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チョークリバー 上から

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チョークリバー 上から
inside WANO
T H E M A G A Z I N E O F T H E W O R L D A S S O C I AT I O N O F N U C L E A R O P E R AT O R S
第19冊
チョークリバー
2011年
第1号
10
修繕と復旧
上から
強固な安全文化の構築
13
inside
インサイドWANOは、
世界原子力発電事業者協会により、
協会員のために発行されます。
編集者
ミシェールウイルソン
contents
WANOロンドン事務所
Email: [email protected]
New members 3
編集委員
WANO総括事務局長
ジョージ・フェルゲート
成長の時代
Editorial 4
アトランタセンター事務局長、
デーブ・ファー
2010年を振り返る
モスクワセンター事務局長、
ミハイル・チュダコフ
パリセンター事務局長、
イグナシオ・アラルース
東京センター事務局長
白柳 春信
Peer reviews 6
エンバルセのめざましい改善
Pre-startup peer reviews 8
1キロワットごとの発電を安全に
WANOロンドン事務所
Cavendish Court
11–15 Wigmore Street,
London W1U 1PF
United Kingdom
Tel: +44 (0)20 7478 9200
Fax: +44 (0)20 7495 4502
Operating experience 10
修繕と復旧
From the top 13
強固な安全文化の構築
WANOアトランタセンター
700 Galleria Parkway SE
Suite 100
Atlanta, GA 30339-5943
USA
Tel: +1 770 644 8602
Fax: +1 770 644 8505
WANOモスクワセンター
Ferganskaya 25
Moscow 109507
Russia
Tel: +7 495 376 1587
Fax: +7 495 376 0897
WANOパリセンター
8 rue Blaise Pascal
92200 Neuilly-sur-Seine
France
Tel: +33 1 46 40 35 55
Fax: +33 1 46 40 35 53
WANO東京センター
〒201‑8511
東京都狛江市岩戸北2‑11‑1
ご存知でしたか?
WANOの作成したJust‑in‑Time(JIT)レポートは、作業者や監督者に、作業前の打ち
合わせで使うための実務的で時機に即した情報を提供するためのものであること
をご存知でしたか。これらのレポートは、今日的な意味を帯びている発電事業で
の経験、重要な教訓を取り上げて、計画している仕事に対して詳細な考察を促
し、徹底した作業準備を確実にするためのものです。最新のJITレポートには、以
下のようなものがあります。
■ 重水漏出対応
■ 試験機器の使用
■ 以下に関係する異物管理
– 蒸気発生器/ボイラーの保全
– 非常用発電機の保全
現在、WANO及び電力会社が作成したJITレポートが200以上あり、
WANOのウェブサイトで主題ごとに整理され、複数の言語版
でご覧になれます。
Tel: +81 (0)3 3480 4809
Fax: +81 (0)3 3480 5379
表紙
特殊な作動用器具の取
り付けをする作業員
チョークリバー研究所
カナダ
2
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
Copyright © 2011 World Association of Nuclear Operators (WANO). All rights reserved. Not for sale or for commercial use.
new member
WANOは、拡大する産業の要
求に応えるべく成長している。
最近ではエミレーツ原子力エネ
ルギー公社を新会員に迎えた。
成長の時代
7
「原子力発電産業は
成長の時代にあって
も、安全性は依然と
してすべての会員の
最優先事項です。原
子炉を何十年間運転
している場合も、
ENECのように新
規参入する場合も、
それに変わりはあり
ません。」
ローレン・ストリッカー
WANO議長
年後に初の原子炉を稼動させることを
予定しているエミレーツ(首長国)原
子力エネルギー公社(ENEC)は、
このたびWANOに加盟した。
「原子力安全は私たちの全てのプログラムを
構築するための基盤であり、WANOのコミュ
ニティに属することになったことを光栄に思い
ます。」ENECのモハメド・アル・ハマディ
最高経営責任者は言った。
ENECの加盟申請は、昨年10月に中国の
深圳で開かれたWANO理事会で全会一致で承
認された。2009年に設立され、アブダビに
本拠を置くENECは、カテゴリー1の会員と
なり、アトランタセンターと東京センターの両
センターに籍を置いている。
ENECは現在、ルイス市西方53キロの場
所にあるアラビア湾沿岸のブラカに4基の原子
炉を備えた発電所を建設する認可の取得と、環
境アセスメント評価に関する認可のための作業
を行っているところである。1号機は2017
年夏までに発電を開始する予定である。
ローレン・ストリッカー議長は、報道発表資
料でアル・ハマディ氏とそのチームのWANO
加盟を歓迎し、ENECが新設計画のごく初期
の段階でWANOに加盟したことの重要性につ
いて力説した。
「原子力発電産業は成長の時代にあっても、
安全性は依然としてすべての会員の最優先事項
です。原子炉を何十年間運転している場合も、
ENECのように新規参入する場合も、それに
変わりはありません。」と、ストリッカー議長
は言う。「一致協力することによって、世界の
産業の中でも実に独特な協力的文化のなかで、
私たちは相互に学びあうことができます。」
アラブ首長国連邦が伝統的な石油やガス以外
の電力源によって将来の電力需要を安全に賄う
ことを可能とするためにも、ENECのWAN
O加盟はその原子力開発計画の重要な部分であ
る。ENECは2009年、APR-1400
型原子炉四基を建設するために韓国電力公社
ローレン・ストリッカー議長が見守る中、
WANO憲章に署名するモハメド・アル・ハマディ氏
(KEPCO)が率いる企業連合を指名した。
指名に際しアル・ハマディ氏は、その決定の最
も重要な要因として「KEPCOのパフォーマ
ンスが世界的な水準の安全性を誇っているこ
と」と「30年間、原子力発電所を順調に運転し
続けていること」を挙げた。
ENECがWANOへの加盟を決めたのも、
確立された原子力発電事業者の専門知識と経験
に頼りたいという同様の願いからであった。
「WANOを介して、数十年におよぶ安全な
運転経験をもつ会員企業にアクセスすることが
できます。会員企業は、全会員のためにその経
験と専門知識を自由に分かち合っています。」
アル・ハマディ氏は言った。「これは、アラブ
首長国連邦に安全な原子力エネルギーを導入す
る私たちの取り組みの中で、重要な一里塚のひ
とつです。」
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
3
editorial
2010年を振り返る
W
「2010年、
WANOは、原子力
発電産業の新しい展
開に適応する必要に
応じ、自己改革を行
いました。私たち
は、2月にインドで
開催された隔年総会
を機に、ガバナン
ス、職員配置、資源
の構成を改善して動
き出したのです。」
ローレン・ストリッカー
WANO議長
4
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
ANOは2010年、創立以来最も
著しい変化を経験しました。
2010年、原子力発電産業の新し
い展開に適応する必要に答えるため、WANO
は、自己改革を行いました。私たちは、2月に
インドで開催された隔年総会を機に、ガバナン
ス、職員配置、資源の構成を改善して動き出し
たのです。その後数ヶ月にわたって会員の活動
参加を活性化し、パフォーマンスの格差を埋
め、エミレーツ(首長国)原子力エネルギー公
社などの新規参入会社をはじめ増加する会員を
招き入れるため、懸命に取り組みました。
また、WANOの認知度を高める努力の一環
として、新たに一般向けのウェブサイトを開設
し、種々の重要な国際会議での講演の機会を増
やし、会員向けの年次報告書からハイライト部
分を抜き出し、初めて一般向けにリリースしま
した。多数の企業や国が原子力エネルギー導入
のメリットを検討している現在、そうした企業
や国々がWANOとその使命について知る必要
性はこれまでになく大きいと思われます。
2011年以降は、こうした新規参入者たち
はWANOに、新たな課題を突き付けてくるで
しょう。WANOは引き続き、起動前ピアレビ
ューチームを編成して、新設ユニットの起動を
控えたすべての原子力発電事業者が、起動のプ
ロセスを安全に完了するのを確かめねばなりま
せん。
既存の原子力発電事業者でも、古いユニット
の大規模設備更新を手がけたり、現在のフリー
トを拡大するような時には課題を抱えることに
なります。一部のプラントは、新たな人材を採
用して訓練する際、あるいは新設プラントの起
動を支援するため経験豊富な人材を既存プラン
トから移動させる際に、さまざまな問題に直面
します。既存ユニットへの注意がおろそかにな
らないよう気を付けながら新設プラントの建設
を完了しなければならないという状況で、プロ
ジェクト管理に取り組まなければならない発電
所もあります。
2011年、WANOは会員を支援するた
め、ワークショップ、セミナー、運転経験報告
書、CEOアップデート(WANOがCEO宛に発
信する重要事象最新情報)などのプロダクトや
サービスを通じて、原子力安全基本事項の重要
性を改めて強調していきます。
実際、中国で行われる2011年隔年総会の
テーマは「基本に立ち返る:強固な基盤の上に
構築する」とする予定です。チェルノブイリの
事故の発生から25年目になる今年、WANO
設立のきっかけとなった悲劇と、それ以来
WANOが培ってきた国際的協力の精神につい
て振り返ることは大切です。
私たちは、チェルノブイリの事故から長い道
のりを歩いてきましたが、旅はまだ続きます。
新年を迎え、ちょっと立ち止まって2010
年の成果を愛でたいと思います。しかし、チー
ムワークと絶えず改善を続ける約束をしている
協会として、WANOは今年、こうした強固な
基盤の上にさらに成果を重ねて行きたいと思い
ます。
WANO議長と総括事務局長、
変革の年を振り返り、積極的な
機運の維持を誓う。
2
010年、WANOは国際的な働きか
けを強化し、中核となるプログラムを
世界中の会員に届けました。
ピアレビュー
ピアレビューでは、会員組織の外から来る独立
したチームが発電所の運営について綿密で客観
的なレビューを行います。これによって自社の
パフォーマンスを優れた世界標準と比較するこ
とができます。
2010年 、 W A N O は 15カ 国 /地 域 の
28会員を対象に稼動中プラントのピアレビュ
ー36件を実施し、11カ国/地域の13会員
を対象に19件のフォローアップレビューを行
いました。
1992年以来、WANOは31カ国/地域
で457件のピアレビューを実施しています。
WANO会員の発電所では、少なくとも1回
はピアレビューが実施されていることになり
ます。
運転経験
他の原子力発電所で起きた事象を自社の発電所
で起こさないための対策を講じられるよう、会
員はWANOを通じて、他の発電所で起きた事
象の報告を受けます。私たちはこれを運転経験
報告と呼んでいます。
2010年 は 、 W A N O の 会 員 か ら 1,
136件の運転経験報告書が提供されました。
前年の2009年は1,140件でした。
技術支援と技術交換
技術支援ミッション(TSM)では、会員が困
難な課題を検討直し、解決策を見つけられるよ
う原子力発電産業の仲間が支援します。その実
施件数は、2009年の160件から2010
年には193件に大幅に増加しました。
TSMでは、ピアレビューで見つかった問題
点の是正を継続的に支援しています。ミッショ
ンの実施や、将来的に同様のミッションを実施
する能力の開発などで、地域間で相互に協力す
るケースが数多くみられます。
専門技術開発
2010年、WANOは、会員を対象とした専
門技術開発のための一連のワークショップ、セ
ミナー、訓練コースを拡大しました。これらの
活動には会員発電所から合計1,124名が参
加しました。
インドのニューデリーで2月に開催された第
10回WANO隔年総会には、多くの国々から
原子力発電にかかわる上級幹部層、およそ
400名が出席しました。6月には、重要な行
事であるWANO発電所長会議が、WANOと
INPOの共催により米国アトランタで開催さ
れ、4つの地域センターすべてを網羅した19
カ国・地域から168名が参加しました。
より多くの会員の参加をとりつけるよう、
2010年を通じて、WANOの議長と総括事
務局長は、会員の上級幹部を精力的なスケジュ
ールで訪問して歩きました。また、2010年
には、少人数のCEO会議が4回、それぞれ
5月にカナダ、6月にフィンランド、9月に日
本、10月に中国で開催されました。この成功
をふまえて、2011年もWANOは、CEO
の訪問と少人数のCEO会議を続けていく予
定です。
「2011年、
WANOは会員を
支援するため、ワ
ークショップ、セ
ミナー、運転経験
報告書、CEOア
ップデート
(WANOが
CEO宛に発信す
る重要事象最新情
報)などのプロダ
クトやサービスを
通じて、原子力安
全基本事項の重要
性を改めて強調し
ていきます。」
ジョージ・フェルゲート
WANO総括事務局長
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
5
peer reviews
エンバルセのめざ
ましい改善
2
「ピアレビューのア
クションプランを作
成し実施すること
は、大きなチャレン
ジでしたが大変熱心
にこれに取り組みま
した。チャレンジと
落とし穴は人生の一
部ですから」
リカルド・サインス
寿命延長プロジェクト・マネ
ジャー
エンバルセ原子力発電所
6
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
007年のWANOピアレビューの
後にエンバルセが実施した改善は、
「ほかに例を見ない」と、アルゼン
チンにある同発電所に対する最初の分析と
2009年のフォローアップレビューの両方に
携わった経験豊富なレビューワーが言った。
「フォローアップレビューに行って感心し
た、と言うだけでは、かれらの進捗を正当に評
価していないと思います。」リチャード・スコ
ット氏は、2007年9月のピアレビューで挙
げられた32のAFI(改善可能事項)に対する
エンバルセの取り組みについてこう述べる。
「経験豊富なピアレビューワーは、潜在的に
重大な組織的弱点を隠すために『表面的な変更
』が施された場合、その部分を即座に見抜くこ
とができます。このことは、エンバルセには当
てはまりませんでした。」と、スコットランド
のハンターストン原子力発電所で特別プロジェ
クトマネジャーを務めるスコット氏は言う。
「エンバルセは実に、組織のあらゆるところで
本当に重要な改善を達成しました。」
それはまさに、WANOピアレビューのプロ
グラムがめざしていることである。そもそも運
営事業者の要請を受けて開始されたピアレビュ
ーは、外部の独立したチームによる綿密で客観
的な分析を提供する。レビューの結果は包み隠
すことなく、かつ、非公開で報告書が作成さ
れ、原子力安全とプラントの信頼性という観点
から発電所の長所とAFI(改善可能事項)が指
摘される。
2007年ピアレビューの結果に刺激を受け
た出力648MWeのこのプラントは、優れた
改善計画を策定した。同発電所は、ブエノスア
イレスから約700キロのリオ・テルセロ川南
岸に位置している。
「ピアレビューはWANOの最も重要な活動
のひとつであり、原子力発電産業における安全
性の改善において積極的な役割を果たしていま
す。」と、エンバルセの寿命延長プロジェクト
・マネジャーのリカルド・サインス氏が言っ
た。「レビュー結果は私たちの持続性を常に前
向きに促してくれるものです。」
2007年のWANOピアレビューチーム(上段・下段共に)
寿命延長
2005年、エンバルセは、プラント寿命の安
全な延長をめざして、実行可能性とシステム老
朽化の調査などの多様な活動に着手した。最も
重要な活動は、加圧管(燃料チャネル)、蒸気
発生器、プロセスコンピューターの交換であ
り、安全系、タービン発電機、熱サイクルのパ
フォーマンスに改善がみられた。これらの活動
が完了したとき、エンバルセはむこう25年
間、運転を継続できることになり、出力もおよ
そ700MWeに増加した。
こうした状況にあってプラントは2007年
9月にWANOピアレビューを受けた。ピアレ
ビューの結果にもとづいて、改善可能事項を解
決するための是正措置が決定され、その実施状
エンバルセ原子力発電所
2009年WANOフォローアップ・ピアレビュー
況を追跡するためのツールと
して、2008年にアクションモニターが創設
された。
最初になすべき作業のひとつは、各々の
AFI改善可能事項について優先項目を特定し
定めること、その原因に対処するためのアクシ
ョンプランを策定することであった。ストリー
ムアナリシスと呼ばれるこの手法は、発電所が
「起因(Driver)AFI」,「中間(Intermediate)
AFI」および「兆候(Symptom)AFI」
を特定するために、WANOの指導を受けた運
営担当職員によって行われた。これによって、
大部分のパフォーマンスギャップの原因となっ
ている重要な分野に重点を置くことが可能とな
った。
「ピアレビューのアクションプランを作成し
実施することは、大きなチャレンジでしたが大
変熱心にこれに取り組みました。チャレンジと
落とし穴は人生の一部ですから。」と、サイン
ス氏が言った。
行動を起こす
エンバルセのリーダーは、WANOのプロダク
トを十分に活用するべく、AFI改善可能事項
の改善状況に対する評価を求めて、2009年
に技術支援ミッションの実施を依頼した。ミッ
ションが派遣された結果、より統一された双方
向的な管理手法が確立され、各改善可能事項に
ついて一貫した全体的な行動計画が獲得される
こととなった。
優れた改善プログラムを携え、
WANOのプログラムをフルに活用
するエンバルセ原子力発電所は、む
こう25年間発電を継続する。
この行動計画は、実施スケジュールととも
に、目的、目標及び詳細な是正措置を定めて
いる。
2008年と2009年の間、WANOは、
タスク管理、ワークパッケージの作成、ヒュー
マンパフォーマンス、異物除去、タスク観察、
設備の状態及び安全文化の分野における技術支
援ミッションを派遣した。これらのミッション
は多くの行動における意識の向上をもたらし、
行動計画全般を強化した。
「WANOのサポートを得てアクションプラ
ンを練ることは、非常に収穫の多い経験でし
た。」と、セインス氏は言った。「私たちは強
力なベンチマーキングプログラムを持っていま
した。というのは、エンバルセの職員は、WA
NOの国際的専門家が関わった複数のピアレビ
ュー、ワークショップや技術支援ミッションに
参加したことがあったからです。」
最後に、見通しの強化をはかるとともに行動
計画の詳細を説明するために、発電所員に情報
を伝えるという重要な計画が実施された。これ
は、全員が可能な限り最善の結果を実現する過
程に関与することを促した。
「エンバルセ発電所が、私たちが2007年
に指摘したAFI改善可能事項を所員にはっき
りと伝えていること、彼らが一丸となってそれ
らに取り組んでいることは明らかでした。」ス
コット氏は、2009年12月に実施されたフ
ォローアップ・ピアレビューを終えた後に言
った。
WANOは、フォローアップレビューの結果
に大変満足し、当初の改善可能事項から発生し
た問題を特定し解決する過程でエンバルセのス
タッフが示した高度なコミットメントと厳格さ
を賞賛した。特に、マネジメントのチームは、
優れた先例となる高いレベルの取り組みを示
し、発電所を確実なパフォーマンス改善に導
いた。
エンバルセ原子力発電所
所在地
コルドバ県。ブエノスアイレ
スから700キロ
原子炉
CANDU
出力
648 MWe
オペレーター
アルゼンチン電力会社
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
7
pre-startup
peer reviews
1キロワット
毎の発電を安全に
2
「WANOのピアレ
ビューや技術支援ミ
ッションによって、
私たちは、別のプラ
ントで同様の問題を
解決してきた専門家
チームの経験を活用
して問題の解決に
あたることができ
ます。」
アンドレイ・サルニコフ
主任技術者
ロストフ原子力発電所
8
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
010年3月、ロシア最新の原子炉ロ
ストフ2号機は、有益な起動前ピアレ
ビューを受けて稼動を開始した。この
レビューは、新設ユニットのあらゆる側面を調
査することを目的に、WANOモスクワセンタ
ーが集めた専門家のチームによって行われた。
ロストフの主任技術者を務めるアンドレイ・
サルニコフ氏によれば、1キロワットごとの発
電を技術上かつ放射線に関して安全に行い、経
済的かつ環境的に健全に行うことを望んでいた
ロストフ原子力発電所にとって、WANOレビ
ューチームの受け入れは重要な点であった。
「ロストフ原子力発電所のマネジャーと職員
は、WANOとの協働を最優先事項とみなして
います。」と、サルニコフ氏は言った。サルニ
コフ氏は、2000年以降、ユニット及びプラ
ントの当直長、運転担当エンジニア副主任な
ど、ロストフの数々の要職を担っている。
発電の能力
ロストフ原子力発電所は、ツィムリャンスク貯
水池沿岸の町ボルゴドンスクから13.5キロ
離れた場所にあり、ロシアの原子力発電所の中
で最も南に位置している。コンツェルン・ロス
エネルゴアトムが所有する同発電所は、
VVER―1000型原子炉2基を備え、1号
機は2001年に稼動を開始した。2号機が追
加されたことで、ロストフ原子力発電所のロシ
アの統一電力網への送電量は倍増する見込みで
ある。ロストフ原子力発電所の発電と配電は、
ボルゴグラードとロストフ地域、クラスノダー
ルとスタフロポル地域に伸びた5本の500
kV(英文も間違っていますのでロンドンへ連絡
願います)送電線と、ボルゴドンスクへ伸びた
2本の220kV送電線によって行われている。
世界の他の多くの地域と同じように、
2009年におけるロシアの総電力消費量は、
世界的な経済危機を理由に減少した。そのよう
な全体的な傾向は続いているが、ロシア南部地
方はいまだに電力不足に悩まされており、この
ことはロストフ原子力発電所の電力が不可欠で
あることを意味している。将来の電力供給を確
起動前ピアレビューでWANOの専門家がレビューを行っ
ている
保するために、ロストフ原子力発電所3号機と
4号機の建設が2009年に開始された。
安全な起動
2号機の試運転開始は、複雑な作業計画を長い
年月にわたって企画し調整に携わった努力の結
果であった。ピーク時には、建設会社や協力会
社40社の7,000名以上のスタッフが現地
で働いていた。2010年初めまでに、多数の
専門機関が起動プロセスの進捗を監視するよう
になっていた。
2010年3月、ロストフ原子力発電所は、
アルメニア、ベルギー、ブルガリア、インド、
イラン、米国、ロシア、チェコ共和国、ウクラ
イナの専門家チームによるWANO起動前ピア
レビューを主催した。チームは2週間かけて、
組織の有効性から運転、保守、エンジニアリン
グサポート、放射線防護、運転経験、化学、防
災、緊急時体制、訓練や資格にいたるまであら
ゆる分野についてレビューを行った。これらは
すべて、原子力発電所の安全な運転に欠かせな
い分野である。
訪問した専門家らは、レビューの間、プラ
ントの開放的な雰囲気と人々が実り多い緊密
な協力をするさまに感銘を受けた。ピアレビュ
ーチームのリーダーを務めたヤロスラフ・ボ
クレク氏は、レビューの結果に満足している
と話し、ロストフ原子力発電所が運転にかか
ロストフ原子力発電所は、長期間にわた
ってWANOの活動に積極的に参加して
きた。2号機の試運転でWANOが最近
実施した起動前ピアレビューのプロセス
とメリットを見てみよう。
WANO起動前ピアレビューのエクジット・ミーティング、2010年3月
起動前ピアレビューでサイトにいるWANOの専門家
わるいくつかの分野で重要な知見を得た、と力
説した。
サルニコフ氏にとって、WANO起動前ピア
レビューは、営業運転までのタイムラインにそ
った準備作業が開始された時から、実際的で貴
重な支援を会員に提供するものである。「2号
機の最初の起動前ピアレビューのときに受け取
ったレビュー結果は、徹底的な分析がなされて
おり、結論が導き出されており、作業はそれに
したがって調整されていました。」と言った。
「これは私たちの起動の品質を保証してくれま
した。」
「ロストフ原子力発電所は、モスクワセンタ
ーに積極的に協力しています。」サルニコフ氏
は言った。「私たちの専門家は何度も国内や海
外のプラントでピアレビューに参加していま
す。」とサルニコフ氏は言った。同氏はピアレ
ビューが自発的に行われ、結果が機密扱いとさ
れることが重要であると考えている。
「それによって、レビューを行う専門家とレ
ビューを受けるプラントの間にオープンな対話
と相互理解の雰囲気が生まれます。」「それ
に、WANOは、原子力規制当局や政府などの
公的機関とは違った独立した立場にいます。
WANOは会員の利益のためにのみ運営されて
います。」
WANOの長所は、国際的な協力とオープン
な運転経験の交換によって安全性に焦点を当て
ている点であるとサルニコフ氏は考える。「最
高のパフォーマンスを示している発電所に匹敵
するパフォーマンスをあげるには、原子力産業
がストックする膨大な運転経験を利用すること
が必要です。原子力発電所が問題を抱えた
とき、専門家らは協力会社のみに問題解決を
頼るべきではありません。」彼は言った。
「WANOのピアレビューや技術支援ミッショ
ンによって、私たちは、別のプラントで同様の
問題を解決してきた専門家チームの経験を活用
して問題解決にあたることができます。」
「すべての原子力発電所が定期的にピアレビ
ューを受けることは極めて重要です。」と、サ
ルニコフ氏は言った。「ピアレビューは、プラ
ントの状態とパフォーマンスのレベルに公平な
評価を提供するだけでなく、他の国の運転文化
についての有益な洞察も提供します。このよう
な国際的な情報交換は、世界中の原子力の安全
性と信頼性に貢献します。」
WANOと協力
ピアレビューがもたらす価値については、
WANOの活動に最も積極的に関わっている発
電会社コンツェルン・ロスエネルゴアトムがよ
く知っている。
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
9
operating experience
修繕と復旧
員は検出器とカメラを小さな開口部から挿入し
て、浮遊するトリチウムを「探知した」。アル
ミ製原子炉容器の外側に腐食が発見されたが、
このことは他の部分でも漏れがありうることを
示唆していた。
耐久性のある補修の確保
ガラス瓶の中の船
この研究炉の停止は医薬産業に重大な懸念を引
き起こしてしまったが、チョークリバーの幹部
は、確実で長期的な腐食緩和計画の遂行なし
に、補修作業を急ぎ、運転を再開すれば、将
来、さらに深刻な材料腐食問題を引き起こすで
あろうことを承知していた。
「毎日、私たちは憂鬱でした、というのも毎
日2万件の治療に必要なアイソトープを供給で
きていないのですから。」と、経営副社長兼最
高原子力責任者ハンク・ドラムヒラー氏は言っ
た。「そのようなプレッシャーはありました
が、私たちの目標は常に、安全で正確に作業す
ることと耐久性のある補修を行うよう努力する
ことに集中することでした。」
原子炉と軽水反射体との間の15.25セン
チメートルの隙間であるアニュラスからのドレ
ンラインの抜き取り検査で重水が検出された
後、原子炉容器から燃料と水を抜き、検査及び
補修計画を進め、腐食緩和対策を構築するとい
う主要な決断がなされた。
漏洩箇所を特定し漏れを止めるために、作業
作業員は超音波試験と渦電流試験には慣れてい
たが、新しい特殊な工具と、原子炉容器の内部
9.14メートル以上まで到達し、10.16
センチメートルの窪みに納まる非破壊検査用の
ヘッドを開発しなければならなかった。
作業員とエンジニアは、供給メーカーの助け
を得て、50以上の特別仕様の工具とヘッドの
設計、製作、性能検定を行った。これらにはみ
な、原子炉の内部または付近の高放射線に耐え
られるよう硬化処理が施された。
「工具には傘型の設計を採用しました。」と
ドラムヒラー氏は説明した。「つまり、ガラス
瓶の中に船を作るようなものでした。折り畳ま
れた工具を小さな開口部から挿入し、原子炉の
壁に届くように広げました。すべての作業が遠
隔カメラと照明のみを使って行われました。オ
ペレーターは工具を操作、制御する際、平坦な
画面を見ることになったのです。」
渦電流検査は、原子炉の特定部位を詳細に分析
するのに特に役に立った。結果的に、高解像度の
渦電流検査が全ての検査箇所に適用された。
2
「多くの課題や工
期延長にもかかわ
らず、職員は集中
力を切らさず、国
の(万能)研究炉
を長期的な観点
で、より安全でさ
らに信頼性の高い
ものにするため、
適切な施策の実施
に尽力してくれま
した。」
ハンク・ドラムヒラー
経営副社長兼最高原子力責任者
チョークリバー研究所
10
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
補修担当チームによるNRU原子炉模型を用いた訓練
009年5月チョークリバー研究所で、ドレ
ンラインの抜き取り検査で重水が検出さ
れたのをきっかけに、研究炉(NRU)
が15ヶ月間にわたって運転停止され、また、
一連の決定と活動によって腐食の検出及び緩和
の手法に革新がもたらされた。
これにより、創造力と革新性が問われる課題
を突きつけられた職員は、原子炉容器に対する
遠隔での試験と修理を実施するため、数多くの
特注の試験用工具を製作した。
長期にわたり手間のかかる作業を行った停止
期間中、チョークリバーの職員は、世界の医療
用アイソトープの約3分の1を供給するこの独
自の原子炉にさらに精通することとなった。こ
の原子炉は、核医学分野で最も広く利用されて
いる同位体元素であるテクネチウム99mを生み
出す「親」となるモリブデン―99を生産する北
米地域唯一の原子炉である。この原子炉は、燃
料及び材料の試験や世界レベルでの原子力の研
究にも利用されている。
カナダ、チョークリバー
研究所の職員が行った革
新的な腐食の検出・緩和
方法に学ぶ。
原子炉の稼動前にすべての溶接部の品質と正確性がテストされた
NRU原子炉のデッキプレートで作業するプロジェクトスタッフ
「硝酸が腐食の原因であるなら、腐食は原子炉
壁の高い位置で発生するだろう、と考えており
ました。このため当時の評価では問題を突き止
められなかったのです。しかし、腐食は、硝酸
が滞留した原子炉容器内の低い位置で起きてい
ました。腐食をビデオの映像で見つけること
は困難でした。また、腐食に対する理解を促
すための組織内の連絡が適切ではありませんで
した。」
正確な溶接の実施
疑問をもつ姿勢
検査によって、原子炉内の低位置に腐食が発生
していることが判明した。アニュラスのドレン
ラインは腐食生成物で目詰まりを起こしてい
た。ドレンが目詰まりしたとき、原子炉の運転
による副生成物である硝酸が混入した水が、原
子炉の底部とアニュラスの壁にたまっていた。
この調査結果を受けて、2005年に行われた原
子炉容器状態評価を見直した。この評価では、
今回新たな検査によって当時腐食が進行してい
たことは疑いの余地が無かったにもかかわら
ず、何の問題も報告されていなかった。ドラム
ヒラー氏は、この不備のある報告書により、結
果的に見落としたことの根本的原因が疑問をも
つ姿勢の欠如であることが明らかになったと述
べた。
「我々は、アニュラスで硝酸が生成されてい
たことを知っていました。」と彼は説明した。
原子炉を停止しての工事工程を決定する補修の
対象は、原子炉容器基礎部周辺の10箇所に集
中しており、非破壊評価、漏洩箇所の修理及び
腐食によって強度が低下した壁の一部増強、を
行うため広範囲な溶接を必要としていた。
今回の停止工事では、溶接作業が最も厳しい
作業であり、全工程15ヶ月のうち8ヶ月を費
やすことがわかった。新しいアルミニウムは溶
接が難しく、高照射されたアルミニウムを扱っ
た経験をもつ者はいなかった。この作業をさら
に複雑にしたのは、1台のカメラ、フラットス
クリーン及びジョイスッティクの操作によって
動かす溶接工具を使って遠隔操作で作業しなけ
ればならなかったことである。
「我々は溶接作業者に大変な困難を強いるこ
とになった。」とドラムヒラー氏は述べた。
「彼らは溶接箇所を触る、聞く及び直視するこ
とができない状態で正確な溶接を実施しければ
なりませんでした。また、私たちは中に入って
原子炉周りを溶接しようと考えていましたが、
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
11
operating experience
作業員による特殊な作動用器具の取り付け
その代わりに原子炉の壁厚を復元するための手
法として、原子炉の中で10個の溶接補強を個別
に行いました。」
溶接開始前に、この腐食状況をよく理解し、
最も効果的な補修方法を決定するため、作業チ
ームは、直径3.8センチの小片又は試験片を
原子炉の漏れが生じた場所近辺から切り取
った。試験片は、十分に補強されたホットセ
ル(技術者が原子炉容器材料を分析するための
遠隔操作器具と遮蔽窓を備えた原子炉近くの一
部屋)に移された。
溶接作業を予定通り進めるために、チョーク
リバー研究所は、第三者の立場のレビューワー
を任命し、専門家によって、溶接計画、決定及
び活動を監督し精査してもらった。
腐食緩和策
補修作業中に用いられた遠隔運転の清掃器具
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INSIDE WANO: V19–NO1–2011
チョークリバー研究所は、新しい腐食緩和
策(水の滞留防止のためアニュラスのドレンラ
インを常時流れるままにし、また二酸化炭素を
満たし、窒素を排除して硝酸の生成を減らす)
を採用し、2010年8月上旬に、長期の運転
停止作業を完了した。
また、チョークリバー研究所は、試験、保修
及び検査の間隔を最適化して定期の運転停止検
査工程も改定した。至近の長期定期検査の前に
は、プラントを3週間おきに停止し5日間の定
期検査を行った。(原子炉の燃料交換は運転中
に行われる。)
現在、研究炉(NRU)は、4週間ごとに停
止 し 、 5日 間 の 定 期 検 査 を 行 っ て い る 。
2011年の春には、28日間運転を停止して
、さらに複雑な保修、詳細な検査及び共用期間
中検査を行う予定である。これらの重要な活動
により、腐食緩和策の有効性が検証され、また
この腐食緩和策は検査結果に基づいて修正する
ことが可能である。
また、この組織が原子炉容器の健全性に関す
る重要な決定の説明を受け、その決定に関与し
続けるためのフィードバックループも存在して
いる。
この停止補修工事には、当初の見込みよりも
長期間を要したが、ドラムヒラー氏は、ここで
要した余分の時間と努力が、将来発生するであ
ろう長期運転停止と材料状態の問題の回避に役
立ったと信じている。
15ヶ月間に及んだ長旅は、チョークリバー
研究所のチームの技術革新、高い資質、粘り強
さと根気を試すこととなった。ドラムヒラー氏
は、彼らは立派に合格したと断言した。
「多くの課題や工期延長にもかかわらず、職
員は集中力を切らさず、国の(万能)研究炉を
長期的な観点で、より安全でさらに信頼性の高
いものにするため、適切な施策の実施に尽力し
てくれました。」とドラムヒラー氏は語った。
「それに、超音波検査や渦電流検査のためのプ
ローブの設計、製造及び性能検定を自前で行う
ことのできる原子力施設はほとんどありませ
ん。我々チョークリバー研究所は、その能力を
すべて自前で備えていました。我々が行ったこ
とを出来た発電所は世界中どこにもないはず
です。」
from the top
ロビイサ原子力発電所のサトゥ
・カタヤラ所長、プラントのあ
らゆる階層で安全性へのコミッ
トを強化するためのイニシアチ
ブを紹介。
強固な安全文化の構築
安
「私の経験では、安
全文化改善の鍵は、
組織全体で共通のメ
ッセージを共有し、
安全性に関する問題
を建設的な方法で議
論し、改善を要する
分野を認識し、是正
措置をすみやかに実
行することです。」
サトゥ・カタヤラ
ロビイサ発電所長
全は原子力発電産業にとって根本的
なものです。安全は私たちが行う事
柄すべての土台を補強します。強固
な原子力安全文化は、少なくとも三本の柱で支
えられていると思います。まず、組織の理念。
それから、安全性と安全な行動を支える管理シ
ステムと体制。それにさまざまな活動がいかに
係わり合い、どう安全性に影響するかについて
の正しい理解です。
ロビイサでは、原子力安全文化を改善するた
めに、5段階からなる段階的アプローチを採用
しています。このアプローチでは、最も低いレ
ベルの「物事はただ起きてしまう」から、組織
の全員が原子力安全文化を維持し改善する、最
も高い第5段階の「トレンドセッティング」ま
で設定されています。
「トレンドセッター」の地位を維持するに
は、常時課題にさらされることになります。組
織に属する全員が、日常業務に組み込まれた慣
行として企画から作業後ブリーフィングの始め
から終わりまで、安全性を常に意識の最上位に
置くことを要求され、そこでは改善の提案やフ
ィードバックを行うことが推奨されます。
改善は、物事を転換するような大規模なもの
である必要はありません。前回よりも物事を少
しでもうまく処理することによって安全性を少
しずつ改善することは可能で、実際に少しずつ
改善されています。
主要なパフォーマンス指標を測定するのと同
じように、私たちは安全文化の測定も行ってい
ます。たとえば、どの程度有効に指図が守られ
たか、組織の中で又はさまざまな利害関係者に
どれほどの情報がどの程度効率的に流れたか、
承認された是正措置がどれくらい迅速に発電所
内で実施されたか、などを測定するために、私
たちは測定基準を適用しています。適切な組み
合わせの指標が用いられれば、発電所の安全文
化の状態が明確になります。これは、経営幹部
の関心、資源、指導、訓練などを差配するうえ
で必要な、重要な情報を与えてくれます。
私たちは、定期検査期間中にプラントで作業
する協力会社にも特別な注意を払っています。
私たちが講じる対策のほか、経験豊富な作業員
ロビイサ原子力発電所
が定年を迎え、新たに採用された人たちが参加
する際の知識の移転という課題に取り組むた
め、職業別の訓練計画を導入しました。訓練は
その分野の監督者が行います。それによって、
チームワークが推奨され、従業員の能力とプラ
ントパフォーマンスの改善につながります。
フィードバックの結果は極めて好評でした。
私たちは運転経験と労働安全を含めることによ
って、プラントで発生するかもしれない問題を
緩和するために、参加者が利用できる実際的な
情報を提供します。出された提案を採用して訓
練用資料を更新し、その精度を高めるために利
用します。このようにして、あらゆる階層のス
タッフに説明責任を担わせ、プラントの安全性
への貢献に誇りを持たせることによって、私た
ちが共有する安全へのコミットメントを強化し
ます。
私の経験では、安全文化改善の鍵は、組織全
体で共通のメッセージを共有し、安全性に関す
る問題を建設的な方法で議論し、改善を要する
分野を認識し、是正措置をすみやかに実行する
ことです。そして何よりも覚えておくべきこと
は、採算のとれる長期的な運転を保証するの
は、安全性だけだということです。
INSIDE WANO: V19–NO1–2011
13
Recognising
excellence
2011年原子力功労賞
W
ANO隔年総会では毎回、原子力発電産業又
は会員原子力発電所の安全運転に特別な貢献
をした個人を表彰するWANO原子力功労賞
を授与しています。
全地域センターの代表者によって構成される独立し
た選考委員会が、提出された候補者リストから受賞者
を選考します。現在、候補者の推薦を受け付けてい
ます。
WANO会員が運転する原子力発電所の良好な運転
に貢献又はこれを支援する仕事をした個人が受賞対象
です。原子力発電事業者を支援するどのインフラの部
分への貢献でもかまいません。またWANOを通して
の貢献も含まれます。組織のどのレベルにある個人で
も選考対象になります。
候補者の推薦締切日は、2011年5月2日です。手
続の詳細は、WANO会員ウェブサイトに掲載されて
います。WANOロンドン事務所のボブ・コクレル
([email protected])にご連絡くださっても結構
です。WANO原子力功労賞は中国深圳で2011年10月
23-25日に開催される第11回隔年総会の場で授与され
ます。
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