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市民参加の手法の例

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市民参加の手法の例
市民参加の手法の例
1.主な市民参加の手法
(1) 任意の参加方式
1) アンケート方式
【概 要】
アンケート調査は、各種行政計画の策定段階において最もよく用いられる手法である。
アンケート調査の対象は、各種行政計画の対象と概ね一致するが、例えば「有識者アンケ
ート」
「出身者アンケート」
「観光客アンケート」などの形で市外の人々の意見・意向等を
把握することもある。
調査方法は、
z
配票・回収とも郵送で行う場合
z
配票は郵送で行い回収は地域住民(町会長等)や行政職員等(職員・民生委員等)が行
う場合
z
配票・回収とも一定の場所(公民館・学校・役所・イベント会場等)で行う場合(①そ
の場で書いてもらい回収する場合と②後日持参してもらう場合がある)
z
配票は地域住民や行政職員が行う、もしくは一定の場所で行い、回収は郵送で行う場合
z
電話による場合
z
訪問による場合
z
インターネットや電子メールで回答してもらう場合
などがあるが、どのような内容を聞きたいのか、どのような対象とするのか、配票から回
収・集計・分析まで期間はどれくらいあるのかといったことを踏まえてアンケートの配
票・回収方法を決定する必要がある。
アンケート調査を行うに当たっては、対象者に対して少なくとも調査の目的、対象、期
間、配票・回収方法、問い合わせ先は明確に示しておく必要がある。
郵送によるアンケート調査など調査対象を無作為に抽出し調査を行う場合は、一般的に
選挙人名簿や住民基本台帳から抽出する。また、例えば実際の総人口における年齢構成割
合や地域別人口割合を調査対象の抽出に当たっても反映させたいときなどは、コンピュー
タシステムで抽出条件を設定すれば可能である。
【メリット】
全国的に見て多くの自治体で行われている方法である。また、調査の際に、アンケート
調査の目的(各種行政計画策定の目的等)を周知することなどにより、広報的な機能を持
たせることも可能である。
郵送による場合やインターネット・電子メールによる場合は、市民が自分の都合のよい
時間や場所で回答することができるため、回答者の負担感は軽減できる。また、配票は郵
送で行い回収は地域住民や行政職員が行う場合は、一般的に回収率が高い傾向にあり、ま
た返信郵送料が削減される。この他、配票・回収とも一定の場所で行う場合や電話、訪問
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による場合についても一般的に回収率は高くなる。
【留意事項・課題】
配票・回収とも郵送で行うアンケート調査では、一般的に他の方法に比べて回収率が低
くなる傾向にあることから、回収率を高めるために督促状(調査協力へのお礼も兼ねたも
の)を配布することがある。この場合は、督促状配布にかかる経費(葉書代、印刷費、宛
名シール代等)を確保しておく必要がある。
電話によるアンケート調査では、昼間留守にすることが多いサラリーマン世帯や就業・
就学している単身世帯、電話口に行くことが容易でない方や耳の遠い方などが調査対象と
して抽出された場合、そのような方が実際に回答してくれるか否かによって、回答者に偏
りが発生する可能性がある。また、顔が見えないため、電話によるセールスと間違われた
り疑われたりすることもあり、それを解消するための趣旨説明に時間を要すことも考えら
れる。電話によるアンケート調査では、質問者によって相手への説明力や話のニュアンス
が異なると、同一質問に対する結果に食い違いが発生することもある。このため、質問者
の研修等が必要なこともある。
訪問による調査は、用紙を持参し、かつ口頭でも説明するので、趣旨が伝わりやすく、
回収率も高い方法である。なお、調査員であることの証明を提示することが前提である。
しかし、訪問家庭によっては、調査とは関係のない話をしたがる場合や苦情を言って責め
立てる場合、茶菓を勧められる場合など様々な場面が想定されることから、それらへの対
処方法についてはあらかじめ統一しておく必要がある。また、行政職員が調査員として訪
問調査を行うことは日頃の行政業務を抱えながらでは難しい面もあり、実際には外部協力
者(コンサルタント・シンクタンク、アルバイト・パート等)が行う場合が多いが、その
際の経費についてあらかじめ確保しておく必要がある。
インターネットや電子メールで回答してもらうアンケート調査では、一般に回答者の属
性が自己申告であるため、対象者の属性を明確にしたい場合は不適当な方法であり、市民
や市民以外の人々から幅広く意見を聞きたい場合に用いる方法である。
【事 例】
総合振興計画をはじめ各種行政計画の策定過程で用いられている。
2) ヒアリング方式
【概 要】
団体・組織・グループや個人に対する聞き取り調査であり、アンケート調査と並んで各
種行政計画の策定過程によく用いられている手法である。聞き手としては、行政職員が担
う場合やシンクタンク・コンサルタント職員(外部協力者)が担う場合などがある。
【メリット】
聞き手と調査対象者が直接顔を合わせることから、相手に調査の趣旨を説明しやすく、
かつ相手の意見について聞き込むことが可能である。また、各種団体・組織・グループや
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市民と行政との交流を深めるきっかけづくりとして捉えることもできる。
【留意事項・課題】
ヒアリングでは、ヒアリング対象者の選定からはじまって、ヒアリングを行う場所の確
保、時間の調整、対象者の出欠確認などが必要となる。また、一度にヒアリングできる時
間・内容にも限りがあり、あらかじめヒアリング内容を十分検討しておく必要がある。
【事 例】
総合振興計画をはじめ各種行政計画の策定過程で用いられている。
3) モニター方式
【概 要】
公募した市民を「市政モニター」や「環境モニター」などという形で登録し、市政等に
関する意見を聴取したり関連会議への出席を求めたりするものであり、ある一定の期間、
ヒアリング対象となる市民・団体等の意見を複数回以上求めることができる。
【メリット】
行政としては、様々な立場の市民の意見を聴取することができ、行政では考えつかなか
った意見や把握しにくかった実態を知ることができる。また、市民の意見を十分に聞き込
んだり、議論することが可能であるため、より市民の立場に立った行政運営に寄与する。
市民としては、自分の意見を行政に直接述べることができることから、参加したという
充実感が残る。
【留意事項・課題】
モニターのマンネリ化を避けるため、モニターの選定方法について十分検討する必要が
ある。また、一般的に成人市民をモニターとして募集しているが、小・中学生や高校生、
大学生、市内事業所に勤務する市外居住者などをモニターとして活用するなど、幅広い層
の意見を聴取することも重要である。
【事 例】
総合振興計画をはじめ各種行政計画の策定過程で用いられている。
4) 意見・作文・イラスト・アイディア等の募集方式
【概 要】
テーマを決めて、市民から意見・作文・イラスト・アイディアなどを募集するものであ
る。募集方法は広報紙、チラシ、ポスター、ラジオ、テレビ、インターネットなどで広報
するほか、学校、事業所、各種団体等に呼びかける方法もある。
募集に際しては、応募作品をどのように選考し、選考作品をどのように活用していくの
か等を明らかにしておく必要がある。
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また、行政計画等については、案の段階でホームページに掲載し、意見を求めることが
一般化しつつある。
【メリット】
作文の場合は具体的な意見や考えを読みとることができる。イラストやアイディアの場
合は、印象深い優れたイラストや思いがけないアイディアを発掘することができる。特に
イラストの場合は、計画書や概要版・パンフレット等に作品を掲載することによって、計
画書等を市民が見る機会が増え、市政に関心を持たせることにも役立つ。
特に道や公共施設などの愛称名募集などの方式は、それらが広く市民に親しまれること
から、近年こうした方式を採用する事例が増えている。
また、各種行政計画で設置する策定委員会などの公募委員の選定方法として作文を募集
し、委員を選定している例もある。
【留意事項・課題】
一般的には選考作品に賞金や記念品を出すことが多いが、このような金品の取り扱いに
ついてはあらかじめ十分に検討しておく必要がある。その一方で、テーマによっては、応
募数を確保すること自体が困難なこともあることから、募集内容に応じて最も効果的な募
集方法を選択する必要がある。
作品の選考に当たっては、あらかじめ選考基準を明確にしておかないと、選考結果に苦
情が出される場合もある。また、選考から漏れた作品をどう取り扱うか(返却するのか、
何らかの方法で活用するのか等)ということについても検討しておく必要がある(市民が
一生懸命に書いた(描いた・考えた)作品を何とか活用していこうというスタンスも大切
である)
。
【事 例】
各種行政計画全般ではないが、作文やイラスト募集などは多くの自治体で取り入れられ
ている。また、計画策定ではないものの、新しい公共施設や特産品などの愛称募集などは
比較的よく行われている。
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5) シンポジウム・フォーラム方式
【概 要】
シンポジウム・フォーラムとも公開の場で意見を述べ議論する形式の討論会のことであ
る。シンポジウムとは一つのテーマについて何人かのパネリスト(講演者)が意見を述べ
議論する形式の討論会のことであり、フォーラムとは公開の討論会や座談会のことである
が、こうしたシンポジウムやフォーラムを、市民をシンポジストやパネリストとして行う
方式も増えている。また、シンポジウムやフォーラムを開催する場合、その企画から運営
までを市民の手に委ねて(実行委員会方式)行う方式も増えつつある。
【メリット】
多くの人の意見を聞くことができ、かつ議論に参加することができるため、同時に多く
の人々の意識を高め、共通認識を有することができる機会と捉えることができる。シンポ
ジウム・フォーラムを数回にわたり発展的に開催していくことで市民の意識啓発を継続
的・発展的に行うことができ、また計画趣旨等の宣伝効果を持たせることもできる。
【留意事項・課題】
開催場所の確保もさることながら、多くの市民の参加を期待するのであれば、開催日時
の設定、討議テーマの設定、パネリストの選定について十分検討する必要がある。
また、シンポジウム・フォーラム開催会場のロビーにパネル展示やビデオ映写を行うな
ど、会場を訪れる人々の関心を集め、かつ意識啓発につながるような仕掛けをしておくこ
とも重要である。
【事 例】
各種行政計画全般とはいえないが、意識啓発や宣伝効果を期待してシンポジウム・フォ
ーラムを開催することもある。
6) 講習会・研究会・勉強会方式
【概 要】
限られたテーマについて検討する場合に有効かつ必要な方式である。市民、行政、企業、
大学など異なる立場の者が課題を共有し、学習や議論を深めていく方法である。議論の結
果出される結論も重要であるが、そのプロセスにおいて一つのテーマについて議論を重ね
て試行錯誤しながら改善方策等を導き出そうとすることが重要である。
【メリット】
限られた人数で学習や議論を深め、意見をまとめていくことができる。互いの立場を認
めるプロセスを通じて、ネットワークや行政との信頼関係が醸成される。
【留意事項・課題】
人材育成のためのものなのか、研究成果を行政に反映させたいのか等の目的を明確にし、
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行政としてフォローをきめ細かく行っていくか、ある程度自主性に任せるかを見極める必
要がある。
【事 例】
市が主催する講習会や、行政職員のみもしくは市民のみの研究会・勉強会などがあり、
各種行政計画全般とはいえないが、開催されている事例はある。
7) サロン方式
【概 要】
サロンという言葉自体は大広間や文化的・社交的集まりという意味である。市民参加手
法として言う場合は、自由参加による自由討議の場という意味になろう。
ワークショップと同様、あるテーマについて任意の市民が参加し、自由な討議を行う会
合を重ね、多種多様な意見を効率的に集約する。サロンでは、自由討議を促すため出席者
の肩書きをはずすなどの工夫がなされる。
【メリット】
自由討議のため屈託のない議論を展開でき、合意形成までいたれば、出席者間の信頼感
が生まれる。また当初の目的終了後も地域の問題を話し合う場として存続させ、事業実施
段階における市民参加のきっかけづくりとして機能させることも可能である。
【留意事項・課題】
自由討議のため意見の食い違いや論議が散漫になる可能性もある。また、当初は実態に
則さない相当無理な議論になることもある。行政がそれに根気よくつきあって、市民との
間に信頼関係を築くことができるかが重要である。
【事 例】
サロンとして開催された事例はあまり聞かないが、ワークショップの一つの形態として
捉えることができることから、ワークショップにおいてサロン形式の運営がなされる場合
もある。
8) ワークショップ方式
【概 要】
ワークショップとは、地域の現状把握からはじまり地域の問題点や課題の整理・分析、
計画の方向性の提言、計画案・設計案づくりなどを行うのに適した参加の手法で、市民参
加の画期的な方法として注目されている。
アメリカで考案され、多様な住民がそれぞれの立場で意見を出し合う場合でも、時間を
無駄なく使って、平等かつ合理的に意見をまとめられる方法であるとされている。
ワークショップには、計画策定(ソフト)のためのワークショップと具体的な施設づく
り(公園・遊び場・広場、住宅団地などハード)のためのワークショップがあり、基本的
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には考え方も進め方も同様であり、将来像や方向性といった夢を語る部分から、具体的な
計画内容や設計に係る部分を提案してもらうこともある。
ワークショップでは、カードを使ったグループディスカッションや、実際に図面に絵を
描き込んでいく方法など、参加人数や目的に応じて様々な進め方があり、これらを組み合
わせて数回にわたって集まり、プランをまとめていく場合が多い。ただ聞いて意見を述べ
るだけの会議と違って、実際に参加者が手や身体や頭を使って作業を行うことで、誰もが
建設的な意見を出しやすいように工夫されている。楽しい雰囲気で建設的な意見を出して
もらうよう進めることがポイントである。
【メリット】
誰もが参加でき、かつ声の大きい人の意見ばかりが通ることがないため、参加者全員の
満足度が高い。行政と市民が同じ土俵で話し合うことができ、市民の信頼感を得やすい。
参加者からすれば、自分たちの意見やアイディアを計画や施設づくりに活かすことができ
るため、計画策定後もしくは施設整備後の運営を円滑に進めることが可能となる。
【留意事項・課題】
開催側には楽しく進行する工夫や、話し合いを仕掛けるテクニックなど、ある程度の力
量が求められるため、そのテクニックを習得した人材の確保・育成が必要である。また、
今までになじみがない方法だけに行政内部での理解と協力を求める必要がある。
ワークショップでは、計画策定におけるワークショップの場合であっても施設づくりに
おけるワークショップの場合であっても、他の市民参加の手法と同様に計画決定の権限は
与えられていないため、ワークショップ会議以外の会議(策定委員会や審議会など)とワ
ークショップとの関係やどこまでワークショップで議論・提案してもらうのか、またワー
クショップの成果を今後どのように検討しどのように生かしていくのかといった点をワ
ークショップ開催時に十分に参加者に説明し、理解してもらう必要がある。
【事 例】
最近多くの自治体でワークショップの手法を取り入れているが、ワークショップの解釈
や活用方法が十分認識されていない場合もあるようである。
9) オンブズパーソン方式(行政監視の市民参加)
【概 要】
オンブズマン・パーソン制度という場合と市民オンブズマン・パーソンという場合では
若干意味が異なる。オンブズマン・パーソン制度という場合は、オンブズマン・パーソン
が行政に対する苦情を受け付け、中立的立場に立ってその原因を究明し問題を解決してい
く制度である。
あくまでも中立の立場から問題を解決していく点に特徴があり、必要に応じて行政に改
善を求めることから、行政運営に対する市民監視の一つということができる。欧米では早
くから導入されているが、日本ではあまり一般的ではなく、一部の地方自治体で導入され
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ている程度である。
現在の地方自治法に規定はないため、地方公共団体の附属機関として位置付けられ、行
政によって任命される行政オンブズマン・パーソンとなっている。オンブズマン・パーソ
ンとしては弁護士等が選任されることが多い。
一方、市民オンブズマン・パーソンは、市民の自主的な監視活動を指す(川崎市のよう
に行政上の制度に市民オンブズマン・パーソンと称している場合もある)
。問題の発見を
自らが行い、特に支出面における監視に重点をおくという点でオンブズマン・パーソン制
度とは全く異なるものである。制度上定められておらず、直接行政に改善を求める手段を
具備してはいないが、それだけにかえって行政に対する活動は厳しいものがある。最近で
は全国的に広がりを見せて、互いの連携も活発になっているようである。このような動き
の背景には住民の意識の向上もさることながら、情報公開制度の普及が挙げられる。
※ オンブズパーソン
オンブズマンと同義語であり、一般的にはオンブズマンと表現されることが多いが、
「マン」が男性を表すことから、
「オンブズパーソン」を使用する例も増えている。
10) 関係団体との事前の協議
【概 要】
いわゆる「行政計画」ではなく、行政事業の準備や実施の際、最もよく用いられる手法
の一つで、各種関係団体との打ち合わせや会合などの形で実施される。関係団体の意向を
聞いたり、市の案を説明し、事前に意見調整するなど、団体との協力関係の維持や、団体
への協力を依頼する目的で開催されることが多い。
【メリット】
従来から用いられてきた手法で、比較的短時間で団体の意向を把握でき、意見調整がで
きる。
【留意事項・課題】
公平性から、団体の選定に配慮するとともに、互いに馴れ合いにならないよう、運営に
注意する必要がある。
団体を行政の補助的機関として捉えず、行政との協働関係にあるパートナーとして捉え
て協議することが肝要である。
団体と目的を共有しながら、相互理解のもと、対等の立場で団体の自主性を尊重し、団
体が自立化する方向で協議を進めることが必要である。また、従来行政が実施してきた事
業であっても、団体への事業を委託したり、実行委員会を設立するなど、団体の自立性を
高めるための協議も一つの方向である。
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(2) 法制度等による市民参加の方法
1) 公聴会・住民説明会
【概 要】
公聴会とは、行政が広く市民の意見を求め、それに市民が意見を述べるものである。公
聴会という場合には、一般に法律上開催を義務づけられた公式的な意見聴取の場を指すこ
とが多い。
一方、住民説明会は、行政がある事案について説明するものであり、その結果として意
見を聴取したり、議論したりすることは当然あり得るものである。住民説明会という場合
は、対象を全市民といったように広くとることも、地権者などの利害関係者や特定地域の
住民というように対象を狭くとることも可能である。
【メリット】
行政からすれば関係者に一堂に集まってもらい、説明ができ、かつ意見を聴取すること
ができる。参加者からすれば、説明を受けるもしくは意見を述べるだけでよいので気軽さ
を感じ負担にもならない。
【留意事項・課題】
公聴会及び住民説明会の開催に当たっては、場所の確保から会場の設営、資料作成、会
議録の作成などの作業に時間を要する。行政が説明し出席者はそれに対して意見を述べる
わけであるが、出席者の意見を計画策定に反映させるというより、広く意見を聞くという
性格が強く、一般的には議論の場としては弱い。また、行政としては無事に会議を終了さ
せようとする傾向もあることから、形式的な会議運営になりやすい。
市民にとっては、その場で説明を受け、意見を求められても即座に答えることはできな
いこともあることから、後になって役所に意見が寄せられ、その取り扱いをどのようにす
るかといった問題が出てくることもある。このため、何らかの形で意見を後日聴取するこ
とも検討するなど、
「行政が説明しっぱなし」
「市民は聞きっぱなし」と批判されることを
できるかぎり避けるよう配慮する必要がある。
【事 例】
公聴会・住民説明会ともに多くの自治体ですでに開催されている。法律で公聴会の開催
を定めているものとしては、都市計画法、国土利用計画法、森林法、自然環境保全法、漁
業法、土地収用法、鳥獣保護法などがある。
2) 審議会・委員会・懇話会
【概 要】
審議会・委員会は、複数の委員で構成される合議制の機関である。法律、条令、要綱を
根拠とするもののほか、それらに根拠をおかず任意で設置されるものもある。一般的に各
種行政計画の策定過程においては、法律や条例を根拠とするものや要綱・要領を作成しそ
れを根拠とするものが多い。一方、首長の私的諮問機関として設置される懇話会や懇談会
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もある。
審議会や諮問委員会の場合は、会議自体の決定権限は有しておらず、あくまでも提起事
案について意見を述べるものである。
これとは別に策定委員会といった場合は、一般的に計画策定を行うための委員会を指し、
① 行政職員のみで構成されるもの、② 学識経験者や有識者のみで構成されるもの、③ 一
般市民(市民代表も含む)のみで構成されるもの、④ ①∼③から構成されるもの、があ
る。会議の運営については、一般的には事務局が作成した計画原案等について意見を述べ
たり、もしくは策定委員会の下にワーキングチーム会議を設置し策定作業を行うが、審議
会・諮問委員会と同様に計画決定する権限は有していない。
審議会、諮問委員会、策定委員会など各種会議では、最近では学識経験者や有識者、各
種団体代表のほかに、市民代表として公募市民の枠を設けている場合が多い。
【メリット】
審議会・諮問委員会では、行政が一定の委員を選任し、委員の合議による答申を受ける
ことから、会議運営及び策定過程の民主制の確保、学識経験者等の参加による専門知識の
導入、関係者の利害調整などを図ることができる。行政職員のみで構成される策定委員会
の場合では、行政内部の意見調整を図ることができるほか、市民や各種団体の代表、学識
経験者等が加わる場合は、行政職員とこれらの人々との関わりを深めるきっかけとなる可
能性もある。
策定委員会の下にワーキングチーム会議を設置する場合は、計画を自分たちの手でつく
ったという充実感と自信を得ることができるとともに、計画策定後の事業実施においても
主体的に取り組むことが期待できる。
【留意事項・課題】
審議会・諮問委員会の委員が固定化するようなことがあると、
「同じ顔ぶれで出される
意見もいつも同じ」という感じになり、活発な議論を望むことは難しくなる。このような
ことから、委員の選考については十分に検討する必要があるとともに、例えば若手委員を
入れたり、公募市民を入れるなど、会議の活性化を図ることに留意する必要がある。
策定委員会やその下にワーキングチーム会議を設置する場合は、職員の手で計画をつく
るという認識を持たせる工夫が必要である。
懇話会や懇談会は、首長が私的に学識経験者などから意見を聞くというのが原点である
ので、必要以上に組織化して意見集約させるような運営だと、自治法上の附属機関との区
別が不明確となるので、注意が必要である。
【事 例】
各種行政計画の策定過程において、多くの自治体ですでに開催されている。
※ 参考文献:
「計画策定段階からの市民参加・参画推進の手引」
(埼玉県久喜市)
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2.市民参加のレベルと市民参加手法導入の方向性
市民参加のレベル
実
決
立
行
事業運営
への参加
定
案
決定過程
への参加
審議・討議
意見交換
意
熟
関
見
情報参加
知
心
事業運営への参加:施策の実施・運営主体としての参加
決定過程への参加:施策の決定過程、決定への参加
情報参加:情報を得て、意見を表明することによる参加
z
パートナーシップ型のまちづくりを進めるためには、決定過程への参加、事業運営への参
加レベルの市民参加を施策の導入や実施に位置づける仕組みづくりが必要となる。
z
市民参加のレベルアップは、情報参加 → 決定過程への参加 → 事業運営への参加へと、
取り組みやルールづくりを試行錯誤も繰り返しながら実施し、徐々に制度の充実を図って
いくものとなる。
参加の広さ
広報・広聴等
決定過程への参加
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参加の深さ
情報参加
Fly UP