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鋼製建具等の内訳書価格の分析 - 建築コスト管理システム研究所
鋼製建具等の内訳書価格の分析 参 事 森本 文忠 1.研究概要 発注者の工事内訳書から鋼製建具、鋼製軽量建具、ステンレス製建具,鋼製重量シャッター (以下「鋼製建具等」とする)の工事費と建具面積、延床面積、部屋数の間の相関関係、及び、建 具の種類別に建具の価格と建具の寸法や代表的な仕様をダミー変数とする回帰分析を行ったも のである。なお、分析にあたり内訳書の価格は「建設物価の経年変化」((一財)建築コスト管理シ ステム研究所HP)の建具のデータにより2008年の値に年度補正を行っている。 2.分析対象施設の概要 分析対象は関東地方整備局営繕部が1999年から2009年にかけて発注した45件の施設の建築 工事の内訳書のデータである。分析対象施設の概要と鋼製建具等の工事費を表-1に示す。建築 工事費(直接工事費)は81.2~5,143.7百万円の範囲で平均値は663.9百万円である。鋼製建具 等の工事費は2.4~217.7百万円の範囲で平均値は29.9百万円である。 表-1 施設概要と工事費 地上 階数 地下 階数 RC 5 0 RC 2 0 802 SRC 6 0 5,042 2001 RC 2 0 2,593 5 2001 RC 2 0 6 2002 RC 3 7 2002 RC 3 8 2002 SRC( 一 部 RC、 S) (免 震 ) 9 2003 RC 10 2003 11 2003 12 13 14 建築直接工事 鋼製建具等工事 NO 費(千円) 費(千円) 地上 階数 地下 階数 RC(一部S) 2 2005 RC 4 2005 S(プレハブ) 4 27 2005 RC 9,400 28 2005 SRC 253,811 17,200 29 2006 196,078 10,700 30 2006 2,450 2,246,591 53,700 31 1,181 391,488 23,600 32 2,949 780 451,529 19,600 33 2006 RC 4,177 906 497,153 37,400 34 2007 S(一部SRC) 0 5,108 1,385 633,987 34,000 35 2007 RC(一部SRC) 1 6,618 1,232 1,058,045 38,500 36 2007 RC 0 4,549 945 745,819 63,800 37 2007 RC 2 0 533 278 108,617 2,300 38 2007 RC(一部S) 5 1 4,713 1,193 584,888 40,000 39 2004 RC 2 1 2,587 1,277 389,031 12,100 18 2004 RC 3 0 3,201 1,441 354,084 19 2004 S 6 1 5,428 960 895,279 20 2004 RC(一部S) 2 0 540 373 21 2004 RC 4 0 2,097 649 22 2005 RC 3 0 2,050 731 23 2005 SRC(一部S) 9 0 4,230 688 延床面積 (㎡) 建築面積 (㎡) 4,371 1,127 621,079 36,700 24 2005 421 114,902 5,000 25 1,115 917,118 19,700 26 1,360 337,489 16,400 1,213 634 222,929 0 1,571 556 0 1,217 429 3 2 10,076 3 0 2,858 RC(一部S) 5 0 RC 5 0 2003 RC 4 2003 SRC 6 2003 RC 6 15 2003 RC 16 2004 17 NO 年度 1 1999 2 1999 3 2000 4 構造 建築直接工事 鋼製建具等工事 費(千円) 費(千円) 延床面積 (㎡) 建築面積 (㎡) 0 711 374 118,076 7,000 0 1,903 528 327,179 19,700 0 1,781 450 198,848 8,800 2 0 1,302 927 282,644 6,300 2 0 3,925 3,010 599,945 14,500 SRC 6 1 10,374 1,527 1,725,181 77,600 SRC 10 1 17,091 1,965 2,894,889 108,600 2006 S 1 0 707 711 96,925 3,700 2006 RC 5 0 3,813 993 539,561 16,000 3 0 2,641 1,201 291,941 22,100 10 1 24,001 2,510 5,143,742 217,800 2 0 1,312 684 244,272 21,600 2 0 1,744 903 245,706 10,900 4 0 2,606 836 276,311 23,900 S 2 0 1,586 805 239,960 14,100 2007 RC 3 0 1,197 619 193,346 15,800 40 2007 S 3 0 2,963 1,086 384,069 23,600 20,600 41 2007 RC 1 0 972 1,044 148,166 12,200 35,600 42 2008 S 10 0 19,869 2,632 2,926,089 115,900 81,220 5,400 43 2008 RC 4 0 2,298 705 377,923 12,200 289,049 26,600 44 2008 RC(一部PC) 2 0 1,306 755 244,733 8,900 317,374 10,700 45 2009 RC 2 0 575 293 104,787 5,500 563,093 40,000 年度 構造 表-2 鋼製建具等工事単価・工事費比率 3.金属製建具等工事費の分析結果 床面積あたり単価 工事費比率 建具面積あたり単 (円/㎡) (対建築工事費) 価(円/㎡) 建築工事費に占める鋼製建具等の工事費の 床面積あたりの㎡単価、建築工事費に対する比 平均値 7,836 0.052 73,862 中央値 7,500 0.049 72,200 15,197 標準偏差 2,867 0.020 率、建具の見付面積あたりの㎡単価の平均値等 最小値 3,700 0.021 52,500 を表-2に、ヒストグラムを図-1、図-2に示す。床面 最大値 16,500 0.092 108,300 積あたりの単価の平均値は7,836円/㎡、中央値は7,500円/㎡であるが標準偏差の値、ヒストグラム に見られるように工事によるばらつきが大きい。建築工事費に対する比率の平均値は0.052、中央 値は0.049、最小値は0.021、最大値は0.092、標準偏差は0.020である。 建 具 見 付 面 積 あたりの単 価 の平 均 値 は73,862円 /㎡、中 央 値 は72,200円 /㎡、標 準 偏 差 は - 75 - 15,197で床面積あたりの単価に比較するとばらつきが小さい。 施設別の鋼製建具等の工事費と延床面積の散布図を図-3に、建具面積の合計との散布図を 図-4に示す。Pearson の相関係数は工事費と延床面積では0.953、工事費と建具面積では0.989 と共に高い値となっており、1%水準で有意(両側)であった。 図-3 延床面積・鋼製建具等工事費の散布図 図-4 建具面積・鋼製建具等工事費の散布図 図-3、図-4を比較すると鋼製建具等の概算工事費を算出する場合、建具面積用いることで精 度の高い結果を得られると考えられるが、基本設計の段階では建具面積を算出することは難しいと 考えられる。そのため本研究では、鋼製建具等工事費を目的変数に、延床面積、部屋数を説明 変数とした回帰分析を行った。求められた回帰式は Y=6,248×(延床面積㎡)+56,536(部屋数)-1,175,598 で、自由度調整済みの R2=0.912 であった。 工事費の実績値と回帰式により算出した推計値との差から誤差率を求めた。誤差率は 誤差率=1-推計値/実績値 により算出した。 表-3 誤差率の比較 誤差率の平均値は-0.059、中央値は-0.019であったが、 標準偏差は0.418と大きな値となっており、精度の高い概 算手法とは言い難い。しかし、平成21年度の業務で提案し た延床面積あたりの単価による算出方法に比較すると、表 平均値 中央値 標準偏差 最小値 最大値 今回 -0.056 -0.019 0.418 H21業務 -0.407 -0.302 0.494 -1.21 0.55 -1.64 0.41 -3、図-5、図-6に示すように精度の向上が見られた。 大きな誤差が発生する要因としては、図-2に示すように建物により建具の㎡あたりの単価に大き - 76 - 図-5 鋼製建具工事費の誤差率分布 図-6 鋼製建具工事費の誤差率分布(h21業務) な差が見られるが、その要因と想定される形状、グレード、付属金物などの差異による価格の増減 が概算式の中には含まれていないことが考えられる。 そこで、以下では建具の種類別に建具の価格と建具面積、枠見込み、形状、開閉方式、付属 金物等との関係について回帰分析を行った結果を示す。 4.鋼製建具 45施設の内訳書のデータ数は 1,213 件 で あ る 。開 閉 方 式 別 ( 三 表-4 鋼製建具の開閉方式別の数量 片開き 親子開き 両開き 引戸 折戸 三方枠 計 N 639 154 292 28 30 70 1213 比率 53% 13% 24% 2% 2% 6% 100% 方 枠 を 含 む ) で は 、 片 開 き が 639 ( 53 % ) 、 両 開 き 292 表-5 鋼製建具の気密性能別の数量 (24%)、親子開き154(13%)となっている。(表-4) 気密性能(表-5)では、簡易気密戸が269(22%)、気 密戸が79(7%)である。防火戸(表-6)は439(36%)でそ の中の113(9%)が煙感知器連動の防火戸である。 一般 (三方枠込) 簡易気密 269 79 1213 比率 71% 22% 7% 100% 表-6 鋼製建具の防火戸の数量 防火戸 一般 (三方枠込) 床面積あたりの単価の平均値は2,979円/㎡、中央値 計 865 表-7に施設別の鋼製建具の床面積あたりの単価と建 具見付面積あたりの単価の平均値等を示す。 気密 N 内煙感連動 計 N 774 439 (113) 1213 比率 64% 36% (9%) 100% は2,990円/㎡、標準偏差は1,330である。ヒストグラムを図-7に示 表-7 鋼製建具の単価 すが施設による差が大きい。 床面積当り 単価(円/㎡) 建具面積当り 単価(円/㎡) 平均値 2,979 67,700 中央値 2,990 64,331 標準偏差 建 具 面 積 あ た りの 単 価 の 平 均 値 は 67,700 円 / ㎡ 、 中 央 値 は 64,311円/㎡、標準偏差は22,821である。ヒストグラムを図-8に示 す。40~80千円/㎡の度数が大きいが、施設による差が大きい。 鋼製建具の施設別の工事費と延床面積の散布図を図-9に、建 具面積の合計との散布図を図-10に示す。 - 77 - 1,330 22,821 最小値 529 40,297 最大値 7,750 145,853 図-9 延床面積・鋼製建具工事費の散布図 図-10 建具面積・鋼製建具工事費の散布図 Pearson の相関係数は工事費と延床面積では0.904、工事費と建具面積では0.986と共に高い 値となっている。 鋼製建具の価格を予測することを検討するために、鋼製建具価格を目的変数に、建具見付面 積、枠見込み寸法、開閉方式 *(親子開き 引戸 折戸)、気密性 * (簡易気密 気密)、 ガラリの有 無 *、煙感知器連動機能の有無 *、フロアヒンジ・ドアクローザ-の有無 *、建具形状 *(框戸・片面フ ラッシュ戸・その他)、電気錠有無 * 、くつずり形状 * を説明変数とする重回帰分析を行った。なお 開閉方式以下*印を付した変数はダミー変数である。 なお、耐火ガラスを使用している建具、三方枠、及び点検口のような小さな扉 (1㎡以下)は価格 のばらつきが大きいため分析から除外した。さらに全ての建具の建具面積あたり単価の平均値と標 準偏差を算出し、平均値±2σを超えるものも除外した。その結果、分析対象のデータ数は998と なった。 一回目の分析結果の標準化残差が -3以下3以上のデータ(25件)及び、てこ比が0.080以上 のデータ(11件)を外れ値とみなして除外し(重複が1件)、963件のデータを用いた分析の結果得ら れた回帰式の係数を表-8に示す。自由度調整済み決定係数は0.839で、分散分析の結果はF値 279.3で有意確率0.000である。 表-8 鋼製建具の回帰分析結果 係数 (定数) 見付面積(㎡) 枠見込(㎝) 親子開き 両開き ダ ミ ー 変 数 -21,287 49,265 96 17,822 -574 折戸 95,949 くぐり戸 49,081 簡易気密 6,895 気密 66,520 ガラリあり 12,416 防火戸 煙感知器連動 FH,DC有 框戸 片面フラッシュ戸 電気錠 実績値と回帰式から算出した推計値から誤差率を算出し た。誤差率の分布を図-11に、平均値等を表-9に示す。 てこ比(LEV)は LEV>4(P+1)/N P:説明変数数 の値を外れ値とした。(以下共通) 表-9 鋼製建具の誤差率 3,343 誤差率 89,108 7,039 34,657 -23,455 N:データ数 平均値 -.048 中央値 -.047 標準偏差 .272 50,377 最小値 -1.213 くつずり3 4,493 最大値 .702 くつずり4 18,891 くつずり5・6 27,027 - 78 - 表-10 鋼製軽量建具の開閉方式別の数量 5.鋼製軽量建具 片開き 45 施 設 の 内 訳 書 の デ ータ 数 は 785 親子開き 両開き 引戸 計 N 412 138 127 108 785 比率 52% 18% 16% 14% 100% 件である。開閉方式別では、片開きが 412(52%)、親子開き138(18%)、両開き127(16%)、引戸 表-11 鋼製軽量建具の単価 床面積当り 単価(円/㎡) 建具面積当り 単価(円/㎡) 平均値 2,445 65,915 中央値 2,218 61,292 標準偏差 1,665 15,929 108(14%)となっている。(表-10) 鋼製建具に比較すると引戸 の占める割合が高くなっている。気密性能では、簡易気密戸 が145(18%)である。45施設のうち1施設は鋼製軽量建具の 使用がなかった。 鋼製軽量建具の床面積あたりの単価と建具見付面積あた 最小値 182 42,902 最大値 8,903 101,152 りの単価の施設別の平均値等を表-11に示す。 床面積あたりの単価の平均値は2,445円/㎡、中央値は2,218円/㎡、標準偏差は1,665である。 ヒストグラムを図-12に示すが施設による差が大きい。 建具面積あたりの単価の平均値は65,915円/㎡、中央値は61,292円/㎡、標準偏差は15,929で ある。ヒストグラムを図-13に示す。50~60千円/㎡の度数が最も大きいが、施設による差が大きい。 図-14 延床面積・鋼製軽量建具工事費の散布 図-15 建具面積・鋼製軽量建具工事費の散布 図 図 鋼製軽量建具の施設別の工事費と延床面積の散布図を図-14に、建具面積の合計との散布図 を図-15に示す。なお、グラフは対数表示である。Pearson の相関係数は工事費と延床面積では 0.726と低く、工事費と建具面積では0.985と高い値となっている。また、延床面積と建具面積の間 の相関係数も0.784であった。 鋼製軽量建具の形状は多くの種類があり価格にも影響があると考えられる。図-16に片開き戸の - 79 - 6種類の標準的な形状を示すが、こ の図以外の形状のものもあるため、 開閉方式の種類別の形状は多数に なる。そのため鋼製軽量建具の回帰 分析は開閉方式別(片開き、親子開 A-1 き、両開き、引戸)に分けて行った。 B-1 C-1 D-1 E-1 F-1 図-16 建具の標準形状(片開き戸の例) 各開き戸は建具の価格を目的変数 に、説明変数は、建具見付面積、枠見込み寸法、形状 *(A-1~F-1、その他等)、気密性 *(簡 易気密、T-1級)、フロアヒンジ・ドアクローザ-の有無 * 、電気錠の有無 * 、下部昇降式エアタイト 装置の有無 * 、くつずり形状 * を説明変数とする重回帰分析を行った。引戸の説明変数は、建具 見付面積、枠見込み寸法、形状(窓・ガラリの有無) * 、自動閉鎖装置の有無 *を用いた。なお形状 以下*印を付した変数はダミー変数である。 1)片開戸 片開戸の建具面積あたりの単価の平均値と標準偏差を算出し、平均値±2σを超えるものを除 外した。その結果、分析対象のデータ数は387となった。 一回目の分析結果の標準化残差が -3以下3以上のデータ(2件)及び、てこ比が0.165以上の データ(10件)を外れ値とみなして除外し、375件のデータを用いた分析の結果得られた回帰式の 係数を表-12に示す。自由度調整済み決定係数は0.439で、分散分析の結果はF値25.4で有意確 率0.000である。実績値と回帰式から算出した推計値から誤差 表-12 鋼製軽量建具(片開戸)の回帰式 係数 (定数) 見付面積(㎡) 枠見込(㎝) ダ ミ ー 変 数 率を算出した。誤差率の分布を図-17に、平均値等を表-13に 19,668 28,785 156 片開B-1 -5,579 片開C-1 13,729 片開D-1 31,985 片開F-1 33,213 片開その他 24,679 簡易気密 15,936 FH,DC有 -3,277 T-1 昇降式エアタイト装置 くつずり4 示す。 42,733 13,716 -950 表-13 鋼製軽量建具 (片開戸)の誤差率 誤差率 平均値 -.046 中央値 -.009 標準偏差 .223 最小値 -.769 最大値 .453 図-17 LSD(片開戸)工事費誤差率 のヒストグラム 2)親子開き戸 片開戸の建具面積あたりの単価の平均値と標準偏差を算出し、平均値±2σを超えるものも除 外した。その結果、分析対象のデータ数は129となった。 一回目の分析結果の標準化残差が -3以下3以上のデータ(1件)及び、てこ比が0.465以上の データ(1件)を外れ値とみなして除外し、127件のデータを用いた分析の結果得られた回帰式の係 数を表-14に示す。自由度調整済み決定係数は0.534で、分散分析の結果はF値10.6で有意確率 0.000である。実績値と回帰式から算出した推計値から誤差率を算出した。誤差率の分布を図 -18 に、平均値等を表-15に示す。 - 80 - 表-14 鋼製軽量建具(親子戸)の回帰式 係数 (定数) 見付面積(㎡) ー 変 数 313 親子A−2 -11,415 親子B−2 -5,520 親子C−2 -294 親子D−2 44,379 親子E−2 8,229 親子F−2 -5,542 親子その他 2,470 簡易気密 3,930 FH,DC有 電気錠 表-15 鋼製軽量建具 (親子戸)の誤差率 誤差率 9,539 63,326 T-1 67,030 下 部 昇 降 式 エアタイト装 置 34,289 くつずり4 た。誤差率の分布を図-18に、平均値等を表-15に示す。 70,369 枠見込(㎝) ダ ミ 実績値と回帰式から算出した推計値から誤差率を算出し -89,181 平均値 -.022 中央値 -.013 標準偏差 27,898 .156 最小値 -.597 最大値 .290 図-18 LSD(親子戸)工事費誤差率 のヒスストグラム 3)両開き戸 両開戸の建具面積あたりの単価の平均値と標準偏差を算出し、平均値±2σを超えるものも除 外した。その結果、分析対象のデータ数は106となった。 一回目の分析結果の標準化残差が -3以下3以上のデータ(2件)及び、てこ比が0.566以上の データ(2件)を外れ値とみなして除外し、102件のデータを用いた分析の結果得られた回帰式の係 数を表-16に示す。自由度調整済み決定係数は0.870で、分 表-16 鋼製軽量建具(両開戸)の回帰式 散分析の結果はF値62.4で有意確率0.000である。実績値と 係数 (定数) 見付面積(㎡) 枠見込(㎝) 9,516 63,463 回帰式から算出した推計値から誤差率を算出した。誤差率 の分布を図-19に、平均値等を表-17に示す。 -56 両開A−3 -17,073 両開B−3 -31,215 -10,940 両開D−3 31,225 変 数 簡易気密 -41,970 平均値 -.040 FH,DC有 46,378 中央値 .013 ー 両開C−3 ダ ミ 両開F−3 電気錠 表-17 鋼製軽量建具 (両開戸)の誤差率 23,042 102,379 誤差率 標準偏差 .275 T-1 15,972 最小値 -1.256 くつずり4 14,477 最大値 .664 図-19 LSD(両開戸)工事費誤差率の ヒストグラム 4)引戸 引戸の建具面積あたりの単価の平均値と標準偏差を算出し、平均値±2σを超えるものも除外 した。その結果、分析対象のデータ数は104となった。 一回目の分析結果の標準化残差が -3以下3以上のデータ及び、てこ比が0.192以上のデータ を外れ値とみなして除外した分析も実施したが、1回目の結果に比較して良好な結果が得られなか った。従って、引戸の回帰式は一回目の分析結果の係数を表-18に示す。自由度調整済み決定 係数は0.262で、分散分析の結果はF値8.3で有意確率0.000である。実績値と回帰式から算出し た推計値から誤差率を算出した。誤差率の分布を図-20に、平均値等を表-19に示す。 - 81 - 開閉方式別に見た場合の誤差の比率率のばらつきが最も大きい。建具の開口部やガラリの形 状が多様であったため、実績値との差が大きくなったのではないかと考えられる。 表-18 鋼製軽量建具(引戸)の回帰式 表-19 鋼製軽量建具 (引戸)の誤差率 係数 (定数) 見付面積(㎡) 枠見込(㎝) ダ 自動閉鎖装置有 ミ ー 引戸フラッシュ戸 変 数 引戸(窓・ガラリ付) 69,446 誤差率 46,166 平均値 -.118 267 中央値 -.021 6,246 標準偏差 .372 -26,357 最小値 -1.156 -8,565 最大値 .504 図-20 LSD(引戸)工事費誤差率のヒストグラム 6.ステンレス製建具 45施設のうちステンレス製建具は41施設で使用されていた。表-20に施設別のステンレス製建具 の床面積あたりの単価と建具見付面積あたりの単価の平均値等を示す。 床面積あたりの単価の平均値は1,806円/㎡、中央値は1,309円/㎡、標準偏差は1,514である。 ヒストグラムを図-21に示すが施設による差が大きい。 表-20 ステンレス製建具の単価 建具面積あたりの単価の平均値は88,213円/㎡で鋼製建 床面積当り 単価(円/㎡) 建具面積当り 単価(円/㎡) 具に比較すると約20,500円/㎡高い、中央値は77,970円/㎡、 平均値 1,806 88,213 標準偏差は36,049である。ヒストグラムを図-22に示す。40~ 中央値 1,309 77,970 140千円/㎡の度数が大きいが、160千円/㎡を超えるものも2 標準偏差 件あるなど施設による差が大きい。 1,514 36,049 最小値 263 43,274 最大値 8,435 230,737 ス テンレス製建具の工事費と延床面積の散布図を図-23に、建具面積の合計との散布図を図-24に 示す。Pearson の相関係数は延床面積と建具工事費では0.679、延床面積と建具面積では0.689 と共に低く、建具工事費と建具面積では0.903と高い値となっている。 建具の価格を目的変数に、建具見付面積、枠見込み寸法、開閉方式 * (引戸 開き戸 * 欄間 * 部分の可動の有無)、 ガラリの有無 、表面仕上 (バイブレーション加工 角出し)を説明変数と する重回帰分析を行った。(*印を付した変数はダミー変数である。)分析の対象は全建具の建具 面積あたりの価格の平均値と標準偏差を算出し、平均値±2σを超えるものを除外した178件のデ ータである。 - 82 - 図-23 延床面積・St製建具等工事費の散布図 図-24 建具面積・St製建具等工事費の散布図 一回目の分析結果の標準化残差が -3以下3以上のデータ(2件)及び、てこ比が0.202以上の データ(7件)を外れ値とみなして除外した169件のデータを用いた分析の結果得られた回帰式の 係数を表-21に示す。自由度調整済み決定係数は0.619で、分散分析の結果はF値46.5で有意確 率0.000である。 回帰式から得られた推計値と実績値から誤差率を算出した。誤差率の分布を図-25に、平均値 等を表-22に示す。 表-21 ステンレス製建具の回帰式 係数 (定数) 見付面積(㎡) 枠見込(㎝) ダ 開き戸 ミ 欄間部分可動 ー 変 角出し 数 バイブレーション・フッ素焼付 215,847 表-22 ステンレス製建具 の誤差率 誤差率 43,624 742 20,139 平均値 -.168 中央値 -.057 357,908 標準偏差 -47,931 最小値 -2.933 .512 243,823 最大値 .613 図-25 ステンレス製建具の誤差率のヒストグラム 7.重量シャッター 45施設のうち重量シャッターは25施設で使用されていた。 表-23 重量シャッターの単価 床面積当り 単価(円/㎡) 建具面積当り 単価(円/㎡) 平均値 1,615 126,113 中央値 1,387 116,199 標準偏差 1,133 56,553 表-23に重量シャッターの床面積あたりの単価と建具見付 面積あたりの単価の施設別の平均値等を示す。 床 面 積 あたりの単 価 の平 均 値 は 1,615円 /㎡、中 央 値 は 1,387円/㎡、標準偏差は1,133である。ヒストグラムを図-26に 示すが500円/㎡~4,500円/㎡と施設による差が大きい。 最小値 377 67,208 最大値 4,360 289,604 シャッター面積1㎡あたりの単価の平均値は126,113円/㎡ で、中央値は116,199円/㎡、標準偏差は56,553である。ヒストグラムを図-27に示す。100~125千 円/㎡の度数が大きいが、250千円/㎡を超えるものも2件あるなど施設による差が大きい。 重量シャッターの工事費と延床面積の散布図を図-28に、建具面積の合計との散布図を図-29 に示す。Pearson の相 関 係数 は延 床 面積 と建 具 工事 費では0.668、延床 面積 と建 具面 積では 0.628と共に低く、建具工事費と建具面積では0.960と高い値となっている。 重量シャッターの価格を目的変数に、建具見付面積、開閉方式 *(電動・手動)、防火性能 *、くぐ り戸の有無 *を説明変数とする重回帰分析を行った。なお*印を付した変数はダミー変数である。 - 83 - 図-28 延床面積・シャッター工事費の散布図 図-29 建具面積・シャッター工事費の散布図 分析の対象は全建具の建具面積あたりの価格の平均値と標準偏差を算出し、平均値±2σを 超えるものを除外した69件のデータである。 一回目の分析結果の標準化残差が -3以下3以上のデータ(1件)及び、てこ比が0.113以上の データ(5件)を外れ値とみなして除外した63件のデータを用いた分析の結果得られた回帰式の係 数を表-24に示す。自由度調整済み決定係数は0.661で、分散分析の結果はF値42.0で有意確率 0.000である。回帰式から得られた推計値と実績値から誤差率を算出した。誤差率の分布を図-30 に、平均値等を表-25に示す。 表-25 重量シャッターの 誤差率 誤差率 表-24 重量シャッターの回帰式 係数 (定数) 見付面積(㎡) 変ダ ミ 数ー 308,573 65,014 平均値 -.055 中央値 .004 標準偏差 .260 特定防火 201,476 最小値 -.652 手動 -69,560 最大値 .293 図-30 重量シャッターの誤差率のヒストグラム 8.まとめ ㎡単価による工事費の推計に比較すると精度の良い結果が得られたが、建具の価格は内訳書 のデータでは種類・形状・仕様などが同一のものと思われるものでも工事により異なる価格であるこ とがある。今後、概算額の精度を向上させるためには見積もりを実施している建具の製造所等に価 格形成の調査等を行う必要があると思われる。 - 84 -