...

フィリピン国 セブ都市圏水資源開発計画調査 事前

by user

on
Category: Documents
36

views

Report

Comments

Transcript

フィリピン国 セブ都市圏水資源開発計画調査 事前
No.
フィリピン国
セブ都市圏水資源開発計画調査
事前調査報告書
平成 17 年 1 月
(2005 年)
独立行政法人 国際協力機構
地球環境部
環境
JR
05-081
序
文
日本国政府は、フィリピン政府の要請に基づき、セブ都市圏水資源開発計画調査に係る
調査を実施することを決定し、独立行政法人国際協力機構がこの調査を実施することとい
たしました。
当機構は、本格調査に先立ち、本件調査を円滑かつ効果的に進めるため、平成 16 年 10
月 24 日より 11 月 22 日までの 30 日間にわたり、JICA 地球環境部調査役 横倉 順治を団長
とする事前調査団を現地に派遣しました。
調査団は本件の背景を確認するとともにフィリピン政府の意向を聴取し、かつ現地調査
の結果を踏まえ、本格調査に関する M/M に署名しました。
本報告書は、今回の調査を取りまとめるとともに、引き続き実施が期待されている本格
調査に資するためのものです。
終りに、調査にご協力とご支援を頂いた関係各位に対し、心より感謝申し上げます。
平成 18 年 5 月
独立行政法人 国際協力機構
地球環境部 伊藤 隆文
目
序
文
目
次
次
調査対象地域図
写
真
略語表
第1章
事前調査の概要
1−1
要請の背景.................................................... 1
1−2
事前調査の目的................................................ 1
1−3
調査団の構成.................................................. 2
1−4
調査日程...................................................... 3
1−5
相手国受入機関................................................ 3
1−6
協議概要...................................................... 3
第2章
現状と課題
2− 1
国家開発計画及びセブ州における水資源開発、
上下水道整備の位置付け........................................ 7
7
2−1−2 水・衛生環境の課題と中期計画 ........................... 12
2− 2 関連法制度と関係機関.......................................... 15
2−2−1 水資源開発関連 ......................................... 15
2−2−2 上水道関連 ............................................. 21
2−2−3 下水道関連 ............................................. 26
2−3 対象地域・流域の概要.......................................... 30
2−3−1 セブ都市圏の社会・経済 ................................. 30
2−3−2 対象流域・地下水盆の自然条件 ........................... 38
2−3−3 対象水源における水利用・水利権等 ....................... 42
2−3−4 セブ都市圏における上水道の現状 ......................... 43
2−3−5 セブ都市圏の衛生環境の現状 ............................. 49
2−4 セブ都市圏における水資源・上下水道施設の現状 .................. 61
2−4−1 水資源施設 ............................................. 61
2−4−2 上水道施設 ............................................. 66
2−4−3 下水、排水処理施設 ..................................... 75
2−5 実施中及び計画中のプロジェクト................................ 80
2−6 国際機関等の動向.............................................. 82
2−7 環境予備調査結果.............................................. 85
2−7−1 環境社会配慮に係る法制度 ............................... 85
2−1−1
水資源開発の課題と中期計画 .............................
2−7−2
プロジェクト実施区域の概要 .............................
2−7−3
事前スコーピング .......................................
第3章
94
96
本格調査への提言
3−1
調査の目的.................................................... 101
3−2
調査対象範囲.................................................. 101
3−3
相手国調査実施体制............................................ 101
3−4
調査項目及び内容.............................................. 101
101
3−4−2 調査項目 ............................................... 102
3−5 要員計画...................................................... 104
3−6 調査用資機材.................................................. 104
3−7 調査実施上の留意点............................................ 104
3−4−1
調査の概要 .............................................
【付属資料】
1. 要請書............................................................. 109
2. M/M................................................................ 133
3. 主要面談者リスト................................................... 145
4. 打合せ議事録....................................................... 149
5. Q/N 及び回答 ....................................................... 155
6. 収集資料リスト..................................................... 181
7. ローカルコンサルタントリスト....................................... 185
緩速ろ過池
BUHISANダムか
らの導水管(φ400)
TISA浄水場(1911年建設)
井戸運転コントロールシステム
(SCADA SYSTEM)
貯水タンク(5000m3・8本の生産井から送水)
貯水タンク
(5000m3)
TALAMBAN貯水タンク・
水質試験室
塩素注入器
原子吸光光度計
生産井
1
量水計(1/2“-2”)テストベンチ
大口径(3“-8”)流量計テストベンチ
MCWDのワークショップ
イスラエル製(ARAD)の量水計
管材料置き場
膜処理施設(日本製)
取水施設(汽水)
淡水化プラント(BOO方式)
1.
MCWDへの供給水量:日平均
6,000m3/日
2.
水卸売単価:21peso/m3
3.
契約期間:10年間(1998年~)
2
湧水を水源とした給水タンク
湧水を水源とした給水タンク
山間部の給水施設状況
給水タンク下流の水汲み場
斜面から湧き出る岩清水
共同水栓小屋(料金徴収人が常駐)
コミューン内の井戸
コミューン内に張り
巡らされた給水管
共同水栓(Communal tap)
ごみが投棄されたコミューン内
の排水路
3
市内の河川・海への未処理下水の放流
エアレーテッド・ラグーン
セブ市営下水処理場
除塵施設
汚染された市内の水路
(Cebu市)
(Mandaue市)
4
マナンガ1のダム堤体
マナンガ2のダム建設予定地
マナンガ1の伏流水揚水ポンプ
マナンガ2のダム建設予定地直ぐ上
の自然保護地域の看板
ダム堤体部
ダム堤体部脇の民家
ルサラン(Lusaran)ダム予定地の現状
流域内の水没予定地内にある市場
河川敷内を通行している流域内の住民
5
略
BOO
語
表
Build-Operation-Own(民間セクターによるインフラ整備方式でインフラは
永久に民間の所有にとどまる)
BOT
Build-Operation-Transfer(民間セクターによるインフラ整備方式でインフ
ラは契約期間終了後には公共部門の所有となる)
BRBWMP
Bicol River Basin Watershed and Management Project
BWSA
Barangay Water and Sanitation Association(村落・給水衛生組合)
CIP
Communal Irrigation Project
CUSW
Cebu Uniting for Sustainable Water
DA
Department of Agriculture
DBP
Development Bank of Philippine(フィリピン開発銀行)
DENR
Department of Environment and Natural Resources
DPWH
Department of Public Works and Highway
DILG
Department of Interior and Local Government
DOF
Department of Finance
DOH
Department of Health
DOST
Department of Science and Technology
DTI
Department of Trade and Industry
ECC
Environmental Compliance Certificate
GFIs
Government Financing Institutes(政府系金融機関)
GTZ
Deutsche Gesellschaft fur Technische Zusammenarbeit(ドイツ技術協力)
ICC
Investment Coordination Committee
IWRM
Integrated Water Resources Management
JBIC
Japan Bank for International Cooperation
JICA
Japan International Corporation Agency
LGUs
Local Government Units
LWUA
Local Water Utilities Administration
MCWD
Metropolitan Cebu Water District
MWCI
Manila Water Company, Incorporation(マニラ首都圏の水道民営会社)
MWDA
Mananga Watershed Development Authority
MWSI
Maynilad Water Services Incorporation(マニラ首都圏の水道民営会社)
MWSS
Metropolitan Waterworks and Sewerage System(マニラ首都圏上下水道公社)
NAMRIA
National Mapping and Resources Information Authority
NEDA
National Economic and Development Authority
NGO
Non Governmental Organization
NIA
National Irrigation Administration
NIPAS
The National Integrated Protected Areas System
NWRB
National Water Resources Board
PAGASA
Philippine Atmospheric, Geophysical and Astronomical Services Administration
PCEEM
The Philippines-Canada Environmental and Economic Management Project
PFIs
Public Financing Institutions(民間金融機関)
RDC
Regional Development Council
RO
Reverse Osmosis(逆浸透膜)
RWSA
Rural Water and Sanitation Association(地方水道・衛生組合)
SCADA
Supervisory Control and Data Acquisition(計測データの制御及び監視)
SEED
Cebu Socio-Economic Empowerment and Development Project
Water REMIND Central Cebu Water Resources Management through Integrated Development
WD
Water District(水道区)
WHO
World Health Organization(世界保健機構)
WRC
Water Resources Center at San Carlos University
第1章 事前調査の概要
1−1
要請の背景
フィリピンでは 1990 年代に始まった急激な社会・経済発展により水需要の急激な増大と
多様化がもたらされ、その結果、水資源開発の遅れや利用者間での相互調整の必要性、非
効率な給水施設等の多くの課題が顕在化した。全国の水資源開発の課題を検討するため
1998 年に「全国水資源開発計画調査」が JICA によって実施された。右調査では、特にマニラ
首都圏、セブ市、バギオ市において水資源の不足が予測され、新たな水源開発を進めてい
く必要があることを指摘している。
セブ市はセブ州の州都であり、2000 年のセブ都市圏の人口は約 150 万人に達していると
推定されている。マニラに継ぐ経済の中心地であり、フィリピン第二の空と海上交通の国
際的な玄関口となっている。海外直接投資も活発であり、工業、観光等の発展の可能性を
有しているが、水供給が逼迫しており開発の足枷となっている。
セブ市水道公社(MCWD)はセブ都市圏(4 市、4 町 677km2)の上下水道の運営を行っており、
2000 年に日平均で約 140 千 m3 を供給している。現在の給水対象は約 80%が家庭用、15%が
商業用となっているが、2000 年で給水地域需要の約 29%に対応しているに過ぎない。MCWD
の水需要予測によれば、2020 年には総需要 442.3 千 m3(家庭用 35%、商業用/工業用 65%)が
想定されている。
水資源の開発のため MCWD はドナーや民間からの資金調達に努力しているが、1998 年 ADB
支援のマナンガ I プロジェクト(ダム建設)の完成により、水源能力が 140 千 m3/日となった
後は、民間資本によるカメルンプロジェクト(約 35 千 m3/日)が進捗中となっているだけで
あり、需要増に見合う水源開発が進んでいない。短期的には地下水開発による対応を検討
しているが、現在の地下水取水(87.1 千 m3)によっても既に塩水遡上等の水質問題が発生し
ていると報告されており、これ以上の地下水開発が懸念されている状況である。
また、上水道運営においては、施設の老朽化等の問題点が指摘されており、効率的な上
水道施設の整備と運営が課題となっている。
従って、同市の水需要バランスを改善するためには、今後水資源開発計画の推進ととも
に水管理の方策を検討し、実施していく必要がある。
また、セブ都市圏では、下水施設が民営で 700m3/日およびセブ市が 2,500m3/日を処理し
ているだけであり、MCWD の日給水量 140 千 m3/日の数パーセントにしか及ばない。このため
未処理で排出される汚水・工場排水による環境悪化が深刻化しており、セブ市の主要水源
である地下水にも悪影響を及ぼしているとされている。MCWD は、水衛生環境の改善のため
の下水処理施設の整備等を最重要課題と位置づけている。
フィリピン政府は、上記の状況を改善するために、「セブ都市圏水資源開発計画調査」と
「セブ都市圏下水道整備・環境改善計画」の 2 件の開発調査を企画し、日本政府に対してマ
スタープラン及びフィージビリティ調査の実施を要請した。
1−2
事前調査の目的
本件調査は、フィリピン政府の要請に基づき派遣されるもので、先方の要請を確認し本
1
格調査の内容を検討するために下記を目的として派遣された。
①
調査対象地域の水資源開発にかかる先方関係機関を把握し、調査実施体制のあり方
を MCWD と協議し、確認する。
②
「セブ都市圏水資源開発計画調査」と「セブ都市圏下水道整備・環境改善調査」 の調
査スコープ、調査対象地域を確認し、効率的な調査実施のあり方を検討する。
③
水資源開発における MCWD の資金調達方針とその可能性を確認し、本件開発調査の
成果の活用の考え方を聴取する。
④
上下水道施設の経営状況、及び、施設整備等にかかる資金調達を含めた経営方針を
確認し、本件開発調査実施の位置づけを確認する。
⑤
1−3
No.
セブ都市圏における水衛生環境の状況を把握し課題を整理する。
調査団の構成
団員氏名
1
横倉
順治
2
佐々原
3
岩堀
4
担当業務
所属
総括
JICA 地球環境部
水資源開発計画
独立行政法人
春雄
上下水道計画
JICA 国際総合研修所
益田
信一
調査企画
JICA 地球環境部第三グループ水資源・
防災第一チーム
5
白石
眞之
水資源開発
東電設計株式会社
6
福田
文雄
上水道施設計画
株式会社
7
大久保
下水道施設・排水計画/
環境社会配慮
オーピーシー株式会社
秀史
忠郎
2
調査役
水資源機構
国際協力専門員
ソーワコンサルタント
1−4
調査日程
月日
10/24
官団員
役務提供団員
日
セブ着
マニラ着
10/25
月
現地調査
JICA 事務所打合せ
在フィリピン日本大使館表敬
JBIC 打合せ
10/26
火
現地調査
10/27
水
10/28
木
セブ都市圏水道局、関係機関打合せ
10/29
金
セブ都市圏水道局、関係機関打合せ
10/30
土
サイト視察
10/31
日
サイト視察
11/1
月
I/A,M/M 協議
11/2
火
I/A,M/M 協議
11/3
水
11/4
木
11/5
金
NEDA、NWRB、LWUA 打合せ
セブへ移動
セブ州知事表敬
M/M 署名
マニラへ移動
JICA 事務所、在フィリピン日本大使館報告
帰国
現地調査
現地調査
11/6∼11/23 現地調査、帰国
1−5
相手国受入機関
セブ都市圏水道局(Metro Cebu Water District: MCWD)
1−6
協議概要
調査団は 2004 年 10 月 24 日∼11 月 23 日に現地調査を実施。セブ都市圏水道区(MCWD)
と協議を行い、別添1の 11 月 3 日にミニッツに署名した。主な確認事項は下記のとおり。
(1)調査名称の変更
調査団より要請された 2 案件を 1 案件にまとめて実施することを提案し了解された。
新たな案件名は、対処方針のとおり”The Master Plan and Feasibility Study for
Improvement of Water Supply and Sanitation in Metro Cebu”で合意した。
後述するとおり下水道整備については実施体制、施設整備にかかる資金確保について
問題を抱えているが、NEDA、MCWD ともに水資源開発(上水道整備)、下水道整備計画策定
の 2 件が実施されることを高く評価していることから、相応の投入と成果が期待されて
おり、本格調査 TOR 検討において配慮が必要である。
3
(2)調査実施体制の整備
1)ステアリングコミッティ
本件実施機関である MCWD はセブ都市圏(4市、4町)全域の給水事業、下水道事業
を所掌することになっている。一方、セブ都市圏として開発計画(本件においては、
水資源開発、給水事業、下水道事業)を策定、実施、調整する機能を政府機関におい
て確認することが出来なかった。
NEDA VII は、本件開発調査はセブ都市圏としての上下水道整備の M/P を策定する
ものと認識しており、MCWD もそのマンデイトとして M/P は必要と考えている。
従って、本件実施においてはセブ都市圏における自治体(4 市、4 町)の長と政府機
関(DENR(環境省)、DPWD(公共事業省)、NEDA(国家経済開発庁)、DPWH(公共事業道路
省))から成るステアリングコミッティとワーキンググループを設置する必要がある。
DENR は水資源開発において水質管理の観点から関係し、DPWH は河川管理を所掌。
水利権、水価格の承認については国家水資源委員会(NWRB)の所掌するところである。
NWRB はセブに地方事務所がないが何らかの関与が必要と思われる。なお、調査団は
マニラで NWRB を訪問し本件調査への協力を要請し了解を得ている。
2)MCWD 実施体制
① 地方給水分野
MCWD は Level II による地方給水についても財務的にフィージブルであれば
責任を持って整備を行いたいと考えている。その見極めを行う上でも M/P のス
コープとして地方給水を含めることで合意した。
MCWD 内には地方給水だけを所掌する部局はないので、公共水栓管理、水資源
開発にかかる部局それぞれから適切な職員が任命され調査することになった。
② 下水道分野
下水道整備は各地方自治体(LGU)において策定するよう求められており、
一部の市では既にその作業を始めていた。MCWD は現在下水道施設を持っておら
ず、その部局が存在しない。
上述のとおり NEDA はセブ都市圏全体を見渡す下水道整備計画を MCWD が策定
すべきと考えており、MCWD は LGU 担当部局と調整しつつ調査を実施することを
提案した。
(3)関連プロジェクトとの調整
サンカルロス大学の水資源センター(Water Resources Center:WRC)は在比オランダ大
使館の支援を得て、セントラルセブにおいて Water REMIND Project(WRP)を 5 年間(2003
年 12 月∼2007 年 11 月)実施する予定にある。同プロジェクトでは、セブ州知事を議長と
し、セブ市、DENR、MCWD 等から成るステアリングコミッティを設置し、統合的流域管理
のための合同行動計画ドラフトを今後 18 ヶ月の内に作成するとしている。
WRP についてはインセプションレポート(2004 年 4 月作成)を JICA フィリピン事務所か
ら提供されていたところ、本格調査実施においては協調関係を構築することが重要と認
4
識していた。
今回、調査団がセブ州知事を表敬した折に本件調査と WRP に重複があると指摘された。
WRP のステアリングコミッティには MCWD もメンバーとして参加しているにも関わらず
MCWD の事前の調整不足が認められた。
NEDA、MCWD との協議では、WRP は一民間研究機関の調査プロジェクトであり、政府プ
ロジェクトではないので JICA プロジェクトに重きを置きたい旨伝えられ、WRP も包含し
て行政組織のための M/P を策定するよう提案を受けた。 しかしながら、①WRP には行政
機関が参画するステアリングコミッティの枠組みがあること、②WRP は関連機関の情報提
供を得てセブ都市圏における一元的な水文データベースを構築していること、③セブ都
市圏の水資源は逼迫しており NGO 等のステークホルダーの意識が高く水問題は参加型ア
プローチが必要であること等から、関係プロジェクトとは協調関係を構築していくこと
が不可欠と調査団は考えている。
セブ滞在中に MCWD は、WRC に調整の可能性について照会し、調査団と WRC との意見交
換の場が用意された。WRC からは MCWD を通じてデータベースへのアクセスが可能である
点が確認され、JICA 開発調査とは相互に情報交換を行う旨が確認されたが、前提として
重複を避ける努力を行うことになっているので、本格調査 TOR、スケジュールの検討にお
いては十分な配慮が必要である。
事前調査の結果作成される本格調査 TOR 案を MCWD に提示し、関係者間で調整がついた
のを確認したうえで実施準備に入ることが望ましい。
(4)M/P と F/S
M/P の作成後に①緊急性、②財務的実現性、③社会環境配慮、④技術的実現性に基づい
て F/S 対象を検討する点につき合意を得た。フィリピン政府方針により MCWD の財務能力
の限りでしか資金調達ができない。
水源開発、下水道整備は限られた資金の中で実施可能なコンポーネントを探ることは
相当難しいと考えられる。M/P 策定の後に F/S 対象コンポーネントを選定するプロセスは
慎重に行う必要がある。
(5)MCWD による便宜供与
データ収集において上述の WRC のデータベースは重要な役割を果たすが、MCWD は WRP
メンバーとして自由にアクセスする権利を有しているところ、調査団への情報提供は何
ら問題がない点、WRC 同席のもと確認された。
MCWD は本部建物内に調査団用の執務室を提供することを確認した。
(6)C/P 研修
フィリピン事務所に C/P 研修の 2005 年度要請の有無の確認を依頼したもののセブ滞在
期間中に確かな情報が得られなかったため具体的な協議を行っていない。MCWD は、無収
水率向上、地下水開発、下水に関連した研修を期待している。
5
(7)本格調査実施の方向性
上述のとおり実施中の他プロジェクトとの調整の課題は若干残っており、当初予定し
ていた年度末開始はかなり難しい状況になっている。
中央政府関係機関からのヒアリングからセブ都市圏に対する中央政府による支援は多
くは期待できず、施設整備の資金調達は MCWD 独自により返済可能な範囲に留まるところ
F/S は実行可能な規模に落とし込む必要がある。下水道施設整備は現実的には難しく、水
源開発、上水道施設整備において F/S コンポーネントが検討されるであろう。
NEDA、MCWD ともに MCWD のマンデイトとしてセブ都市圏域内における水道、下水道の
M/P を策定することに期待を寄せている一方、実態として MCWD としてサービスを提供し
ている範囲は限定的である。LGU とのデマケ、現行の制度では支援の手が届かない地方水
道、あるいは下水道整備等の行政のあり方について M/P で問題提起や提言していくこと
も必要と考える。
MCWD にとってはフィリピン政府方針のもと資金回収の可能性が事業実施の重要な判断
材料となるが、そのために貧困地域への給水事業が遅々として進まない現状にある。
MCWD は活発に投資を促進しているが中長期的な水資源開発の目処は立っていない状況
であり、需要抑制策も具体的に検討していく段階に入ってきている。
開発調査では特定の開発プロジェクトの検討に留まることなく、政府の役割や需要政
策等について関係部局の参加のもとで検討を行うプロセスが必要になると考えられる。
6
第2章 現状と課題
2−1
国家開発計画及びセブ州における水資源開発、上下水道整備の位置付け
2−1−1
水資源開発の課題と中期計画
(1)水資源管理に関わる国家政策
ア)概要
フィリピンはその地理的な位置から比較的豊富な水資源を有している。年間降雨
量は全国平均で 2,500 ミリにも達する。利用可能な水供給量はおよそ 1,260 億 m3/
年と推定される。一方、主要3島などの平地に広く分布している帯水層は国全体で
50,000 平方キロに達し、包蔵地下水量は 202 億 m3/年と推定されている。
水資源の豊富さにもかかわらず、フィリピンにおける水不足は危機的な状況にあ
る。1995 年での調査では、全人口のうち 69%しか安全な飲料水にアクセスできない
状況である。その他の人々は水量および水質に問題のある水源に依存せざるを得な
い状況に置かれている。また、下水施設の整備範囲に関しては、1991 年の 74.9%か
ら 2000 年の 74.2%と整備率が低下している現状がある。
従って、貧困層を中心として、人々は日々の糧や飲み水を得るために周辺環境を
無秩序に搾取せざるを得ず、その結果として環境悪化を助長してしまうという悪循
環を発生させている。
イ)水資源管理の課題
国全体の水資源管理を効果的に進める上での課題は、開発管理の計画、実施およ
び運用、需要管理、環境汚染防止策、流域および地下水の保全といった本質的に相
互に関連する問題を解決するために、
「総合的で包括的な」アプローチを適用するこ
とが可能かどうかである。また、枯渇資源である水の価値を低く評価している水料
金政策にも問題がある。
フィリピンにおいて効果的な水資源管理を阻害している要因を以下に示す。
水関連行政組織の脆弱性
−
ばらばらな水管理体制:フィリピンの水セクターにおいて最も深刻
な問題は、水資源および関連する開発管理を実施するための適切な
行政的枠組みがないことである。現在、水供給、灌漑、水力、洪水
防御、環境保全の諸問題に対して 30 以上の政府機関が個々に対応し
ており、この「ばらばらな」対応によって作業の重複、政府機関間
の軋轢を招き、その結果、個々の水管理計画は持続性を保つ条件を
7
十分満たしていないこととなる。水法(Water Codes)の制定、NWRB
(National Water Resources Board)の設置が行なわれ、水関連機
関活動の調整が図られたにもかかわらず、総合的水資源管理(IWRM:
Integrated Water Resources Management)の目標の実現は今だ現実
から程遠い状況である。
−
水配分方式の欠如:水利用および水配分に関わる対立問題が多く発生
している。人口増加、水質汚染、インフラの不整備、渇水などが慢
性的な水不足をもたらし、限られた水供給に対する配分問題や対立
する権利争いを招いている。フィリピン水法の原則である「時間的
に早ければ優先的な権利を有する」という考え方が最早公正な解決
方法になり得ないという状況になっている。経済的見地から見て、
水配分の全ての面を包括するには現行の配分方法では不十分である。
NWRB は水利権の配分を管轄する唯一の機関であるが、現行の基本的
組織構造では効果的な水利権配分機能が発揮されていない。
−
水利用規制の脆弱性: NWRB は水利用許可申請の調査、手続きを行な
うが、人員および財政不足によって適切に行なわれているとは言い
がたい。また、水法の条項に基づく強制執行が実施されず、水利用
に関わる違反行為に対する調査は代理任命された機関の自由裁量に
されることが多い。NWRB の命令は殆どの場合無視され、NWRB の強制
執行能力はない。
−
既存計画の失効:過去に実施された水資源管理に関わる計画は個々の
機関でのみ検討され、水セクターに関わる複数の機関で共有利用お
よび検討されることが殆どない。重要な水資源管理計画は常にアッ
プデートされ、関連機関で共有化されることが必要である。
−
水の経済的価格:フィリピンにおける現行の水料金体系は水の経済価
値を考慮し、水の枯渇といった現実を反映させるものとなっていな
い。その結果、料金体系は枯渇する資源を最も生産性の高い利用者
に配分する機能を持っておらず、また効率的な水利用や水資源の保
全に対して経済的動機付けをもたらしていない。
水需給の不均衡
−
限られた水資源と空間的・季節的分布:人口集中による水需要の急増、
地形的な制約条件による表流水の利用可能性の低下、渇水による持
続的水利用の不可などが都市部で発生している。地球規模で起こる
気象変動によって発生する大渇水対策が必要になっている。また、
8
過剰な地下水利用が海水の浸透を招き、地下水汚染問題が懸念され
ている。
−
非効率的な水利用:水の枯渇と同様に、既存プロジェクトの管理運営
の非効率が懸念されている。既存水供給プロジェクトの多くは管理
運営が十分でなく、サービス効率が低く水需要を満たすために必要
な供給に支障をきたしている。
−
データの不備:水文気象および水質モニタリング施設が不十分である。
また水資源に関わるデータ・資料は個々の機関で観測・収集整理さ
れるため、一元的な情報管理体制が確立されていない。
環境悪化と水関連災害
近年レイテ島南部や北部ミンダナオで発生した土石流災害、ルソン島でダム貯水
位を低下させたエルニーニョ現象の頻繁な発生など、フィリピンにおける多くの
流域は危機的な状況になっている。マニラ首都圏、セブ都市圏などでの慢性的水
不足によって、河川、湖、貯水池などで発生している侵食および堆砂問題など人
的活動が流域にもたらす負の影響の大きさを認識することとなっている。
流域保全のために環境関連法が多く制定されている。例えば、Forestry Reform
Code 、 Water Codes 、 Provincial Water Utilities Act 、 NIPAS (the National
Integrated Protected Areas System ) Act、Water Crisis Act などがある。これ
らの法律は部分的で広範な枠組みを規定するものであり、流域管理の主要な問題
に言及するまでには至っていない。
フィリピンにおける水質は人口増加や水および土地の不適切な利用によって著し
く悪化している。一般家庭からの下水は全体の約 52%で、残りの 48%は産業排水
である。下水による水質汚染は上水、工業用水、灌漑用水の水質を著しく悪化さ
せている。
さらに、マニラ首都圏やセブ都市圏では、無差別な地下水の汲み上げによって海
水の浸透が顕著となっており、地下水の汚染・枯渇が危惧されている。
これまで述べた通り、下水処理施設の不備は明らかであり、効率的な水供給施設、
適切な下水処理施設によって環境や公共衛生、地域経済、住民の生活の向上を図
る必要がある。
河川流域機構の設立と強化の必要性
9
河川流域を1単位として水資源を管理することは、総合的水資源管理を実施する
上で好ましい。フィリピンでは早い時期から流域開発局を設立して、地域および
流域開発計画を実施することに努力してきた。
マルコス大統領当時設立された開発局としては、
−
Bicol River Basin Development Authority(既に廃止)
−
Leyte Sub-a Basin Development Authority
があり、ラグーナ湖流域開発を管轄する Laguna Lake Development Authority も
同様の趣旨によって設立されている。
セ ブ 都 市 圏 に お い て は 、 マ ナ ン ガ 川 流 域 を 対 象 と し た Mananga Watershed
Development Authority (MWDA)が 1989 年に設立されたが、数年で廃止になってい
る。開発可能な案件の選定に関わる意見の相違から関係者間で対立があり、廃止
に至ったとのこと。
いくつかの流域開発局は、次の理由によって廃止されるケースが多い。
−
財政支援の不足
−
訓練された要員の欠如
−
職権・権力を行使できる政治的意欲の無さ
−
与えられた権限の実行力の無さ
−
既存政府機関の優先的プロジェクト実施
近年、水資源問題の深刻化が顕著となり、フィリピン政府は河川流域ごとの総合
的水資源管理体制を再び推進する方針である。一例としては、ビコール川を対象と
した Bicol River Basin Watershed and Management Project (BRBWMP) Committee
の設立が 2004 年 11 月下旬に政府決定されている。
ウ)効果的な水資源管理に向けて
2004 年 3 月 22 日には、マニラで National Water Forum が開催された。総合的水
資源管理の枠組みを速やかに確立し、同時に実施していくことが宣言されている。
流域一体のアプローチ、供給の最適化、需要の管理、公正な水へのアクセス、行政
組織・法制度の改善、セクター間の協調実施などが盛り込まれた。
また、同日、Philippine Clean Water Act が施行され、包括的な水管理プログラ
ムにより水資源に関わる保全が推進されようとしている。
(2)JICA セブ州地域総合開発計画(1994)
1994 年 7 月、JICA が行なった「Cebu Master Plan 2010: A Scenario for Sustainable
Development 」 最 終 報 告 書 が 提 出 さ れ 、 カ ウ ン タ ー パ ー ト 機 関 で あ る 「 Regional
10
Development Council (RDC) Region VII」によって将来開発計画として是認された。
セブ都市圏の水資源および水供給に関しては以下のように提言している。
セブ都市圏における水不足の危機的状況を改善することを最優先とする。計画中(当
時)の Mananga I および II(総水生産量:12 万 8 千 m3/日)が計画どおり完成したとし
ても 2000 年以降の水需要を満たすことは不可能であり、2010 年で 40 万 m3/日の水需要
を満足するため、以下に示す3つの代替案を検討すべきであるとした。
−
Lusaran Dam 開発計画(供給量:16 万 m 3/日)
−
対岸のボホール島 Inabanga 流域からの導水計画(33 万 m 3/日)
−
半径 40 キロ以内の流域の小中規模ダム開発
また、MCWD の漏水率が 40%(当時)であることから、水道栓のリハビリが急務である
と提言している。
現在、地域開発委員会 RDC Region VII にて承認されている水関連の調査および計画案
件は以下の通り。
−
Mactan Drainage and Sewerage Project(ラプラプ市では都市排水計画
が策定されている。)
−
Water Desalinization Project(2005 年 JBIC 国際金融 FS 実施予定され
ている。)
−
Cebu Water Resources Study(2002 年日本政府に支援要請された。)
−
Lusaran Dam Project(FS 後、高い建設コスト、移転・環境問題など懸念
材料があり、具体的な進展はない。)
−
Metro Cebu Sewerage and Sanitation Project(2002 年日本政府に支援
要請された。
)
(3)JICA フィリピン全国総合水資源開発計画(1998)
本開発計画は対象地域としてセブ都市圏の水資源開発計画を含み、水文気象データの
整理およびデータベース構築、気象水文解析、既存計画のレビュー、将来水需要予測、
水収支、優先プロジェクトの選定および概算建設コスト算定、2025 年までの長期水供給
プロジェクト投入計画を実施している。
カウンターパート機関は NWRB である。
既存計画のレビューのみであり、本調査による新規水源開発計画は検討されていない。
(4)MCWD の将来水供給計画
2020 年までの将来水供給計画が MCWD によって 2002 年時点に策定されている。新規水
11
源開発は以下の表の通り。
プロジェクト名
供給量(m3/日)
投入年
3,400
2003
6,800
2003
6,800
2003
35,700
2006
36,300
2007
38,600
2011
MCWD 新規井戸開発
井戸本数:7 箇所
南部水供給計画
タリサイ市西部の Minglanilla 町
BOO 方式
Compostela 地下水
最高裁にて MCWD への供給が停止されてい
る。
Carmen 導水計画
BOO 方式による民間開発案件
ICC、ECC 承認済み。2004 年 12 月に公聴
会が開催予定。
Mananga II ダム計画
環境保全、移転住民、建設コストなどの
問題があり、計画投入は難しい状況であ
る。
海水淡水化プロジェクト
具体的な開発計画は示されていない。
JBIC による FS が 2005 年 2 月に実施され
る予定。
現状では、Carmen 導水計画が実施に向けて進行しているが、MCWD の水料金値上げ(3
年間で 45%)が予定されており、セブ市など料金値上げに対する反対も根強く、2006 年
の計画実施は難しい状況にある。
2−1−2
水・衛生環境の課題と中期計画
(1)水・環境衛生の課題とフィリピン政府の取り組み
フィリピン政府は、1987 年に「全国上下水道・衛生基本計画 1988 年−2000 年」を策
定し、全国の水道普及率を 63%から 94%へと向上させることをめざして事業を進めてきた。
しかしながら、2000 年 12 月時点における全国の水道普及率は 72.3%に留まったため、フ
ィリピン政府は「フィリピン中期開発計画 2001 年−2004 年」を策定し、全国の水道普及
率を 90%にすべく新たな目標を掲げて取り組んでいる。
一方、フィリピン国における水道政策は 1991 年の地方自治法(Local Government Code)
を受けて、水道事業の展開においても地方分権化が進められている。また、「水」を経済
的ツールとして捉え、水道事業はフル・コスト・リカバリーを基本方針として、1990 年
に Built-Operate-Transfer(BOT)を積極的に導入するための法律が制定され、電力、交
12
通とともに水道事業にも高い優先度が置かれている。フィリピン政府は、1997 年の MWSS
分割民営化をはじめとして、大規模水道区(WD)の民営化、クラス 1∼2 に属する地方自
治体(LGUs)の運営する水道事業の民営化等、民間企業を活用した水道事業の展開を志
向している。
(2)水・環境衛生セクターの中期開発計画
「フィリピン中期開発計画 2001 年−2004 年」 における上水道セクターの開発目標を表
2.1.1 に示す。2004 年の地方都市部 WDs の目標水道普及率は 50.4%、無収水率は 27%とな
っている。
表 2.1.1
1. マニラ首都圏
1) MWSS 給水区域
a) MWSI
b) MWCI
2) 民間
2. 地方都市部
1) WDs/LWUA
2) LGUs
3) 民間
3. 地方部
1) LGUs/DILG/DPWH/民間,
RWASs/LWUA によるレベル
I III 給水システム
合 計
上水道セクターの開発目標
人口
(百万人)
16.0
9.6
6.4
22.5
44.3
44.3
2001 年−2004 年(目標値)
給水目標人 目標水道普
口(百万人) 及率(%)
14.7
14.4
90.0%
8.4
87.8%
6.0
93.3%
0.3
20.3
89.6%
11.4
50.4
7.8
34.5%
1.1
4.7%
40.0
90.4
40.0
90.4
82.8
74.9
無収水率
(%)
27%
50%
50%
90.0%
出典:The Medium-Term Development Plan 2001-2004
(3)セブ州の水・衛生環境セクターの開発目標
セブ州の水・衛生環境セクターの具体的な開発目標は、GTZ の支援によって策定された
「Provincial Water Supply, Sewerage and Sanitation Sector Plan (2003 年 12 月)」
の中で、表 2.1.2 のように設定されている。
13
表 2.1.2
人口に対す
る達成率
(%)
49
34
達成率
(世帯比%)
Phase I
(2005 年∼2009 年)
人口に対す
追加達成
る達成率
人口
(%)
89
952,975
90
1,048,197
達成率
追加達成
(世帯比%)
世帯数
Phase II
(2010 年∼2016 年)
人口に対す
追加達成
る達成率
人口
(%)
95
940,626
93
357,145
達成率
追加達成
(世帯比%)
世帯数
42
2
98
0
57
1
99
0
達成率(%)
94
30
70
0
94
10
90
0
達成率(%)
98
35
65
0
98
15
85
0
達成率(%)
28
達成率(%)
50
達成率(%)
100
100
現状
上水道
都市水道
村落給水
下水・衛生環境
トイレ施設
都市家庭トイレ
・水洗
・手桶水洗
・乾燥型
村落家庭トイレ
・水洗
・手桶水洗
・乾燥型
学校トイレ
公共トイレ
セブ州の水・衛生環境セクターの開発目標
固形廃棄物
(%)
0
都市世帯数
に対するサ
ービス率(%)
28
追加達成公立
学校生徒数
172,101
追加達成公共
トイレ施設数
156
都市人口に対
する普及率
下水道
232,045
105,764
126,281
0
166,012
30,453
132,678
2,881
−
サービス率
(%)
70
サービスが
追加される
世帯数
229,317
186,746
70,731
116,015
0
160,668
20,863
139,805
0
追加達成公立
学校生徒数
75
達成率(%)
274,903
追加達成公共
トイレ施設数
都市人口に対
する普及率
100
0
下水道普及
都市人口
(%)
50
1,076,497
−
出典:Provincial Water Supply, Sewerage and Sanitation Sector Plan (2003 年 12 月)
14
2-2 関連法制度と関連機関
2-2-1 水資源開発関連
(1)関連機関
フィリピンにおける水資源開発に関わる政府機関は 30 以上あり、それら機関と関連は
以下に示す通りである。
水関連政府機関の関係図
大統領府
NWRB
LWUA
NEDA
Infrastructure Staff
DPWH
DA
DENR
DOE
DOH
DILG
MWSS
BSWM
FMB
NPC
EHS
LGUs
BRS
BFAR
EMB
OEA
BRL
PMO-WSSP
PMO-RWS
NIA
LLDA
NEA
DND
DOT
PMO-MFCP
NAMRIA
PMO-SWIM
MGB
DOTC
PPA
DOST
PAGASA
DTI
BOI
PCAFNRRD
OCD
PAF
15
PTA
各関連機関の正式英語名称は以下の通り。
BFAR
Bureau of Fisheries and Aquatic Resources
BRL
Bureau of Research and Laboratories
BSWM
Bureau of Soil and Water Management
DA
Department of Agriculture
DENR
Department of Environment and Natural Resources
DILG
Department of Interior and Local Government
DILG-PMO-WSSP
DIGL-Project Management Office-Water Supply and
Sanitation Project
DND
Department of National Defense
DOE
Department of Energy
DOH
Department of Health
DPWH
Department of Public Works and Highways
DPWH-PMO-MFCP
DPWH-Project Management Office-Major Flood Control
Project
DPWH-PMO-RWS
DPWH-Project Management Office-Rural Water
Supply
DPWH-PMO-SWIM
DPWH-Project Management Office-Small Water
Impounding Management
DOST
Department of Science and Technology
DOT
Department of Transportation
DOTC
Department of Transportation and Communication
DTI
Department of Trade and Industry
EHS
Environmental Health Sciences
EMB
Environmental Management Bureau
FMB
Forest Management Bureau
LGUs
Local Government Units
LLDA
Laguna Lake Development Authority
LWUA
Local Water Utilities Administration
MGB
Mines and Geosciences Bureau
MWSS
Metropolitan Waterworks and Sewerage System
NAMRIA
National Mapping and Resource Information Authority
NEA
National Electrification Administration
NEDA
National Economic and Development Authority
NIA
National Irrigation Administration
NPC
National Power Corporation
NWRB
National Water Resources Board
OCD
Office of Civil Defense
16
PAF
Philippine Air Force
PAGASA
Philippine
Atmospheric,
Geophysical
and
Astronomical Services Administration
PCAFNRRD
Philippine
Natural
Council
Resources
for
and
Agriculture
Resource
Forestry,
Research
and
Development
PPA
Philippine Ports Authority
PTA
Philippine Tourism Authority
ア)NWRB(国家水利庁)
NWRB は全ての水資源管理および開発活動を調整および規制する官庁として 1974 年
設立された。水利用および水配分に関わる政策の策定、水供給および水利権の規制
と監督、水料金の規制・合理化などを主な職務とする。
NWRB の目的は、フィリピンにおける全ての水資源開発を科学的かつ秩序立って達
成することであり、最適水利用の原則、現在および将来の水需要を満たすための保
護・保全に務めるとしている。
NWRB 理事会は水資源に直接的な権利を有しない各政府機関から構成されている。
NENR、NEDA、DOJ、DOF、DOH、UP-NHRC(フィリピン大学水理研究センター)
、NWRB が
理事会のメンバーであり、委員長は DENR 長官が務めている。
NWRB の組織は以下の示す通りであり、4 つの Division と 20 の Section から成る。
17
Board
Executive Director
Deputy Executive Director
Policy
Water
Water
Monitoring
Administrative
and
Rights
Utilities
and
and
Program
Division
Division
Enforcement
Financial
Division
Division
Division
Policy
Permit
Registration
Operation
General
Formulation
Section
and
and
Services
Licensing
Monitoring
Section
Section
Section
Section
Program
Evaluation
Water
Water
Personnel
Evaluation and
Section
Rates
Meter
and
Coordination
Evaluation
Calibration
Records
Section
Section
Section
Section
Water
Complaints
Litigation
Enforcement
Budget
Resources
and
and
Section
and
Assessment
Investigation
Adjudication
Accounting
Section
Section
Section
Section
Water
Litigation
System
Evaluation
Collection
Resources
and
and
Section
and
Information
Adjudication
Accounts
Imbursement
Section
Section
Section
Section
18
イ)LWUA(地方水道庁)
地方都市の水道整備を促すべく 1973 年に設立された政府機関である。各水道局へ
の資金、技術援助を担当とする。
各水道局の設立、運営は 1973 年の Provincial Water District Act により規定さ
れており、この法律は Local Water District Law と Local Water Administration Law
の二本立てとなっている。地方都市の水道整備は水道局の設立をもって行い、その
ためには LWUA の機能を強化する意図が見られる。
なお、2004 年 11 月下旬の政府発表によれば、LWUA は DPWH に移管されるとのこと
である。
ウ)NEDA(国家経済開発庁)
NEDA は 1972 年に創設され、政府の最高経済計画機関として持続的開発計画の調整
と政策を統括する機関である。
NEDA の組織は大統領を議長として主要閣僚が理事を務める NEDA 理事会を最高機関
として、開発予算調整委員会、投資調整委員会、社会開発委員会、インフラストラ
クチャー委員会の 5 つの委員会(それぞれの主管大臣が委員長)から構成されてい
る。
水道行政に関わる政策は基本的には NEDA にて決定され、各 BOT プロジェクトの実
施にあたっては NEDA-ICC(Investment Coordination Committee:投資調整委員会)
の承認が必要である。また、ODA プロジェクトも NEDA-ICC の承認を得て援助政府へ
の要請が行なわれる。
エ)DPWH(公共事業道路省)
インフラ建設を管轄する官庁として、水関係では洪水対策、排水インフラ整備を
直接担当する。上下水道事業は現在直接管轄していないが、同省長官は LWUA および
MWSS の理事会の委員長を務めている。
オ)DENR(環境資源省)
環境、天然資源の保護、開発を規制する官庁。
カ)NIA(国家灌漑庁)
農業用水の開発、供給のための責任官庁。
(2)関連法制度
フィリピンにおける水資源および環境に関わる主要な法律、政策、規制を下記にまと
める。
19
1
Republic Act No.4850, July 18, 1966 creating the Laguna Lake Development Authority
as amended by Executive Order No. 927 on December 16, 1983
2
Environmental Policy, Presidential Decree No. 1151 and Environmental Code P.D. 1152
issued on June 6, 1977
3
P.D. 1067 issued December 31, 1976, The Water Code of the Philippines: Use and
Management of Water
4
Local Water Utility Agency, P.D. 198 issued May 25, 1973
5
Forestry Code: Revised Forestry Code, P.D. No. 705 issued May 19, 1975. Subsequently
amended till finally made Republic Act No. 1761, approved October 10, 1999
6
DENR Reorganization Act, Executive Order No. 192 approved June 1987
7
Subsequent DENR Department Administration Order (DAO)
8
No. 34 – 90 Water Classification
9
No. 35 – 90 Effective Regulations
10
The National Water Crisis Act, Republic Act No. 8041, approved June 1995
11
Rainfall Collection and Spring Protection, Republic Act No. 6716, March 17, 1989
(Barangay Waterworks and Sanitation Association)
12
Irrigation, Republic Act No. 6978, NIA Program, January 1991
13
National Integrated Protected Areas System, Republic Act No. 7586, June 1, 1992, DAO
25, S 1992
14
Environmental Related Provisions of the Local Government Code, Republic Act No. 7160,
approved October 10, 1991
15
Environmental Functions Devolved to Local Governments, DENR DAO No. 30 – 92, effective
June 30, 1992
フィリピンにおける水資源関連法については JICA マニラ事務所にて下記報告書が入手
できる(本事前調査では未入手)。
-
Water Resources Laws in the Philippines: Kanezo Takeuchi (et
al.) Manila JICA, NIA (2002.7)
-
Philippines Water Code and the Implementing Rules and
Regulations: NWRB, 1991
また、フィリピンにおける水資源及び環境に関わる法律に関しては下記ウェブサイト
にて内容を確認できる。
http://www.chanrobles.com/legal9.htm
20
2-2-2 上水道関連
(1)関連法制度
上水道関連の法制度は、1990 年代に入って中央集権型の整備手法から、地方分権化、
民間セクターの参入へと政策転換がなされてきており、年代順に以下のような流れとな
っている。
1)1973 年:Provincial Water Utilities Act of 1973 (as amended)
人口 2 万人以下の地方都市に「水道区」
(Water District: WD)を設立し、その WD
に対し上下水道事業全般(財政、技術、組織的側面)に係る支援を行う組織として
地方水道庁(Local Water Utilities Administration: LWUA)を設立。人口 2 万人
以 下 の 地 方 都 市 に は 「 地 方 水 道 ・ 衛 生 組 合 」( Rural Water and Sanitation
Association: RWSA)を設立し、この組合を支援するため地方水道開発公社(Rural
Waterworks Development Corporation: RWDC)を設立。その後 1987 年に RWDC は廃
止され、LWUA が RWSA を管轄することとなる。
2)1991 年:Local Government Act(地方自治法)
これまで地方部におけるレベル I の給水施設の建設は公共事業道路省
(Department
of Public Works and Highways: DPWH)が担当し、内務自治省(Department of Interior
and Local Government: DILG)が建設された施設を運転・維持管理するための「村
落給水・衛生組合」(Barangay Water and Sanitation Association: BWSA)の形成
を支援していたが、地方自治法の制定を受け水道事業の展開においても地方分権化
が進められることとなる。
3)1994 年:NEDA Board Resolution No.4
国家経済開発庁(National Economic Development Authority: NEDA)の理事会決
議により、地方自治体(Local Government Units: LGUs)が実施責任主体となって、
レベル I~III の水道事業を実施することが可能となった。DILG は LGUs が実施する水
道事業について水道施設を運営する住民組織(RWSAs 及び BWSAs)の形成に係る支援
を行う。DPWH は、DILG 及び保健省(Department of Health: DOH)とともに水道施
設の計画、実施、運転管理について概ね 2 年間の技術支援を行う。
4)1996 年:NEDA Board Resolution No.6
中央政府の LGUs 支援に関する決議で、DILG は Leading National Government Agency
として社会基盤整備事業の発掘、形成及び関係政府機関と必要な調整業務を行い、
LGUs による社会基盤整備事業の実施に際しては、DILG は組織関連事項及び必要に応
じて資金を確保する責任を有し、DPWH 等の他省庁は技術関連事項の移転に責任を有
する。
5)2004 年:Executive Order No.279 by the President of the Philippines
Instituting Reforms in the Financing Policies for the Water Supply and
Sewerage
Sector
and
Water
Service
Providers
and
Providing
for
the
Rationalization of LWUA's Organizational Structure and Operations in Support
Thereof
上下水道セクターにおける融資政策及び LWUA の役割、組織の再編を中心としたセ
21
ターリフォームに係る大統領令。内容詳細は「(2)セクターリフォームの概要」参
照。
(2)セクターリフォームの概要
財務省(Department of Finance: DOF)は世銀の支援を受けて、2002 年 9 月から 2003
年 6 月にわたり、水道セクターにおける融資政策及び LWUA の役割、組織の再編について
調査を実施し、セクターリフォームに係る提言を行い、ほぼこの提言に従って 2004 年 2
月に大統領令が公布されている。DOF の提言は、フィリピン政府の財政事情が苦しく、水
道セクターに投資できる資金が非常に限られている現状において、政府系金融機関
(GIFs)や民間金融機関(PFIs)からより多くの資金を呼び込むことが可能となる環境
を作り、かつ、これら資金をより多くの水道事業体に配分し、効率的・効果的に活用す
ることを目的としている。水道セクターの融資政策ならびに LWUA の組織再編に関する概
要は以下のとおり。
【融資政策に係る再編内容】
都市・村落を問わず全ての水道事業体(WDs 及び LGUs)を財務・運営状況に重きを置
いて、貸し付け信用度の高い順に以下の4つのクラスに分類する。水道事業体のクラス
分けに関する評価の見直しは 3 年に 1 度行う。
① Creditworthy Water Service Provider (CWSP)
② Semi-Creditworthy Water Service Provider (SCWSP)
③ Pre-Creditworthy Water Service Provider (PCWSP)
④ Non-Creditworthy water Service Provider (NCWSP)
それぞれにクラス分けされた各水道事業体への融資ならびに責任管轄については、表
2.2.1 のようになっている。また、水道事業体(WDs と LGUs)の吸収・合併の促進を謳っ
ている。
表 2.2.1 クラス分けされた各水道事業体への融資ならびに責任管轄
水道事
業体
WDs,
新分類
融資・責任管轄
① CWSP
• 政府系金融機関 (GFIs) が CWSP に対して融資を可能とする
(新規商品の開発)。
• LWUA から融資を受けている WDs の中で Creditworthy WDs は、
GFIs/PFIs からの借り入れを可能とする。但し、LWUA への返済
を第一優先とする。
② SCWSP
• 短期的計画:LWUA 内に組織される Water Development Bank
(WDB) から SCWSP (WDs 及び LGUs)と PCWSP (WDs 及び LGUs)に融
資する。但し、当面は WDs のみとする。
• ODA 基金や政府の財政支援は、LWUA (WDF) をとおして SCWSP
及び PCWSP に貸し付ける。PCWSP に対しては緩い貸し付け条件を
適用する。
RWSAs 及
び LGUs
③ PCWSP
• 長期的計画:LWUA の融資機能(WDF)を GFIs へ移管する。
22
• NCWSP 及び Rural Waterworks & Sanitation Association
(RWSAs)を LGUs の責任管轄として、DILG が中央政府レベルの監
督官庁とする。
④ NCWSP
【LWUA の組織に係る再編内容】
LWUA の組織に係る再編内容を表 2.2.2 に示す。短期的計画として、LWUA を現在の DPWH
の attached agency から DOF の attached agency とする。LWUA を機能別に以下の3つの
グループに再編する。DOF の提言では、LWUA の WDs への融資資金を回収し LWUA の借り入
れ資金の返済機能を有する、Special Purpose Entity (SPE)が4番目のグループとして
入っていたが、大統領令には盛り込まれなかった。
表 2.2.2
LWUA の組織に係る再編内容
再編グループ
業 務 内 容
① Water Development Group
(WDG)
*LWUA 内に組織する。
• SCWSP と PCWSP の上位クラスへのステップ・アップを主導す
ることを責務とし、PCWSP に対してはプロジェクトの実施と関
係なく、必要な技術支援を行う。
• PCWSP に対する技術支援は無償。SCWSP に対する技術支援は
ケース・バイ・ケース。
• 既存の LWUA はこれら業務を遂行する経験や能力を有してい
るが、今後は、業務の達成率と責任に焦点をあて、WDG のパフ
ォーマンスについては、DOF がモニタリングし評価する。
② Technical Assistance
Group (TAG)
*LWUA 内に組織する。
• 今までの LWUA の機能を継承し、プロジェクトの実施を通し
て技術的支援を提供する。
• 但し、顧客と料金が異なる。CWSP、SCWSP 及び GFIs/PFIs が
顧客となり、民間企業等との競争入札の結果によりサービスの
提供を行う。
③ Water Development
Financier (WDF)
*短期的には LWUA 内に組織
する。*長期的には
Municipal Development
Fund Offcie (MDFO) ともに
GFIs に移管する。
• SCWSP と PCWSP を対象に融資を行う。
• また、SCWSP と PCWSP が GFIs ならびに PFIs から融資を受け
る際に必要となる保証を提供(有料)することも可能。
• WDB はローンの支払い状況やパフォーマンスだけでなく、水
道事業体の等級上げの状況やプロジェクトの実施状況により
厳しく評価され、これに基づいて資金の融資を受けることが可
能となる。
④ Special Purpose Entity
(SPE)
*短期的には LWUA 内に組織
する。*長期的には独立組織
として外部から LWUA を管
理する。
• LWUA の WDs への融資資金を回収し、LWUA の借り入れ資金の
返済機能を有する。
(3)関係機関
セブ都市圏(4 市・4 町)における上水道事業に関する関係機関として、セブ都市圏水
道区(MCWD: Metropolitan Cebu Water District)と LGUs がある。Provincial Water
23
年末の職員数は 604 人である。セブ市中心部の MCWD 本部の他に、セブ市 Talamban に水
質試験室とワークショップがあり、ポンプや水道メーター等の補修・維持管理を行って
いる。
水道料金値上げの承認権限はかつて LWUA にあったのが、現在は規程が変わって国家水
資源評議委員会(National Water Resources Board: NWRB)に移っている。値上げのプ
ロセスは地元で公聴会(Public hearing)を行い、特に強い反対がない限り、水道料金
値上げの申請を NWRB に行って承認を得ることになっている。セブ市及びセブ州政府は公
聴会の参加者という位置付けとなっている。
MCWD の事業内容は、本報告書2-3-4「セブ都市圏における上水道の現状」ならび
に2-4-2「上水道施設」に記載のとおり。
セブ市
セブ市の水道事業は、セブ市公共サービス部(Department of Public Services: DPS)
が行っている。DPS の組織図を図 2.2.2 に示す。DPS は 2 つの維持管理チーム(レベル I・
レベル II プロジュエクト)、ならびに 2 つの井戸掘削チームと 1 つの給水車チームで構
成されている。正規の職員は 27 名で、不定期な契約職員が 13 名となっている。2003 年
の実績では、9 本の井戸の再掘削と延べ 872 本の井戸の補修をしている。
DPS が管理している給水施設として、レベル I が 1,250 箇所、レベル II が 117 箇所、
レベル III が6箇所(工業地区)となっている。表 2.2.3 に 2004 年の DPS の予算を示す。
水道事業(Artesian Wells Services)には 517 万ペソ(約 1030 万円)が配分されてい
る。
図 2.2.2 セブ市 DPS の組織図
25
表 2.2.3 セブ市 DPS の 2004 年度予算
3,900,694
13,830,294
5,892,063
Maintenance and
other operating
expenses
155,539
11,474,661
42,163,200
3,834,641
4,624,700
991,640
33,074,032
5,000,000
547,000
3,582,176
62,922,576
Personal
services
Administrative
Environmental sanitation
Garbage collection/
transport operation
Street lighting services
Artesian wells services
Parks & playgrounds
Total budget
単位:ペソ
Total budget
4,056,233
25,304,955
48,055,263
8,834,641
5,171,700
4,573,816
95,996,608
その他の市・町
セブ市以外の3市(マンダウエ、ラプラプ、タリサイ)4町(コンソラシオン、リロ
アン、コンポステラ、コルドバ)の水道事業は、各市町の Planning & Development Office
が計画の立案を行い、Engineering Office が建設、補修管理を行っている。
一方、その他にも多数のプライベートの井戸があるが、実際使用されている井戸の数
は判明していない。Water REMIND Project が現在データベースの構築に取り組んでいる。
2-2-3 下水道関連
(1)関連法制度
フィリピン国における下水道に関連する法令は大統領令で公布される。法令の内容は
国民にとり健康上有害な物質を定義し、かつそれらからの国民の健康養護、環境保全及
び汚染防止、ならびに行政上の措置を理念として述べ、具体的な基準値等は年次を追っ
て制定されている。ちなみに日本における下水道法と比較してみる。日本における下水
道関連法案は概略以下のように表される。
1)日本の下水道法
・ 下水道法(昭和 33 年制定)
下水道法施工令を運用する際の規則を定めている。
・ 下水道法施工令(昭和 34 年制定)
計画下水量の算定基準、処理水水質、放流河川の水質基準等を定める。
・ 下水道法施工令規則(昭和 42 年制定)
上記施工令を補足するものであり、事業者が計画を申請する際の書類等を記述
している。
・ 水質汚濁にかかる環境基準(以下水質環境基準という)
公害対策基本法第9条に基づき昭和 45 年に制定された。
以下に河川(湖沼を除く)のための「生活環境の保全に関する環境基準」を示す。
26
項目
利用目的の
適応性
類型
水道1級
自然環境保全
及び A 以下の
欄に掲げるも
の
水道2級
水産1級
水浴及び B 以
下の欄にかか
げるもの
水道3級
水産2級
及び C 以下の
欄に掲げるも
の
水産3級
工業用水1級
及び D 以下の
欄に掲げるも
の
工業用水2
級、農業用水
及び E の欄に
掲げるもの
工業用水3級
環境保全
AA
A
B
C
D
E
基準値
浮遊物質
量(SS)
溶存酸素量
(DO)
25ppm
7.5ppm
水素イオン
濃度(PH)
生物化学
的酸素要
求量(BOD)
6.5 以上
8.5 以下
1ppm
6.5 以上
8.5 以下
2ppm
6.5 以上
8.5 以下
3ppm
6.5 以上
8.5 以下
5ppm
6.0 以上
8.5 以下
8ppm
以下
以下
以上
6.0 以上
8.5 以下
10ppm
以下
ゴミ等の
浮遊が認
められな
いこと
2ppm
以上
以下
以下
25ppm
以下
以下
25ppm
以下
7.5ppm
以上
5ppm
以下
50ppm
以下
出典:水質汚濁にかかる環境基準:水質環境基準
以上
以上
2ppm
以下
100ppm
大腸菌
群数
50MPN/100
m
以下
1000MPN/1
00m
以下
5000MPN/1
00m
以下
_
以上
2ppm
_
_
昭和 45 年制定公害対策基本法第 9 条
これらをフィリピン国の排水基準等と比べると、制定年度も古く、運用面の改定
も頻繁に行われ、また基準値ははるかに厳しいことが判明する。
以下にフィリピン国の下水道関連の法律を年代順に記す。
2)フィリピン国の関連法制度
・
President Decree No.1151
1977 年制定
汚染規制法。
1977 年のマルコス大統領政権の時に公布された汚染規正法として知られている。
フィリピン国の下水道関連の法制度はこの大統領令 1151 号をもって開始された
と考えても良いであろう。この法律は廃棄物、下水、排水処理などの定義を述
27
べ、さらに罰則等にも言及している。
・ President Decree No.1152 1977 年制定
フィリピン国環境規定。空気、騒音、水質、森林の保護等を概念的に定めてい
る。
言葉の定義、災害時の対策、委員会の設置等について詳細に述べている。
・ DENR Administrative Order No.34 1990 年制定
Revised water usage and classification / water quality criteria amending
section No.68 and 69, Chapter III of the 1978 NPCC Rules and regulations.
・ DENR Administrative Order No.35 1990 年改定
Revised effluent regulations of 1990, Revising and amending the effluent
regulations of 1982.
No.34 では、飲料水及び廃水(家庭、工場を含む)の水質基準を規定したもので、1990
年にシリーズとして発行された行政令の一つである。上・下水とも基準は溶存酸素、
pH、BOD、有機物質と重金属などについて詳細な規定がされている。
No.35 は、上記 34 号の改訂版として公布された。大統領令 1151 号を受け継ぎ、DENR
は排出基準の改訂を実施した。これは「排出基準改訂 1990 年版」で、産業排水、家
庭排水全般に亘る排水基準として適用される。又、No.35 では用語の定義について更
に技術的に規定しており、
34 号で使用用途に応じて分類された河川
(CLASS AA~CLASS
BB)での BOD、DO、 COD、重金属の基準値を定めている。例えば CLASS AA での放流
水面の規定 BOD は 20ppm であるが、これを日本の江戸川の放流水面 2~4ppm に比較
するとその差は明確である。但し、処理場からの放流水質は放流水量と関係し、放
流される河川の水量が豊富、かつ低濃度である場合は放流水は希釈されるため、河
川全体としては受ける影響が小さくなる。
・ President Decree No.1586 1978 年制定
環境影響評価システム(EIS)を明確に定めている。フィリピン国の環境審査手
続きは申請するプロジェクトが ECPs(Environmentally Critical Projects:
ECPs 環 境 に 重 大 な 影 響 を 及 ぼ す ) と み な さ れ る プ ロ ジ ェ ク ト か 、 ECA s
(Environmentally Critical Areas: ECAs 環境的に配慮を必要とする地域)に
該当するかの判断が最初に行われる。いずれにも該当しないプロジェクトの場
合は環境審査免除証明が与えられるが、いずれかに該当する場合に必要とされ
る事前環境影響評価やその報告書の提出義務、更に審査の結果、環境応諾証明
書を得て初めてプロジェクトの開始に至る手続き等が詳細に説明されている。
・ President Proclamation No.2146
環境的に脆弱な場所及び環境に及ぼす影響が大きいと判断されるプロジェクト
の定義を行っている。
3)下水道関連機関
国家経済開発庁(NEDA)、環境・天然資源省(DEVR)、公共事業・道路省(DPWH)、
地方水道施設局(LWUA)
、セブ都市圏水道局(MCWD)
MCWD は下水道を担当する部門があるが脆弱であり、実際にはセブ都市圏の各市町
28
(セブ、タリサイ、マンダウエ、ラプラプ市、コンソラシオン、リロアン、コンポ
ステラ、コルドバ町)の役所が担当している。
29
2−3
対象地域・流域の概要
2−3−1
セブ都市圏の社会・経済
(1)概要
セブ島はフィリピンで最も人口密度が高く、総人口はおよそ 350 万人である。セブ都
市圏地域はマニラに次ぐフィリピン第 2 の都市圏であり、フィリピン中南部における経
済、貿易、教育などの中心としての役割を果たしてきている。
セブ島に位置するセブ市はセブ都市圏のみならず、中央ビサヤ地域(Central Visayas
Region)の中心である。マクタン島は国際空港を有し、セブ都市圏へのゲートウェイと
してその重要性が高まっており、島内にある大規模工業団地には多くの日系企業が存在
し、経済活動の拠点となっている。
2000 年におけるセブ都市圏の人口はおよそ 170 万人であり、中央ビサヤ地域の 3 分の
1 の人口を占めている。セブ市はセブ都市圏のおよそ 50%を占める。
セブ都市圏における主要な社会問題は、人口増加に伴う社会基盤整備の遅れ、特に電
力および水の供給不足が近年顕著化している。また、上下排水施設の整備が遅れている
ため都市環境の悪化も進行している。
セブ都市圏は下記に示す4つの市と4つの町から構成されており、それぞれの市町に
おいて地方自治法に基づく行政が行なわれている。4市は州から独立した行政を行う大
都市(人口 15 万以上、平均年間歳入 3 千万ペソ)に分類されている。4町は州の指導を
受ける下部組織とされる。地方自治法によれば、州の下部組織にある市町の歳入は州の
財政に一旦組み込まれた上で再配分されると規定している。
市町名
行政区分
セブ
City 1
マンダウエ
City 1
ラプラプ
City 1
タリサイ
City 1
コンソラシオン
Municipality 3
コルドバ
Municipality 5
リロアン
Municipality 4
コンポステラ
Municipality 5
(2)セブ都市圏各市町の概要
30
セブ都市圏の各市町の位置は下記図に示す通りである。
各市町の概要については、以下の表に示す通り。
31
市町名
セブ市
マンダウエ市
ラプラプ市
位置・産業など
セブ州東部沿岸に沿って
位置しており、北部ではマ
ンダウエ市、コンソラシオ
ン町、リロアン町、コンポ
ステラ町と境界を接し、南
部ではタリサイ市と接し
ている。
セブ州の首都として経済
活動のハブであり、貿易お
よび商業の中心地である。
地形・地質・土地利用
地形的には、市の中央部に広
範に山岳地が広がっており、
急勾配斜面が多い。沿岸部の
都市部は平坦で平地が沿岸
部に沿って帯状に広がって
いる。
高地での土壌は主に Faraon
Clay で 、 平 野 部 で は clay
loam が支配的である。地質構
造は主に limestone から成
り、所々に岩盤が点在してい
る。
マンダウエ市はセブ市北 地形的には、起伏があり、急
東約 7 キロの位置にあり、 峻な斜面地域が 15%、緩やか
北部でコンソラシオン町、 に起伏している平地が 85%
南部および西部でセブ市 である。
と 接 し て い る 。 東 部 は 耕作可能面積は 2,906 ヘクタ
Mactan 海峡に面している。 ール、35 ヘクタールは国立公
歴史的に見て、工場および 園および行楽地として区分
生産業に適した立地条件 されている。
を満たしている。
マンダウエ市の主要産品
は、buri fiber、石灰岩、
竹、coco shell である。
ラプラプ市はセブ市から 地形的にはほぼ平坦である。
約 13 キロの位置にある。 土壌タイプは Faraon clay、
南部ではコルドバ町に接 Bolinao clay 、 Hydrosol 、
し、北部および西部では、 Beach sand である。
Mactan 海 峡 、 東 部 で は
Bohol 海峡に面している。
同市には 3 つの輸出加工ゾ
ーンがあり、最大のゾーン
は
Mactan
Export
Processing Zone I と II で
ある。現在、2 つの橋がセ
ブ本島とマクタン島間を
結んでおり、またマクタン
国際空港が中部に位置し
ている。東部沿岸はフィリ
ピン有数のリゾート地区
であり複数のリゾートホ
テルが点在している。
ラプラプ市における主要
産品は、ココナッツ、海産
物である。
32
水及び電力供給
水供給は主に MCWD によっ
て 、 ま た 電 力 は Visayan
Electric Company (VECO)
によって供給されている。
MCWD および VECO からそれ
ぞれ水と電力を供給され
ている。
水および電力の供給は、
MCWD および MECO から供給
されている。
タリサイ市
コンソラシオン町
コルドバ町
リロアン町
コンポステラ町
タリサイ市は市制になって
数年である。セブ市から南
西に約 12 キロの位置にあ
る。北部でセブ市、南部で
Minglanilla と接している。
東部は Mactan 海峡である。
タリサイ市における主要産
品は、ココナッツ、バナナ、
マンゴー、野菜、トウモロ
コシ、米である。
コンソラシオン町はセブ市
の約 12 キロ東に位置してい
る。北部ではリロアン町、
南部ではマンダウエ市、西
部では Balamban と境界を接
している。
コンソラシオン町における
主要産品はライム、アンデ
サイト、石灰岩である。
セブ湾対岸の Mactan 島の南
部に位置するのがコルドバ
町である。セブ市からおよ
そ 22 キロの位置にある。北
部でラプラプ市と接し、南
部 お よ び 東 部 で は
Hilutungan 海峡に面する。
コルドバ町の主要産品は
Mactan stone、貝殻である。
リロアン町はセブ市からお
よそ 19 キロの位置にあり、
北部でコンポステラ町、南
部でコンソラシオン町と接
している。東部では Camotes
海に面している。
リロアン町の主要産品はマ
ンゴー、ココナッツ、野菜、
トウモロコシ、米である。
コンポステラ町はセブ市の
約 25.3 キロ北東に位置し、
北部では Danao 市、南部で
はリロアン町およびコンソ
ラシオン町、西部では
Balamban と境界を接し、東
部では Camotes 海に面して
いる。コンポステラ町の主
要農産物はトウモロコシ、
根菜、フルーツ、野菜、な
どである。また、長石、石
灰岩が建設材料として生産
されている。
33
平地部は全体の 46%を占め、 MCWD および VECO よりそれ
残り 44%は丘陵地および山 ぞれ水と電力の供給があ
岳地である。土壌タイプは る。
Faraon clay 、 Faraon clay
steep phase、Baguio clay and
loam である。
耕作可能面積は 1,217 ヘクタ
ールである。
耕作可能面積は 1,568 ヘクタ
ールある。約 1,707 ヘクター
ルは保護区および森林とし
て区分されている。2.5 ヘク
タールは国立公園および行
楽地として認定されている。
また、50 ヘクタールは譲渡可
能で、自由に利用できる地域
とされている。
地形的には、殆どの地域で平
坦であり、勾配はゼロから
3%程度である。土壌タイプ
は Faraon clay と Hydrosol
である。
耕作可能面積は 150 ヘクター
ル。約 0.7 ヘクタールが国立
公園および行楽地、42 ヘクタ
ールが譲渡可能で、自由に利
用できる地域、約 637.7 ヘク
タールが明確に区分されな
い森林および野生地である。
地形的には緩やかな斜面か
ら山岳地域が広がっており、
沖積平野から河岸段丘、
Kotkot 峡谷へと移行してい
る。
土 壌 タ イ プ は 、 Ustropepts
type と区分されている。気象
区分としては第 4 種で季節的
変動はない。
土壌タイプは、Faraon clay、
Bolinao clay、Baguio series
clay loam、Mandaue clay loam
などから成る。
水供給および電力供給は
それぞれ MCWD、VECO から
得ている。
水と電力の供給は、それぞ
れ MCWD 、 MECO ( Mactan
Electric Company)から供
給されている。
MCWD および VECO からそれ
ぞれ水と電力を供給され
ている。
MCWD からの水供給が利用
できるが、多くの世帯で未
開発の泉から得ている。電
力は CEBECO II から得られ
ている。
尚、セブ都市圏を含む中部セブ地域の地質図及び土壌図はサン・カルロス大学水資源
センターにて A0 サイズで作成しており、本格調査実施にて入手できる(本事前調査では
未入手)。
(3)各市町の人口統計および関連指標
ア)概要
セブ州政府は JICA の技術支援を受け 2000 年の人口センサスを基に、Cebu
Socio-Economic Empowerment and Development Project (SEED)を実施した。セブ都
市圏の 4 市 4 町の主要な人口統計および社会経済指標を以下にまとめる。
イ)財政収支
2000 年のセブ都市圏 4 市 4 町の財政収入および支出状況を下記に示す。
セブ
Classification
マンダウエ
ラプラプ
タリサイ
コンソラシオン
コルドバ
リロアン
コンポステラ
City
City
City
City
Municipality
Municipality
Municipality
Municipality
Class 1
Class 1
Class 1
Class 1
Class 3
Class 5
Class 4
Class 5
Income (Mil Php)
2,299.4
389.8
393.1
89.5
38.0
19.0
35.7
23.6
Expenditures
2,269.0
347.1
339.4
81.0
33.2
16.6
32.7
18.5
30.4
42.7
53.7
8.5
4.8
2.4
3.0
5.1
(Mil Php)
Balance (Mil Php)
4 市ではラプラプ市の財政状況が良い。国際空港、輸出加工ゾーンなどあり収入源
に恵まれていることが挙げられる。全般的に言って、4 町の財政事情は良いとは言え
ない。
ウ)人口統計
2000 年のセブ都市圏 4 市 4 町の面積、人口、バランガイ数、世帯数、年間平均人
口増加率、年間世帯数増加率、人口密度を下記に示す。面積、人口、世帯数に関し
ては都市部と地方部でも示している。
セブ
マンダウエ
ラプラプ
タリサイ
コンソラシオン
コルドバ
リロアン
コンポステラ
Land Area (km2)
284.90
29.83
60.60
47.39
33.78
10.11
55.21
51.69
Urban
284.9
29.83
60.60
47.39
29.65
10.11
24.44
1.18
Rural
0
0
0
0
4.12
0
30.77
50.50
Population (2000)
718,821
259,728
217,019
148,110
62,298
34,032
64,970
31,446
Urban
718,821
259,728
217,019
148,110
60,066
34,032
54,177
7,145
Rural
0
0
0
0
2,232
0
10,793
24,301
34
No. of Barangays
80
27
30
22
21
13
14
17
No. of Households
147,600
54,882
44,439
28,751
12,837
6,520
13,381
6,296
Urban
147,600
54,882
44,439
28,751
12,371
6,520
11,144
1,401
Rural
0
0
0
0
466
0
2,237
4,895
1.73
3.68
3.99
4.15
4.13
4.22
4.24
3.58
2.52
4.67
5.07
4.57
4.84
4.87
4.82
3.92
2,523.1
8,707.1
3,580.9
3,125.4
1,844.4
3,367.3
1,176.9
608.4
Annual Population
Growth (%)
(1990 ‐ 2000)
Annual Household
Growth (%)
(1990 ‐ 2000)
Population Density
(Persons per
Sq.km)
表より得られる情報をまとめると以下の通り。
−
セブ都市圏全体で都市化が進んでいる。
−
セブ市はセブ都市圏全体のおよそ 50%の面積を占める。
−
セブ市以外は人口増加が顕著である。セブ市の人口増加は鈍化傾向にある。
−
商工業地であるマンダウエ市の人口密度が著しく高い。
−
丘陵地、山地が多いコンポステラは最低の人口密度を示す。
エ)利用水源別世帯数
2000 年のセブ都市圏 4 市 4 町の総世帯(上記ウ)人口を参照)における水源別世
帯数を下記に示す。
セブ
All Sources
マンダウエ
ラプラプ
タリサイ
コンソラシオン
コルドバ
リロアン
コンポステラ
147,600
54,882
44,439
28,751
12,837
6,520
13,381
6,296
Private Faucet
56,538
15,473
5,594
6,038
2,153
429
2,422
927
Shared Faucet
41,811
19,526
7,632
7,926
1,975
947
3,370
1,908
Private Faucet
6,718
2,625
2,761
3,189
570
508
649
244
Shared Faucet
20,596
10.723
11,687
8,313
5,043
1,903
4,312
2,428
1,599
888
2,118
1,133
1,148
620
805
123
2,597
488
6,246
533
491
1,146
1,493
359
8,458
103
921
663
684
361
154
268
Community
Water
System
Tubed/Piped
Deep
Well
Tubed/Piped
Shallow Well
Dug Well
Spring,
Lake,
35
River, Rain, etc.
Peddler
5,059
3,246
5,411
123
467
494
77
-
Bottled Water
1,032
490
1,532
101
215
32
0
18
Other
3,192
1,320
537
732
91
80
99
21
安全な水資源と定義できる水源としては、上記の Community Water System、
Tubed/Piped Deep Well および Bottled Water が挙げられる。これらの安全な水を得
ている世帯が大半を占めるが、依然、安全な水が得られない世帯が見られる。また、
各市での水売り業者(Peddler)も多く存在している。
レベル別の水源利用状況を市町ごとにまとめると以下の通り。
City/Municipality
セブ
Level I
Level II
HH coverage: 53.77%
Level III
HH coverage: 12.61%
MCWD
HH
Note
coverage:
33.62%
マンダウエ
460
wells,
pumps
MCWD;
Desire to develop new water
Subdivision
sources.
piped-water systems;
Shall initiate measures and
with own wells)
Barangay piped-water
policies
HH coverage: 65.49%
systems;
conserve underground water
(including
industrial
MCWD; Others
HH
firms
coverage:
15.36%
(MCWD, 2%)
MCWD
HH
coverage: 19.15%
ラプラプ
HH coverage: 76.80%
Approximately
HH coverage: 18.06%
more
MCWD
HH
to
control
and
resources.
coverage:
5.18%
than 5,000 wells
タリサイ
Mt. barangays are hardly
served by MCWD. The city is
allocating funds for level
II water system development.
コンソラシオン
223 hand-pumps (184
HH coverage: 16.85%
MCWD HH servicing 10
Barangays Lanipga and Panas
functional, 42 need
barangays.
only
repair,
HH coverage: 11.33%
collectors.
16
have
rainwater
abandoned)
Desire to construct more
HH coverage: 71.82%
Level I water systems.
Desire to upgrade and/or
improve
existing
system
organize/strengthen
association.
コルドバ
HH coverage: 79.80%
HH coverage: 18.73%
36
MCWD
HH
coverage:
water
and
water
1.44%
リロアン
17 hand pumps and
HH coverage: 15.23%
MCWD
wells
HH
coverage:
HH
coverage:
19.83%
HH coverage: 64.94%
コンポステラ
50 deep well hand
MCWD HH coverage: 10.44%
MCWD
45.04%
pumps
Desire
to
improve
undeveloped springs.
HH coverage: 44.52%
Desire to upgrade Level I
(71%
systems into Level II and
still
go
to
Level II to Level III.
undeveloped springs
and rivers)
オ)トイレ施設別世帯数
2000 年のセブ都市圏 4 市 4 町の総世帯(上記ウ)人口を参照)におけるトイレ施
設別世帯数を下記に示す。
セブ
All Types
マンダウエ
ラプラプ
タリサイ
コンソラシオン
コルドバ
リロアン
コンポステラ
147,600
54,882
44,439
28,751
12,837
6,520
13,381
6,296
Private
76,549
25,043
12,631
12,090
4,733
1,359
4,734
2,060
Shared
25,658
12,353
4,331
3,846
1,750
508
1,687
725
Private
12,966
4,357
5,830
3,257
1,730
806
1,355
736
Shared
9,600
6,917
6,302
2,900
1,808
961
1,186
491
Closed
4,212
1,582
1,142
1,770
214
209
865
229
Open
3,121
1,534
1,918
581
582
404
436
181
3,082
926
891
512
132
158
166
33
12,412
2,170
11,394
3,795
1,888
2,115
2,952
1,841
Water-Sealed
Sewer/Septic Tank
Other Depository
Pit
Other System
(Pail, etc.)
None
非衛生な人糞処理方法として、Pit open system や None があるが、都市部および
地方部でいずれも依然存在している。
カ)ごみ処理方法別世帯数
2000 年のセブ都市圏 4 市 4 町の総世帯(上記ウ)人口を参照)におけるごみ処理
方法別世帯数を下記に示す。
37
セブ
マンダウエ
ラプラプ
タリサイ
コンソラシオン
コルドバ
リロアン
コンポステラ
All Methods
147,600
54,882
44,439
28,751
12,837
6,520
13,381
6,296
Picked up by Garbage
109,156
37,170
16,288
10,166
4388
595
709
920
Dumping
8,128
2,963
2,912
3,029
782
527
628
567
Burning
24,530
13,392
23,000
14,226
7,111
4,746
11,608
4,108
Composting
1,330
590
798
547
104
10
254
309
Burying
1,405
514
588
531
452
425
80
392
Feeding to Animals
2,003
86
610
111
0
29
71
0
Others
1,048
167
243
141
0
188
31
0
Truck
セブ市およびマンダウエ市では、多い順では、ごみ収集車による回収、焼却、投
棄である。その他の市町では、焼却、ごみ収集車による回収、投棄の順で多い。現
在、Clean Air Act の施行により、ごみの焼却が原則禁止されており、焼却分のごみ
処分対策が急務といえる。
2−3−2
対象流域・地下水盆の自然条件
(1)対象地域の河川概況
セブ都市圏及び周辺地域には多くの河川が存在するが、その多くは小流域河川である。
下記に主要な河川について北から順番にまとめる。Lusaran 川以外は東部沿岸に流出して
いる。
河川流域名
流域面積
注釈
(km2)
Luyang (Carmen)
50.53
計画中の Carmen 導水の水源流域である。セ
ブ都市圏への経済的な開発水源としては北
限河川であろう。地下水が豊富であり、地元
ミネラルウォーター業者の水源としても利
用されている。
Danao
72.45
Danao 市を流れる流域である。水源開発のポ
テンシャルがあるが、今のところ既存計画は
ない。
Kotkot
78.23
上流域はセブ市、中下流域は、左岸がコンポ
ステラ町、右岸がリロアン町である。中流域
に中小規模のダム計画あり。NIPAS によって
流域保全地域に指定されている。
Cansaga (Pitogo)
52.49
地下水ポテンシャルが高い流域である。
Butuanon
63.46
セブ市からマンダウエ市に流下する比較的
38
大きな流域である。上流域で中小規模のダム
開発計画がある。中流下流では水質汚染が社
会問題化している。
Guadalupe
19.24
セブ市内に流下している小河川。中下流は未
処理の下水流入によって水質悪化が顕著で
ある。
Kinlumsan
18.45
上流域に Buhisan ダムがある。Buhisan ダム
上流は流域保全対象とされている。
Mananga
78.94
タリサイ市に流下する河川である。Kotkot
川流域界である最上流域の開発により、土地
の荒廃が進み、侵食および下流での堆砂が深
刻である。Mananga I 伏流水開発が中流域で
実施されている(Jaclupan 頭首工)。Mananga
II ダム計画がある。NIPAS によって流域保全
地域に指定されている。
Lusaran
65.60
セブ都市圏では唯一西部沿岸に流出する河
川である。Lusaran 上流、中流ダム計画があ
る。NIPAS によって流域保全地域に指定され
ている。
Pangdan
47.61
Naga 市を流下する河川である。セブ都市圏
への経済的な導水案としては南限河川であ
ろう。
(2)気象・水文
セブ島はフィリピンの主要な島であるルソン島とミンダナオ島に南北ではさまれた位
置にある。北部ではルソン島、南部ではミンダナオ島、西部ではネグロス群島、南東部
ではボホール島、北東ではレイテ島に囲まれている。
セブ島は総面積が 4,870km2 で、南北の長さが 210km、幅は平均 23km で中央部では最大
で 35km の距離がある。南北方向に中央山系が走っており、最高峰は中部セブの Balamban
に位置する Cabalasan 山で標高は 1,013m である。
フィリピン中部地域では、通常は北太平洋貿易風の影響下にある。北東モンスーンは
緩やかな流れを伴って 10 月に発生し、1 月にそのピークを向かえる。3 月には勢いを緩
め 4 月ごろには終焉する。南西モンスーンは通常 5 月初旬に発生し、8 月にピークに達す
る。10 月には緩やかに衰える。北太平洋貿易風は、4 月から 5 月および 10 月の天候を支
配し、北東及び南西モンスーンの移行期を形成する。
熱帯性低気圧及び台風は、フィリピンにおける重要な気象上重要な役割を果たしてい
39
る。ほぼ例外なく北あるいは北西の方向に移動し、少なくともフィリピンにおける降雨
量の 3 分の 1 の量をもたらしている。一般的には、台風は 6 月から 12 月までの期間にフ
ィリピンを上陸するが、それ以外の期間においても上陸することがある。フィリピンに
上陸する台風の内、10%から 20%程度がビサヤ地域に達する。
気温は 4 月、5 月が最も高く、1 月に最低となる。平均気温は、セブ市で 27.4 度程度
である。最低最高気温は、平均気温からおよそ 5 度程度の差である。
年平均降雨量は、Mananga 流域でおよそ 1,800mmであり、基本的には 6 月から 11 月
の雨季と 12 月から 5 月までの比較的乾季である期間に区分できる。南西モンスーンでの
雨量変化は僅かであり、降雨量は総じて多い。北東モンスーン中の月降雨量も多いが年
変動が激しい。
1981 年から 2002 年までの Mananga 流域での年降雨量は 900mm(1992 年)から 2,600mm
(2000 年)まで変動している。1990 年代初頭の 3 年間は 3 年連続で平均値を下回ってい
る。
中部セブ地域での雨量は地域差があり、山岳地域の影響が見られる。Lusaran 川流域は
標高が高く、Mananga 川や Kotkot 川に比べ雨量が多い。
相対湿度はおよそ 66%から 77%まで変動し、気温の高い 4 月から 5 月に最低となり、
6 月から 12 月に最高となる。
マクタン国際空港での平均風速記録によれば、年間を通して 2 から 3m/s であり、モ
ンスーンの影響を受け、10 月から 5 月までが北東、6 月から 9 月までが南西の風が支配
的である。
セブ島の河川は河川延長も短く(30km 以内)
、河川勾配は急峻(1%以上)である。従
って、降雨‐ 流出過程は短い。Mananga 川では、洪水ピークまでに時間はおよそ 2 時間で
あり、1 日以内で低水位まで減水する。洪水最大流速は 5 から 6m/s 程度まで達する。
水文気象観測に関しては、DENR、MCWD、PAGASA など政府機関所有の観測所の他、サン・
カルロス大学水資源センター(WRC)や Ayala Corporation など研究、民間開発に関わる
観測所も多く設置されている。全ての観測データは WRC が一元管理している。
本格調査実施における留意点は以下の通り。
ア)対象地域における各河川縦横断図、流域図、土地利用図、地質図などはサンカル
ロス大学水資源センターにて GIS 化されており、同センターから提供される。民
間案件の水文気象調査も同センターが多く実施しており、Carmen 導水関連のデー
40
タも得られる。
イ)雨量、流量に係るデータは同センターで長期にわたって一元管理されており、デ
ータ量としても水資源計画に必要な条件を満たしている。ア)と同様に同センタ
ーから得られる。
ウ)従って、本格調査では、既存データの収集、分析、評価を実施することとし、新
規の水文気象観測所設置、流量観測、河川測量などの必要性はない。
(3)地下水
中部セブ地域における地下水層の構成は大別すると以下の通り。
−
沿岸の沖積堆積層
−
高地の沖積堆積層
−
Carcar 石灰岩
−
Barili 石灰岩
−
Maingit 石灰岩
−
Malubog 石灰岩
−
Malubog 砂岩
−
堆積岩及び火山岩内の割目、溶解空洞域及び埋没排水システム
沿岸における沖積堆積層は砂礫、砂、シルト、粘土から成る。沖積堆積層は一般に浸
透性が低く Carcar 石灰岩上部に不透水境界面を形成する。タリサイ市では浸透性の低い
堆積層が多く、湧き水や自噴井などがある。また、タリサイ市では長年の砂取りによっ
て Mananga 川河床が低下し、河川の水位低下によって河川から堆積層への水の浸透が減
少している。堆積層の浅い砂層からは、浅井戸によって飲み水用の地下水が若干得られ
ている。
堆積層が十分な浸透性と厚さを有する地域もある。セブ市においては、MCWD や民間の
井戸所有者がこの堆積層から地下水を汲み上げている。層厚はおよそ 40m から 50m ほど
である。Kotkot 川河口付近では、堆積層が 50m にも達し、MCWD は年間 4 千万 m3 の包蔵量
を有する井戸を設置した。この井戸は堆積層及び下部にある石灰岩層まで達している。
高地における沖積堆積層は、一般に薄く、少ない。例外的なものとしては Mananga 川
の Jaclupan で、層厚は 40m にも及び、砂礫層は 10m にも達する。MCWD による伏流水利用
の Mananga I における地下水源である。計画ポンプ容量は年間 1,200 万 m3 であったが、
現在は 660 万 m3 に減少している。
Carcar 石灰岩はセブ島全域における主要な地下水の帯水層である。石灰岩は 300m 以上
にも達し、沿岸から約 4−5km の幅で広がっており、約 200m の標高にまで確認されてい
る。石灰岩は沿岸方向に対して厚さが増している。石灰岩は極度にカルスト化しており、
浸透性が非常に高い。
41
セブ市近郊のポンプテストによって計測された帯水層の送水率では、0.005 から
0.03m2/s である。
この帯水層からの地下水ポテンシャルは、
−
Naga と Danao に挟まれた沿岸地域:年間 9,000 万 m
−
マクタン島:年間 400 万 m
3
3
である。
本格調査では、地下水モデリングを構築する必要があるが、検討に際しては以下の事
項に留意すること。
ア)地下水挙動及び海水の浸入に係る調査は WRC が長期間行っており、また MCWD や DENR
にも既存地下水取水井戸のデータが保管されている。また、NWRB もセブ都市圏の
地下水挙動に係る調査を本年度実施しており、それら既存調査結果をレビューし、
既存地下水関連データを基に地下水モデリングを行うこと。
イ)地下水モデリングはセブ都市圏平野部を解析対象範囲とし、海水の浸入が悪化し
ているマクタン島も含むこと。
ウ)地下水モデルは涵養量モデル、地下水挙動モデル、海水混入の汚染モデルを含み、
既存調査による概念モデルを構築すること。地形地質情報の入手可能性を検討し、
2次元及び3次元地下水流動輸送モデルを構築する。
エ)数値モデルへの GIS データ導入が可能とすること。
オ)構築された地下水モデルによって、マスタープランにおける長期需要供給計画を
行い、長期的地下水ポテンシャル、涵養量と供給量の関係、海水混入による汚染
予測、渇水期における地下水保全対策などの検討を行う。
2−3−3
対象水源における水利用・水利権等
(1)概要
セブ都市圏内及び周辺の河川流域における水利用及び水利権に関する数値的な情報は
得られていない。
Lusaran、Kotkot、Mananga 川流域では下記(2)で示す小規模な共同灌漑システムが
あり、表流水の水利用が行なわれている。
水道用の水源としては、MCWD が所有する Buhisan ダム、Jaclupan 頭首工による水供給
が行なわれている。
(2)灌漑用水
セブ都市圏および周辺の河川における灌漑用水は、全て NIA(国家灌漑庁)が管轄する
小規模な CIP(Communal Irrigation Project:共同灌漑プロジェクト)である。
対象流域全体のデータは未入手であるが、セブ市内では、Kotkot 川中流域に 2 箇所、
42
Lusaran 川上流域に 3 箇所が確認されている。
2−3−4
セブ都市圏における上水道の現状
(1)対象地域の上水道事業の概要
セブ都市圏の水道事業は、都市部(レベル III & II)は MCWD が行っており、村落部(レ
ベル I & II)は Barangay(行政の最小単位)が中心となって、各地方自治体(LGUs)が
それを支援する形態で行われている。MCWD は主に海岸沿いの平地部の市街地を中心に各
戸水栓、ならびに市街地内の貧困地域を対象に共同水栓で給水サービスを行っている。
1993 年末時点の給水栓数は 92,484 栓で、その内共同水栓が 252 栓となっている。
MCWD の営業区域であるセブ都市圏は、4 市(セブ市、マンダウエ市、ラプラプ市、タ
リサイ市)4 町(コンソラシオン町、リロアン町、コンポステラ町、コルドバ町)で構成
されており、2003 年末時点の給水率は人口比で 52%、水量比で 47%と推計されている(表
2.3.1)。
表 2.3.1
人
セブ市
マンダウエ市
ラプラプ市
タリサイ市
コンソラシオン町
リロアン町
コンポステラ町
コルドバ町
Total
セブ都市圏の MCWD の給水率
口
給水栓数
718,821
259,728
217,019
148,110
62,298
64,970
31,446
34,032
1,536,464
60,501
13,907
5,859
5,186
2,675
2,904
734
719
92,484
有効水量
(m3/d)
63,699
14,166
11,718
4,408
2,564
2,509
616
620
100,301
給水率
(水量比)
70%
36%
32%
20%
58%
28%
16%
7%
47%
出典:MCWD の質問の回答による。
一方、工場、ホテル等で MCWD の給水サービスを受けていない企業は、独自に淡水化プ
ラントを設置し自己調達している。現地では淡水化プラントの建設から運営までを行う
専門の水処理会社(Mactan Rock Industries 社)があり、現在 13 箇所の淡水化プラント
で日量 25,000m3 の水供給を行っている。
Mactan Rock Industries 社は、MCWD へも BOO 方式(1998 年から 10 年間の契約)で水
供給を行っている。マクタン島南東部の海岸近くに淡水化プラント(最大能力 7,000m3//d)
を設置し、コルドバ町及びラプラプ市へ水を供給している。MCWD への水卸売単価は 1m3
当たり当初 17 ペソであったが、現在はプライスエスカレーション条項により 21 ペソ弱
となっている。また、大規模なホテルでは下水処理水がトイレの洗浄水として再利用さ
れている。
(2)MCWD の上水道事業の概要
MCWD の過去 3 年間(2001 2003 年)の上水道事業の主要指標の推移を表 2.3.2 に示す。
43
表 2.3.2
3
年間生産水量 (m )
年間販売水量 (m3)
無収水率 (%)
平均水道料金(ペソ/m3)
水道料金請求額(千ペソ)
水道料金徴収額(千ペソ)
料金徴収率(%)
年間接続栓数
総接続栓数
職員数
1,000 栓当たりの職員数
主要指標の推移(2001∼2003 年)
2001 年
50,954,700
(139,600m3/d)
33,502,100
(91,800m3/d)
33.95
19.2
693,232
653,286
94.4
5,107
83,822
654
7.80
2002 年
51,698,400
(141,600m3/d)
34,361,700
(94,100m3/d)
33.7
20.2
715,851
673,220
94.0
5,306
88,271
645
7.31
2003 年
51,953,900
(142,300m3/d)
35,283,200
(96,500m3/d)
31.85
21.45
727,045
691,790
95.2
5,130
92,484
604
6.56
出典:MCWD 年報及び DATABOOK
生産水量:新規水源として、2003 年後半から BOO 方式による South Bulk Water Supply
事業(10,000m3/d)が始まったが、まだ供給されておらず微量の増加に留まっている。現
有する MCWD の生産井 103 本の内、2003 年 9 月現在 10 本がリハビリ中で運転を停止して
おり、適切なリハビリがなされれば、更に 10%程度の生産水量の増加が可能と考えられる。
販売水量:年間約 5,000 栓のペースで接続栓数を増やしている。生産水量の増加と無収
水率の改善(33.95%→31.85%)により販売水量は約 5%増加している。MCWD では最終的な
無収水率の目標を 20%としており、これを実施すれば、更に 10%以上の生産水量の増加が
可能と考えられる。
生産性:経営の合理化により MCWD の職員数は年々減少している。2003 年の接続栓数
92,484 栓に対し職員数は 604 人で、1,000 栓当たり 6.56 人(5.0 人が目標値の目安)と
なっている。今後水道事業体としては改善の余地は十分残されているが、2002 年には「最
も革新的な水道事業体」として LWUA から表彰されており、フィリピン国内においては最
も良好な運営をしている水道事業体の一つとなっている。
水道料金と料金徴収率:水道料金は 1m3 当たり平均 21.45 ペソ(2003 年)で、フィリピン
国で最も高い水準にある。MCWD は、料金回収率を高めるため期限内に支払いを行った場
合、料金を 5%割引する一方で、3 ヶ月支払いがなかった場合には水道接続を遮断する等
の施策の実施により、1998 年から劇的に改善され現在では 94-95%の回収率を誇っている。
MCWD の水道料金は、一般家庭用、共同水栓用、産業用と区分されており共同水栓用は一
般家庭用の約 60%の料金となっている。表 2.3.3 に一般家庭用と共同水栓用の水道料金表
を示す。
表 2.3.3 MCWD の水道料金表
10m3 までの基本料金(ペソ)
給水管経
一般家庭
共同水栓
1/2’
108.51
68.30
44
10m3 以上の m3 毎料金(ペソ/m3)
使用量(m3)
一般家庭
共同水栓
11-20
11.97
7.45
3/4’
1’
1 1/2’
2’
3’
4’
6’
175.97
344.6
879.83
2,184.92
3,929,92
7,859.84
11,782.42
109.28
218.55
546.38
1,365.94
2,456.69
4,917.38
4,917.38
21-30
31 以上
14.07
38.61
8.80
10.24
出典:DATABOOK as of 2003, MCWD
(3)MCWD の水需要予測と水供給計画の現状
1)水需要予測
MCWD のセブ都市圏の水需要予測を表 2.3.4 に示す。
表 2.3.4
MCWD のセブ都市圏の水需要予測
2002 年時の水需要予測(単位:m3./日)
区 分
一般家庭水需要
セブ市
ラプラプ市
マンダウエ市
コンポステラ町
コンソラシオン町
コルドバ町
リロアン町
タリサイ市
小 計
産業用水需要
合 計
2004 年
2005 年
111,883
32,404
32,027
1,136
8,026
4,476
3,976
18,636
212,600
83,000
295,600
114,073
33,223
32,812
1,172
8,243
4,608
4,187
19,163
217,500
85,200
302,700
2010 年
126,045
37,702
37,108
1,382
9,431
5,335
5,445
22,048
244,500
97,600
342,100
2015 年
2020 年
139,924
42,894
42,088
1,650
10,807
6,177
7,124
25,392
276,100
112,100
388,200
156,014
48,914
47,861
1,993
12,403
7,153
9,364
29,269
313,000
129,300
442,300
2015 年
232,447
99,173
331,620
2020 年
265,605
116,348
381,953
2004 年時の水需要予測(単位:m3./日)
区 分
一般家庭用水需要
産業用水需要
合 計
2004 年
187,095
69,779
256,874
2005 年
188,822
72,167
260,989
2010 年
206,427
84,647
291,074
出典:MCWD の質問の回答による。
2002 年の JICWELS(国際厚生事業団)調査時から 2004 年時の予測では下方修正し
ている。これは、2003 年、2004 年の水需要実績が予想した数値を下回っているため
と思われる。従って、今後予想したとおりに右肩上がりで水需要が伸び続けるかど
うかは不透明であり、節水対策や政策的水需要抑制策等と併せて、本格調査におい
て十分検討する必要がある。
2)水供給計画の現状
MCWD が現在計画を進めている新規の水供給プロジェクトは以下のとおり。
45
1) South Bulk Water Supply (BOO)
・ 民間企業との BOO 方式による水購入事業
・ 完成年:2004 年
・ 水供給量:10,000m3/d(2004 年 9 月現在約 5,000m3/d を既に供給開始してい
る。)
2) Carmen Bulk Water Supply (BOO)
・ 民間企業との BOO 方式による水購入事業
・ 完成年:2007 年(未着工、2004 年 12 月に公聴会(Public hearing)を予定)
・ 水供給量:50,000m3/d
また、新規の水源開発調査として、2004 年 12 月末から JIBIC による海水淡水化事
業フィージービリティ調査が開始されることが決まっている。調査期間は約 6 ヶ月。
現在、MCWD は将来の水供給計画について明確なビジョンを持っていない。その理
由として、地下水以外のこれまでの新規水源開発事業に係る調査では、開発コスト
が高く水卸売値が独立企業体として採算にのらないことにある。マナンガ2プロジ
ェクトでは、アメリカの US-TDA(The U.S. Trade and Development Agency)の資金
援助によりベクテル社が BOT による開発の可能性調査を実施し、2002 年 4 月に最終
報告書を提出している。結果として、表 2.3.5 に示すように水卸売値が 1m3 当たり
62.92 ペソ(約 126 円)となり、投資額の回収に必要な水道料金の値上げ(22.09 ペ
ソ→36.63 ペソ)が困難として BOT 事業を断念している。
表 2.3.5
ベクテル社によるマナンガ2プロジェクトの財務概要
マナンガ2計画工事費内訳
金額(US$)
Part A
調査、設計、監理費
10,545,198
ダム及び貯水池
52,073,140
導水管
7,223,382
浄水場
16,843,760
Part B
配水管網(幹線及び 2 次幹線)
5,450,877
給水管
4,908,974
環境整備費
合 計
投資額回収に必要な水道料金の設定
接続栓数
水供給量(m3/年)
水卸売値(ペソ/m3)
有収入水(m3/年)
MCWD の現状の水道料金収入(a)
必要な追加水道料金収入(b)
必要な料金収入の合計(a + b)
2001 年現在
79,630
52,672,050
35,290,274
779,503,016
46
マナンガ2計画
20,379
14,477,454
62.92(約 126
円)
10,858,091
合計金額(US$)
86,685,480
10,359,851
9,683,740
106,729,070
合
算
100,009
67,149,504
46,148,365
779,503,016
910,921,406
1,690,424,422
必要な 1m3 当たりの水道料金
(ペソ/m3)
22.09 (約 44
円)
36.63(約 73 円)
出典:Feasibility Study for Mananga II High Dam and Treated Bulk Water Supply Project,
MCWD Prepared by Bechtel International Inc., USA
MCWD の現在ならびに既存計画が実施された場合の水供給能力を表 2.3.6 に示す。
MCWD の給水率は現在 47%となっているが、Carmen Bulk Water Supply プロジェクト
が完成し、無収水率が 20%まで改善されれば、2010 年には給水率は 60.5%まで上昇す
る。
表 2.3.6
MCWD の水供給能力と水需要予測の比較
単位:m3./日
2004 年
2005 年
2010 年
2015 年
2020 年
*1)
既存水源
地下水生産井
Mananga1
Tisa 浄水場
淡水化プラント(BOO)
South Bulk Water Supply
(BOO)
小計(生産水量)
既存計画
Carmen Bulk Water Supply
(BOO)
合計(生産水量)
有効水率
有効水量 (A)
一般家庭用水需要
産業用水需要
水需要合計 (B)
給水率 (A/B)
125,000
30,000
4,000
6,000
10,000
125,000
30,000
4,000
6,000
10,000
125,000
30,000
4,000
6,000
10,000
125,000
30,000
4,000
6,000
10,000
125,000
30,000
4,000
6,000
10,000
175,000
175,000
175,000
170,000
170,000
50,000
50,000
50,000
220,000
80.0%
176,000
206,427
84,647
291,074
60.5%
220,000
80.0%
176,000
232,447
99,173
331,620
53.1%
220,000
80.0%
176,000
265,505
116,348
381,953
46.1%
175,000
69.0%
120,750
187,095
69,779
256,874
47.0%
175,000
70.0%
122,500
188,822
72,167
260,989
46.9%
注:*1) 既存水源の生産水量は、現在停止している生産井(10 本)のリハビリが実施された場合の
水量。
その後、給水区域の拡大と人口増加による水需要の増加に対し、更に給水率を高
めていくためには、新たな水源が必要であるが、MCWD が独立企業体として財務的に
持続可能な方法を選択していく必要がある。そのためには、MCWD の役割と民間セク
ターの役割(産業用水供給等)を本格調査において明確にしていく必要がある。
一般家庭用水については、安価な地下水を持続可能な方法で安定的に供給するこ
とが最も現実的な方法と考えられる。MCWD では Talamban にファミリー・パークを建
設して地下水涵養をするなど地下水の保全に努めおり、本格調査においても地下水
の保全方法について十分検討されるべきである。
47
一方、産業用水の水源として、現在淡水化プラントが Mactan Rock Industries 社
を始めとして、民間ベースで建設・運営が行われている。MCWD を事業対象者として、
JBIC による海水淡水化事業フィージービリティ調査が実施されれば、MCWD の産業用
水分野での可能性が明らかになるとともに、可能性が低い場合でも民間セクターと
の役割が明確になってくるものと思われる。
(4)MCWD の財務内容と資金借入能力
MCWD の年報によれば、過去 3 年間(2001 2003 年)の MCWD の財務状況は以下のように
なっている。損益計算書(表 2.3.7)に示すように過去 3 年間とも営業利益を計上してお
り、債務の利息支払い後も黒字を保っている。現状において財務内容は健全であるが、
年々純利益率が低下してきており、営業収入に対する債務の支払い利息も、2003 年時点
で 22.5%と依然高い水準にある。今後、借入資金による大規模なプロジェクトを実施した
場合、支払い利息の負担が更に大きくなるものと考えられる。
表 2.3.7
損益計算書
単位:ペソ
営業収入
水道料金収入
罰金・サービス収入
計
営業費用
運営費
管理費
計
営業利益
営業外収益
営業外費用(支払利息)
純利益
2001 年
2002 年
2003 年
700,977,514
15,183,864
716,161,378
(100%)
718,706,178
15,092,188
733,798,366
(100%)
731,810,403
16,408,137
748,218,137
(100%)
394,002,126
92,634,398
486,636,524
(68.0%)
229,524,854
(32.0%)
24,861,037
180,818,843
(25.2%)
73,567,048
(10.3%)
417,270,487
94,682,510
511,952,997
(69.8%)
221,845,369
(30.2%)
10,109,627
171,411,689
(23.3%)
60,543,307
(8.3%)
442,046,685
95,444,560
537,491,245
(71.8%)
210,727,295
(28.2%)
10,634,194
167,980,756
(22.5%)
53,380,733
(7.1%)
出典:MCWD 年報 2003
表 2.3.8
バランス・シート
単位:ペソ
(資産)
固定資産
流動資産
その他資産
資産合計
(負債)
2001 年
2002 年
2003 年
1,996,589,086
309,452,065
58,506,901
2,364,548,052
2,034,877,778
271,312,191
187,335,980
2,493,525,949
2,009,718,383
306,030,016
171,280,877
2,487,029,276
48
株主資本
(内資本金)
流動負債
長期債務
退職金等準備金
負債合計
801,602,133
(37,579,843)
192,908,088
1,325,258,421
17,779,410
2,364,548,052
685,084,068
(11,312,160)
206,928,022
1,320,007,851
281,506,008
2,493,525,949
714,555,330
(11,312,160)
215,149,984
1,288,607,058
268,716,904
2,487,029,276
出典:MCWD 年報 2003
バランス・シート(表 2.3.8)を見ると、長期債務が年々減少しているものの依然とし
て 2003 年時点で 12.9 億ペソあり、総資産 24.9 億ペソの 51.8%を占めており、借り入れ
余力は小さい。長期債務はすべて LWUA からの融資であり、現在計 4 本のローン(金利:
10% 14%)を借りている。一番返済期間が長いものはマナンガ I プロジェクトの 26 年間
で、金利は 12.5%である。しかしながら、LWUA は金利が高いため、MCWD では DBP
(Development Bank of Philippine)とローン借り換えの融資話を進めている。DBP の金
利は 10.5%で LWUA より安いため、6 億ペソを借り入れて LWUA の長期債務の半分を返済す
る予定である。
フィリピン国の都市水道整備は、財源の制約から政府は補助を行わないという方針の
もとに、1990 年半から大手 WD は、民間資本の導入によって水道インフラ整備を進めてい
くことを奨励している。MCWD でも上記の財務内容から借り入れ余力は小さく、BOO、BOT
方式による民間資金の活用を志向している。
2−3−5 セブ都市圏の衛生環境の現状
(1)実施体制
1)MCWD の役割
MCWD は上水道に加えて、下水、し尿処理も担当することとなっているが、飲料水、
産業用水等上水の供給が第一目的とされてきたのが実状である。
下水/衛生部門は、オペレーショングループ(Operation Group)下の Environment
& Water Resources Department に属している(MCWD の組織図参照)。
しかしながら、実際には計画及び運営に係る専任の担当者がいない。
2)LGUsの役割
セブ都市圏では、下水道施設・管理の実際は各 LGUsの行政管轄となっている(図
2.3.1 セブ都市圏各自治体組織図参照)。
下記組織図の中で City Planning & Development Coordination office が許認可
を担当し、衛生セクターにおける将来計画・下水/衛生設備・技術に関しては City
Engineer Office が扱っている。また、工事実施の際は Construction & Maintenance
Division と連携を図る。
以下、図 2.3.1 に地方自治体の実施体制を示す。
49
LGUs ORGANIZATIONAL FUNCTIONS & RELATIONSHIPS
City Mayor
City Planning &
Dev't Coordination
City Mayor's Office
Plams & Programs
Division
Continous review & updating of
strategic sanitation sector plan
PMU/I
Com.Info./Assist
Division
Health education &
community
information
Overall coordination/manitoring
Project management system/reporting
Specific inputs in HRD6com.dev't.
w/sanitary eng'g.participation
City Treasurer
City Assessor's
City Engineers Office
Supervises receiving Provides assistance in
fund loan program developing records
system for desludging
program
Revenue
Opns.(Licences/Fee
Planning,Design &
Programming Div.
City Health Officer
・Conducts design, tending & supervision
for on'site facilities.com. Sanitation
facilities, & sewerage, punping &
treatment
Health advisory services
Training of
brgy.voulunteers
Construction & Maintenance
Div.
Performs billing & collection for
desludging program
・Supervisors O&M community
sanitation facilities
・Supervisors and/or manages
desludging program
図 2.3.1
セブ都市圏各自治体組織図
(2)各都市の衛生環境現況
1)家庭排水
現在都市圏内の各市・町の家庭からの排水は、下水溝/排水路(開渠)に垂れ流
しされているのが一般的で、地下に埋設されている排水管路に接続しているのは市
内の一部地区である。また、空き地に隣接している家庭では家庭排水を空き地に垂
れ流しているところも見られる。
2)家庭からの汚水排水(屎尿)
セブ市以外の各市・町ともに汚水排水システムは整備されておらず、汚水処理場
も存在していない。汚水処理方式として嫌気性浄化槽(セプティックタンク)の設
置が提唱されている。セブ市におけるセプティックタンクの普及率は、平成 14 年 3
50
月に JICWEL が実施した調査結果によると 75%となっている。しかしながら、セプテ
ィックタンクから既存の雨水排水管路に接続されているケースが多く、十分に処理
されていない排水が流入することになり、沈殿汚泥の処分は河川や空き地への投棄
が確認され、末端の水域(湖沼、河川)の水質汚濁の原因として問題となっている。
3)雨水排水
セブ市の都市部では MCWD によって排水管路網のデータ(各管路の管径、形状、延
長、ボックスカルバート等の種類、流量、調整バルブの弁位置など)が GIS にて情
報管理されている。又、ラプラプ、マンダウエ市でも都市部では雨水排水管路網は
整備されている。排水管路へのゴミの投棄による管路の閉塞事故が何度か発生し、
道路の冠水を招いたことがあったという事例もあり課題として浮かび上がっている。
上記3市以外の自治体でも雨水排水管路が敷設されている地区が都市部に見られ
る。都市部の舗装道路では、雨水の排水方法として縁石を 25∼30m ごとに切り欠き、
雨水流入口として排水路に接続している。ゴミの不法投棄による閉塞の結果、降雨
時にはやはり冠水が確認されている。
(3)セブ都市圏の河川状況
DENR は表 2.3.9 に掲げる主要 6 河川の河口近辺(9 地点)で BOD、DO、pH、塩分濃度等
の水質モニターリングを行っている。
表 2.3.9 各都市の主な河川及びその汚濁度
河川名
セブ市
ラフグ川
グアダルペ川
マンダウエ市
ブツアノン川
タリサイ市
リナオ川
マナンガ川
コンポステラ町
コトコト川
流量
(m3/sec)
河川長
(km)
BOD
(ppm)
171
312
8.9
12.5
66.2
552
69.7
48.8
278
803
10.3
29.9
13.75
1.43
492
34.6
2.87
出典;Metropolitan Cebu Sewerage and Sanitation Project(2002 年)
上 表 か ら 最 も 汚 染 さ れ た 、 Guadarupe 川 の BOD 及 び DO は 1999 年 で そ れ ぞ れ
46.1ppm,0.994ppm,2000 年で 66.2ppm,1.00ppm との年間平均の値をしめしている。これは、
DENR で規定された基準値(行政指導 No.35)の 50ppm を大きく上回る。
(4)各都市の衛生環境状況の改善と将来計画
51
セブ市のように企画・プログラム課(PLAN & PROGRAM DIVISION)で浄化槽を含めた衛
生面の企画を行っている自治体と技術課(City Engineer Office)で設計、施工監理を
実施する部門まで抱えている自治体と、コンポステラ町のように技術者が 2,3 人で将来
計画を担当している自治体もある。
各自治体とも下水道施設建設費の資金調達は①DILG(Department of Interior and
Local Government)を経由しての政府系金融機関からの融資、②国会議員、③各自治体、
④海外からの融資(例:北九州市からの協力)等に頼っているのが現状である。
1)セブ市
セブ市の下水処理場はセブ市営処理場及び商業地域にある民間運営による処理場
の 2 箇所が存在する。各家庭別には嫌気性浄化槽(セプティックタンク)が設置さ
れている。浄化槽からの上澄み水が雨水暗渠(管路、ボックスカルバート)に排出
されている。従って、乾季には家庭汚水が雨水排水管に流下しており、雨季には路
上のゴミなども雨水管路に流入するようになるため合流式となっている。中にはゴ
ミを故意に雨水流入口に投棄しているケースもあり、管路の閉塞から冠水を起こし
ている。
緊急な改善案としては、管路清掃、小規模河川(クリーク)のヘドロ、ゴミの除
去である。なお、セブ市には下水処理及び雨水排水に関して、以下のようなマスタ
ープラン調査とフィージビリティ調査が実施されている。
・ Pre-feasible study Metropolitan Cebu sewerage and sanitation Project
(2010)
・ Inception Report Flood Mitigation and Drainage Study for Cebu City (2020)
・ Topographic Drainage Influence Area Report (2020)
図 2.3.1 はセブの土地利用、図 2.3.2 及び 2.3.3 は雨水排水の平面図である。
2)マンダウエ市
当市は雨水排水路計画整備が約 70%達成されている。マンダウエ市の洪水状況は図
2.3.4 に示すとおりである。
なお、同市の埋立地には日本からの進出企業を含む工業団地があり、工場からの
排水はそれぞれの処理装置で処理後排水されているが、マンダウエ市では排出水に
ついてモニタリングをしていない。
雨水排水に関する将来計画としては“Mandaue City Development Strategy Program
2003”に記載されている。
3)タリサイ市
Tabunok Public market(タブノック公設市場)はタリサイ市で最大のスーパーマーケ
ットであり、その周辺では大量の汚水が発生しており、環境衛生面から問題とされ
ている。
52
工場数が少ないため、工場排水は極めて少量であるが、未処理で排出されている。
同市の雨水排水は開渠であり、他の都市と同様家庭汚水が垂れ流しとなっている
ため、排水の汚濁と、悪臭で環境悪化が問題になっている。
タリサイ市では、2020 年を目指した雨水排水処理計画を含む“Talisay City
Comprehensive Land Use Plan”を早期に実施し、中央集中型の雨水排水路を整備す
る方針である。
4)ラプラプ市
ラプラプ市はセブ島からはマクタン海峡を隔て 2 本の橋で結ばれている。地形的
にはマクタン空港周辺の丘陵部を除き、ほとんど平坦地である。
空港が設置されていることと比較的汚染されてない海岸があるため観光客が絶え
ず、また違法居住者も多いことが特徴である。
下水道施設の普及率はセブ市に比較すると低い。他の都市同様、各戸にセプティ
ックタンクが設置されているが、現時点では下水処理場等の計画はない。汚水は雨
水排水路に垂れ流しの状況である。
雨水排水の管路、ボックスカルバート等は人口集中地域を中心に比較的整備され
ている。表 2.3.11 および表 2.3.12 には雨水排水路(管路)
、カルバート等の調書を
示す。当市における早急な改善点は、他の市同様、管路の清掃維持、と更なる管路
の拡張である。なお、雨水排水管網の拡張計画については下記の計画書に記載があ
る。
・ Lapu-Lapu City Drainage Master Plan & Design( 2003, August)
・ City Development Program
5)コンソラシオン町
コンソラシオン町には下水道整備計画は存在しない。また、当町役所に勤務して
いる土木技師にも下水排水に関心を示している様子は伺えなかった。同町の将来計
画に関して入手可能な資料は「糞尿の分析」のみであった。
6)コルドバ町
当町はラプラプ市同様、セブ島とマクタン海峡を挟んだマクタン島に位置し、観
光、漁業が主な産業である。
周辺住民からの聴き取りによると、既設開渠排水路は降雨時に通水断面が小さい
ためか、下水がオーバーフローして流れ出す事が頻発するとの事であった。
将来計画としては、“Comprehensive Land Use Plan”があり、その中で排水管路
網の計画が存在する。
7)リロアン、コンポステラ町
リロアン町には総合開発計画(2000∼2020)の将来計画がある。コンポステラ町
には自然排水開渠が2本存在する。
53
54
54
55
56
(5)現状に対する課題
セブ都市圏は観光が基幹産業である。しかし、現在の河川、海洋の水質及び環境の
悪化は観光産業に多大の影響を及ぼすことが考えられる。以下にセブ都市圏における既
存下水道の課題を示す。
①
②
③
④
生活雑排水、し尿処理計画の策定、実施
汚泥処理計画の策定、実施
規則的、且つ効率的な雨水渠の維持管理の徹底
処理業者及び住民への環境改善教育計画策定
現在、一部の地域(セブ市における市営、民営の2下水処理施設)をのぞき、下水道
処理施設は存在しない。各家庭は嫌気性浄化槽(セプティックタンク)でし尿の処理を
行っており、都市圏全体では 55%の普及率となっている。将来的には都市毎の利用者数
に見合った適正な処理能力を有する本格的浄化処理施設が必要と考えられる。
浄化槽の汚泥処理については7年から 12 年に1回とバキューム車で回収している(聞
き取り調査)が、汚泥処理施設が存在しないため、平地や山間部の埋立処分場内での天
日乾燥、または河川、海洋への投棄などで対応しているために周辺環境、水質悪化に拍
車をかけている。こうした現状は上記①から④の課題と共により早期の解決策が望まれ
る事を示しているが、セブ都市圏、MCWD、各 LGUs との協力体制など、本格調査を計画す
る段階での課題でもあると考えられる。
短中期的な課題としては、嫌気性浄化槽の設置の普及、そのための設置基準の見直し、
及び方流水濃度を測るモニタリングシステムの整備等の実現可能性について検討する事
などがあげられる。
57
表 2.3.10
58
違法居住者分布表
59
表 2.3.11 既設排水路調書(1)
表 2.3.12 既設排水路調書(2)
60
2−4
セブ都市圏における水資源・上下水道施設の現状
2−4−1
水資源施設
(1)概要
MCWD (Metropolitan Cebu Water District:セブ都市圏水道局)は 1974 年、Provincial
Water Utilities Act の施行に伴いセブ市議会の決議にて、Osmena Waterworks Systems
の資産、組織を引き継ぐ形で設立された。
当時の設備で主だったものは、Buhisan ダムと主にその原水を浄水する施設である Tisa
浄水場である。4,000m3/日の原水を供給する Buhisan ダムは米国の植民地時代であった
1911 年に政府により建設された。
完全操業は 1975 年に開始され、
主に地下水源を開発する形で生産水量を増やしてきた。
初期の段階で地下水開発、組織作りに貢献してきたのは LWUA (Local Water Utility
Administration:地方水道庁)および ADB による資金・技術援助である。
1976 年から 1982 年にかけて 23 の井戸、貯水タンク(Consolacion、Talamban など)
が建設され、1982 年時の生産水量は 7 万 m3/日に拡大した。また、無収水率の削減を行
なうために 1984 年には運営維持管理計画が開始され、
漏水修理、古い水道栓のリハビリ、
メーターのモニタリング強化、盗水防止運動が行なわれた結果、1984 年に 55%であった
無収水率は 1991 年に 36%まで低下した。
1990 年代初期には北部地下水源(リロアン、コンポステラ)の開発が行なわれた結果、
上水生産能力はさらに 4 万 m3/日拡大され、MCWD の上水生産能力は 12 万 m3/日となった。
1998 年には ADB 援助により Mananga 川の伏流水開発である Mananga I プロジェクトが
完成し、水源能力は 14 万 m3/日となった。
(2)Buhisan ダム
Buhisan ダムはセブ州で最初に建設されたダムであり、
MCWD の最初の表流水源である。
Tisa 浄水場には毎時 600m3(日産 4,000m3)の原水を供給する。
Buhisan ダムは既に貯水池の堆砂が進み、満砂状態になっている。本格調査では、現在
MCWD が行っている乾季の堆砂除去プログラムをレビューし、より効果的な排砂計画を提
案する必要がある。
(3)地下水源
セブ都市圏地域においては、地下水源が最も重要な水源であり、MCWD の水源としては、
下記に示す地区で井戸の開発が行なわれている。
61
井戸の数
原水生産量(m3/日)
4
8,870
Pardo
5
5,270
Tisa
7
9,670
Guadalupe
12
9,570
Lahug
13
9,070
Talamban
11
28,800
4
8,170
8
11,770
リロアン町
16
19,570
コンポステラ町
2
770
Mactan
5
1,700
Ayala
Not known
1,620
井戸の位置
タリサイ市
Mananga
セブ市
マンダウエ市
Canduman
コンソラシオン町
Casili
Other existing sources
Buhisan dam
Mananga
I
surface
3,060
(Jaclupan
18,270
water
infiltration facility)
Desalination
plant
in
Mactan Island by private
5,000
company
現在、Ayala 井戸を除き 87 箇所の井戸が生産運用であり、14 箇所の井戸は利用に関わ
る訴訟の影響で供給停止状態である。
MCWD 以外にも民間および政府所有の井戸があり、事業者自身が所有する井戸も多く存
在する。
本格調査では、MCWD だけでなくセブ都市圏に存在する井戸のインベントリー調査を行
い、井戸による地下水くみ上げの実態(水質、生産量)を明らかにする必要がある。NWRB
がセブ都市圏の地下水水位、海水流入の調査を実施しており、その結果もレビューする
こと。
(4)Mananga I プロジェクト(ADB 融資)
Mananga フェーズ I プロジェクトは、総建設費 7 億 7 千万ペソであり、日産 33,000m3
62
を供給するプロジェクトである(下記位置図参照)
。1998 年に完成している。主要な構造
物は以下の通り。
−
井戸(15 箇所)
−
頭首工(ダム高 7m)
−
メイン送水管(長さ 6km)
−
配水管(総延長 43km)
−
SCADA
1998 年時点では、Buhisan ダムとあわせて 7.9 億 m3 の年間水生産量を有し、MCWD の総
水生産量の 17%をカバーしている。
マナンガ I プロジェクト位置図
下記に伏流水開発計画の概念図を示す。頭首工によって貯留した表流水を沈砂池に導
き、貯水池中央の横提上流の浸透池から表流水を地下帯水層に浸透させる構造になって
いる。
63
マナンガ I プロジェクト:伏流水開発計画概念図
マナンガ I プロジェクト:頭首工堆砂状況
1998 年完成以来約 6 年が経過し、頭首工上流の堆砂は現在ほぼ満砂状態になっており、
毎年乾季における砂の除去作業が必要となっている。
下記に 98 年から 02 年までの日雨量、平均貯水位、地下水汲み上げ量の関係を示す。
64
マナンガ I プロジェクト:日雨量、貯水位、地下水汲み上げ水量の関係
本格調査実施上で対応すべき事項は以下の通り。
ア)過去の日雨量、貯水量、地下水汲み上げ量の関係を解析し、長期的伏流水利用量
を再評価すること。
イ)浮遊砂及び層流砂観測記録をレビューし、流量と堆砂量の関係を明らかにするこ
と。
ウ)沈砂池、浸透池、ポンプ場施設の構造的リハビリの必要性を検討し、必要であれ
ばリハビリ計画を実施する。
(5)海水淡水化プロジェクト(民間主導)
セブ都市圏では水料金が高く設定されており、表流水及び地下水開発に比べ割高な淡
水化による水供給が経営的に成り立つ地域である。BOO 方式によって地元の民間企業
(Reverse
(Mactan Rock Industries, Inc.)がすでに参入しており、
日産 5,000m3 の淡水が RO
Osmosis)方式によって生産され、1998 年から 10 年間の契約で MCWD などに卸売りされて
いる。
淡水化プラントはマクタン島南部のコルドバ町に近いラプラプ市に位置し、既存の
MCWD 給水システムと連結されている。取水方法は海からの直接取水方式ではなく、海岸
井戸からのポンプ取水方式を採用している。地下水を汲み上げることで海水の濁度、有
機物を石灰岩層(マクタン島はほぼ全域石灰岩で構成されている)によって効果的に除
去することができ、RO プラントの前処理コストを大幅に削減できる効果がある。
また、Mactan Rock は、セブ都市圏内のリゾートホテル、都市ホテル、ショッピングモ
ール、工場など事業者専用の淡水化プラントを数多く建設している。
65
生産コスト単価については未入手であるが、MCWD への売水単価は 20 ペソ/m3、民間企
業向けには 35 ペソ/m3 である。
2−4−2
上水道施設
(1)生産水量の現状
MCWD の 2004 年 9 月現在の月間生産水量の実績は表 2.4.1 に示すとおり。1 日当たりの
平均生産水量は約 155,000m3 で、その内約 11,500m3(7.4%)が民間企業との契約(BOO 方
式)による飲料水の購入(Bulk Water Supply)となっている。
South Bulk Water Supply は 2004 年から水供給を開始しており、最終的には 10,000m3/
日まで増産される予定である。一方、MCWD の生産井は 103 本あり、2003 年 9 月現在 10
本がリハビリ中で運転を停止している。適切なリハビリが行われれば、更に 1 日当たり
10,000m3 の生産水量の増加が見込まれる。
現在、無収水率が約 31%であるため有効水量は約 107,000m3 であるが、無収水率を 20%
まで削減すれば有効水量は 124,000m3 となり、17,000m3(約 11%)の水量の増産に匹敵す
る。
表 2.4.1
2004 年 9 月現在の月間生産水量の実績
月間生産水量
3
日生産水量
3
全体に占
(m )
(m )
める割合
地下水 Old wells (88 本)
3,451,449
115,048
74.1%
伏流水 Mananga 1 (15 本)
754,142
25,138
16.2%
・表流水 Buhisan ダム Tisa 浄水場
107,739
3,591
2.3%
淡水化プラント(マクタン島)
169,921
5,664
3.6%
・South Bulk Water Supply
176,518
5,884
3.8%
4,659,769
155,325
100%
MCWD の既存施設
BOO 方式による Bulk Water Supply
合
計
出典:MCWD の運転記録(2004 年 9 月)
(2)生産井の現状
図 2.4.1 に MCWD の井戸の位置図を示す。MCWD の生産井は 103 本あり、2003 年 9 月現
在 10 本がリハビリ中で運転を停止している。図 2.4.2 に生産井の本数の推移(1989 年
2003 年)を示す。1989 年から 2003 年の 14 年間に順次生産井の建設が進められ、本数
では約 2 倍(52 本→103 本)に増加している。1997 年の 15 本の増加は ManangaI プロジ
ェクトの完成による。
66
図 2.4.1
MCWD の井戸位置図
67
その他の生産井として、1990 年代始めにコンポステラ町で 14 本の生産井(生産水量
10,000m3)が建設されたが、水利用に関する町長との交渉がまとまらず稼働していない。
MCWD では水源のある自治体に対し収入の 1%を支払っている。
MCWD では生産井の他に、観測井(Observation well)20 本と沿岸モニタリング井
(Coastal monitoring well)45 本を有しており、地下水位と塩分濃度を定期的に観測し
ている。
地下水位:図 2.4.3 に6箇所の観測井の過去 27 年間(1977 年 2004 年)の地下水位の
経年変化を示す。この観測データからは地下水位について顕著な低下や変動は見られ
ない。
塩分濃度:フィリピン国の飲料水水質基準では塩素イオン濃度は 250mg/L となってい
る。MCWD ではこの基準を超えた井戸は使用停止をしており、1980 年代から現在まで 4
本の井戸が使用停止となっている。その内 3 本は Mactan 島にある井戸である。現在、
塩素イオン濃度が 200mg/l を超える井戸は Mactan 島に 5 本、リロアン町に 2 本ある。
図 2.4.4 にモニタリング井戸の過去 9 年間(1996 年 2004 年)の塩素イオン濃度の経
年変化を示す。Mactan 島の井戸は当初から 130-140mg/l と高い水準にあり、近年では
更に高くなって 200mg/l を超えている。また、San Vicente(リロアン町)の井戸が
100mg/l 前後と高い値を示しているが、その他の井戸についてはほぼ 50mg/l 以下であ
り、このデータからは顕著な塩分濃度の変動は見られない。
MCWD DEEPWELLS
140
101
103
2003
98
2002
1995
97
2001
1994
95
2000
77
97
1999
76
95
1998
77
1993
80
80
67
60
60
52
55
40
20
1996
1992
1991
1990
0
1989
NO.OF WELLS
100
1997
120
YEARS
図 2.4.2
MCWD の生産井(本数)の推移(1989 年∼2003 年)
68
27-yr. Water Level Hydrograph
MCWD Observation Wells
30
25
20
15
10
5
0
J/77 J/78 J/79 J/80 J/81 J/82 J/83 J/84 J/85 J/86 J/87 J/88 J/89 J/90 J/91 J/92 J/93 J/94 J/95 J/96 J/97 J/98 J/99 J/00 J/01 J/02 J/03 J/04 J/05 J/06
Liloan (SV7)
Compostela (W3.1)
図 2.4.3
図 2.4.4
Consolacion (K4.4)
Canduman (K2.3)
Talamban (W4.5)
Lagtang, Talisay (W2.3)
過去 27 年間の観測井の地下水位の経年変化
井戸の塩素イオン濃度の経年変化(1996 年∼2004 年)
69
(3)浄水施設の現状
MCWD は、1911 年に建設された Buhisan ダムを水源とする Tisa 浄水場を有している。
MCWD が保有する唯一の浄水場である。Buhisan ダムからの導水管はφ400 のダクタイル鋳
鉄管が使われている。処理プロセスは、沈砂池→薬品混和池→沈殿池→緩速ろ過池とな
っている。処理水は隣接する Tisa 貯水タンク(容量 5,000m3)に送られ、周辺の 8 本の
生産井からの地下水と一緒に各戸に配水されている。
最近の処理実績は 2004 年 8 月が日量 6,300m3、同年 9 月が日量 3,600m3 となっており、
乾期の終盤では同浄水場への導水量が減少することを物語っている。
(4)配水施設の現状
MCWD の生産井 103 本の内、67 本は貯水タンクに送水された後配水されるが、残り 36
本は生産井から塩素注入された後直接配水されている。現在、給水区域内に 10 箇所の貯
水タンクがあり総貯水量は 32,670m3 となっている(表 2.4.2)。2004 年 9 月の生産水量実
績 155,000m3/日に対し約 5 時間分の容量であり、今後時間ピークに対応するため貯水タ
ンクの増設を行っていく必要である。
表 2.4.2
名
称
貯水タンク一覧
場
所
貯水容量(m3)
Lagtan
タリサイ市
5,000
Tisa
セブ市
5,000
Talamban
セブ市
5,000
Casili
コンソラシオン町
5,000 x 2 = 10,000
Liloan
リロアン町
2,000
Compostela
コンポステラ町
270
MEPZ
ラプラプ町
3,200
Pusok
ラプラプ町
2,000
Cordova
コルドバ町
200
計
32,670
出典:MCWD 年報 2003
2004 年現在、導送配水管(φ1,000mm φ38mm)の総延長は 541.5km となっている。MCWD
では配水区メーター(District meter)の設置工事を進めており、約 50 箇所の設置工事
が 2005 年の上四半期に終了する予定である。これらは、オン・サイトでの計量までで、
テレメータの設置には至っていない。また、Tisa 貯水タンクの管理棟に導入されている
8 本 の 生 産 井 の 監 視 運 転 に 使 用 さ れ て い る SCADA ( Supervisory Control and Data
Acquisition)システムを除いて、ほとんどの生産井がオン・サイトでマニュアルによる
監視と運転がなされている。従って、今後、迅速な流量・水圧の管理ならびに漏水・不
法接続の探知が行えるよう、テレメーターの導入等効率的な運転管理の方法を取り入れ
ていく必要がある。
70
(5)給水施設の現状
MCWDの 2003 年末の給水接続栓数の内訳を表 2.4.3 に示す。接続栓数の割合では一
般家庭が 99%を占めている。各戸給水に加え、都市部の貧困地域を中心に共同水栓
(Communal tap)の設置を行っている。共同水栓は 1 箇所当たり 30 戸 60 戸のコミュー
ンを対象とし、共同水栓設置後はコミューンで料金徴収人を任命し、水道使用料金を徴
収している。図 2.4.5 に共同水栓の位置図を示す。
図 2.4.5
共同水栓(Communal tap)位置図
71
表 2.4.3
区
給水接続栓数の内訳
分
接続栓数
割合
91,579
99.02%
Commercial/Industrial(産業)
428
0.46%
Government(政府)
193
0.21%
Communal(共同水栓)
252
0.27%
Subdivision(団地)
18
0.02%
Condominium(共同住宅)
14
0.02%
92,484
100.0%
Residential(一般家庭)
計
出典:DATABOOK 2003, MCWD
:水道使用料金として 1 ガロン当
共同水栓の利用実態(セブ市内のコミューンの場合)
たり 15 セント(約 0.3 円)を徴収している。コミューン外の人にも開放しており、そ
の場合の料金は 1 ガロン当たり 20 セントとなっている。徴収した額と MCWD へ支払う
水道料金との差額は、コミューンの所得となりコミューンのために使用される。先月
(2003 年 9 月)の水使用量は 122m3 である。総戸数 30 戸のコミューンであり、1 戸当
たりの月間水使用量は約 4m3 で、1 家族 6 人とした場合 1 人 1 日当たりの水使用量は約
22 リットルと推計される。
(6)管路網維持管理の現状
MCWD の管路網の維持管理は、Pipeline Maintenance Group(PGM)が行っている。PGM
には漏水補修チームが 12 チーム、管路リハビリチームが 6 チームあり、24 時間体制で業
務を行っている。また、漏水探知チームが 1 チームあり漏水探知を専門に行っている。
表 2.4.4 に過去 5 年間の管路網補修実績を示す。補修の甲斐あって年々漏水件数(補
修件数)が少なくなってきている。通報からの反応時間も年々短くなって来ている。無
収水率も年々改善されてきているが、2003 年末時点でまだ 31%台に留まっており、MCWD
では本格調査において、効率的な漏水探知技術の移転ならびに効果的な無収水削減対策
を望んでいる。
表 2.4.4
管路網補修実績(1999 年 2003 年)
1999 年
2000 年
2001 年
2002 年
2003 年
給水管補修件数
20,594
20,318
19,030
18,303
17,221
反応時間(hr)
18
12
9
11
9.73
配水管補修件数
823
668
537
631
486
反応時間(hr)
17
15
10
12
11.36
出典:MCWD 年報 2003
72
(7)水質管理の現状
MCWD の水質管理はすべて Talamban にある水質試験室で行われている。表 2.4.5 にフィ
リピン国飲料水質基準(Philippine National Standard for Drinking Water)
、WHO 飲料
水質基準ガイドライン(第 3 版)
、ならびに MCWD の水質検査頻度と検査項目を示す。配
水管網の飲料水は毎日 10 箇所で採水し、細菌試験、塩素イオン濃度、硬度、pH、残留塩
素を検査している。一方、水源である 103 本の生産井の水質検査は、検査項目に応じて
月 2 回(細菌試験)
、月 1 回(硝酸性窒素、濁度、塩素イオン濃度、電気伝導率)、年 1
回(有機塩(農薬)を除くほぼフィリピン国飲料水質基準に準ずる)の頻度で検査を行
っている。塩素イオン濃度の検査頻度に見られるように、地下水への塩水浸入に対し注
意が払われている。
Talamban 水質試験室では、毎日の水道水の検査に加え、103 本の生産井の水質検査を
スケジュールを組んで毎日行っているため、検査官の技能度、熟練度も高く、セブ都市
圏では最も信頼できる試験室と言われている。
73
表 2.4.5
Parameter
水質基準ならびに MCWD の水質検査頻度と検査項目
Philippine
National
Standards for
Drinking Water
Value (mg/l)
WHO Guideline (3rd
Edition)
Parameter tested by MCWD
DistribuGuideline Acceptability tion pipe
Value (mg/l) Value (mg/l)
Daily
Production wells
Twice
monthly
Once
monthly
Annual
Bacteriological Quality
Standard value
0 in 100ml
0 in 100ml
sample
sample
Permissible limit
Total coliform
10 in 100ml
0 in 100ml
Physical and Chemical Quality: Health Significance
Maximum level
A. Inorganic Constitutens
Antimony (Sb)
0.005
0.02
Arsenic (As)
0.01
0.01
Barium (Ba)
0.7
0.7
Boron (B)
0.3
0.5
Cadmium (Cd)
0.003
0.003
Chromium (Cr6+)
0.05
0.05
Cyanide (CN)
0.07
0.07
Fluoride (F)
1.0
1.5
Lead (Pb)
0.01
0.01
Mercury (Hg)
0.001
0.001
Nitrate (NO3-)
50
50
Nitrite (NO2-)
3
3
Selenium (Se)
0.01
0.01
B. Organic Constituents (Pesticides)
Aldrin & Dieldrin
0.00003
0.00003
Chlordane
0.0002
0.0002
DDT
0.002
0.001
Endrin
0.0002
0.0006
Heptachlor and Heptachlor
0.00003
epoxide
Lindane
0.002
0.002
Methoxychlor
0.02
0.02
Petroleum oils & grease
nil
Toxaphene
0.005
2,4-D (2,40.03
0.03
dichlorophenoxyacetic acid)
2,4,5-T
0.009
0.009
Physical and Chemical Quality: Aerthetic Quality
Taste
Unobjectionable
Odor
Unobjectionable
Color
5 TCU
Turbidity
5 NTU
Aluminium (Al)
0.2
Chloride (Cl)
250
Copper (Cu)
1
2
Hardness
300
Hydrogen sulfide (H2S)
0.05
Iron (Fe)
1
Manganese (Mn)
0.5
0.4
pH
6.5-8.5
Sodium (Na)
200
Sulfate (SO4)
250
Total dissolved solid (TDS)
500
Zinc (Zn)
5
Disinfectant
Residual Chlorine
0.2-0.5
Others
Conductivity
Thermotolerant coliform
E.Coli.
74
-
O
O
O
O
-
O
O
-
O
O
O
O
O
O
O
O
O
-
O
-
O
15 TCU
5 NTU
0.2
250
1
0.05
0.3
0.1
200
250
1000
3
-
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
O
水質検査機器として、Talamban 水質試験室では原子吸光光度計、ガスクロマトログラ
フィを備えているが、ガスクロマトログラフィは故障して使用できないため、ガスクロ
マトログラフィを使用する有機塩(農薬)類の検査は行っていない。従って、本格調査
において、水源の水質の安全性の確認と今後の経年変化計測のためのベンチマークとし
て、有機塩(農薬)類の検査を行う必要がある。
セブ都市圏にはその他の水質試験室として、DENR とサンカルロス大学があるが、DENR
のガスクロマトログラフィはやはり故障しており、サンカルロス大学は学生の研究用と
して使用しているため経験数が少なく精度に問題があるため、マニラの LWUA の水質試験
室で行うのが最も信頼性が高いと思われる。
2−4−3
下水、排水処理施設
セブ都市圏における下水、排水処理施設は次の3種類が存在する。
(1) 下水処理場
(2) セプティックタンク
(3) 雨水排水管路
セブ市においては市営下水排水処理場及び民間運営による計2箇所の処理場が確認され
た。都市部の家庭ではセプティックタンクを使用し、普及率は 55%強である(表 2.4.5 都市
別セプティックタンク設置数)。
セブ市、マンダウエ市及びラプラプ市の都市部では雨水排水管路の整備が見られるが、
インベントリーは確認されているのはラプラプ市のみである。
以下に各施設の詳細を述べる。
(1)下水処理場
1)セブ市営下水処理場
この処理場は 1980 年代に Philippine Estate Authority(PEA)によって建設され、
1991 年にセブ市に移管された。
処理場はセブ市北部の埋立地に位置し、面積 169ha、処理方式としてはエアレテッ
ドラグーン方式が採用され、沈砂池2系列、エアレテッドラグーン4系列の設計で
あり、エアレテッドラグーンの容量は 10,000 ㎥となっている。しかしながら、現在
は表面曝気装置が1基のみ稼動しているため、実際の処理能力は 2,500 ㎥にとどま
っている。処理対象区域はシューマートと呼ばれる巨大スーパーマーケットとその
周辺に立つ高層アパート群 56 施設で、各々の汚水発生源とは 350mm口径の管路で
接続されている。
流入汚水の BOD 濃度は 500∼700ppm、処理後の放流水 BOD は 50∼70ppm となり、放
流先は隣接河川である。汚泥は埋め立て地にて天日乾燥後、埋め立て用土砂と一緒
に混合処分されている。
図 2.4.6 に処理場の図式と説明文を示す。
当処理場はセブ市役所の職員4名で運営されている。施設の設備機材(エアレー
75
ター)を稼動させるため電気料金は受益者負担となっており(2.1∼2.3 ペソ/1㎥)、
下水料金は、上水道料金に加算された形で徴収されている。下水処理場の職員の人
件費と施設の維持管理用機材の運転費などはセブ市の予算でまかなわれている。
図 2.4.6-1
セブ市営下水処理場
76
図 2.4.6-2
2)アヤラ
セブ市営下水処理場の説明文
ビジネスパーク内の処理場
Ayala 財閥によって運営されるアヤラモールを発生源とする汚水処理を目的とし
て建設されたもので、標準活性汚泥方式を採用しており、施設面積は 59 ヘクタール
である。表明されている処理能力では、処理後の BOD 濃度は 20ppm と良好であるが、
調査時点では修理中との事であった。
(2)セプティックタンク
セプティックタンクは嫌気性菌の働きにより、沈殿した汚泥を無害化される原理を利
用して作られた処理層である。セプティックタンクは水で密閉されたトイレに接続され、
汚物水が流入すると固形物は沈殿し、上澄み水は放流口までゆっくりした速度で流され
る。沈殿した汚泥は 7∼12 年毎に取り除かれるがこの沈殿汚泥は年月の間に嫌気性発酵
し、安定した無機質に変わり、汚泥容量の減少を見る。構造としてコンクリートまたは
レンガを材料とし、沈殿汚泥と浮遊物を分離するのに、間仕切り壁が必要とされる。滞
留時間が 8∼24 時間必要という大まかな基準である。現在、セブ都市圏全体のセプティ
ックタンクの設置率は 55%強であるが、家庭汚水対策としてセプティックタンクの設置
は推奨されており、設計基準の見直しや放流水濃度を測るモニタリングシステムの整備
等による改善が望まれる。
調査体調地域でのセプティックタンクの設置率は各市町村別にまとめると下記の表と
なる。
77
表 2.4.6
都市名称
都市別セプティックタンク設置数(設置は都市部のみ確認)
調査対象家庭
セプティックタンク数
設置率(%)
セブ
114,700
75,400
65
マンダウエ
34,400
20,400
59
ラプラプ
26,700
8,300
31
タリサイ
18,200
9,370
51
コンソラシオン
7,900
2,800
35
リロアン
8,300
2,500
30
コンポステラ
4,200
830
20
コルドバ
4,000
1,020
25.5
218,000
120,620
55.3%
合計
出典:Metropolitan Cebu Sewerage and Sanitation Project 2000
なお、セブ市を流れる Guadarupe 川は河口付近の水質汚染が著しく、姉妹都市となって
いる北九州市の国際協力により、セプティックタンク付きの公衆トイレが数箇所建設さ
れている(図 2.4.7 に北九州市の協力により設置された浄化槽の設計図)。
図
2.4.7-1
78
浄化槽設計図
図 2.4.7-2
浄化槽立面図
(3)排水施設(雨水排水管路)
セブ、マンダウエ両市の都市部では管渠、ボックスカルバートその他の水処理構造物
が確認された。セブ市での雨水排水計画である”Flood Mitigation and Drainage Study
for Cebu City:2004”において、都市部で既設となっている雨水排水管路では、排水管
路平面図からの管渠口径別・種類別のインベントリーはコンサルタントが行うこととし
ている。ラプラプ市ではインベントリーが作成されている。また、これら3市の都市部
では主要道路の縁石を 25∼30m間隔で切り欠き、降雨時の雨水流入口としている。他の
市、町においても行政上の方針、財政状況に応じて排水施設の整備が見られる。
79
2−5
実施中及び計画中のプロジェクト
(1)進行中のプロジェクト
ア)概要
MCWD の新規井戸開発、南部水供給計画、コンポステラ地下水開発などが 2003 年投
入を目指し進行中である。Carmen 導水は、既に ICC 及び ECC を入手済みで、公聴会
での承認、NWRB による料金設定の承認、資金調達方法の決定などが予定されている。
イ)Carmen 導水計画
本年 8 月 30 日フィリピン経済開発庁(NEDA)の投資調整委員会−内閣委員会
(ICC-CC)は、セブ都市圏飲料水地域(MCDW)のカルメン大量飲料水供給プロジェ
クトを条件付で認可した。このプロジェクトは、セブ・カルメンのカンツモグール
ヤン川から日量平均 5 万 m3 の飲料水を供給しようという BOO(建設−運営−所有)プロ
ジェクト。ラバーダム、2 つの取水口、水処理プラント、口径 1 メートル距離数 30
キロメートルの送水管などから構成され、初期資本コスト見積り額は 16 億 6600 万
ペソ。
本格調査では最も実現性の高い Carmen 導水に係る下記事項についてレビューする
こと。
ア)FS レポートを入手し、プロジェクトのコンポーネントを確認すること。
イ)気象水文分析に係る検討を行い、Carmen から得られる長期的水源ポテンシャ
ルを確認すること。
ウ)DENR の ECC の検討事項をレビューすること。
エ)Carmen 導水に係る公聴会の内容、料金設定の許可などをレビューする。
(2)計画中のプロジェクト
セブ都市圏への水供給プロジェクトとして、過去に提案された案件を本格調査で対応
すべき事項も含め下記にまとめる。
案件名
Mananga II ダム計画
開発水量(m3/日)
注釈
35,000 Mananga I の上流約 2 キロの地点にダ
ムを建設する計画である。べクテルに
よって FS が実施されたが、建設単価
が高く、また Mananga 流域が流域保全
地域として指定されているために今
すぐ開発できる可能性は低い。しか
し、長期的な将来水需要の観点から見
ると、セブ都市圏内のダム案としては
唯一実効性の高い計画である。本格調
査では、既存 FS 計画案を見直し、中
80
規模ダム案、送水管ルートなど代替案
を複数検討し、環境影響度が低く、実
施可能性の高い案をマスタープラン
の中で検討すべきである。ただし、環
境的な問題が解決されるまでは、FS 対
象としては時期尚早である。
Lusaran 川ダム計画
150,000 セブ都市圏のダム開発計画としては
最も古い。1980 年に FS が終了。環境
保全、住民移転、東部沿岸河川への転
流用トンネル建設コストなど問題点
が多い。最大の懸案は、転流用のトン
ネル工事である。コスト高と環境破壊
が見込まれ、たとえ長期の水需要を想
定したとしても実施可能性はない。本
格調査においては検討する必要性は
低い。
Kotkot 川中小規模ダム計画
20,000 Kotkot 川上流に中小規模のダムを建
設する計画。詳細は不明。本格調査で
は、中小規模の開発ポテンシャル量、
概算コストを検討すること。
Argao 地下水開発
100,000 セブ都市圏南方約 60km で地下水を開
発し、導水する計画。詳細は不明。本
格調査では、中小規模の開発ポテンシ
ャル量、概算コストを検討すること。
Bohor 導水計画 I(頭首工)
130,000 1995 年に当時のセブ州知事の推進に
Bohor 導水計画 II(ダム)
259,000 より、アメリカのコンサルタント会社
Brown & Roots によってフィージビリ
ティー調査が行なわれた。ボホール島
の Inabanga 流域から取水し、マクタ
ン島までの 30km の海底パイプライン
敷設、マクタン島のポンプ場などから
なる。ボホール島側の反対運動、
Inabanga 流域の環境破壊、ボホール海
峡の海溝横断、建設費など技術的、環
境的、経済的、社会的な問題が多い案
件である。
ボホール島から Water Bag をタグボー
トによって牽引する方法も提案され
ているが、具体的な調査検討は実施さ
81
れていない。本格調査の対象流域では
ないため、調査対象として考慮する必
要はない。
Malubog−Mananga 転流計画
124,000 セブ島西岸 Toledo の山地に位置する
既存の銅鉱山用のダム(Malubog Dam)
から、計画中の Mananga II ダムに余
剰水をトンネルによって転流する計
画 で あ る 。 鉱 山 会 社 で あ る Atlas
Mining Corp.自身の計画である。ダム
諸元など詳細は不明。Mananga II ダム
の完成を前提とする。実施の可能性は
かなり低い。本格調査では、開発ポテ
ンシャル量、概算コストを検討するこ
と。
Pulambato ダム計画
210,000 Butuanon 川 上 流 に ダ ム を 建 設 し 、
Lusaran ダムから導水トンネルによっ
て転流する計画。Lusaran ダムとの連
携が必要であり、Pulambato ダムのみ
では利用可能水量は乏しい。ダム諸元
などの詳細は不明。本格調査では、開
発ポテンシャル量、概算コストを検討
すること。
今後予定されている水供給計画としては、JBIC 国際金融による「セブ都市圏海水淡水
化 FS」がある。2005 年 2 月から 7 ヶ月の予定で実施されることになっている。淡水化 FS
は MCWD の将来計画にも含まれており、FS の実施は MCWD の緊急課題であった。
本 FS はセブ都市圏水供給において最も水不足が深刻なマクタン島ラプラプ市が対象需
要地である。マクタン全島は石灰岩で構成されており、地下水への海水浸透が激しく、
飲料水の水質基準を大幅に越えている。また、マクタン島とセブ本島を結ぶ第1マクタ
ン橋には導水管が敷設されているが、セブ本島側の送水ポンプ設備の容量が小さく、ま
た旧式のため給水時間が午前中に限られている。
従って、ラプラプ市の民生用水供給のみならず、日系企業が多く入居している工業団
地への水供給が深刻化しており、ラプラプ市や日系企業からマクタン島内での大規模な
海水淡水化プラント開発が強く望まれている。
2−6
国際機関等の動向
(1)概要
セブ都市圏で現在進行中の外国政府支援による水資源関連調査は以下の通り。
82
−
PCEEM(カナダ政府支援)
−
Water
REMIND(オランダ政府支援)
いずれも水資源管理、流域保全に関する調査であり、本案件の実施に際しては両調査
との十分調整・連携が必要である。
(2)Water REMIND
Water REMIND プロジェクトは、正式名称を「Central Cebu Water Resources Management
through Integrated Development」とし、オランダ政府の支援により 2002 年 12 月から 5
年間に亘って行なわれる。プロジェクトコストは約 5 億円である。
コンサルタントとしては、海外はオランダの Delft Hydraulics を中心としたコンソー
シアム、ローカルはサン・カルロス大学水資源センター、NGO の CUSW(Cebu Uniting for
Sustainable Water)である。
カウンターパート機関としては、DENR,セブ州政府、セブ市、MCWD が名を連ねている。
本調査の対象地域は中部セブ地域であり、同地域における総合的水資源管理(IWRM)
の実現を目指している。長期計画策定のための目標年は 2030 年としている。
主な目的は、
−
水資源関連情報管理システムの構築
−
水資源及び流域管理の評価解析のための運用管理手法の開発
−
将来実行計画の策定
−
小規模環境保全プロジェクトの実施
−
関連機関のキャパシティー・ビルディング
である。
また、実行計画へ向けての作業としては、
−
水資源ポテンシャルの評価
−
水収支の検討
−
将来地域開発シナリオの検討
−
水量、水質、侵食及び堆砂、洪水などの検討
−
水料金体系、水関連施設のリハビリ、行政組織改革などの検討
を含むとしている。
2004 年 1 月に提出された Inception Report では、実行計画(Action Plan)の策定は
2005 年から 2006 年にかけて行なわれる予定である。
(3)PCEEM
83
正 式 名 称 は 「 The Philippines-Canada Environmental and Economic Management
Project」であり、カナダ政府側は CIDA、フィリピン政府側は DENR を実施機関として 1998
年から 2003 年まで実施された。現在 2 年の調査延長によりコミュニティーレベルでの環
境保全パイロットプロジェクトが進行中である。
プロジェクトの目標は、環境管理に関わる政府機関及び NGO の効果的なガバナンスを
促進させることであり、セブ都市圏流域の生態系保全に寄与することとした。
セブ都市圏の環境問題として下記の課題を挙げている。
−
水供給の不確定
−
地下水の汚染、劣化
−
表流水の汚染
−
利害者間の協力体制の欠如
−
流域の開発と保全に関わる各セクター間の対立
−
環境管理に関わる不整合な政策
本プロジェクトのアウトプットとしては、
−
管理評議会の設立
−
総合的流域管理計画
−
パイロットプロジェクトの実施
が提案されている。詳細については未入手。
(4)NGO
ア)Water Resources Center (University of San Carlos)
セブ市にあるサン・カルロス大学水資源センターは、1975 年に Hydrological
Research and Training Unit (HRTU)として設立されている。セブ市およびマンダウ
エ市における海水の地下水への影響調査、セブ都市圏の水文気象データの管理、政
府機関への技術支援など行なってきた。Water REMIND プロジェクトではコンサルタ
ントとして中心的な役割を果たしている。
イ)CUSW (Cebu Uniting for Sustainable Water)
Mananga Watershed Development Authority (MWDA)が廃止されたのをきっかけと
して、セブ都市圏全体の水資源管理及び保全を目的とした NGO として 1995 年に設立
された。34 のメンバーから開始されたが、2001 年では 138 の非政府機関から構成さ
れている。商業セクターでは PBSP (Philippines Business for Social Progress)
が中心的な役割を果たしている。
Water REMIND プロジェクトでは、社会開発に関わるコンサルタントとして参加し
ており、小規模な地方給水パイロットプロジェクトを推進している。
84
2−7
環境予備調査結果
2−7−1
環境社会配慮に係る法制度
(1)法制度
フィリピン国の環境政策は、以下の環境法によって基本的位置づけがなされている。
z 大統領令
第 984 号
(1976 年制定):Pollution Control Law 最初に制定され
た汚染規正法として、廃棄物・下水/排水処理等の定義から罰則等にも言及して
いる。
z 大統領令 1151 号フィリピン環境政策(Presidential Decree : PD No.1151 :
Philippines Environmental Policy )1977 年制定
人間と自然の調査・共存、
フィリピン国民のよりよき将来と生活を維持するための環境保全を謳う、基本政
策
大統領令 1152 号フィリピン環境基準
(PD No.1152 Philippine Environmental Code)
1977 年制定。
z 大統領令 1586 号 EIS(PD No.1586 Environmental Impact Statement System)1978
年制定。
z 上記 1152、1586 号によりフィリピンにおける環境基準および環境影響評価手続き
(EIS)が確立された。
z 布告
第 2146 号 (1981 年制定)
:環境的に保護すべき区域及び環境への影響が
考慮されるべきプロジェクトの配慮への布告
z 環境・天然資源省令
No.34 (1990 年制定)
:水質基準等を含む環境汚染防止法
として、飲料水及び排水(家庭、工場を含む)の水質基準を規定したものであり、
1990 年シリーズの一つである。上・下水とも基準は溶存酸素、PH,BOD,有機物質
と貴金属等かなり詳細な規定がなされている。
z 環境・天然資源省令
No.35 (1990 年制定)
:大統領令
984 号を受け継いで環境・
天然資源省は排出基準の改定を行った。これは字義通り「排出基準改定 1990 年版」
と呼ばれ、基準ないし規則は工業ないし市町村の家庭排水に適用される。また、
ここでは、用語の定義をさらに、技術的に行っており、同 34 号で使用用途に応じ
て分類された河川(CLASS AA∼CLASS B)での BOD,DO,COD、重金属の規定値等を
定め、産業排水・家庭排水を規制し、河川水の保護を目的としている。
z 環境・天然資源省令
No.42
(2002 年制定):大統領令 1586、1978 年制定の基
準等他の目的も含む環境影響評価制度の実行をはかるため、環境・天然資源省
(DENR)の担当局長及び地方局長に対し、環境審査免除証明や環境応諾証明書を
発行する権限を与えている。
(2)所轄官庁
フィリピン国における環境行政担当機関は、環境・天然資源局(DENR :Department of
Environment and National Resources)、及び DENR 下の環境管理局(EMB :Environment
Management Bureau),保護区・野生生物事業部( EMPAS : Environment Management and
Protected Areas Services ) である。
85
(3)関連する開発計画
セブ都市圏の4都市4町の内、4 市 3 町では各々の総合開発・土地利用計画が以下のよ
うに作成されている。
セブ市:下水処理将来計画(1995)および雨水排水総合計画(2003)
ラプラプ市:総合開発計画
及び都市開発戦略計画(1999∼2020)
マンダウエ市:マンダウエ市開発戦略計画(2002∼2005)によれば総合雨水排水シス
テム計画は最優先計画とされており、雨水排水路計画整備が約 70%程度
の進捗を示している。
タリサイ市:2010 年を目標とした Talisay City Comprehensive Land Use Plan(2001
∼ 2010)において中央集中型雨水排水路を整備する方針である。
コンソラシオン町:総合土地利用計画(2001∼2010)
リロアン町:総合開発計画(2000∼2020)
コルドバ町:総合土地利用計画及び区画法(2004∼2014)
コンポステラ町では明確な開発計画は確認されなかった。
(4)環境社会影響配慮(環境影響評価)の概要
1978 年に改定発布された大統領令第 1586 号(環境影響評価システム及び環境管理基準
等に関する政令)に基づき、計画される全てのプロジェクトは以下に述べる環境審査の
手続きを踏まなければならない。
フィリ ピ ン の 環 境 審 査 で は 、申 請 す る プ ロ ジ ェ ク ト が 、1)ECAs(Environmentally
Critical Areas
環境的に配慮を必要とする地域)であるか、2)ECPs(Environmentally
Critical Projects
環境に重大な影響を及ぼすとみなされるプロジェクト)に該当する
かの判断が最初に行われる。どちらにも該当しない場合は環境審査免除証明
(Certificate of Non.Coverage)が発行される。
1)プロジェクトが ECAs に該当すると判断された場合
① 事業者は初期環境影響評価(Initial Environmental Examination
:IEE)を
作成、環境配慮事項を明記の上 DENR/EMPAS に提出し、審査を受ける。IEE は
図 2.7.1 参照
② 審査により、明記した環境配慮で十分と判断された場合は環境応諾証明書
(Environmental Compliance Certificate : ECC by DENR Local office)を
受ける。ECC は図 2.7.2 参照
③ より詳細な環境調査が必要と判断された場合はスコーピングを実施し、環境
影響報告書(Environmental Impact Statement : EIS)を DENR/EMB に提出す
る。
④ 報告書は EMB 内部の委員会による審査を受け、必要があれば公聴会を開き、
当該プロジェクトの環境配慮が十分であり、プロジェクト実施による大きな
環境影響の発生がないと判断されれば DENR 本省から ECC が発行される。
2)プロジェクトが ECPs に該当すると判断された場合。
86
① 事業者はプロジェクトのスコーピングを実施し、EIS レポートを DENR/EMB に
提出する。
② EMB 内部での委員会による審査を受け、必要な場合は公聴会を開き、当該プロ
ジェクトの環境配慮が十分であり、プロジェクト実施による大きな環境影響の
発生がないと判断されれば DENR 本省から ECC が発行される。
※上記の経過の後、申請されたプロジェクトが ECPsの基準に達する、または ECAs に
該当しない場合は ECC が発行される。
以下、図 2.7.1∼2.7.6 にフィリピンの環境社会配慮に関わる資料を示す。
87
図 2.7.1
初期環境影響評価の概要
88
図 2.7.2
環境応諾証明書
89
図 2.7.3
スコーピングのプロセス
90
図 2.7.4
EIS の準備と提出
91
図 2.7.5
EIS 評価のプロセス
92
図 2.7.6
IEE 評価のプロセス
93
(5)情報開示
現段階で、フィリピン国における情報の開示に関する法案については明確な解答は示されて
いない。しかし、JICA の環境社会配慮ガイドラインに則った、情報開示における協力要請に対
しては同意を得た。
(6)ステークホルダー(利害関係者)の参加
フィリピン国では上下水道施設整備計画を実施する場合、行政(地方自治体)、有識者(大学)、
マスメディア、関連企業、地域住民、NGO などの発言の機会を作り、それぞれが自覚を持って、
この発言の機会を積極的に活かすことで問題解決へとつなげている。
本計画に関して MCWD 側への聞き取り調査では、MCWD 総裁は、本計画が実施される場合、関
係するステークホルダーには利害関係を明らかにして問題点の共通認識を図り、地域エゴ、個々
のエゴを主張することなく、ステークホルダー・パートナー全員の利益に合致するような建設
的な意見を求める予定であると表明した。
2−7−2
プロジェクト実施区域の概要
(1)位置
セブ都市圏は、ヴィサヤス地方のほぼ中心部に位置するセブ島の中央部、及び対岸のマクタ
ン島を含み、対象面積は 677km2 である。マクタン島はセブ本島とは 300m の海峡を隔て、2本
の橋で結ばれている。セブ本島は海岸から 20∼30km 陸地に向かうと山岳地帯に入る。
マクタン島は 43km2 で、全体的に平坦であり、空港近くに 30m 程度の丘陵がある。
ラプラプ市(約6km2)とコルドバ町(約7km2)はマクタン島に位置する。
(2)人口
セブ都市圏の中心であるセブ市の人口 71.8 万人は全体の半数弱を占めている。マクタン海峡
に向かい合うマンダウエ、ラプラプ、タリサイ市を合わせると全体の 9 割近くを占め、都市部
での観光サービス産業他、産業及び人口の集中が見られる。
表 2.7.1
調査対象地域の都市別人口
都市名
セブ
ラプラプ
マンダウエ
タリサイ コルドバ
リロアン
コンソラシオン
コンポステラ
合計
人口
(万人)
71.8
21.7
25.9
14.8
6.5
6.2
3.1
153.4
3.4
出典;The Study on Metro Cebu Sewerage system Development
(3)人種
フィリピン全体ではマレー系を主として、モンゴル、中国、の混血が人口の 90%以上をしめ、
残りをスペイン系、アメリカ系との混血が占めている。
94
(4)経済
セブ都市圏の経済活動は軽工業、農業、観光業と様々であるが、同時にセブの周辺からの人
口流入によって、急激な発展が遂げられた。産業の構成は変わりつつある。セブ市の産業別就
業比率は表 2.7.2 に示した。
表
2.7.2
産業別人口就業比率
経済分野
産業別比率(%)
林業、狩猟、農業
7.53
漁業
0.27
鉱山、原石山
0.15
製造業
11.23
電気、ガス
1.21
建設
6.18
サービス
54.72
貿易
18.44
その他
0.28
計
100.0
出典 Flood Mitigation and Drainage Study for Cebu City(2004)
(5)土地利用状況
セブ都市圏約 667km2 のうち、セブ市、マンダウエ市、ラプラプ市の3市でほぼ 60%を占めて
いる。この3市での商工業地域はセブ都市圏全体の 20%に達し、観光業、造船、電気、各種軽
工業を中心とする。コンソラシオン、コンポステラ、リロアン町はその地域のほとんどが農業
用地であり、都市圏全体の 20%強となっている。タリサイ市及びコルドバ町は海岸に面し、観
光と漁業を中心産業としており、都市圏全体面積の 20%を占める。
セブ都市圏の発展に大きく貢献しているのは、セブポートセンターとして知られる海岸に沿
った埋立地で、工業団地の誘致に貢献している。
次の表 2.7.3 はセブ都市圏産業別土地利用の比率を示す。
95
表
市/自治区
2.7.3
セブ都市圏における産業別土地面積の比率
割合
土地面積(対全面
積比率)
住宅用地
商業用地
産業用地
その他
セブ市
27,945
(44%)
30
10
20
40
マンダウエ市
2,888
(4.5%)
27
15
39
19
ラプラプ市
5,923
(9.3%)
40
5
25
30
コンソラシオン町
4,205
(6.6%)
9
0.5
0.5
90
リロアン町
4,222
(6.6%)
-
0.5
0.5
90
コンポステラ町
4,509
(7.1%)
25
0.5
-
74
コルドバ町
6,978
(11%)
70
1.0
-
30
タリサイ市
6,890
(10.9%)
36
1.0
1.5
61
全面積
63,560
(100%)
出典:Metropolitan Cebu Sewerage and Sanitation Project (1995)
(総面積及びパーセントは計算により追加記入しました)
(6)環境
平均気温-----27.4 度
平均湿度-----78 %
平均年間降雨―1,637mm
降雨量は7月が最大で、3月が最小である。雨季は6月から 12 月迄である。
2−7−3
事前スコーピング(負のインパクト及びその緩和措置)
(1)ダム計画を含まない場合
地下水による水源、上水道施設整備、下水処理施設・衛生設備の改善等を調査範囲とする場
合、計画時・施工段階・運営開始後、以下の点で計画予定地の環境に負のインパクトに配慮す
る必要がある。
96
表
2.7.4
スコーピングチェックリスト
環境項目
評定
根
拠
1
住民移転
C
上下水道施設建設を行う場合、用地取得時、用地取得によ
る住民移転が起こる可能性あり。
2
経済活動
D
マイナスのインパクトは考えられない。
3
交通・生活施設
D
交通の妨げになる施設建設の可能性はない。
4
地域分断
D
特になし。
5
遺跡・文化財
D
ラプラプ市にはマゼランの記念碑があるが、影響はない。
6
水利権・入会権
D
特になし。
7
保健衛生
D
特になし。
8
廃棄物
C
9
災害(リスク)
C
10
地形・地質
D
特になし。
11
土壌浸食
D
特になし。
12
地下水
C
水源を地下水(伏流水)に求める場合、施工時及び運営開
始後地上からの汚染水浸透による地下水汚染、および塩水
遡上が懸念される。
13
湖沼・河川流況
D
特に考えられない。
14
海岸・海域
D
工事が実施されても主として内陸のため問題は発生しな
い。
15
動植物
D
上下水道施設建設による保護区等へ影響はない。
16
気象
D
特になし。
17
景観
D
特になし。
18
大気汚染
D
特になし。
19
水質汚濁
D
管渠の整備、河川の清掃によって水質は改善されると予測
される。
20
土壌汚染
D
特に無し。
21
騒音・振動
C
上下水道施設実施時に掘削・埋め戻し等による騒音、振動
の可能性がある。
22
地盤沈下
C
井戸建設を行う場合、地盤沈下の可能性あり。
23
悪臭
D
特になし。
上下水道施設工事実施の場合は施工時掘削残土、廃材が発
生する。
上下水道施設建設した場合、掘削時の地山崩壊が起こり、
周辺住民への影響が考えられる。
(注1)評定の区分
A:重大なインパクトが見込まれる
B:多少のインパクトが見込まれる
C:不明(検討をする必要はあり、調査が進むにつれて明らかになる場合も十分に
考慮にいれておくものとする)
D:ほとんどインパクトは考えられないため IEE あるいは EIA の対象としない
(注2)評定に当たっては、該当する項目別解説書を参照し、判断の参考とすること
97
想定される緩和措置
表
環境項目
住民移転
廃棄物
地下水
想定される緩和措置
C
施設場所の選定に配慮。移転住民数の極力少
数化、法的措置、移転先の選定等への配慮を
最大限行う。
C
C
騒音、振動
地盤沈下
影響への対策
評定
C
災害(リスク)
2.7.5
確認事項
残土、汚泥の発生は即撤去するよう建設
業者に指導。
設計・施工時に掘削工事による地山崩壊を招
かないよう考慮する
地上汚染をなくすための衛生上の対策、セプ
ティックタンクなどの増加を考慮する。塩水につい
てはデサリネーションプラントの考慮が必要となる
C
建設時施工方法の検討。
C
井戸掘削場所の決定の際に地質調査を十分
に行う。また、揚水の前に揚水箇所の透水係
数、揚水量などの調査を詳細に実施する。
淡水化プラント建設による地盤沈下抑制効
果を検討する。
(注1)評定の区分
A:重大なインパクトが見込まれる
B:多少のインパクトが見込まれる
C:不明(検討をする必要はあり、調査が進むにつれて明らかになる場合も十分に
考慮に入れておくものとする)
D:ほとんどインパクトは考えられないため IEE あるいは EIA の対象としない
(2)ダム計画を含む場合
マナンガⅡダム建設、上水道施設整備、下水処理施設・衛生設備改善を調査範囲とする場合、
計画時・施工段階・運営開始後、計画予定地の環境に以下の負のインパクトに配慮する必要が
ある。
98
表
2.7.4-1
スコーピングチェックリスト
環境項目
評定
根
拠
1
住民移転
B
ハイダム建設(ダム本体及び表流水を水源とする場合は浄水
場)等施設用地の取得時に、住民移転の可能性がある。
2
経済活動
D
マイナスのインパクトは考えられない。
3
交通・生活施設
D
建設予定地は交通の妨げにならない。
4
地域分断
D
ハイダム建設時でも、迂回路を造ることが可能であるため、
分断は起こらない。
5
遺跡・文化財
D
6
水利権・入会権
C
7
保健衛生
D
特になし。
8
廃棄物
C
工事実施時に廃材、掘削残土が発生する。
9
災害(リスク)
C
工事実施時土留め工打ち抜き地山掘削時の地山崩壊の可能
性あり。
10
地形・地質
C
ハイダム建設時可能性あり。
11
土壌浸食
D
特になし。
12
地下水
C
施工実施時及び運営開始後も地表での汚水が地下水に浸透、
地下水の水源を汚染する可能性あり。
13
湖沼・河川流況
D
特になし。
14
海岸・海域
D
主として内陸での工事のため影響はない。
15
動植物
B
ダムサイト予定地 200m 上流に森林保護区が存在する。計画段階
で ECAs が適用される。絶滅種存在の場合は建設が難しい。
16
気象
D
特になし。
17
景観
D
特になし。
18
大気汚染
D
特になし。
19
水質汚濁
D
水質は改善されると予測される。
20
土壌汚染
D
特になし。
21
騒音・振動
C
工事実施時の掘削、埋め戻しによる騒音・振動が発生し、周
辺住民に影響が及ぶ可能性がある。
22
地盤沈下
C
井戸建設を行う場合、地盤沈下の可能性あり。
23
悪臭
D
特になし。
ラプラプ市にはマゼランの記念碑があるが、影響はない。
計画・施工段階で関連機関、住民との利害が生ずる可能性が
ある。
(注1)評定の区分
A:重大なインパクトが見込まれる
B:多少のインパクトが見込まれる
C:不明(検討をする必要はあり、調査が進むにつれて明らかになる場合も十分に
考慮にいれておくものとする)
D:ほとんどインパクトは考えられないため IEE あるいは EIA の対象としない
(注2)評定に当たっては、該当する項目別解説書を参照し、判断の参考とすること
99
想定される緩和措置
表
環境項目
2.7.5-1
影響への対策
評定
想定される緩和措置
住民移転
B
住民移転先の検討、及び補償等につき関係者と打ち合わ
せする事。
水利権、入会権
C
利害関係者と事前によく打ち合わせする事。
ダム建設により水枯れ等発生する場合は、補償必要性あ
り。
廃棄物
C
災害(リスク)
C
地形、地質
C
残土、汚泥の発生は即撤去するよう建設業者に指導す
る。
工事施工時に、工法の検討。並びに現場での
施工は慎重に行う。
地形に与える影響を考慮し、設計計画を立てる。
地下水
C
伏流水は地上からの汚染の影響が大きいので、地上汚染
をなくすための衛生上の対策、セプティックタンクなどの増加を
考慮する。
動植物
B
事前に IEE の作成と提出、フィ国 EIS の審査を受ける。
住民への聴き取りで絶滅種に該当する動植物の存在の
確認し、法令の詳細な確認や DENR との協議を行う。
騒音、振動
C
地盤沈下
C
建設時施工方法を検討し、可能な限り低振動の工法、機
械(埋め戻し機械等)を採用する。
井戸掘削場所の決定の際に地質調査を十分に行う。ま
た、揚水の前に揚水箇所の透水係数、揚水量などの調査
を詳細に実施する。
淡水化プラント建設による地盤沈下抑制効果を検討す
る。
確認事項
(注1)評定の区分
A:重大なインパクトが見込まれる
B:多少のインパクトが見込まれる
C:不明(検討をする必要はあり、調査が進むにつれて明らかになる場合も十分に
考慮に入れておくものとする)
D:ほとんどインパクトは考えられないため IEE あるいは EIA の対象としない。
100
第3章
本格調査への提言
要請内容と現在の問題点から、本格調査の実施について下記のとおり提言する。
ただし、事前調査実施時にオランダ政府支援による Water REMIND Project が実施されて
いることが確認されている。このプロジェクトでは本格調査の対象地域を含むセブ都市圏
における水資源の把握と管理について検討されるため、本格調査については右プロジェク
トの終了を待って再検討する必要がある。右プロジェクトの成果を踏まえて、本格調査の
内容は大幅に見直すことが必要になると思われる。
3−1
調査の目的
(1)フェーズ I にて、目標年次を 2020 年とするセブ都市圏の水資源開発管理及び制度整
備、上水道施設、衛生施設改善に関わるマスタープランを策定する。
(2)フェーズ II にて、優先プロジェクトに対するフィージビリティースタディーを含む
アクションプランを策定する。アクションプランの内容に関してはフェーズ II の結
果を踏まえ、比側との協議に基づき決定するものとする。
(3)本格調査を通じ、比側カウンターパートに対する技術移転を行う。
3−2
調査対象範囲
本件の調査対象地域は、以下の通りとする。
(1)水源開発管理に関しては、セブ都市圏を包括する中部セブ地域とする。
(2)上水道施設、衛生施設改善に関しては、セブ都市圏とする。
3−3
相手国調査実施体制
本件の比側実施機関は、セブ都市圏水道局(Metropolitan Cebu Water District: MCWD)
である。MCWD はセブ都市圏における上水道及び衛生施設の管轄機関と位置付けられている。
また、プロジェクト実施の承認は NEDA Region VII を調整機関とする中部ビサヤ地域の地
域開発委員会(Regional Development Committee: RDC)が行う。
従って、本格調査実施にあたっては、MCWD と NEDA Region VII をカウンターパート機関
とし、両機関を中心としたステアリングコミッティー及びテクニカルワーキンググループ
を設置し、ステークホルダーとの連携に留意しつつ調査を実施することが必要となる。
3−4
調査項目及び内容
3−4−1
調査の概要
本件調査では、以下の 2 つのフェーズに分けて実施することとする。
<フェーズ I: M/P 策定>
フェーズ I のマスタープラン策定では、既存の開発計画をレビューし、セブ都市圏の水
資源、水供給及び衛生に係る中長期開発計画の策定を目的として関連調査を実施する。フ
101
ィリピンにおける水資源管理手法として、総合的水資源管理(IWRM)が推進されており、
本件においても遵守すること。また、中部セブ地域を対象とした関連調査が実施されてお
り、それら調査計画との調整を図ること。水供給システム、衛生施設の課題や今後の改善
施策を十分考慮しつつ、必要最小限の施設計画を決定すること。
マスタープランとしての将来水需要供給計画は、通常の需要ベースのみならず、供給ベ
ース及び両者を考慮したケースを柔軟に想定して将来施設投入計画を実施する必要がある。
そのためには、水収支データベースの構築、水関連政策のシナリオ分析を行い、水資源管
理計画の政策オプションを広範に評価するものとする。下記に示す各種オプションに対応
できる水資源管理計画を作成し、将来に亘って持続的に機能するものとする。
−
人口・経済活動変化
−
地下水開発オプション
−
水資源保全オプション
−
海水混入など原水汚染の将来予測
−
淡水化を含めた水の再利用可能性
−
異常気象などによる供給量減少予測
<フェーズ II: アクションプラン策定>
フェーズ II のアクションプラン策定では、フェーズ I で提案され、フィリピン側に承認
された優先プロジェクト及びプログラムに関してアクションプランを作成する。
3−4−2
調査項目
<フェーズ I: M/P 策定>
[国内準備作業]
(1) 既存資料の収集・分析
(2) 調査の基本方針・内容・方針の検討
(3) インセプションレポートの作成
[第1次現地調査]
(1) インセプションレポートの説明・協議
(2) 既存関連データ・資料の収集、分析
(3) 水質調査(河川、地下水、海水)
(4) 既存水資源開発計画のレビュー及び評価
(5) 既存水資源施設の調査(表流水、地下水、淡水化)
(6) 水文量の推定(降雨解析、低水流量)
(7) 地下水ポテンシャルの推定(地下水モデル構築)
(8) 社会・住民意識調査
(9) 既存上水道施設の診断
(10) 現状の水需要量の把握
(11) 法制度・組織・水道事業経営の現状評価
(12) 水資源、上水道、衛生に係る課題の抽出
102
(13) 既存下水道計画の整理ならびに下水道施設の現状調査
(14) 下水道事業の現状評価と課題の抽出
(15) プログレスレポート(1)の作成
(16) プログレスレポート(1)の説明・協議
[第1次国内作業]
(1) 収集データの整理・分析
(2) 水資源ポテンシャルの予備検討
(3) 地域開発シナリオの検討
(4) 水需要量予測
(5) インテリムレポートの作成
[第2次現地調査]
(1) インテリムレポートの説明・協議
(2) 水資源計画基本方針の設定
(3) 水源代替案の検討(陸水及び淡水化)
(4) 水資源開発計画案の策定
(5) 上水道整備基本方針の設定
(6) 上水道システム代替案の検討
(7) 上水道整備計画案の策定
(8) 初期環境調査(IEE)の支援
(9) 水資源管理及び流域管理に係る提言
(10) 無収水削減対策・節水対策・運転維持管理に係る提言
(11) 組織・制度・人材育成に係る提言
(12) 長期経営計画ならびに水道事業経営に係る提言
(13) 下水道整備(地下水汚染対策を含む)ならびに下水道事業経営に係る提言
(14) 衛生環境改善に係る提言
(15) 概算工事費の算定
(16) 段階的整備計画の策定
(17) アクションプランの選定
(18) 事業評価ならびに優先プロジェクトの選定
(19) プログレスレポート(2)の作成
(20) プログレスレポート(2)の説明・協議
(21) 技術移転セミナーの開催
<フェーズ II: アクションプランの策定>
[第3現地調査]
(1) アクションプランに係るステークホルダーとの協議
(2) アクションプランの策定
(3) 補足実測調査
(4) 水源施設の概略設計
(5) 上水道施設の概略設計
103
(6) 施設運転・維持管理計画、人材育成計画
(7) 施工計画・機材調達計画
(8) 概算工事費の積算
(9) 財務計画
(10) 環境影響評価(EIA)の支援
(11) プロジェクトの総合評価及び提言
(12) ドラフトファイナルレポートの作成
(13) ドラフトファイナルレポートの説明・協議
[第2次国内作業]
(1) ファイナルレポートの作成
3−5
要員計画
(1) 団長/水資源管理/流域保全
(2) 副団長/水供給計画
(3) 水文/気象/水収支
(4) 上水道計画/浄水場/節水対策
(5) 送配水施設計画/無収水削減対策
(6) 井戸リハビリ計画/運転維持管理
(7) 組織/人材育成
(8) 事業経営/財務計画/経済評価
(9) 下水道計画
(10) 水質分析
(11) 都市計画
(12) 社会配慮/環境影響評価
(13) 積算/施工計画
3−6
調査用資機材
(1) 上水管網水理解析ソフト(英語版)
1式
(2) デスクトップ型パーソナルコンピューター
1台
3−7
調査実施上の留意点
(1)総合的水資源管理の適用
水源開発計画、上下排水計画を実施する上で、水資源全体の統合的管理運営の重要性
が問われている。セブ都市圏では、NGO を含む関連機関が包括的、総合的水資源管理を強
く提唱しており、本件調査においても十分考慮し実施する必要がある。
(2)進行中調査案件との連携・協力
オランダ政府の支援による Water REMIND 及びカナダ政府の支援による PCEEM など水資
源管理及び流域保全にかかわる調査が進行中である。本件調査結果が長期的に持続性の
高いものとするには、進行中の調査との連携・協力を欠かすことが出来ない。サン・カ
104
ルロス大学水資源センターは水文・気象、地形地質、土地利用、環境に係るデータ・資
料を一元管理しており、同センターの連携・協力が本件調査成功のカギとなる。
Water REMIND は 2005 年から 2006 年にかけて将来実行計画を策定する予定であり、実
行計画としては、ア)水資源ポテンシャルの評価、イ)水収支の検討、ウ)将来地域開
発シナリオの検討、エ)水料金体系、水関連施設のリハビリ、行政組織改革などの検討
を含み、本格調査の主要な TOR と重複することが確認された。
両調査作業の重複を回避し、効果的な本格調査を実施するためには、既に進行中であ
る Water REMIND の調査結果、各関連機関の最終的な意向、追記調査の必要性などを勘案
し、本格調査実施時期及び調査内容を決定することが必要である。現状では、早くても
Water REMIND の成果がでる 1 年半後とすることが望ましい。
(3)ステークホルダーの参加
本案件を進めるにあたって、ステークホルダー分析をカウンターパート機関と共同で
実施し、関連する全てのステークホルダーの参加を即すこと。政府機関、地方自治体の
みならず、NGO、大学、マスメディア、関連企業を参加させること。ステークホルダーの
利害関係を明らかにして、問題点を共通認識させること。
(4)民間主導型プロジェクトの検討
現在最も実現可能性の高い水源開発は Carmen 導水計画である。BOO 方式による案件で
あり、MCWD は今後全ての水源開発は民間主体とする意図がみられる。BOT、BOO など民間
主導型のプロジェクト実施可能性について十分検討すること。
(5)淡水化プロジェクトの検討
MCWD は 1998 年以来マクタン島の民間 RO 淡水化プラントから日産 5 千万 m3 の淡水を卸
で購入している。また、マクタン島やセブ本島の民間企業では、MCWD からの水供給不足
から自前で RO 淡水化プラントを設置するケースが増えている。このように、セブ都市圏
では淡水化プラントの経済性が確認されており、今後陸水開発が進められない場合、淡
水化事業のフィージビリティーが高まっていく可能性が高く、優先プロジェクトして本
調査でも検討する必要がある。
(6)MCWD の長期経営計画の策定
これまでに幾つかの水資源開発に係る調査が行われているが、開発コストの問題から
実現化されておらず、MCWD は将来の水供給計画について明確なビジョンを持っていない。
また、MCWD は水道事業者として、営業区域内の給水区域の拡大と水需要の増大に応える
責務を負っているが、一方では、独立企業体として財務的に持続可能な経営を行わなけ
ればならない立場にある。
従って、上水道整備計画(マスタープラン)の策定に当たっては、財務的に独立企業
105
体として出来る範囲を明確にするとともに、民間セクターとの役割を明確にし、経営形
態も含めた経営基盤の安定化に必要な提言を行い、2020 年までの長期経営計画を明確す
ることが必要である。
(7)水需要予測の検討
MCWD では、セブ都市圏の水需要予測を 2002 年の JICWELS(国際厚生事業団)調査時か
ら、2004 年時の予測では下方修正している。これは、2003 年、2004 年の水需要実績が予
想した数値を下回っているためと思われる。今後予想したとおりに右肩上がりで水需要
が伸び続けるかどうかは不透明であり、節水対策や政策的水需要抑制策等と併せて、本
格調査において十分検討する必要がある。
(8)運転管理の近代化
MCWD の総給水量の約 90%が 103 本の生産井から供給されているが、Tisa 貯水タンクの
管理棟に導入されている 8 本の生産井の監視運転に使用されている SCADA(Supervisory
Control and Data Acquisition)システムを除いて、ほとんどの生産井がオン・サイト
でマニュアルによる監視と運転がなされている。MCWD では、配水区メーター(District
meter)の設置工事を進めているが、これらもオン・サイトでの計量に止まりテレメータ
の設置には至っていない。今後、迅速かつ効率的な流量・水圧の管理ならびに漏水・不
法接続の探知が行えるよう、テメーターの導入等運転管理の近代化を図っていく必要が
ある。
(9)村落給水事業との調整
セブ都市圏内の村落給水は、Barangay が中心となって各地方自治体(LGUs)がそれを
支援する形態で行われている。セブ都市圏は海岸沿いの平地部から後背地の山間部まで
多様な地形状況があり、山間部においては MCWD の水道サービスがすぐには実現出来ない
地域があり、引きつづき Barangay と LGUs による村落給水事業が必要である。一方、水
資源開発調査において安価な水源が確保できることが判明した山間部村落については、
MCWD は積極的に水道事業の展開を図っていく方針である。また、短期間の内に配水管網
拡張整備が可能な平地部の村落については、既存給水施設との水利用法(水道は飲料水・
井戸は生活用水等)を調整し有効に既存施設を利用していく必要がある。従って、上水
道整備計画(マスタープラン)の策定に当たっては村落給水実施関連機関との協議、情
報交換を緊密に行い、双方共に効率的な上水道ならびに給水整備事業ができるよう調整
を図っていく必要がある。
(10)都市貧困層への水供給
MCWD では、市街地内の貧困地域を対象に共同水栓で給水サービスを行っている。1993
年末時点の共同水栓数は 252 栓であり、7 万人以上の人が恩恵を受けているものと推計さ
れる。都市においては MCWD の水道水が最も安価な水源であり、経済面のみならず、衛生
環境の改善、水因性疾病の軽減の面からも積極的に導入を図っていく必要がある。導入
に際しては、料金徴収等の管理運営のためにコミューンの積極的な参画が不可欠であり、
106
LGUs ならびに NGO 等と連携しながら実施していく必要がある。
(11)下水道本格調査の提言と位置付け
現状はセブ市、マンダウエ市、ラプラプ市は独自の計画を持っており、その他の LGUs
もそれぞれに少ない予算の中で現実的な対応をしている。その中でプロジェクトの実施
予算の裏付けのない MCWD が、中央集中型の下水道システムの計画を作成しても意味はな
く、時期尚早であり緊急性が認められない。従って、独立した下水道マスタープランの
調査はしない。しかしながら、水域の水質改善の問題は避けられないので、各 LGUs の既
計画を整理し、実施に必要な財務上の課題と民間も含めた役割分担を明確にする。提言
としては将来の下水道整備の方向性を“上水道マスタープラン”の中で、下水による地
下汚染対策として行う。
(12)衛生環境改善教育
一般的に、雑排水から雨水まで、問題点としてのこるのは維持管理の持続であると思
われる。都市部では可なりの降雨量を考慮した排水管網が整備されているようだが、住
民はこれを、ゴミ又は家庭排水の投棄場と考え、管路、開渠の閉塞状況を作りだしてい
る。従って、環境キャンペーン並びに住民教育の提言をする必要がある。
しかし、本調査の範疇ではないが、環境悪化に最も影響を与えているのは 10∼15%に達
する貧困層であると推察される。よって、貧困層へのなんらかの対策を実施しない限り、
衛生環境改善は困難かもしれない。
107
Fly UP