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知能表現を行う群ロボットを目指した 小型ロボットの製作
知能表現を行う群ロボットを目指した 小型ロボットの製作 高知工科大学 知能機械システム工学科 知能ロボティクス研究室 学籍番号 1030157 矢萩孝志 2003年 2月 I 目次 目次 第一 章 序章 ...................................................1 1. 1 はじめに 1. 2 本研究について 1. 2 .1 研究背景 1. 2 .2 研究目的 1. 2 .3 群ロボットとは 第二 章 移動ロボットの製作 2. 1 コンセプト 2. 2 DC モータ .....................................3 2. 2 .1 ブラシ付き DC モータ 2. 2 .2 DC モータ特性 2. 2 .3 DC モータの電気的特性 2.3 モータの制御 2. 3 .1 モータの ON/OFF 制御 2. 3 .2 H ブリッジ制御回路 2. 3 .3 ドライバ IC 2. 4 PIC 2.4.1 PIC とは 2. 4 .2 PIC16F877 2.5モータ駆動回路 2.6 リモコン入力 2.7 移動ロボット II 目次 第三 章 距離センサを用いた自律ロボット 3. 1 距離センサ 3. 1 .1 超音波センサ 3. 1 .2 赤外線センサ 3. 1 .3 PSD センサ 3. 1 .4 性能比較 3. 2 PIC の A/D 機能 3. 3 PWM 制御 3. 4 自律ロボット 第4章 小型 化 の検 証 4. 1 小型・軽量化 4. 2 小型部品 ...........................................28 4. 2 .1 小型モータ 4. 2 .2 小型電池 4. 2 .3 PIC フラットパッケージ 4. 2 .4 小型モータードライバ 4. 2 .5 小型カメラ 4. 3 小型化の利点 第5章 結章 5. 1 本研究のまとめ 5. 2 今後の展開 参考 文 献 謝辞 ........................18 ...................................................35 .......................................................36 ...........................................................37 第1章 1 序章 第1章 1.1 序章 はじめに 近 年 よく 見 られ る 複 数の 移 動ロ ボ ット を 用 いた 工 場内 の 生産 ラ イ ンシ ス テ ム等 は ,多 く の場 合 , 集中 管 理に よ って 制 御 され る .し か し, こ の よう な 集 中管 理 型の シ ステ ム で は効 率 が良 い 反面 , 柔 軟性 の 欠如 等 問題 点 が 指摘 さ れ てい る .非 常 時の 対 応 や素 早 い状 況 変化 に 柔 軟に 対 応す る ため に 集 中管 理 型 シス テ ムに 替 わる シ ス テム が 必要 に なっ て き た. よ って そ れぞ れ の ロボ ッ ト に自 律 性を 持 たせ , シ ステ ム の分 散 管理 を 目 的と し た自 律 分散 ロ ボ ット シ ス テム が 提案 さ れ, 盛 ん に研 究 が行 な われ て い る. し かし 集 中管 理 型 シス テ ム より 効 率が 劣 る自 律 分 散ロ ボ ット シ ステ ム を 実用 域 に達 す るた め に はコ ス ト をいかに落とすかが課題となってくる. 1.2 本研究について 1.2.1 研究背景 現 在 存在 す るロ ボ ッ トの 多 くが 単 一で ど れ だけ 複 雑な 動 作を 行 う こと を 追 求し て いる . 一方 , 近 年の ロ ボッ ト 技術 の 発 展は 目 覚し く 小型 多 機 能化 が 進 んで い る. し かし 単 体 のロ ボ ット で でき る 仕 事に は 限度 が あり , 極 端な 多 機 能化 は 逆に 効 率の 低 下 に繋 が るこ と が知 ら れ てい る .そ こ で近 年 , 仕事 を 複 数の ロ ボッ ト に分 担 さ せて 一 つの 目 的を 達 成 させ る 群ロ ボ ット シ ス テム の 研 究が行われている. 第1章 1.2.2 序章 2 研究目的 複 数 台の ロ ボッ ト を 同じ 空 間内 で 作業 さ せ るに は ロボ ッ ト間 の 連 携が 不 可 欠に な って く る. 本 研 究で は 群行 動 に必 要 最 小限 な ロボ ッ トを 製 作 する . こ れは 後 に群 行 動さ せ る ため , 無駄 な 機能 を 削 除し シ ステ ム 全体 の 量 産, 小 型 化を念頭においているためである. 1.2.3 群ロボットとは 本 研 究で 言 う群 ロ ボ ット と は「 あ る目 的 を 達成 す ため に 協調 作 業 を行 う 複 数台 の ロボ ッ ト」 の こ とで あ る. 例 えば 餌 を 運ぶ 蟻 を思 い 浮か べ て 欲し い . 個体 と して の 蟻は 餌 を 運べ る 量に 限 界が あ る .し か し蟻 の 群れ と し ては ど う だろ う か. 何 十匹 と 集 まっ て 一固 体 の何 十 倍 もあ る 虫を 運 ぶ様 子 , 列を な し て砂 糖 を運 ぶ 蟻の 群 な どを を みる と 一固 体 の 能力 の 低さ を 複数 集 ま る事 で 補 って い る様 子 がよ く わ かる . 群ロ ボ ット と は この よ うに 複 数集 ま り 固体 の 能 力以上を発揮できるロボットである. 第2章 第2章 2.1 3 移動ロボットの製作 移動ロボットの製作 コンセプト 今 回 移動 ロ ボッ ト を 製作 す るに 当 たっ て 高 度な 制 御用 コ ンピ ュ ー タや 複 雑 な移 動 機構 は 必要 と し ない . よっ て 制御 部 に マイ ク ロコ ン ピュ ー タ ,駆 動 部 に DC ブラ シ 付き モ ー ター に よる 二 輪独 立 の 差動 駆 動方 式 を採 用 す る. 理 由 とし て は機 構 がわ か り やす く 方向 転 換が 容 易 で制 御 も簡 単 なた め で ある . ま た入手性やコスト面でも優位で選択の幅が広がる利点もある. 2.2 DC モータ 2.2.1 ブラシ付き DC モータ モータとは電機エネルギーを回転としての機械エネルギーに変換する装 置です.ほとんど全てのロボットのアクチュエータとして採用されている. ブラ シ 付 き DC モ ー タ は固 定 子に 永 久磁 石 を 使い ,回転 子( 電機 子 )に コ イル を 使っ て 構成 さ れ たも の で, ブ ラシ に よ り電 機 子に 流 れる 電 流 の向 き を 切り 替 える こ とで 磁 力 の反 発 ,吸 引 の力 で 回 転力 を 生成 さ せる も の です . 一 般に D Cモ ー タは 回 転 の制 御 がし 易 く, 制 御 用モ ー タと し て非 常 に 優れ た 特 性を 持 って い ると い わ れて い る. 一 般的 な 市 販モ ー タの 構 造は 図 2.1 の 様 になっている. 第2章 図 2.1 2.2.2 4 移動ロボットの製作 ブラシ付き DC モータ DC モータ特性 DCモータの特性として下記が特徴的なことです. (1)起動トルクが大きい (2)印加電圧に対し回転特性が直線的に比例する (3)入力電流に対し出力トルクが直線的に比例し かつ出力効率が良い (4)制御性に優れる (5)低価格 以上のことよりロボットの製作に非常に適しているといえる. 第2章 移動ロボットの製作 2.2.3 DC モータの電気的特性 5 (1)T-I 特性(トルク対電流) 流した電流に対して,きれいに直線的にトルクが比例する. (2)T-N 特性(トルク対回転数) トルクに対し回転数は直線的に反比例する. (3)印加電圧特性 また 印 加電 圧 に対 し て 回転 数 が比 例 し, 図 2.2 のよ う に平 行 に移 動さ せ たグラフとなる. 図2.2 DC モータの特性図 第2章 2.3 6 移動ロボットの製作 モータの制御 2.3.1 モータの ON/OFF 制御 モー タ を On/Off 制御 する 時 の基 本 回路 に は 幾つ か あり , 今回 は 代 表的 な ものを紹介する. (1) トランジスタ駆動(エミッタ負荷) 図 2 .3 の 回路 の よ うに 配 置し , トラ ン ジ スタ を On/Off する こ とで , モ ータ を On/Off させ る .し か し, こ の回 路 は トラ ン ジス タ を完 全 に 飽和 し た On 状態 には で きず ,Vce が大 き いの で 電圧 ロス が 大き く なる .動 作と し ては , 自動 的 に負 帰 還が 働 く ため 動 作は 安 定す る . この た め, 簡 易な 速 度 制御 を 行 うためオペアンプを追加した回路が使われる事が多い. 図2.3 エミッタ増幅回路 (2)トランジスタ駆動(コレクタ負荷) 図 2 .4 の よう に モ ータ を トラ ン ジス タ の コレ ク タの 負 荷と し た もの で , トラ ン ジス タ を完 全 に 飽和 し た On 状態 で 駆 動で き るた め ,ド ラ イ ブ能 力 が 大き く 電圧 ロ スも 少 な く出 来 る. 従 って , 一 般的 に はこ の 回路 が 多 用さ れ て 第2章 7 移動ロボットの製作 いる. 図2.4 2.3.2 コレクタ増幅回路 H ブリッジ制御回路 モー タ の On/Off 制御 はト ラ ンジ ス タを 用 い た増 幅 回路 で 制御 が 可 能だ が 回転 の 向き を 変え た い 時に は 電圧 の プラ ス マ イナ ス を逆 に しな く て はな ら な い. し かし こ の動 作 は 単一 の トラ ン ジス タ の みで は 不可 能 です . そ こで , 単 一の 電 源で モ ータ に 加 える 電 圧の 向 きを 変 え られ る 回路 と して 「 H ブリ ッ ジ 回路 」 を用 い る. 基 本 構成 は 図2 . 5の 様 に なっ て おり , H型 を し てい る こ とからこう呼ばれている. 第2章 8 移動ロボットの製作 基 本 動作 は ,Q 1 と Q4 の トランジスタだけを同時に On と する と ,青 線 の 様に 電 流が流れ,モータは正転す る. 逆 に Q2 と Q3 だ け を On とす れ ば,赤 線の 様 に 電流 が 流れ,モータは逆転する. Q3とQ4だけを同時に Onと 図2.5 H ブリッジ制御回路 するとモータにブレーキを かける. 2.3.3 ドライバーIC 最近 で は上 記の H ブ リッ ジ 制御 回 路が 一 つ の IC に パッ ケ ージ 化 され た もの も市 販 され て いま す . 今回 用 い る TA8429H(写 真 2. 1 )は 東 芝 製の 「DC モー タ 用フ ル ブリ ッ ジ 」と 呼ば れ るも の で ,H ブリ ッジ ド ライ バ ー とそ の 制 御回 路 を内 蔵 した H ブリ ッ ジド ラ イバ ーIC で す. ト ラン ジ スタ で H ブ リッ ジ回 路 を組 む より 少 ス ペー ス ,高 精 度化 が で る. の 特徴 と して は 平 均3 A,瞬 間値 で 4.5A の 大電 流 を流 す こと が でき る . 制御 端 子 2 本 への 信 号で 正 転, 逆転 ,ブ レー キ ,スト ップ の 4 モ ー ド をコ ン トロ ー ルで き ,しか も 加熱 に よ る阻 止 の破 壊 を防 ぐ 熱 遮断 回 路と 過 電流 に よ る阻 止 の破 壊 を防 ぐ 過 電流 防 止 回路 が 内蔵 さ れて い る .モ ー ター 系 と制 御 系 の電 源 は独 立 して お り ,モ ー タ 系は 2 7V ま で ,制 御系 は 7V~2 7V と なっ て いる . 各ピ ン の 仕様 は 図2 . 第2章 9 移動ロボットの製作 6の様になっている. 写真2.1 図2.6 TA8429H TA8429H 仕様 第2章 移動ロボットの製作 2.4 PIC 2.4.1 PIC とは 10 PIC( Peripheral Interface Controller)と は ,米 国 マイ ク ロチ ッ プテ ク ノ ロジ 社(Microchip Technology Co.) が開 発 した ワ ンチ ッ プマ イ コ ンの こ とで す .PIC には 数 多く の 種類 が あり ,大 き く分 けて ベ ース ラ イン シ リ ーズ ,ミ ッド レ ンジ シ リー ズ ,ハイ エ ンド シ リー ズ の 3 シ リー ズ の分 け ら れる .ま た, これ ら のシ リ ーズ 間 で もア ー キテ ク チャ が 共 通に な って い るた め , 上位 交 換 した場合でもほとんど同じプログラムで動かすことができる利点がある. PIC は本 来 ,コン ピ ュ ータ に 接続 さ れる 周 辺 機器 と の接 続 部分 を 制 御す る た めに 開 発さ れ た「 マ イ クロ コ ンピ ュ ータ 」 と 呼ば れ る領 域 の IC で あり , 高 機能 , 高速 性 を追 求 し ない か わり に 周辺 機 器 を制 御 する の に便 利 な 機能 を 内 蔵し て いる .最新 の マ イク ロ コン ピ ュー タ に 比べ る と PIC の 命令 数は 少 なく , 35 個 しか な いと い う 簡素 な 構造 に なっ て い る .よ っ て使 い やす く 安価 と いう のが 最 大の 利 点に な っ てい る .また ,PIC に 関す る 情報 も 豊富 に あ るた め 本 研究では数多くあるマイコンの中から PIC を選定した. 2.4.2 PIC16F877 本 研 究 で は 数 多 く あ る PIC の 種 類 の 中 で ミ ッ ド レ ン ジ シ リ ー ズ の PIC16F877( 写 真 2 . 2 ) を 使 用 す る . PIC16F877 の 選 択 理 由 と し て は 比 較的 安 価で 入 出力 ピ ン 数が 多く A/D 機能 な ど 必要 な 機能 を 全て 兼 ね 備え て い る点 で ある . 図2 . 7 は PIC16F877 の 主 な 仕様 , 図2 . 8は 各 ピ ンの 仕 様 である. 第2章 11 移動ロボットの製作 写真2.2 PIC16F877 第2章 12 移動ロボットの製作 プログラムメモリ(word) データメモリ(byte) Flash メモリ(byte) 入出力ピン数 A/D コンバータ アナログコンパレータ キャプチャ/コンパレータ/PWM シリアルポート SPI/I2C USART パラレルポート タイマ 動作可能電源電圧(V) 最大動作周波数(MHz) 命令数 パッケージピン数 図2.7 図2.8 PIC16F877 仕様 PIC16F877 ピン配置 8K 368 256 33 10bit × 2 SPI SUART 1 3+WDT 2.5∼5.5 20 35 40PDIP 第2章 移動ロボットの製作 13 2.5 モーター駆動回路 PIC の 出力 信 号を ドラ イ バ IC を増 幅 さ せ, モ ータ を 駆動 さ せ る回 路 を製 作した.回路図は図2.9の通りである. 5v PIC16F877 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 FA-130 M TA8429H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 FA-130 M TA8429H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 制御部電源 図2.9 モーター駆動回路図 初めは制御部電源と駆動部電源を統合して設計していたが後に二つに分 離させた.理由としては, 1、 消費電力の関係で駆動時間が短くなる. 2、 モータのノイズにより PIC の動作が不安定になる. 3、 大 き な バ ッ テ リ ー を 積 む よ り 小 さ い も の を 二 つ 積 む 方 が ス ペ ー ス 的 に有利. 以上の理由である. 第2章 移動ロボットの製作 2.6 リモコン入力 14 上 記 で モ ー タ の 動 作 が 確 立 し た た め 次 に PIC へ の 外 部 入 力 に よ っ て モ ー タを 操 作す る スイ ッ チ ング リ モコ ン を製 作 す る .リ モ コン の 原理 は( 図2 . 10に表されるように 図2.10 入力回路図 1、 スイッチが「Off」の場合 マイ コ ンの 入 力ポ ー ト に5 V が加 わ り続 け プ ログ ラ ム上 で「 1 」と な る. 2、 スイッチが「ON」の場合 マイコンの入力ポートに0V が加わりプログラム上 「0」となる. というものを利用する. 第2章 15 移動ロボットの製作 製 作 した ス イッ チ ン グリ モ コン( 写真 2.3)と その 回 路図(図 2.1 1)である. 写真2.3 リモコン 第2章 16 移動ロボットの製作 5v PIC16F877 40 39 38 37 図2.11 2.7 リモコン回路図 移動ロボット 製作した移動ロボットが写真2.4である. 行動 パ ター ン は前 進 ,後退 ,右 旋回 ,左 旋回 の 4 パ ター ン の みで あ る .今 回 , PIC への外部入力により自在にモータの制御ができることを確認した. 第2章 17 移動ロボットの製作 写真2.4 移動ロボット 第3章 距離センサを用いた自律ロボット 第3章 3.1 18 距離センサを用いた自律ロボット 距離センサ 移動ロボットが周囲との接触を避けるために非接触で距離を感知できる 距離 セ ンサ を 用い る 必 要が あ る. 今 回そ の 性 能を 比 較し , 最適 な も のを 移 動 ロボットに搭載することにする. 3.1.1 超音波センサ 超音波センサとは超音波を発射して障害物に反射して返ってくるまでの 時 間 に よ っ て そ の 障 害 物 と の 距 離 を 得 る セ ン サ で あ る . 一 般 に ( 数 10KHz ∼ 数 MHz)の 送信 器 と受 信 器か ら 構成 さ れ る.送 信器 か らで た 超 音波 が 物体 で反 射 して 受 信器 ま で 帰っ て くる ま での 時 間 を測 定 する こ とに よ っ て, 物 体 まで の 距離 を 測定 す る .送 信 器, 受 信器 に は 水晶 な どの 圧 電素 子 が 用い ら れ てい る .圧 電 素子 に 電 界を か ける と ,機 械 的 にひ ず み, 厚 さが 変 化 する . ま た, 逆 に, 一 定の 方 向 にひ ず ませ る と分 極 に よる 電 荷が 現 れる . 送 信器 で 超 音波 を 発生 さ せ反 射 し てき た 超音 波 によ り 受 信機 が 発生 す る電 荷 を 読み 取 り その 時 間差 を 用い て 距 離を 測 定を す る .移 動 ロボ ッ ト用 に T40-16/R40-16 (写 真3.1)がよく使われる.動作原理は図3.1の通りである. 第3章 距離センサを用いた自律ロボット 写真3.1 図3.1 超音波センサ 超音波センサ測定原理 超音波センサの特徴としては 1、 入手性が良い 2 、 安価 3 、 温度変化,風速,湿度等に影響を受けやすい 4 、 複雑な形状,音波の反射率の悪いものには極端に精度が落ちる. 19 第3章 距離センサを用いた自律ロボット 3.1.2 赤外線センサ 20 赤 外 線セ ン サと は , 赤外 線 を照 射 し, そ の 反射 光 を検 知 する こ と でも の を 判別 す るタ イ プの セ ン サで す .比 較 的小 さ く 入手 性 もよ く 安価 で す .赤 外 線 の照 射 に は LED,受 光 には フ ォト ト ラン ジ ス タや フ ォト ダ イオ ー ド を用 い る . 周り の 明る さ や対 象 物 の色 に 左右 さ れや す い ので 距 離の 計 測に は 不 向き . 対 象物の有無を判別することに使われることが多い 3.1.3 PSD センサ P S D( Position Sensitive Detector) は, 半 導体 位 置検 出 素 子と い い, スポット状の光の位置を検出できる光センサーです. PSD は光 源か ら 発せ られ た 赤外 線 を三 角 測 量の 原 理( 図 3.2 )によ っ て距 離を測定します. 三 角 測量 と は, 三 角 形の 一 辺の 長 さと 2 つ の角 の 角度 か ,2 辺 の 長さ と そ のは さ む角 の 角度 が わ かれ ば 三角 形 の形 状 が わか る こと を 利用 し て 距離 を 測 る方 法 で, 一 般に 普 及 して い る PSD セン サ GP2D12( 写真 3 .2 ) は前 者 の性質を利用したもです. 図3.2 PSD センサ測定原理 第3章 距離センサを用いた自律ロボット 写真3.2 PDS センサ PSD の特徴としては 1、 応答性が約 1μSと非常に早い. 2、 分解能が1/4000以上と非常に高い. 3、 性能が場所の明るさの影響を受けにくい. 4、 モノの形状,材質に関係なく安定した制度を保てる. 5、 周辺温度の影響を受けにくい. 等の特徴をもつ. 21 第3章 3.1.4 22 距離センサを用いた自律ロボット 性能比較 赤外線センサは距離の測定能力が乏しいので,超音波センサ (T40-16/R40-16),PSD センサ(GP2D12)を比較してみる.(図3.3) 分解能 測定範囲 外形寸法 外部回路 価格 超音波センサ 1cm程度 10∼300cm 16.2φ×12.2mm 要 600 円 図3.3 PSD センサ 約2mm 10∼80cm 29×18.9×13.5 不要 750 円 距離センサ性能比較図 外 形 寸法 や 価格 に 大 きな 違 いは 見 られ な い が PSD は分 解能 が 良 く, 超 音 波は 測 定範 囲 が広 い.PSD セン サ(GP2D12)は 完全 に ユニ ッ ト化 され て い て取 り 付け る だけ で 使 用が 可 能な の に対 し ,超音 波 セン サ(T40-16/R40-16) は外 部 回路 を 必要 と し その 分 余計 な スペ ー ス を取 る と予 想 でき る . 今ロ ボ ッ ト 製 作 で は そ れ ほ ど 広 い 測 定 範 囲 を 必 要 と し て い な い の で 精 度 が 良 い PSD センサを用いることにする. 第3章 3.2 距離センサを用いた自律ロボット 23 PIC の A/D 機能 セ ン サの 入 力信 号 の 多く は アナ ロ グ信 号 な ので プ ログ ラ ム上 で 扱 う時 に は デジ タ ル信 号 に変 換 す る必 要 があ る .ア ナ ロ グ信 号 をデ ジ タル 信 号 に変 換 す るこ とを A/D 変換 と 言い PIC に はこ の 機 能を 初 めか ら 持つ も の が数 多 くあ る. PIC16F8XX シ リ ー ズに は AD コン バ ータ が内 蔵 され て お り PIC16F677 に も 10 ビ ット =1024 の 分解 能 を持 つ AD 変 換 モジ ュ ール が 8チ ャ ン ネル 用 意 されている. PIC では ,A/D 変 換を する た めに ,ま ず アナ ログ 信 号を 一 旦内 部 の コン デ ンサ に 蓄え ま す. そ の 後, 参 照と な る一 定 の 電圧 を 加算 し て比 較 し なが ら 計 測す る とい う 原理 で あ るた め ,A/D 変換 を 正 確に 行 うた め には , 蓄 積す る ま での 時 間と 計 測す る 時 間の 両 方を 確 保す る こ とが 必 要に な る. 内 部 コン デ ン サの 充 電時 間 を考 慮 に 入れ て プロ グ ラミ ン グ をす る 必要 が ある が 比 較的 簡 単 なそうさで精度が良いのが特徴となっている. 今回用いた PIC16F877 での時間を計算すると 20μsec+1.6μsec×12 =最小39.2μsec (クロック 20MHz の時) となる. よっ て 今回 は 少し 余 裕 を持 た せる た めに プ ロ グラ ム 上で 50μsec の ディ レ イ タイマーを用いることにした. 第3章 3.3 距離センサを用いた自律ロボット 24 PWM 制御 二 章 でモ ー ター の ON/OFF 制 御は 達 成し たが ,モー タ ーの 速 度 を連 続 的に 変化 さ せる た め に PWM(Pulse Width Modulation)方 式 を用 い る.PWM はパ ル ス幅 変 調法 と も 呼ば れ てい る .動 作 原 理は モ ータ 駆 動電 源 を 一定 周 期 で On/Off する パル ス 状と し ,その パ ルス の デュ ー ティ 比(On 時 間 と Off 時 間の 比 )を 変 える こ と でモ ー ター の 速度 制 御 をす る .こ れ は, D C モー タ が 早い 周 波数 の 変化 に は ,機械 反 応を し ない と いう 性 質を 利 用し た も ので あ る . 基本 回 路は 図 3.4 の 様に し ,図 中 のト ラ ン ジス タ を一 定 時間 間 隔 で On/off すると,駆動電源が On/Off される. 図3.4 PWM 基本回路図 このパルス状の電圧でDCモータを駆動したときの,モータに加わる 電圧 波 形は 図 3. 5 の 様に な り, 平 均電 力 , 電圧 を 考え れ ば, 見 か け上 , 駆 動電圧が変化していることになる. 第3章 距離センサを用いた自律ロボット 図3.5 25 パルス波形 ここ で 重要 な 働き を し てい る のが , 上記 回 路 図に あ るダ イ オー ド で ,ダ イ オ ード が 使わ れ るが , そ の動 作 内容 か らフ ラ イ ホイ ー ルダ イ オー ド と 呼ば れ て いる . つま り ,ト ラ ン ジス タ が Off の間 , モ ータ の コイ ル に蓄 積 さ れた エ ネ ルギーを電流として流す働き(回生電流)をしている. フラ イ ホイ ー ル効 果 に より , モー タ に流 れ る 電流 は トラ ン ジス タ が Off の 間に も 休み な く流 れ て いる よ うに 見 える こ と にな り ,平 均 電流 も On 時 の電 流とこの回生電流の和となる. 第3章 3.4 26 距離センサを用いた自律ロボット 自律ロボット 2 章で 用 いた ロ ボッ ト に PSD セ ンサ を を 搭載 し ,自 律 運動 を さ せる .PSD センサの周辺回路は図3.6である. 5v PIC6F877 2 3 100μF GP2D12 図3.6 100μF GP2D12 PSD センサ回路図 PSD ユ ニ ッ ト 単 体 で も 動 作 が 可 能 だ が 外 乱 を 取 り 除 き 動 作 を 安 定 さ せ る ためにコンデンサを追加した. センサを搭載た自律ロボットが写真3.3である. 第3章 距離センサを用いた自律ロボット 写真3.3 自律ロボット 27 第4章 28 小型化の検証 第4章 4.1 小型化の検証 小型・軽量化 一通 り の動 作 が可 能 な 自律 ロ ボッ ト を製 作 し たが ,ロ ボ ット に 限ら ず大 半 の物 が 技術 の 進歩 に よ り小 型 ・軽 量 化さ れ て いる . この 流 れは 必 ず メリ ッ ト があ る から で ある . こ の章 で は今 後 の小 型 化 によ っ てど の よう な メ リッ ト が 生まれるかを検証する. 4.2 小型部品 今回 , 開 発の 過 程 で利 便性 が 悪 いた め に 使用 を見 送 っ た小 型 部 品が 多数 あ る.今回はこれらを紹介する. 第4章 29 小型化の検証 4.2.1 小型モータ 今回製作したロボットで使用したギアボックスはタミヤ製ツインモータ ギア ボ ック ス 写真 4 . 1の 左 で大 き さが 75×50×23m mの 大 き さが あ った . 写4 .1 の右 が S.T.L.Japan 製の 栄 42D です .栄 42D は小 型 なが ら 精密 ギア ボ ック ス を備 え , 十分 な トル ク を発 揮 し ,電 力 消費 を 半分 以 下 に抑 え ら れる. 写真4.1 小型モータ 第4章 30 小型化の検証 4.2.2 小型電池 PIC の 稼動 に 最低 5 V の 電圧 を 必要 と する ので 電 源は そ れ以 上 蛾 必要 に な る .今 回 は9 V のマ ン ガン 電 池(写 真 4 .2 の左 )を 使用 し た . ( 写真 4 .2 の右 ) は9V の小 型 ア ルカ リ 電池 で ある . 小 型だ が 電気 容 量が 非 常 に少 な い ため ロ ボッ ト を省 電 力 化を し ない と 稼働 時 間 が著 し く短 く なる と 予 想で き る . 写真4.2 小型電池 第4章 小型化の検証 31 4.2.3 PIC フラットパッケージ PIC には 研 究 ,開 発 用 の通 常 タイ プ と製 品 用 のフ ラ ット パ ッケ ー ジ があ り , 後者 は 基盤 に 直接 乗 せ るた め に小 型 ・省 電 力 化さ れ てい る .こ の フ ラッ ト パ ッケ ー ジは 手 作業 で の はん だ 付け が 非常 に 困 難な た め, 製 品以 外 で はあ ま り 使わ れ ない .今 回用 い た PIC16F877(写 真 4 .3 の 左 )と フ ラッ トパ ッ ケー ジ版 PIC16F877(写真4.3の右)は全く同じ機能を持っている. 写真4.3 小型マイコン 第4章 小型化の検証 32 4.2.4 小型モータードライバ モー タ ー ドラ イ バ にも かな り 小 型の も の が市 販さ れ て いる . 一 般に 小型 の モー タ ード ラ イバ は FET 損 失( ス イッ チ ング 時 の電 圧 降下 ) が 少な く 効率 がよ い が,耐 電圧 や 耐 電流 は 低く な る.NEC 製 の 小型 モ ータ ー ド ライ バ μ PD16805G(写 真 4.4 )は 耐 電 圧 8V,耐 電流 1 A と 低 めだ が 10×7.7 ㎜ の パッ ケ ージ で フル ブ リ ッジ を 実現 し ,差 動 電 圧が 3V と 低 電圧 で 作 動で き る ため消費電力が格段に少なくなっている. 写真4.4 小型モータドライバ 第4章 小型化の検証 4.2.5 小型カメラ 33 Tr e va ( 写真 4 . 5) は PHS 用 の カラ ーデ ジ タル カ メラ ユ ニ ット で す.CMOS イ メー ジ セン サ が使 わ れて お り 小型 ,軽 量,低 消費 電 力と い った 特徴 を もっ て いま す .本来 PHS の 液 晶画 面 で見 る こと を 想定 し て いる た め, 画像 サ イズ は 96×7 2画 素 と小 さ いが ,使 用目 的 を考 え ると 十 分 とい え る . 仕様は図4.1の通りである. 写真4.5 小型カメラ 第4章 34 小型化の検証 出力画像解像度 レンズ 画角 露出 ホワイトバランス 接続プラグ 電源 フレームレート 幅 30×厚さ 32×高さ 16 ㎜,10g 1/4 型 10 万画素, CMOS イメージセンサ(OV6630) 96×72 画素 固定焦点(30cm∼∞) 水平 46°,垂直 37° 自動制御 自動調整 Φ2.5 ㎜,4ピンプラグ 3V 単一,10mA 程度 最大7フレーム/秒 画像フォーマット 16 ビット YUV 形式 本体サイズ,重量 映像素子 図4.1 4.3 Treva仕様書 小型化の利点 上記 し た 電子 パ ー ツは 小型 ・ 軽 量化 し た 結果 ,消 費 電 力が 少 な くな って い る. そ のた め 電池 の 必 要電 気 容量 が 減り , 結 果的 に コス ト が安 く な ると い え る. ま た, 重 量が 軽 く なる と いう こ とは ア ク チュ エ ータ の 出力 が 小 さく て も 動作 が 可能 に なり 相 乗 的に 小 型化 に 繋が る . ロボ ッ トを 小 型化 し 多 数配 置 す れば単位面積あたりの仕事量が増える.結果として効率があがる. 小 型 化の 唯 一の 欠 点 はイ ン ター フ ェイ ス 性 が著 し く落 ち るこ と で す. メ ン テナ ン スや 操 作が し に くく な る. 携 帯電 話 が ある 大 きさ よ り小 さ く なっ て い かな い のは 技 術面 よ り も小 型 化に よ り便 利 性 が低 下 して し まう こ と が理 由 に なっ て いる . 最終 的 に は人 が 操作 し なく て は なら な いも の には 小 型 化の 最 適 な点が存在すると思われる. 第5章 35 結章 第5章 5.1 結章 本研究のまとめ 本研 究 で は複 数 台 を協 調行 動 さ せる た め の小 型自 律 ロ ボッ ト の 試作 機を 製 作し す るた め ,ま ず 初 めに P IC や ドラ イ バ ーI C 使い 方 から 始 め ,そ の 後 リモ コ ン制 御 ,自 律 制 御の 順 で動 作 を検 証 し てき た .し か し群 行 動 を行 う ロ ボッ ト の方 向 性を 示 す のに は 未だ 不 十分 と い える . 今回 の 一連 の 研 究を 通 し てロ ボ ット の 方向 性 を 決め , 設計 か ら製 作 ま で一 貫 して こ れた こ と は大 き な 成果だと感じる. 5.2 今後の展開 本研 究 で は試 作 機 の製 作に 留 ま った わ け だが ,今 研 究 で行 っ た こと を元 に 第4 章 で述 べ たよ う な 小型 部 品を 用 いつ つ 小 型化 ・ 高性 能 化を す す める . さ らに 複 数製 作 し複 数 で 一つ の シス テ ムと し て のロ ボ ット の 可能 性 を 検証 さ せ てい け れば よ いと 思 う .そ の ロボ ッ トを 用 い て互 い に協 調 作業 を 行 い作 業 の 効率化を検証させていく. 36 参考文献 参考文献 1)後 閑 哲 也 : PIC 活 用 ガ イ ド ブ ッ ク , 技 術 評 論 社 2)籠 屋 健 : PHS 用 小 型 カ メ ラ “ Treva” を パ ソ コ ン に 接 続 す る 方 法 , ト ラ ン ジ ス タ 技 術 , Vol.4, pp.291~295(2002) 3)ロ ボ コ ン マ ガ ジ ン , No.15, pp.50 37 謝辞 謝辞 本論文は筆者が高知工科大学知能機械システム工学科に在学中に行った研 究をまとめたものである.本研究にあたりご指導くださった高知工科大学知 能機械システム工学科王碩玉教授に深く感謝致します.また,忙しい中筆者 のため時間を割きアドバイスを下さった溝渕宣誠氏をはじめ同大学知能ロボ ティクス研究室の方々に感謝致します. 最後に,筆者の研究に対し理解を示し,理解してくださった両親に感謝致 します.