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包装とは

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包装とは
また、どこまでを「包装」というのでしょうか?
地球上に人が現れてから社会生活の中でお互いに 「もの」 を交易
第 2章
A
包装とは何でしょうか。
し、「ものを入れる」、「ものを保存する」、「ものを運ぶ」 が必要とな
り、壺 ・ 樽 ・ 瓶など、包装の原点が誕生しました。「昔は包装などな
かった」 という人もいますが、柿の葉寿司の柿葉、藁つと、納豆の藁、竹の
皮、経木などは立派な包装であり、写真の藁つと納豆は、日本の東北地方で誕
外装と内装
伝統包装の藁つと納豆
表 1 包装の定義(JIS Z 0108)
物品の輸送、保管、取引、使用などにあたって、その価値および状態を維持するために適切な
保存食と、たくさんの機能を持つ世界に誇れるりっぱな包装です。また、包装
材料、容器などを物品を収納すること及びそれらを施す技術、または施した状態。これを個装、
内装および外装の 3 種類に大別する。パッケージともいう。
はその時代を代表する 「文化のバロメーター」 と称されます。なぜなら包装は
1)個装(Individual Packaging)
最先端の情報や技術をいち早く吸収、人間の生活の知恵が色濃く反映されて発
物品個々の包装で、物品の商品価値を高めるため、または物品個々を保護するために適切な
展するからです。
材料 ・ 容器などを物品に施す技術、または施した状態。また、商品として表示などの情報伝達
の媒体にすることもできる。
個装はスーパーマーケットなどで販売されている個々の包装品をいいます。
2)内装(Inner Packaging)
外装は、物流作業単位における包装貨物外部の包装のことで、段ボール箱、大
包装貨物の内部の包装で、物品に対する水、湿気、光、熱、衝撃などを考慮して、適切な材
袋、樽などに加え、ロープ結束なども外装といえます。また、内装は、個装と
料・容器などを物品に施す技術、または施した状態。
3)外装(Outer Packaging、Packing)
外装の中間の包装貨物内部の包装のことで、写真でみると木枠は外装、一方、
しくは無包装のまま結束し、記号、荷印などを施す技術、または施した状態。パッキングと
装です。たとえば個装の菓子類はダース箱に入れてさらにそれを段ボールに入
もいう。
れていますが、このダース箱は内装です。
ますが、表 2 に示したように 「もし包装がなかったら」 を考えたとき、包装の重
要さが見えてきます。包装は、まず中身の商品を生産地から消費地まで損傷なく
表 2 もし包装がなかったら
①包装材料
◆昔ながらの天然素材の包装材料だけ
◆保護機能に欠ける(特にバリア性)
②販売
◆セルフサービス販売が存在しない
◆地域販売で、量り売り
◆塵埃 ・ 細菌の付着で不衛生
◆容器を持参(豆腐を入れる鍋など)
◆製品の痛み ・ 破損 ・ ロスが多い
◆温度別配送ができず鮮度が著しく低下
◆農産物・穀類は虫害による被害が多い
◆狭い地域の流通に限定される
を防ぐのも保護性のひとつです。食品や医薬品などは衛生的で安全でなければ
◆スチール製品は錆びる
なりません。持ち運びしやすく、どこでも使える利便性も必要です。セルフサー
④食品包装
◆多水分系食品、半生菓子などが存在しない ◆長期保存商品は不可
◆携帯用飲料など戸外消費ができない
◆バリア機能 ・ 防水機能に欠ける
◆細菌、黴などが増殖しやすい
◆二次汚染がひどくなる
に包装作業や輸送のしやすさ、荷役の安全性などが求められます。特に食品や
◆耐熱性包装材料がなければレトルトや電子レンジ食品は存在しない
医薬品の経口品は、内容物が包装材料と直接接するために包装が食品や医薬品
⑤医薬 ・ 医療 ◆包装医薬品を行政に申請し、認可されることは包装が商品の一部にあるという前提
の一部として考えられており、衛生的で安全性の高い包装が訴求されます。
7
章
ビス販売が主体となる昨今は情報伝達性、販売促進性の機能も必要です。さら
第
③流通
移動するための保護機能がなければ包装とは言えません。酸素を遮断して酸化
第 6章
す。「包装はきれいに見せて売るもので、そんなものは必要ない」 という人もい
第5章
包装貨物の外部の包装で、物品または包装物品を箱、袋、樽、缶などの容器などに入れ、も
内部を見せ、湿気を防ぎ、破れにくく、商品を保護しているプラスチックは内
といわれているので、包装は 60 兆円の産業界にかかわっていることになりま
第 4章
わが国の包装は、表 1 のように JIS で定義されています。
わが国の包装産業は約 6 兆円の規模であり、これが売価に占める割合が約 1 割
第 3章
生した食品で、枯草菌を利用した発酵と、保温、保水、個食、携帯性、そして
第 1章
Q
包装とは
包装の基礎知識
1-1
◆ディスポーザブルな医療品は存在しない
包装
Package
生活に密着して発展した包装は、さまざまな用途に使用され分類も
工業包装
(Industrial Package)
輸送包装
(Transport Package)
多く、世界的にもっとも使用している分類は、消費者包装と工業包装
(輸送包装)です。
(1)形態による分類:JIS に定める包装の定義にもある個装、内装、外装の 3
種類に分類します。この内装と外装は、包装貨物の内外の包装を指します
商業包装
(Commercial Package)
第 2章
物 流
(Physical Distribution)
消費者包装
(Consumer Package)
外装と内装
個 装
包装貨物の内 ・ 外装
物品個々の包装
機 能
務用が多くなります
(3)仕向け地別による分類:国内包装、輸出包装、特殊包装(美術品包装、軍
輸送のための包装
・内容物の品質保持優先
・トータルコストダウン機能
・物流強度
第 3章
(2)用途による分類:消費者包装と工業包装(輸送包装)に分類します。なお
消費者包装はほとんど個装です。工業包装(輸送包装)は内装と外装として業
第 1章
包装の区分・分類を教えてください。
包装形態
A
図 1 包装の分類
大分類
Q
包装の種類
包装の基礎知識
1-2
商品効果を高める包装
・内容物の品質保持優先
・商品効果を持つ販促機能
需品包装等)に分類します
すが、輸出品はこれらが複合化されています
(5)使用される包装材料別の分類:木箱、樽詰、紙袋、段ボール、紙器、ガラ
スびん、軟包装、プラスチック容器、金属缶など、使用される包装材料別に分
・段ボール箱
・紙器包装
・木製包装
・布製包装
・ドラム缶
・金属缶
・ガラスびん
・軟包装
・カートン
・プラボトル
第 4章
おもな 材 料
(4)輸送手段別の分類:トラック用、貨車用、船舶用、航空機用にわけられま
類したものです
装、無菌 ・ クリーン包装、耐熱 ・ 耐寒包装、鮮度保持包装、防錆包装、輸出貨
第5章
(6)包装方法別の分類:防湿 ・ 防水包装、ガス遮断包装、真空 ・ ガス置換包
多様化した包装
物包装、危険物包装(放射性物質 ・ 工業薬品 ・ 爆発物引火性)など、包装の機
能目的別に分類します
(7)商品別の分類:食品包装、医薬 ・ 医療品包装、化粧品包装、日用雑貨包
します
消費者包装と工業(輸送)包装の分類を図 1 に示しました。消費者包装は、
消費者包装群では個装が多い
個装で、中身の品質保持が最優先機能で、続いて商品効果を高め販売を促進す
消費者の目に直接触れる消費者包装
ラスチック容器などが対象です。工業包装(輸送包装)は外装および内装で、
7
章
内容物の品質保持が最優先され、次いでトータルコストダウンの機能が要求さ
れます。包装材料は段ボール、木箱、布袋などで、物流にも大きく関連しま
す。また、「包装」 と 「梱包」 の用語に境界や定義はありませんが、梱包は大
型工業包装用に、包装は消費者包装の個装として用いられます。
第
トラック便と
船舶便との
組み合わせ
ることが必要とされます。包装材料は金属缶、ガラス容器、軟包装、紙器、プ
第 6章
装、家電包装、電子機器包装、精密機械包装、照明機器包装など商品別に分類
輸送包装トラック便と航空便
輸送包装の海外向け包装
スーパー等で販売されている商品の包装は使い捨てのイメージが
ありますが、見た目以外にどのような役割があるのでしょうか?
図 1 多様化社会における包装の役割
狭義のマーケティング
MK(Marketing)
商品を売るための活動
取引売買
商的物流
原料・半製品包装
販売活動
(生産管理)
(C)
公正・表示包装
包装は、食品、医薬品、日用品、化学品、電気製品などの製品をあ
らゆる条件下において内的・外的の障害から保護するものです。
包装は商品の一部として見られ、商品をそのまま生活者に届けるこ
生産者
消費者
広義のマーケティング
P Producer
流通・配分 MK
C Consumar
ととあらゆる障害から製品を守ることが使命ですが、包装自体は商品にはなり
得ません。そのため、包装無用論などが生まれますが、無用論を論じると反対
包装の役割は図 1 のように、消費者包装では商流や販売、工業(輸送)包装
では物流や輸送が主体となります。消費者包装は、商流として図中(A)の役
工業(輸送)包装 (B)
物流:PD
(Physical Distribution)
商品を運ぶための活動
①荷造・梱包 PK(Packing)
②輸送 TR(Transportation)
③荷役 HD(Handing)
④保管 ST(Storage)
⑤通信 COM(Communication)
⑥情報 INF(Information)
現物送達
物的流通
割があり、ここでは製品と同じように包装の役割が大きく、商品の一部に位置
づけられています。よって商品化の際に、製品+包装=商品という図式があり
図 2 食生活の多様化に伴う食品保存のニ-ズ
工業(輸送)包装には、 物流の中で(B)の役割があります。消費財の生産
や移動が増加、商品の流通経費の中で包装費、保管・輸送費などの占める割合
が増えているため、商品容積の最小化、重量の軽減が包装に求められます。加
生産者には、原料・半製品の生産管理、輸送・配送の業務用の保護包装な
ど、図中(C)の役割があります。また、消費者は消費者保護のための公正
性、安全性、適正包装化、環境負荷低減包装など図中(D)の役割を包装に持
たさなければなりません。加えて昨今では廃棄物問題、省エネルギー、衛生法
図 2 からわかるように核家族化、高齢化社会などの社会的インパクトに対応
して、自己主張や選別消費などの個人的ニーズや食生活のさまざまな志向があ
食生活の多様化
食生活のキーワード
食生活の志向
・ 食べやすさ
・健康への関心
・ 食事の個食化 ・食事の個性化
・ 高級化と汎用化・アウトドア化
・ テイクアウト化・簡便な調理化 ・ 豊食化
・ 食品の安全性 ・割安観
・ 高品質化
・多水分系食品志向 ・本物志向 ・低カロリー志向
・低塩、低糖志向
・低脂肪志向 ・加工食品利用志向
・手づくり志向
・外食化志向
・高品質低コスト志 ・インスタント化志向
・安全と保証志向
・ミニ化志向
◆ 乾燥食品 ・ 乾物 ◆ 塩蔵 ・ 塩漬け
◆ 加熱煮込
(煮物)
◆ 加熱煮込(佃煮)
◆ 糖蔵 ・ 砂糖漬け
で包装に機能を持たせ包装技法を施すことで、食のニーズを満足し、おいしく
衛生的に安全に長持ちさせることができます。
10
包装
機能+技法
★
★
★
★
現代の食品ニーズ
多水分系食品 ★ 低塩、低糖食品
低脂肪食品
★ 低カロリー食品
天然素材食品 ★ 無添加食品
高品質 ・ 安全食品
法令 衛生 環境 流通
社会環境
・ 廃棄物の減少:減量、リユース、リサイクル、
焼却、分解性、肥料化
・ 地球環境への配慮:温暖化防止の熱源減少
・ 省資源・省エネルギー:熱の有効利用
・ 衛生の法的規格の遵守
・ バリアフリー、ユニバーサルデザイン
・ 顧客満足の品質確保
・ 労働安全性の確保
流通
・ 短期常温流通:酸性食品、日配食品、低温殺菌食品
・ 長期常温流通:脱酸素剤封入食品、レトルト食品、
菌包装
・ 低温冷蔵流通:日配食品、チルド食品、
クリーン包装食品
・ 低温冷凍流通:冷凍食品、調理食品、クリーン包装食品
※賞味期間と消費期限
11
7
章
流通面では保存や輸送における期間と温度帯が包装に影響を及ぼします。そこ
ギャップの是正
第
く逆になるため、このギャップを埋めることが包装の使命となります。さらに
逆ベクトル関係
伝統的食品保存法
ります。たとえば多水分系食品、低塩・低糖などのニーズがありますが、これ
は従来からの乾燥、塩漬、砂糖漬など伝統的な保存方式とはベクトルがまった
・自己主張
・輸入品の購買 ・選別消費
・家庭中心の生活・健康への関心
・簡便性、携帯性・生活水準の維持
・多種少量購買 ・買いびかえ
・新鮮志向
第 6章
順守、社会的弱者への配慮などの社会環境性が包装に求められています。
個人的ニーズ
・国際化、自由化 ・高齢化社会
・主婦就労率上昇 ・多様化
・環境問題
・企業の再構築
・ジャスト ・ イン・タイム思想
第5章
えて通信や情報のウエイトが高くなっています。
社会的インパクト
・核家族化社会
・安全性
・生活の維持
・高品質低価格
第 4章
ます。また、ネット販売、無店舗通信販売の普及に伴い、ネットやカタログを
通じて商品の情報提供が必要とされます。
第 3章
に包装の有用性、必要・存在論がわかり、包装の意義が見えてきます。
(D)
①法規制 RG(Regulation)
②環境問題 ECO(Ecology)
③安全 SF(Safe)
④エネルギー EG(Energy)
⑤道徳(Moral)
⑥消費者保護
第 2章
A
消費者(商業)包装 (A)
①市場調査 MR(Marketing Reseach)
②商品化計画 MCDS(Merchandising)
③売価政策(Pricing)
④広告 AD(Advertisement)
⑤宣伝 PR(Public Relation)
⑥販売経路政策(Channels)
⑦販促活動 SP(Sales Promotion)
⑧販売方法(ネット・カタログ等)
第 1章
Q
包装の役割
包装の基礎知識
1-3
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