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社会の問題解決に 行動を起こせる 人材育成を

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社会の問題解決に 行動を起こせる 人材育成を
「オーバー・ビュー」は、東北公益文科大学のマインドシンボルである「東北から俯瞰せよ。
」をイメージした言葉です。
黒田学長×工藤副学長 対談
社会の問題解決に
行動を起こせる
人材育成をめざして
創立 10 周年記念事業「東北復権」
「東北復権」特別講演会を
開催しています
東北公益文科大学
ACTIVE NEWS
三浦友理恵さん(3年)、インカレ出場決定
トライアスロン部の3年三浦友理恵さんが、7 月 4 日に宮城県で行われた、
第 16 回みやぎ国際トライアスロン仙台ベイ七ヶ浜大会に出場し、学生部門女子で見事 3 位に入賞。
9 月に香川県観音寺市で行われるインカレ(日本学生トライアスロン選手権)の出場権を獲得しました。
No.23
2010.AUG
TOPICS
01
黒田学長 工藤副 学 長 対 談
本学は今年創立 10 周年を迎えました。10 周年を迎えるにあたり、本学が今後どのような教育を行っていくか、また世界にどのような人材を輩出していくべきか、
公益大の未来について、黒田昌裕学長と、6 月に新たに副学長に就任した工藤教和副学長に対談していただきました。
創立 10 周年
特別対談
Masahiro Kuroda
Norikazu Kudo
社会の問題解決に行動を起こせる人材育成をめざして。
大学教育にもイノベーションが求められる時代
いこうという動きが強くなりました。戦後は戦後で、第二次大戦の
工藤)本学は今年創立 10 周年を迎えますが、世界は現在非常に大
い危機感があり、ある意味で収斂する軸があったように思います。
きな変動の時代を迎えています。まず現在の世界、あるいは日本の
いま黒田先生が話されたように、20 世紀から 21 世紀にかけて、
状況を私達はどのようにとらえたらいいでしょうか。
IT が発展し、本当に情報があっという間に行き来し、地球の裏側
反省を踏まえて、一定の安定や調和をとっていかなければという強
の人と瞬時に情報をやりとりできるようになりました。しかし、そ
黒田)いまほど私たちをとりまく環境が、めまぐるしく変わってい
の中で個人個人が考え、お互いに議論しながらまとめるというよう
る時代は、人類史上なかったように思います。
なこと、ディスカッションや face to face の話し合いが非常に難し
ちょうど今大河ドラマ「龍馬伝」が放映されていますが、日本が
くなっているように感じます。
明治維新の頃に迎えた開国のあの時の変化というのも、現在と違っ
た意味でのグローバリズムのきっかけが日本にいろんな影響を与え
黒田)確かにそういう要素が強くなってきていて、それを仮にグロー
たと思います。21 世紀に入り、グローバル化の中身がインフォメー
バル化と呼んだとしたら、そのグローバル化の中で、恐らく 21 世
ションテクノロジーやナノテクなどさまざまな新しい科学技術の発
紀は、一方では、地球規模でみると人口爆発が起こる時代になるの
達によって、今までと全く違った構造に変わってきています。特に
ではないかと考えています。今まで取り残されていた途上国が、あ
大きく違うのは、例えばITによって地球の裏側の情報をたちどこ
る意味で資源大国に変わったり、情報のキーを握るような国になっ
ろに得ることができる、本来であればそこに行かなければ入手でき
ていき急速に発展する。そうした中で、国連の予測にもあるとおり、
なかった情報が、居ながらにしてインターネットなどによって得る
現在の 64 億という人口が 2050 年には 92 億になるというような人
ことができる、そういう情報の同期化が瞬時に起こる時代になって
口爆発が起こってきます。
きています。その結果、情報が共有されることで、お互いの価値観
他方、日本を含めた先進国と呼ばれる国では、高齢化が進み人口
に調和がうまれるような気がしていたのですが、決してそうではな
はどんどん減少していく、中進国は人口も増えて所得も上がってい
く、現実には宗教観の違いや民族の考え方の違いがかえって鮮明に
く、そして、極貧国では人口爆発が起こり、ものすごく生活は苦し
出てきて、価値観の多様化が起こってしまいました。それが、いろ
くなる。国によって所得の格差がとてつもなく大きくなる世界で、
んな意味で不安定さや争いをもたらす大きな要因になっている、そ
日本というあまり資源もない国がどうやって生きていくかは、大き
れが現代、21 世紀の強烈な印象です。
な課題です。
工藤)明治維新の時期、世界でも 19 世紀の後半というのは、列強
工藤)国々の利害が錯綜する中で問題をどのように解決していくか、
が非常に強くなっていった時期で、その中で後発国がどう追いつい
その中で日本の立ち位置をどこに置いていくのか、何か一つの基準
ていくかという時代だったと思います。とにかく日本は強くなって
だけで物事を考えることが非常に難しくなっていると思います。
いかなければならず、日本の一つのアイデンティティを創り上げて
2
no.
1
黒田)明治維新の頃からそうだったかもしれませんが、20 世紀の
来型の大学では、社会のニーズに応えられない、ということに社会
日本には欧米という一つの近代国家のお手本があり、そのお手本に
そのものが気づいてきている気がします。
追従していれば、そこそこうまくいく、そういう時代でした。それ
に対して、これからは、世界が一斉に競争し一斉に混沌としたカオ
工藤)ニーズの変化をしっかりととらえる力が必要だと思いますね。
スになるようなそういう世界の中で、日本自身がもっと新しいもの
ただし、ニーズが変わったからといって、それに追随していくだけ
を求めなければいけないがそこにはお手本がない、そういう時代に
では大学の意味がない。ニーズをきちんととらえ、ニーズに対して
なってきているのではないかと思います。
大学としてきちんと発言し、こういうことが大切だと言えることが
重要だと思います。
工藤)情報のグローバル化の中で大学教育も非常にグローバル化し
例えば、ある問題に対してすぐに解決策を提案するのでは何の意
ています。こういう混沌とした時代の中で日本の大学はどういう役
味もない。問題解決できるような構造(制度)変革をあわせて示し、
割を果たしていくべきなのだろうか、その辺について、今日の大学
持続可能な方向性をもった解決策を提案する必要があります。そう
論といったら大げさかもしれないですが、どのようにお考えでしょ
いう役割が大学には求められていると思います。
うか。
黒田)最近は、科学者にも、むしろ社会が科学に対して(科学は広
黒田)僕はたまたま大学にいた期間が長かったのですが、役人だっ
い意味での自然科学だけではなく社会科学も含むのですが)何を期
た時代も 3 年ほどありました。また同じ大学でも中央の大学も地方
待しているかということをとらえたうえで、期待に対応してその問
の大学も経験しています。それらの経験からも、これからのものす
題を解決していくという、そのインセンティブが強く働くように
ごく激動する世界に対抗していくためには、大学教育を超えた教育
なってきたように思います。特に政府がつける予算としての資金配
システムをどうやって従来型と違った形、新しいものにしていくか
分(Funding)だと、税金で賄う研究になりますから、国民そのも
というイノベーションが求められていると思います。それはたぶん
のが納得しないと予算をつけられないという時代になってきてい
行政(役人の世界)にも求められているし、社会構造そのものの中
る。一方でまた、人々が科学に対して持っている期待が複雑になっ
でもいろんな構造疲労を起こしている部分をシステムとして直さな
てきているので、だんだん一つの科学だけでは解決できなくなって
ければならない、そういう時代にきていると感じています。
きているということも生まれてきている。従って、自然科学と社会
科学も融合しなければいけないし、自然科学の中でも電子とナノと
工藤)そういう意味では、制度疲労が起きていることは確かですし、
バイオがある意味融合して、その結果が例えば医療の問題を解決し
またこれが国際的な大学間の競争状態の中で明らかになってきてい
たり生命の問題を解決したり環境の問題を解決したり、という学の
るのも事実です。ただ、大学はいろいろ改革しなければいけないと
融合がすごく重要になってきている気がします。
いう議論もありますが、同時に高等教育の基本というものをきちん
と押さえないといけないのではないかなと思います。
工藤)科学は、もともとは課題をどう解決するか、あるいは疑問へ
アシュビーの『科学革命と大学』の中に、“大学というのは社会
の挑戦ということでできたのに、それがどんどん細分化されすぎて
の欲するものを与えるのではなく必要とするものを与える”という
しまった。さまざまな課題が出ているとすると、その課題に対して
文言が出てきますが、これは非常に難しい問題です。というのは、
バラバラになっていた科学分野を融合しながらどう解決策を出して
欲するものと必要とするものは一致することも多いが一致しないこ
いくか、あるいは問題がどこにあるかということを多方面からしっ
ともあるわけです。そのときに大学が社会の状況をみて、そこで何
かりとえぐりだして、それに対して解答を出していくことが大切で
が必要かということを大学自身が咀嚼し、そして社会に提供し説得
す。それができるのは大学の研究あるいは教育なんだろうと思いま
していくという役割が大学には求められてくると思います。現在の
す。
世の中のように、混沌とした社会の中では大学自体も変わらなけれ
ばならないし、また社会に対して積極的に発言をして、社会の信任
黒田)一頃、日本は文部科学省が、アメリカなど諸外国の真似をし
を得ていかなければならない、そういう非常に難しい時期にきてい
て、COE(Center Of Excellence)というような形の拠点形成をし
るのではないかと思います。
ました。それはある程度成功して、その COE をもっとグローバル
拠点同士の
ネットワーク化が
非常に重要
な COE にしようと“グローバル COE”という制度をつくったわけ
ですが、恐らくこれからは単なる一つ一つの拠点がパラパラとある
のではなく、拠点同士がネットワーキングによって結びついて、新
しい発見、新しい学問を生み出していくようなそういう時代になっ
てきており、Network Of Excellence という言い方ができるように
黒田)ある種好奇心を満た
なってくると思います。そういうことを政策的に大学がお互いに
す た め の 研 究 だ け 続 け て、
やっていくということが非常に重要になってきているのではないか
結果として、その成果が社
と思います。
会をリードしたり、社会に
還元され役に立つという従
工藤)これは、社会全体、世界全体の傾向であると思いますが、や
3
TOPICS
01
黒田学長 工藤副 学 長 対 談
はりネットワーク化しないと何をするうえでも難しい。企業も同じ
工藤)国立大学ではあるかもしれな
だと思いますが、大学はまさにそれをやっていかなければならない
いですが、私立大学ではまずないか
のではないでしょうか。
もしれないですね。
黒田)日本は明治の頃から国立や公立の大学を中心とした予算配分
黒田)またもう一つの良さは、一学
をし、そこへ人材を吸収するようなシステムをずっとつくってきた、
年全員が住めるくらいのドミトリー
それらをそろそろ改める時期にきているのではないかと思います。 (学生研修寮)があって、そういう
その中で私学が果たすべき役割は国公立大学とは全然違ったもので
ものをうまく活用しながら、教員と
あるべきで、今までややもすると二番煎じのようなものしかできて
学生がうまく意思疎通ができる環境
こなかったのは残念でなりません。これからその辺の社会システム
をもっているということも非常に恵
から国全体の教育のあり方を考えて直していかないと、さっき話に
まれていると思います。これからの
出たネットワークをつくることはかなり難しいと思います。
大学というのは、中央であれ地方で
あれ、人的にも情報的にもどんどん
工藤)その点では、中教審の大学分科会が今年6月に第四次報告を
交流していかなければならない、地
出していて、その中で、わざわざ国立、公立、私立とに分けて大学
方にあることをハンディキャップに
の役割を定義づけしようとしているのですが、それは何か違うので
感じなくていい時代になってきてい
はないかと思います。
ると思います。むしろ、中央にあっ
て一学年一学部 1000 人以上の大き
黒田)縦割りになってしまいますね。
な大学で自分を磨くより、地方の小
さなユニークな大学で自分の生き様
工藤)先ほどおっしゃったように、それぞれの大学がそれぞれの特
を磨けたら、それはその人にとって磨き方として効率的だし、その
徴や、特徴を生かしたものをネットワーク化すれば、日本の高等教
個性そのものがユニークに芽生えるようなそういう時代になってき
育が全体としてすごい力を出せるという発想が今後重要だというこ
ていると感じています。そういうことが本学の最大の強みなので、
とを私立大学の立場で先日意見させていただきました。それは今後
その強みを生かすようなシステムをどうつくっていくかを、我々は
審議に反映されていくと思いますが、国立、公立、私立の枠組みに
本気になって考えていかなければいけないと思います。
こだわることこそが、まさに制度疲労そのものだと思います。
工藤)まさにそのとおりだと思います。私はまだ慶應に在籍してい
黒田)今おっしゃった、国立、私立というカテゴリーに加えて、中
ますが、慶應の SFC(湘南藤沢キャンパス)ができた当初も、最
央と地方のネットワークが今後重要になってくると思います。
初は遠い遠いという話が多かった、しかしながら、むしろ、遠いと
いうその立地をマイナスにとらえるのではなくて、その強みを生か
強みを生かすシステムをつくり
公益学を確立していく
そうじゃないかという議論にだんだん変わってきました。
(SFC は)
工藤)そういう中で、地方の東北公益文科大学はどんな役割を果た
れて、いま未来創造塾というものをやっています。ハードの整備は
していくべきなのか、何を強みとしていくべきだとお考えでしょう
なかなか追いつかないですが、バーチャルではそういうのをつくっ
か?
て、ハウス制をやっています。教員も学生も一緒になっていろんな
人数も割と少なくコンパクトなので、それを生かして例えば一年生
は全員教員と一緒に住むことを経験するなどということも視野に入
ことをじっくり考えていく、これから先、まさにこの混沌とした時
黒田)本学はご存知のとおり、10 年前
代で一人ひとりが生きていかなくてはいけないわけですから、その
にこの地域の人たちに嘱望され公設民営
力を大学の中でつけていこうということだと思います。公益大のこ
というかたちで設立されました。当時で
の施設と環境は、本当にそのようなユニークな試みができ得る大学
200 億円以上のお金を使ってこの環境を
だと思います。
整備して、いま 10 年が経とうとしてい
ますが、ある意味ではものすごく贅沢な
黒田)本学は、日本で唯一公益という名前を冠した大学なので、公
大学だと思います。定員が一学年 240 人
益という名前を冠した大学で学生に何を教えて、どういう資質を
に対して教員が専任で 43 ~ 44 名います
持った学生を外に出すかということを、本気でシステム化し発信し
から、教員一人当たりの学生数は一学年
ていかないとなかなかユニークさは出てこないと思います。
5 ~ 6 人で、教員:学生という面で考え
た場合に、このような恵まれた環境にあ
工藤)そうした場合、これから大学全体で議論していかなければい
る大学はそう多くないと思います。
けない問題ですけれども、どういうシステム化をしていくべきだと
お考えですか?
4
no.
黒田)この大学にきて、公益とは、公
工藤)最後に、この先の 10 年公益大
益学とは何かを考え続けてきたので
はどんな人材をつくっていくべきだ
すが、幸か不幸か最近は公益という
とお考えでしょうか?
2
言葉が社会的にも認知されるように
なってきました。新聞でも公益とい
黒田)いろいろな大学とのネットワー
う言葉がしょっちゅう出てきますし、
クを構築して、それぞれの大学のも
そういう風が吹いてきていることは
つ強みを活かして、多角的な教育シ
我々の大学にとって追い風だと思い
ステムをつくることが今後、非常に
ます。
重要で、そのシステムを通じて、社
ただ、公益がなぜいま、世の中で言
会の問題解決に行動を起こせる人材
われているかと言えば、逆に現実の社
をつくることができればと思ってい
会で公益が実現されていない、非常に
ます。おそらくその教育システムは、
ぎすぎすした競争とか争いが起きて
日本だけでなく世界を視野に入れて考
きていることが最大の要因だと思っ
えなければなりません。これから発展するであろう極東アジアの
ています。
「基本的人権が保障されて、
国々、もちろん先進のヨーロッパや欧米諸国とも連携をとりながら、
その基本的人権が濫用されないよう
オープンで、グローバルな人材を養成していかなければなりません。
なそういう市民社会」ができるとした
ら、それは一つの公益社会のあり方だ
工藤)いま世界は、ある意味 19 世紀の国民的な枠組みを超えて、
と改めていま感じます。
地域地域の一つの連合の経済に変わってきています。日本では、新
そういう社会の構造をつくるに際
聞をみてもいまだに国民経済という概念が非常に強いですが、実際
して、いまの近代国家ではそれをつくるのは市民そのものですから、
の経済は国境を越えて動いています。人ももっと動かなければなら
そういう公益社会を実現できるような自意識を持った市民をつくっ
ないし、人の視野もそこに向けていなければいけない。例えばこの
ていくことが 21 世紀の新しいデモクラシーのあり方で、そういう
地域であれば、日本海を越せば経済発展著しい国々がある。とすれ
仕組みをどうやったらデザインできるかを考えるのが公益学だろう
ばそことの関係をどういうふうにつけていくかが課題となります。
と思っています。
またそことの関係を考えるには、地理的には離れた国々との関係も
しっかりつくっておかなければならない。その両者をあわせながら
工藤)同感です。公益文科大学という名前がついていますが、実は
全体を見ることができる人間をつくっていくことが今後大事になっ
公益というものを言わなくてもすむような社会でなければ本来はい
てくると思います。
けないだろうと思います。いま社会がいろんな問題を抱えている中
では、やはり、市民自身が自分たちでどう問題を解決するのかとい
黒田)日本全体が、政治家のリーダーシップも含めて、そういう方
うことを考えて市民自身がまず主体となって動き、必要なら官にも
向のビジョンをつくり、何かそのビジョンに向けてリソースの選択
働きかけるという新しい組み合わせをつくらなければいけない時代
と集中をやっていくようなそういう流れをつくっていかなければな
になってきていると思います。その一人ひとりになる人たちを私た
らないと思います。
ちはどう育成していくかが大事ですよね。
工藤)まさにビジョンをしっかりさせて、ビジョンをどう達成する
黒田)そのときに、公益学という一つの学の理念(ディシプリン)は、
か計画におとしこんで実施していく、そしてその時には資源配分を
まさに今おっしゃったことだろうと思います。いろいろな学問それ
どうしていくかが問題となります。その資源配分にあたって、それ
ぞれにディシプリンを持っているわけだから、そのディシプリンを
を全体から見てしっかりデザインできる人、そこで発生する社会的
足場にいろんなデザインの仕方を提供すると、そこで議論が生まれ、
なコストにも目配りしその解決策を提案し自ら行動できる人、この
学の融合が成り立っていくのが、いまある公益学の姿ではないかと
ような人々の育成に力を注ぐことが大切だと思います。問題を大き
思っています。
な視野からとらえながら、その具体的な解決策を提案し、そのため
に行動する力を養うことが、この大学のますます重要な使命になっ
工藤)問題には、いろいろなアプローチがあるわけで、そのアプロー
てきます。恵まれた環境を活かしながら、小さくとも力のある「社
チから何かを考えるときの公準となるのが公益ということだと思い
会が必要とするもの」を発信できればすばらしいですね。本日は貴
ます。公準としての公益にいろんな人たちがアプローチして一つの
重なお時間をありがとうございました。
解決策をつくっていくのが大切なのかなという気がします。
黒田)まさにそういう発想で自分自身を磨いていく、市民自身が市
民社会を市民の力でつくることが理想的です。
5
TOPICS
02
創立 1 0 周年記念 事 業 「 東 北 復 権 」 企 画
東北公益文科大学創立 10 周年記念事業「東北復権」企画
「東北復権」特別講演会を開催しています。
本学では、創立 10 周年記念事業の一環として、全国より
の2つの観点から探る、鼎談「東北復権」を展開しています。
早いテンポで進む高齢化や人口減少、長引く不況による地域
その鼎談のゲストとして招いた識者の方々から幅広くお話を
経済の停滞など、東北を取り巻く課題について「グローバル
いただいている「東北復権」特別講演会。昨年 7 月から今年
時代の地域経済戦略」「安心・安全の公益実現の社会づくり」
6 月までに開催された内容を簡単にご紹介します。
次回は 9/28(火)の開催予定です。みなさんぜひお越しください。
日 開催
17
7月
2009.
「 世 界の 公 益 と し て の 健 康問題を考える」
■
中谷 比呂樹
氏(WHO(世界保健機関)本部事務局長補)
会場
公益ホール(酒田市)
中谷氏は、WHO で 2 番目に大きなプログラムである、エイズ・結核・マラリア・熱帯病部門を担当。疾病
制圧のための政策・指針作成、加盟国への技術支援、良質な医薬品確保のための基準作りなど WHO の
機能について解説したほか、国際保健の現状について 5 つの課題を挙げ詳しく説明。最後に公益と世界の
健康について、
「公益とは単純に言えばみんなの役に立つこと」として、
「日本でも世界でも互いが支えあう
社会になっている現代では、感染症を世界にばらまかないような健康な社会をつくることが国際的な公益に
つながる」と述べ、公益を一緒に考え行動に移し地域社会から発信を続けることが大事と結びました。
10
日 開催
23
月
2009.
「 東 北地 域 の 経 済 活 性 化 に向けた取り組みと今後の対応」
■
数井 寛
氏(前東北経済産業局長)
会場
公益ホール(酒田市)
会場
公益ホール(酒田市)
東北経済の構造的な特徴や現状について、さまざまな統計資料を提示して紹介。第一次産業の比率が高いこ
と、産学連携における先駆的取り組みが行われていること、農水産業や観光や映画のコンテンツ産業など隠
れた地域資源が豊富にあることを強みとして挙げ、産業集積をより一層強固なものにすることや農産品の高付
加価値化を進めることが今後の課題と語りました。また、中小企業に国が提供しているさまざまな施策を説明。
質問に答える形で、地域活性化には、地域独自で他にはない強みを持つこと、高齢化社会への対応や環境問題、
食の分野などお金を払ってでもやりたい、あるいはやらざるを得ないニーズへの参入が重要だと述べました。
11
日 開催
13
月
2009.
「 グ ロー バ ル 経 済 下 の 地 方企業の課題」
■
竹中 平蔵
氏(慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所所長)
世界経済はグローバリゼーションと、それを支える技術革新が急激に進み、日本の雇用が外国に取って代
わられるような時代になっていることを説明。そういう状況の中で日本が元気になるためには、納税者背番
号制を整備して所得税をきちんと徴収しその財源で法人税を引き下げること、ハブ空港の整備、農業の強
化が重要だと述べました。加えて、地方が育んできた文化遺産・観光を戦略立ててどんどん前面に出してい
くべきと提言。助けるための政策「policy to help」ではなく、解決するための政策「policy to solve」が重
要で、それを見極めるべく国民一人ひとりが賢くならなければならないとまとめました。
6
日 開催
27
2月
2010.
「 教 育 が 開 く 日 本 の 未 来 」 ■
安西 祐一郎
氏(前慶應義塾塾長)
会場
河北新報社ホール(仙台市)
今、子どもが置かれている状況に触れたあとで、安西先生が考える幸福について説明。自分の能力を見つけ、
それを活かして社会に貢献し、それで喜びを得、かつ収入が得られればそれが一つの幸福の人生ではない
かと述べました。さらに、日本の初等教育環境の手厚さをアジアにおいては特異とし、現在は政治経済が不
透明ではあるが、今後のアジア、世界を支えるのは日本の若者だとしました。その上で、日本の未来が若者
にかかっているということは、すなわち今の大人にかかっているということ、これから、アジアで、世界でリー
ダーシップを取れる人材を地域から育成していくべきと結びました。
日 開催
29
3月
2010.
「 CO 2 2 5 % 削 減 は 可 能 か 」
■
茅 陽一
会場
氏(東京大学名誉教授)
公益ホール(酒田市)
日本の民主党政権が国連総会で発表した、
「温室効果ガス 1990 年比 25%削減」の持つ意味と実現可能性
を軸に講演。
「温暖化問題は不確定性があること」と、
「それに対して温暖化を抑えることの努力の大変さ」、
そのバランスを取った答えを見つけることで温暖化問題に対処すべきとしました。対応策としては、森林の吸
収や外国との排出権取引など京都議定書レベルの対応に加え、太陽光発電などによる発電面での削減や原
子力の活用が鍵になってくると説明。政府・企業と一般市民が協力して努力し、日本全体で削減目標を果た
していくことが大切だとしました。
日 開催
10
5月
2010.
「 私 た ち の 国 づ く り へ ・ 雷龍の国ブータンに学ぶ」
■
西水 美恵子
氏(前世界銀行副総裁)
会場
シベールアリーナ(山形市)
発展途上国の貧困の実態を何年も見続けて、発展途上国に希望が持てない状態になってしまった時に出会っ
たブータンと、その国を率いていた雷龍王4世と呼ばれるブータン国王の信念やエピソードを紹介。国家安泰
の根源としてブータンでは、国民一人ひとりの幸福を追求する政治が実行されているとし、
「指導者に頼る国
づくりはもろい、国づくりは国民一人ひとりの仕事なのだ」との貴重な教えを受けたと語りました。まさに国
づくりの要は、誰にでもあるリーダーシップ精神の開花に尽きるとし、その上で、自分は何をすべきかではなく、
すべきことをどうとらえればいいかを問うことが重要だとまとめました。
6月
3日 開催
2010.
「 社 会 的 共 通 資 本 と 学 校 教育」
■
宇沢 弘文
氏(東京大学名誉教授)
会場
公益ホール(酒田市)
アメリカの哲学者ジョン=デューイが著書で語った学校教育の3つの原則に触れ、福沢諭吉の考え方や実践
してきたことを思想的な観点から整理したものといっても過言ではないと解説。それが日本でどのような経緯
を経て現在に至るかを述べたうえで、
「教育の原点は、医聖ヒポクラテスの『人生は短い、その短い人間の
命を救う医の道は永遠の生命を持っている』という言葉に凝縮される」と言及。教育とはこの言葉のとおり、
師から学んだことを忠実に実行し、弟子をとり、それを弟子に伝え残すことであるとし、これからの教育は
このヒポクラテスの教えを実行に移すことが重要であるとまとめました。
7
TOPICS
03
Koeki Univ.
公益大アクティブニ ュ ー ス
ACTIVE NEWS
創立 10 周年の記念すべき年度も早いもので5ヶ月が経過しました。今年度前半の公益大のニュースをまとめてお伝えします。
4月3日
(土)
第 10回入学式
平成 22 年 4 月 3 日(土)、本学酒田キャンパスの公益ホールを会
場に、平成 22 年度東北公益文科大学・大学院入学式が執り行
われました。今年度の新入生は、学部・大学院併せて総勢 216
名。式典では、吉村美栄子山形県知事から祝辞を頂いた他、新
入生を代表して、公益学部の髙橋美咲さんと大学院の髙山奈穂
子さんが、これからの学生生活への期待や今後の研究への意気
込みを述べました。会場は、新入生や新入生の新たな門出を祝
うために訪れた保護者の方で溢れ、緊張した面持ちやうれしさ
いっぱいの笑顔など、さまざまな様子が見られました。
4月16日
(金)
鶴岡中央高校協定調印式
平成 22 年 4 月 16 日(金)、山形県立鶴岡中央高等学校と東北
公益文科大学との教育研究交流協定に関する調印式が行われま
した。この協定は、相互の教育研究交流を通じ、生徒・学生の
学習到達点の高度化及び教育職員の教育力の向上を図るととも
に、相互理解、友好関係構築の推進を主な目的としています。
今後は、研究支援やリメディアル教育の部分などにおいて、相互
的な取り組みを実施していきます。
5月26日
(水)
東北林業大学協定調印式
平成 22 年 5 月 26 日(水)、中国黒龍江省にある東北林業大学と本
学との基本協定が調印されました。東北林業大学は、林業学を特色
として、農・理・工・経・管理・文・法等の学部を擁する総合大学で、
国家「211 プロジェクト」で 21 世紀を代表する 100 の大学として指定
された重点大学です。「公益人材」の育成を進めている東北林業大
学は、本学との共通点も多いことから黒田学長が訪中し連携合意に
至りました。両者にとって海外の大学との基本協定締結は初であり、
今後の取り組みが非常に楽しみです。今後の主な連携内容としては、
東北林業大学での中国短期留学の実施や、東北林業大学の講師を
招聘した中国語サマースクール(集中講座)の実施を予定しています。
8
4月
5月
●入学式
●鶴岡中央高校協定調印式
6月
●東北林業大学協定調印式
●野球部南東北リーグ一部昇格
5月
・
29日(土)
30日(日)
7月
●工藤副学長就任
(新体制スタート)
●鶴岡中央高等学校キャリア教育講演会
野球部南東北リーグ一部昇格
今年度、硬式野球部が、春季リーグ戦 2 部リーグにて優勝を
果たし、5 月 29 日・30 日に行われた 1 部リーグ 6 位山形大学
工学部との入れ替え戦にも勝利し、1 部リーグ昇格が決定しま
した。1 部リーグへの昇格は、平成 15 年に連盟に加入して以
来、公益大史上初の快挙です。専用のグラウンドがなく河川敷
のグラウンドで練習を行うなど、決して恵まれた環境とは言え
ない中で、学生同士が協力し、工夫して歩んできた末に掴んだ
今回の一部リーグ昇格。今後は一部リーグ定着を目標に活動
を進めていきます。
6月1日
工藤副学長就任(新体制スタート)
(火)
平成 22 年 6 月 1 日(火)、伊藤眞知子副学長に代わり、前慶應
義塾常任理事の工藤教和が新しく副学長に就任しました。任期
は 2 年間です。なお、黒田昌裕学長が再任(任期 2 年)、表實
副学長が再任(任期 2 年)、渋川智明教授が研究科長に新任し
ました。また、表實副学長は学部長との兼任となります。今後は、
この新体制で、学生を力強くバックアップしていきます。
6月23日
(水)
鶴岡中央高校キャリア教育講演会
平成 22 年 6 月 23 日(水)、鶴岡中央高校にて普通科 1、2 年生全
員を対象に國眼眞理子教授がキャリア教育講演を行いました。1
年生には「『働くこと』と『学ぶこと』」、2 年生には「自立した社会
人職業人になるには」というテーマで学年ごとにそれぞれ講演。キャ
リアとは何か、どのように進路を選択していけばよいかなど普段は
聞くことの出来ない話に、高校生は真剣に耳を傾けていました。
4.8. サークル勧誘
5.20. 酒田まつり
6.4. ニュージーランド短期留学報告会
7.25. オープンキャンパス
9
T
E
R
U
I
M
A
G
O
H
I
S
A
研究室
訪問
01
Visit to Laboratory
照 井 孫 久 准教授の 研究室
外部からはなかなかわかりにくい大学の研究をわかりやすく紹介する研究室訪問。
今回は、社会福祉コースの照井先生の研究内容を紹介します。
研究のテーマは大きく分けて2つあります。
2つめはソーシャルワークの側面からの「実践
その1つは、ケアワークに関連して「エビデン
面での評価」です。福祉サービスの評価は、さま
スに基づく認知症ケアの数量的な評価」という問
ざまな機関で行われ手法もさまざまあるのです
題です。ケアに満足しているかどうかは、一般的
が、それら各種の評価システムは、必ずしも評価
には利用者や利用者の家族の方から話を聞けばわ
論のバックグランドに基づいて運用されているわ
かるのですが、認知症高齢者では中度以上に認知
けではありません。そのため、いま実践されてい
症が進むと本人はわからなくなってしまいます。
る様々な形態の評価システムを整理し、それらを
そういう場合の評価指標となるような基準を数値
うまく組み合わせることで、利用者にとっても、
化できないか研究しています。例えば、ケアワー
援助する側にとっても効果があり、福祉サービス
カーの自己評価と利用者の QOL(生活の質)評
の質の向上にも寄与できるような評価の方法がな
価尺度には、一定の相関関係が見られることがわ
いか今後探っていきたいと考えています。
かってきました。それらストレートには表に出て
学生には、30 年近い福祉現場でのキャリアに
こない部分も細かくみていくと微妙に差が出てく
基づく、ソーシャルワークの喜びや苦しみ、考え
る、そのあたりが研究の面白い点です。今後も、
方など、理論プラスアルファの視点を伝えていき
エビデンスに基づいて認知症高齢者へのケアの課
たいと思っています。また、「福祉」と「公益」
題を明らかにしていくとともに、人間が生きてい
とは微妙な差異があるように思われますので、
「福
くうえで必然的にかかわることになるケアの素晴
祉」と対応させながら「公益とは何だろう」とい
らしい要素や複雑な機能についても明確なエビデ
うことをこれからも学生と一緒に考えていきたい
ンスをもとに考察していきたいと考えています。
ですね。
10
卒業生メッセージ
01
2005年3月卒業(1期生)
井澤 和彦さん
現在、社会人 6 年目、入社 3 ヶ月目で
社会人になってからは年に一度登れるか
す。そのギャップを埋める努力こそが自
す。新卒でリサイクルチェーンの(株)
どうかですが、非日常的な体験ができる
分の力になると信じて、一生懸命頑張っ
ハードオフコーポレーションに入社し、
ことが醍醐味の登山に魅せられ、今では
て欲しいです。公益大で学んだことをい
札幌で 3 年勤務。その後、いったん帰郷
趣味の一つになっています。
ろんなフィールドで活かしていって下
して地元の東京海上の代理店に 2 年勤務
後輩の皆さんには「公益学を追究して
さい。これからの活躍を期待していま
しましたが、今年 6 月、リサイクル業界
いきましょう」と言いたい。「公益学っ
す!!
に対する情熱を捨てきれず上京しまし
て何ですか?」、この問いは公益大に入
た。現在は関東を中心に店舗展開してい
学したら避けては通れない、もはや宿命
る㈱トレジャーファクトリーに入社し
のようなものです。この答えに窮する人
て、お客様に喜び、発見、感動を提供す
は結構多いのではないかと思いますが、
るべく仕事に打ち込む毎日です。
是非、自分の言葉で表現してみてほしい
公益大に入って良かったことは、まず
と思います。
素敵な仲間に出会えたこと。今もこれか
そして、「心と頭と体のバランスを大
らもずっと信頼できる愉快な仲間達で
切に」というメッセージを送りたい。心
す。もう一つは庄内が大好きになったこ
が貧しくては、頭でっかちでは、元気で
と。もともとは内陸の出身なのですが、
なければ、何もできません。だから、心
今では第二の故郷で、時々思い出しては
も頭も体もフル回転できる人になりた
庄内の空気を吸いたくなります。
い。僕は卒業するときにこう思ったので
大学時代の一番の思い出は、大学に
すが、社会人になってからもやっぱりこ
入ってから始めた登山。大学事務局の方
の想いは変わりません。
や仲間と登った山は数知れず、鳥海山を
社会に出たら、きっとたくさんの「理
はじめとする東北の山々に登りました。
想と現実のギャップ」に直面するはずで
社会人になってから大学時代の仲間と登った飯豊
連峰。右側が井澤さん。
I n f o r m a t i o n
9 月 16 日(木)18:30 ~ 20:00 中研修室 2
9 月 28 日(火) 公益ホール
石田英夫氏(元本学大学院教授)出版記念講演会
創立10 周年記念事業 講演会
「庄内の起業家~創造的挑戦と地域開発」 キッコーマン株式会社代表取締役会長
茂木 友三郎 氏
新田嘉一、小野木覚、上野隆一、奥田政行、早坂
11 月 25 日(木)18:30 ~ 20:00 中研修室 2
公益大の教員紹介シリーズ 3
神田直弥先生
「薄暮時の交通事故防止」
剛という庄内の代表的起業家がいかなる志をたて、
薄暮時は交通死亡事故が多い時間帯であり前照灯
どのような困難にぶつかりながらそれをのり越え、
の早めの点灯が推進されています。しかし、実際
今日の平田牧場、大商、ウエノ、アルケッチャーノ、
エル・サンをつくり上げたか。起業家の成功要因
を探り、庄内地域開発における起業家の社会的役
割を明らかにし、あとに続く人たちへのメッセー
ジを伝える。
9 月 22 日(水)18:30 ~ 20:00 中研修室 2
公益大の教員紹介シリーズ 1
広瀬雄二先生
「オープンシステムの可能性」
10 月 19 日(火) 山形市(予定)
に点灯をしている車はそれほど多くありません。
創立10 周年記念事業 講演会
トヨタ自動車株式会社副会長
渡辺 捷昭 氏
つ、事故を防止するために交通参加者はどのよう
11 月 17 日(水)18:30 ~ 20:00 中研修室 2
公益大の教員紹介シリーズ 2
西村まどか先生
「宇宙のつくりかた」
点灯をしない理由を心理学的な側面から考察しつ
に振舞うべきなのかについて、公益的な側面から
考えていきましょう。
11 月下旬~ 12 月上旬 公益ホール
(予定)
創立 10 周年記念事業 講演会
慶應義塾大学名誉教授
北島 政樹 氏
2010 年 4 月、山形県庁は都道府県レベルでは全
夜空を見あげると、月や星が見えます。星は、何
国初となる大きな転換事業を計画しました。それ
からできているのでしょうか。星は、どうして光っ
は庁内で利用するオフィスソフトを OpenOffice.
ているのでしょうか。星の位置を時間を追って調
※公益大の教員紹介シリーズ:
org に切り替えるというものです。税金で賄われ
べると宇宙のつくりかたがわかります。宇宙のは
公 益 大 創 立 10 周 年 に あ た り 2010 年 後 期 の
る自治体の情報システムにどんなものを利用すべ
じめを再現する実験や観測を紹介し、科学者が何
フォーラム 21・共創カフェでは本学教員の研究
きかを世に問うこのできごとについて、公益的側
を知りたいかについて説明します。
についてあらためて紹介します。
面から考えていきましょう。
11
酒田港を利用した静脈経済の構築
みなさんは、「静脈経済」という言葉をご存知でしょうか?この「静脈経済」という言葉が酒田港活用のキーワードになりつつあります。
酒田港と静脈経済の関係について本学の一ノ瀬大輔講師に寄稿していただきました。
人の体が動脈と静脈という 2 種類の血管の働き
の強みとして、民間の内発的な活力が非常に大き
によって成り立っているように、経済も、資源の
いという点が挙げられます。現在、酒田港には自
採取から生産、流通、消費へとつなげる部門と、
動車リサイクル企業や、土壌リサイクル企業など、
使用済みの製品の回収から、再生もしくは適正な
多くの静脈部門の企業が立地していますが、これ
処理へとつなげる部門の 2 つの部門から成り立っ
は県や市などが主導して実現したものではなく、
ています。血管の働きになぞらえ、前者を動脈経
民間の内発的な力によって、自然と静脈企業が集
済、後者を静脈経済と呼びます。これまでは、い
積するリサイクル拠点が形成されたという経緯が
かに生産を伸ばすかといった動脈経済側の発展の
あります。
みが注目されてきましたが、処分場の不足や不適
このように、静脈物流の拠点となりつつある酒
正処理といった廃棄物問題の深刻化を受け、現在
田港ですが、さらなる発展に向けての課題も見え
では適正な静脈経済を構築することの必要性が強
てきています。その 1 つが、再生資源取扱量の拡
く認識されるようになっています。
大という問題です。現在、取扱量自体は伸びてい
では静脈経済の構築のためには何が必要でしょ
るものの、静脈物流拠点としての役割を果たすた
うか?ここで重要になってくるのが、使用済み製
めには取扱量のさらなる拡大が必要となります。
品の回収網、つまり静脈経済における物流網の構
そのためには、今後、どのような資源をどれだけ
築です。動脈部門の物流の場合、工場などで大量
集めるかといった、港としての戦略の策定が重要
に生産した製品を各需要地に流通させることが必
になってきます。この課題に関しては、現在、酒
要になりますが、静脈部門の場合には、各需要地
田市、公益大、民間企業、そして慶應義塾大学、
で発生した使用済み製品をリサイクル施設に集約
富山大学からなる会議を立ち上げ、戦略策定に向
するという、動脈側とは逆の、全く新しい物流の
けた検討を行っています。このような取り組みを
仕組みを構築する必要があります。このような静
通じ、今後、日本の静脈経済の拠点として酒田港
脈物流網の構築が求められる中で、いま、酒田港
が大きな役割を果たすことが期待されます。
が静脈物流の拠点としての役割を果たしうる施設
リサイクル
コンテナ貨物の推移
として大きな期待を集めています。
酒田港は、古くは西回り航路の起点として動脈
経済を支える一大拠点として栄えた港でしたが、
現在では静脈経済を支える循環資源の物流拠点へ
と発展しつつあります。平成 15 年には国からリ
サイクルポートの指定を受け、再生資源の取扱量
も平成 14 年から平成 20 年の間に国内外取引を合
わせて 2 倍以上に伸びています。さらに、酒田港
wave.
出典:
山形県庄内総合支庁
建設部港湾事務所
集計:
国土交通省東北地方整備局
酒田港湾事務所
23
編集後記
硬式野球部悲願の一部リーグ昇格やインカレ出場など、クラブ・サーク
う過ごしてほしいと思います。
ル活動を通じた学生のめざましい活躍が続いています。練習風景や試合を
10 周年の今年度もまもなく折り返しを迎えようとしています。節目の
なかなか目にすることはないのですが、たまに練習に同行すると、みんな
年は、過去を真摯に振り返り今後を見据えて、これから何をすべきかを考
一生懸命かつ楽しんでやっていることがよくわかります。体育会 ・ 文化会
える絶好の機会です。大学がさらなる発展を遂げるために、自分に何がで
など内容は何であっても、偶然にもこの大学で、同じ時間を過ごすことに
きるか、自分が何をすべきかを常に意識して教職員一同行動していきたい
なった仲間とのかけがえのない時間を、思いっきり楽しんで悔いのないよ
と思います。
東北公益文科大学 広報誌「Over View」 No.23 2010.8 発行 Over View 編集委員会
〒 998-8580 山形県酒田市飯森山 3-5-1 0120-41-0207 tel.0234-41-1111(代表) fax.0234-41-1133 e-mail:[email protected] http://www.koeki-u.ac.jp
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