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1 - Frontier Conference
2014年12月11日 原口総合法律事務所 所長 弁護士 原口 薫 1 経歴 学歴:中央大学法学部法律学科卒業 米国シカゴ大学ロースクール修士課程卒業 資格:1989年 東京弁護士会登録 1995年 ニューヨーク州弁護士登録 原口総合法律事務所所長 AEA(世界最大の弁護士連合体)及びアジア担当ダイレク ター 経済産業省官民パートナーシップ研究委員会元委員 米国、英国、フランス大使館推奨弁護士 2 本日のテーマ I. II. III. IV. V. はじめに 外国投資企業の土地利用権 土地利用権の侵害 土地利用権の不当侵害に対 する対応 終わりに 3 4 モンゴル (JETRO「モンゴル概況」(2014年9月更新) http://www.jetro.go.jp/world/asia/mn/data/mn_201409.pdf) 面積:156万4,100平方メートル 人口:293万1,300人 主要産業:鉱業、牧畜業、流通業、軽工業 名目GDP:102億5,882万ドル 一人当たりGDP:3,575ドル 経済成長率:11.7%(2013年) 主要貿易相手国 輸出:中国、英国、カナダ、ロシア、イタリアなど 輸入:中国、ロシア、米国、韓国、日本など ⇒資金需要の高まり、外国投資の増加 日本の投資家の保護 モンゴルにおける日本企業の土地の利用権が政府に よって不当に侵害された場合における、投資の促進及び 保護に関する日本国とモンゴル国との間の協定(以下、 「本件協定」という)による日本の投資家の保護について 検討する 6 7 土地利用 所有権 占有権 利用権 • 所有権は外国人に対して認められて いない • モンゴル国民に対しても限定的にし か認められていない(土地私有化法1 条、3.1.2条) • 2002年に成立した土地利用法により 認められた • 外国人又は外国投資企業には利用 権のみが認められる 8 9 土地利用権の侵害 ウランバートル市内で土地利用権の設定を受けるため には、市民代表委員会の承認を得た上で、ウランバート ル市と土地利用契約を締結 ウランバートル市において設定を受けた利用権に対して、 その一部が強制収容されたり、利用期間が一方的に短 縮されたりすることがしばしば起きる 10 11 1. はじめに 市の担当者に問い合わせて訂正を求めることが第一の 手段 このような申し入れのみによって侵害が解消されること もあるので、可能な限りの証拠資料等を揃えて市に持ち 込むことが有効 12 2. 仲裁の申立ての可否及び投資 財産該当性 本件協定に基づく仲裁の申立適格を有するのは、「いず れか一方の締約国の投資家」である(本件協定10条2 項) 日本企業が現地に子会社を株式会社として設立してそ の株式を保有する場合には、日本親会社は、仲裁申立 権限を有しており、投資財産の収用に対する保護規定 や最恵国待遇規定等の適用を受けることができる。 13 3. 収用 収用概念 本件協定における収用該当性 本件協定は、「いずれの締約国の投資家の投資財産及び 収益も、他方の締約国の領域内において、不断の保護及 び保障を受ける」としている(5条1項) 利用権の対象の一方的縮減や土地利用権の存続期間の 短縮がされた場合には収用に該当するので、本件協定上 の保護を受けることができる。 14 4.義務遵守条項の援用 投資協定中の義務遵守条項(アンブレラ条項)とは、たと えば、一方の締約国が「他の締約国の国民又は会社が 行った投資に関して行われた約束を遵守する」義務を規 定する条項である 義務遵守条項違反の主張もしておく意義はある 15 5.公正衡平待遇義務の援用 「公正・衡平待遇」義務とは、投資受入国(ホスト国)たる当事 国が、協定当事国である投資母国(ホーム国)の投資家から 受け入れた投資財産、具体的にはホスト国に所在する子会 社やその財産に対して、「公正かつ衡平な(fair and equitable)」待遇を与えなければいけない義務 日本の投資家は、土地の利用権の設定契約締結時において、 具体的に決定された対象土地の範囲及び期間を前提として モンゴルにおける事業計画を策定している。したがって、ウラ ンバートル市が一方的に利用権の範囲及び期間を縮減する ことは、投資家の合理的な期待に反するので、公正衡平待遇 義務の違反が認められる。 16 17 まとめ 当初設定された利用権を政府によって侵害された場合 には、本件協定に基づいて投資仲裁を申し立てることに よって、日本の投資家の保護を図ることが可能 具体的には、利用権侵害が収用に該当すると認められ るような事情があれば、収用に対する保護規定(本件協 定5条2項)に基づいて日本の投資家を保護する仲裁判 断が下される 本件協定上の保護規定を活用して、日本の投資家のモ ンゴルにおける投資を保護することは、いまだ不透明な 行政による処分をなされることがあるモンゴルでのビジ ネスにおいて重要な対抗手段である。 18 ご清聴ありがとうございました 原口総合法律事務所 弁護士 原口 薫 (2014年12月11日) 19