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新地熱発電方式における坑井内同軸二重管熱交換器の開発

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新地熱発電方式における坑井内同軸二重管熱交換器の開発
FMS-111111-05-01
先端研究施設共用促進事業【複合極限環境評価法による先進材料開発】
室蘭工業大学
OASIS/FEEMA 計画推進室
利 用 成 果 報 告 書
Ⅰ-1.
利用課題名
新しい地熱利用システムにおける先進 SiC/SiC2重管の適用での問題点の抽出
Ⅰ-2.
利用者名
株式会社 九州パワーサービス
Ⅰ-3.
利用施設名
室蘭工業大学 FEEMA 施設
Ⅰ-4.
利用期間
平成
Ⅰ-5. 利用の目的・内
容
22 年
10 月
1日
–
平成
23 年
9月
30 日
我が国は米国、インドネシアに続く世界第 3 位の地熱資源保有大国であり、従来型の
地熱資源開発量だけでも電力換算で 2,347 万 kW と評価されている。オイルショック後、
我が国では地熱は国策として開発が振興され、1995 年までは急速な伸びが見られたが、
その後は横ばいの状態が続いている。
この状況は、我が国において地熱の利用は主に石油代替を主眼として行われてきてお
り、環境適応型自然エネルギーとしての側面の検討が十分になされていなかったことに
起因する。時代の要請であるクリーンな国産の再生可能エネルギー開発の中に取り入れ
るために、必要とされる従来型地熱発電での問題点の解決をもたらすものとして、本課
題で取り上げる新方式地熱発電が九州大学(現:京都大学 横峯准教授)との連携で発
案されている。この方式では、高温の地下深部へ直接高圧水を送り込みそれを地熱で蒸
気に変えることにより発電を行うものであり、中核をなす技術として地表より送り込ま
れる水が地熱により高温高圧水となり地表にも出されるための経路を形成するための
2 重管が必要となる。本研究では先進セラミック複合材料である、NITE-SiC/SiC 複合材
料の 2 重管の適用の妥当性について予備的な検討を行うものである。
図 1 に従来型地熱発電方式と新方式地熱発電の比較を示す。この発電方式を実現する
にあたっての技術的課題として抽熱技術がある。現在、中低温地熱域で坑井内同軸熱交
換器(DCHE)と呼ばれる二重管を用いたヒートパイプ方式の抽熱技術が既に実用化され
ている。本研究においてもこの DCHE の利用が有望であり、300m 級の小型の地熱井を用
いて実証実験を行う事が横峯グループによって計画されている。(図 2)しかし、本方
式の DCHE においては、実用化されているものと異なり、高圧かつ高温条件下での使用
となるため、伝熱現象が大きく異なり、特に内管の断熱性能が大きく影響する。これに
伴い材料的な要求もよりシビアなものになり、内管壁の断熱性能とそれにより大きな軸
方向および径方向に生ずる熱勾配および、DCHE ヘッド部における熱および圧力衝撃に
耐えうる材料の選択がこの方式の鍵を握ることになる。そのための DCHE 内の熱流動シ
ミュレーションとその結果からを受けた材料選択が当面の課題である。シミュレーショ
ンは、原子炉蒸気発生器で用いられている二流体モデルを用いて行われており、内管熱
伝導率 1.0W/mK 程度であれば、蒸気タービンに供するに必要な条件を満たすことができ
ることが横峯らによって確認されている。
材料に関しては、将来のさらなる高温高圧環境条件を考慮して、上述のように SiC/SiC
複合材料を第 1 候補として、本課題での基礎情報取得を行った。
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従
(A)従来方式
(B)新方式
図1 地熱発電方式の比較(横峯らによる)
図2 実験体系(横峯らによる)
本研究では上記の実験で用いる予定である NITESiC/SiC 複合材料の平板及び円管を用
いて高温水及び超臨界水での反応状況の観察を行った。また、これまでのこの材料の材
料特性データベースによる設計からの要求値との比較検討も実施した。
Ⅰ-6. 社会・経済へ
の波及効果の見通し
本方式は環境との共存性において極めて優れた方式であり、従来型地熱発電で解決す
べき点への明快な回答が示されている。主なこれまでの方式での課題は、①抽出蒸気中
に含まれる不純物を除去を要するため、大容量の発電ができず、またコストがかかる。
②地熱井、タービン、配管が目詰まりするため、経年で出力がダウンする。③発電地点
は多くは国立公園であるため、建設地点が制約され、地下水(温泉)の減少等の環境被
害が発生する、などである。これらのため、エネルギー自体はサステナブルなものであ
りながら、発電施設自体を頻繁に交換あるいは移設させなければならないという障害が
存在した。本方式の採用により、高効率かつ環境との共存性が維持された地熱利用シス
テムが実現することになり、今後の我が国のエネルギー戦略を大きく転換させるものと
なある。また、経済的な効果は甚大であり、小規模の地熱利用システムから大規模地熱
発電所の建設まで、幅広い用途開発が可能となる画期的なものである。
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Ⅰ-7.公開延期の希望
Ⅱ.成果の概要
有
(
2 年間)
無
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討内容及び結果
1.
検討内容
(1)システム仕様の検討
本課題では原理実証試験として小型地熱発電所での実験を予定しており、このための基礎データの取得と
問題点の確認を行った。
図1:小型地熱発電所外観
小型地熱発電所の実験のためのシミュレーションは九州大学の横峯研究室において実施された。このシミ
ュレーションでは原子炉内の蒸気発生器等の研究で用いられている二流体モデルを用いている。このモデ
ルは気相と液相それぞれに質量・運動量・エネルギーの保存式をたてることにより二相流を扱う方法であ
り、図2の条件でのシミュレーションが行われ、図3に示す温度分布の形成が得られている。純熱出力は
管出口と管入口での内部エネルギーの差であり、用いる SiC/SiC 複合材料の標準的な熱伝導率5W/mK では
温度分布3で、0.1MPa の入り口圧力とすると出口温度が120℃になり、純熱出力は600KW 程度と
なる。熱出力は内管径や流量等により最適化され、熱伝導率の高いほうが大きな値となるが、寿命等も含
めた総合評価を行い、決定していく事が必要となる。今回の小型地熱発電所の実験ではシミュレーション
の妥当性の検証と材料安定性の確認が主目的となる。
図2:シミュレーション条件
(横峯らによる)
図3:用いられた温度分布の例
(横峯らによる)
長期的にはより高効率な発電を目指す事になり、飽和水蒸気・亜臨界水蒸気・超臨界水を用いるシス
テム設計の例として原子力発電における温度と圧力の関係(図4)に本計画の位置づけを示す。
小型地熱発電所での実験は沸騰水型軽水炉(BWR)の条件よりもはるかにマイルドなものであるが、実用
システムにおいては先ず、BWR 条件に近い発電を目指し、将来的には超臨界圧軽水炉が目指している超臨界
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水を用いるシステムへの拡張も視野に入れたい。検討対象である NITE 法 SiC/SiC 複合材料は強度や水蒸気
中の安定性については問題の無い事が確認されており、高度なスペックのシステム設計にも対応できる潜
在的な特性を持っている。
杉の井ホテル実験
小
型 地 熱発電
図4:軽水炉の運転条件との関係
2.
まとめ
今回本課題の利用期間の途中であり当施設を利用して得られた結果については記述しておらず、実験を行う
に当たって取得した基礎データおよび問題点のみ記述し途中経過を報告した。平成 23 年度後期利用課題として
有償での利用を申請し、採択されればそちらで改めて追加実験を行う予定である。
今後は地底で予想される腐食環境での高温水環境下での安定性の確認が必要と思われる。また、想定される
2重管の寸法を想定した材料設計と製造プロセスの最適化も今後の課題となる。
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