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http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/ Title Author(s) Editor(s
 Title
Author(s)
真正ラベンダーの精油吸入とフットマッサージがもつリラクセー
ション効果 : 自律神経機能を指標とした生理的効果と心理的効果
の検討
別宮, 直子; 佐保, 美奈子
Editor(s)
Citation
Issue Date
URL
大阪府立大学看護学部紀要 .2014 ,20 (1) ,p.47-56
2014-03-15
http://hdl.handle.net/10466/13747
Rights
http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/
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大阪府立大学看護学部紀要 2
0巻 l号. 2
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研究報告
真正ラベンダーの精油吸入とフットマッサージがもっ
リラクセーション効果
一自律神経機能を指標とした生理的効果と心理的効果の検討-
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別宮直子1)・佐保美奈子1)
NaokoBEKKU1),MinakoSAHO1)
キーワード:真正ラベンダー.フットマッサージ,自律神経機能, POMS
,リラクセーション効果
Keyword
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要 旨
本研究の目的は.統一された実験条件下での真正ラベンダーの精油吸入とフットマッサージによ
る生理的・心理的効呆を検討し,精油吸入とマッサージそれぞれのリラクセーション効呆を明かに
することである。健康な成人女性 (
1
8名)を対象に.精油吸入群 (9名)とマッサージ群 (9名)
に分け,対照群とのクロス実験を行った。リラクセーションの生理的効果をみる自律神経機能にお
いて, (
1
) 真正ラベンダ}の吸入は副交感神経の活動克進といった影響ではなく,自律神経を安定
維持させることが示唆された。 (
2
) フットマツサ}ジでは刺敬介入により交感神経の活動が克進す
るが,刺君主介入終了後から副交感神経の活動も賦活される。 (
3
) POMSによる心理的効果では,
受付日:2
0
1
3年 9月 2
:
l日 受 理 日 :2
0
1
3年 1
2月 68
1) 大阪府立大学看護学部
48
芳香する行為も心理的影響があること,マッサージでは特に活気を強める効果が明らかとなった。
本研究方法における,精油,マッサージ,それぞれのリラクセーション効呆の特性が得られた。
I.はじめに
アロマセラピーは,エッセンシヤ J
レオイル(精
油)を用いて香を楽しみ,リラクセーションを得た
りするだけでなく,補完代替医療としての関心も高
く.さまざまな医療・看護の分野で取り入れられて
∞
,3
,今西, 2
0
1
0
)。補完代替医療の
いる(谷田, 2
ーっとして確立しているといっても過言ではない。
しかし一方で,アロマセラピーといっても,その方
法には芳香浴,全身浴,部分浴,塗布,マッサージ
といった方法があるなど使用部位・使用方法は多様
である。アロママッサージだけでも,看護における
mani
油 ie
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,2
0
0
9
,S
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ta
l
.
,
対象はがん患者(I
2
0
1
2
),産縛婦(岡村, 2
0
0
7
,古賀ら, 2
∞8
),高齢
0
0
7
,八木樺・稲垣, 2
∞8
) と幅広く
者(高田ら, 2
臨床の場で行われている。リラクセーション効果の
科学的根拠を求めた場合,統制された実験研究が少
なく.精油の使用方法など実験条件の方法論の違い
Herz
,
もあり,十分な見解が得られていない (
2
0
0
9
,酒井・乗松, 2
0
1
0
)。また,アロママッサー
ジの場合,マッサージによる効果と精油による効果
が混在し.精油によるリラクセーション効果の機序
0
0
0
)。
を複雑にしている(吉田・佐伯, 2
ラベンダーは,精抽の中でも最も広く使用きれ
(WangandChen,2
∞5
),その有用性からアロマ
セラピーの研究において多用されている精油の一つ
である。真正ラベンダーを用いた研究だけでも,芳
0
0
4
,伊藤ら, 2
∞4
,浅野
香による効果(大久ら, 2
,中部ら, 2
0
1
3
),アロママッサージによ
ら
, 2ω9
9
9
8
. 真鍋ら, 2
α)9,木村ら,
る効果(殿山・黒田, 1
2
0
1
2
) を検討した研究はあるが,同一条件下で比較
検討したものは少ない。同一条件下で比較検討した
2
0
1
0
) による真正ラベ
先行研究では,酒井・乗松 (
ンダー精油を用いたアロママッサージ(両下肢)の
リラクセーション効果を,コントロール群,芳香
群,マッサージ群,アロママッサージ群に独立型無
作為化多試料実験により検討したものがある。統制
条件下で 4群の比較実験を行った意義は大きい。た
た芳香群はマスク装着によって芳香を行い,コン
トロール群はマスク装着がない。マスク装着による
呼吸法が生体反応や心理的変化に影響すると考えら
れ,芳香群に対するコントロール群が必要といえ
る
。
そこで,本研究では.精油の吸入とマッサージで
はリラクセ ーション効果の発現に相違があると考
え,同一の実験条件下で真正ラベンダーとコント
ロールの芳香によるリラクセーション効果とフット
マッサージの介入の有無によるリラクセーション効
呆を無作為クロス実験により検討することとした。
リラクセ}ション効果の検討には,自律神経機能の
変化を捉える指標として先行研究で多く用いられて
0
0
0,
いる心拍変動スペクトル解析(吉田・佐伯, 2
S
a
e
k
i
,2
(
削,伊藤ら, 2
∞4
,大久ら, 2ω4
,井草ら,
2
∞8
. 真鍋ら, 2
0
ω
. 酒井・乗松, 2
0
1
0
) と抹消血
流量(吉田・佐伯, 2
目
)
(
)
, S
a
e
k
i,2
目旧)を生理的
指標として用い,心理的指標として日本版 POMS
や FaceS
c
a
l
eを用いることとした。
I
I
. 研究目的
統ーされた実験条件下での真正ラベンダーの精油
吸入とフットマッサージによる生理的・心理的効果
を検討し,精油吸入とマッサージそれぞれのもつリ
ラクセーション効果を明かにすることである。
m
.研究方法
1.対象者
口頭や掲示により参加を募り,参加協力の得られ
た健康な成人女性 1
8名(非喫煙者)を対象とした。
対象者の実験条件として,月経周期による自律神経
0
0
2
),月経期間外
系への影響があり(真栄城ら, 2
を条件設定とした研究(井草ら, 2
∞8
,酒井・乗松,
2
0
1
0
) もある。しかし一方で,近藤ら (
1
9
8
9
) は RR間隔変動係数を用い月経周期における自律神経の
変動を検討,その中で月経周期による心拍数, RR間隔変動係数への有意な影響はなく,考慮する必
要がないことを指摘している。そこで,本研究では
全月経周期の女性を対象とすることとした。
2
. 実験手順
実験は,環境調整を制御できる所属機関内にある
人工気候室(室温 25 主 1 度,湿度5O~60% ,照度
約制O1u
x
) で行った。 1
8名を無作為に精油吸入群
(9名)とマッサージ群 (9名)に分け.それぞれ
の対照群とのクロス実験を行った。被験者に,同意
∞%の半そで膝丈のワンピース型衣
を得た後,綿 1
類に更衣してもらい,調査用紙と FaceS
c
a
l
e,日
本版 POMSといった心理的指標に回答してもらう。
その後,測定機器を装着し,セミフ ァーラー位 (
3
0
4
9
度)の楽な姿勢を保持してもらう。実験開始時に血
圧を測定し,その後 1
0分間の安静をとり,開始 1
0
分後. 5分間の刺激介入を行う。 5分間の刺激介入
後は
3
0分間の安静をとり.終了時に再び血圧を測
定する。その後,心理的指標への記入を行ってもら
う。実験中.楽な姿勢で良いが開眼しておくことを
伝える。実験は,起床直後,食後,空腹時を避け.
測定前 2時間はカフェイン類の摂取を控えてもらっ
た
。 1回の実験の所要時聞は 60分程度であり,同
一被験者への 2回目の実験は. 24時間以上を空け
実施した。
3. 精油吸入刺激
刺激介入時に,真正ラベンダー (
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.
凶o
l
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:サノフロール社)をコーヒーファイル
ター(カリタ社)に 0
.
0
5ml滴下し.ろ紙をテント
状に聞き,鼻先から 1
0cmほど離れた位置に固定
型ホックで,口と鼻を覆いかぶせるような形に留め
る。その後 5分間の吸入を行ってもらい. 5分経過
後,ろ紙を速やかに除去する。対照群には精製ホホ
の平均値として算出した。
2) 抹消血流動態の測定
左手第 3指先部の抹消血流量 (
B
l
∞dFlow. 以
下 BF) を測定した。長時間の測定が求められるた
めプロープの装着による接触型レーザー血流計
(FLO-Cl/オメガウェープ社製)を用いた。解析
には 1分間の平均値を用いた。
3) 調査用紙
日本版 POMS(
P
r
o
直l
eo
fMoodS
t
a
t
e
s
) (以下,
POMS) は. 緊張一不安 J(9項目), 抑うつ一落
1
5項目), 怒 り 敵 意 J(
1
2項目), 活
ち込み J(
気 J(8項目). 疲労J(7項目). 混乱J(7項目)
5項目に,
の 6つの下位尺度とダミー項目の合計 6
「全くなかった」から「非常に多くあった」までの
r
r
r
r
r
r
5 段階 (O~4 点)で回答を求める質問紙である。
過去一週間の気分状態をみる尺度であるが,実験介
入前後の変化をとらえる尺度としても汎用されてい
)。アロマセラピーを用いた実験
る(横山ら, 2 2
,
∞
パオイルを用い,同条件下で行った。
研究でも多く用いられており (
Kurodae
ta
l
.
.2
0
0
5
.
池田ら, 2
0
0
7,浅野ら, 2
卿,真鍋ら.2
{
胸.酒井・
4. フットマッサージ刺激
乗松, 2
0
1
0
)
. 本研究でも POMSを用いることとし
た
。
刺激介入時に,両下肢のマッサージを抹消から心
臓に向かつて擦りあげる軽擦法を各下肢 2
.
5分の計
5分間行う。フットマッサージは,毎回アロママッ
サージに熟練した同一施術者が実施した。対照群に
は,マッサージをせず安静を保持してもらった。
FaceS
c
a
l
eは
, 2
0段階に分けられた顔の表情か
ら,現在の気分を短時間(数秒)で容易に選択でき
(
L
o
r
i
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handM
a
i
s
i
a
k
.1
9
8
6
)
. 被験者への負担がき
わめて少ないスケールである。点数が低いほど気分
状態が良いことを示す。
5. 評価方法
生理的指標として,心拍数(以下 H
R
)
. 高周波
成分(以下 HF). 低周波成分/高周波成分(以下
作成した質問項目は,現時点でのストレス,緊
張.疲労の程度を.全くない: 1から非常に強い:
7の 7段階で回答を求めた。実験後には,精油の晴
LF/HF). 抹消血流量を用い,安静時の介入 5分
好性やマッサージの快・不快についても 7段階で回
前を介入前とし,介入開始.介入中(介入開始 3分
答を得た。
後).介入終了時,介入終了 5
.1
0
.1
5
.2
0
.2
5
.
3
0分後の各時点の 1分間の値を解析の対象とした。
6
. 倫理的配慮
心理的指標として. 日本版 POMS. FaceS
c
a
l
e
,作
成した質問項目を測定機器装着の前後を実験前後と
して評価した。
1
) R-R間隔変動スベクトル解析
対象者には,研究目的・方法とともに,安全性お
よび研究協力,途中辞退への自由意思の保障,匿名
性の保持等について紙面を用い説明し署名による
同意を得て実施した。本研究は研究者の所属する機
関の倫理審査委員会の承認を得て行った。
R-R間隔変動スペクトル解析は,胸部双極誘導
法で採取した心電図データを TA
WARA/WIN(諏
訪トラスト製)に読み込み,周波数解析を
MemCalc法により行い,副交感神経の指標ときれ
ている高周渡成分 (HF:O.l5~0.4 H
z) と交感神経
7
. 統計解析
対象となる標本数が少ないこと,各群すべてで正
規性が確認できなかったことから,ノンパラメト
リック法を用いることとした。群内の経時変化には
の 指 標 と さ れ て い る 低 周 渡 成 分/ 高 周 渡 成 分
フ リ ー ド マ ン の 検定 (
F
r
i
e
d
m
a
n
'
s民s
t
) を行い,
(LF:0.04~O.l5 Hz/HF:O.l5~0.4 Hz) の 1分毎
有意差がある場合にはポンフ エロニーによる多重比
回
較 (
B
o
n
f
e
r
r
o
n
i
'
sm
u
l
t
i
p
l
ecomp
a
r
I
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o
n
) を行った。
また,群聞の比較にはウイルコクスンの符号付順位
1
i
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x
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ns
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g
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n
k
st
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s
t
) を行った。統
検 定 (W
計解析には, SPSS2
1
.f
o
rWindowsを用い,すべ
.
0
5を有意水準とした。
て pく 0
W
. 結果
1.精油吸入群
精油吸入群 (9名)の平均年齢 (
S
.
D
.
) は2
7
.
9
(
5
.1)歳であり,実験後の精油に対する晴好性につ
いて「今回嘆いだ匂いをどのように感じましたか」
の質問に.精油吸入群は 7段階の内 5,6と晴好感
を持った人が 7人と多く,対照群では 4と答えた人
が 6人と多かった。
1)刺激介入による経時的変化(図1)
精 油 吸 入 群 の HRに お い て , 経 時 的 変 化
(
仕l
e
出n
a
n
'
stest} に有意差が認められた(~=
2
8
.
ω
7,d
f= 9,p= 0
.
'1
) が,その後の検定
∞
(
B
o
n
f
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r
r
o
n
i
・
smu
1
t
i
p
l
ecomp
a
r
I
s
o
n
) で有意差は認
められなかった。 BFにおいても経時的変化に有意
∞
x2=
3
6
.
6
6
1
. p=
.
o0
)が,その
差が認められた (
後の検定で有意な差は認められなかった。精油吸入
r
i
e
d
m
a
n
'
s
群 の HFお よ び LF/HFにおいては, f
t
e
s
tで有意差は認められず,経時的変化に影響はな
R BFで有意な経
かった。対照群においては, H,
2
x=3
5
.
1
ω
'
5
,p= 0
.
0
0
0
. x2 =
時的変化がみられた (
41
.
19
4
. p=0
瓜旧)が,その後の検定で有意差は認
められなかった。 HF
,LF/HFにおいて.有意な
経時的変化はみられなかった。
2) 精油吸入群と対照群の比較
R B
F.
刺激介入前の精油吸入群と対照群の H,
HF
,LF/HFを比較したところ,すべて 2群間
(W
i
1
c
o
x
o
ns
i
g
n
e
d
r
a
n
k
st
e
s
t
) で差は認められな
,HF
,LF
/HF
かった。次に, HRは計測値, BF
は刺激介入前からの変化率で介入開始,介入中,介
入終了直後, 5,1
0
,1
5,2
0
,2
5
,泊分後の各時
,BF
,HF
,LF
点での 2群聞の比較を行った。 HR
200
事
、
ー
'1
50
u
50
。
1
2
0
600
1
1
¥
500
11¥
"
#
.
~ 80
I 1¥
1 I¥
I¥
泊分後
議ω
I
四分後
1 I¥
時
I
300
元
口
図
面 40
。200
20
1
0
0
25
30
後
分
後
分
後
分
後
分
後
分
後
分
。
前
入
介
初分後
2
0
部分後
1
5
ω分 後
1
0
5分 後
5
介入終了
介入前
。
図 1 精油吸入 による A :HR (
心拍数)
. B:BF (
抹消血流量)
,C:HF (副交感神経活動)
,D:LF
/HF (
交感神経活動)
の変化 M
e
d
i
a
n(
土Q)
- :精油吸入群.&-一色:対照群
5
1
/HFに 2群聞で有意差は認められなかった。有意
差はなかったが,それぞれの図をみると.HRでは,
p=
精油吸入群に比べ対照群で介入終了直後 (
0
.
0
6
)や 1
5分後 (
p=0
.
0
5
) に HRの減少傾向がみ
0分後に
られた。 BFの変化率では精油吸入群で 1
上昇がみられていた。また. LF/HFの変化率で
は,精油吸入群は対照群より 1
0分 後 (
p=0
.
0
5
)
から 2
0分後 (
p= 0
.
0
7
) に低い傾向を示した。
3) 心理的評価の実験前後の比較
心理的評価の実験前後の比較を表 1-Aに示し
た。精油吸入群.対照群ともに POMSの「活気」
を除く 5つの下位尺度で,実験後,有意に得点が減
a
c
eS
c
a
l
e
. 緊張度,蜜労
少し精油吸入群では F
度でも実験後に得点が有意に減少していた。
に. 9名全員が 5以上に回答しており,マッサ}ジ
の心地良きを感じていた。
1)マッサージ介入による経時的変化(図 2)
マッサージ群の HRの経時的変化を検討したとこ
x2=1
9
.
2
1
0
,p=0
.
0
2
3
) が認めら
ろ,有意な変化 (
れた。しかし,その後の検定で有意差はみられな
7
.
2
4
2,
かった。 BFでも有意な経時的変化 (x2= 3
p=0
.
0
0
0
) が認められたが,その後の検定で有意
差はみられなかった。 HF. LF/HFにおいて.経
時的変化に有意差は認められなかった。マッサージ
. BFで有意な経時的変
の対照群においても. HR
2
イ~ (
x =1
9
.
0
2
6
.p=0
.
0
2
5
. x2=2
8
.
8
0
0
.p =0
.
0
0
1
)
がみられたが,その後の検定で有意差は認められな
かった。 HF. LF/HFにおいて,有意な経時的変
化は認められなかった。
2
. マッサージ群
マッサージ群の平均年齢 (
S
.
D
.
)は2
7
.
3(
1
0
2
)
歳,実験後のマッサージの快・不快について「今回
のマッサージを気持ち良いと感じましたか」の質問
2) マッサージ群と対照群の比較
マッサージ前のマッサージ群と対照群の HR,
BF. HF. LF
/HFを比較したところ,すべて 2群
υ
,
戸
、
ω
M
E
-副 商 品 聞 記
さ 80
川判
。
。 介 加 介 介
5 1
0 1
5 20 2
5 3
0
入 入 入 入 分 分 分 分 分 分
前 開 中 終 後 後 後 後 後 後
始 了
介 加 介 介
5 1015202530
入 入 入 入 金 分 分 分 分 分
前 開 中 終 後 後 後 後 後 後
始 了
図 2 フットマッサ』ジによる A :HR (心拍数), B:BF (抹消血流量). C:HF (副交感神経活動). D:LF
/HF (交感神経
活動)の変化 Med
凶 1(
土 Q)
E一
一・:フ ットマ ッサージ群,A-一色:対照群
*:
p<0
.
0
5(
W
i
l
c
o
x
o
ns
i
g
n
e
d
.r
a
n
k
st
e
s
t
)
・
5
2
聞で差は認められなかった。介入開始以降の各時点
での比較では. HRで介入開始時にマッサージ群で
z= -2
.
3
8
0
. p=0
.
0
1
7
)
.介
有意に HRが下がり (
入終了直後まで減少を示した。 LF/HFの変化率に
z=ー 2
.
3
1
0
.
おいては,介入開始時点で有意な差 (
p=0
.
0
2
1
) が認められ,マッサージ群で LF/HF
の変化率が高かった。その LF/HFの変化率の高
値は介入終了直後まで維持された。 BFでは,介入
z
終了直後のマッサージ群で有意に変化率が高く (
=ー 2.
31
0
. p=ω121). 5分 後 (p=0.07) まで高
い傾向を示した。 HFの変化率で有意差は認められ
-Cをみると,マッサージ群で介
なかったが,図 2
V
. 考察
本研究では,精袖の吸入とマッサージではリラク
セーション効果の発現に相違があると考え,同一の
実験条件下で真正ラベンダーとコントロールの芳香
によるリラクセーション効果とフットマッサージの
介入の有無によるリラクセーション効果を無作為ク
ロス実験により検討した。同一実験条件下で行った
ことで,それぞれの刺激がもたらす生理的・心理的
影響を検証できた。
1.生理的影響
精油吸入群および対照群の生理的指標の経時的変
化を検討した結果. H
F. LF/HFでは経時的変化
はみられなかった。精油吸入群と対照群の比較にお
いても.HFの褒化率に精油吸入による影響はなく,
精油吸入群の HFの変化率の変動幅も著明なもので
C
)。精油吸入による副交感神経
はなかった(図 1
優位が確認された研究はいくつか報告されている
. 浅野ら. 2009. Duane
ta
1
. 2007.
(伊藤ら. 2 4
C
h
i
e
ne
t乱. 2012. Ma
回 国n
oωet乱. 2013) が
,
本研究では一致した結果が得られなかった。しか
2
0
0
4
) の研究では,ラベンダーの香り
し大久ら (
入終了直後から変化率が上が~. 10分後 (
p=0
.
0
5
)
に低下傾向をみせた。
3) 心理的評価の実験前後の比較
心理的評価の実験前後の比較を表 1-Bに示し
た。マッサージ群の POMSの「活気」を含む 6つ
a
c
eS
c
a
l
e
. ストレス度,緊
の下位尺度すべてと F
張度,疲労度で実験後に有意に得点が減少してい
た
。
∞
表 1・A 精油吸入による心理的な変化
median (
:
:
!
:Q)
精油吸入刺激
心理的指標
POMS
前
後
緊張ー不安
9
(
3
.
5
)
7(
4
.
0
)
抑うつ一落ち込み
7
(
3
.
5
)
怒り一敵意
5
(1
.
5
)
3(
3
.
0
)*
活気
1
0
(1
.
0
)
1
.
0
)
1
1(
疲労
9
(
2
.
0
)
混乱
9
(
2
.
5
)
F
a
c
eS
c
a
l
e
7(
1
.
0
)
ストレス度
3
(1
.
0
)
緊張度
3(1
.
0
)
2(
0
.
0
)
疲労度
4
(
0
.
0
)
3
(
0
.
5
)
*
事 :
p<0
.
0
1,
対照群
精泊吸入群
p健
2
.
5
3
6
・ z=
p=O
.
0
1
1
z=2
.
5
3
3
5(
3
.
5
)・
p
=
O
.
0
1
1
z=2
.
5
沼
p
=
O
.
0
1
1
Z=1
必7
p
=
0
.
1
5
1
2
.
3
1
6
・ z=
p
=
0
.
0
2
1
z=2
.
2
5
4
8
(
2
.
0
)・
p=O
.
回4
7(
3
.
0
)
p値
前
後
1
0
(
4
.
0
)
5(
2
.
5
)
9
(
3
.
5
)
7
(
3
.
5
)
1
1(
5
.
0
)
7
(
3
.
0
)
.
5
)
9
(1
2
.
1
1
1
・ z=
p=0
.
0
3
5
z=2
.
3
2
8
4
.
5
)・
2(
p
=
0
.
0
2
0
z=2
.
5
5
5
3(
3
.
0
)・
p
=
O
.
0
1
1
1
1(
2
.
0
)
Z
=
0
.
9
8
7
p=0
.
3
2
3
2
.
5
5
5
・ z=
p
=
O
.
0
2
4
1
.
9
7
3
6(
2
.
0
)・ z=p
=
0
.
0
4
9
.
0
)
4
(1
2
.
2
5
1
・ z=
p
=
0
.
0
1
0
8
(
2
.
0
)
6
(
2
.
0
)
z=2
.
7
1
4
D
=
0
.
0
0
7
4
(
0
.
5
)
3(
0
.
5
)
z=2
.
2
7
1
p=O
.
回3
3
(
0
.
5
)
3
(
0
.
5
)
z=1
.
8
9
7
p
=
0
.
0
5
8
-2
.
4
2
8
・ z=
p=Qβ15
3
(1
.
5
)
3
(
0
.
5
)
z=-l
,
.
岨3
.
16
1
p=0
4
(1
.
0
)
3
(
0
.
5
)*
*
・
*:
p<0
.
0
5(
W
i
l
c
o
x
o
ns
i
g
n
e
dr
回 国 民5
t
)
・
z=1
.
6
2
0
p=0
.
10
5
-2
.
2
5
1
・ z=
p
=
O
.
0
2
4
日
による自律神経機能評価および脳血流量に及ぼす影
響を検討し,自律神経活動性(心拍変動解析)の評
価には有意な影響は認められなかったことを報告し
ており,本研究と一致していた。精油の吸入方法や
時間などの実験方法の違いによるものと考えられる
が,心拍変動スペクトル解析を用いた評価の難しさ
が明らかとなった。交感神経の指標とされる LF/
HFの変化率(図 l-D) をみると,有意な差はない
が,精油吸入群は対照群より 10分後から 20分後に
低い傾向を示している。また, BFの変化率の動き
(
図 l-B) をみると, LF/HFで低い傾向をみせた
10分後に上昇をみせている。血管は交感神経のみ
の支配を受ける(津田, 1998) ため,交感神経活動
が抑制されたことで抹消血流量の増加が生じたとい
え,真正ラベンダーの精油吸入が介入終了 1
0分後
から交感神経の活動充進を抑制したと考えられる。
また,副交感神経・交感神経両方の関与がある HR
(稲森, 1998) において,有意差はないが精抽吸入
群に比べ対照群で介入終了直後や 1
5分後に HRの
減少傾向がみられ,精油吸入群では減少が小さい
(
図l
A
)。本研究の精油吸入群の HFおよび LF/
HFの変化率の経過をみると.副交感神経の活動充
進といった影響ではなく.自律神経の安定維持が生
じたといえ,その働きにより安定した心拍数が維持
されたと考えられる。真正ラベンダーの作用には神
NARDJAPAN,
経バランス回復作用があり (
26
),真正ラベンダーを吸入することで安定した
と推察する。
∞
マッサージ群および対照群の生理的指標の経時的
変化を検討した結果, HF,LF/HFの変化率では
経時的変化はみられなかった。マッサージ群と対照
群の比較では,マッサージ介入開始時,対照群に比
ベマッサージ群で LF/HFの変化率(図 2-D) が
有意に高い結果となった。その後,マッサージ群の
LF/HFの変化率の高値は介入終了直後まで維持
されている。この結果は,片岡ら (2000) の足部
マッサージと腹式呼吸併用の生理的効果を検討した
研究で,足部マッサージのみでは交感神経が終了後
有意な増加を示し.副交感神経は有意な変化を示さ
なかったことと一致していた。フットマッサージと
いう刺激の介入が交感神経の活動を克進させたとい
える。一方で, 20分間の足部マッサージを行い,
マッサージ開始直後より副交感神経の活動充進,終
了 10分後に交感神経の活動充進を報告している研
究(井草ら, 2008) やフットマッサージ直後から心
拍数が低下し副交感神経が優位な状態を確認してい
表l
B フットマッサージによる心理的な変化
フットマッサージ刺激
心理的指標
POMS
median (
:
:
!
:Q)
マッサージ群
前 後
対照群
p健
前
後
p値
緊張ー不安
1
0
(1
.
5
)
6
(
4
.
5
)“
z=2
.
6
舶
p=O
.7
8
(
3
.
0
)
8
(
2
.
5
)
Z=-Ll槌
p=0235
抑うつー落ち込み
7(
1
.
5
)
2(
2
.
0
)••
z=2
.
6
7
3
p
=
O
.
1B
1
0
(
5
.
0
)
3
(
4
.
5
)申.
z=2
.
6
7
0
p
=
O
.
18
怒り一敵意
5
(
忌5
)
2(
2
.
0
)*
z=2
.
却7
p=0.027
7
(
3
.
5
)
2
(
3
.
5
)
z=1
.
3
沼
p=O
.
l8
1
活気
8
(
5
.
0
)
1
3(
4
.
0
)
Z=1
.
9
7
0
p
=
O
.
1
倒9
.
5
)
1
1(
3
1
3
(
5
.
5
)
z=0
.
8
辺
p=O
却5
議労
1
1(
3
.
5
)
5(
3
.
5
)*
*
z=2
.
6
7
7
p
=
O
.
17
7
(
3
.
0
)
4
(
2
.
0
)
z=1
.
7
'
錦
p=O.
町2
混乱
1
1(
2
.
5
)
6(
2
.
5
)*
*
z=2
.
6
1
5
p=O
.
α}9
1
0
(
3
.
0
)
7(
2
.
0
)
Z=-2
.
似
14
p
=
0
.
0
4
1
FaceS
c
a
l
e
6
(1
.
5
)
4
(
1
z=2
.
5
3
6
l
1
p=O.O
.
0
)
6
(1
5(
1
.
5
)
z=1
.
3
9
4
.
l6
3
p=O
ストレス度
3
(
2
.
0
)
2(
1
.
0
)
3
(
0
.
5
)
1
.
0
)
2(
z=1
.
7
2
5
民w
p=O.
緊張度
3
(
0
.
5
)
2
(
0
.
5
)
1(
0
.
5
)
z=-2
.
1
2
1
p=O.034
疲労度
4
(
0
.
5
)
.
0
)
3
(1
2
(
0
.
5
)
z=-1
.
4
1
4
.
l5
7
p=O
・
・
局
∞
∞
∞
-2
.
.
担8
・ z=
p=0.015
z=2
.
2
5
1
2(
0
.
5
)・
但
p=O
.
14
-2
.
5
6
5
・ z=
p=0
.
0
1
0
2(
0
.
5
)
*
事 :p<0.
0
1,*
:p<0.05 (Wil,
∞xons
i
g
n
e
d
r
回 国 国t
)
・
・
∞
5
4
る研究(新田・川端. 1
9
9
9
) もある。本研究では.
HFに有意差はないがマッサージ群で介入終了直後
から変化率が上がり. 1
0分後に低下傾向を示して
いた(図 2-C)。また. BF (
図 2-B) は対照群と
比べ介入終了直後に有意に変化率が高く. 5分後ま
で高い傾向を示している。マッサージ群における
LF/HFと HF. BFの動きから,介入終了直後を
境に交感神経の活動は一旦抑制され,血流量の維持
と副交感神経優位が生じたと考えられる。介入終了
直後から 5分程度は副交感神経の活動が賦活される
図 2-A) はマッ
と推察する。本研究において .HR(
サージ群で刺激介入開始時の早期から有意に低下
し,交感神経の影響はみられなかった。 LF/HFの
自律神経バランスの変化は心拍数で観察きれない
(
S
a
e
k
i,20
∞)とも指摘されており,交感神経の活
動克進による心拍への影響がないことがわかる。
真鍋ら (
2
0
0
9
) は,ラベンダー精油を用いた上肢
のマッサージによる自律神経活動への影響を検討
し,ラベンダー精油を用いた上肢マッサージは副交
感神経活動を克進し,交感神経活動においては,上
肢マッサージは活動を徐々に克進,ラベンダー精油
は克進された交感神経を抑制する効果を報告してい
る。交感神経の活動においては,本研究の精油吸入
とマッサージによる動きと一致していた。しかし,
副交感神経の活動においては,精油吸入で真鍋ら
(
2
0
0
9
) の研究結呆と異なっていた。精油の経皮か
らの循環促進に伴う吸収と経鼻・肺胞からの吸収に
よる違いと考えられ,吸収経路の違いによる検討が
課題といえる。
2
. 心理的影響
心理的指標として POMSや F
a
c
eS
c
a
l
e
. ストレ
ス度・緊張度・寂労度の得点を表 l-A (精油吸入
刺激)に示したように.精油吸入群と対照群ともに
POMSの活気を除き 5つの下位尺度で実験後に得
点が減少していた。このことから,今回のような実
験方法の場合,何らかの精袖を吸入したであろう心
理効呆が働き. POMSにおいて両群で活気を除く
nd
下位尺度で得点が減少したと考える。 Howarda
Hughes(
2
ぽ泡)は.三重盲検法により,精油の効
果を促進する教示と抑制する教示,非教示による違
いを研究し,ラベンダーを用いたアロマセラピーへ
の期待が主観的なリラクセーション効果に影響する
ことを指摘しており,本研究の対照群においても.
アロマセラピーへの期待が心理効果として現れたと
いえる。本研究の気分状態を短時間で測定する
F
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c
eS
c
a
l
eやストレス.緊張,疲労の程度を尋ね
た質問では,精油吸入群でのみ気分状態が有意に改
善し,緊張や疲労の程度が有意に低下していた。こ
れらの結果も吸入時にラベンダーの匂いと認知され
たことが影響したと考えられる。しかし Kuroda
e
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.(
2
0
0
5
) は,芳香への晴好が影響しないほど
に徴弱な匂いで,ラベンダーとその成分であるリナ
ロールに, POMSすべての下位尺度での影響を確
認している。本研究結果もラベンダーの鎮静効果
(谷田. 2
0
0
3,NARDJAPAN,2
航路)による働き
aceSc
a
l
eや緊張度,痕労度の結
とも考えられ, F
果から対照群に比ベラベンダー吸入は主観的にリラ
クセーションを f
尋やすいといえる。
フットマッサージによる心理的指標を表 l-B
(フットマッサージ刺激)に示したように,マッ
サージ群で POMSすべての下位尺度で気分状態の
改善がみられ,精油吸入群と異なり,活気の下位尺
度で得点が上昇していた。フットマッサージによる
POMSの「活気」の上昇は,先行研究(松岡・
0
0
0
,米山・八塚, 2
0
0
9
) でも確認されて
佐々木, 2
おり,活気といった気分状態には,精油吸入より人
の手で実施きれるマッサージの効呆が高いことが示
唆された。真鍋ら (
2
瓜ゆ)も,気分への影響には精
油よりマッサージの効果が相対的に大きいと指摘し
ており,活気というポジテイプな気分の変動効果が
マッサージにはあるといえる。また,フットマッ
サージでは F
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c
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l
eやストレス,緊張,疲労の
程度が有意に減少していたことから,主観的にリラ
クセーションを得られたといえる。
V
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. 結論
(
1
)
真正ラベンダーの吸入では,副交感神経の活動
充進といった影響ではなく,自律神経を安定維持さ
せることが示唆された。 (
2
)フットマッサージでは刺
激介入により交感神経の活動が克進するが.刺敬介
入終了後から副交感神経の活動も賦活される。 (
3
)
.
心
理的効果では,何らかの精油を吸入したという行為
が気分状壊に影響し.芳香する行為も心理的なリラ
クセ}ションに繋がるといえる。真正ラベンダーの
吸入およびフットマッサージともに主観的なリラク
セーション効果はあり.フットマッサージでは特に
活気といった気分を上昇させる効果がある。
精油の効果,マッサージの効果,それぞれの特性
を踏まえたアロマセラピーの実施に繋がる所見が得
られたと考える。
咽.研究の限界と課題
心拍のゆらぎは安静時に変動幅が大きくなるた
日
め,安静な姿勢を保持して行う本研究のような場
合,より対象数の確保が求められ,対象者を増やし
ての検討が必要である。また.同一実験条件下で.
アロママッサージによる影響の検討等を行うことも
重要と考える。臨床の場でアロマセラピーを有効活
用できるよう,さらに基礎的研究を深める必要があ
る
。
片岡秋子,北川裕子,渡遁憲子,柳原久孝(劉犯防)足部マッ
サージと腹式呼吸併用の生理的効果,日本看護医療学会
雑誌, 2
(
1
)
,1
7
2
4
.
木村真理,渡港映理,岸田聡子,今西二朗(加 1
2
)鎮静・覚
醒作用のある精油を用いたハンド・フットマッサージの
健常成人女性の心身に及ぼす効果,女性心身医学, 1
6
(
3
)
,2
6
8
2
8
2
.
古賀洋子,斉藤秀子,井上充(笈犯賂)産祷ケアにアロママツ
1(
1
)
,
サージを導入して,佐賀母性衛生学会雑誌, 1
1
6
1
9
.
謝辞
本研究の実施にあたり.ご協力いただいた皆様に
深謝いたします。
なお.本研究は大阪府立大学大学院看護学研究科
「 魅 力 あ る 大 学 院 教 育Jイ ニ シ ア テ イ プ 事 業 に よ る
共同研究補助金の助成を受け行った研究成果の一部
であり,日本健康心理学会第 2
0回 大 会 で 発 表 し た
ものを加筆修正したものである。
文献
浅野智絵美,伊藤輝子,Jl]野直子 (
2
瓜ゆ)グレ}プフルーツ
およびラベンダーの匂い刺殺による生理・心理機随への
影響, 日本味と匂学会誌, 16(3),臼3~36.
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池田三紀,松田久子,藤田愛ほか (
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)精油を用いたマッ
サージが運動後の身体的疲労の回復と気分の改善に与え
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.
井草理江,青木健,亀田真美ら (
2
0
0
8
) 看護ケアとしての足
部マッサージ中および終了後における自律神経活動指標
の評価,日本看護研究学会, 3
1(
5
)
,2
1
2
7
.
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.
今西三郎(却1
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) 補完・代替医療 メデイカル・アロマセラ
ピー改訂 2版,金芳堂,京都.
稲森義雄 (
1
9
9
8
):1
0章血行力学的反応.宮田洋監修,新生
理心理学 1巻
, 1
7
2
1
9
5
,北大路書房,京都.
∞
伊藤正敏.佐々木雅久.段旭東ら (
2 4
) ラベンダー香りの
生理効果に関する研究, J
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.
近藤正彦.平野隆博,岡村靖 (
1
9
8
9
) R -R間隔変動係数を
用いた正常月経周期における自律神経機能変動の検討,
日本産婦人科学会雑誌, 4
1(
5
)
,51
3
5
1
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.
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真栄城千夏子,宮城千賀子,宮城万里子ら (
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) ラベン
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性心身医学会雑誌, 7(
2
)
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.
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真鍋えみ子,松田かおり,五十嵐稔子ら (
2
卿)ラベンダー精
泊を用いた上肢トリートメントが自律神経活動と気分に及
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松岡治子,佐々木かほる (
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瓜)())マツザージによるリラク
セーション効果に関する実験的研究,看護技術, 46(
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6
),
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中部円香.手塚綾b,松本かおりら(却1
3
) 唾液中アミラー
ゼ活性を指標としたラベンダー・アングステイフォリア
芳香裕のストレス軽減効果の評価.ホリスティックサイ
エンス学術協議会, 1
1
0
.
NARDJAPAN (笈肪)ケモタイプ精抽事典,ナード・アロ
マセラピー教会,東京.
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) 女子学生を対象としたフットケ
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岡村明美 (
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) ケアとしての足浴産祷ケアとしての足浴
祷婦に対する足浴・リフレクソロジ- (フットマッ
サージ)の効果,臨床看護,お (
1
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),2
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6
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2
.
大久典子,山家智之,吉田克己 (
24
)香り刺激による心拍
変動と脳神経細胞の酸素代融自律神経, 4
1(
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,
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心理的反応による検証一, J
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津田幸展 (
1
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):9章心拍の計測と処理.宮田洋監修,新
生理心理学 1巻
, 1
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,北大路書房,京都,
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高田ゆき,前野ひろみ,中尾薫ら (
2 7
) フットマッサージ
が高齢者の身体的精神的苦痛に及ぼす影響,日本看護学
会論文集:地域看護, 3
7
,1
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1
0
.
谷田恵子 (
2
0
0
3
) 代替療法のエピデンス一芳香療法(アロマ
セラピー)一,臨床看護, 2
9(
13
),却44-加5
4
.
殿山望,黒田哲也 (
1
9
9
8
) アロママッサージの抹消循環に及
l
ます影響について(第 2報), 日本手技療法学会雑誌, 9
(
1
)
,5
1
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.
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5
) Aromachologyandi
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人木樺良子,稲垣絹代(広治8
) 認知症高齢者のアロママッ
2
,3
1
3
6
.
サ}ジによる行動菱化,神戸市看護大学紀要, 1
横山和仁,下光輝一,野村忍 (
21
2
) 診断・指導に活かす
POMS事例集,金子書房,東京.
米山美智代,人塚美樹(笈朋)生理的,心理的ストレス指標
からみた健康な成人女性に対するフットマッサージの効
果,日本看護技術学会誌, 8(
3
)
,1
6
2
4
.
吉田聡子,佐伯由香 (
2
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凹)香りが自律神経系に及ぼす影
3(
4
)
,1
1
1
7
.
響,日本看護研究学会雑誌, 2
∞
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