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Dionex Integrion HPICシステムを用いた 環境水中の高速陰イオン分析

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Dionex Integrion HPICシステムを用いた 環境水中の高速陰イオン分析
環境水中の高速陰イオン分析
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
Application Note IC16007
Dionex Integrion HPICシステムを用いた
キーワード
スタンダードボア、
Integrion、HPIC、高速 IC、IonPac AS18-4 µm、RFIC、
Reagent-Free IC
はじめに
イオンクロマトグラフィー(IC)は、河川水、地下水、飲料水
などの環境水に含まれる、
無機陰イオンのモニタリングを目
的として確立され広く知られた技術です。米国では、
水質浄
化法(Clean Water Act、
CWA)および安全飲料水法(Safe
Drinking Water Act、SDWA)により水質が規制されていま
す。CWAが汚染物質の水中への放出の低減を目標とするの
に対し、
SDWA は飲料水の品質と安全性の確保を目標とし
ています1,2。無機陰イオンは飲料水の健康問題に関連する
主要な汚染物質(フッ化物、硝酸塩、亜硝酸塩および消毒副
さらに、このアプリケーションはこれまでに何度も改訂されてき
産物)として、
塩素イオンや硫酸塩は味覚、
色、
臭気または味
ました。最新版である Thermo Fisher Scientific( Dionex )
に影響する二次的汚染物質として規制されています。これ
Application Note 154(AN154、英文)5では、マニュアル調製され
らの無機陰イオンの多くが、
CWA工業許可プロセス(CWA
た炭酸塩溶離液を用いたそれまでのアプリケーション(AN133)6
industrial permitting process)により規制されています。
に比べ、水酸化物溶離液を用いることで、感度、ピーク保持時間お
米 国では 1992年 以 降、米 国 EPA Method 300.0 および
よびピーク面積精度が増加することを示しました。
1997 年に改訂された EPA Method 300.1
に従い、
飲料水
2003年に発行された初版の AN154ではイオン交換容量の大きい
および排水に含まれる無機陰イオンのモニタリングを実施
陰イオン交換カラム(Dionex IonPac AS18)
と水酸化物溶離液を
することが求められています。ドイツ、フランス、イタリア、
組み 合わせた RFIC( Reagent-Free Ion Chromatography)
日 本、中 国など、他の 工 業 国でも 同 様の 規 制があります
システムの有効性を Thermo Scientific Dionex ICS-2000イオン
(A S T M 、E U 国際標準化機構(I S O)
、中 国 E PA )
。E PA
クロマトグラフシステムを用いて紹介しました。また、
溶離液ジェ
Method 300.0(パート A)および300.1(パート A)では、無
ネレートグラジエントを用いて7種の陰イオンが16分以内に溶出
機陰イオンを Thermo Scientific™ Dionex™ IonPac™
され、
電解連続再生型 Thermo Scientific Dionex ASRS ULTRA 陰
AS4Aおよび Dionex IonPac AS14A陰イオン交換カラムを
イオンサプレッサーを用いたサプレスト電気伝導度検出器により
使用した陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて、
マニュ
検出されました。
3,4
アル調製された炭酸塩ベースの溶離液で分離し、
電気伝導度
を抑制して検出しています。しかし、
1997年以降、テクノロ
ジーが著しく進歩したことにより、上記以外のカラム、溶離
液、
サプレッサーおよび検出器を用いても同等の結果を得る
ことができるようになりました。
2
本 Application Updateでは小粒子径 Dionex IonPac AS18 -4
µmカラムを用いることにより、分析時間は AN154の分析時間12
分析条件
カラム:
Thermo Scientific Dionex IonPac
AG18 -4 µm(4 × 30 mm)
Dionex IonPac AS18 -4 µm
(4 × 150 mm)
分から8分に短縮されています。4 µmの小粒子径のイオン交換体
を充填したカラムは選択性が同じでありながら、短いカラム長さ
(250 mmから150 mm)に最適化されています。Dionex IonPac
AS18 -4 µmを用いることにより、高い分離効率を保ったまま分析
時間が短縮でき、一貫して信頼性の高い結果を得ることができま
す。この 分 析 に は 、高 圧 対 応 の Thermo Scientific Dionex
Integrion™ RFIC™ HPICシステムを使用しました。
Dionex Integrion HPIC システムは、最 新の IC装 置のテクノロ
ジーを 組み 込んでおり、Reagent-Free™ IC
(RFIC)の高 圧 対応
や、カラム恒温槽の制御機能および顧客の利便性向上を目的とし
た以下のような新しい特長があります。
• 設置面積の小さいコンパクトな一体型システム
• 溶離液ジェネレーターやトラップカラムへのアクセスが容易
• ポンプ、インジェクションバルブ、カラム恒温槽および検出器
コンパートメントを区分したことで、独立した温度設定が可能
になり、
より短時間で温度平衡ができるようになりました。
• デッドボリュームが少なく、取り付けに特別な技術やツールが
不要の IC PEEK Viperフィッティングを採用
• 追跡機能により、消耗品の使用開始日と稼動状況を自動的に記
カラム温度:
35℃
溶離液:
グラジエント Time(min) 0.2 6
9 12
15 44 44 15
KOH(mmol/L)
流量:
1 .0 mL/min
検出器:
電気伝導度
検出器
コンパートメント温度:
15℃
サプレッサー:
Dionex AERS 500サプレッサー、
4 mm、リサイクルモード
試料注入量:
10 µL(Push-Fullモード)
ランタイム:
12分
バックグラウンド導電
率:
< 1 µS
ノイズ:
< 1 nS
背圧:
∼2200 psi
サンプルおよびサンプル調製
水道水、
表層水、
排水、
および井戸水をサンプルとしました。水道
水は脱イオン水で最小限希釈して解析し、
表層水、
排水、
井戸水の
サンプルはすべて、
注入前にフィルターろ過(0.2 µm)しました。
録。消耗品の取り付けエラーを予防
• 離れた場所からでも ICのコントロールができる取り外し可能な
タブレットを搭載
• ICシステムのコントロールに最適な Thermo Scientific Dionex
Chromeleon™ クロマトグラフィーデータシステム(CDS)ソ
フトウェアを採用。試料注入からデータ解析までのプロセスを
迅速かつ簡単に効率化できるため、
ラボ全体の生産性が向上
Dionex Integrion RFICは、電気活性イオンや単糖類、二糖類の電気
化学的検出を目的としたシステム構成にすることもできます。
装置
装置の設置およびインストール
Dionex Integrion RFICは、高 圧 対 応 一 体 型 Reagent-Free IC
( RFIC )システムで す。Dionex Integrion HPICシステム、
Dionex
EGC 500 KOHカートリッジ、および Dionex CR-ATC 600消耗
品は、
5000 psiまでの高圧条件に対応しています。
このアプリケーションを設置するには、図1に示すように Dionex
AS-APオートサンプラー、Dionex Integrion RFICおよびモジュー
ルを接続します。インジェクションバルブは、これまでの Dionex
ICシステムとは異なるポートを介して接続されているので、注意
が必要です。
Dionex Integrion HPICシステムから Dionex AS-APオートサンプ
• Dionex Integrion RFICシステム構成
ラーとコンピューターへ USBケーブルを接続します。電源ケー
‐ 電気伝導度検出器(CD)
ブルを接続し、
IC装置とオートサンプラーの電源を入れます。
‐ カラム恒温槽
Dionex Integrion RFIC
‐ 検出器コンパートメント温度調整機能付属
‐ タブレット
‐ 消耗品追跡機能
‐ 溶離液ジェネレーター標準装備
• Thermo Scientific Dionex ASAPオートサンプラー
Dionex AS-AP
オートサンプラー
電気抵抗率
18 MΩ-cmの
新鮮な脱イオン水
電気抵抗率
18 MΩ-cmの
新鮮な脱イオン水
ソフトウェア
Dionex Chromeleonクロマトグラフィーデータシステム(CDS)
CM 7.2 SR4
Dionex EGC
500カートリッジ
ポンプ
Dionex
CR-TC 600
トラップ
Dionex
脱気
モジュール
ベントライン
廃液
サンプルループ
Dionex IonPac
カラム
図1:Dionex Integrion RFICの流路図
Dionex ERS 500
サプレッサー
CD
Chromeleon CDSソフトウェアのモジュール環境
3
設定
ICシステムを設定するには、まず Chromeleon CDSソフトウェア
の[サービスマネージャー]プログラムを開始します。次に装置
の 環 境 設 定[装 置 構 成 マ ネ ー ジ ャ(Chromeleon Instrument
Configuration Manager)]を開きます。コンピュータ名上で右ク
リックし[装置の追加( I )
]
を選択し、
適切な名前(例:Integrion_
EPA300_1)を入力します。続いて、装置名の上で右クリックして
[モ ジ ュ ー ルの 追 加]で IC:Dionex 一 体 型 シ ス テ ム 一 覧から
[Integrion HPICシステム]と[Integrion HPICポンプ(ウエルネ
図2:Dionex Integrion HPIC ポンプ
(ウェルネス)
モジュールを装置の環境設定に追加
ス)
]を選択します。各モジュールの環境設定に関する説明は、
こ
のセクションの最後の表2にまとめられています。
Dionex AS-APオートサンプラーを追加
マルチタブのついたプログラムが開いたら、モデルのシリアル番
Dionex AS-APオートサンプラーをモジュールに追加します。タ
号を選択します。Chromeleon CDSソフトウェアは、装置を環境
ブメニューから[全般]を開きます。
[モジュールアドレス(A)
]の
設定する際に最小限のデータ入力が必要となるシール洗浄、電解
[参 照(R)
]ボ タ ンを 押して、モ ジ ュ ー ル リ ス トから AS-APの
装置、検出器、ポンプ、脱気装置などのすべての Dionex Integrion
USBアドレスをクリックします。セグメント /ポンプのリンクの
システムデバイスを自動的に検出します。Chromeleon CDSソフ
タブからウェルプレートサンプラーのセグメントタイプでセット
トウェアは、インストールされたデバイスを自動的に検出するこ
したサンプルトレイを選択します。オプションタブで注入モード
とでシステム環境設定プロセスを自動化します。圧力モニタリン
(M)を[プッシュ]を選択し、
バッファー容量(F)を1200 µL、
シ
グ機能を追加するには、
Integrion HPICポンプ(ウエルネス)を選
リンジ容量(Y)を設定します。インジェクションバルブにセット
択し、
タブメニューの[デバイス]を選択します。
[圧力信号(P)
]
した サ ン プ ル ル ー プ サ イ ズを 入 力します。 設 定を 保 存し、
チェックボックスを選択します(図 2)
。
Chromeleon CDSソフトウェア装置構成マネージャーを終了し
ます。
表 2:Dionex Integrion RFICシステムの環境設定
タブ
アクション
結果
デバイス名(N)
自動検出
Dionex Integrion HPIC モジュール
全般
ポンプ
検出器
モジュールシリアル番号(M)
自動検出
流量と圧力の単位
選択
流量範囲
設定
圧力範囲
設定
検出器の種類
自動検出
電解デバイス
溶離液ジェネレーターカートリッジと Dionex CR-TC トラップカラムを自動検出
注入デバイス
デバイス名と制御元を指定
温度制御
Column_TC
Compartment_TC
CellHeater
低圧バルブ
自動検出
自動検出
Seal_Wash
PVM_Drive
PUMP_Degas
自動検出
全般
モジュールのアドレス
自動検出
デバイス
デバイスの名(N)
自動
圧力信号(P)チェックボックス
圧力モニタリングを作動(図 2)
デバイス名(N)
自動
オプション
ポンプウェルネスモジュール
Dionex AS-AP オートサンプラー
全般
、
参照ボタン 自動検出。選択
モジュールアドレス(A)
共有
装置
PC に 2 台以上の装置がコンフィグレーションされている場合、選択設定
セグメント/ポンプとリンク
ウェルプレートサンプラーの
セグメントタイプ
トレータイプを選択、1.5 mL バイアルまたは 10 mL ポリバイアル
オプション
注入モード
プッシュ(同時または順次)またはプルを選択
バッファー容量
シリンジタイプ
500 µL、1200 µL(標準)、8500 µL から選択
100、250(標準)、1000、5000 µL から選択
ループ容量
インジェクションバルブにセットした容量
オートサンプラーのバルブ
なし、注入、分流器、AUX いずれから選択
4
Dionex Integrion RFICシステムの配管
ヒント:IC PEEK Viperを使用し、
適切な締め付けトルクで締める
ことが重要です。最初に設置する際は、
手で締め、
少し力を加えて
1/8回転締め込みます。2度目の使用時には、手で締めて、さらに
1/16回転締め込みます。Dionex IC PEEK Viperフィッティング
アッセンブリをご使用ください。
• PN088807:EG - PEEK Viper - CR-TC
• PN088811:CR - TC - PEEK Viper - EG Degas
• PN088806:Inject Valve - PEEK Viper - Guard Column
• PN088805:Guard Column - PEEK Viper - Separator
Column
• PN088808:Separator Column ‐ PEEK Viper ‐ Suppressor
Dionex ERS 500サプレッサーを水和するには、サプレッサーに
付属している、または製品マニュアル10のクイックスタートイン
ストラクションに従います。サプレッサーを完全に水和するため
に20分間待ってから、検出器のコンパートメントに設置します。
CDの出口とサプレッサーの Regen Inポートの間に背圧ループを
取り付けます。
インストラクションの消耗品[Consumables ]
、カラムの設置
[Install Column ]セクションに従い、カラムを30分間コンディ
ショニングします(図3)
。通常の実作業においては、
QAR報告書
に記載の溶離液と流速条件に従い、
カラム内の溶離液を廃液容器
に向かわせます11。図1の流路図に従い、
設置を完了します。
• PN088810:Suppressor ‐ PEEK Viper ‐ CD Cell
Dionex AS-APオートサンプラーの設置と最適化
装置背面から金属被覆された廃液チューブに気液分離チューブを
Dionex AS-APオートサンプラーニードルの位置をインジェク
取り付け、廃液タンクにセットします。システムアップのために
ションポートに合わせます。オートサンプラーニードルの位置を
ポンプ溶離液ラインに、あらかじめ脱気した超純水ボトルを接続
合わせるには、
まず装置のパネルにあるサンプラー[Sampler ]タ
します。プライミングノブを1/4回転開けてからプライミングボ
ブを選択し、
アライメント[Alignment ]ボタンを押します。指示
タンを押して、ポンププライムを行います。廃液チューブに気泡
に従い、オートサンプラーニードルの位置をインジェクション
が見えなくなり、水が廃液ラインから安定した流量で流出してく
ポートと洗浄ポートに合わせます(オペレーターマニュアルのセ
るまでポンププライムを続けます。その後、ポンプを停止してプ
クション B.12)12。その後、
脱気水を入れた洗浄容器に向かうオー
ライミングノブを手で締めます。詳細については、製品マニュア
トサンプラーのシリンジラインをシリンジに接続します。バッ
ルを参照してください。
ファー洗浄ラインとシリンジ内の空気を除去します。洗浄ポート
溶離装置とカラムのコンディショニング
に水が安定して流れ出ることが確認されるまで、洗浄ボリューム
は5000 µLとします。 次に、
TLVキ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン[TLV
ヒント:カラムや消耗品に付いている RFICタグを取り除かないで
Calibration ]ボタンのプロンプトに従い、トランスファーラインボ
ください。これらのタグは RFIDのモニタリング機能に必要なもの
リュームをキャリブレーションします。このボリュームは自動的
です。
に記録されます。さらなる詳細情報は、
Dionex ICシリーズ AS-AP
リザーバートレイコンパートメントに、
Dionex CR-ATC 600連続
オートサンプラーオペレーターマニュアル12のセクション 5.9を
再生型陰イオントラップカラムと Dionex EGC 500 KOHカート
参照してください。
リッジを設置します。消耗品[Consumables ]
>設置[Install ]
の
ドロップダウンメニューから、説明に従ってデバイスをコンディ
ショニングします(図3)
。
(この情報は取扱説明書およびシステム
設置マニュアル にも記載されています。
)セルの出口に、黒色の
7-9
PEEK(チューブ内径 0.010インチ)の背圧ループ(約40 psi追加)
を取り付けます。
Dionex Integrion RFICの作動
システムを作動するには、
ポンプの電源を入れ、
液体がデバイス中
に流れたらすぐに Dionex EGC 500カートリッジと Dionex CR-
ATC 600トラップの電源も入れます。システムの背圧は流速とカ
ラムの種類に依存しますが、
Dionex EGCカートリッジを使用す
る場合は必ず2000 psiを超えていなくてはなりません。
通常、
4 µm径の樹脂を充填したカラムはそのままの状態でも背圧
が2000 psiを超えるため、背圧チューブは必要ありません。しか
し、システムの背圧が2000 psi以上となるようにさらに圧力を加
える 必 要がある 場 合は、黄 色の PEEK(内 径0.076 mm)背 圧
チューブを Dionex HP EG脱気モジュールとインジェクション
ポート(ポンプの位置)の間に設置します。次に溶離液濃度、
カラ
ム恒温槽、
コンパートメントオーブンおよびセルの温度を、
アプリ
ケーションの条件[Conditions ]セクションに示されている通り
に設定します。最後に、
システムを30分間平衡化します。最適な
クロマトグラフィー条件とするために、総背圧が安定するまで平
衡化します。
図3:消耗品に関するオンライン設置説明書
装置メソッドの作成
5
Chromeleon Wizardを使用して新しい装置のメソッドを作成す
るには、
作成、
装置メソッド、
装置の順に選択します。クロマトグラ
フィー条件セクションの値を入力し、
装置メソッドを保存します。
消耗品の追跡
ヒント:何らかの新しい消耗品を取り付けた後にシーケンスを開
始する場合は、
デバイス間の不適合を承認または修正するために、
適切な操作を行う必要があります。
Dionex Integrion HPIC システムの新しい特長である消耗品のモ
ニタリングと追跡により、
電離装置とカラムが自動的に検出され
ます。Dionex Integrionシステムで最初のシーケンスを開始し、
新
しい消耗品を設置すると、レビューと承認が必要となります。承
認するには、
消耗品を選択し、
インベントリ[Inventory ]を選択し
ます(図4)
。
デバイスモニタリングでは、
デバイスの履歴、
追跡、
部品番号、
サイ
ズ、
化学的性質、
シリアル番号、
製造業者ロット、
インストールされ
た場所(デバイス上)ならびに有効期限を示します(図4、上)。ま
図4:消耗品の追跡
た、
デバイスモニタリングの結果、
取り付けられたデバイスに不適
合がある場合には警告されます(図4、
左下)
。シーケンスを開始す
るには、インベントリとして示される消耗品の一覧を確認し、エ
ラ ーを 修 正・承 認し、ペ ー ジを 閉じます(図4、右 下)
。その 後、
キュータブを選択し、
シーケンスの準備完了チェックを実施し、
ス
タートを押します。
結果および考察
リ ン 酸 塩を 含む7種の 陰 イ オ ンを、
Dionex IonPac AS18-4 µm
30
2
(4 × 150 mm)
、
高容量、
4 µm径の樹脂を充填した陰イオン交換
ピーク
mg/L
1.0
1. F −
12.0
2. Cl −
−
8.0
3. NO2
-4. CO32 −
6
カラムで、
14 mmol/Lから44 mmol/L KOH(0.2∼9分)の電解生
成水酸化物グラジエントを用いて分離しました。すべての陰イ
オンが9分以内に溶出され、高圧対応 Dionex Integrion RFICと最
り、電気伝導度が抑制されました。この方法による分析時間は4 ×
250 mm、7.5 µmカラムを用いた AN154の分析時間よりも短いこ
5
µS/cm
新技術を導入したサプレッサー(Dionex AERS-500)の併用によ
7
3
8
1
とが示されました。より短い150 mm長のカラムを用いたことで
分析時間が短くなったと考えられますが、カラム長さを短くでき
4
B
たのは、4 µm径の樹脂により分離効率が高くなったためです。
A
0
-5
3
0
6
Time(min)
9
カラム
A: Dionex IonPac AG18 -Fast、
Dionex IonPac
AS18 -Fast
Dionex IonPac
B: Dionex IonPac AG18 -4 µm、
AS18 -4 µm
カラム温度
35℃
流量
グラジエントTime
(min) 0.2
KOH(mmol/L)
15
1 mL /min
検出器
電気伝導度
試料注入量
10 µL
サプレッサー
Dionex AERS 500(リサイクルモード)
溶離液
図5:Dionex IonPac AS18 -Fastカラムの比較
6
44
9
44
ピーク
5. Br −
6. SO43 −
7. NO3 −
8. PO43 −
mg/L
9.0
10.0
9.0
6.5
効率の改善によりカラム温度を5℃上げることが可能となったこ
とも、分析時間の短縮に貢献しています。また、
Dionex Integrion
RFICはサプレッサーと検出器のコンパートメントが分かれてい
て15℃に設定できるため、サプレッサーの効率が増大し、結果と
してクロマトグラフィーが改善されています。図5では、
IonPac
AS18-Fastカラム(4 × 150 mm)の2種の樹脂を用いて、同じ標
準液を同じ条件で分析した結果を比較しています。クロマトグラ
ム Aは Dionex IonPac AS18-Fast、粒子径7.5 µm、クロマトグラ
ム Bは Dionex IonPac AS18-4 µm、
粒子径4 µmです。この図は、
4 µmカラムを用いた際のピーク効率の改善を示しています。つま
サンプル解析
水道水、
排水、
表層水、
井戸水、
軟水化した井戸水および内海、
人工
湖、
プールの水をサンプルとして、
この分析を実施しました。
図6および図7に、
水道水と表層水サンプルのクロマトグラフィー
の結果を示します。精度を確認するため、一部のサンプル(表層
水、
プール水、
都市排水、
水道水)に濃縮した陰イオン標準液(存在
濃度の0.5∼2倍)を加えた後、
回収率を算出しました。表5に示す
通り、
89∼105%と回収率に優れており、精度に問題のないこと
が示されました。
り、
ピークが高くて幅が狭く、
かつ炭酸塩と臭化物ならびに硫酸塩
90
と硝酸塩という極めて重要な組み合わせにおいて分離能がより優
ピーク
mg/L
1 .0
1. F −
−
90 .6
2. Cl
3. NO2 − 1 .0
-4. CO32 −
5. SO43 − 51 .8
−
2 .6
6. NO3
7. PO43 − 0 .36
2
れていることが示されました。
分析の適格性
分析を評価するため、
50 mg/Lの混合陰イオン標準液を7回分析し
て、保持時間とピーク面積精度を決定しました。表3に示す通り、
保持時間 < 0.1かつピーク面積0.1∼0.2 RSDと、
優れた精度を示
す結果が得られました。
µS/cm
6
5
表3:50 mg/L標準液を用いた分析の再現性
保持時間
FClNO2-N
Br SO42NO3-N
PO4-P
ピーク面積
(min)
(RSD)
(µS-min)
(RSD)
2.307 ± 0.002
3.714 ± 0.001
4.506 ± 0.006
5.838 ± 0.002
6.341 ± 0.002
6.630 ± 0.002
8.714 ± 0.007
0.09
0.04
0.06
0.03
0.04
0.03
0.08
9.237 ± 0.012
6.056 ± 0.011
4.206 ± 0.006
2.370 ± 0.003
4.105 ± 0.006
3.300 ± 0.005
2.171 ± 0.004
0.13
0.19
0.13
0.14
0.14
0.14
0.19
7種の陰イオン混合標準液を複数回注入し、ピーク面積に基づき直
線性を示す濃度範囲を決定しました。20∼50倍希釈した最低濃
度の検量線用標準液(3.14 × σ(標準偏差))を用いて、
MDLを決
定しました。表4に示す通り、
検量線範囲では直線性の結果が得ら
れ、
臭化物を除くすべての陰イオンについて MDL < 2 µg/Lとなり
ました。
検量線範囲
(mg/L)
決定係数
F-
0.04∼100
0.99995
0.3
Cl-
0.50∼200
0.99999
0.6
NO2-N 0.97∼100
0.99961
0.1(0.4 as NO2)
-
0.7∼100
0.99993
2.6
SO
0.8∼200
1.00000
1.4
NO3-N 0.16∼100
0.99999
0.9(4.1 as NO3)
0.17∼100
0.99997
0.8(2.6 as PO4)
24
PO4-P
-10
0
カラム
カラム温度
3
6
6
Time(min)
7
9
Dionex IonPac AG18 -4 µm、
Dionex IonPac AS18 -4 µm、4 × 150 mm
流量
35℃
Time(min)
KOH(mmol/L)
1 mL /min
検出器
電気伝導度
溶離液
4
0.2
15
6
44
試料注入量
10 µL
サプレッサー
Dionex AERS 500(リサイクルモード)
前処理
5 -fold dilution with deionized water,
filtered, 0.2 µm
図 6:希釈した水道水サンプルに含まれる陰イオンの結果
表4:直線性と MDLの結果
Br
3
1
MDL
(µg/L)
200
ピーク
mg/L
1 .0
1. F −
91 .0
2. Cl −
2−
-3. CO3
4. SO42 − 53 .0
5. NO3 − 2 .4
2
おわりに
Dionex Integrion RFICシステムとの併用により高分離能を実現す
る Dionex IonPac AS18-4 µmカラムを用いて、
ppm濃度で陰イ
オンを含む環境水サンプルを高速解析した結果を示しました。
AN154の今回の改訂では、
µS/cm
• 最新のカラム、サプレッサー、IC 装置テクノロジーを用いて分
析しました。
• 標準液とサンプルを用いて、優れた保持時間とピーク面積の再
現性(それぞれ RSD < 0.1および < 0.2)
、クロマトグラフィー
4
および極めて重要なピークの組み合わせの分離能の向上、なら
びに89∼105%の回収率が示され、分析の信頼性と精度が示さ
3
1
0
0
3
れました。
5
6
Time(min)
• 分析時間は12分まで短縮し、7種の陰イオン(リン酸塩を含む)
9
を含むサンプル1検体を解析する時間が4分間短縮されました。
Dionex IonPac AG18 -4 µm、
Dionex IonPac AS18 -4 µm、4 × 150 mm
カラム
カラム温度
流量
35℃
Time(min)
KOH(mmol/L)
1 mL /min
検出器
電気伝導度
試料注入量
10 µL
溶離液
0.2
15
6
44
9
44
参考文献
‌Fed. Regist., 1999; Vol. 64, No. 230.
1.
2. Fed. Regist., 1995; Vol. 60, No. 201.
3. U.S. EPA Method 300.0., U.S. Environmental Protection
Agency; Cincinnati, Ohio, 1993.
4. U.S. EPA Method 300 .1 , U.S. Environmental Protection
Agency, Cincinnati, OH, 1997.
サプレッサー
Dionex AERS 500(リサイクルモード)
前処理
Filtered, 0.2 µm
5. Thermo Fisher Scientific. Dionex Application Note 154,
Determination of Inorganic Anions in Environmental Waters
図7:希釈していない表層水サンプルに含まれる陰イオンの結果
Using a Hydroxide-Selective Column, AN71372-EN 1014M,
Sunnyvale, CA, 2014.
6. Thermo Fisher Scientific. Dionex Application Note 133,
表5:回収率の結果
排水
FClNO2-N
Br SO42NO3-N
PO4-P
添加
(mg/L)
回収率
(%)
添加
(mg/L)
回収率
(%)
1
20
2
2
10
1
2
102
103
103
89.5
95.3
102
98.7
1.0
80
1
1
35
5
1
100
103
94.9
90.2
104
95.1
97.0
プールの水
FClO2ClNO2-N
Br SO42NO3-N
PO4-P
Determination of Inorganic Anions in Drinking Water by Ion
表層水
Chromatography, LPN 1192 -03 PDF 10 /04 , Sunnyvale,
CA, 1998.
7. Thermo Fisher Scientific. Integrion Installation and
Operator ’s Manual, P/N 22153 -97003 , Sunnyvale, CA,
2015.
8. Thermo Fisher Scientific. Dionex Product Manual for Eluent
Generator Cartridges, P/N: 065018-05, Sunnyvale, CA,
June 2014.
9. Thermo Fisher Scientific. Dionex Product Manual for the
水道水
添加
(mg/L)
回収率
(%)
添加
(mg/L)
回収率
(%)
1
detected
100
1
1
3
5
1
104
-96.7
98.8
90.5
91.4
99.6
105
1.0
-20
1
1
10
2
1
101
-99.6
98.0
88.7
104
91.2
96.0
Continuously Regenerated Trap Column( CR-TC ). P/N:
065018-05, Sunnyvale, CA, November 2012.
10. Thermo Fisher Scientific. Dionex ERS 500 Suppressor
Product Manual. P/N: 031956 -09 , Sunnyvale, CA,
November 2013.
11. Thermo Fisher Scientific. IonPac AS18 -4 µm Column
Product Manual. P/N 065499-02, Sunnyvale, CA, August
2014.
12. Thermo Fisher Scientific. Dionex AS-AP Operator ’s
Manual. Document No. 065259, Sunnyvale, CA, 2012.
7
製品名
製品詳細
Dionex IC PEEK Viper Fitting Tubing Dionex IC PEEK Viper fitting assembly kit for the Dionex Integrion RFIC
Assembly Kits
system includes one each of P/Ns: 088815–088821
製品番号
088798
Guard to separator column: 0.007 × 4.0 in.(102 mm)
088815
Injection valve, Port C (Port 2) to guard column: 0.007 × 5.5 in.(140 mm)
088816
EGC Eluent Out to CR-TC Eluent In: 0.007 × 6.5 in.(165 mm)
088817
Separator column to Suppressor Eluent In: 0.007 × 7.0 in.(178 mm)
088818
Suppressor Eluent Out to CD In: 0.007 × 9.0 in.(229 mm)
088820
CR-TC Eluent Out to Degasser Eluent In: 0.007 × 9.5 in.(241 mm)
088821
Dionex AS-AP Autosampler Vials
Package of 100, polystyrene vials, caps, blue septa, 10 mL
074228
Dionex™ EGC™ 500 KOH Eluent
Generator Cartridge*
Eluent generator cartridge
075778
Dionex CR-ATC™ 600 Electrolytic
Trap Column*
Continuously regenerated trap column used with Dionex EGC KOH 500
cartridge
088662
HP EG Degasser Module*
Degasser installed after Dionex CR-TC trap column and before the injection
valve. Used with eluent generation
075522
Dionex AERS™ 500 Suppressor
Suppressor for 4 mm and 5 mm columns, using recycle mode
082540
Dionex IonPac AG18-4 µm Column
Anion guard column, 4 × 30 mm
076035
Dionex IonPac AS18-4 µm Column
Anion separation column, 4 × 150 mm
076034
Nalgene™ Syringe Filter
Syringe filters, 25 mm, PES membrane, 0.2 µm. This type is compatible with
7252520**
IC analysis
Dionex IC PEEK Viper Fitting Tubing
Assemblies
Application Note IC16007
消耗品リスト
* High pressure device recommended for 4 µm particle resin columns.
** Fisher Scientific P/N 09-740-113
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サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
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E-mail : [email protected]
www.thermofisher.com
IC084_A1603SO
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