Importance of luxury flow for critically ill patients receiving a left
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Importance of luxury flow for critically ill patients receiving a left
●第 45 回日本人工臓器学会大会 論文賞(循環領域)受賞レポート Importance of luxury flow for critically ill patients receiving a left ventricular assist system 鳥取大学医学部器官制御外科学講座器官再生外科学分野 西村 元延 Motonobu NISHIMURA 心臓装着術症例 27 例について検討した。使用した補助人工 1. 目 的 心臓は,Toyobo(Toyobo, Osaka, Japan)21 例,HeartMate 左室補助人工心臓の臨床応用は,心臓移植へのブリッジ IP(Thoratec, Pleasanton, CA, USA)5 例,Hear tMate VE として,あるいは恒久的治療として,末期的重症心不全治 (Thoratec, Pleasanton, CA, USA)1 例であった。対象 27 例 療に画期的な生存率の向上をもたらした。一般的に,左室 の予後は,3 例は心臓移植へ移行,8 例は自己心機能が回復 補助人工心臓装着術の成否を握る鍵とされているものの一 し左室補助人工心臓離脱,1 例は補助中であり,これらを つは,患者の選択である。不可逆的なまでに進行した臓器 生存群とした。他の 15 例は左室補助人工心臓装着のまま 不全の存在や重症感染症は,左室補助人工心臓装着の適応 最終的に死亡したが,うち 8 例は左室補助人工心臓装着後, 外とされている。しかしながら,重症心不全により腎不全 臓器不全から完全に回復し病棟内歩行が可能となっていた 状態に陥った患者や,肝不全状態となった患者,あるいは ため,生存群に分類した。したがって,対象 27 例を生存群 肺炎などが循環不全のために遷延している患者には実際に 20 例,非生存群 7 例に分け,この 2 群間を比較した。 はよく遭遇し,そういった臓器不全が不可逆的なものかど うか,判断に迷うことも多い。また,さまざまな内科治療 3. 結 果 を試みている間に,尿量が確保しにくくなり腎不全状態に 表 1 に示すように,生存群と非生存群の間に差があった 陥った患者などの場合,腎不全が可逆的か不可逆的かなど のは,術後 pump flow index 2.5 l/min/m2 以上の因子のみ 判断することは困難であり,このような場合,左室補助人 であり,術前の腎不全の有無,呼吸不全の有無,あるいは 工心臓装着に踏み切らざるを得ないことも多い。実際, それらの 2 つ以上が重なった多臓器不全の有無などは有意 Aaronson らの報告では,透析を要するような急性腎不全に な差が認められなかった。 陥った症例の 70%が左室補助人工心臓装着により生存し, Pump flow index と各種臓器不全との関係について見る そのうちの 89%において完全に腎機能が回復したとして と,各臓器で差が認められ,呼吸不全では 2.0 l/min/m2 以 いる。 上,肝不全では 2.5 l/min/m2 以上,腎不全では 2.8 l/min/ 本研究の目的は,そのような臓器不全を伴った重症心不 m2 以上で有意に生存群が多かった。また感染症を合併し 全患者に対する左室補助人工心臓装着術を成功させる因子 たものでは,3.0 l/min/m2 以上で生存群が多くなる傾向が について検討することである。 認められた。 2. 対象および方法 4. 考 察 1993 ∼ 2003 年に埼玉医科大学で行われた左室補助人工 今回の検討で明らかになったことは,気管内挿管下に人 工呼吸管理されている,あるいは乏尿で利尿剤に対する反 ■著者連絡先 鳥取大学医学部器官制御外科学講座器官再生外科学分野 (〒 683-8504 鳥取県米子市西町 36-1) E-mail. [email protected] 応も悪くなったような重症心不全患者においても,左室補 助人工心臓装着による循環状態の改善により,予後が改善 する可能性が十分あるということである。しかも,左室補 人工臓器 37 巻 1 号 2008 年 19 表 1 各 Risk Factor の有無と左室補助人工心臓装着術後の生存との関係 Risk Factor Death if Risk Factor Present Death if Risk Factor Absent p value Renal Failure Respiratory Failure Hepatic Failure Active Infection Multisystem Failure On IABP and/or ECMO Pump Flow Index < 2.5 LA drainage 4/9(44%) 4/12(33%) 4/12(33%) 4/9(44%) 2/5(40%) 1/11( 9%) 4/6(67%) 3/8(38%) 3/18(17%) 3/15(20%) 3/15(20%) 3/18(17%) 5/22(23%) 6/16(38%) 3/21(14%) 4/19(21%) 0.18 0.66 0.66 0.18 0.18 0.18 0.02 0.63 IABP, intra-aortic balloon pumping; ECMO, extracorporeal membrane oxygenation; LA, left atrium. 助人工心臓装着術後の生存には,呼吸不全,腎不全,感染症, あるいはこれら臓器不全 2 つ以上の合併ですら有意な因子 5. まとめ ではなく,むしろ左室補助人工心臓による十分な流量補助 臓器不全を伴った重症心不全患者に対する左室補助人工 を行い,自己心の拍出もあわせた体循環の血流量を十分に 心臓装着にあたっては,術後 pump flow index を 2.8 l/min/ 高く維持することによって,呼吸不全,腎不全,感染など m2 以上,感染症を合併している場合には 3.0 l/min/m2 以上 の臓器不全を克服できる可能性が高くなるということであ に維持することが,臓器不全の克服に必要である。 る。ここで示された pump flow index の目安は,2.8 l/min/ m2 あるいは 3.0 l/min/m2 といった非常に高い血流量であ 謝 辞 り,このような血流量を維持できなければ,臓器不全を克 この研究は,埼玉医科大学・許 俊鋭教授(当時,現・名 服できない可能性が高い。したがって,左室補助人工心臓 誉教授)のご指導のもと,埼玉医科大学心臓血管外科チー 装着術後早期の臓器不全が克服できていない時期には,で ム総力であたった左室補助人工心臓治療の蓄積により得ら きれば Swan-Ganz カテーテルで,左室補助人工心臓の補助 れたものである。また,このデータの大部分は田邊大明講 流量を含めた total の output を持続的に評価しながら,2.8 師(当時,現・心臓血管研究所付属病院心臓血管外科)によ l/min/m2 以上,感染症を合併している場合には 3.0 l/min/ り集積されたものである。この研究を論文賞に選んでくだ m2 以上となるように,カテコラミンなど強心剤の投与量や さった福井康裕理事長はじめ,理事,評議員および会員の 前負荷を調節することが肝要である。術後,尿量が十分で 先生方にあらためて感謝申し上げますとともに,この栄誉 ないなど臓器不全兆候が遷延するにもかかわらず,十分な は,昼夜を問わず重症心不全患者の治療にあたった埼玉医 体循環流量が維持できないような場合には,右室補助人工 科大学心臓血管外科のスタッフとレジデントの先生方,お 心臓の装着も念頭に置くべきであろう。 よび ME サービス部のスタッフの方々すべてのものである ことを最後に申し添えさせていただきます。 20 人工臓器 37 巻 1 号 2008 年