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制御コントローラ用通信インターフェースの無線化(PDF:42KB)
制御コントローラ用通信インターフェースの無線化 ○三岩 幸 夫 *1) 1.はじめに 工場などでは制御用コントローラは単独ではなく有線でネットワークシステムが構築さ れているケースが多い。上記における通信を無線化することにより、工場などの設備に柔 軟性を持たせることができ、かつ、生産対象物にもネットワークシステムに組み込むこと が可能である。しかし、現状では制御コントローラ用を自 前で無線化する場合は開発費が高騰する。また、安価な既 存の無線モジュールを使ってもソフト面の開発費が高騰し、 かつ、電界強度の測定費用が高騰するので、コスト面で無 線化が困難である。そこで市販の802.11g無線LA Nカード(図1)が利用できれば問題が解決されると思わ れた。 図 1 R aLink RT2570 チ ッ プ セ ッ ト 2.実験方法 コンピュータネットワークの上位層プロトコル はTCP/IPである。PCでは基本ソフトに付 TCP UDP 属しているが、コントローラでは新規開発が必要 プロトコル プロトコル と な る 。T C P / I P は 物 理 層 に 依 存 し な い の で 、 IP プ ロ ト コ ル 802.3(イーサネット)でIP、UDP、T 802.3 ⇔ 802.11g 相 互 変 換 CPプロトコルスタックを新規開発した。 MAC( メ デ ィ ア ア ク セ ス 制 御 )チ RT2570チップセットの回路で制御が必要 ップセット な箇所は、RFとBBPとMACチップセットと BBP( ベ ー ス バ ン ド プ ロ セ ッ サ ) なるが、これらチップセット内部でのファームウ チップセット ェアはメーカが無償で公開しているものを用いた。 RF チ ッ プ セ ッ ト ただし、RFとBBPではパラメータは外部設定 図2 無線LANの階層構造 が必須となるが、オープンソースであるLinux カーネルソースをひととおり解読し理解してから、そのなかに含まれるRFとBBPのパ ラメータを流用した。MACチップセットでは802.11gパケット処理をするので、 8 0 2 .1 1 g に 関 す る 処 理 と ア ク セ ス ポ イ ン ト と の 認 証 処 理 等 の ソ フ ト を 新 規 開 発 し た 。 最後に802.11gと802.3のパケットを相互変換するソフトを新規開発した。 3.結果・考察 RFとBBP階層の検証ではアクセスポイントから発するブロードキャストパケットの 受信を確認することができた。MAC階層の検証ではアクセスポイントとの認証コードを 実行させ、アクセスポイントで対象となる無線LAN端末が登録されていることを確認し た。TCP/IPプロトコルスタックの検証では、ローカル環境で上にHTTPサーバを 動作させてブラウザ(IE)で閲覧することができ、インターネットに接続してDNS、 DHCP、POP3、SMTPプロトコルの動作を正常に確認することができた。 TCP/IPプロトコルスタックの新規開発やLinuxカーネルソースの解読と理解 は、一般的にできないというイメージが定着しているが、実際にやってみた結果、目的を 達成したので、とにかく常識にとらわれずに挑戦してみる価値はあると思う。 4.まとめ 市販の無線LANカードを接続することによって、安価で入手しやすくなり、電界強度 の測定費用が不要になる。それだけでなく、既存のLANやインターネットにシームレス に接続できるようになった。 *1) 神 奈 川 県 産 業 技 術 セ ン タ ー 生産システムチーム