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さくらNo.18

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さくらNo.18
=医療協力部門情報=
発行所 JA 静岡厚生連清水厚生病院医療協力部門 2009.1.28.No.18
高脂血症(脂質異常症)の治療
前回、『高脂血症ってどんな病気?』というテーマで発行しましたが、今回は、引き続
いて高脂血症の治療《運動療法》・《薬物療法》についてご説明します。
高脂血症の治療は、まず食事療法と運動療法から始めます。食事療法(前回号に
掲載)と運動療法を行っても治療目標値に届かない時には、薬物治療に入ります。
<高脂血症の運動療法>
1.
予防のための運動の重要性
① 摂りすぎたエネルギーを消費し、脂肪分が皮下や内臓に蓄積されるのを防ぐ。
② 血行を促して、血管の弾力を良くしたり、血管をひろげるなどして血圧を下げ、高脂
血症による動脈硬化を防ぐ。
体内での脂肪の流れが良くなるように調節する酵素の一つであるリパーゼを活性化さ
せ LDL(悪玉)コレステロールを減らして、HDL(善玉)コレステロールを増やす。
−1−
2.
有酸素運動をしましょう
体に必要な酸素をゆっくり取り込みながら行う運動のことです。15 分以上続けると
血液中の脂肪や体重を減らします。例えば、ウォーキング、水中歩行、サイクリング、
体操など。
【運動の量】 1 日 30∼60 分 頻度:1 週間に 3 日以上
【運動の強さ】ご自身の感覚で『楽である』から『ややきつい』程度の運動
(運動をしながら話しはできるが、歌は歌えない程度)
150 キロカロリーの運動量
3.
● 歩行(80m/分)
30∼40 分
● 自転車(平地)
30∼40 分
● 軽いジョギング
20 分
● 水泳(平泳ぎ)
10 分
運動をする時の注意点
① 体調が悪い時は無理して運動しない。
② 運動前の柔軟体操を忘れない。
③ 水分を十分に補給しましょう。
−2−
<薬物療法>
コレステロールが高いのか、トリグリセライドが高いのか、あるいはその両方かにより
有効な薬物の選択は変わってきます。各病態にあった薬剤が治療に用いられるように
なっています。
高脂血症の薬としては、まず悪玉コレステロールの LDL-コレステロール(LDL-C)を
減らす薬があげられます。体の中のコレステロールは LDL-C によって運ばれているので、
これを減少させることが重要なのです。スタチン系、陰イオン交換樹脂、プロブコールの
薬がそうした効果のあるものとして使われています。また、フィブラート系やニコチン酸は、
トリグリセライドを低下する作用が強いという特徴があります。
それぞれの薬剤の特徴を簡単にまとめると、次のようになります。
分類、薬剤名
作用
副作用
主にコレステロールを減らす薬
肝臓でコレステロール合成に必要な酵素の 胃腸障害や横紋筋融解
働きを妨げることで、血中のコレステロール 症があり、だるい、筋肉が
スタチン系(HMG-CoA 還元酵素阻 を低下させる働きがあります。コレステロール 痛いなどの状態が起こる
害剤)
を下げる効果が最も高く(一般に LDL-C を ことがあります。
約 25∼30%ほど低下させる)、HDL-C を上
当院薬剤名:メバロチン、リバロ、リピ
昇させるため、最も多く使われています。第
トール
2 世代のスタチンのリバロ、リピトールには中
性脂肪低下作用もあります。
陰イオン交換樹脂
当院薬剤名:
プロブコール
ンレスタール
コレバインミニ
当院薬剤名:
小腸内で胆汁酸(肝臓でコレステロールを原 お腹が張ったり、便秘に
料としてつくられる)と結合して、その排泄を なることがあります。
促す薬剤です。体内に胆汁酸が少なくなる
と、肝臓はその不足分を補おうと、コレステ
ロールを活発に消費するようになり、その結
果、総コレステロールが減ることになります。
LDL-C を低下させるとともに、HDL-C を上
昇させる効果があります。
LDL-C は酸化されて血管の内膜に蓄積さ 過敏症、胃腸障害が起こ
シ れます。その酸化を防ぎ、コレステロールが ることがあります。
血管にたまりにくくする薬です。
小腸コレステロールトランスポーター
阻害剤
当院薬剤名:
ゼチーア
小腸でのコレステロールの吸収を選択的に 胃腸障害や横紋筋融解
阻害することにより、血中のコレステロール 症があり、だるい、筋肉が
を減少させます。
痛いなどの状態が起こる
ことがあります
分類、薬剤名
作用
副作用
主にトリグリセライド(中性脂肪)を減らす薬
フィブラート系
当院薬剤名:ベザトール SR、
ディル
トリグリセライドを強力に下げる薬です。総コ 発疹などのアレルギー症
レステロールを下げる作用もあることから、 状、また肝機能障害が
コレステロールとトリグリセライドの両方が高 起こることがあります。
い方と、トリグリセライドが高い方に適してい
リピ
るとされています。また小粒子 LDL コレステ
ロールを減少し、善玉コレステロールを増加
させます。
ニコチン酸
当院薬剤名:
ユベラNソフト
イコサペント酸エチル(EPA)
当院薬剤名:
トリグリセライドを下げる薬です。総コレステ 潮紅(体や顔が赤くな
ロールを下げる作用もあることから、コレス る)、上部消化管症状が
テロールとトリグリセライドの両方が高い方 起こることがあります。
と、トリグリセライドが高い方に適していると
されています。
イワシなどの青魚に含まれる油です。軽度 出血しやすくなることが
あります。
のトリグリセライド低下作用があります。
エパデール・S
以上のように、高脂血症の薬は、血清のコレステロールやトリグリセライドを低下させ
ます。いろいろな種類がありますが、個々の状態にあった薬を選択して、コレステロール
(LDL-C)とトリグリセライドを低下させ、HDL-C を上昇させて、動脈硬化の発症を予防
することが重要です。
医療情報紙 『さくら』 No.18
発行日 : 2009 年 1 月 28 日
編集者 : JA静岡厚生連清水厚生病院
リハビリテーション科・薬局
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