Comments
Description
Transcript
2005 年 1 月号
2005 年 1 月号 米国経済・金融市場の概況 ■ 米国経済は緩やかな拡大基調を続けている。こうした中、 FOMC 内部でインフレ・リスクに対する懸念が強まってい ることが明らかとなり、今後の利上げテンポが加速する との見方が広がっている。 ■ 家計部門では、消費活動の持ち直しが見られる。2 カ月連 続して悪化していた国内自動車販売は 12 月に大幅増とな った。軟調さが伝えられたクリスマス商戦は、商品券や オンライン・ショッピングの普及・拡大を含め、後半に かけて盛り返した模様である。雇用情勢も改善傾向にあ る。 ■ 企業部門では、設備投資の拡大基調が続いている。企業 マインドも持ち直しているほか、生産活動も回復の広が りが見られる。 ■ コア・インフレ率は、足もと低位に留まっており、米国 経済は、景気・物価ともに安定的な状況にある。もっと も、景気については、先行系列のこれまでの動きから、 05 年前半に鈍化する可能性が示唆されている。 ■ 物価に関しては、1 月初めに公開された 12 月 FOMC の議事 録で、FOMC 内部においてインフレ・リスクの高まりをも たらしうる要因(ドルの減価、原油価格の高止まり、生 産性上昇率の鈍化)に注目が集まっていることが明らか になった。これを受け、金融市場では 2 月に加え、3 月 FOMC での小幅利上げをも織り込んでいる。 ■ 米政権では、20 日に始まる大統領就任演説を皮切りに、 一般教書演説、予算教書等、重要イベントが控えている。 こうした中、公的年金制度改革、税制改革、財政赤字半 減の実効性に、より一層注目が集まっている。 2005 年 1 月 12 日発行 ※当レポートは情報提供のみを目的として作成されたもので、商品の勧誘を目的としたものではありません。 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 04 年 7∼9 月期の実質G 04 年 7∼9 月期の実質GDP成長率(確定値)は暫定値の前期比年率+3.9%から DP成長率は前期比年率 同+4.0%へと小幅上方修正された。純輸出が年率▲5,880 億ドルから同▲5,832 億 +4.0%に修正(確定値) ドルへと赤字縮小の方向に修正され、実質GDP成長率に対する寄与度は▲0.27% から▲0.10%へと成長率を押し下げる度合いが縮小した。輸出の伸びが前期比年率 +6.3%から同+6.0%へと下方修正されたが、輸入の伸びも同+6.0%から同+ 4.6%へとより大きく下方修正された。 税引き後企業利益(在庫評価・資本減耗調整後)は、前期比▲2.0%から同▲4.2% へと下方修正された。国内非金融部門は同+1.3%から同+1.4%へと小幅上方修正 されたが、国内金融企業の利益が下方修正された影響が大きい。なお、8 月から 9 月にかけてのハリケーン被害による企業利益への影響には変更がない。 5 度目の利上げを実施し た 12 月 FOMC 12 月 14 日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)は、5 度目の小幅利上げを決 定し、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標は 2.00%から 2.25%へと引き上げ られた。12 月の利上げは、88 年以来、12 年ぶりである。 FOMC 後に発表された声明文は、11 月の非農業部門雇用者数が前月比+11.2 万人 (速報)と市場予想(前月比+20.0 万人)を下回ったことを受けて、雇用判断を小 幅下方修正した点を除けば、前回 FOMC(11/10)の声明文と同一内容であった。し たがって、声明文を読む限りでは、従来の「慎重なペース(measured pace)」に対 する解釈は変わらず、ゆっくりとしたテンポでの小幅な利上げが続くとの見方がで きるものであった。しかし、1月に公開された議事録は、インフレ・リスクを従来 よりも強く意識したものであり、利上げのテンポが速まる可能性を示唆している。 3 週間後に繰り上げられ た議事録の公表 議事録の公表は、従来「次回 FOMC の次の木曜日」とされていたが、12 月 FOMC に おいて「FOMC 開催後 3 週間後」と大きく繰り上げられることが決定された。声明文 には盛り込み切れない FOMC における議論の詳細を、次の FOMC よりも前に公表する ことで、政策判断に対する金融市場参加者の理解を深め、政策効果を最大化すると 共に、次回 FOMC までの地ならしを図る狙いがあるものとみられる。 インフレ・リスクに対す る警戒感を強めた FOMC 12 月 FOMC の議事録はこの決定によって 1 月 4 日に公表されたが、その中身は、 声明文からは読みとれない、FOMC におけるインフレ・リスクに対する警戒感の強ま りを明らかにするものであった。以下、議事録の内容について、詳しく見てみよう。 雇用・消費・投資につい ては楽観的 家計部門に関しては、まず 11 月雇用統計の結果を「失望的」としながらも、長い 目でみれば雇用情勢は回復しており、今後もその基調が続くとの判断を示した。雇 用回復は、労働力人口の増加を吸収するのに「十分なテンポ」で進展しているとの 見方である。こうした雇用情勢の回復に加えて、株価や住宅価格の上昇による純資 産の増大と、相対的に低位に留まる金利環境が、家計支出を後押しすると指摘して いる。また、高止まりしてはいるが下落に転じた原油価格の動向も、実質可処分所 得を押し上げる要因との見方や、実質金利の低位推移が耐久財消費や住宅投資を促 すとの見方も示された。 企業部門については、設備投資を規定するファンダメンタルズは「極めて良好」 のようだとし、設備投資は力強く拡大するとの楽観的な見通しである。もっとも、 企業経営者の姿勢については、慎重姿勢が続いているのかどうかについて見方が分 かれている。また、設備投資を巡る不透明要因として、2004 年末の設備投資減税の 1 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 【 参考資料:FOMC 議事録(12/14)抜粋 】 ○11 月雇用統計は失望的であったが、数カ月という期間でみれば、雇用情勢は総じて徐々に改善してい る。雇用情勢の改善は今後も持続し、資産の増大や相対的に低位に留まる金利環境と相俟って、家計支 出のさらなる拡大を下支えする。 ○需要の増大、生産性上昇率の高まり、緩和的な金融環境といった中で、企業の設備投資は強い拡大基調 を維持しよう。 ○経済的な不稼働資源の存在と、長期的なインフレ期待が抑制されている中、インフレ率は落ち着いた推 移を辿ると予想される。FOMC 委員の多くが、ドルの減価やエネルギー高、労働生産性上昇率の減速の 可能性について、インフレ見通しに対するアップサイド・リスク(=インフレ懸念)を押し上げかねな い要因として指摘。しかし、均してみれば、インフレ率の安定に対するリスクは依然としてバランスし ている。 ○財政収支の見通しについての見方はまちまちである。一方、グローバルな不均衡については、米国の財 政赤字縮小だけではなく、海外主要国の内需拡大が必要であるが、後者について短期的に実現するとは 思われない。 ○金融市場では、長期的な成長期待の低下や、過度なリスク・テイクが行われている可能性を示唆する動 きがみられる。 (資料) FRB(仮訳:みずほ総合研究所) 失効と、世界的なハイテク投資の軟化が取り上げられた。 景気先行指数や一致・遅行比率といった指標が、05 年前半における米景気の鈍化 を示唆する動きを見せているが、景気に対する FOMC の見通しは極めて楽観的である ことが改めて示された格好である。 ドル安、原油高、生産性 上昇率の鈍化に警戒感 一方、物価については「リスクは中立」との判断を維持しつつも、FOMC メンバー の多くが「インフレ・リスクを高めうる動きが見られる」と指摘した。その動きと は、ドルの減価、高止まりしている原油価格、生産性上昇率の鈍化の 3 点である。 ドルの減価や原油価格が物価に波及する度合い(いわゆるパス・スルー)は「共 に限定的」ながら「物価上昇に対する潜在的圧力」であると述べ、警戒感を示して いる。生産性上昇率の鈍化も「かなり」進展しているほか、一部のメンバーは、失 業者や不稼働設備といったいわゆる「経済的不稼働資源」がどれだけあるのかに関 する「不確実性は高く」 、米国経済は「まもなく潜在的水準に達するのではないか」 との見方も示した。金融市場において中期的な期待インフレ率が高まっていること についても、 「04 年夏頃ほどにはインフレ期待が抑制されていないことの兆しでは ないか」と述べている。 ただし当面のインフレ率 は安定との見方を維持 もっとも、こうした懸念材料を否定する次のような見方が示されたことで、12 月 FOMC におけるインフレ・リスクに対する判断は、従来通り「中立」のまま据え置か れた。第一、最近の実証研究では為替レートから物価へのパス・スルーが低下して いることが示されている。第二、原油高にもかかわらず賃金の伸びは安定しており インフレ期待は高まっていないことを示唆している。長期の期待インフレ率も安定 している。第三、構造的な生産性上昇率が下方屈折したという明確な証拠はない。 実質FF金利はインフレ このように、インフレに対する判断は中立を維持しているが、FF金利の水準に 率を安定させるための水 ついては「インフレ率を安定させる水準よりも実質でみれば依然低位」との見方を 準よりも依然低位 示した。加えて、楽観的な景気認識の下、 「追加利上げを行わなければ、インフレが 米経済にとっての中期的なリスクとしてはっきりしてくる」と述べ、利上げ局面の 2 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 継続を示唆している。 金融緩和長期化によるそ の他の弊害にも憂慮 今回の議事録において、インフレ・リスクに対する警戒感の高まりとともに注目 されたのは、金融緩和局面の長期化による物価面以外への弊害を懸念している点で ある。 議事録では、長期にわたる金融緩和によって「大量の流動性」が生み出されてお り、その結果「過度なリスク・テイク」が行われているかも知れないと指摘されて いる。極めて薄くなった信用スプレッド、IPOやM&Aの活発化のほか、 「住宅市 場の一部で投機的需要が垣間見られる」との報告もあった。 参考までにこれらを統計で確認すると、2004 年のIPOは 1,320 億ドルで 2003 年の 520 億ドルの 2 倍以上に達し、M&Aも 1.9 兆ドルで、2003 年の 1.22 兆ドル から大幅に増加した。信用スプレッドの縮小を背景に、ハイ・イールド債の発行額 は 1,610 億ドルの規模に達し、前年比+6.6%の伸びとなっている(いずれも Wall Street Journal、05/1/5)。 今後も、米企業では、潤沢な手元流動性に加えて、昨年 10 月に成立した American Jobs Creation Act of 2004 による減税を受けた大規模なレパトリエーション(海 外現法から米国内への資金環流)が生じ、一部がM&A向け資金として使われると の見方もあり、M&Aはより活発化する可能性がある。こうしたIPOやM&Aの 活発化に対して、競争力を高めようとする米企業の積極果敢な行動として米国経済 の成長促進に寄与しうるという見方も出来るが、議事録にはそうした前向きの評価 が全く盛り込まれていない。 また連邦住宅金融監督局(OFHEO)によれば、中古住宅価格指数は全米平均で前年 比+13.0%(2004 年 7∼9 月期)に上昇し、大西洋岸・全地域、太平洋岸地域、山 岳地帯等、幅広い地域で住宅価格の伸びが 2 桁台に高まってきている。従来、米国 の住宅市場を巡っては、ブームが見られるものの、低金利や所得の伸び、移民によ る人口増、持ち家志向の高まり等、ファンダメンタルズによる説明が可能であり、 バブル的要素は見られないというのが Fed の立場であった。しかし今回の議事録は、 こうした見方が変化しつつある可能性を示している。 想起される 94 年 2 月の利 上げの背景 金融政策の運営においては、その目標に「資産価格の安定」は含まれない。しか し、1994 年 2 月 FOMC における突然の利上げが、金融市場の「バブルつぶし」を背 景の一つとしていたことは、注目すべき事実である。当時の議事録によれば、グリ ーンスパン議長は、利上げ後に行われた同月末のインターミーティングにおいて、 「(利上げによって)部分的に、株式市場に膨らみつつあった投機の流れを絶った」 「債券市場においても同じ事をやったのかも知れない」「我々はバブルの芽を摘ん だ」と発言した。12 月 FOMC で示された「過度なリスク・テイク」に対する憂慮も、 資産バブルの抑制が、利上げのテンポや幅を変更する重要な要素となり得ることを 示していると思われる。 3 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 1.需要動向:後半に盛り返しを見せたクリスマス商戦と拡大続く設備投資 横ばいに留まった 11 月 の実質個人消費 11 月の実質個人消費は前月比横ばいに留まった(図表 1)。同月の国内自動車販売 台数が年率 1,639 万台(米国商務省ベース)、前月比▲3.4%と 2 ヵ月続けて減少し 消費の伸びを抑制したが、非耐久財消費やサービス消費はそれぞれ同+0.4%、同+ 0.3%と堅調な伸びを維持した。 販売促進策縮小を嫌気し 自動車販売は低迷 12 月の消費活動は盛り返しを見せた模様である。まず、国内自動車販売台数は前 月比+12.3%(Autodata 調べ)と大幅増加し、年率 1,800 万台を超える水準に達し た。10∼12 月期でみると同 1,725 万台となり、7∼9 月期の同 1,711 万台を上回った (前期比年率+3.8%の伸び)。もっとも、縮小傾向にある自動車メーカーの販売促 進策を踏まえると、年率 1,800 万台という水準は持続不可能であり、05 年1月には 反動減が予想される。 後半に盛り返したクリス マス商戦 一方、クリスマス商戦は、前半から中盤にかけて軟調に推移していたが、後半に 盛り返しが見られた。週間小売売上高(既存店)の動向をみると、04 年最終週の実 績が Redbook 集計(百貨店 21 社中心)で前年比+5.2%、ICSC-USB 集計(総合小売、 衣料品販売、家具販売等の小売チェーン店)ベースで同+4.6%と伸びが大きく加速 した(図表 2)。12 月平均(季節調整値ベース)でも、Redbook 集計が前月比+0.2%、 ICSC-UBS 集計が同+1.5%となり、悪化が見られた 11 月から持ち直した。 エネルギー高 v.s.資産 効果 クリスマス商戦は、エネルギー高という逆風の中、低所得層を中心に消費が抑制 された一方、株高や住宅価格の上昇の恩恵を受ける高所得層では高級品等への消費 が堅調であった。この結果、高級百貨店の売上は好調である反面、ディスカウント は軟調と、顧客層の違いによって明暗が分かれた格好である。 商品券、オンライン・シ また、クリスマス商戦では商品券の普及が拡大しており、クリスマス商戦の中盤 ョッピングの普及が統計 まで販売統計の下押し要因となった。商品券はその購入時点では売上として計上さ を下押し れず、商品券の利用を待つ必要があるためだが、米小売各社は、こうした商品券を 利用する消費者がクリスマス後に急増したと述べている。同様に、販売統計の対象 外であるオンライン・ショッピングの拡大も、見かけ上、クリスマス商戦の下押し 要因となった。しかし、オンライン・ショッピングのクリスマス商戦における規模 は 158 億ドル、クリスマス商戦全体の1割程度を占める市場規模に成長しており、 図 1 実質個人消費 1.4% 1.2% 1.0% 0.8% 0.6% 0.4% 0.2% 0.0% ▲0.2% ▲0.4% ▲0.6% ▲0.8% 図 2 週間小売統計 6.0 (前月比) 図 3 住宅着工件数・住宅建設業者景況感 220 (前年比) 5.0 1/19発表 210 4.0 66 190 2.0 04/11 64 180 1.0 04/5 70 68 200 3.0 03/11 72 (万件) 0.0 04/11 62 170 04/12 Redbook 05/1 ICSC-UBS 03/12 60 04/6 04/12 住宅着工件数 ホームビルダー・マーケット指数(右目盛) 4 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 前年比+28%の大幅な伸びを見せた模様である(ComScore Networks 調べ)。 住宅市場はまだら模様 住宅市場は着工、販売ともにまだら模様を呈している。11 月の住宅着工件数は、 年率 177.1 万件、前月比▲13.1%と大幅に減少した(図 3) 。ハリケーン被害からの 復興により大きく増加した 10 月(年率 203.9 万件)からの反動減という側面もある が、11 月の着工水準は 2003 年 5 月以来の低さとなった。一方、住宅着工の先行指 標である着工許可件数は、年率 198.8 万件(前月比▲1.5%)と小幅減少も高水準を 維持したほか、住宅建設業者のマインドを示すホームビルダー・インデックスは 12 月に 71 と緩やかな上昇基調にある。 11 月の住宅販売では、新築住宅が大きく減少する一方、中古住宅は過去最高水準 を記録した。新築住宅の販売件数は年率 112.5 万件、前月比▲12.0%と大幅に減少 し、7 月以来の低水準に留まった。中古住宅の販売件数は年率 694 万件、前月比+ 2.7%と増加し、過去最高となった。もっとも、住宅価格は、新築住宅が前年比+6.3%、 中古住宅が同+9.5%と共に高い上昇を維持している。 改善する消費者マインド 消費者マインドを示す指標には改善が見られる。12 月のミシガン大消費者信頼感 指数(確報)は 97.1、前月比+4.3 ポイントと 2 ヵ月続けて上昇した。カンファレ ンスボード消費者信頼感指数も 102.3、前月比+9.7 ポイントと、5 ヵ月ぶりの大幅 上昇となった。後者の内訳をみると、現状指数、期待指数がそれぞれ前月比+9.6 ポイント、同+9.7 ポイントと上昇しており、景気、雇用、所得(期待指数のみ) のいずれの項目も改善した。景気・雇用の回復基調に加えて、ガソリンや暖房用油 の価格が低下基調に転じていることが、消費者マインドの持ち直しに寄与している とみられる。 設備投資は回復基調持続 米企業の設備投資関連指標は引き続き回復基調にある。機械関連の設備投資動向 を示す非国防資本財(除く航空関連)を見ると、出荷は 11 月に前月比▲2.5%と減 少したが、10 月に同+2.2%と増加した反動という側面が強い(図 5) 。また、先行 指標である新規受注は、同+0.8%と増加基調を辿っている。 11 月の民間建設投資(除く住宅)も前年比+3.5%と4ヵ月ぶりに伸びが加速し た(図 6)。分野別にみると、商業施設や宿泊施設、医療施設の建設が好調な一方、 電力施設建設の落ち込みが大きく、建設投資全体の足を引っ張っている。 図 4 消費者信頼感指数 110 (66Q1=100) (1985=100) 105 図 5 機械設備投資 110 66 105 64 225 62 220 60 215 58 210 100 100 95 95 90 85 90 85 03/12 5 04/6 04/12 ミシガン大 カンファレンスボート(右目盛) 図 6 非住宅建設投資 80 56 75 54 (10億ドル) 230 ※除く航空関連 (年率、10億ドル) (前年比) 5% 0% 205 200 03/11 04/5 04/11 非国防資本財出荷 非国防資本財新規受注 10% ▲5% 03/11 04/5 04/11 非住宅建設投資 同前年比伸び率(右目盛) みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 純輸出は悪化(※ 11 月 10 月の貿易収支は▲555 億ドル、前月比▲45 億ドルと悪化し、過去最大の赤字幅 貿易収支は 1/12 発表予 となった(図 7)。実質ベース(ただし財のみ)でも▲562 億ドル、前月比▲37 億ド 定) ルと悪化している。実質財輸出が前月比▲0.6%と軟化する一方、実質財輸入は同+ 2.8%と大幅な上昇となった。石油を含む産業用資材と消費財の輸入が急増した影響 が大きい。長らくドルの減価が続いているが、依然として、貿易赤字には改善の動 きが見られない。 景気回復の持続で税収増 11 月の連邦財政収支(図 8)は▲579 億ドルの赤字となり、前年比 149 億ドルの が見込まれる連邦財政 悪化となった。10 月と合わせた累積赤字額でみると、2004 年度とほぼ同じペースで ( ※ 12 月 財 政 収 支 は 赤字が拡大している。 1/12 発表予定) またCBOの推計によれば、12 月の連邦財政収支は+10 億ドルの黒字となった模 様である。前年比では 180 億ドルの改善を見せており、税収面では、法人税と個人 の所得税・社会保障税がともに増加したという。米企業の利益拡大によって、法人 税収が前年比+38%と大幅に伸びたほか、所得税(源泉徴収分) ・社会保障税も同+ 11%の高い伸びとなった。 具体化し始めた第二期ブ ッシュ政権の経済政策 第二期ブッシュ政権の経済政策の柱である、公的年金制度改革(一部民営化)に 関して、 「将来、大幅な給付削減が避けられない」という政権内部のメモが米経済紙 に掲載された(Wall Street Journal、05/1/6)。ブッシュ大統領は、「退職世代や退 職期が近い世代の給付削減はしない」と公約してきたが、主要な議員らに送られた とみられるメモでは「個人退職勘定を創設するだけ問題が解決するというは悪い考 え」として、 (退職期が近くない世代に対する)実質的な給付削減の必要性が強調さ れている。給付削減を行わず、1∼2 兆ドルと言われる個人退職勘定への移行コスト を国債発行のみで賄おうとすれば、金利上昇を通じ、米国経済は「深刻なダメージ に直面するだろう」と危機感が露わである。 また、もう一つの柱である税制改革に関する動きとして、諮問委員会のメンバー が決定した(1/7)。諮問委員会に関する大統領命令によれば、改革案は「簡素、税 収中立、国際競争力強化のための成長・雇用・投資の促進」を骨子とし、財務長官 に対する改革案の提出期限は 7 月末とされた。 また大統領命令は諮問委員会に対し、 持ち家促進税制と社会的寄付行為に対する税制優遇措置の重要性を「尊重」するよ 図 7 貿易収支 (10億ドル) 0 図 8 累積財政収支 (前年比) 20% ▲ 10 15% ▲ 20 ▲ 30 10% ▲ 40 5% ▲ 50 1/12発表 ▲ 60 03/11 04/5 04/11 貿易収支 実質財輸出(右目盛) 実質財輸入(右目盛) 0% (10億ドル) 0 ▲ 50 ▲ 100 ▲ 150 ▲ 200 ▲ 250 ▲ 300 ▲ 350 ▲ 400 ▲ 450 ▲ 500 10 図9 1/12発表 12 2 05年度 03年度 4 6 8 (月) 04年度 第二期ブッシュ政権の政策課題 ○税制改革・減税恒久化 ・ 公平・簡素な税制目指す ・ 恒久減税実現には上院で 60 票の賛同必 要だが共和党は 54 議席止まり。時限措 置の延長を繰り返す方向か。 ○公的年金制度改革 ・ 個人退職勘定の創設。10 年間で$1∼2 兆㌦規模のコストとの試算あり ○エネルギー ・ 北極圏野生生物保護区域での石油掘 削、アラスカから 48 州に向けて天然ガスパイ プライン敷設等 ○貿易・雇用 ・ WTO繊維協定の期限切れ(04 年末) への対応が第一関門 ・ 企業減税・訴訟リスクの軽減・規制緩和等 6 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute う求めており、少なくともこれらの税制については縮小・撤廃される可能性がなく なった。 2.生産・雇用動向:企業マインドは持ち直し 回復に広がりがみられる 鉱工業生産 9 月にハリケーン被害により多くの業種で減産を余儀なくされた米鉱工業部門は、 その後、持ち直しを見せており、11 月の鉱工業生産指数は前月比+0.2%と緩やか ながら 2 ヵ月連続の上昇となった(図 10)。エネルギー部門、非エネルギー部門と もに前月比+0.2%の伸びで、非エネルギー部門の内、IT部門は同+1.0%と加速 した。非IT部門でも、自動車が同▲0.7%の減産となったほかは、消費財や資本財、 建設財等、幅広い部門で 2 ヵ月連続の増産となった。 年次改訂で大きく上方修 正された稼働率 一方、稼働率は 78.7%と前月比+0.1 ポイントと上昇した。ここで指摘しなけれ ばならないのは、04 年末に行われた年次改訂である(次頁参照)。改訂前の稼働率 は 77.6%であったが、改訂によって 1.2 ポイントほど上方修正された。さらに 2000 年以降の稼働率の推移をみてみると、2000 年から 2002 年前半までは稼働率が下方 修正されたが、2002 年後半以降は上方修正され、その境目は 2003 年前半である。 これまで 2003 年前半に見られた稼働率の低下は、実際にはそれほど大きくなく、そ の後の稼働率の上方修正につながっている。 具体的には、2003 年 2 月から 6 月にかけて、改訂前の稼働率は 75.4%から 74.0% へと 1.4 ポイント低下し、景気が底を打った 2001 年 11 月の水準(75.3%)を下回 っていた。しかし、改訂後の稼働率は 75.5%から 74.9%へと 0.6 ポイントの低下に 留まっており、2001 年 11 月の水準(74.5%)を上回っている。この時期は、デフ レ懸念が台頭し、FOMC がデフレ防止のために追加利下げを行ったが、稼働率という 面からは実際のデフレ圧力が小さかったことになる。 その後、2003 年 6 月以降における稼働率の上昇テンポは、改訂の前後でほぼ同じ である(2004 年 11 月までの間に改訂前が+3.6 ポイント、改訂後が+3.8 ポイント の上昇)。 【 参考資料:鉱工業生産統計の年次改訂 】 120 118 (1997=100) 生産指数 旧系列 116 84 154 (%) 稼働率 旧系列 83 82 81 00 01 02 (資料)FRB 7 142 77 76 108 03 04 150 144 78 110 生産能力指数 旧系列 146 79 112 152 148 80 114 (1997=100) 140 75 138 74 136 00 01 02 (資料)FRB 03 04 00 01 02 (資料)FRB 03 04 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 景気回復後に縮小してい 足もとにおける稼働率が 1 ポイント以上も上方修正された一方、鉱工業生産指数 た生産能力∼繊維、コン の水準が下方修正されている点も興味深い。稼働率が高いにもかかわらず、生産活 ピューター関連で大 動の回復は従来よりも緩慢であったということは、生産能力の伸びが実際には小さ かったことを意味している。改訂前の生産能力指数は、景気後退とその後の回復を 通じ、緩やかながらも上昇の一途を辿ってきた。 しかし、改訂後の生産能力指数は、2002 年 8 月に一度ピークを打ち、2003 年 7 月まで緩やかに低下している。生産能力の縮小は、本統計を遡ることができる 1967 年以来、初めてのことであり、ITバブル崩壊後の設備投資調整の大きさを物語っ ている。2003 年 7 月以降、足もとまでの生産能力指数の上昇も緩慢で、改訂前が+ 2.8 ポイントであるのに対し、改訂後は+2.0 ポイントに留まっている。生産能力指 数の下方修正は 21 業種のほぼ半数に及んでおり、特に繊維製造業(2004 年 11 月時 点の修正幅=▲23.2%) 、コンピューター関連製造業(同▲12.2%)、電気機械製造 業(同▲5.9%)、鉱業(同▲3.8%)などで大きい。 自動車小売・卸売業を除 けば在庫増が持続 10 月の在庫投資(前月比でみた在庫変動)は全産業ベースで+48 億ドルと拡大し た。自動車関連小売・卸売業の在庫減が 2 ヵ月続いているが、それ以外の小売、卸 売業の在庫投資はいずれもプラスとなり、製造業も在庫が増えている(図 11) 。11 月に入っても、製造業の在庫投資は+33 億ドルとプラスとなった。 米企業が抱える在庫水準は引き続き低位で、実質でみた 10 月の在庫/売上高比率 は 9 月と同じ 1.28 カ月と既往最低水準である。同比率の前年比変化率も▲3.0%と マイナス圏に留まり、売上の伸び(前年比+5.2%)が在庫の伸び(同+2.0%)を 大きく上回る状況にあり、長い目で見れば米国経済は在庫積み増し局面にあると行 って良いだろう。もっとも、後述するように、短期的には在庫過剰感の高まりが見 られることには注意が必要である。 回復続く企業マインド 企業マインドは回復が続いている。製造業ISM指数は、12 月に 58.6(前月比+ 0.8 ポイント)と緩やかながら 2 カ月連続の上昇を見せた(図表 12)。新規受注指数 が 67.4(同+5.9 ポイント)と大幅上昇した影響が大きい。生産指数、雇用指数は それぞれ前月比▲0.1 ポイント、同▲4.9 ポイントと軟調であるが、新規受注指数の 持ち直しが続いていることから、今後は両指数も上昇に転じる可能性が指摘できる。 非製造業ISM指数も 63.1、前月比+1.8 ポイントと 3 ヵ月連続の上昇となった。 図 10 鉱工業生産・稼働率 1.2% (前月比) 1.0% (%) 1/14発表 0.8% 0.6% 図 11 在庫投資 80 79 78 0.4% 77 0.2% 76 0.0% ▲0.2% 75 ▲0.4% 74 ▲0.6% 03/12 04/6 04/12 設備稼働率(右目盛) 鉱工業生産 16 14 12 10 8 6 4 2 0 ▲ 2 ▲ 4 図 12 企業景況感 70 (10億ドル) 小売1/13 65 60 55 50 45 03/11 04/5 製造 小売 04/11 卸売 03/12 04/6 製造業ISM指数 04/12 非製造業ISM指数 8 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 個別指数をみると、新規受注指数が 60.3、同+0.4 ポイント、雇用指数が 54.9、 同▲0.1 ポイントと、両指数ともにほぼ横ばい圏の推移が続いている。 企業マインドは回復が続いているが、短期的に在庫の過剰感が高まっていること を示唆する動きも見られる。製造業では、生産指数が軟調な中で在庫指数が 53.4、 前月比+2.7 ポイントと急上昇したほか、非製造業でも在庫変化指数が 56.0、同+ 3.5 ポイント、在庫過剰感指数が 64.0、同+2.5 ポイントと共に大きく上昇し、短 期的に「意図せざる在庫増」が生じていることをうかがわせる。 雇用情勢も改善持続 雇用情勢も改善傾向が続いている。12 月の失業率は 5.4%で前月比横ばいである (図 13)。失業者数が前月比+2.7 万人と増加する一方、就業者数が同▲13.7 万人 と減少、労働力人口は純減し、労働参加率も 66.0%、前月比▲0.1 ポイントと低下 した。長い目でみれば、失業者数は 8 月以降、横ばい圏で推移しているが、就業者 数は順調に増加基調を辿っている。 失業者の平均失業期間は 19.3 週で、前月比▲0.5 週と改善した。 非農業部門雇用者数は増 非農業部門雇用者数は前月比+15.7 万人で、+17.5 万人との市場予想を小幅下回っ 勢維持 た。しかし、過去 2 カ月分が上方修正され、10 月分が同+30.3 万人→同+31.2 万 人、11 月分が同+11.2 万人→13.7 万人となり、過去 3 ヵ月の平均増加数は+20.2 万人と 11 月時点の+17.8 万人から拡大し、雇用情勢の改善傾向が続いていること が示された。 業種別にみると、製造業が前月比+0.3 万人と 4 ヵ月ぶりに小幅ながら増加した 一方、小売業では同▲2.0 万人と減少した。雇用DI(=雇用を前月比増やした業 種の割合+0.5×雇用の増減が無かった業種の割合。民間部門)は 57.6、前月比+ 0.2 ポイントとほぼ横ばい推移となった(図表 14)。 雇用所得の下ぶれは回避 非農業民間部門の週平均労働時間は 33.8 時間、前月比+0.1 時間と増加し、雇用 者数の伸びを加えた総労働時間指数は同+0.4%と高い伸びとなった(図 15)。しか し、時間当り賃金は前月比+0.1%と低い伸びに留まっている。 11 月雇用統計で、下ぶれの動きが見られた総賃金指数(総労働時間指数×時間当 り賃金)は 3 カ月前比+1.0%となり、さらなる軟化は回避され、緩やかな伸びが持 続している。 図 14 雇用DI指数 図 13 雇用統計 5.8 5.7 5.7 5.6 5.6 5.5 5.5 5.4 5.4 5.3 5.3 (%) 400 75 1.0% 350 70 0.8% 300 65 0.6% 250 60 0.4% 55 0.2% 200 150 100 50 0 03/12 9 (千人) 04/6 04/12 非農業部門雇用者数(右目盛) 失業率 図 15 総労働時間・時間当り賃金上昇率 50 0.0% 45 ▲0.2% 40 ▲0.4% 35 ▲0.6% 30 ▲0.8% 03/12 04/6 04/12 前月からの増減でみたDI 1年前からの 〃 総労働時間 時間当り賃金 03/12 04/6 04/12 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 3.物価動向:コア・インフレ率は安定推移 コア輸入物価は前年比上 11 月の石油関連を除くコア輸入物価は前年比+3.4%となり、上昇率が加速した 昇率が加速(※ 12 月輸 (図 16)。石油関連を除く産業用資材が同+16.0%、食料品が同+7.7%と共に高い 出入物価は 1/13 発表予 上昇が続いている。しかし、コアCPIへの影響という点で注目される自動車及び 定) 消費財は両者の輸入価格を合成すると同+1.1%の緩やかな安定した上昇に留まっ ており、輸入面からの消費者物価の押上げ圧力は大きくない。ドル減価の中で輸入 物価が比較的落ち着いた上昇に留まっているのは、輸入物価に与える為替変動の影 響度(いわゆるパス・スルー)は従来に比べて小さくなってきているためである。 輸入品の構成に着目した場合、米国の輸入財が為替変動の影響を受け易い一次産品 から、そうした影響を受けにくい資本財等の高付加価値な財にシフトしており、こ れがパス・スルーの低下をもたらしている一つの要因と考えられる。パス・スルー の低下は、12 月 FOMC 議事録でも指摘されている。 また、農産品を除くコア輸出物価が前年比+5.4%とコア輸入物価を上回るテンポ で上昇していることも注目される。輸出物価の速い上昇によって、ドルが減価して いるにもかかわらず米国の交易条件はむしろ改善にむかっており(輸出品と比べた 輸入品の割安化)、貿易赤字が拡大する力が働いている。 コア最終財PPIは前年 11 月の食品・エネルギーを除くコア最終財PPIは、前年比+1.9%と小幅加速 比小幅加速(※ 12 月P した(図 17) 。一方、前月比では+0.2%と緩やかな上昇に留まった。耐久消費財が PIは 1/14 発表予定) 同+0.3%、資本財が同+0.2%と 10 月と比べて上昇率が鈍化している。 ISMによれば、製造業、非製造業ともに仕入価格指数が 70 超と「コスト上昇」 を訴える企業の割合が圧倒的であるほか、前述したように鉱工業部門の稼働率は 78.7%にまで上昇している。こうした動きは、物価上昇圧力の高まりを示唆するが、 同じくインフレの先行指標と見られるISM入荷遅延指数は製造業、非製造業とも に 2004 年半ば以降低下基調に転じ、それまでの逼迫感は薄れており、物価上昇圧力 が「暴発」するリスクは小さい。 コアCPI上昇率は緩や 11 月のコアCPIは前年比+2.2%、前月比+0.2%と緩やかな上昇となった(図 かな上昇持続(※ 12 月 18)。2001 年 12 月以降、前年比マイナスの上昇が続いてきた財コアは+0.5%と 2 CPIは 1/19 発表予定) カ月連続してプラスとなった。また連鎖式コアCPIは前年比+1.9%、家賃・中古 図 16 コア輸入物価(除く石油関連) 4% (前年比) (2000年=100) 104 図 17 コア最終財PPI 2.5% 図 18 0.4% 1/14発表 コアCPI 1/19発表 2.2% 2.0% 3% 103 2.0% 1.5% 2% 102 1/13発表 1% 0% 04/6 1.6% 1.4% 101 0.0% 100 03/12 1.8% 0.2% 1.0% 0.5% コア輸入物価(左目盛) コア交易条件指数 04/12 ※コア交易条件指数=農産品を除く輸出物価 ÷石油を除く輸入物価 2.4% 1.2% 0.0% ▲0.5% 03/12 前月比 04/6 前年比 04/12 03/12 04/6 前月比 1.0% 04/12 前年比(右目盛) 10 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 車を除くコアCPIも同+1.8%で共に上昇率が高まった。 11 月のコア個人消費支出(PCE)デフレーターは前年比+1.5%で、3 月以降、 上昇率はほぼ横ばい推移である。耐久財価格のデフレ終息による影響と、住宅関連 を除くコアサービス価格の鈍化が拮抗し、コアPCEデフレーター上昇率の安定を もたらしている。 4.金融市場:年末年始を挟んで揉み合い 利上げ局面持続予想から 米国債市場は、短期金利の上昇と長期金利の横ばい推移という構図が続いている。 短期金利は上昇も、長期 短期金利は、FOMC による利上げ局面が持続するとの予想から金利上昇が進んでおり、 金利は強弱材料が交錯し 特に 12 月 FOMC の議事録公開を受けて、2 月のみならず、3 月でも小幅利上げが実施 横ばい推移 されるとの見方が大勢を占めるようになった。一方、長期金利は、油価高止まりに よる景気への影響と、経常赤字と財政赤字の拡大に対する懸念が交錯し、横ばい推 移が続いている。こうした結果、長短スプレッドは縮小傾向が続いている。 株価は「行って来い」 米株式市場は、原油価格の落ち着きや景気拡大の持続を好感し、年末にかけて大 幅な上昇をみせ、ダウ平均株価は、12 月 28 日に年初来高値となる 10854.54 ドルに 上昇した。高値スタートとなった年明けの相場は、FOMC の利上げ加速観測も相俟っ て、反落している。また足もとでは 2004 年 10∼12 月期における米企業の業績発表 に注目が集まっている。 FRB名目実効ドルレート(主要通貨ベース)は、9 月中旬以降、ほぼ一貫して ドルは揉み合い推移 減価してきたが、11 月下旬以降は横ばい圏での揉み合い推移となっている(図 21) 。 ただ短期的には、年末にかけて薄商いの中ドルは減価し、年明け後は FOMC による利 上げ加速観測を背景に増価に転じている。 図 19 長短金利 3.3 (%) 図 20 株価 (%) 4.3 2.9 2.7 2年債 10年債(右目盛) 2.5 (%) 84 10800 83 1.0 11/11 2140 10700 4.1 2100 10600 3.9 2060 長短金利差 1.5 11 (ドル) 10900 2180 3.1 2.3 (ポイント) 4.5 図 21 名目実効ドルレート 12/11 1/11 2020 1980 11/11 (1973=100、主要通貨ベース) 82 81 10500 10400 NASDAQ総合指数 ダウ平均(右目盛) 12/11 10300 10200 1/11 80 79 78 11/11 12/11 1/11 みずほ米国経済情報 2005/1/12 Mizuho Research Institute 巻末資料:米国主要経済指標 02Q2 2.4 1.7 1.0 ▲117.9 ▲4.5 Q3 2.6 4.8 0.8 ▲119.0 ▲4.5 Q4 0.7 1.2 0.9 ▲126.8 ▲4.8 03Q1 1.9 3.9 1.2 ▲138.2 ▲5.2 Q2 4.1 7.6 0.9 ▲133.9 ▲4.9 Q3 7.4 8.5 1.0 ▲131.6 ▲4.7 Q4 4.2 2.4 0.8 ▲127.0 ▲4.5 04Q1 4.5 3.9 1.1 ▲147.2 ▲5.1 Q2 3.3 2.9 0.9 ▲164.4 ▲5.6 Q3 4.0 2.4 0.9 ▲164.7 ▲5.6 Aug-04 ▲0.3 Sep ▲0.2 前月比 Oct ▲0.4 Nov 0.2 Dec #N/A Aug-04 2.2 Sep 1.9 前年比 Oct 1.0 Nov 0.9 Dec #N/A 小売売上高(%) 除く自動車(%) 国内自動車販売台数(百万台、年率) 住宅着工件数(万件、年率) 住宅着工許可件数(万件、年率) ホームビルダー・マーケット指数 MBA購入指数(%) ミシガン大消費者信頼感指数(66Q1=100) カンファレンスボード消費者信頼感指数(85=100) ▲0.3 0.3 *1656 *202 *197 *70 ▲2.8 *96 *99 1.6 0.8 *1746 *191 *200 *67 3.5 *94 *97 0.8 1.1 *1692 *204 *202 *69 ▲1.2 *92 *93 0.1 0.5 *1635 *177 *203 *70 2.8 *93 *93 #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A *71 ▲0.3 *97 *102 4.6 6.0 ▲12.4 13.5 3.9 8.2 8.7 10.2 ▲4.3 2.2 6.3 7.5 2.2 3.5 ▲8.2 9.0 9.4 ▲5.0 ▲11.8 16.0 #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A 国防を除く資本財出荷(%) 除く航空機・同部品(%) 国防を除く資本財受注(%) 除く航空機・同部品(%) 民間建設支出(非居住用,%) 1.8 0.9 ▲7.0 0.7 0.2 ▲0.3 ▲0.3 3.2 5.4 0.3 2.2 2.4 ▲3.2 ▲4.0 0.0 ▲2.5 ▲1.8 7.1 0.8 ▲1.2 #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A 14.7 14.9 13.4 11.4 0.0 9.2 9.6 11.6 12.1 0.0 11.5 11.5 4.0 5.1 0.0 9.2 11.6 19.3 12.1 0.0 #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A 貿易収支(10億ドル) 実質財貿易収支(10億ドル) 実質財輸出(%) 実質財輸入(%) *▲53.9 *▲54.9 1.1 1.0 *▲50.9 *▲52.5 1.7 ▲1.0 *▲55.5 *▲56.2 ▲0.6 2.8 #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A 11.6 15.1 10.7 10.5 8.9 11.3 #N/A #N/A #N/A #N/A 財政収支(10億ドル) 5.0 5.0 4.1 4.1 4.6 5.1 3.8 4.0 #N/A #N/A 実質GDP(%、前期比年率) 労働生産性(%、前期比年率、非農業部門) 雇用コスト指数(%、前期比) 経常収支(10億ドル) 名目GDP比(%) カンファレンスボード景気先行指数(%) *▲41.1 *24.6 *▲57.3 *▲57.9 #N/A 鉱工業生産(%) 最終財生産(%) 設備稼働率(%) 民間在庫投資(10億ドル) 在庫率(カ月) 0.1 0.1 *78.3 *8.9 *1.32 ▲0.1 0.0 *78.1 *▲0.0 *1.31 0.7 0.9 *78.6 *4.8 *1.30 0.2 0.1 *78.7 #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A #N/A ISM製造業指数 ISM非製造業指数 NFIB楽観指数(1986=100) フィラデルフィア連銀景況感指数 *59.0 *58.2 *102.9 *28.5 *58.5 *56.7 *104.5 *13.4 *56.8 *59.8 *103.9 *28.5 *57.8 *61.3 *107.7 *20.7 *58.6 *63.1 #N/A *29.6 失業率(%) 非農業部門雇用者数(千人) 製造業雇用者数(千人) 週平均労働時間(時間) 時間当り賃金(%) *5.4 198.0 14.0 *33.7 0.3 *5.4 119.0 ▲5.0 *33.8 0.1 *5.5 312.0 ▲1.0 *33.8 0.3 *5.4 137.0 ▲9.0 *33.7 0.1 *5.4 157.0 3.0 33.8 0.1 2.4 2.3 2.7 2.2 2.6 0.2 0.2 0.2 #N/A #N/A #N/A 3.1 1.5 1.7 1.2 2.9 1.9 2.0 1.6 2.9 1.8 2.0 1.7 3.4 1.9 2.2 1.9 #N/A #N/A #N/A #N/A *1.75 *2.00 *2.58 *2.85 *4.10 *4.19 0.1 0.6 1.3 1.0 0.2 0.5 *10027.47 *10428.02 *1974.99 *2096.81 *106.04 *103.04 *1.2746 *1.3259 *2.25 *3.01 *4.23 #N/A #N/A #N/A *10783.01 *2175.44 *102.68 *1.3538 ▲3.2 8.8 3.2 ▲1.8 9.2 4.2 ▲0.1 11.6 4.8 1.0 13.5 5.1 #N/A #N/A #N/A 輸入物価(%、除く石油関連) 生産者物価・最終財コア(%) コア消費者物価(%) 連鎖式コア消費者物価(%) FF金利誘導目標(末値,%) 2年債金利(%) 10年債金利(%) 商工業向け銀行貸出(%) 不動産向け銀行貸出(%) マネーサプライ(%) ダウ工業30種平均(末値) NASDAQ(末値) 円・ドルレート(末値,\/$) ドル・ユーロレート(末値,$/Euro) 0.3 0.1 0.1 0.3 0.2 0.3 *1.50 *1.75 *2.51 *2.53 *4.28 *4.13 0.8 0.3 0.7 1.0 0.2 0.5 *10173.92 *10080.27 *1838.10 *1896.84 *109.00 *110.20 *1.2183 *1.2417 0.3 0.6 0.2 (注)*印は水準。 (資料)米国商務省、米国労働省、米連邦準備制度理事会、カンファレンスボード、米サプライマネジメント協会(ISM)、 モーゲージバンカーズ協会(MBA)、米住宅建築業協会、米独立企業連盟(NFIB)、HAVER ANALYTICS 調査本部 経済調査部 シニアエコノミスト 小野 亮 [email protected] 12 みずほ米国経済情報 編集/発行 みずほ総合研究所 〒100-0004 東京都千代田区大手町 1-5-5 Tel(03)3201-0210