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不動産は「悪の枢軸?」

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不動産は「悪の枢軸?」
リサーチ TODAY
2012 年 2 月 28 日
不動産は「悪の枢軸?」
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
下記の図表は内閣府の国民経済計算による日本の不動産(土地)の時価総額の推移である。不動産
の時価総額はピークであった1990年には約2,000兆円あったのが、2005年頃には約1,000兆円と15年間
に1,000兆円近く消失した。この金額は日本の名目GDPの約2年間分に相当する。1990年代以降の日本
のバブル崩壊はジャーナリスティックに「第二の敗戦」とされることがあるが、あながち的外れではないだ
ろう 1。また、同じ座標軸で比較することはできないが、昨年3月に生じた東日本大震災の損額は20∼30
兆円とされていたことと比べても、バブル崩壊後の経済的損失がいかに大きかったかがわかる。
■図表:日本の不動産(土地)の時価総額推移
(兆円)
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
(暦年)
(資料)内閣府「国民経済計算」
次ページの図表は、米ドル建てでみた日本の不動産価格の推移を、米国、英国、フランスと比較した
ものである。図表に示したように、日本の不動産価格は2005年頃には底入れをしたとみられ、その原動
力となった投資家層は日本株同様に海外投資家と言われた。一方、2007年以降、欧米がバランスシート
調整に入るなか、欧米を中心とした海外投資家が資金を引き上げているために、2009年以降の日本の
不動産市場で価格の調整が生じている。
海外投資家からみてドル建では高価格であった日本の不動産を売却する動きが生じたと考えられる。
1
第二次世界大戦の損失に関しては様々な試算が存在するが、GDP 対比で約1年程度とされていることを考えると、GDP 対比
の国富消失度合いは 1990 年以降のバブル崩壊後の方が大きかった可能性がある。
1
リサーチTODAY
2012 年 2 月 28 日
その結果として2009年以降、海外投資家の日本の不動産市場への投資は低水準に止まっていた2。それゆ
え、昨今の欧州債務危機にともなう海外投資家の資金引き上げの影響は、軽微に止まると考えられる。
■図表:米ドル建て不動産価格の推移
180
(2002年=100とする)
150
日本
英国
米国
フランス
120
90
60
02
03
04
05
06
07
08
09
10
(暦年)
(注)各年 12 月の数値。
(資料)IPD 等より、みずほ総合研究所作成
日本の90年代以降のバブル崩壊に伴うバランスシート調整は結局、前のページの図表に示した不動
産の時価総額消失によって生じた面が大きかった。一方、米国における2007年以降のバランスシート調
整もサブプライム問題を始めとする不動産問題によるものである。同様に、欧州の債務問題も南欧にお
ける不動産問題に起因した面が大きい。不動産を中心とした資産価格形成の背景には先行きの価格上
昇期待が存在し、それが信用活動を伴う金融活動を促す要因になる。日本においては、前ページの図
表にあったように、過去20年にわたる不動産市場の低迷で、バランスシート右側の負債・資本面の「負債
(借入)」と、バランスシート左側の資産面にある保有資産の「不動産・株」の両方に対し、極めてマイナス
の大きいインセンティブがついてしまった。さながら、バランスシートの両側にある「負債(借入)」と「不動
産、株」が「悪の枢軸」を形成するような状況になってしまったかの感がある。
国富の源は不動産や株式を中心にした資産であり、その安定が保たれないと税収の安定確保も年金
の安定運用も実現できない。今後、日本が成長戦略を実現するためには、不動産や株式に対する意識
を「悪の枢軸」から解放する国民的な合意が不可欠になる。逆に、こうした「悪の枢軸」の中に不動産や株
式に対する意識が残存するなかでは、経済が本格的な回復には向かいにくいだろう。
2
大塚哲洋「不動産市場の動向について」(みずほ総合研究所『みずほインサイト』2012 年 2 月 20 日)
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき
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