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FUKKOU Vol.27 - 関西学院 災害復興制度研究所

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FUKKOU Vol.27 - 関西学院 災害復興制度研究所
KWANSEI GAKUIN UNIVERSITY
INSTITUTE FOR THE RESEARCH OF DISASTER AREAS RECONSTRUCTION
関西学院大学災害復興制度研究所ニュースレター
FUKKOU
contents
目 次
27
Vol.
忘却と恢復と
関西学院大学経済学部准教授
○巻頭言
栗 田 匡 相
忘却と恢復と / 栗田匡相……………… 1
○報告
ネパール地震被災地調査 / 松田曜子……………………………… 2
○出版案内
4 月 25 日におきたネパールの大地震では 8700 名
以上の方々が命を落とされたらしい。当然のことだが
8700 名の方々にはそれぞれの名前があり、人生があ
り、家族があり、友人や隣人がいた。どのような夢や、
あるいは悩みを持って日々を生きていたのだろうか?
もし、私と同じ 41 歳の方が亡くなったのであれば、
『原発避難白書』8 月末に刊行
私の人生と同じ年月にはどんな喜びや怒りや悲しみが
/ 松田曜子……………………………… 3
あったのだろうか? そもそも何故私は大地震の起こ
○2015年度研究会ラインアップ
………………………………………… 4
○報告
連続勉強会「国家緊急権を考える」
/ 野呂雅之 … ………………………… 5
○科研概要
災害による「地域破壊」の2科研がス
タート / 山 泰幸… ………………… 6
○観感学楽
る前に、そのような人々の人生に想いをはせなかった
のだろうか?
つい先日、関学上ケ原キャンパスの最寄り駅甲東園
駅近くで 40 年近く小さな居酒屋を切り盛りしている 75 歳のおかみさんと話をする機
会があった。彼女はただの一度も今の仕事を辞めたいと思ったことはないらしい。お客
さんと一緒にいて楽しいから、働いているという感覚もほとんど無いとおっしゃってい
た。人付き合いを極限まで楽しめる人、そんな印象を受けた。ただ、阪神・淡路の震災
頃から徐々に関学の学生気質が変わってきたとも話していた。飲みに来る学生が減った
というだけではなく、隣で飲んでいるおじさんと気楽に打ち解けたり、人生相談をした
り、そんな光景が現在ではほとんど見られなくなっている、と。情報社会でリアルな人
付き合いが出来なくなった学生、よくいわれる話だ。
先日、担当の授業で学生に聞いた質問がある。「世間では内向きの学生が増えている
と言われているが、そもそも内向きとか外向きというカテゴリー分類って必要?」と。
とっさにつかんだ化粧ポーチ
この質問に、比較的多くの学生がカテゴリー分類は必要だと答えた。なぜなら、自分が
/ 深石葉子
どのような人間かがわかりやすくカテゴライズされ、自己分析や自己理解につながるか
被災地の復興と災害廃棄物 ─放射性
物質に汚染された廃棄物にどう向き合
うべきか / 金 太宇 ………………… 7
○ともに
「原発避難」支える花見会
夏期開室状況
日本災害復興学会 会員募集中 !!…… 8
ららしい。なるほどとも思ったが、カテゴリーという誰かに決められた枠の中に安寧す
る心地よさに麻痺しているのでは、という疑念も完全にはぬぐえない。いや、そんな批
判を偉そうにするのであれば、それはネパールの人たちの人生に想いをはせることを忘
却していた私自身にも向けられるはずだ。カテゴリーや情報に安心している私たちに、
リアルさを求めることは無理がある気もする。
近年、レジリエンス、自助、共助等といった言葉が「防災」を議論する際に語られて
いる。これらの言葉が確かな意味を持つために必要なことは何だろうか? 情報社会で
失われた人々の主体性や関係性を育む社会にしていくというのはその通りだと思う。た
だ、どうやるのかが難しい。おっと、すぐに解決策や処方箋を取り出そうとするのもス
ピード重視の情報社会の悪しき慣習だ。レジリエンスを育むには忍耐と楽観的な意志が
必要だ。いつかネパールの人たちの人生に追いつくために、それを忘れないようにしよ
う。
1
◀パルン全景
報 告
ネパール地震
被災地調査
関西学院大学災害復興制度研究所研究員・特任准教授
80 km
40 mi
©d-map.com
松田 曜子
150 余りの学用品セットを届け、学校や地域の代表から子ど
もたちに配布してもらった。このような配布の調整を担ってく
れたのは、ファラン・ソック(日本語で「様々な考え」という
意味)
という名の、
地元の若者有志で結成するグループである。
ファラン・ソックには、地元の写真屋などの商店主、役場職員、
教師などが所属していて、これまでに被災した貧しい家庭への
支援など地元でできる活動を行ってきたという。
学用品を配布した小学校では、空き教室を使って被災した子
どもたちが共同生活を送
首都カトマンズから北西約 80km のゴルカ郡を震源とするマ
っていた。もともと、子
グニチュード 7.8 の地震が発生した。本震から 17 日後の 5 月
どもたちは毎日徒歩で
12 日にもマグニチュード 7.3 の大きな余震が発生した。ネパ
1、2 時間かけて登校し
ール政府は、6 月末現在で死者 8800 名以上、全壊家屋約 60
ていたが、地震で山の上
万棟、半壊家屋約 28 万棟の被害が発生し、国連は約 280 万
の家屋が壊れたため、安
人の被災者が支援を必要としていると報告している。6 月 25
全な校舎で生活している
日には政府による復興のための国際会議が地震後初めて開催さ
のだという。その他にも、
ファラン・ソックメンバーの案内で、
れ、世界各国や援助機関から総額 44 億ドル(約 5400 億円)
いくつかの山間集落を訪れた。どれも 1 〜 2 時間の徒歩でしか
の支援が表明されたところである。この額はネパールの GDP
アクセスできない集落である。ある山の上には、約 50 人の子
の約 2 割に相当する額であり、なかでも、同国の重要な財産で
どもが学ぶ小さな小学校があり、脆いコンクリート造の校舎は
ある世界遺産の寺院・遺跡群に甚大な被害が生じたことで、こ
完全に崩壊していた。校長先生は、「もし地震が平日の昼間に
れらの建築の復旧支援に注目が集められている。
起こっていたら、生徒も私も全員下敷きだったわ」と話してく
際 NGO など、国外からの大規模な支援の報道が目を引くが、
当然、ネパールのそれぞれの地域において、身の丈に応じた助
▶崩壊した校舎
さて、ネパール地震についてはこのように諸外国や国連、国
れた。この小学校では保
護者とともに、同じ場所
(校舎のあった場所は
け合いの動きも生まれている。当研究所では、6 月 17 日から
水たまりを埋めた土地
22 日までの 6 日間、ネパール中部のマクワンプール郡パルン
だという)に再建するか
を中心とした調査を行った。今回の調査は、松田曜子研究員が
どうかも含め、今後話し
大阪大学大学院の博士課程で文化人類学を学ぶスジャン・アデ
合いを継続していくのだと言う。この学校以外にも、我々が見
ィカリ氏とともに現地入りした。アディカリ氏は、地震後「被
聞しただけで同じように全壊した校舎は 2 棟、いずれも徒歩で
災者に直接届く支援がしたい」と立ち上がった大阪大学のネパ
しかアクセスできない場所に建っていた。こうした集落への外
ール人留学生グループの代表を務めている。今回の訪問では彼
部支援は、都市部に比べて格段に限られており、仮設校舎の建
らが日本で集めた学用品を被災した小学校で配布しながら、外
設材料が配布されたきりであった。
「見えやすいところに集中
部からの支援が届きにくい中山間地域や、被災地から離れた都
する支援」を体感したが、震災でそれが地域格差を増大させる
市部において、地元の人々が行った被災者支援の活動について
危険もはらんでいる。
情報を集めることを目的とした。
2
◀空き教室で暮らす子ども
ネパールでは、4 月 25 日午前 11 時 56 分(現地時間)に、
なお、去る 7 月 1 日には、AMDA の柴田幸江氏、CODE 海
マクワンプール郡パルンはカトマンズから車で約 3 時間半
外災害援助市民センターの吉椿雅道氏とともに本学でネパール
(距離は約 30 キロ)南西に行ったところにある人口約 5000
地震の現地活動報告会を開催した。今後は、この報告をまとめ
人の市である。周辺には小さな集落が山の稜線に沿って点在し
るとともに、外部支援と対比させた地域の助け合いの活動に着
ている。我々は、今回パルン市内にある 2 つの小学校に計
目しながら調査研究を継続していきたい。
FUKKOU vol.27
『原発避難白書』
8月末に刊行
関西学院大学災害復興制度研究所
研究員・特任准教授
松田 曜子
原発避難問題に関する「白書」をつくろうという動きは、
テゴリに分類し、各カテゴリにおいて、避難区域の設定を軸と
2012 〜 2013 年度の「原発避難者支援制度研究会」で研究
した公的支援の現状と、東電に対する損害賠償の現状をあわせ
会の参加者、特に支援者の全国ネットワークである JCN(東
て見ることで、原発避難者のおかれている現在の状況を概観す
日本大震災支援全国ネットワーク)や SAFLAN(福島の子ど
ることが本章のテーマとなっている。また、それぞれのカテゴ
もたちを守る法律家ネットワーク)のメンバーと対話を重ねる
リから 1、2 名ずつ該当する避難者にインタビューを行い、避
なかで生まれた。その当時の問題意識は、「原発避難」という
難の経緯や現在の課題などの声を集めた。この章の内容を読む
大規模で複雑な現象の骨格を描きたい、避難者一人ひとりの課
だけでも、個別の避難者が抱える課題がそれぞれ異なり、
「原
題が個別化していく中で、できるだけ網羅的に記録を残してお
発避難」の問題が多様な社会問題の複合体であることを実感さ
きたい、そもそもこの問題について誰もまとめない、政府にも
せられる。
把握する気がないのなら、自分たちでまとめなければならな
い、といったものだった。
第 3 章 「 避難先の状況 」 は、一転して「今の避難先」に注目
した章である。本来、避難者は日本中どこに避難したとしても
このようにして企画が立てられた『原発避難白書』が、多く
同じ対応を受けられるべきである。しかし、実際は各自治体が
の方の協力を得てこの秋刊行される。今、原発避難の問題は、
それぞれ独自の基準で「支援」を行う形を取っている。これら
福島県が自主避難者への住宅支援打ち切りを発表するなど、避
の公的支援に加え、各地域では民間団体や社会福祉協議会が中
難者自体の存在が「なかったこと」にされようとしている。こ
心となった交流、支援活動が行われている。本章では、北海道
のタイミングで発刊される「白書」には当初の問題意識に加え、
から沖縄県までの全都道府県について主要な避難者対応施策と
原発避難という不条理が存在することの証明としての役割が加
支援団体の活動内容をリストアップしている。なかには、官民
わっているようにも思われる。
協働でサポートする愛知県の方式や、避難者自身が立ち上がり
原発避難という事実がそもそも把握されてこなかったという
ネットワークを結成する新潟、岡山など先進的な取り組みがな
ことは、白書の編集委員会が長い間にわたり扱ってきた「今避
されている地域についてはベストプラクティスとしてその内容
難者は何人いるのか」という最も素朴で基本的な問題に象徴さ
も記載している。第 4 章 「 テーマ別論考 」 では、上述のとおり
れている。避難者数に関する代表的な公的データとして、復興
多様な社会問題の複合体である原発避難を経済、住宅、家族な
庁が毎月発表する統計値があるが、これが(1)避難者の定義
ど様々な切り口から専門家が解説を行っている。
を矮小化している、(2)(総務省の避難者登録システムに基づ
「白書」ができるだけ多くの人の手に渡り、現在進行形の問
いている限り)データの更新がされていない、という少なくと
題が少しでも避難者の意向に沿った形で解決されること、およ
も 2 点において正確な把握からほど遠いことがわかってい
び、将来にわたり原発避難問題の不条理さが伝達されていくこ
る。白書ではこうした基本的な問題の記述に務めている。その
とを願っている。
他、全体の概要は以下のようである。
第 1 章 「 原発事故からの避難 」 では、
「原発避難」が発生した
経緯を振り返る。2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に伴い、
東京電力福島第一原発で重大事故が発生し、福島県の内外から
多くの人が遠方に避難した。以降、この間の原発避難の大まか
な見取り図を、政府の対応を中心に見ていく。また、上記で述
べた避難者の人数に関して、異なる定義の数字を単純に合計す
るなど、粗雑な扱いについてもここで指摘する。第 2 章 「 避難
元の状況 」 は、避難者の「元の居住地」に目を向けた章である。
避難者は元の居住地の違いによって、それぞれ異なる苦悩や生
活上の課題にさらされている。ここでは避難者の元の居住地を
「帰宅困難区域」から「自主(区域外)避難」までの 7 つのカ
原発避難白書
編者:関西学院大学 災害復興制度研究所
東 日本大震災支援全国ネットワー
ク(JCN)
福 島 の 子 ど も た ち を 守 る 法 律 家
ネットワーク(SAFLAN)
価格:未定
発行:人文書院
3
2015年度
研究会ラインアップ
研究所の第 3 期に入った 2015 年度は、阪神・淡路大震災や東日本大震災の課題を踏まえて被災者総合支援法の具体化
を目指す「法制度研究会」など 6 研究会を開設している。2013 年度から継続する「地域復興の事起こし研究会」、科研・
二地域居住研究会の後継研究会である「避難・疎開研究会」のほか、「ガバナンス研究会」と「地域再生研究会」、「復興
における日本型包摂の研究会」を新たに立ち上げた。
法制度研究会
ガバナンス研究会
テーマ 「被災者総合支援法のあらまし」についての研究
テーマ 「人間復興」を実現するためのガバナンス研究
趣 旨─────────────────────────
趣 旨─────────────────────────
2010 年に発表した災害復興基本法試案に基づく実定法
「ガバメント」が政府による上の立場からおこなう拘束力
の研究を柱に据える。阪神・淡路大震災 20 年の教訓を踏ま
のある統治システムとすれば、「ガバナンス」は組織や社会
えながら、東日本大震災で露見した被災者支援の制度や実体
に関与するメンバーが主体的に意思決定や合意形成をおこな
のほころびを検証し、既存の災害法制を棚卸しする。そのた
うシステムだが、災害復興は「ガバメント」として制度設計
めに災害法制の検証本を年度内に刊行して課題を精査したう
されており、被災者との意識の乖離を引き起こしている。防
えで、パッチワークのように整合が乏しいとの指摘のある支
災、初動、復旧・復興において、国や都道府県、市町村、中
援の仕組みを復旧・復興のフェーズに沿って総合支援法とし
間支援組織、住民の関係性を明らかにし、「人間復興」を実
て統合し体系化していく。
現するための思想面、
制度面での仕組みと役割分担を考える。
地域復興の事起こし研究会
避難・疎開研究会
テーマ 住民主体のまちおこし
テーマ 原発事故などによる県外避難者の課題についての研究
趣 旨─────────────────────────
趣 旨─────────────────────────
本年度はこれまでの当研究会の検討結果を踏まえて、特に
東日本大震災は 2016 年 3 月で発生から 5 年を迎え、県
「事起こしの調査論」の方法に焦点を置き、必要性と可能性
外に避難した被災者を支える住宅の家賃補助などの制度や仕
について具体的で試行的な検討を行う。主たる検討課題は以
組みが打ち切りになる公算が強まっている。とりわけ東京電
下のとおりである。
力福島第一原発事故による避難者は、住んでいた地域によっ
①事起こしの成功モデルの調査法の検討 - 実践者からの経験
て支援のばらつきがあり、
被災者のニーズは多様化している。
知の採録と、定型化の試行
今年度は主に関西在住の県外被災者から聞き取り調査をし
②事起こしの実践による被災地域初動調査の試行と記録
て、大震災から 5 年後以降も継続すべき支援に関する政策
③四面会議システムの活用と検討結果の記録
提言につなげていく。
地域再生研究会
テーマ ①南海トラフ巨大地震の被災想定地の事前復興研究
復興における日本型包摂の研究会
テーマ 復興・減災に関わる言葉の再解釈
②公害汚染からの再生地域に学ぶ
趣 旨─────────────────────────
趣 旨─────────────────────────
近い将来発生が予想されている南海トラフの巨大地震に向
災害復興の過程で外部支援が入り、地域に「包摂」、「エン
けて、大きな被害の想定される太平洋沿岸の自治体が取り組
パワーメント」など新しい言葉がもたらされることがある。
む地震・津波対策を検証するとともに、未来の津波に備えて
これらの言葉は行政や外部支援者、住民リーダーらによって
内陸部への移住が始まっているという前兆現象を把握する。
多用されるが、使い勝手が良い反面、言葉の実体について当
そうした地域で事前復興を考えるワークショップなどを企画
事者が考える機会を奪う側面も持つため、地域の文化背景に
し、住民が主体となるまちづくりをサポートする。また、大
もとづいた言葉の再解釈の作業が必要である。本研究会では
気汚染や水俣病などの公害被害から地域の再生に取り組んで
この問題に通じる図書の輪読や実践発表を行い、日本やアジ
きた人たちから聞き取りをして、災害復興における地域再生
ア社会で通じる復興、支援の考え方を整理する。
との共通点をさぐる研究も始める。
4
FUKKOU vol.27
連続勉強会
「国家緊急権を考える」
東日本大震災をきっかけに、
「国家緊急権」がにわかに憲法改正の重点項目に上がってきた。大規模な自然災害
などに対処するため、首相や内閣に一時的に権限を集中させ、国民の権利を制限する緊急事態条項を憲法に加えよ
うという動きだ。政府への権力集中を認めるそうした緊急事態条項はすでに災害対策基本法などに定められている。
憲法改正をめぐる「国家緊急権」と「発災時の初動対応」との関係について弁護士や憲法学者を講師に招き、その
問題点を考える連続勉強会を日本災害復興学会復興法制度研究会と共同で 4 月から 4 回にわたって開催。司会は災
害復興制度研究所の「法制度研究会」座長の山崎栄一・関西大学社会安全学部教授がつとめた。
勉強会日程
講 師〈敬称略〉
4 月 25 日 永 井 幸 寿(兵庫県弁護士会)
5 月 23 日 棟 居 快 行(大阪大学名誉教授・国立国会図書館専門調査員)
6 月 27 日 愛 敬 浩 二(名古屋大学法学研究科教授)
7 月 25 日 山中倫太郎(防衛大学校准教授)
「国家緊急権」の定義
「戦争・内乱・恐慌ないし大規模な自然災害など、平時の統治機構をもって
しては対処できない非常事態において、国家権力が、国家の存立を維持するた
めに、立憲的な憲法秩序(人権保障と権力分立)を一時停止して、非常措置を
とる権限のこと」
(芦部信喜『憲法学Ⅰ 憲法総論』有斐閣、1992 年、65 頁)
初回の永井弁護士は、国家緊急権は歴史的に多くの国で野心
受けておらず、定義における「非常事態」としては戦争で国の
的な軍人や政治家に乱用されてきた歴史があると指摘し、その
中枢が爆撃を受けて閣僚や国会議員がほとんど死んでしまった
危険性として「不当な目的での使用」「期間の延長」「過度な人
りするような事例を挙げた。
権制限」
「司法の抑制」を挙げた。そうした実例として、戦前
自民党などは憲法に国家緊急権を加える根拠として「国民の
のドイツで当時最も民主的といわれたワイマール憲法のもと国
生命や財産を守る」ことを主張しているが、定義にある「国家
家緊急権の規定が乱発され、ヒトラー独裁に道を開いた歴史を
権力が、国家の存立を維持するために」は個人の生命や健康、
紹介した。
財産に一切関知せず、国家の存続を目的に「立憲的な憲法秩序
現行の憲法に国家緊急権を置いていない理由として憲法制定
(人権保障と権力分立)を一時停止して、
非常措置をとる」(定
過程の委員会議事録をひもとき、①国民の権利を十分擁護する
義)ことで逆に国民の自由や財産が制約されることさえあると
ためには、政府の一存でおこなう非常事態の措置は極力防止し
指摘した。
なければならない ②政府の自由判断を大幅に残しておくと憲
国家緊急権の定義や既存の法律との関係を丹念に検討したう
法が破壊される可能性がある ③衆議院が解散中であれば参議
えで、現行の憲法には「公共の福祉」という人権制約の根拠規
院の緊急集会を召集して対応できる ④緊急事態に備えて、平
定があり、それを法律レベルで具体化したともいえるのが災害
常時から法令などの制定によって乱用されない形で完備してお
対策基本法であって、そうした法律があるのだから憲法に国家
くことができる─ことを挙げていると指摘。このうち、平常時
緊急権は不要と結論づけた。
からの法令の整備として災害法制を取り上げて、災害対策基本
法などに緊急事態条項が盛り込まれていることから「憲法に国
家緊急権を入れる必要はない」と述べた。
立憲主義を停止してまで守るべき価値はない
第三回の講師に招いた愛敬教授は「改憲問題を視野に入れ
て」という副題を設定して、内外の学説をもとに災害と国家緊
憲法に国家緊急の規定は不要
急権について検討を加えた。
第二回の講師に招いた棟居名誉教授はまず緊急事態に現行憲
最初に自民党の改憲草案に言及し、草案の解説では緊急事態
法の枠組みでは対処できないという生活現場からの積み上げに
条項を憲法に加える理由について「東日本大震災における政府
よって改正論議をすべきだという認識を示した。例えば阪神・
の対応の反省も踏まえて、緊急事態に対処するため」としてい
淡路大震災や東日本大震災のときに国家緊急権の条項が憲法に
るが、自然災害が発災時の対応は災害対策基本法など法律で十
あれば、被害が少なくなったり救出が迅速に進んだりしたとい
分に定められていると指摘した。そのうえで、憲法に緊急事態
うことが実証的に言えるのが前提であり、それを踏まえて国民
条項を盛り込むと不可避的に全権委任規定になるという学説を
が憲法の不備を感じ取って法整備を求めることで、地に足のつ
紹介し、乱用の危険があるとの判断を示した。
いた憲法改正論議が可能になると指摘した。
国家権力を制約するのが憲法であり、それを平時の憲法とす
▶棟居氏はユーモアをまじえながら
憲法問題をわかりやすく説いた
続いて国家緊急権の定義につい
れば、首相や内閣に権限を集中させて国民の権利を制限する国
て言及。「平時の統治機構をもって
家緊急権はいわば危機の憲法である。人権など基本権の保障が
しては対処できない非常事態」と
立憲主義の核心であり、国家緊急権の発令によって立憲主義は
いう定義を東日本大震災などにあ
停止してしまう。憲法に緊急事態条項を新たに設けるというの
てはめると、被災地の自治体は混
は、憲法に縛られる側がその縛りを解くよう求めているのであ
乱したものの、国全体の平時の統
り、愛敬教授は「立憲主義を停止してまで守るべきもの、獲得
治機構である国会や内閣は影響を
すべき価値が国家緊急権にはあるのか」と疑問を呈した。
5
災害による「地域破壊」の
2科研がスタート
研究所に開設した6研究会のうち、「地域再生研究会」の座長をつとめる研究所運営委員の山泰幸・人間福祉学部教授が今年度から
2つの科研事業、「南海トラフの巨大想定と地域破壊―生存と生活のジレンマを克服する事前復興の調査」と「〈未来の災害〉がもた
らす被災前地域破壊を視野に入れた事前復興のアクションリサーチ」をスタートさせた。その概要を紹介する。
「地域再生研究会」座長
山 泰幸
(人間福祉学部教授)
研究課題名
南海トラフの巨大想定と地域破壊
─生存と生活のジレンマを克服する
事前復興の調査
(基盤B・2015~2018年度)
研究課題名
〈未来の災害〉がもたらす被災前地域
破壊を視野に入れた事前復興の
アクションリサーチ (挑戦的萌芽・2015~2016年度)
東日本大震災の甚大な被害を受けて、災害に対する危機意識
近い将来、大規模な災害の発生が予想されている自治体では
が高まるとともに、近い将来、発生が予想されている南海トラ
住民の流出、
企業の移転が始まっている。いわば
〈未来の災害〉
フ地震の規模や被害想定が大幅に見直されることになった。そ
への対応が、被災前に地域の破壊を進める結果となっているの
の結果として、被害が想定される沿岸部の自治体では、より内
である。本研究が注目しているのは、こうした地域の多くが、
陸へと住民の移動や流出が始まっている。また高台移転の対策
少子高齢化・人口減少等のいわゆる「過疎問題」に長年悩まさ
によって地域生活の場は変化を余儀なくされている。巨大想定
れてきた地域であるということである。過疎化が進行している
に対する〈生存〉を優先する対応が、皮肉にも住民の〈生活〉
地域が、〈未来の災害〉によって被災前に破壊が進み、さらに
の場である地域コミュニティの脆弱化を招いているのである。
被災した場合には、その被害は甚大なものになり、文字通りの
こうした状況にあっては、被災後の復興を視野に入れた事前復
地域崩壊につながりかねない。
興の取り組みは、より複雑かつ困難となることが予想される。
本研究の関心は、重層的に進行している被災前の地域破壊を
本研究では、こうした地域における事前復興をより効果的に
食い止めながら、被災後の復興を視野に入れた事前復興をいか
進めていくために、南海トラフの被害想定地域である各県の沿
に進めるかにある。本研究では、具体的なフィールドとして、
岸部に位置する自治体を広域的に対象として、①住民の流出、
南海トラフの被害想定地域である徳島県松茂町、海陽町の自主
企業の移転等に関する実態調査と意識調査、②高台移転に関す
防災会を取り上げて、防災・減災まちづくりの取り組みに実践
る自治体の対応の調査及び自治体担当者・移転施設関係者・住
的に関与しながら研究を進める。そのためのツールとして、住
民への意識調査等、アンケート調査を行うとともに、これに加
民主体の行動計画策定手法として岡田憲夫らが鳥取県智頭町に
えてインタビュー調査を実施することで、できるかぎり現状把
て開発・実践し、現在、世界各地で採用されている「四面会議
握に努め基礎的なデータを収集する。③社会学、地域防災、災
システム」を導入する。松茂町は、避難に適した高台がなく、
害リスクマネジメント、財政学など多様な立場から対象地域を
川に挟まれた低地で、
空港を有する等、
東日本大震災の被災地、
領域横断的に調査し、その知見を結集することで、ジレンマ克
宮城県名取市と類似した地理的条件にあり、海陽町は昭和南海
服に向けて取り組む予定である。研究の進捗状況に従って、研
地震の被災地である。他地域や過去の被災経験を参考にしなが
究メンバーが調査実績を有する静岡、高知、徳島等の各県の沿
ら、
これを事前復興に活かしていけないかと考えている。なお、
岸部の自治体において、住民主体の行動計画策定手法として研
本研究を進めるにあたって、徳島県の危機管理部局の OB を中
究分担者の岡田憲夫らが鳥取県智頭町にて開発・実践し、現在、
心に設立された NPO 法人徳島防災ネットワークのメンバーが
世界各地で採用されている「四面会議システム」を導入するな
現地との調整や
「四面会議」
のファシリテーターを務めるなど、
ど実践的な調査も視野に入れていきたい。
住民、行政、NPO、そして研究者が連携して研究を進める予
定である。
6
FUKKOU vol.27
観 感
学 楽
被災地を
観
る、
被災地の痛みを
そして、
被災地から
感
学
とっさにつかんだ化粧ポーチ
東日本大震災県外避難者西日本連絡会(まるっと西日本)事務局長
深 石 葉 子
被災地ネット
とっさにつかんだ化粧ポーチ / 深石葉子
ぶ、
被災地の人たちと
かんかんがくがく
じる、
楽
被災地の復興と災害廃棄物
しむ。
─放射性物質に汚染された廃棄物にどう
向き合うべきか / 金 太宇
支援者の立場で結成に参加した。まるっと西日本が、活動の基幹に
してきたのは、避難者への情報提供だ。
「週刊・支援情報メールニュース」の第 1 号の配信は同年 11 月
10 日。配信数は避難者、支援者も含め約 50 通。実は避難者の登
録者よりも支援者の方が多かった。メールニュースはほぼ週刊で
発行し続け、現在 160 号を超えた。配信登録者は 900 人。パソ
2011 年 3 月 14 日未明、福島県南相馬市の親類宅を出た 40
コンや携帯でメールを見られない方のために、メールニュースの
代の女性が持っていたものは、ご先祖様のご位牌と化粧ポーチ。
ダイジェスト版を紙に印刷し月刊・支援情報紙「NEWS」として
すぐに戻ってくるはずだった。
関西 2 府 4 県の全避難世帯(約 2500 部)の方へ、自治体の協力
11 日の地震で南相馬市の市中心部に近い自宅は、直接的な被
を得て無料配布している。代表世話人の古部さんがデザインする
害はなかったもののライフラインが止まってしまった。市南部の
「NEWS」はオールカラー。季節感あふれ、数多くある避難者関
親類宅に親戚が集まって暮らしていた。親類宅は原発から 20 キ
連の配布物でも秀逸の美しいレイアウトである。
ロ。「逃げて!」友人からの短いメールで全員、避難を決意。車
福島から持ってきたという化粧ポーチを見せてもらった。何の変
1 台にガソリンを集め、山を越えて新潟県を目指した。まさに着
哲もない黒いポーチには女性にとって一番大切な「日常」がつまっ
の身着のまま。「今考えたら、他に持ってくるべきものがあった
ている。後日、就職のお祝いに新しい化粧ポーチをプレゼントした。
かもしれない。だけど何か 1 つっていう時、とっさにつかんだの
は、毎日使っていたお化粧道具」と照れたように笑う。彼女はそ
の後一度だけ帰郷したが、自宅から何も持ち出さなかった。ロー
ンを払い終えたばかりという真珠のネックレスも廃棄した。40
数年の人生で得た「モノ」をきれいさっぱり捨て去って、家族と
身一つで関西へやってきた。
あれから 4 年が過ぎた。彼女は専門学校に 1 年通学し、みごと
に国家資格を取得、就職した。40 代の資格取得、転職のお手本
のような人生を歩んでいる。
彼女は「まるっと西日本」の名付け親の 1 人である。東日本大
震災―で始まる、長い正式名称とは別に、東北や関東の人たち
が親しみを感じる語感の略称をということで、東北出身の彼女の
意見を参考にした。2011 年の秋、大阪市内でまるっと西日本
は古部真由美さん(茨城県から避難、代表世話人)を中心に結成
され現在に至っている。私は当時、別の NPO 法人の広報担当で
の徹底により、最終処分量を極力、減らすことが課題になる。
短期間に発生する膨大な災害廃棄物は、被災地だけで処理するに
は困難であり、復旧・復興の開始に支障をきたす。そのため、災害
廃棄物の広域処理要請を行い、被災地以外の自治体の理解・協力が
不可欠になる。阪神・淡路大震災はもとより、東日本大震災の際に
も、被災地の復旧・復興のために、多くの自治体が協力した。
しかし、東日本大震災の災害廃棄物の処理を進めていくうえで、
原発事故に伴う放射性物質の拡散が問題を深刻化させている。被災
地は早急に災害廃棄物の処理に取りかかるよう求められる一方、既
存の処理施設周辺の住民は、放射性物質に汚染された廃棄物の受け
入れに難色を示す。環境省や研究機関は、説明会を開始し、住民に
具体的な基準や安全性の根拠、客観的な数値などを提示するもの
の、結局は理解と了承が得られず、作業に着手できていない市町村
がある。また、災害廃棄物の受け入れは被災地支援となるものの、
被災地の復興と災害廃棄物
─放射性物質に汚染された廃棄物にどう
向き合うべきか
関西学院大学災害復興制度研究所リサーチ・アシスタント
金 太 宇
被災地と同様に、放射性物質に汚染された廃棄物による周辺環境へ
の影響や被曝の懸念が払拭できないことから、受け入れを拒否せざ
るを得ない自治体も少なくない。
つい最近、政府は放射性廃棄物のための最終処分場を国有地に新
設する方針を打ち出した。しかし候補地として選ばれた栃木県塩谷
町、千葉県蘇我地区、宮城県加美町や大和町などでは、安全性の問
題と風評被害の恐れがあるという理由で、地域住民からの反対意見
や疑問の声が続出し、計画の策定も行き詰まっている。
被災地復興の足かせともなる災害廃棄物の処分問題。福島第一原
大規模災害時、がれきの収集、損壊した家屋の解体撤去な
子力発電所事故から 4 年が経過した現在でも、福島県内と周辺の地
どの災害廃棄物の処理は、被災地の復旧・復興にとって問題
域における放射性物質に汚染された災害廃棄物の処分方法はいまだ
となる。避難生活を余儀なくされる被災者の早期帰還と生活
に決まっていない。一般廃棄物でも最終処分場の立地選定に関する
再建のために、迅速かつ適切な処理が要請される。そのため、
合意形成は困難を伴う。それ以上に深刻な放射性物質に汚染された
私有財産の撤去・処理の承諾と仮置場の確保が極めて重要で
災害廃棄物の処理問題では、どこに打開策を見出せるのか。東日本
あり、早い段階から地域住民や事業者の理解を得ることが復
大震災はこうした廃棄物処理をめぐる問題の難しさを、とくに浮き
興の礎となる。そして、仮置場では、分別と資源物の再利用
彫りにする。
7
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「原発避難」支える花見会
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状況
閉室期間 8 月 13 日㈭~ 8 月 21 日㈮
西宮聖和
キャンパス
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佐々木さんが避難してきたのは大震災の 6 日後。同郷の福島からの避難者が
どこにいるか知りたいと市役所を訪ねたが、個人情報を理由に断られた。道の駅
に出向いては福島ナンバーの車を探して声をかけた。そうして震災翌年の 6 月、
あじさい会を立ち上げ、交流会を毎月開いている。
現行の法制度では避難直後は本人の同意がなくても第三者に個人情報を提供で
きるが、緊急時を脱した時期になると同意が必要だ。避難してきた被災者を支え
ようにも、居所がつかめなくてはどうしようもない。栃木県の場合、支援団体に
個人情報を提供するため「推定同意」という方法で意思確認をした。市町を通じ
て把握した避難者に通知を送り、支援団体の手助けが必要ではない場合は返信し
てもらう。「不要」と回答した人はおらず、NPO などでつくる「とちぎ暮らし
応援会」と個人情報の取り扱いの覚書を締結し、情報提供した。
だが、原発避難の当事者である佐々木さんたちのあじさい会は支援団体ではな
いため、避難者の個人情報は提供されない。福島から下野市に避難しているの
は 52 世帯 129 人いるが、佐々木さんが把握できているのは交流会で出会った
20 世帯余にとどまっている。
阪神・淡路大震災では自治体が県外避難者を把握できず、そのことで支援情報
が届かなかった。「阪神」から 20 年たって避難者を支えるための仕組みは少し
ずつ整ってきたが、とても十分とはいえない。
福島でコメ作りもしていた佐々木さんたちは花見会のお礼に 5 月 23 日、は
くつる会の田植えを手伝った。原発事故の避難先で、被災者と支援者という関係
を超えた繋がりが生まれている。
(野呂雅之)
10分
門戸厄神
難先の栃木県下野市で五度目の春を迎えた。
美術館
県立西宮高等学校
中学部
高等部
原発事故で福島から避難してきた佐々木正教さん(78)は、避
佐々木さんは下野市で暮らす避難者の親睦団体「ふくしまあじさい会」の代表
をつとめている。その仲間たちと一緒に 4 月 26 日、市西部の国分寺にある天
平の丘公園で催す花見会に招かれた。
花見会を企画したのは、地元の社会福祉法人はくつる会の理事長、若林英二さ
ん(91)。旧国分寺町の町長だった若林さんは、ゴミ捨て場のようになっていた
地域を天平の丘公園として整備し、福島県三春町の三春滝桜など「日本三大桜」
の子孫樹を植えてきた。
いまや桜の名所になったその公園で、福島からの避難者を励まそうと、東日本
大震災直後の 2011 年春から毎年この時期に花見会を催している。
花見会の案内状には招待の理由として「福島の日本一の滝桜の子を頂きました
御礼」と記し、持ち物は「空腹」とだけ書いてあった。原発事故で故郷を追われ、
慣れない土地で暮らす人たちを気遣う若林さんの想いがにじみ出ていた。
花見の当日は汗ばむほどの陽気で、栃木市など近隣の町で暮らす避難者もやっ
てきた。佐々木さんは 4 年前のことを思い浮かべながら、「避難して来たばかり
の時期に招いていただいた花見会では、夢遊病者のようだったことを思い出しま
す。こうやって支えてくださっていることに感謝します」とあいさつした。
甲東園
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6,000円
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2015年7月発行
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