全プログラム, -64
保全プログラム, -61
栄養支援プログラム, -40
-300
栄養支援プログラム, -161
-400
-500
-231億ドル
-351億ドル
上院案
下院案
図 5 連邦議会予算事務局(CBO)による上下両院案における支出削減額推計の比較(2013~22 年)
出所) 上院案(CBO 2012d), 下院案(CBO 2012b)
4
栄養支援プログラムで削減対象となったのは低所得者層に向けた栄養補充支援プログラム(SNAP)で、
上院案では 10 年間で約 40 億ドル、下院案では約 161 億ドルの削減を見込んでいる。SNAP では低所得家
庭光熱費控除(Standard Utility Allowance-SUA)受給状況の資料が支給のベースとして用いられてい
るが、上下両院案において、控除支払額が 10 ドル以上との要件を設けるなどの若干の調整が含まれてい
る9。下院案ではさらに受給資格を若干厳しくすることによって、さらに削減幅を広げている。米国でのヒ
アリングによれば、下院共和党からは上院案に対し、次期農業法の対象期間である当初 5 年間の削減幅が
計 40 億ドルのうちのわずか 14 億ドルに過ぎず、実質的な削減額は非常に少ないとの批判がある。
表 6 第 4 章栄養支援プログラムの上下両院案の予算削減幅(2013~22 年ベースラインとの差)
単位)億ドル
2013-
2013-
2017
2022
-5.3
-14.0
-40.0
-5.5
-5.6
-17.4
-44.9
0.3
0.3
0.3
3.4
4.9
-17.5
-17.4
-17.3
-17.2
-73.8
-160.8
-12.1
-12.0
-11.8
-11.7
-11.6
-56.0
-115.1
-5.4
-5.4
-5.5
-5.5
-5.5
-5.6
-17.4
-44.9
0.0
-0.1
-0.1
-0.1
-0.1
-0.1
-0.4
-0.8
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
上院案 計
0.7
-0.4
-4.6
-4.8
-4.9
-5.1
-5.2
-5.2
-5.2
SNAP SUA 反映調製
0.0
-1.3
-5.3
-5.4
-5.4
-5.4
-5.5
-5.5
その他
0.7
0.9
0.7
0.6
0.6
0.3
0.3
下院案 計
-6.3
-13.9
-17.9
-18.0
-17.8
-17.6
SNAP 受給資格調整
-6.2
-12.4
-12.6
-12.6
-12.4
SNAP SUA 反映調製
0.0
-1.3
-5.3
-5.4
-0.2
-0.2
0.0
0.0
その他
出所) 上院案(CBO 2012d), 下院案(CBO 2012b)
9
(Aussenberg 2013)
24
1
11
農産物及び作物保険プログラムの改革により、連邦議会予算事務局(CBO)の推計によれば、2013 年
以降の 10 年間で、農産物プログラムでは上院案で 194 億ドル、下院案で 236 億ドルの支出削減となり、
一方で作物保険プログラムではそれぞれ 50 億ドル、95 億ドルの追加となる。農産物プログラムと作物保
険プログラムを相殺すると、いずれもおよそ 140 億ドル程度の支出削減となる。
次期農業法案と 2008 年農業法との最大の違いは、第 1 章の農産物プログラムにおいて従来の「直接固
定支払い」、
「価格変動対応型支払い(CCP)」、
「平均作物収入選択支払い(ACRE)」を撤廃して、新たに
上院案では「農業リスク補償(ARC)
」を、下院案では「収入損失補償(RLC)」と「価格損失補償(PLC)」
を導入することである。また、ここでの削減額の一部を用いて、第 11 章の作物保険に「補足的補償オプ
ション(SCO)」を導入したことなどによって、作物保険プログラムの予算は増加している。
綿花関連のプログラムは農業リスク補償(ARC)や収入損失補償(RLC)の対象からは除かれて、作物
保険プログラムにおいて綿花積上所得保障計画(STAX)として一本化された。その他に、農作物プログ
ラムでは、酪農プログラムは新しい制度の導入が行われるものの予算額はほぼ変化が無く、災害対応関連
施策が多少支出を増加させている。
その他に第 11 章の作物保険プログラムで財政支出を削減するものとして、上下両院案いずれも、大災
害作物保険(CAT)の保険料支払いに関する変更、環境保護団体からの要望の強かった天然草地の新たな
開墾に対する作物保険補助支給の削減が挙げられた。一方、財政支出を増加するものとしては、落花生関
連、灌漑・非灌漑区別や平均単収算出方法の選択肢増加等の施策がある。また、下院案ではさらに耕種作
物以外の特殊作物の生産者負担軽減や、家畜保険導入パイロットプログラム、保険対象外作物支援プログ
ラム等が盛り込まれた。
表 7 第 1 章農作物プログラムと第 11 章作物保険プログラムの上下両院案の予算削減幅(2013~22 年ベースラインとの差)
単位:億ドル
農産物プログラムと作物プログラム 合計
第 1 章 農産物プログラム 小計
直接固定支払い削減
価格変動対応型支払い(CCP)削減
平均作物収入選択支払い(ACRE)削減
農業リスク補償(ARC)導入
収入損失補償(RLC)と価格損失補償(PLC)導入
災害対応追加
酪農プログラム変更
その他
第 11 章 作物保険プログラム 小計
補足的補償オプション(SCO)の導入
農産物プログラムへの参加の効果
大災害作物保険(CAT)の変更
天然草地開墾への支給削減
灌漑・非灌漑区別の導入
平均単収調整(TA-APH)の導入
新規農家への支給
綿花に対する積上所得保障計画(STAX)の導入
落花生収入作物保険の導入
特種作物生産者負担軽減
家畜パイロットプログラムの実施
保険外作物支援プログラムの実施
その他
出所) 上院案(CBO 2012d), 下院案(CBO 2012b)
上院案
(S3240)
-143.9
-194.3
-446.2
-10.1
-46.1
285.4
22.1
-0.6
1.3
50.4
30.0
-24.7
-4.4
-1.7
5.1
8.6
1.9
32.2
2.4
0.9
下院案
(HR6083)
-140.6
-235.8
-446.2
-10.1
-46.2
245.4
20.2
-0.4
1.3
95.2
40.0
-6.4
-4.4
-1.0
5.1
11.3
1.9
38.5
2.4
2.1
2.4
1.0
2.5
24
2
2008 年農業法の保全プログラムの章には、20 件を超すプログラムが含まれているが、次期農業法案で
は、上下両院案ともに、保全休耕プログラム(CRP)や保全スチュワードシッププログラム(CSP)、環
境改善奨励プログラム(EQIP)等の主な保全プログラムはほぼ残しながら、予算削減のために、規模を
やや縮小する形となっている。削減額が比較的大きいのが保全休耕プログラム(CRP)と保全スチュワー
ドシッププログラム(CSP)で、いずれも対象面積が削減されたためである。
表 8 第2章
保全プログラムにおける上下両院案の予算削減幅(2013~22 年ベースラインとの差)
単位:百万ドル
第2章
上院案
下院案
(S3240)
(HR6083)
保全プログラム
-6,374
-6,148
保全休耕プログラム(CRP)
-3,795
-3,580
保全スチュワードシッププログラム(CSP)
-1,987
-3,095
-964
-
農業保全促進(ACE)
809
880
地域保全パートナーシップ(RCP)
-86
-86
その他保全プログラム
290
375
-641
-641
環境改善奨励プログラム(EQIP)
野生動物生息区域インセンティブ廃止
出所) 上院案(CBO 2012d), 下院案(CBO 2012b)
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