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「財政は破綻しない」

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「財政は破綻しない」
「財政は破綻しない」
(はじめに)
消費税の増税が議論になっています。日本の財政赤字が巨額だから、という
事ですが、では増税しなければ何が起きるのでしょうか?今回は、人々が漠然
と懸念している「財政の破綻」という事について、頭の体操をしてみましょう。
(国家財政の破綻とは)
企業が借金を返せなくなったら、破産します。財産は銀行に差し押さえられ、
社員は失業します。
地方自治体が借金を返せなくなったら、住民へのサービスが大きく低下しま
す。ゴミ収集の頻度が下がり、警察や消防といったサービスも削られて住民生
活の安心感が低下します。そうなれば、人々が他の自治体に流出し、納税額が
減りますから住民サービスが一層悪化する、といった悪循環が生じます。
しかし、国家財政が破綻しても、それほど悲惨な事にはなりません。ギリシ
ャ政府は、外国からの借金を半分以上踏み倒しましたが、外国の銀行が世界遺
産の遺跡を差し押さえる事もなく、ギリシャ国民が家を失って流浪の民となる
事もありませんでした。極端を言えば、
「少ない労働で高い所得を得ていたギリ
シャの公務員が民間人並みになっただけ」です。
外国からの借金を踏み倒したギリシャでさえも、この程度ですから、日本政
府が日本国内で借りている日本国債がデフォルト(=債務不履行、踏み倒し)
したとしても、日本人の生活が根本から破壊される事にはならないのです。
もっとも、幸か不幸か日本人はギリシャ人と違って律義であり、政府が借金
を踏み倒すなどと言う事を安易には考えないでしょうし、恥の意識も強いです
から、様々な犠牲を払っても借金を踏み倒さないように頑張るでしょう。
では、犠牲さえ払えば借金は返済できるのでしょうか?
(国債の日銀引受)
政府が国債を償還(国債の満期日に借金を返済すること)するためには、新
しい国債を発行して得た資金を用いるのが最も普通です。どんなに日本政府の
借金が積み上がっても、新しい国債を発行して買ってもらえる間は、国債がデ
フォルトする事はあり得ません。したがって、デフォルトが問題となり得るの
は、人々が日本政府の返済能力を信じなくなり、新しく国債を発行しても買っ
てもらえない場合に限られます。
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国債を誰も買ってくれないような場合でも、心配はいりません。日銀が国債
を引き受ければよいのです。これは、政府が発行した国債を日銀が買うことで
すが、要するに日銀が紙幣を印刷して政府に貸し出すことです。
借りた紙幣を用いて政府が国債を償還すれば、国債はデフォルトしません。
ギリシャはユーロという共通通貨を使っているため、中央銀行が勝手に紙幣を
印刷して政府に貸し出す事は出来ませんが、日本ならば可能です。
(インフレ?)
「そんな事をしたら、世の中におカネが出回り過ぎてインフレになってしま
う」という人がいますが、本当でしょうか?現在の日本で、国債を持っている
のは主に銀行です。銀行の金庫にはいっている「国債」が「日本銀行券=札束」
にすり替わっただけで、本当にインフレになるのでしょうか。大いに疑問です 1。
インフレになるためには、景気が良くなって、企業が設備投資のために銀行
から借金をし、家計が住宅投資のために銀行から借金をし、日本銀行券が銀行
から世の中に出て行く必要があります。
たとえば住宅ローンが増えて住宅投資が増えても、簡単にはインフレになり
ません。借り手は、木材を購入するでしょうから、木材の企業は失業者を雇っ
て木材を増産するでしょう。雇われた失業者が給料を受け取って、老後のため
に貯金をすれば、日本銀行券は銀行に戻り、それで終わりです。
インフレになるのは、木材が飛ぶように売れ、品不足になり、木材の企業が
増産しても追い付かなくなった時です。そうなると、人々が木材の一層の値上
がりを予想して「買い急ぎ」を始めるでしょう。そのために、銀行から借金を
するので、世の中に日本銀行券が一層出回る事になるでしょう。
しかし、こうした事は実際には起きそうもありません。政府の発行した国債
を誰も買わないような時に、企業や個人が設備投資や住宅投資の資金を銀行に
借りに行ったとしても、銀行が喜んで貸出をするとは思えないからです。
世の中におカネが出回る可能性として、現実的なのは、人々が銀行を信用し
なくなって、銀行預金をおろしてタンス預金をはじめる場合です。この場合も、
簡単にはインフレにはなりません。人々のタンスの中にあった銀行預金通帳と
印鑑が札束にすり替わっただけで、人々が老後のためにタンス預金をしている
1
実際には、銀行は金庫内の札束を日銀に預けますから、銀行の金庫の中には
日銀の発行した預金通帳があり、その残高が増えるだけ、という事になります。
ちなみに、銀行が日銀に預けている預金を「準備預金」と呼びます。
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以上、何も変わらないからです。
「銀行預金ならば使わずに我慢できるが、財布
やタンスに現金があると我慢できずに使ってしまう」、という人も中にはいるで
しょうが、多数派とは思われません。
こうして見ると、世の中におカネが出回っただけでは、簡単にはインフレに
ならないのです。従って、日銀が国債を引き受けても、ただちに問題が生じる
というわけではありません。
もちろん、インフレの可能性が無いわけではありません。何らかのきっかけ
で、人々がインフレを予想しはじめると、タンス預金を使った「買い急ぎ」が
生じるからです。たとえば20年後に、超高齢化時代を迎え、労働力が不足し
て物不足の時代になったとすれば、インフレが生じても不思議ではありません。
(大増税)
インフレになるとすれば、インフレを抑え込む必要があります。通常であれ
ば金融引締め政策を用いるのでしょうが、財政赤字が膨らみ過ぎて国債が発行
出来ないような事態ですから、背に腹は代えられず、増税による景気抑制が選
択されるでしょう2。
そうなると、国債を償還するために日銀から借りた資金が増税で回収でき、
政府は日銀に借金を返済する事が出来、財政は一気に健全化するはずです。
(まとめ)
今回の話を簡潔にまとめてみましょう。①新しい国債が発行できれば、過去
に発行した国債は償還できる。②新しい国債が発行できなければ、日銀から借
金して国債を償還すればよい。③その結果、インフレにならなければ問題ない
し、インフレになったら増税して緊縮財政による景気抑制を図ればよい。④し
たがって、いずれにしても財政が破綻する事はなく、日本経済が壊滅的な打撃
を被る事もない。
今回は、以上です。
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実際には、第二の理由として、
「金融引締めに通常用いられる売りオペが出来
ないから」という事もあります。預金準備率を引き上げれば良いのですが、銀
行預金が大量に流出している状況では採りにくい手段と言えましょう。また、
超高齢時代には、恒常的にモノ不足ですから、恒常的にインフレ圧力が続くた
め、恒常的に引き締めておく必要がある事も理由の一つです。財政金融政策を
機動的に引き締めたり緩めたりする必要がある時には、金融引締めの方が便利
なのですが、そうした必要がないので緊縮財政が採りやすいのです。
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