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(平成18年度)(PDF形式 1027キロバイト)

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(平成18年度)(PDF形式 1027キロバイト)
平成18年度
包括外部監査の結果に関する報告書
業務委託について
平成19年3月
旭川市包括外部監査人
公認会計士
西
俊輔
目
第1
外部監査の概要
次
頁
1.外部監査の種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
2.選定した特定の事件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
3.事件を選定した理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
4.外部監査の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
5.監査対象期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
6.監査実施期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
7.包括外部監査の補助者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
8.利害関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
第2
業務委託の概要
1.委託の意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
2.委託の利点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
3.委託の基準 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
4.委託の事務処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
5.契約締結の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
第3
外部監査の結果及び意見
アンケートによる全件調査の概要と結果
全件調査の概要
1.アンケートの対象部局等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2.アンケートの内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
全件調査の結果
1.業務委託の推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
2.部局別の委託割合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
3.契約方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
4.業務の種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
5.委託の理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
6.事後評価の実施の有無 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
7.契約相手先との利害関係の有無 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
8.契約相手先の分類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
9.指名競争入札とした理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
10.随意契約とした理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
11.一者随意契約とした理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
12.新規・継続の別 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
13.下請け(再委託)の有無 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
個別調査の結果
個別案件について
1.市立旭川病院院内保育所運営業務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
2.患者等の食事の提供業務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
3.財団法人旭川市水道協会への委託 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
4.旭川市7条駐車場料金収納業務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48
5.旭川聖苑火葬業務及び施設設備維持管理業務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52
6.旭川聖苑苑庭維持管理業務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55
7.ひとり暮らし高齢者訪問事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59
8.旭川市保健所手数料等徴収事務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63
9.旭山動物園園内業務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66
その他の案件について
1.書類に係る形式的不備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71
2.一者随意契約について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73
3.指名競争入札の形骸化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94
4.指名競争入札後の契約内容の変更 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119
5.公募型指名競争入札と簡易公募型指名競争入札(意見)・・・・・・・・・・・・・・・・ 122
6.積算根拠が不明確あるいは妥当でない委託料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123
7.再委託 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133
8.指定管理者制度(意見)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137
9.地元業者等に対する配慮(意見)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144
10.事後評価(意見)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146
11.設計金額の事前公表制度(意見)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
12.その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 149
総
括
1.本報告書における予定価格等の記載について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 153
2.業務委託の包括外部監査を終えて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154
報告書中の表の合計は、端数処理の関係で総数と内訳の合計
とが一致しない場合がある。
また、報告書中の金額は特にことわりのない限り消費税込み
の金額となっている。
第1
外部監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第 1 項に基づく包括外部監査
2.選定した特定の事件
業務委託について
3.事件を選定した理由
地方自治体の公共工事については、近年、入札に参加する業者同士による談合の他
に、発注者である地方自治体が自らこれを主導する官製談合が相次いだことなどが原
因となり、入札制度の改革がさまざまなところで検討されているところである。
一方で、公共工事と同様の手続きによって契約を締結する業務委託については、地
方自治体が行う事務事業の多様化に伴い、事務処理の効率化、住民サービスの向上、
民間の専門的な知識・技術等の活用を図るために、その活用が増加しているところで
あるにもかかわらず、公共工事に比べれば話題になることが少ない。旭川市において
も平成 17 年度の歳出合計(一般会計と特別会計の合計)2,461 億円のうち、136 億円
を業務委託に係わる委託料として支出しており、歳出合計に占める割合は 5.5%と決し
て低くはない支出となっている。しかも、業務委託はその内容が多岐にわたることに
加え、市のほぼすべての部局で行われていることから、市でもこれまで業務委託とい
うくくり方での分析が必ずしも行われていなかったように思われる。
そこで、公共工事と同様、入札制度を含む契約方法に問題がないか、業務委託を行
うことによって人件費を始めとする各種経費の節減が図られているか、住民サービス
の向上など予定した行政目的達成に貢献しているかといったことを検討する必要があ
ると考え、本年度の事件として選定した。
4.外部監査の方法
包括外部監査は以下の監査要点(監査の視点)に基づき、監査手続に記載した方法
によって行った。
(1)監査要点
①契約方法及び相手先の選定方法は適正か
②委託の理由に合理性があるか
③契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか
④委託料の算定方法は適正か
⑤委託料は業務の内容に対し適正な水準か
1
⑥委託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か
⑦委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられているか
⑧当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
(2)監査手続
①
監査はすべての業務委託案件を調査するものではなく、一部の案件を抽出し、
これを調査することによって行っている。
②
抽出する元となる資料については、監査に先立ち実施した市の全部局を対象と
するアンケートの結果を使用した。
③
抽出する際の金額基準やその他の基準は特に定めることをせず、包括外部監査
人及び補助者がそれぞれの判断に基づき抽出を行った。
④
抽出した案件の調査については、業務委託の起案から支払へ至るまでの一連の
書類を閲覧するとともに、関係部署へのヒアリングを行い、必要に応じて関係部
署の視察も行った。
なお、地方自治法第 252 条の 38 第 2 項において「監査の結果に関する報告に添えて
その意見を提出することができる」とされている意見については、報告書中、項目名
の横に「(意見)」と記載した。
5.監査対象期間
原則として平成 17 年度とし、必要に応じて監査時点の状況及び平成 16 年度以前の
年度も監査対象とした。
6.監査実施期間
平成 18 年 8 月 7 日から平成 19 年 3 月 28 日まで
7.包括外部監査の補助者
弁
護
士
林
孝幸
公認会計士
伊藤
隆
公認会計士
小関
健三
税
理
士
小木田儀和
税
理
士
坂本
和繁
8.利害関係
包括外部監査の対象とした事件につき、旭川市と包括外部監査人又は補助者との間
には、地方自治法第 252 条の 29 の規定により記載すべき利害関係はない。
2
第2
業務委託の概要
1.委託の意義
委託とは、市の事務事業を処理するに当たって、行政責任を果たす上で必要な監督権等
を市に留保しながら、民間企業や住民団体等の他の団体又は個人にその処理を委ねること
である。したがって、委託は事務処理形態のひとつであり、民間企業等にその処理を委ね
たからといって行政責任までも免れるものではない。
委託の形態には様々なものがあり、民法上の契約に分類すれば「委任」、「準委任」、「請
負」に該当するものが多い。委任とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委
託し、相手方がこれを承諾することによってその効力を生ずる契約のことをいう(民法 643
条)。また準委任とは、法律行為でない事務を委託する契約のことであり、委任に関する規
定を準用したものである(民法 656 条)。そして請負とは、当事者の一方がある仕事を完成
することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することに
よってその効力を生ずる契約のことをいう(民法 632 条)
。実務上、これらは必ずしも明確
に区分できるものではないものの、一般に委任又は準委任が継続的な事務処理自体を目的
とするのに対し、請負は仕事の完成を目的とするとされている。
さらに、委託契約には公法上の契約に基づくものと、私法上の契約に基づくものとがあ
る。公法上の契約は法令に根拠を置く契約であり、例えば他の地方公共団体への事務委託
(地方自治法 252 条の 14)などがある。私法上の契約は一般に委託契約と呼ばれるもので、
特殊な技術又は特殊な設備等を必要とする、あるいは高度な専門知識を必要とする事務事
業、調査、研究などで、他の者に委託して実施させることのほうが効率的であるなどの理
由で契約されるものである。
なお、公の施設については、平成 15 年 6 月に地方自治法が改正され、これまでは地方公
共団体が出資している一定の法人等にのみその管理を委託することができるとされていた
ところ(管理委託制度)
、平成 15 年 9 月以後は民間の業者にも管理を行わせることができ
るようになった(指定管理者制度)
。
2.委託の利点
委託には次に掲げるように様々なメリットがあるものの、その管理を適切に行わなけれ
ば、委託料の上昇や営利本位による業務処理の粗雑化、プライバシーの漏えい等の問題が
生じることも考えられる。したがって、事務処理に当たっては、仕様書の作成、委託先の
選定、監督、厳正な検査等に細心の注意を払い、委託のメリットが生かせるようにしなけ
ればならない。
(1)市民サービスの向上
市民が利用する施設等においては、夜間や祝日の施設開放、開館時間延長等市民ニーズ
に応じた管理運営を行うことによって、市民サービスの向上が期待できる。
3
(2)専門的な知識・技術等の活用
市が有する情報、知識及び技術だけでは事務事業の目的の達成が困難なものがあるが、
このような高度な知識、技術等が必要とされる業務を専門業者に委ねることによって、迅
速かつ効果的な事務処理や精度の高い成果が期待できる。
(3)効果的な予算執行
委託先の弾力的な経営手法の活用により、直営に比べて人件費、物件費の縮小が期待で
き、効果的な予算執行が可能になる。
(4)事務処理の効率化
夜間、早朝などの不規則な勤務あるいは非定期的な事務処理など職員の勤務形態になじ
まない業務や、短期的に多くの事務量を処理する必要がある場合には、業務実態に応じた
効果的な事務処理が可能となる。また、当該業務を専門的に行っている業者等への委託に
より、事務処理の迅速性や的確性が期待できる。
(5)市民の自治意識の高揚
コミュニティ施設等の市民生活に密着した施設の管理運営を地域の住民団体に委託した
場合には、市民による自主的な管理運営が行われ、そのことによって自治意識の高揚が期
待できる。
3.委託の基準
市の「委託契約に関する事務の手引」によれば、委託の適否を判断する基準として次の
ようなものがあげられている。
(1)一般的基準
ア.法令に適合すること
法令において委託する場合の基準や委託先について限定しているような場合は、これ
に従うことは当然であるが、委託先の委託事務の執行に当たっても、法令に違反するこ
とがないようにしなければならない。
イ.行政責任が確保できること
先に記載したとおり、委託によって行政責任を免れるものではない。したがって、委
託先の公正、公平、責任ある処理等を確保するため、日常の業務執行や緊急時の対応な
どについて、常に十分に監理、指導を行える見通しを持って委託を行わなければならな
い。
ウ.経済効果が期待できること
委託することによって経費が節減されるとともに、事務事業の効率的な執行を求める
ことができるものであること。この際には、短期的な効果だけではなく中長期的な視点
からの分析も行う必要がある。
エ.市民サービスの水準が確保できること
委託することによって、日常のサービスが低下したり、行政ニーズに的確、迅速に対
4
応できなくなるなど、市民サービスに著しい影響を及ぼさないこと。
オ.受託能力があること
業務の遅滞や不履行は市民生活に与える影響が大きいことから、業務を十分に処理で
きる能力を持っていること。
(2)委託の分類とその基準
区分
第1類型
内容
業務例
委託の基準
留意事項
定型的、臨時的又
庁舎・施設の清
①経済性、効率性
①仕様を明確化し
は変則的な業務で
掃・警備、各種設
が期待できるこ
処理の確実性を
委託先の専門的技
備の保守点検・操
と。
確保すること。
術や技能を活用す
作、計算、電算処
②行政責任が確保
るもの
理、検針・料金徴
されること。
の守秘事項の保
収、ごみ収集、各
③確実な処理が期
護に努めるこ
種設計・測量、除
待できること。
②プライバシー等
と。
雪、除草、剪定等
調査研究や相談・
各種調査研究業
①市の有する知
①委託先との共同
検診等、委託先の
務、相談業務、健
識、技術だけで
体制を確保し、
専門的情報や知
康検診、研修、編
は目的の達成が
業務によっては
識、技術を活用す
集、映画、ビデオ
困難なもの。
委託を通して専
るもの
制作等
②委託する目的ど
門的知識・技術
おりの成果が期
の習得及び蓄積
待できること。
を図ること。
第2類型
②プライバシー等
の守秘事項の保
護に努めるこ
と。
第3類型
①市民意識、地域
①公平、公正なサ
設の管理運営(※)、
コミュニティー
ービスの確保に
ーズへのきめ細か
社会福祉施設の管
活動の高揚が図
努めること。
な対応と市民意識
理運営、地域にお
れること。
の高揚が期待でき
ける福祉活動、各
るもの
種教室等
市民生活に密着し
市民が利用する施
た業務で、市民ニ
②適切な委託先が
あること。
(※)現在は指定管
理者制度へ移行
②企画、運営等の
自主性を尊重す
ること。
③委託先の能力を
十分調査するこ
と。
5
4.委託の事務処理
委託契約の事務処理手順を示すと次のとおりである(後述するように、旭川市において
は一般競争入札とせり売りが行われていないため、これについては省略)。
【指名競争入札の場合】
【随意契約の場合】
法適合性、公共性、経済性等の検討
委託対象業務の選定
(1)
↓
仕様書、図面の作成
委託業務の内容検討
(2)
↓
設計書、積算書の作成
支出予定金額の算定
(3)
↓
入札か随意契約の検討
契約方法の検討
(4)
見積り合わせ対象者の選定
(5)入 札 参 加 者 の 選 定
委託の実施について決定
施 行 の 決 定 伺
入札執行の通知
対象業者の選定
見積書徴収の通知
業者に対して通知
仕様(業務内容)の説明
仕様、図書等の配布
↓
(7)入
契約の締結に当たり、あらかじめ市
側において定める価格である。
予定価格の決定
(6)
札
の
執
行
見積り合わせの実施
入札の場合は、最低入札者を、見積
り合わせの場合は、内容により選定
する。
契約の相手方の選定
↓
契
約
締
結
伺
入札や見積り合わせの結果に基づ
き契約締結の適否を決定する。
締
結
契約書の交換、請書の徴収等当事
者が相互に履行の確認を行う。
行
契約に基づき業者が施行する。契約
の内容により監督員を配置する。
査
業務の完了について検査(完了届け
等の提出)し、検査調書を作成する。
↓
(8)
契
約
の
↓
(9)
施
↓
(10)
検
↓
(11)
委託料の支払い
6
(1)委託対象業務の選定について
前述した「3.委託の基準」に留意して委託対象業務を選定する。
(2)委託業務の内容検討について
市の「委託契約に関する事務の手引」によれば、仕様書(図面等を含む。以下同じ。)は、
委託の目的や内容を明確化するとともに、委託料の算定基礎や適正な履行の確保、口頭指
示等によるトラブル防止、さらには、適正な受託者の選定等委託の基本となるものである
から、委託しようとするときは、あらかじめ事務事業の目的、性格、内容等を正確に反映
した仕様書を作成しなければならないことになっている。以下(3)以後の記載は市の「委
託契約に関する事務の手引」あるいは「契約事務の手引」によっている。
(3)支出予定金額の算定について
委託料を積算するに当たっては、仕様書等を基礎に、業務内容、業務量、作業の難易度
等を考慮しなければならない。専門的な調査、試験、研究等の事務の性格から積算するこ
とが困難である場合が少なくないものの、委託料が他の市町村とかけ離れて高いことは許
されないので、他都市の情報の収集や市場動向、あるいは過去の実績等の把握に努めると
ともに、関係課との協議も行う必要がある。
(4)契約方法の検討について
後述する「5.契約締結の方法」を参照。
(5)入札参加者、見積り合わせ対象者の選定について
①一般的留意事項
委託先の選定の対象は、委託しようとする業務の種類、性質等を考慮し、知識、技術、
信用、実績等について適格性を有するものでなければならない。
②業務委託被指名者等選考委員会
業者の選定に当たっては、公平、公正な業者の参加機会を確保するため、支出予定金
額が 200 万円未満のものや、別に業者選定について定めあるものを除き、部内に「業務
委託被指名者等選考委員会」を設置し、委員会の協議を経て決定する。
③業者選定数
業者は、随意契約にあっては原則として 2 者以上、指名競争入札にあっては少なくと
も 3 者以上を選定する。指名競争入札における業者選定数の基準は次のとおりとする。
7
支出予定金額
選定数
200 万円未満
3 者以上
200 万円以上 500 万円未満
4 者以上
500 万円以上
5 者以上
なお、清掃業務については、できる限り多くの業者の選定を考慮すること。
(6)予定価格の決定について
競争入札の場合はもちろん、随意契約においても市は予定価格以下の金額で契約を締結
することになるため、予定価格は地方公共団体が契約を締結する場合の決定基準となるも
のである。したがって、予定価格は入札等の執行前までにあらかじめ定めなければならず、
これを記入した予定価格書は原則として封書に入れて封印しなければならない(注)。予定
価格の決定に当たって留意する点は次のとおりである。
①積算金額を基礎に、地域の経済性、特殊性その他の諸条件を考慮すること。
②予定価格書には、原則として消費税及び地方消費税の額に相当する額を加算した予定
価格と予定価格に 105 分の 100 を乗じて得た入札書比較価格を併記すること。
③予定価格書は、秘密保持等適正な管理のため、できるだけ入札等の当日又は直近の日
に作成すること。
なお、①にあるように予定価格は市が積算した金額(支出予定金額あるいは積算金額)
をもとに予定価格の決定権者が決定するものである。
(注)契約締結方法が随意契約で、なおかつ次のいずれかに該当する場合には予定価格書
の作成を封書によらないことができる。
ア.次の額を超えないとき。
工事又は製造の請負
130 万円
財産の買入れ
80 万円
物件の借入れ
40 万円
財産の売払い
30 万円
物件の貸付け
30 万円
上記以外のもの
(委託はここに含まれる)
50 万円
イ.法令等により価格が定められているとき。
ウ.物品購入契約を除き、前年度又は前回契約額を変更する必要性がないと認めら
れるとき。
8
〈 最低制限価格 〉について
競争入札では地方公共団体にとって最も有利な価格を提示した者を落札者とするの
が原則であるものの、例外的に一定の価格を定めて、その価格以上で最も有利な価格
を提示した者を落札者とすることができる。言い換えれば、地方公共団体にとってい
くら有利であっても、一定の価格を下回る価格を提示した者を落札者としないことが
できる。この場合に定められる一定の価格のことを最低制限価格という(地方自治法
第 234 条第 3 項、地方自治法施行令第 167 条の 10 第 2 項、第 167 条の 13)。
旭川市では、清掃業務の委託など一部の業務委託において最低制限価格制度を試行
している。
(7)入札の執行について
入札の結果、2 回目の入札でも予定価格の範囲内の入札がなく落札者が決定しないときは、
最低入札金額による入札者と随意契約による見積書徴収に移行する場合がある。ただし、
最低入札金額と予定価格とに著しくかい離の生じた入札にあってはこうした取扱いは適当
でなく、また、契約保証金、履行期限を除き、最初に競争入札に付すとき定めた予定価格
等の条件変更はできない。
(8)契約の締結について
一般競争入札もしくは指名競争入札により落札者を決定したとき又は随意契約の相手方
を決定したときは、契約書を作成しなければならない。ただし、契約金額が 80 万円を超え
ないときなど一定の場合には契約書の作成を省略し、「請書」等で代替することもできる。
(9)施行について
契約の適正な履行の確保や委託の効果が十分に発揮されるよう、必要に応じて委託業務
についての作業計画書や従事者名簿をあらかじめ提出させる。なお、必要であれば受託者
から日報等の提出を求め、受託者に適切な指示を行わなければならない。また、業務が完
了したときは、軽微なものを除き文書により業務完了届を徴収しなければならない。
(10)検査について
完了検査は、支出の可否を判断する基準となるものであり、委託により執行された業務
が適正に履行されたかどうかの確認をする行為である。検査員が検査を完了した場合は、
その結果を検査調書に記載し、検査権者まで報告しなければならない。
なお、契約金額が少額なものについては、旭川市契約事務取扱規則第 36 条により検査調
書の作成を省略できるが(注)、検査そのものは省略できない。
(注)契約金額が 80 万円(建築物及び附帯設備の修繕並びに土木補修工事に係るものにつ
いては 130 万円)を超えない契約
9
(11)委託料の支払いについて
支出の特例として地方自治法施行令及び会計規則に規定される場合にのみ認められる前
金払及び概算払を除き、委託料は契約が適正に履行され、これについての検査が確認され
た後に支払われる。
5.契約締結の方法
契約の相手方を決定する方法について、地方自治法では一般競争入札を原則とし、一定
の場合に限って、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法によることができるとされ
ている(地方自治法 234 条 1 項、2 項)。ただし、後述するように、一般競争入札は競争性
が高く公開性も優れているという長所を持っている反面、信用できない者、不誠実な者が
入り込むおそれがあることや手続が煩雑で費用がかかるなどの短所もあるとされているこ
とから、旭川市や他の地方公共団体では実務上一般競争入札がほとんど行われていない。
契約の方法を概略的に示すと次のようになる。
通常の一般競争入札
一般競争入札
総合評価一般競争入札
入
札
通常の指名競争入札
競
争
指名競争入札
総合評価指名競争入札
せり売り
契約の方法
見積合せ
随意契約
特定一者からの見積書徴収
(注)通常の一般競争入札及び指名競争入札が当該地方公共団体にとって最も有利な価格を提示した者を落札者とする
のに対し、総合評価一般競争入札及び総合評価指名競争入札は、価格とそれ以外の条件が当該地方公共団体にとって最
も有利なものをもって申込みした者を落札者とすることができる制度のことをいう。
(1)一般競争入札
一般競争入札とは、一定の資格を有する者の中から広く多数の希望者を集め、それら契
約の申込者を入札の方法によって競争させ、地方公共団体にとって最も有利な価格を提示
した者を相手方として契約を締結するものである。この方法は、広く多数の希望者を参加
させ、その機会均等と経済性を確保することがねらいであり、あらかじめ公告によって入
札及び契約に関する条件等の参加資格を一般に知らせる必要がある。したがって、有資格
者には公平に門戸が開放され、不特定多数の相手方の中から広く選択でき、地方公共団体
にとっては最も有利な価格で契約できるという利点がある。また契約手続が公開であるた
め特定の者に便宜を図ることが抑制されるという利点もある。しかし、低廉第一主義とな
10
るおそれがあることや手続上の問題から緊急の場合には実施が難しく、入札ごとの参加資
格の設定、公告、入札等の事務処理に手数がかかり、契約履行能力を欠く者等が参加する
可能性を否定できないという欠点もある。
(2)指名競争入札
指名競争入札とは、資力・信用その他について適当と認められる特定多数の者をあらか
じめ指名し、それらの者に入札させ、地方公共団体にとって最も有利な価格を提示した者
を契約の相手方として契約を締結するものである。一般競争入札に比べて手続は簡便であ
るものの、指名を受ける者が固定化された場合には競争の範囲が狭くなり、指名者相互で
談合が発生する可能性がある。指名競争入札は一般競争入札の特例であるため、次の要件
を備えた場合にのみ認められる(地方自治法施行令 167 条)。
①
工事又は製造の請負、物件の売買その他の契約でその性質又は目的が一般競争入札
に適しないものをするとき。
②
その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要がな
いと認められる程度に少数である契約をするとき。
③
一般競争入札に付することが不利と認められるとき。
なお、指名業者の選定の仕方から見た場合、指名競争入札には通常の指名競争入札の他
に、公募型指名競争入札と簡易公募型指名競争入札がある。指名競争入札では入札への参
加資格を有する者の中から指名業者を選定しなければならないのであり、資格を有する業
者は業務内容に応じてあらかじめ市に登録されている。したがって通常の指名競争入札で
は登録された業者の中から指名されるわけであるが、公募型指名競争入札と簡易公募型指
名競争入札では指名を希望する業者を登録業者の中から公募する点が異なっている。詳し
くは「第3
外部監査の結果及び意見」の「個別調査の結果」、「その他の案件について」
の「5.公募型指名競争入札と簡易公募型指名競争入札」のところで述べる。
(3)随意契約
随意契約とは、競争の方法によらないで任意に特定の者を選定し、その者を契約の相手
方として契約を締結するものである。随意契約は契約方式の中では最も簡便な方法であり、
事務上の負担を軽減できるという利点を持っているものの、契約の相手方の選定が一部の
者に偏り、地方自治体にとって不利な価格で契約を締結するおそれがあるという欠点があ
る。指名競争入札と同様、随意契約も一般競争入札の特例であるため、次の要件を備えた
場合にのみ認められる(地方自治法施行令 167 条の 2)。
11
①
売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあっては、予定賃貸借
料の年額又は総額)が別表第 5 上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範
囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。
別表第 5(第 167 条の 2 関係)
1 工事又は製造の請負
都道府県及び指定都市
250 万円
市町村(指定都市を除く。
2 財産の買入れ
3 物件の借入れ
4 財産の売払い
以下この表において同じ。)
130 万円
都道府県及び指定都市
160 万円
市町村
80 万円
都道府県及び指定都市
80 万円
市町村
40 万円
都道府県及び指定都市
50 万円
市町村
30 万円
5 物件の貸付け
6 前各号に掲げるもの
以外のもの
30 万円
都道府県及び指定都市
市町村
100 万円
50 万円
(注)旭川市契約事務取扱規則第 16 条の 2 で規定する額は上表の市町村欄の
金額と同額になっている。
②
不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加
工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が
競争入札に適しないものをするとき。
③ 身体障害者福祉法(昭和 24 年法律第 283 号)第 29 条に規定する身体障害者更生施
設、同法第 31 条に規定する身体障害者授産施設、精神保健及び精神障害者福祉に関す
る法律(昭和 25 年法律第 123 号)第 50 条の 2 第 3 項に規定する精神障害者授産施設、
同条第 5 項に規定する精神障害者福祉工場、知的障害者福祉法(昭和 35 年法律第 37
号)第 21 条の 6 に規定する知的障害者更生施設、同法第 21 条の 7 に規定する知的障
害者授産施設若しくは小規模作業所(障害者基本法(昭和 45 年法律第 84 号)第 2 条
に規定する障害者の地域における作業活動の場として同法第 15 条第 3 項の規定により
必要な費用の助成を受けている施設をいう。)において製作された物品を普通地方公
共団体の規則で定める手続により買い入れる契約、高年齢者等の雇用の安定等に関す
る法律(昭和 46 年法律第 68 号)第 41 条第 1 項に規定するシルバー人材センター連合
若しくは同条第 2 項に規定するシルバー人材センターから普通地方公共団体の規則で
定める手続により役務の提供を受ける契約又は母子及び寡婦福祉法(昭和 39 年法律第
129 号)第 6 条第 6 項に規定する母子福祉団体が行う事業でその事業に使用される者が
主として同項に規定する配偶者のない女子で現に児童を扶養しているもの及び同条第
12
3 項に規定する寡婦であるものに係る役務の提供を当該母子福祉団体から普通地方公
共団体の規則で定める手続により受ける契約をするとき。
④
新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者として総務省令で定めるところ
により普通地方公共団体の長の認定を受けた者が新商品として生産する物品を、普通
地方公共団体の規則で定める手続により、買い入れる契約をするとき。
⑤
緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
⑥
競争入札に付することが不利と認められるとき。
⑦
時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。
⑧
競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき。
⑨
落札者が契約を締結しないとき。
なお、「旭川市契約事務取扱規則」の第 17 条では、随意契約によろうとするときはなる
べく 2 人以上の者から見積書を徴することと定め、特定の者 1 人を相手方として選ぶこと
(以下、本報告書ではこれを「一者随意契約」と記載する。)は例外としている。旭川市の
「契約事務の手引」によれば、一者随意契約が認められるのは次のような場合であり、こ
れらの場合においても公正性を損なうことのないよう特に慎重かつ厳格な態度で臨まなけ
ればならないとしている。
a 国又は他の地方公共団体と契約するとき。
b 契約の目的又は性質により相手方が特定されるとき。
c
契約の締結が急を要するとき。
d どの相手方に見積もらせても価格におおむね差がないとき。
e 法令等によって価格が定められているとき。
f 先に締結した契約の条件及び内容と密接な関連性があるとき。
g 定例的に購入する物件で軽微なものを購入するとき。
h その他特別な事情(具体的理由が必要)があるとき。
(4)せり売り
せり売りとは、広義の競売と同義語で、売買価格につき多数の者を口頭で競争させ、最
も有利な価格を申し出た者を相手方として契約を締結するものである。せり売りの対象は
動産の売払いで当該契約の性質がせり売りに適している場合に限られており(地方自治法
施行令 167 条の 3)、旭川市ではせり売りによる契約は行われていない。
(5)契約方法の利点と欠点
上述した契約方法ごとの一般的な利点と欠点をまとめると、次のようになる(せり売り
は省略)。
13
区
分
利
点
欠
①公正で適正な競争が確保され
①不誠実・不信用な者の参加を排
除できない。
る。
一般競争入札
点
②入札参加希望者には機会が均
②手続きが煩雑で手間や経費が
かかる。
等に与えられる。
③経済性が確保される。
③品質が粗悪になる可能性があ
る。
①ある程度の機会均等と制限さ
指名競争入札
れた競争性は確保される。
②比較的適正な相手方が選定で
①違法な受注調整が行われやす
い。
②指名が偏ることがある。
③談合の危険性が高い。
きる。
①手続が簡単で経費がかからな
①機会不均等になるおそれがあ
る。
い。
②適正な相手方が選定できる。
②相手方の選定が恣意的になっ
たり、情実に左右されるおそれ
随 意 契 約
がある。
③一般的に経済性が確保されに
くい。
(6)その他(コンペ及びプロポーザル方式)
競争入札において、価格のみではなく、価格その他の条件が地方公共団体にとって最も
有利な者を落札者とする入札方式として総合評価一般競争入札と総合評価指名競争入札が
あることはすでに述べた。これと同様に価格の有利性のみを落札者の条件にしないものと
してコンペ方式とプロポーザル方式がある。コンペ方式は複数の者から設計対象に関する
具体的な設計案の提出を求め、これを審査して最優秀案を選定した上で最適な設計者を選
定する方法をいう。一方、プロポーザル方式は複数の者から対象となる施設に関する発想、
解決方法等の提案及び設計者の経歴、作風、能力等についての資料の提出を求め、最適な
設計者を選定する方法をいう。
通常は設計委託で行われるが、目的及び内容により価格のみによるよりも、設計者の能
力等を総合的に勘案して契約の相手方を選ぶことが適当と認められる場合で、特に専門的
な知識、経験を必要とするとき、文化性、芸術性又は創造性を必要とするとき、記念的、
象徴的な施設や景観上重要な施設であるときなどにおいて活用されており、旭川市でも行
われている案件がある。
14
第3
外部監査の結果及び意見
アンケートによる全件調査の概要と結果
全件調査の概要
1.アンケートの対象部局等
業務委託の監査に当たっては、個別案件の調査に先立ち、次ページ「2.アンケートの
内容」に掲げる項目についてアンケートを実施した。アンケートは市の全部局と業務委託
の全件を対象とし、平成 15 年度、平成 16 年度及び平成 17 年度についての回答を求めた。
対象となった市の部局は次のとおりであり、すべての部局から回答が得られた。
(1)会計課
(12)土木部
(2)企画財政部
(13)消防本部
(3)総務部
(14)学校教育部
(4)生活交流部
(15)生涯学習部
(5)市民部
(16)議会事務局
(6)保健福祉部
(17)農業委員会
(7)保健所
(18)選挙管理委員会
(8)環境部
(19)監査事務局
(9)商工観光部
(20)市立病院事業
(10)農政部
(21)水道事業
(11)都市建築部
(22)下水道事業
15
2.アンケートの内容
21.契約相手先の分類
① 前問20番の利害関係者
② 国・地方公共団体
③ 公益団体
④ 福祉団体
⑤ その他法人
⑥ 個人
⑦ その他
22.契約書の有無
① 有
② 無
23.指名競争入札とした理由
① 一般競争入札に適さない(地方自治法施行令 167
条 1 号)
② 競争者が少数(地方自治法施行令 167 条 2 号)
③ 一般競争入札が不利(地方自治法施行令 167 条 3
号)
④ その他
24.随意契約とした理由
① 定められた額を超えない(地方自治法施行令 167
条の 2 第 1 号)
② 競争入札に適さない(地方自治法施行令 167 条の
2 第 2 号)
③ 他の法律に基づく契約(地方自治法施行令 167 条
の 2 第 3 号)
④ 新商品の契約(地方自治法施行令 167 条の 2 第 4
号)
⑤ 緊急の必要(地方自治法施行令 167 条の 2 第 5 号)
⑥ 競争入札が不利(地方自治法施行令 167 条の 2 第
6 号)
⑦ 時価よりも有利(地方自治法施行令 167 条の 2 第
7 号)
⑧ 入札者・落札者なし(地方自治法施行令 167 条の
2 第 8 号)
⑨ 落札者が契約締結しない(地方自治法施行令 167
条の 2 第 9 号)
⑩ その他
25.随意契約とした時期
① 当初
② 途中
26.一者随意契約とした理由
① 法令・条例・規則等で相手が特定
② 他の者に受託能力がない
③ 業者が1者のみ
④ 過去に設備等を設置
⑤ 過去の実績
⑥ 継続業務である
⑦ 契約者の評判
⑧ 少額の契約
⑨ その他
1.部名
2.課名
3.係名
4.契約を締結した部局
5.支出科目
6.営業種目
7.業務等の内容(契約件名)
8.予定価格
9.契約金額(当初)
10.支出金額(変更後の確定した契約金額)
11.契約年月日
12.履行期間
13.相手方名称
14.契約方法
① 一般
② 指名
③ 随契(見積合わせ)
④ 随契(一者)
⑤ 随契(その他)
⑥ せり売り
15.始期
16.委託の種類
① 施設の維持・管理・運営
② 警備
③ 清掃
④ 廃棄物の収集・運搬・処理・埋め立て
⑤ コンピュータシステム関連
⑥ データ入力
⑦ 広報・PR・イベント
⑧ 市民の福祉・厚生・各種検診
⑨ 除排雪
⑩ 検査
⑪ 測量・設計・調査
⑫ 工事
⑬ その他
17.事務委託の割合(全部か一部か)
① 全部
② 一部
18.委託の理由
① 業務の効率化・経費の削減
② 高度の専門的能力・知識が必要
③ 一時的な業務
④ 法律・制度等の制約
⑤ 民間の感覚によりサービスの質を向上
⑥ その他
19.事後評価の実施の有無
① 実施
② 未実施
20.契約相手先との利害関係の有無
① 有
旭川市が出資
旭川市職員及び市職員 OB が役員等に就任
旭川市が補助金を交付
旭川市が補助金以外に資金協力
旭川市が技術指導・援助
旭川市との取引(委託含む)が売上の過半数
その他
② 無
27.指名業者の数(指名の場合)
28.応札業者の数
29.見積業者の数(随契の場合)
30.最低見積価格
31.新規・継続の別
① 新規
② 継続
32.下請け(再委託)の有無
① 有
② 無
33.備考
16
全件調査の結果
1.業務委託の推移
アンケートによる全件調査の結果によれば、平成 17 年度の業務委託の合計件数は 2,651
件、合計金額は 136 億 4,754 万円であった。なお、
平成 15 年度の業務委託の合計件数は 2,627
件で合計金額は 156 億 5,771 万円、平成 16 年度の業務委託の合計件数は 2,586 件で合計金
額は 140 億 3,267 万円であり、直近 3 年間の委託料の件数と金額の推移を示せば次のとお
りとなる。
16,000
百
万 15,500
2,660
2,640
15,000
2,620
14,500
2,600
14,000
金額
件数
2,580
13,500
2,560
13,000
12,500
2,540
平成15年度
平成16年度
平成17年度
これによれば、業務委託は金額ベースで減少しているように見えるものの、平成 15 年度
の業務委託には新たに建設された旭川市青少年科学館に係わる常設展示室内の展示機製作
や設置業務などの業務委託が 8 件、合計 18 億 5,462 万円含まれており、これらは平成 16
年度以後発生していない。また、平成 17 年度においては後述する指定管理者制度へ移行し
た案件が件数では 50 件以上、金額では 7 億円以上あった。したがって、これら指定管理者
制度へ移行した案件がそのまま業務委託として継続していたとすれば、平成 17 年度の件数
と金額は上記のグラフよりも増加することになる。そこで、これらの要因を考慮した上で
あらためて業務委託の推移を見ると次ページのようになる。
17
14,500
百
14,400
万
14,300
14,200
14,100
14,000
13,900
13,800
13,700
13,600
13,500
2,720
2,700
2,680
2,660
2,640
2,620
2,600
2,580
2,560
2,540
2,520
平成15年度
平成16年度
金額
件数
平成17年度
単年度の特殊要因を排除し、指定管理者制度へ移行した案件も業務委託として継続して
いたとすれば、上記のグラフからわかるように業務委託はむしろ増加傾向にあると言える。
平成 16 年度の件数が減少したのは市営住宅建替えに伴う設計・調査等の業務委託や雪下ろ
し・草刈業務、その他の少額な案件が減少したためである。
なお、今回実施したアンケートでは、集計した件数や金額の一部に重複があったり、逆
に集計されていない件数や金額が一部に存在する可能性があることをあらかじめことわっ
ておく(ただし、本報告書の結論に影響を与えるほどのものではないと思われる)。以下で
はこの前提のもと、平成 17 年度の調査結果について述べる。
18
2.部局別の委託割合
<件数割合>
市立病院事業
3%
下水道事業
3%
水道事業
選挙管理委員会
4%
0%
農業委員会
0%
<金額割合>
会計課 企画財政部
1%
0%
総務部
4%
市立病院事業
6%
下水道事業
8%
監査事務局
生活交流部
1%
0%
選挙管理委員会
0%
市民部
7%
議会事務局
0%
監査事務局
0%
農業委員会
0%
議会事務局
0%
保健福祉部
13%
生涯学習部
10%
消防本部
1%
学校教育部
2%
消防本部
1%
環境部
5%
土木部
16%
商工観光部
3%
都市建築部
3%
企画財政部
1%
総務部
1%
生活交流部
1%
市民部
4%
保健福祉部
8%
保健所
7%
生涯学習部
4%
保健所
8%
学校教育部
12%
水道事業
5%
会計課
0%
環境部
13%
商工観光部
2%
土木部
33%
農政部
2%
都市建築部
2%
農政部
5%
業務委託の実施状況を部局別にみると、件数・金額ともに土木部が最も多い。土木部の
業務委託には公共工事に係わる測量・設計・調査の業務委託が多い他、業務の種類別にみ
た場合、施設の維持・管理・運営業務に次いで多い除排雪業務を主として土木部が管理し
ているためと思われる。なお、土木部において件数割合よりも金額割合の方がより大きな
数字となっているのは、公園の維持管理業務など 1 件当たりの委託金額が数億円となる案
件が複数存在するためである。金額割合でみた場合、土木部に次いで多いのが環境部と保
健福祉部及び下水道事業である。環境部と下水道事業は件数割合でみるとそれほど多いわ
けではないものの、環境部では清掃工場の運転管理業務やごみ収集運搬業務、下水道事業
では下水処理センターの運転管理業務など、やはり 1 件当たりの委託金額が数億円となる
案件があるためである。保健福祉部は件数が多いのに加え、委託料が 4 億円を超える、へ
き地保育所・季節保育所及び通年制保育園管理業務という業務委託があるためそれぞれの
割合が高くなっている。
19
3.契約方法
<件数割合>
<金額割合>
④髄契(その他)
1%
④髄契(その他)
7%
①指名
30%
①指名
48%
③随契(一者)
49%
③随契(一者)
50%
②随契(見積合
わせ)
13%
②随契(見積合
わせ)
2%
業務委託について採用される契約方法として最も多いのは件数・金額ともに一者随意契
約である。次に多いのは指名競争入札であり、金額割合でみればこのふたつの契約方法で
市の業務委託の 97%を占めている。なお、随意契約には一者随意契約の他に「見積合わせ」
によるものと「その他」という回答もあり、随意契約全体としてみると件数割合では 70%、
金額割合では 52%となるため、業務委託契約はすべて随意契約か指名競争入札によって行わ
れていることになる。この結果から明らかなように、一般競争入札とせり売りについては
現在のところ行われていない。また、随意契約のその他という回答には、回答者の錯誤に
より一者随意契約や見積合わせが含まれていると思われる他に、コンペ方式やプロポーザ
ル方式も含まれていると思われる。
すでに述べたとおり、地方自治法では一般競争入札を原則とし、一定の場合に限って、
指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法によることができるとされているにもかかわ
らず(地方自治法 234 条 1 項、2 項)、地方自治法上原則とされている一般競争入札はまっ
たく行われず、委託契約のすべてが、例外とされている指名競争入札と随意契約で占めら
れていることになる。さらに、旭川市契約事務取扱規則の第 17 条では、随意契約は見積合
わせによることが原則とされているにもかかわらず、いわば例外中の例外である一者随意
契約が最も多く採用されていることになる。
20
4.業務の種類
<件数割合>
<金額割合>
⑫工事
1%
①施設の維持・
管理・運営
26%
⑬その他
24%
⑬その他
11%
⑪測量・設計・調
査
6%
①施設の維持・
管理・運営
36%
⑩検査
1%
⑫工事
0%
⑪測量・設計・調
査
12%
⑩検査
3%
⑨除排雪
6%
⑧市民の福祉・
厚生・各種検診
9%
⑨除排雪
15%
②警備
3%
③清掃
4%
④廃棄物の収
集・運搬・処理・
埋め立て
⑤コンピュータシステム
6%
関連
3%
⑦広報・PR・イベ
ント
3%
⑥データ入力
1%
⑧市民の福祉・
厚生・各種検診
11%
②警備
2%
③清掃
2%
⑦広報・PR・イベ
ント
1%
⑥データ入力
1%
⑤コンピュータシステム
関連
4%
④廃棄物の収
集・運搬・処理・
埋め立て
9%
業務の種類として最も多かったのは、件数・金額ともに「施設の維持・管理・運営」業
務であり、件数で約 700 件、金額では約 47 億円であった。施設の維持・管理・運営業務の
うち、委託金額が 1 億円を超えるものには清掃工場の運転管理業務(委託金額は約 2 億 7
千万円)、公園緑地維持管理業務(委託金額は約 7 億 8 千万円)、下水処理センターの運転
管理業務(委託金額は約 6 億 8 千万円)などがある。金額割合でみて次に多かったのが「除
排雪」で平成 17 年度は約 21 億円であった。また、その次に多かったのは「市民の福祉・
厚生・各種検診」であり、在宅介護医支援センターの運営業務や、インフルエンザ等の予
防接種、各種健康診断、また委託金額で 4 億円を超える、へき地保育所・季節保育所及び
通年制保育園の管理運営業務などが含まれている。
21
5.委託の理由
<件数割合>
⑤民間の感覚に
よりサービスの
質の向上
0%
④法律・制度等
の制約
5%
③一時的な業務
3%
<金額割合>
⑤民間の感覚に
よりサービスの
質の向上
④法律・制度等
0%
の制約
10%
⑥その他
7%
①業務の効率
化・経費の削減
35%
⑥その他
1%
③一時的な業務
1%
①業務の効率
化・経費の削減
48%
②高度の専門的
能力・知識が必
要
40%
②高度の専門的
能力・知識が必
要
50%
委託が選択される場合には、直営で行う場合に比べて事業が効率的に行われ人件費や各
種経費が節減されるとともに、市民サービスの向上が図られなければならない。また、市
が有する情報、知識及び技術だけでは事業の目的達成が困難なものがあり、このような高
度な知識、技術等が必要とされる業務を専門業者に委ねることによって、迅速かつ効果的
な事務処理や精度の高い成果が期待できることも委託を選択する理由となる。こうしたこ
とから、委託の理由としては「業務の効率化・経費の削減」と「高度の専門的能力・知識
が必要」というものが多かった。なお、一時的な業務で常に市の職員を配置する必要のな
い業務については、経済性・効率性が期待できること、行政責任が確保されることなどを
判断基準として委託することが認められる。
22
6.事後評価の実施の有無
<件数割合>
<金額割合>
①実施
23%
①実施
37%
②未実施
63%
②未実施
77%
ここでいう事後評価とは委託した業務の完了検査を意味するものではなく、経済性や効
率性の点から契約方法や相手先の選定方法は適正であったか、委託の理由に合理性があっ
たかなどを評価し、次年度以後の業務委託契約に生かす目的で行われるものを意味する。
しかし、後述するように、本来例外中の例外である一者随意契約が安易に行われたり、指
名競争入札では 90%を超える高い落札率(※)で同一の相手先と長期に渡って契約するよう
な不自然な業務委託が続けられたりしている現状では、こうした観点から事後評価が行わ
れているとは考えづらい。仮に、上述した観点から事後評価が行われているとしても、少
なくともそれが適正に機能しているとは言えない。
したがって、アンケートによれば事後評価を実施しているのは件数割合では 23%、金額割
合では 37%となっているものの、「実施」しているという回答には、単に業務の完了検査を
実施していることをもって事後評価を実施していると回答したものがかなり含まれている
と思われる。
(※)予定価格に占める落札価格の割合で、「落札価格÷予定価格×100(%)」と計算す
る。本報告書では落札価格の代わりに契約変更後の支出金額を用いて計算している
場合もあるが、以下、本報告書ではこの比率を「落札率」と記載する。
23
7.契約相手先との利害関係の有無
<件数割合>
<金額割合>
①有
10%
①有
30%
②無
70%
②無
90%
市と何らかの利害関係がある業者の場合、委託相手先の選定や委託金額の決定において
他の業者に比べて有利な扱いがなされる可能性がないとは言えないため、委託相手先とし
ては適当でないことが多い。たとえ特別な扱いをすることが実際にはないとしても、市民
からそうした疑いを持たれることがないよう、利害関係を持つ相手先との契約はやむをえ
ない場合を除き極力実施すべきではない。なお、契約相手先との利害関係があると回答し
た案件について、利害関係の内容を示したのが下のグラフである。件数割合でみた場合は
市が出資している業者との契約が多く、金額割合でみた場合は市の職員やOBが役員に就
任している業者との契約が多いことがわかる。
<件数割合>
⑤旭川市が技術
指導・援助
0%
⑥旭川市との取
引(委託含む)が
売上の過半数
11%
<金額割合>
⑥旭川市との取
引(委託含む)が
売上の過半数
19%
⑤旭川市が技術
指導・援助
0%
⑦その他
7%
①旭川市が出資
34%
①旭川市が出資
13%
④旭川市が補助
金以外に資金協
力
1%
④旭川市が補助
金以外に資金協
力
1%
③旭川市が補助
金を交付
31%
⑦その他
1%
③旭川市が補助
金を交付
22%
②旭川市職員及
び市職員OBが
役員等に就任
16%
24
②旭川市職員及
び市職員OBが
役員等に就任
44%
8.契約相手先の分類
<件数割合>
⑦その他
3%
⑥個人
6%
<金額割合>
①市の利害関係
者
②国・地方公共
9%
団体
2%
⑥個人
19%
⑦その他
1%
③公益団体
4%
①市の利害関係
者
28%
④福祉団体
4%
②国・地方公共
団体
0%
③公益団体
0%
⑤その他法人
51%
⑤その他法人
72%
④福祉団体
1%
契約相手先として最も多いのは件数割合・金額割合とも「その他法人」で、これは市と
利害関係等がない通常の有限会社や株式会社である。これに次いで多いのが市の利害関係
者で、前ページの「7.契約相手先との利害関係の有無」でもみたとおり、件数割合より
も金額割合の方が多くなっている。これはすなわち、利害関係者との契約は 1 件当たりの
委託金額が大きいことをあらわしている。なお、福祉団体及び公益団体は社会福祉法人や
シルバー人材センター等であり、在宅介護医支援センターの運営業務等の委託契約がある。
また、市が公益団体として回答していた財団法人旭川市水道協会については市が 43.5%を出
資し(出資額は 5 百万円)、理事・監事に市のOBあるいは市からの派遣職員が就任するい
わゆる第三セクターであることから、「市の利害関係者」に含めてある。
25
9.指名競争入札とした理由
<件数割合>
<金額割合>
④その他
0%
④その他
0%
③一般競争入札
が不利
40%
①一般競争入札
に適さない
53%
③一般競争入札
が不利
45%
②競争者が少数
7%
①一般競争入札
に適さない
53%
②競争者が少数
2%
「3.契約方法」でみたとおり、指名競争入札は件数割合では全委託契約の 30%、金額割
合では半分に近い 48%を占めている。すでに述べたとおり、指名競争入札は一般競争入札の
特例であり、次の要件を備えた場合にのみ認められるため(地方自治法施行令 167 条)、指
名競争入札を採用する場合にはその理由が重要となる。
①
工事又は製造の請負、物件の売買その他の契約でその性質又は目的が一般競争入札
に適しないものをするとき。
②
その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要がな
いと認められる程度に少数である契約をするとき。
③
一般競争入札に付することが不利と認められるとき。
①に該当する契約としては、特殊な技術を要する工事、特殊構造・品質を要する工事、
物品の買入れで監督又は検査が著しく困難なものなどがあり、②はこうした理由などによ
り入札参加者が少数となる場合である。③に該当する契約としては、不信用、不誠実な者
が入札に参加するおそれがあるときや、それによって契約義務違反が生じた場合に地方公
共団体の事業に著しく支障を来すおそれがあるときなどがある。
26
10.随意契約とした理由
<件数割合>
⑤競争入札が不
利
1%
⑥時価よりも有
利
0%
④緊急の必要
3%
③他の法律に基
づく契約
0%
<金額割合>
⑦入札者・落札
者なし
1%
⑤競争入札が不 ⑥時価よりも有
利
利
0%
0%
⑧その他
0%
⑦入札者・落札
者なし
4%
④緊急の必要
1%
①定められた額
を超えない
2%
③他の法律に基
づく契約
1%
①定められた額
を超えない
46%
⑧その他
1%
②競争入札に適
さない
49%
②競争入札に適
さない
91%
「3.契約方法」でみたとおり、随意契約は件数割合では全委託契約の 70%、金額割合で
は 52%となる。随意契約も一般競争入札の特例であり、次の要件を備えた場合にのみ認めら
れるため(地方自治法施行令 167 条の 2)、随意契約を採用する理由が重要となる。
①
売買、貸借、請負その他の契約で、その予定価格が普通地方公共団体の規則で定める
額(委託契約の場合は 50 万円)を超えないものをするとき。
②
不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加
工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が
競争入札に適しないものをするとき。
③
身体障害者福祉法その他の法律に基づく契約をするとき。
④
新商品の生産につき普通地方公共団体の長の認定を受けた者の物品を買い入れる契
約をするとき。
⑤
緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
⑥
競争入札に付することが不利と認められるとき。
⑦
時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。
⑧
競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき。
⑨
落札者が契約を締結しないとき。
②の競争入札に適さないものとしては、特殊な技術、設備を必要とするなどの理由で相
手先が特定される、あるいはそうした理由でその者と契約しないと目的を達成できない場
合や、営利を目的としない公共的団体と契約する場合などがある。
27
11.一者随意契約とした理由
<件数割合>
⑨その他
19%
①法令・条例・規
則等で相手が特
定
6%
②他の者に受託
①法令・条例・規
則等で相手が特
定
24%
⑨その他
27%
能力がない
11%
③業者が1者の
み
16%
⑧少額の契約
15%
②他の者に受託
能力がない
7%
⑧少額の契約
0%
⑦契約者の評判
0%
⑦契約者の評判
0%
⑥継続業務であ
る
6%
<金額割合>
⑤過去の実績
16%
④過去に設備等
を設置
11%
⑥継続業務であ
る
7%
⑤過去の実績
10%
④過去に設備等
を設置
12%
③業者が1者の
み
13%
「3.契約方法」でみたとおり、一者随意契約は件数割合では全委託契約の 50%、金額割
合では 49%を占め、随意契約のほとんどが一者随意契約によっている。随意契約は一般競争
入札の例外であり、さらに、2 人以上の者から見積書を徴収せず特定の者 1 人を相手方とし
て選ぶ一者随意契約は随意契約の例外である。したがって例外中の例外である一者随意契
約によろうとする場合には、その理由が特に重要となる。旭川市の「契約事務の手引」に
よれば、一者随意契約が認められるのは次のような場合である。
a 国又は他の地方公共団体と契約するとき。
b 契約の目的又は性質により相手方が特定されるとき。
c
契約の締結が急を要するとき。
d どの相手方に見積もらせても価格におおむね差がないとき。
e 法令等によって価格が定められているとき。
f 先に締結した契約の条件及び内容と密接な関連性があるとき。
g
定例的に購入する物件で軽微なものを購入するとき。
h その他特別な事情(具体的理由が必要)があるとき。
なお、これらの場合においても公正性を損なうことのないよう特に慎重かつ厳格な態度
で臨まなければならない。
28
12.新規・継続の別
<件数割合>
<金額割合>
①新規
19%
①新規
31%
②継続
69%
②継続
81%
地方公共団体の予算は単年度主義であるため、市が締結する契約も単年度で完了するの
が原則である。したがって、ここで調査した「新規」とは契約期間の開始日が平成 17 年度
にある案件という意味ではもちろんなく、当該委託契約に係わる案件自体が平成 16 年度以
前にはなく、平成 17 年度から新たに開始される案件という意味である。
新規案件については、事業を行うこと自体が適正であることを前提にすれば、まず問題
となるのは直営でなく委託で行うべきかどうかという点である。継続案件については、契
約方法、委託相手先の継続性が問題となる他、直営でなく委託を続けるべきかどうか、そ
もそも事業自体を継続する必要があるのかといった点が問題となる。
29
13.下請け(再委託)の有無
<件数割合>
<金額割合>
①有
3%
①有
24%
②無
76%
②無
97%
受託業者は業務を適正に履行する能力があると認められたからこそ業務を委託されたの
であって、別の業者への再委託はあくまで例外的なケースである。しかし、委託された業務
を効率的に履行するためには、再委託先の業者と市が直接契約を締結するよりも、再委託を
認めた方が有利な場合もある。したがって一括再委託(委託のまるなげ)などは問題外であ
るとしても、業務の一部を再委託することは認められており、アンケートによれば金額割合
でみて約 4 分の 1 の業務委託で再委託があるという結果であった(ここでいう「金額割合」
とは委託料に含まれる再委託料の割合ではなく、再委託が行われている業務委託の委託料と
その他の業務委託の委託料との割合のこと)。ただし、上述したとおり再委託はあくまで例
外であり、これを認めた方が市にとって有利な場合など限定的に利用されるべきである。
なお、旭川市の契約規則などには一括再委託について禁止する条項はなく、個々の契約書
の約款において一括再委託を禁止する旨をうたっている。
30
個別調査の結果
本報告書では個々の業務委託についての「予定価格」と、同時に記載することによって
予定価格を計算できる「落札価格」及び「落札率」の記載を差し控えている。これは、旭
川市の「契約事務の手引」18 ページにおいて次のような規定がおかれているからである。
②予定価格の秘密保持と公表
予定価格は、落札決定の基準となるものであり、これを特定の者に探知されれば、そ
の者に有利な条件を与えることになり、適正な競争が阻害され、ひいては市が損害を被
ることになるので、入札前も入札以降においてもその秘密を保持しなければならない。
すなわち、本報告書において予定価格等を記載することは、上記の「入札以降において
もその秘密を保持しなければならない。」という部分に抵触することになる。
個別案件について
1.市立旭川病院院内保育所運営業務
業務等の内容
市立旭川病院の看護職員等の確保を目的として設置している院内保育所の運営
委託金額
25,390,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
昭和 54 年
委託相手先
市立旭川病院保育所運営委員会(以下、「運営委員会」と記載する。)
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項
第 2 号)。見積合せによらず一者随意契約としたのは、これまでの実績と業務の内容に
特殊性があるため。
再委託の有無
有り
31
本業務委託に係る金銭の流れを図示すると、次のとおりである。
旭
川
市
②補助金
①委託料
北
海
道
③補助金
運営委員会
労 働 組 合
④補助金
⑤人件費など経費の支払い
(⑥再委託あり)
① 委託料 25,390,000 円
なお、委託料の中の人件費の積算には給料、手当、法定福利費の他に退職引当金が含ま
れている。
② 補助金
2,272,000 円
③ 補助金
838,680 円
④ 補助金
220,000 円
⑤ 総額
25,635,193 円
⑥ ⑤に含まれる再委託料
921,540 円
平成 17 年度における運営委員会の収入は上記①、③、④の合計 26,448,680 円となり、
支出合計 25,635,193 円(⑤)との差額 813,487 円だけ資金に余剰が生じている。なお、過
年度から繰り越されてきた分を合わせた平成 17 年度末の余剰資金合計は 2,672,421 円とな
っている。
契約方法及び相手先の選定方法は適正か
起案書によれば、本業務委託を随意契約としたのはその性質、目的が競争入札に適さな
いという地方自治法施行令第 167 条の 2 第 1 項第 2 号にもとづくものであり、見積書の徴
収相手を運営委員会の一者のみとしたのは、運営委員会が病院との委託契約を長年に渡っ
て良好に遂行していること、及び本業務委託が通年でしかも 24 時間保育業務を行うことや、
一定の保育方針に従った継続性のある教育の場としての側面を併せ持つこと等から他者に
委託することにつき多くの問題が残るためとしている。
しかし、委託相手先となっている運営委員会は院内保育所を運営するために市立病院の
32
職員と園児の父母から構成された委員会であり、委員長を市立病院庶務課の課長が兼務し
ていること、及び本業務委託が開始された昭和 54 年当時から運営委員会への委託が行われ
ていることなどから、本業務委託においては運営委員会を委託先とする一者随意契約に問
題があると考える。
すなわち、本業務委託では、委託相手先である運営委員会が旭川市の職員によって運営
されていることから、実質的には旭川市が旭川市に業務委託をしているという問題がある
(過去、他自治体の包括外部監査ではこれを「自己に対する委託」と呼んでいる)。具体的
な問題点としては以下のようなものが考えられる。
・
実際の業務を行う保育士については運営委員会が雇用する形をとっているものの、
実態としては直営と変わらない。したがって本来は人件費や各種経費として処理され
るべき支出がすべて委託料として処理されている。このため特に人件費が過小計上さ
れていることは問題である。
・
本業務委託では委託料から余剰資金が発生しており、現在のところは使用されず運
営委員会の預金口座にそのまま残っている。しかし、当該余剰資金は本来市立病院へ
返還すべき資金と思われるため、運営委員会の口座に残しておくべきではない。
後述するように本業務委託については市が直営で行うか外部に委託するかをまず検討す
ることが必要である。運営委員会を組織すること自体は問題ないものの、実態として直営
で行っている業務をあたかも業務委託であるかのように扱うことがあってはならない。ま
た外部に委託するのであれば、業務内容及び旭川市内で保育所を経営する業者数などを考
慮しても随意契約による必要性が認められないため、競争入札によって委託相手先を決定
すべきである。
委託の理由に合理性があるか
事前アンケートの回答によれば、委託の理由は業務の効率化・経費の削減のためである
としている。したがってこの理由自体には合理性が認められるものの、前述したとおり、
本業務委託については運営委員会への委託を前提に考えられていると思われるため、直営
で行う場合と外部へ委託する場合とで、どちらが市にとって望ましいかの検討を行ってい
ない。本業務委託については、再委託している夜間保育も含めて直営で行うべきか外部へ
委託するべきかを早急に検討する必要がある。
契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか
旭川市の「委託契約に関する事務の手引」の「(10)業務の履行」によれば、「委託業務
が完了したときは、軽微なものを除き文書により業務完了届を徴すること。」(※)とある
にもかかわらず、委託相手先からの業務の完了届を徴していなかった。ただし、同じく「(11)
完了検査」の項の「検査員が検査を完了した場合は、その結果を検査調書に記載し、検査
権者まで報告しなければならない。
」及び旭川市契約事務取扱規則 35 条において「検査員は、
33
検査を完了した場合においては、(中略)検査調書を作成しなければならない。」と定めら
れている、市が作成すべき検査調書については作成されていた。規則等で作成することに
なっている書類については不備のないことが求められる。
(※)「軽微なもの」について具体的な基準はないものの、総務部契約課からの回答によれ
ば、契約書、請書等を省略できるような軽易な場合で、文書によらなくとも検査に
おいて支障のない場合が該当するとのことである。なお、契約事務取扱規則及び契
約事務取扱要領によれば、契約書については 80 万円以下、請書については 30 万円
以下の契約について省略可能となっている。
委託料の算定方法は適正か
過去実際に支出している経費をもとに積み上げたものであり、算定方法に問題はないと
思われる。
委託料は業務の内容に対し適正な水準か
外部の業者から見積書をとっていないため、監査人がこの点について正確に判断するこ
とには困難な面がある。ただ、保育士のうち正職員については1人あたり人件費を年間約
350 万円と積算している上に、これとは別に 1 人あたり年間 25 万円の退職引当金まで積算
していることから、外部の民間業者であればこれよりも安くなる可能性は高いと思われる。
委託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か
委託契約手続き自体に問題はないものの、すでに述べたように委託相手先を旭川市の職
員等からなる運営委員会としている点が問題である。なお支払いは正確に行われている。
委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられているか
委託相手先からの業務完了届がなかった点は前述したとおりであるものの、市が作成し
た検査調書を見る限り、検査自体は適時に行われていると思われる。
なお、本業務委託では夜間保育について再委託が行われている。当該再委託は旭川市が
委託契約書において禁止する一括再委託には該当しないものの、再委託そのものについて
は委託の趣旨から考えても限定的に利用されるべきである。したがって、やむをえず再委
託を行う場合には、再委託先が行う業務の品質管理について市はより厳密に実施する必要
がある。
当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
予定した行政目的達成に貢献しているかどうかは、業務委託を事後的に評価する作業を
行うことによって明らかとなる。しかし、事前アンケートの回答によれば旭川市で行って
いる業務委託のほとんどについて事後的な評価を実施しておらず、本業務委託についても
34
事後評価を実施していない。業務委託の目的を達成しているかどうか、次年度以後も委託
を継続すべきか直営で行うべきか、そもそも当該業務を継続する必要があるかといったこ
とを検討するためにも事後的な評価作業は必要不可欠である。なお、委託の理由としてあ
げている業務の効率化・経費の削減については、事後的な評価を実施していないことに加
えて一者随意契約で他の業者との比較も実施していないことから、達成されているかどう
かについて疑問が残る。
なお、本業務委託については北海道からの補助金が旭川市に交付されているが、北海道
の「平成 17 年度院内保育所運営費補助金交付要綱」及び北海道保健福祉部医療政策課から
の電話による回答によれば、市町村立病院であれば院内保育事業の運営を誰に委託しても
補助金の交付は受けられるとのことであった。
35
2.患者等の食事の提供業務
業務等の内容
市立旭川病院における患者等への食事の提供
委託金額
228,949,829 円(※)
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日(※)
委託の始期
平成 6 年
委託相手先
シダックスフードサービス株式会社
契約方法
指名競争入札(※)
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。(※)
再委託の有無
有り
(※)本業務委託は平成 17 年度のみ、委託の履行期間が平成 17 年 4 月 1 日から平成 17 年
5 月 31 日の契約と平成 17 年 6 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日の契約の 2 つに分かれ
ており、前者の委託金額が 40,291,455 円、後者の委託金額が 188,658,374 円の合計
228,949,829 円となっている。前者の契約方法が一者随意契約、後者の契約方法が指
名競争入札となっているものの、委託相手先はいずれもシダックスフードサービス
(株)となっている。
契約方法及び相手先の選定方法は適正か
本業務委託は平成 6 年度に委託を開始してから平成 16 年度までの約 10 年間一者随意契
約がなされてきたものの、長期にわたって一者随意契約を行うことは望ましくないとの理
由で平成 17 年度より指名競争入札が実施されることになったものである。ただし、指名競
争入札によって 4 月 1 日から委託相手先が変更になった場合、給食調理等の現場に混乱が
生じ、結果として患者サービスの低下になることを懸念し、4 月と 5 月はいわば引継ぎ期間
と考え、この間は一者随意契約で従来の委託相手先と契約し、6 月から指名競争入札による
こととしたため上表の(※)に記載したような契約形態となった。
本業務委託では平成 6 年度から平成 16 年度まで一者随意契約としてきたことが 1 つ目の
問題点である。平成 17 年度の「業務委託等指名者等選考委員会調書」に添付されていた資
36
料によれば、「同一業者(シダックスサービス(株))の契約による弊害そのものは見当た
らないが、約 10 年間もの長期にわたり特命発注(一者随意契約と同義)がなされているこ
とを考えると市民の観点からすると「異常に長い特命発注」が行われているように写って
いると思われる。」という記述があった。確かに、業務の品質という面からすれば同一業者
との契約による弊害はなかったのかもしれない。しかし、随意契約、特に一者随意契約で
問題となるのは価格が適正かどうかという点である。本業務委託の平成 6 年度からの委託
金額を示すと以下のとおりである。なお、平成 6 年度からの委託相手先はすべてシダック
スフードサービス(株)である。
(単位:円)
年
度
委託料
平成 6 年度
190,749,396
平成 7 年度
238,305,515
平成 8 年度
252,955,836
平成 9 年度
262,947,999
平成 10 年度
263,023,578
平成 11 年度
268,207,962
平成 12 年度
275,985,385
平成 13 年度
266,463,098
平成 14 年度
262,630,840
平成 15 年度
253,255,654
平成 16 年度
244,739,244
平成 17 年度
228,949,829
(注)平成 6 年度は 6 月 1 日から翌年 3 月 31 日まで
の契約となっている。
平成 6 年度は 10 か月分の委託料であり、平成 7 年度は提供する食事の数が少なかったこ
とに加え、食事の単価も低かったため委託料が低めになっている(定められた書類の保存
期間が経過していたため資料は入手できなかったものの、平成 6 年度も同様と思われる)。
したがって平成 6 年度と平成 7 年度を除いた平成 8 年度以後で見ると、一者随意契約から
指名競争入札に変わった平成 16 年度から平成 17 年度にかけて委託料が 1 千 5 百万円も低
くなっていることがわかる。平成 17 年度が 2 つの契約の合計金額で、4 月と 5 月が一者随
意契約である点は上述したとおりであることから、仮に 4 月と 5 月も含めて 1 年間の業務
が指名競争入札となっていた場合には平成 17 年度の委託金額は以下のような水準になって
いた可能性もある。
37
4 月と 5 月の 1 か月当たりの委託金額
6 月から 3 月の 1 か月当たりの委託金額
40,291,455 円 ÷ 2 か月 = 20,145,727 円
188,658,374 円 ÷ 10 か月 = 18,865,837 円
6 月から 3 月の 1 か月当たりの委託金額で換算した 12 か月分の委託金額
18,865,837 円 × 12 か月 =
226,390,044 円
これによれば平成 16 年度との差額は 1 千 8 百万円に広がる。したがって、一者随意契約
を継続したことにより、この 10 年間では 1 億 5 千万円から 1 億 8 千万円もの金額を余分に
支払っていた可能性がある。年度ごとの事情や委託料の積算方法を考慮するとこのような
単純計算にはやや乱暴な面があることは認めるものの、こうしたことまで考えれば少なく
とも「同一業者の契約による弊害そのものは見当たらない」とは言い切れない。
2 つ目の問題点は指名業者の選定方法である。平成 17 年度の指名競争入札における指名
業者を以下のように選定している。この結果 4 者による指名競争入札となり、シダックス
フードサービス(株)が落札している。
市立旭川病院へセールスに訪れた業者のうち調査依頼し回答のあった 7 業者で、次の
条件を満たした者による指名競争入札とする。
①給食管理委員会委員による調査項目の評価点数に加え、本・支店の係りを点数評価し
た合計が 50 点以上の者。
②旭川市物品購入等の契約参加資格者申請時前 1 年間引き続いて北海道に本・支店を有
し、営業実績 400 床以上の病院給食業務(単科病院除く)があること。
③受託業務の履行を保証する業務保証人が立てられること。
④従業員が 400 名以上であること。
④の従業員を 400 名以上とする根拠はよくわからないものの、規模の大きい総合病院に
おいて患者へ食事を提供する業務であるから、受託業者にある程度の条件をつけることは
当然である。しかし、病院に対してセールスに訪れた業者のみを対象にしていることから、
これ以外にも受託能力のある業者がいた可能性を否定できない。指名競争入札によるので
あれば、指名業者を公募する公募型の指名競争入札によるべきである。
3 つ目の問題点はそもそも一般競争入札を実施できなかったかという点である。一般競争
入札のデメリットとしては参加資格の設定、公告、入札等の事務処理に手数がかかるため
緊急の場合には実施が難しい点があげられる。しかし、本業務委託では前述したとおり 4
月と 5 月を引継ぎ期間とし、現場に混乱が生じないよう 6 月から競争入札を実施している
ことからわかるように、手数がかかることを理由に一般競争入札を実施できないというこ
とにはならない。また、価格の面で低廉第一主義となり、不誠実な者の参加を排除できな
いおそれがあることを一般競争入札のデメリットとしてあげることもある。しかしこの点
についても、本業務委託のように入札への参加資格を設けた上で価格以外の条件も含めて
38
最も有利な相手と契約する総合評価一般競争入札によれば必ずしも問題とはならない。た
だし、価格以外の点を評価する際には、客観的な評価基準を設けて極力恣意性を排除する
よう努力すべきことは言うまでもない。本業務委託のように委託金額が多額になり、地元
業者の育成といった配慮も基本的に設けられていない案件については、地方自治法が一般
競争入札を原則的契約方法としている趣旨を軽視すべきではない。
委託の理由に合理性があるか
事前アンケートの回答によれば、委託の理由は業務の効率化・経費の削減のためである
としている。これについて市では、直営で行った場合と比較して委託によりどれぐらい経
費が節減されているかという資料を毎年作成しており、平成 17 年度は直営で行う場合より
も 5 千 5 百万円もの経費が節減されているとのことである。したがって業務内容や金額の
面から考えて委託の理由には合理性があると思われる。
なお、本業務委託では患者給食の下膳と食器の洗浄消毒業務を旭川市の業者へ再委託し
ている。これは患者への食事提供業務を直営で行っていた平成 6 年度以前から同業務のみ
を旭川市の業者へ委託していたものが、全面委託となった現在も同業務だけを引き続き旭
川市の業者へ委託するために続いているものである。現在は市からシダックスフードサー
ビス(株)に対して特に委託の条件としてあげている訳ではないとのことであるものの、
平成 6 年に全面委託が開始された当時は地元業者育成のために何らかの条件がつけられて
いたと思われる。「その他の案件について」の「9.地元業者等に対する配慮」の項で述べ
るように、一般的に地元業者育成のための業務委託では、これによって多少委託金額が高
くなることがあったとしても、全面的に否定されるべきではないと考える。しかし、委託
において金額や品質以外にこうした配慮をするのであれば、何らかの基準を設けてそれが
客観的なものとして外部から検証できるようにすべきである。この点、本業務委託の再委
託ではこうした客観的な検証が行われていない上に、地元業者の育成としながら、少なく
とも平成 6 年度から同一の業者が受託しており、この点でも問題があると考える(なお、
食事提供業務を直営で行っていた平成 6 年度以前については定められた書類の保存期間を
経過していたため資料がなく、平成 6 年度以前の患者給食下膳と食器洗浄消毒業務の委託
先は不明)。本業務委託において再委託をしている業務が地元業者の育成をはかる必要があ
るのかどうかを客観的に評価した上で、それが必要ということであれば、再委託している
業務を独立した委託契約として地元業者間で競争入札を実施することも検討すべきである。
契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか
監査人が検証した範囲では必要書類は適正に作成・保存されていた。
委託料の算定方法は適正か
監査人が検証した範囲では算定方法に問題はないと思われる。
39
委託料は業務の内容に対し適正な水準か
平成 17 年度から指名競争入札を採用したことによって委託金額が大幅に下がったことは
前述したとおりである。したがって平成 16 年度以前の委託料は業務の内容に対し適正な水
準でなかった可能性が高い。
また、本業務委託では再委託先への再委託料がどのぐらい支払われているかを市で把握
していない。他部局では再委託が行われている業務委託について、委託料に占める再委託
料の比率が文書として残っており、実質的に再委託料が把握されている。再委託された業
務内容に対して再委託料が適正な水準か、ひいては委託料そのものが適正な水準かどうか
を検証するためにも、市は再委託料を把握しておくべきである。なお、委託先として地元
業者を優先することにより委託料が割高になる可能性があることについては、
「委託の理由
に合理性があるか」のところで述べたとおりである。
委託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か
委託契約手続は適正に行われ、支払いは正確に行われている。
委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられているか
検査調書を閲覧した限りでは、委託契約の履行について適時、適切に確かめられている。
当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
「委託の理由に合理性があるか」のところでも述べたとおり、本業務委託の委託理由は
業務の効率化・経費の削減のためであり、直営で行った場合と比較すれば確かに経費は削
減されている。しかし、これもすでに述べたとおり、平成 16 年度まで一者随意契約を続け
てきたことによって委託料が割高であった可能性が高く、この点では予定した行政目的が
達成されているかどうかきわめて疑問である。さらに、一者随意契約によっていたため他
の業者のサービスについても知りようがなく、旭川市が求める業務の品質とそれに対する
価格とが見合っていたのかという点についても検証ができていない。この検証には、求め
る業務の品質が満たされているかどうかということの他に、実際に提供されているサービ
スの品質が過剰ではないかということも含まれる。事後評価を行うにあたっては単に直営
との比較を行うのみで終わらせるのではなく、他の業者が提供するサービス及び価格と比
べて現在の委託相手先で本当に予定した行政目的が達成されているのか、もしも求める業
務の品質に対して委託先が提供するサービスが過剰と思われる場合には、割高な委託料を
支払ってまでそのサービスを求める必要があるのかどうかという点まで検討すべきである。
40
3.財団法人旭川市水道協会への委託
財団法人旭川市水道協会(以下、「水道協会」と記載する。
)への最近 3 年間の委託の概
要を記載すると以下のとおりである。
〈水道事業〉
業
(単位:円)
務 内 容
委
託 料
契約方法
平成 15 年度
平成 16 年度
平成 17 年度
43,188,600
43,017,450
42,516,600
一者契約
8,135,400
18,698,400
20,924,400
一者契約
18,811,800
17,801,700
17,871,000
一者契約
9,605,400
9,967,650
11,995,200
一者契約
1,890,000
3,675,000
3,570,000
一者契約
222,285
206,955
1,134,000
1,228,500
1,470,000
一者契約
64,050,000
59,125,500
61,215,000
一者契約
2,167,300
1,505,825
1,210,998
一者契約
21,735,000
22,050,000
21,525,000
一者契約
472,500
457,800
483,000
一者契約
171,412,285
177,734,780
182,781,198
39,866,400
38,147,550
37,703,400
一者契約
休止・開栓業務
7,509,600
16,581,600
18,555,600
一者契約
管理台帳整理等業務
1,873,200
2,883,300
2,866,500
一者契約
4,044,600
8,459,850
10,212,300
一者契約
160,965
176,295
―
一者契約
13,177,500
7,098,000
メーター検針業務
休止・開栓業務
管理台帳整理等業務
給排水工事受付審査補助等
業務
量水器払出等関連業務
水道・下水道のアンケート
用紙回収業務
上水道道路占用図補正業務
配水施設等管理業務
断水等告知業務
永山取水施設運転管理業務
石狩川浄水場ほか施設見学
対応等業務
小
計
―
一者契約
〈下水道事業〉
メーター検針業務
給排水工事受付審査補助等
業務
水道・下水道のアンケート
用紙回収業務
下水道普及促進業務
下水道接続状況確認業務
水緑施設ほか管理点検業務
下水道台帳整備委託
6,300,000
一者契約
1,764,000
―
―
一者契約
16,800,000
16,642,500
16,390,500
一者契約
3,780,000
3,570,000
1,995,000
一者契約
41
小
計
88,976,265
93,559,095
94,023,300
787,500
766,500
745,500
一者契約
―
―
24,428
一者契約
―
一者契約
〈簡易水道事業特別会計事業〉
西神居地区簡易水道検針業
務
江丹別地区簡易水道検針業
務
西神居地区簡易水道施設管
理点検業務
5,880,000
5,722,500
簡易水道施設管理点検業務
―
―
8,484,000
一者契約
神居町西丘漏水調査業務
―
―
94,500
一者契約
―
―
94,500
一者契約
―
―
115,500
一者契約
―
―
157,500
一者契約
―
―
94,500
一者契約
―
―
63,000
一者契約
神居町西丘漏水調査その2
業務
神居町豊里漏水調査業務
神居町西丘漏水調査その3
業務
神居町西丘漏水調査その4
業務
神居町西丘漏水調査その5
業務
小
計
合
計
6,667,500
6,489,000
9,873,428
267,056,050
277,782,875
286,677,926
(14.6%)
(16.6%)
(16.2%)
(注)合計欄のカッコ内の数字は水道局における全委託料に占める割合
契約方法の「一者契約」は一者随意契約のこと
水道協会は、水道の円滑な普及及び適正かつ合理的な維持管理を行うために必要な事業
を行い、水道事業の合理的な運営と向上に寄与するため昭和 54 年に設立された財団法人で、
旭川市が 5 百万円を出えん(出資と同義であるため、以下「出資」と記載する。
)し(出資
割合は 43.5%)、理事・監事に旭川市のOBあるいは市からの派遣職員(派遣職員は非常勤
かつ無報酬)が就任するいわゆる第三セクターである。平成 17 年度の単年度収入が 2 億 9
千 2 百万円であることから、収入の 98%を旭川市からの委託料が占めている。
契約方法及び相手先の選定方法は適正か
上表から明らかなように、水道協会との委託契約はすべて一者随意契約となっており、
事前アンケートの回答によれば随意契約とした理由は競争入札に適さない(地方自治法施
42
行令第 167 条の 2 第 2 号)というものが多く、一者随意契約とした理由は過去の実績とい
う点をあげたものがほとんどであった。しかし、上表に掲げたうちの主な業務は水道協会
が設立された昭和 54 年から現在まで同協会が一者随意契約で受託しており、当初から水道
協会への委託を前提に考えられていると思われるため、一者随意契約という契約方法の妥
当性及び水道協会を相手先とすることの妥当性を個別に検討することに意味はない。参考
までに他中核市の状況について記載すると(※)、委託相手先については、旭川市と同じよ
うに財団法人や公社へ委託しているところの他、直営で行っているところ、第三セクター
以外の民間業者へ委託しているところ、特にメーターの検針などは個人へ委託していると
ころもあった。契約方法については、財団法人や公社を委託先としている場合は随意契約
としていることが多く、民間業者を委託先としている場合は競争入札も見られた。直営で
行っているところも決して少なくなかったため、旭川市においても、水道協会への委託を
前提に考えるのではなく、経済性や効率性の観点からむしろ直営で行うべき業務がないか
どうかを今まで以上に検討することが必要であると思われる。その上で委託すべきとされ
た業務については、競争入札によって相手先を決定すべきである。委託する相手先が水道
協会以外に存在しないというのは、後述する「旭川市管工事業協同組合」の存在や他中核
市の状況から説得力があるとは言えない。なお、この結論については後述する「委託料の
算定方法は適正か」や「委託料は業務の内容に対し適正な水準か」、「その他」の項も参照
してほしい。
(※)旭川市が水道協会へ委託している業務について、他中核市ではどのような相手先へ
委託し、どのような契約方法をとっているかを旭川市の監査事務局をとおしてアンケ
ートをとった。なお、アンケートの結果については、他中核市が必ずしも旭川市と同
じ業務を行っているとは限らず、また業務名が同じであったとしても業務内容までが
同じかどうかを検証することが困難であったため、アンケートをとった旭川市を除く
36 の中核市のうち、回答が得られた 27 市(「回答できない」という回答をしたものを
除く)の大まかな傾向のみを記載することにした。
委託の理由に合理性があるか
上述したように、水道協会に委託している業務については経済性や効率性の観点から旭
川市が自ら行うべき業務と委託すべき業務とを区分することが必要である。したがって、
現在水道協会へ委託している業務については、必ずしもすべての業務の委託理由に合理性
があるとは言い切れない。
委託料の算定方法は適正か
水道協会への委託料の積算は、水道協会への業務委託についてのみ適用するものとして
平成 14 年度に定められた「業務委託積算基準」(以下、
「基準」と記載する。)に基づき次
のような方法によって行われている。
43
直接人件費
×××
←
積算の内訳あり
直接経費
××× ←
積算の内訳あり
直接業務費
計
業務管理費
業務原価
××× ← 直接人件費の 6.36%
計
一般管理費
業務価格
×××
×××
計
消費税等
業務委託料
×××
←
直接業務費の 23%
×××
×××
計
×××
しかし、以下の案件については、業務管理費又は一般管理費の計算を上記の基準に従っ
て行っていなかったため、基準に従って計算したところ設計金額(積算金額と同義で、実
務的には予定価格と同額になるケースが多い。以下同様。
)は次のようになった(修正後の
設計金額合計)。
業務内容
① メーター検針業務
② 休止・開栓、受付入力、調査業務
③ 給排水工事受付・審査・検査等補助業務
④ 西神居地区簡易水道検針業務
⑤ 江丹別地区簡易水道検針業務
(単位:円)
当初の設計金
修正後の設計
額合計(A)
金額合計(B)
144,196,500
差額(A-B)
支出金額合計
1,957,200
142,653,000
142,239,300
なお、⑤の江丹別地区簡易水道検針業務は単価契約であるため、当初の設計金額及
び修正後の設計金額も単価となることに加え、実際の支出金額合計も 2 万 4 千円と少
額であることから、上表には含めていない。
上表から明らかなように、基準どおりに計算した場合の設計金額(上表の「修正後の設
計金額合計」
)は当初の設計金額合計を下回っており、また個別の案件ごとに見た場合でも
すべて当初の設計金額を下回っていた。さらに、この計算によって設計金額が減額された
結果、「メーター検針業務」と「休止・開栓、受付入力、調査業務」については実際の支出
金額が修正後の設計金額を上回ることになってしまっていた。競争入札と異なり、随意契
約における予定価格は単なる契約基準とされているものの、予定価格を上回る金額で契約
44
することは妥当でなく、随意契約においても予定価格の範囲内で契約するのが原則である。
したがって、上表の「差額」195 万円は市が当初積算した設計金額と修正後の設計金額との
差額にすぎないものの、設計金額が当初から上表のように積算されていた場合は、支出金
額自体も実際の支出金額 1 億 4,265 万円よりも少なくて済んだと思われる。その妥当性に
ついてはここで検討しないものの、一者随意契約の場合は予定価格に極めて近い価格で契
約する例が多いため、設計金額の積算は特に正確に行う必要がある。
また、直接人件費と直接経費については単価の算出から行っている積算の根拠資料があ
り、内容を検討した結果、以下の「委託料は業務の内容に対し適正な水準か」で記載する
ものを除き特に指摘すべき点はなかった。
業務管理費は直接人件費に 6.36%を乗じて計算し、一般管理費については直接人件費と直
接経費の合計である直接業務費に 23%を乗じて計算している。したがって業務管理費及び一
般管理費については積算の根拠資料がないため、積算に使用している 6.36%と 23%という比
率の根拠について担当部局へ質問したところ、平成 14 年度に定められた基準に従って計算
しているのみで、それ以来この比率の見直しは行っていないということであった。しかし
これも問題である。本来は管理費のような間接費についても直接人件費や直接経費のよう
に個別に積算すべきであり、間接費については内容が多岐に渡り金額も少額のものが多い
ことから個別に積算するコストと効果を考え、簡略化した計算が例外的に認められている
と考えるべきである。確かに平成 14 年度の時点ではこの比率にも合理性があったのかもし
れないものの、実績が変われば当然比率も見直す必要があるし、さらに言えば今年度の予
想まで加味した上で毎年比率を見直すべきである(なお、担当者によれば平成 19 年度には
見直す予定とのことである)。また、使用する比率が粗すぎることも問題である。管理費に
含まれる費目のうち、管理部門の人件費のように金額が大きいものについては個別に積算
した上でその他の間接費とは別の比率で計算し、「直接費の何%」で計算する間接費につい
ては極力少なくするべきである。
委託料は業務の内容に対し適正な水準か
「委託料の算定方法は適正か」のところで述べたように、主に間接費の積算方法に問題
があるため、委託料が業務内容に対して過大になっているのではないかという印象をぬぐ
えない。これは水道協会の平成 17 年度決算において基本金以外の正味財産が 6,200 万円あ
ることにも現れている。財団法人である水道協会は公益法人であり、またいわゆる第三セ
クターであることからその組織自体が旭川市の一部と見られる面もあり、少なくとも旭川
市の出資に見合う部分については利益留保を図る必要性が少ない。それにもかかわらず過
去の利益の積立額が 6,200 万円あるということは、それだけ委託料が過大であったと言え
ないだろうか。この点につき、利益積立額の約半分は職員への退職金の準備資金というこ
とであるものの、それでもやはり退職準備資金を控除した残りの金額について旭川市の出
資に見合う額には同じ問題が残る。また、そもそも旭川市内の民間中小企業で職員の退職
45
金を準備できているところがどれほどあるかを考えれば、そのことをもって委託料が過大
でなかったとは言えないと思われる。
なお、単純に水道協会の利益をなくすことだけを考えると、支出の妥当性について十分
に検討されない経費が増加する可能性もまったくないとは言えないため、これでは問題の
解決にならない。「契約方法及び相手先の選定方法は適正か」のところで述べたように、水
道協会への委託を前提に考える姿勢を改め、競争入札を導入することによって業務内容及
び価格の面から旭川市にとって最も有利な相手と契約することが望ましい方法である。
当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
委託の理由として業務の効率化・経費の削減をあげている案件が多いものの、上述した
理由から委託料が過大であった可能性は否定できず、したがって水道協会への委託が経費
の削減に貢献しているとは言い切れない。また、事後評価を実施しておらず、旭川市が直
営で行うべきか他の民間業者へ委託すべきかといった検討が十分になされていない点は前
述したとおりである。したがって業務の効率化も達成されてない可能性があり、この点で
も予定した行政目的を達成しているとは言い切れない。
その他
(1)旭川市管工事業協同組合について
水道協会に対して旭川市が 43.5%出資していることはすでに述べた。そして水道協会に対
して旭川市と同じ 43.5%の出資を行っているのが「旭川市管工事業協同組合」
(以下、
「協同
組合」と記載する。)である。協同組合は昭和 28 年にその前身である旭川市水道事業者協
同組合として設立され、平成 18 年 4 月現在、旭川市内の業者 31 社と周辺町村の業者 1 社
から構成されている(組合員と賛助会員の合計)。水道メーターの交換・維持管理業務や緊
急時に対応する 24 時間体制の待機業務を共同で受注しており、平成 17 年度には委託料 1
億 2 千 5 百万円の給水装置等管理業務を旭川市から一者随意契約で受託している。また、
協同組合の理事のうち 4 名が水道協会の理事と兼務になっている。
「その他の案件について」の「9.地元業者等に対する配慮」の項でも記載しているよ
うに、監査人は地元業者の育成という配慮を否定はしないものの、そうした配慮をするの
であれば、どのような案件について地元業者に委託するのかという基準を明確にした上で、
その妥当性について常にチェックを受けるべきであると考える。したがって地元業者から
構成される協同組合も、こうした基準にもとづいて委託を受けるのであれば問題ないと思
われるし、逆にそうした配慮を設けないのであれば、一者随意契約ではなく競争入札によ
って受託業者を決めるべきである。
なお、協同組合への一者随意契約という件は、水道協会について記載した本件とは直接
関連はないものの、旭川市とともに水道協会へ多額の出資を行っている団体として参考ま
でに記載した。
46
(2)水道協会について
水道協会については、業務の専門性を理由に水道協会への委託が必要だとする意見があ
るものの、水道協会が果たしている役割を旭川市自らが果たすことにし、水道協会自体の
存在意義を見直す余地はないのであろうか(すなわち直営化の検討)
。もちろん、その際に
はコストの削減を図るために徹底的な組織の合理化を行うことが必要になることは言うま
でもないし、その上で民間業者に委託できる業務についてはなるべく民間に委託し、直営
で行う業務を極力減らすようにすればよい。前述したように、水道協会への委託料には管
理部門の人件費などを含む一般管理費が含まれており、やや粗い計算であることを認めた
上で記載すれば、以下のように年間約 5 千万円(※)の一般管理費を委託料に含めて支払
っていることになる。この金額のすべてが節約可能とは言わないものの、組織を合理化し
た上で水道協会の業務を旭川市が行うことにすれば、節約可能な部分も出てくるのではな
いであろうか。
平成 13 年度の旭川市包括外部監査においても「永年にわたり、旭川市と協働事業として
水道及び下水道の普及と維持管理を行ってきたが、水道事業及び下水道事業の経済性・効
率性の推進が課題となっている今日、改めて協会の存在意義を問い直す必要があると思わ
れる。とりわけ、現在協会へ委託している各種業務のうち、旭川市自らが行うことが経済
的かつ効率的な業務、協会以外の民間へ委託して競争力を導入することが適当な業務を区
分けし、分離することを検討する必要がある。
」という指摘があるものの、少なくともこの
3 年間を見る限り水道協会への委託料は年々増加しており、この指摘に対する対応が十分で
はなかったと言わざるを得ない。
(※)平成 17 年度の水道協会への委託料総額 286,677,926 円
委託料の消費税抜きの金額
286,677,926 円÷1.05=273,026,596 円
委託料に含まれる一般管理費 273,026,596 円-273,026,596 円÷1.23(「委託料の
算定方法は適正か」のところで記載)=51,053,754 円
なお、水道協会への委託の検討は、上記のように個別案件ごとではなく全体としての記
載によったため、「契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか」、「委託契約手
続きは適正に行われ、支払いは正確か」、「委託成果品の検査及び委託契約の履行について
適時、適切に確かめられているか」という監査要点の記載については省略した。ただし、
これらの監査要点についても検証した範囲では特に問題がなかった。
47
4.旭川市7条駐車場料金収納業務
業務等の内容
旭川市 7 条駐車場の管理(駐車場の料金徴収及び施設の維持管理)
委託金額
27,123,600 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
昭和 50 年
委託相手先
株式会社旭川振興公社
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項
第 2 号)。
一者としたのは、料金収納、警備誘導、施設機械の操作等の業務に精通していること
から正確・迅速な対応が可能であり、また業務を良好に遂行しているため。
再委託の有無
無し
本業務委託の平成 15 年度から平成 18 年度までの契約額の推移を示すと次のとおりであ
る。指定管理者制度へ移行した平成 18 年度を除き、いずれの年度も予定価格に占める契約
額の比率(競争入札における落札率に相当するもので、以下、本報告書では随意契約にお
いてもこの比率を便宜上「落札率」と記載する。)は 95%を超えていた。
(単位:円)
年
度
契約額
平成 15 年度
28,316,400
平成 16 年度
28,316,400
平成 17 年度
27,123,600
平成 18 年度
24,998,526
備
考
指定管理者制度に移行した。
契約方法及び相手先の選定方法は適正か
旭川市 7 条駐車場は旭川中心市街地の混雑緩和を目的として、昭和 50 年に道路整備特別
措置法の適用によって有料道路事業のうち駐車場事業として建設されたものである。建設
48
資金は国からの無利子融資で賄われたものの、融資に際して当時の建設省(現国土交通省)
より、駐車場の管理運営は社団法人もしくはそれに類するところに委託するようにとの指
導があったとのことである。そこで委託当初から、市が 70%、旭川商工会議所が 30%を出
資する株式会社旭川振興公社に一者随意契約で委託された。なお、同公社の代表取締役 1
名、取締役 5 名は旭川市の現職管理職である。平成 12 年に借入金の償還が終了して以後は
委託先選定についての制約はなくなったものの、そのまま同公社への一者随意契約を継続
してきた。
本業務委託では料金収納、警備誘導、施設機械の操作等の業務に精通していることを一
者随意契約の理由としているものの、駐車場管理を行う民間業者は他にも存在している。
現に市では、市立旭川病院の駐車場管理を旭川振興公社以外の民間業者に委託しており、7
条駐車場の管理を同公社へ一者随意契約とする根拠は不十分と言える。したがって本業務
委託では一者随意契約とする根拠がないにもかかわらずこれを長年に渡って継続してきた
ことによって、公平な競争が著しく損なわれてきたと言える。
なお、平成 18 年度から同駐車場には指定管理者制度が導入された。旭川市のホームペー
ジを通して公募された指定管理者には同公社を含む 4 者が応募し、選考の結果、同公社が
指定管理者となった。
委託の理由に合理性があるか
本業務委託では、直営するよりもコスト削減が図れることを理由に委託が行われてきた。
委託料を積算するにあたっては、後述するように同公社の見積書を参考にしており、当該
見積書に記載された人件費が市職員のものより低かったことなどから、委託の理由には合
理性があると思われる。
契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか
監査人が検証した範囲では必要書類は適正に作成・保存されていた。
委託料の算定方法は適正か
委託にあたり、本業務委託では同公社からの見積りに基づいて予定価格を設定していた。
後述するように、平成 18 年度に指定管理者制度へ移行してからの同公社に対する支払額は
大幅に削減されている。指定管理者の公募に伴い、危機感を持った同公社が価格を下げて
きたためと思われるが、これはすなわち競争原理が適正に働いていることの証しである。
平成 17 年度以前よりも同公社の業務範囲は拡大しており、駐車場収入は従来どおり旭川市
に帰属しているにもかかわらずこうした結果になっているということは、競争入札の導入
など競争原理が働く契約方法をもっと早くから導入していれば、委託料が下がっていた可
能性があるとは言えないだろうか。このように考えると、一者随意契約の相手先から入手
した見積書にほとんど依拠するかたちで予定価格を作成しているのは妥当とは言えない。
49
委託料は業務の内容に対し適正な水準か
平成 17 年度の委託料と平成 18 年度の協定額(従来の委託料に相当)とを比較すると以
下のとおりである。
(単位:千円)
年 度
平成 17 年
①料金収納等
平成 18 年
27,123
②全自動精算機保守点検業務
787
③清掃業務
735
④防火設備点検業務
945
合計
24,998
29,591
平成 17 年度は、上表の②から④までの点検業務、
清掃業務はそれぞれ単独の委託業務で、
旭川振興公社以外の業者に委託していたものの、指定管理者制度が導入された平成 18 年度
においては、①から④までの業務をすべて指定管理者である同公社が行うものとされた。
上表から明らかなように、平成 17 年度には総額 2,959 万円だった委託費が平成 18 年度に
は 2,499 万円に減少している。平成 17 年度までは旭川市が負担していた修繕費の一部、上
水道費の一部、ガス料金、通信費が指定管理者側の負担になったことも考慮すると、平成
18 年度は前年度より 5 百万円程度の経費が削減されたと言える。
同公社が提出した見積書の内訳をみると、平成 18 年度の人件費見積りは前年度のそれよ
り 5 百万円以上減少している。平成 18 年度は嘱託職員を増やして人件費を削減したという
ことであり、これは指定管理者が公募方式となったことから経費削減努力を行った結果と
言えるであろう。
同公社の平成 17 年度の見積書および平成 18 年度に指定管理者に応募した際の見積書の
うち、人件費部分だけを示すと次のとおりである。
(単位:千円)
年 度
平成 17 年
平成 18 年
常勤職員
3名
16,596
非常勤職員
2名
4,398
0.2 名 1,320
20,994
15,570
合計
5名
14,250
こうした状況からすると、平成 17 年度においても競争入札が行われていれば、予定価格
を大幅に下回る契約額となっていた可能性があったと言えるのではないであろうか。
委託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か
委託契約手続は適正に行われ、支払いは正確に行われている。
50
委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられているか
検査調書を閲覧した限りでは、委託契約の履行について適時、適切に確かめられている。
当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
上記で検討したように、平成 17 年度までの委託料が過大であったとすれば、行政目的達
成に貢献しているとは必ずしも言い切れないのではないであろうか。
51
5.旭川聖苑火葬業務及び施設設備維持管理業務
業務等の内容
旭川聖苑における火葬業務及び施設設備の維持管理
委託金額
51,660,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 11 年
委託相手先
株式会社東洋実業旭川営業所
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項
第 2 号)。
見積合せによらず一者随意契約としたのは、火葬業務について旭川市のほか道内他自
治体の火葬業務を受託している実績があることと、火葬業務に精通しており他社が同
様の業務を行うことは不可能であるため。
再委託の有無
無し
契約方法及び相手先の選定方法は適正か
閲覧した市民部業務委託等被指名者選考委員会の資料によれば、一者随意契約とした理
由は以下のとおりである。
(1)当該業者は火葬炉設備の取扱いと密接な関連性を有する空調設備・ボイラー・電気
設備等付帯設備の保安・定期点検・保守管理に伴う有資格業者であり、また「建物に
おける衛生的環境の確保に関する法律」の登録業者である。火葬業務と設備維持管理
業務を同一業者に委託することにより、業務の効率化・経費の削減が図られる。
(2)火葬業務は、法令等で特定の資格要件を必要とする業務ではないが、道内他自治体
から火葬業務を受託している実績がある。
(3)火葬業務は大きく分けて①火葬炉の操作を中心とした炉裏業務と②遺族への接遇を
中心とした炉前業務とに分類されるが、①の炉裏業務は炉メーカーからの研修が約 1
ヶ月必要である。旭川聖苑が採用しているメーカーと同様の炉を使用している全国い
ずれかの火葬場での研修が必要となる。一度に旭川聖苑で必要とする 9 名を受け入れ
52
られる火葬場は現実にないと思われる。また、②の炉前業務は遺体の受入れ、告別行
為、収骨の各段階で儀礼的な要素が強く、市と現在の受託業者の共同で「旭川方式」
の接遇を考案実施しており、このノウハウは現受託業者が保持しており、聖苑独自の
炉前業務の研修を他で受けるのは不可能である。旭川聖苑での研修受入れは、①②の
業務共に現受託者から研修を受けることになるが、現行契約に他社への研修は義務付
けていないことと、実際に火葬業務を履行しながら他社への研修は時間的にも能力的
にも不可能である。期間的にも予算成立後 1 ヶ月間の研修期間の設定は不可能である。
選定理由のうち、(1)を満たす業者は複数存在するし、(2)の道内他自治体における
火葬業務の受託実績はあるほうが望ましいといえるであろうが、本業務受託の必須要件と
するまでではない。
(3)は現受託業者以外には炉前業務を行えないとする理由説明であり、
これが本業務委託を一者随意契約とする最大の理由になっていると思われる。
同選考委員会は、現受託業者が旭川方式という独自のノウハウを所持していて、これを
他の事業者が習得するには現受託業者から研修を受けるしかないが、それは時間的にも能
力的にも不可能だとしている。しかし、仮にそうだとするならば、当該業務は一民間事業
者に恒久的に委託せざるをえないこととなる。当該民間事業者が恒久的に存続する保証は
ないし、そもそも火葬業務という公的業務のノウハウが一民間事業者のみに蓄積されて、
その事業者に全面的に業務を依存しなければならないとすれば、そのこと自体が問題であ
ろう。一度に 9 名の炉裏業務研修を受け入れる火葬場が存在しないという記載があるもの
の、現受託業者が初めて受託する前には研修を受けているはずであり、必ずしも不可能と
は思えない。また、「旭川方式」という炉前業務のノウハウについても現受託業者が保持し
ているという記載があるものの、旭川市と共同で考案したという以上、現受託業者のみに
帰属するノウハウとはいえない。委託する側である旭川市が業務内容を十分に把握したう
えで、このノウハウを標準化すべきである。そのうえで、広く入札者を募るか、指定管理
者を公募する指定管理者制度に移行すべきであろう。
このような移行が直ちに行えないとしても、少なくとも定期点検業務を切り離し、当該
業務については競争入札による委託を行うことを検討すべきである。本業務委託は火葬業
務と施設の日常点検、定期点検とからなっており、火葬業務には 9 名を配置することにな
っている。その中には電気設備保守管理業務、機械設備保守管理業務及び危険物取扱業務
に伴う有資格者を入れることを要求しており、火葬業務と日常点検業務はこの 9 名で行う
こととしている。しかし、定期点検業務は当該 9 名以外の担当者が行っているため、これ
を個別の委託業務とすることが可能と思われるからである。
委託の理由に合理性があるか
事前アンケートによれば、委託の理由は業務の効率化と経費の削減であり、監査人が検
証した範囲では委託の理由に合理性があると思われる。
53
契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか
監査人が検証した範囲では必要書類は適正に作成・保存されていた。
委託料の算定方法は適正か
委託料は 10 名の人件費(常勤者 9 名と繁忙期の応援者 1 名)と各種点検業務料とからな
っており、人件費は旧火葬場時代の嘱託職員に適用していた月額給与に基づいて算定して
いる。各種点検業務の単価については、平成 12 年の開設当時に参考見積もりをとって決定
したということであるものの、それ以後見直しがなされていない。点検業務については複
数の業者から最新の見積りを入手するなどして、実勢単価の裏づけがある積算を行うべき
である。
また、9 名の通常勤務者に対して固定給与が積算されているものの、これとは別に日常点
検・定期点検料という積算項目がある点にも問題がある。日常点検業務と定期点検業務を
併せたうえでの積算となっているため、日常点検業務料としていくらを計上しているのか
は明らかではない。火葬業務と日常点検は常勤の 9 名が通常勤務時間の中で行うこととし
ているものであり、通常勤務内に日常点検を行っても固定給とは別に点検料が必要である
とすれば、一者随意契約にする理由の一つとなっている経費の削減が図られていると言え
るのか疑問が残る。日常点検料と定期点検料を合わせた積算ではなく、個々の点検業務に
ついて積算を行い、従来の積算に不要な部分がないか検証すべきである。
委託料は業務の内容に対し適正な水準か
最新の実勢価格にかかわる参考見積もりを入手していない以上、適正な水準であるかど
うか判断できない。
委託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か
委託契約手続は適正に行われ、支払いは正確に行われている。
委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられているか
検査調書を閲覧した限りでは、委託契約の履行について適時、適切に確かめられている。
当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
選定委員会は、火葬業務と設備維持管理業務を同一業者に委託することにより業務の効
率化・経費の削減が図られるとしているものの、これにかかわる事前、事後の検証が行わ
れているわけではない。したがって、効率化・経費の削減が図られているとする根拠につ
いては確認できなかった。
54
6.旭川聖苑苑庭維持管理業務
業務等の内容
旭川聖苑の庭(芝生)を維持管理する業務
委託金額
16,065,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 27 日から平成 17 年 11 月 30 日
委託の始期
平成 11 年
委託相手先
清香園山田植木株式会社
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
無し
契約方法及び相手先の選定方法は適正か
本業務委託の平成 17 年度における指名業者は、平成 17 年度建設工事等入札参加資格者
に登録される業者のうち、過去 4 年間(平成 12 年度から平成 15 年度)において旭川市の
受注実績が 2 年以上ある造園工事の総合数値(経営事項審査結果通知書)上位 12 者の中から、
6 者を選定した。ただし、12 者の中から上位 6 者を選定しているわけではなく、6 者の選定
理由は明らかではない。なお、選定基準は毎年異なっており、平成 15 年度は物品購入等競
争参加資格者名簿の「樹木・緑地保護管理」に登録されている業者のうち、旭川聖苑建設
に際して造園工事を請負った業者 5 者と、過去に旭川市の管理する施設において同様の庭
園管理を確実に履行した実績がある会社 2 者を選定している。そして、平成 16 年度は、旭
川市内に本社があり、平成 16 年度建設工事等入札参加資格者に登録される業者のうち、過
去 4 年間(平成 12 年度から平成 15 年度)において旭川市の受注実績が 2 年以上ある造園
工事の総合数値(経営事項審査結果通知書)上位 7 者を選定している。
選定基準が毎年異なっている理由については監査期間中確認できなかったものの、これ
によって指名業者の入れ替えが行われているのも事実である。仮に、選定基準を毎年変え
ていることが指名業者を偏らせないようにするための配慮によるものであったとしても、
指名業者の選定基準に不明瞭な点があることは問題である。また、そもそも本業務委託で
は現在の指名競争入札を継続していいのかという問題がある。
55
というのは、平成 15 年度の入札直前に外部から談合情報がもたらされ、いったんは入札
が延期されたという経緯があるからである。市は入札を延期した際、指名業者に対して聴
き取り調査を行ったものの、談合の事実を確認できなかったため結局は指名競争入札を行
っている。
予定価格決定の根拠となる積算金額については、平成 15 年度及び平成 16 年度とも全く
同一の金額であった。なお、平成 15 年度は予定価格と積算金額が同額であったものの、平
成 16 年度の予定価格は積算金額を 57 万円下回る金額とした。それにもかかわらず、平成
16 年度の落札率が極めて高い率となっているのは非常に不自然ではないであろうか。
こうした状況を考えると、本業務委託は公募型指名競争入札の導入や一般競争入札の導
入を検討すべき案件であると思われる。
委託の理由に合理性があるか
監査人が検証した範囲では委託の理由に合理性があると思われる。
契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか
監査人が検証した範囲では必要書類は適正に作成・保存されていた。
委託料の算定方法は適正か
下記の「委託料は業務の内容に対し適正な水準か」で述べる点を除き、監査人が検証し
た範囲では算定方法に問題はないと思われる。
委託料は業務の内容に対し適正な水準か
平成 16 年度までは「旭川聖苑苑庭維持管理業務」という一つの委託業務において旭川聖
苑の庭全体の維持管理が行われていたところ、平成 17 年度からはこれを芝生管理と樹木管
理の二つの委託業務とした。本業務委託は二分割されたうちの芝管理業務である。
従来一つであった委託業務の平成 16 年度の契約額は 2,300 万円(税抜)
、平成 17 年度に
二分割された業務のうち芝管理業務の契約額は 1,530 万円(税抜)、樹木管理業務の契約額
は 590 万円(税抜)であった。したがって、平成 17 年度に二分割された業務の契約額合計
は 2,120 万円となり、平成 17 年度の契約合計額は平成 16 年度を 180 万円下回っている。
平成 16 年度の積算額と平成 17 年度の二つの委託業務の積算内訳を比較すると、直接費
にはほとんど変動はないものの、平成 17 年度は間接費(諸経費)が減少し、結果的に積算
の合計額も減少していた。業務内容は従来から同様であり、業務を分割したことによって
平成 17 年度以後の諸経費が従来よりかからなくなったということはない。むしろ、一つの
業務を分割すれば効率が悪くなって、積算額は上昇するのが一般的であろう。それにもか
かわらず平成 17 年度の積算額が下がったのは、積算上の諸経費率が低下したことによる。
平成 16 年度までは直接費の 20%を間接費としていたものの、平成 17 年度はこれを 10%
56
とした。こうした状況からすると、平成 16 年度までの積算については甘かったと判断せざ
るをえない。
このように、業務を分割してもなお積算額を減らすことができるのであれば、もう一度
従来のように一つの業務にすれば、積算額ひいては実際の落札額をさらに減らすことがで
きるのではないであろうか。
委託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か
本業務委託の平成 17 年度における契約期間は平成 17 年 4 月 27 日から同年 11 月 30 日ま
でであるものの、入札が契約期間初日の 4 月 27 日午後 4 時半から行われている。同日から
契約業務を遂行することは時間的に不可能であるし、委託業者の業務報告書においても 4
月は「準備」あるいは「苑内視察」と記されているのみであり、実際の作業は 5 月 6 日か
ら行われている。こうした実態にもかかわらず、市民部では 4 月に業務が良好に遂行され
たことを検査調書で認めて、委託料を支払っている。委託料は 4 月から 11 月までの 8 か月
間で均等に按分されて支払われているものの、4 月は委託業務が行われていないことからし
て、4 月の支払い分は厳密には前払金といえる。
入札は契約期間に先立って行うべきであるし、特に認められた場合を除き委託料も業務
の進捗に応じて支払うべきである。
委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられているか
検査調書等を閲覧した限りでは、委託契約の履行について適時、適切に確かめられてい
る。
当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
もともと一つの業務を二分割した理由について担当者に確認したところ、入札参加機会
の向上ということであった。複数の委託事業を一本化することによって、委託事業の効率
化、経費削減を図るということであれば理解できるものの、単に入札参加機会の向上とい
う理由だけで一つの事業を分割するのは、本来合理的とはいえない。聖苑の火葬業務と施
設維持管理業務という同じ場所での別の委託案件については、業務の効率化、経費削減を
図るという理由からひとつの委託契約としており、その姿勢とも逆行している。平成 16 年
度の指名業者は 7 者であったのに対し、平成 17 年度は庭園管理事業と樹木管理事業に 6 者
ずつの合計 12 者が指名されたため、確かに入札参加業者は増えた。しかし、従来どおり一
つの委託事業であっても、公募型の指名競争入札にすれば業者の入札参加機会を増やすこ
とはできるわけである。委託業務を一本化したほうが、効率化、経費削減が図れるのであ
れば、再度一本化を検討すべきであると考える。
なお、業者の入札参加機会だけでなく、落札業者そのものも増やしたというのであれば、
今回のように委託事業を増やし、指名業者を振り分けることで、確かに委託業者及び落札
57
業者の数は増える。しかもそれが、
「その他の案件について」の「9.地元業者等に対する
配慮」の項で述べる地元業者への配慮によるものであれば、後述するようにそれを直ちに
否定はしない。ただし、これも後述するように、その場合には地元業者への配慮に関する
妥当性のチェックを受けるべきである。
58
7.ひとり暮らし高齢者訪問事業
業務等の内容
ひとり暮らし高齢者世帯への訪問
委託金額
18,565,916 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
昭和 59 年
委託相手先
旭川ヤクルト株式会社
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
本業務は市内全域においてひとり暮らし高齢者の訪問を行うものであり、業務の性質
が競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第 1 項第 2 号)。
見積合わせによらず一者随意契約とした理由は、市内乳酸飲料販売会社のうち本業務
の実施において販売組織、販売員数及び販売店の設置状況(市内一円)等の条件を備
えているのは当該業者のみのため。
再委託の有無
無し
契約方法及び相手先の選定方法は適正か
市内に在住する 75 歳以上の独居老人は平成 18 年 3 月末日現在 6,449 人であり、このう
ち当該事業の対象外となるホットライン設置世帯の人数が 3,190 人であるため、同日現在
の当該事業対象者は 3,259 人であった。事業仕様書によれば、75 歳以上のひとり暮らし高
齢者世帯を乳酸飲料を持って訪問することにより、日常における安否の確認、社会的孤立
感の解消並びに緊急時に際しての援護体制の確立を図ることが当該事業の目的とされてい
る。したがって委託先は乳酸飲料会社とすることが事業仕様書に明記されている。乳酸飲
料の代金については訪問を受ける高齢者世帯側が負担するわけではなく市が負担している
ため、委託料の中には当然に乳酸飲料代も含まれている。
しかし、当該事業の主たる目的は訪問による安否確認にあるのであって、乳酸飲料を無
償提供することにあるのではない。これは、「災害弱者緊急通報システム」という緊急ホッ
トラインが設置されている世帯については当該事業の対象外としていることからも明らか
である。旭川ヤクルト㈱と一者随意契約とする理由は、市内乳酸飲料販売会社の中で本業
59
務を実施するにあたって、販売組織、販売員数及び販売店の設置状況(市内一円)等の条
件を備えているのは当該業者のみのためとしているものの、乳酸飲料会社に限定しなけれ
ば、当該事業を受託できる業者はほかにも存在する可能性が高い。たとえば、他市町村に
おける同様の事業においては、郵便局員、電気、水道の検針員、民生委員、地域のボラン
ティア等が担当している事例もあった。乳酸飲料を配布することが前提であれば、一者随
意契約とした理由に合理性が認められなくはないものの、そもそもひとり暮らし高齢者の
安否を確認するために、なぜ、乳酸飲料を無償で配布しなければならないのか理解に苦し
む業務委託である。本業務委託では、ひとり暮らし高齢者の安否を確認するという目的達
成を第一に考え、委託先を広く公募する方法によって契約を締結すべきであったと思われ
る。
なお、当該事業は平成 17 年度をもって廃止されている。これは、旭川市社会福祉協議会
が従来より一部地域で行ってきている安否確認事業(「長寿社会生きがい振興事業」)と当
該事業を一元化したためである。当該安否確認事業に対して市が新たに補助金を支出する
ことで、これを旭川市全域に拡大充実させることとしている。
委託の理由に合理性があるか
本業務委託では、ひとり暮らし高齢者の安否を確認するにあたって乳酸飲料を配布する
ことが前提となっているため、これを実行できる業者へ委託している。しかし、安否の確
認ということを第一に考え、乳酸飲料の無償配布を行わないのであれば、現在の市職員に
よって実施できないかをまずは検討すべきである。それが経済的ではない、あるいはそれ
に加えて民間業者のほうがよりよいサービスを提供できるということであれば、そこで委
託を検討すべきである。なお、委託をする場合でも、合理的な理由がないまま委託先を限
定すべきではない。したがってこうした検討をしていない以上、本業務委託において委託
の理由に合理性があるとは言い切れない。
契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか
監査人が検証した範囲では必要書類は適正に作成・保存されていた。
委託料の算定方法は適正か
上述したとおり、ひとり暮らし高齢者世帯に配布する乳酸飲料代を市が負担しているた
め、委託料には乳酸飲料の製品原価が含まれている。したがって乳酸飲料代を市が負担す
る必要があったのか疑問が残るという点を除けば、委託料の算定方法に問題はないと思わ
れる。なお、本業務委託は単価契約となっている。
60
委託料は業務の内容に対し適正な水準か
すでに述べたように、委託料には乳酸飲料の製品原価が含まれていることから、これが
不要と考えれば委託料はその分高いことになる(単純計算によれば製品原価の合計は 1 千
万円を超えてしまう)。旭川ヤクルト㈱以外の業者へ委託した場合、製品原価以外の単価に
ついては現在よりも割高になるかもしれないため、委託料に含まれる製品原価分の金額が
そのまま不要になるとは言えない。しかし、総額としては現在よりも安くなる可能性が高
かったと言えるのではないであろうか。
委託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か
委託契約手続は適正に行われ、支払いは正確に行われている。
委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられているか
実施要綱によれば、受託者は月別訪問状況報告書を毎月市へ提出することになっており、
これによって市は事業の実施状況を確認するとしている。当該報告書は A4 用紙一枚で、そ
れも事業対象者の異常の有無の選択欄があるのみである。異常があった場合には個別にそ
の内容を記載することになっているものの、平成 17 年度はいずれの月も異常がなかったと
いう報告で、予め印刷されている「異常は認められなかった」という記述に丸印がつけら
れているのみであった。しかし、これだけの報告で年間 2 千万円近い委託料を支払ってい
る事業の実施状況を十分に把握することができるのであろうか。また、平成 17 年 4 月度及
び 5 月度の報告書は平成 17 年 7 月 6 日に、平成 17 年 10 月度から平成 18 年 1 月度までの
報告書は平成 18 年 3 月 2 日に提出されていた。したがって、この状況をみるかぎり、実施
状況の確認が適時、適切に行われているとも言えない。
なお、月次報告とは別に、半期ごとに月別の乳酸飲料の配布対象者数と実際配布本数と
を記載した実績報告を市に提出することになっており、こちらは適時に報告されていた。
委託料の支払いはこの半期報告に基づいて半期分を支払っている。
当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
市があらかじめ用意している受託者からの報告書様式に問題があるため、事業の実施状
況を市が十分に把握しているかどうか疑問が残る点は上述したとおりである。したがって、
その意味では本当に当該委託契約によって予定した行政目的が達成されているかどうか判
断ができないわけであるものの、仮に、ひとり暮らし高齢者世帯の日常における安否の確
認、社会的孤立感の解消並びに緊急時に際しての援護体制の確立を図るという目的は達成
されているとしよう。しかし、本業務委託ではすでに述べたとおり、委託料の中に訪問先
へ配布するための乳酸飲料代が含まれているために委託料が割高になっている可能性が高
いことと、それがために委託業者が限定され、一者随意契約にならざるをえなくなってい
る点が問題である。
61
高齢者に対して飲料等を無償配布するのであれば補助事業のような形を検討すべきであ
り、委託で行うべきではない。前述したように本業務委託自体は平成 17 年度をもって廃止
されているものの、このようなケースを今後の反省点として生かされたい。
62
8.旭川市保健所手数料等徴収事務
業務等の内容
保健所において現金によって納付することとされている手数料及び使用料の徴収事務
委託金額
6,102,600 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 12 年
委託相手先
旭川地方食品衛生協会
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないためであり(地方自治法施行令第 167 条の 2
第1項第 2 号)、一者としたのは契約の目的又は性質により相手が特定されるため。
再委託の有無
無し
契約方法及び相手先の選定方法は適正か
当該団体と一者随意契約とした理由について、市は「保健所業務についての幅広い知識
と経験を有していることが必要」という点と、
「公金を適正に扱える信頼性及び事務処理の
確実性」をあげている。しかし、事務仕様書を見る限りは、本業務委託は通常の料金の徴
収と集計報告事務であり、専門的な知識と経験が必要とは考えにくい。また、公金の収受
事務については他の部局で民間会社が請け負っている例もあるところである。従って、必
ずしも当該団体に限られる業務でもないし、また随意契約に拠らなければならないという
積極的理由があるとも考えにくい。市の財政が逼迫している折、手間はかかるかもしれな
いものの、業務を委託する部局においては常に当該団体以外での業務遂行可能性を探って
複数業者を選定することで競争原理が作用する環境を構築することや、市役所内でノウハ
ウの共有を図ることにより、コスト削減を心がけるべきである。
委託の理由に合理性があるか
委託を行う理由として「当該事務については、取り扱い件数が多いため、各担当課で事
務処理を行うよりも、これを専門的に処理する者を置き、一括して事務処理を行う方が効
率的である。
」というように説明されている。しかし、これだけの理由では外部の者へ委託
63
をするということの積極的な理由にはならないと考えられる。民間の法人であれば当然行
うように、まずは合理化を行うことによって市の既存職員から人員を割くことができない
か、あるいは徴収方法を工夫することなどによって追加コストをかけずに解決できないか
という発想があって然るべきである。
本業務委託は担当職員を 2 名用意する内容の委託であることから、どうしても既存職員
で手に負えないならば、市が直接臨時職員を雇えば効率化に向けてのノウハウ蓄積も可能
になる。またそのようにすれば、本業務を別団体に委託し、そこを通して実際に業務を行
う担当者へ給与を支払うような面倒な手続きも必要ないと考えられる。
契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか
監査人が検証した範囲では必要書類は適正に作成・保存されていた。
委託料の算定方法は適正か
所要人数を算定する過程で、業務所要時間の予測を一件につき処理時間が 1 時間となっ
ている。しかし、当該業務が単なる料金の収受であるという実態からすると、この予測が
妥当とは思われない。すなわち、担当課より入手した資料からは 1 件の収受作業に必要な
約 1 時間という作業時間の積算について、以下のような報告が得られた(下記の合計は 57
分)。
①料金内訳書の作成、領収書の作成、収入証紙の販売等窓口での業務=12 分
②庁舎間の移動時間=8 分
③現金取り扱いの処理時間=2 分
④料金内訳書、日計表、月計表、納付書等書類の保管整理=5 分
⑤後納処理=1 分
⑥月計表作成=1 分
⑦終業前後の現金確認=3 分
⑧事務連絡等のための庁舎間移動=1 分
⑨払い込みのための金融機関までの移動=1 分
⑩当該契約事務は窓口業務であるため 1 名以上は必ず窓口においておく必要があり、そ
の最低 1 名分の人件費を一件当たりで除して出した時間=23 分
しかし、この積算の中には、明らかに 1 日に 1 度ないし 2 度しか発生しない終業前後の
現金確認といった作業である⑦や、料金収受の際に毎回発生するとも思えない庁舎間の移
動である②や⑧、仕様書でも 1 日 1 回の作業になっている金融機関への払い込みの⑨、1 日
1 回ないし 1 月に 1 回の報告書類作成である④や⑥が含まれることから、これらを除いた正
味作業時間では約 15 分程度にしかならない。
(①と③と⑤の合計)さらに、⑩に掲げてあ
64
る「当該契約事務は窓口業務であるため 1 名以上は必ず窓口においておく必要があり、そ
の最低 1 名分の人件費を一件当たりで除して出した時間」は作業時間の積算要素として意
味があるのか疑問である。
これをみると、積算の最も重要な計算要素である作業量の積み上げ過程が杜撰であると
言わざるを得ず、正味 15 分で済む作業を 1 時間かかるものとして算定されるような委託料
が適正であるとは考えられない。市が工夫して現在の料金収受方式を改めることにより作
業時間を減らすことができるのであれば、委託料削減になるであろうし、また利用者にと
っても時間節約になると思われる。
なお、本業務委託では 1 人当たりの人件費を 6,000 円×244 日=1,464,000 円と計算すべ
きところを 6,000 円×21 日×12 ヶ月=1,512,000 円と計算した結果、3 人分の人件費で
144,000 円、人件費の 7.7%で計算している事務費 11,088 円、それらにかかる消費税 7,754
円を加えた合計約 16 万円分の委託料が過大になっている。
委託料は業務の内容に対し適正な水準か
委託料の算定方法に問題があるため、委託料が割高になっていると思われることは上述
したとおりである。これ以外にも、人件費の積算単価として市役所の臨時職員給与を参考
に用いているものの、市の積算額と実際の委託価格がほぼ同額であることから、必ずしも
外部へ委託することが経済的であるとは思えないという問題点もある。また、市からもこ
のような観点から検討したことはないという回答を得ている。なお、市が直接臨時職員を
雇用すれば人件費に係わる消費税の支払いもなくなり、より経済的である点も付け加えて
おく。
委託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か
委託契約手続は適正に行われ、支払いは正確に行われている。
委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられているか
検査調書等を閲覧した限りでは、委託契約の履行について適時、適切に確かめられてい
る。
当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
上述した問題点を除けば、予定した行政目的達成に貢献していると考えられる。
65
9.旭山動物園園内業務
業務等の内容
入園券の販売と改札、団体の受付、遊具乗り物券の販売と改札、遊具の運転、清掃業
務、施設内の誘導、駐車場の誘導、シャトルバスの運行、開園準備、園内整備業務(草
刈を含む)
委託金額
71,190,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 17 年 10 月 31 日
委託の始期
平成 12 年以前(平成 12 年以前は確認できなかった)
委託相手先
株式会社ベリークリーン
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
無し
契約方法及び相手先の選定方法は適正か
本業務委託では指名競争入札への参加資格を有する業者が 6 者しかおらず、そのすべて
を指名して競争入札を実施しているため手続的には問題ないものの、平成 12 年度から平成
17 年度までの落札率はいずれも 95%を超える高い率であった。さらに、この間落札業者以
外に予定価格を下回る価格を提示したのは平成 16 年度に 1 者あったのみで、それ以外の年
度では存在しなかった。この結果を見る限り競争原理が働いているとは思えず、指名競争
入札は完全に形骸化している。本業務委託は指名登録業者の数が少なく指名競争入札を適
正に機能させるのが困難であることに加え、委託料が多額にのぼる業務であることから、
一般競争入札の導入を検討すべきであると考える。
委託の理由に合理性があるか
事前アンケートによれば、委託の理由は業務の効率化と経費の削減である。業務内容が
多岐にわたることや作業量が多いことを考慮すると、直営ではなく委託としたことに合理
性は認められる。
66
契約書などの必要書類が適正に作成・保存されているか
監査人が検証した範囲では必要書類は適正に作成・保存されていた。
委託料の算定方法は適正か
本業務委託の委託費はそのほとんどが人件費であり、平成 15 年度は作業班ごとに作業人
数、作業時間を見積もって直接経費を積算し、これに管理業務用諸雑費(ゴミ分別、交通
費、資材費、被服費、事務費の合計で約 423 万円)を加算、さらに、これら直接経費と管
理業務用諸雑費の合計に 14%を乗じた金額を諸経費として加算し委託料を計算している。
管理業務用諸雑費と諸経費とは性質が異なるものであって積算内訳として重複するもの
ではないとのことであり、さらに、当該積算自体は「建築保全業務積算基準」に従って行
われ、14%という率自体も後述するように当該基準に定める率よりも低い率を用いていた。
しかし、当該基準自体の妥当性と、本業務委託に当該基準を適用することの妥当性につい
てはあらためて検討する必要があるのではないであろうか。
また、平成 16 年度からは作業班という枠組みをなくし業務ごとに直接経費を計算してい
る以外、時間単価も含め積算方法自体に変わりはない。しかし、平成 15 年度において 14%
だった諸経費の率を平成 16 年度では 23%、平成 17 年度では 24%に増加させていたため、
この点について担当者に質問したところ、平成 16 年度においては「建築保全業務積算基準」
で示されている諸経費率 20%~25%を参考に諸経費率の見直しを行い、平成 17 年度は管理
業務用諸雑費の積算項目を減らしたために(管理業務用諸雑費としては交通費のみを積算
している)、諸経費率をさらに増加させたということであった。旭山動物園では近年入園者
が急激に増加しており、積算を見直す必要性があることは理解できるものの、その際には
諸経費率を増加させる前にまずは直接経費の積算をできる限り厳密に行うべきである。
委託料は業務の内容に対し適正な水準か
上述したとおり、管理業務用諸雑費を積算した上に直接経費と管理業務用諸雑費の合計
の 14%~24%を諸経費として加算している点と、14%~24%という間接経費の率自体の根拠が
不明確であるため、委託料の積算が適正に行われていない可能性は否定できない。
委託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か
委託契約手続は適正に行われ、支払いは正確に行われている。
委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられているか
監査人が検証した範囲では、受託業者による業務の履行について以下のような問題点が
あった。
67
(1)入園券、遊具券の管理について
入園券と遊具券(以下、「入園券等」と記載する。)については、印刷業者から入園券等
を受入れ、委託会社及び市内の旅館業組合などへ券を払出す都度、動物園側で受払簿に記
入している。そして委託業者からは日々、売上報告書により有料入場者数、売上金額とと
もに券の在庫枚数について報告がされている。
しかし、入園券等についての棚卸しが実施されていないため、動物園の受払簿と委託業
者の売上報告書に記載された在庫枚数が正しいかどうか検証できていない。在庫枚数を確
定させることの他に、不正や誤謬の抑止としても棚卸しは不可欠である。したがって、入
園券等の棚卸しは定期的に実施する必要があるし、後述するように現金残高を確定させる
方法が入園券等の棚卸し以外にないというのであれば、棚卸しは毎日実施すべきである。
(2)現金の管理について
仕様書自体に現金管理、収納事務に関しての記載はないものの、別紙にて収納業務の処
理手順が文書化されている。それによれば、現金については市職員 1 名と業者 1 名が立会
いのもとで数えられ、立会人が確認した後、納付書を作成し、翌営業日に業者が金融機関
に納めることになっている。
まず問題となるのは、委託業者が作成する売上報告書及び納付書に入園券等の売上金額
が記載されているものの、市ではこれが正しいかどうか検証できていないという点である。
すなわち、市ではその日の入園券等の売上金については委託業者が作成する売上報告書に
よって把握しているのみであることから、例えば、実際には 100 枚の入園券等が売れたに
もかかわらず 95 枚の入園券等が売れたものとして売上報告書と納付書が作成されてしまっ
たとしても市ではその事実がわからない。しかも、実際の現金も 95 枚分の売上金しかなか
った場合、現金残高と売上報告書及び納付書の金額はすべて一致しているため、たとえ、
これらを突き合わせても収受すべき現金が少ないということがただちに発見されない可能
性がある。本来収受されるべき 100 枚分の売上金のうち 5 枚分の売上金が少ないというこ
とを発見するためには、入園券等の払い出し枚数から収受されているべき現金を計算し、
その金額と実際の現金残高とを突き合わせる必要がある。したがって、市はまずその日売
れた入園券等が何枚あったのかを、委託業者の売上報告書以外の方法で把握できるように
することを早急に検討すべきである。入園券等の売上枚数を把握するためには、
(1)で述
べた棚卸しによる入園券等の在庫枚数を確定させることもひとつの方法である。
次に問題となるのは、実際には市職員立会いによる現金のカウントや確認作業が行われ
ておらず、委託業者から提出される売上報告書を確認するのみとなっている点である。収
納業務の処理手順によれば、現金については市職員 1 名と業者 1 名が立会いのもとで数え
ることになっているため、定められた手順については守るべきである。
さらに、売上金を翌営業日に金融機関へ預け入れている点も問題である。現在のやり方
によれば、連休をはさむなどで翌営業日までたとえ日数があいてしまう場合であっても、
68
その間委託業者が現金を預かることになっている。しかし、旭山動物園では 1 日の売上金
が 1 千万円を超えることもあり、したがって連休などがあれば売上金は数千万円にもなる
ため、これを委託業者が預かるというのは問題である。翌営業日まで日数があいてしまう
場合に限定せず、売上金についてはその日のうちに金融機関の夜間金庫へ預けいれるなど
の措置をとるべきである。
また短時間ではあったものの、委託業者が、預かっていた現金を自動車の中に置いたま
ま担当者がその場を離れ、無人の自動車の中に売上金が放置されるということがあった。
現金については上述した問題の解決を図るとともに、その管理を厳格に行うよう業者にも
徹底すべきである。
(3)収納事務について
(2)で述べた納付書は 3 連式で、1 枚は金融機関が保管し、1 枚は委託業者が保管、残
りの 1 枚(納入済通知書)が金融機関から市の会計課に送られ、経理処理の証憑となる。
会計課では納入済通知書の金額に基づき財務会計システム上の経理処理を行うことから、
納入済通知書に基づき正しく入力する責任は会計課が負うものの、財務会計システム上で
前営業日の売上金が間違いなく入金処理されているかどうかを確認するのは商工観光部の
役割である。しかし、商工観光部ではこの入金確認作業を毎日行っていないため、仮に委
託業者の入金が遅れたとしても、これがただちに発覚するような仕組みになっていない。
また、商工観光部が入金を確認する際には売上報告書と財務会計システム上の入金額(入
力が正しく行われていれば、これはすなわち実際に入金された額)とを突き合せることか
ら、(2)で述べたようにたとえそれぞれの金額が合っていたとしても、そもそもそれらの
金額が市の収受すべき金額よりも少なかったとすれば、これらを突き合わせる作業の意味
が薄れてしまう可能性がある。動物園の売上金入金については毎日確認するとともに、
(2)
で述べたように売上報告書に記載された売上金そのものが間違いないことを検証できる仕
組みを作る必要がある。
(4)日報等の報告書について
監査人が検証した時点では、仕様書において、日報等の報告書提出が義務付けられてい
なかった。委託業者の業務執行状況、問題点の把握等のためには業務の報告書を提出させ
る必要がある。なお、平成 18 年度の冬期園内業務委託からは報告書を提出させており、平
成 19 年度からは夏期、冬期とも実施するとのことである。
(5)駐車場の誘導について
本業務委託には駐車場の誘導作業も含まれているものの、監査人が動物園を訪れた際の
駐車場警備員は 3 人で(複数ある駐車場のうちのひとつ)
、たまたま駐車場内の交通整理を
せず出入口に立っている状況であった。そのため、駐車場から出る車と入る車とで混雑し
69
て身動きが取れない状態であり、来園者同士が外に出て交通整理をしている状況が見られ
た。年々増加する入園者に対応するため現場では大変な苦労をされている点は理解できる
ものの、それを理由に委託した業務が適正に履行されなくてもいいということにはならな
い。動物園を一時のブームに終わらせることなく来園者の再来園比率を上げるためには、
こうした周辺業務も重要である。
当該委託契約は予定した行政目的達成に貢献しているか
「契約方法及び相手先の選定方法は適正か」や「委託料の算定方法は適正か」のところ
で述べたことから委託料の積算が適正に行われていない可能性は否定できず、また、特に
現金の管理を含めた業務の履行状況にも上述したような問題点があるため、本業務委託で
は予定した行政目的を達成しているとは言い難い。
70
その他の案件について
1.書類に係る形式的不備
(1)必要書類がそろっていない
旭川市の「委託契約に関する事務の手引」の「(10)業務の履行」によれば、「委託業務
が完了したときは、軽微なものを除き文書により業務完了届を徴すること。」(※)とある
にもかかわらず、「個別案件について」で記載した以外にも委託相手先からの業務完了届あ
るいは業務報告書を徴していないものがあった。
(※)「軽微なもの」についての具体的な基準はないものの、総務部契約課からの回答に
よれば、契約書、請書等を省略できるような軽易な場合で、文書によらなくとも検
査において支障のない場合が該当するとのことである。なお、契約事務取扱規則及
び契約事務取扱要領によれば、契約書については 80 万円以下、請書については 30
万円以下の契約について省略可能となっている。
(2)書類の保存期間が統一されていない
「旭川市事務取扱規程」の第 50 条と第 51 条では、文書の保存年限について「永年」、
「10
年」、「5 年」
、
「1 年」及び「随時廃棄」の 5 区分を定めているものの、担当部局によって委
託に係る書類の保存年限を 10 年としているところと、5 年としているところがあった。委
託に係る書類の保存年限については全部局で統一すべきである。
(3)今後も作成する必要があるかどうか検討すべき書類がある
委託契約にあたってはすべての受託業者から「消費税課税事業者等申出書」(以下、「申
出書」と記載する。)を徴取している。これは受託業者が消費税の課税事業者であるか免税
事業者であるかを確認する書類であり、課税事業者に対しては「消費税額」、免税事業者に
対しては「消費税相当額」という文言を受託業者と交わす書類において使い分けるために
徴取しているものである。書類上の文言を使い分けるためという理由による当該申出書の
徴取を今後も続けるべきかどうかは改めて検討すべきである。
では、仮に、当該申出書を委託料に消費税相当額を付加するかどうかを判定するために
徴取すると考えてみよう。監査人が検証した範囲では、ほとんどの受託業者が課税事業者
となっている中、受託業者が免税事業者となっていた案件が 1 件あったものの、その他の
課税事業者と同様、委託料に消費税相当額を付加して支払っていたため、免税事業者に支
払う委託料には消費税相当額を付加しないということは現在は行われていない。
地方公共団体といえども、外部からモノを買うときやサービスの提供を受ける際の対価
には、それが課税の対象となる取引である限り通常は消費税相当額が付加されており、課
税取引である委託料に消費税相当額を付加して支払うこと自体は問題ない。しかも、委託
料に消費税相当額を付加して支払うことと、支払相手先が課税事業者であるか免税事業者
71
であるかは直接関係がない。これは、支払相手先が課税事業者であるか免税事業者である
かということが課税取引の要件になっていないからである。その取引が消費税の課税取引
である限り、免税事業者が消費税相当額を受領してもなんら問題はないのである。したが
って、仮に、委託料に消費税相当額を付加するかどうかの判定に使う目的を持って当該申
出書を徴取することにしても、受託業者が課税事業者であるか免税事業者であるかに関係
なく市が委託料に消費税相当額を付加して支払うことは問題ないため、そのような目的の
ために当該申出書を使用することは現実的ではないと言える。例えば、市が「免税事業者
に対しては委託料に消費税分の金額を付加しない」としたとしても(これは単なる価格の
値引き交渉であるから消費税法とは関係がない)、委託料が消費税相当額だけ減額されるこ
とが分かっていて、あえて「免税事業者」と届け出る業者がいるかどうか疑問だからであ
る。それとも申出書に「課税事業者」と記載された業者が本当に課税事業者かどうかを市
は確かめるべきであろうか。実際、平成 15 年度の消費税法改正によって免税事業者の数が
減り、市の委託を受ける業者の中にも免税事業者がまれにしか存在しないことを合わせて
考えれば、免税事業者に対して支払う委託料に消費税分の金額を付加しないという方法は、
その検証の仕方を考えると現実的ではないと思われる。
72
2.一者随意契約について
一者随意契約とした業務委託のうち、特に問題があると思われるものとして以下のよう
な案件があった。
(1)旭川市へき地保育所・季節保育所及び通年制保育園管理業務
業務等の内容
旭川市へき地保育所・季節保育所及び通年制保育園管理運営業務
委託金額
420,042,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
昭和 43 年
委託相手先
財団法人旭川保育協会
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
へき地保育所及び季節保育所については、市の条例によって委託先が財団法人旭川保
育協会とされている(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項第 3 号)。また、通年制保
育園については、昭和 49 年度より同協会に委託して適正な管理運営を行ってきた実績
があり、平成 17 年度も円滑な管理運営が遂行されると判断できるため。
再委託の有無
無し
受託者である財団法人旭川保育協会は昭和 43 年に任意団体として発足し、昭和 49 年に
財団法人として認可された組織である。同協会は発足初年度から旭川市のへき地・季節保
育所並びに通年制保育園運営事業を受託し、以後一貫して当該事業のみを行っている。平
成 18 年 3 月末日現在、同協会には施設長(保育所長及び保育園長)として 29 名、常勤保
育士として 93 名が在籍している。同協会が管理運営する保育所及び保育園の園児数は、へ
き地保育所 6 施設で 34 名、季節保育所 9 施設で 134 名、通年制保育園 14 施設で 1,000 名
となっている。同協会は当該委託事業にかかわる収入以外に収入源はなく、いっぽう、旭
川市もすべてのへき地保育所・季節保育所及び通年制保育園の運営業務を一括して同協会
に一者随意契約で委託してきており、他の事業者に委託したことはない。
73
こうした委託のあり方がただちに問題とは言えないものの、長期間におよぶ相互依存関
係があることから、チェック体制や評価手続きが不十分になる可能性は否定できない。実
際、すべての保育所・保育園に対して市の担当者による会計監査は行われているものの、
同協会が提供している保育サービス業務をチェックする手続きは現在のところ設けられて
いない。
また、当該委託事業は平成 18 年度より指定管理者制度に移行しているものの、移行に際
して指定管理者を広く公募することは行わず、同協会を指定管理者として選定している。
これによって、平成 18 年度から平成 22 年度までの 5 年間は同協会が引き続き旭川市のへ
き地保育所・季節保育所及び通年制保育園を管理運営することになる。
現在のところ、すべての保育所・保育園について一括して管理運営を行える事業者は同
協会以外に存在しないと思われるものの、個別の保育園・保育所単位であれば、手を挙げ
る事業者が存在する可能性はある。次回の指定管理者選定は平成 22 年度に行われるため、
その際には個別の保育園、保育所単位で指定管理者を公募することも検討すべきであろう。
指定管理者制度については、「8.指定管理者制度」の項も参照されたい。
なお、本業務委託ではへき地保育所・季節保育所及び通年制保育園に通う園児の保護者
から徴収する保育料、入園料、暖房費収入のうち、通年制保育園の収入は受託者の収入と
して処理されている。この処理は昭和 43 年に委託を開始した当初から行われているものの、
契約書等で明文化されているものではない。この点については、遅くとも平成 3 年 4 月の
地方自治法改正をきっかけに市の条例を整備した上、契約書等で明文化することを検討す
べきであったといえる。なお、平成 18 年度に指定管理者制度へ移行してからは、全ての収
入が同協会の収入になるものとされた。
また、同協会はへき地保育所 6 施設、季節保育所 9 施設、通年制保育園 14 施設の管理運
営を行っているものの、保育所及び保育園毎の収支状況を把握できるような管理資料を作
成していない。この結果、旭川市も当該委託業務全体の決算状況しか把握できていない。
保育所及び保育園の個別の状況が把握できなければ、委託料の妥当性を十分に検討するこ
とができないと思われる。今後はこうした管理資料の作成、分析を行うべきであるし、併
せて保育サービス業務の内容を評価する手続も導入すべきである。
74
(2)旭川市障害者生活支援事業
業務等の内容
在宅の障害者やその家族の地域における生活を支援するために、在宅福祉サービスの
利用援助、社会資源の活用や社会生活力を高めるための支援、ピアカウンセリング、
介護相談及び情報の提供等を総合的に行う業務
委託金額
15,000,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 10 年
委託相手先
社会福祉法人敬生会
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは、事業の性質や目的が競争入札に適さないものであるため(地方
自治法施行令第 167 条の 2 第1項第 2 号)。
見積合わせによらず一者としたのは、本事業が身体障害者に対する相談対応や各種支
援を年中無休 24 時間体制で実施するものであることから、夜間・休日にも職員が常駐
している身体障害者更生援護施設の中の「入所施設」でなければならず、支援費制度
についての相談や支援に対応するためには、ケアマネジメントの研修を終了し、その
手法に熟知している職員がいる施設であることが必要であり、更には、本事業を行う
にはこれを定款で規定している事業者でなければならず、こうした条件に合致する団
体が市内には一団体しか存在しないため。
再委託の有無
無し
当該事業は、在宅の障害者に対し、在宅福祉サービス(ホームヘルパー、デイサービス、
ショートステイ等)の利用援助、社会資源の活用や社会生活力を高めるための支援(授産
施設、作業所等の紹介、福祉機器の利用助言、情報機器の使用指導、外出支援、住宅の改
修助言、社会生活訓練プログラム等の実施等)
、ピアカウンセリング(障害者自身がカウン
セラーとなって行う、社会生活に必要とされる心構えや能力習得の個別的援助・支援)、介
護相談及び情報の提供等を総合的に行うことによって、障害者やその家族の地域における
生活を支援し、在宅の障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としている。
75
業務被指名者等選考委員会調書によれば、当該事業の実施が可能な施設は身体障害者更
生援護施設のなかの「入所施設」であり、市内にはこうした施設が 4 つあるとのことであ
る。そのうえで、当該事業を行うにはケアマネジメントの手法を熟知していることが必要
であり、その適任者は障害者ケアマネジメント従事者養成研修会修了者の職員を有してい
る社会福祉法人敬生会が運営する施設しかないとしている。また、当該事業を行うことを
定款で規定しているのは同法人だけであることも、同法人を随意契約の相手先として選定
した理由としている。
しかし、当該事業を行うにあたって、障害者ケアマネジメント従事者養成研修会修了者
を担当者とすることが法令等で定められているわけではなく、同研修会修了者の有無を選
定基準としていることが公表されているわけでもない。したがって現在の一者随意契約に
よっている限り、当該事業を行うことに意欲があり、その能力もある事業者が存在したと
しても、選定基準を知らないがゆえに最初から排除されている可能性がある。障害者ケア
マネジメント従事者養成研修会は各都道府県で毎年 4 日間程度開催される研修会であり、
受講資格に制限はないため誰でも受講可能である。したがって、研修会修了者の有無を選
定基準としていることを公表しないまま、この研修会修了者がいないことをもって受託者
の要件を満たさないとするのは適当でない。また、当該事業を行うことを定款で規定して
いないことから、現受託者以外に入所施設を有する 3 事業者には委託できないということ
であるものの、これも一者随意契約とする理由としては適当とは言えない。社会福祉法人
は一般の法人と異なって監督官庁による指導監査等もあり、実際に行っていない事業を定
款に追加記載することには抵抗があるものと思われる。したがって、現委託事業者以外の
社会福祉法人がこれを定款で規定することは困難である。定款変更には事前に理事会の承
認ならびに北海道知事の認可(旭川市域の中で事業を行う社会福祉法人については旭川市
長の認可)が必要であるものの、受託者選定後に定款変更までの猶予期間を設けることが
できれば、定款変更を条件に事業者を募ることも可能と思われる。実際、現受託者につい
ても、あらかじめ市が委託することを明らかにした後に定款変更を行っている。
本業務委託においては、障害者ケアマネジメント従事者養成研修会を修了した職員を有
していることを受託業者の要件とする点の周知と、受託者選定後に定款変更までの猶予期
間を設けることを検討することなどによって、一者随意契約自体の見直しを行う余地があ
る。
また、委託料の算定についても以下の点を指摘しておく。受託者からの見積書の内訳を
示すと次ページのとおりである。
76
(単位:円)
見積書(委託先作成)
人件費
職員(1名)
5,446,781
臨時職員(1名)
2,115,072
相談員(パート 3 名)
3,185,280
ピアカウンセラー
720,000
夜間待機料
54,600
合計
諸経費
11,521,733
出張旅費
570,000
その他の間接経費
合計
2,908,267
15,000,000
上記の見積書と委託料算定のための市の積算書とを比較すると、その内訳が異なってい
る。人件費は市の積算よりも受託者見積りのほうが 100 万円以上少なく、その分人件費以
外の経費は受託者の見積りのほうが市の積算より多くなっている。両者の人件費予算が異
なるということは、想定している業務担当者の水準や人数が異なっている可能性もある。
当該事業の実施要綱において、専任常勤職員 1 名(社会福祉士等のソーシャルワーカーま
たは保健師、看護師、理学療法士、作業療法士等)と専門的技術を有する者(社会福祉士、
介護福祉士、保健師、理学療法士、建築士等)を必要に応じて嘱託職員とすることが規定
されている。したがって、市の委託料算定においては嘱託職員として社会福祉士またはそ
れに準ずる資格者を想定しており、援助専門員には理学療法士、医師、建築士を想定して
いる。これに対して、受託者がどのような担当者を想定しているのか見積書からは明らか
でない。旭川市が想定したレベルの業務担当者が確保され、また業務水準が確保されてい
るとしても、それについて市の検証が十分におこなわれていたかどうかは検討の余地があ
るであろう。
また、当該事業を行うにあたっては、前述したように専任常勤職員と嘱託職員には一定
の資格要件を課しており、専任常勤職員にはさらに、障害者の相談、援助業務の経験があ
る者であることを条件としている。しかし、専任常勤職員及び嘱託職員決定にかかわる通
知文書を市は受領しておらず、実施要綱に定めた当該要件が満たされているのかについて
の確認が十分に行われていない。本事業は開始時から国庫補助事業であり、平成 14 年度ま
では国庫補助協議時に専任常勤職員の資格要件を確認していたとのことであるものの、一
般財源化された平成 15 年度以後は、事業開始当初から専任常勤職員に変更がないため書類
での確認は行っていない。また嘱託職員については一般財源化以後、実施要綱に定められ
た要件を満たしているかの確認がこれまで行われていない。今後は、専任常勤職員及び嘱
託職員が要件を満たすことを明らかにした職員決定通知文書を毎年受領すべきである。
なお、受託者の見積書と委託料算定のための市の積算書とを比較すると、人件費につい
77
ては受託者見積りのほうが 100 万円以上少なかったため、これを翌年度以後の市の積算に
反映させることも併せて検討すべきである。
(3)火災予防広報用ポスター配布委託業務
業務等の内容
火災予防広報用ポスターを市民へ配布する業務
委託金額
1,190,700 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 10 日から平成 17 年 4 月 19 日まで及び
平成 17 年 10 月 5 日から平成 17 年 10 月 14 日まで
委託の始期
昭和 62 年
委託相手先
旭川市婦人防火クラブ連合会
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないためであり(地方自治法施行令第 167 条の 2
第1項第 2 号)、一者としたのは他の者に受託能力がないためである。
再委託の有無
無し
本業務委託は火災予防広報用ポスターの配布という業務ではあるものの、その趣旨は市
民参加によって防災意識を向上させるとともに、市民と行政との協働による防災意識の共
有を図り、安全な地域社会の構築を目指そうというものである。従って、本業務委託が目
的とするところは、本質的には経済性や効率性といった定量的評価に馴染まない部分があ
るという点は否定しない。しかし、業務委託として行う以上は経済性や効率性をまったく
無視していいとは言えない。
したがって、たとえば人件費算定の基礎として市が臨時職員を雇用した時の金額を使用
しているものの、市の積算額と実際の委託料がほぼ同額であることから、委託することに
よって経費節減が図られているかどうかについては検討する必要があるであろうし、既存
の町内会や商工会等を利用することなどによって同様の効果を挙げつつ経費節減を図れな
いかといった点も検討する余地があるのではないであろうか。
78
契約方法として競争入札方式をとらずに一者随意契約としたことの妥当性や、他の手法
によっても行政目的を達成することができなかったかといったことを、業務委託に求めら
れる経済性や効率性をも考慮しながら検討してほしい。
(4)災害弱者緊急通報システム通報機器保守管理業務委託
業務等の内容
災害弱者緊急通報システム通報機器保守管理業務
委託金額
43,021,440 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 2 年
委託相手先
旭川市消防協会
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないためであり(地方自治法施行令第 167 条の 2
第1項第 2 号)、一者とした理由は、①秘密保持事故の防止、②戸別訪問時の事故(違
法不当行為による事故、金銭等の紛失事件等)の予防を確実に行う必要がある、③事
業実施要綱細目を満足するような業者が市内には 1 者だったためである。
再委託の有無
無し
本業務委託は、一人暮らしの高齢者(65 歳以上)、一人暮らしの身体障害者といった災害
弱者の世帯に対して、熱、煙、ガス漏れなどを感知するセンサーを設置し、万が一のとき
は電話回線を通じて消防本部に通報されるシステムに係わる保守管理業務である。平成 2
年に事業が開始されて以来火災を未然に防止するなどの実績を上げ、事業自体は評価され
ていると思われる。
しかし、平成 2 年に事業が開始されてから平成 17 年までの 16 年間にわたって一者随意
契約が続けられており、また相手先の旭川市消防協会がそもそも当該業務を受託する目的
で設置された団体であることから、外部からは不透明な業務委託という印象を持たれる可
能性があることは否定できない。同協会を相手先とする一者随意契約によったのは、技術
79
的な面や訪問先のプライバシー保持、その他の条件を満たす者が同協会以外になく、価格
の面でも同協会より有利な価格を提示できる業者はいないという理由であった。しかし、
平成 18 年度に実施された競争入札の結果を踏まえると、なぜもっと早く競争入札を実施し
なかったのかという点は指摘せざるをえない。
平成 18 年度に実施された指名競争入札では、
指名した業者が次々と辞退する中、入札に参加した業者の提示価格と消防協会の提示価格
とを比較すると、消防協会以外の参加業者の提示価格は消防協会の 2 倍以上の価格であっ
た。また、消防協会の理事には元消防長などが就任しているものの、役員は全員無給でボ
ランティア活動的な側面が強く、剰余金が発生した場合には防火・防災思想の普及などの
公益事業に使われているとのことであり、閲覧した資料を見る限り公益的な団体である点
には疑いを持たなかった。今後、行政としては不透明な団体という印象を持たれることが
ないよう消防協会のこうした性質をこれまで以上に説明することや、さらには同協会が平
成 18 年度からNPO法人となったことに伴い収支内容等の情報がすでに公開されているこ
となどを積極的に周知していくことが必要ではないであろうか。
他の自治体からも注目されているシステムということであり、今後もその普及を目指す
というのであれば、行政サービスの在り方や契約方法について常に検証するとともに、こ
れまで以上に説明責任を果たされるよう希望する。
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(5)大成市民センター体育館管理運営業務
業務等の内容
大成市民センター体育館管理運営業務
委託金額
11,830,350 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
昭和 57 年
委託相手先
株式会社旭川振興公社
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないためであり(地方自治法施行令第 167 条の 2
第1項第 2 号)、一者とした理由は過去の実績があるためである。
再委託の有無
無し
本業務委託では、過去の実績があることや、高い信頼性と公共性が求められる業務であ
るということを理由として、㈱旭川振興公社への一者随意契約を採用している。しかし、
公共施設の管理運営にとって信頼性や公共性が求められるのは当然のことであり、過去の
実績にとらわれていてはいつまでたっても前例主義から抜け出すことができないため、一
者随意契約の理由としては消極的であると考えられる。本来は他の民間業者の信頼性が低
く、公共性がないことを理由付けて初めて同公社を唯一の候補として一者随意契約にする
理由となるはずである。
他部局の案件でも記載しているように、㈱旭川振興公社は市が 70%を出資するいわゆる第
三セクターであり、役員の半数以上は旭川市役所の各部局の現職部長クラスが名を連ね、
代表者の一人は旭川市の元助役である。同公社のこうした成り立ちや人員構成が公共施設
を管理させる業者として必要な公共性や信頼性があるということの根拠になっているよう
に思われる。しかし、一方でこのような法人の性質によって逆に公平性が損なわれている
可能性があることや、市民からそうした疑いを持たれる可能性があることは否定できない。
本業務委託に限らず、特に一者随意契約において委託相手先として第三セクターを選ぶ場
合には、それが本当に妥当なのかどうか、今一度見直す必要があるのではないであろうか。
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(6)歩くスキーコース整備及び貸出スキー業務
業務等の内容
歩くスキーコースの整備とスキーの貸し出しを行う業務
委託金額
2,909,500 円
委託の履行期間
平成 17 年 11 月 21 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 7 年
委託相手先
財団法人旭川市公園緑地協会
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないためであり(地方自治法施行令第 167 条の 2
第1項第 2 号)、一者としたのは条例で相手が特定されているためである。
再委託の有無
無し
当該業務は公園管理の一環として行われるものであり、条例により公園の管理は特定の
財団法人(すなわち財団法人旭川市公園緑地協会)でなければならないとなっているもの
のである。しかし、市の財政を健全化しようという意識が徹底しているのであれば、この
ような業務委託については条例自体を見直し、市が直接臨時職員を雇って行うような発想
があってもいいのではないであろうか。市職員の一人一人が組織や制度、前例を隠れ蓑に
することなく、常に批判的意識をもって業務を遂行されることを期待する。
なお、本業務委託のように委託料が専ら人件費から構成されている場合、実際の契約額
と積算価格がほぼ同額であるとすれば、市が直接臨時職員を雇用し直営で事業を行うこと
によって、少なくとも消費税に相当する支出金額の 5%程度は削減できるはずである。
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(7)近文神居古譚自転車歩行者専用道路他維持管理業務
業務等の内容
近文神居古譚自転車歩行者専用道路の整備維持管理業務
委託金額
5,250,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 8 年
委託相手先
株式会社旭川振興公社
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないためであり(地方自治法施行令第 167 条の 2
第1項第 2 号)、一者とした理由は、過去の実績があるためである。
再委託の有無
無し
当該業務は一者随意契約であり、その理由として「本業務は、起伏や急カーブ、隧道、
橋梁箇所も多く、細部に渡り巡視・巡回が求められ、急斜面やがけ付近の通行に支障とな
る枝払い等、高所作業が含まれることから、
(中略)従前から本路線を熟知、状況に精通し、
かつ業務の円滑な履行実績のある当該業者(すなわち㈱旭川振興公社)が適当である。」と
している。これに加えて担当者の説明によれば、昭和 40 年代に供用を開始した古い施設で
延長が 17km あり、パトロールにあたっても急傾斜地の状況やトンネルの状況、橋梁の状況
など経年的な状況変化にも細心の注意が必要であることから、現場の状況に熟知している
ことを特に重視しているということであった。しかし、このような理由では受託者がなに
かミスをしない限り半永久的に同じ業者が受託し続けることになってしまい、受託者を見
直すという意識がなくなってしまうのではないかと危惧される。更に、「本業務について、
公益的安全管理に理解を示し、低廉な価格で契約できる見込みがある。」とし、歩掛(北海
道の基準にもとづき計算した積算額)と比較して 193 万円程度安価になることも同公社を
選ぶ理由としている。しかし、本当に低廉な価格かどうかは、同業務を実施できる他の業
者の見積りと比較してこそ意味があると思われる。したがって、この理由も同公社を一者
随意契約の相手先として選定する理由にはなりえないと思われる。結果的に、一者のみを
選定する理由は前段にある理由の他は挙げられていないものの、本業務委託では少なくと
83
も複数の業者から見積りをとるべきであり、当該業者を委託先とする一者随意契約には問
題があると考える。また、今後についても、受託者に求められる条件を満たしつつ競争入
札を実施できないか検討すべきであると考える。
(8)平成 17 年度家庭ごみ収集運搬業務
業務等の内容
家庭から排出されるごみの収集運搬
委託金額
574,949,049 円(委託業者 9 者の合計)
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
業者によって異なるものの、昭和 57 年~昭和 60 年の間にほとんどの業者が受託開始
委託相手先
協業組合旭川浄化、江丹別産業開発㈱、旭栄清掃㈱、旭川輸送事業協同組合、旭東清
掃㈱、丸忠北都清掃㈱、旭星クリーン㈱、㈱旭川清掃社、㈱旭川一般廃棄物処理社
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項
第 2 号)。
見積合せによらず一者随意契約としたのは、過去に設備等を設置したことに加え、収
集地区の状況に精通しているため。
再委託の有無
無し
本業務委託では、過去に設備等(ごみ収集車両)を設置しているという理由で各業者と
一者随意契約を締結している。パッカー車などのごみ収集車両は高価であり、これを購入
する際には多額の投資が必要になるためこうした理由が理解できなくはないものの、業者
側にも契約できて当然という感覚が生じる可能性があることは否定できない。したがって、
本業務委託のような案件では、本来は複数年契約による競争入札の実施も検討すべきとこ
ろではある。しかし、一般廃棄物処理業務では廃棄物処理法施行令第 4 条第 5 号において
「委託料が受託業務を遂行するに足りる額であること。」として競争原理が強く働くことに
よって業務に支障が出ることをけん制している。このような場合、通常の業務委託では最
84
低制限価格を設定して過度な競争が行われないようにすることが可能であるものの(地方
自治法第 234 条第 3 項、地方自治法施行令第 167 条の 10 第 2 項、第 167 条の 13)、一般廃
棄物処理業務の業務委託は公法上の契約であり、私法上の契約を対象としているこれらの
法令が適用されない結果、競争入札を実施する場合には最低制限価格を設定できないとい
う解釈に基づいて随意契約を採用しているとのことであった。現在のところ市のこうした
解釈には問題ないと思われるため、今後この解釈が変わることがあれば競争入札の導入と
最低制限価格の設定を検討するとともに、現在においても法の趣旨を逸脱しない範囲で適
正な競争原理が働くよう何らかの方策を検討してほしい。
なお、本業務委託では委託業者の会社概要等に関する資料はあるものの、決算書を入手
していなかった。
「旭川市契約事務取扱規則」やその他の規則で求められてはいないものの、
委託業務を確実に履行できるかどうかを判断するためには業者の審査は必須であり、決算
書など会社の財務内容に関する資料を入手するのは当然である。過去の実績があるのは理
解できるものの、企業は日々変化するものであるし、このような姿勢は契約の硬直化に結
びつく可能性もある。業務の履行能力に欠ける業者と契約することがないよう、委託業者
に関する決算書も入手しておくべきである。
85
(9)高校新卒者就職支援業務・若年者就職支援業務
業務等の内容
厳しい就職状況にある高校新卒者及び若年者の就職を促進するために、就職セミナー
の開催や個別相談、企業見学を行うことで、若年者の就職活動を支援する。
委託金額
平成 16 年度 : 4,021,500 円(高校新卒者就職支援業務)
平成 17 年度 : 3,929,100 円(若年者就職支援業務)
委託の履行期間
平成 16 年度 : 平成 16 年 7 月 14 日から平成 16 年 11 月 12 日
平成 17 年度 : 平成 17 年 6 月 24 日から平成 17 年 11 月 24 日
委託の始期
平成 16 年
委託相手先
キャリアバンク株式会社
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項
第 2 号)。
見積合せによらず一者随意契約としたのは、業務を履行できる業者が一者のみのため。
再委託の有無
無し
本業務委託の具体的内容は、アンケート調査、専任講師による研修会、就職アドバイザ
ーによる個別相談が主なものである。市の説明によれば、当該業務を行うノウハウが市に
無かったため、ノウハウ蓄積の意味も含めて専門家へ委託したとの事である。しかし、よ
ほどの専門分野は別として、当事者意識をもって事業を推進するためには多少の試行錯誤
があっても自分たちで企画することは重要であるし、それが行政に求められる姿勢ではな
いだろうか。
平成 16 年度と平成 17 年度でノウハウが得られたという事情もあるとはいえ、
実際、平成 18 年度からは直営で行っており、当初は講師とアドバイザーのみを外部に依頼
すれば充分でなかったかという疑問は持たざるを得ない。講師とアドバイザーのみの依頼
であれば、平成 16 年度は講師料の 20 万円と就職アドバイザー料 60 万円の合計 80 万円、
平成 17 年度は講師料 40 万円と就職アドバイザー料 60 万円の合計 100 万円程度で済んだは
ずである。
また、講師とアドバイザー以外の人件費の積算において、平成 16 年度は事業統括者が 1
86
日当たり 3 万円で月 10 日間、事務補助者が 1 日当たり 1 万円で月 20 日間の合計 200 万円
(委託期間 4 か月間)と積算しており、平成 17 年度は事業統括者が 1 日当たり 2 万 5 千円
で月 10 日間、事務補助者が 1 日当たり 1 万円で月 15 日間の合計 200 万円(委託期間 5 か
月間)と積算している。単価は特に問題ないと思われるものの、仕様書が業務委託の行程・
業務量を把握できるよう詳細に作成されていなかったため、事業統括者及び事務補助者の
積算日数の妥当性を検証できなかった。詳細な仕様書の作成が難しいのであれば、業者か
ら内訳付きの見積書を取ってその内容を検討してみるなど、安易に業者の見積金額に合わ
せない努力が必要であろう。
なお、平成 16 年度に実施した参加者からのアンケートによれば内容についてはおおむね
好評であったものの、以下の表にあるように予定した参加人数よりも実際の参加人数が少
なかった。学校への事業説明は丁寧にしたとのことであるものの、教育関係部局との連携
を図ることや学校を通してPTAに対して働きかけることなどによって参加者の呼びかけ
にもっと力を入れるべきではなかったであろうか。平成 16 年度の実績についての事後評価
が適正に行われていれば、平成 17 年度の積算をより厳密に行えたのではないかという疑問
や、本事業の直営化を平成 17 年度へ前倒しできなかったかという疑問は残る。今後同様の
案件があれば、経済性や効率性の検討を十分に行うよう望みたい。
(単位:人)
年度
平成 16 年
平成 17 年
予定
実績
予定
実績
セミナー
200
114
200
64
個別相談
200
57
100
54
企業見学
―
―
40
24
(注)企業見学は平成 17 年度のみ実施
87
(10)工業技術センター電気保安業務
業務等の内容
変圧器の劣化診断などの電気保安業務
委託金額
248,892 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成元年
委託相手先
財団法人北海道電気保安協会
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは委託料が定められた額を超えないためであり(地方自治法施行令
第 167 条の 2 第1項第 1 号)、一者としたのは法令・条例・規則等で相手が特定される
ためである。
再委託の有無
無し
本業務委託は変圧器の劣化診断などを行う電気保安業務の委託であり、「法令・条例・規
則等で相手が特定される」という理由で財団法人北海道電気保安協会への一者随意契約と
されている。しかし、財団法人電気保安協会の独占業務であった電気保安業務は、規制緩
和により平成 16 年 1 月から一定の資格者を有する民間企業も参入できるようになった。し
たがって、一者随意契約の理由としている「法令・条例・規則等で相手が特定される」と
いうのは当然過去の話であり、現在は誤った認識である。現に、本業務を行える市の指名
登録業者としても 5 者が登録されており(ただし、本業務委託において要件を満たすのは 3
者)、少なくとも複数業者からの見積書を徴収するべきである。
88
(11)旭山動物園汚水処理施設維持管理業務
業務等の内容
動物舎内の清掃等により排出される汚水を処理する浄化槽の保守管理、水質管理、清
掃及び消毒液の補給等を行う。
委託金額
2,551,500 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 12 年以前(平成 12 年以前は確認できなかった)
委託相手先
新日章株式会社
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないためであり(地方自治法施行令第 167 条の 2
第1項第 2 号)、一者とした理由は、業者が 1 者のみであるため。
再委託の有無
無し
本業務委託は動物舎内の清掃等により排出される汚水を処理する浄化槽の保守管理、水
質管理、清掃及び消毒液の補給等を行う業務であり、仕様書によれば、水質検査について
は年 4 回実施することになっている。しかし、水質検査の報告書がなかったため担当者に
確認したところ、平成 10 年度から平成 15 年度まで水質検査をまったく実施していなかっ
た。ただし、平成 16 年度は 1 回実施し、平成 17 年度は 4 回実施している。
仕様書どおりに水質検査を実施しない業者に問題があることは言うまでもないが、平成
10 年度から平成 15 年度までの 6 年間、問題を発見し業者への指導を適切に行えなかった点
では市にも問題があった。業者からは未履行の水質検査代金 529,000 円を返還させ、さら
に平成 18 年 2 月 24 日から平成 18 年 3 月 9 日までの間当該業者を指名停止とし、市の担当
職員も処分したとのことであるものの、もしも環境汚染や人体への健康被害などがあった
とすれば大問題である。本業務委託に限ったことではないが、委託業務の履行状況を確認
する作業を軽視せず、厳格におこなう必要がある。
なお、本業務委託では、平成 18 年度において水質検査業務のみを切り離して別の業者へ
委託することとしたものの、水質検査業務以外の業務については引き続き当該業者に委託
している。当該業務を行える業者が市内に 1 者しかいないためやむを得なかった点は認め
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るし、指名停止を含め業者の処分自体も手続きに則って行われたものであり、この点につ
いて問題があったとも考えていない。ただ、このようなケースでは相手先を市内の業者に
限定せず、本業務を行える業者を公募するなどして競争入札を実施することができないか
どうか今後検討すべきであると考える。
(12)市営牧場管理業務
業務等の内容
市営牧場における草地管理、放牧管理、雑用水管理、牧場用車両・機械施設等管理
委託金額
15,960,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 27 日から平成 18 年 3 月 15 日
委託の始期
昭和 61 年
委託相手先
江丹別産業開発株式会社
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないためであり(地方自治法施行令第 167 条の 2
第 1 項第 2 号)、一者とした理由は、他の者に受託能力がないため。
再委託の有無
無し
本業務委託は市営牧場における草地管理、放牧管理、雑用水管理、牧場用車両・機械施
設等管理を行うものであり、当該業務を行える業者が他に存在しないという理由で昭和 61
年度から現在の相手先への一者随意契約が続いている。
当該業務を行う業者は放牧牛の個体管理(発情・疾病発見など)に精通していることが
必要であり、また、市営牧場が旭川市中心部からはかなり郊外にあるため、夜間対応、冬
期間の施設管理(雪下ろし)などを行うためには市営牧場の近くに本社等がある業者が望
ましいという点も理解はできる。しかし、本当に当該業務を行える業者が他に存在しない
のかどうか、市内の業者に限定せず業者を公募することも検討する必要があるのではない
であろうか。
90
(13)旭川市畜産指導業務
業務等の内容
家畜の保健衛生・改良・増殖指導業務を、農家の庭先及び市営牧場内で行う。
委託金額
1,745,100 円
委託の履行期間
平成 17 年 6 月 1 日から平成 18 年 3 月 10 日
委託の始期
昭和 45 年
委託相手先
上川中央農業共済組合
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないためであり(地方自治法施行令第 167 条の 2
第 1 項第 2 号)、一者とした理由は、受託可能な業者が一者のみであるため。
再委託の有無
無し
本業務委託は家畜の保健衛生・改良・増殖指導業務を、農家の庭先及び市営牧場内で行
うものであり、当該業務を行える業者が他に存在しないという理由で昭和 45 年度から上川
中央農業共済組合への一者随意契約が続いている。
しかし、当該業務の中心となるのは「指導」という業務であり、実際の現場では農業共
済組合が本業務委託とは別に独自で行う業務に付随して、委託対象となっている「指導」
業務も行っている可能性は否定できない。農業共済組合が本来行う業務と市が委託する業
務とは基本的に重複するものではないため、このような結果は市が意図したものではない。
しかし、結果としてそのようになっている場合には、本業務委託における委託料は実質的
には農業共済組合に対する補助金に近いと思われる。市が意図した結果でないとはいえ、
実態が補助事業に近いということであれば正当な手続きを経て補助事業として行うべきで
ある。
畜産振興を支援する事業の重要性は認めるものの、本業務委託については、そもそも事
業を継続すべきかどうか、継続するのであれば委託として行うのか、それとも上川中央農
業共済組合への補助事業として行うのかをまずは検討すべきである。その検討を行った上
で委託として継続するというのであれば、委託業務の内容をより具体的なものとして市が
その成果物を検証できる形に見直すことを検討すべきである。
91
(14)路上違反広告物除却業務
業務等の内容
市内全域の違反広告物見回り、違反広告物の撤去、保管及び処分、広告主への指導を
行う。
委託金額
3,538,500 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 27 日から平成 18 年 3 月 27 日
委託の始期
平成 13 年
委託相手先
株式会社旭川振興公社
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項
第 2 号)。
見積合せによらず一者随意契約としたのは、他の者に受託能力がないため。
再委託の有無
無し
本業務委託では、㈱旭川振興公社と一者随意契約をする理由のひとつとして公的な業務
であるという点をあげていたものの、市が発注する業務はすべて公的なものであり、これ
を理由とする一者随意契約は妥当とは思われない。また別の理由として、違反者との利害
関係がなく中立的立場であることや、屋外広告物講習修了者の設置などを理由にあげてい
たものの、これも㈱旭川振興公社のみが満たす条件とは思えない。真に中立、公平な立場
が強く要請されるなら、直営にすべきであろう。たとえば見回りと指導については責任者
として市の職員がつき、撤去作業等のみを随行する委託業者に担当してもらうなどの方法
も市の人員体制の見直しと合わせて今後検討すべきではないであろうか。そのような形態
であれば、屋外広告物講習修了者の設置を委託業者の条件とする必要もない。また、撤去
した広告物については、要請されればこれを速やかに返還しなければならないため、それ
までの保管場所が確保できることも業者選定の重要な要件としているとのことである。し
かし、一者随意契約とすることでこの要件を満たす業者が他にも存在する可能性を最初か
ら排除するのは妥当ではない。本業務委託では、契約方法の見直しを検討すべきであると
考える。
92
なお、平成 15 年度には 1 万件以上あった違反広告物の撤去・処分の処理件数が、平成 16
年度には約 5 千件、平成 17 年度には約 3 千件となっているにもかかわらず、平成 15 年度
の委託料は 395 万円、平成 16 年度の委託料は 396 万円、平成 17 年度は 353 万円と、処理
件数に比べるとそれほど委託料は下がっていない。違反広告物の撤去・処分の処理件数が
減っているのは当該事業の効果と考えられるものの、委託料が下がらない主な理由として、
週 2 回の定期巡回が必要であることがあげられていた。処理件数が減っても現在の定期巡
回が必要かどうかを今後検討し、可能であれば定期巡回の回数を見直すことによって積算
価格を見直す必要がある。また、現在は市への報告対象となっていない「指導」業務につ
いても報告の対象とする必要がないかどうか検討すべきである。
93
3.指名競争入札の形骸化
指名競争入札は、一般競争入札に比べると入札参加への機会均等や競争性が制限される
ものの、随意契約よりは機会均等で競争性が確保されるという利点があり、また比較的適
正な相手方を選定できるという利点も持つ契約方法である。したがって、指名競争入札が
適正に機能していれば、市が求める業務の品質を満たしつつ、年度によって異なる業者が
予定価格からはある程度乖離した価格で落札するという状態が予想されるはずである。し
かし、指名競争入札にはこのような利点がある一方で、違法な受注調整が行われやすいと
か、指名が偏ることがある、談合の危険性が高いといった欠点もある。実際、監査人が検
証した範囲でも、同一の業者が長期間に渡って予定価格に極めて近い価格(案件によって
は、業者が知るはずのない予定価格とまったく同一の金額)で落札している案件が多数見
られた。この点については、予定価格が市場価格を適切に反映したものであれば、予定価
格と落札価格が近似していることが直ちに問題とはならないという意見もある。しかし、
予定価格が市場価格を適切に反映していることはどのように検証すればよいのであろうか。
むしろ、委託料の積算について本報告書において指摘している内容や、随意契約から競争
入札に変わることで委託料が低下した例や、さらに、それまで入札に参加していなかった
業者が入札に参加することによって落札率が低下した例を見ると、必ずしも予定価格が市
場価格を適切に反映しているとは言い切れないと思われる。したがって、少なくとも同一
業者が長期間に渡って予定価格に極めて近い価格で落札している案件については、指名競
争入札制度本来の目的を達成しているとは言い難いという意味で、指名競争入札が形骸化
していると見るのが自然ではないであろうか。
指名競争入札が形骸化しているのにはさまざまな原因が考えられるものの、そのひとつ
に指名業者の選定方法に問題があるという点をあげることができるであろう。
指名競争入札における指名業者の選定については、まず地方自治法施行令 167 条の 11 が
指名競争入札への参加者の資格を定めなければならないとし、同 167 条の 12 で当該入札に
参加することができる資格を有する者のうちから、当該入札に参加させようとする者を指
名しなければならないとしている。したがって指名競争入札においては入札への参加資格
を有する者の中から指名業者を選定することになり、その選定方法については旭川市の「委
託契約に関する事務の手引」の「5
事務処理」の「(4)委託先の選定」に定められてい
る。これによれば、
「業者の選定に当たっては、公平、公正な業者の参加機会の確保のため、
支出予定金額が 200 万円未満のものや、別に業者選定について定めあるものを除き、部内
に「業務委託被指名者等選考委員会」を設置し、委員会の協議を経て決定すること。」とさ
れ、さらに選定する業者の数についても本報告書ですでに記載したように、支出予定金額
に応じて次のように定められている。
94
支出予定金額
選定数
200 万円未満
3 者以上
200 万円以上 500 万円未満
4 者以上
500 万円以上
5 者以上
なお、清掃業務については、できる限り多くの業者の選定を考慮すること
監査人が検証した範囲では、200 万円以上の業務委託については上記の手引に従いすべて
業務委託被指名者等選考委員会(以下、「委員会」と記載する。)が設置され、その協議に
おいて指名業者が選定されていた。しかし、
「できる限り多くの業者の選定を考慮すること」
とされている清掃業務の委託を除き、200 万円以上 500 万円未満の委託業務における指名業
者の数は 4 者、500 万円以上の委託業務における指名業者の数は 5 者というように、参加資
格を有する業者の数にかかわらず上表に定める最低の選定数を指名業者としている案件が
多かった。さらに委員会の協議資料である調書を見る限り、参加資格を有する業者の中か
らなぜそれらの業者が指名されるにいたったかという指名業者選定の理由が不明確なもの
がほとんどであった。確かに、指名業者の数を増やせばそれだけ手間がかかることになる
ため、費用対効果ということを考えれば参加資格を有する業者をすべて指名業者とするこ
とが常に妥当とは限らない。しかし、具体的な指名基準を設けないまま指名業者の選定を
一任すると、指名競争入札の欠点としても指摘されているように、指名業者が偏る結果競
争の範囲が狭くなり、指名業者間で談合が発生し委託金額が高止まりする可能性を否定で
きない。具体的な指名基準を設けない限り指名業者の選定を個人に一任する場合はもちろ
ん、委員会等に一任する場合であってもこの危険性を排除することは困難である。さらに
言えば、指名基準を設けた上でこれに従って指名業者を選定したとしても業者が偏る可能
性はある。したがって、指名の基準についてはこれを明確に定めておくとともに事前・事
後評価によって基準自体の見直しを常に行い、可能であれば参加資格を有する業者をすべ
て指名し、それができない場合あるいは効率的でない場合には指名業者選定過程をその選
定基準とともに明確に記録しておくべきである。
なお、ほとんどの部局が具体的な指名の基準を明文化していない中で、保健福祉部にお
いては指名の基準を明文で定めている案件があったので参考までにこれを記載する。この
基準により上述した指名競争入札の欠点を排除できるかどうかは検討の余地があると思わ
れるので、これをたたき台として今後の基準作成に生かしてほしい。
95
<指名業者として 4 者を選定していた案件>
第 1 順位
現契約業者であること(対象外であるときは、前回入札第 2 位)
第 2 順位
前回入札第 2 位であること(第 1 順位が前回入札第 2 位であるときは、前回
入札第 3 位)
第 3 順位 入札参加資格者一覧表登載 No.順
ただし第 1 又は第 2 順位で他の入札参加として複数回指名しているときは次
の No.
第 4 順位
第 3 順位の次の入札参加資格者一覧表登載 No.
なお、指名競争入札が形骸化していると思われる案件としては、以下のようなものがあ
った。
(1)下水処理センター運転管理ほか業務
業務等の内容
下水処理センター及び下水終末処理場における運転管理業務
委託金額
683,550,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
昭和 56 年
委託相手先
株式会社テクノス北海道(※)
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札が不利であるため(地方自治法施行令第 167 条第 3 号)。
再委託の有無
有り
(※)平成 13 年度までの社名は「株式会社道北エンジニアリング」
96
平成 13 年度旭川市包括外部監査の報告書に記載されていた、委託が開始された昭和 56
年度から平成 12 年度までの同社への委託金額と契約方法を示せば次のとおりである。
年度
金額(千円)
契約方法
年度
金額(千円)
契約方法
昭和 56 年
177,129
指名競争
平成 3 年
269,851
指名競争
57 年
164,300
〃
4年
303,452
〃
58 年
162,397
〃
5年
314,595
〃
59 年
176,637
随意契約
6年
338,096
〃
60 年
188,072
〃
7年
347,444
〃
61 年
201,155
〃
8年
432,600
〃
62 年
210,010
〃
9年
485,100
〃
63 年
218,818
〃
10 年
515,550
〃
平成元年
230,049
指名競争
11 年
521,850
〃
2年
258,469
〃
12 年
533,400
〃
また、直近 5 年間の指名競争入札の状況を示せば次のとおりであり、いずれも(株)テ
クノス北海道が落札している。
(単位:千円)
年
度
平成 13 年
平成 14 年
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
572,250
567,000
593,250
670,950
683,550
㈱テクノス北海道
572,250(1)
567,000(1)
593,250(1)
670,950(1)
683,550(1)
A社
593,250(2)
590,100(5)
609,000(6)
695,100(5)
700,350(5)
B社
598,500(4)
585,900(4)
600,600(3)
674,100(2)
693,000(2)
C社
―
594,300(8)
605,850(5)
687,750(4)
695,100(3)
D社
―
592,200(7)
619,500(8)
702,450(6)
697,200(4)
E社
600,600(5)
577,500(2)
603,750(4)
680,400(3)
―
F社
603,750(6)
591,150(6)
614,250(7)
―
―
G社
596,400(3)
580,650(3)
598,500(2)
―
―
H社
―
598,500(9)
―
―
―
支出金額
入
札
価
格
(注)入札価格欄のカッコ内の数字は入札の順位
(株)テクノス北海道は旭川市に本社を置き、下水処理施設の運転維持管理業務を受託
する会社で、旭川市とその近隣他市町村を主な取引先としている。また同社の平成 17 年 3
月期の決算書によれば(入手できた最新の決算書)、売上の約半分が旭川市からの委託料で
97
ある。さらに同社は昭和 56 年 2 月に設立されているため、上表によれば設立と同時に旭川
市からの委託を受け、現在に至るまで 25 年以上継続して委託を受けていることになる。こ
の間、委託対象業務の増加に伴い委託料も増加している。
同社への委託は昭和 59 年から昭和 63 年までの 5 年間だけが随意契約となっているもの
の、あとはすべて指名競争入札である。そこで、これだけの長期間同社が受託し続けてい
る状況について水道局に質問したところ、資料が残っていない年度については不明である
ものの、それ以後の年度については指名競争入札の手続が適正に行われた結果であるとい
う回答であった。しかし、一般に指名競争入札が適正に機能した状態で、25 年以上に渡っ
て同一の業者が落札し続けることが可能なのであろうか。また、本業務委託は委託金額が 5
千万円以上であることから、「旭川市水道局建設工事等指名基準」によって指名業者の数が
10 者以上とされているところ、平成 17 年度において次のような指名業者選定基準に該当す
るのが(株)テクノス北海道と、上表のA社、B社、C社、D社の計 5 者のみであるとし
ている。
「指名競争入札における基準業者数の不足理由」に記載されていた指名業者の選定要件
①平成 17・18 年度旭川市・旭川市水道局物品購入等の競争入札参加者名簿に登録され
ている。
②北海道開発局において、下水処理場施設維持管理業者登録規程(昭和 62 年 7 月 9 日
建設省告示 1348 号)による登録がされていること。
③本店、支店または営業所が道内にあること。
④受託業務を円滑にできる体制にあること。
平成 13 年度から平成 16 年度までの間に指名業者とされ入札に参加していたE社、F社、
G社、H社が、平成 17 年度においてなぜ指名業者とされなかったのかについて質問したと
ころ、いずれも入札に参加していない年度において上記の要件に合致していなかったため
という回答であった。いずれにしても、この 5 年間でも予定価格は毎年増加しているにも
係らず、落札するのは常に(株)テクノス北海道であり、落札率はいずれの年度も 95%を超
えている。なお、(株)テクノス北海道には監査人が確認できた限り、市のOBが平成 10
年 4 月 1 日から技術顧問として雇用され、このOBはその後平成 13 年 4 月 1 日に専務取締
役となり、さらに就任時期は確認できなかったものの、平成 18 年 5 月 31 日に退職するま
で代表取締役副社長として就任していた。
このような状況であるにもかかわらず、指名競争入札の手続が適正に行われているから
問題ないと考えて本当にいいのであろうか。本業務委託については平成 20 年度から総合評
価一般競争入札を実施する予定とのことであるものの、市民から疑いを持たれることがな
98
いよう、後述するような指名競争入札が適正に機能するための仕組みづくりを早急に検討
する必要があると考える。
なお、(株)テクノス北海道については、これ以外にも 10 年近くに渡って指名競争入札
で落札し続けている案件が他部局においてあった。
(2)旭川市総合庁舎清掃業務委託
業務等の内容
旭川市総合庁舎清掃業務委託
委託金額
23,625,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
不明
委託相手先
北海美掃株式会社
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第1号)。
再委託の有無
無し
平成 17 年度市有施設清掃業務等指名競争入札参加資格者のうち、入札区分A等級に該当
する 25 者の中から 7 者を指名して競争入札を行った。当該 7 者を指名した基準は明文化さ
れていないものの、選考委員会では、①前年度の落札業者、②前年度の入札参加業者の中
から 3 者、③過去 3 年間入札に参加していない業者の中から 3 者を指名したということで
ある。ただし、前年度の入札業者から 3 者を選択する基準、過去 3 年間入札に参加してい
ない業者から 3 者を選択する基準はないとのことである。
過去 3 年間の指名競争入札の状況を示すと次ページのとおりである。
99
(単位:千円)
年
度
平成 15 年
第1回目
第 2 回目
北海美掃㈱
37,800
36,225
A社
39,102
37,905
B社
38,724
36,855
C社
38,556
37,086
D社
38,934
E社
F社
平成 16 年
平成 17 年
◎
◎
15,806
23,625
24,832
24,675
37,369
25,620
24,654
39,217
37,377
24,150
39,459
37,170
G社
24,885
H社
27,405
I社
24,654
J社
25,126
K社
25,376
L社
25,830
M社
26,250
25,200
N社
24,832
O社
24,885
P社
25,725
(注)◎は落札価格、平成 15 年度は不落札のため、随意契約であった。
確かに、指名競争入札参加業者の顔ぶれの一部は毎年異なっており、指名競争入札の参
加者を固定化させない努力の跡は窺える。
また、過去 3 年間の契約額の推移を示すと次のとおりである。
(単位:円)
年 度
落札額
落札業者
入札参加業者数
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
23,705,640
15,806,700
23,625,000
北海美掃(株) 北海美掃(株) 北海美掃(株)
7
11
7
(注)平成 15 年度は不落札のため、随意契約である。
平成 15 年度は 2 回の入札でも予定価格を下回る業者がいなかったため随意契約となり、
平成 14 年度より委託業務量が減少したにもかかわらず、契約額自体は平成 14 年度より高
100
くなった。また、平成 15 年度以後委託業務量は変わっておらず、予定価格もほぼ同額であ
るにもかかわらず、平成 16 年度の契約額が大幅に低くなっている。平成 16 年度の契約額
1,580 万円は、市が設けている最低制限価格 1,578 万円をわずかに上回る額であった。
なお、
この契約額は平成 15 年度の最低制限価格と同額である。
同じ業務委託で落札業者が同じであり、予定価格も平成 15 年度からほとんど変わってい
ないにもかかわらず、平成 16 年度の落札率は 70%を下回り、平成 17 年度は 95%を超えると
いうのは不自然ではないであろうか。平成 17 年度までは、指名競争入札の数日前に指名業
者に対する説明会が開催されていたため、指名業者が事前に他の指名競争入札参加者を知
りえたという点にも重大な問題がある。なお、平成 18 年度は事前説明会の必要がないとい
う判断で同説明会は開催されなかったものの、前年度までと同様、北海美掃㈱が 100%に近
い落札率で落札した。
指名業者を固定化させない努力の跡は窺えるものの、現在の指名競争入札では十分な競
争原理が働いているとは言い難い。今後は公募型指名競争入札あるいは一般競争入札の導
入を検討すべきであろう。
(3)第二庁舎清掃業務
業務等の内容
旭川市第二庁舎事務棟清掃業務委託
委託金額
13,860,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
昭和 57 年
委託相手先
環境衛生工業株式会社
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第1号)。
再委託の有無
無し
101
平成 17 年度市有施設清掃業務等指名競争入札参加資格者のうち、入札区分A等級に該当
する 25 者の中から 7 者を指名して競争入札を行った。当該業務においても、指名業者が固
定化しないような配慮がなされており、平成 17 年度の指名業者 7 者のうち 5 者は前年度に
おいて指名されていない業者であった。
過去 3 年間の指名競争入札の状況を示すと次のとおりである。
(単位:千円)
年 度
環境衛生工業㈱
平成 15 年
平成 16 年
◎ 10,243
◎ 14,112
平成 17 年
◎ 13,860
A社
14,490
B社
14,351
C社
14,805
D社
14,490
E社
14,679
16,590
F社
G社
8,925
H社
10,755
15,540
I社
13,125
16,065
J社
16,132
18,144
K社
19,429
15,225
L社
20,475
M社
15,960
N社
17,010
O社
15,361
14,868
(注)◎は落札価格
平成 15 年度においては、G社が最も低い金額で入札したものの、最低制限価格以下であ
ったことから失格となり、翌年以後同社は指名されていない。一方、平成 15 年度において
予定価格を上回る入札額だったJ社及びK社は平成 16 年度も引続き指名されている。平成
15 年度以後の 3 年間で毎年指名競争入札に参加している業者は、3 年間落札している環境
衛生工業㈱だけである。
こうした指名状況は意図的でないとは言え、平成 15 年度を除き落札率が 90%を超える率
で高止まりしている状況をみると、何らかの方法で競争原理を働かせる余地があると言え
るのではないであろうか。本業務委託も競争を促進するためには公募型の指名競争入札あ
るいは一般競争入札に移行すべきである。
102
(4)第三庁舎清掃業務
業務等の内容
旭川市第三庁舎清掃業務委託
委託金額
9,447,900 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 12 年
委託相手先
有限会社ビルテクノ
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第1号)。
再委託の有無
無し
平成 17 年度市有施設清掃業務等指名競争入札参加資格者のうち、入札区分A等級に該当
する 25 者の中から 7 者を指名して競争入札を行った。当該 7 者のうち 6 者は前年度には指
名されていない業者であった。
過去 4 年間の契約状況等を示すと次のとおりである。
(単位:円)
年 度
平成 14 年
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
落札額
13,456,800
12,096,000
9,450,000
9,447,900
落札業者
(株)半田美装
(有)エスエスクリーン
北海美掃(株)
(有)ビルテクノ
7
6
10
7
入札参加業者数
総務部所管のA等級業者対象の清掃業務は 4 つあり(※)
、平成 15 年度までは同一業者
の指名競争入札参加は1業務のみで、複数業務に指名される業者は存在しなかったところ、
平成 16 年度は、旭川市内に本社を置く地元業者に入札機会を増やす方針が採用され、地元
業者には 2 業務への入札機会が与えられた。この結果、平成 16 年度の本業務委託では入札
参加業者が前年度より 4 者増え 10 者となった。なお、総務部が所管する全ての清掃業務委
託において、同様に入札参加業者が前年度よりも増えている。
103
こうしたことから、従来は総合庁舎の入札にのみ参加していた北海美装㈱が第三庁舎の
清掃業務の入札にも参加することになったものの、参加したいずれの清掃業務も同社が落
札することとなった。すなわち、各者に入札機会を増やしたことによって、結果的には 1
者に落札が集中するかたちとなってしまったため、平成 17 年度は再び各者の入札参加が 1
業務のみというかたちに戻され、平成 17 年度の入札参加業者は 7 者となった。
各者に指名機会を増やすことによって、このように落札業者が特定の業者に偏ることは
ありうるものの、優先されるべきは透明性の高い公平な入札参加機会の確保であろう。公
募型指名競争入札や一般競争入札制度によっても落札業者が偏る可能性はあると思われる
ものの、より透明性の高い公平な入札こそが必要と思われる。
落札率に関しては、総合庁舎、第二庁舎と違い、平成 15 年度を除けば、毎年 60%台の水
準で推移しており、落札業者も毎年異なっている。平成 16 年度は最低制限価格を下回る入
札を行った業者が 2 者あり、競争はやや過熱気味とも言える。
(※)総務部が所管する清掃業務委託では、A級業者のみを指名しなければならない施設
が 3 箇所、A級とB級を混ぜて指名する施設 1 箇所、B級業者のみの施設が 3 箇所の
計 7 箇所がある。
本業務委託のように競争原理が働いていると思われる入札がある一方で、同じ清掃業務
の委託でも落札率が高止まりしている入札が存在するのはなぜであろうか。
平成 16 年度または平成 17 年度に第三庁舎の入札に参加した業者が、当該 2 年間で、総
務部の他の主要な清掃業務委託である総合庁舎、第二庁舎の指名競争入札に参加した際の
入札率(入札額÷予定価格)の状況を示すと次のとおりである。
(単位:%)
年
度
平成 16 年
総合庁舎
第二庁舎
平成 17 年
第三庁舎
総合庁舎
69.8
A社
72.1
C社
109.1
D社
104.9
69.8
103.3
E社
66.7
67.1
98.9
215.8
F社
111.0
G社
第三庁舎
68.8
104.0
B社
75.2
96.3
59.5
98.9
97.6
H社
106.1
65.6
I社
115.7
73.6
J社
第二庁舎
106.8
96.2
73.8
K社
104
95.5
第三庁舎の入札では予定価格の 60%~70%程度の入札額を提出しているD社、G社、H
社、I社が、総合庁舎や第二庁舎の入札では予定価格を上回る入札額を提出しているのは
不自然ではないであろうか。
総務部所管のA等級業者を対象とする清掃委託 4 業務に係る指名競争入札における指名
業者は、いずれの業務委託においても前年と同じ顔ぶれにならないよう考慮されており、
平成 18 年度からは事前の説明会も取りやめていることから、それぞれの入札参加者は事前
に他の入札参加者の構成を知ることは困難である。しかし、前年に落札した業者を継続し
て同一業務委託に指名する方針が一貫して守られていることは周知の事実となっているた
め、少なくとも指名業者のうち 1 者は明らかとなっている。たとえ一部であっても、指名
業者が事前に明らかになることは好ましいこととは言えず、これが不自然な入札率の動き
に影響している可能性がないとは言えないであろう。より透明性、公平性を高めるために
は、今後、公募型指名競争入札あるいは一般競争入札へ移行することが望ましいといえる。
(5)総合庁舎市民課エレベーター保守管理業務
業務等の内容
旭川市総合庁舎(市民課)エレベーター保守管理業務
委託金額
642,600 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
昭和 33 年
委託相手先
三菱電機ビルテクノサービス株式会社
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第1号)。
再委託の有無
無し
本業務委託は平成 15 年度までは一者随意契約で、平成 16 年度以後は指名競争入札とな
っている。平成 17 年度は、平成 17 年度物品購入等入札参加資格者名簿の中から 3 者を指
名業者に選定しているものの、その選定基準は明らかでない。3 者の顔ぶれは平成 16 年度
105
と同様であり、平成 16 年度には 1 者が入札を辞退し、平成 17 年度には別の 1 者が辞退し
ている。その結果両年を通じて指名競争入札に参加したのは、いずれの年も落札している
三菱電機ビルテクノサービス㈱だけである。その状況は以下のとおりであり、落札率は過
去 3 年間いずれの年度も 95%を超えている。こうした状況で適正な競争が行われていると言
えるのであろうか。
(単位:千円)
年 度
平成 16 年
平成 17 年
三菱電機ビルテクノサービス㈱
◎671
◎642
A社
辞退
882
B社
711
辞退
(注)◎は落札額
なお、同じエレベーターの保守管理業務委託でも、入札参加業者が変わることで落札率
が劇的に低下した次のような案件もある。
5 条庁舎エレベーター保守管理業務
(単位:円)
年 度
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
日本エレベーター製造㈱
624,000
◎624,000
◎228,000
A社
-
642,000
-
B社
-
636,000
648,000
C社
-
-
252,000
(注)平成 15 年度は一者随意契約である。◎は落札額。
平成 17 年度は指名競争入札参加者にエレベーターメンテナンス専門業者が新たに参加し
た。これが落札率に与えた影響は明らかではないものの、平成 15 年度及び平成 16 年度の
落札率は 95%を超えていたのが、平成 17 年度には 40%を下回る水準となった。したがっ
て、平成 17 年度の落札率は前年度より 60 ポイント程度下がったことになる。エレベータ
ー製造メーカーや製造メーカー系列のメンテナンス会社だけではなく、こうした業者を加
えることも競争を活性化するために必要といえる好例ではないであろうか。
106
(6)旭川聖苑浄化槽保守点検及び清掃業務
業務等の内容
旭川聖苑浄化槽保守点検及び清掃
委託金額
698,250 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 12 年
委託相手先
新日章株式会社
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
無し
本業務委託では、旭川市浄化槽清掃許可業者として登録され、法で定める業務を実施で
きる業者のなかから 4 者を指名している。ここ 3 年間の落札率は極めて高い率で推移して
いる。また、平成 17 年度の指名業者 5 者のうち、4 者はここ 3 年間全く同様である。予定
価格と業務内容に変更がないとはいえ、落札率が極めて高く落札業者も変わらないという
のでは指名競争入札が形骸化していると言わざるを得ない。指名競争入札参加者を広く募
り、競争原理が働くよう活性化することが必要である。
(単位:円)
年 度
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
落札額
698,250
698,250
698,250
落札業者
新日章㈱
新日章㈱
新日章㈱
4
4
5
入札参加業者数
107
(7)市営墓地ごみ収集搬出業務
業務等の内容
市営墓地内ごみ収集搬出業務
委託金額
3,150,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 5 月 1 日から平成 17 年 10 月 31 日
委託の始期
平成 10 年
委託相手先
丸忠北都清掃株式会社
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
無し
本業務委託では、平成 17 年度の市有施設清掃業者等指名競争入札参加資格者名簿に記載
された者のなかから、市民部業務委託業者等選考委員会が選定した 5 者が指名されている。
当該業務委託の過去 3 年間の指名競争入札において、指名される業者はほとんど固定化
している。その状況は下表のとおりである。
(単位:千円)
年
度
平成 15 年
1 回目
平成 16 年
2 回目
1 回目
2 回目
平成 17 年
1 回目
2 回目
丸忠北都清掃㈱
3,360
3,300
3,174
◎3,063
3,491
3,332
A社
3,400
3,350
3,235
3,110
3,600
3,450
B社
3,425
3,345
3,260
3,160
3,570
3,450
3,250
3,150
3,585
3,398
3,220
3,125
3,620
3,465
3,248
3,148
C社
D社
3,398
3,355
E社
(注)表は消費税抜きの金額。
◎は落札価格。平成 15 年度及び平成 17 年度は不落札による随意契約である。
平成 15 年度と平成 17 年度は不落札の結果、丸忠北都清掃㈱との随意契約となっており、
108
平成 16 年度は 2 回目の入札の結果、丸忠北都清掃㈱が落札している。こうした状況では、
指名競争入札が機能しているとは言えない。今後は公募型指名競争入札あるいは一般競争
入札を導入するなどして、入札参加につきもっと門戸を広げるべきである。
なお、本業務委託において業務報告は月次で行われているものの、当該報告書には市内
13 箇所の墓地毎にごみ収集搬出作業を行った回数が記載されているのみである。しかし、
委託料の算定は時間単価に予定稼動時間を乗じて行っているのであるから、収集搬出作業
回数の報告だけでは委託業務の実態把握は不十分といえる。積算の精度を上げていくため
には、収集量や作業時間等の報告も必要であろう。
(8)永山市民交流センター施設維持管理
業務等の内容
永山市民交流センター施設維持管理
委託金額
19,908,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 6 年
委託相手先
太平ビルサービス株式会社旭川支店
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
無し
本業務委託では、平成 17 年度の市有施設清掃業務等指名競争入札参加資格者の中から 6
者を選定している。平成 15 年度以後 3 年間の入札状況をみると、いずれの年度も 1 回の入
札では落札されていない。業務内容に変化がなく、毎年の落札額が周知されているにもか
かわらず、平成 16 年度及び平成 17 年度とも予定価格を超える金額で全者が札を入れてい
るからである。しかも、2 回目の入札での辞退者が平成 16 年度は 3 者、平成 17 年度は 4 者
ある。これもまた、実質的に競争入札制度が機能していない例といえるであろう。なお、
平成 16 年度と平成 17 年度は 2 回の入札でも落札者が出なかったため随意契約となってお
109
り、いずれの年度も委託先は太平ビルサービス㈱となっていた。
(単位:千円)
年
度
平成 15 年
1 回目
2 回目
平成 16 年
1 回目
2 回目
平成 17 年
1 回目
2 回目
太平ビルサービス㈱
19,756
◎19,176
19,944
19,370
19,920
19,200
A社
21,474
19,750
20,880
19,908
20,400
19,910
22,320
辞退
20,748
辞退
21,480
19,860
20,700
辞退
D社
20,112
辞退
E社
21,708
辞退
B社
C社
20,640
19,400
F社
G社
20,568
辞退
H社
22,450
19,656
I社
21,300
19,720
23,600
辞退
22,200
辞退
(注)表は消費税抜きの金額。
◎は落札価格。平成 16 年度及び平成 17 年度は不落札による随意契約である。
110
(9)神楽支所(公民館併設)・神楽会館維持管理業務
業務等の内容
支所、神楽公民館並びに神楽会館の安全管理、施設庁舎の維持管理業務及び旧南消防
署神楽出張所前敷地の巡視業務
委託金額
8,221,500 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 10 年
委託相手先
株式会社ベルックス旭川営業所
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
無し
本業務委託では、平成 17 年度の市有施設清掃業務等指名競争入札参加資格者一覧表の掲
載業者の中で、常駐警備及び機械設備保守登録業者であり、かつ清掃業務格付等級Aの業
者の中から 6 者を選定している。当該条件を満たす業者は多数存在するものの、6 者を選定
した基準は明らかではない。
平成 15 年度以後 3 年間の入札状況をみると、落札業者はいずれの年度も同一であり、落
札率は 100%に近い。落札業者以外の入札参加業者はいずれも予定価格を上回る入札額を毎
年提示しており、競争原理がまったく働いていない。
(単位:円)
年 度
落札額
落札業者
入札参加業者数
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
8,221,500
8,221,500
8,221,500
㈱ベルックス旭川支店
㈱ベルックス旭川支店
㈱ベルックス旭川支店
6
6
6
また、本業務委託では平成 17 年度において市民からの苦情が市に寄せられていた。土曜
日に公民館を利用した市民に対する、委託業者職員の対応が不適切だったというものであ
111
った。当該業務委託には公民館使用申込み等の問い合わせに対応することが含まれている
にもかかわらず、それが十分になされていなかったと言える。市民と接する業務を委託す
る以上、事前の指導、教育を十分に行うことが必要である。なお、その後業者側で担当者
を代えてからはこのような苦情は無くなったとのことである。
また、以下に記載するように本委託業務と同じ施設の清掃業務委託についても同一の業
者が受託しており、競争原理が働いていないという点で同様の問題があった。
神楽支所(公民館併設)
・神楽会館清掃業務
平成 17 年度の市有施設清掃業務等指名競争入札参加資格者一覧表の掲載業者の中で、建
築物における衛生的環境の確保に関する法律第 12 条の 2 で定める清掃登録業者であり、か
つ清掃業者格付等級Aの業者の中から 6 者を選定している。ただし、6 者の選定基準は明ら
かではない。
平成 15 年度以後 3 年間の入札状況をみると、落札業者はいずれの年度も同一であり、平
成 16 年度と平成 17 年度の落札率は 100%に近い。落札業者以外の入札参加業者はいずれも
予定価格を上回る入札額を毎年提示しており、競争原理がまったく働いていない。
(単位:円)
年 度
落札額
落札業者
入札参加業者数
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
4,624,200
5,304,600
5,304,600
㈱ベルックス旭川支店
㈱ベルックス旭川支店
㈱ベルックス旭川支店
6
6
6
112
(10)江丹別市民交流センター清掃業務
業務等の内容
江丹別市民交流センター清掃業務
委託金額
1,588,650 円
委託の履行期間
平成 17 年 5 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 13 年
委託相手先
総合衛生株式会社
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
無し
本業務委託では、平成 17 年度の市有施設清掃業務等指名競争入札参加資格者一覧表の掲
載業者の中で、他の公共施設の実績があり、従業員確保も確かで業務に精通している業者 3
者を指名したということであるものの、当該条件を満たす業者は他にも存在すると思われ
るため、明確な選定基準はないと言える。
平成 15 年度以後 3 年間の指名業者 3 者は同一であり、いずれの年度も落札業者以外の 2
者が予定価格を上回る入札額を提出している。平成 16 年度と平成 17 年度の落札率は 100%
に近い上に毎年同様の結果がもたらされているため、指名業者を見直すことなどが必要で
あろう。
(単位:円)
年 度
落札額
落札業者
入札参加業者数
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
1,837,500
1,837,500
1,588,650
総合衛生(株)
総合衛生(株)
総合衛生(株)
3
3
3
(注)平成 15 年は入札不落のため、随意契約である。
平成 17 年度は委託業務量の減少に伴って、予定価格も低下している。
113
(11)永山市民交流センター昇降機保守点検業務
業務等の内容
永山市民交流センターの昇降機保守点検業務
委託金額
630,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 7 年
委託相手先
中央エレベーター工業株式会社札幌支店
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
無し
従来、エレベーター保守点検業務は製造者でなければ適切に行えないという理由から、
市では製造者と一者随意契約を行っていた。しかし、平成 16 年 3 月に行われた市議会にお
いて競争入札の導入について議論されたのを受け、平成 16 年度より総務部で競争入札が導
入され、平成 17 年度から全てのエレベーター保守点検業務で競争入札が採用されるように
なった。当該業務委託も平成 16 年度までは製造者である中央エレベーター工業㈱札幌支店
と一者随意契約を結んでいたものの、平成 17 年度から指名競争入札に移行した。
本業務委託では、平成 17 年度の市有施設清掃業務等指名競争入札参加資格者一覧表にお
いてエレベーター保守登録している業者の中から、市有施設において昇降機保守管理業務
の実績がある 3 者を指名したということであるものの、3 者を選定した基準は明らかではな
い。なお、3 者はいずれもエレベーター製造メーカーまたはその系列メンテナンス会社であ
る。「(5)総合庁舎市民課エレベーター保守管理業務」のところでも記載したように、エ
レベーターメンテナンス専門会社も指名することで健全な競争が促進されるものと思われ
る。
なお、平成 16 年度までの積算根拠が「前年実績」であったのに対し、平成 17 年度には
業務内容に応じて積上げの積算が行われた。積算根拠が前年実績というのも問題であるし、
同様の業務にもかかわらず積算額が低下したということは、従来の積算が甘かったと言わ
ざるをえない。また、指名競争入札になった平成 17 年度の落札率は 90%を超えている。
114
(単位:円)
年 度
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
882,000
882,000
630,000
中央エレベータ工業
中央エレベータ工業
中央エレベータ工業
(株)札幌支店
(株)札幌支店
(株)札幌支店
1
1
3
落札額
落札業者
入札参加業者数
(注)平成 15 年度、平成 16 年度は一者随意契約である
(12)工業技術センター清掃等業務
業務等の内容
工業技術センターの用務員業務、定期清掃(床ワックス年 3 回、窓ガラス清掃年 1 回、
受水槽清掃年 1 回)、環境整備(草刈年 3 回、芝刈年 4 回、花壇整備年 5 回)、除雪の
各業務
委託金額
6,961,500 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成元年
委託相手先
株式会社ベリークリーン
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
有り(除雪のみ)
本業務委託の直近 5 年間の落札状況を見ると、指名登録業者はすべて指名して競争入札
を実施しているため手続的には問題ないものの、落札率はいずれの年度も 95%を超えており、
落札業者以外に予定価格を下回る価格を提示した業者はいない。また、本業務委託が開始
された平成元年度から平成 17 年度までの 17 年間に渡って㈱ベリークリーンが落札し続け
ている。したがってこの結果を見る限り競争原理が働いているとは思えず、指名競争入札
は完全に形骸化している。
115
なお、「月間積算資料」によれば、ワックス清掃における 1 ㎡当たりの単価は水性ワック
スの場合で 80 円、樹脂ワックスの場合で 95 円、ガラス清掃では 1 ㎡当たり 170 円となっ
ている。これに対して、本業務委託ではワックス清掃が 1 ㎡当たり 115 円、ガラス清掃が 1
㎡当たり 356 円と積算している。これらの単価は前年と同額という理由で平成 8 年度から
採用しており、もともとの根拠はまったく不明とのことであった。しかし、前年と同額と
いう理由だけでその根拠がよくわからない単価を 10 年間もの長期にわたって使用し続ける
のは適切でない。長期間にわたって同一業者が落札し続けている上に、100%近い落札率も
見られる入札であり、後述する競争入札が適正に機能するような仕組みづくりを検討する
とともに、積算そのものについてもより厳密に行うことが求められる。なお、積算につい
ては平成 18 年度から見直しを行っているとのことである。
(13)とみはら自然の森機械設備保守点検業務
業務等の内容
とみはら自然の森内の管理棟、作業場、休憩所における飲用水槽・雑用水槽の清掃点
検、水質検査等
委託金額
2,100,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 20 日から平成 17 年 11 月 30 日
委託の始期
平成 12 年
委託相手先
株式会社テクノス北海道
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条第 1 号)
。
再委託の有無
無し
本業務委託は、とみはら自然の森内の管理棟、作業場、休憩所における飲用水槽・雑用
水槽の清掃点検、水質検査等を委託するものである。
直近 5 年間の落札状況については、平成 15 年度のみ落札率が 90%を下回ったものの、そ
れ以外の年度では落札率がすべて 90%を超えており、また資料が入手できた直近 5 年間はす
116
べて㈱テクノス北海道が落札していた。したがって、これを見る限り競争原理が働いてい
るとは思えず、指名競争入札は形骸化していると言わざるを得ない。
なお、結果的に支障はなかったものの、本業務委託では水質検査の検査項目と回数につ
いて平成 17 年度から仕様書を変更したにもかかわらず、変更後の仕様書に従わず、前年度
と同じ検査項目と回数により平成 17 年度の水質検査を行っていたという問題もあった。
117
指名競争入札が適正に機能するための仕組みづくりについての考察(意見)
指名競争入札を適正に機能させるためには、まず指名競争入札のデメリットとして指摘
されている指名業者が偏る危険性をできるだけ排除する必要がある。指名業者の選定は、
入札への参加資格を有する者としてあらかじめ市に登録されている業者の中から行われる。
しかし、登録業者が少ない場合などを除き資格を有する業者をすべて指名するわけではな
いため、その選定過程が不明確になる点はこの項の最初で述べたとおりである。したがっ
て、まず指名の基準について明確に定めておくことによって選定過程から恣意性を排除し、
それと合わせて基準自体の見直しも常に行うべきである。また可能であれば参加資格を有
する業者をすべて指名し、それができない場合あるいは効率的でない場合には、指名業者
の選定過程をその選定基準とともに明確に記録しておくべきである。
次に、本報告書の監査要点としてもあげている、「契約方法及び相手先の選定方法は適正
か」、「委託の理由に合理性があるか」、「契約書などの必要書類が適正に作成・保存されて
いるか」、「委託料の算定方法は適正か」、「委託料は業務の内容に対し適正な水準か」、「委
託契約手続きは適正に行われ、支払いは正確か」、「委託成果品の検査及び委託契約の履行
について適時、適切に確かめられているか」、「当該委託契約は予定した行政目的達成に貢
献しているか」といった点をチェックする体制を強化する必要がある。もちろん、現状で
も通常の承認手続きによってこれらをチェックする体制になってはいるものの、それだけ
で十分でないことは本報告書に記載する問題点を見れば明らかである。担当部局内に専門
の審査担当を設けるか、あるいは担当部局から独立した審査専門の部局を設けるか、いろ
いろな方法が考えられるものの、より実効性が高いと思われるのは担当部局から独立した
審査専門の部局を設けることであろう。公共工事については「公共工事の入札及び契約の
適正化の促進に関する法律」の第 10 条が、公共工事の入札及び契約に関して談合等がある
と疑うに足りる事実があるときは、公正取引委員会へその事実を通知しなければならない
と定めており、これを受けて「旭川市建設工事等に関する談合情報の取扱要領」でも旭川
市における建設工事等については談合情報の取り扱いを定めている。業務委託についても
これらを準用する必要があると考える。
また、指名競争入札には指名業者を公募する公募型指名競争入札と簡易公募型指名競争
入札がある。手続きの上では一般競争入札に近いこれらの方法をとることによっても、指
名競争入札をより適正に機能させることができると思われる。この点については「5.公
募型指名競争入札と簡易公募型指名競争入札」のところで述べる。
なお、地方自治法では契約の相手方を決定する方法について一般競争入札を原則として
おり、指名競争入札によることができるのは一定の場合に限るとされていることから(地
方自治法 234 条 1 項、2 項)、一般競争入札を実施できるものについてはこれを優先させる
べきなのは言うまでもない。
118
4.指名競争入札後の契約内容の変更
旭川市の「契約事務の手引」37 ページには、契約の変更について次のような記載がある。
契約金額の増額は原則として許されない。ただし、次の場合は認められると解されて
いる。
①
単価契約において、予定数量が契約後の事情により著しく変動を来し、あらかじめ
定めた単価が甚だしく不当となった場合
②
設計変更等により契約目的を変更するとともに、契約金額の変更を行う場合。ただ
し、工事の施工に当たり現場の状況が図面、仕様と一致又は適合しないため、設計・
仕様の一部を変更し、これに伴って請負金額を増額する場合は、当初から予想される
程度のものに限るべきである。
③
天災地変、社会情勢の急激な変化等により、物価、賃金が著しく変動したため全体
の契約金額が公平の原則上甚だしく不当となったと認められる場合
④
物品の統制価格等の改正があった場合
これに関して以下のような案件があった。
(1)下水道施設維持管理業務の委託
(単位:千円)
地
区
当初契約金額
増額後の
支出金額
増加額(増加率)
中央地区
31,878
31,930
52 (0.2%)
春光地区
28,875
29,704
829 (2.9%)
永山地区
29,085
31,846
2,761 (9.5%)
東光地区
39,900
46,683
6,783(17.0%)
末広地区
24,885
32,046
7,161(28.8%)
神居・神楽地区
29,085
35,133
6,048(20.8%)
183,708
207,343
23,635(12.9%)
合
計
(注)表中の増加率は当初契約金額に対する増加額の割合
具体的な業務内容は、下水道施設の巡視点検業務とマンホールの補修、汚水桝の補修で
あり、マンホールの補修と汚水桝の補修については補修箇所につき概算で設計し、実際の
業務に基づき補修箇所が確定しだい設計変更することになっている。そこで実際に点検・
119
補修した箇所によって計算したところ、上表のような増額になったとのことである。
永山地区、東光地区、末広地区及び神居・神楽地区については増加額が多額になってい
る上に、増額後の支出金額が予定価格を上回ってしまっており、これでは入札自体に意味
があるのか疑問を持たざるを得ない。「契約事務の手引」によれば、契約金額の増額は原則
として認められておらず、設計変更等により契約金額の変更を行う場合は、工事の施工に
当たり現場の状況が図面、仕様と一致又は適合しないため、設計・仕様の一部を変更し、
これに伴って請負金額を増額する場合で、当初から予想される程度のものに限るべきであ
るとしている。「当初から予想される程度のもの」であればできるだけ設計金額に反映させ
るべきであるし、設計金額が 2 千万円から 3 千万円の業務委託において、6 百万円から 7 百
万円もの増額が予想される程度の増額だとすれば、そもそも競争入札に使用する予定価格
に意味があるのか大いに疑問である。この点については、平成 16 年度の市の定期監査にお
いても指摘されたところであり、水道局ではこの指摘を受けて変更金額は当初契約金額の
30%以内でなおかつ 2,000 万円未満という基準を設けているとのことである。したがって上
表の業務委託における増額はすべてこの基準内の増額であり、その点では問題ないと言え
る。しかし、
「当初契約金額の 30%以内かつ 2,000 万円未満」という基準自体の妥当性につ
いては検討する余地があるのではないであろうか。点検・補修箇所に概算数字を使用する
ことと、それに伴う契約金額の増額が発生するのはやむを得ないと思われるため、市はよ
り厳密に設計金額の積算を行うことによってその精度を上げ、「30%以内かつ 2,000 万円未
満」という数字をさらに減らすよう努力してほしい。また、やむを得ず委託金額の増額を
行う場合にはそれが本当に必要な作業に基づくものであるのか、また、その金額は適正な
ものであるのかについて、通常の業務委託の検査以上に厳しいチェックを行ってほしい。
なお、実際の補修箇所が当初予定したものより少なかった場合には委託料を減額するのは
当然であり、これについてはすでに行われているところである。
(2)旭川市緑の基本計画改定業務委託
(単位:千円)
当初契約金額
13,440
増額後の
支出金額
14,112
増加額(増加率)
672(5.0%)
(注)表中の増加率は当初契約金額に対する増加額の割合
本業務委託は、都市緑地法第 4 条に基づき平成 8 年度に策定された旭川市緑の基本計画
の改定業務である。「設計変更上申書」によれば、「有識者・一般市民等で構成される懇談
会を 3 回開催し意見交換を行い、2 月下旬までに取りまとめる予定であったが、委員からの
120
活発な意見などにより、当初予定していた懇談会の回数では議論が不十分と判断し、懇談
会審議を 2 回追加しそれに伴う増額及び審議会前の設計協議 4 回追加しそれに伴う増額並
びに履行期間の延長を行うものである。」と記載してある。そこで、担当部局に対して、こ
の増額は懇談会と協議会の回数が増えたことが原因かという質問をしたところ、懇談会に
おいてその追加を強く提案されたことに伴い懇談会・設計協議が当初見込んだ回数より増
えたことと、それに伴う資料の増分の費用であるという回答を得た。すなわち、あくまで
懇談会における強い要望に基づくもので、発注者である市や受託者側が積極的にすすめた
増額ではなく、やむを得ない増額であったとのことである。
しかし、「契約事務の手引」によれば設計変更による増額が認められるのは、「契約目的
を変更するとともに、契約金額の変更を行う場合」であって、作業量や作成する資料が増
えたことをもって委託料の増額が認められていると解するべきではない。契約内容の変更、
特に契約金額の増額については、安易にこれを認めることがないようにすべきである。
121
5.公募型指名競争入札と簡易公募型指名競争入札(意見)
指名業者の選定の仕方から見た場合、指名競争入札には通常の指名競争入札の他に、公
募型指名競争入札と簡易公募型指名競争入札がある。「3.指名競争入札の形骸化」のとこ
ろで述べたように、指名競争入札では入札への参加資格を有する者の中から指名業者を選
定しなければならないのであり、資格を有する業者は業務内容に応じてあらかじめ市に登
録されている。したがって通常の指名競争入札では登録された業者の中から指名されるわ
けであるが、公募型指名競争入札と簡易公募型指名競争入札では指名を希望する業者を登
録業者の中から公募する点が異なっている。市では現在、水道局及び土木部において 5 百
万円以上の測量業務の委託と 1 千万円以上の設計業務の委託について簡易公募型指名競争
入札を実施しており、また水道局ではさらに簡易水道事業の一部業務の委託についても簡
易公募型指名競争入札を実施している。公募に応じた業者のうち要件を満たした業者につ
いては全者を指名しているため、この点では一般競争入札に近い手続きと言える。一般競
争入札を実施できるものについてはこれを優先すべきなのは当然であるものの、指名競争
入札を実施する場合には、公募型及び簡易公募型指名競争入札の対象金額引き下げについ
て今後検討するとともに、他部局でもこれらを積極的に導入すべきであると考える。
なお、公募型と簡易公募型との手続上の違いは入札に係る公告期間の違いのみであり、
委託においては公募型指名競争入札を採用していない。一般競争入札と公募型指名競争入
札、簡易公募型指名競争入札の違いを示すと次のとおりである。
区
分
一般競争入札
工事:7 億 2 千万円以上
公募型指名競争入札
工事:1 億 5 千万円以上
対象となる
7 億 2 千万円未満
予定価格
簡易公募型指名競争入札
工事:1 千万円以上
1 億 5 千万円未満
測量:5 百万円以上
設計:1 千万円以上
入札参加
見積期間
入札の公告等
入札参加資格確認申請→
入札参加申請→指名通知
入札参加申請→指名通知
資格確認通知
(要件を満たした者の中
(要件を満たした者の中
(資格者全者)
から入札参加者を選考す
から入札参加者を選考す
るが要件を満たしていれ
るが要件を満たしていれ
ば全者指名)
ば全者指名)
公告の日の翌日から起算
指名通知の翌日から起算
指名通知の翌日から起算
入札期日の前日から起算
入札期日の前日から起算
事前に公募内容を公示
して少なくとも 40 日前ま
しておおむね 40 日前まで
でに公告
に公募内容を公示
122
6.積算根拠が不明確あるいは妥当でない委託料
(1)総合庁舎エレベーター保守管理業務
エレベーター保守管理業務の積算は、「季刊建築施工単価」に記載されているエレベータ
ー技師の労務単価に基づいて行われている。当該季刊誌における労務単価は一定の幅をも
った記載となっており、総務部ではその平均単価を用いているのに対して、市民部では最
低単価を用いている。清掃業務単価も平成 17 年度までは同様の状況で、部門ごとに適用す
る単価が異なっていたものの、平成 18 年度においては総務部管理課から清掃業務の積算に
使用すべき統一単価が通知された。エレベータ保守業務においても、統一した単価設定を
行うことを検討すべきであろう。
平成 17 年度 エレベーター技師労務単価
作業員種別
(単位:円)
総務部
市民部
エレベータ技師A
20,050
19,400
技師補
15,950
14,700
(注)日額単価である。
なお、本業務委託はそれまで一者随意契約で行われていたものが平成 16 年度から指名競
争入札となり、競争原理が働くようになってきている。
(単位:円)
年 度
契約額
契約業者
入札参加業者数
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
1,940,400
1,247,400
604,800
三菱電機ビルテクノサービス㈱
エス・イー・シーエレベーター㈱
エス・イー・シーエレベーター㈱
-
4
4
(注)平成 15 年度は一者随意契約である。
平成 17 年度は委託業務内容の一部に変更があったため、予定価格も低下している。
(2)文化会館のボイラー洗缶業務
本業務委託は指名競争入札によっているものの、市は従来から委託料の積算にあたって、
㈱木本動力工業所から入手する参考見積りに依拠している。平成 17 年度は委託する業務の
内容に一部変更があったため新たに参考見積りを入手したものの、それがそのまま積算に
反映されている。その結果、平成 15 年度以後の 3 年間については、毎年度㈱木本動力工業
所の見積価格と同額で契約されている。
委託料算定にあたって市が独自に積算するのが困難であり、業者からの参考見積に依拠
せざるをえない場合があるのはやむを得ない。しかし、こうした場合でも特定の業者から
123
入手した参考見積額をそのまま予定価格に反映させないという配慮も必要である。なお、
本業務委託は指名競争入札によっているにもかかわらず、落札業者との一者随意契約と変
わらない結果となっており、指名競争入札が形骸化しているという問題もある。
(単位:円)
年 度
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
840,000
840,000
955,550
㈱木本動力工業所
㈱木本動力工業所
㈱木本動力工業所
3
4
4
落札額
落札業者
入札参加業者数
(3)旭川聖苑清掃業務
委託料のなかの主要項目である人件費は、労務単価に業務工数を乗じて算定しており、
当該算定方法自体は妥当である。しかし、労務単価の算定については以下のような問題点
があった。
旭川市では毎年 2 月に総務部管理課から清掃業務委託に係る労務単価を明らかにした通
知が出されており、これに基づき清掃委託業務の積算が行われている。平成 17 年度につい
ても清掃業務委託に先立ち、平成 17 年 2 月 1 日付けで管理課長から庶務担当課長にあてた
「清掃業務委託に当たっての留意事項について」という通知文書があり、それによれば労
務単価に関する記載は以下のとおりであった。
建築保全業務技術者
賃金・日割基礎単価(1 日 8 時間当たり)
作業員種別
(単位:円)
東京
北海道
清掃員A
13,700 ~ 16,400
10,100 ~ 12,000
清掃員B
9,900 ~ 12,300
7,200 ~
9,000
清掃員C
7,700 ~
5,800 ~
6,800
9,000
通知においては、積算を行う上で採用すべき労務単価を明示してはおらず、上表のよう
に一定の幅を示しているのみである。これは財団法人経済調査会が発行している月刊「積
算資料」の平成 17 年 2 月号に基づいたものである。問題となるのは、通知の単価に幅があ
ることから各部局が採用する労務単価も異なっていることである。たとえば総務部では、
いずれの清掃業務においても北海道単価の平均値を採用して積算していた(清掃員A
11,050 円、B
8,100 円、C
6,300 円)
。これに対して市民部では、積算担当者によって
用いる単価が異なっており、当該聖苑清掃業務においては北海道単価の最高値(清掃員A
12,000 円、B
9,000 円、C
6,800 円)が採用されていた。
124
平成 17 年度の当該清掃業務を総務部の労務単価で積算した場合の積算額は当初の積算額
を 77 万円下回ることになり、これはまた実際の契約額 1,186 万円をも下回ることになって
しまう。したがって、総務部単価を用いていれば当該清掃業務は契約できなかったことに
なる。
同じような業務委託にもかかわらず積算単価が異なることから予定価格が異なり、ひい
ては契約額まで異なるというのは決して望ましいこととは言えない。この点は通知を交付
する総務部管理課でも認識しており、平成 18 年度の清掃業務に関する通知では、特段の事
情がない限り北海道地区単価の平均単価を使用するように指示している。しかし、このよ
うな指示にもかかわらず、平成 18 年度も本業務委託の積算には北海道労務単価の最高値が
用いられていた。当該清掃業務に特段の事情がないのであれば、総務部通知に従うべきで
ある。
また、本業務委託は指名競争入札によっており、平成 16 年度の指名業者 6 者のうち、4
者が平成 17 年度も引き続き指名業者となっている。平成 16 年度と平成 17 年度の業務内容
が同じで、これら 4 者は平成 16 年度の落札額を認識しているにもかかわらず、このうちの
3 者は平成 16 年度よりも高い入札額を提出していた。その結果、本業務委託では残りの 1
者がこの 3 年間落札し続けている。落札できなかったこれら業者が本当に落札するつもり
で入札に参加しているのか疑問が残る。
(4)旭川聖苑塵芥処理業務
積算の主要項目は塵芥収集料であり、塵芥 1 立方メートルあたりの収集単価に年間予想
収集量を乗じて算定している。毎月の処理状況報告書から集計した平成 16 年度及び平成 17
年度の実際収集量と積算用の予想収集量とを比較すると、実際収集量のほうが下回ってい
た。
年
度
収集単価
予想収集量
実際収集量
平成 16 年度
3,400 円
550 ㎥
414.0 ㎥
平成 17 年度
3,400 円
550 ㎥
421.5 ㎥
(注)単価は消費税抜き
積算に際しては、この他に塵芥収集料の 15%を間接経費(諸経費)として別途見積もっ
ている。したがって、平成 17 年度の塵芥収集料とこれにかかわる諸経費を合算すると、予
想収集量に基づく積算額は実際収集量に基づく積算額を 51 万円上回っている。塵芥収集量
の算定においては、過去の実績も考慮しながら積算の精度を上げるべきであるし、本業務
委託については単価による契約も検討すべきである。
また、委託業者からは毎月処理状況報告書を受領している。報告書には業務を行った日
125
ごとの塵芥処理量が記載されているものの、それを裏付ける客観的証憑は添付されていな
い。可燃ごみは近文清掃工場、不燃ごみは最終処分場に持ち込まれるのであるから、それ
ぞれの持込先が発行する書類等があればそれを添付させて、実際の処理量を確認すること
が望ましいといえる。
(5)心配ごと相談センター設置運営事業
本業務委託は社会福祉法人旭川市社会福祉協議会への一者随意契約によっており、実施
要綱によれば事業経理報告書の提出が義務づけられている。そこで、平成 17 年度の同報告
書の内容を示すと、以下のとおりであった。
(単位:円)
内
訳
経理報告書
報酬
976,000
研修費(参加費及び旅費)
消耗品費
-
144,337
備品購入費
52,500
通信費
44,479
広報費
24,938
その他
3,900
①小計
1,246,154
②委託事務費(①×0.04)
③合計(①+②)
49,846
1,296,000
(注)実際の支払額は経理報告書と同額の 1,296,000 円
報酬については、受託者が実費弁償方式で相談員に支払っている。市の積算単価と実際
の報酬単価は同額であるものの、積算上予定していた延相談日数よりも実際のそれが少な
かったため、実際発生額 97 万 6 千円は市の積算額を下回っていた。また、研修費について
は、市の積算上は計上されていたものの、実際には発生しなかった。しかし、そのいっぽ
うで、消耗品費、広報費の実際発生額は市の積算額を上回っており、積算対象としていな
かった備品費(電話機購入費)も発生し、総額では市の積算とほぼ同額であった。
本業務委託は競争入札でなく一者随意契約によっているため、積算金額と委託料との差
額が小さくなるのはやむをえない面もある。しかし、実際の相談日数が予定よりも少ない
ために報酬額の発生額が見積りより少なかった場合には、その他の経費が予算消化に使わ
れないとも限らない。本業務委託は平成 17 年度をもって廃止されているものの、今後同様
の形態の事業が行われる場合には、実費精算方式とすることも検討すべきである。
126
(6)旭川市障害者福祉バス管理運営事業
本業務委託は社会福祉法人旭川市社会福祉協議会への一者随意契約によっており、市は
同協議会からの過年度分の見積書等を参考にして当該年度の積算を行い、委託契約を締結
している。受託者が提出した平成 17 年度の見積額のうち、人件費部分のみを記載すると以
下のとおりである。
(単位:円)
給与支給対象者
見積額
常勤嘱託職員 1 名
(運転手)
2,683,575
非常勤嘱託職員 1 名
(代替運転手)
報酬
9,680 円×100 日=
968,000
時間外手当
1,562 円×45 時間=
70,290
交通費
4,100 円×12 ケ月=
49,200
1,087,490
小計
臨時職員 1 名
(介護職員)
報酬
6,160 円×180 日=1,108,800
時間外手当
1,100 円×45 時間=
49,500
交通費
4,100 円×12 ケ月=
49,200
1,207,500
小計
給与合計
4,978,565
バスの運行は、常勤嘱託職員 1 名(運転手)と非常勤嘱託職員1名(代替運転手)と臨
時職員1名(介護職員)によって行われる。市の積算書と受託者の見積書いずれにおいて
も常勤嘱託職員の給与は月額の固定給として算定されており、非常勤嘱託職員及び臨時職
員の給与は、日給に稼動予定日数を乗じて算定している。非常勤嘱託職員の予定稼動日数
は市の積算においては 90 日、受託者の見積書においては上表にあるように 100 日とされて
いたものの、市に提出される運行月報上の稼動日数は 57 日であった。常勤嘱託職員と非常
勤嘱託職員の 2 名の運転手で乗務する場合には、非常勤嘱託職員の出勤状況は運行月報に
は反映されないということであり、実際には 57 日以上の出勤があったとしているものの、
実際の出勤日数を市は把握していない。さらに、臨時職員については勤務報告が全くない
ため、これについても実際の勤務日数を市は把握していない。稼動日数を積算根拠及び見
積根拠とする以上、翌年度の契約の参考資料とするためにも、その実績の報告は必要であ
ろう。
127
また、運行月報によれば平成 18 年 1 月及び 2 月は常勤嘱託職員がまったく運転をしてお
らず、この間はすべて非常勤嘱託職員が運転をしている。そこでこの点について確認した
ところ、常勤嘱託職員が入院していたためということであった。受託者から職員に対する
実際の給与支払額は明らかでないものの、職員に対する実際の給与支払額が積算額や見積
額を下回っている可能性がまったくないとは言えない。
人件費については実費精算方式として受託者が職員に実際に支払う額を精算額とするこ
とや、非常勤嘱託職員及び臨時職員については単価契約とすることも検討すべきである。
(7)生活支援ハウス運営事業
業務等の内容
市内在住の 60 歳以上の高齢者のうち、一定の条件を満たす者に住居を提供して、生活
支援を行う業務
委託金額
13,362,982 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 14 年
委託相手先
社会福祉法人友和会
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項
第 2 号)。
見積合せによらず一者随意契約としたのは、本事業が「旭川市生活支援ハウス運営事
業実施要綱」に定める生活支援ハウスにおいて実施するものであり、その施設を設置
する法人に事業を委託するものであるため。
再委託の有無
無し
当該事業は市内在住の 60 歳以上の高齢者のうち、一定の条件を満たす者に住居を提供し
て生活支援を行うことを、指定通所介護事業所等を経営する社会福祉法人に委託するもの
である。当該事業に係る市の積算額と受託者からの支出結果報告の内容とを比較すると、
128
人件費は実際支出額が市の積算額を下回っているのに対して、管理諸費は実際支出額が市
の積算額を上回っている。これは、管理諸費のうち市の積算ではゼロとなっていた水道光
熱費、燃料費、損害保険料、清掃等の業務委託費が実際には発生しているためである。本
事業は平成 17 年度まで国庫補助基準によって総額が示されていた経緯があり、補助要綱に
基づき業者から支出実績報告書の提出を求めて市がその内容を把握していたことを踏まえ
ると、委託費の積算に際して、水道光熱費、燃料費、損害保険料、清掃等の費目を計上し
ていないことは妥当とは言えない。
また、心配ごと相談センター設置運営事業や旭川市障害者福祉バス管理運営事業、さら
には「7.再委託」の項で記載する配食サービス事業といった社会福祉協議会が受託する
事業においては、諸経費が細かく積算されたうえ、さらに人件費と諸経費の合計額の 4%が
委託事務経費として別途計上されているものの、当該委託業務においてはこうした経費は
積算されていない。
委託業務によって委託事務経費が計上される場合とそうでない場合があるということに
なれば公平性を欠くこととなり、委託業務水準の維持にも影響しかねない。特定の受託者
にのみ有利な積算が行われることがあってはならないことなど言うまでもないことである
し、そうした疑いがもたれるような積算の仕方をすべきではない。こうした点をふまえて
諸経費の積算方法について見直すべきところがないか今一度検討し、適正な算定を行うべ
きである。
129
(8)し尿収集業務
業務等の内容
市内全域を対象とした汲み取り世帯のし尿収集と処理場への搬入業務
委託金額
142,745,400 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
昭和 39 年
委託相手先
協業組合旭川浄化
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項
第 2 号)。
見積合せによらず一者随意契約としたのは、他に業者がいないため。
再委託の有無
無し
次ページの表は管理費(事務員給与・福利費、電話受付員給与・福利費、事務所維持費、
通信費、事務用品費)の積算について、し尿収集と家庭ごみ収集の管理費を比較したもの
である。表における管理費合計はほぼ同額であるものの、し尿収集は収集車両 1 台当たり
の金額であるのに対して、家庭ごみ収集は収集車両 17 台当たりの金額である。この積算方
法によって、
し尿収集で家庭ごみと同じ収集車両 17 台を委託したとすれば、管理費合計は、
約 8,330 万円という金額になる。ただし、協業組合旭川浄化のし尿収集車両は 6 台である
ため、実際の管理費積算額は 2,941 万円である(なおこれは間接経費である管理費のみで
あり、直接経費は別途積算している)。し尿収集業務に特殊性があることは認めるものの、
家庭ごみの収集と比べて管理費がこれほど必要なのか疑問が残る。家庭ごみの収集と比較
しつつ、管理費の積算方法について再考を求めたい。
130
(単位:円)
内
人件費
経
費
訳
し尿収集(1 台分)
家庭ごみ収集(17 台分)
事務員
1 人分
2,438,000 2 人分
電話受付員
1 人分
1,612,800 無し
福利費
2 人分
備
考
3,836,640 手当含む
0 手当含む
703,188 2 人分
489,629
事務所維持費
75,000
通信費
49,320
52,920 電話・ファクス
事務用品費
24,000
36,000
4,902,308
4,751,189
管理費合計
336,000
また、積算書によれば、1 台当たりの年間収集予定量は 3,250,000 リットルであり、この
数量を前提に積算している。次表のように各者の 1 台当たりの収集実績は予定数量より 7%
ほど下回っているため、
収集実績を 1 台当たり収集予定数量で割り返すと 7.44 台となる(実
際の収集車両は 8 台)。この結果を見る限り、収集エリアの見直し等により 1 台減車でき、
結果として積算金額が減少する可能性も否定できない。この点については次年度以後の積
算においてぜひ検討していただきたい。
業者名
収集
積算における収
年間収集量
予定量
1 台当り平均
台数
集予定数量(ℓ)
実績(ℓ)
対比(%)
収集量(ℓ)
(協)旭川浄化
6
19,500,000
18,302,200
93.3%
3,050,367
(有)神楽清掃
1
3,250,000
3,013,500
92.7%
3,013,500
(有)小林清掃運輸
1
3,250,000
2,854,200
87.8%
2,854,200
8
26,000,000
24,169,900
93.0%
3,021,238
合
計
なお、本業務委託の仕様書には収集車両の整備点検なども明記されているものの、車両
の整備記録などを提出するよう求めていないし、またこれに関する報告もされていない。
現在の車検制度は検査時点で車検を通ればよく、その後の車検まで車両に問題がないこと
を保証するものではない。収集車両は公道を毎日走るものであり、市は車両の整備状況に
ついても監督する義務を負うはずである。車検以外にも車両の定期的な検査を行わせた上
で、整備記録の提出等を求めるべきである。またこれと合わせてアルコール検査や免許証
の確認も仕様書に盛り込むことを検討してほしい。
さらに、本業務委託は市内を 3 つのエリアに区分し、それぞれのエリアごとに一者随意
契約で業者を選定し収集している。本契約は最もエリアが広く、また契約額の大きい委託
契約であり、2 回の見積合わせをしたもののいずれも不調に終わったため、協議により一者
随意契約で契約しているものである。実質的に受託可能な業者が 3 者しかおらず、それぞ
れの業者の能力やし尿収集業務の特殊性等を考慮すると現在の契約方法はやむを得ないと
131
思われるものの、より競争性を確保できる契約のあり方がないかについては今後検討すべ
きである。
(9)旭山動物園じん芥処理業務
本業務委託における平成 15 年度からの入園者数とごみ処分の実績を示すと次のとおりで
ある。
(単位:袋〔20ℓ〕)
年 度
平成 15 年
平成 16 年
平成 17 年
入園者数
823,896 人
1,449,474 人
2,067,684 人
可燃ごみ
3,595
7,114
9,996
不燃ごみ
6,452
9,092
8,867
ビン
1,056
2,058
3,162
カン
167
260
672
1,943
4,022
ペットボトル
―
(注)ペットボトルの分別開始が平成 16 年度であるため、
平成 15 年度の数量は不明
上表から明らかなように、入園者数の増加とともにごみの処理量も年々増加している(平
成 17 年度に不燃ごみが減少した原因は確認できなかったものの、ごみの分別がすすんだこ
とも原因のひとつと思われる)。しかし、ごみの処理量が増加しているにもかかわらず予定
価格そのものはほとんど変わっていない。これは見方を変えれば平成 15 年度と平成 16 年
度の積算が甘かったということにならないであろうか。年度がすすむにつれて委託業者が
業務に習熟する点もあるとは思うものの、積算については厳密に行うよう注意してほしい。
なお、本業務委託は指名競争入札によっているものの、平成 12 年度から平成 17 年度ま
での落札業者はすべて同一業者で落札率はいずれの年度も 90%を超えている。特に平成 15
年度以後の 3 年間における落札率は 95%を超えており、この結果を見る限り指名競争入札は
形骸化していると言わざるを得ない。
132
7.再委託
現在、旭川市の契約規則などには一括再委託(委託のまるなげ)について禁止する条項は
ないものの、個々の契約書の約款においては、ほとんどの委託契約で一括再委託を禁止する
旨がうたわれている。そして例外的に業務の一部を再委託する際には市の承諾等を求めるよ
う、やはり契約書の約款でうたわれているところである。しかし、市の承諾等の求め方につ
いて、各部局や個々の委託契約で次のような違いがあった。なお、個々の案件を見る限り、
これらをどのように使い分けているのか明らかではなく、またこれを規定した基準のような
ものについても確認できなかった。
①
あらかじめ市の「書面による承諾」を得なければならない。
②
あらかじめ市に対して「書面による通知」をしなければならない。
受託業者は業務を適正に履行する能力があると認められたからこそ業務を委託されたの
であって、別の業者への再委託はあくまで例外的なケースである。したがって一括再委託
などは問題外であるものの、業務の一部を再委託する場合であっても限定的に利用される
べきであり、やむをえず再委託する場合には原則として市の承諾を得るべきである。また
市も再委託を承諾する場合は、その理由を十分に把握しておく必要がある。ただし、すべ
ての案件について市の承諾を得ることが経済性や効率性の点から必ずしも妥当であるとは
限らないことから、「書面による通知」が認められるとすれば、その基準は明確にしておく
べきである。
なお、再委託のある案件としては、本報告書ですでに記載した以外にも以下のようなも
のがあった。
133
(1)都市計画道路 3・3・14 号昭和通その 1 支障物件等調査委託
業務等の内容
都市計画道路の整備に先立ち支障となる物件を調査する。
委託金額
14,700,000 円
委託の履行期間
平成 17 年 10 月 19 日から平成 18 年 3 月 15 日
委託の始期
平成 17 年
委託相手先
和光技研株式会社旭川支店
契約方法
指名競争入札
上記の契約方法によった理由
一般競争入札が不利であるため(地方自治法施行令第 167 条第 3 号)。
再委託の有無
有り
本業務委託は委託料の約半分である 49.6%(金額にして約 7 百万円)を旭川市の業者へ再
委託していたため、なぜ再委託が必要であったのかを質問したところ、「他の業務と重複し
てしまい、業務履行のための人員確保が難しくなったという申し出が契約後にあったため」
という回答であった。しかし、これは受託者側で本業務を適正に履行する体制が整ってい
なかったということを意味しているのではないであろうか。参加資格を有する業者は 8 者
で、そのうち 7 者を指名業者として入札を行った結果、和光技研(株)旭川支店が落札し
ており、入札の手続き上は問題ないと思われる。しかし、再委託先の業者は入札において
落札業者に次ぐ金額で入札していた業者である(入札価格の差は 10 万円)。閲覧した資料
と市の担当者からの説明による限り、これらの業者の関係を疑うつもりはない。しかし、
一括再委託に当たらず、受託業者側にもやむを得ない事情があったとは言え、委託料の約
半分を再委託先に支払う業務委託契約に妥当性が認められるかどうかは議論の余地がある
であろう。このような案件では可能であれば入札をやり直すなど、再委託の妥当性につい
ては今後とも慎重に検討してほしい。
134
(2)配食サービス事業
業務等の内容
旭川市内在住の 75 歳以上(平成 18 年度からは 65 歳以上としている)の一人暮らし高
齢者のうち、調理が困難な者に週 6 回の範囲内で夕食を一部有償で宅配する事業
委託金額
11,847,928 円
委託の履行期間
平成 17 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日
委託の始期
平成 13 年
委託相手先
社会福祉法人旭川市社会福祉協議会
契約方法
一者随意契約
上記の契約方法によった理由
随意契約としたのは競争入札に適さないため(地方自治法施行令第 167 条の 2 第1項
第 2 号)。
一者随意契約としたのは、国が制定した介護予防・地域支え合い事業実施要綱におい
て、市町村は、地域の実情に応じ、利用者、サービス内容及び利用料の決定を除き、
適切な事業運営が確保できると認められる市町村社会福祉協議会等に委託することが
できるとされており、本市において実践可能な団体は旭川市社会福祉協議会のみであ
るから。
再委託の有無
有り
当該事業には実際の調理、配達以外に、利用申請者に対する事前調査に基づく利用要否
の判定、宅配開始後の定期的な状況確認、さらに課金、収納業務等の事務管理業務が必要
となるため、当初から業務の統括管理役として社会福祉協議会に委託して、実際の調理、
配達は再委託することが視野に入れられていた。再委託先業者の選定は社会福祉協議会が
行っており、3 者を再委託先としたい旨の再委託承諾願が同協議会から市に提出されている。
ただし、承諾願において再委託先業者の選定経緯、選定根拠については明らかにされてい
ないため、承諾願の様式を見直すなどにより、再委託先の選定理由を市が十分に把握でき
るようにする必要がある。
委託料は調理配達費と事務費とからなり、事務費は社会福祉協議会の事務にかかわる費
用で、その内訳は職員 1 名分の給与と諸経費である。同協議会が行う事務量は事前に見積
135
もられておらず、職員 1 名を必要とした根拠は積算上明らかにされていない。
社会福祉協議会が担当する業務は、収納管理、苦情、問い合わせの即時対応、新規申請
者への制度・利用に関する個別説明等である。業務内容を確認した結果、本業務委託では
社会福祉協議会が受託者となり再委託を行うことについてはやむを得ないと思われる。し
かし、利用者が 120 人程度の事業規模に対して専属の事務担当者1名を必要とする根拠が
関係資料を閲覧した限りでは明らかにされていないため、今後は実際の業務内容等を確認
し、積算根拠を明確にする必要がある。
また、諸経費には消耗品費や通信費、ガソリン代といった変動費に加えて、社会福祉協
議会事務所の固定費である火災保険料、清掃業務委託料、水道光熱費も面積按分で計上さ
れている。こうして、事務を担当する社会福祉協議会の人件費、直接経費、間接経費を詳
細に見積もって事務費としたうえに、さらに、当該事務費総額(人件費+諸経費)の 4%(18
万円)を事務費として別途計上している。これは明らかに過大な積算である。
さらに、委託成果品の検査及び委託契約の履行について適時、適切に確かめられている
かという点について次のような問題があった。
仕様書においては、定期的に配食サービスの嗜好調査を実施するよう指定しているため、
半年に一度、再委託先が個々の利用者からの意見を取り入れ、その後の献立に反映させる
ようにしているということであるものの、この経過が文書化されていない。また、月に一
度、委託先と再委託先が出席して行われる配食会議の議事録には、みそ汁、ご飯を届け忘
れたとか、空のお弁当を届けてしまうといった初歩的ミスが一部の再委託先で発生してい
ることが記されているものの、これらを市に対し文書によって報告する制度がないため、
こうした状況を適時、適切に把握することはできていないと思われる。委託契約の履行状
況を確認するためには、市が直接、利用者にアンケート調査を実施することも必要である。
平成 17 年度は、年間 35,400 食の利用を見込んで積算していたものの、実際には 26,196 食
の利用であり、見込数量の 74%の利用にとどまっている。こうした差異についても分析し、
将来の積算ならびにサービス向上に生かすべきである。
136
8.指定管理者制度(意見)
平成 15 年 6 月に行われた地方自治法の改正により、「指定管理者制度」が導入された。
これにより、平成 15 年 9 月以後直営でなく新たに管理を委ねることとした「公の施設」に
ついては指定管理者制度へ移行する必要があり、改正時点ですでに管理委託を行っていた
公の施設については平成 18 年 9 月までに指定管理者制度へ移行するか、直営とするかの選
択が必要となった。指定管理者制度は、公の施設に係る管理主体の範囲を民間事業者等ま
で広げることにより、住民サービスの向上と行政コストの縮減等を図ることを目的として
創設された制度である。この改正により、これまで第三セクターや社会福祉法人、農協等
にしか認められていなかった公の施設の管理業務に民間企業が参入できるようになった。
これまでの制度と指定管理者制度の違いを示すと以下のとおりである。
項
性
目
格
管理委託制度(これまでの制度)
指定管理者制度
地方公共団体の管理権限の下で、具
地方公共団体の指定を受けた「指定
体的な管理の事務・業務を管理受託
管理者」が管理を代行
者が執行
指定管理者/
管理受託者
の範囲
以下の団体に限定されている。
団体(法人格不要)に限るが特段の
・地方公共団体の出資法人のうち、
制約なし。民間企業が参入できる
1/2以上出資など一定の要件を
(個人は不可)。
満たすもの
議会の議決を経て指定
・公共団体
・公共的団体
利用許可
地方公共団体が行う。
指定管理者が行う。
条例の範囲で地方公共団体の承認
料金の設定
地方公共団体が行う。
を得ることを条件に指定管理者が
自由に設定できる。
(利用料金のみ)
使用料又は
利用料金
管理主体の
権限と業務
の範囲
地方公共団体の収入
指定管理者の収入(利用料金のみ)
①施設の設置者である地方公共団
①施設の管理を指定管理者に行わ
体と、条例に基づく契約により、
せるものであり、施設の使用許可
具体的な管理の事務又は業務の
も行うことができる。
②施設の設置者である地方公共団
執行を行う。
②施設の管理権限及び責任は、設置
体は、管理権限の行使は行わず、
者である地方公共団体が引き続
設置者としての責任を果たす立
き有し、施設の使用許可権限は委
場から必要に応じて指示等を行
託できない。
う。
137
①「指定」という行政法上の行為
②管理の詳細は「協定」により明確
自治体との
法的関係
にする。
委託契約
③指定管理者の指定は、地方自治法
上の「契約」には該当しないため、
「入札」の対象ではない。
条例で規定
する内容
指定管理者の指定の手続、指定管理
委託の条件、相手方等を規定
者が行う管理の基準及び業務の範
囲を規定
旭川市における「公の施設」の一覧と、指定管理者施設及び指定管理者の一覧を示すと
以下のとおりである。
公の施設一覧
条
例
名
施設数
指定管理者
所管部局
1
旭川市7条駐車場条例
1
株式会社旭川振興公社
総務部管理課
2
旭川市住民センター条例
4
各地区住民センター運営委員会
生活交流部生活交流課
3
旭川市地区センター条例
8
各地区地区センター運営委員会
生活交流部生活交流課
4
旭川市ときわ市民ホール条例
1
生活交流部生活交流課
株式会社旭川振興公社
5
旭川市勤労者福祉総合センター条例
1
生活交流部生活交流課
6
旭川市地区会館条例
3
市民部支所
7
旭川市火葬場条例
1
市民部庶務課
8
旭川市墓地条例
18
市民部庶務課
9
旭川市福祉センター条例
1
保健福祉部介護高齢課
10
旭川市生活館条例
2
保健福祉部福祉総務課
11
旭川市助産施設条例
1
保健福祉部児童家庭課
12
旭川市こども通園センター条例
1
保健福祉部児童家庭課
13
旭川市保育所条例
5
保健福祉部児童家庭課
旭川市へき地保育所及び季節保育所
14
15
財団法人旭川保育協会
保健福祉部児童家庭課
条例
15
旭川市児童館条例
6
保健福祉部児童家庭課
16
旭川市愛育センター条例
1
保健福祉部愛育センター
17
旭川市母子生活支援施設条例
1
保健福祉部児童家庭課
18
旭川市東鷹栖母と子の家設置条例
1
保健福祉部児童家庭課
138
19
旭川市通年制保育園条例
20
旭川市老人福祉センター条例
14
財団法人旭川保育協会
保健福祉部児童家庭課
社会福祉法人旭川市社会福祉協
2
保健福祉部介護高齢課
議会
社会福祉法人旭川市社会福祉協
21
旭川市高齢者等健康福祉センター条例
2
保健福祉部介護高齢課
議会
ニサカ・環境衛生指定管理者グル
22
旭川市近文市民ふれあいセンター条例
1
保健福祉部介護高齢課
ープ
社会福祉法人旭川盲人福祉セン
23
旭川市老人デイサービスセンター条例
1
保健福祉部介護高齢課
ター
24
旭川市つつじ学園条例
1
25
旭川市障害者福祉センター条例
1
社会福祉法人北海道療育園
保健福祉部福祉総務課
特定非営利活動法人旭川障害者
保健福祉部障害福祉課
連絡協議会
26
旭川市夜間急病センター条例
1
社団法人旭川市医師会
保健所保健総務課
27
旭川市工芸センター条例
1
商工観光部工芸センター
28
旭川市工業技術センター条例
1
商工観光部工業技術センター
29
旭川市旭山動物園条例
1
商工観光部旭山動物園
30
旭川市農村地域センター条例
5
あさひかわ農業協同組合,たいせ
農政部農政課
つ農業協同組合(3施設のみ)
31
旭川市農業センター条例
1
32
旭川市若者の郷条例
1
33
旭川市農業集落排水処理施設条例
1
34
旭川市21世紀の森施設条例
1
農政部農業センター
江丹別産業開発株式会社
農政部農政課
水道局営業部経理課
旭川市21世紀の森ログハウス
農政部農林整備課
管理運営協議会
35
旭川市嵐山レクリエーション施設条例
1
36
旭川市営牧場条例
1
農政部農業振興課
37
旭川市営住宅条例
35
都市建築部住宅課
38
旭川市都市公園条例
415
石狩川治水学習館
39
市立旭川病院の設置等に関する条例
40
旭川市立小中学校設置条例
41
1
グリーンテックス株式会社
農政部農林整備課
財団法人旭川市公園緑地協会
土木部公園みどり課
財団法人旭川河川環境整備財団
土木部公園みどり課
1
市立旭川病院事務局庶務課
89
学校教育部総務課
旭川市立高等学校条例
1
学校教育部総務課
42
旭川市特殊教育センター条例
1
学校教育部学務課
43
旭川市公民館条例
14
生涯学習部中央公民館
44
旭川市図書館条例
4
生涯学習部中央図書館
45
旭川市科学館条例
1
生涯学習部科学館
139
46
旭川市民文化会館条例
1
生涯学習部市民文化会館
47
旭川市井上靖記念館条例
1
生涯学習部彫刻美術館
48
旭川市大雪クリスタルホール条例
1
生涯学習部大雪クリスタルホール
49
旭川市彫刻美術館条例
1
生涯学習部彫刻美術館
50
旭川市総合体育館条例
1
財団法人旭川市体育協会
生涯学習部スポーツ課
51
旭川市地区体育センター条例
1
東地区体育センター運営委員会
生涯学習部スポーツ課
52
旭川市スケートリンク条例
1
株式会社旭川振興公社
生涯学習部スポーツ課
53
旭川市水泳プール条例
1
株式会社旭川振興公社
生涯学習部スポーツ課
54
旭川市テニスコート条例
1
株式会社旭川振興公社
生涯学習部スポーツ課
55
旭川大雪アリーナ条例
1
株式会社旭川振興公社
生涯学習部スポーツ課
56
旭川市柔道場条例
1
株式会社旭川振興公社
生涯学習部スポーツ課
57
旭川市春日青少年の家条例
1
生涯学習部青少年課
1
水道局営業部総務課
2
水道局営業部総務課
旭川水道事業及び公共下水道事業等に
58
関する条例
59
旭川市簡易水道条例
公の施設数
684
指定管理者制度導入施設数
482
計
学校を除く施設数
594 (No.40 と 41 については現在のところ指定管理者制度の対象となっていない)
市営住宅については団地数
石狩川治水学習館は都市公園の一部であり,指定管理者制度導入施設数にのみ計上
旭川空港は国が設置者であることから含めない
法律及びこれに基づく政令の定めにより設置している公の施設(道路,河川等)については含まない
指定管理者施設一覧(H18 年度)
施 設 名
使用料
公募
利用料金
非公募
指定管理者
管理の期間
旭川市東部住民センター
旭川市東部住民センター運営委員会
利用料金
非公募
旭川市住民
旭川市北部住民センター
旭川市北部住民センター運営委員会
利用料金
非公募
平成 17 年 4 月 1 日から
センター
旭川市永山住民センター
旭川市永山住民センター運営委員会
利用料金
非公募
平成 22 年 3 月 31 日まで
旭川市神居住民センター
旭川市神居住民センター運営委員会
利用料金
非公募
旭川市末広地区センター
旭川市末広地区センター運営委員会
利用料金
非公募
旭川市地区
旭川市豊岡地区センター
旭川市豊岡地区センター運営委員会
利用料金
非公募
平成 17 年 4 月 1 日から
センター
旭川市忠和地区センター
旭川市忠和地区センター運営委員会
利用料金
非公募
平成 22 年 3 月 31 日まで
旭川市啓明地区センター
旭川市啓明地区センター運営委員会
利用料金
非公募
140
旭川市神楽岡地区センター
旭川市神楽岡地区センター運営委員会
利用料金
非公募
旭川市地区
旭川市新旭川地区センター
旭川市新旭川地区センター運営委員会
利用料金
非公募
平成 17 年 4 月 1 日から
センター
旭川市北星地区センター
旭川市北星地区センター運営委員会
利用料金
非公募
平成 22 年 3 月 31 日まで
旭川市春光台地区センター
旭川市春光台地区センター運営委員会
利用料金
非公募
株式会社旭川振興公社
利用料金
公募
旭川市ときわ市民ホール
平成 17 年 4 月 1 日から
平成 19 年 3 月 31 日まで
旭川市勤労者福祉総合センター
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川市北部老人福祉センター
社会福祉法人旭川市社会福祉協議会
なし
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
旭川市老人
福祉センター
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川市東部老人福祉センター
社会福祉法人旭川市社会福祉協議会
なし
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
旭川市高齢
いきいきセンター新旭川
平成 17 年 4 月 1 日から
社会福祉法人旭川市社会福祉協議会
者等健康福
利用料金
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
いきいきセンター永山
祉センター
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川市近文市民ふれあいセンター
ニサカ・環境衛生指定管理者グループ
利用料金
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川市神居デイサービスセンター
社会福祉法人旭川盲人福祉センター
利用料金
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
特定非営利活動法人旭川障害者連絡
旭川市障害者福祉センター
平成 17 年 4 月 1 日から
利用料金
非公募
協議会
平成 19 年 3 月 31 日まで
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川市夜間急病センター
社団法人旭川市医師会
使用料
非公募
平成 22 年 3 月 31 日まで
旭川市旭正農業構造改善セ
平成 17 年 4 月 1 日から
あさひかわ農業協同組合
使用料
公募
ンター
平成 19 年 3 月 31 日まで
旭川市農村
旭川市永山ふれあいセンタ
地域センタ
平成 17 年 4 月 1 日から
あさひかわ農業協同組合
使用料
公募
ー
平成 19 年 3 月 31 日まで
ー
旭川市東鷹栖農村活性化セ
平成 17 年 4 月 1 日から
たいせつ農業協同組合
使用料
公募
ンター
平成 19 年 3 月 31 日まで
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川市江丹別若者の郷
江丹別産業開発株式会社
使用料
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
旭川市21世紀の森ログハウス管理
旭川市21世紀の森施設
平成 17 年 4 月 1 日から
使用料
非公募
運営協議会
平成 19 年 3 月 31 日まで
旭川市東地区体育センター運営委員
旭川市東地区体育センター
平成 17 年 4 月 1 日から
利用料金
非公募
会
平成 22 年 3 月 31 日まで
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川市東部スケートリンク
株式会社旭川振興公社
使用料
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
141
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川市末広市民プール
株式会社旭川振興公社
使用料
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
平成 17 年 4 月 1 日から
忠和テニスコート
株式会社旭川振興公社
使用料
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川大雪アリーナ
株式会社旭川振興公社
使用料
非公募
平成 22 年 3 月 31 日まで
平成 17 年 4 月 1 日から
旭川市柔道場
株式会社旭川振興公社
使用料
公募
平成 19 年 3 月 31 日まで
平成 18 年 4 月 1 日から
旭川市7条駐車場
株式会社旭川振興公社
使用料
公募
平成 20 年 3 月 31 日まで
平成 18 年 4 月 1 日から
旭川市つつじ学園
社会福祉法人北海道療育園
使用料
非公募
平成 20 年 3 月 31 日まで
旭川市へき地保育所及び季節保育所,通年
平成 18 年 4 月 1 日から
財団法人旭川保育協会
利用料金
非公募
制保育園
平成 23 年 3 月 31 日まで
平成 18 年 5 月 30 日から
旭川市嵐山レクリエーション施設
グリーンテックス株式会社
使用料
公募
平成 20 年 3 月 31 日まで
平成 18 年 4 月 1 日から
都市公園
財団法人旭川市公園緑地協会
使用料
非公募
平成 21 年 3 月 31 日まで
平成 18 年 4 月 1 日から
石狩川治水学習館
財団法人旭川河川環境整備財団
使用料
非公募
平成 23 年 3 月 31 日まで
平成 18 年 4 月 1 日から
旭川市総合体育館
財団法人旭川市体育協会
使用料
非公募
平成 23 年 3 月 31 日まで
使用料は旭川市の歳入、利用料金は指定管理者の収入
指定管理者のうち、株式会社旭川振興公社、財団法人旭川市公園緑地協会、財団法人旭川河川環境整備財団には旭川市が 25%以上出資し
ており、財団法人旭川市体育協会には旭川市が 25%未満の出資を行っている。
上表の指定管理者施設のうち、指定管理者制度の導入によって業者が変わったのは旭川
市近文市民ふれあいセンターのみで、それ以外はすべてこれまでの管理委託制度のもとで
も委託先となっていた業者である。なお、旭川市ときわ市民ホール、旭川市勤労者福祉総
合センター、旭川市江丹別若者の郷、旭川市 7 条駐車場、旭川市つつじ学園、旭川市総合
体育館がこれまでの直営から新たに指定管理者制度に移行し、旭川市嵐山レクリエーショ
ン施設は開設当初から指定管理者制度を導入した。
一般に、指定管理者の選定に当たっては指定管理者を広く公募することがよいとされて
いるものの、上表の指定管理者制度を導入した施設のうち半数以上の施設においては非公
募とされている。これまでの委託先を安易に指定管理者とすることがないよう、今後とも
公募対象施設を増やす努力をしてほしい。また、現在直営としている公の施設についても、
142
住民サービスの向上と行政コストの縮減を図ることができると判断される限り、指定管理
者制度を積極的に導入するべきである。
なお、旭川市においては公平性や透明性を保つために指定管理者の選定を協議する「選
定委員会」が設置されている。平成 17 年度までの委員はすべて市の職員から構成されてい
るものの、平成 18 年度は選定委員会の委員として施設の利用者団体の代表者や学識経験者
などの民間人を登用しており、この点は評価できる。
参考までに平成 18 年度から指定管理者制度へ移行した施設に係る平成 17 年度の委託料
を示すと次のとおりである。これら施設の指定管理者についても、住民サービスの向上と
行政コストの縮減を図る観点から今後の指定管理者選定を行ってほしい。
(単位:円)
施設名
旭川市 7 条駐車場
業務名
旭川市 7 条駐車場料金
収納等業務
旭川市へき地保育
旭川市へき地保育所・
所及び季節保育
季節保育所及び通年制
所、通年制保育園
保育園管理業務
旭川市都市公園
石狩川治水学習館
旭川市総合体育館
公園緑地維持管理業務
指定管理者
資状況
委託料
70.0%
27,123,600
(財)旭川保育協会
―
420,042,000
100%
779,467,500
100%
41,464,500
2.6%
17,692,500
(財)旭川市公園緑地
石狩川治水学習館管理
(財)旭川河川環境整
業務
備財団
一部管理業務
H17 年度
(株)旭川振興公社
協会
総合体育館窓口業務等
市の出
(財)旭川市体育協会
143
9.地元業者等に対する配慮(意見)
地元業者の育成という政策的な配慮がなされた業務委託として、本報告書ですでに記載
した以外にも、たとえば以下のような案件があった。
(単位:円)
業務等の内容
契約金額
契約方法
防犯灯設置業務
462,000
随意契約
防犯灯設置業務(その2)
409,500
随意契約
防犯灯設置業務(その3)
467,250
随意契約
防犯灯設置業務(その4)
351,750
随意契約
(注)随意契約は一者随意契約ではなくいずれも見積り合わせによる。
見積り業者および契約業者はいずれも旭川市の業者。
上表の業務はひとつにまとめて委託することが可能と思われるものの、これをあえて分
割することで受託する地元業者を増やしていると思われる(ただし、後述するように当該
業務についてはそのこと自体が直ちに問題だというわけではない)。なお、予定価格が 50
万円以下の場合は、少額な契約という理由で随意契約を行うことが可能となり、予定価格
書の作成を封書にする必要もない(旭川市の「契約事務の手引」)
。(※)
(※)予定価格書の作成を封書としなければならないのは、予定価格が事前に第三者に
知れることを防ぐためである。
これは上記の案件に限らず市の委託全般に対しての意見であるが、委託相手先として地
元業者を優先するという配慮について、何らの基準も設けず、またこうした配慮をするこ
とによって市の負担がどの程度増えるのか、そもそもそうした配慮が必要な業務であるの
かといったことなどについての明確なチェックを受けないまま、随意契約や指名競争入札
における業者指名のあり方に紛れ込んでいる。その結果、外部から見て手続き的に不透明
な部分が残っていることは否定できない。
監査人は地元業者の育成という配慮を否定はしない。したがって、それにより市が支払
う委託料が多少割高になることがあったとしても、場合によってはやむを得ないと考える。
しかし、そうした配慮をするのであれば、どのような案件について地元業者に委託するの
かという基準をある程度明確にした上で、基準自体の妥当性と個別案件ごとに当該基準を
適用することの妥当性について常にチェックを受けるべきである。市側との打ち合わせに
おいて、市が地元業者の育成を図り、また地元業者に数多くの受注機会を確保することは
基準の有無に係わらず当然の責務であるという意見もあった。しかし、何らの基準を持た
ないまま地元業者への委託が優先され割高な委託料を支払うことになった結果、市が過大
144
な負担をせざるをえなくなった場合でも市はその責務を果たしたと言えるのであろうか。
また、基準を設けることによって地元業者への委託がこれまで以上に優先され、逆に市の
負担が増加することもあるのではないかという意見もあった。しかし、最初から完全な基
準を作る必要はなく、これまで慣習としてきたものを文書にするだけでもかまわない。た
だ、その基準に従った結果委託料がどの程度割高になるかを事前あるいは事後的に評価し
て、基準自体の妥当性と個別案件ごとに基準を適用することの妥当性を常にチェックすれ
ばいいのではないであろうか。そうした評価を行わず、その妥当性についてもチェックを
受けないのであれば、本来は業務委託においてこうした配慮を行うべきではない。
145
10.事後評価(意見)
ここでいう事後評価とは単なる業務委託の完了検査ではなく、経済性や効率性の点から
契約方法や相手先の選定方法は適正であったか、委託の理由に合理性があったかなどを評
価し、次年度以後の業務委託契約に生かす目的で行われるものを意味する。
監査に先立って行ったアンケートによれば、すべての業務委託のうち事後評価を実施し
ているのは件数割合では 23%、金額割合では 37%となっていたものの、事後評価を実施して
いるという回答があった案件の一部についてその内容を調査したところ、単に業務の完了
検査を実施していることをもって事後評価を実施していると回答したものがかなり含まれ
ていた。したがって、市の業務委託においてここでいう事後評価を実施しているケースは、
ごくわずかではないかと思われる。たとえそうではないとしても、本報告書においてこれ
まで記載した内容を考慮すれば、少なくとも事後評価が適切に機能しているとは言えない
のではないであろうか。
業務委託が予定した行政目的達成に貢献しているかどうかは、事後評価を行ってこそわ
かるものである。したがって、事後評価の結果によっては、委託によらず直営で行ったほ
うがよいという結果になることもあるであろうし、有効性という点からそもそも業務を続
ける必要があるのかという議論もありうる。いずれにしても、事後評価を行っていない、
あるいはそれが適切に機能していないと思われる現状ではこうした見直しが行われないま
ま従来の方法を踏襲し、本来は例外中の例外である一者随意契約が安易に行われたり、指
名競争入札では 90%を超える高い落札率で同一の相手先と長期に渡って契約するような不
自然な業務委託が続けられたりすることになる。可能であれば、契約を担当した部局とは
別の部局等による事後評価が行われ、こうした問題点を市自ら正すことができる仕組みづ
くりが望まれるところである。
146
11.設計金額の事前公表制度(意見)
旭川市では、入札契約制度の透明性、競争性の向上等を図るため、市が発注する 130 万
円以上の建設工事、さらに 50 万円以上の測量の委託及び工事に係る調査・設計等の委託の
うち総務部契約課が契約を担当する案件について、入札前に設計金額(実務的には予定価
格と同額であるケースが多い)を公表している。ただし、談合を防止するために、指名競
争入札における指名業者名は非公表としている。契約課によると、設計金額を事前に公表
する制度のメリットはそれによって予定価格を不正な方法で知ろうとする業者の行動を意
味のないものにできる点と、価格の上限をあらかじめ公表することによってその価格以下
での競争を促進できる点にあるとのことである。
しかし、競争入札においては業者に設計金額を知らせないからこそ、各業者は与えられ
た仕様書に基づき安い価格を提示せざるをえないのであって、設計金額を公表してしまっ
てはこうした競争が適正に機能するとは一般的には考えづらい。もっとも、市もこの点は
十分に承知しており、設計金額の事前公表制度については同制度を採用する他自治体の動
向にも注意しながら試行している段階とのことである。したがって、今後も同制度のメリ
ットとデメリットを比較し、他自治体の動向にも注意しながらこの制度を続けるべきかど
うか、慎重に検討してほしい。なお、これと似た制度として設計金額そのものは公表しな
いものの、市の詳細な積算情報について単価と金額のみを空欄にして業者に閲覧させてい
る例がある。どのような単価を使うかについて別表をつけているものもあり、実質的に設
計金額を公表しているのと変わらないと思われる案件については上記と同様の問題がある。
参考までに、平成 18 年 1 月時点で工事に係る業務委託について予定価格あるいは設計金
額の事前公表制度または事後公表制度(入札後に公表)をとる自治体と非公表とする自治
体について示すと次ページのとおりである。
147
事前公表
事後公表
非公表
北海道、青森県、茨城県、栃
岩手県、山形県、福島県、千
秋田県、群馬県、東京都、神
木県、埼玉県(設計金額)、
葉県、新潟県、富山県、福井
奈川県、石川県、山梨県(順
岐阜県、三重県、京都府、大
県、長野県、静岡県、兵庫県、 次事前公表へ移行中)、滋賀
阪府、和歌山県、山口県、愛
奈良県、徳島県、香川県、福
県、島根県、岡山県、広島県、
媛県、高知県、熊本県、大分
岡県、佐賀県、長崎県、鹿児
横浜市、広島市、郡山市、い
県、宮崎県、千葉市、名古屋
島県、沖縄県、さいたま市、 わき市、金沢市、岐阜市、倉
市(一部非公表)、京都市、
相模原市、長野市、浜松市、 敷市
福岡市、旭川市(設計金額)、 豊田市、姫路市、福山市、鹿
秋田市、川越市、横須賀市、 児島市
新潟市、堺市、高槻市、奈良
市、和歌山市、高松市、松山
市、高知市、長崎市、熊本市
(随意契約を除く)、大分市、
宮崎市
(注)表にない自治体は未回答か、事前公表・事後公表制度の併用のいずれか。
148
12.その他
(1)近文清掃工場設備修繕その 2・その 3 業務(意見)
本業務委託は焼却炉の排ガス処理設備である冷却塔及びエアブロー配管等の修繕に伴う
ものであり、設備の機能を確保する上で緊急に修繕する必要性が生じたため、事業年度末
に他の予算科目からの充当によって支出しているものである(以下、これを「流用」と記
載する)。通常、流用は何らかの理由により当初予算に不足が出るか、緊急を要する想定外
の支出が必要になった際に発生する。
今回の修繕の一部については平成 18 年度と平成 19 年度に予定していたものの、焼却炉
に緊急を要する不具合が生じたため平成 17 年度で発生しているとのことである。しかし、
平成 8 年度に操業した清掃工場は平成 17 年度で 10 年以上経過しており、各部の補修・交
換が必要な時期に来ていることは事前に予想されるはずである。実際、清掃工場では平成
17 年度と平成 18 年度において約 2 億円程度の修繕費が必要としているのに対して、平成
17 年度の当初予算は 3,600 万円、平成 18 年度の予算は 3,500 万円であり、結果を見る限り
適切な予算措置とは言い難い面がある。
清掃工場で作成した予算流用に係る説明資料等によれば、
「プラントの性格上、計画的な
点検、修繕を実施しないと重大な停止・事故に繋がることもあることから、平準化した予
算の確保を図る必要がある・・・(中略)・・・計画的な修繕整備を実施しないと、清掃工場と
しての役割を果たせず長期停止が危惧される」などの検討結果が記されている。近文清掃
工場の焼却炉は旭川市で唯一の焼却炉である。万が一、炉に重大な事故が発生すれば環境
汚染や住民の健康被害が懸念される上に、ごみを焼却できずにそのまま埋め立てることに
よって、ごみの埋立地である最終処分場にも負担がかかることになる。
市はこうした現状を踏まえて、焼却炉の停止に伴う環境汚染や住民の健康被害など重大
な事故が発生しないよう必要な予算措置を計るべきであるし、計画的な修繕は結果として
全体の修繕費及び委託料の抑制にも繋がると思われる。市民にとって本当に必要な予算が
削られることのないよう望みたい。
149
(2)平成 16 年度包括外部監査における指摘事項の改善状況(委託に関する部分のみ)
過去の旭川市包括外部監査においても、それぞれのテーマの中で業務委託についての指
摘事項や意見があり、本報告書でも可能な限りその改善状況について記載してきた。ここ
では、これまで記載した以外に検証することができた包括外部監査の改善状況について記
載する。
①ペットボトル中間処理業務委託
<平成 16 年度の指摘事項>
平成 16 年度の委託料の積算において、処理量が大幅に増加したことに伴い直接経費に乗
じて求める諸経費の率そのものを増加させているものの、率の増加に対する明確な理由が
ない。諸経費率での調整は不明瞭であり適切ではない。
<改善状況>
平成 17 年度から処理量の増加についてはそれに見合う直接経費で積算し、諸経費率につ
いては率を増加させる以前の平成 15 年度と同じ 5%で積算していることを、積算書で確認
した。なお、増加させた直接経費についても特に問題となる点はなかった。
②旭川市廃棄物処分場管理運営業務委託
<平成 16 年度の指摘事項>
中園廃棄物最終処分場管理業務の人件費相当の積算において、業務内容を考慮せず市の
職員に準じて計算することは妥当ではなく、計算基礎金額にも客観性がない。また、旭川
市廃棄物処分場搬入管理業務の委託については㈱旭川振興公社への随意契約ではなく入札
を実施すべきである。
<改善状況>
委託設計書を閲覧したところ、平成 16 年度から下水道施設維持管理積算要領に定める労
務単価に基づき、業務内容ごとに人件費の積算を行っている。ただし、平成 15 年度と平成
16 年度では業務内容が変わっているため、この要領に基づく人件費の積算を行った結果、
人件費が削減されることになるのかどうかは確認できなかった。
また、㈱旭川振興公社への一者随意契約は平成 17 年度まで行われたものの、平成 18 年
度からは指名競争入札が実施されており、入札の結果同公社が落札している。
③旭川市廃棄物処分場清掃業務委託
<平成 16 年度の指摘事項>
別に契約している廃棄物処分場搬入管理業務と本業務委託に密接な関係があるとして、
廃棄物処分場搬入管理業務の受託業者である㈱旭川振興公社と一者随意契約で契約してい
150
る。しかし、これらの業務に密接な関連性は認められず、また同一の業者が受託すること
によって交通費などの面で経済的に有利という主張も積算内容を検討した結果正当性が認
められないため、本業務委託では複数の者から見積書を徴収すべきであった。また、積算
に誤り(清掃回数)があった。
<改善状況>
平成 18 年度から一者随意契約を改め複数の者から見積書を徴収する随意契約によってお
り、その結果、受託業者は㈱旭川振興公社となっている。また、委託設計書等を閲覧した
ところ、検証した範囲で積算に誤りは無かった。
④旭川市廃棄物処分場遮水工漏洩(供用開始前)調査ほか業務委託
<平成 16 年度の指摘事項>
業務委託契約には報告書作成業務までが含まれているものの、積算上は報告書の作成費
が漏れている。より厳格な積算を行うよう心がけるべきである。
<改善状況>
委託設計書を閲覧したところ、平成 16 年度から本業務委託の積算には報告書の作成費が
計上されていたものの、作成費率の算定で計算式に誤りがあった。担当者自身のチェック
を徹底することに加え、担当者以外の人間のチェックについても適正に機能させるべきで
ある。
⑤ごみ収集に係るコスト
<平成 16 年度の意見>
直営収集と委託収集をコストの面から比較した場合、直営は委託の 4 倍のコストがかか
っているため、経済性の面で直営収集が不利なのは明らかである。したがって、ごみ収集
についてはより一層委託化を進めるべきである。
<改善状況>
収集量について入手できた最新のデータによれば、平成 18 年 6 月から平成 18 年 11 月ま
での 6 か月間における収集量の累計 48,017.56 トンのうち、40,322.84 トンが委託車両によ
る収集であったため、収集量からみた委託比率は 84%となる。これは、同様に計算した平
成 15 年度 1 年間の委託比率 75.1%に比べて 8.9 ポイント上昇していることから、委託化は
進んでいると言えるだろう。
151
⑥ごみの収集及び運搬体制
<平成 16 年度の意見>
3 名で行っているごみの収集について、2 名体制による収集及び運搬体制の実施可能性に
ついて検討する必要がある。ただし、収集ルートや季節によって 3 名体制と 2 名体制を使
い分けるとか、ごみの分別がさらに進むことにより、ごみの種類によって 3 名体制と 2 名
体制を使い分けることも考えられる。
<改善状況>
段ボールの収集は平成 16 年 1 月から 2 名体制とし、プラスチック製容器包装及び紙製容
器包装とペットボトルの収集は平成 18 年 6 月から 2 名体制とした。ただし、燃やせるごみ
の収集については平成 17 年 7 月頃、道内主要都市 9 市と道外中核市 34 市の合わせて 43 市
について市が調査を行った結果、2 名体制のところが少なかったことや、燃やせるごみは重
量があるため 2 名体制だと作業が重労働になり、車両を小さくすることも検討しなければ
ならず、かえって収集の経済性を落とす可能性があるため、現在も 3 名体制で行っている
とのことである。現在、全国の多くの自治体で 2 名体制での収集を検討しており、旭川市
としても、他市の動向、調査結果を参考に今後も検討を続けるとのことである。また、燃
やせないごみについては現在も 3 名体制であるものの、平成 19 年 8 月から始まる家庭ごみ
有料化後のごみ排出量の推移をみながら、平成 20 年度に各収集体制の見直しを行う予定で
あるため、その中で 2 名体制については改めて検討するとしている。
⑦ダイオキシン類及びばい煙測定業務委託
<平成 16 年度の意見>
平成 16 年 6 月に実施されたばい煙採取の測定結果の報告につき、仕様書で指定する期間
を経過した後に速報が提出されていた。清掃工場の運転管理上、重要な数値のため、仕様
書においては「速報」の定義を、業務委託契約約款上においては速報の報告義務履行につい
て明確に定める必要がある。
<改善状況>
委託契約書、業務仕様書、業務完了報告書、結果報告書などの書類を閲覧したところ、
「速
報」の概念を整理し、仕様書上で結果報告書の提出期限を明確にした。また、履行義務に
関しては、契約書において業務履行に係る遅滞の規定を設けており、実際の提出も期限内
にされていた。
152
総
括
1.本報告書における予定価格等の記載について
「個別調査の結果」の冒頭で記載したように、本報告書では個々の業務委託についての「予
定価格」と、同時に記載することによって予定価格を計算できる「落札価格」及び「落札
率」(以下、
「予定価格等」と記載する。)の記載を差し控えている。これは本報告書におい
て予定価格等を記載することが結果的には予定価格の事後公表にあたるためである。
入札後に予定価格を事後公表することについては、「地方公共団体の公共工事に係る入
札・契約手続及びその運用の更なる改善の推進について」
(平成 10 年 4 月 1 日 建設省経
入企発第 12 号、自治行第 35 号
各都道府県知事あて建設省建設経済局長、自治省行政局
長)において次のような指導がなされ、予定価格の事後公表を積極的にすすめるべきとさ
れている。
3 予定価格の事後公表
不正な入札の抑止力となり得ることや積算の妥当性の向上に資することから、予定価
格の事後公表を行うこと。また、コストの内訳をあわせて公表することについても検討
すること。
業務委託をテーマとした他自治体の包括外部監査報告書においても予定価格等は記載さ
れており、本報告書においても、当初は個別の業務委託案件について必要に応じて予定価
格等を記載していたところである。
しかし、上記の指導は「公共工事」に係るものであって業務委託について適用されるも
のではないという点と、公共工事及びそれに係る業務委託と異なり、毎年度同じ業務がほ
ぼ同額の委託料で発注されることが多い一般の業務委託において、事後とはいえ予定価格
等を公表することは、結局翌年度の業務委託に係る予定価格等が事前公表されるのと同じ
効果をもたらすという市の主張も否定はできない。市では一部の公共工事と測量の委託及
び工事に係る調査・設計等の委託について入札前に設計金額(実務的には予定価格と同額
であるケースが多い)を事前公表しているものの、予定価格を入札前に公表することの是
非については「11.設計金額の事前公表制度」のところで述べたとおり、一般的には望ま
しくないと考えられる。
そこで、本報告書では複数の業務委託の予定価格合計や設計金額の一部を記載する場合
を除き、個々の業務委託の予定価格等を記載しないことにした。
153
2.業務委託の包括外部監査を終えて
業務委託の包括外部監査を終えて感じたのは、地方自治法と同法施行令において契約締
結方法の原則とされている一般競争入札を実施すべき、あるいは実施することが可能と思
われる案件でもこれを真剣に検討した様子がうかがえず、安易にそれまでの契約締結方法
である指名競争入札や随意契約を採用している案件が多かった点である。また、指名競争
入札における指名業者の選定については、業務委託被指名者等選考委員会において適正に
選考されているという案件が多かったものの、指名登録業者の中からどのような過程を経
て業者が指名されたのか外部から見る限り必ずしも明確ではなく、結果として同一業者が
長期間に渡って高い落札率で落札している例が多かった。さらに、随意契約については旭
川市契約事務取扱規則においてなるべく 2 人以上の者から見積書を徴することと定められ
ており、それが可能と思われるにもかかわらず特定の者 1 人を相手方として選ぶ一者随意
契約によって行われている例が多かった。これらはいずれも市が支払う委託料が高止まり
することによって、結局は市の財政負担を増やす可能性があるということを忘れてはなら
ない。
市の財政負担を増やすという点では、「9.地元業者等に対する配慮」で記載した内容は
実は大変難しい問題である。業務委託というものを厳密に考えれば、すでに記載したよう
に政策的な配慮は本来行うべきではなく、可能な限り競争入札を実施し、入札参加業者に
ついては広く公募して市にとって最も有利な相手先と契約すべきということになる。しか
し、市にとって多少不利になることがあったとしても地元業者の育成を図るべきというの
も当然の考え方であり、それらの折り合いをどこでつけるかという判断が難しいからであ
る。また、その判断について何らかの基準を設けるといっても、どのような基準を設けれ
ばよいかというのも大変難しい問題である。したがって、これらについては事前あるいは
事後の評価を行うことによって、基準自体の妥当性と基準を適用することの妥当性につい
て継続的に見直してほしい。
なお、事前あるいは事後の評価は地元業者への配慮に係るものだけではなく、指名業者
の選定基準や、業務委託全般にとっても重要な手続きである。特に、事後評価が適正に行
われれば、こうした基準を常に見直すことが可能になるだけでなく、一者随意契約の妥当
性や形骸化していると思われる指名競争入札の妥当性について検討することによって、早
期に改善の方策を探ることができるようになると思われるからである。そういう意味での
事後評価は現在のところ行われていないと思われるため、今後は業務委託についての事後
評価を積極的に行ってほしい。
この報告書を作成している最中のことであるが、平成 19 年 4 月 1 日以後旭川市が発注す
る公共工事については、条件付きながら一般競争入札を原則とすることが発表されている。
業務委託についても同様の検討がなされ、委託の効果が最大限に発揮されるよう業務の改
善が行われることを期待したい。
154
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