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年報2007

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年報2007
先進機能物質研究センター
年報 2007
はじめに
先進機能物質研究センター
センター長
高畠 敏郎
先進機能物質研究センターは,平成13-17年度に実施された文部科学省中核的研究拠点(COE)
形成プログラム「複合自由度をもつ電子系の創製と新機能開拓」で基礎を築いた拠点を更に発展させる
ために,広島大学の学内共同教育研究施設として平成18年4月1日に設立されました。平成19年度の
活動と研究成果を年報としてまとめましたので,忌憚の無いご意見やご助言を頂ければ幸いです。
本センターの目的は,革新的機能を有する物質を設計・創製し,物質科学分野の新しい研究領域を
創出するとともに,若手研究者を育成し,国際的な研究教育の拠点となることです。本センターの組織は,
「機能物質創製」,「機能開拓」,及び「マテリアルデザイン」をそれぞれ担当する三つの部門からなり,そ
れらが互いに協力することによって従来の部局の壁を越えたプロジェクト研究を推進しています。研究経
費としては,特別教育研究経費(事業名:先進機能物質の推進)が措置されています。当初の四つのプロ
ジェクトは,「ナノ空間を利用する新機能物質開発」,「高容量ナノ複合水素貯蔵物質の創製」,「複合的
秩序を有する機能物質の創製と秩序機構の解明」,「分子集積デバイス材料開発」でした。本年度は新た
に「微小スケール量子機能物質のエレクトロニクス」プロジェクトを立ち上げました。それらの成果ハイライト
を本年報にまとめています。
本年度の研究活動のうちで特記すべきは,国際会議と全国規模の研究会の開催です。小口多美夫教
授は「第10回第一原理電子状態計算に関するアジアワークショップ」を,小島由継教授は「水素貯蔵物
質に関するノルウエー・日本ワークショップ」を主催しました。また,井上克也教授らは「複合強秩序相の
物理と化学」研究会を,宇田川教授らは「ラットリング振動が誘起する新物性」研究会を開催しました。さら
に,通算300回を重ねた「物性セミナー」は理工系大学院教育に大変貢献しました。
これらの会議や研究会では,大学院生や若手研究者が最新の研究成果を発表・討論しました。その
結果,ユニークなアイデアが創出されるとともに,革新的機能を有する物質の設計・創製を目指している
研究者ネットワークの形成が進みました。学内においても,自然科学研究支援開発センターからの支援を
受けて,また放射光科学研究センターとの強い連携によって物質科学分野の研究ネットワークが形成さ
れています。
今後,分野の近い全国の研究拠点との連携を進めるだけでなく,国際的な研究者ネットワークの構築
にも取り組みますので,関係するコミュニティーの皆様には,これまで同様の温かいご支援をお願いする
次第です。
-1-
目
次
1.挨拶等
○センター長挨拶
1
○目次
2
○組織図
3
○センター規則
4
2.重点プロジェクト研究成果報告
7
3.部門別成果報告
19
3.1 マテリアルデザイン部門
20
3.2 機能開拓部門
25
3.3 機能物質創製部門
33
4.センター活動内容
45
4.1 主催・共催会議報告
46
4.2 博士論文題目
60
-2-
先進機能物質研究センター 組織図
センター長 高畠敏郎
運営委員会
高畠,山中,宇田川,小口,山本
副センター長 山中昭司
井上,小島,世良,浴野,播磨,市川
マテリアルデザイン
部門長 小口多美夫
機能物質創製
部門長 山中昭司
機能開拓
部門長 宇田川眞行
マテリアルデザイン
機能物質創製部門
機能開拓部門
部門(5名)
(13名)
(7名)
重点プロジェクト
• 複合的秩序を有する機能物質の創製と秩序機構の解明
リーダー:小口多美夫
• ナノ空間を利用する新機能物質開発
リーダー:山中昭司
• 分子集積デバイス材料開発
リーダー:播磨裕
• 高容量ナノ複合水素貯蔵物質の創製
リーダー:小島由継
• 微小スケール量子機能物質のエレクトロニクス
リーダー:八木隆多
-3-
広島大学先進機能物質研究センター規則(平成18年3月31日規則第84号)
(趣 旨)
第1条
この規則は,広島大学学則(平成16年4月1日規則第1号)第18条の規定に基づき,広島大学
先進機能物質研究センター(以下「センター」という。)の管理運営に関し必要な事項を定めるも
のとする。
(目 的)
第2条 センターは,広島大学(以下「本学」という。)の学内共同教育研究施設として,革新的機
能を有する物質を設計・創製し,物質科学分野の新しい研究領域を創出するとともに,若手研
究者を育成し,国際的な研究教育の拠点となることを目的とする。
(組 織)
第3条
センターに,次の職員を置く。
(1)
センター長
(2)
副センター長
(3)
専任教員
(4)
その他必要な職員
2 センターに,前項に掲げるもののほか,研究員又は客員研究員を置くことができる。
第4条
センター長は,本学専任の教授をもって充てる。
2 センター長は,学術室センター等推進部門(以下「推進部門」という。)の意見を聴いて,学長
が任命する。
3 センター長は,センターの業務を掌理する。
4 センター長の任期は,2年とし,再任を妨げない。
5 センター長が辞任を申し出たとき,又は欠員となったときの後任者の任期は,その任命の日か
ら起算して1年を経過した日の属する年度の末日までとする。
第5条
副センター長は,本学専任の教授又は助教授をもって充てる。
2 副センター長は,推進部門の意見を聴いて,学長が任命する。
3 副センター長は,センター長の職務を補佐する。
4 副センター長の任期は,2年とする。ただし,4月2日以降に任命された場合の任期は,その任
命の日から起算して1年を経過した日の属する年度の末日までとする。
5 副センター長の再任は,妨げない。
第6条
センターの専任教員は,推進部門の意見を聴いて,学長が任命する。
第7条
研究員は,本学の教員をもって充てる。
2 研究員は,推進部門の意見を聴いて,学長が任命する。
3 研究員の任期は,2年とし,再任を妨げない。
-4-
4 客員研究員は,学外の研究者をもって充てる。
5 客員研究員は,推進部門の意見を聴いて,学長が委嘱する。
6 客員研究員の任期は,1年とし,再任を妨げない。
(運営委員会)
第8条
センターに,広島大学先進機能物質研究センター運営委員会(以下「運営委員会」という。)
を置く。
第9条
運営委員会は,次に掲げる委員で組織する。
(1)
センター長及び副センター長
(2)
大学院総合科学研究科,大学院理学研究科,大学院先端物質科学研究科及び大学院工学研
究科が,それぞれその教授又は助教授のうちから推薦する者1人
(3)
センターの専任教員(教授又は助教授に限る。)
(4)
運営委員会が必要と認めた者若干人
2 委員は,学長が任命する。
3
第1項第2号及び第4号の委員の任期は,2年とし,4月1日に任命することを常例とする。ただ
し,4月2日以降に任命された場合の任期は,その任命の日から起算して1年を経過した日の属す
る年度の末日までとする。
4 第1項第2号及び第4号の委員の再任は,妨げない。
第10条
運営委員会は,センターに関し次に掲げる事項を審議する。
(1)
管理運営の基本方針(教員人事及び予算の原案作成等を含む。)に関すること。
(2)
その他センターの運営に関すること。
第11条
運営委員会に委員長を置き,センター長をもって充てる。
2 委員長は,運営委員会を招集し,その議長となる。
3 委員長に事故があるときは,委員長があらかじめ指名した委員が,その職務を代行する。
第12条
運営委員会は,必要と認めたときは,委員以外の者の出席を求め,その意見を聴くこと
ができる。
(運営支援)
第13条
センターの運営支援は,学術部において行う。
(雑則)
第14条
附
この規則に定めるもののほか,この規則の実施に関し必要な事項は,センターが定める。
則
この規則は,平成18年4月1日から施行する。
-5-
-6-
2. 重点プロジェクト成果報告
-7-
複合的秩序を有する機能物質の創成と秩序機構の
解明
研究メンバー
研究推進リーダー 小口多美夫(先端物質科学研究科・教授)
共同研究者 鈴木孝至(先端物質科学研究科・教授),井上克也(理学研究科・教
授),城健男(先端物質科学研究科・教授),速水真也(理学研究科・准教授),獅子堂達也(先端物質科
学研究科・助教),秋田素子(理学研究科・助教),中村文彦(先端物質科学研究科・助教)
研究概要
新たなマルチフェロイック物質の第一原理的探索,新規マルチフェロイック物質の創
製と純良単結晶の育成,キラル分子磁性体の創製とその磁気構造の解明に関する研
究を行った。
主要な研究成果(19 年度)
(1)歪みを加えたガーネット系(Gd3Fe5O12, Ho3Fe5O12)で分極が観測された実験結果を
解釈するために,Gd や Ho イオン位置を同程度のイオン半径を有する Y イオンで置き
換えた系 Y3Fe5O12 の格子安定性を凍結フォノン近似計算により調べた。その結果,ペ
ロフスカイト型酸化物でのいわゆる許容因子による格子不安定化機構が起こらないこと
が明らかとなった。
(2)新規マルチフェロイックス系(CnH2n+1NH3)2MeCl4 (Me = Fe)の n
図 1:EAFeC(写真中上側の試
= 1(MAFeC)および n = 2 (EAFeC)において,試料の可視光による
料2つ),MAFeC(下側2つ)
色の温度依存性を観察したところ,僅か温度では 300K に渡るエネ
における色の温度依存性。上
ルギー変化に対して,色波長の温度換算で 3000K 以上もの巨大変
から 83K, 273K, 383K であり,
化を見出した(図1)。鉄を銅に置換した EACuC に関する誘電率
緑から赤へと変化している。
の温度依存性を測定したところ,26K と 37K で誘電秩序があることを
初めて見出した。
(3)クロム3価、マンガン2価を含むキラル分子磁性体の単結晶((R)
および(S)-GN)の単結晶について中性子線回折測定をスペイン、
Zaragoza 大学、フランス ILL チームと共同研究を行い,それぞれの磁
気構造を明らかにした(図2)。その結果、右手系、左手系それぞれカ
イラルな磁気構造をもっており、もっとも大きなカイラリティーであ
る螺旋ピッチが結晶格子と等しいカイラルコメンシュレート構造で
あることが明らかになった。
図2:Cr(III)と Mn(II)を含む三重ら
せん構造をもつキラル磁性体結晶。
活動目標(20 年度)
(1)エチルアンモニウム基を有する遷移金属塩化物の構造安定性と分極の発現に関して第一原理計算
からアプローチする。また,マルチフェロイック物質における複数秩序間の交差相関効果を調べるため,
ノンコリニア磁性を扱える第一原理計算手法を開発し,逆ジャロシンスキー・守谷相互作用項の定量的評
価を行う。(2)(CnH2n+1NH3)2MeCl4 の各種単結晶育成を継続し,様々な測定手段をもつグループとの
共同研究を行う。強弾性の関与(即ち外部応力による制御)も見据えた,磁性・誘電性の交差相関効果の
-8-
探索を引き続き行う。特に,銅および鉄化合物については集中的にいまだ未決定の構造相全ての結晶
構造を決定する。(3)新規キラル磁性体の構築研究を進めるとともに,中性子散乱,非線形磁化率測定
等の磁気構造解明,磁気ダイナミックスに関する研究を進める。
研究論文
[1] I. Ishii , et al., “Elastic Properties of Eu8Ga16Ge30”, J. Mag. Mag. Mater. 310, 957-959 (2007).
[2] J. Kishine, et al., “Static and dynamical anomalies caused by chiral soliton lattice in molecular-based
chiral magnets”, J. Mag. Mag. Mat., 310, 1386-1388 (2007)
[3] Y. Kousaka, et al., “Chiral Magnetic Ordering and Commensurate-to-incommensurate Transition in
CuB2O4”, J. Mag. Mag. Mat. 310, 463-467 (2007).
[4] Y. Numata, et al., “Field-induced Ferrimagnetic State in a New Molecule-based Magnet Consisting of
CoII ion and a Chiral Triplet Bis(nitroxide) Radical”, J. Am. Chem. Soc. 129, 9902-9909 (2007).
[5] Z. Wang, et al., “Occurrence of a Rare 49-66 Structural Topology, Chirality, and Weak Ferromagnetism
in the [NH4][MII(HCOO)3] (M = Mn, Co, Ni) Frameworks”, Inorg. Chem. 46, 437-445 (2007).
[6] Y. Numata, K. Inoue, “Studies for Direction Dependences of Magnetizations and Magnetic Structure
of Chiral Molecule-Based Metamagnet, [Mn(hfac)2]・BNO*”, Chem. Lett. 36, 534-535 (2007).
[7] H. Higashikawa, et al., “Chiral effect on magnetic properties for chiral and racemic WV-CuII prussian
blue analoges”, Chem. Lett. 36, 1022-1023 (2007).
[8] B. Zhang, et al., “Guest-induced chirality in the ferrimagnetic nanoporous diamond framework
Mn3(HCOO)6”, Adv. Func. Mater. 17, 577-584 (2007).
口頭発表を行った学会
(1) 日本物理学会,(2) 日本金属学会,(3) 日本化学会,(4) 分子構造討論会,(5) 錯体討論会,(6)
ナノテクバイオインフォ化学シンポジウム,(7)日本セラミックス協会,(8)日本応用磁気学会,(i) MRS, (ii)
E-MRS, (iii) 2nd Russia-Japan Workshop on Molecular Magnetism, (iv) 12th International Symposium on
Novel Aromatic Compounds (ISNA-12), (v) APS, (vi) The 10th Asian Workshop on First-Principles
Electronic Structure Calculations
主要な外部資金
(1) 科学研究費補助金(特定領域研究)「GW 近似に基づくスピン・電荷・軌道偏極量子シミュレータの開
発・公開」(計画研究代表),(2) 科学研究費補助金(学術創成研究)「物質新機能開発戦略としての精密
固体化学」(研究分担者),(3) 科学研究費補助金(基盤研究(B))「カルコゲナイドスピネルの圧力誘起
絶縁体超伝導体転移機構の解明と新機能創成」(研究代表),(4) 科学研究費補助金(特定領域研究)
「充填スクッテルダイト化合物の超音波物性と電子格子相互作用の研究」(分担研究代表),(5) 科学研
究費補助金(基盤研究(A))「結晶と磁性の Chirality」(研究代表), (6) 科学研究費補助金(萌芽研究)
「不斉磁気光学効果による絶対不斉合成の探索」(研究代表)
国際共同研究の実績
(i) Prof. Dr. Stefan Blügel, Jülich Research Center, Germany,(ii) Prof. Dr. Ole K. Andersen, Max-Planck
Institute, Germany,(iii) Prof. Arthur J. Freeman, Northwestern University, USA,(iv) Dr. Marcin Matusiak,
Polish Academy of Sciences, Poland,(v) Prof. Vladimir Sechovsky, Charles University, The Czech
Republic,(vi) Dr. Garry J. McIntyre, ILL, France,(vii) Dr. Clara Gonzaez, Zaragoza Univ., Spain,(viii)
Prof. Javier Campo, Zaragoza Univ., Spain,(ix) Prof. Fernando Palacio, Zaragoza Univ., Spain,他 12 名
-9-
ナノ空間を利用する新機能物質開発
研究メンバー
研究推進リーダー
山中
昭司(工学研究科・教授)
共同研究者
高畠敏郎 (先端物質科学研究科・教授),梅尾和則 (自然開発センター・准教授),鈴木孝至
(先端物質科学研究科・教授),宇田川眞行 (総合科学研究科・教授),永井克彦 (総合科学研究
科・教授),荻田典男 (総合科学研究科・准教授),藤 秀樹 (先端物質科学研究科・准教授;神戸
大学大学院理学研究科へ転出),犬丸 啓(工学研究科,准教授),浴野稔一 (総合科学研究科・
教授),島田賢也 (放射光科学研究センター・准教授),佐藤 仁 (放射光科学研究センター・准
教授)
研究概要
物質には様々な“すきま”が含まれる。本プロジェクトでは,特に,ナノメータースケール
のカゴ状の“すきま”を有する3次元ネットワーク物質や,層間に“すきま”を有する層状結
晶を中心に,構造の特徴を利用して新規機能物質を開発する。研究センターを融合の場として,
化学と物性物理研究者が連携を密にして,新研究領域の樹立を目指す。
主要な研究成果(19 年度)
(1) 山中:面心立方格子を有するフラーレン C60 の3次元ポリマーを新たに合成した。X線回折
測定および MD 計算から,その構造は,空間群 R 3 対象を有することを明らかにした。このポリ
マーはマイクロビッカース硬度 4,500kg/mm2 で立方晶 BN に匹敵する硬い半導体であることを報
告した。
(2) 高畠:Ba8Ga16Sn30 のα相とβ相の単結晶育成に始めて成功した。β相の 14 面体中で Ba は中心
から 0.43 Å もずれた四つの位置をラットリングするので,格子熱伝導率はシリカガラスよりも小さくなるこ
とを見出した。
(3) 宇田川:Ⅰ型クラスレート化合物 Sr8Ga16Si30-xGex の単結晶における off-center が Ge 置換
による異方的膨張であり,off-center と格子熱伝導率の低下との相関を明らかにした。
(4) 浴野:新層状超伝導体α-TiNCl の低温 STM 像の観測に成功し、表面原子配列の特徴を明
らかにした。超伝導ギャップの測定から、この物質が強結合超伝導体であることを見出した。
活動目標(20 年度)
共有結合系の高温超伝導体の開発を目指し,引き続き,C60 三次元ポリマーのすき間へアルカ
リ金属を導入し,電子ドープを試みる。層状窒化物結晶の層間の“すきま”を利用する超伝導
体開発を物性研究者と共同で進める。価数の不安定な希土類イオンを内包させたカゴ状物質を
合成し,熱電能の増強を図る。カゴ状物質のラットリングの対称性やエネルギーを決めるため
に,ラマン散乱や超音波実験を共同で進める。
- 10 -
研究論文
[1] S. Yamanaka, T. Otsuki, T. Ide, H. Fukuoka, R. Kumashiro, T. Rachi, K. Tanigaki, F. Guo
and K.
Kobayashi, “Missing superconductivity in BaAlSi with the AlB2 type structure”, Physica C 451, 19-23
(2007).
[2] S. Yamanaka, N. S. Kini, A. Kubo, S. Jida, and H. Kuramoto, “Topochemical 3D Polymerization of C60
under High Pressure at Elevated Temperatures”, J. Am. Chem. Soc., in press (2008).
[3] K. Suekuni, M. A. Avila, K. Umeo, T. Takabatake; “Cage-size control of guest vibration and
thermal conductivity in Sr8Ga16Si30-xGex” , Phys. Rev. B 75, 195210/1-6 (2007).
[4] R. A. Ribeiro, Y. Hadano, S. Narazu, K. Suekuni, M. A. Avila, T. Takabatake;
“Low-temperature thermoelectric properties of Yb14MSb11 (M=Mn, Zn)”, J. Phys.: Cond.
Matter 19, 376211/1-6 ( 2007).
[5] Y.Takasu, T.Hasegawa, N.Ogita, M.Udagawa, K.Suekuni, M.A.Avila, and T.Takabatake:
“Raman Scattering of Type-I Clathrate Compounds: A8Ga16Ge30 (A = Eu, Sr, Ba) and
Sr8Ga16Si30−xGex”, Journal of Physics: Conference Series, 92 , 012151/1-4 (2007).
[6] H. Tou, M. Sera, Y. Maniwa, S. Yamanaka, “NMR studies of layered nitride superconductors”, Intern. J.
Modern Phys. B 21, 3340-3342 (2007).
[7] K. Inumaru, K. Koyama, Y. Miyaki, K. Tanaka, S. Yamanaka, “Ferromagnetic CrxTi1-xN solid solution
nitride thin films grown by pulsed laser deposition and their magnetoresistance”, Appl. Phys. Lett. 91,
12501/1-3 (2007).
[8] T. Ekino, T. Takasaki, R.A. Ribeiro, T. Muranaka, J. Akimitsu; “Scanning tunneling microscopy
and spectroscopy of MgB2”, J. Phys.: Conf. Ser. 61, 278-282 (2007).
口頭発表を行った学会
国内:(1)日本物理学会年次大会,(2)日本化学会年会,(3)セラミックス協会年会,(4)日本熱電学
会学術講演会
国際会議等:(i) 14th International Symposium on Intercalation Compounds (1件), (ii) 第26回熱電国際
会議(3件), (iii) Intern. Conf. on “New Quantum Phenomena in Skutterudite and Related Systems”( 2
件), (iv) 12th International Conference on Phonon in Condensed Matter, 20th International Symposium on
Superconductivity (ISS2007), (v) SFC2007 (フランス化学会150周年記念大会)
主要な外部資金
科学研究費基盤研究(S) 1 件, 科学研究費基盤研究(A) 1 件,科学研究費特定領域研究 3 件,
科学研究費基盤研究(B)3件, 科学研究費基盤研究(C)
国際共同研究の実績
•
Prof. J. S. Tse, University of Saskatchewan, Canada
•
Prof. A. San-Miguel, University Lyon 1 and CNRS, France
•
Prof. J. Wosnitza, HLD, Forschungszentrum Rossendorf, Germany
•
Dr. J. –M. Mignot, LLB, CEA-CNRS, CEA/Saclay, France
•
Dr. D.T. Adroja, ISIS, Rutherford Appelton Lab., UK
•
Prof. A.M. Gabovich, National Academy of Sciences, Ukraine
•
Dr. V. Drozd, Florida International University, USA
- 11 -
分子集積デバイス材料開発
研究メンバー
研究推進リーダー
播磨
裕(工学研究科・教授)
共同研究者
山本陽介(理学研究科・教授),大下浄治(工学研究科・教授),塩野毅(工学研究科・教授),
佐野庸治(工学研究科・教授),瀧宮和男(工学研究科・教授),河内敦(理学研究科・准教授),
今栄一郎(工学研究科・准教授),吉田拡人(工学研究科・准教授),松川史郎(先進物質機能
研究センター・研究員)
,大山陽介(工学研究科・助教),宮碕栄吾(工学研究科・助教)
研究概要
新機能,超高機能,超高効率な分子集積デバイスの実現を目指して,画期的な有機材料(低分
子系,高分子系,高分子系ナノコンポジット)の開発を行う。本プロジェクトが対象とする分子
集積デバイスは,(1) 有機 EL 素子,(2) 有機-無機複合系光電変換素子(色素増感太陽電池),(3) 有
機 FET 素子,(4) 有機 p-n 接合型光電変換素子などである。
主要な研究成果(19 年度)
・有機分子薄膜内の電荷担体の分光学的検出を可能とする新規な変調分光法の測定システムを設
計・構築し,TPD や NPD 薄膜中のカチオン種の吸収スペクトルを可視から近赤外領域にわたっ
て観測するのに成功した。
・ケイ素架橋したオリゴチオフェンの縮環分子および星型分子を新規に合成し,それらが高効率
な発光・半導体材料として有機 EL 素子や有機 TFT に応用できることを明らかにした。
・架橋型フルオレニルアミドジメチルチタン触媒における配位子の置換基効果について検討し,
フルオレニル基の 2,3,6,7-位への嵩高いアルキル基の導入によりオレフィン重合活性が著しく
向上することを見いだした。
・構造規定剤に TMAOH を用いて Y ゼオライトから RUT ゼオライトが合成可能なことを見いだ
し,既存のゼオライトから得られる構造ユニットをナノパ ーツとして用いたゼオライト転換法
の有用性を明らかにした。
・実用化に資する有機電界効果トランジスタ用半導体材料を目指し,1)次世代標準的有機半導体
となり得る高性能・高安定材料の開発,2)塗布可能な可溶性有機半導体の開発,を行った。
活動目標(20 年度)
19 年度に得られた本プロジェクトの研究成果をメンバー全員が共有することにより,グループ
内での共同研究の活性化を推進する。また,新しい材料の開発と並行して,既存材料の見直しを
実施し,分子材料に内在する新規機能の探索と革新的なデバイス開発を目指す。
- 12 -
研究論文
[1] Y. Harima et al.; “Improvement of photovoltages in organic dye-sensitized solar cells by
Li-intercalation in particulate TiO2 electrodes”, Appl. Phys. Lett., 90, 103517-1-3(2007)
[2] Y. Yamamoto et al.; “Synthesis and characterization of hexacoordinate cobalt(III) complexes bearing
three C,O-bidentate ligands ", Organometallics, 25, 2390-2393 (2006)
[3] T. Shiono et al., “Homo- and copolymerization of norbornene derivatives with ethene by ansafluorenylamidodimethyltitanium activated with methylaluminoxane”, J. Polym. Sci. PART A, Polym. Chem., 45,
4581-4587 (2007)
[4] T. Sano et al., “Role of ammonium fluoride in crystallization process of beta zeolite”, J.Crystal Growth,
307, 177-184 (2007)
[5] J. Ohshita et al., “Synthesis of bis(diarylphosphino)dithienosilole derivatives as novel photo- and electroluminescence materials”, Organometallics, 26, 6591-6595 (2007)
[6] K. Takimiya et al.; “Highly soluble [1]benzothieno[3,2-b]benzothiophene (BTBT) derivatives for
high-performance, solution-processed organic field-effect transistors”, J. Am. Chem. Soc., 129,
15732–15733 (2007)
口頭発表を行った学会
(1)日本化学会,(2)日本化学会西日本大会,(3)電気化学会,(4)高分子討論会,(5)触媒学会,(6)ゼ
オライト学会,(7) 石油・石油化学討論会,(8)有機電子移動化学討論会,(9)構造有機討論会,(10)
有機典型元素化学討論会,(11)応用物理学会,(12)日本物理学会,(13)アジアケイ素シンポジウム,
(14)次世代型ポリオレフィン研究会
主要な外部資金
科研費基盤研究(A)(機能性ナノ共役分子の創製・物性・応用)
科研費基盤研究(B)(革新的分子集積デバイスの開発を目指したパイ共役分子材料の組織化と機能探索)
科研費基盤研究(B)(オリゴチエノキノイド分子を用いる純有機単一成分伝導体の開発)
科研費特定領域研究「分子性導体」
(ナノ分子導体の合成化学的アプローチ)
科研費特定領域研究「超階層制御」
(新規 σ-π 共役型ポリマーの合成と発光・キャリア輸送材料
への応用)
NEDO 産業技術研究助成(卑金属型 CO 変成ならびに改質触媒の開発)
経済産業省ナノテクノロジープログラム「精密高分子技術プロジェクト」
(ポリオレフィン一次構
造制御技術の研究開発)
JST シーズ発掘試験研究(感光性を有する有機半導体と薄膜トランジスタ)
国際共同研究の実績
Prof. Y.W. Kwak,Kyungpook National University, Korea, Prof. L. Dunsch, IFW, Germany, Prof. J. Casado,
Malaga University, Spain, Prof. J.A.Moulijin, Delft University, Holland
- 13 -
高容量ナノ複合水素貯蔵物質の創製
研究メンバー
研究推進リーダー
小島 由継(IAMR・教授)
共同研究者
藤井 博信(IAMR・客員教授),秋葉 悦男(産業技術総合研究所・客員教授),市川 貴之(IAMR・
准教授),小口 多美夫(先端物質科学研究科・教授),宇田川 眞行(総合科学研究科・教授),
星野 公三(総合科学研究科・教授),荻田 典男(総合科学研究科・准教授),浴野 稔一(総合科
学研究科・教授),杉本 暁(総合科学研究科・助教),小島 健一(総合科学研究科・教授)
西山 文隆(工学研究科・助教)
研究概要
メカノケミカル処理法(機械的粉砕法)により軽元素(Li, B, C, N, Mg)を含む種々のナノ複合
評価と構造解析を行った.
主要な研究成果(19 年度)
(1)機械的粉砕法によって活性化させた水素化リ
チウムとアンモニアは室温で反応して,水素を放
出 す る こ と を 見 出 し た (LiH-NH3: 水 素 放 出 量
5mass%以上)。
(2)第一原理計算により各種カチオンにおけるア
ミド/イミドの電子状態を調査し,アミドでは結
晶に含まれる NH2 の分子軌道とカチオンの軌道
有効水素放出量(質量%)
物質(Metal-C-H、Li-N-H、Metal-B-H)や金属水素化物-アンモニア系を創製し,それらの特性
6
150℃
5
4
3
開発材料
従来材料
2
1
0
0
5
図1
10
Li-Mg-N-H
の水素放出特性
放出時間(h)
が混成しており,カチオンの種類によって混成の強さが異なることを予測した。
(3)マグネシウムアミド(Mg(NH2)2)と水素化リチウム(LiH)の 3:8 混合物に対して最適なナ
ノ構造化する技術を開発することにより,NEDO の目標性能である 150℃の温度で材料重量当り
5.5%の水素を放出できることを明らかにした(Li-Mg-N-H,図1)。
(4)イオンビーム分析,放射光を用いた X 線光電子分光分析,走査型トンネル顕微鏡観察用共通
試料搬送ツールを設計,開発した。また,極限環境下(液体窒素温度~300℃,真空~30MPa),
種々のガス雰囲気下で試料を粉砕させながら反応させるメカノケミカル反応技術を確立した。軽
元素水素化物の単結晶作製技術を確立し,これを用いて,リチウムアミドの単結晶(~2mm)を作
製した。
活動目標(20 年度)
極限反応技術(メカノケミカル処理法等)によりナノ複合水素貯蔵物質や金属水素化物-アンモ
ニア系を創製する.また,軽元素水素化物の単結晶を作製し,観察・分析 [イオンビーム分析,
X線吸収分光分析(XAS),X線光電子分光分析(XPS),走査型トンネル顕微鏡観察等]技術や第一原
理計算により,種々の水素吸蔵状態での物質状態変化を解析する.
- 14 -
研究論文
[9] S. Isobe, T. Ichikawa, Y. Kojima and H. Fujii, "Characterization of Titanium Based Catalysts in the
Li-N-H Hydrogen Storage System by X-ray Absorption Spectroscopy ",J. Alloys. Compd., 446-447,
360-362 (2007).
[10]S. Hino, T. Ichikawa, K. Tokoyoda, Y. Kojima and H. Fujii, "Quantity of NH3 Desorption from the
Li-N-H Hydrogen Storage System Examined by Fourier Transform Infrared Sctroscopy", J. Alloys.
Compd., 446-447, 342-344 (2007).
[11]T. Nakagawa, T. Ichikawa, N. Hanada, Y. Kojima and H. Fujii, "Thermal analysis on the Li-Mg-B-H
systems", J. Alloys. Compd., 446-447, 306-309 (2007).
[12]H. Miyaoka, T. Ichikawa, Y. Kojima and H. Fujii, "Hydrogen Storage Properties in a Composite of
Lithium Hydride and Boron Nitride with Hydrocarbon Groups",
J. Alloys. Compd., 446-447, 39-43 (2007).
[13]T. Nakagawa, T. Ichikawa, Y. Kojima and H. Fujii, "Gas emission properties of the MgHx-Zn(BH4)2
systems",Mat. Transact. 48, 556-559 (2007).
[14]A. Harada, F. Shimojo and K. Hoshino., “Hydrogen desorption from nanostructured graphite: ab
initio molecular-dynamics studies”, J. Phys.: Condens. Matter 19 365209 (7pp) (2007).
[15]T. Tsumuraya, T. Shishidou and T. Oguchi, “First-principles study on lithium and magnesium nitrides
for hydrogen storage”, J. Alloys Compd. 446-447, 323-327 (2007).
口頭発表を行った学会
(1)物理学会年次大会,(2)日本金属学会春期大会,(3) 炭素材料学会年会,(4) 水素若手研究会,
(5)金属学会中四国支部大会,(6)日本金属学会秋期大会,(7)MH 利用開発研究会,(8)材料における
水素有効利用研究会,(9)HESS 水素エネルギー協会大会(10)FC EXPO2008
(i) The First Oxford-Kobe Energy Seminars -Hydrogen Storage,The International Grand Challenge-(Kobe
Institute,Kobe,Japan) April 22-24, (ii) Study of Matter at Extreme Conditions (SMEC2007) , (iii) 2nd
World Congress of Young Science on Hydrogen Energy Systems, (iv) Gordon Research Conference
-Metal-Hydrogen Systems, (v) International Symposium on Innovative Materials for Processes in Energy
Systems (IMPRES) , (vi) Workshop on Fuel Cell Performance Improvement & Hydrogen Storage Materials,
(vii) The Sixth Pasicfic Rim International Coference on Advanced Materials and Processing (PRICM-6),
(viii) CAS-AIST-NEDO Workshop 2007 on Fuel Cell & Hydrogen Materials, (ix) International Symposium
on Materials Issues in A Hydrogen Economy, (x) MRS 2007 Fall Meeting
(xi)APS March Meeting
主要な外部資金
受託研究(NEDO 水素安全利用等基盤技術開発-水素に関する共通基盤技術開発,国際共同研究-
アンモニアを活用した高容量水素貯蔵複合化物質の創製技術の構築)
,委託研究(NEDO 水素貯蔵
材料先端基盤研究事業-非金属系水素貯蔵材料の基礎研究-)
国際共同研究の実績
•
Prof. Bjorn Hauback, Institute for Energy Technology, Norway
•
Prof. Peter Edward, University of Oxford, UK
•
Dr. R. Kowalczyk, The University of Manchester, UK
- 15 -
微小スケール量子機能物質のエレクトロニクス
研究メンバー
研究推進リーダー
八木隆多(先端物質科学研究科・准教授)
共同研究者
高根美武(先端物質科学研究科・教授),浴野捻一(総合科学研究科・教授),若林克則(先端物質
科学研究科・助教),杉本暁(総合科学研究科・助教)
研究概要
(1)グラファイト超薄膜やグラフェン(単層グラファイト)の電気伝導についての実験的および理論的研究.
量子ビット素子やスピントロニクス素子などの機能素子の開発。
(2)相関電子系および軽元素系物質の走査トンネル顕微鏡分光による研究。
主要な研究成果(19 年度)
(1) 磁束量子ビットの開発を昨年度に引き続きおこない,量子ビット
20μm
ステップの明瞭な観測をおこなった。超薄膜グラファイトの伝導の
実験研究を開始した。数十原子層程度の薄さのグラファイト薄膜
の磁気抵抗の測定に成功した。
(2) 乱れを含むジグザグ端ナノグラフェン・リボンにおいて,完全透過
伝導チャネルが安定化されることを示した。また,その結果として
生じる特異な電気伝導の特徴を明らかにした。さらに,このような
伝導現象を記述する一般的なスケーリング理論を定式化した。
(3) 層状窒化物超伝導体α型 KxTiNCl(Tc=17K)の STM 測定を行
い,温度 5K において劈開表面の原子配列を観測することに初
図1.数十原子層の厚みの超薄膜
グラファイトの FET 素子の光学
めて成功した。また超伝導ギャップの測定により強結合超伝導
であることを明らかにした。高温超伝導体の擬ギャップ状態のンネルスペクトルを解析した。
活動目標(20 年度)
•
超薄膜グラファイトの研究をすすめ,現在よりも膜厚の薄いグラファイト単層グラファイト素子を作
製し,単層グラファイトの特異な電子状態を反映する現象を観測する。
•
ジグザグ端ナノグラフェン・リボンにおける特異な量子伝導現象を,大規模数値シミュレーションお
よびスケーリング理論を用いて詳細に検討する.また,超伝導体中における非平衡準粒子の緩和
現象について検討を進める。
•
KxTiNClの詳細なSTM測定により表面原子の種類を特定し電子状態を解明する。KxTiNClと面内
原子配列の異なるβ-HfNCl(Tc=25K)についてのSTM測定を行い,結晶構造の違いがどのように
臨界温度の差に反映されているのかを詳細に調べる。
- 16 -
研究論文
[1] Y. Takane, "Influence of Charge and Energy Imbalances on the Tunneling Current through a
Superconductor- Normal Metal Junction, J. Phys. Soc. Jpn. 76, 043701 (2007).
[2] Wakabayashi et al.," Averaged Conductance of the Three-Edge Chalker-Coddington Model ", Phys.
Rev. Lett. 99, 036601 (2007).
[3] T. Ekino et al.,"Analysis of the pseudogap-related structure in tunneling spectra of superconducting
Bi2Sr2CaCu2O8+ revealed by the break-junction technique", hys. Rev. B 76 (2007) 180505(R)(1-4).
口頭発表を行った学会
(1)日本物理学会,(2)物性研短期研究会,
(i)14th International Conference on Intercalation Compounds
(ii)International Workshop 'Advances in Physics and Applications of Low-Dimensional Systems'
(iii) 20th International Symposium on Superconductivity (ISS2007)
主要な外部資金
(1) 科学技術振興機構(JST), 戦略的創造研究推進事業研究さきがけタイプ,
(2) 科学研究費補助金(基盤研究C)「軽元素を含む新異方的超伝導体の複合トンネル分光システムに
よる電子状態の解明」(研究代表)
国際共同研究の実績
(i) Prof. Manfred Sigrist, (Institute for Theoretical Physics, ETH-Zurich, Switzerland),
(ii) Prof. Alexander M. Gabovich, Institute of Physics, National Academy of Ukraine,Kiev, Ukraine,
(iii) Dr. V. Drozd, Florida International University, Florida, USA.
- 17 -
- 18 -
3. 部門別成果報告
- 19 -
3.1 ●マテリアルデザイン部門●
部門長 小口 多美夫
部門の目的
量子力学の基本原理に基づくシミュレーション手法を用いて物質の構造や性質を予測しモデル
化することによって,新たな機能物質をデザインすることを目的とする。そのため,研究基盤としての
シミュレーション・デザイン手法の開発を行い,実験グループとの協同により機能物質の創製を試み
る。また,大学間連携や研究ネットワークの研究拠点ノードとしてマテリアルデザイン分野での若手人
材育成を計る。
部門のスタッフ
部門長 小口 多美夫(大学院先端物質科学研究科 教授)
城
健男(大学院先端物質科学研究科 教授)
永井 克彦(大学院総合科学研究科 教授)
星野 公三(大学院総合科学研究科 教授)
樋口 克彦(大学院先端物質科学研究科 准教授)
吉田 博 (大学院先端物質科学研究科 客員教授 [阪大産研・教授])
- 20 -
量子シミュレーション手法の開発と応用
小口 多美夫(先端物質科学研究科
教授)
1.研究の概要
機能の新たなる開拓のためには,量子力学の基本原理に基づくシミュレーショ
ンにより物質の構造や性質を予測し新たな機能物質をデザインすることが重要
かつ不可欠となってきている。本研究では,量子シミュレーションに必要な手法の開発を第一の目的と
している。また,種々の物質系に対して具体的に量子シミュレーション手法を応用し,物性予測や機能
物質のデザインに資するとともに,手法開発にフィードバックすることを第二の目的とする。
2.研究成果
2.1 量子シミュレーション手法の開発
代表的な量子シミュレーション手法である密度汎関数理論に基づく第一原理計算では局所密度近
似(LDA)が標準的な手法を与え,凝縮系の構造や物性の予測に多くの成功を収めてきた。しかしな
がらその一方,いわゆる電子相関の強い系でその基底状態における秩序安定性や絶縁性が説明でき
ない等,いくつかの問題があることも指摘されている。これを克服するために LDA を超えた GW 近似に
基づく第一原理計算手法の開発を目指している。本年度は,GW 近似計算で基本部分となる Fock 演
算子の計算手法と計算コードの開発を行った。Fock 演算子には Coulomb 相互作用による発散が含ま
れ,kp 摂動法を応用して発散を押さえながら効率よく行列要素の数値計算が実行できる手法を提案し
た。この他,電場勾配の計算手法,線形応答理論に基づくフォノン計算手法,ノンコニリア磁性を扱う
手法等の定式化及びコード開発も行った。
[文献等] 獅子堂達也,小口多美夫,“FLAPW 法による GW 近似計算”,日本物理学会 2008 年年次
大会(近畿大学)
2.2 量子シミュレーション手法の応用
LDA の範囲での量子シミュレーション手法を種々の凝縮系に応用した。具体的に応用した系として,
超伝導物質系(La2C3,硼素ドープダイヤモンド系,硼素ドープ SiC),熱電変換物質系(ハーフホイスラ
ー型半導体),強誘電体・反強誘電体系(PbMO3 (M=Ti, Zr, Hf),ガーネット Y3Fe5O12),三角格子反強
磁性体 CuFeO2,が挙げられる。
[文献等] Y. Nishikayama, T. Shishidou and T. Oguchi, “Electronic properties of Y2C3 by first-principles
calculations”, J. Phys. Soc. Jpn. 76, 064714 (5 pages) (2007); T. Yokoya, E. Ikenaga, M. Kobata, H.
Okazaki, K. Kobayashi, A. Takeuchi, A. Awaji, Y. Takano, M. Nagao, I. Sakaguchi, T. Takenouchi, K.
Kobayashi, H. Kawarada and T. Oguchi, “Core-level electronic structure evolution of heavily
boron-doped superconducting diamond studied with hard x-ray photoemission spectroscopy”, Phys. Rev.
B 75, 205117(5 pages) (2007); M. Onoue, F. Ishii and T. Oguchi, “Electronic and thermoelectric
properties of the intermetallic compounds MNiSn (M=Ti, Zr and Hf)”, J. Phys. Soc. Jpn. (2008) in press.
- 21 -
遷移金属化合物の軌道秩序と X 線分光・散乱
城
健男(先端物質科学研究科
教授)
1.研究の概要
磁気的秩序の観測方法は多く存在するのに対し,軌道秩序即ち縮退した
軌道の電子占有の偏りが作る秩序の観測方法は多くはなく,最近,内殻 X
線吸収線二色性や共鳴 X 線散乱が注目されている。本研究は,遷移金属化合物における d 軌道
の占有状態と軟 X 線領域の吸収線二色性,共鳴 X 線散乱における線二色性の関係を,1イオン
模型を中心とする局所模型に基づき,具体的な系について理論面から明らかにする。また,磁
気的秩序と電気分極が共存する系の電子状態の解明において,種々の X 線分光が果たす役割を
調べる。
2.研究成果
2.1 遷移金属酸化物の軌道秩序と共鳴 X 線非弾性散乱
反強的軌道秩序の存在が知られている LaMnO3 を例にとり,Mn3d 軌道秩序の秩序変数を明ら
かにする上で,入射・放出 X 線のエネルギーと直線偏光を指定した Mn2p-3d 共鳴 X 線非弾性散
乱が果たす役割を調べた。その結果,非弾性散乱が X 線吸収とは相補的な有用な役割を果たす
ことを,1イオン模型に基づき明らかにした。
2.2 YMnO3 の電子状態と内殻 X 線吸収線二色性
YMnO3 において,O K 吸収端,Mn L 吸収端の線二色性の実験と理論解析により,Y 4d 軌道
および Mn 3d 軌道の占有状態を明らかにした。これにより,X 線吸収線二色性が,この系の
multiferroicity の出現機構を解明する上で有用であることを示した。
[文献] D.-Y. Cho, et al. (他14名), A. Tanaka and T. Jo, “Ferroelectricity Driven by Y d0-ness with
Rehybridization in YMnO3”, Phys. Rev. Lett. 98, 217601/1-4, (2007).
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第一原理シミュレーションによる液体とナノ物質の研究
星野
公三(総合科学研究科
教授)
1.研究の概要
第一原理分子動力学シミュレーションは,原子配列(構造)と電子状態を同時
に求めることができる方法であり,規則性をもたない多様な系の構造と電子状態の相関を調べるのに有
効な方法である。本研究では,①液体金属の構造と電子状態,特に,圧力誘起構造変化の微視的機
構の解明,および,②ナノ構造化グラファイトに吸蔵された水素の放出過程の微視的機構の解明をめ
ざして研究を進めている。また,③古典的分子動力学シミュレーションによるカーボンナノチューブの熱
的不安定性(融解)の研究も行った。
2.研究成果
2.1 高温・高圧下における液体金属の圧力誘起構造変化の研究
第一原理分子動力学シミュレーションにより,液体カーボン,液体スズおよび液体ナトリウムの圧力誘
起構造変化を調べた。液体カーボンは低圧領域では共有結合的であるが,圧力の増加とともに金属
結合的電子状態になること,そのため配位数が約 3 から約 8 に増加し,ボンド角分布も変化することな
どを解明した。これらの構造の圧力依存性と融点極大との関連についても論じた。
[文献] A. Harada, F. Shimojo and K. Hoshino, ”Pressure-induced structural change of liquid carbon: ab
initio molecular-dynamics simulations”, J.Non-Cryst.Solids 353, 3519-3522 (2007).
2.2 水素化ナノ構造化グラファイトからの水素脱離の機構
第一原理分子動力学シミュレーションにより,水素化ナノ構造化グラファイトからの水素脱離過程を
調べた。特に,温度上昇に伴って起こるナノ構造化グラファイトの再結晶化と水素放出の関係を微視的
レベルで解明するため,第一原理分子動力学シミュレーションと古典的分子動力学を組み合わせたハ
イブリッド法をこの系にはじめて適用し,成果を上げることができた。
[文献] A.Harada, F. Shimojo and K.Hoshino; “Hydrogen desorption from nanostructured graphite: ab
initio molecular-dynamics studies”, J.Phys.:Condens.Matter 19, 365209 (7pp) (2007).
2.3 カーボンナノチューブの熱的不安定性の研究
単層カーボンナノチューブの熱的不安定性(融解)を,チューブの半径の関数として古典分子動力
学シミュレーションにより,環境依存型相互作用ポテンシャルを用いて調べた。カーボンナノチューブの
融点が半径の減少とともに 1/(半径)2 で減少することをはじめて明らかにした。この融点の半径依存性
の起源は,チューブ半径の減少にともないひずみエネルギーが 1/(半径)2 で増加し,相対的にエネル
ギー的に不安定になるためであることを明らかにした。
[文献] Y. Kowaki, A. Harada, F. Shimojo and K. Hoshino, “Radius dependence of the melting
temperature
of
single-walled
carbon
nanotubes:
J.Phys.:Condens.Matter 19, 436224 (9pp) (2007).
- 23 -
molecular-dynamics
simulations”,
新しいバンド理論に向けて
樋口
克彦(先端物質科学研究科 准教授)
1.研究の概要
新しいバンド理論に向けて,これまでに我々は Levy の制限つき探索
の理論を拡張することで,任意の物理量を基本変数に選べる拡張された制限付き探索理論
(ECS)を開発してきた。今年度は ECS の適用例として,二次簡約化密度行列の対角要素(対
密度)を再現するハンド理論の開発に取り組んだ。また,これとは別に,外部磁場下の物質
や自発電流が存在する系などに適用可能な交換・相関エネルギー汎関数の開発を行った。
2.研究成果
2.1 対密度汎関数理論の開発
ECS 理論を用いて,対密度を再現するハンド理論(対密度汎関数理論)の開発を行った。
単一 Slater 行列式による再現を目指した本理論は,探索範囲の制限があるものの,相関効
果を明確に含んだ N-表示可能な対密度を得ることができる。その意味で,波動関数理論の
Hartree-Fock(HF)近似に相当する「対密度汎関数理論の出発理論」と見なすことができる。
本理論の能力を定量的に計るために行ったテスト計算(ネオン原子)の結果から,探索範
囲を広げる必要性は明確になったものの,相関エネルギーの約 2 割をカバーすることがわ
かった。さらに波動関数理論が HF 近似を基礎にさまざまと拡張したように,対密度汎関
数理論もわれわれの出発理論をもとに発展させることができる。今年度はさらに,相関を
あらわに取り込んだ Jastrow 波動関数による再現を目指した理論を開発した。
[文献] M. Higuchi and K. Higuchi, Physica B 387, 117 (2007),M. Higuchi and K. Higuchi, Phys.
Rev. A 75, 042510 (2007).
2.2
交換・相関エネルギー汎関数の開発
電流密度汎関数(CDFT)は,外部磁場下の物質や自発電流が存在する系などの基底状態を記述
するのに有用な理論である。CDFTに基づく電子構造計算を具体的に実行するためには,電子密
度と常磁性電流密度の汎関数で与えられる交換・相関エネルギー汎関数Excを計算可能な形で求
める必要がある。これまでに,我々は電子座標のスケーリングやビリアル定理から得られる総
和則を制限条件として用い,Excの近似形としてvorticity展開近似式(以下,VEA)を提案してき
た。今年度は,Levyの漸近的境界条件をCDFTの交換・相関エネルギー汎関数に対して求め,そ
れを用いてVEAおよびCDFTにおける局所密度近似(LDA)を評価した。その結果,VEAはLevy
の漸近的境界条件を満たすが,LDAは満たさないことが明らかとなった。さらに,他の総和則
による評価も行い,VEAはLDAに比べより多くの総和則を満たす振る舞いの良い近似式である
ことを確認した。
[文献] K. Higuchi and M. Higuchi, Phys. Rev. B 74, 195122 (2006),M. Higuchi and K. Higuchi,
Phys. Rev. B 75, 195114 (2007).
- 24 -
3.2 ■機能開拓部門■
部門長 宇田川 眞行
部門の目的
電子・軌道・スピン・空隙等の複合自由度を持つ強相関電子系からソフトマターまでの幅広い物質群で
現れる興味ある物理現象,例えば,超伝導,磁性,軌道秩序,マルチフェロイック,構造変化,分子拡散
などの起源を,光,熱測定,超音波,走査トンネル顕微分光などの多様な測定手段と多重環境条件を有
機的に組み合わせて総合的に解明することを目的とする。さらに,機能物質創製部門およびマテリアル
デザイン部門との密接な連携をすすめながら,得られた知見を基にナノファブリケーション等の手法を用
いて,従来にない新しい機能の開拓を目指す。
研究組織
部門長
宇田川眞行(総合科学研究科総合物理部門
教授)
スタッフ
宇田川眞行(総合科学研究科総合物理部門
教授)
低温・光物性
浴野
稔一(総合科学研究科総合物理部門
教授)
トンネル分光・顕微鏡
世良
正文(先端物質科学研究科
教授)
マクロ物性
鈴木
孝至(先端物質科学研究科
教授)
低温・超音波物性
伊賀
文俊(先端物質科学研究科
准教授)
放射光物性・機能物質創製
荻田
典男(総合科学研究科総合物理部門
准教授)
低温・光物性
八木
隆多(先端物質科学研究科
准教授)
ナノスケール物性
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光散乱によるカゴ状物質の研究
宇田川 眞行(総合科学研究科
教授)
1.研究の概要
熱電材料の特性は,大きな電気伝導度と小さな熱伝導度が共存する場合に
向上することが知られており,カゴの中に捕らえられたゲスト原子のラットリング運
動が熱伝導率の低下に有効であると指摘されている。本研究グループでは,低い熱伝導率がゲスト原
子の運動とどの様な相関があるかを解明するために,一連のカゴ状物質 六硼化物素 RB6, 充填スクッ
テルダイト RT4X12, Ⅰ型クラスレート化合物 R8Ga16Ge30,La3Pd20X6,β パイロクロア KOs2O6 のラマン散
乱実験を行っている。ラマン散乱の単結晶偏光依存性から振動を帰属し,温度依存性からゲスト原子
が受ける4次の非調和性を決定した。その結果,大きなカゴでしかもゲスト原子とカゴの原子の間の相
互作用が小さい場合に4次の項の寄与が大きくなり,実験的には低温で振動数が低下する異常な現
象となる。この現象が上記の各結晶で普遍的であることを明らかにした。 特に,クラスレート化合物の
場合には,ゲスト原子の off-center の局所振動が格子熱伝導率を低下させることも明らかにした。
2.研究成果
2.1 Ⅰ型クラスレート化合物の研究
Ⅰ型クラスレート化合物 R8Ga16Ge30 では,R=Sr と Eu の場合にゲスト原子の位置が off-center であり,
R=Ba の n 型ではゲスト原子の位置は中心にある。最近,Ge を Si で置換した R8Ga16GeXSi30-X
(R=Ba,Sr)の単結晶ラマン散乱を行い,[1,0,0]と[1,1,0]方向に垂直な変位を持つ T2gと Eg 格子振動のx
依存性から,Ba の場合には Ge の増加でカゴは等方的に膨張するが,Sr では異方的膨張することが明
らかになった。これが,Sr や Eu 結晶で off-center 位置をとる原因であることが分かった。更に,ゲスト原
子の off-center の位置の大きさが格子熱伝導率の低下と相関する新たな実験結果が得られた。
[文献] Y.Takasu, T.Hasegawa, N.Ogita, M.Udagawa, K.Suekuni, M.A.Avila, T.Takabatake; “Raman
Scattering of Type-I Clathrate Compounds: A8Ga16Ge30 (A = Eu, Sr, Ba) and Sr8Ga16Si30−xGex”
2.2 β パイロクロアの研究
β パイロクロア KOs2O6 の偏光ラマン散乱から格子振動を帰属した。この結晶では,ゲスト原子の K の
みならず,K の回りの酸素の格子振動も低温で振動数が低下する。つまり,カゴ原子も強い非調和振
動を行っていることが,他のカゴ状物質と大きく異なる。この特徴が超伝導と密接に関連すると考えられ
るが,まだ直接的な結果は得られていない。
[文献] T.Hasegawa, Y.Takasu, N.Ogita, M.Udagawa, J.Yamaura, Y.Nagao, Z.Hiroi; “Raman Scattering
on KOs2O6, Journal of Physics: Conference Series 92 012124/1-4 (2007)
2.3 水素貯蔵物質のラマン散乱
Li 系水素貯蔵物質のラマン散乱を行っており,偏光依存性の測定は終了した。しかし,反応
過程などは次年度に引き継ぐ進行中の研究である。なお,
本研究は NEDO の支援を受けている。
- 26 -
新規超伝導物質の電子状態の微視的解明
浴野
稔一(総合科学研究科
教授)
1.研究の概要
原子分解能を有する極低温超高真空走査トンネル顕微鏡/分光装置
(STM/STS)や独自に開発した磁場中 break-junction トンネル分光装置を用いて,
高温超伝導体および新規超伝導体の結晶表面原子像やエネルギーギャップのナノスケール分布を測
定することにより,これらの電子状態の特徴を微視的に明らかにし,高温超伝導発現機構の解明への
指針を得ることを目的としている。このような研究をウクライナ国立科学アカデミーの A.M. Gabovich 教
授と共同で進めている。
2.研究成果
2.1 新層状超伝導体 TiNCl の STM/STS
層状超伝導体α型(FeOCl 型)KxTiNCl(Tc=17K)の STM 測定を行い,温度5K の超伝導状
態において劈開 c 面の表面原子像の観測に初めて成功した。観測された原子斑点は長方格子状
に配列し,その間隔 0.406nm x 0.329nm はX線回折データと良く一致する。この最表面原子は
Ti 原子と考えられるが,N や Cl も Ti と同じ周期を持ち,観測された原子の種類を同定するた
めにさらに詳しく調べている。また,STS により 2Δ = 10-15 meV の局所超伝導ギャップを観測
し,ギャップ比 2Δ /kBTc が BCS 理論の約 2-3 倍の強結合状態にあることを明らかにした。これ
はβ型(SmSI 型)の結晶構造を持つ HfNCl(Tc=25K)のものとほぼ同様である。さらに,Tc
よりも遥かに高い温度 40K において,擬ギャップ構造を観測した。現在,この起源を探ってい
る。
2.2 Bi 系高温超伝導体に見られる擬ギャップ状態の解析
超伝導と電荷密度波(CDW)の不均一共存系からなる物質で形成されたトンネル接合(CDW
超伝導接合系)の電流-電圧特性を有限温度で議論した。この CDW 超伝導接合系のトンネルス
ペクトルを計算することにより,低温では,超伝導ギャップと CDW ギャップの共存による顕
著なギャップ外隆起(DIP-HUMP)構造が再現できることを示し,高温の超伝導臨界温度付近
では,フェルミ面に擬ギャップ的な幅広い浅い落ち込みが残ることを明らかにした。これらは,
Bi 系高温超伝導体のトンネルスペクトルで一般に観測されている DIP-HUMP 構造と擬ギャップ
構造が同一の起源を持つ可能性を初めて直接示したものであり,DIP-HUMP 構造と擬ギャップ
構造を個別に議論することができないことを明らかにした。
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八極子秩序の機構解明
世良
正文(先端物質科学研究科
教授)
1.研究の概要
近年,多極子秩序の研究が盛んになり,f 電子系の中心課題の一つにな
っている。四極子秩序を示す物質が数多く発見され,磁気秩序にない多くの新奇現象に対し研究が進
んでいる。これに対し,より高次の八極子秩序を示す物質はまだ少なく,その研究は始まったばかりで
ある。CeB6 は八極子相互作用が主役を演じることがはっきりした初めての例であり,CeB6 の Ce を La で
置換して現れる新しい相(IV)は,純粋な八極子秩序も可能性が指摘され,現在盛んに研究されている。
また,PrB6,NdB6 は CeB6 の多重極相互作用を理解する上で重要な物質であり,それぞれ四極子相互
作用が重要な役割を演じている。これら RB6 は立方晶という単純な構造をとるため固有関数が具体的
に決まるという利点があり,多極子相互作用の研究には理想的な環境が整っている。このような RB6 物
質群の多極子相互作用を様々な手段により解明することを目的とする。
2.研究成果
2. 1 CexLa1-xB6 の IV 相
IV 相について最近共鳴 X 線散乱により Q=(1/2 1/2 1/2)の秩序が見つかったが,昨年桑原らとの共
同研究として中性子散乱で八極子秩序と矛盾しない Q-依存性を観測した。これらから IV 相は八極子
秩序の可能性が非常に高くなったが,倉本らのモデルで出現する Oxy-型 FQ モーメントと CeB6 に存在
する Oxy タイプの反強四極子相互作用が競合する。蔵元等のモデルに Oxy-AFQ 相互作用を入れると
IV 相を特徴づける磁化の温度変化を説明できなくなり,CexLa1-xB6 の全体像の解明には到っておらず,
更に研究が必要である。八極子秩序である可能性が指摘されている IV 相が磁性不純物によりどのよう
な影響を受けるかを調べることにより IV 相解明を目指す,という視点でも研究を進めているが,
Ce0.7La0.3B6 と Ce0.6La0.4B6 の IV 相への Nd イオン添加効果は大きく異なっていることを見出した。前者
では IV 相はわずかな Nd 添加で III 相に変わるが,後者では Nd 添加で III, II, IV 相すべてが安定化
されることを見出した。
2. 2 CeB6 の圧力効果
CeB6 の圧力効果は Brandt らによる報告があり,圧力下で TQ は増大し,TN は減少する。ここで III 相
領域は圧力により小さくなるが,TN よりも III-II 相転移臨界磁場 HcIII-II の方がより早く小さくなるという奇
妙なふるまいを示す。磁場中熱膨張の結果を考慮し,磁気,四極子,八極子相互作用の圧力依存性
を仮定して分子場計算を行った。計算で得られた予想は圧力下磁化測定により非常に良く再現され,
計算が正しいことが明らかになった。また,圧力下で強磁性が出現することを見出した。この強磁性は 2
つの異なるタイプの多極子秩序の共存により生じるものであり,交換相互作用が関与しない初めての
例であると思われる。また計算ではより高圧で純粋な Txyz タイプの八極子秩序の出現を予想しており,
今後より高圧での実験が望まれる。
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強弾性相を有する新規マルチフェロイックス系の研究
鈴木
孝至(先端物質科学研究科
教授)
1.研究の概要
(CnH2n+1NH3)2MeCl4 (Me = metal)は,誘電秩序や磁気秩序を示すだけでなく,
強弾性相をも有する。これまで,この物質系については誘電体としてその相転移機構の解明に興味が
持たれてきた。例えば,エチルアンモニウム基と鉄イオンをもつ EAFeC は[*],降温とともにブリルアンゾ
ーン X 点フォノンのクエンチに起源を持ち3次元 XY モデルによって記述される体心正方晶(I4/mmm)
の原型相から底心斜方晶(Bmab)への構造相転移を示した後,誘電秩序相,新たな構造相,更に磁気
秩序相へと逐次相転移を繰り返す。また,底心斜方晶相は強弾性をもつことも知られている。
我々は,この物質系が電場・磁場の交差相関だけでなく,応力も加えた3元交差相関が期待出来る
初めてのマルチフェロイックス系であると位置づけ,この観点から研究を18年度に開始した。19年度は,
引き続き各種金属イオンおよびアルキルアンモニウム基をもつ単結晶の育成を行った。試料が得られ
たものについては,構造の温度依存性,多重極限下における熱力学量・輸送特性などを測定した。
[*] T. Suzuki et al., JPSJ 52, 1669-1675 (1986).
2.研究成果
2.1 蒸発法による単結晶育成
メチルアンモニウム基をもつ MAFeC,MAMnC,MACoC,MACuC,MAZnC およびエチルアンモニ
ウム基をもつ EAFeC,EAMnC,EACoC,EACuC,EAZnC,計10種類の単結晶育成時間の短縮並び
に大型化に成功した。
2.2 単結晶 X 線回折による結晶構造測定
18年度に引き続き化学研究科井上研究室との共同で行った。これまでに,MAFeC における4つの
秩序相の空間群まで含めた構造決定に成功している。 本年度は,EAFeC の構造相を決定した。とり
わけ,磁気秩序相では,MAFeC と同様に磁気転移と同時に構造も転移することが判明した。
更に,鉄を銅に置換した EACuC に関する誘電率の温度依存性を測定したところ,26K と 37K で誘
電秩序があることを初めて見出した。37K の誘電異常は,電場を c 面内に印可した場合に観測されるの
に対し,26K の誘電異常は電場を c 軸に平行に印可した場合に観測される。緩和法による比熱測定を
行ったところ,37K では明確な不連続を観測したが 26K では想定制度の範囲内で以上を見いだせな
かった。緩和法では潜熱の開放を乾燥しづらい。この点を勘案すると,37K は2次相転移,26K は1次
相転移と推測している。
2.3 単結晶試料の多重極限下物性測定
19年度において交差相関観測のため制作した磁場中誘電率測定装置を改良し,試料を磁場中で
回転できるものとした。今後は,応力印可できる試料ホルダーの開発を目指す。
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希土類ホウ化物の強磁場誘起相転移
伊賀
文俊(先端物質科学研究科
准教授)
1.研究の概要
正方晶希土類四ホウ化物は c 面内で直交ダイマーを内包し,特に
Shastry-Sutherland 格子と呼ばれる。希土類磁性体の場合,RKKY 型の伝導電子を媒介とした反強磁
性相互作用の近接相互作用とより遠方に及ぶ高次の相互作用と電荷の高次クーロン相互作用である
四極子相互作用が複雑に競合し,通常の反強磁性の磁気構造よりも複雑な磁気秩序相(多極子秩序
や長周期構造が様々な空間秩序パターンで現れる)を形成する。TbB4 では c 軸方向でのみ磁化過程
に9段のステップが出現する。TmB4 ではどの方位にも多段ステップ構造が見つかり,この異方的な磁
化過程の機構解明を進めている。立方晶近藤半導体 YbB12 では精密な強磁場磁化過程と磁気抵抗
測定により,50T での 1 次相転移後,YbB12 は常磁性金属(フェルミ液体と呼ぶ)に変わってしまうだけ
でなく,希釈冷凍機を用いた低温実験で磁場により振動する異方的な磁気抵抗効果が見つかった。こ
れは磁気励起子を観測したものであろう。
2.研究成果
2.1 TbB4 及び TmB4 の多段磁化ステップと長周期構造
TbB4 では c 軸方向に 9 段の磁化ステップが磁場 15-30T にわたって飽和磁化の分数量子化状態と
して出現する。もともとの磁気相図は三角格子系で見つかっているXYスピンによる Kosterlits-Thoules
転移と基本的に同じ形状である。しかし,磁気誘起相における多段磁化ステップ相は,Ising スピンの長
周期励起によるものとのモデルが有力で,現在はその長周期構造をもたらす機構に,研究者の関心が
向いている。我々が進めていた非磁性イオン Y で置換した Tb1-xYxB4 合金は,x=0.90 でも反強磁性秩
序が存在し,RKKY 型反強磁性相互作用が,ホウ素のネットワーク上では伝導電子を媒介として遠くま
で及ぶことがわかった。これらの相互作用の重ね合わせ効果として長周期スピンの発生を再現すること
は可能であろう。モデル計算による確認と実験的な証拠(中性子実験)は今後必要である。
TmB4 は TN1=11.7K, T*=10.7K, TN2=10K で逐次転移を示す。T*,TN1 で非調和の長周期構造をもち,
TN2 は単純反強磁性転移点であることが中性子回折から判明しているが,TN2 以下でのc軸の磁化過程
は 3 段のステップを示す一方,c面内でも 1/3, 1/2, 3/4 など多くの分数ステップが見つかった。3方向で
多段磁化ステップが見つかったのは TmB4 だけである。磁気構造もゼロ磁場ではc方向を向いたイジン
グスピンによるものであるが,c面内にもそのイジング性が誘起されることが明らかとなった。この機構解
明を今後進めていく。
2.2 近藤半導体 YbB12の強磁場磁気抵抗における磁気振動
YbB12 は 200K のエネルギーギャップをもつ近藤半導体である。50T の強磁場で非金属金属転移を示
すが,転移前に磁気抵抗の磁場依存性に 7-8T 程度の周期的な振動が現れることが,希釈冷凍機を使
った実験により明らかになった。しかしこの振動は,[100]方位でもっとも顕著で,[110]では振動強度が減
少し,[111]方位ではまったく観測できなかった。この異方的な振動は,ギャップ内に形成される異方的な
磁気励起子によるものと考えられ,その異方性が,混成効果と類似の対称性を持つことから,ギャップ形
成機構を解明する上で重要な手がかりになると考えている。
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光散乱によるカゴ状物質の研究
荻田
典男(総合科学研究科
助教授)
1.研究の概要
熱電材料の特性は,大きな電気伝導度と小さな熱伝導度が共存する場合に
向上することが知られており,カゴの中に捕らえられたゲスト原子のラットリング運動が熱伝導率の低下
に有効であると指摘されてきた。本研究グループでは,低い熱伝導率がゲスト原子の運動とどの様な
相関があるかを解明するために,一連のカゴ状物質 六硼化物素 RB6, 充填スクッテルダイト RT4X12,
Ⅰ型クラスレート化合物 R8Ga16Ge30,La3Pd20X6,β パイロクロア KOs2O6 のラマン散乱実験を行っている。
ラマン散乱の単結晶偏光依存性から振動を帰属し,温度依存性からゲスト原子が受ける4次の非調和
性を決定した。その結果,大きなカゴでしかもゲスト原子とカゴの原子の間の相互作用が小さい場合に
4次の非調和性の寄与が大きくなり,実験的には低温で振動数が低下する異常な現象となる。この現
象が上記の各結晶で普遍的であることを明らかにした。 特に,クラスレート化合物の場合には,ゲスト
原子の off-center の局所振動が格子熱伝導率を低下させることも明らかにした。
2.研究成果
2.1 充填スクッテルダイト RT4X12 の研究
希土類 R,遷移金属 T,プニコゲン X の3元系化合物”充填スクッテルダイト”もプニコゲンがカゴを作
りその中心にゲスト原子である希土類が位置している。希土類振動は2次のラマン散乱ピークとしてス
ペクトル中に観測され,その散乱強度とピークエネルギーは、かごの中で希土類が動きうる空間「ケー
ジ空間」の大きさでよく説明できる。一方,カゴの振動はゲスト原子(希土類原子)を中心に動径方向に
振動するブリージングモードとカゴが偏角方向に歪む屈曲モードとに特徴付けられ,両振動とも1次ラ
マン散乱ピークとして観測されるが,ブリージングモードに対応するピークは線幅が広く,励起エネルギ
ーに敏感であり,この現象はカゴが大きく柔らかいほど,すなわち,格子定数の大きい Sb 系スクッテル
ダイトほど顕著に現れる傾向がある。このことからブリージングモードは電子系と結合している事が予想
され,希土類原子運動が引き起こす電荷揺らぎの影響を受けている可能性があることを示唆した。
[文献] N.Ogita, R.Kojima, Y.Takasu, T.Hasegawa, T.Kondo, M.Udagawa, N.Takeda, T.Ikeda, Y.Ishikawa,
H.Sugawara, D.Kikuchi, H.Sato, C.Sekine, I.Shirotani; “Raman scattering study of skutterudites
compounds”, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 310, 948-950 (2007)
2.2 水素貯蔵物質のラマン散乱
Li 系の水素貯蔵物質のラマン散乱を行っており,偏光依存性の測定は終了した。しかし,反
応過程などは次年度に引き継ぐ進行中の研究である。なお,本研究は NEDO の支援を受けてい
る。
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ナノ構造の機能設計と物理
八木
隆多(先端物質科学研究科
准教授)
1.研究の概要
バルクの物質では現れない様々な性質や機能を,物質を微細に加工すること
によって発現させる研究を行う。例えば,非平衡状態や,量子コヒーレンスを原子
集団として実現することが可能になる。また,グラファイトなどの層状物質では,一から数十原子層程度
の超薄膜では,バルクのグラファイトとは異なる興味深い性質が発現する。このような微細加工したシス
テムにおける新規な物理現象の発見および,新機能デバイス開発を目的として研究を進めている。
2.研究成果
2.1 超薄膜グラファイトとグラフェンの研究
数十原子層程度のグラファイト超薄膜の FET を作製しその動作を確認することに成功した。10ミク
ロン程度の大きさの超薄膜グラファイトに微細加工を施し,ホールバー形状に加工した後,リードおよび
ゲート電極を付加した素子を作製した。ゲート電圧に依存して,素子の抵抗値がおよそ20パーセント
程度変化する FET 動作が観測された。これは,グラファイトのキャリア濃度がゲート電圧によって制御で
きたことを示している。この素子の磁気抵抗を測定したところ,磁気抵抗の大きさが,ゲート電圧に依存
して変化し,電子とホールのキャリア密度差が小さなところで磁気抵抗の大きさが最大になった。また,
ホール効果にも異常が観測された。これらはバルクのグラファイトでは観測されない超薄膜グラファイト
に特有の性質である。
2.2 超伝導磁束量子ビットの開発
ジョセフソン接合を幾つか挟んである超伝導体のループでは,超伝導ループをまわる巨視的な電流
の量子重ね合わせを作ることができる系である。昨年度に引き続き,3接合のジョセフソン接合をもつ超
伝導ループからなる磁束量子ビットを作製し,これをオンチップの DC-SQUID で観測した。DC-SQUID
のスイッチング電流を解析することで,量子ビットの回路をまわる巨視的な電流を表す「量子ビットステッ
プ」を明確に観測できた。しかし,量子ビット動作を確認するには至っていない。システムの磁場のノイ
ズの改善が必要である。
2.3 非平衡準粒子の研究
超伝導体に非平衡に存在する準粒子は,超伝導量子デバイスの動作を阻害する原因として考えら
れており,これに対する対策は重要である。昨年度に引き続き,超伝導細線の一部を常伝導体に置換
してできる構造により準粒子トラップを作製し,低温電気伝導を測定した。電荷インバランス状態が準粒
子トラップを超えてわずかながら伝達しているのが観測された。電荷インバランス状態は,ノーマル金属
中には存在することができない。ノーマル金属を二つの超伝導体はさんでいる準粒子トラップ中を電荷
インバランスが伝導していることは,ノーマル金属中の電荷インバランスの存在を示唆しており,新しい
現象である可能性がある。
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3.3 ▲機能物質創製部門▲
部門長 山中 昭司
部門の目的
本学における基礎・応用化学,物性物理,材料工学の研究者が,セン ターを拠点として連携を密にし,
得意とする研究手法を駆使して,未来 材料の芽となる新物質を創製する。新エネルギーの創製と効率
変換のための物質開発,環境に優しい高分子材料,夢の超伝導材料開発,新規半導体デバイスの設計
に繋がる機能性有機材料開発を目指す。機能開拓部 門およびマテリアル デザイン部門との連携により,
基礎から応 用にわたる研究を効率的に推進する。
研究組織
部門長 山中昭司(工学研究科物質化学システム専攻 教授)
スタッフ
山中昭司(工学研究科物質化学システム専攻 教授)
エキゾチック超伝導体の開発、超高圧・高温合成
高畠敏郎(先端物質科学研究科 教授)
熱電変換物質の開発
小島由継(先進機能物質研究センター 教授)
水素貯蔵ナノ複合物質の開発と機構解明
市川貴之(先進機能物質研究センター 助教授)
無機系水素貯蔵物質の設計
佐野庸治(工学研究科 教授)
ゼオライトの自在設計・合成
播磨 裕(工学研究科 教授)
機能分子の組織化を利用するオプトエレクトロニクス材料の開発
井上克也(理学研究科 教授)
透明キラル分子磁性体の合成と物性
瀧宮和男(工学研究科 教授)
新しい有機半導体材料の開発、高性能有機 FET を目指して
山本陽介(理学研究科 教授)
新超原子価6配位炭素化合物の合成
河内 敦(理学研究科 助教授)
新規有機典型元素化合物の効率的合成
塩野 毅(工学研究科 教授)
有機チタン錯体触媒によるポリオレフィンの精密合成
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エキゾチック超伝導体の開発
山中
昭司(工学研究科
教授)
1.研究の概要
近年開発された新規超伝導体は,酸化銅系高温超伝導体や MgB2 に見られ
るように,2次元層状構造をとるものや,フラーレンやクラスレートのようにカゴ状構造を有するものが多
い。これらを多孔質超伝導体と位置づけ,当研究グループで開発した層状窒化物超伝導体およびシリ
コンクラスレート系超伝導体を基に,新規エキゾチック超伝導体の開発を行う。
2.研究成果
2.1 層状窒化物 TiNCl のインターカレーションと超伝導
組成式 MNX (M = Zr, Hf; X = Cl, Br, I)で表される層状窒化ハロゲン化物には 2 種類の多形があり,
窒化物層 MN がハニカム格子のβ型結晶は,インターカレーションによる電子ドープによって,超伝導
体となる。FeOCl 型の直交格子をとるα型結
晶は大気中で不安定なため,殆ど研究が行
われていない。本研究では,α型構造をとる
TiNCl を合成し,種々の電子ドープを試み,
新規超伝導体の合成を目指した。図1に示す
ように,種々のアルカリ金属およびピリジン
(Py)のインターカレーションに成功し,それぞ
れ,16 K および 8.3 K に臨界温度をもつ超伝
(a)
導体となることを見いだした。
2.2 炭素クラスレート超伝導体合成の試み
C60 の高温高圧重合はトポ化学的に進行す
(b)
図1.TiNCl インターカレーション化合物の構
造;(a) K0.5TiNCl, (b) Py1/4TiNCl
る。昨年度の研究において,15GPa, 600℃の
処理条件で,斜方晶 2 次元ポリマーが分子の配列を所持したまま,3 次元ポリマーに変化することを報
告した。本年度は面心立方格子のモノマー単結晶を直接一段で 15GPa, 600℃の超高圧高温処理し,
面心立方格子を保持したまま 3 次元ポリマーを合成することに成功した。単結晶X線構造解析と MD
計算を組み合わせて,このポリマーの構造は R 3 の空間群に属し,その平均構造が面心立方晶格子
になることを明らかにした。C60 分子どうしを連結する結合様式には新しいタイプの[3+3]付加が含まれ
る。新たに得られた 3 次元ポリマーはマイクロビッカース硬度が約 4500 kg/mm2 で,立方晶 BN に匹敵
する硬度を有し,半導体となった。引き続き,この結晶への電子ドープを試みる。
[文献] S. Yamanaka, N. S. Kini, A. Kubo, S. Jida, and H. Kuramoto; “Topochemical 3D
Polymerization of C60 under High Pressure at Elevated Temperatures”, J. Am. Chem. Soc., in
press (2008).
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透明キラル分子磁性体の合成と物性
井上
克也(理学研究科
教授)
1.研究の概要
時間反転対称性と空間反転対称性の二つの破れを同時に持つ,キラル磁性体の構築研究を進
めている。キラル磁性体では,特異なスピン構造,スピンダイナミクス,磁気光学効果を持つ
と考えられる。特にキラル磁性体の磁気構造は基本的知見としてその解明は重要である。本年
度は,単結晶中性子線回折を詳細に行うことにより,磁気構造を明らかにした。また,キラル
構造は,磁性体への小分子の吸脱着や,構造相転移をその構造的単一性から可逆性に影響を及
ぼすことを明らかにした。さらに,構造相転移と水分子の吸脱着を単結晶状態で起こすキラル
分子磁性体(GN)の可逆的構造相転移,可逆的水分子の吸脱着の過程を明らかにした。
2.研究成果
2.1 キラル磁性体の磁気構造
知見我々のグループでは既に30種類近い透明キラル分子性磁性体の構築に成功しているが,
得られる単結晶サイズ等の制限のため,磁気構造解明は困難を極めたが,本年度フランス,ラ
ウエーランジェバン研究所の高フラックス回折計 VIVALDI(Very Intense Vertical Axis Laue
Diffractometer)を4年間に渡って優先的に使用させていただき,明らかにすることに成功した。
その結果,キラル磁気オーダー相では,螺旋ピッチ1のコメンシュレートキラル磁気構造を持
つことが明らかとなった。このことは,キラル磁性体中に含むキラル配位子の影響は非常に大
きいことを示している。
[文献] Clara González, Javier Campo Garry J. McIntyre, Fernando Palacio, Youhei Numata, Yusuke
Yoshida, Koichi Kikuchi, Katsuya Inoue. “The search for magnetic chiral phases in the nuclear chiral
compound [Cr(CN)6][Mn(S)-pnH(H2O)](H2O)”, Manuscript in preparation.
2.2 キラル磁性体の単結晶可逆相転移
キラル磁性体(RGN)およびその類縁体である,ラセミ磁性体(racGN)およびアキラル磁性体
(enGN)の構造相転移,水分子の吸脱着に伴う相転移について詳細に研究を行った。その結果,
キラル磁性体では.可逆的に進行するのに対し,他の類縁体では一部非可逆または非可逆にな
ることが明らかとなった。このことはキラル構造がより構造的に任意性が少なく,より単一的
であることが示された。
[文献] Yoshida, Y; Inoue, K; Kurmoo, M, Reversible Single-Crystal-to-Amorphous Phase Transition
upon Dehydration-Rehydration and Associated Magnetism in [MnII(enH)(H2O)][CrIII(CN)6]·H2O, Chem.
Lett. 2008, 37, 504; Yoshida, Y; Inoue, K; Kurmoo, M Crystal Structures and magnetic Properties of
[MnII(rac-pnH)(H2O)CrIII(CN)6]·H2O and its Dehydrated Form, Chem. Lett. inpress.
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ナノ複合物質の水素貯蔵機構解明
小島
由継(IAMR
教授)
1.研究の概要
軽元素系水素貯蔵物質(NaAlH4, MgH2, Li-Mg-N-H 等)の重量水素密度は水
素吸蔵合金に比べ大きく,水素貯蔵タンク軽量化が計れる。しかし,現状の水素吸蔵・放出速度,反応
温度と水素貯蔵量は実用的な水素貯蔵材料として不充分である。燃料電池自動車には水素吸蔵・放
出速度が速く,不安定(生成熱の大きさ小)で,水素貯蔵量の多い材料が必要である。このような特性
は従来の軽元素物質のみでは達成できず,ナノ複合化によって可能になるものと考えられる。本研究
では軽元素(Li, B, C, N, Mg, Al 等)を含む種々のナノ複合物質の水素貯蔵機構を解明し,高性能水
素貯蔵材料として応用するために必要な基盤技術の原理確立を目指している。
2.研究成果
2.1 Li-BN-X-H (X=C,N) 系物質の水素貯蔵特性
層状構造を有する六方晶窒化ホウ素(hBN)は,水素(H2),メタン(CH4),或いはアンモニア(NH3)
の雰囲気下でミリング処理を施すことにより,層状構造のエッジ,或いは欠陥に,B-H,C-H,
N-H 基等の極性官能基を形成して水素を吸蔵し,ミリング処理雰囲気に依存して異なる水素吸
蔵/放出特性を示した。これらの水素化 hBN をそれぞれ LiH と複合化した物質(Li-BN-X-H: X=C,
N 系物質)は,構成物質それぞれの分解温度よりも低温で水素を放出した。
[文献] H. Miyaoka, T. Ichikawa, Y. Kojima and H. Fujii, "Hydrogen Storage Properties in a Composite
of Lithium Hydride and Boron Nitride with Hydrocarbon Groups", J. Alloys. Compd., 446-447, 39-43
(2007).
2.2 Li-N-H (LiNH2/Li2NH)系の水素放出に伴うエンタルピー変化
リチウムアミド/イミド系から水素放出に伴うエンタルピー変化(ΔH)を示差走査熱量測定法
(DSC)によって求めた。ΔH の正確な値を求めるために,リチウムアミド/イミド系と同等の水素
放出挙動を有する TiO2 ドープ MgH2 を参照試料として用いて DSC 装置のセル定数を評価した。
また,熱重量分析(TG)により水素放出に伴う試料重量を求めた。これら二つの補正により,LiNH2
+ LiH → Li2NH+H2 に変化する時のエンタルピー変化は 67kJ/molH2 と評価された。
[文献]
S. Isobe, T. Ichikawa, K. Tokoyoda, N. Hanada, H.Y. Leng, Y. Kojima and H. Fujii,"Evaluation
of Enthalpy Change due to Hydrogen Desorption for Lithium Amide/Imide System by Differential
Scanning Calorimetry", Thermochimica Acta, in press.
. 2.3 水素化リチウム(LiH)とアンモニア(NH3)の相互作用
ミリングによって活性化させた水素化リチウムとアンモニアは室温で反応して,水素を放出すること
を見出した (:水素放出量 5mass%以上)。また,水素放出後に生成する LiNH2 は水素フロー下,300℃
で反応して LiH にもどることがわかった。
[文献]
Y. Kojima , S. Hino, K. Tange, T. Ichikawa," A New Concept of Hydrogen Storage Using
Lithium Hydride and Ammonia”,MRS 2007 Fall Meeting (Boston, MA,USA) November 26-30 (2007).
- 36 -
ゼオライトの自在設計・合成
佐野
庸治(工学研究科
教授)
1.研究の概要
分子レベルの細孔を有するゼオライトは,その“分子ふるい作用”により触媒,
吸着・分離剤等として古くから幅広く利用されている。一般に新規ゼオライトの設計は,複雑な分子構
造の有機分子を設計し,それを構造規定剤に用いることにより行われているが,有機合成化学のように
は所望の結晶構造を有するゼオライトを自在に設計・合成することができないのが現状である。そこで
本研究では,既存のゼオライト等から得られる構造ユニットをナノパーツとして用いた全く新しい概念の
ゼオライトの自在設計・合成法の確立を目指している。
2.研究成果
2.1 既存のゼオライトを出発原料にしたゼオライト合成
既存のゼオライトから得られる構造ユニットをナノパーツとして用いたゼオライト合成の可能性を検討
した結果,構造規定剤にテトラメチルアンモニウム水酸化物を用いることにより Y 型ゼオライトから RUT
型ゼオライトが容易に合成できることを見いだした。また,FAU ゼオライトを用いた RUT ゼオライト合成
は,アモルファス源を用いた場合に比べ結晶化速度が促進され,本ゼオライト転換法の有用性が明ら
かとなった。
[文献] H. Jon, et al. “Hydrothermal conversion of FAU zeolite into RUT zeolite in TMAOH system”,
Micropor. Mesopor. Mater., in press.
2.2 ラメラ構造を有するリン酸カルシウムメソ構造体の合成
リン酸カルシウムは生体適合材料として注目されており,その高表面積化を目的とした研究が活発
に行われている。その中でも,界面活性剤を用いたメソ構造制御に関する研究が注目されている。しか
し,リン酸カルシウムはイオン間の相互作用が強く,結晶性物質の生成が優先的に進行するため,メソ
構造制御は非重に困難である。そこで,エタノール/水混合溶媒中で界面活性剤を用いることにより,
結晶性物質の生成を抑制し,ラメラ構造を有するリン酸カルシウムメソ構造体の合成に成功した。
[文献] N. Ikawa, et al. “Synthesis of a lamellar mesostructured calcium phosphate using hexadecylamine
as a structure-directing agent in the ethanol/water solvent system”, Stud. Surf. Sci. Catal., 165, 253-256
(2007).
3.その他の成果
3.1
受賞
平成 19 年 8 月 8 日 第1回触媒道場(触媒学会主催)若手ポスターセッション優秀発表賞
- 37 -
有機チタン錯体触媒によるポリオレフィンの精密合成
塩野
毅(工学研究科
教授)
1.研究の概要
エチレン,プロピレンなどのオレフィンを遷移金属触媒により付加重合
して得られるポリオレフィンは,軽量かつ安価で優れた物性と加工性を併せ持つうえに,立体
特異性重合や共重合などにより高性能化・高機能化が可能であるなどさまざまな長所を有して
いる。近年では,ノルボルネンなどの環状オレフィンとエチレンとの共重合体が,低吸湿性・
高耐熱性を有する光学特性に優れたプラスチックとして注目されている。一方,リビング重合
は,分子量,分子量分布,ブロック連鎖,末端構造などポリマーの一次構造を精密に制御する
手法として有用であるが,高活性でオレフィンの立体特異性重合を進行させる触媒系はこれま
で知られていなかった。筆者らは,先に,[t-BuNSiMe2(Flu)]TiMe2 を乾燥修飾メチルアルミノキ
サン(dMMAO)で活性化した触媒(1)がプロピレンのシンジオ(syn-)特異的リビング重合
を高活性で進行させることを見いだし,1の特長を生かした新規な触媒の開発を進めてきた。
その結果,1のフルオレニル配位子の 3,6-位に t-Bu を導入することにより活性,syn- 特異性と
もに著しく向上させることに成功した。平成 19 年度は触媒のさらなる高性能化を目指して1を
基盤としたさまざまな新規錯体を合成し置換基効果について検討した。
2.研究成果
1の 2,3,6,7-位に嵩高いアルキル基を導入した錯体2の合成に成功した。単結晶 X 線構造解析
の結果,2のフルオレニル配位子は1と同様η3 型で Ti に配位していることが明らかになった。
2は dMMAO と組み合わせることによりプロピレンやノルボルネンの単独重合や共重合に対
して従来の触媒に比べて最も高活性を示すことがわかった。また,プロピレンのイソ特異的重
合を目指してキラルなアミド基を有する錯体3,4を合成した。これらの錯体においてもフル
オレニル配位子はη3 型で Ti に配位していた。これらの錯体を dMMAO で活性化した系はプロピ
レンのリビング重合を進行させたが,生成ポリマーはいずれもアタクチック構造であった。
N
Me
N
Me
Si
Ti
Me
Me
Me
Me
Si
Ti
Me
Me
H
Me
H
Me
N
N
Me
Me
Si
Ti
Me
1
2
3
- 38 -
Me
Me
Me
Si
Ti
Me
4
Me
ナノ空間に重元素を内包する熱電変換物質の開発
高畠
敏郎(先端物質科学研究科
教授)
1.研究の概要
温度差が電気を生み出し,逆に電気が熱を奪うという熱電現象は,廃熱を利
用した発電やフロンを使わない冷却に応用できる。高い熱電変換性能には,熱起電力が大きく,電気
抵抗が小さく,しかも熱伝導率が低いという三つの特性が要求される。最近,熱伝導率を低減させる機
構として,ナノメートルスケールのカゴに内包された原子のがらがら運動(ラットリング)が注目されている。
本年度は,カゴ構造をもつクラスレートと充填スクッテルダイトの良質試料を作製し,その熱電変換機能
を開拓した。ラットリングの本質を捉えて,その知見を熱電性能の高いカゴ状物質の創製に活かすため
に,精密結晶構造解析(山中グループ),ラマン散乱(宇田川グループ),超音波測定(鈴木グループ),
光電子分光(HiSOR),中性子散乱(産総研熱電グループ)などの共同研究を進めている。
2.研究成果
2.1 最も熱伝導率の小さいタイプ I クラスレート Ba8Ga16Sn30
Ba8Ga16Sn30 はこれまで報告されているタイプ I クラスレートのどれよりも熱伝導率が小さい事を見出し
た。結晶構造解析によって,14面体中の Ba 原子はカゴの中心から 0.43Å もずれた四つの位置を占め
ることが判った。比熱の解析から求めたラットリングの特性温度は 20K であり,タイプ I クラスレートのな
かで最低であった。これらの結果から,分裂サイト間のラットリング/トンネリングが熱を伝える音響フォノ
ンを激しく散乱することが明らかになった。
[1] M. A. Avila, et al., “Ba8Ga16Sn30 with type-I clathrate structure: Dramatic suppression of heat
conduction”, Appl. Phys. Lett. 92, 041901 (1-4), 2008.
2.2 ラットリングのカゴサイズ依存性
ラットリングがカゴの体積にどのように依存するかを調べるために,Sr8Ga16Si30-xGex の単結晶を育成
し,比熱と熱電物性を測定した。Ge 組成の増加によりカゴの体積は 8%増えた。これに伴い熱伝導率
は結晶的挙動からガラス的なものに変化し,Sr のラットリング特性温度は 59K から 35K まで低下した。
この結果は14面体の膨張が非中心ラットリングを助長し,音響フォノン散乱を増強することを意味する。
[2] K. Suekuni, et al., “Cage-size control of guest vibration and thermal conductivity in
Sr8Ga16Si30-xGex”, Phys. Rev. B 75, 195210 (1-6), 2007.
2.3 複合充填による高性能熱電変換スクッテルダイトの創製
原子量と価数の異なる Ca と La を複合的に充填することで熱伝導率を抑制することを狙い,
Ca1-xLaxFe4-yCoySb12 の高密度多結晶試料を作製し,その性能指数を評価した。Ca0.3La0.6Fe3CoSb12 の
無次元性能指数 ZT は 700K で実用化の目標値 1.0 に達したので p 型の実用材料として有望である。
3.その他の成果
日本熱電学会(2007 年 8 月)での末國晃一郎の発表「ゲストの可動長に依存するタイプ I クラスレート
の格子熱伝導率」が「講演奨励賞」に選ばれた。
文献[1]の結晶構造と熱伝導率の図が Appl. Phys. Lett. 92巻4号の表紙を飾った。
- 39 -
新しい有機半導体材料の開発
瀧宮
和男(工学研究科
教授)
顔写真
幅 30mm
1.研究の概要
実用化に資する有機半導体材料を目指し,有機電界効果トランジスタ
(OFET)用半導体材料の開発研究を以下の点に重点を置きに行った。1) 標準的有機半導体で
あるペンタセンの代替となり得る高性能・高安定材料(ポスト・ペンタセン)の開発,2) 塗布
可能な可溶性有機半導体の開発。以下,成果を列記する。
2.研究成果
2.1 ジナフトチエノチオフェン(DNTT)の開発
従来の含硫黄縮合多環系材料の研究から,安定性と π 電子系の拡張を両立しうる分子設計指
針を確立し,これに則り dinaphtho[2,3-b:2',3'-f]thieno[3,2-b]thiophene (DNTT)という 6 個の芳香環
が直線状に縮合した新規化合物を開発した。蒸着により作製した薄膜トランジスタでの移動度
は 3.0 cm2/Vs に達し,大気中での安定性もきわめて優れていた。本材料は新規に開発された簡
便合成法により容易に合成でるため,実用材料としてのポテンシャルも高い。現在,次世代有
機半導体の標準(ポスト・ペンタセン)を目指し,大量合成法の確立を行っている。
[文献] Facile Synthesis of Highly π-Extended Heteroarenes, Dinaphtho [2,3-b:2',3'-f] chalcogenopheno
[3,2-b] chalcogenophenes, and Their Application to Field-Effect Transistors, T, Yamamoto, K. Takimiya,
J. Am. Chem. Soc., 129 (8), 2224–2225 (2007).
2.2 可溶性有機半導体材料の開発
有機半導体の利点の一つとして,塗布により半導体薄膜を作製できることが注目されている。
本研究では可溶性低分子材料を用いて,高性能な可溶性有機半導体材料の開発を試みた。薄膜
内で分子配向性を上げることができるような可溶性置換基とその導入法を種々試みた結果,p
型では,移動度が 1cm2/Vs を超え,世界最高レベルの溶液材料の開発に成功した。一方,n 型
においても,大気中でも安定で移動度が 0.1cm2/Vs を超える材料を見出した。
[ 文 献 ]
Highly
Soluble
[1]Benzothieno[3,2-b]benzothiophene
(BTBT)
Derivatives
for
High-Performance, Solution-Processed Organic Field-Effect Transistors, J. Am. Chem. Soc., 129 (51),
15732–15733 (2007).
Solution-Processible n-Channel Organic Field-Effect Transistors Based on
Dicyanomethylene-substituted Terthienoquinoid Derivative, S. Handa, E. Miyazaki, K. Takimiya, Y.
Kunugi, J. Am. Chem. Soc., 129 (38), 11684–11685 (2007).
3.その他の成果
日刊工業新聞(2007 年 9 月 21 日付)
「酸化防ぎ耐久性向上・有機半導体層に新素材」
日経産業新聞(2007 年 11 月 2 日付)「新有機半導体材料・安定性と高速化実現」
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機能性分子の組織化とオプトエレクトロニクス材料の開発
播磨
裕(工学研究科
教授)
1.研究の概要
高性能分子集積デバイスの開発を目途に,機能性分子の規則的な集積から
得られる有機半導体の組織化に関する研究を推進している。特に,エレクトロニ
クスやオプトエレクトロニクス材料への展開を視野に入れ,新規分子の合成と新しい機能の探索,デバ
イス評価,物性・デバイス評価のための新規計測技術の開発を行ってきた。
2.研究成果
2.1 電荷変調分光法による子薄膜中の電荷担体の分光学的検出
有機 EL 素子や有機薄膜太陽電池,有機トランジスタなどの有機デバイスの高効率化を達成するに
は,分子薄膜内での電荷移動の役割と機構の解明は必須である。本研究では分子薄膜内での電荷移
動を担うイオン種を分光学的に検出する新規な変調分光システムを開発した。特に今年度は,可視か
ら近赤外領域にわたる計測システムを設計・開発し,有機 EL 素子の HTL 層に広く用いられている
TPD や NPD 薄膜に適用した。その結果,これら有機分子のラジカルカチオンが溶液中で示す吸収帯
のうち,近赤外領域の光吸収帯が薄膜状態では消失していることを見出した。この事実は,近赤外の
吸収帯が intervalence-charge transfer によることを強く示唆している。また,本手法を透明な絶縁性薄膜
に適用し,従来の解釈では説明不可能な分光スペクトルを観測した。この新規な現象を理論的に解析
した結果,薄膜内での光干渉効果と電気光学 Kerr 効果によることを明らかにした。
2.2 高効率光エネルギー変換デバイスの開発
色素増感太陽電池(DSSC)のエネルギー変換効率の改善を目指し,DSSC 用色素の開発と並行し
て,TiO2 ナノ粒子の表面改質技術の検討を行った。Donor-π-acceptor 構造を有するオキサゾカルバゾ
ー系色素を合成し,機能評価と併せて基礎的な光物性を調査した。その結果,分子骨格に嵩高い置
換基を導入することにより,色素から TiO2 への電子注入効率化が 100%となることを見出した。また,
TiO2 ナノ粒子に Li-インターカレーションを行うことを基本とする新規表面処理技術により,有機色素を
用いる DSSC のエネルギー変換効率が 1.5~2 倍に向上することを見出した。高効率化の理由が光起
電圧の上昇にあり,これは表面に形成された電気双極子モーメント層によることを明らかにした。さらに,
より大きな双極子モーメント層の形成を予想し,TiO2 ナノ粒子への Na イオンのインターカレーションを
検討した結果,Li の場合に比較して高い効果が得られることを見出した。
[文献] Y. Harima et al. “Improvement of photovoltages in organic dye-sensitized solar cells by
Li-intercalation in particulate TiO2 electrodes”, Appl. Phys. Lett. 90(2007)103517-1-3.
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超原子価6配位炭素化合物の合成
山本
陽介(理学研究科
教授)
1.研究の概要
有機化学の世界の常識では,炭素やホウ素といった第二周期元素は超原
子価状態をとらないとされ,実際に SN2 反応では超原子価5配位炭素化合
物は遷移状態となっている。超原子価5配位炭素化合物の安定化・単離は非常に挑戦的な課題
であり,幾つか安定化を試みた例は報告されていたが成功した例はなかった。近年,当研究室
において立体的に強固な 1,8-ジメトキシアントラセン配位子を開発し,超原子価5配位炭素化
合物またホウ素化合物の合成及び単結晶 X 線構造解析に成功した。これらの研究から第二周期
元素の超原子価化合物を合成するためには立体的に強固な三座配位子が有効であることが分か
った。本研究では,これまでに全く研究例すら報告されていない超原子価6配位炭素化合物の
合成を目的とした。チオキサンテン骨格を有する新規な三座配位子を開発し,最終的に目的6
配位炭素化合物の合成と構造解析に初めて成功した。
2.研究成果
2.1 超原子価6配位炭素化合物の合成と構造
新規配位子で合成には非常に苦労したが,秋葉早稲田大学教授との共同研究により,新規に
開発した 1,8-ジメトキシチオキサンテン配位子を二つ有するアレン化合物の合成に成功し,そ
のアレンを米国カリフォルニア大学リバーサイド校の Prof.Reed との共同研究でジメチル化す
ることにも成功した。単結晶 X 線構造解析にも成功して,超原子価6配位炭素化合物の合成に
世界で初めて成功したことになった。X 線構造解析の結果によると,中心の炭素原子と周りの
酸素原子間の距離は 2.64-2.75 Å で炭素と酸素の van der Waals 半径の和(3.25 Å)よりよりも短い
ことが分かった。岩崎電気通信大学名誉教授・橋爪博士(理研)との共同研究により,精密電
子密度解析を行い,理論計算も行って,炭素原子と4つの酸素原子間すべてに電子密度が分布
していることが分かり,その炭素酸素間に求引的な相互作用が存在していることが示された。
また,硫黄原子上の置換基の効果について実験的に証明するために骨格にメトキシ基とフェノ
キシ基を二つずつ有するアレン化合物を新規に合成し,さらにジスルホキシド,ジスルホニウ
ムへと誘導した。これらの化合物の X 線構造解析の結果から,理論計算によって予想されたよ
うに,硫黄上の置換基の電子吸引性が強くなるにつれてその炭素と酸素原子間の求引的な相互
作用が強くなることが分かった。また,メトキシ基の酸素原子の電子供与性のほうがフェノキ
シ基の酸素原子のものよりも強いことを反映して,メトキシ基の酸素原子の方が中心炭素によ
り近くなっていることが分かった。これらの結果から中心炭素と周りの4つの酸素原子の間に
求引的な相互作用が存在していることを示すことができた。
[文献] Synthesis and Structure of a Hexacoordinate Carbon Compound, Torahiko Yamaguchi, Yohsuke
Yamamoto, Daisuke Kinoshita, Kin-ya Akiba, Yun Zhang, Christopher A. Reed, Daisuke Hashizume, and
Fujiko Iwasaki, J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, in press.
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非金属系水素貯蔵物質の設計
市川
貴之(IAMR
准教授)
1.研究の概要
水素貯蔵材料の特性を自在に制御する技術の確立のためには,その材料を
構成する物質の物性評価およびその反応機構の解明は避けて通れない。しかし,
これまでの水素貯蔵材料研究の多くは,企業主体でかつアプリケーションを強く意識したものであった。
このような中,我々のグループでは産学官および国際的な連携を強化しつつも,基礎に立ち返り,材
料が機能を発現するその機構に注目して,基礎的な研究を進めている。
2.研究成果
2.1 リチウムアミドと水素の反応性に関する研究
我々のグループは,以前,水素化リチウム(LiH)をアンモニア(NH3)雰囲気で機械的に粉砕すること
で,メカノケミカルに(LiH+NH3→LiNH2+H2)の反応を進行させることに成功している。本研究では,こ
の逆反応として LiNH2 と H2 の反応性を研究した。まず,閉鎖系では発生する NH3 の分圧により反応の
進行が抑制されて十分に反応は進行しないことが明らかとなった。そこで,開放系,特に水素気流下で
の反応性を調査した。結果として,NH3 の分圧を下げることが可能となり,閉鎖系では進行し得なかっ
た上記反応を進行させ,その反応を制御することに成功した。
[文献] H. Y. Leng, et al. “Investigation of reaction between LiNH2 and H2”, J. Alloys Compd. in press.
2.2 リチウム-マグネシウム-窒素系水素貯蔵物質の反応過程を解明
150℃以下の温度で 5.5 質量%以上の水素を吸蔵放出しうる唯一の材料系である Li-Mg-N-H 系水
素貯蔵物質の反応過程について報告を行った。本反応は,8LiH+3Mg(NH2)2→4Li2NH+Mg3N2 と記
述されてきたが,本研究により,一段階目として 8LiH+3Mg(NH2)2→5LiH+3LiMgN2H3+3H2 が進行し,
続いて,5LiH+3LiMgN2H3+3H2→(5-x)LiH+3Li(1+x/3)MgN2H(3-x/3)+(3+x)H2 の反応が連続的に進行す
ることを報告した。当初は二相の固相から二相の固相へと発展することで,水素放出反応が進行すると
考えられていたが,この報告により,二相の固相から単相が生成する水素放出機構が示された。
[文献] S. Isobe, et al. “Hydrogen Desorption Processes in Li-Mg-N-H Systems”, J. Phys. Chem. Sol. in
press.
3.その他の成果
3.1 招待講演
4月15-20日 SMEC 2006 –Study of Matter at Extreme Conditions 2007-, T. Ichikawa, H.Y. Leng, S.
Isobe, H. Fujii and Y. Kojima, “Hydrogen Storage and Structural Properties in Li-Mg-N-H System”
11月5-9日 PRICM-6 –The Sixth Pacific Rim International Conference on Advanced Materials and
Processing–, T. Ichikawa, S. Isobe, H.Y. Leng, K. Kojima and H. Fujii, “The Li-Mg-N-H Systems as
High Capacity Hydrogen Storage Media”
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新規有機典型元素化合物の効率的合成を指向した活性種
の創製と応用
河内
敦(理学研究科
准教授)
1.研究の概要
われわれは,特異な構造,結合特性または反応性を有する有機典型元素化合物の合成に取り組ん
でいる。典型元素の特性を最大限に活かした化合物を選択的かつ効率的に合成するには,既存の合
成法・反応剤に頼るばかりでなく,その化合物合成に適した新規な反応剤(活性種)を開発することが
重要となってくる。これまでにわれわれは,新規ケイ素反応剤として o-(フルオロシリル)フェニルリチウム
を開発した。今回,この反応剤を用いて,新規 14 族元素化合物の効率的な合成に成功した。
2.研究成果
2.1 o-(フルオロシリル)フェニルリチウムを用いた新規含 14 族元素環状化合物の合成
o-(フルオロジメチルシリル)フェニルリチウムとジクロロゲルミレンおよびジクロロスタンニレンとの反応
により,新規な含 14 族元素環状化合物の合成に成功した。
o-(フルオロジメチルシリル)フェニルリチウムに Et2O 中,−78℃で 0.5 モル量の GeCl2・dioxane を加え
た後,−60℃で 19 時間撹拌した。無機塩を除去した後,ヘキサンから再結晶すると,ベンゾシラゲルマ
シクロブテンが無色の結晶として収率 55%で得られた。この化合物の構造は,X 線結晶構造解析によ
って決定した。Ge−Si 結合長は 2.372Å であり,Ge−Si 単結合の標準的な値の範囲にあった。4 員環を
形成する 4 つの原子は,ほぼ同一平面上にあることがわかった。また,溶液中の 19F NMR は δ−155.78
(sept, 3JF-H = 8 Hz)に, 29Si NMR は δ15.29 (t, 5JSi-F = 9 Hz)および δ21.08 (d, 1JSi-F = 283 Hz)に観測され
た。
続いて,同様の条件で o-(フルオロジメチルシリル)フェニルリチウムと SnCl2 との反応をおこなった。
無機塩を除去した後,生成物をヘキサンから再結晶すると,今度は 1-シラ-2,3-ジスタンナインダンが無
色の結晶として収率 14%で得られた。この化合物の構造は,X 線結晶構造解析によって決定した。
Sn−Si 結合長は 2.573 Å であり,Sn−Si 単結合の標準的な値の範囲にあった。一方,Sn−Sn 結合長は
2.760 Å であり,Sn−Sn 単結合としてはやや短いことがわかった。5 員環を形成する5つの原子は,ほぼ
同一平面上にあった。また,溶液中の
19
F NMR は δ−150 (br)および δ−155.44 (s)に,29Si NMR は
δ20.84 (d, 1JSi-F = 286 Hz), δ19.96 (d, 1JSi-F = 286 Hz)および δ5.99 (1J[Si,117/119Sn] = 37 Hz,
2
J[Si,117/119Sn] = 6 Hz)に観測された。δ5.99 のシグナルは環内ケイ素原子のものであり,2つのスズ原子
とのスピン結合が現れている。
環内に異なる 14 族元素を含んだ 4 員環および 5 員環化合物の合成例はきわめて稀である。しかも
今回合成した化合物は,分子内に複数のフルオロシリル基を有している。現在,この構造特性を活かし
て,さらなる変換反応の検討をおこなっている。
- 44 -
4. センター活動内容
- 45 -
4.1 主催・共催会議報告
「複合強秩序相の物理と化学」研究会
理学研究科
教授
井上
克也
会議名称:「複合強秩序相の物理と化学」研究会
日程:2007 年 5 月 7 日(月) - 5 月 8 日(火)
会場:先端科学総合研究棟 302S 会議室
主催:基盤研究(A)結晶と磁性の chirality 分子キラル磁性班
共催:広島大学先進機能物質研究センター
概要: キラル磁性体およびマルチフェロイックス等の複合強秩序相を持つ結晶の最新の現状(実験結
果)および物性理論からの展望を議論し,将来展望についての方向性について集中的に議論し
た。
プログラム
5月7日(月)
12:50-13:00 はじめに
井上克也
13:00-13:50 キラル磁性体の異常 ESR
藤田敏之(東北大金研)
13:50-14:50 キラル磁性体の異常スピンダイナミックス
岸根順一郎(九州工大)
15:00-15:30 キラル磁気構造を持つ新キラル磁性体の合成と物
東川大志(広大院理)
15:30-16:10 有機マルチフェロイックス系の新物質探索
鈴木孝至(広大院先端)
16:10-16:40 新しいマルチフェロイック周辺化合物の合成と物性
速水真也 (広大院理)
16:40-17:00 新規無機キラル磁性体の合成,磁性
高坂勇輔 (青山学院大理工)
17:00-17:50 マルチフェロイック物質の電子状態と秩序発現
小口多美夫(広大院先端)
5月8日(火)
09:00-11:50 総合討論
11:50-12:00 まとめ
岸根順一郎(九州工大)
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充填スクッテルダイト A06 班ミニ研究会
総合科学研究科
教授
宇田川眞行
会議名称:充填スクッテルダイト A06 班ミニ研究会
日程:2007年9月1日(金) 13:30-18:40
会場:広島大学総合科学研究科 J201 教室
主催:スクッテルダイト特定領域研究 A06 班
共催:広島大学先進機能物質研究センター
概要:本研究会は動的測定や巨視的測定の研究者が一同に会して,特定領域研究「スクッテルダイト」の
最終年度にあたる時期に A06 班の成果のとりまとめと将来の研究方針を探るために開催された。ス
クッテルダイト特定領域の開始当初は,ゲスト原子のラットリング運動について多様な認識があった
が,本研究会において,大きな振幅を持つ非調和振動がラットリングではないかと認識されるように
なった。しかし,厳密な意味でのラットリングの概念構築の必要性が改めて確認された。
プログラム
13:30-13:45 はじめに
広島大学 宇田川眞行
13:45-14:25 熱電変換クラスレート単結晶のラットリングと熱伝導
広島大学 高畠 敏郎
14:25-15:05 比熱測定による充填スクッテルダイト La 化合物の研究
九州工業大学 松平 和之
15:05-15:45 充填スクッテルダイト RFe4Sb12(R=La,Pr),クラスレート化合物の弾性特性
広島大学 石井 勲
16:05-16:45 中性子散乱で観るかご状物質のフォノン
産業技術総合研究所
16:45-17:25 X 線非弾性散乱から見たゲスト・モード
Spring 8 筒井 智嗣
17:25-17:50 充填スクッテルダイトの Raman 散乱
広島大学 荻田 典男
17:50-18:20 カゴ状希土類ホウ化物 RB12(R=Yb,Zr)の最近の研究から
広島大学 伊賀 文俊
18:20-18:40 Discussion
広島大学 宇田川眞行
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李 哲虎
第 10 回第一原理電子状態計算に関するアジアワークショップ
先端物質科学研究科 教授 小口多美夫
会議名称:The 10th Asian Workshop on First-Principles Electronic Structure Calculations (ASIAN10)
第 10 回第一原理電子状態計算に関するアジアワークショップ
日程:2007 年10月29日-31日
会場:広島大学中央図書館ライブラリホール・広島大学学士会館レセプションホール
主催:ASIAN10 実行委員会
共催:Asia Pacific Center for Theoretical Physics (APCTP)
広島大学先進機能物質研究センター,広島大学大学院先端物質科学研究科
概要:本アジアワークショップは,1998 年に第一原理電子状態計算に関する日韓ワークショップとしてスタ
ートし,日韓を往復した後,2001 年に第4回ワークショップが台湾国立大学で開催されたのを機に
アジアワークショップとして装いを新たにした。その後,2005 年の上海での第 8 回開催から中国が
正式に加わり,毎年秋に開催されている。本ワークショップの主たる目的はアジアにおける第一原
理電子状態コミュニティーの情報交換,交流を図ることである。この目的のために,日台中韓4カ国
の国際組織委員は,毎回,アジア諸国からの招待講演者(全体で約 20 名)を推薦し,興味ある最
新の話題発掘を計るとともに,主催国の組織委員を中心に実行委員会を組織し,欧米からの招待
講演者を3〜5名推薦して多角的な見地から口頭発表講演プログラムを構成している。また,ポスタ
ーセッションを設けて,一般参加者の発表の場としている。
今回の ASIAN10 では5名の欧米よりの招待講演者,20 名のアジア地域よりの招待講演者が口頭
発表セッションを構成し,90 件の一般講演はポスター講演として発表され,活発な議論及び意見交
換がなされた。開催に際しては,Asia Pacific Center for Theoretical Physics (APCTP)からの支援
に加えて,広島大学先進機能物質研究センター,広島大学大学院先端物質科学研究科よりのサ
ポートを得た。全登録参加者数は 174 名でその国・地域別内訳は中国 13,ドイツ 2,イタリア 1,日
本 108,韓国 26,ロシア 1,シンガポール 1,台湾 21,米国 1 である。ここで特記すべきは,大学院
生の参加が多かったことで,68 名(全体の 39%)であったことである。
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第四回ノルウェー・日本ワークショップ
先進機能物質研究センター 教授 小島由継,先端物質科学研究科 教授 小口多美夫
会議名称:The 4th Norway-Japan Workshop in Hiroshima University
第四回ノルウェー・日本ワークショップ
日程:2008年1月21日(月)-22日(火)
会場:広島大学大学院先端物質科学研究科302S
主催:広島大学先進機能物質研究センター
共催:ノルウェーエネルギー工学研究所,広島大学水素プロジェクト研究センター
概要:本ワークショップは,2007年に水素貯蔵物質に関する第一回ノルウェー・日本ワークショップとして
スタートし,日諾を往復しながら開催している。本ワークショップの主たる目的は水素貯蔵物質コミュ
ニティーの情報交換,交流を図ることであり,学生も含め全て英語による口頭発表,意見交換を行
った。
参加者数:32名
講演数:口頭発表23件
Program
21st January 2008
9:30~9:40
Prof. Yoshitsugu Kojima, “Opening Talk”
9:40~10:10
Mr. Hiroki Miyaoka, “Reaction Mechanism of the Li-C-H System”
10:10~10:30
Mr. Wataru Ishida, “Hydrogenating Properties of Li-Graphite Intercalation
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Compounds”
10:30~11:00
Dr. Shigehito Isobe, “XAFS Analysis of Catalysts in the Li-N-H System”
11:00~11:30
Mr. Takao Tsumuraya, “First-principles Study on Metal Ammine Complexes
for Hydrogen Storage.”
11:30~12:00
Dr. Takayuki Ichikawa, “Recent Experimental Activities in Hiroshima Group”
13:30~15:00
Laboratory Tour
15:00~15:40
Prof. Hironobu Fujii, “Reaction of LiH and Ammine-Complex Compounds”
15:40~16:10
Dr. Ole Martin Løvvik (IFE), “Properties of complex hydrides from first
principles calculations”
16:10~16:40
Dr. Magnus Sørby (IFE), “Structure and Decomposition of Ammine-Complex”
16:40~17:00
Mr. Taisuke Ono and Dr. Takayuki Ichikawa, “Decomposition Properties of
LiAl(NH2)4”
17:00~17:20
Mr. Toru Kimura, “Kinetics in the Catalyzed MgH2”
22nd January 2008
9:30~10:30
Prof. Yoshitsugu Kojima and Miss Chie Ohmatsu, “Ammonia as Hydrogen
Storage Media”
10:30~11:10
Prof. Somei Ohnuki (Hokkaido University), “TEM Observation by the
Environmental Cell”
11:10~11:30
Mr. Koichi Hosokawa (Chugoku Kogyo Co. Ltd.), “Development of
Composite Cylinder”
11:30~12:00
Prof. Bjørn Hauback (IFE), “Research Activity in IFE & Some Results on
Borohydride”
13:00~13:30
Dr. Masami Tsubota, “Crystal Structure of Lithium-Imide and Other Materials”
13:30~14:00
Prof. Tamio Oguchi, “Electronic structure and vibration modes of amides and
alanates”
14:00~14:30
Dr. Hilde Grove (IFE), “Fluorine-Substitution in Alanates”
14:30~15:30
Prof. Masayuki Udagawa, “Analyses by Raman Scattering Method”
15:30~16:00
Dr. Chengzhang Wu, “Reaction Properties of LiH-AB Systems”
16:00~16:20
Mr. Tessui Nakagawa, “Hydrogen Storage Properties of M-B-H Systems”
16:20~16:40
Mr. Satoshi Hino, “Thermodynamic and Kinetic Properties of Mg-Ammine
Complex”
16:40~17:10
Dr. Yongming Wang, “Kinetic Improvement of the Li-Mg-N-H System”
17:10~17:20
Prof. Hironobu Fujii, “Closing Talk”
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「ラットリング振動が誘起する新物性」研究会
総合科学研究科
教授 宇田川 眞行 ・先端物質科学研究科 教授 高畠 敏郎
会議名称:「ラットリング振動が誘起する新物性」研究会
日程:2008年3月27-29日
会場:広島大学大学院先端物質科学研究科 401N
主催:広島大学先進機能物質研究センター
概要:最近我が国において,カゴに内包されたゲスト原子のラットリング振動が誘起する新規物性
が相次いで見出されている。例えば,強結合超伝導(β-パイロクロア KO2O6),重い電子状
態(充填スクッテルダイト SmOs4Sb12),ガラスのような熱伝導率(タイプ I クラスレー
ト Ba8Ga16Sn30)などである。一方,これらの特異な物性の出現には電荷キャリヤと局所
振動との相互作用が重要であることが指摘されている。この様に,ゲスト原子の局所振動モ
ードがもたらす新たな量子現象についての研究が,実験・理論両面において急速に進展して
いる。従って,ラットリング振動が誘起する新たな量子現象を主題とした研究会を開催する
ことは,関係する広い分野の研究者の相互理解を深め,日本オリジナルの新分野を展開して
いく上で,極めて時宜を得ている。
参加者数:45 名
講演数:口頭発表 29 件
プログラム
3 月 27 日(木)
13:00-13:10 宇田川眞行
広島大学
総合科学研究科
はじめに
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13:10-13:25 上田和夫
13:25-14:10 高畠敏郎
14:10-14:40 石井 勲
15:00-15:30 藤秀樹
15:30-16:00 島田賢也
16:00-16:45 谷垣勝巳
17:00-17:30 豊田直樹
17:30-18:00 高須 雄一
3 月 28 日(金)
09:15-10:00 中山恒義
10:00-10:35 堀田貴嗣
10:45-11:20
三宅和正
11:20-12:05 岩佐和晃
13:00-13:30 青木勇二
13:30-14:00 松平和之
14:00-14:30 根本祐一
東京大学
物性研究所
広島大学
先端物質科学研究科
広島大学
先進機能物質研究センター
神戸大学
理学研究科
広島大学
放射光科学研究センター
東北大学原子分子機構・
大学院理学研究科
東北大学
理学研究科
聖マリアンナ医科大学
生理学教室物理学分野
新学術領域研究申請に向けて
北海道大学
工学研究科
首都大学東京
理工学研究科
大阪大学大学院
基礎工学研究科
東北大学
理学研究科
首都大学東京
大学院理工学研究科
九州工業大学工学部
ネットワークとゲストイオンが織りなす特異なダイナミック
ス
局所フォノンによる近藤効果
クラスレート化合物の非中心ラットリングによる熱伝導率
の抑制
充填スクッテルダイト RFe4Sb12(R=La,Pr),クラスレート
Ba8Ga16Sn30 の弾性特性
カゴ状物質のホスト核の NMR 研究
Ba8Ga16Sn30 の軟 X 線・硬 X 線光電子分光
軟 X 線光電子分光から理解できるラットリングの描像
テラ波光学伝導スペクトル:タイプ I 型クラスレート化合物
におけるラットリングと伝導電子ダイナミックス
クラスレート化合物のゲストイオンの微視的運動状態と格
子振動
誘起イオン 4 極子秩序と不純物効果
中性子散乱による充填スクッテルダイトの
低エネルギーフォノン構造の研究
比熱から見た充填スクッテルダイトのラットリング
充填スクッテルダイトの格子比熱
15:45-16:15 李 哲虎
新潟大学大学院
自然科学研究科
北海道大学
創成科学共同研究機構
新潟大学工学部
機能材料工学科
産業技術総合研究所
16:30-17:00 筒井智嗣
JASRI
17:00-17:45 宇田川眞行
広島大学
総合科学研究科
ラマン散乱によるゲスト原子の運動状態の解明
広島大学
先進機能物質研究センター
広島大学
先端物質科学研究科
新潟大学工学部
機能材料工学科
室蘭工大
新しい希土類化合物 RPd5Al2 の低温物性
14:45-15:15 柳澤達也
15:15-15:45 佐々木進
3 月 29 日(土)
9:00-9:20
R. Ribeiro
9:20-9:50
伊賀文俊
9:50-10:20
武田直也
10:30-11:00 関根ちひろ
11:00-11:30 山浦淳一
11:30-12:00 菅原 仁
12:00-12:10 高畠敏郎
超音波によるラットリングとトンネリングの研究
充填スクッテルダイト NdOs4Sb12 のラットリング
La-NMR による La3Pd20X6(X=Ge,Si)のラットリング
中性子散乱によるかご状物質 La3Pd20Ge6 のフォ ノンの
研究
カゴ状物質の X 線非弾性散乱
東京大学
物性研究所
徳島大学
総合科学部
広島大学
先進機能物質研究センター
カゴ状ホウ化物の話題:Yb1-xTmxB6 の近藤効果と
Zr1-yRyB12 の超伝導
Tm2Rh12P7 と LaOs4P12 の比熱
重希土類元素を含む充填スクッテルダイト化合物
におけるラットリング効果
β型パイロクロア酸化物におけるラットリングと超伝導
充填スクッテルダイト化合物の試料育成の現状
おわりに
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第一回水素エネルギー利用開発研究会
先進機能物質研究センター 教授 小島由継
会議名称:第一回水素エネルギー利用開発研究会
日程:2007年9月12日(金)
会場:広島市工業技術センター3階研修室
主催:広島大学水素プロジェクト研究センター,広島大学先進機能物質研究センター,
広島市産業振興センター
後援:中国経済産業局
協賛:独立行政法人科学技術振興機構,(社)中国地域ニュービジネス協議会,
広島大学水素プロジェクト研究会
概要:本研究会は,広島大学水素プロジェクト研究センターと(財)広島市産業振興センターが共同主催
で2007年9月に立ち上げ,年数回の外部講師による口頭発表講演プログラムを構成している。本
研究会の主たる目的は,中四国地方を中心とした産官学各組織が集まって,水素エネルギー社会
構築(脱化石燃料型社会)を目指し,啓蒙・基礎および応用研究等様々な活動,交流,情報交換
を図ることである。
参加者数:59名
講演数:口頭発表3件
プログラム
9月12日(水)
13:30-13:45 はじめに
小島由継
13:45-14:45 水素エネルギーへの国の取り組みと地方への展開
中国経済産業局資源エネルギー環境部
宅見幸一
14:50-15:50 固体高分子形燃料電池の開発の現状と将来展望
産業技術総合研究所固体高分子形燃料電池先端基盤研究センター
長谷川弘
16:00-17:00 水素貯蔵技術の開発の現状と将来展望
広島大学先進機能物質研究センター
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小島由継
第二回水素エネルギー利用開発研究会
先進機能物質研究センター 教授 小島由継
会議名称:第二回水素エネルギー利用開発研究会
日程:2007年12月21日(金)
会場:広島大学東千田キャンパス B棟2階大講義室
主催:水素エネルギー利用開発研究会,広島大学水素プロジェクト研究センター,
広島大学先進機能物質研究センター,広島市産業振興センター
協賛:広島大学産学連携センター
概要:本研究会は,広島大学水素プロジェクト研究センターと(財)広島市産業振興センターが共同主催
で2007年9月に立ち上げ,年数回の外部講師による口頭発表講演プログラムを構成している。本
研究会の主たる目的は,中四国地方を中心とした産官学各組織が集まって,水素エネルギー社会
構築(脱化石燃料型社会)を目指し,啓蒙・基礎および応用研究等様々な活動,交流,情報交換
を図ることである。
参加者数:110名
講演数:口頭発表3件
プログラム
12月21日(金)
13:30-14:30 水素市場の現状と水素利用小型燃料電池の取組み
岩谷産業株式会社・水素エネルギー部・シニアマネージャー
宮崎淳
14:30-15:30 バイオマス廃資源からのバイオ水素,アンモニア生産
広島大学大学院・先端物質科学研究科・分子生命機能科学専攻・教授
西尾尚道
16:00-17:00 サステイナブルソサエティを目指した水素燃料電池車の挑戦
トヨタ自動車株式会社・FC開発部・主査
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広瀬雄彦
第三回水素エネルギー利用開発研究会
先進機能物質研究センター 教授 小島由継
会議名称:第三回水素エネルギー利用開発研究会
日程:2008年3月14日(金)
会場:広島大学 東広島キャンパス 先端研401N
主催:水素エネルギー利用開発研究会,広島大学水素プロジェクト研究センター,
広島大学先進機能物質研究センター,広島市産業振興センター
協賛:広島大学産学連携センター
概要:本研究会は,広島大学水素プロジェクト研究センターと(財)広島市産業振興センターが共同主催
で2007年9月に立ち上げ,年数回の外部講師による口頭発表講演プログラムを構成している。本
研究会の主たる目的は,中四国地方を中心とした産官学各組織が集まって,水素エネルギー社会
構築(脱化石燃料型社会)を目指し,啓蒙・基礎および応用研究等様々な活動,交流,情報交換
を図ることである。
参加者数:68名
講演数:口頭発表3件
プログラム
3月21日(金)
13:30-14:30 超臨界流体を用いたバイオマス利用の水素製造
広島大学大学院・工学研究科・機械システム工学専攻・教授
松村幸彦
14:30-15:30 水素鉄道車両と鉄道による水素輸送
鉄道総合技術研究所・浮上式鉄道技術研究部・低温システム研究室・室長
岩松勝
16:00-17:00 酸素透過膜を利用したメタンからの水素製造
東北大学大学院・工学研究科・准教授
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高村仁
物性セミナー開催状況(IAMR 主催)
第 293 回
2007 年 4 月16日(月)16:00-
先端科学総合研究棟 310W 号室
F. Studt 氏,Technical University of Denmark
タイトル
第 294 回
Predicting Hydrogenation/Dehydrogenation Reactions from Scaling Relations
2007 年 4 月 24 日(火)16:00-
理学部 E211 号室
Mohamedally Kurmoo 氏,Laboratoire de Chimie de Coordination Organique
タイトル
第 295 回
Communicating Electrons: π-π, π-d and d-d in Molecular Materials
2007 年 4 月 25 日(水)16:00-
理学部 E104 号室
Dominique LUNEAU 氏,Universite Claude Bernard Lyon 1
Coordination Chemistry and Molecular Based Magnetic Materials
第 296 回
2007 年 5 月 7 日(月)16:30-
先端科学総合研究棟 310W 号室
Alexander Buzdin 氏,Condensed Matter Theory Group, University Bordeaux I
タイトル
第 297 回
Coexistence of Ferromagnetism and Superconductivity
2007 年 6 月 28 日(木)14:30-
先端科学総合研究棟 401N 号室
Charles A. Schmuttenmaer 氏,Department of Chemistry, Yale University
タイトル
Studies of interface polarization and magnetization dynamics using terahertz emission
spectroscopy
第 298 回
2007 年 7 月 24 日(火)14:00-
先端科学総合研究棟 304S 号室
橋本 壽正 氏,東京工業大学大学院理工学研究科教授
タイトル
第 299 回
熱伝導測定でどこまでわかるか
2007 年 9 月 5 日(水)15:00-
先端科学総合研究棟 401N 号室
藤 秀樹 氏,大学院先端物質科学研究科准教授
タイトル
第 300 回
NMR から見た重い電子超伝導体 UBe13 の超伝導状態
2007 年 9 月 5 日(水)16:00-
先端科学総合研究棟 401N 号室
宇田川 眞行 氏,総合科学研究科教授
タイトル
ラマン散乱で見たカゴ状物質中の原子運動の特徴
石井 勲 氏,先進機能物質研究センター
タイトル
超音波測定でみるカゴ状化合物の弾性特性
三宅 和正 氏,大阪大学大学院基礎工学研究科教授
タイトル
第 301 回
非調和フォノンによる普通でない電子状態
2007 年 9 月 11 日(火) 14:00-
先端科学総合研究棟 304S 号室
矢田 静邦 氏,長崎総合科学大学客員教授
タイトル
蓄電デバイス(リチウムイオン電池・キャパシタ)用ナノカーボン
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第 302 回
2007 年 10 月 4 日(木)15:00-
理学部 C212 号室
菅 滋正 氏,大阪大学大学院基礎工学研究科教授
タイトル
光電子分光による強相関電子状態の研究:-軟 X 線によるバルク敏感 3 次元フェルミオ
ロジーと硬 X 線による真のバルク電子状態の解明-
第 303 回
2007 年 10 月 9 日(火) 16:00-
先端科学総合研究棟 405N 号室
H. Ebert 氏,Department Chemie und Biochemie, Physikalische Chemie,Universitt Mnchen, Germany
タイトル
Influence of relativistic and correlation effects in the photoemission of transition metal
systems
第 304 回
2007 年 11 月 2 日(金)16:00-
先端科学総合研究棟 405N 号室
I. Solovyev 氏,物質材料研究機構
タイトル
第 305 回
Combining DFT with Model Many-Body Methods
2007 年 11 月 7 日(水)16:20-
理学部 C212 号室
岩住俊明 氏,高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所准教授
タイトル
第 306 回
量子常誘電体 SrTiO3 における紫外線誘起局所反転対称性破綻
2007 年 11 月 9 日(金)13:30-
先端科学総合研究棟 310W 号室
C. Friedrich 氏,Research Center Jlich, Germany
タイトル
Efficient Implementation of the GW Approximation Within the All-Electron FLAPW
Method and a TDDFT Approach to Spin Waves
第 307 回
2007 年 12 月 21 日(金)13:30-
東千田キャンパス B 棟2階 大講義室
宮崎 淳 氏,岩谷産業株式会社水素エネルギー部シニアマネージャー
タイトル
第 308 回
水素市場の現状と水素利用小型燃料電池の取組み
2007 年 12 月 21 日(金)14:30-
東千田キャンパス B 棟2階 大講義室
西尾 尚道 氏,先端物質科学研究科分子生命機能科学専攻教授
タイトル
第 309 回
バイオマス廃資源からのバイオ水素・アンモニア生産
2007 年 12 月 21 日(金)16:00-
東千田キャンパス B 棟2階 大講義室
広瀬 雄彦 氏,トヨタ自動車株式会社 FC 開発部主査
タイトル
第 310 回
サステイナブルソサエティを目指した水素燃料電池車の挑戦
2007 年 12 月 7 日(金)15:00-
理学部 C104 号室
Mohamedally Kurmoo 氏,Université Louis Pasteur Strasbourg
タイトル
第 311 回
Multifunctional Materials: Molecular Porous Magnets
2007 年 12 月 27 日(木)11:00-
先端科学総合研究棟 405N 号室
山本 真幸 氏,ハンブルク大学第一理論物理学研究所
タイトル
半導体でのスピン軌道相互作用をもちいた三端子スピンフィルター
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第 313 回
2007 年 12 月 17 日(月)16:00-
理学部 C212 号室
繁政 英治 氏,自然科学研究機構分子科学研究所
タイトル
第 314 回
放射光軟X線を利用した原子分子分光
2007 年 12 月 20 日(木)16:00-
理学部 C212 号室
坂田 修身 氏,SPring-8 利用促進部門
タイトル
表面 X 線回折法のハイ・スループット化を目指した放射光逆格子イメージング法
の開発とその方法を用いた表界面ナノ構造評価
第 315 回
2008 年 1 月 15 日(火)16:00-
先端科学総合研究棟 304S 号室
Ole Martin Lovvik 氏,Institute for Energy Technology, Norway
タイトル
第 316 回
Properties of thermoelectric materials from first-principles calculations
2008 年 2 月 5 日(火)16:00-
先端科学総合研究棟 310W 号室
Arno Schindlmayr 氏,Research Center Jülich, Germany
タイトル
Electronic Excitations and Theoretical Spectroscopy
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4.2 博士論文題目
学生氏名:宇津 恒,主査:城 健男(先端物質科学研究科・教授)
題目:Fe3O4 における Verwey 転移と複素数の軌道秩序
学生氏名:尾上 允敏,主査:小口 多美夫(先端物質科学研究科・教授)
題目:First-principles study of MNiSn (M=Ti, Zr and Hf) and ZrNCl
学生氏名:姜 新東,主査:山本 陽介(理学研究科・教授)
題 目 : Synthesis,
Isomerization,
and
Reactivity
of
Hypervalent
Pentacoordinate
Spirophosphoranes and Spiroarsoranes Bearing Bulky Bidentate Ligands
学生氏名:重藤 啓輔,主査:高畠 敏郎(先端物質科学研究科・教授)
題目:Magnetocrystalline Anisotropy and Weak Ferromagnetism in Cerium-Based Ternary
Compounds CeIr3Si2 and Ce4Ni3Pb4
学生氏名:西嘉山 悠介,主査:小口 多美夫(先端物質科学研究科・教授)
題目:First-Principles Studies on the Superconductors Y2C3 and La2C3
学生氏名:増原 直治,主査:井上 克也(理学研究科・教授)
題目:The Studies on Engineering the Structures and Physical Properties of Crystalline Solids
by the Assembly of Versatile Molecular Building Units
学生氏名:宮岡 裕樹,主査:小島 由継(先端物質科学研究科・教授)
題目:リチウム‐炭素‐水素系物質の水素貯蔵機構
学生氏名:薮田 久人,主査:高畠 敏郎(先端物質科学研究科・教授)
題目:First-Order Ferromagnetic Transition and Magnetocaloric Effect in MnFe(P, As) and
MnFe(P, Ge)
学生氏名:山口 虎彦,主査:山本 陽介(理学研究科・教授)
題目:Development of a Novel Tridentate Ligand with the Thioxanthene Skeleton and Its
Application to Synthesis of Hypervalent Compound
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学生氏名:山根 庸平,主査:井上 克也(理学研究科・教授)
題 目 : Order-disorder phase transition and ionic conductivity in solid solution
(CsHSO4)-(CsH2PO4) system and RbPbF3
学生氏名:李 ダ林,主査:佐野 庸治(工学研究科・教授)
題目:Nobel metal-doped Ni/Mg(Al)O catalysts for the reforming of methane and propane
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http://www.hiroshima-u.ac.jp/iamr/
Fly UP