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08-06_kita - 東北大学教育学研究科・教育学部

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08-06_kita - 東北大学教育学研究科・教育学部
教育ネットワークセンター年報, 2008, 8,59-75(事例研究論文)
我が国における自 閉症児・者に対す る「関 わり」の検討
― 「関わり」の「選択 モデル」の提 唱と見立て ―
北
洋輔 1 ・横田 晋務 2 ・東 海林 渉 2 ・田中 真理
2
1:東北大学大学院教育 学研究科・東 北大学国際 高等研究教育 院
2:東北大学大学院教育 学研究科
【要約】
自閉性障害(以下 自閉症)が 報告されて以 来、自閉症 児・者に対す る「関わり 」は
精神分析的視点に たったもの が中心であっ た。1960 年代以降「関わり 」は 、認知・言
語障害説や情動障 害説といっ た障害の原因 論の変遷と ともに変化し ている。そ の一例
が行動療法や情動 的なコミュ ニケーション を促進する 「関わり」で ある。しか し、各
立場における「関 わり」は自 閉症児・者の 臨床像の一 側面にしか対 応できてい ないと
いう限界が見られ る。自閉症 児・者の臨床 像に包括的 に対応するた めには、こ れらの
「関わり」を自 閉症児・者 の臨床像に 合わせて選択 することが 求められる 。本稿では 、
緊急性
関係
発達
という三軸か らなる「関わり 」の「選択モデル 」を提 唱し、
一名の自閉症児に 対する見立 てと「関わり」の 提案を行っ た。
「選択 モデル」の活 用は、
柔軟な「関わり」 の選択を可 能にし、各実 践者・諸機 関を有機的に 結びつける 支援体
制の構築をより促 進すると考 えられた。
キーワード:自閉 性障害(自 閉症) 「関わり」 「選 択モデル」
1.はじめに
自閉性障害(以 下自閉症) とは、広汎性 発達障害の 一つとされ、 ⅰ)対人的 相互反
応ⅱ)対人的コミ ュニケーシ ョンⅲ)象徴 的または想 像的遊び、の 各領域にお ける機
能の遅れまたは異 常を示す障 害である(A・P・A, 2000 )。自 閉症児・者 への「関 わり」
(i
は、Kanner(1943)によって 11 例の事例が初 めて報告され て以来、自閉 症の原因論
の変遷とともに大 きく変化し てきた。現 在において 、
「関 わり」は主 とする理論 的背景
の違いから多岐に 渡っており 、絶対的に確 立されたも のは存在しな い。
このような現状 から、自閉 症児・者への 「関わり」 における課題 や方向性を 検討す
(ⅰ
本 研 究 で の 「 関 わ り 」 と は 、「 自 閉 症 と い う 生 得 的 な 障 害 の あ る 子 ど も や 成 人 の 発 達 を 促 進
す る 心 理 臨 床 的 な 関 わ り 」 と 定 義 す る 。「 関 わ り 」 に は 、 自 閉 症 児 ・ 者 に 対 す る ア プ ロ ー チ と
し て し ば し ば 用 い ら れ る 「 療 育 」や「 治 療 」 を 含 む も の と す る 。自 閉 症 に 対 す る 根 本 的 な 医 学
的 治 療 法 は 存 在 し な い( 辻 井 , 1999a )と さ れ 、発 達 障 害 で あ る 自 閉 症 が 「 治 ら な い 」と い う こ
と を 考 え る と 「 治 療 」と い う 言 葉 は ピ ン ト が ず れ て い る と さ れ る( 諏 訪 , 2001)。 そ れ 故 に 、本
研 究 で は 、 治 る −治 ら な い と い う 印 象 を 与 え る 「 療 育 」 や 「 治 療 」 と い っ た 語 彙 を 避 け 、 自
閉症児・者への発 達を促すア プローチに焦 点を当てる ために「関わ り」という 語を用いた。
教育ネットワークセンター年報
第 8号
るために、杉山・ 鈴木・杉山 ・諏訪・金沢 ・永井(2001)は「自閉症療育の新 たな可
能性」というテー マに取り組 んでいる。こ の取り組み では養護学校 小学部に所 属する
重度知的障害(知 能検査の結 果は不明)を 伴った自閉 症児男児一名 を事例とし て取り
上げ、行動療 法・T EACC H・関係発達 支援の各立 場から「 関わり」の 提案を行 ってい
る。実際の事例に 対して各立 場から具体的 なアセスメ ントと支援の ポイントを 示して
おり、実践的な「 関わり」の モデルを呈し ている。一 方で、自閉症 児・者への 「関わ
り」の検討として は不十分な 点もある。
第一に、各立場 での「関わ り」の
限界
が明示さ れていない点 が挙げられ る。例
えば行動療法から の検討(杉山, 2001)では、行動面及 び派生する 領域での「関 わり」
は示されているも のの、事 例の情動面 、もしく は人との関係 支援に着目 した「関 わり」
は扱われていない 。そのため に、事例とし て挙げられ た「子ども」 の全体的な 臨床像
に対して、行 動療法がどこ まで対応で きて、ど こからは対応 できないの かといった「関
わり」の限界が不 明なのであ る。限界の非 明示は、現 場の教師や家 族が各立場 に依拠
した「関わり」を 導入する際 に、「関 わり」の持 つ
強み
弱み
を考慮出来 ないこ
とに繋がるだけで なく、子ど もの臨床像の どの側面を 重視した「関 わり」なの か分か
らないままに関わ ることにも なる。
第二に、
「関 わり」に関し て新たな知見 を見出して いない点であ る。各立場で は、各々
にモデル が提案さ れているだ けで、それら を集約・統 合した形での 考察はなさ れてい
ない。す なわち、 今後の自閉 症児・者への 「関わり」 についての課 題・方向性 が明示
されてお らず、結 局のところ 「今後実際に どのように すればいいの か」といっ た疑問
を感じざ るを得な い。近年は、自 閉症児・者へ の認識の高 まりもあり 、
「関わり 」に関
する著書 や研究が 多く発表さ れている。し かしながら 、筆者らが関 わっている 現場関
係者や家 族からた びたび質問 されることは 「いろいろ (関わりは) あるけど、 どれを
したらい いのか分 からない」 といった「関 わり」の選 択に関する迷 いである。 それ故
に、各立場におけ る「関わり」の ねらいと限界 を集成した 上で、
「 関わり」の選 択にお
ける迷い を払拭し 、今後の実 践に活かせる 新たな知見 が求められて いる。
以上の 点をふま え、本研究 では自閉症児 ・者への「 関わり」につ いて、各立 場での
ねらいと 限界を捉 え直すこと を第一の目的 とする。こ の点について は、自閉症 児・者
への「関 わり」が 、自閉症の 原因論の変遷 とともに大 きく変化した 歴史的経緯 をふま
え、1940 年代以降に中心となっ た①精神分析 的視点にた った「関わり 」
、 1960 代以降
に中心と なった② 認知・言語 障害説を背景 とする「関 わり」、1980 年代以降に 展開さ
れた③情 動障害説 を背景とす る「関わり」
、の 三点から検 討する。第二の目 的は、各立
場での「 関わり」 のねらいと 限界を集成し 、今後の「 関わり」の方 向性につい て検討
すること である 。この点に ついては、現場関係者・家族が しばしば混乱 する「関 わり」
の選択に 関して、 自閉症児一 事例の見立て を通して検 討を行う。
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我が国における自閉症児・者に対する「関わり」の検討
2.各立場におけ る「関わり」 のねらいと 限界
2−1.「他者論」に 基づく「関 わり」
自閉症が報告さ れて以来、 「関わり」と して初めに 脚光を浴びた のは、精神 分析的
視点にたったもの であった。Kanner は報告において、先天的な情緒 的接触の障 害とい
う原因論を述べる 一方で、知 的で強迫的、 さらに子ど もに対しては 温和でない という
ような、親の特徴 や養育態度 にも注目して いた(Kanner, 1943)。Kanner による特徴
記述的な指摘はそ の後、当面 の問題の原因 を過去にお ける葛藤へ求 めようとす る精神
分析的視点と相ま って、
親 の養育態度が 自閉症の主 たる原因であ る
という 原因記
述的なものへと発 展し、多 くの専門家に 無条件に取 り入れられる ことになっ た(Wing,
2001)。その結果 、1950∼60 年代には B et t el heim (1967)の「冷蔵庫マザ ー論」に代
表される精神分析 的視点にた った「関わり 」が盛んに 行なわれた。
Bett el hei m は自閉症の本質を「自 己の否定もし くは意識の 不在」である とし、治療
としては
絶対受 容
によっ て自閉症児の 自己分化を 促進させよう という「関 わり」
を行っていた。そ して、自閉 症の原因とし ては
親の 冷淡な養育
という環境 的要因
を想定した 。B et t el heim による原因論は 、R ut t er(1964)によ る認知・言語障害 説に代
表される器質的病 因論の隆盛 とともに衰退 していき、 精神分析的視 点にたった 「関わ
り」は次第に行わ れなくなっ ていった。ま た、器質的 要因を考慮せ ずに親の養 育態度
に原因を帰属させ たことは、 精神分析的視 点にたった 「関わり」の 社会的な嫌 忌をも
導き、衰退の一因 ともなって いる(平井, 1996)。
平井(1996)が指摘 するように 、精神分 析的視点に たった「 関わり 」は現在の とこ
ろ 50∼ 60 年代ほどの隆 盛は見られな い。近 年我が国で 注目が集まっ ている関わ りのひ
とつに酒木(1992; 1994)の「他者論 」に基づいた 関わりがあ る。他者論と は「相手
を、自分とは異な る原理に立 って生活して いる人間」 として把握し 、その相手 の基盤
となっている原理 を十分に理 解し、なおか つ尊重する ことである。 心理療法の 場は、
治療者が患者の原 理に立脚し て、つまり治 療者が患者 の目線でもの ごとを捉え 、患者
を絶対遵守する立 場をとり続 けることであ るとされる (酒木, 1994)。酒木(2001)
は、「自閉症児は 、絶えず他 者から侵入さ れることを 恐れている。 自閉症児の 示す多
様な症状は、自己 を他者の侵 入から守ろう とする防衛 手段である」 としている 。すな
わち、自己未分化 で自我が確 立されていな いために、 他者の視点に 立ったり、 他者と
何かを共有したり することが できないとい うことを意 味している。 酒木の主張 は、自
己未分化な状態を 改善する( 自分や世界に 対して自分 自身を定位す ることが可 能にな
る)ことができれ ば、自閉症 児の症状は改 善するとい うものである 。具体的に は、遊
戯療法や描画など を介して自 閉症児が安心 して自分自 身を自由に表 現できる( 自分自
身を自分や世界に 定位できる )場を提供し 、鏡やポラ ロイド写真、 さらに言語 でのや
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教育ネットワークセンター年報
第 8号
り取りまでも含め て積極的に 関わることで 、自閉症 児・者の 自己に対す る興味・関心、
さらには自己感覚 や空間・時 間感覚を育み 、他者の認 識と自己分化 を促して主 体性を
引き出すこととさ れる。
酒木による主張は、歴 史的に排除さ れてきた B ett el hei m の主張とは次の二点で 大き
く異なっている。 一点目は、 自閉症の本質 の捉え方の 違いである。 酒木は自閉 症の本
質を「子供が自分 自身と世界 との関係にお いて、自分 自身を主体的 な
この私
とし
て、自分自身およ び世界に対 して定位する ことができ なくなってお り、そのた めひど
く独特な(歪んだ )し方で、 (つまり世界 からの一方 的な定位をさ けるという 形で)
定位しようとして いる、その 子供の存在構 造にある」 としている。 すなわち、 酒木は
「自己の不在化と いう自己の 不定位」、つ まり留守の 状態(本来属 すべき場所 を暫定
的に空けること) であること を指摘してい る(小山内 ・酒木, 1985)。一方、 上述し
たように B et t el heim は本質を「自己 の否定もしく は意識の不 在」、すなわ ち子どもの
主体そのものが存 在しないこ ととしている 。この両者 の差異は自閉 症児・者の 主体を
認めるかどうかと いうことに 決定的に関わ ってくるも のであり、酒 木の方がよ り子ど
もの主体を認めて いるといえ る。
二点目は、原因論 に対する見 方の違いであ る。B et t el heim が原因を親の 養育態度に
求めたのに対し、 酒木(1994 )は「安易に 病因論に踏 み込むことは 避けて、で きる限
り自閉という本質 的理解を心 がけ、この本 質把握にも とづいた治療 論にとどめ るべき
である」としてい る。この差 異から示唆さ れることは 、酒木が原因 論に過度に 着目す
るのではなく、治 療論を重視 しているとい うことであ る。「現象理 解に限った 治療的
接近をもくろむも の」(酒木, 1994)としての酒木の 主張は、後述 する原因論 を基に
した「関わり」と は違った視 点を提供しう るものとし ても注目され る。
他者論に基づく酒 木の主張は 、精神分析視 点にたった「関わり」に 対してしば しば
なされる批判を退 けている。 その批判とは 、「自閉症 児との関わり では転移/ 逆転移
感情がおきないの で、精神分 析の特徴であ る転移/逆 転移分析がで きず、自閉 症児に
対する精神分析的 視点にたっ た「関わり」 は適さない 」というもの である。そ もそも
転移/逆転移とい うものは、 患者が抱く感 情と治療者 が抱く感情を 区別して捉 えるた
めに存在している 。「患者を 他者として向 かい合う」 姿勢を基本と する酒木の 主張で
は、治療者はあく まで他者( 患者)の視点 でものごと をみていくた め、逆転移 にあた
る治療者側の感情 に注目する ことがない。 従って、酒 木の主張にお いて、転移 /逆転
移感情とその分析 は、重要な 位置を占めて いないと考 えられる。
他者論を背景とし た「関わり」には、限界 が大きく二点 考えられる。一 点目は、「関
わり」が 長期にわ たるという 点である。酒 木の主張す る「関わり」 も含めて、 一般的
に精神分 析的視点 にたった「関わり 」は何十回 、時には 何百回のセッ ションを要 する。
それゆえ 緊急性を 有するよう な問題(例え ば、自傷他 害の行為など )には対応 できな
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我が国における自閉症児・者に対する「関わり」の検討
いという限界があ る。二点目 は、プレイル ームにおけ る自閉症児・ 者と治療者の 1 対
1 の関わりがどこまで般化 するかという 点である。 酒木の主張す る「関わり 」で展開
される関係は自閉 症児・者と 治療者の関係 であり、治 療者以外の人 との関係に おいて
般化がおこること は保証され ていない。酒 木(1994)の事例では、 互いの意図 を理解
しながら、治療者 と自閉症児 とが関わるこ とが出来た とされるが、 実際の社会 生活に
おける他者(治療 者以外)と の関係で、治 療者との間 で起こった関 わりが可能 になっ
たかどうかについ ては触れら れていない。 これら二点 は、他者論を 背景とした 「関わ
り」の限界と考え られる。
2−2.認知・言語障害説 を背景とする 「関わり」 ―行動療法に 着目して―
上述のように近年 においても 精神分析的視 点にたった「関わり 」が見られ るものの 、
その「関わり」 は 50−60 年代ほど盛んに なってはいな い(平井, 1996)。その 背景に
は、認知・言語 障害説に代 表される器 質的病因論 の隆盛があ った。B ett el heim に代表
される 1950 年代以降の 精神分析的視 点では 、自閉症の 主たる要因を 環境的なも のに求
めようとした。しかし、R ut t er(1964)は、原因は器質的 障害にあると する全く正 反対の
原因論を打ち出し た(註:酒 木の主張は、 主たる要因 を環境的なも のには求め ていな
い。上述参照)。すな わち、自閉症の最 も基本的な 症状は、先天性の 認知障害に よる言
語コミュニケーシ ョンの障害 であり、その 結果として 、対人関係 障害が生じる(R utt er,
1964)とい う自閉症の原 因論におけ る コペルニク ス的転換がな された 。
それによ って、
言語障害に対する 「関わり」と して言語療法 に力が入れ られた(杉山, 2001)。1979 年
に行動療法の研究 者である Lovaas, O. I. によって行わ れた言語訓練 は、正と負 のフィ
ードバックにより 個体の反応 様式のうち望 ましい部分 を強化、そう でない反応 を抑制
するというオペラ ント条件付 けによって、 子どもの認 知面に働きか け、行動変 容を目
指す「関わり」で あると考え られる。
我が国 でも、Lovaas の流れを組 む言 語学習 を中 心とし たプロ グラ ムが開 発さ れた
(梅津, 1975; 小林, 1980)。このプ ログラムでは 、問題行動の 改善や集団 参加スキル 、
学習態度の形成を 目的とし、 厳格に統制さ れた環境の 中でセラピス トと子どもが 1 対
1 の治療場面を持ち、各セッ ションで学 習目標を 1 つずつ個別に取 り上げ、集 中的に
実施する「dis creet t ri al t raining : DTT 」を基本としている。
自閉症児・者に対 するこのよ うな行動療法 は広く行わ れ、成果を上 げたが、治 療場
面で獲得された行 動が、実際 の場面でうま く応用され ないこと(般 化の問題) や、自
発性の欠如などが 問題として 指摘された(杉山,2001)。そこで、般化 の促進のた めに開
発された方法とし て、指導場 面ではなく日 常場面で直 接的に言語行 動を形成し ていく
機会利用型指導法 が開発され た。これは、 子どもが言 語反応を自発 しやすいよ うに物
理的に制限を加え ることで、 日常環境要因 を操作し、 子どもからの 偶発的な自 発的言
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教育ネットワークセンター年報
第 8号
語反応に対し指導 を行うもの である(小笠 原、氏森,1990)。小笠原 ら(1990)は、機
会利用型指導法を 用いて、重度知 的障害児 1 名(C A, 9: 5、M A, 1: 9)の要求語の形 成を試
みたところ、ベースラ イン期では 全く見られな かった要求 語が、21 回目のセッ ション
では 60%出現し、要 求語を獲得 することが出 来たという 結果が得られ た。
以上の ことから、 行動療法は 、問題行動の 改善や言語 行動の獲得と いった行動 面で
の変容に 対して有 効な関わり 方であるとい える。すな わち、行動療 法の立場で は、対
象となる 自閉症児 ・者個々人 の行動面にお ける能力( スキル)に焦 点が当てら れてい
る。
行動療 法による 「関わり」 では、その「 関わり」に おいて中心と なる標的行 動を設
定する必 要がある。最近の主な 研究(例えば、霜田,井澤,2006 ; 福永, 大久保, 井上, 2006 ;
服巻, 野口,2006)では、作業 能率の 向上、 携帯電 話の使用 スキル の獲得 、衝動 的行動 、
自傷行動の改善な どが標的行 動として設定 されている 。このような 標的行動は 、個々
人の行動面におけ る特定の能 力の改善や獲 得であると いえるだろう 。また、行 動療法
による「関わり」 がなされる 期間は 1 ヶ月∼半年と比 較的短期間で 、この期間 におけ
る行動の変容から 標的行動の 獲得がなされ たと結論付 けられている 。
ここに行動療法 の限界点を 見出すことが 出来る。そ れは獲得され た行動面に おける
能力(スキル)が 、介入を行 わなくなった 後にどれだ け維持されて いるのかと いうこ
とに関しては不明 であるとい う点である。 この点に関 して、福永ら (2006)は行動療
法による介入後、6 ヶ月ほど の期間をおい て、再度、 獲得された能 力(スキル )が維
持しているかどう かを検討し ている。しか し、福永ら の取り組みも 介入後六ヶ 月とい
う比較的短期間を 対象として おり、数年単 位のような 長期的な視点 には着目し ていな
いと考えられる 。このよう に行動療法に おいては 、対象児・者のその 後の発達と いう長
期的な視点で、獲 得された能 力(スキル) がどのよう に影響を与え ていくのか という
ことが検討される ことは少な い。このよう な限界点が 浮上する原因 としては、 行動療
...
法が、発達という 視点を軽視 し、今現在 の 個々人の行 動面における 能力に焦点 を当て
ているためである と考えられ る。
2−3.情動障害説を背 景とする「 関わり」― 情動的なコ ミュニケーシ ョンの促進 に着目
して―
1980 年代を迎え 、認知・言語障害説 への批判と ともに、情動障害説 が呈された 。情
動障害説では、自 閉症児・者 は生得的に他 者との間に 情動的なコミ ュニケーシ ョンを
行う能力に欠陥が あるとされ る(Hobson, 1989 )。この原因論 の変遷の背景 には、自閉
症児・者と類似し た言語障害 のある発達性 言語障害児 ・者に社会性 の障害が見 られな
いこと(C ant wel l, B aker, Rutt er, & M awhood, 1989)や、高度な言語 能力を有し ながら
も社会性の障害が ある自閉症 児・者の存在 が挙げられ る。情動障害 説の広まり ととも
−64−
我が国における自閉症児・者に対する「関わり」の検討
に、自閉症児・者 に対して情 動的なコミュ ニケーショ ンを促す「関 わり」が徐 々に見
られ始めるように なる。
我が国において は、針塚(1994)の動作法がその「 関わり」の一 つとして挙 げられ
る。針塚は これまで脳性 麻痺児を主な 対象として 行われていた 動作法を自 閉症児の「関
わり」に取り入れ ている。動 作法を自閉症 児に対して 行う主な目的 は、①言語 的なや
り取りに困難のあ る自閉症児 との間で直接 的な身体接 触によるコミ ュニケーシ ョンを
行う②自閉症児本 人の課題に 対する能動的 な取り組み を促す③課題 遂行にあた り課題
を自閉症児と関わ り手が共有 すること、が 挙げられる 。すなわち、 身体接触を 通して
課題遂行すること で、自閉症 児・者と関わ り手との間 での情動的な コミュニケ ーショ
ンが促されるので ある。
また、高原 (2001; 2002)の自閉症者へ の心理劇 も自閉症児 ・者に対 して情動 的な
コミュニケーショ ンを促して いる。心理劇 は、他者と の関わりの中 でテーマに ついて
身体的・言語的に 行為化する ことが求めら れる。針塚 (1993)によれば、行為 化とい
う心身の活動によ って自閉症 児・者に情動 体験が喚起 されると同時 に、他者と の関わ
り合いの中で役( ロール)を 演じることで 、他者との 新たな情動関 係の体験が みられ
るとされる。実際 に、高原(2001)の 10 年にわたる実 践では、一名 の自閉症者 が怒り
や悲しみを表情豊 かに演じて おり、自閉症者にお ける情動体験 の活性化が 理解される 。
同実践では、対象 となった自 閉症者が心理 劇の参加者 から励ましの 言葉などを 通して
共感される様子が 描かれてお り、心理劇の 自閉症者に 対する情動的 なコミュニ ケーシ
ョンの促進が伺え る。針塚や 高原の取り組 みは、自閉 症児・者とセ ラピストも しくは
他の参加者との間 での情動的 なコミュニケ ーションを 促している。
一方、小林(1996a)や白石(2004)の取り組みでは 、母子関係も しくは家族 関係に
おける情動的なコ ミュニケー ションの促進 が目指され ている。小林(1996b)は、自閉
症児・者が 乳幼児期 独特の 無様式知 覚(am odal percepti on:共通感覚と 訳される こと
もある)の状態に あるために 、対人面での 過敏性が高 く、社会的に 奇異と映る 行動を
取るという仮説に 立っている 。小林の仮説 は、情動的 なコミュニケ ーションが 成立し
..
にくいという自閉 症児・者の 状態を、自閉 症児・者と 関わり手の関 係 の障害と して捉
.
えており、個 の生 得的な障害 として捉え た Hobs on (1989)の仮説とは異 なっている 。
そのために 、小林らの取 り組みでは 、対人関 係の最も基 礎となる母子 関係を取り 上げ、
対人面での過敏性 を緩和し 、他者との 間に情緒的 なコミュニケ ーションを 促進する「関
わり」が目指さ れる。白石(2004)の取り組み では、両親 がセラピスト と自閉症児(女
児・4 歳 5 ヶ月)との遊びを 参考・模倣す ることや、 セラピストが 両親と自閉 症児と
の関係を調整する ことを通し て、両親と自 閉症児との 間に情動的な コミュニケ ーショ
ンを促すことに成 功している 。白石(2004)や小林(1996a)の取り組 みは、情 動的な
コミュニケーショ ンの促進に おいて、セラ ピストは母 子関係もしく は両親と自 閉症児
−65−
教育ネットワークセンター年報
第 8号
との関係を調整・ 促進する立 場であり、セ ラピスト自 身と自閉症児 との関係を 促進す
る針塚らとの取り 組みとは異 なっている。
これらの取り組 みは、 セラピスト−クラ イアント( 自閉症児・者 )
母子関 係(家
族関係) という情動 的なコミュ ニケーション を促す関係 の違いだけで なく、促 進する
コミュニ ケーショ ン手段の違 いが見られる 。動作法や 遊びでは主に 身体的、心 理劇で
は言語的 ・身体的 なコミュニ ケーション手 段が用いら れている。こ のように各 々の取
り組みで 着目する 関係の違い 、コミュニケ ーションの 手段の違いに は、対象と する自
閉症児・ 者の生活 ・発達年齢 が影響してい ると考えら れる。小林や 白石では、 乳幼児
期の自閉 症児に対 して活動に 乗りやすい遊 びをきっけ として選択し 、関わ り手−自閉症
児との情 動が直接 的に伝わり やすい身体的 コミュニケ ーションを主 として、発 達初期
において 重要とさ れる母子関 係の促進を目 指している 。針塚では、 遊びよりも 自由度
の低い課 題をき っかけ とし身 体的コ ミュニ ケーシ ョンを 主とし ながら 、セラ ピスト−
クライア ントの二 者関係の促 進を目指して いる。一方 、高原では言 語的・身体 的コミ
ュニケー ションを 通して、セラピストークライ アントの二 者関係に止ま らず、ク ライア
ント同士 などの集 団における 関係を促進し ている。つ まり、対象と する自閉症 児・者
の生活・ 発達年齢 に合わせて 選択するコミ ュニケーシ ョン手段、着 目する関係 を考慮
すること が重要と 考えられる 。特に
関係→集 団におけ る関係
母子 関係→(母 子・もしくは 家族でない )二者
と いう着目する 関係の変化 は、自閉症児 ・者の生活 ・発達
年齢の上 昇と共に 支援を必要 とする
関係
が変化し ているという ことを示し ている
と思われ る。
だが、 他者との 関係におい て情動的なコ ミュニケー ションを促進 する「関わ り」に
は対応し きれない 点もある。 その一つが、 自閉症児・ 者の問題行動 への対応で ある。
この点に ついて白 石(2004)は、関係を育 むことや関 係の中で言語 ・非言語的 なコミ
ュニケーションが 促進される ことで、 結果
と して問題行動 が減少する としている 。
しかし、 時間をか けて情動的 なコミュニケ ーションを 行える関係を 育むことは 、緊急
を要する 問題行動 (自傷行為 ・他害行動な ど)に対し て、介入を遅 らせる結果 となる
可能性が 高い。問 題行動の根 本的な解消に は情動的な コミュニケー ションの促 進が不
可欠であ ろうが、 即時的な問 題行動の解消 には限界が あると思われ る。
また、 大きな懸 念としてあ げられるのが 、情動的な コミュニケー ションを行 う関係
をいかに 広げてい くかという 点である 。
「関わ り」を通 して情動的な コミュニケ ーショ
ンが促 され た他 者と の関 係は 、自 閉症 児・ 者に とっ て探 索行 動の 安全 基地 や、 辻井
(1999b)の言う「心の拠 り所」として 機能する可能 性がある。し かし、他者と の関係
が無数に 存在する 社会におい て生活してい くためには 、
「 関わり」を 通して促進 された
情動的な コミュニ ケーション を、特定の他 者以外とも 行っていく必 要がある。 この点
は、上記 に述べた 先行研究に おいては言及 されておら ず、大きな懸 念として残 る点で
−66−
我が国における自閉症児・者に対する「関わり」の検討
ある。
2−4.「関わり」の 「選択モデ ル」―三軸か らなる「選 択モデル」の 提案―
自閉症児・者への「 関わり」に関 して各立場で のねらいと 限界を捉える と、
「関 わり」
における大きな課 題が顕在化 してくる。課題 とは、各立場で の「関わり」が自 閉症児・
者の臨床像の一側 面にしか対 応しきれてい ないことで ある。各立場 ではそれぞ れ臨床
像における
の促進
自己分化 の促進
行動改善(言語獲 得)
情動的なコ ミュニケー ション
という側面 に焦点化して「 関わり」を行っ ている反面、他の側面には その「関
わり」の効果が波 及して改善 されるという 姿勢を取っ ている。だが 、これまで の「関
わり」の着目した 側面が多岐 にわたってい るように、 一人の自閉症 児・者の臨 床像に
対して、自己や行 動面、情動 面における「 関わり」は どれも不可欠 である。単 純な障
害仮説に基づく臨 床像の一側 面に特化した 「関わり」 には限界があ り、臨床像 を包括
的に捉えた「関わ り」が今後 求められるこ とに疑いは ない。
しかしながら、こ れまで述べ た「関わり」を分 別なく全て 用いることは 、 関わ り手
だけでなく「関わり」の中心となる
自閉症児・者
に も混乱をもた らすことに なる。
一人の自閉症児・ 者に対して 包括的に「関 わり」を行 うためには、 彼ら一人ひ とりの
臨床像に合わせて 「関わり」 を選択するこ とが求めら れる。だが、 関わり手の 依拠す
る理論的背景によ って「関わ り」を選択す ることは、 関わり手主導 の発想に基 づいた
「関わり」に対象 となる自閉 症児・者を巻 き込む危険 性が大いにあ る。それ故 に「関
わり」を選択する 際には、臨 床像をふまえ 選択の基準 となる
不可欠となる 。 軸
急性
関係
第一の軸は
軸
を設定する ことが
の設定に あたっては 、各立場で 指摘されたね らいと限界 から、 緊
発達
緊 急性
という 三軸を提案す る。( ⅱ
であ る。自閉症児 ・者に「関 わる」際、対 象児・者や 家族の
主訴が「関わる」 始点となる 。その主訴の
緊急性
が、例えば自 傷行為や日 常生活
を重篤に阻害する ほどの常同 行動等のよう に、高いも のであったな ら、すぐさ まに介
入する必要が出て くる。上述 したように、 自傷行為な ど生命の危険 を脅かすよ うなも
のであれば、情動 的なコミュ ニケーション の促進や他 者論に基づく 「関わり」 は長期
的にみれば効果が あるかもし れないが、現 在の自傷行 為に即座に対 応すること は難し
い。そのような場 合は、行動 療法を用いて 当面上の行 動の問題に対 応すること が求め
られる。
第二の軸は
関係
である 。他者論に基 づく「関わ り」や情動的 なコミュニ ケーシ
(ⅱ
これ 以 降 、 各 立 場 にお いて着 目 し た「 関わ り」に 限 定 し て論を 進 める。 その ため、 酒 木 の 主 張 す る「 関
わり」は、 他 者 論に 基 づく 「関わり」 ; 認 知 ・ 言 語 障 害 説 を 背 景 とす る「 関わ り」は 、 行 動 療 法 ; 情 動 障
害 説 を 背 景 とする「 関 わり」は 、 針 塚( 1994)・ 高 原( 2001;2002)・ 小 林 (1996 a)・ 白 石( 2004)の 情 動 的
コミュニケー ショ ンを促 進 する「 関わり」 を それ ぞれ 示 してい る。 論じ られ る「 選 択 モデ ル」は 、これ ら 着 目 し
た「 関わ り」から 限 定 的 に 捉 えたも の とする)
−67−
教育ネットワークセンター年報
第 8号
ョンを促進する「関わ り」では、クライアン ト(自閉症児・者)−セラピスト(治 療者)
の関係や母子・家族関 係に焦点化 して「関わり」が行わ れる。これらの 限界は 、 関係
内で見られた行動 の改善やコ ミュニケーシ ョンが、他 の
関係
に おいても生 起する
かという般化の問 題である。 般化の問題は 、各立場に おいて積極的 に触れられ ておら
ず、また問題を解 消する事例 や実証的な研 究成果は現 在のところ呈 されていな い。こ
の現状を考慮すれ ば、 おそらく 般化の問題は ないだろう という曖 昧な姿勢を 取るよ
....
りも、 対 処すべき問題(主訴)はどの関係 に おいて扱う べきか とい う 関係 を同
定することが実践 的な「関わ り」を導くと 考えられる 。自己分化の 促進や他者 認識と
いう問題(主訴 )に取り組む ならば、自 閉症児・者−治療者の
関係
を扱う他 者論に
基づく「関わり」 が有効と考 えられる。一 方で、複数 の他者間にお けるコミュ ニケー
ションの問題(主 訴)に取り 組むならば、 クライアン ト間の情動的 なコミュニ ケーシ
ョンを促進する高 原(2001; 2002)の「関わり」が活かされ ると思われ る。すなわち 、
関係
という軸 を設定し、 各立場から「 関わり」を 選択すること で、一つの 立場に
依拠して生じる般 化の問題を 解消すること が出来るの である。
第三の軸は
発達
である 。情動的なコ ミュニケー ションを促進 する「関わ り」を
概観すると、対象 となる自閉 症児・者の発 達段階に合 わせて「関わ り」を選択 する必
要性を見出すこと が出来る。 また、行動療 法では、特 定の発達段階 に焦点化し 、標的
行動や言語獲得を 目指した「 関わり」が求 められる。 すなわち、自 閉症児・者 の
達
発
に応じて「関 わり」を選 択していくこ とが重要な のである。両 親や家族か ら呈さ
れる主訴は、ある一時点で の対象児・者の臨床 像に言及して いることが 多い。し かし、
臨床像はある一時 点において 突然生起する ものではな く、発達とい う経緯を辿 って立
ちあらわれるもの である。そ のために、主 訴として呈 された背景に は、どのよ うな対
象児・者の
発達
の問題が あるのかを把 握すること が求められる 。他者認識 や自己
分化といった発達 初期におけ る問題が主訴 の背景にあ る場合には、 コミュニケ ーショ
ン手段の獲得を目 指すといっ た行動療法よ りも、他者 論に基づく「 関わり」が 活かさ
れるだろう。一方 で、幼児期 や学童期の自 閉症児に対 して、どのよ うに他児に 話しか
けたらよいのか分 からない、 といった発達 年齢と生活 年齢のギャッ プが小さい 問題に
は、コミュニケー ション手段 の獲得を目指 す行動療法 や、情動的な コミュニケ ーショ
ンの形成や促進を 促す「関わ り」が望まし いと考えら れる。つまり 、自閉症児 ・者の
臨床像をふまえ 、 発達
という 軸に従って各 立場での「関わり」を 選択するこ とが必
要である。
以上のように 、 緊急 性
関係
発達
と いう三軸か らなる「選 択モデル」を活用
することで、自閉 症児・者の臨床 像に即した「 関わり」を選 択出来るだ けでなく 、 関
わり手 の選択 に関する混 乱の解消も可 能となる 。次章では 、実際の事 例に対して「選
択モデル」を活用 して見立て を行う。
−68−
我が国における自閉症児・者に対する「関わり」の検討
3.事例検討
3.1 事例概要
クライエント:A 児(男児)
生活年齢(C A):10 歳 7 ヶ月 (インテーク 時 )
診断名
:高 機能自閉症(7 歳時)
所属
:公 立小学校普 通学級
家族構成
:父 (52)会社員、母(45)パート・事務 員、姉(中学 3 年)、A
3.2 生育歴及び相談歴
出産時:妊娠中異 常なし、熟 産 (10 ヶ月満期)、難産(吸引)、仮死(保育 器:48 時間) 。
0: 4
首のすわり
0: 5
人見知りをしない
0: 8
お座り、母親の後追い見ら れず
0: 10
始歩
1: 6
1 歳半健診では始語が なく、指差し もしていな かった。
2: 6
2 歳半健診では知 能に問題 ない。声 を出せな いタイプ 。ことば を溜めてい ると
ころなので様子を 見ることと いわれる。
2: 9
保健師の紹介で S 市児童相談所に行 く。このと き喜怒哀楽に 乏しく、人 と関わ
るのが下手ではあ るが、発達 的に問題なし と言われる 。
2:11
新版 K 式発達検査:全領域 発達指数 (DQ)77
津守式発達 検査:発達 年齢(DA)2: 6 、DQ86
【状態像】検査中 の立ち歩き が多く、視線 も合いにく い。言語はオ ウム返しが あり、
単語レベルの発語 もイントネ ーションが尻 上がりにな っている。
3: 4
幼稚園入園前
新版K式発達検査 :認知・適応 DQ100 、言語・社会 DQ90
【状態像】検査に スムーズに 応じる。立ち 歩きなし。 母にベタベタ 甘え、抱っ こを求
めてくるようにな る。言葉の イントネーシ ョンが尻上 がりではなく なってきた 。
4: 0
幼稚園入園後
新版K式発達検査 :認知・適応 DQ131 、言語・社会 DQ85
【状態像】話しか けても無視 していたり、 オウム返し をしたりは続 いているが 、自ら
「何作ってるの? 」等と人へ 関心を向ける ようになる 。他児との関 わりが増え る。
5:11
就学前
田中ビネー知能検 査:IQ= 110(M A6 歳 6 ヶ月)
【状態像】検査に 素直に応じ 、物の定義(帽子は 何ですか)や理解問 題にスムー ズに答
−69−
教育ネットワークセンター年報
第 8号
える。顔の表情は 無表情のま ま。
7: 2
小学1年生
WISC -R 知能検査:V IQ= 101、PIQ=151、FIQ= 126
ことばの教室に通 う。
10:7
インテーク面 接
主訴
場面によってコミュニ ケーション の仕方が異な る。具体的 には、家では 年齢不
相応に自分勝手に べたべたと くっついてく るので困っ ている(母親 談)。 一方、
学校場面では関り たいという 思いはあるよ うに見える のだが 1 人でいることが
多く、集団から外 れている。 そのため、集 団の中でも 関れるように なって欲し
いといったことが 母親から語 られた。小学 校の低学年 時に学校で他 児に話しか
けたところ「変な 奴」「 不思議系」と 言われ、泣 いたことがあ る。
インテーク時の状 態像
<生活面>
睡眠時間、起床時間 に特異さなし。偏食あり。特に 野菜が嫌い。無理をすれば
食べることが可能 。音へ の過敏さがみ られる 。例えば 、父親がく しゃみをする
とかなり怒る。運動会 では自分が走 る番にもか かわらず、ずーっ と耳をふさい
でいた。また、雑談が なく、必要なこ とだけをやり とりする。本 人は冗談をい
うのに、他の人が いう冗談は 悪意にとる。
心理アセスメント 結果
インテーク面接で は、A に対して 知能検査(W ISC -Ⅲ)を施行した 。以下に 、検査 結果と
検査時の A の様子を示した。W IS C-Ⅲの結果、F IQ= 106 、VIQ= 84、P IQ= 129 であった。
また、群指数は、 言語理解(VC )が 83 、知覚統合(P O)が 141、注意記憶(F D)が 100、処
理速度(PS )が 94 であった。F IQ は平均レベルである といえるが、VIQ と P IQ のディス
クレパンシーは非 常に大きく 、個人内 で能力のア ンバランスさ があるとい える。また、
群指数によれば、P O が平均を大き く上回って いることに比 べ、VC は 83 と平均より
も低いレベルにあ る。言語性下位 検査の“ 単語”では、検査者が「広告 とは何です か?」
と質問すると、A は「チラシ 」と答えるな ど、全ての 質問に対して 、一つの単 語で答
えていた。検査場 面全体を通 して、A から の自発的な 発語はなく、 検査者に対 しても
ぽつぽつと単語で 応答するの みであった。
3−3.
「関わり」の 「選択モデ ル」を用いた 見立て
A の主訴は、場面によ ってコミュ ニケーション の質が違うと いうもので ある。主訴
の一点目は、「家 で自分勝手 に母親にベタ ベタしてく ることで母親 が負担を感 じてい
るため、何とかし てもらいた い」というも のである。 二点目は、「 学校では他 児と関
−70−
我が国における自閉症児・者に対する「関わり」の検討
わりたいと思う反 面、集団か ら外れている ことが多く 1 人でいるた め、集団で も人と
関わることができ るようにな ってほしい」 というもの である。
一点目の主訴は 、母子分離 ができてい ない状態とい える。こ の状態は「選択モデ ル」
を活用すると、
緊急 性
は低く、
関係
は A と母親との関 係であり、
発達
と
しては実年齢にそ ぐわない発 達段階の初期 における状 態で、幼少期 から長期化 してい
る問題であること が理解され る。これらを ふまえると 、他者論に基 づく「関わ り」が
活かされると考え られる。そ の理由は以下 の通りであ る。
この主訴について 母親は負担 に感じてはい るが、実際 にストレスが 身体症状と して
現れたり、母親が 仕事に行け ない・A が学校に行 かないといっ た現実的な 問題は生じ
ていない。そのた め
緊急性
は高くない と思われる 。従って、比 較的長期的 な視点
で「関わり 」をしてい くことが可能 と思われる 。またこ の主訴は A と母親ない し家族
との
関係
にお いて生じて いる状態であ り、ベタベ タと甘えてく るのは母子 分離が
できていないこと を表してい る。母子分離 の背景には 自分というも のが確立し ていな
いこと、つま り不十分な自 我の発達が あると考えら れる。更に A の生 育歴・相談歴に
着目すると、幼稚 園入園前か ら甘えがみら れており、 現在の状態は
発達
の 初期段
階におけるつまず きが想定さ れる。以上の 点から、他 者論に基づく 「関わり」 が効果
的であると考えら れる。具体 的に考えると 、鏡影像や テープレコー ダーなどを 用いて
自己知覚を促し、 自己と他者 の境界を認識 させ、母子 分離を促進す ることが望 まれる
だろう。
一方、行動療法の立 場でこの状 態を、A が母親にベタ ベタしていっ たときの母 親に
よる正のフィード バックによ る学習の結果 とみれば、 母親の賞賛や 受容といっ た正の
強化子の除去や、 反対に行動 制限を課する などの罰子 の呈示といっ た「関わり 」も考
えられる。しかし 、甘えてき た子どもを明 確に拒絶し たり、甘える 行為に対し てペナ
ルティーを呈示す るという「 関わり」は、 母子間の正 常な愛着形成 やその後の 子ども
の健全な発育を維 持させる上 で新たな問題 を生じる危 険性がある。 それ故に、 行動療
法はあまり活かさ れるとは思 われない。特 に、学校で の対人関係で 問題を抱え ている
A にとって、拠り所とな る母親との つながりが稀 薄になる危険 性がある「 関わり」は
効果的ではないだ ろう。また 、情動的なコ ミュニケー ションを促進 する「関わ り」の
立場でこの状態を、母子の関係性 の問題と考 えれば、小林(1996a)に代表され るよう
な母子間の関係調 整を行って いく「関わり 」が考えら れる。しかし 、A の場合は情動
的交流を促すとい うよりは、 むしろ交流を 適度に低め るという方針 、すなわち 母子分
離の必要性が高い と思われる 。それ故に、 情動的なコ ミュニケーシ ョンの促進 を目的
とした「関わり 」はこの 主訴に効果が 薄いと考え られる。今呈している 状態が「 甘え」
である以上、それ を悪化させ うる「関わり 」の仕方は 積極的には望 まれないだ ろう。
−71−
教育ネットワークセンター年報
第 8号
以上のことから、 一点目の主 訴に対しては 、他者論に 基づく「関わ り」がより 有効で
あると期待される 。
二点目の主訴に対 し「選択モデル」を 活用すると、
A と他児との関係であり 、
発達
緊急性
は 低く、
関係
は
としては実年 齢相応の問題 であること が理解され
る。これらをふま えると、情 動的なコミュ ニケーショ ンを促進する 「関わり」 が活か
されると考えられ る。その理 由は以下の通 りである。
まず
緊急性
である が、今の時 点で A が直面してい る問題に自傷 他害などの 緊急
の介入を必要とす る内容は見 られないため
緊急性
は低いとされ る。従って 、短期
的で性急な介入の 必要性は高 くないと考え られる。次 に
は A と他児との
関係
関係
を みると、こ の主訴
にお いて生じて いる。A が家 族内では積極 的に関わり を求め
ていることから、 家族以外の 他者に話しか けた際の失 敗がもとで、 他児に積極 的に関
われなくなってい ることが想 定される。こ の点に関連 して
発達
に着目する と、A
は両親に対して関 わることが 出来ており、 他者全般に 対して関わり のつまずき がある
わけではない。W ISC -Ⅲでは VIQ=84 であるが、検査 場面において 検査者とコ ミュニ
ケーションを一次 的には行え ている(
聞 かれたこと を理解し、答 える
のやり取りは成立 していると いう意)。す なわち、言 語能力という
とい う情報
発達
の つまず
きが主訴の中心的 な背景とは なっていない と理解され る。むしろ、 主訴の背景 には他
児との
関係
に おける過去 の関わりの失 敗があり、 その影響によ って他児と の関わ
りに消極的な姿勢 が形成され ていると考え られる。そ のために、言 語能力など のコミ
ュニケーションス キルを高め る行動療法よ りも、むし ろ他児との情 動的なコミ ュニケ
ーションの促進に 着目した「 関わり」が有 効であると 考えられる。 具体的には 、高原
(2001; 2002)に代表され る集団を対 象とした情動 的なコミュ ニケーション を促進す
る「関わ り」が望 まれると思 われる。高原 の取り組み は、身体的・ 言語的に行 為化す
ることが 求められ 、A の他児への関 わりにおける 積極性を促す ことにつな がる。検査
場面において 、雑談がなく 、必要な ことだけを やりとりする という A の状態は 、他者
(検査者)との一 次的な関わ りが出来ない (情報交換 レベルのやり 取りがそも そも成
立しない)のでは なく、他者 との関わりが 出来るけれ ども消極的な 姿勢であっ た(感
情共有レベルのや り取りが成 立しにくい状 態であった )と見立てる ことが出来 る。そ
れ故に、検査場面 の状態像か ら翻ってみて も、A には情動的な コミュニケ ーションを
促進する「関わり 」がより効 果的であると 考えられる 。
一方、行動療法 の立場で
他児と関われ ない
とい う状態を、失 敗体験の蓄 積によ
る学習とみれば、A が積 極的に関わ ろうとしたと きに賞賛など による正の フィードバ
ックを与えるなど の「関わり 」も考え られる。し かし、この 主訴が他児 との
関係
、
つまり集団の中に おいて生じ ていることを 考えると、正 のフィードバ ックを A が適切
な行動を獲得する まで集団の 中で持続的に 提供してい くことが求め られる。こ れは多
−72−
我が国における自閉症児・者に対する「関わり」の検討
くの他児の協力や 理解を得な ければならな いため実際 には非常に困 難である。 他児の
協力を求めたとし ても、過去 の学校での経 験(「変な 奴」「不思議 系」と揶揄 された
こと)から、他児 からの無視 やコミュニケ ーションの 失敗など負の フィードバ ックが
与えられる危険性 は拭いきれ ない。従って 、行動療法 はあまり効果 的ではない と思わ
れる。また、他者 論に基づく 立場で
他児 と関われな い
という状 態を、自己 分化が
うまくいかず他者 との関わり が自己にとっ て侵襲的な ものとなって しまうため である
とみれば、遊戯療 法や鏡影像 、身体感覚へ の注意喚起 などを介して 自我の発達 を促す
「関わり」も考え られる。し かし他者論に 基づく「関 わり」はかな り長期的な 視点を
もって「関わり」 を行わなけ ればならず、 それが他児 との関係に反 映されるの には非
常に長い時間を要 する。その ため、なかな か他児との 関係に変化が 現れにくい と推測
される。他児との 関係は、母 親などとの関 係と違い、 一時的な関係 であること も少な
くない(例えば、 学級編成に よって関係を 築く他児は 変化する可能 性がある) 。それ
故に、あまりに長 期にわたる 「関わり」は 望まれない と思われる。 以上のこと から、
第二の主訴に対し ては、情動 的なコミュニ ケーション を促進する「 関わり」が より効
果的であると考え られる。
4.柔軟な「関わ り」の選択と 各実践者・ 諸機関の連携 及び調整へ
「関わり」の「選択モデ ル」を活用 することで 、元来行わ れてきた単一 の「関わ り」
のみによって子ど もの呈して いる問題のす べてを見立 てるのではな く、一つの 「関わ
り」に捕われない 、より柔軟 な姿勢で支援 することが 可能である。 本事例で示 された
ように、母子分離 の問題と思 われるものに 対しては他 者論に基づく 「関わり」 、他児
との関係の問題に ついては情 動的なコミュ ニケーショ ンを促進する 「関わり」 、そし
て緊急性の高い時 には行動療 法を適用する ことができ る。単一の「 関わり」に 捕われ
て見立てることは 、ともすれ ば自閉症児・ 者を、無理 矢理その「関 わり」の理 論的枠
組みに押し込める ことになる 。また、適し た「関わり 」の選択を奪 うことにな り、多
くの努力が徒労に 終わること にもなりうる 。「選択モ デル」の活用 は、そうし た努力
を無駄にさせず、 自閉症児・ 者の臨床像に 応じて最も 適した「関わ り」を提供 するこ
とを可能にするも のなのであ る。
自閉症児・者へ の臨床像に 包括的に対応 する「選択 モデル」は、 今後の自閉 症児・
者への「関わり 」に関して新 たな提言を するものであ る。「関わり」は 、自閉症児・者
の両親や家族・学 校教育等に おける教育者 ・発達相談 機関の職員・ 医療機関に おける
医師等によって実 践されてい る。これら「 関わり」の 実践者には、 日々の「関 わり」
の経験や理論的背 景の違いが あるため、主 張する「関 わり」には対 立が生じう る。こ
のような
関わり 手
の立場によ る対立や混 乱は、
「 関わり」の中 心となる自閉 症児 ・
者を、一貫しな い「関わり 」や不適切な「関わり 」の継続に巻 き込むこと となる。「選
−73−
教育ネットワークセンター年報
第 8号
択モデル」を活用 することは 、対立や混乱 を解消する だけでなく、 各実践者・ 諸機関
の連携や調整を可 能にし、自 閉症児・者の 臨床像をふ まえた最適な 「関わり」 の実践
に繋げられる。す なわち、複 数の実践者・ 機関を有機 的に結びつけ た「関わり 」の支
援体制の構築をよ り促進でき るのである。 近年、自閉 症児・者に対 する「関わ り」に
ついて、各実践者 ・諸機関の 連携・調整の 必要性が述 べられている が、「 選択モデル 」
はこの点において 具体的かつ 実践的な提言 であると考 えられる。今 後、「 選択モデル 」
が活用されるため には、
「選 択モデル」の社会 的な認知の 高まりと共に、各 実践者・諸
機関が互いの立場 を認め合い 、連携・調整 の体制構築 に協力するこ とが望まれ る。
謝辞
本研究をまとめる にあたり御 協力を賜りま した A 君と御家族の方 に感謝いた しま す 。
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