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色の研究 part2
〈愛媛県教育長賞〉 色の研究 part2 ∼ 植物の色素 ∼ 西予市立野村中学校 1 1年 弓 削 綾 子 指導教諭 岩 本 数 明 開したらすぐに取り出して前線(展開液が上がった 研究の動機 所の線)に鉛筆で印を付ける。分離した色素の先端、 水性ペンの色素分離から植物の色素まで発展させ た、昨年の「色の研究・ペーパークロマトグラフィ 中心と思われる所にも印を付ける(昨年、一旦出て ー」の展開液を換えて、再チャレンジしてみようと いた色素も時間が経つと薄れてきたため)。 (2) 思った。 また、中学の理科の授業で「光合成」についてオ 各色素の移動率Rf値を求める。 移動率(Rf値)= オカナダモを使って学習した。乾燥された海草、お 各色素の原点からの移動距離 原点と前線の間の距離 茶の色素についても知りたいと思った。 4 2 (1) 準備物 (1) 用具(省略) (2) 薬品 実験 展開液を決定する。 ア 昨年、ほうれん草はメタノールで一色の展 開だったので、展開液を検討し直した。メタ ア メタノール(色素抽出液) ノールに加え、ベンジン、マニキュア除光液 イ ベンジン(展開液材料) (以下、アセトン)を水性ペンで試した。 ウ マニキュア除光液(展開液材料) イ ベンジン単独では上がらなかった。ベンジ ンとアセトンの混合液では、ベンジンの比率 3 が高くなると上がらない。分離はアセトンが 方法 (1) きれいだった。 展開液を決定する。 ウ 水性ペンと油性ペンを用い、昨年のデータと比較 ジン、それらの混合液を簡易展開で比較して する。 (2) ほうれん草を、前項同様にアセトン、ベン みた。すると,水性ペンの時とは逆で、単独 色々な材料の色素を分離する。 ではあまり上がらず,混合液でよく展開した。 材料を乳鉢に入れ、乳棒で押しつぶす。メタノー 特に5:2は、一つ一つの色 ルを加え、抽出液を濃縮する。 ろ紙の下から3cmの所に鉛筆で横線(ベースライ が離れて、かかる時間も ン)を引き、上は約2cmの所を山折りしておく(ろ 短かった。今回はこの5:2 紙が展開槽の壁面にくっついたり、反ったりするの を用いた。 (2) を防ぐ)。 色素を分離する∼生葉∼ (1枚のろ紙に四つスポッ ベースラインにボールペンの芯で抽出液をとり、 小さな点を付ける(スポット)。一度ではなく、乾 トし、平均値を求める) かしながら何回も付 ア ほうれん草 け、濃くしつつ、大き とてもきれいに分離され驚い く広がらないように注 た。植物の色素は、水に溶け 意する。(テーリングを ず、石油のようなにおいの 防ぐ。) するアセトン・ベンジン混 展開液面からベース 合液に溶け出ることから、 ラインまでは1cm以上あ 色素も油の仲間なのかもし ける。ろ紙はまっすぐ れない。 立て、ふたをする(展 黄色とうすい黄色の色素 開液を充満させる)。展 はくっついて一色のように - 7 - も見えるが、上がっていく途中では明らかに分かれ エ ていたため別の二つの色素と考えた。経過観察も大 焼きのり 一番上に黄色系が出ていない。黄緑・緑・うぐい 事である。 す色の3色が現れた。紅茶同様、元々黄色の色素が 原点には緑色が残っている。まだ分離されずに残 ないか、製造工程により色素がなくなったのだろう っている色素があるのだろうか。しかし、今回は4 か。 色とみなした。 5 移動率(Rf値)を表にし、インターネット上にあっ まとめ(わかったこと)と感想 ○ た数値と比較した(表は全て省略)。 分離させたい素材によって、それぞれ適した 展開液があるということがわかった。 ○ 単独では展開させることができなかった薬品 も、他の薬品を混ぜることによって、展開させ ることのできる性質に変わるのは不思議だと思 った。 イ 青じそ(以後グラフも省略) ○ 青じそという名前だが,緑色の葉である。ほうれ 葉の色素を分離させる薬品が身近な(町の薬 局で売っている)ところにあった。今回、秋に ん草同様の4色が、きれいに分離した。 色づく紅葉までの変化を調べることができなく しかし、原点にはほうれん草と違う茶色が残ってい て残念だった。季節によって、どのように変化 る。 するのか興味がわいた。 ウ 赤じそ ○ 緑色した「ほうれん草」から緑色の色素・ク 葉は赤い(葉の表は赤紫だが、裏には少し緑色部 ロロフィルが出てくることは予想していたが、 分もある)のに青じそと同じ四つの色素が現れ、ど 赤じそ,そして乾燥されたものからも光合成色 の色素もほぼ同じRf値で分離した。 素が現れて驚いた。それも4色!。 特にβカロチン、キサントフィルと思われる色素 ○ 現れた色と移動率Rf値を分析して、色素の種 の平均Rf値は青じそと全く同じだった。青じそ同様、 類を判別しようとしたが、紅茶のように現れた 原点に茶色のスポットが残った。 色と移動率Rf値が文献データと一致せず、決定 (3) 色素を分離する。∼乾燥しているもの∼ ア しづらいこともあった。見た目の色を表現しに 緑茶 くいこと、上昇した色素までの距離の分かりに 生葉と同じように4色素がきれいに分離された。 くさが要因である。 乾燥されていても(熱を加えても?)、色素は含ま ○ れたままのようだ。 イ 時間が経つと色あせてしまったことが残念だっ 紅茶 た。ラミネーターにかけて空気を遮断してみた 緑茶と違って黄色系が出ず、緑とうすい緑の二つ が、やはり色あせた。空気が退色の原因ではな の色素しか現れなかった。紅茶の葉には元々黄色の いことは分かった。光が原因なのかもしれない。 色素が無いのか、それとも紅茶独特の製造工程によ ○ って失ったのだろうか(発酵?)。 理科の授業のオオカナダモを利用した実験 (BTB)と、今回の研究で水草や海草も光合 現れた緑の色素の移動率Rf値は、うすい黄色のキ 成をしていることが分かった。 サントフィルの参考値に近いが黄色には見えないの ○ で、クロロフィルではないかと考えた。 ウ せっかくきれいに色素が分離・展開しても、 分離された色素の色はとても鮮やかで感動し た。自然界にある色素の美しさを知った。 乾燥わかめ きれいに4色素現れた。一番上がった色素が黄色 ではなく、黄緑に見える。そして、2番目はうすい 黄色ではなく濃い黄色だが、移動率(Rf値)は0.87だ った。どちらをβ-カロチンと判断すればいいのか 迷った。色だけから判断すると、全く違う色素が海 草にあるということかもしれない。 - 8 -