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ニュースレター Volume 2
ニュースレター 大洋州地域地 域保健看護師のための Volume 2 July 2011 「現場ニーズに基づく現任研修」プロジェクト JICA技術協力プロジェクト フィジー国保健省、トンガ国保健省、バヌアツ国保健省 トレーニングで看護の花をめざそう! バヌアツでプロジェクト開始! 2011年5月、「地域保健看護師のための『現場ニーズに基づく現任研 修』強化プロジェクト」が、いよいよバヌアツにて開始されました。2010 年5月に締結されたバヌアツ政府とJICAの協議書に基づき、2014年4 月までの3年間、技術協力プロジェクトとして実施されます。 バヌアツは、NB-ISTモデルが進展してきたフィジーよりもさらに離島 が散在しており、僻地へのアクセスが非常に困難です。離島に着任し た看護師は、長年スーパーバイズも現任教育も受けられずに一人取 り残された状況の中で地域の保健問題に取り組んでいます。こうした 厳しい状況では、保健サービスの質が低下し、さらには看護師の自信 やモチベーションの喪失につながり離職が起こり、絶対的な看護師不 足、と問題は広がっていきます。プロジェクトでは、このギャップに注目 し、パイロット地域(シェファ州)において地域保健看護師の実情に応 じた実施可能な「スーパービジョン・コーチング(S&C)」のモデルを確 立することを目的としています。その一方で、モデルの早期全国展開 も視野にいれ、保健省内にS&Cシステムを確立することを支援してい きます。 プロジェクト・ダイレクターからの メッセージ バヌアツ保健次官マーク・ベベ氏 このような支援に対し、日本の国民の皆様と日 本政府に感謝を表明いたします。バヌアツで は、僻地で働く看護師へのスーパービジョンが うまく稼動していないことが深刻な問題となって います。その主な原因は、時間やシステム、マ ネジメント技術の不足です。プロジェクトを通し、 我々はこれらの問題に取り組んでいきます。その中で、限られた資源 と機会を最大利用するために、他ドナーを含む関連機関が、同じ目 的に向かって協力体制を整備していくことが重要です。 特集: フィジーにおける インパクト調査の実施 プロジェクトの介入効果を測定するため、プロジェクトでは、 各国でのインパクト調査をひとつの活動として位置づけてい ます。 プロジェクト初年の2011年1月から3月にかけ、他2国に先駆 けフィジーにおいてベースライン調査を実施しました。調査 の目的は、(1)看護現任研修の現状や看護師の満足度、 ニーズ等を把握し、プロジェクトの効果的なアプローチの検 討に活用すること、また、(2)プロジェクトの効果測定のた めのベースラインデータを得ること、の2点でした。さらに、 (3)2005年から2008年にフィジー中部地方で実施された「フ ィジー国 地域保健看護師のための現任教育プロジェクト」 (先行プロジェクト)のインパクトも同時に測定しました。 調査実施に際し、まず、カウンターパートを中心とするワー キング・グループを結成し、調査デザインへの助言を行いま した。データ収集から単純分析にかかる作業は、フィジー国 立大学医学・看護学・健康科学部の調査ユニットが担当し、 ワーキンググループがプロセスをモニタリングしました。そ して、調査結果はワーキング・グループにおいて共有して現 状の問題点を洗い出し、今後の対応策について協議しまし た。 フィジーにおけるインパクト調査の概要は下表の通りです。 表 フィジーにおけるインパクト調査概要 項目 概要 対象地域 全国(中部、東部、北部、西部の4地方) 対象者 地域保健看護師、看護指導者、保健省関係 者、ドナー、地域住民 調査方法 - 保健省・地方保健局担当者、ドナーへの 個別インタビュー - 地域保健看護師へのグループインタビュ ー(FGI) - 看護指導者および地域保健看護師、地 域住民への質問紙調査 主な内容 - 「現場ニーズに基づく現任研修(NB-IST) 」に関する現状把握(地域保健看護師の 業務能力、S&Cおよび現任研修の実施状 況、地域保健看護師のニーズなど) - 地域保健看護師の満足度、モチベーショ ンなどの意識、看護指導者との関係など - 看護指導者の満足度、モチベーションなど の意識、地域保健看護師との関係など - 地域保健サービスに対する地域住民の満 足度 インパク トの測定 方法 - FGIおよび個別インタビュー結果の要約的 内容分析 - 質 問 紙 調 査 結 果 の 中 部 地 方 と 中 部 以 外の地方(北部、西部、東部)との WithWithout 分析による比較分析 調査の主な結果は以下の通りです。 1. 能力基準(CS)アセスメント - 看護指導者と地域保健看護師自身によるアセスメントの 実施状況には地域による差が大きい。例えば、先行プロ ジェクトが実施された中部地方では、75%の看護指導者 がアセスメントを実施していると回答したが、東部および北 部地方では看護指導者によるアセスメントは全く行われて いなかった。 - アセスメントの実施率の高い中部地方でも、看護指導者と 地域保健看護師の双方がその目的を必ずしも正しく理解 しているとは言えない。 2. 現任研修 - 多くの看護指導者が、地域保健看護師の研修機会や研 修のニーズへの対応に問題があったと感じている。保健 省レベルで研修を調整する機能がないため、研修内容は 必ずしも看護師のニーズに合致しているとは言えない。 - しかし、中部地方では、研修が看護師のニーズに合致して おり、研修機会も平等と考える看護指導者の割合は他の 地方に比べ高い結果であった。 3. 先行プロジェクトのインパクト - 中部では、CSアセスメントや研修ニーズの分析、分析に基 づく現任研修の計画立案は日常的に行われており、「現 場ニーズに基づく現任研修」は一定の定着を見せている。 しかしながら、CSアセスメントの目的などへの理解は十分 ではなく、先行プロジェクトのインパクトは限定的であった と言える。 - その要因の一つに、先行プロジェクトで研修を受けた看護 指導者の大半が、フィジー政府の退職年齢の引き下げ政 策により引き継ぎを行えずに退職し、多くの新しい看護指 導者にとってCSや「現場ニーズに基づく現任研修」などが 新しい概念となってしまったことがある。 今後、CSアセスメントの目的や重要性などについて、看護指 導者と看護師の共通理解を定着させる活動を強化していく 必要があると思われます。また、現任研修に関して、保健省 内部や各ドナーとの調整を進めて行く重要性も高いと考えら れます。 主な活動報告 <フィジー> JCC 第2回会議 2011年6月27日に、フィジーにおいて第2回の合同調整委員会(JCC)会議を開催 し、以下の議題について協議しました。 1.2010年10月のプロジェクト開始以来の進捗報告と2011年度(12月まで)の活動 見通し 2.2012年度の年間活動計画 3.ベースライン調査結果およびそこから得られた提言 4.プロジェクトデザインの改訂案 議題に関する議論はもちろんのこと、出席者からは、今後のプロジェクト運営に関 する有益な意見や提案などもなされていました。 <バヌアツ> JCC第1回会議 バヌアツでは、プロジェクト開始と同時に、保健次官(プロジェクト・ダイレクター)を 議長とする合同調整委員会が発足し、2011年6月9日、その第一回目の会議を開催 しました。委員会メンバー(保健省人材開発課マネージャー、南部担当保健部長、 看護学校長、看護評議会会長、シェファ州保健マネージャー、JICAバヌアツ支所 長、JICA専門家)の大部分の参加を得られたほか、オブザーバーとして、ワーキン グ・グループのメンバー、関連ドナー、JOCVメンバー、米国平和部隊メンバーも参加 しました。 プロジェクトの概要、実施方法(ワーキング・グループの設立を含む)、および2011 年-2012年の年間活動計画についてプロジェクトチームから説明し、続いて議長 から、バヌアツの実情に即した力強い補足説明がありました。その結果、実施方法および年間活動計画について委員会の承認が得られ、他 ドナーを含む参加者からの賛同も得た上で活発な討議が展開されました。限られたリソース(4つの制限:人材、資金、時間、技術)の中での S&Cモデルの導入のための、工夫をこらした戦略の必要性が確認され、その戦略の一つとして、保健省・州保健局、各ドナー間の協働の必 要性が強調されました。 <トンガ> ワーキング・グループ ワークショップ 「現場ニーズに基づく現任研修」を実施するためには、ターゲットグループである 地域保健看護師、病院看護師の研修ニーズを把握する必要があります。トンガ では、プロジェクトのワーキング・グループメンバーが集まり、2011年5月・7月の2 回にわたりワークショップを開催し、研修ニーズの把握に必要な能力基準(CS)と アセスメントツールを完成させ、ニーズに基づく現任研修のメカニズムを強化する ために必要な現任研修(IST)マニュアルの開発に着手しました。8月以降、完成 したCSを使ってアセスメントを実施する予定です。 ワーキング・グループ 会議〔フィジー〕 ワーキング・グループ 会議(初回)〔バヌアツ〕 PCMワークショップ 〔フィジー〕 ワーキング・グループ 会合 〔トンガ〕 次期の活動 カウンターパートの皆さん <フィジー> • S&C研修(全国) • 広域研修 バヌアツ保健省 <トンガ> • CS研修とアセスメント • ワーキング・グループ ワークショッ プ(3回目) • ベースライン調査 <バヌアツ> • ワーキング・グループ会議(3回目) • ベースライン調査 お知らせ マーク・ベベ氏 保健次官 (プロジェクト・ダイレクター) マークソン・テタウン氏 人材開発課マネージャー (プロジェクトマネージャー) カティマル・カウン氏 人材開発課オフィサー イブリン・エミール先生 バヌアツ看護学校長 ジョン・タセレイ氏 看護審議会会長 ベン・タウラ氏 シェファ州保健マネージャー • ニュースレタータイトルを募集しま す。 • 看護現任研修やスーパービジョン・コ ーチングに関するニュースレターへ の記事や写真の投稿お待ちしていま す。 • ニュースレターへの投稿以外にも、 皆さまのプロジェクトへのご意見・ご 感想をお待ちしています。 連絡先 フィジー事務所 Dinem House 1F 88 Amy St., Toorak, Suva, Fiji 電話: : +679 330 6177 ファックス: +679 330 6163 トンガ事務所 P.O. Box 59, Nuku’alofa, Tongatapu, Tonga 電話/ファックス: +676 28 352 バヌアツ事務所 PMB009 Port Vila, Vanautu 電話 : +678 22512 (ext. 226) 日本国内サポート 特定非営利活動法人HANDS (Health and Development Service) 東京都文京区本郷3-20-7 山の手ビル2F 電話: 03-5805-8565 ファックス: 03-5805-8667 E-mail: [email protected] http://www.hands.or.jp/ 連絡先 Web site: http://www.jica.go.jp/project/all_oceana/002/index.html