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【日本機械工業連合会会長賞】 LPG船(中速船)の推進性能を高める新型

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【日本機械工業連合会会長賞】 LPG船(中速船)の推進性能を高める新型
【日本機械工業連合会会長賞】
LPG船(中速船)の推進性能を高める新型船首形状
SEA-Arrow (Sharp Entrance Angle bow as an Arrow)
株式会社川崎造船
神戸市中央区
1.
機器の概要
本機器は、LPG 船(液化石油ガス運搬船)に代表される中速船の推進性能の向
上に最適な船首形状である。本船首形状は、LPG 船など中速船が航走する際に造
る船首波を大幅に減少させ、推進性能を大幅に向上させるものであり、従来船で
一般的に採用されている突出型の球状船首(バルバスバウ)の突出を無くした特
徴的な形状をしている。この新しい船首形状を、その特徴的な形状から SEA-Arrow
(Sharp Entrance Angle bow as an Arrow)と命名した。
LPG 船には全長・貨物容積・設計船速などに厳しい設計制約条件があり、研究・
開発を行った結果、SEA-Arrow 船首形状を採用した船型が、その LPG 船特有の制
約条件の中で船首による造波抵抗を半減させ、同一船速おいて主機馬力を6∼
10%減少させることを確認した。
写真1に示す SEA-Arrow 適用1番船の馬力削減効果は、同一船速において約
6%である。この約6%の馬力削減効果は、主機の燃料であるC重油の使用量を
1日当り約3トン節減することになる。
また、
これは船の一生を 20 年とした場合、
20 年間に使用するC重油
の使用量を約1万トン節減
する効果があり(金額換算
で約2億円)
、さらに船舶が
排出する二酸化炭素の排出
量を、約3万トン削減させ
る効果もある環境にもやさ
しい船首形状である。
写真 1 SEA-Arrow 適用1番船
— 22 —
2.
2.1
機器の技術的特徴および効果
技術的特徴
資源の大量輸送を目的とする排水量型船舶の中で、LPG 船には以下のような特
徴・制約条件(図1参照)がある。
1) 輸送効率を向上させるために、箱型の船倉が船首部まで配置されている。
2) 港湾内の入港制限により、船の全長が制限されている。
3) 同様な箱型の船倉を有するタンカーやバルクキャリアーと比較して、航海速
力が速い。
これらの制約条件は、船首が水面
に突入する角度(水線面入射角度)
と船首前端の幅が大きくならざるを
得ない船型を生じ、そのような船首
形状を持つ船舶が高速で航行した場
合には、船首付近の水面が大きく盛
り上がり、船首波の崩れを伴って、
船が造る波によって生ずる抵抗、い
わゆる造波抵抗の大幅な増加を招き、
図 1 設計条件
主機馬力の増加と燃費悪化の原因となる。
従来型の船型では、水面下に船首より突出した球状船首を付けることにより、
造波抵抗の軽減を図ってきた。この突出型球状船首は、球状船首のボリュームに
よって生ずる造波と主船体が造る造波との干渉効果によって造波を減少させ、船
体の全抵抗を減少させる方法である。(写真2)
写真 2 従来型船首形状
写真 3 SEA−Arrow 船首形状
— 23 —
しかし、LPG 船のように全長が制限された船型では、球状船首の造る波が主船
体の造る波に比べて相対的に小さいため、両者の干渉により造波抵抗を低減させ
る効果はあまり期待できなかった。
そのため、LPG 船の船首造波を低減させる船型について研究・開発を行った結
果、水面下の球状船首のボリュームを確保したまま、主船体の全長を制限一杯ま
で伸ばした、垂直な船首プロファイルを採用することにより、水面の盛り上がり
によって水に接する部分の水線面入射角度および船首前端幅を小さくし、主船体
の造波を減らすことができる船首形状を考案・開発した。
(写真3)
写真 4 従来型 試験時 船首波
写真 5 SEA-Arrow 試験時 船首波
約50%減少
この新しい船首形状の
る長さ約 7.5mの模型船
を用いた模型試験を実施
した。
100
0
図2に模型試験の結果
を示す。図2は船舶が水
面を航行する際に生ずる
従来型LPG船
50
計画速力
スケール比が 1/30 であ
造波抵抗率
推進性能を確認するため、
SEA-Arrow LPG 船
船速(ノット)
図2 模型試験による造波抵抗値の比較
図 2 模型試験による造波抵抗値の比較
抵抗の中で船体が造る波
によって生ずる抵抗(造波抵抗)を比較した図である。
この結果より、航海速力である計画速力付近だけでなく、
広い速度域において、
実線で示された SEA-Arrow LPG 船(写真5)の造波抵抗が、破線で示された従来
型 LPG 船(写真4)の造波抵抗と比較して、ほぼ半減していることがわかる。
— 24 —
また、図3に模型試験結果を用
従来型LPG船
いて推定した実船の馬力曲線の比
の馬力曲線が破線の従来型 LPG 船
SEA-Arrow LPG船
計画速力
実線で示した SEA-Arrow LPG 船
馬力比 6%減少
馬力 (kW)
較を示す。
に対して、航海速力付近において、
約6%の馬力減少となっているこ
船速(ノット)
とがわかる。
図3
図 3 馬力曲線の比較
馬力曲線の比較
2.1
効果
(1) 省エネルギー効果
SEA-Arrow 船型を採用することにより、以下の省エネルギー効果がある。
1) 同一船速において、主機馬力を6∼10%削減することができる。この馬力
低減率により、大型 LPG 船では主機関の燃料である C 重油の使用量を1日
当たり約3トン削減する省エネルギー効果がある。
2)
同一馬力において、船速を 0.3∼0.5 ノット増加させることができ、運航ス
ケジュールの短縮を計ることができる。
(2) 経済性と環境への影響
船舶の稼働期間は約 20 年であり、上述のように 1 日当り3トンのC重油の使用
量を削減することにより、船舶が 20 年間に使用するC重油を約1万トン節約でき、
船舶の生涯に排出する二酸化炭素の量を約3万トン減少させることができる環境
にやさしい船首形状である。
因みに、C重油1万トンは金額に換算して約2億円の節約となる。
3. 用途
SEA-Arrow船型はLPG船に代表される中速船の造波抵抗を減少させ、推進性能を
高める新型船首形状である。この研究成果に基づいて、80,000m3型および 59,200
m3型の載貨容積の違う2種類のLPG船を設計した。
その結果、SEA-Arrow船型の優れた推進性能は、船主殿より高い評価を受け、す
でに 80,000m3型LPG船(1隻)と 59,200m3型LPG船(7隻)を受注している。
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