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第3 中学校編
少人数指導による個に応じたきめ細かな学習指導の展開(A中学校) 1 自校の課題と解決に向けたグランドデザイン (1) 学力の実態 全国標準学力検査(NRT)結果 (H 15.2.14 実施) ① ② (2) 1 学 年 数 学 50.7 英 語 47.7 2 学 年 数 学 52.0 英 語 53.3 生徒の意識調査 (H 15.7. 2 実施) なる・思う どちらともいえない ない・思わない 課題が与えられたとき、自分で考えようという気持ちになりますか 54% 26% 20% 授業中に進んで考えや答えを発表しようと思いますか 38% 33% 29% 課題解決後、さらに課題に取り組んでみたいと思いますか 33% 39% 28% 授業が終わったとき、「分かった・できた」という満足感はありますか 51% 30% 19% 自校の課題 ① 学力検査より ア 本校の学力は、標準学力検査の結果、各学年ともほぼ全国平均であるが、教科によっては 全国平均を下回るものが見られた。平成14年度の1年生(現3年生)においては、特に英 語に落ち込みが見られた。40人学級になる2学年において、どのようにして個に応じた指 導をきめ細かく行うかが課題である。 イ 2年生においては、数学・英語で好ましい数値となったが、偏差値の分布をみると45∼ 50と60∼65を中心とした分布となり、生徒の学力の差が大きくなっていた。そのため、 学習内容の習熟の差に応じた指導をどうするかが課題である。 ② 生徒の意識より ア 生徒の学習に対する意識調査を行った結果、「授業中に進んで考えや答えを発表する」「課 題解決後、新たな課題に取り組む」生徒が4割に満たず、積極的な学習態度に乏しい。 イ 「学習しようという意欲がでる」「自分で考えようという気持ちになる」「できた・分かっ たという満足感がある」と答えた生徒が約5割いる反面、「ない」「思わない」と答た約2割 の生徒は、授業への意欲や喜びを見いだせないでいる。 - 61 - (3) 課題解決に向けた戦略的な方策(グランドデザイン) 生徒の学力実態 目指す生徒像 · ・ 平均的な学力 ・ 全国平均に届かない教科 ・ 上位層と下位層の差の拡大 保護者の願い 自ら学び自ら考える生徒 ‡ 知識や技能を身に付け、 ‚ 学力の定着 ・ 進路実現 自分で課題を見付け、自 地域の学校教育 ら学び、主体的に判断し、 への大きな期待 行動し、よりよく問題を 解決する生徒 生徒の姿 原因 ・ 素直で明るい „ ・ 消極的な学習態度 ・ 学習に満足感や意欲がもて ない ・ ・ ア 家庭学習習慣の未定着 ・ まじめに活動 個に応じたきめ細かな指導の 研究・実践・研究公開 イ 2年間の研究実践で、偏差値 50以上、数学・英語51以上 ウ 標準学力検査の結果を分析し 学校だよりで公表 „ PLAN 目標値1 1年目 数学・英語 標準偏差値50 目標値2 2年目 数学・英語 標準偏差値+1∼2 目標値3 自ら解決する意識、意欲が7割(意識調査から) 国語・社会・理科 標準偏差値50 DO 個に応じたきめ細かな指導 ① 数学・英語における習熟度別少人数指導の導入 ○ 個人差に応じ、個を生かすための指導体制の工夫・改善 ○ 個人差に応じ、個を生かすための指導方法の工夫と教材開発 ○ 生徒一人一人の実態の把握による指導の改善 ② 他教科(数学・英語以外の教科)での個人カルテの作成・座席表の活用 ○ 個に応じた指導のための指導方法の工夫・改善 ○ 生徒一人一人の実態の把握による指導の改善 CHECK 標準学力検査・アンケート・定期テスト等 目標の達成度(4段階) 4 90 % 3 70 % 2 50 % 1 30 % ACTION ○ 習熟度別少人数指導の改善と実践 - 62 - ○ 個人カルテ・座席表の改善と実践 2 実践の概要 (1) 実践の構想 ① 研究構想 個人差を適切に把握し、個に応じたきめ細かな指導を実践し、確かな学力を向上させる。 確かな学力 確かな学力の向上 知識や技能に加え、自分で課題を見付け、自ら学び、主体的 に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力 ↑ 【数学・英語】 個人差に応じ、個を生かすための指導体制の工夫・改善 個に応じた指導 個人差に応じ、個を生かすための指導方法の工夫と教材開発 【その他の教科】 個に応じた指導のための指導方法の工夫・改善 ↑ 生徒の実態の把握 生徒一人一人の実態の適切な把握による指導の改善 (NRT・意識調査等の分析と個人カルテの作成 ② ) 研究の経過 ア 1年目(15 年度) 数学科・英語科での取組み 習熟度別少人数指導の実践・研究 イ 2年目(16 年度) 全教科での取組み 数学科・英語科の実践・研究の継続 他教科での数学科・英語科の成果(個人カルテ・座席表)を生かし た個に応じた指導の実践・研究 (2) 実 ① 践 個に応じたきめ細かな指導 ア ∼数学科・英語科における習熟度別少人数指導の取組み∼ 個人差に応じ、個を生かすための指導体制の工夫・改善 ○ 数学科、英語科において、少人数指導を可能にする教育課程の編成・時間割の工夫 ・ 2、3年の数学科、英語科において、年間を通じて少人数指導(2学級を4クラスまた は1学級を3クラスに編成)が実施できる時間割を編成する。 ・ ○ 数学科と英語科の教科部会を時間割に位置付ける。 習熟の程度に応じた集団編成による指導の工夫 ・ 2学年−全4学級を2学級ずつに分け、その2学級をA基礎、B標準(2クラス)、 C発展の3コース4クラスに集団編成する。 ・ 3学年−全3学級を2学級と1学級に分け、2学級はA基礎・B標準(2クラス)、 C発展の3コース4クラスに、1学級をA基礎・B標準・C発展の3コース3クラスに 集団編成する。(平成15年度は3学級を4コースに編成) ・ 習熟度別のコース編成については、生徒の希望を取り入れ、学習達成度、学習速度、興 - 63 - 味・関心等に応じて教科担任の指導助言のもとに編成する。クラスは、単元ごとに再編成 する。 ◇ 編成の実際例 学年・学級 英語 Aコース Bコース Bコース Cコース (基礎) (標準) (標準) (応用) 2年1・2組 13人 21人 16人 23人 2年3・4組 14人 18人 21人 26人 3年1・3組 14人 18人 22人 19人 6人 20人 3年2組 ◇ ○ (平成16年4月) コース編成資料例 出席 性 番号 別 11人 数学 学力テスト 定期テスト 評定 準 合 判 備 本人 最終 定 数式 総合 1中 1期 テ 計 教師 希望 決定 3101 男 5 70 65 98 95 65 393 C C C 3102 男 3 40 42 85 81 40 288 B B B 3103 男 2 35 40 61 51 30 217 B A A コース編成に対応した指導計画・評価計画の作成 ・ 習熟度別学級の特質を生かした指導と評価の具体的な手だてを作成する。 ・ 評価は、教科部会で協議し、統一した評価規準を設定する。 ○ 生徒・保護者へのガイダンスと説明責任 習熟の程度に応じた集団編成をするに当たって、以下の点について周知徹底を図った。 【生徒に対して】 ・ 自分のための学習であることを正しく理解させる。 ・ 学習のコースは生徒自身に判断させ,教科担任の指導助言のもと決定させる。 ・ 単元ごとのコース変更を可能とする。 ・ 単元ごとにガイダンスを実施する。 【保護者に対して】 ・ 授業参観などを通して生徒の学習時の姿を公開する。 ・ 学校だより、学年だより、PTA集会などを通じて「習熟度別少人数指導」の趣旨や方 法を示し、理解を得る。 ・ 「習熟度別少人数指導」に関しての意見を求める。アンケートの実施などの手だてを講 じる。 イ 個人差に応じ、個を生かすための指導方法の工夫 - 64 - ○ 発展的な学習・補充的な学習など個人差に応じ、個を生かす指導方法の工夫 ○ 座席表作成による個の理解と個別指導への活用 ○ コースの実態に応じた授業の具体的な手だての構築 個 授業の構築 Bコース(標準) Cコース(発展) に ガイダンスをし、各コースの進め方の見通しをもたせ、コース選択に生かす 応 学習のスタイル 補充的な活動も取 個別指導、グルー 追究活動が多くな じ り入れ、個別指導 プ活動、一斉指導 るので、個別、グ た の時間を多めに確 を適切に取り入れ ループ活動を効果 指 保する。 る。 的に取り入れる。 本時に関連する既 本時に関連する既 単元のレディネス に 習事項の確認を確 習事項の確認をし により把握してお よ 実に行う。 て補足しておく。 く。 具体物を活用した 興味・関心・意欲 前時の関連より課 自 り、具体的問題の を喚起する課題を 題を与え、自力解 ら 解決をする。 設定する。 決させる。 導 り 既習事項の確認 課題把握の工夫 学 課 知的好奇心を ヒントカードを活 ヒントカードの活 多様な考え方に触 び 題 起こす工夫 用する。 用、グループ活動 れさせ、主体的な 自 解 により、多様な考 課題解決の場を設 ら 決 えに触れさせる。 定する。 考 ・ 成就感を味わ 基本問題の確実な 発展問題に積極的 発展問題や応用問 え 強 わせる工夫 解決により、でき に取り組ませ、解 題を解決した喜び る 化 た喜びを感得させ 決の喜びを感得さ により、達成感を る。 せる。 味わわせる。 力 を まと 振り返る場の 自己評価させ、分 分かったことを確 課題をもち、次時 育 め・ 設定 かったことを確認 認し、成果と課題 への解決に発展さ て 評価 させる。 を整理する。 せる。 る ウ Aコース(基礎) 自己評価と教師による評価を生かし、単元末のコース選択に生かす 授 個の理解 業 (実態把握) 個人カルテ(準備テスト・定期テスト・実力テスト・NRT分析等) 座席表 自己評価表 意識調査 等 個人差に応じ、個を生かすための教材開発 ○ 2、3学年の数学科・英語科における、発展的な学習・補充的な学習の教材開発 ・ 習熟度別学習プリントの作成と活用 コース別に学習プリントを作成し活用する。学習プリントは、全コースに配付する。 発展コースでは、発展や応用問題を多く取り入れ、知的好奇心に訴える工夫をする。 ・ 教科部会で教材開発の情報を交換し、コースごとの指導効果を高める工夫をする。 各コースで成功した例、失敗した例などを交換することにより、自分の担当するコー スの指導に生かす工夫をする。 エ 生徒一人一人の実態の適切な把握による指導の改善 - 65 - ○ 個人カルテを基に、学力の分析により、実態やつまずきを把握して指導する。 例 個人カルテ英語 ・NRTの結果 51 1学期発言が少な 表 ・知能指数 50 現 理 解 識 合 中間テスト 60% 80% 80% 72% ら表現力も低かった。 期末テスト 80% 85% 75% 81% 2学期には、発表の 100 % 機会を意図的に多く 80 与え、指導した結果、 60 表現力が伸びてきた。 40 表現 コメント 態度 個人カルテをつまず まじめな授 業態度である 理解 発言 合計 自分からの 発言は少ない きの把握やコース間の 提出物 移動の資料として活用 宿題を忘 れない する。 ○ 計 く、テストの結果か 20 ○ 知 その他 自己評価表により、 知識 英語検定 4級 授業を振り返らせると ともに、学習状況を把 握する資料とする。 ○ ② 座席表による1単位時間の評価を積み重ね、授業の実態を把握し、指導に生かす。 個に応じたきめ細かな指導 ∼英語科・数学科以外の教科の取組み∼ 数学科・英語科で成果があった「個人カルテ」 「座席表」を取り入れ、生徒一人一人の実態を 把握し、個に応じた指導を各教科の特性を生かしながら実践する。 ア 個に応じた指導のための指導方法の工夫・改善 ○ 各教科で、毎時の授業で使用する学習の状況が記入しやすい座席表を工夫して作成し、 個別指導等に活用する。(座席が決められないものは、名簿式で作成) 座席表 例 理科(座席) 氏名 時間 備 1 3 イ 安 達 太 郎 態 発 考 ○ 2 × 座席表 例 備(準備物) 技 氏 名 発(発表) 保健体育(名簿) 関 思 技 知 心 考 能 識 × 態(態度) ○○○○ ○ × 考(考え) ○○○○ ◎ ◎ ○ 技(実験) ○○○○ × △ 2時間目、自ら考えようとしなかっ 陸上競技に関心がない生徒に たため、3時間目においては、仮説を 達成可能な記録を目標にさせ、 プリントに記入させ、机間指導におい 達成のための練習を小ステップ て個別にアドバイスをする。 にして与え取り組ませた。 発展的な学習や補充的な学習など個に応じた指導のための教材開発 ○ ○ 習熟度別学習プリントの作成 - 66 - ウ 生徒一人一人の実態の適切な把握による指導の改善 ○ 知能検査、標準学力検査(NRT)、レディネステスト、定期テスト、学習活動等を基に 教科で個人カルテを作成し、学力の実態や学習状況に応じた個別指導に活用する。 ③ ○ 全教科で自己評価表を作成し、授業の振り返りができるようにする。 ○ 個の実態を把握するために、指導段階における評価表等の位置付けを明確にする。 ・ 指導前 個人カルテの作成による実態把握 ・ 指導中 座席表の活用(観察、ノート、挙手・発言等) ・ 指導後 自己評価表の活用(記述、小テスト等) 実践の考察 ア 数学科、英語科における習熟度別少人数指導の取組み ○ 個人差に応じ、個を生かすための指導体制の工夫・改善 ・ 2学級を4クラス、または1学級を3クラスに分けた ため、少人数の中で、生徒一人一人への個別指導が多く なり、生徒の8割が「授業が分かりやすい」 「質問しやす い」と答えた。 ・ 習熟の程度に応じた集団編成によりA(基礎)コース の生徒はじっくり問題に取り組み、C(発展)コースの生徒は早めに応用問題に取り組 むなど、自分のペースで学習することが可能になった。 ・ 習熟の程度に応じた集団編成をするに当たって、生徒と保護者に十分な説明を行ったこ とにより、習熟度別少人数指導に対しての理解が得られた。特に、アンケートの結果から、 7割の保護者が好意的に受け止めていることが分かった。 ○ 個人差に応じ、個を生かすための指導方法の工夫と教材開発 ・ コースの実態に応じた「授業の具体的な手だて」を基に、各コースの実態に応じた指 導がなされた。 ・ 習熟の程度に合わせた学習プリントにより、生徒が最後までプリントの課題を解こうと する姿が見られ、問題解決への意欲が高まった。 ○ 生徒一人一人の実態の適切な把握による指導の改善 ・ 個人カルテの活用により、コースが変更になった生徒でも、教師がすぐに実態を把握し、 指導の手だてを考え、支援することができた。 イ 数学科・英語科以外の教科での取組み ○ 個に応じた指導のための指導方法の工夫・改善 ・ 座席表や個人カルテの活用により、生徒のつまずきを的確に把握し、授業中や次時の 指導の手だてを講じた結果、「授業が分かるようになった」とする生徒が増えた。 ・ プリントの問題を基礎、応用、発展という段階別に用意し、自分の理解度に応じて選 択できるようにした。そのため、教科書や資料集などを利用して、自分で解決しようと する生徒が多くなり、基本的な事項の定着や応用力の向上を図るために有効だった。 ○ ・ 生徒一人一人の実態の適切な把握による指導の改善 標準学カテストの結果の分析、座席表や個人カルテの作成と活用により、一人一人の生 徒のつまずきや学習の達成状況をとらえることができた。さらに、評価を生かして適切な 指導に努めるなど指導の工夫・改善へつなげることができた。 - 67 - 3 成果と課題 (1) 成果 ① 標準学力検査(NRT)の結果より(1年次と2年次の比較) 習熟度別少人数指導の1年目の取組 5 4 .0 5 3 .0 みの結果、標準学力検査において、偏 5 2 .0 5 1 .0 差値が3年数学、2、3年英語で向上 5 0 .0 1年 末 2年 末 4 9 .0 が見られた。特に、2年英語において 4 8 .0 は、+5.3の伸びが見られた。2年 4 7 .0 4 6 .0 4 5 .0 数学においては、伸びがみられなかっ 4 4 .0 2年 数 学 たが、C(発展)コースの生徒におい 2年 英 語 3年 数 学 3年 英 語 ては、数学で60.2が63.0と+2.8の伸びが見られた。全体的に、習熟度別少人数指 導は、生徒一人一人の個に応じた指導がなされ、生徒の意欲を高め理解を深めるのに効果的で あった。特に、2年英語においてはC(発展)コースで+7.0も高くなるなど、学力上位層 における伸びが著しかった。また、平成15年度は2年3学級を4クラスに編成したが、平成 16年度においては2学級を4クラスと1学級を3クラスに編成し、さらに少人数にした結果、 実力テストの平均点に伸びが見られた。 ② 習熟度別少人数指導に関する意識調査の結果(平成16年10月実施) 「授業が分かりやすい」 62% 「自分のペースで学習できてよい」 67% 「先生に質問しやすい」 71% 「授業が楽しい」 56% 習熟度別少人数指導における2、3年生への意識調査の結果を見ると、 「自分のペースで学習 ができてよい」「先生に質問しやすい」「授業が分かりやすい」などの理由から、多くの生徒が 習熟度別少人数指導を好意的にとらえている。 特に、A(基礎)コースの生徒は、上記の項目 において70%∼80%の数値を示した。 ③ 学習に対する意識調査の結果(平成16年10月実施) 「授業時に学習しようという意欲がでる」 53% 「分かった・できたという満足感をもった」67% 「自分で考えよう」 62% 「分かろうと努力する」 69% 個人カルテ・座席表により生徒の学力や学習状況を把握し、個に応じたきめ細かな指導を実 践した結果、生徒の自ら学び自ら考えようとする意識が高まった。また、満足感をもち、分か ろうと努力する生徒が約70%に達したことは、生徒が学習内容を理解し、課題解決への意欲 が強くなったためだと考えられる。 (2) 課題 ① 数学においては、Bコースの中でも習熟度の差が大きく、Bコース2クラスをさらに、習熟 の程度に分けて指導する必要があると考える。 ② 英語の表現活動等において、同質の集団であるため、豊かな発想や多面的な考えに触れるこ とが少なく、今後、学習形態の工夫やコース間の交流の在り方について考える必要がある。 ③ 学習内容を変えずに、各コースにあった指導方法を考えていくことは難しく、今後も教材研 究や教材開発に努めたい。 ④ 個に応じた指導の充実に視点を当て授業実践に取り組んできたが、今後は、他者とのかかわ りの中で、自分のよさを伸ばす学び合いや表現力を高める指導方法についての研究に取り組ん でいきたい。 - 68 - 家 庭 や 地 域 と 連 携 し た 学 力 向 上(B中学校) ∼基礎・基本が着実に定着し、確かな学力が身に付く学習活動の創造∼ 1 自校の課題と解決に向けたグランドデザイン (1) 生徒の実態と課題 本校学区は、豊かな緑と田園風景に囲まれた広域な農村地帯である。地域社会の発展に伴い共 働き家庭の増加や農業離れ等、生徒を取り巻く生活環境や生活様式が大きく変わってきている地 域である。生徒は、主体性に欠ける面も見受けられるが、農山村の人情こまやかな家庭に育って おり、温和で従順な生徒が多い。学習の面では、知能に比して学力がやや劣り、力を十分に発揮 できないでいる生徒が多いが、授業にはほとんどの生徒が真剣に取り組もうとしている。しかし、 「分かる・できる」といった「成就感のある授業」と感じている割合はまだ低い。また、学校で 身に付けた学習面での知識・理解を確実に定着させるため、家庭における継続的な学習習慣の形 成も課題である。さらに、学習を支える基礎・基本となる3R’s(読み・書き・計算)にまだ まだ弱い面があると考えられ、小学校や地域・家庭と連携して基礎・基本のさらなる定着に力を 入れていく必要があると思われる。 (2) 基本目標と自校の課題解決に向けて 生徒の実態と課題を踏まえ、人間性豊かな生徒の育成と学力向上に向けて、具体的な重点目標 を掲げて取り組むこととした。 基本目標:豊かな人間性と創造力をもち、主体的に実践できる生徒の育成 具 体 目 標 心身ともに健康な生徒(健康) 進んで学習する生徒(向上) くじけず前進する生徒(自立) ○ ○ 健康を維持し安全な生活 ○ が送れる生徒 ○ 容を確実に身に付ける生徒 礼儀をわきまえ思いやり ○ の心に満ちた生徒 ○ 学習の仕方が分かり、自 生徒 ○ 励まし合って互いに向上 しようと努力する生徒 善悪の判断に基づき、正し い行動がとれる生徒 ○ ら意欲的に学習する生徒 心身を鍛えるたくましい 学校づくりの基調 基礎的・基本的な学習内 困難に耐え、くじけず前進 する生徒 ○ 勤労を重んじ奉仕的な活動 を進んで行う生徒 家庭や地域との連携を深め、保護者や地域の願いに応えるために ○ 全人教育 ○ 人間尊重 を肌で感じられる学校を目指して以下のことに取り組む。 ○ 豊かな創造力 ・ ○ 教育活動の一貫性 ○ 創意工夫と研修 ・ 常に保護者や地域に開かれた学校でありたい。 ○ 社会の変化に主体 ・ 学校と家庭の連携で確かな学力の定着を図っていきたい。 ・ 「進んで学習する生徒」の育成のために保護者や地域ととも 的に柔軟に対応 ○ 積極的に家庭や地域とのかかわりをもち、保護者や地域の願い 学校での生徒の様子を積極的に伝え、保護者や地域の声に謙 虚に耳を傾けていきたい。 に考えていきたい。 - 69 - 2 実践研究の概要 (1) 研究の構想と研究主題 「基礎・基本が着実に定着し、確かな学力が身に付く学習活動の創造」 (2) 主題設定の理由 ① 学校教育における今日的課題から 平成14年度から学校週5日制が完全実施になり、授業内容の精選が叫ばれる中、確かな学 力の定着は重要な課題となっている。福島県教育委員会でも、①「分かる授業」の設計・実施 ・評価、②「小・中・高等学校」の学習内容・方法の円滑な接続、③発展的な指導と補充的な 指導などの個に応じた指導と評価、の三つの課題を掲げ、平成12年度から5年計画で「ふく しま夢実現プラン・基礎学力向上推進支援事業」を展開している。 本校では確かな学力を、「児童生徒が獲得した基礎的・基本的な知識・理解や技能であり、 それらをその後の学習の中で活用し得る力」と定義付けしているが、その定着のためには学習 の仕方を訓練していくとともに、各教科の本質を明確にし、その本質に根ざした授業の工夫や 改善をしていく必要があると思われる。 ② 地域や保護者の期待から 本村では、「心身をきたえ、自ら学ぶ個性豊かな村民の育成」を基本目標に据え、心豊かな たくましい児童生徒をはぐくむ学校教育を推進するため、①基礎学力向上推進事業の積極的な 推進、②テレビ会議システムをはじめとした教育施設設備の整備充実と効果的な活用の促進、 ③地域に根ざした開かれた特色ある学校づくりなど、いくつかの教育重点施策を掲げて取り組 んでいるところである。「あしたをひらく誇りある村づくりの担い手の育成」に地域・保護者 とともに連携し合いながら取り組んでいきたい。本校は、地域・保護者の期待に応え、本村の めざす学校教育を推進していくその中心的役割を担っている。その意味でも、生徒一人一人の 自己実現に向けて確かな学力を着実に定着させていくことは最重要課題である。 ③ 本校生徒の学力の実態から NRT全国標準診断的学力検査の結果 では、平成14年2月の結果から3年間 にわたって5教科平均偏差値は上昇傾向 にあるものの、まだ50を下回っている 現状である。教科別に見れば、数学科、 英語科が特に陥没しており、確かな学力 の定着は依然として切実な課題となって いる。各教科領域ごとに分析を行い、陥 NRT結果の推移 51.0 50.0 49.0 48.0 47.0 SS 46.0 45.0 44.0 43.0 42.0 41.0 2002年2月 2003年2月 2004年2月 国 語 社 会 (3) 理 科 英 語 合 計 各教科 没点を明らかにするとともに、重点的に 指導すべき課題を確認した。 数 学 (本校の過去3年間のNRT結果の推移) めざす生徒像 〇 学習の基礎・基本が定着し、学習に主体的に取り組む生徒 〇 学習の仕方が分かり、家庭学習に継続して取り組む生徒 - 71 - (4) 研究仮説 ① ② ③ 各教科の基底や本質を見定め、小学校や家庭との連携を図りながら、あらゆる人・物・場所を 積極的に利用した授業の改善・工夫を行えば、基礎・基本が確実に定着し、確かな学力を身に付 けさせることができるであろう。 ① 各教科の基底や本質とは・・・ 「基底」とは、その教科が教科枠として括られた学問体系、教科の存在理由を意味する。ま た、「本質」とは、その教科を通して、どんなことを学ぶのか、どんな力を培うのかといった 教科の特性やねらいをも内包させる。その教科が生徒にとって、将来何の役に立つのか、人間 形成にどのようにかかわっているのか(いくのか)を我々教師自身がもう一度とらえ直し、咀 嚼し、生徒の目線に立って教えていくこと、各教科の役割や学ぶ意義を捉えさせることが、学 力向上の大前提となると考えた。 ② 小学校や家庭との連携とは・・・ 小学校との連携を図りながら、地域の児童生徒全体 の底上げを図っていくこと、小学校は小学校、中学校 は中学校とそれぞれが完結した教育の場ととらえるの ではなく、双方の教師が乗り入れた(授業参観、授業 参画、参加)授業実践を計画的に試行し、授業の質的 改善に役立てたいと考えた。 (小中連携・家庭との連携構想図) また、「開かれた学校」として、保護者や地域の方々に「わたしたちの学校」という意識を もっていただき、教育の責任を学校とともに分担・共有していくこと、さらに保護者の援助の もと、家庭学習にどのように取り組んで(ませて)いくかが、「確かな学力」を身に付ける鍵 になると考えた。 ③ あらゆる人・物・場所を積極的に利用した授業の改善・ 工夫とは・・・ 学校支援ボランティア制度の積極的な活用、T.T や余裕 教室を利用した少人数指導の導入、教科の専門性を最大限 に利用した教科担任の配置と教師間の連携など、ハードウ ェア、ソフトウェア両面から享受しうるあらゆるものを複 合的に利用し、確かな学力の定着に向けて取り組んでいきた (人・物・場所とのかかわり) いと考えた。 (5) 研究の手だて ① 教育活動における工夫・改善の手だて ア 授業における工夫・改善 授業における基礎・基本の定着のための工夫・改善については多岐にわたるが、教科の本 質に応じて継続して実施できる方法を模索していく必要があると思われる。そのために、 教科を3つの教科群に分けて研究授業を行い、授業の質的改善を図る。 イ 小学校、家庭や地域との連携 基礎・基本の定着を図るためには、中学校だけでなく、小学校のよい点を取り入れたり、 小学校の先生に協力してもらい、中学校の授業に参加してもらうなど小学校との連携を進め - 72 - る必要がある。また、地域人材を積極的に活用しながら、学習意欲の喚起と機能的学力の定 着を図っていく。さらに、学習内容を定着させるには学校での学習だけでなく毎日の家庭学 習を継続することが大切なので、家庭と連携し、家庭学習に力を入れさせていく必要がある。 ② 学ぶ姿勢、自主的な学習習慣確立の手だて ア 学習の決まりの徹底 授業における「学習の決まり」を再確認して徹底させる。挙手の仕方や発表の仕方に始ま り、忘れ物をなくすための手だてや授業を受ける心構えなど、学習以前の問題も追求してい くべきであると考える。 イ 学習の手引きの活用 本校では数年前に5教科について「学習の手引き」を発行しており、各教科の特性に応じ て学習方法の実例を紹介している。しかし、実際の教育活動においては、新学期に一通り目 を通すもののその後の活用については少ないという実態がある。今年度は「学習の手引き」 を現在の授業に即した形に改善し、より積極的に活用していこうと考えている。 ③ 確かな学力の定着を確認するための手だて ア アンケートによる意識調査 実践前と実践後にアンケートをとることにより生徒一人一人の学習に対する意識の変容を 把握するとともに、その結果を分析して授業における基礎・基本の定着のための質的な工夫 ・改善を目指していきたい。 イ テストによる学力の変容の調査 毎年、学年末に行われる標準学力テストやその他のテストの結果から実践前と実践後の学 力の変容を確認していく。 (6) 研究組織 各教科の専門性を生かした自立性の樹立を目指すと同時に、組織のぜい弱性を補完し、同僚性 の構築と授業のスキルアップをめざし、3つの教科群を組織し、研究を進めていく。 (3つの教科群を組織し、自立性の樹立と同僚性の構築、授業スキルの開発と熟練をめざす) - 73 - (7) 研究の全体構想 めざす生徒像の実現に向けて以 下の3つの視座を複合的に絡めな がら、基礎・基本の定着と確かな 学力を培っていく。 ① 小学 校や 地 域・ 家 庭との 実効 ある連携から迫る視座 ② 人・ 物・ 場 所( 環 境)と のか かわりから迫る視座 ③ 生徒 の実 態 把握 と 3つの 教科 群によるストラテジー (バランスとつながりを重視した方略を志向) (8) 研究の実際 ① 学習に対する心構えと基本的学習習慣の確立に向けて 学習意欲の喚起と自主的・継続的な学習習慣の確立をめざし、 「学習の手引き」を再編した。 内容は、各教科で何を学ぶのか、教科の特性を分かりやすくまとめるとともに、授業のスタイ ル、約束ごと、ノートの取り方、家庭学習の仕方などについてまとめ、授業と家庭学習両方で 適宜活用できるものと した。さらに、保護者 の理解と協力を得るた め、家庭にお願いした いことを追記した。 また、本校で定めて いる8項目の学習の決 まりを徹底するため、 1週間あるいは2週間 単位でTerm別重点 事項を定め、徹底的に 指導し、学びのステッ プアップ化を図った。 (「学習の手引き」に追記した内容の一部) 「学習の決まり」 全体 あなたはできていますか 学習を充実させるために 5 4 .5 4 3 .5 3 2 .5 2 1 .5 1 0 .5 0 (1)授業のめあてをしっかり理解しましょう。 (2)ノートをしっかりとりましょう。 (3)きちんと手を伸ばして挙手をしましょう。 (4)返事ははっきり「ハイ」と言いましょう。 (5)発表は最後まではっきりと言いましょう。 ∼です。∼だと思います。 (6)質問に答えようと努力しましょう。 (7)班や全体の話し合いで積極的に発言しま しょう。 (8)次の準備をしてから席を立ちましょう。 事 前 アン ケ ート 事 後 アン ケ ート 1 2 3 4 5 6 7 8 (学習の決まりとTerm別重点指導前後の生徒アンケート結果) - 74 - ② 教科群による研究テーマの設定 3つの教科群(Ⅰ群:国語、数学、英語)(Ⅱ群 :理科、社会)(Ⅲ群:音楽、美術、保健体育、技 術・家庭)に分け、それぞれの群が主に担う(培 うべき)力を明確にしながら、相互にかかわりを 教科群テーマ別研究計画 1 教科群の構成 2 研究主題との関連・主題のとらえ 方 ・ 共 通 す る 特 性 ・ 培 い た い( 担 う ) もった授業実践・研究を行った。 学力 各教科の特性を生かし、各群の役割を、 Ⅰ群:学習を支える基礎・基本の定着 Ⅱ群:課題解決能力、思考力・判断力の育成 Ⅲ群:豊かな表現力、創造力、生活に転移する 力の育成 とし、基礎学力向上自校プランをもとに研究計画 3 研究テーマ 4 研究仮説 5 仮説検証の観点・方法 6 授業研究計画 (単元・時期・授業者) に沿って授業実践を行い、一人一人の確かな学力の (各群でテーマ別研究計画を作成・実践) 育成をめざした。 ③ ※各群それぞれの研究計画は省略 小中連携授業研究会 4回の小中連携授業研究会を実施し、20回以上の研究(検証)授業を行った。 ア 第1回小中連携授業研究会 授業・事後研究会の模様を、TV会議システムで村全小中学校にリアルタイムで配信した。 TVにて授業参観した村内小学生(6年生)から授業の感想をいただくなど、サテライト授 業の試みは、今後の小中連携や機器活用の在り方に一石を投じる研究会となった。 イ 第2回小中連携授業研究会 理科、英語科、保健体育科の3教科で研究 授業を行った。事後分科会では、小学校の先 生方と今後の小中連携の在り方について協議 することができた。 ウ 第3回小中連携授業研究会 理科、社会科、音楽科、美術科、技術・家 庭科の5教科で研究授業を行った。小学校に 出向いての4年生を対象に授業や、栄養士と のT・Tなど、様々な形の授業実践が行われた。 エ (小学校に出向いての授業実践) 第4回小中連携授業研究会 国語科、数学科、英語科による研究授業を行った。県内外から140名以上の教職員関係 者をお招きするとともに、授業、全体会の模様は、インターネットでライブ配信(県内初め ての試み)され、約50校がリアルタイムで授業を参観した。 ④ 人・物・場所(環境)とのかかわり ア 地域人材の積極的な活用 生徒の学習意欲の喚起・高揚、さ らに機能的学力の育成を目的に、外 部講師を積極的に招き、授業の活性 化を図った。 左:(美術科:後藤焼き、お茶会)右:(技術・家庭科:もの作り支援事業) - 75 - イ 家庭との連携、デジタルコンテンツ構想 先生方の授業がワンク リックで再生される。 3クラスある余裕教室を、各クラス間に配置し、 昼休みや放課後の自主学習の場として利用している。 教室にはコンピュータを配備し、ネットワーク対応 の学習履歴型ソフトウェアを導入し、活用させてい る。また本校で開発した「デジタル寺子屋」(ソフト ウェア)に授業VTRを累積し、生徒がいつでもど こでも手軽に利用できるようにした。これにより、 生徒が今日の授業をその日のうちに自宅で見ること ができるようになった。 (デジタル寺子屋画面) 3 成果と課題 (1) 成果 ① 2学年実力テストの推移(SSは非表示) 学校だより、学年だより、地域ミニフォ ーラム、学年・学級懇談会、学校へ行こう 週間などを通し、積極的にアカウンタビリ 7月 SS ティーを果たすことで、徐々に地域や家庭 12月 の理解と協力を得ることができ、地域ぐる みで学力向上に向けて取り組んでいく体制 が整ってきた。 国語 社会 数学 理科 英語 5合計 各教科 ② 各教科(群)で育成したい学力(基礎・ 基本、思考力、判断力、表現力)を明らか 3学年実力テストの推移(SSは非表示) にし、それらを発揮する場や時間を確保し た授業を設計することができた。 デジタルコンテンツ構想に基づき、学校 内ではもちろんのこと、各家庭にいながら SS ③ 授業の再提供を受けることができ、自主的 な学習習慣の確立を促すことができたと同 時に、保護者に確認していただけるよいき 第1回(7月) っかけとなった。 (2) 第2回(8月) 第3回(9月) 第4回(10月) 第5回(12月) 課題 ① 今後も、生徒一人一人の学習進度や定着の度合いを確認し、それに応じた発展学習を工夫し たい。 ② 教科群同士の相互関係をより強固にし、組織的な授業の枠組み(総合的・教科横断的)で授 業を計画し、実践していきたい。 ③ デジタルコンテンツ構想については、今後も全職員で継続実践していきたい。また、コンテ ンツやWebページの更新等についても精選・焦点化を図っていきたい。 - 76 - 授 業 を 支 え る 環 境 づ く り と 学 習 指 導 の 工 夫(C中学校) 1 自校の課題と解決に向けたグランドデザイン (1) 学力の実態(平成15年度) 本校の学力の実態は、全国標準学力検査(NRT)によると、全国標準を各教科とも上回って おり、その数値も年々上昇してきている。 グラフ1は、平成15年度に実施した全国標準学力検査(NRT)の各教科の偏差値を示したも のである。 (グラフ1) (2) 自校の課題 本校は学習指導法の研究を昭和55年度から継続しており、平成14年度からは「一人一人に 確かな学力が育つ授業はどうあればよいか」を研究主題として取り組んでいる。 学校週5日制が完全実施となり、授業時数や指導内容の削減がなされる中、基礎・基本の定着 を図るための指導方法の工夫改善が一層必要であるという認識のもとに、「個に応じた指導」を 副主題として研究を推進してきた。その結果、全国標準学力検査(NRT)で伸びが表れてきてい るが、さらに、継続的な課題を次の2点とし、グランドデザイン(図1)を描いた。 ① 個に応じた授業を支える環境(学級・集団)づくり ア 望ましい授業態度の育成 イ 望ましい学級の雰囲気づくり(規律ある授業づくり) ウ 望ましい教師と生徒との人間関係づくり ② 個に応じた指導方法の開発と工夫 ア 効果的な学習課題・学習コースの選択による学習の実施 イ 効果的な個別学習・グループ学習の実施 ウ 効果的な習熟度別学習の実施 エ 効果的な協力教授(T・T)の実施 - 77 - (3) 課題解決に向けた戦略的な方策(グランドデザイン) (図1) めざすS中の生徒 確かな学力を身に付け、伸び伸びと学び、進路実現する生徒 生徒の実態と各教科の重点 教科 国 語 社 会 実態 平均偏差値53.6 平均偏差値53.4 弱点 話すこと・聞くこと 資料活用の能力 ※各教科の実態(平均偏差値)は平成15年度 数 学 理 科 英 語 平均偏差値52.7 平均偏差値54.4 平均偏差値52.9 図形に関する見方、 計算問題と科学的思 積極的な会話、適切 考え方 考力 に表現する力 重点 目標偏差値53.8 目標偏差値53.5 目標偏差値53.0 目標偏差値54.5論 目標偏差値53.5 目標 話す・聞くこと・書 資料を読み取り、活 見通しをもった考察 理的 自分の考えを適切に くこと 用する力 力 に考える思考力 表現する力 授業を支える環境づくり 個に応じた指導方法の開発・工夫 チェック 授業の基盤づくり ① 「学習の手引き」の活用 学習の心構え 授業に臨むために 学習の仕方(全体・各教科別) 学習マナーの確立 ・毎日の授業の積み重ね ② 授業者としての心構え ・1時間1時間を大切にし、 チャイムと同時に授業を始 める教師 ・授業の進度を遅れさせない 教師 ・生徒の思考を大切にする教 師 ・自らの技量を高める教師 ・各教科部会 ・学年会 ・研修委員会 ・反省協議会 ↑ ○生徒用教育目標 自己評価票(平均 評 定 4.0 以 上 を めざす) ○反省協議会資料 (平均評定 4.0 以 上をめざす) ○落ち着いた生活 についてのアン ケー ト (と ても ・まあまあ合わ せ て 80%以 上 を めざす) チェック ・校内研修会 ・各教科部会 ・研修委員会 ↑ ○中間期末テス ト 結 果 (各 教 科 目標平均をめ ざす) ○実力テスト実 施 結 果 (全 教 科 県平均以上を めざす) ○生徒の意識調 査 (ア ン ケ ー ト )(充 実 し た 学習をしてい ると考えてい る生徒が全体 の 80%以 上 と なることをめ ざす) チェック 生徒指導の充実 ① 日常生活における基本的行 動の指導 ・「生活の決まり」に従った規 則正しい生活の確立 ② 集団行動の指導 ・規律ある集会活動に向けた 指導 無言整列・入退場、整然 とした礼法 ・清掃活動の充実 無言清掃の徹底 ③ 教育相談の充実 ・悩み相談 ・学業相談 ・進路相談 ④ 家庭・地域・関係機関との 連携 ・PTA活動等 ・生徒指導委員 会 ・職員打合 ・学年会 ↑ ○生徒用教育目標 自己評価票(平均 評 定 4.0 以 上 を めざす) ○教育相談カード (つらい思いをし て い る 生 徒 10% 以下をめざす) ○ダイアリー(生活 の記 録 )(充 実し た1日を過ごし た 生 徒 80%以 上 をめざす) ○落ち着いた生活 についてのアン ケート(とても・ まあまあ合わせ て 80%以 上 を め ざす) 授業周辺部での取り組み 習熟度別学習 ①数学において 2学年習熟度学級編成授業 全学級全時間1クラスを2 クラスに編成 3学年選択習熟度別学級編成 授業 週2コマ3つの習熟度別コ ースに編成 ②英語において 2学年習熟度学級編成授業 全学級全時間1クラスを2 クラスに編成 3学年選択習熟度別学級編成 授業 週2コマ3つの習熟度別コ ースに編成 発展的な学習 ○終末でガイダンス的に発展的 な問題を投げかけ、家庭学習 などで実施させる。 ○指導と評価の一体化として、 単元テストの評価を生かす。 各教科の重点・手だて 国語科:「教材の開発と工夫」 社会科:「教材の開発と工夫」 数学科:「習熟度別学習」 理 科:「豊かな体験活動 ・問題解決的活動」 英語科:「習熟度別学習」 音楽科:「豊かな体験活動 ・問題解決的活動」 美術科:「個別学習 ・グループ学習」 保健体育科:「豊かな体験活動 ・問題解決的学習」 技術・家庭科:「個別学習 ・グループ学習」 ○朝自習・放課後の利用 学 年 教 科 学 習 内 容 朝自習 8:05~8:20 毎 週 金 曜 の放 課 後(20 分) 1・2年 数学・英語 数学は計算、英語は 火曜日に問題を提示し、 その週の朝自習で学習した内容につ 単語を中心に行う。 火∼金の朝自習で練習 いて、確認テストを行い、補習する。 3年 国・社・数 市販の学習教材を用 学習教材の問題を解く。 その週の朝自習で学習した内容につ ・理・英 いる。 いて、確認テストを行い、補習する。 ○自主学習 国 語 社 会 数 学 理 科 英 語 ワークブックの活用、ワークブックの活用、ワークブックの活用、 ワークブックの活用、チ ワークブックの活用、 *全学年: チェック チェック チェック ェック チェック 自主学習ノート 漢字検定の推奨 数学検定の推奨 英語検定の推奨 の提出 - 78 - チェック ・学力向上部会 ・各教科部会 ・学年会 ↑ ○確認テスト(通過率 80%以上をめざす) ○提出チェック(全員提 出をめざす) ○各種検定(合格率 80% 以上をめざす) 2 (1) 実践研究の概要 実践の構想 学力向上のためには、授業方法の工夫・改善といった直接的な方策とともに、授業の基盤づ くりや生徒指導の充実といった学習環境の整備が大切である。両者はまさに学力向上に向かっ て進む車の両輪のような関係で、バランスよく働き合い、より効果が上がるものと考えた。 学 力 向 上 授業の基盤づくり 学習方法の工夫・改善 授業者の心構え 生徒指導の充実 (2) 個に応じた指導 ○ 「学習の手引き」の活用 ○ 習熟度別学習 ○ 授業者としての心構え ○ 発展的な学習・補充的な学習 ○ 日常生活における基本的行動の指導 ○ 集団行動の指導 ○ 教育相談の充実 国語 社会 数学 理科 ○ 家庭・地域・関係機関との連携 音楽 美術 保体 技・家 各教科の手だて 英語 実践 ① 個に応じた授業を支える環境(学級・集団)づくりⅠ 「学習の手引き」の活用 ア 内容 本校では、生徒一人一人に自分にあったよい 学習方法を身に付けさせることを目的に、研修 部が中心となって昭和60年から「学習の手引 き」を編集している。内容については毎年見直 し、生徒の実態に即したものとなるようにして いる。 - 79 - 学習の手引きの主な内容 1 学習の手引きについて 2 学習の心構え 3 授業に臨むために 4 授業の心構え 5 ノートの取り方 6 聞く姿勢 7 発表の仕方 8 質問の仕方 9 話し合いの仕方 10 家庭学習について 11 各教科の学習の進め方 12 定期テスト学習計画表 2、学習の心がまえ (4) (5) (6) (7) (1) (2) はっきりとしためあて(目標)をもって学習しよう。 自分にあった計画を立てて学習しよう。 ・ 1日の生活時間の中に家庭学習の時間を位置づけよう。 例) 1年生…2時間 2年生…3時間 3年生…4時間 (3) 自分にあった学習のしかた、方法で無理のない学習をしよう。 (4) 予習、復習を忘れず行い、毎日むらのない学習をしよう。(継続は力なり) ・ 学習したことはその日のうちに整理してノートにまとめよう。 ・ わからなかったこと、重要なところはチェックし、授業で質問しよう。 ・ 自分専用の参考書として、後から活用できる自分だけの学習ノートづくり を工夫しよう。(復習に役立つ、各教科専用ノートのくふう) (5) 学習用具は事前にチェックして、必要最低限のものを準備しよう。 ・ 教科書、ノート(教科指定のもの)、資料集、辞書、宿題、筆入れ、下敷き。 ・ 筆入れは、適切な長さの鉛筆、色鉛筆、消しゴム、定規などが入るものを 用意し、余計なものは持ってこない。 ・ 学習用具は、使いやすいように、机の決まった位置に置くようにする。 (6) 学習と部活動を両立させ、生活にけじめをつけよう。 ・ 遊び、テレビなどの誘惑に負けずに頑張ろう。 6、聞きかた (1) 発表や説明を聞くときは、ひやかしたり、笑ったりしないで相手が話し終わ るまで黙って聞く。 話の要点をつかみ、相手の言おうとしていることは何かをよく考えながら聞 く。要点はメモする。 (3) 疑問点はメモし、自分の考えとくらべて聞くようにする。 (2) 7、発表のしかた (1) (2) 手を挙げるときは左手をまっすぐ高く挙げる。 指名されたら「ハイ」と返事をし、きちんと立って答える。わからないとき は「わかりません」とはっきり言う。 (3) 話し癖や余計な言葉をなくして、わかりやすくはっきりとした口調で話す。 (4) みんなに聞こえるように大きな声で語尾をはっきり話す。 (5) 自分の考えをまとめ、相手の方を見て話す。 (6) 順序よく話す。「わたしは∼と思います。その理由は∼だからです。」 (結論 → 理由・原因・条件) 3、授業をむかえるには (1) (2) (3) (4) (5) 家を出る前に時間割をチェックし、忘れ物がないか確かめる。 その日の授業の見通しを立て、余裕を持って早めに登校する。 始業前に学習用具を整え、授業に対する心の準備をして始業を待つ。 チャイムがなったら、当番の号令にしたがって始業のあいさつをする。 休憩時間は次の授業の準備をし、学習用具を机の上に準備しておく。 (特別教室への移動は休憩時間内にすみやかに行い、遅れないようにする。) 前の時間に学習したことをノートを見て確認する。 前の時間の課題や宿題は忘れずにやっておく。 今日はどんな学習をするのかを確認する。 (6) (7) (8) 8、質問のしかた (1) 手を挙げて質問する。 (2) 質問の内容(疑問点やわからないこと)をはっきりさせる。 (3) だれに質問するのか、何を質問するのかをはっきりさせる。 9、話し合いのしかた (1) 共通点、問題点、疑問点を明らかにするという目的からはずれないように話 す。 修正すべきところ、補足すべきところ、整理すべきところを中心に話す。 発表者と自分の考え、発表者どうしのものを比較しながら発表する。 考えを高めるための発表をするように心がける。 質問や答えの語尾やその呼応関係をはっきりさせる。 「∼ですか。」 → 「∼です。」 「どう思いますか。」 → 「∼と思います。」 「∼しますか。」 → 「∼します。」 など (6) 一対一の話し合いからグループなどの多対多の話し合いへ発展できるように、 一人一人が積極的に参加する。 (7) その場に応じた発言ができるように、話し合いの流れをつかみながら参加す る。 4、授業の心がまえ (1) (2) (3) (4) その時間に何を学習するのかはっきりさせる。 わかることとわからないことをはっきりさせる。 次に学習しなければならないことは何かをしっかりつかむ。 絶えず学習の反省(自己評価)を行い、よりよい学習のしかたを身につけよ うとする。 (5) 学習をふりかえり、重要なこと(学習のねらい)は何かを確認する。 (2) (3) (4) (5) 5、ノートの取り方 (1) (2) ・ ・ ・ (3) イ 説明を聞くときには、いったんノートを取るのをやめる。 家庭での学習と学校での学習を区別して記入する。 1時間の学習内容を1∼2ページにまとめる。 課題や調べようと思ったことは必ずノートに取る。 月日、曜日を忘れずに書き、予習・復習のらんを設ける。 ノートは学習したことがよくわかるようにまとめる。 今日の学習のねらいは何か(学習課題)が書かれている。 学習の流れがよくわかる。(どのような学習をしたかが理解できる) 後で復習するときに見やすいようにまとめる。(自分だけの参考書) 訂正や補正は赤鉛筆などで記入する。 活用 ・ 年度初めの学級活動で、学習の仕方について共通した指導を行い、毎日の学習訓練の基 盤づくりとする。 ・ 各教科、オリエンテーションの時間を年間指導計画に位置付け、学習の仕方の指導を行 う。 ・ 学習の仕方を再考し、よりよい学習習慣を身に付けさせる教師側の意図、学習習慣を身 に付けたい生徒側の必要性から適宜活用する。 ・ 定期テストに向けた学習の計画づくり、テスト後の反省に活用する。 ・ 「学習の手引き」は同時に「授業の手引き」という認識に立ち、教師側もチャイム始業 や授業時の言葉づかいなど基本的な授業の進め方に基づいて実践する。 チャイムと同時に 授業がスタート 起立 手を挙げて発表 - 80 - ② 個に応じた授業を支える環境(学級・集団)づくりⅡ 日常生活における基本的行動の指導、集団行動の指導 ア 清掃指導 本校清掃活動全体計画(抜粋) 1 目的 学習の場にふさわしい環境をつくるために生 徒を主体として環境の美化に努める。 S 中の伝統である無言整列・清掃を引き継い でいけるように指導する。 2 指導の重点 (1) 無言整列の徹底 班長が班員を静かに整列させられるように 指導する。服装をしっかりさせて廊下のライ 服装を整え、きちんと整列する生徒 ンに沿って並ばせる。 (2) 適正な服装の徹底 清掃に適した作業しやすく、衛生・健康面 に考慮した服装とする。 (3) 無言清掃の徹底 清掃に集中させるため無言清掃に徹底させ る。 (4) 生徒会整美委員会を中心とした活動 ① 清掃状況の点検 ② 改善点の指導 無言で清掃する生徒 イ 朝会 本校の朝会実施要項に沿って、生徒会(代議委員会)が進行する。朝会を学校長の授業の場 ととらえ、毎週月曜(休日の場合は翌日)に必ず実施、厳粛な中で会が進むよう配慮している。 朝会への無言入場 厳粛な中で進行する朝会 - 81 - ③ 授業等おいての個に応じた指導方法の開発と工夫について 習熟度別学習の実施(数学科を例に) ア 教科の研究内容 〔本校の研究主題〕 一人一人に確かな学力が育つ授業はどうあればよいか ∼個に応じた指導を通して∼ 〔数学科の研究課題〕 習熟度別学習やT・Tの授業を効果的に展開することにより一人一人に基礎的・基本的 な内容の定着を図るための指導法の研究 〔数学科の研究課題設定の理由〕 数学科においては能力の差が著しいことがあげられる。そのため一斉授業の中では 一 人一人の能力を充分引き出すには大きな困難があると考えられる。そこで、通常の授業や 選択教科において習熟度別学習の実施やT・Tを導入することにより、一人一人に合った 支援を進めて基礎学力の定着を図り、確かな学力を育てることができると考え、教科の研 究課題を設定した。 〔個に応じた指導方法について〕 必 修 教 科 ① 選択教科 2学年習熟度別学級編成授業 ② ・全学級全時間1クラスを2クラスに編成 する。 3学年選択習熟度別学級編成授業 ・週2コマ3つの習熟度別コースに編成 する。 ・各単元ごとに生徒に希望をとり、各クラ ・3つの習熟度別コースを実施するにあ スで習熟度別(発展、基礎)の授業を展開 たり、生徒に希望(第1、第2)をとり、 する。 各自の能力に合ったコースを選択させ ・個別指導の時間を多く取り入れ、生徒が 意欲的に学習に取り組めるようにする。 また、選んだコースの内容が自分に合わ なくなった場合はコース変更を認める。 ることにより、意欲的な学習態度を育 てるようにする。 ・1時間ごとに学習プリントを用意する など、教材を準備し、学習内容の焦点 化を図り学力の定着を図るようにする。 ・自己評価を毎時間行い、到達度を各自 確認して次の授業に生かすようにする。 - 82 - イ 第3学年選択数学習熟度別学級編成授業の実践例 観 点 別 評 価 規 準 表 (一 部 ) ○ 習熟度別学級編成授業の目的 コース別時数 学習活動 同質集団を形成し、個に応じたよりきめ 基礎 オリエンテーション 細かな指導を実施し、学力の向上を図る。 ○ ○ ○ 授業時数:1週2時間(年間70時間) コース編成 1学級 応用コース 3学級 発展コース 1学級 応用 発展 1 1 1 正負の数・文字と式 2 1 一次方程式 2 1 連立方程式 2 計 算 基礎コース 1 1 1 平方根 1 1 多項式 1 1 二次方程式 1 1 1 いろいろな計算 1 計算のまとめ 1 1 平面図形・空間図形 2 1 平 行 と 合 同 (角 を 求 め る ) 1 1 3 学習単元 図 平 行 と 合 同 (合 同 の 証 明 ) 2 1 図 形 の 性 質 (三 角 形 ) 1 1 図 形 の 性 質 (平 行 四 辺 形 ) 1 2 図 形 の 性 質 (三 角 形 と 円 ) 1 1 1 1 2 各コースとも基本的に同単元とする。 ○ 選択方法 形 相 似 な 図 形 (相 似 の 証 明 ) 2 相 似 な 図 形 (平 行 線 と 比 ) 生徒による希望選択とする。 三平方の定理 1 1 1 1 1 図形のまとめ 1 網かけの時間の目標を下図中に例示 基礎コース 応用コース 発展コース 数学の学習を苦手とす る生徒が多いので、選択教 科の特性を生かしてゆとり をもって取り組ませること により個に応じた指導がで きる。 基本をしっかりとおさ え、その内容を用いて、 練習問題・応用問題に取 り組ませる。一つの問題 に対して様々なアプロー チの方法があることにも 気付かせるようにする。 様々な問題を取り上げ多 面的な考え方やとらえ方が できるようにすることで学 習意欲を高める。小集団で の話し合い活動なども取り 入れる。 本時の目標例 等しい辺や角を見付 けられその理由が分か る。 本時の目標例 平行四辺形に関す る問題を、既習事項 を利用して証明する ことができる。 本時の目標例 円の性質を利用した 証明問題を解くことが できる。 基礎コースの授業風景 応用コースの授業風景 - 83 - 発展コースの授業風景 3 成果と課題 (1) 成果 ① 個に応じた授業を支える環境づくり 望ましい授業態度の育成、望ましい学級の雰囲 気づくり(規律ある授業づくり)を、「学習の手引 き」を用いた指導や、清掃指導、朝会等の集会指 導を通して行ってきた。また、それらが望ましい 教師と生徒との人間関係の中で行われていくよう 配慮してきたところ、(グラフ2)のようにほ とんどの項目で「とても」「まあまあ」が 80% を超える結果を得ることができた。 ② 個に応じた指導方法の開発と工夫 効果的な学習課題・学習コースの選択による 1 2 3 4 5 6 あなたは清掃をしっかり行っていますか。 全校朝会では話をよく聞いていますか。 清掃も授業と同じように自分にとって大切だと思いますか。 授業に集中していますか。 友達と協力して授業に臨んでいますか。 S中は勉強しやすい学校だと思いますか。 (グラフ2) 学習、習熟度別学習、協力教授(T・T)等を実施 してきたところ、(グラフ3)(グラフ4)のよ うな結果が得られ学力の向上が見られた。 (グラフ3)より、平成13年度入学生の 3年間は、ほぼ毎年上昇していることがいえ る。この学年は、2年生では習熟度別クラス 編成を行ってはいない。3年生選択授業で数学 (グラフ3) と英語の習熟度別クラス編成を行った。 (グラフ4)は、平成14年度に入学した生 徒の変容であるが、1年時にそれほど高くな かった数学と英語が2年時において大きく伸 びている。これは、この学年から2年生の数 学と英語で1クラスを2コースに分けた習熟 度別学習を実施した成果であろう。 「どのようにすれば学力がついていくと思う (グラフ4) か」という問いの結果(グラフ5)、全ての項 目が学習訓練に基づく学習習慣の確立と関係 しており情意面でも上昇傾向が読みとれる。 (2) 課題 ① 個に応じた指導を展開してきた結果、各教 科において知識・理解、技能の定着が見られ た。今後は、表現力などの学んで得た力をさ らに生かす力を育成するための指導法につい て研究していきたい。 ② (グラフ5) 生徒の意識調査によると、学力の向上に家庭学習の充実が重要であることへの認識が低い 結果が出ている。家庭学習に対する意識を高め充実を図るような手だてを講じていきたい。 - 84 - 学びの基盤づくりを通した学力向上(D 中学校) 1 自校の課題と解決に向けたグランドデザイン (1) グ ラ フ 自校の実態 ① 教研式標準学力検査NRT結果(数学3年) 学力テスト結果から 教研式標準学力検査NRT(第3学年 ア 数学・英語 5月実施) 数学、英語ともに、段階で2、3の割合が高く、4、5 % の割合が低い。2の割合を減らし、4、5の割合を増やす 必要がある。 イ 数学 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1 2 3 4 標準分布 7 24 38 24 5 7 本校 7 25 33 20 15 段階…偏差値34以下「1」、35∼44「2」、 45∼54「3」、55∼64「4」、65以上「5」 「数と式」「数量関係」は、全国レベルに達しているが、 「図形」は証明に関する内容の定着が十分でない。 ウ グ ラ フ 教研式標準学力検査NRT結果(英語3年) 英語 いずれの領域も全国平均を上回っているものの、「聞くこ と」「話すこと」といった、いわゆるコミュニケーション能 力が劣っている。 ② % アンケート結果から 家庭学習の時間が大変少ない。 ・ 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1 2 3 4 標準分布 7 24 38 24 5 7 本校 7 18 24 38 13 段階…偏差値34以下「1」、35∼44「2」、 45∼54「3」、55∼64「4」、65以上「5」 家庭学習の時間が30分以内の生徒は約29%である。 また、1時間以内であるという生徒は約63%である。 → 実態として学年+1時間の取り組みがなされていない。 グ ラ フ 5% ③ 日常生活の観察から ア 短期的な目標を持つことができない。 イ 将来の自分の姿が描けない。 家庭学習時間 29% 32% 0分∼30分 30分∼1時間 1時間∼2時間 2時間以上 (2) 34% 自校の課題と改善策 ① わかる・できる授業の充実 (個に応じたきめ細かな指導の充実)→ T・T、習熟度別学習の充実 ② 学習したことの定着を図るための家庭学習の習慣化→ ③ 学習を支える環境の整備 ④ 夢と希望とあこがれをもたせる指導 → 学習確認ノートの活用 オープンスペースの活用 85 → キャリア教育の推進 (3) 課題解決に向けたグランドデザイン 学びの基盤づくりを通した学力の向上 生徒の実態と数値目標 教 科 数 学 英 語 家庭学習の実態 実態・弱点 4・5の段階…35% 3 の段階…33% 1・2の段階…32% 「図形」領域の証明に関する 内容の定着が十分でない。 4・5の段階…51% 3 の段階…24% 1・2の段階…25% コ ミ ュニ ケー ショ ン能力 が劣 っている。 学習時間の実態 ・1時間以上37% ・30分未満29% 学習確認ノートの提出 ・65% 重点目標 (数値目標) 4・5の段階…40%以上 3 の段階…35% 1・2の段階…25%以下 証 明な ど を中心 に論 理的な 思 考力を高める。 4・5の段階…55%以上 3 の段階…30% 1・2の段階…15%以下 積 極 的に 自分 の考 えを表 現す る力を高める。 学習時間の目標 ・1時間以上50% ・30分未満15% 学習確認ノートの提出 ・75%以上 学習環境の整備 授業の充実 □朝の読書 □オープンスペースを利用した 自主学習 □教科相談日の設定 □部活動との両立 □学習訓練の徹底 □分かる・できる授業の展開 □指導方法の工夫・改善 □生徒指導の機能を生かす 家庭学習の習慣化 □学習確認ノートの活用 □学年+一時間 □保護者の啓蒙 □資料の提供 学力向上を支える3つの柱 『所属感・存在感・達成感』 特別活動の充実 『夢と希望とあこがれ』 キャリア教育の推進 □「歌声の響く学校」の実践 帰 りの学 活に おけ る「学 級の 歌 」の実 践、 学年 歌声集 会、 縦 割り歌 声集 会、 全校歌 声集 会の実践 ↓ 盛 り上が る校 内合 唱コン クー ルへ □部活動の活性化 ル ールや マナ ー、 あいさ つ、 活 動時間 、整 理整 とん等 の指 導 技 術面は もと より 精神面 、過 程の重視 □「目標をもたせる」指導 各 学年 の発 達段階 に応 じた 進路学習の充実 □職業体験学習の実施 市 内を 中心 とした 各事 業所 で2日間実施 修学旅行における企業訪問 □「先輩に聞く会」の実施 本 校出 身の 高校生 、社 会人 の 方 を招 聘し 、進路 への 希望 、 悩みを聞く。 □市長講話 本 市に まつ わる話 の中 で、 会 津 のよ さを 知り、 将来 の展 望 をもつ。 □各界の一流著名人の講演会 「旅立ちの日に」作詞者 小嶋 登先生 元古川商業高校 女子バレーボール部監督 国分秀男先生 □ 「英 語が 使え る人材 育成 」ふ く しまプラン指定校 海 外研 修、 国内集 中研 修、 英語講座への参加 □ □ □ □ □ □ ルールとマナーの確認 中学生らしいさわやかな姿・形で 朝のあいさつ運動の積極的な展開 「1日の生活プログラム」に基づいた学校生活 「授業にのぞむ5つの約束」の励行 教育相談の定期的な実施 - 86 - 『理性と意志』 道徳性の涵養 □「 あい づっ こ宣 言」 の普及 ・ 啓発 本 市で 策定 され たあ いづっ 子 宣 言を 心の より どこ ろとし て 指導 □朝のあいさつ運動 生 徒会 、地 区各 種団 体との 連 携 し、 地域 を上 げて の運動 と して展開 「あいさつは心の扉を開く鍵」 □読書による心の涵養 朝 の1 0分 間読 書に より、 幅 広 いも のの 見方 や様 々な角 度 からの考え方を理解 □豊 かな 体験 に基 づい た道徳 教 育 修 学旅 行で の震 災学 習、尾 瀬 で の宿 泊体 験学 習、 地域清 掃 活動との関連 □ボランティア活動 地域のボランティアクリーン アップ作戦の実施 基盤としての 生徒指導の充実 2 実践の概要 (1) 授業の充実 (分かる・できる授業の展開を図るために) ① T・Tの役割の明確化による個々の学習状況に応じた 支援を行う。 ② 個々の習熟度や学習のスタイルに応じたコース別学習 の充実を図る。 ③ 適切なコース選択のための自己判断材料を設定する。 ④ 習熟度の程度に合せて学習教材の作成とその効果的な活用を図る。 ⑤ 集団に分かれてからのさらなる個への指導・援助と集団での学び合いの場の活用を図る。 ⑥ 学習スタイルや習熟度に応じた助言が与えられる学習環境づくりや雰囲気の醸成を図る。 <授業に臨む5つの約束>の実行 1 授業に必要な用具を机上に準備して待つ。 2 始めのチャイムと同時に席に着く。 3 先生の入室により、係の合図で起立・礼・着席をする。 4 係の合図で黙想をする。 5 先生の指示により、係の合図で起立し、きちんと礼をして終わる。 (2) 家庭学習の習慣化 (学習時間は 学年 + 1時間を目標にする。 ) ①課題・予習・復習の徹底を図る。 (毎日提出) ②学習確認ノートの活用を図る。 【提出冊数コンクールの実施】 (毎学期1回ずつ1週間にわたり実施) 〔提出率平均〕 1年 90% 2年 71% 3年 78% (日記もかねて活用) (各自問題に取り組む) ③ 学年・学級通信を通して保護者への意識の高揚・啓発を図る。 ④ 資料の提供や個に応じた課題の提示を工夫する。 87 (3) 学習環境の整備 (読書を通して豊かな心をはぐくむ) ① 朝の読書の充実を図る。 ○ 教師と生徒が朝の10分間、心静かに本を一緒に読む。 「だれもが集中できる時間」 ※ 生徒の読書量が増加した。 1か月平均 1.5冊 → 2冊 ② オープンスペースを利用した自主学習の充実を図る。 ◇ いつでも学習したいときに学べるスペース ◇ どの先生にも質問ができ、学習できるスペース ◇ 自主学習の問題がいつでもあり、自由に学べるスペース ○ 常にオープンスペースは、学びの場であり、学習の場である。 (オープンスペースで自主学習する生徒) ○ 休み時間や放課後を利用して自主学習を行う。 ・ 自分の学習の進度に合わせて問題を選び、学習を進める。 (オープンスペースにコース別・領域別に問題をいつでも用意しておく。 ) ・ 分からないときは、先生や友達に聞き、学習を深める。 ※ 教室だけでなく、学びの場としてのオープンスペースを利用して、自主学習する生徒が増加した。 (コース別・領域別の問題集) ③ (放課後に自主学習する生徒) 各教科の相談日を設定する。 曜日ごと、週ごとまたは長期休業中は、午前・午後に教科別の学習相談日を設け、自主学習が積極的に行わ れるように配慮する。 ※ 休み時間や放課後を利用して、教師に質問に来る生徒が増加した。 88 ④ 部活動と学習の両立を図る。 ≪文武両道≫ ○ 活動は一斉に始まり一斉に終わるを徹底する。 ○ 集中した活動をモットーとする。 ※ チャイム着席を遵守し、50分間集中して学習に取り組む生徒が増えた。 (4) 学力向上を支える3つの柱 ① 『道徳性の涵養』 (理性と意志) ア 〔あいづっこ宣言〕の普及・啓発 ○ 各教室にあいづっこ宣言を掲示し常に生徒の目に触れさ せ、意識の高揚を図る。 ○ 会津藩校『日新館』大成殿の精神に縁を深め、 「学術」 「敬愛」 「自主」の考え方を継承し、郷土会津の先人 たちの「志」と「行動」を不易とする。 イ 朝のあいさつ運動の実施 ○ 毎朝の生徒と教師によるあいさつ運動と月1回の地域の方々とのあいさつ運動を行う。 この時地区の保護者、老人会、各種団体の人たちと地区をあげて行う。 あいさつは心の扉を開く鍵 地域の方々も積極的にあいさつ運動に参加。元気 よく『おはようございます』さわやかなあいさつで 1日がスタートする。 ※ 元気なあいさつから、何事にも意欲的に取り組む 生徒が多くなった。 ウ ボランティア活動の充実 ○ 地域へのボランティアクリーンアップ作戦を7月と 10月に実施 ○ 地域の方々へ日ごろお世話になっているお礼を込め て実施する。この時区長さん、地区の方々も参加して 行った。 ※ 地域のために何ができるかを考える機会となった。 89 ② 『キャリア教育の推進』 (夢と希望とあこがれをもたせるために) ア 職業体験学習の実施 市内及び近隣の町村で2日間にわたり職業体験を実施した。修学 旅行では、企業を訪問し、勤労観や職業観について深めることがで きた。 イ 先輩に聞く会の実施 本校の卒業生(高校生・社会人)を招き、進路決定までの悩みや 夢、希望についてあつく語っていただいた。 ◇ ◇ ◇ 先輩の高校生からは、進学に向けて1日6時間勉強したこと。 自分の新たな道を切り開くために、一流企業を辞め、家業を継いで成功させたこと。 つねに夢と希望を忘れず、進路に向けて努力することの大切さ。 ※ 夢や希望の実現のために必要なことを、先輩の生の声から学ぶことができた。 ウ 市長講話の実施 会津人であることに誇りと自信を 会津若松市長をお迎えし、地域が誇る先人の偉業と日本の 歴史と会津のかかわりについて講話をいただいた。 歴史の重要なポイントには、会津の人々がかかわりをもっ ていたこと。 「先人は、決してあきらめなかった。 」がキーワードとして、 強く印象に残った。 エ 各界の一流著名人を招いての講演会の実施 ○ 全国の卒業式で一番歌われている『旅立ちの日に』の 作詞家 小嶋 登 先生を文化祭にお招きし、全校生 で小嶋先生ともに、 『旅立ちの日に』を合唱した。 感動的な全校合唱になった。 ○ 高校女子バレーボールで過去11回の全国優勝を果た した元古川商業高校の女子バレーボール部監督国分秀男 先生をお招きしての講演会を実施した。 夢をもち、夢をかなえるために決してあきらめないこ との重要性を感じることができた。 オ 「英語が使える人材育成」ふくしまプランの実践 ◇ 海外研修(オーストラリアホームステイ) 本校生徒5名が夏休み17日間のホームステイを実施 した。異文化に直接触れることで、国際化に対応する資 質を養った。 90 ○ 国内集中研修 夏休み、4泊5日で会津自然の家で英語の集中研修を実施し、本校より32名が参加した。ネイティブ講 師と日常生活を送りながら、楽しく英会話を学んだ。 ○ 国際交流フェスティバルへの参加 国際交流協会をとおして、 「English Day」に参加し、多 くの国の人たちと積極的に交流し、国際理解に努めた。 ○ ネイティブ講師が毎日学校に在校 いつでも生きた本場の英語を聞き、話し、学ぶことがで きる。 ③ 『特別活動の充実』 (所属感・存在感・達成感を感じるために) ア 歌声の響く学校 みんなで心を合わせて歌う喜びを味わう ○ 帰りの学活のあとに毎日学級の歌を歌い、一日を終える。 ○ 学年歌声集会、学年を越えた縦割り歌声集会、全校歌声集会を実施した。 ○ 校内合唱コンクール「灯火のつどい」として、地域の方々をお招きし、クラス発表を聞いていた だいた。 イ 部活動の活性化 (ルールやマナーなど精神面に対する指導の充実のために) ○ あいさつをする。時間を守る。整理整とんをする。 ○ 部活動保護者会 保護者の皆さんに部活動の様子をみていただき、理解と協 力を得る。 ○ 全校生応援 全校生が中体連大会の応援に出向き、一致団結して熱く 燃える。 全校生の心が一つになるとき 大会結果を玄関前に張り出して全校生で活動をたたえる。 91 3 成果と課題 (1) 成 果 ①「授業の充実」 「家庭学習の習慣化」 「学習環境の整備」を図る。 ○ 多様な授業スタイルの開発やTTの役割の明確化など、学習スタイルを変えることで、個々の生徒の多 様な学習の欲求に対応することができた。 ○ 特に、平易なものから高度な課題に段階を追ってステップアップしていく学習では、様々な生徒個々の 学習の欲求に対応でき、発展的な学習や補充的な学習の充実を図ることができた。また、段階的な理解や 着実な定着が図れた。 ○ 家庭学習の習慣化を図ることにより、予習・復習など家庭での学習時間が増えた。 ・ 家庭学習の時間 1時間以上が37% → 50%に増加した。 ・ 学習確認ノートの提出 65% → 79%を越えた。 ○ オープンスペースの有効活用(個別に自分のペースで学習する場面や学びあう場面を設定した)により、 学ぶ意欲の向上が見られた。 ② 学力向上を支える3つの柱 「キャリア教育の推進」 「道徳性の涵養」 「特別活動の充実」を図る。 ○ 将来についての夢や希望を持ち、今後どのような進路を目指せばよいのか、そのためにどのような努力 をしなければならないかを知ることができた。 ○ 強い意志と理性を持って、今、何をすべきかを知り、行動に移すことができるようになってきた。 ③ 生徒指導の充実を図る。 「最後までがんばる」 (心情、態度の育成) 「けじめをもつ」 (判 ○ 日々の生徒指導の充実を図ることにより、 断力、社会性の育成) 「迷惑をかけない」 (最低のモラル)などの基本的な生活習慣の確立が図られた。 ◇ 数値目標の達成 グラフ 4 グラフ 5 教研式標準学力検査NRT結果(数学3年) % 教研式標準学力検査NRT結果(英語3年) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 % 1 2 3 4 5 標準分布% 7 24 38 24 7 本校 5月% 7 25 33 20 15 本校12月% 4 23 33 25 16 段階…偏差値34以下「1」、35∼44「2」、 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1 2 3 4 標準分布% 7 24 38 24 5 7 本校 5月% 7 18 24 38 13 本校12月% 1 15 24 40 20 段階…偏差値34以下「1」、35∼44「2」、 45∼54「3」、55∼64「4」、65以上「5」 45∼54「3」、55∼64「4」、65以上「5」 * 数学、英語とも5月に比べ12月では、1、2段階の割合が減り、4、5の段階が増えた。 (2) 課 題 ○ 年度ごとに生徒の実態を明らかにし、数値目標の見直しを図る必要がある。 ○ グランドデザインに係わる実践内容のマンネリ化の防止と、更なる組織化・系統化を図ることが大切である。 92 確 か な 学 力 を 身 に 付 け た 生 徒 の 育 成(E中学校) ∼発展的な学習、補充的な学習の充実を通して∼ 1 自校の課題と解決に向けたグランドデザイン (1)学力の実態 ① 生徒数、学級数 1年 2年 3年 合計 左表の通り、本校は1学年が30人学級編制による 2クラス、2・3学年は1クラス、全校生97名のへ 生徒数 35 28 34 97 き地小規模校である。2つの小学校から入学する1年 生は、小学校時と変わらない少人数指導が可能である。 学級数 2 1 1 4 しかし、他学年の人数は30名前後であり、大規模 校とさほど変わらない。 ② 標準学力検査の結果 平成16年度の生徒についての、平成15年度末の標準学力検査の結果は次の通りである。 <標準学力検査の平均偏差値> (1年生は、小学校6年生末の結果) 学 年 平 均 1 年 56.5 55.4 60.0 55.5 54.4 − 2 年 54.1 53.9 55.8 54.0 56.3 50.3 3 年 54.3 56.4 54.5 52.7 55.1 53.8 <知能・学力の比較> 知能→学力偏差値 オーバー・アチーバー バランスド・アチーバー アンダー・アチーバー 国 語 1 社 会 年 数 学 2 理 年 科 英 3 語 年 56.0→56.5 47.9→54.1 50.8→54.3 6人(17%) 9人(31%) 8人(24%) 27人(77%) 20人(69%) 23人(70%) 2人( 6%) 0 2人( 6%) (2)自校の課題 (1)の結果から読み取れる本校生徒の課題をまとめると、次のようになる。 ① 基礎的・基本的事項が十分定着していない生徒が見られる。 全体的に見ると、ほとんどの学年が各教科で全国平均を上回っており、学力は低くはない。 しかし、アンダーアチーバーの生徒がおり、確かな学力が身に付いているとは言えない。 - 93 - ② 中位・上位生徒の一層の学力向上を図る必要がある。 バランスドアチーバーが7割おり、生徒個々の力も身に付いていると考えられる。しかし、今 後は中間層の生徒の力を一層伸ばす必要がある。先の、アンダーアチーバーの生徒の解消ととも に、補充的・発展的な学習の指導の充実を図ることが必要である。 ③ 各学年の教科間に学力差がある。 各教科での差が4∼6ポイントあり、各教科に応じた指導の工夫により力は伸びる可能性があ る。特に、英語・数学科においては、まだまだ伸ばせる教科であると考える。必修・選択の時間 を活用して、一人一人の能力や適性に合った指導を充実させていきたい。 ④ 小・中・高等学校との連携をさらに充実させる。 学力実態調査の第1学年の結果は、小学校2校の平均である。好ましい結果であり、その指導 方法等について情報交換に努めていきたい。本村が長年取り組んでいる小・中・高等学校との連 携をさらに充実させ、12年間を見通して指導・援助にあたりたい。 (3)課題解決に向けたグランドデザイン 本校教職員の実態・課題 本校生徒の学習面の課題 戦 <教職員組織の実態> ○ 1教科1担任である ○ 講師、若手教師多い <指導上の課題> ○ 指導力の向上 ○ 教材研究の充実 ○ 見通しをもった実践 確 ○ ○ ○ 必 修 か な 略 の 中 心 <日常観察から> ○ 主体的な学習態度の育成 ○ 学習習慣の確立 <標準学力検査から> ○ 基礎・基本の定着 ○ 上位生徒の学力向上 ○ 学年間、教科間の学力差 確かな学力を身に付けた 生徒の育成 ∼発展的な学習・補充的 な学習の充実を通して∼ 学 力 の 向 上 の た め の 実 践 的 研 究 発展的な学習や補充的な学習など個に応じた指導のための教材の開発 個に応じた指導のための指導方法・指導体制の工夫改善 生徒の学力の評価を生かした指導の改善 教 科 選 択 教 科 小・中・高 の 連 携 生徒一人一人に応じた指導を 一層充実させ、学習内容の確実 な定着を図る。 発展的な学習、補充的な学習 に重点を置き、一人一人の能力 や適性を一層伸ばす。 12年間を見通し、将来の理 想とする生徒像を明確にして指 導・援助に努める。 ○ ○ ○ ○ 教材研究、文献研究の充実 ○ 実際に活用できる指導計画 ○ 必修教科と関連させた指導 ○ 生徒主体の学習活動の推進 ○ 教科グループ編成の工夫 <用具系>数学 A・B、英語 A・B 補充、発展による学力向上 <内容系>国語、社会、理科 個人テーマによる探求活動 <表現系>音楽、美術、保体 達成感、充実感の感受 ○ 教材研究、文献研究の充実 実態をふまえた指導計画 習熟度別指導の実施 (通年) 通年) 数学A・B、英語A・B ○ 補充・発展指導の工夫 ○ 評価規準の改善 ○ 特別非常勤講師の活用 ○ 具体的な目標の設定 ・アンダーアチーバーを0人に ・4、5の生徒を増やす (3の中間層の偏差値アップ) 村内3校との連携 小学校2校、高校1校 ○ 村学力向上推進会議の充実 ・最終的な目標の共有化 ・各学校段階の研究推進 ・実効性ある協議会実施 (成果と課題の分析) ○ 授業研究会の充実 ・校内研究会の公開 ・研究協議会の充実 ・情報交換 実態調査、成果の検証 自校プランの改善・活用 家庭学習の充実 ○標準検査、校内諸テスト ○生徒、保護者の意識調査 ○自己評価、日常観察 ○実効性のあるプラン作成 ○学期1回の達成度評価 ○プランの修正、改善 ○日常の家庭学習の工夫 ○長期休業中の課題の工夫 ○自主学習奨励の手だて - 94 - 2 実践の概要 (1)実践の構想 ① 「確かな学力」を身に付けさせる指導 確かな力を身に付けるための3要素「学ぼうとする力」「学んで得た力」「学ぶ力」の関係を下 図のようにとらえる。 課題解決の意欲 確かな学力 手順・方法 ② ○ 内発的な学習意欲が引き金になり ↓ 学習が始まる。 ○ 知識・技能をもとに、解決の手順・ ↓ 方法を考え、課題を解決する。 ○ 課題解決を通して、新たな知識や ↓ 技能を習得する。 ○ その達成感や満足感が、次の学習 知識・技能 への意欲付けになる。 補充的な学習・発展的な学習での重点指導 ア 補充的な学習での重点 確かな学力の3要素との関連から、補充的な学習で重点を置くべきことは、知識・技能の 定着であると考える。基本的な知識・技能の定着を目標に学習を進め、分かるようになった 喜びを味わわせ、自信をもたせることから学習意欲の向上を図る。 イ 発展的な学習での重点 確かな学力の3要素との関連から、発展的な学習で重点を置くべきことは、手順・方法す なわち学びの学習であると考える。各教科の学び方を身に付けさせ、興味をもった内容をさ らに深く追究できるようにしたい。 ③ 英語科・数学科における習熟度別指導 ア イ 基本方針 ○ 年間を通してすべての時間をA(発展)、B(基本・補充)の2コースで指導する。 ○ コース編成は、生徒の希望を最優先するが、必要に応じて教師から助言を行う。 ○ 単元ごとに、コース間移動の希望を取る。 ○ 指導計画や授業の進め方はコースで異なるが、単元配当時数と終了の期日は同一とする。 ○ 単元テストや定期テストはA、Bとも同一問題で行う。 ○ 評定は、2名の担当教師(英語科ではALTも含む)により、共通観点で公平に行う。 コースごとの指導方針 Aコース (発展的な学習) Bコース (補充的な学習) 英 ○より発展的な活動に意欲的な生徒が対象 語 ○実践的・即興的なコミュニケーション活動 ○教科書の学習のフィードバックとコミュニ 科 を引き出す能力の育成 ○基礎・基本事項の定着が不十分な生徒対象 ケーションに必要な基礎・基本事項の定着 数 ○多様な考えの自力解決能力と思考力の育成 ○教科書の基本的な問題解決能力の育成 学 ○発展的な学習の時間を多く設定することに ○問題を自力解決することによる学習意欲の 科 よる学習の楽しさの体感 育成 - 95 - (2)英語科での実践 ① 実践の構想 ア 学力向上への戦略 英語科では平成14年度から第2学年と第3学年において「通年による習熟度別学習」を実 施している。発展的な学習・補充的な学習を取り入れ、生徒一人一人の能力・適性に応じた指 導を継続し、学習に対する成就感を与えることで、学習意欲が高まり「確かな学力」が身に付 くと考える。 イ 習熟度別学習における実施方法 ○ 英語の必修・選択の全ての時間において、Aコース(発展的な学習)とBコース(補充 的な学習)に分け、指導する。 ○ コース選択は、生徒の希望制とし、必要に応じて教師から助言を行う。単元ごとの移動 を認める。 ② 学力向上の具体策 ○ 指導計画の工夫 習熟度別指導の特性と目的、及び生徒の実態を考慮し、Aコース・Bコースそれぞれに年 間指導計画と単元別の指導計画を立案する。 (指導計画を立案する際の配慮事項) ア A・Bコースとも各ユニットごとの総時数は統一する。 イ ユニットの中で、各コースの実態や目的を考慮し、学習内容ごとに重点化を図り、柔軟 に対応できるようにする。(例えば、Aコースは Reading for Communication に3時間を 配当するが、Bコースは、内容理解を十分に行うように4時間配当するなど) ウ 各学習内容の達成基準の到達目標をコース共通で設定する。その際、AコースとBコー スの学習過程は異なるが、どちらのコースでも達成基準Bをクリアできる活動を行い、評 価する。 (例) 「イ」について 月 題 材 <3学年 名 総時数 9時間 Unit1の抜粋> Aコース Bコース 学 2時間 2時間 受動態(平叙文) 習 内 容 4 Starting Out 5 Dialog 2 2 受動態(疑問文) 5 Reading For Communication 4 3 make +名詞+形容詞 5 (A)受動態の応用とオーラル 1 2 A:オーラルコミュニケーション B:受動態の writing 練習と Small Talk (B)基本文型練習 - 96 - (例) 「ウ」について <2学年 学習内容 道案内の抜粋> Speaking Plus 2 表 コミュニケーションへの関心・意欲・態度 現 の 能 力 A 道案内の様 達成基 道順を自ら進んで動作や表 達 成 基 道順の会話を尋ねたり教えるだ B 々な表現を 準 情を交えて豊かに相手と対 準 A けに留まらず自分の考えを豊か 共 活用しての A 話しようとする。 通 言語活動 達 成 道順を尋ねたり教えたりして 達 成 基 目的地までの道の尋ね方や教え 基 準 相手と対話をしようとする。 準 に伝える実践的な会話ができる。 B 方を使い実践的な会話ができる。 B ③ 学習指導の工夫 ア <1時間単位のA・B共通の授業の一貫した流れ> 第1段階)パタンプラ クティスやドリルによ 第2段階)身近な話題や → 自分を振り返る活動 最終段階)使用場面に応 → じて自分の考えや気持ち る活動 を伝え合う活動 <機械的な定着> イ <意志や感情を含む定着> AコースとBコースの導入・展開時の活動例の違い 的なコミュニケーション活動> (フロンティア発表時の授業より) {Aコース} {Bコース} "Guess the words " Game 導入時 " 5 questions " Game ・ ペアである単語について一方が英語 ・ペアである単語に関して、一方が5つの定 で説明し、もう一方がその単語を推測 型の質問をし、もう一方がその単語を推測し し当てるゲーム 当てるゲーム ・既習、未習事項を使い「道の尋ね方」 展開時 <即 興 ・1年生で習った表現や本時で習った表現 の表現を原稿等を全く見ずに即興的に を使い、分からない表現は原稿等を見てもよ ALTとコミュニケーション活動を展 いという条件を与えながら、友達同士で簡単 開した。 な会話を行った。 {Aコースの授業風景} {Bコースの授業風景} - 97 - (3)数学科での実践 ① 学力向上の具体策 ア 指導計画の工夫 生徒の実態(学力検査、事前テスト、単元テスト、等)と習熟度別指導のねらいからA、 Bそれぞれに指導計画を立てる。 ○ 総時間数は教育計画により共通 ○ Aコースは指導内容を統合し、単元後半に発展の時間を確保する。Bコースは生徒の実 態から各小単元の指導内容を部分的にスモールステップ化し、各時間ごとの内容定着を図 る時間を確保する。 (例)3学年「2次方程式」(◆Aコースのみ 項 時 2 学 習 内 容 (Aコース) ●Bコースのみ) 時 ○2次方程式と解の意味が分かる。 次 1 習 内 容 (Bコース) ●1次方程式との式の次数や解の個数 1 方 から、2次方程式とその解の意味が 分かる。 程 ○平方根の考えを利用して2次方程式 式 4 の を解くことができる。 ○平方根の考えを利用して2次方程式 4 5 くことができる。 を解くことができる。 ●(x+▲) 2 =■の形をした2次方 ○完全平方式を用いて2次方程式を解 解 5 き 程式を平方根の考えを利用して解く ことができる。 方 ○2次方程式の練習問題を解くことが 6 できる。 ○完全平方式を用いて2次方程式を解 6 ○面積についての応用問題を解くこと 利 用 イ 学 8 ができる。 くことができる。 ●解と係数についての応用問題を解く 8 ことができる。 9 ○動点についての応用問題 9 ○数についての応用問題 10 ○2次方程式のまとめの問題 10 ○面積についての応用問題 11 ◆(発展)解の公式を導く 11 ○動点についての応用問題 12 ◆(発展)解の公式を用いる 12 ○2次方程式のまとめの問題 自己評価活動 自己評価カードを用い、次のような観点から評価活動を各時間ごとに実施する。 ○ 生徒・・・1時間の学習内容と理解の確認、単元全体の振り返りや流れをとらえる資料 家庭学習内容や次時のめあての資料 ○ 教師・・・生徒個々の疑問点をとらえるための指導資料 生徒個々の情意面の実態把握 (例) 「自己評価カード」 時数 学 習 内 容 分かったこと 1 2 3 - 98 - 分からない・疑問 感 想 ② 学習指導の工夫 [Aコース:発展的な学習] ○ 導 [Bコース:補充的な学習] 課題解決の必要性をもたせる。 ○ ・生徒自身に課題を発見させるよう提示 の仕方を工夫する。 入 豆テストを実施し、前時の内容や家庭学習 との関連を図る。 豆テストは以下の内容・方法で行う。 ・解決意欲をかきたてるような課題を設 内容:学習単元にかかわる既習の計算 定する。 時 家庭学習からの確認問題、等。 ・日常生活にかかわる課題を設定する。 方法:時間を決める。(5分程度) ・解決することによって、有用性を感じ 各自の問題終了時間を計る。 ることができる課題を設定する。 ○ 間違いの多い問題を繰り返す。 学習形態を工夫するとともに、比較検討 ○ の場を設定する。その中で個の考えを深め、 の後、小グループの話し合いをもとに課題解 数学的な考え方を養う。 決を図る。 「学習形態の工夫」 ・教える部分と考えさせる部分を明確にして ・個別に考え、解決への見通しを立てて 展 個の考えをまとめるための支援を行う。そ 解決にあたる。 ヒントカードを活用させる。 ・小グループでの話し合いや情報交換を生か ・小グループで話し合い、練り上げる中 で自己の考えを深める。 す。(共通点、相違点、疑問点について確 認させ、グループの考え方として全体の話 開 し合いに提案で 「比較検討の場の工夫」 きるように支援 ・既習事項をもとに、様々な考え方で解 時 する。) 決にあたることにより、数学的な考え ・全体での話し 方を養う。 合いでは、未解 ・より広く使える、より簡単という観点 から比較検討する。 決や疑問点のあ るグループからの発表を中心として、つまず ・オープンエンドな課題を提示する。 きの原因や疑問点の解決の仕方をまとめさせ る。 ○ 終 本時の学習内容を振り返る場として、学 ○ 習の確認・定着を図る。 着を図る支援を工夫する。 ・単元を通した自己評価カードを活用する。 ・生徒に定着問題を選択させ、個に応じた支 生徒:本時の内容・分かったこと・疑問 ・感想をまとめる。 末 展開時の個の評価をもとに、学習内容の定 援を行う。 「定着問題ヒントあり」を選択した場合 教師:カードをチェックし、次時の指導 に 生 かす 。 ・2∼3人を対象に個のつまずきの原因 をとらえて支援にあたる。 ・問題の自己評価を行い、疑問点につい 時 てグループでの確認を行う。 「定着問題ヒントなし」を選択した場合 ・問題の自己評価を行い、応用問題に取 り組む。 - 99 - 3 成果と課題 (1)英語科・数学科に関する成果と課題 ① 英語科 ア 成果 ○ 上位・中位・下位の生徒に応じた学習支援を行うことにより、コミュニケーション能力 の育成や学習意欲の向上、既習事項の定着等、各段階の生徒の実態からみられる課題に対 応することができた。 ○ 小単元の指導計画を、習熟度に応じた柔軟な配当時間とするとともに、4領域の指導内 容のバランスを図ることにより、コースごとのねらいを達成することができた。 イ 課題 ● 生徒のニーズや能力に応じた学習題材とするために、教材研究によるデータの蓄積が大 切になってくる。また、Bコースの生徒に「Aコースでやってみたい」と思うような力を 付けさせることが必要である。 ● 4つの観点と4領域の関連性や整合性を検討し、指導と評価の一体化を図った指導計画 を作成していくようにしたい。 ② 数学科 ア 成果 ○ 習熟度別学習方法に対する7月と12月の調査では、「自分に合ったペースで学習がで きる」という理由で、生徒の96%の高い支持率は変わらない。特に、3年生では、「自 分の希望でコースが選択できる」ということが、学習意欲にも大きく結び付いている。 また、授業で「分かった」という実感をもつ機会が多く、習熟度別学習での勉強の仕方 をよく分かる学習方法であるととらえている。 ○ 習熟度別の指導計画により、生徒の実態に応じた発展学習と補充学習が実施できた。 イ 課題 ● 各コースで基本学習と発展学習の指導のバランスを考え、個の実態に応じて学習の定着 と意欲を図ることができるようにする必要がある。 ● コース選択にあたっては、ガイダンス機能を生かし、習熟度別学習のねらいが生徒にも 理解できる工夫が必要である。 ③ 習熟度別学習に対する生徒の意識の変容(今年度から取り組んだ2年生28名対象) 英 語 科 数 学 科 生 徒 へ の 質 問 事 項 5月「はい」 9月「はい」 7月「はい」 12月「はい」 習熟度別学習で勉強がよく分かる 42.9% 71.4% 89.1% 92.6% 習熟度別学習で先生とかかわりやすい 46.4 89.3 60.2 66.7 A・Bコース制は学習に効果的である 60.7 82.1 92.9 96.3 自分が選んだコースに満足している 53.6 85.7 96.4 96.3 ○ 調査時期は異なっているが、どちらの教科でも習熟度別学習によるコース制が自分のた めに効果的であり、選択したコースが自分の学習に合っていると満足感をもっている。 ● 教師のかかわり方や教材研究による指導法を工夫して、少人数指導のよさも生かしたい。 (2)他教科等の成果と課題 ① 成果 ○ 英語や数学での習熟度別学習や理科での課題別学習など、各教科独自の学習指導の工夫に より、生徒の学習意欲の向上が図られてきている。 ○ 選択教科でも、英語・数学においては習熟度別学習を行い、発展的な学習・補充的な学習 を必修教科との関連を図りながら進めることができた。 ② 課題 ● 指導と評価の一体化を図る学習指導についてさらに研究を深めることが必要である。特に 習熟度別学習を進めるために、コース間の共通した達成基準を明確にすることが大切である。 ● 各教科の学力向上自校プランを、評価をもとに常に見直しを図り、生徒の実態に応じたも のとして活用する必要がある。 - 100 - 教員の交流授業を通して、小学校6年生から中学校1年生への効果的な接続を図る実践 (F中学校) ∼社会科,算数・数学科から∼ 1 自校の課題と解決に向けたグランドデザイン (1) 学力の実態 ① 現中学校1年生(小学校6年生時)の教科別偏差値平均 小 学 校 6年 生 時 小学校6年生と中学校1年 生を比較すると、2∼3ぐ 57 56 らい偏差値が下がってしま 平 均 偏 差 値 う傾向が各教科にありま す。 どうし て、中学生 になる 54 53 52 51 50 49 と偏差 値が下がる の?? ② 55 国語 社会 算数 理科 現中学校1年生(小学校6年生時)の社会の中領域の全国比 社 正 答率の 低いこの中 領域 会 日 本 の 歴 史 を 学 ぶ 意 義 と 方 法 は 、資料 を読み取る 力が 必要とされているのよ 世 界 平 和 と 国 際 連 合 の は た ら き 日 本 の 国 の 成 り 立 ち ね。 90 92 9 4 96 9 8 10 0 全 国 比 ③ 現中学校1年生(小学校6年生時)の算数の中領域の全国比 正答率の低いこの中領域 算 は,変数が複数の場合を 取り上げているからね。 単 位 量 、 速 さ ②、③から、中学校で学 比 習する重要な学びの習得 と も な っ て 変 わ る 2 つ の 数 量 9 8 が不十分なんだよ。 (2) 数 1 0 0 10 2 10 4 1 0 6 1 0 8 全 国 比 自校の課題 社会:戦国時代など生徒の興味関心が高いところは正答率も高いが、興味関心の低い政治や経済、 世界 平 和 と 国 際 連 合 な どの 正 答 率 が 低 く な っ て いる 。 政 治 や 経 済 、 世 界 平和 の 内 容 を分 析 して を み る と 、 資 料 を 多面 的 、 多 角 的 に 読 み 取 るこ と が で き て い な い 。 学ぶ 意 欲 を 高め 、 資料活用能力を養う必要がある。 数 学 : 全 般に 事 象を 数 理的 に 考察 す る領 域 が不 得 手で あ る。 特 に中 学 校数 学 では 、 数学 を 学ぶ 過 程において、数学的な見方や考え方によって、 「能率的に処理できる」 「簡潔に表現できる」 「 事 柄 が すっ き り 分 かる 」 よう に する こ とが 重 要で あ る。 そ のた め には 、 数 学的 な 見方 や 考え方を高める必要がある。 - 101 - (3) 課題解決に向けた戦略的な方策(グランドデザイン) PLAN 教育目標 : 小中連携の目的: 『「知性」「品格」「至誠」「体力」を身に付けた活力ある生徒』 ① 小中教員の授業力 UP ② 指導方法・体系の構築 目指す生徒像 (社会)作業的・体験的な学習を通して、資料活用能力を高めることができる生徒 (数学)自ら課題を追究し、数学的な見方・考え方を深めることができる生徒 DO 目標値:学力偏差値53 S 市内 小中学力協議会 K 中学区内小中 学力向上推進会 小中連携の授業 5つの視点 学習速度、指導形態、 教材、用語、指導体 系での連携 小中教員の 交流授業 指導体系の 構築 朝自習,放課後の利用 教員の意識改革を図り、 自主学習ノートの充実 漢字、計算、英単の月例テス 教員の資質を向上させる 進路、家庭学習の仕方などに トの実施とテスト前のリハー ついての教育相談の実施 サルの実施 CHECK ( 教頭) 協議会や交流授業の 打合せの時間が確保 され、効果的な話し 合いになっている か。 (教科担任) (教務・研修主任) 小テストや単元テス 指導体系が構築さ トの通過率が70% れ、それを活用した 以上になっている 年間指導計画になっ か。 ているか。 小中学校の教頭を中 心に、連絡調整を行 い、時間を確保する 。 課題学習やコース選 択学習の時間を利用 して、個別指導をす る。 ACTION ○ 中学校1年生の実態を 考慮した指導体系の見 直しをする。 教材での連携 小学校で活用した教材・教具で指導し、生徒が安心して学習できるようにする。 ○ 指導形態での連携 コー ス 別 学 習 や 習 熟 度 別学 習 を 取 り 入 れ 、 小 学 校教 諭 と 共 同 で 取 り 組 む。 そ の際 、 小学校教諭は基礎・基本コースを担当し、中学校教諭は発展コースを担当する。 ○ 学習速度での連携 小学 校 で の 学 習 速 度 と 中学 校 で の 学 習 速 度 の 違 いを 考 慮 し 、 徐 々 に 授 業速 度 をあ げ るようにするなど、生徒に過度な負担を与えない配慮をする。 ○ 用語での連携 専門 用 語 に よ る 発 問 や 説明 で は な く 、 生 徒 に と って 具 体 的 に 理 解 し や すい 言 葉を 遣 うようにする。 ○ 指導体系での連携 小・ 中 学 校 に お け る 指 導の 一 貫 性 ( 連 続 的 ・ 発 展的 ) を も た せ る と と もに 、 学習 内 容のつまずきに対する小・中学校の指導ポイントを作成し、指導計画に反映する。 - 102 - 2 実践の概要 (1) K 中地区学力向上推進会議について ① 組織 部長(K 中教頭) 推進委員 副部長(小学校教頭) 教科部会 学校代表・授業担当 A小 B小 C小 D小 E小 K中 国語 社会 理科 英語 数学 5教科 ※月曜日の放課後に、教科部 会を開催できるよう、各小学 K 中教科担当者 ② 校と中学校の時程を調整 小中交流授業のもち方について ○ T・T での授業(中学校の授業では、小学校教諭が基礎、基本の指導を中心に) (小学校の授業では、中学校教諭が発展的な指導を中心に) ○ コース別学習での授業 小学校 基礎・基本 中学校 発展 小学校教諭 基礎・基本 発展 中学校教諭 ③ 指導体系について ア K 中学区内における児童生徒の教科の課題を明確にし、その改善を図る指導方法を策定す る。 イ ○ 陥没点の洗い出しと焦点化 ○ 効果的である具体的な指導の在り方 小中学校での指導内容の取り扱いの違いや方法を洗い出し、スムーズな中学校への移行が できる指導体系を提言する。 (2) 社会科の実践 ① 実践の意図 学ぶ意欲を高めるために、社会的事象を知識として覚えさせるだけではなく、課題を追究し 、 考察する問題解決型の学習を取り入れ、学び方を学ぶ指導を重視する必要があると考えた。ま た、社会的事象について、多面的、多角的に考察する力を養う必要があると考えた。 ② 実践の内容 ○ 中学校1年 地理 「身近な地域の調査」の課題づくり ○ 小学校教諭と共同で指導案を作成し、T・Tでの授業を実践する。検証授業後に成果と課題 をまとめる。 - 103 - ③ 検証内容 交流授業の5つの視点(学習速度、指導形態、教材、用語、指導体系での連携)に沿って、 検証を行う。 ④ 本時のねらい 現在の S 市と30年前の S 市の地形図を比較する作業的・体験的な学習を通して、身近 な地域の人々の営みや環境条件などの地理的事象に疑問や関心をもち、課題を設定すること ができる ⑤ 学習過程 段階 形態 時間 ○留意点 ◇評価 ◎指導の重点とのかかわり 小小学校教諭の留意点 一 5 ○小 30 年前の S 市の写真を提示 斉 し、聞き取り調査の結果を自由 学習活動・内容 1 課 30 年前の S 市について聞き取 り調査をした結果を発表する。 題2 本時の学習課題を確認する。 に発表させ、身近な地域の学習 に関心をもたせる。 (教材での連携) 小学校では地図 を、どんなふう うに使っている のかな? 30 年前の地図と現在の地図を 比較し自分の生活する地域の特 色を知ろう。 3 30 年 前 の 地 形 図 を 読 み 取 り 、 現 個 在とのちがいや疑問を見付ける。 別 15 ◎ 地形図を読み取る作業により、 課題追究に意欲をもたせる。 ○小地形図の読み取りができない 生徒への支援を行う。 (用語での連携) 「土地の利用」 化を読み取ることができたか。 という言葉は理 (ワークシート) 解 で き な い か な? 4 グループごとに読み取ったことを グル 5 ープ ○ 他 の 発 表 を 聞 く と き の ポ イ ン 農業用地とか住 話し合う。 宅地などの方が トをふまえながら、多角的な見 いいかも グル 15 5 課題の解決方法を探る。 ◇ 中学校では地図 から土地の特徴 を読み取らなけ ればならないん だよ。 小学校では、位 置の確認のため に使っていまし た。 (1) 課題をつくる。 (2) 調査の方法を考える。 ープ 地形図を比較し、地域の変 方があることを気付かせる。 ○ 事実調べだけでなく、人々の 営みや環境条件などと関連のあ (3) 課題を発表する。 ◇ 自分の生活する地域の特色 を探るための課題をつくるこ とができたか。(ワークシート) 5(1)は、何 をするのか具体 的に見えないの ○ 資料が収集可能かを検討させ、 で 、「 地 域 の 特 調査の見通しをもたせる。 色をつかむため に、何を調べた 6 本時の活動について自己評価カー 個 10 ○ 本 時 の 活 動 を 振 り 返 ら せ 、 次 らよいか課題を ドに記入する。 別 時の学習の意欲付けを図る。 つくり、調査す 7 次時の予告を聞く。 る項目を整理す ○ 次時から課題に基づいて調査 る 。」 の 方 が い いと思います。 活動を行うことを説明する。 る課題であるかを確認する。 (指 導 形 態で の 連携) 課題づくりのと きには、グルー プごとに指導し ましょう。 - 104 - ⑥ 生徒の授業後の自己評価 ⑦ 交流授業の成果と課題 ア 成果 教材での連携 ○ S 市内の小学校で使用している副読本「のび ゆくそうま」を今回中学校で活用することによ り、地理的な課題のつくり方や追究の仕方を身 に付けさせることができた。 学習速度での連携 ○ 小学校教諭が地形図上の位置や地図記号など の疑問に適時アドバイスできるので、理解に時 間のかかる生徒も地形図の変化を読み取ること ができた。 用語での連携 ○ 「 土地 利 用」 と いう 言 葉な ど は 、「土 地が どの ように 利用 され ている か」 と補 わなけ れ ば、生徒は理解できないということが確認できた。 指導体系での連携 ○ 小学校のイラストマップを活用したり、地図を読図したりしながら地理的事象に対する 追究方法について、発展を図ることができた。 イ 課題 教材での連携 ○ 小学校の授業では、資料をどのように活用し、どのくらいの読み取りを要求しているの かを中学校教師も研究する必要がある。 指導形態での連携 ○ 習熟度別学習で実施した場合、小学校教諭と生徒のラポートを十分にとる時間を確保す る必要がある。 用語での連携 ○ 中学校教師は、小学校教師の発問を授業参観や共同授業で、研究を深める必要がある。 (3) 数学科の実践 ① 実践の意図 解決過程を重視し、様々な数学的な見方や考え方を交流させる中で、自らが納得できる解決 方法を見いだせる活動を通して、生徒が主体的に学び考えることの楽しさを味わわせて、数学 的な見方や考え方を高める。 ② 実践の内容 ○ 中学校1年 「方程式の利用」∼表、線分図、方程式を用いての解法∼ ○ 小学校教諭と共同で指導案を作成し、T・Tでの授業を実践する。検証授業後に成果と課題 をまとめる。 ③ 検証内容 交流授業の5つの視点(学習速度、指導形態、教材、用語、指導体系での連携)に沿って、 検証を行う。 - 105 - ④ ⑤ 本時のねらい 具体的な問題の解き方を、算数的な解法と比較することにより、方程式の解法のよさに気付 き、1 次方程式を活用することができる。 学習過程 段階 課 題 学習活動・内容 先生の年齢は 42 歳。生徒の 年齢は 12 歳です。 3年後、先生と生徒の年齢 の関係はどうなりますか。 1 (言葉での連携) この問題は生徒 にとって分かり やすいですか? (教材での連携) 小学校では、線 分図については どの程度指導し ていますか。 時間 一 斉 10 ◎小 条 件が 不 十分 な 問題 を提 示す るこ とで 、 疑 問 の 目 で 問 題 を と ら え る 態 度を 引 き 出 し 、 問 題 解 決 へ の 意 欲 を 高 めさ せ た い。 ◎小 先 生 と 生 徒 の そ れ ぞ れ の 年 齢の 変 化 に つ い て 、 線 分 図 を 用 い て 説 明す る 場 ん・・・。 面 を 設 定 し て 、 年 齢 の 変 化 の 様子 を 視 □や△を使った 覚 的 に 示 し て 考 え や す く す る とと も 方がいいと思い に 、 図 を 利 用 し た 算 数 的 な 解 法に 目 を 向けさせるようにする。 ます。 ○ はじめは、共通課題として 2 倍の場 例 え ば 、「 □ 年 合 を 考 え さ せ る こ と で 、 基 本 的な 事 項 後には、先生の が 確 実 に 理 解 で き る よ う な 展 開と し 、 年齢は生徒の△ 課 題 追 究 へ の 流 れ を ス ム ー ズ にし た 倍になります い。 問題を確認する。 先生の年齢が、生徒の 2 倍に なるときはいつになるかを、いろ いろな解き方で考えてみよう。 2 課 形態 ○留意点 ◇評価 ◎指導の重点とのかかわり 小小学校教諭の留意点 課題を把握する。 か。」など。 3 各自の方法で課題の解き方を 個 考える。 別 4 一 斉 それぞれの解決方法を発表す る。 (1) 表 (2) 線分図 (3) 方程式 (4) 解の吟味 先生が生徒の年齢の 4 倍にな るのはいつですか。 個 別 個 別 5 課題の条件を変えて考える。 一 6 一次方程式を使って、課題を 斉 解く。 (1) χの定義 (2) 立式・解き方・解の吟味 (3) 他の解き方との比較 ○問題の意味がとらえにくい生徒には、1 年後や 2 年後のそれぞれの年齢につい て 帰 納的 に 考え さ せて 、問 題に 対し て の 10 見通しをもたせたい。 ○小 解 決方 法 が見 付 から ない 生徒 には 、表 を 作って考えるよう助言する。 ○小 図 を用 い た考 え がで ない 場合 には 、導 入 時に用いた図に戻って、ヒントを与える。 ◎ 4 倍のときも 2 倍の場合と同じよう に 、 求 め る こ と が で き る の で はな い か 5 と 投 げ か け る こ と で 、 敢 え て 既習 の 方 法 に よ る 解 法 に 目 を 向 け さ せ たい 。 そ の 活 動 の 中 で 、 算 数 的 解 法 が 必ず し も 容 易 で は な い こ と に 生 徒 自 ら に気 付 か 小学校の指導者 せ 、 文 字 の 導 入 を 促 し 、 方 程 式に よ る によって、重点 8 解法へと移行させていく。 ○ 方 程 式 の 解 で あ る χ = − 2 の意 味 に の置き方が違う つ い て は 、 問 題 に 立 ち 返 っ て 考え さ せ と思います。ま るようにする。 た、線分図を使 ◎ 方 程 式 を 使 っ て の 解 法 は 、 立式 が 大 うよさを理解し 切 な ポ イ ン ト に な る の で 、 方 程式 で は 文 章 の 関 係 を そ の ま ま 式 に 表 せば 簡 単 て指導している に 答 え を 求 め る こ と が で き る とい う こ 指導者は少ない と に 触 れ 、 方 程 式 を 用 い て 解 くこ と の よ う に 思 い ま よさに気付かせていきたい。 す。 ◎小算数的な解法との比較により、方程 式 を 使 え ば 、 効 率 よ く 解 決 で きる と い 7 ◇ 1次方程式を用いて考えることのよさ を理解したか。(発表、ノート、観察) うことを確認する。 7 本時のまとめをする。 (1) 適応問題 別プリントを用 意しておき、そ れらに取り組ま せましょう。 個別指導を充実 させましょう。 個 別 一 斉 (2) 10 ◎ (学 習 速 度 での 連 ◇ 1次方程式を利用して、具体的な問題 携) を解決しようとしたか。 (発表、ノート、観察) 早 く 適 応 問 題 が の か を 考 え さ せ る こ と で 、 解 を吟 味 す で き た 生 徒 は ど る こ と の 大 切 さ や 、 方 程 式 に よる 解 法 うします? 方程式による解法のよさ ○ 8 次時の予告をする。 適 応 問 題 と し て 、 導 入 問 題 の2 倍 を 3 倍 に 変 え た 場 合 に つ い て 方 程式 を 用 い て 求 め さ せ る 。 ま た 、 早 く 終わ っ た 生 徒 に は 、 5 倍 に な る 場 合 は どう な る のよさを再認識する場としたい。 方 程 式 を 使 っ て の 解 決 の 仕 方に つ い ての感想を発表させる。 - 106 - ⑥ 生徒の授業後の自己評価 ⑦ 3 (1) 交流授業の成果と課題 ア 成果 教材での連携 ○ 小学校で活用していた表・数直線図を利用することにより、課題に対して取り組み易く することができた。 学習速度での連携 ○ 小学校教諭が学習の遅れがちな生徒個々に指 導することにより、活動の時間を十分に与える ことができ、学習が充実できた。 用語での連携 ○ 例えば「式を簡単にしなさい」など、ふだん 教師が使っている言葉が、生徒には理解できて いないことを確認することができた。 イ 課題 教材での連携 ○ 小学校で活用している教材・教具について、中学校教師はどんなものがあり、どこで、 どんなふうに活用しているかの研究を深める必要がある。 用語での連携 ○ 中学校教師は、小学校教師の発問を授業参観や共同授業で、研究を深める必要がある。 指導体系 社会 ○ 地図や資料などを活用する能力を高めることについて 小学校時から地図に親しむ学習を意図的に取り入れ、読図力を高めることが必要である。 なぜなら 地図を活用することは地理的事象の規則性や傾向を、空間的な広がりのなかで把握 することができ、地理的な見方・考え方の基礎を養うためには有効であると考える。 活用場面 ・ 新旧の地図の比較などの学習活動は、地域の変化の様子を視覚的に捉えることができる ため 、「 いつ ・ どこ で ・何 が ・ど の よう に ・ど う して 」 など 課 題の 解 決に 必 要な 追究の 視 点が明確になり、生徒の学習意欲も高まり、有効である。 ・ 歴史的分野の学習においても、歴史的事象を地図などの資料から多面的、多角的に考察 する学習により、歴史的事象に関する認識が高まり、生徒にとっても学習の達成感を味わ うことができると考えられる。 30年前 現在 - 107 - (2) 数学 ○ 線分図のよさについて 中学校1学年「方程式の利用」は、算数的な解法から数学的な解法に移行する最初の教材である。数 学的な考え方として「具体的な事象の中の数量の関係をとらえ、式化する」場面である。 小 学 校に おい てこの よう な問 題 を 取り 扱うと き は、 表を用 いた り、線分 図を 利用 した りして、問 題を解く 場 面がある。ここでは、そ の手法 を生 かしながら具体 的なイメ ージで問題 を捉 え、特に線分図を用いると 立式しやすいことが確認できた。 <具体例> 先生の年齢 42 歳、生徒の年齢は 12 歳です。先生の年齢が、生徒の年齢の 2倍になるときは何年後ですか。 【考え方1】表による解法 現在 1年後 先生の年齢 42 43 生徒の年齢 12 13 2年後 44 14 3年後 45 15 … … … … … … 18年後 60 30 【考え方2】線分図による解法 先生の年齢 42 □ 42 □ 生徒の年齢 12 □ 12 □ 12+□+12+□=42+□ □=42-12-12 □=18 【考え方3】方程式による解法 4 2 + x = (1 2 + x ) × 2 先生の年齢=生徒の年齢×2 42 + x = 2 (12 + x ) 小学校では○や□を使って表してきたものを、 中学校では文字を使って表していくということ をおさえ、文字への導入を促していく。立式の 際には、小学校で学習してきた「ことばの式」 や「図」に立ち戻ることにより、数量関係の意 味を考えさせながら、ていねいに扱うことでつ まずきをなくし、学力を向上させることができ る。 x = 18 4 成果と課題 (1) 成果 ○ 社会科の事後テストによる正答率では、 「新旧地形図の比較(86.9 % )」 「調査の方法(84.8 %)」 「地図記号の意味(84.3 %)」等の全体的な向上が見られた。 数学科の事後テストによる正答率では、 「1次方程式の解(85.3 %)」 「1次方程式の解き方(平 均 78.0%)」「1次方程式の応用(70.6 %)」等の定着率は、向上した。 ○ 小学校の学習内容とのつながりを意識して学習展開するようになった。また、小学校教員の きめ細かい個別指導によって、下位生徒が学習への意欲や関心を高めた。 ○ 実 践例 で は紹 介 でき な かっ た が、 小 学校 6 年生 の 算数 科 授業 後 のア ン ケー ト では 、「数学 が とても楽しみ(22 名)」 「楽しみ(6 名)」となり、中学校数学への学習意欲の高まりが見られた 。 (2) 課題 ○ 教育課程編成のときに、連携を図る単元を小中共通理解のもとに計画に入れる必要がある。 ○「問題解決的な学習」の学び方を小学校でしっかり身に付ける必要がある。 ※ ○ 成功のポイント 小中両校の校長や教頭の理解と配慮が大変重要な鍵を握っている。