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冬の掛け寝具としての 保温性がなかったシート
相談現場に役立つ情報 国民生活センター 商品テスト部 冬の掛け寝具としての 保温性がなかったシート じょうちゃく 寝具や防寒具としての用途をうたったアルミを蒸着したシー ト状の商品を使用したが、温かさを感じられず、返品返金に なった事例を紹介する。 てきた。広告の表示が本当であるのか調べてほ しい。2枚のうち未使用の1枚でもよいので返 「体がぽかぽかになる」というアルミで作ら 品したい。 れたシート毛布2枚組がカタログに掲載されて いたので、購入した。使用する前に販売業者に 電話をかけて「ストーブをつけると暑く、つけ 相談を受け付けた消費生活センター (以下、受 ないと寒いというときに、直接、服の上からか 付センター) から依頼があり、 国民生活センター けて使うつもりだがぽかぽかするのか」と尋ね (以下、当センター)は商品テストを行った。 たところ、「それでも十分に温まる」との答え 苦情品は、アルミを蒸着した寝具や防寒具と であったので、1枚使用した。しかし、1時間 し て の 用 途 を う た っ た 厚 さ 1 ㎜ 弱、 重 量 約 経ってもまったく温かくならないため、広告の 125gのシート状の製品である。 表示が偽りではないかと思い販売業者に申し出 ⑴ 保温性試験 た。商品の包装袋が古い感じがしたことも話す 当センターでは、苦情品の保温性を調べるた と、袋を検品するというので着払いで返送した。 め、JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地 後日、「一度使用したものは衛生的な理由で 試験方法」8.27.1による保温性A法(恒温法) 返品ができない。ぽかぽかという言葉の感じ方 を実施した。試験には苦情品に加え、参考品と には個人差がある」という理由でシートが戻っ して、苦情品と同価格帯である、シングルサイ ズの綿100%の毛布(参考品A) 、およびポリエ ステル100%の掛け布団(参考品B)を用いた。 試験はJIS L 1096:2010に規定されている 保温性試験機を用い、環境温度20℃で、試験 機底面側の36℃に設定した恒温発熱体に、試 験片を取り付けた厚さ1㎝のポリスチレンボー 2014.3 国民 生 活 34 相談現場に役立つ情報 表 苦情品、参考品およびその組み合わせによる保温性 (環境温度:20℃) 条件 フード(環境温度 20℃) 保温性試験機 保温率(%) 保温力(clo(換算)) 苦情品 67.8 0.77 参考品A(綿100%毛布) 63.3 0.63 90.5 3.51 苦情品+参考品A※ 73.4 1.01 苦情品+参考品B※ 91.7 4.09 参考品A+参考品B※ 88.3 2.79 参考品B (ポリエステル100%掛け布団) 試験片 (ポリスチレンボード枠で固定) 写真 恒温発熱体(36℃) 保温性試験実施のようす ※ 左側に記載されているものを発熱体側(下)にして設置した。 者が苦情品を購入した販売業者の販売広告を確 ド枠を設置、固定した。試験片参考品、それら 認したところ、外箱と同じ、苦情品のみを身体 の組み合わせによる放熱量の差により、保温率 にかけて使用している写真が掲載されていた クロー が、外箱にあった「*写真はイメージです。実 (%)*1および保温力(clo)*2を計測、算出し 際の使用方法とは異なります。 」 の表示はなかっ た(写真)。 た。また、外箱にあった他の寝具と併用する旨 保温性試験の結果、苦情品の保温力は、ポリ の記載もみられなかった。 エステル100%の掛け布団である参考品Bより は低かったが、綿100%の毛布である参考品Aよ 保温性試験より、苦情品には一定の保温性が りはやや高かった(表) 。また、苦情品のclo値 あると考えられるものの、苦情品を単独で使用 を算出したところ、0.77cloとなった。さらに、 する場合の保温性は冬の掛け寝具としては十分 それぞれを重ねて使用した状態についても試験 ではないと考えられた。販売広告から消費者が したところ、苦情品の上に参考品Bを重ねた場 期待する保温性とは隔たりが大きいと考えら 合が最も保温力が高く、4cloを超えていた。 れ、消費者が正しく購入の判断ができるよう、 ⑵ 表示および広告調査 販売広告の改善が望まれる。 苦情品の包装および広告における用途や保温 性に関する表示について調べた。 苦情品を包装していた外箱の前面には苦情品 受付センターが、相談者と販売業者に上記の のみを身体にかけて使用し、就寝する女性の写 商品テスト結果を伝えたところ、2枚とも返品 真が掲載されていたが、その下部に「*写真は 返金となった。また、販売業者から、インター イメージです。実際の使用方法とは異なりま ネットのウェブサイトにおける苦情品の掲載を す。」との記載があった。また、外箱の裏面に 中止し、今後は、表示に注意をしていくとの回 は「冬の補助寝具に」 「掛け布団の下に重ねて 答があった。 カバーに入れる」 などの用途に関する表示や 「就 *1 以 下の式で算出され、数値が100に近いほど保温性がよい。 ( 保 温 率[ %])=[1-{( 試 験 片 設 置 時 の 放 熱 量[J/ ㎠・ 秒 ] ) / (試験片無しの放熱量[J/㎠・秒])}]×100 *2 衣服の保温力を評価する値で、室温21.2℃、相対湿度50%、気 流10㎝ /秒の環境で着用して安静椅座している被験者が快適と 感じ、平均皮膚温33℃を維持できる衣服の保温力を1cloと定 義している。数値が大きいほど保温力が高い。本来、clo値は人 体の放熱特性を模擬できるマネキン(サーマルマネキン)に対 象の衣服を着用して計測した消費電力やマネキン表面の温度等 から定まる熱抵抗値から算出するものであるが、今回は保温性 試験機で計測した熱抵抗値から換算して求めた値を用いた。 寝時は布団と重ねて吸水性のあるカバー等と共 にご使用ください。 」との記載があるなど、寝 具として使用する場合には布団と併用すること を想定したものであると考えられた。 購入時のカタログは既になかったため、相談 2014.3 国民 生 活 35