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情 報 報 告 - 日本産業機械工業会

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情 報 報 告 - 日本産業機械工業会
情 報 報 告
ウィーン
WEVS(その2)
5 月 14 日~16 日にノルウェー・オスロで開催された電気自動車に関する会議(World
Electric Vehicle Summit 2013)について報告する。主催は Informa energy events(ロンド
ン)である。今回は、世界的重電メーカーである ABB 社の EV 用充電インフラに関する取り
組みと欧州自動車工業会の e-mobility と関連規格に係わりについて報告を紹介する。
4.電気自動車充電用インフラ
Steven Dorresteijn 氏、ABB B.V.社(オランダ)
4.1 現在の状況
(1)
急速充電器の普及状況
電気自動車(以下、EV)用の直流急速(DC-Fast)充電方式は欧州内におけるトレンドである。
現在までのところ、その方式は世界的にみればCHAdeMOが優勢である(図4-1参照)。
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図4-1 急速充電器の普及状況
(2)
ABB 社の直流急速充電スタンドの導入
ABB 社は、2010 年 5 月から以下の国々において、この分野の技術を証明してきた。
(実績)
ドイツ、ノルウェー、オランダ、英国、アイルランド、フィンランド、デンマーク、
スェーデン、スイス、オーストリア、フランス、チェコ、エストニア、トルコ、
ハンガリー、イタリア、香港、中国、台湾、スロベニア、南アフリカ、ベルギー、
スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ポーランド、カナダ、チリ、シンガポール
約600の地域
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情報報告 ウィーン
また、大規模なプロジェクトとして、以下の3をあげることができる。
①CLEVER社(デンマーク)
デンマークにおける充電器ネットワークの構築。2012年11月にTerra51を50台納入す
る契約を締結し、そのネットワークはABB社製のリモート管理システムおよびサービス
チ ー ム に よ っ て 支 援 し て い る 。 ク ラ ウ ド ベ ー ス の OCPP(Orbiter Cloud
Photopolarimeter)ネットワークがCLEVER社の料金サービスに接続されている。
【CLEVER社】
デンマークの大手e-mobility運営事業者(EMO)で、デンマークの公共充電ステーションのネットワー
クの確立を手掛けている。
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図4-2
CLEVER社とのプロジェクトの実例
②ESB社 + NIE社(アイルランド)
アイルランドにおける急速充電器ネットワークの設立。ESB社とNIE社と共に、アイ
ルランド南部と北部のガソリンスタンドで直流急速充電器のネットワークを展開してい
る。ABB社はハードウェア、メンテナンスサービス、接続および事務管理部門統合化サ
ービスを供給。ABBはガソリンスタンドでの設置を保証している。
【ESB 社、NIE社】
ESB:Electricity Supply Board
アイルランド最大の電力供給会社。
NIE:Northen Ireland Electricity Limited 北アイルランドの大手電気事業者であるが、発電や電力
の供給はしない。ESBグループの子会社。
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図4-3
ESB社 + NIE社とのプロジェクトの実例
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情報報告 ウィーン
③VitaeMobility社(ベルギー)
ABB社の急速充電器を使用したビジネスケースの実証。ベルギー内のレストラン、簡
易食堂、会議場やショッピングモールへの設置ならびに小売場所で便利な30分から120
分間の急速充電時間でのサービスを提供。20kWの出力レベルが、このような場所で使用
可能なグリッド接続容量から最適である。
【VitaeMobility社】
企業および政府用集団車両と消費者向けe-mobilityの専門企業。
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-4 電気自動車の充電場所の変化
(3)
エストニアでのインフラプロジェクト
①急速充電器ネットワーク
ABB B.V.社では、エストニア全域に約 200 基の充電器ネットワークを展開している。
2013 年 2 月に開始し、マイナス 19℃からマイナス 26℃の非常に厳しい条件で、問題無
く使用されている。また、北欧ではさらに気温の低い条件での使用もある。
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-5 エストニアでの充電インフラプロジェクトの一例
― 33 ―
情報報告 ウィーン
②NOW! Innovations 社とのパートナーシップ
エストニアでのプロジェクトでは、NOW! Innovations 社と図 4-6 に示すような充電器
使用の際の違った承認と支払いについてのサービスを実施している。
次のステップとして、ウェブサイトを通じた「NFC+音声による認証」がある。
【NOW! Innovations 社】
NOW! Innovations社は、2000年に携帯電話ベースの駐車場サービスを開発した世界で最初の企業の
1社で、現在は携帯電話と電子駐車ソリューションのプロバイダーの最大手。NOW! Innovations社は
アメリカ以外に、西欧、CIS、中国、オーストラリアとニュージーランドに事務所を持つ。
・SMS(ショートメールサービス)
SMS を送信
充電開始のため
充電器の
接続&認証
充電
SMS を送信
充電停止のため
充電結果
の受信
・スマートフォンのアプリケーション
充電開始
充電器 ID の使用
または QR コードの読み取り
充電器の
接続&認証
充電
充電停止
・RFID カード(電波式自動識別カード)
カードをかざす
充電器の認証のため
充電器の
接続&認証
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充電
カードをかざす
充電停止のため
情報報告 ウィーン
・プリペイドカード
専用カード
の購入
カードに隠さ
れたコードを
明らかにする
SMS または
アプリでコード
を送信
確認情報を
受信
SMS または
アプリで
充電開始
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-6 エストニアでの NOW! Innovations 社とのプロジェクト
4.2 充電インフラへの取り組み
EV 用充電インフラを前進させていくためには、EV 用充電バリューチェーン全体のソリ
ューションを提供していく必要がある(図 4-7 参照)。
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-7
EV 用充電バリューチェーン全体のソリューション
図 4-8 に、どのような充電インフラが要求されるのかについて時系列的に充電方式および
車種を図示する。
また、多様な急速充電方式に対する電気自動車メーカーの支持が、図 4-9 に示すように、
メーカーの大半が直流急速充電方式を支持していることが明らかになってきた。
― 35 ―
情報報告 ウィーン
現在
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-8 欧州全体の EV および充電器のトレンド
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-9 自動車メーカーの充電方式の支持状況
ABB B.V.社では、図 4-10 に示すように自動車メーカーが採用する急速充電方式に対応し
ており、大きくは、「CHAdeMO 方式、22kW AC 方式、Combo 2 方式」となる。
・CHAdeMO:東京電力と日本国内の主要自動車メーカーが連携し、開発した急速充電
器の規格。2010 年に「CHAdeMO 協議会」を発足し、急速充電器の普及
活動を展開し、現在は 26 ヵ国、430 以上の組織が加盟している。
・22kW-AC :ドイツの Mennekes 社が開発した Type2 方式を採用し、一般家庭やオフ
ィスなどでの充電を念頭に置いた交流電源による普通充電プラグ。
現在は欧州の統一規格として採用されている。
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情報報告 ウィーン
Combo 2 :2012 年 5 月にアメリカとドイツの自動車メーカーが提案した普通充電と急
速充電の両方のプラグを持つ方式。欧州自動車工業会(ACEA)では、上記の
「22kW-AC(Type2)」と本 Combo2 方式を統一規格として推奨している。
2010 年販売開始
2013 年 Q4 販売予定
2012 年 Q4 販売開始
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-10
ABB B.V.社の異なる充電方式への対応例
4.3
EV 充電器使用のケーススタディ
(1)
高速道路で使用する場合
条件としては、15 分から 30 分での使用を前提とした直流急速充電となる。高速道路のあ
らゆる使用ケースに対するソリューションへの対応製品としては図 4-11 のとおりである。
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-11
ABB B.V.社が提案する製品(高速道路向け)
また、2013 年には、図 4-12 の欧州の統一規格となる Combo 方式に他の方式を組み合わ
せたマルチ規格充電器を投入する予定である。表 4-1 に Terra53CJG の主な仕様を示す。
― 37 ―
情報報告 ウィーン
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-12
ABB B.V.社が提案する製品(高速道路向け、Combo 方式搭載)
表 4-1 Terra 53CJG の主な仕様
項
目
仕
使用可能温度
-10℃~+55℃、特別仕様
使用環境および保護構造
屋外型、IP54
適用規格および安全性
CE(欧州規格) / CHAdeMO
入力電圧範囲および最大電流
400VAC
効率
>94%
様
-35℃~+55℃
±10%(50Hz)、125A
定格出力時
最大 DC 出力
電力
50kW
最大 DC 出力
電流
120A(CHAdeMO)、165A±5%(Combo)
最大 AC 出力
電力と電流
22kW、32A
(Zoe&Smart compatible)
出力 DC 電圧範囲
50(CHAdeMO)
DC プラグタイプ
JEVS G 105 および Combo 2
AC プラグタイプ
IEC 62196、Type2、モード 3
ネットワーク接続
10/100 Base-T Ethernet(OCPP)
GSM / GPRS / 3G / CDMA / EVDO
騒音レベル(運転時)
45dBA
質量
400kg
サイズ(奥行×幅×高)
単位 mm
/
200(Combo)V~500V
充電器
760×525×1900
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
(2)
買い物およびビジネスで使用する場合
買い物での使用で要求される条件としては、30 分から 90 分間での充電が可能な直流と交
流充電方式である。また、ビジネスでの使用では、30 分から 90 分間での充電が可能な急速
充電と平日勤務時間の 8 時間での普通充電方式である。買い物およびビジネスでの使用ケ
ースに対するソリューションへの対応製品としては図 4-13 のとおりである。
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情報報告 ウィーン
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-13
(3)
ABB B.V.社が提案する製品(買い物、ビジネス向け)
家庭で使用する場合
家庭での使用で要求される条件としては、夜間 8 時間での充電が前提となる。
(4)
Terra充電クラスター:Terra SC (Duo)とTerra 53
Terra SC (Duo)とTerra 53は、1つのネットワークに接続された交流と直流の充電方式を
提供可能であり、平日8時間の普通充電と会議中の30分から90分間の急速充電に対する1つ
のソリューションである。また、ターンキーの車両集団と大きな駐車場への導入のために
特別に設計されており、全利用者の統計情報がGalaxyウェブベースのソフトに集約される。
そして、最大6つの交流壁掛け型(3.6kW)を接続することが可能である
4.4 充電インフラの発展の資本効率
(1)
公共の充電インフラへの展開方法
全ての利害関係者が資本効率(費用対効果)による合理的な水平展開(製品投入)を支援する
ので、資本効率は全ての利害関係者にとって必須事項である。
①政府:現在では特に、我々は賢明に納税者のお金を使わなければならない
②企業:費用対効果の高い取り組みは商業化を加速させる
③消費者:我々には適当な場所に手頃な料金のインフラが必要である
(2)
様々な充電器の使用ケースと使用領域
図 4-14 に示すように、各々の使用場所とソリューションにはサービス容量の特徴がある。
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情報報告 ウィーン
充電器(ビジネスおよび家庭用):普通壁掛け
急速充電器(高速道路用):50kW
充電器のサービス能力は
主に設置場所による
充電器のサービス能力は
主に必要な充電速度による
現実的なサービス能力:
現実的なサービス能力:
1車両/日
12 車両/日
充電時間:4~8 時間
充電時間:15~30 分
充電器(一般道路用):普通スタンド
急速充電器(買い物用):20kW
充電器のサービス能力は
主に設置場所による
(駐車料金の高い場所に多く設置)
充電器のサービス能力は
主に設置場所の種類と
充電速度による
現実的なサービス能力:
現実的なサービス能力:
2 車両/日
6 車両/日
充電時間:4~8 時間
充電時間:30~90 分
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-14 様々な充電器の使用ケースと使用領域
しかしながら、図 4-15 に示すように車種によって異なる充電速度を提供しているので、
22kW AC 型充電スタンドのコンセプトは奇妙である。そのために、充電スタンドと必要な
グリッド接続の費用には非常に大きな幅があり、ここで発生する追加費用は 2 台の車両し
か利点がない。
・Smart ED (オプション)
・Renault ZOE
その他の EV
22kW 交流
公共充電スタンド
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-15
(3)
22kW AC 型充電のコンセプト
資本効率の計算例
以下に、資本効率の計算例をシナリオ 1 とシナリオ 2 のケースに分けて述べる。
①シナリオ 1:ベルギーの Brussels にある 500 台の EV を対象とし、150 基の公共の交
流充電スタンドを設置することで対応可能となる。
②シナリオ 2:ベルギーの Brussels にある 500 台の EV を対象とし、充電スタンドは次
のように配置する。
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情報報告 ウィーン
・5 基の急速充電スタンドをリング状に配置
・30 基の交流&直流複合型 20kW 急速充電スタンドを街の最も魅力的な商業施設およ
び店舗に設置
・100 基の 3.3kW の交流壁掛け型充電器を街中の法人事務所に設置
・このようなインフラによって、500 台の EV に対して上手く対応できる。
③資本効率の計算例
図 4-16 に示すような計算結果より、シナリオ 2 の方が、シナリオ 1 よりも 35%資本効
率が高いことが分かる。
シナリオ1
地域の変数
シナリオ 2
充電器の組合せ
充電器の組合せ
民間の壁掛け型
公共の充電スタンド
Terra SC
Terra51
シナリオ 1
シナリオ 2
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
図 4-16 欧州全体の EV および充電器のトレンド
④まとめ:資本効率の高いインフラ展開のための確認事項
過剰投資と利用者の満足感の低さを回避するため、
・使用ケースの確認:適当な場所に適切な充電速度の充電器を提供する
・車両の互換性要件の確認:どの車種がその地域で支持されているのか?
・投資の資本効率の確認:費用対効果の関係は?最も効果的な組合せ方法は?
・導入計画
(参考資料)
・World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
・ABB社ホームページ(EV用充電インフラ)、(http://www.abb.com/product/us/9AAC172658.aspx)
・International NoAE Project-Day 2013、講演資料、Steven Dorresteijn氏、ABB B.V.社
・NOW! innovations社ホームページ、(http://www.nowinnovations.com/)
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情報報告 ウィーン
5.e-mobilityと関連規格に係わるACEA
Petr Dolejsi氏、欧州自動車工業会(ACEA、ベルギー)
5.1 欧州の自動車業界の状況
欧州の自動車業界を示す重要な数値としては以下のとおりであり、経済に対して非常に
大きな影響力を持っている。
①16 の大きな国際的企業(図 5.1 参照)
②1,160 万人の直接および間接的雇用
③260 億ユーロの研究開発費を支出、最大の民間投資家
④286 億ユーロの貿易への貢献
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Petr Dolejsi氏、欧州自動車工業会
図5-1 欧州自動車工業会の加盟企業
5.2
e-mobility に関する視点
欧州自動車工業会(以下、ACEA)の“e-mobility”に関する視点を以下に述べる。
①“e-mobility”は乗用車と軽商用車向けを含む電気充電式車両の全カテゴリーを網羅し
ており、次のような車両がある。
・PHEV(プラグインハイブリッド車)
・EREV(航空距離延長装置付き電気自動車)
・BEV(充電池式電気自動車)
②ACEAでは、クリーンでエネルギー効率の高い車両に関するEU戦略の背景にある発展
を理解している。
③未来の乗り物には異なる方式や技術が必要となるので、“e-mobility”は持続可能な交
通手段の1つを表している。
④ACEAは電気商用車(ECV)に期待しており、次の10年間の新車販売の2から8%を占める。
⑤消費者に受入れられることが、成功のためには不可欠である。
(コスト/価格の問題、消費者行動の変化、必要なインフラの整備など)
⑥消費者の受入れには、全ての利害関係者による共同の努力が必要である。
(消費者、OEM メーカー、サプライヤー、公的機関、エネルギー部門、インフラのプ
ロバイダーなど)
そして、“e-mobility”を成功させるために必要な事項としては、以下のとおりである。
― 42 ―
情報報告 ウィーン
①さらなる技術の進展(研究開発)。
②市場先導(顧客本位)の低排出技術の取り込み。
③加盟国同士の支援策改善のための調整。
④関連するインフラと必要な規格の整備。
⑤世界的標準の推進。
⑥原材料入手の確保
⑦人的資本への投資
5.3
e-mobility の発展に向けての挑戦
(1)
エネルギー部門との関係
“e-mobility”発展に向けたエネルギー部門との関係に関する要点は以下のとおりである。
①初期段階で電気自動車の成果を得るために必要な量を確保すること。
②自動車の主な機能は輸送であり、エネルギー管理のためではないことを理解すること。
③スマートなエネルギー管理に対する車の関与は時期尚早である。
ただし、中古の電池はその期待される役割を担える可能性がある。
④エネルギープロバイダーとインフラから必要とされる投資対象になること。
⑤エネルギー消費量の増加よりも、再生可能エネルギーの生産、貯蔵そして利用が重要
な条件である。
⑥標準化の問題を解決することが先決で、自動車とグリッドの接続は技術が十分に成熟
した後である。
(2)
車両技術への挑戦
“e-mobility”の発展に向けた車両技術における課題は以下のとおりである。
①バッテリーとグリッドの接続の潜在性は不確実であり、検証する必要がある。
②バッテリーのライフサイクルへの未知の影響と消費者へ保証が必要となる。
③バッテリーコストを低減は必須である。
(3)
その他
“e-mobility”の発展に向けたその他の対処すべき課題は以下のとおりである。
①消費者に対して標準化された情報への入口の提供。
(充電ステーション、有効性、データの共有など)
②個人の監視が起こりうることに関するプライバシーの問題とデータの保護。
③社会はコストと利益(燃費)そして所有に関する全コストを受け取る必要がある。
5.4 より大きな市場の取り込み:EV の貢献
電気自動車(EV)は現在のところすき間(ニッチ)市場の典型であり、自動車市場においてシ
ェアを拡大するためには、図 5-2 に示すような条件を含めた全ての面で、さらなる進展が必
要である。また、最終的には、EV を取り巻く環境に対する統合された取り組みが求められ
る。
― 43 ―
情報報告 ウィーン
消費者にとって重要な条件
現在の電気自動車(EV)
走行距離
充電時間
コスト
その他
消費者の選択
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Petr Dolejsi氏、欧州自動車工業会
図5-2 現在のEVの状況と消費者側の条件の関係
支持する長期的な環境方針の定義付け
充電インフラの構築
国家戦略との調和
消費者の意識と情報の増加
資金へのアクセスの確保
出典:World Electric Vehicle Summit 2013講演資料、Petr Dolejsi氏、欧州自動車工業会
図 5-3
(1)
EV の発展に向けた統合化のイメージ
標準化
標準化は EV の発展には必須であり、その要点としては以下のとおりである。
①加盟国の中で相互運用性を確保することが必要である。
②1つのソリューションは、業界側のコスト低減と消費者への利益の還元である。
③明確な時間設定が必要である。なぜなら、我々はインフラプロバイダー側の投資が、
確実性の無いソリューションに行われることは予想できない。
④ACEAは迅速な発展を呼び掛け、1年前に既にその提案を提示した。
⑤EUレベルでの合意は、国際的な調和に向けての道を開くものである。
(2)
ACEA の提案とソリューション
ACEA は 2012 年 5 月 4 日付けで『電気充電式自動車の充電の標準化に対する見解と提言』
を行っている。
①統一されたEUのソリューションと調和したEUのルールが全ての新しい車両タイプに
対して2017年から開始される(導入期間は必要)
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情報報告 ウィーン
②2017年から車両の充電プラグは、タイプ2/タイプ2 Combo方式に統一される。
③公共の充電インフラ側に対しては、タイプ2/タイプ2 Combo方式の採用を提案する。
(急速充電装置に対する車両の互換性を確保するために必要であり、基本的な充電方式
として推進する)
④家庭用充電装置は異なる方式を容認する。
(3)
標準化に向けた進行中の活動
標準化のためには、国際的に合意されるような異なる技術的ソリューションが必要であ
り、現在の状況は以下のとおりと分析している。
①長時間を要した後、欧州委員会は受け入れられる提案をした。
・充電システムの規格:タイプ2/タイプ2 Combo方式への統一
・EU加盟国に求められる充電スタンドの設置台数(2020年に800万ヵ所に拡大)
②提案はEU域内の充電方式の合理化のために正しい方向へと進んでいる。
③業界では素早く実行可能なソリューションを歓迎している。
5.5 まとめ
欧州の自動車業界はEVを発展させる上でのソリューションの1部である。
①困難な経済状況にもかかわらず、我々は市場に製品を提供し続けている
②成功は全てのキープレーヤーの調和のとれた協力にかかっている
③標準化はEVを普及させるための重要な要因の1つである
④ACEAは未来の発展に向けた方向性を提案しており、他の関係者の協力が必要である
(参考資料)
・World Electric Vehicle Summit 2013 講演資料、Petr Dolejsi 氏、欧州自動車工業会
・ACEA ホームページ、(http://www.acea.be/)
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