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サウンドエフェクトの及ぼす楽曲印象の分析
平成 24 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会 講演番号: 41 サウンドエフェクトの及ぼす楽曲印象の分析 A-16 Analysis of Music Impression by Sound Effects 木村 優希 Yuki Kimura 島村 徹也 Tetsuya Shimamura 埼玉大学 工学部 Faculty of Engineering, Saitama University はじめに 音楽と人間の感情には結びつきがあると考えられてい る.実際,心理状況に応じた音楽を聴くことにより様々 な効用を得る場面も多い.一方,現代の音楽制作におい てはサウンドエフェクトによる音作りが必要不可欠で ある.映画やゲームなどのマルチメディアなど我々の触 れる多くの場面でエフェクト技術が用いられている.で は,人間の感情と音楽を効果的に変化させるエフェクト には結びつきがあるのか.この点に着目し,本研究では エフェクトにより楽曲を変化させた際の聴者の印象の分 析を行う. 表 1: 感性語対 1 聴取実験 エフェクトが楽曲に付与する印象を分析し数理的に表 現することを可能とするため,エフェクトをかける前と かけた後の楽曲を聴取比較し,印象の調査を行う. 印象番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 2 2.1 2.5 表 2: 全評価値の左:最頻値,右:分散 ディレイ エフェクトは実に数多くの種類が存在し,現在もなお 新たなエフェクトが生み出されている.それらのエフェ クトは様々な分類方法が考えられるが,一般的には音の 変化の効果で次のように分けられる. レベル制御系(ダイナミクス系) 音圧の調整をする 評価方法 12 種類の感性語対を用いた 5 段階尺度の SD 法に基づ いた印象評定を行う.用いる感性語対は表 1 に示す. 2.3 楽曲作成 一般に耳馴染みのあると思われるクラシック曲 2 曲の印 象的な一部分を実験に用いる楽曲とする.Windows の標 準音源の Piano 1 を用いた MIDI 形式で作成し,WAVE 形式に変換する.次に MATLAB 上で 5 種類のエフェク トを再現・作成し,それぞれをかけた楽曲を作成する. 2.4 実験手法 エフェクトをかける前の楽曲を先,かけた後の楽曲を 後にした楽曲対を,各エフェクトを楽曲毎にランダムに 提示し,評価してもらう.全被験者による評価値の最頻 値を印象値とする.ただし,分散が 1 以上である評価値 については不適切と判断し,分析対象から取り除いた. -41- フランジャ リバーブ 1 -2.0 0.495 -2.0 0.235 -1.0 0.499 2 1.0 1.552 -1.0 1.048 -1.0 1.222 3 0.0 0.941 -1.0 0.746 1.0 1.259 4 0.0 1.036 -1.0 0.888 -1.0 1.031 5 -1.0 0.792 -1.0 0.618 -1.0 1.390 6 0.0 0.728 -1.0 0.953 1.0 0.832 7 1.0 0.743 -1.0 0.581 0.0 0.951 8 0.0 0.686 0.0 0.402 1.0 1.226 9 1.0 0.938 0.0 0.479 0.0 0.820 10 0.0 0.467 0.0 0.836 0.0 0.613 11 0.0 0.332 0.0 0.637 0.0 0.630 12 0.0 0.686 0.0 0.609 0.0 0.973 時間制御系(空間系) 響きをシミュレートする モジュレーション系 音に揺れを与える 周波数特性制御系(フィルター系) 音質補正や音の強調 歪み系(ディストーション系) 音を増幅させ歪ませる 2.2 結果 被験者 21 名による印象値は表 2 のようになる. エフェクト 本実験では,レベル制御系のエフェクトは音の変化が小 さく明らかではない場合が多いため用いない. 5 段階評価 -1 0 +1 +2 不安定 ― 安定 滑らか ― 粗い 軽い ― 重い 柔らかい ― 硬い 不透明な ― 透き通った 暗い ― 明るい 弱々しい ― 力強い 薄い ― 厚い 穏やか ― 激しい 悲しい ― 楽しい 冷たい ― 温かい おとなしい ― 元気な -2 オーバー ドライブ 0.0 0.832 0.0 0.499 1.0 0.451 1.0 0.491 0.0 0.599 0.0 0.772 2.0 0.284 1.0 0.533 1.0 0.382 0.0 0.499 0.0 0.353 1.0 0.332 ワウ -2.0 0.0 -1.0 -1.0 -2.0 0.0 -1.0 -1.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.544 0.577 1.392 0.771 1.239 0.743 0.728 0.744 0.512 0.484 0.563 0.764 考察・まとめ ディレイ,フランジャ,ワウにおいて不安定,不透明 な傾向が強い.上記 3 つはどれも周波数の時間的な変動 を利用したエフェクトであるため,似通った傾向が表れ たように考えられる.また,リバーブ,オーバードライ ブはどちらも多少音量が大きくなる効果のあるエフェク トだが,明るい,力強い,厚い,激しい傾向が見られ, これらの印象語対の分類 [1] から音量と活動性の高さの 関連性が窺える. 今後の発展としては,各楽曲の特徴量を抽出して印象 語との関連の分析を行うことができる.また,今回の実 験を予備実験とし,各エフェクトのパラメータを変化さ せた楽曲の ME 法による評価実験が考えられる. 3 参考文献 [1] 杉原ら, ”SD 法を通してみた音楽に対する感性の基本 特性,” 映像情報メディア学会技術報告 25(48), 57–63 (2001). Copyright © 2013 IEICE