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知的財産制度と競争政策の関係の在り方に関する調査研究報告書(平成

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知的財産制度と競争政策の関係の在り方に関する調査研究報告書(平成
平 成 26年 度 産 業 財 産 権 制 度 問 題 調 査 研 究
知的財産制度と競争政策の
関係の在り方に関する
調査研究報告書
平成27年3月
株式会社
三菱総合研究所
に 際 し て 、そ の 継 続 の 恐 れ の あ る 場 合 に は 基 本 的 に 差 止 請 求 が 認 め ら れ る 。し か
し 、 Shelfer Criteria (1895 年 の Shelfer 判 決 に よ る )に よ れ ば 、 法 益 の 侵 害 の
程 度 が 低 い と き 、法 益 侵 害 を 金 額 に 換 算 す る こ と が で き る と き 、法 益 侵 害 が 少 額
の 賠 償 に よ っ て 回 復 で き る と き 、ま た 、差 し 止 め が 被 告 に 対 し て 過 大 な 負 担 を 与
え る も の (Oppressive) で あ る 場 合 に は 賠 償 に よ っ て 差 止 請 求 に 代 え る こ と が で
き る と さ れ て い る 34。
上 記 の 基 準 に 基 づ き 、 Nokia v. IPCom 判 決 で は 、 FRAND 宣 言 時 の 差 止 請 求 を 原
則 と し て 認 め な い と い う 方 向 性 が 示 さ れ た 35。
ま た 、 ラ イ セ ン ス を 受 け る 意 思 に つ い て 、 Vringo v. ZTE で は 、 特 許 の 無 効 を
争っていることはライセンスを受ける意思がないことを必ずしも意味しないと
判 示 し た 36。
(5) 中国
中 国 で 初 め て の 包 括 的 競 争 法 で あ る 「 中 華 人 民 共 和 国 独 占 禁 止 法 」 37が 制 定 さ
れ た の は 2007 年 の こ と で あ り 、 そ れ 以 前 は 不 正 競 争 防 止 法 と 価 格 法 の 組 み 合 わ
せ で 対 応 し て い た 3 8 。 中 国 で は 、 独 占 禁 止 法 は 、 WTO 加 盟 に 随 伴 す る 市 場 開 放 の
中 で 、外 国 企 業 に よ る 技 術 優 位 等 濫 用 、市 場 の 支 配 に 対 す る 懸 念 が 一 つ の 原 動 力
と な っ て 推 進 さ れ た 。そ の た め 、一 般 的 に 知 的 財 産 権 に よ る 独 占 は 独 占 禁 止 法 の
適 用 除 外 に な る が 、独 占 禁 止 法 を 知 的 財 産 権 の 濫 用 の 事 例 に 適 用 す る と い う 、例
外 規 定 を 設 け て い る 39。 こ の 規 定 を 受 け て 、 制 定 直 後 よ り 長 ら く 知 的 財 産 権 分 野
に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン 及 び 規 定 の 起 草 が 行 わ れ て い た が 、2014 年 6 月 10 日 に 工
0
商 行 政 管 理 機 関 に よ る「 知 的 財 産 権 濫 用 で の 競 争 排 除・制 限 行 為 の 禁 止 規 定 」4(
关
于 知 识 产 权 领 域 反 垄 断 执 法 的 指 南 ) の 意 見 募 集 稿 が 公 表 さ れ た 41。 独 占 禁 止 法 制
定 後 は 、3 つ の 執 行 機 関( 国 務 院 、国 家 工 商 行 政 管 理 総 局 、商 務 部 独 占 禁 止 局 )、
http://www.eplaw.org/Downloads/Bell_Young_EPLAW_Congress_SEPs.pdf
http://www.bailii.org/ew/cases/EWCA/Civ/2012/567.html ( 資 料 編 125 頁 参 照 )
3 6 http://www.bailii.org/ew/cases/EWHC/Patents/2013/1591.html ( 資 料 編 125 頁 参 照 )
37 公 正 取 引 委 員 会 に よ る 日 本 語 訳
http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/c/china2.files/china -kariya
ku.pdf
34
35
38
http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/c/china2.files/chi na01.pdf
3 9 (一 財 ) 国 際 貿 易 投 資 研 究 所
「 平 成 25 年 度 各 国 の ラ イ セ ン ス 規 制 の 標 準 化 研 究 報 告 書 」、
p.106, http://www.iti.or.jp/reports/H25_02license.pdf
4 0 JETRO 北 京 事 務 所 知 的 財 産 権 部 編 仮 訳
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/pdf/opinion/20140611.pdf
41 国 際 貿 易 投 資 研 究 所
「 平 成 25 年 度 各 国 の ラ イ セ ン ス 規 制 の 標 準 化 研 究 報 告 書 」、2014.3、
http://www.iti.or.jp/reports/H25_02license.pdf
- 11 -
及 び 独 占 禁 止 委 員 会 が そ れ ぞ れ ガ イ ド ラ イ ン を 制 定 し て 運 用 を 行 っ て い る 42。
華 為 技 術 有 限 公 司 ( Huawei Technology) と 米 国 の InterDigital Technology
Corporation, Inc.( IDC、 以 下 「 IDC」 と い う ) 等 と の 間 の 標 準 必 須 特 許 を め ぐ
る 紛 争 事 件 が 大 き な 注 目 を 集 め た 。こ の 紛 争 事 件 は 、① 特 許 実 施 許 諾 及 び 適 正 な
ロ イ ヤ リ テ ィ の 設 定 に 係 る 訴 訟 、並 び に ② 市 場 支 配 的 地 位 の 濫 用 に 係 る 独 占 禁 止
法 違 反 訴 訟 と い う 2 つ の 訴 訟 に 分 け ら れ る 。い ず れ の 訴 訟 に つ い て も 、原 審 及 び
上 訴 審 に お い て 、華 為 技 術 有 限 公 司 の 勝 訴 、IDC の 敗 訴 と い う 判 決 が 下 さ れ た 4 3 。
さ ら に 、2015 年 2 月 10 日 に は 、 国 家 発 展 改 革 委 員 会 ( 発 改 委 ) が 米 半 導 体 大
手 の Qualcomm に 中 国 の 独 占 禁 止 法 違 反 に あ た る と し て 、60 億 8800 万 元( 約 1150
億 円 ) の 罰 金 支 払 い を 命 じ た 44。
3. 海外動向補足
米 国 、欧 州 、お よ び 、中 国 に お け る ヒ ア リ ン グ 調 査 を も と に 、各 国 に お け る 知
的 財 産 権 と 競 争 法 を め ぐ る 動 向 を 、特 許 を「 持 て る 者 」、
「 持 た ざ る 者 」と し て の
立 場 の 違 い 、そ し て 知 的 財 産 権 に 競 争 法 で 制 約 を 課 す こ と へ の 立 場 の 違 い か ら 整
理する。
知 的 財 産 を 巡 る 係 争 、 SEP を 巡 る 係 争 も 、そ の 背 景 に は 企 業 間 の 事 業 に つ い て
の 競 争 環 境 、緊 張 関 係 が 存 在 し て い る 。ま た 、各 国 に お け る 知 的 財 産 政 策 、競 争
政 策 も 産 業 政 策 と 完 全 に 独 立 し て い る も の で は な い 。知 的 財 産 権 や 競 争 法 を 巡 る
議論もそれらが表出しているものと見ることが出来る。
(1) 米国
米 国 企 業 に お い て は 、特 許 を「 持 て る 者 」と「 持 た ざ る 者 」の 立 場 が 明 確 に 分
か れ て い る 45。
「 持 て る 者 」 の 代 表 格 と し て は 、 モ ト ロ ー ラ や GE の よ う な 従 来 か ら 研 究 開 発
に 注 力 し て き た 企 業 が 挙 げ ら れ る 。ま た 、プ ロ パ テ ン ト 政 策 に 基 づ き 、米 国 司 法
省 ( DOJ) も 伝 統 的 に は 特 許 権 者 の 権 利 を 適 切 に 保 護 す る こ と を 重 視 し 、 独 禁 法
詳 細 は 資 料 編 128 頁 参 照 。
詳 細 は 資 料 編 135 頁 参 照 。
44 日 経 新 聞 「 中 国 「 法 治 」
、 米 ク ア ル コ ム に 罰 金 1150 億 円 」、 2015/2/11、
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO83060950Q5A210C1FFE000/
4 5 二 又 俊 文 、 土 井 良 治 「 知 財 と 標 準 の 交 錯 −ICT 分 野 か ら 始 ま っ た パ ラ ダ イ ム シ フ ト 」 知
財 管 理 2015-03
42
43
- 12 -
止めの延期を求めた。
争点:差し止めの延期は認められるか。
判 旨 : 通 常 で あ れ ば 差 し 止 め が 行 わ れ る が 、 ASSIA 社 が 自 ら 特 許 権 を 実 施 す る
者でなく、基本的にライセンシングによって収益を上げている企業であるため、
差 し 止 め の 延 期 を 認 め て も 、実 施 料 相 当 額 を 支 払 え ば 、回 復 不 能 な 損 害 は 生 じ な
い 。 こ の 判 断 に 際 し て は 、 BT 社 の 市 場 シ ェ ア か ら 考 え て 、 多 く の ユ ー ザ ー に 相
当 な 不 利 益 が 生 じ る こ と も 考 慮 さ れ た 1 1 8 。同 判 決 1 1 9 の 中 で は 、自 ら 実 施 し て い な
い 企 業 に 対 し て も 、ラ イ セ ン ス を 受 け る こ と を 拒 む な ど の 事 情 が あ れ ば 、差 止 請
求ができると付記されている。
2014 年 12 月 18 日 の 判 決 で は 、Birss 判 事 は 、790 特 許 に つ い て 、BT 社 は 設 備
の 変 更 後 も な お 特 許 を 侵 害 し て い る と の 判 決 を 出 し た た め 、今 後 の 動 向 が 注 目 さ
れるところである。
(6) 中国
( i) 最 近 の 動 向
独 占 禁 止 法 は 、 WTO 加 盟 に 随 伴 す る 市 場 開 放 の 中 で 、外 国 企 業 に よ る 技 術 優 位
等 濫 用 、市 場 の 支 配 に 対 す る 懸 念 が 一 つ の 原 動 力 と な っ て 推 進 さ れ た 。そ の た め 、
一 般 的 に 知 的 財 産 権 に よ る 独 占 は 独 占 禁 止 法 の 適 用 除 外 に な る が 、独 占 禁 止 法 を
知 的 財 産 権 の 濫 用 の 事 例 に 適 用 す る と い う 、例 外 規 定 を 設 け て い る 。こ の 規 定 を
受 け て 、制 定 直 後 よ り 長 ら く 知 的 財 産 権 分 野 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン 及 び 規 定 の 起
草 が 行 わ れ て い た が 、2014 年 6 月 10 日 に 工 商 行 政 管 理 機 関 に よ る「 知 的 財 産 権
濫 用 で の 競 争 排 除・制 限 行 為 の 禁 止 規 定 」 1 2 0( 关 于 知 识 产 权 领 域 反 垄 断 执 法 的 指
南 ) の 意 見 募 集 稿 が 公 表 さ れ た 121。
第 13 条 に は 、 標 準 の 制 定 と 実 施 に 関 す る 競 争 の 排 除 と 制 限 行 為 に 対 す る 規 定
118
https://www.carpmaels.com/resources/practice_notes/368 -will-the-public-suffer-lets-st
ay
1 1 9 http://www.bailii.org/ew/cases/EWCA/Civ/2014/1513.html
1 2 0 JETRO 北 京 事 務 所 知 的 財 産 権 部 編 ( 仮 訳 含 む )
『工商行政管理機関の知的財産権濫用
に よ る 競 争 排 除 ・ 制 限 行 為 の 禁 止 に 関 す る 規 定 ( 意 見 募 集 稿 )』 (2014
年 )http://www.jetro.go.jp/world/asia /cn/ip/law/pdf/opinion/20140611.pdf
1 2 1 一 般 財 団 法 人 国 際 貿 易 投 資 研 究 所『 平 成 25 年 度 各 国 の ラ イ セ ン ス 規 制 の 標 準 化 研 究 報
告 書 』 (2014 年 )http://www.iti.or.jp/reports/H25_02license.pdf
華 誠 律 師 事 務 所 中 国 知 的 財 産 権 最 新 ニ ュ ー ス 2014 年 7 月 7 日 号
http://www.jiii.or.jp/chizaiyorozuya/pdf/kawara/WB201406CY.pdf
- 128 -
が盛り込まれる可能性がある点が注目される。
第十三条
事 業 者 は 、知 的 財 産 権 行 使 の 過 程 に お い て 、標 準( 国 家 技 術 規 範 の
強 制 的 要 求 を 含 む 。 以 下 同 じ 。) の 制 定 と 実 施 を 利 用 し て 、 競 争 の 排 除 ・ 制 限 行
為を行ってはならない。
市 場 支 配 的 地 位 を 有 す る 事 業 者 は 、正 当 な 理 由 が な い 限 り 、標 準 の 制 定 と 実 施
の過程において、次に掲げる行為を行ってはならない。
(一)その特許が関係標準に取り入れられる可能性があることを知りながら、
意図的に標準の策定組織にその権利情報を開示しない又はその権利を放棄する
と 明 確 に し た が 、そ の 特 許 が あ る 強 制 標 準 と な っ た 後 に 、当 該 標 準 の 実 施 者 に そ
の特許権を主張すること
( 二 )そ の 特 許 が 標 準 の 必 須 特 許 と な っ た 後 に 、公 平 、合 理 的 か つ 非 差 別 的 原
則 に 背 き 、他 の 事 業 者 が 合 理 的 な 条 件 で 当 該 特 許 を 実 施 す る こ と を 拒 絶 し 又 は 不
公平な条件で特許の実施許諾を行い又はその特許の実施許諾の過程において抱
き合わせ販売行為を実施すること
本規定で標準の必須特許とは、当該標準を実施する上で不可欠な特許をいう。
( ii) 関 連 法 令
中 国 で 初 め て 包 括 的 競 争 法 が 制 定 さ れ た の は 2007 年 の こ と で あ り 、 そ れ 以 前
は不正競争防止法と価格法の組み合わせで対応していた。独占禁止法制定後は、
下記の 3 つの執行機関及び独占禁止委員会がそれぞれガイドラインを制定して
運用を行っている。
① 「 中 華 人 民 共 和 国 独 占 禁 止 法 」 122 ( 参 考 : 公 正 取 引 委 員 会 ウ ェ ブ ペ ー ジ 123 )
中 国 初 の 包 括 的 競 争 法 で あ り 、 起 草 作 業 は 1994 年 に 始 ま っ た 1 2 4 。 2007 年 8 月
30 日 公 布 , 2008 年 8 月 1 日 施 行 。 全 8 章 57 条 か ら 成 る 。
 第 1 章:総則
訳文が公正取引委員会のサイトで見られる。
http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/c/china2.files/china -kariya
ku.pdf
1 2 3 http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/c/china2.html
1 2 4 http://www.koutori-kyokai.or.jp/research/201402gaikoku.pdf
122
- 129 -
 第 2 章:独占的協定
 第 3 章:市場支配的地位の濫用
 第 4 章:企業結合
 第 5 章:行政権力の濫用による競争の排除及び制限
 第 6 章:独占的行為と疑われる行為に対する調査
 第 7 章:法的責任
 第 8 章:附則
② 「不正競争防止法」
1993 年 成 立 、 独 占 禁 止 法 以 前 の 中 国 に お い て 重 要 で あ っ た 競 争 法 。 独 禁 法 と
の 矛 盾 あ る い は 重 複 の 場 合 、新 法 が 旧 法 に 優 越 す る と い う 原 則 の た め 、独 禁 法 が
優 先 さ れ る 125。
規制対象となっている不正競争行為として以下の行為が挙げられている。
 盗用行為(第 5 条)
 収受賄賂行為(第 8 条)
 虚偽宣伝行為(第 9 条)
 商 業 秘 密 侵 害 行 為 ( 第 10 条 )
 不 当 な 景 品 付 き 販 売 行 為 ( 第 13 条 )
 信 用 侵 害 行 為 ( 第 14 条 )
 公共企業などによる独占地位の濫用(第 6 条)
 政府による競争制限行為(第 7 条)
 不 当 廉 売 行 為 ( 第 11 条 )
 抱 き 合 わ せ 販 売 ( 第 12 条 )
 及 び 入 札 談 合 ( 第 15 条 )
③ 「価格法」
1997 年 成 立 、1998 年 施 行 の 、
「市場の価格行為の規範化と商品供給価格の安定
化 を 図 り 、資 源 配 分 に お け る 価 格 メ カ ニ ズ ム を 確 立 さ せ 、消 費 者 及 び 事 業 者 の 権
利 と 利 益 を 保 護 す る こ と を 目 的 と し 1 2 6 」た 法 律 で あ る が 、こ の 中 で 価 格 カ ル テ ル
56 頁
http://www.jftc.go.jp/kokusai /worldcom/kakkoku/abc/allabc/c/china2.files/china01.pdf
1 2 6 57 頁
http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/c/china2.files/china01.pdf
125
- 130 -
も 規 制 さ れ て い る 。独 禁 法 と の 矛 盾 あ る い は 重 複 の 場 合 、新 法 が 旧 法 に 優 越 す る
と い う 原 則 の た め 、 独 禁 法 が 優 先 さ れ る 127。
 談 合 し 、市 場 価 格 を 操 縦 し て 他 の 事 業 者 ま た は 消 費 者 の 適 法 な 権 利 と 利 益
を侵害する行為、
 競 争 相 手 を 排 除 し 又 は 市 場 を 独 占 す る た め に 原 価 割 れ 価 格 で 販 売 し 、正 常
な生産及び経営秩序を乱し、国家利益その他事業者に損害を与える行為、
 値上げ情報の捏造により商品価格を値上げさせる行為
 消費者又はほかの事業者に対する虚偽又は誤解させるような価格表示行
為
 同一商品又はサ-ビスを提供する際に同等の取引条件を持つ他の事業者
に対して差別的な価格設定を行う行為
 等 級 を 引 き 上 げ 又 は 引 き 下 げ る こ と に よ り 、商 品 の 購 入 、販 売 又 は サ ー ビ
スの提供の際に価格を引き上げ又は引き下げる行為
 法律・法規に違反して独占利益を獲得する行為
④ 関連規定等
以 下 に 独 占 禁 止 法 の 運 用 に 関 す る 関 連 規 定 を ま と め た 128。
関連規定
概要
事業者集中の申告基準に関する規定
国 務 院 に よ り 2008 年 8 月 3 日 公 布 、 施 行 。 全 5
(国务院关于经营者集中申报标准的
条 か ら な り 、特 定 の 要 件 を 満 た す 事 業 者 に 対 し て 、
规 定 )( 国 務 院 令 第 529 号 )
国務院独占禁止法執行機構に対し事業者集中の申
告義務を定めた。
関 連 市 場 の 画 定 に 関 す る 指 針( 国 务 院
国 務 院 独 占 禁 止 委 員 会 に よ り 、 2009 年 5 月 24 日
反垄断委员会关于相关市场界定的指
に 公 布 、 施 行 。 全 11 条 で 、「 独 占 禁 止 法 」 の 中 の
南)
競争行為を行う関連市場を画定するために制定さ
れた法令である。
56 頁
http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/c/china2.files/china01.pdf
1 2 8 「 中 国 ビ ジ ネ ス Q&A」 JC ECONOMIC JOURNAL 2009 年 8 月 号
http://jc-web.or.jp/JCObj/Cnt/%E7%8B%AC%E5%8D%A0%E7%A6%81%E6%AD%A2%E
6%B3%95%E3%81%AE%E9%81%8B%E7%94%A8%E7%8A%B6%E6%B3%81.pdf
127
- 131 -
工商行政管理機関行政処罰事件違法
国 家 工 商 行 政 管 理 総 局 に よ り 、2008 年 11 月 21 日
所 得 認 定 規 則( 工 商 行 政 管 理 机 关 行 政
に 公 布 さ れ 、2009 年 1 月 1 日 に 施 行 。全 11 条 で 、
处 罚 案 件 违 法 所 得 认 定 办 法 ) (国 家 工
違法な商品生産、販売及びサービス提供等による
商 行 政 管 理 総 局 令 第 37 号 )
違法所得の確定方法を示している。
「企業結合独占禁止審査事務ガイド
2009 年 1 月 1 日 に 商 務 部 独 占 禁 止 局 が 公 布 し た 、
ライン」
事業者結合届出に係わる申請条件、届出書類の内
容に関する規定である。
「 企 業 結 合 届 出 に 関 す る 指 導 意 見 」 2009 年 1 月 5 日 に 商 務 部 独 占 禁 止 局 が 公 布 し た 、
(关于经营者集中申报的指导意见)
事前相談の申請方法、届出人、届出文書の提出、
文書・資料が不十分な場合の補充など届出手続に
関 す る 詳 細 な 規 定 で あ る 。 全 12 条 。
「企業結合届出文書資料に関する指
2009 年 1 月 5 日 に 商 務 部 独 占 禁 止 局 が 公 布 、施 行 。
導 意 見 1 2 9 」( 关 于 经 营 者 集 中 申 报 文 件
全 19 条 で 、企 業 結 合 届 出 に 際 し 提 出 す べ き 文 書 資
资料的指导意见)
料の内容についての規定であり、届出用の書式も
付属している。
「工商行政管理機関の行政権限の濫
国 家 工 商 行 政 管 理 総 局 が 2009 年 5 月 26 日 に 公 布 、
用による競争の排除又は制限行為の
同 年 7 月 1 日 施 行 。全 11 条 で 、行 政 権 限 の 濫 用 に
制 止 手 続 に 関 す る 規 定 」( 工 商 行 政 管
よる競争の排除、制限行為を制止するために制定
理 机 关 制 止 滥 用 行 政 权 力 排 除 、限 制 竞
された。
争 行 为 程 序 规 定 ) (国 家 工 商 行 政 管 理
総 局 令 第 41 号 )
「 工 商 行 政 管 理 機 関 の 独 占 合 意 、市 場
国 家 工 商 行 政 管 理 総 局 が 2009 年 5 月 26 日 に 公 布 、
支配的地位濫用事件の取締手続に関
同 年 7 月 1 日 施 行 。全 32 条 で 、国 家 工 商 管 理 局 が
す る 規 定 」 (工 商 行 政 管 理 机 关 查 处 垄
自ら取り締まる事件と省級工商管理部門に取締り
断 协 议 、滥 用 市 场 支 配 地 位 案 件 程 序 规
権限を授権できる事件について規定した。本規定
定 )(国 家 工 商 行 政 管 理 総 局 令 第 42 号 )
に よ れ ば 、い か な る 単 位( 組 織 )あ る い は 個 人 も 、
独占の疑いのある行為を工商管理部門に通報でき
るが、具体的な通報方法、工商行政管理部門によ
る調査の手続、調査措置、処罰決定手続等につい
ても規定がある。また、事業者が独占合意を自ら
申告した場合には、当該事業者に対する処罰を軽
減又は免除することができると定められた。
法律名日本語訳はいくつかある。
http://www.koutori-kyokai.or.jp/research/201202gaikoku.pdf
129
- 132 -
「 企 業 結 合 届 出 弁 法 」「 同 審 査 弁 法 」
2010 年 1 月 1 日 施 行 。 草 案 で は 「 支 配 」 の 定 義
規定が存在したが、届出便法では結局削除された
130
「企業結合における資産又は業務の
。
2010 年 7 月 5 日 施 行 。
分離の実施に関する暫定規定」
「法に従った届出のなされていない
2012 年 2 月 1 日 施 行 。
企業結合の調査処理に関する暫定弁
法」
「企業結合の競争影響の評価に関す
2011 年 8 月 29 日 公 布 、9 月 5 日 施 行 。概 括 的 な 考
る暫定規定」
慮要因リストがあり、セーフハーバー基準は未設
定である。
( iii) 知 的 財 産 の 競 争 法 上 の 取 扱 い
中 国 独 占 禁 止 法 第 55 条 は 、
「事業者が知的財産権に関する法令の規定に基づき
知 的 財 産 権 を 行 使 す る 行 為 に は 適 用 さ れ な い が 、保 有 者 が 、そ の 権 限 範 囲 を 超 え
て 競 争 を 制 限 し ま た は 排 除 す る 場 合 に は 、独 占 禁 止 法 の 適 用 は 免 か れ な い 」と 定
め て い る 131。
① 差止請求権行使の原則
2000 年 に 改 正 さ れ た 特 許 法 第 61 条 で は じ め て 差 止 請 求 権 が 認 め ら れ た 。
中 国 特 許 法 61 条 特 許 権 者 又 は 利 害 関 係 者 は 、他 人 が 自 分 の 特 許 権 の 侵 害 行 為
を 実 施 し て い る ,或 い は 実 施 し よ う と し て い る こ と を 証 明 す る 証 拠 を 有 し 、直 ち
に 制 止 し な け れ ば 合 法 的 権 益 に 補 填 し よ う の な い 損 害 を 受 け る 場 合 は 、そ の 訴 訟
の 提 起 に 先 立 っ て ,人 民 法 院 に 関 連 行 為 の 停 止 命 令 の 発 行 を 申 し 立 て る こ と が で
き る 。( 以 下 略 ) 1 3 2
中 国 特 許 法 第 61 条 に お い て は , 現 実 の 実 施 及 び 回 復 し 難 い 損 害 の 2 要 件 を 要
求しているが、
( 1)侵 害 の 蓋 然 性 が 高 い こ と( 2)回 復 し 難 い 損 害( 3)申 立 人 の
http://www.koutori-kyokai.or.jp/research/201202gaikoku.pdf
53 頁
http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/c/china2.files/china01.pdf
130
131
132
http://www.globalipdb.jpo.go.jp/jpowp/wp -content/uploads/2014/01/6926a157d7cced33c
04024f5ca45b743.pdf
- 133 -
提 供 し た 担 保( 4)公 共 の 利 益 、を 総 合 し て 差 し 止 め を 認 め る か 決 定 さ れ て い る 1 3 3 。
ま た 、 中 国 は 、 特 許 権 の 侵 害 に 関 し て 、 Dual Track System を 採 用 し て お り 、
上 記 の 司 法 的 解 決 以 外 に 行 政 的 解 決 を 求 め る こ と も で き る 。こ の 場 合 、各 地 方( 省 、
自治区、直轄市)の知識産権局に対して侵害行為の認定を請求することとなる。
知識産権局は侵害行為が存在すると判断した場合侵害行為の差し止めを命令で
き る が 、損 害 賠 償 に 関 す る 命 令 は 発 行 で き な い 。た だ し 調 停 は 行 う こ と が で き る
134
。
② 差止制限の可能性(その要件)
最 高 人 民 法 院 2014 年 7 月 8 日 回 答 書 簡 に よ れ ば 、
「特許権者が標準の策定に参
画 し 、あ る い は 特 許 権 者 の 同 意 を 得 て 、特 許 を 国 、業 界 、又 は 地 方 の 標 準 に 組 み
入 れ た と き は 、特 許 権 者 は 他 人 に 、標 準 を 実 施 す る の と 同 時 に 当 該 特 許 を 実 施 す
る こ と を 許 諾 し た と み な し 、 他 人 の 実 施 行 為 は 特 許 法 第 11 条 に 規 定 す る 特 許 権
侵 害 行 為 に は 該 当 し な い 。」 と し て お り 、 差 止 請 求 権 は 認 め ら れ な い 1 3 5 。
ま た 、 特 許 法 61 条 は 、 差 止 請 求 の 際 に 、 担 保 の 提 供 を 求 め て お り 、 提 供 し な
い場合には差止請求は認められない。
③ 差止が認められない場合の金銭的補償
損 害 賠 償 額 は 以 下 の 4 つ の 方 法 に よ り 決 定 さ れ る 。権 利 者 の 実 際 の 損 失 に 従 っ
た 賠 償 、侵 害 者 の 違 法 行 為 に よ る 所 得 に 従 っ た 賠 償( こ れ ら 2 つ の 計 算 方 法 は 自
由 に 選 択 可 )、当 該 知 的 財 産 権 の ラ イ セ ン ス 費 の 倍 数( 1~ 3 倍 )を 参 照 し て 合 理
的 に 確 定 し た 賠 償 ( 上 記 2 つ の 方 法 を 採 る こ と が 難 し い 場 合 )、 法 院 が 侵 害 行 為
の 情 状 に 応 じ て 50 万 元 以 下( 一 般 的 に は 5,000 元 以 上 ,30 万 元 以 下 )で 決 定 し
た 賠 償 136。
④ 標準規格必須特許の権利行使についての特有の取扱い
標 準 必 須 特 許 に 関 し て は 、実 施 許 諾 を し た も の と み な さ れ 、ラ イ セ ン ス 契 約 な
し で の 利 用 で あ っ て も 非 侵 害 と な る が 、通 常 よ り 低 い 金 額 で の 実 施 料 を 要 求 す る
河野英仁、張嵩「中国特許民事訴訟概説-中国で特許は守れるか?-」月刊パテント
Vol.61 No.6( 2008 年 ) http://knpt.com/contents/thesis/00019/ronbun19.pdf
1 3 4 前 掲 注 133
1 3 5 前 掲 注 133
1 3 6 前 掲 注 133
133
- 134 -
こ と が で き る 137。
( iv) 関 連 判 例
① Huawei Technology v. InterDigital
華 為 技 術 有 限 公 司 ( Huawei Technology) と 米 国 の InterDigital Technology
Corporation, Inc.( IDC、以 下 IDC と 略 す )等 と の 間 の 標 準 必 須 特 許 を め ぐ る 紛
争 事 件 が 大 き な 注 目 を 集 め た 。こ の 紛 争 事 件 は 、正 確 に は 、① 特 許 実 施 許 諾 及 び
適 正 な ロ イ ヤ リ テ ィ の 設 定 に 係 る 訴 訟 、並 び に ② 市 場 支 配 的 地 位 の 濫 用 に 係 る 独
占 禁 止 法 違 反 訴 訟 と い う 2 つ の 訴 訟 に 分 け ら れ る 。い ず れ の 訴 訟 に つ い て も 、原
審 及 び 上 訴 審 に お い て 、 華 為 技 術 有 限 公 司 の 勝 訴 、 InterDigital Technology
Corporation, Inc.等 の 敗 訴 と い う 判 決 が 下 さ れ た 。
中 国 の 独 占 禁 止 法 2 条 は 、「 中 華 人 民 共 和 国 国 内 の 経 済 活 動 に お け る 独 占 行 為
に 対 し 、本 法 を 適 用 す る 。中 華 人 民 共 和 国 国 外 の 独 占 行 為 が 、国 内 の 市 場 競 争 に
対 す る 排 除 、 制 限 の 影 響 が 生 じ る 場 合 は 、 本 法 を 適 用 す る 。」 と 規 定 し て い る 。
本 事 件 に お い て は 、華 為 公 司 は 中 国 国 内 で 生 産 し て い る も の の 、米 国 の IDC 公 司
の 行 為 は 華 為 公 司 の 中 国 国 内 で の 生 産 、輸 出 に 直 接 影 響 を 与 え る こ と が で き 、中
国 国 内 市 場 に 対 す る 排 除 、制 限 の 影 響 が 生 じ る こ と か ら 、人 民 法 院 は 、中 国 の 独
占禁止法の適用を認めたものである。

IDC 公 司 は 標 準 必 須 特 許 権 者 と し て 、 FRAND の 原 則 に 従 い 華 為 公 司 に 対
し 特 許 ラ イ セ ン ス を し な け れ ば な ら な い が 、一 括 払 い の ロ イ ヤ リ テ ィ を
基 準 と す る 場 合 も 、ラ ン ニ ン グ・ロ イ ヤ リ テ ィ を 基 準 と す る 場 合 も 、IDC
公 司 が 華 為 公 司 に 対 し 提 示 し た 特 許 ロ イ ヤ リ テ ィ は 、 Apple や Samsung
に 対 す る も の と 比 べ て か な り 高 い も の で あ っ た 。 IDC 公 司 は 、 華 為 技 術
有 限 公 司 に 対 し 高 過 ぎ る 価 格 の 支 払 い を 要 求 し た だ け で な く 、華 為 公 司
及 び 関 連 会 社 所 有 の 特 許 を IDC 公 司 に 無 償 で ラ イ セ ン ス す る よ う 要 求 し
た 。 こ れ ら の こ と か ら 、 IDC 公 司 の 高 過 ぎ る 価 格 及 び 差 別 的 価 格 の 行 為
が存在するといえる。

IDC 公 司 は 実 質 的 な 生 産 を 行 っ て お ら ず 、 特 許 ラ イ セ ン ス を も っ て そ の
経 営 モ デ ル と し て い る こ と か ら 、華 為 公 司 は 、標 準 必 須 特 許 の ク ロ ス ラ
一 般 財 団 法 人 知 的 財 産 研 究 所 『 標 準 規 格 必 須 特 許 の 権 利 行 使 に 関 す る 調 査 研 究 (II)報 告
書 』 (2013 年 )http://www.iip.or.jp/summary/pdf/detail12j/24_01_full.pdf
137
- 135 -
イ セ ン ス を 通 じ て IDC 公 司 を 規 制 す る こ と は で き な い 。双 方 当 事 者 が 交
渉 し て い る 過 程 に お い て 、 IDC 公 司 が 、 米 国 の 裁 判 所 及 び 国 際 貿 易 委 員
会 に 華 為 公 司 に 対 す る 提 訴 を 行 っ た 。華 為 公 司 は IDC 公 司 と の 交 渉 中 一
貫 し て 善 意 の 状 態 で あ っ た 。 IDC 公 司 が 米 国 で 華 為 公 司 に 対 す る 提 訴 を
行 っ た 目 的 は 、華 為 公 司 に 高 過 ぎ る 特 許 ラ イ セ ン ス 条 件 を 受 け 入 れ さ せ
る た め の も の で あ っ た 。 IDC 公 司 は 必 須 特 許 ラ イ セ ン ス 市 場 に お け る 支
配的地位を利用して、必須特許と非必須特許の抱き合わせをすること
は、市場支配的地位濫用行為に該当する。

無線通信市場分野において、必須特許権者が各国家・地域の必須特許
( 2G、3G 及 び 4G を 含 む )を ま と め て 全 世 界 的 に ラ イ セ ン ス す る こ と は 、
よ く 行 わ れ て い る 取 引 モ デ ル で あ る と い え る 。 華 為 公 司 は 、 IDC 公 司 が
全 世 界 に お け る 2G、3G 及 び 4G の 標 準 必 須 特 許 を も っ て 抱 き 合 わ せ を 行
っ て い る こ と は 、市 場 支 配 的 地 位 濫 用 行 為 に 該 当 す る と 主 張 す る が 、証
拠を欠いている。

以 上 の 理 由 に よ り 、 広 東 省 高 級 人 民 法 院 は 、 IDC 公 司 が 華 為 公 司 に 対 し
高すぎる価格及び抱き合わせの独占による民事権利侵害行為を直ちに
停止せよとの判決を下した。

ま た 、損 害 賠 償 に つ い て は 、華 為 公 司 か ら も IDC 公 司 か ら も 証 拠 が 提 出
さ れ て い な い も の の 、華 為 公 司 に よ る 中 国 及 び 米 国 の 弁 護 士 へ の 委 託 費
用 、 公 証 費 用 、 華 為 公 司 の 競 争 利 益 の 損 失 、 IDC 公 司 に よ る 独 占 の 民 事
権 利 侵 害 行 為 の 性 質 、主 観 的 過 失 の 程 度 、華 為 公 司 に 与 え た 損 害 の 重 大
性 等 を 考 慮 し 、IDC 公 司 は 華 為 公 司 に 対 し そ の 経 済 損 失 2000 万 元 を 賠 償
するよう命じる判決を下した。
② 国 家 発 展 改 革 委 員 会 に よ る 米 国 IDC に 対 す る 独 占 禁 止 法 違 反 調 査 事 件
国 家 発 展 改 革 委 員 会 の 発 表 1 3 8 に よ る と 、2013 年 6 月 か ら 国 家 発 展 改 革 委 員 会 は
米 国 IDC 公 司( 以 下「 IDC 公 司 」と い う )に 対 す る 独 占 禁 止 法 違 反 調 査 を ス タ ー
ト し 、独 占 禁 止 法 違 反 の 証 拠 を 収 集 し た 。IDC 公 司 の 責 任 者 は 、2013 年 7 月 、2014
年 1 月 の 2 回 に わ た り 、国 家 発 展 改 革 委 員 会 に 出 頭 し 、調 査 の 質 問 を 受 け た 。調
査 に よ る と 、IDC 公 司 に は 無 線 通 信 標 準 必 須 特 許 市 場 に お け る 支 配 的 地 位 を 濫 用
中 華 人 民 共 和 国 国 家 発 展 ・ 改 革 委 員 会 「 国 家 发 展 改 革 委 对 美 国 IDC 公 司 涉 嫌 价 格 垄 断
案 中 止 调 查 」 (2014 年 )
http://www.sdpc.gov.cn/xwzx/xwfb/201405/t20140522_612465.html
138
- 136 -
し 、中 国 企 業 に 対 し て 不 公 平 で 高 額 な ロ イ ヤ リ テ ィ の 設 定 を し 、中 国 企 業 に 対 し
て 当 該 中 国 企 業 の 有 す る 特 許 を IDC 公 司 に 無 償 ラ イ セ ン ス す る こ と を 要 求 し 、標
準必須特許以外の特許との抱き合わせ等の疑いがあるとされた。
IDC 公 司 は 2014 年 3 月 、 国 家 発 展 改 革 委 員 会 に 対 し て 、 独 占 禁 止 法 違 反 調 査
の 中 止 を 申 請 し た 。そ の 際 、IDC 公 司 は 、具 体 的 措 置 を 国 家 発 展 改 革 委 員 会 に 提
出 し た 。中 国 企 業 に 対 し て 差 別 的 で 高 額 な ロ イ ヤ リ テ ィ を 要 求 し な い こ と 、標 準
必 須 特 許 以 外 の 特 許 を 抱 き 合 わ せ ラ イ セ ン ス し な い こ と 、中 国 企 業 に 対 し て 当 該
中 国 企 業 の 有 す る 特 許 の 無 償 ラ イ セ ン ス を 要 求 し な い こ と 、訴 訟 の 形 で 中 国 企 業
に不合理なライセンス条件を強要しないことを承諾した。
こ れ ら の 具 体 的 措 置 に よ り 独 占 禁 止 法 違 反 の 疑 い が 晴 れ た と 判 断 し 、国 家 発 展
改 革 委 員 会 は 、 2014 年 5 月 22 日 、 独 占 禁 止 法 45 条 の 規 定 に 基 づ き 、 独 占 禁 止
法違反調査の中止を決定した。
③ General Motors v. Cherry Automobile
通 用 大 宇 汽 车 和 技 术 公 司 (以 下 GM)と 安 徽 芜 湖 奇 瑞 汽 车 有 限 公 司 ( 以 下 CA) と
い う 二 つ の 自 動 車 メ ー カ ー 間 で の 争 い 。知 的 財 産 権 侵 害 と 、不 正 競 争 防 止 法 違 反
が同時に争われた事例である。
2004 年 12 月 16 日 、GM は CA を 不 正 競 争 防 止 法 違 反 で 上 海 市 第 二 中 級 人 民 裁 判
院 訴 訟 を 提 起 し 、さ ら に 同 日 GM は CA の 意 匠 登 録 の 無 効 を 知 識 産 権 局 に 申 し 立 て
た。
GM は 、 CA の QQ( 自 動 車 の 商 品 名 ) が 自 社 製 品 に 酷 似 し て い る こ と 、 自 社 の 営
業 秘 密 を 入 手 し た CA が 模 倣 に 利 用 し た こ と 、CA の 本 件 に 関 す る 意 匠 登 録 は 、本
来 GM が 知 的 財 産 権 を 有 す る 意 匠 に つ い て で あ り 、 無 効 で あ る と 主 張 し た 1 3 9 。
2005 年 11 月 18 日 、通 用 大 宇 会 社 、通 用 自 動 車 会 社 及 び 奇 瑞 会 社 三 社 は 共 同
声 明 を 発 表 し 、 友 好 的 な 話 し 合 い を 通 し て 和 解 の 合 意 を 達 成 し た と 宣 言 し た 140。
④ 国 家 発 展 改 革 委 員 会 に よ る Qualcomm に 対 す る 独 占 禁 止 法 違 反
市 場 に お け る 支 配 的 地 位 の 濫 用 に よ り 競 争 を 排 除 し 、制 限 し た 独 占 行 為 に つ い
て 法 に 従 い 処 理 を 行 い 、 Qualcomm 社 に 対 し て 関 連 違 法 行 為 の 停 止 を 命 じ 、 2013
本件判例についての記述は中国のニュースサイト、人民網による。
http://www.people.com.cn/GB/news/37454/37462/3072 278.html
1 4 0 JETRO 北 京 セ ン タ ー 知 的 財 産 権 部『 中 国 独 占 禁 止 法 の 企 業 経 営 に 与 え る 知 財 活 動 ・ 予
測 と 運 用 策 』 (2009 年 ) http://www.jetro-pkip.org/upload_file/2009061974995081.pdf
139
- 137 -
年 度 の 中 国 市 場 に お け る 売 上 高 の 8%に 相 当 す る 計 60.88 億 元 (約 1,200 億 円 )の
過料に処した。
2013 年 11 月 、 国 家 発 展 改 革 委 員 会 は 、 通 報 に 基 づ き Qualcomm に 対 す る 独 占
禁 止 調 査 を 開 始 し た 。調 査 の 過 程 に お い て 、国 家 発 展 改 革 委 員 会 は 、数 十 社 の 国
内外携帯電話メーカー及びベースバンドチップメーカーに対して丹念な調査を
行 い 、 Qualcomm が 価 格 独 占 等 の 行 為 を 実 施 し た 関 連 証 拠 を 取 得 し 、 Qualcomm の
陳 述 及 び 弁 明 意 見 を 十 分 に 聴 取 し 、 か つ Qualcomm の 関 連 行 為 が 中 国 の 「 独 占 禁
止 法 」に 禁 止 さ れ る 市 場 支 配 的 地 位 の 濫 用 行 為 を 構 成 す る こ と に つ い て 検 討 、論
証を行った。
不 公 平 に 高 額 な 特 許 ラ イ セ ン ス 料 、非 標 準 必 須 特 許 の ラ イ セ ン ス の 抱 き 合 わ せ
販 売 、ベ ー ス バ ン ド チ ッ プ の 販 売 に 対 し て 不 争 義 務 を 課 し て い る こ と は 市 場 競 争
を 排 除 し 、又 は 制 限 し 、技 術 革 新 及 び 発 展 を 妨 害 及 び 抑 制 し 、消 費 者 の 利 益 を 損
ね る も の で あ り 、独 占 禁 止 法 の 市 場 に お け る 支 配 的 地 位 を 有 す る 事 業 者 が 不 公 平
な 高 価 格 で 商 品 を 販 売 し 、正 当 な 理 由 な く 商 品 を 抱 き 合 わ せ 販 売 し 、及 び 取 引 時
に不合理な取引条件を付加することを禁止する旨の規定に違反するとした。
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