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「知っておきましょう!インフルエンザワクチンのこと」
日時:平成20年9月23日(火) 担当:安全管理対策室 感染管理認定看護師 小澤 第6回 感染予防教室 「知っておきましょう!インフルエンザワクチンのこと」 1.まずはじめに、インフルエンザについてふれておきます。 インフルエンザとは、インフルエンザウイルスが、鼻・のど・気管支 などに感染して起こる病気です。 コラム 「インフルエンザの語源」 「インフルエンザ」という言葉は、イタリア語の「インフルエンセ(星の影響)」に起源します。 中世のイタリアでは、この病気(インフルエンザ)の原因がわからず、占星術師などにより 星の運動が影響しているものと考えました。「星の影響」という意味から 「インフルエンザ」 の語が生まれました。 1) 症状 38度以上の発熱をもって突然発症し、初期には頭痛、関節痛、筋肉痛などの強い 全身症状。その後、咳、咽頭痛、痰などの症状。 2) 合併症 高齢者→細菌の二次感染(細菌やウイルスなどの感染で抵抗力が落ちている状態 で、新たな病原体が侵入することにより別の病気がおこること)による肺炎、気管支 炎など。重症化して死亡するケースもあります。 ☠欧米では「老人の最後の命のともしびを消す疾患」と言われています。 乳幼児→中耳炎、熱性けいれん、急性脳症 3) 診断方法 インフルエンザ迅速キットにより「A型・B型」の診断が可能。 ※注意点:発熱に気づいてから6時間から18時間以上経過している頃でないと 「陽性」にならない場合が多い。 4) 治療薬 年齢 0歳∼1歳未満 1歳∼4歳未満 5歳∼10歳未満 10歳∼20歳未満 20歳以上 ○ 使用可 タミフル × ○ ○ × ○ リレンザ゙ × × ◎ ○ ○ シンメトレル × △ △ △ △ △ 使用可だがA型にしか効かない × 勧められない <小泉重田小児科HPより> ・ ・ ・ タミフル:A型、B型インフルエンザに有効。ただし、2006年∼2007年に かけて「タミフル服用後の異常行動」が社会問題となり、現在10代ではタミフル の使用が原則禁止となっている。 リレンザ:吸入タイプ。A型、B型インフルエンザに有効。 シンメトレル:A型インフルエンザのみ有効。妊婦あるいは妊娠の可能性がある 場合は禁忌。 5) 予防方法:流行前にワクチン接種を受ける、外出から戻ったあとのうがい・手洗い、 流行時期は人混みへの外出を避ける、外出時はマスクの着用、日頃から十分な 睡眠・栄養による管理、室内の定期的な換気と適度な湿度(50%程度)を保つなど。 ちょっと裏話 インフルエンザを予防する身近な対策としてよく言われるのが「うがい・手洗い・ マスク」です。 ところがインフルエンザに「うがい」はほとんど効果がないと言う人もいます。 「欧米でインフルエンザの予防にうがいを推奨している国はない」そうです。 というのは、のどの粘膜にくっついたインフルエンザウイルスは10分ほどで粘膜 細胞の中に侵入し、外出から戻ってからうがいをしても遅すぎるという理由です。 ただし、普段からのどの粘膜を整えておくことは、ウイルスがくっつきにくくなるとい う効果があります。 2.さあ、本題のインフルエンザワクチンのことです。 1)ワクチンの基礎知識 ・ワクチンとは、ヒトなどの動物に接種して感染症を予防するための医薬品。 ➢発育鶏卵にワクチン株(WHOが中心となり、世界中から集めたウイルス株)を接 種し、増殖させ、様々な工程を経て製品となる。 ・「生ワクチン」と「不活化ワクチン」に大きく分かれる。 ① 生ワクチン( はしか、おたふくかぜ、水ぼうそう、BCGなど) ・生きているウイルスや細菌の毒性を弱めて作ったワクチン。ウイルスや細菌が 体内で増殖するので、接種後しばらくしてから発熱や発疹など、その病気の症状 が軽く出ることがある。獲得免疫力が強く、免疫持続期間も長い。 ・免疫不全者や妊婦には禁忌 ・次に違う種類のワクチンを接種する場合は27日以上感覚をあける ②不活化ワクチン(インフルエンザ、A型・B型肝炎、肺炎球菌、破傷風など) ・ホルマリンや紫外線などで処理し、感染や毒力をなくした病原体ないしその 成分で作ったワクチン。体内で増殖することがないので、1回接種しただけでは 必要な免疫を獲得、維持できないため、数回の接種が必要。 ・免疫不全者にも接種可。妊婦については主治医と相談。 ・次に違う種類のワクチンを接種する場合は6日以上感覚をあける 2)インフルエンザワクチンについて ・インフルエンザウイルスは常に変化を繰り返すため、ワクチンも毎年新しい種 類が製造される。 流行前にワクチンを接種するためには、流行の半年以上前にワクチンを製造 しなければならず、その年のウイルスを予測し、ワクチンを製造する。 日本では「国立感染症研究所」が、前年冬に国内で流行した1万以上のウイル スを分析し、海外のデータも合わせ、A型インフルエンザ2種類+B型インフル エンザ1種類を材料として選ぶ。 ちなみに今年は、<A型株:A/ブリスベン/59/2007(H1N1、H3N2), A/ウルグアイ/716/2007 H3N2) + B型株:B/フロリダ/4/2006> ① インフルエンザワクチンの効果 ・発症防止効果は完全ではないが(実際に流行したウイルスと一致した場合、健 康な成人で発病防止効果は70∼80%、高齢者は50%以下、1歳∼6歳の子供 は20∼30%)、罹った場合の重症化を防止する。特に高齢者は、死亡の危険を 80%減らすとされている。 ・インフルエンザワクチンは、「かぜ」に対する効果はありません。 ② 副作用 ・接種した部位の、発赤、腫脹、痛みなど。通常は2∼3日で消失する。 ・まれに発熱、寒気、倦怠感、頭痛など。 ・重篤な卵アレルギーのある人に、じんましん、口の中のしびれ、ショックなどでる 可能性がある。軽い卵アレルギーはほとんど問題ない。 ③ 接種が推奨される人・適当ではない人 ・推奨される人:65歳以上の人、60∼64歳で基礎疾患(呼吸器疾患や心疾患、 糖尿病、腎不全など)がある人、医療従事者、インフルエンザの発症と重症化を防 ぎたい人すべて。 ・適当ではない人:明らかに発熱している人、重篤は急性疾患にかかっている人、 クチンによるショックをおこしたことがある人、6ヶ月未満の乳児、てんかんの既往 がある人など。 ④ 接種の時期と回数 ・時期:ワクチンの予防効果が現れるまでに約2週間かかります。また、効果の持 続は約5ヶ月です。流行時期が1月∼3月と考えると、年内には接種をすませまし ょう。 <例> 11月中旬→→11月下旬∼12月初旬→→1月 ∼ 3月→→4月いっぱい 接種 抗体獲得 インフルエンザ流行! 効果消失 でも大丈夫!! ・回数: 65歳以上の人→1回で効果あり。 13歳∼64歳→近年インフルエンザにかかったり、昨年ワクチン接種をして いる人は1回でOK。2回接種した方が効果があるという報告もあるが、最終 判断は本人と医師で相談する。 13歳未満→2回 ※2回接種の場合は1∼4週間をおく ご質問をどうぞ。 <引用・参考文献> ・ 国立感染症研究所 感染症情報センターHP ・ 武田薬品工業HP ・ 中外製薬HP ・ http://www.jst.go.jp/kisoken/seika/zensen/01suzuki/photo.jpg ・ 2008 年 9 月 6 日 読売新聞夕刊