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2006年5月 第368号のPDFをダウンロード(1MB)
News
JIKEN CENTER
自研センターニュース
5
May 2006
平成18年5月15日発行 毎月1回15日発行(通巻368号)
昭和51年5月27日 第三種郵便物認可
C
O
N
T
E
N
T
S
テクノセミナー ・・・・・・・・・・・・・・・・2
新世代のディーゼルエンジン
∼BOSCH社のディーゼルエンジンシステム∼
指数テーブル マニュアル作業項目の解説―76― ・・5
G040=バックドアガラス脱着または取替
リペアリポート ・・・・・・・・・・・・・・・・6
トヨタベルタ
(90系)のヘッドランプユニット取替方法について
アウダネオ2活用塾 ・・・・・・・・・・・・・・9
見積り総合計の編集方法について
海外見聞記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・10
米国損保による保険事故車修理費に関する取組み
「構造調査シリーズ」新刊のご案内・・・・・・・・12
お客様相談室レポート ・・・・・・・・・・・・・13
補修塗装指数についての質問と回答例
リペアインフォメーションS ・・・・・・・・・・14
こんなケースもあります
こんなクリップもあります
こんな固定方法もあります
2006年度 上半期研修スケジュール ・・・・・・・17
リサーチング ザ スケルトンズ ・・・・・・・・・18
三菱 i(アイ)HA1W系
訂正とお詫び ・・・・・・・・・・・・・・・・20
別冊 新型車情報
1 ∼□
12
トヨタ カムリ
(ACV40/ACV45)
・・・・・・・・・□
1 ∼□
16
2トヨタ エスティマ(ACR50W/ACR55W/GSR50W/GS55W)・・□
1 ∼□
12
3ホンダ ゼスト
(JE1/JE2)
・・・・・・・・・・・□
TECHNO SEMINAR
テクノセミナー
新世代のディーゼルエンジン
∼BOSCH社のディーゼルエンジンシステム∼
ベンツCLK320CDI
欧州仕様車
1.はじめに
日本におけるディーゼルエンジンは、環境問題のニュースなどでトラックのエキゾーストパイプから
黒煙が噴出される映像が流されるように、「汚い、うるさい」など地球環境に対しマイナスのイメージ
があるように思われます。
販売台数ではトラックやバスのほとんどがディーゼルエンジンですが、乗用車の分野ではガソリンエ
ンジンに完全に凌駕されているのが現状です。
ところが、環境意識が高いヨーロッパではディーゼルの「CO2(二酸化炭素)排出量が少ない」「燃
費、熱効率が良い」というポテンシャルが見直されて、乗用車のディーゼル化が促進され、ベンツやア
ウディ、BMWといった高級車にも採用されています。
そこで、今回はBOSCH社のディーゼルエンジンシステムを参考に最新のディーゼルエンジンの進化を
見ていきたいと思います。
ディーゼル比率の高い国
オーストリア 69.6%
ベルギー 68.2%
フランス 67.4%
スペイン 60.5%★
In %
60
50
2003年新車登録
★
40
30
20
10
0
00 04 08 13
米国
00 04 08 13
西ヨーロッパ
00 04 08 13
東ヨーロッパ
00 04 08 13
日本
世界の地域毎のディーゼル車シェア
2
自研センターニュース 2006年 5月号
00 04 08 13
その他
TECHNO SEMINAR
2.燃料噴射システム
クリーンな排出ガスを実現するために近年のディーゼル車にはコモンレール式燃料噴射が多く採用さ
れています。
(概要についてはアジャスターマニュアル乗用車編第2章メカニズムの項を参照ください)
旧タイプの噴射ポンプ式では燃料の加圧と噴射制御をポンプで行っていましたが、コモンレール式で
は燃料の加圧はポンプで、噴射制御はインジェクタに分担させることで燃料の高圧化(現在では1,600気
圧以上)と最適な噴射タイミングを実現させています。
圧力センサ
コモンレール
圧力
リミットバルブ
CP3高圧ポンプ
フィルタ
燃料タンク
エンジン
コントロール
ユニット
インジェクタ
エンジン
エンジン アクセル ブースト 吸気
水温
回転数
回転数 ペダル
センサ
温度
センサ
センサ
センサ センサ
センサ
(クランク)(カム)
乗用車用コモンレールシステム
コモンレール式システムはすでに第三世代から第四世代に向
かいつつあります。
第一∼第二世代は電磁式ソレノイドを使用してバルブの開閉
が行われていましたが、BOSCH社ではピエゾ式インジェクタ
を採用した第三世代のシステムの搭載が進んでいます。ピエゾ
バルブ
カップリング
圧電素子を採用したことで軽量・コンパクト化を実現し、6気
筒エンジンではトータルで約1kgの軽量化になったそうです。 ノズル
また、可動部の慣性質量が小さく応答性が優れているので、
より細かいバルブ開閉動作が可能で理想の噴射特性が得られま
ピエゾ式インジェクタの構造
す。これによりPM(粒子状物質)やNOX(窒素酸化物)の削
減だけでなく、低騒音・低振動化にも貢献します。
さらに第四世代の開発も進んでいて、その特徴はノズル内に増圧ピストンが組み込まれ、燃料噴射圧
力を2,500気圧まで高められます。
これにより、世界一厳しい排ガス規制もクリヤできるそうです。
3.排出ガス後処理システム
ディーゼルエンジンの排出ガス中に含まれる有害物質を除去するためには、エンジン本体の性能向上
もさることながら、排出後処理も重要になってきます。
NOXを除去するために還元反応(酸素を奪い取る化学反応)によって無害な窒素に変える方法が研究
されていますが、その還元剤として尿素の水溶液を使用する装置が期待されています。これは排気ガス
中で尿素をアンモニアに変え、NOXと反応させ、水と窒素に変えるというもので、排気ガス中の酸素量
自研センターニュース 2006年 5月号
3
TECHNO SEMINAR
に関係なく安定して還元できます。
BOSCH社ではこの尿素SCR方式を実現するため、尿素水溶液噴射装置(DNOX1)を実用化しています。
選択還元〈SCR〉用尿素噴射装置【DNOX1】
尿素水タンク
サプライモジュール
エアタンク
空気
尿素水
コンプレッサ
空気
コントロールユニット
ドージング
モジュール
エンジンCAN
尿素水+空気
診断系CAN
アトマイザー
酸化触媒
酸化触媒
選択還元触媒
このDNOX1は大型トラックを中心に採用されていますが、さらに尿素噴射に空気を使用しないシス
テム(DNOX2)も開発中だそうです。これにより空気を供給する装置(コンプレッサやエアタンク)が
不要となり、小型化が実現されるので、乗用車への搭載も期待されています。
選択還元〈SCR〉用尿素噴射装置【DNOX2】
サプライモジュール
尿素
クォリティ
センサー
尿素水タンク
温度
センサー
フィルター
レベルセンサー
ドージング
コントロール
ユニット
アクチュ
エーター類
センサー類
エンジンCAN
診断系CAN
温度センサー
酸化触媒
ドージングモジュール
温度センサー
SCR 触媒
排ガスセンサー
アンモニアスリップ防止触媒 4.おわりに
国産メーカのこれからの環境問題に対する取組みというと、ハイブリッド車や電気自動車の普及が主
流になっていますが、ディーゼルエンジンという選択肢も必要になってくるのではないでしょうか。デ
ィーゼルとモータを組み合わせたディーゼルハイブリッドや動植物油から改質するバイオディーゼルの
普及など、様々な可能性を秘めているとも言えます。
性能面でもターボ搭載でリッターあたり80psのパワーを生み出せるようになっているそうです。
参考 BOSCH ホームページ
自動車工学 2004年8月号
(指数部/井上弘正)
4
自研センターニュース 2006年 5月号
指数テーブル マニュアル作業項目の解説
−76−
今回は指数テーブルマニュアル(2005年10月発行)
の交換が必要となります。
(作業に慣れ、構造確認
を基本に、ボデー系の作業項目『G040 バックドアガ
を十分行なえば、ほとんどの場合、モールディング
ラス脱着または取替』について解説します。
(図1)
やクリップを破損させることなくガラスを脱着する
ことが可能と考えています。一部車種でガラス脱着
時、位置決めクリップの破損が避けられないケース
1.前提条件および作業内容
*バックドアガラスおよび付属品の脱着または取
がありますが、この場合クリップを接着剤等で元の
位置に取付ける方法で位置決めが出来るものは再使
替を行う作業
用が可能と考えています。)
2.指数に含まれる主な作業
*1992年9月1日以降のフルモデルチェンジの車種より
*水密テスト
バックドア取替の指数値から分離し、作成していま
3.除く作業
*接着剤の材料費は指数値に含まれない。
す。1992年8月31日以前の古い車種の一部では、バッ
補足
クドア取替にバックドアガラス脱着または取替の指
*モールディングや位置決めクリップなどガラスと
数を含んで作成していたので、『G040
バックドア
一体でなければ供給されない部品が破損するケー
ガラス脱着または取替』の指数作業項目が無い車種
スがあり、これらの部品が破損した場合、ガラス
もあります。
図1
G040
バックドアガラス脱着または取替
1台
●印の部品は当該作業範囲
前提条件および作業内容
*バックドアガラスおよび付属品の脱着または取替を行う作業
指数に含まれる主な作業
*水密テスト
(指数部/島田東一)
自研センターニュース 2006年 5月号
5
REPAIR REPORT
リペア リポート
トヨタ ベルタ(90系)のヘッドランプ
ユニット取替方法について
1.はじめに
2005年11月に発表されたトヨタ ベルタ
(90系)
のディスチャージヘッドランプユニット取替作業を紹介します。
ベルタのディスチャージタイプのヘッドランプAssyは67,200円と高額です。バルブやヘッドランプライトコント
ロールコンピュータAssy等が再使用可能であればヘッドランプユニット
(部品価格:26,800円)だけを取替える
ことにより、高額なヘッドランプAssyを使用する必要がなくなります。
これによりユーザーの経済的負担が軽くなるほか、産業廃棄物の減少にもつながり環境保全の対しても効
果的です。
2.部品補給形態
ディスチャージヘッドランプの補給形態は以下の図1のようになっています。
ヘッドランプAssy
ヘッドランプ
カバーNO.1
図1
ディスチャージ
ヘッドランプバルブ
ヘッドランプ
レベリングモータ
●
ヘッドランプ
ユニット
※ヘッドランプ
ガスケット
クリアランス
ランプバルプ
※
ヘッドランプライトコントロール
コンピュータAssy
フロントターン
シグナルランプバルプ
ヘッド
ランプコード
●は単品補給を示します。
※ヘッドランプガスケットが構成に含まれます。
3.作業手順
写真1
①フロントターンシグナルランプバルブ、クリア
ランスランプバルブをヘッドランプユニットか
ら取外します。
(写真1)
クリアランス
ランプバルブ
フロントターン
シグナルランプバルブ
6
自研センターニュース 2006年 5月号
REPAIR REPORT
②ヘッドランプカバーNo.1を左に回転させ取外
写真2
します。
(写真2)
写真3
③ヘッドランプライトコントロールコンピュー
タAssyのソケット部を左に回転させ取外します。
(写真3)
写真4
④セットスプリングを解除し、ディスチャージ
ヘッドランプバルブを取外します。
(写真4)
セット
スプリング
写真5
⑤コネクタ2箇所をヘッドランプユニットから
ツメ
切り離し、ヘッドランプコードを取外します。
(写真5)
コネクタ
自研センターニュース 2006年 5月号
7
REPAIR REPORT
⑥ヘッドランプライトコントロールコンピュータ
Assyのソケット部を抜き出すには、ヘッドラン
プユニット内にソケット部を通すための隙間を
確保する必要があります。この隙間を確保する
を取外し、エーミングスクリュー2箇所を左に
回転させます。(写真6)
さらにヘッドランプレベリングモータを右に
回転させ取外します。
(写真7)
ため、スクリュー3本で固定されているブラケット
写真6
写真7
エーミングスクリュ−
エーミングスクリュ−
スクリュ−
⑦スクリュー4本を外し、ヘッドランプライトコントロー
ルコンピュータAssyのソケット部をヘッドランプユ
⑧コネクタを切り離し、ヘッドランプライトコントロー
ルコンピュータAssyを取外します。
(写真9)
ニットから抜き出します。
(写真8)
写真8
写真9
スクリュー
スクリュー
コネクタ
⑨分解完了です。
(写真10)
写真10
4.おわりに
今回紹介した作業手順は分解までですが、組立は
逆の手順となります。作業全体をとおして特に難しい
作業はありませんが、バルブ類にはゴミや油分が付
着しないよう注意して作業する必要があります。
構造や作業手順を熟知することよりさらに効率の
良い取替作業を行なうことができます。復元修理の
参考としてください。
(指数部/斉藤正丈)
8
自研センターニュース 2006年 5月号
アウダネオⅡ
活用塾
14
見積り総合計の編集方法について
総合計のアイコンをクリックすると、部品代や工賃などの総合計が表示されます。このページを利用して
値引き、割増し、消費税率などを設定することができます。今回はこのページの活用方法を紹介します。
見積書の作成が終わりましたら
【総合計】
のアイコンをクリックします。
1
その他の欄に例えば「特別値引き」と項目
を設定します。
2
端数の金額¥54の頭に【−】
をつけて入力します。
消費税込みで総合計¥201,054の見積り金額を端数
処理して¥201,000にしたい場合は次の手順で簡単
に行うことができます。
¥201,000に変更されます。
見積書の右下欄に
【特別値引き】
として−54が
計上されて合計¥201,000となります。ただし、
この方法は消費税を含めた計算ではありません。
3〈見積書のイメージ〉
元受工場に対して工賃を割引して請求する場
合はこの欄に割引率を任意に設定することが
できます。
4
塗装費合計¥81,540の内、材料費を除いて割
引率を適用する場合は、
【含まない】
を選択す
ることが必要です。
自研センターニュース 2006年 5月号
9
海外見聞記 ………………………………………………………………………………………………
米国損保による
保険事故車修理費に関する取組み
昨年10月下旬から11月上旬にかけて自研センターが実施した米国調査の結果を1月号に続き紹介させて
いただきます。
今回は、米国大手損害保険会社(以降、損保)による修理費適正化の特徴的な取組みを中心に紹介した
いと思います。今回紹介させていただく内容は、シカゴとサンディエゴで訪問した5つの特徴的な修理工場
と米国の大手損害保険会社1社、およびその保険会社が運営する研究・研修センターへの取材によるもの
です。
これらの内容は米国の現状の一部に過ぎませんが、日本との違いの一端を理解いただくための参考とし
ていただければ幸いです。
1.DRP(ダイレクト・リペア・プログラム)
DRPとは事故車を損保が指定する優良な工場へ
今回取材に協力いただいた工場の話からも、多
入庫してもらうことで、保険契約者に安全・確実・迅
くの保険事故車が損保指定工場(DRP工場)や協力
速な修理サービスを提供し、同時に修理費の適正
工場へ入庫されていることが確認できました。
化を図ることを目的に1970年代にオールステート社
また、チェーン化された大規模修理工場が、複数
が開発した取組みですが、今では米国の多くの大手
の大手損保の指定工場となっているケースが多く、
損害保険会社が同様の方式を採用しています。
取材に協力いただいたシカゴ近郊の大規模修理工
米国の修理工場向け情報誌が2004年、修理工場
場は、カナダが本社で北米に50工場を展開する大手
を対象に行った主要なお客様に関するアンケートに
修理業者のチェーン工場のひとつでしたが、この
よれば、
「DRP参加によるお客様が中心」と回答した
工場は米国の大手損保5社の指定工場となっていま
工場が、
「リピーターが中心」と回答した工場に次い
した。
で多く、DRPへの参加が事故車入庫に大きな影響を
与えていることが窺えます。
主要なお客様は?
このような 状 況 から、米 国 では 今 後 、工 場 の
大規模化・チェーン化が進み、大手損保による大規模
損保紹介によるお客様
20%
DRP参加によるお客様
33%
リピーターのお客様
40%
(Main source of
既存客の紹介によるお客様
customers)
ディーラー紹介によるお客様
広告によるお客様
30%
10%
8%
(インサイト2004年アンケート:複数回答可のため合計は100%ではありません)
チェーン展開する大手修理業者の中核工場
10
自研センターニュース 2006年 5月号
チェーン工場の指定工場化がさらに進んでいくので
ついて合意しており、個々の修理見積は工場に任さ
はないかと感じました。
れているため、保険会社が個々に見積内容をチェック
なお、損保指定工場は事前に損保とレバーレート
することはほとんどないとのことでした。
(工賃の時間当り単価)や中古部品使用基準などに
2.損保による工場経営
今回の調査で最も驚いたことは、大手損保が本格
されていることが印象的でした。
的に修理工場経営に乗り出しているということでし
米国では、損保が迅速に車両保険金の支払いを
た。取材に協力いただいた損保では、すでに北米
行うことが州法によっても課せられているため、保険
で50以上の工場を運営しており、年間20万台以上の
会社から工場に経過確認が頻繁に行われており、
事故車を修理しているとのことでした。
工場側も常に修理状況を報告できる体制を作って
今回取材させていただいた損保経営の工場は、
おく必要があるとのことでした。
事故修理が専門で、月間入庫台数167台、従業員18
なお、今回訪問した損保ではよりよい修理サービス
名の規模でしたが、設備工具や修理方法・品質など
をお客様に提供するため、今後さらに工場の競争力
は日本とほとんど差がないと感じました。ただ事務
を高め、確実に利益が出せる体制を作り、ネット
所から作業場全体が確認できるよう工場レイアウト
ワークを拡大することを検討しているようでした。
が工夫されている点と修理作業の工程管理が徹底
損保が経営する工場の中核的工場
3.ドライブインクレームセンターによる査定と保険金支払
ドライブインクレームセンターとは、損保の自社工
回訪問した損保では現在、北米に600箇所のドライ
場や大規模な協力工場の一角に専用の事務スペー
ブインクレームセンターを設置しており、損害調査の
スや見積用スペースを設け、アジャスター1名を常駐
約1/4をこの方式で処理しているとのことでした。
させた損保のサービス拠点のひとつです。主に自走
米国では州法によって、契約者に対する見積説明
可能な保険事故車を、契約者にドライブインへ搬入
義務が、損保、修理業者の双方に課されている州が
していただき、その場で修理費を決定し保険金を小
多く、事故車修理の見積内容は必ず契約者に説明
切手で支払う仕組みとなっています。
し、契約者の承認を得る必要があります。このため
この仕組みは損害調査の効率化と迅速な保険金
保険会社による修理費協定は原則として契約者との
支払に有効で、過去に日本でも導入を試みた損保
間で行われ、保険金も契約者に直接支払うのが多
がありましたが定着しなかったようです。しかし、今
いようです。これが米国でドライブインクレームセン
自研センターニュース 2006年 5月号
11
ターによる査定が定着している理由ではないかと思
分で修理することも、別の工場で安く修理すること
われます。
も可能です。また、ドライブイン設置工場で修理する
なお、ドライブインクレームセンターで見積書と保険
場合でも、中古部品の使用が嫌で、差額を自己負担
金を受取った契約者は、ドライブイン設置工場へ修
して新品部品での交換を希望する契約者もいるとの
理を依頼するケースが多いようですが、もちろん自
ことでした。
4.まとめ
以上、米国損保の特徴的な取組みを紹介しまし
この場合、損保は工場に追加見積の作成を依頼
たが、損保が薦める指定工場やドライブインでなく、
し、別のアジャスターが立会って事実確認を行い、
契約者が懇意にする工場へ入庫させたいという場
追加支払に応えているとのことでした。なお、この場
合はどうなるのか知りたい方も多いと思います。そ
合の追加支払は損保によって対応が異なり、工場へ
こで、今回訪問した工場での話を総合して、最後に
支払う損保と契約者へ支払う損保があるようです。
その点を紹介いたします。
米国では、損害の程度によっては修理しない場合
損害額が2,000ドル以下の場合は写真査定となる
や、アジャスター見積より安く修理する場合も多いた
ことが多く、日本の場合と同様、工場が損保に事故
め、ドライブインクレームセンターでの修理見積は一
車の写真と見積書を送付し、電話で修理費の交渉
般にやや厳しくしており、実際に事故車を修理する
を行っています。工場の話では大手損保は全件、確
場合は交換部品など事実を確認の上、追加支払を
実に減額の要求があるとのことでした。
行っているとのことでした。
一方、損害が大きい場合や高いレートを要求する
また、米国で徹底されている修理内容の契約者
工場の場合は、アジャスターが工場に出向きアジャ
への説明や、保険金の契約者支払は、事故車修理
スター見積をもとに工場と交渉を行っています。しか
に関する一般消費者の関心を高め、修理費適正化
し、いずれの場合も最終的には必ず契約者の了解
にも有効ではないかと感じましたが、取材した工場
を得て修理費が確定され、保険金も契約者に支払
の話では、米国でも日本と同様、保険で支払われる
われるのが多いようです。
修理費に関するお客様の関心は一般的に薄く、修
また、事故車をドライブインクレームセンターに持込
み、保険金を受取ったお客様が、別の工場で修理
理内容の説明にはほとんど時間がかからないとのこ
とでした。
しようとした場合、その工場からアジャスター見積で
は修理できないと言われるケースも生じているよう
です。
(指数部/森本毅)
「構造調査シリーズ」新刊のご案内
自研センターでは新型車について、損傷した場合の復元修
No.
車 名
型 式
理の立場から見た車両構造、部品の補給形態、指数項目
とその作業範囲、ボデー寸法図など諸データを掲載した「構
造調査シリーズ」を発刊しておりますが、今月は右記新刊を
ご案内しますので、ぜひご利用ください。定価は1,120円(税
J-434
トヨタ Rush
J-435
スズキ エブリイ
J-436
ボルボ XC70
200系
DA64V、DA64W系
SB5254AWL
込み、送料別)
です。ただし、J-436のみは、2,160円(税込
み、送料別)です。
お申し込みは自研センター総務企画部までお願いします。
TEL
12
自研センターニュース 2006年 5月号
047-328-9111
FAX
047-327-6737
Customer Relations Department REPORT
お客様相談室レポート
補修塗装指数についての質問と回答例
今回は、補修塗装指数の中から、お客様相談室に寄せられたご質問と回答を取り上げます。
Q
1
補修塗装指数では、ボカシ塗装をする際、ドアのアウタハンドルやモール類は、マスキングで対応することになって
いますが、現場では仕上げを考えこれらの部品を外して作業を行なう場合もありますが、これらの部品を取外して作
業した場合は、どのように工数を計上したら良いでしょうか?
掲題のような作業を行なった場合は、関連する部分のマスキング対応でかかる作業量と、当該部品を外した場
合の作業量とを比較し調整してはどうでしょうか。
○当該部のマスキング自体の作業量はどのくらいか
A
1
○マスキング対応による下処理(脱脂や足付け)や仕上げ(吹き方や磨き)に関わる作業量はどのくらいか
○当該部品を取外したことによる下処理や仕上げに関わる作業量はどうなるか、どのくらいか
○当該部品自体の脱着にかかる作業量はどのくらいか
○当該部品を脱着するために必要となる関連作業の作業量はどのくらいか 以上のような点を留意した上で、実情に即した工数を算出し調整してはどうでしょうか。
Q
2
ボデー塗色と異なる色を塗る必要があるのですが、どのようにしたら良いでしょうか?
質問のように、エンジンルーム内やパネル裏面などでボデー塗色と異なる色(中塗り色のソリッドカラーなど)
を塗る
必要がある場合、対象部品や塗装部位によって、調色作業や準備の工数、マスキングの変更作業の工数などが必要
となります。
したがって、このような場合は、樹脂バンパ補修塗装指数値の色違いの場合の加算数値などを利用して、必要工数
を求めてはいかがでしょうか。
ただし、運用に当っては以下の点に十分留意する必要があります。
1.塗色によっては、調色済み塗料で済むもの(黒色やグレーなど)
もあります。
2.補修塗装の基本は、いかに元の色に近づけた塗装を施すかですが、部位や目的によって、経済的合理性を考慮
した対応が必要です。
A
2
3.現行の補修塗装指数での調色に掛かる作業量は、社団法人日本塗
料工業会発行の塗料メーカ別オートカラーガイド
(色見本帳:一色1例表
示)
を参考に対象車両の元色を作り、細かな色合いは技術者の技能
による微調色を行ない仕上げるまでの作業量がベースとなっています。
4.最近では、車両のボデー塗色No.に対して数色の色見本(配合データ)
が整えられ、僅かな色ずれにも対応できるようにした調色システムが各
例1
塗料メーカから発売されており、調色の作業量は減少傾向にあると言
例2
えます。
例3
以上のような点に留意した上で、実情に即した工数を算出し調整しては
例4
どうでしょうか。
例5
(研修部/金子正巳)
自研センターニュース 2006年 5月号
13
REPAIR Information S
リペア インフォメーション S
このようなケースもあります
ホンダ シビック(FD1
平成17年式)のフロントコーナーガラスモールの損傷事例を紹介します。
1)前方向からの入力でフェンダが後方に押し込
写真1
まれることにより、フロントコーナーガラス
に干渉してモールを損傷させたケースです。
(写真1)
2)損傷状態は目視でも明らかに誘発損傷による変
写真2
形(変形のみで傷は無い)が認められました。
(写真2)
3)フロントフェンダ取外し直後のフロントコーナーガ
写真3
ラスモールには明らかな変形が見られましたが、
24時間放置した後に確認したところモールの変
形が自然に回復していました。モールに傷が無
い場合ではモールを修正して再使用することも
十分可能と考えます。
(写真3)
<参考>
モールが自然に回復しないケースでは赤外線ランプで温める加熱修正をすることで変形を戻すことも
可能です。
14
自研センターニュース 2006年 5月号
REPAIR Information S
こんなクリップもあります
日産 ティーダ(C11
平成17年式)のカウルトップカバーを固定するのに少し変ったクリップ(カ
ウルトップカバークリップ)が使用されていますので紹介します。
写真1
1)カウルトップカバークリップはカウルトップ
カバーの前側に6ヶ所取付けられています。
(写真1)
写真2
2)クリップの構造は両側の爪を広げてロックを
解除する構造となっています。それぞれの爪
を片手で広げながら引出す作業となりますの
で少し難しいかもしれません。(写真2)
3)取外し方法は(写真3,4)
①事務クリップからレバー(つまみ部)を取外し
ます。
③カウルトップカバークリップの爪を事務クリッ
プのレバーで押し広げるとロックが解除されク
リップを引抜くことが出来ます。
②カウルトップカバークリップの爪に事務クリッ
プのレバーを差込みます。
写真3
写真4
自研センターニュース 2006年 5月号
15
REPAIR Information S
こんな固定方法もあります
トヨタ ヴィッツ(SCP90
写真1
平成17年式)を用いて軽損傷時
の簡易固定方法を紹介します。(写真1)
写真2
この車両は1時方向からの入力により損傷し、計測によって
右フロントサイドメンバが4mm左方向へ移動していることが
確認できました。バンパリインフホース等の取付けに影響が
出ると予測されましたので引き作業が必要と判断しました。
4Aの振れ
(写真2)
なお、右フロントサイドメンバの長さ方向及び左フロント
入力
サイドメンバの寸法に狂いはありませんでした。
固定方法は
1)左右リアサイドメンバの牽引フック部にチェーンを掛けて固定します。(写真3)
2)左右リアサイドメンバにチェーンを掛けて固定した状態です。(写真4)
写真3
写真4
写真5
3)リアの固定チェーンと同時に4輪への輪止めを行い、引き
作業の際に車両が沈み込むため(サスペンションの可動範
囲分)、防止策として左右サイドシルジャッキポイントフ
ロント側にジャッキを入れて、車両の沈み込みを防止しま
ジャッキ
輪止め
す。
(写真5)
車両が沈み込むと引き方向(特に上下)にズレが生じ易く
なります。
4)今回の骨格部では右フロントサイドメンバの振れのみであ
ったことにより簡易固定で対応可能でしたが、前後方向つ
まり長さに狂いがある場合には今回の方法では修正が難し
くなるのではないかと思います。
(写真6)
16
自研センターニュース 2006年 5月号
写真6
2006年度 上半期研修スケジュール
週
Aクラス
Bクラス
Cクラス
Dクラス
月
No.
A-1/A-2
B-1/B-2
C-1/C-2
D-1/D-2
4
B
曜日
日
月
火
水
木
金
土
1
B
2
3
4
5
6
7
8
B
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
1
2
3
4
5
6
初A
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
1
BMW
2
2級更新時研修
5
B
見習
3
初Aq23
初Bq18
4
VW
3級
初A
5
クレーン
初B
初A
6
6
トラック
塗装
初B
初級
7
クレーン
見習前半
見習前半
見習後半
見習後半
8
/見習準備
/見習準備
/社員基礎
9
トラック
見習前半
見習前半
/弁護士
18
19
20
21
22
23
24
7
10
トラック
見習後半
見習後半
/社員基礎
25
26
27
28
29
30
1
見習
11
VW/クレーン
見習後半
見習後半
/交通事故事件
(弁護士) 2
3
4
5
6
7
8
初級
12
3級
初B
9
10
11
12
13
14
15
13
技/特殊事案研究
/社員上級
16
17
18
19
20
21
22
/交通事故事件
(社員)
23
24
25
26
27
28
29
30
31
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
8
14
リヤボデー
2級
初B
15
BMW
2級
初A
16
2級更新時研修
塗装
B
17
/二輪車
9
18
2級
見習後半
見習後半
27
28
29
30
31
1
2
見習
19
事故解析上級
2級
見習後半
3
4
5
6
7
8
9
初級
20
Mベンツ
3級
初A
/社員基礎
10
11
12
13
14
15
16
特殊
21
/社員上級
17
18
19
20
21
22
23
/弁護士
24
25
26
27
28
29
30
22
見習前半
技/特殊事案研究
ミニバン
初A
/見習準備
土、日、祝祭日
自研センターニュース 2006年 5月号
17
Researching The Skeletons
リサーチング ザ スケルトンズ
三菱 i(アイ)HA1W系
この「Researching The Skeletons」では外部からは確認することができないフロントサイドメンバおよびリヤサイドメンバ内側のリインホースメント等
の位置や板厚を分かり易く紹介していくもので、データは実際に自研センターで調査した内容をまとめたものです。
概要
フロントフロアサイドメンバ、リヤフロアサイドメンバなどの主要骨格部位には、高張力鋼板を採用。フロアフ
ロントエンドクロスメンバやフロントフロアサイドメンバの一部には特に剛性の高い、980MPa級超高張力鋼板が
採用されています。
(三菱自動車工業株式会社発行の整備解説書ボデー編より)
写真2
写真1
①フロアフロントエンドクロスメンバ
②フロントフロアサイドメンバ先端部
フロント
①フロアフロントエンドクロスメンバは980MPa級超高張力鋼板が使用され、溶接にて接合。
(写真1、2)
②フロントフロアサイドメンバ先端部は六角形の断面形状。(写真1)
*整備解説書ボデー編には、フロントフロアサイドメンバAssyの半裁取替作業が、前部および後部の2箇所に設定されている。
ただし、補給部品どおりの形状で取替作業は設定されていない。
③フロントフロアサイドメンバ前部には、リインホースメントが入っていない。
フロントフロアサイドメンバ左内側
フロントフロアサイドメンバ右内側
写真3
写真4
t=1.2
t=1.8
③フロントフロアサイドメンバ前部
18
自研センターニュース 2006年 5月号
Researching The Skeletons
リヤ
④リヤフロアサイドメンバの内側には、T/M(エンジン)マウンチングインシュレータが付く。
⑤左右リヤフロアサイドメンバエクステンションは、各々単体補給設定あり。
⑥ラテラルロッドクロスメンバ部は、単体補給設定なし。
左右リヤフロアサイドメンバエクステンションと一体での補給設定。
正面(取付状態)
正面(取外し状態)
写真5
写真6
t=2.0
リヤフロアサイドメンバエクステンション位置
⑥ラテラルロッドクロスメンバ部
リヤフロアサイドメンバ左内側
リヤフロアサイドメンバ右内側
写真7
写真8
t=2.0
t=2.0
④T/Mマウンチングインシュレータ取付け位置
(左側)
エンジンマウンチングインシュレータ取付け位置
(右側)
⑤リヤフロアサイドメンバエクステンション
リヤフロアサイドメンバ左下側
リヤフロアサイドメンバ右下側
写真9
写真10
t=2.0
⑥ラテラルロッドクロスメンバ部
⑤リヤフロアサイドメンバエクステンション
(指数部/篠原清次)
自研センターニュース 2006年 5月号
19
http://jikencenter.co.jp/
【訂正とお詫び】
自研センターニュース2006年4月号において下記の通り誤りがありましたのでお詫びの
上、以下の通り訂正いたします。
●付録
自研センターニュース総目次の年度が平成16年度となっておりましたが、正しくは平
成17年度です。訂正し再掲載します。
●リペアリポート10頁
特別記事「ニッサンX−TRAIL(T30系)スクラッチガードコートについて」において
「ASAPクリヤと一般クリヤ価格表」と「ASAPクリヤと一般クリヤ配合比率」は正しく
は下記の通りになります。
ASAPクリヤと一般クリヤ価格表
製品名
ASAP
クリヤ
ASAP
クリヤキット
N-プロタッチシンナ(標準型)
一般
クリヤ
関西ペイント
レタンPGHXクリヤ(Qベース)
レタンPGHBシンナ20
(正)
製品
クリヤ
硬化剤
ボカシ剤
希釈用シンナ
内容量
500g
250g
300g
16R
クリヤ
16R
22,880円
硬化剤
希釈用シンナ
4R
16R
9,780円
7,270円
ASAPクリヤと一般クリヤ配合比率
製品名
レタンPGHXクリヤ(Qベース)
価格(税抜き)
57,500円
7,900円
(正)
調合比率
クリヤ:硬化剤:シンナ
100:50:20
調合済クリヤ
100g単価
約161円
自研センターニュース 2006.5(通巻368号)平成18年5月15日発行 昭和51年5月27日 第三種郵便物認可 定価336円(消費税込み、送料別途)
C 発行所/株式会社自研センター 〒272-0001 千葉県市川市二俣678-28 Tel(047)328-9111(代表) Fax(047)327-6737
発行人/鈴木 稔 編集人/小林吉文 ⃝
※乱丁、落丁の場合はお取り替えいたします。
本誌の一部あるいは全部を無断で複写、複製、あるいは転載することは、法律で認められた場合を除き、著作者の権利の侵害となりますので、その場合に
は予め、発行人あて、書面で許諾を求めてください。JKCニュースの掲載記事に関するお問い合わせ先はニュース編集事務局までご連絡ください。
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