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症例報告
症例報告 症例三例および整膚循環図 症例1 動かなかった指が動き草むしりが出来るようになった女性 症例2 顔面を強打し顔全面の赤アザ、青アザが早期に治った女性 症例3 血流の滞りによる冷え、肩こり、腰痛、顔のシミ、腹のシミの解消 整膚循環図 2009年12月12日 池之谷敏江 始めに 一年間の博士コースの勉強を通して一番強く感じたことは『なぜ 人間は体調不良や病気を 発病する原因を作り出してしまうのか』だった。 整膚治療を求めて来る人は痛い、きつい、だるい、歩けない、歩きにくい、見えにくい、目 が回る、食べる意欲がない、食べ過ぎる等の訴えが大変多い。 吉松東洞(1701~1773)は、天の氣である風熱暑燥湿寒涼等が疾病の原因になるの は、天の氣ではなく、その人の中に毒邪がつくられていたからであり、その“毒”に天の氣 あた が中ったのである。毒は自らが作ったものであると説き“万病一毒説”を唱えた。(薬徴: 吉松東洞 原書 角田睦子 譯注)とあり、すなわちすべての病は或る一つの毒によって生ず ると云い、この毒はすべて身体の十四経の機能の働きを妨げるもの、病気の原因の一つとで あると考えられる。 この“万病一毒説”から整膚を考え、実際に施術を行った症例をもとに整膚の持っている【未 知の可能性】を考察したいと思います。 1 症例1 動かなかった指が動き草むしりが出来るようになった女性 女性89歳 koto さん 整膚の最初のきっかけはデイケアーの体操の時であった。参加された十数人の中に koto さ んはいた。koto さんの左手の人差し指が内側に折れ曲がり肉に食い込み、またほかの指も 長い間使わなかったのでコの字に曲がっていた。 Koto さんは昔、農作業をしていたときに鎌で人差し指の掌側の根本を骨まで達するほど深 く切り、表側の皮膚だけで指はつながっていた状態だった。その当時は貧乏で病院へ行けず、 “もぐさ”を傷口に巻き止血し、手ぬぐいを包帯代わりにしてそのままほっておいた。化膿 せず指はくっついたが内側の筋が切れているので曲がり、だんだん肉に食い込むようになっ ていった。 Photo-1 人差し指が掌に食い込むようになった デイケアーの体操の時間に各人に整膚で手の皮膚を引っ張ることを始めたとき、koto さん には右手で曲がった左手の指の掌、手の甲の皮膚を痛くないように尐しずつ引っ張る事から 始めてもらった。そうすると自由な右手が最初に温かくなり、次に曲がった左手の指先が暖 まってきた。koto さんに自己整膚を説明し家でテレビを見ているとき、そのほか何時でも 整膚をするようにお願いをしたら素直に受けていただき、毎日毎日続けているうちに曲がっ た左手がだんだん柔らかくなり無意識のうちに曲がった指が伸びていた。 しかし、人差し指は右手で開かないと伸びない。 Photo-2 全部の指が尐しずつ開いてきた。 2 現在、koto さんは左手の人差し指は動かないがほかの指が動くようになり、庭の草むしり を始めるまでになった。 Photo-3 全部の指がほぼまっすぐに伸び人差し指を除くほかの指は自分 の意志で動くようになった。 その後 koto さんの自宅で整膚をたのまれ出張するようになった。 自宅では全身整膚、お腹の整膚をするようになり、足の冷えが尐しずつ無くなり、大変満足 されている。 また、koto さんは風呂に入って身体が温かくなったと思ってもすぐに足が大変冷たくなり、 眠つかれず、また夜便所に行く回数がわからないほど多い。koto さんの大好物は風呂上が りに冷たいビールを飲むことである、しかしビールは身体を冷やすので徐々にやめてもらう ことをお願いした。 3 症例2 顔面を強打し顔全面の赤アザ、青アザが早期に治った女性 女性90歳 matu さん 病歴 50歳の時 乳ガン、60歳の時大腸ガンの手術、現在糖尿病を患っている。 庭でつまずき前向きに転倒し、顔を強打、ひざ肘も強打、そのほか擦り傷多数。 matu さんの開口一番、“あの世に云ってお父さんに会っても、私だとわかってくれない” と悲しむ! 10月20日から週一回の訪問整膚行った。 まず、両足、両手、首、の順序で始め最後に顔を整膚した。 8回の整膚で顔のアザは消えすっきりとした顔になった。 本人の感想 もともと美人ではないのに転んで顔に青アザ、赤アザ、擦り傷が出来てしまった時には 死ぬまで“おいわ様”みたいな顔になっていなければならないのかとあきらめていました。 おかげさまで今の顔の方がきれいになり、若いときの顔に戻ったみたいで、これこそが “けがの功名”です。 4 症例3 血流の滞りによる冷え、肩こり、腰痛、顔のシミ、腹のシミの解消 女性 年齢不詳(65歳位)ns さん ns さんの話によると昔から病気といった病気はしたことがない、ご主人は胃ガンの手術 をした後食事の量が減り、体力に自信が無くなりだしたので食事、食材には十分気をつけて いる、自家栽培の季節の野菜も食事に取り入れている。自分の中で血流の滞りが原因で冷え、 肩こり、腰痛、顔のシミ、腹のシミが起こっているとは心にも無かった。 所見 背中、肩に押しアザ(按摩による)(ゴルフの帰りに必ず按摩、マッサージによる) お腹全体が硬く冷たい、またお腹全面にシミが広がっている。 両首あごにかけて硬い肉塊がみられ、首の後ろに大きなしこりがありさわると痛がる。 整膚施術方法 1,両首あごにかけて硬い肉塊を主に気相整膚で取り除く 2,手足の冷え、お腹全体が硬く冷たい、これらを腹を整膚することで改善する。 下図に愁訴された部位を示す。 5 経過 10月26日に初来院、月一回の来院が週1回になり継続している。 それと同時に自己整膚を指導し、毎日お腹を重点的に整膚をしてもらっている。 12月14日までに8回整膚を施術した結果、両首の肉塊は尐しずつ小さくなり、 お腹を整膚することで手足の冷えも改善されつつある。 頭皮と頭蓋骨とのぶよぶよも解消されつつある。 尐し時間がかかるが整膚で良い結果でると思う。 ns さんには健康診断を受け、特に腎臓の検査をするよう依頼している。 6 整膚循環図 7 終わりに 症例1について 整膚により人差し指を除くほかの指は自分の意志で動くようになったことは大変興味深い ことである。何十年も動かすことなかった指が動くということは、動かさないためにそこに 毒がたまり、動かすことも出来ず、無理に動かそうとすると激痛が走る。整膚によってその 毒を動かすことによってそこに気血が充足され、元通りになったと云うことだと思います。 死んだものは生き返ることはないのである。 症例2について 整膚美容の効果で90歳の女性の顔が“若いときの顔に戻ったみたい”と大変喜んだ 年齢に関係なく女性はいつまでもきれいでいたいとの願いはすばらしいことだと思う。 開口一番、“あの世に云ってお父さんに会って、私だとわかってくれない”の言葉には胸が いっぱいになった。 症例3について ns さん症状は身体中の水はけが悪く、吉松東洞の“万病一毒説”にいう水毒にあたり病気 が発症する直前である。 自己整膚を毎日実行し回復方向に向かっている。 このような長い期間本人が気づかずまだ発症していない状態で整膚と出会えた事に感謝を している。 吉松東洞の“万病一毒説”をとうして整膚を考えると、整膚は未病に直結しているとしかい えない。 『聖人は已病を治さずして、未病を治す』とあります、これは病気になったら、その病気そ のもの、たとえば肝病なら肝をひたすら治すのは下手な医者なのであって、肝の病が他に影 響しないようにまだ病んでいない臓器を強化し肝が治りやすいようにしてゆくのが上手な 医者である。 このように整膚は皮膚を耕すことで臓器の働きを活性化させ病気にならない、病気を発症さ せないすばらしい施術であると思います。 謝辞 整膚学博士コースの講義をしていただいた徐堅先生に感謝申し上げます。 写真の提供をいただいた koto さん、協力をいただいた matu さん、ns さんに感謝申し上げ ます。 8 参考文献 徐 堅 著 整膚学 丸善株式会社 蔡 晶 著 整膚美容法 整膚看護株式会社 校正宋板傷寒論 春光苑漢方研修会 吉益東洞 原書 粟島行春 譯註 建殊録 東洋医学薬学古典研究会 粟島行春 医学以前(健康という幻想を追う) 未病医学シリーズ刊行会 未病医学の原点 未病医学シリーズ刊行会 粟島行春 訓読 著 粟島行春 著 吉益東洞 原書 角田睦子 譯註 薬徴(巻之上、中、下)三煌社 9