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養育態度と子どもの起床−就寝時刻との関係

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養育態度と子どもの起床−就寝時刻との関係
養育態度と子どもの起床−就寝時刻との関係
鈴 木 隆 男
比治山大学短期大学部紀要 第51号 抜刷
REPRINTED FROM BULLETIN OF HIJIYAMA JUNIOR COLLEGE
No. 51, 2016
比治山大学短期大学部紀要,第51号,2016
Bul. Hijiyama Univ. Jun. Col., No.51, 2016
養育態度と子どもの起床−就寝時刻との関係
鈴 木 隆 男*
生物には,地球の自転や公転による太陽光の周期的
生活リズムが乱れていること,そのような生活リズム
な変化の影響が基本的な環境として存在する。そのた
の乱れがさまざまな問題を生むことを指摘し,子ども
め,多くの生き物は適応度を上げるために,体内に時
の健全な発達のためには,生活リズムの安定が重要で
をはかる機構を持つことで,太陽の動きを予想してい
あると主張している。
る。ヒトもまた,地球の自転による24時間の明暗の周
石原(2001)は,大人も子どもも夜間睡眠の時間が
期に適応するために,進化の過程で体内に時計機構を
短縮していることを指摘している。大人については,
持った。この時計機構が刻むリズムは,概日リズム
1970年に行われたNHKの国民生活時間調査と,1997
(サーカディアンリズム:circadian rhythm)と呼ば
年に彼らが調査した資料を比較して,就寝時刻が約1
れ,明暗や時刻の手がかりのない恒常条件下では25時
時間遅くなったにもかかわらず,起床時刻にはほとん
間より少し長い周期を示すことが知られている。生体
ど変化がないため,夜間睡眠時間が短縮していること
の持っているこの周期を,24時間の明暗の周期に同調
を指摘している。子どもについても,1999年に調査し
させることによって,環境に安定的に適応していると
た資料を,1970年の国民生活時間調査と比較して,就
考えられる。言いかえれば,ヒトは基本的に明るい時
寝時刻が50分から1時間程度遅くなっているにもかか
間帯に活動し,暗くなると眠るように進化したのであ
わらず,起床時刻には大人と同じように変化がなく,
ろう。
30年間で,平日の睡眠時間が約1時間短縮しているこ
このような生物としての基本的な特性を持ちなが
ら,一方で我々の社会は,松明やランプ,アーク灯な
となどを示し,睡眠習慣の変化の結果,子どもの間に
心身の疲労が目立つことを指摘している。
どの使用を経て,1879年にエジソンによって発明され
根本・松嵜・柴田ら(2006)は中学生用のQOL測
た白熱電球によって暗闇になる時間に活動する生活様
定尺度を作成する中で,睡眠不足や朝食の欠食と低い
式を手に入れた。その後の照明器具の改良は,我々の
QOL得点の関係を見出している。
生活時間を夜の側に拡大していった。
他方青年期の前半に位置する中学生や高校生の時代
さらに関東や関西で1970年代の中ごろに相次いで1
は,学習活動やさまざまな課外活動などの生活時間が
号店を開店した,コンビニエンスストアという業態
増加し,それらを遂行するために,中学校,高等学校
は,その後急速に全国に拡大した。早朝から深夜まで
と年齢が進むにつれて睡眠時間が短縮することは,経
営業するコンビニエンスストアは,その利便性のゆえ
験的な事実でもある。菅野(1997)は子どもの生活リ
に,社会に浸透していった。コンビニエンスストアの
ズムとしつけというテーマについて,子どもの生活リ
拡大に影響されて,スーパーマーケットなどの小売業
ズムが乱れていること,その乱れがさまざまな問題を
の営業時間も長くなっていき,我々の社会は急速に夜
生むことを指摘し,子どもの健全な発達のためには,
型化していった。
生活リズムの安定が重要であると主張している。この
このような社会的背景の中で,雑誌「教育と医学」
(教育と医学の会編,慶應義塾大学出版会)は1997年
ことから,子どもに対して早寝早起きのしつけをする
ことは,育児の重要な目標である(鈴木,2003)。
7月号で「子どもの生活リズムとしつけ」という特集
先に述べた概日リズムは,24時間より長い周期をも
を組んでいる。その中では多くの研究者が,子どもの
つ内因性のリズムであり,このリズムを地球の自転の
*幼児教育科
23
鈴 木 隆 男
結果としての24時間の明暗の周期に同調させることが
る。例えば「厳格・監督」の次元に分類された質問と
必要である。
しては,「食事の時間をあまり長くだらだらしないよ
24時間の明暗周期に適応するための同調因子として
うに気をつけている」,「衣服の着やすさ,脱ぎやす
最も重要なものは日光である。朝目が覚めて日光を浴
さに気をつけている」といったものがある。一方「受
びることによって,24時間より周期の長い概日リズム
容・関与」の次元に分類された質問としては,「いろ
がリセットされ,地球の自転を基準とした24時間の周
いろなおもちゃを使って子どもと一緒に遊んでい
期に同調する(石原,1997)。
る」,「安定して子どもに肯定的な気持ちをもつこと
このような背景の中で,鈴木(2007)は小学生の生
ができる」などがある。
活習慣と心身の不調の関係について分析し,早寝早起
本研究は,この杉原が紹介したものをもとにして,
きという睡眠覚醒の習慣と,朝食をとる,夕食の食卓
養育態度と子どもの生活習慣の関係を検討するために
を家族とともに囲むといった食生活習慣が,ともに望
実施された。先に述べたように子どもが養育者から受
ましい子どもの方が心身の不調を訴えることが少ない
ける影響は,年齢が低いほど大きいだろう。
ことを報告している。起床時刻,就寝時刻,朝食をと
本研究では次のような仮説を検討することを通し
る頻度,家族そろって夕食をとる頻度について個別に
て,親の養育態度と子どもの睡眠‐覚醒の習慣との関
分析した結果,起床時刻,就寝時刻が早く,朝食を取
連を検討する。
る頻度が多く,家族そろって夕食を摂る頻度の高いも
その仮説とは,養育態度について,「子どもの生活
のほど心身の不調を訴える度合いが低いことが明らか
を親がコントロールすることが,望ましい生活習慣の
になった。さらにこれらを組み合わせた分析の結果,
形成に必要である」というものである。具体的には厳
起床時刻,就寝時刻がともに早く,朝食をきちんと摂
格・監督得点の高い親の子どもは,その得点の低い親
り,家族そろって夕食を摂る頻度の高いものは,そう
の子どもに比べて,起床,就寝時刻とも早い傾向があ
でないものに比べて,心身の不調を訴えることが少な
ると考えられる。また受容・関与得点の高い親の子ど
いことが明らかになった。このことを彼は,親が子ど
もは,得点の低い親の子どもに比べて,起床,就寝時
もの生活をコントロールすることによって,小学生の
刻とも遅い傾向があると考えられる。
心理的,身体的な不調の訴えが減るという観点から考
察している。
これらのことから「早寝,早起き,朝ご飯」(陰
方 法
山,2005)という,生活リズムの安定は,学業成績と
調査対象:調査対象となったのは,居住地域の特性が
直接関係があるかどうかは別にして,子どもの発達に
偏らないように配慮してK市内から選んだ,いずれも
とって非常に重要であると考えられる。
公立の,幼稚園2園,保育園3園に在園している4歳児
子どもの発達は,遺伝的な要因をもとにして,自分
および5歳児の保護者311名であった。当該市の教育委
を取り巻く環境との間で,相互作用を繰り返すことを
員会及び保育課,それぞれの幼稚園,保育園の園長の
通して行われる。
許可を得たうえで,園を通じて質問紙を配布,回収し
環境要因のなかで最も重要なものの一つが親の養育
た。回収できたのは,幼稚園児の保護者154名,保育
態度であろう。親の養育態度の影響は,子どもが小さ
園児の保護者108名,合計262名(回収率84.2%)の資料
い幼児期ほど大きい。いいかえれば年齢が低いほど,
であった。これらのうち,いずれかの質問に無回答を
子どもは親からの働きかけによって大きな影響を受け
含んだ資料を除外した結果,最終的に分析の対象とし
る。児童期や青年期の子どもに比べて幼児期の子ども
たのは,191名分の資料であった。分析対象となった
は養育者に対する依存度が高く,その影響を受けやす
資料は,回収数の72.9%であった。
いと考えられる。
養育態度に関する研究としてはサイモンズの古典的
質問項目および分析方法:養育態度と子どもの生活に
な類型研究があるが,杉原(2001)は,子どもとのか
関する質問について回答を求めた。養育態度について
かわりについて「厳格・監督」,「受容・関与」とい
は,杉原(2001)が示した42項目のうち,いくつかの
う2次元からなる,バウムリンドの考え方を紹介して
ものを組み合わせて40項目とした質問紙を用いた。そ
いる。杉原によれば,この考え方は,子どもの行動
れぞれの質問項目に対して,「あてはまる」から「あ
を,教師や研究者が評価,類型化したうえで,その子
てはまらない」の4件法で回答を求め,これに対して4
どもたちの親の養育態度を分析して得られたものであ
点から1点の重みをつけた。この得点をもとにして,
24
養育態度と子どもの起床−就寝時刻との関係
項目分析,因子分析によって検討したうえで,養育態
用効果には,有意な効果が見られなかった(受容的態
度を測定する尺度を構成し,養育態度の分類と子ども
度の効果:F=1.22, 交互作用効果:F=1.65, いずれ
の起床,就寝時刻の関係を検討した。
もdf =1/115)。統制的態度(f2)の効果については,有
資料は,Microsoft Excelを用いてデジタルデータ
意な傾向が見られた(F=3.294,df =1/115,p=.072)。
としてコンピュータに入力したうえで,SPSS(ver.
これらのことは,受容的な養育態度は起床時刻には影
11.5J/ver. 19)を用いて分析した。
響しないが,統制的な養育態度は,その統制的性格が
強い群ほど起床時刻が早い可能性があることを示唆し
結 果
ている。
一方就寝時刻については,受容的態度(f1)の効果
養育態度にかかわる質問の全項目について,個々の
が有意であった(F=5.92, df =1/115,p=.016)。ま
項目ごとに検討した。Table1に検討結果を示した。
た統制的態度(f2)の主効果には有意な傾向が見られ
表に示したのは,質問項目,杉原(2001)が示した因
た(F=2.932,df =1/115,p=.09)。しかし両要因の
子(カラム“O”,Ⅰは「厳格・監督」因子,Ⅱは「受
交互作用効果には有意な効果が見られなかった
容・関与」因子を示す),評定の最小値(Min),最
(F=.575,df =1/115)。交互作用効果が有意ではな
大値(Max),平均値(Mean),標準偏差(SD),因
かったことから,f1,f2について設定した高低2水準
子分析による因子負荷(F1,F2)である。どの質問
を組み合わせた4群間の比較は意味を持たない。した
についても,評定の最小値は1点であったが,最大値
がって,f1,f2に関わる主効果についてのみ結果を解
が4点にならないものがいくつかあった。また各項目
釈した。
の回答の平均と標準偏差を基準とし,平均から1標準
以上の結果から,受容的な養育傾向が高いほど就寝
偏差へだたった値が1点より小さいもの(床効果),
時刻が遅く,統制的な養育傾向が高いほど,就寝時刻
4点より大きいもの(天井効果)もみられた。
が早くなる傾向を示している。
これらの項目を除外した16項目について,杉原にも
以上のことを要約すれば,統制的な養育傾向が強い
とづいた2因子構造を仮定して因子分析(最尤法,プ
ほど早寝早起きが実行されやすいこと,養育態度が受
ロマックス回転)を実行した。それぞれの項目に対す
容的なほど就寝時刻が遅くなることを示唆していると
る因子負荷,因子の解釈の可能性などを考慮して,
いえるであろう。分析結果が「有意な傾向」という,
f1,f2についてそれぞれ7項目ずつを選択した。因子
検定結果の取扱上多少あいまいな点を含んでいるた
構造は杉原が示したものと完全に同じではなかった
め,仮説が完全に支持されたとは言えないが,今後の
が,第1因子には杉原が示した受容・関与にかかわる
検討によって,仮説が支持される可能性が高いといえ
5項目が,第2因子には,厳格・監督にかかわる5項
るだろう。
目が含まれた。このことから,先行研究と多少の相違
はあるが,第1因子(f1)を受容的態度(受容・関
与)の要因,第2因子(f2)を統制的態度(厳格・監
督)の要因と考えた。
考 察
親の養育態度が,子どもの「早寝,早起き」に影響
これらの7項目の得点を調査対象ごとに加算するこ
するという可能性を示した本研究の結果は,仮説を部
とによって,親の養育態度の指標とした。養育態度の
分的に支持するものであった。学校の始業時刻や企業
要因ごとに,平均得点 ±1/2 標準偏差をもとにして
活動の開始時刻などは,第二次世界大戦後の社会の中
養育態度を分類した。先に述べたように,これらの,
で,ほとんど変化していない。むしろこれまで,たと
項目分析の結果,条件別の人数分布,および平均起床
えば午前10時ごろに開店し,午後7時頃に閉店してい
時刻,平均就寝時刻を,それぞれTable 1,Table 2に
たスーパーマーケットなどが,早朝から深夜まで営業
示した。また養育態度得点について高低2水準を設定
するといった傾向も増えている。これらのことを考え
し,子どもの起床時刻,就寝時刻それぞれの平均を比
合わせると,起床時刻は,養育態度の影響よりも,社
較した。この結果をFig. 1,Fig. 2に示した。
会生活 (子どもの幼稚園や保育園の登園時刻や,親
これらの図に示した関係を吟味するために,起床時
の出勤時刻など)の影響を強く受けると考えられる。
刻,就寝時刻について,それぞれを従属変数とした2
そのような中でも,統制的な養育態度が早起きを促す
要因分散分析を実行した。その結果,起床時刻につい
可能性が示されたといえるだろう。
ては受容的態度(f1)の効果,および両要因の交互作
一方就寝時刻は,起床時刻ほど社会的な制約が影響
25
鈴 木 隆 男
Table 1 項目分析,因子分析結果
SD
F1
F2
いろいろなおもちゃを使って子どもと一緒に遊んでいる
項 目
Ⅱ
O
Min Max Mean
1
4
2.36
.77
.98
-.24
ままごとや怪獣ごっこなど,一緒にしている
Ⅱ
1
4
2.33
.80
.79
-.12
なるべく話しかけを多くして会話を楽しむようにしている
Ⅱ
1
4
1.71
.66
.50
.22
食事の時間をあまり長くだらだらしないように気をつけている
Ⅰ
1
4
1.77
.76
.39
.13
子どもと1対1の接触をするように心がけている
Ⅱ
1
4
2.05
.76
.37
.30
子どもにはできるだけ日光浴をさせている
Ⅰ
1
4
2.06
.88
.35
.10
子どもには絵本をできるだけ読み聞かせている
Ⅱ
1
4
2.24
.84
.34
.15
衣服の着やすさ,脱ぎやすさに気をつけている
Ⅰ
1
4
1.80
.78
.10
.57
安定して子どもに肯定的な気持ちをもつことができる
Ⅱ
1
4
2.16
.72
.13
.54
衣服の保湿性・吸湿性・通気性などに配慮している
Ⅰ
1
4
1.74
.73
.04
.50
子どもの身体に危険なことが起きない環境を常につくっている
Ⅰ
1
4
1.86
.64
.12
.46
子どもの生命にかかわらない程度なら,ある程度自由にさせている
Ⅱ
1
4
1.82
.73
-.21
.34
食事のとき,こぼしたら自分で始末する習慣をつけさせている
Ⅰ
1
4
2.00
.79
.02
.33
食事のとき,主食・副食が交互に食べられるように促している
Ⅰ
1
4
2.08
.84
.23
.32
子どもにできるだけ音楽を聴かせてリズミカルに手足を動かし,気持ちよさを感じさせている
Ⅰ
1
4
2.26
.86
(.30)
.15
子どもの健康を考えて室内の清潔には十分気をつけている
Ⅰ
1
4
1.93
.69
.11
(.30)
子どもが自分でボタンかけができるように促している
Ⅰ
1
4
1.39
.73
滑り台,ブランコ,ボール,ジャングルジム,三輪車などで遊ばせるようにしている
Ⅰ
1
4
1.62
.80
食事のとき,子どもが自分で食べられるように言葉かけをして促している
Ⅰ
1
4
1.41
.62
自分で歯磨きをさせている
Ⅰ
1
4
1.44
.65
子どもの手先の清潔さ・爪切りに気を配っている
Ⅰ
1
3
1.79
.63
食事の前後には「いただきます」「ごちそうさま」をいう習慣にしている
Ⅰ
1
3
1.40
.63
子どもの様子がおかしいときには体温を計っている
Ⅰ
1
3
1.45
.65
入浴時には子どもにタオル・スポンジなどをもたせて自分で洗わせている
Ⅰ
1
4
1.97
.98
薬は医師の指示どおりに飲ませている
Ⅰ
1
4
1.30
.56
子どもの寝る時刻を決めている
Ⅰ
1
4
1.66
.70
子どもにはひとりで寝る習慣をつけている
Ⅰ
1
4
2.91
1.09
子どもが悪いことをしたときにはしかる
Ⅰ
1
2
1.09
.29
排泄のあとには手を洗う習慣をつけている
Ⅰ
1
4
1.46
.70
子どもが自分でソックスをひっぱって脱ぐように促している
Ⅰ
1
4
1.57
.90
子どもが自分で衣服を着る動作を促すような言葉かけをしている
Ⅰ
1
4
1.37
.64
衣服は運動しやすいように気をつけている
Ⅰ
1
3
1.51
.63
子どもが自分で靴を脱いだりはいたりするように促している
Ⅰ
1
3
1.17
.41
子どもの髪を定期的に洗うように心がけている
Ⅰ
1
3
1.08
.30
子どもが求めればできるだけ相手をするようにしている
Ⅱ
1
3
1.88
.59
子どもをだっこしたり,身体接触を多くすることは楽しいことだと思っている
Ⅱ
1
4
1.37
.63
子どもが友達と遊んでいるときには自由に遊ばせている
Ⅱ
1
3
1.52
.58
子どもが参加するイベントにはなるべく参加している
Ⅱ
1
4
1.66
.78
少し高いところに跳び上がったり跳びおりたりして遊ばせている
Ⅱ
1
4
1.81
.87
家の外を散歩したり,砂場で遊ばせたりしている
Ⅱ
1
4
1.70
.79
26
養育態度と子どもの起床−就寝時刻との関係
Table 2 養育態度の分類
2008)の研究で指摘されていることである。早寝早起
人数
f2 low
f2 high
合計
f1 low
53
7:02/21:21
9
6:58/20:53
62
f1 high
12
7:20/21:41
45
6:57/21:30
57
合計
65
54
119
各群の人数,起床時刻/就寝時刻
f1:受容的養育態度得点
f2:統制的養育態度得点
きの習慣は安定した日常生活を構築する重要な鍵の一
つである(鈴木,2003)。そのような観点で考えれ
ば,幼児期から基本的な生活習慣として早寝早起きと
いう,規則正しい起床,就寝習慣を身につけさせるこ
とは養育者として非常に重要な役割であろう。
また尺度構成という観点では,今回の尺度について
は信頼性の検討は行ったが,妥当性の検討は行ってい
ない。今後の課題として,尺度そのものの検討も必要
であろう。
(謝辞:本研究は倉敷市立短期大学専攻科卒業生荒木
幸奈氏の特別研究の資料を,了承を得て再分析したも
のである。資料の使用を快諾していただいたことに謝
意を表する。)
参 考 文 献
石原金由 概日リズムと生理心理学。宮田洋(監)柿
木昇治,山崎勝男,藤澤清(編)生理心理学の応
用分野。pp. 110‐121,北大路書房,1997。
Fig. 1 起床時刻におよぼす養育態度の効果
石原金由 夜型社会が子どもの世界まで広がった。
堀忠雄(編)眠りたいけど眠れない。pp. 23-40,
2001。
陰山英男 学力の新しいルール。文藝春秋,2005。
根本芳子,松嵜くみ子,柴田玲子,古荘純一,
佐藤弘之,渡邊修一郎,曽根美恵,板橋家頭夫 睡眠時間・朝食の摂取状況と中学生版QOL尺度
得点の関連性。小児保健研究,2006,65,398404。
菅野純子 子どもの生活リズムの乱れとその回復。
教育と医学,1997,45,623-630。
杉原一昭 親の養育態度と新しい類型論。杉原一昭(監)
Fig. 2 就寝時刻におよぼす養育態度の効果
発達臨床心理学の最前線。教育出版,pp. 55-62,
2001。
せず,親の養育態度がより顕著に影響したと考えられ
鈴木隆男 ライフサイクルから見た発達心理学。平山
る。社会全体が夜型化した結果,我々の生活の中で,
諭,鈴木隆男(編)ライフサイクルからみた発達
活動する時間は夜の方に膨張しており,その影響が,
の基礎。pp. 1-18,ミネルヴァ書房,2003。
親の養育態度を媒介として,子どもの就寝時刻にも影
響している可能性を,今回の研究は示唆している。
起床時刻や就寝時刻のような基本的生活習慣は,し
鈴木隆男 小学校高学年児童の睡眠,食事の習慣と心
身の不調の関係に関する研究。ウエルネスジャー
ナル,2007,3,10-16。
つけにかかわることがらであり,単に子どもに受容的
鈴木隆男 中学生の睡眠,食事の習慣と心身の不調の
にかかわるのではなく,子どもをしつけるという,親
関係に関する研究。ウエルネスジャーナル,
の意識に関連があるため,統制的な養育態度の影響が
2008,4,12-20。
見られたのではないかと考えられる。
起床時刻,就寝時刻は,児童期以後の生活スタイル
(受理 平成27年11月6日)
に大きな影響を持つことは,すでに鈴木(2007,
27
鈴 木 隆 男
Abstract
The Relationship between Parental Childrearing Styles and
Children’s Sleep - Wake Rhythm.
Takao SUZUKI*
This paper considered the relation of parental childrearing styles to children’s sleep and wakeup time, through analyzing the results of a survey of 191 parents.
According to the analysis of the relationship of sleep and wake-up time to the parents’
tendencies to control and accept their children, it was pointed out that, the more the parental control
scores increase, or the less the parental acceptance scores decrease, the earlier the children go to
bed and wake up.
(Received Novenber 6, 2015)
*Department
28
of Early Childhood Education
Fly UP