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羊水細胞の性染色体数異常
07e 羊水細胞の性染色体異常 羊水細胞の性染色体数異常 羊水細胞の染色体分析で性染色体数異常は少な 立つ点はありません。複数の筋肉の協調運動を必要 いのですが、表現型の推定が難しいので説明します。 とする作業は苦手です。言語 IQ は 20 低下。半数で 出生前診断で性染色体数の異常を発見したが妊娠 言語理解能力・会話能力が低下。学習障害と補習授 を継続し出生後もできるだけ長い間 followfollow-up した 業の必要性が予期されますが、特殊教育を必要とす 例を多数集めることが、信頼できるデータを得る方 るのは少数です。行動異常はありません。 法です。此処に述べるのは、不完全ですが現時点で 3.47,XYY 3.47,XYY 入手し得る最良のデータです。 Robinson et al. (1989 (1989) 1989) の経験では、羊水細胞の Evans et al. (1990 (1990) 1990) が XYY 男児・若者 39 人を調 分析で胎児が XYY, XYY, 45,X, 45,X, XXX, XXX, XXY で妊婦が選択 査した結果では大多数は身長が高く、性行動・生殖 的流産を選ぶ率は、それぞれ 32%, 32%, 44% 44%, 35%, 35%, 45% 能力は普通です。IQ 能力は普通です。IQ は正常範囲にあるが、兄弟より (平均 38%)です。文献調査では 38%)です。文献調査では 57%, 57%, 74%, 74%, 56%, 56%, は低い。忍耐力が低く、些細な刺激で暴発する傾向 75%(平均 75%(平均 67%)で、明らかに差があります。カナ 67%)で、明らかに差があります。カナ があります。Ratcliffe があります。Ratcliffe et al. (1990 (1990) 1990) がスコットラン ダの Christian et al. (200 (2000) 2000) の 19761976-1997 年の経 ドで XYY 男児 10 人の卒業後の職業を調査し、市場 験では、近年になるほど妊娠を継続する割合が多く、 の売り子・料理人・兵卒・ウェイター・スーパーマ ほぼ 50%に達しています。 50%に達しています。47,XXX に達しています。47,XXX と 47,XYY の妊 ーケットの助手・ビデオ店の助手・テクニシャン・ 娠継続率が高く 45,X と 47,XXY が低いのは、後者 労働者・絵描きの修行中でした。 が不妊になるためと思われます。超音波検査で異常 4.45,X 4.45,X( 45,X(Turner 症候群) を認めたら選択的流産を選ぶ傾向があります。 45,X は出生前の死亡率が高いのが特徴で、自然流 1.47,XXY 1.47,XXY (Klinefelter 症候群) 症候群) 産の 45,X の頻度から推定して 45,X の胎児 200 人中 IQ は平均より 10~ 10~15 低く、会話・学業(読解・ で出生に至るのは一人に過ぎません。羊水分析で 45,X と診断された 3/4 は出生前に流産します。 スペル)に問題を抱えることを予期すべきです。成 人すれば不妊になることはほぼ確実で、陰茎は普通 低身長を伴いますが、成長ホルモンの投与がある の大きさだが睾丸は小さく、他方アンドロジェンの 程度効果があります。不妊は殆ど必発で、月経周期 不足はテストステロン投与によって補うことがで は発来しないことが多く、発来しても不順です。翼 きます。12 歳でテストステロンの投与を開始すべき 状頚、大動脈縮窄を伴うことがあります。IQ 大動脈縮窄を伴うことがあります。IQ は同胞 だとする説と投与に反対する説がありますが、投与 よりは低い傾向がありますが、知的障害には入りま は男性化、自信、活性化、集中力の向上、性的好奇 せん。学習障害の可能性があります。個人によって せん。学習障害の可能性があります。個人によって 心をもたらします。女性化乳房は 50%に認め一過性 50%に認め一過性 表現型の差が大きいことを考えに入れるべきです。 のことが多いが、持続すれば手術します。性格は引 5.45,X/46,XX 5.45,X/46,XX モザイク っ込み思案・恥ずかしがり・未熟・慎重などの形容 で表現され、先生の受けは良く、問題を起こしませ Koeberle et al. (1995 (1995) 1995) が羊水分析で発見した 12 ん。Nielsen ん。Nielsen and Wohlert (1991) が 6 人の XXY 男 人(10 人(10 人は 45,X が 20%~ 20%~70% %~70%)を生後 70%)を生後 3 カ月~10 カ月~10 児を出生から 1515-19 歳まで追った結果は5人が補習 年 follow up したデータがあるだけです。出生後の 授業を必要とし、将来の志望は大工・肉体労働・未 血液リンパ球または皮膚繊維芽細胞の分析では 9 人 熟練労働・庭師・機械工・未決定でした。 にモザイクを証明し、うち 8 例では 45,X 細胞の頻 度は羊水細胞より低くなっていました。残りの 3 例 2.47,XXX 2.47,XXX では 45,X 細胞を認めませんでした。Turner 細胞を認めませんでした。Turner 症候群 身長は高い傾向がありますが、肉体的には特に目 の症状を呈した例はなく、腎異形成・尿生殖洞が1 1 07e 羊水細胞の性染色体異常 Christian SM, Koehn D, Pillay R, MacDougall A, 例、発達遅滞・痙攣・眼瞼下垂が1例、心房中隔欠 例、発達遅滞・痙攣・眼瞼下垂が1例、心房中隔欠 損が1例でした。1例で卵巣機能の早期不全を示唆 Wilson RD: Parental する所見(3 する所見(3 カ月で LH/FSH の上昇)を得ました。 pre prenatal 羊水で 45,X 細胞が 20%以下の 20%以下の 2 例は何れも表現型 ane aneuploidy: uploidy: A trend over time. Prenat Diagn 異常はありませんでした。このデータの解釈は難し 20:37−40, 20:37 40, 2000. diagnosis decisions of sex following chromosome いのですが、胎生期に 45,X/46,XX 核型を示す者の Evans JA, Hamerton JL JL, Robinson A: Children 大部分は生後 Turner 症候群の臨床症状を呈しない and young adults with sex chromosome と言えましょう。ただし、生後 3 カ月~2 カ月~2 歳の間に ane aneuploidy. FollowFollow-up, clinical, and molecular LH/FSH を測定しておくべきです(Koeberle を測定しておくべきです(Koeberle et al., studies. 1995) 1995)。 26(4):31 1991. 26(4):31−44, 31 Hsu 6.45,X/46,XY 6.45,X/46,XY LY: Birth Prenatal Defects Orig diagnosis diagnosis of Art Ser 45,X/46,XY mosaicism— mosaicism—a review and update. Prenat 生 後 に 発 見 さ れ る 45,X/46,XY は 、 典 型 的 な Diagn 9:31−48, 9:31 48, 1989. Turner 症候群から外性器の異常を伴う男児・表現型 Koeberl DD, McGillivray B, Sybert VP: Prenatal 正常な男児にわたる種々の表現型を示します。これ diagnosis of 45,X/46,XX mosaicism and 45,X: に対して、出生前診断で発見されその後出生した例 Implications for postnatal outcome. Am J の大部分は、表現型正常の男児です。Hsu (1989) が Hum Genet 57:661−666, 57:661 666, 1995. 出生前診断により得た 54 例では 90%が正常男児で 90%が正常男児で Linden MG, Bender BG: FiftyFifty-one prenatally した。しかし、表現型異常の可能性が 10%あること 10%あること diagnosed children and adolescents with sex は留意すべきでしょう。45,X/46,XY 児の4歳以後の chromosome abnormalities. Am J Med Genet 発達については適当なデータがありません。Y 発達については適当なデータがありません。Y 染色 110:11−18, 110:11 18, 2002. 体セントロメア近傍の GBY (gonadoblastoma; GB) Müller J, Skakkebaek NE: Gonadal malignancy 遺伝子が作用して生殖芽細胞種を発症する危険が 遺伝子が 作用して生殖芽細胞種を発症する危険が in individuals with sex chromosome anoma anomalies. あ り 、 そ の 発 見 と 処 置 に つ い て は Müller and Birth Skakebaek( Skakebaek(1990)の総説があります。 1990)の総説があります。 26(4): 26(4):247−2 247 255,1990. Nielsen どの性染色体異常でも、家庭の環境・サポートが Defects J, Orig Wohlert M: Art Se Ser Chromosome 大 き く 影響 す る こと は 言う ま で もあ り ま せん 。 abnormali abnormalities found among 34,910 newborn Lin Linder and Bender (2002) は出生前診断で同定し children: Re Results from a 1313-year incidence た性染色体数異常 51 例と新生児の染色体スクリー study in Aarhus, Denmark. Hum Genet ニングで見出した性染色体数異常を比較して、前者 87:81−83, 87:81 83, 1991. が後者より予後が良い傾向を示したと述べていま Ratcliffe SG, Butler GE, Jones M: Edinburgh す。出生前診断で性染色体数異常と知って妊娠を継 study of growth and development of of children 続した親は社会的階層が高く、性染色体異常を生ま 続した親は社会的階層が高く、性染色体異常を生ま with sex chromosome abnormalities. IV. Birth れる前から知っていて、サポートするからだと考え Defects Orig Art Se Ser 26(4):1−44, 26(4):1 44, 1990. ています。この報告では新生児の染色体スクリーニ Robinson A, Bender BG, Linden MG: Decisions ングで発見した性染色体異常は成人に達している following the intrauterine diagnosis of sex が、、出生前診断で同定した者は 18 歳以下で、この chromosome aneuploidy. 年齢差が結果に影響している可能性もあります。 34:552−554, 34:552 554, 1989. Am J Med Genet 梶井 [2004 [2004 年5月 10 日] 文献 2