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KOTOドリームスクール開催趣旨 ∼事業を行った背景∼ 現代の核家族化や地域コミュニティーの衰退により、これまで家庭や地域が担っていた子ども達の社 会的規範の形成や自助自立の精神、そして他者を思いやる心を醸成する機能等が充分であるとはいえま せん。これらを補うために行った社団法人東京青年会議所江東地区の過去の事業、「KOTO社会体験 実習」 (中学生が企業等に出向き社会体験をするもの)と「KOTO寺子屋」 (社会人が中学校にて授業 を行うもの)では、主に教員以外の大人が教育に携わるシステム作りに注力してきました。これらは地 域教育のシステムとして浸透し、学校が独自に開催することができるようになりました。しかし、その 学習目的や企画内容については中学校ごとの自主性を重視した結果、進路指導上の必要から「職業紹介」 となる傾向が見受けられました。 「寺子屋」のように社会人が教壇に立つ場合には、その講師の過去の体験談や生き様、職業人として の専門知識等を活用すれば様々な内容の授業を実施することができます。学校主催の「寺子屋」の多く が「職業紹介」に留まっているのは非常にもったいないことであり、本来「寺子屋」の持っている可能 性を充分に生かしきれていないといえるでしょう。 そこで本年度は、「KOTOドリームスクール」と題し、学校という枠組みから離れることで自由な 発想で授業内容を構築し、「職業紹介」に留まらない多種多様な授業を実施することにいたしました。 本事業では、有名人でなくても社会人であれば誰もが講師となりうることを示すために、講師は官(税 務署)、民(商店経営者) 、専門職(弁護士)等の広くバランスの取れた属性の講師を選定しました。そ して、これらの講師が職業人として培ってきた知識と経験を利用して、子ども達の自助自立の精神と他 を思いやる心を育むこと、多様化する社会の中で選択肢の多さや選択する能力の必要性を理解させ、そ の基礎力となる主体性や公共心を子ども達に獲得させること、そしてこのような教育理念を学校や地域 に反映して行くことをを目的としています。 KOTOドリームスクール開催概要 日時:2006年8月21日、22日 場所:日本科学未来館みらいCAN館ホール 東京海洋大学越中島キャンパス (8月21日) (8月22日) 対象:江東区内中学生1年生、2年生 内容: ・衆議院議員(自由民主党)/2003 年度社団法人東京青年会議所理事長 平 将 明 氏 講演 ≪夢をかなえるために≫ ・東京都立科学技術高等学校主幹 早 川 信 一 氏 講演 ≪地球規模の環境問題≫ ・麹町税務署 税務広報広聴官 小 松 講演 ≪税金の話≫ ・東京弁護士会 岩 重 講演 ≪消費者教育≫ 弁護士 孝 氏 吉 治 氏 ・重要文化財 明治丸 見学 ・貿易ゲーム 社団法人東京青年会議所会員支援委員会 ・東京商工会議所江東支部副会長/酒の小柴屋有限会社 唐 川 和 夫 氏 代表取締役社長 講演 ≪商店経営≫ KOTOドリームスクール当日プログラム ≪夢をかなえるために≫ 講 師:平 将 明 氏 衆議院議員(自由民主党) プロフィール ・ 1967 年 東京都生まれ ・ 太田市場仲卸「山邦」社長(三代目) ・ 2003 年度 社団法人東京青年会議所 理事長 ・ 日本振興銀行 社外取締役(取締役会議長) ・ 衆議院議員(自由民主党) 夢をかなえるまでの辛い道のりや厳しい現実、目標を持つことの大切さを子ども達に伝えた。 また「夢をかなえる」という自己実現のためには、人間の基礎力としての「主体性」と「公共性」を 持つこと、さらには、素質・あきらめない気持ち・努力・運が必要であることを訴えた。 ≪地球規模の環境問題≫ 講 師:早 川 信 一 氏 東京都立科学技術高等学校 プロフィール ・ 東京都立科学技術高等学校 主幹 ・ 大学院生より地球規模の環境問題に取り組んでいる。 ・ 現在は科学技術高校の専門課程で環境問題についての授業をし ている。 地球規模の環境問題(主に温暖化)の深刻な現状を伝え、このままだと 地球がどうなってしまうのかを分かりやすく説明した。 環境問題を最先端科学の力でどのように対応することができるのかを身 近な環境問題を取り上げた科学実験を通して説明すると同時に、科学の力 だけでは環境問題を解決することができないこと、最終的には一人一人の 意識を変えていく必要があることを訴えた。さらには自らが明日からでも 取り組めることがある事、今後の対策と日常の心がけ(公共性)を教えた。 ≪税金の話≫ 講 師:小 松 孝 氏 麹町税務署税務広報広聴官 プロフィール ・ 1978 年 東京国税局採用 調査部 国税不服審査所 税務大学校 寮務係長 ・ 東京上野税務署 ・ 芝税務署 ・ 麹町税務署 (東京都租税教育推進協議会の事務局を兼ねる) ビデオ教材を使い、税金がない世界ではどのような社会 になるかを理解させ、税金が自分たちにとってどのような 役割を果たしているのか(公共性)を学ぶことで、その必 要性と自分達との関わり(社会における主体者であること) を教えた。 ≪消費者教育≫ 講 師:岩 重 佳 治 氏 弁護士(東京弁護士会) プロフィール ・ 弁護士(東京弁護士会) ・ 国民生活センター客員講師 ・ 獨協大学非常勤講師(消費者法) 「お金」とは何か。 「お金」を借りることの意味 や「お金」にまつわる怖い話。実際にあった闇 金融機関の取立てのテープを聞かせ、その凄ま じさと怖さを理解してもらい無計画な「お金」 の使い方をせずに、計画的に使う事の大切さを 訴えた。 ≪明治丸見学≫ 明治丸: 東京海洋大学越中島キャンパスに保存されている帆付汽船 (重要文化財指定)。 明治丸は明治 7 年(1874)にイギリスで灯台巡視船として建 造された。明治天皇が東北巡幸の際に乗船している。また琉球 王国、最後の国王・尚泰が「琉球処分」の際、明治丸に乗船し 上京した。明治 29 年からは商船学校に譲渡され係留練習帆船と して使用された。 明治天皇が明治丸を使っての東北巡幸の際 7 月 20 日に帰着され たのことから 7 月 20 日が「海の日」となっている。 参加した子ども達はボランティアのガイドが話す明治丸の特 徴、かつての日本の航海技術の高さなどに深い関心を示した。 ≪貿易ゲーム≫ ゲームコーディネーター: 社団法人東京青年会議所 会員支援委員会 貿易ゲーム: 資源力・技術力・財力の異なる複数のグループ(国家) の間でできるだけ多くの富を築くことを競う貿易シュミレ ーションゲーム。通常は1チーム2∼4名程度で行う。 普段は違う学校に通って本事業を通じて仲間になった生 徒達が力を合わせひとつの目的に向かって知恵と力を出し 合った。 同じルールの下でも交渉能力やコミュニケーション能力 によって、貧しいグループでも豊かに、豊かなグループで も貧しくなりうる可能性を、現実の自由貿易システムと対 比しつつ、体験的・共感的に理解させた。 ≪商店経営の話≫ 講 師:唐 川 和 夫 氏 酒の小柴屋有限会社 プロフィール ・1934 年生まれ ・酒の小柴屋有限会社 社長 ・東京商工会議所江東支部 副会長 小売分科会長 ・江東区商店街連合会 会長 世の中の様々な職業を通じることで、社会にどう貢献しているのか。全ての職業には社会において「役 割」があり、それこそが主体性と公共性のバランスの体現であること。自分が選んだ道に誇りを持つこ との大切さを訴えた。さらに、商売をすることの意味、地域に密着した商店街の昔と現在の変化の様子 を伝えた。 タイムスケジュール 第1日 日本科学未来館 第2日 東京海洋大学 10:00 受付開始 10:00 受付開始 10:30 開校式 10:30 明治丸見学 11:00 平氏講演 11:50 昼食 ・夢をかなえる為に 12:50 東京青年会議所会員支援委員会 11:50 記念撮影∼昼食 12:50 早川氏講演 ・貿易ゲーム 15:10 ・地球規模の環境問題 14:30 15:30 唐川氏講演 ・商店経営の話 小松氏講演 16:00 感想文作成・修了式 ・税金の話 16:30 第2日日程終了 岩重氏講演 ・消費者教育 16:20 感想文作成 16:30 第1日日程終了 参加生徒の感想 ≪夢をかなえるために≫ ・ 自分のためじゃなく、社会のためにできることをする。 ・ 夢をかなえるには努力の積み重ねが大切だということを学び ました。私はこれからなに事もあきらめないで努力してがん ばって行きます。 ・ 私はまだ将来やりたい事が決まってないので、いろいろな事 をやって経験を増やしたいと思った。 ・ 志を高くして生きていきたい。 ≪地球規模の環境問題≫ ・ 環境問題で自分にできることは「クーラーの 28℃」 「冷蔵庫」 「電気」のこの3つはできると思 った。 ・ ちょっとむずかしかったけど地球温暖化やオゾン層のはかいを止めるには、一人一人の努力が 必要だと思います。 ≪税金の話≫ ・ もし、税金がなかったら義務教育の小・中学生のときに教育費を 180 万円もはらわなければい けないみたいなので税金があって良かったとはじめて思った。 ・ 私は消費税がなければいいのにと思っていましたが、ビデオを見たら税金は大切なんだなぁと 思いました。 ・ 私もビデオの子と同じように、税金なんてなければいいと思ってたけど、今回から考えがかわ った。ちゃんと税金は納めたいと思う。 ≪消費者教育≫ ・ 借金する人なんてだらしのない人だと思ってたけど、一度ぐらいは、失敗するのはしょうがな いなと思った。 ・ お金を借りる時は返せるだけ借りた方がいいと思った。 ≪明治丸見学≫ ・ 昔の人が昔の船で世界一周や、航海をしてすごいと思った。不便な事がいっぱいあったけど楽 しそうだった。 ≪貿易ゲーム≫ ・ 単純なようで難しかったし楽しかった。たくさん考えさせられるゲームだったけど、これから 役に立つと思う。 ・ お金の大切さ、他の国との関係がわかった。すごく楽しかった。他の国との関係も深まってよ かった。 ≪商店経営の話≫ ・ 商売は物を売るだけじゃないのが分かった。 ・ スーパーもいいけれど前掛けや半天をして、商売をする方が、楽しそうな気がした。そういう お店を残していければいい。 ≪全体を通して≫ ・ スタッフの皆さんは、やさしくしてくださってよかった。昼食の時すごいたのしかった。 ・ この2日間を通していろいろな事を学べたし、友達もできてとってもよかったです、来年もあ ったらきたいです。 ・ 学校では教えてもらえないような事を教えてもらいありがとうございました。 ・ 他校の友達と仲よくなれてよかった。 ・ (保護者)休み時間の会話などスタッフの皆様のご配慮も good. ・ (保護者)当活動をもっと知って(参加して)もらえます様に。 あとがき KOTOドリームスクール当日を迎えて特に注意したことは、昼食時や休憩時間に子ども達と積極的 に会話をし、コミュニケーションをとるということでした。これにより、子ども達の緊張がほぐれてい き、2日間の授業を楽しく過ごすことができました。また、今までの私達の事業は学校を中心に構成さ れていたため、直接子ども達とのコミュニケーションをとっていたのは教員であり、私達自身は思って いたほど子ども達とのコミュニケーションが取れていなかったということに気付かされました。 大切なのは私達大人が子ども達とコミュニケーションを取り続けることだと思います。 そして、何よりも教育に関心がない大人達が少しでも関心を持てるようにすることが大切なのではな いでしょうか。 そのために、私達は日々の活動の中で、PTAの主催で行われているウィークエンドスクール等に協 力をし、教育に関心がない大人達との接点を持つきっかけづくりをしていきたいと思います。 最後になりましたが、本事業の開催にあたり、多大なご協力を賜りましたすべての皆様に心より感謝 申し上げます。 (社)東京青年会議所 江東地区委員長 第1地区特別委員会 KOTOドリームスクール 堀江 実行委員長 和浩 勝田 智幸