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第18章 資金調達

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第18章 資金調達
第18章 資金調達
企業の資金調達に関する規制はほとんど無い。現地でのバーツ建て借入・ドル建て借入
は制限なく自由に行え、海外からの外貨借入・親会社借入も自由である。ただし、ローン
が外貨建てで且つ金額が 2 万ドル以上の場合、ローン着金時より 3 日以内に外為フォーム
を外為銀行に提出しなければならない。
日系企業の資金調達の手段としては、①親会社からの出資(増資等)、②親会社またはグ
ループ会社からの借入(親子ローン、CMS)、③親会社の保証を元にした邦銀からの借入、
が多数を占めている。④タイの商業銀行からの借入については、一部の日系企業からは、
「金
利面では邦銀より魅力的だが、日本の親会社の方針、取引銀行のアロケーションの観点か
ら、現地商業銀行から借入をおこすことは難しい」との声も聞かれた。
なお、社債での資金調達については、一部リース会社を除けば行っておらず、株式での
資金調達についても、資本構成の観点から消極的な声が多かった。
1.商業銀行からの借入
借入金利の指標として、①当座貸越優遇金利(Minimum Overdraft Rate:MOR)
、②最
優遇貸出金利(Minimum Lending Rate:MLR)、③小口貸出優遇金利(Minimum Retail
Rate:MRR)の 3 種類がある。日系企業が短期借入をする際には、①の MOR が基準とな
り、信用力に応じてスプレッドが上乗せされる。②の MLR は、地場の銀行が提供する住宅
ローンや個人カードローンの金利として使用されている。③の MRR は、地場の銀行が地場
の企業向け等に小口の貸出を行う際の金利として使用されている。
MOR の水準を邦銀 3 行と外国銀行支店平均(邦銀 3 行含む)、地場商業銀行平均と比較
すると、邦銀 3 行の金利水準の方が高いことが分かる(図表 18-1)。
銀行の融資基準は各行の経営方針により異なるが、傾向として邦銀の場合はタイでの事
業計画や商流の確度、親会社保証を重視し、地場銀行の場合は物的担保価値を重視する傾
向にある。ただし、地場銀行の場合は、現地の工場・設備等を担保に入れることも可能だ
が、評価基準が明確ではなく、担保徴求手続きが複雑で時間もかかるため、スタンドバイ
L/C23や親会社保証を利用することが多い。
23
海外現地法人の現地での借入等に対する保証の手段として、日本の取引銀行が現地の銀行に
対して差し入れる信用状。
106
図表 18-1 邦銀 3 行支店の当座貸越優遇金利(MOR)の水準(単位:%)
三菱東京
UFJ銀行
2010年1月
2010年2月
2010年3月
2010年4月
2010年5月
2010年6月
2010年7月
2010年8月
2010年9月
2010年10月
2010年11月
2010年12月
2011年1月
三井住友
銀行
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
みずほコーポ
レート銀行
9.750
9.750
9.750
9.750
9.750
9.750
9.750
9.875
9.875
9.875
9.875
9.875
9.875
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
10.750
【参考】
【参考】
外国銀行支店
平均
8.509
8.509
8.509
8.509
8.509
8.509
8.527
8.536
8.554
8.554
8.554
8.580
8.643
地場商業銀行
平均
6.838
6.838
6.838
6.838
6.838
6.838
6.922
6.943
6.957
6.957
6.957
7.056
7.214
(注)シャドーは金利が上昇した月を表している
(出所)BOT 資料より作成
図表 18-2 タイの金利の期間構造(イールド・カーブ)の推移
(%)
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2011/01
2.0
2010/01
1.5
1.0
0
5
10
15
20
(年)
(出所)BOT 資料より作成
107
2.証券・債券市場からの資金調達
タイの株式市場は、上場基準が比較的緩いことから、株式公開・上場による資金調達も
可能である。株式の公開・上場に際しては、所定の基準が定められているが、コーポレー
ト・ガバナンス等についても実質的な審査が行われ、上場後も財務諸表の提出等の義務が
課せられる。タイ政府は、今後の経済発展を支えてゆく観点から、株式・債券といった資
本市場の活性化を目指しており、新規上場企業への法人税の軽減や上場基準の緩和等の措
置を講じてきている。市場規模は小さいものの、このような状況を反映して、新たな資金
調達方法として新規上場、債券発行を検討する日系企業も現れてきており、今後こうした
形での資金調達も増えてゆく可能性がある。
日系企業でも、既に、古河電工グループの古河メタル(シームレス銅管製造等)
、イオン
クレジットサービスのイオン・タナ・シンサップ(金融サービス)、村元電子、カンヨン電
機、井上ゴム等、数社が SET 市場に上場している。
また、社債については、上述のイオン・タナ・シンサップの他、ホンダ・リーシング、
トヨタ・リーシングのリース会社がタイバーツ建ての社債を発行している。債券発行に当
たっては、原則としてタイの格付機関24による格付けが必要であるが、投資家が 10 人以下
の場合には格付け取得は不要である。発行金額に特段の制約はなく、クーポンレートはタ
イ国債のレートが基準となる。発行までの所要期間は、新規の格付けを取得する必要があ
る場合には通常 4∼5 ヵ月程度をみておく必要があるようである。
24
タイには TRIS と FITCH という 2 つの格付け機関があり、格付け取得には 2∼3 ヵ月かかる
とされている。
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