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ロボット研究会フォーラム - 神奈川県産業技術センター
1AM-A01 平成27年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 ロボット産業における知的財産の活用動向 日本弁理士会関東支部 〇弁理士 佐藤高信、弁理士 津田宏二、弁理士 水庭浩吉 【要旨】ものづくり技術を基盤にロボット大国としての地位を築いてきた我が国は、少子高齢化による社会的課題の 解決手段として、さらにIoT(Internet of Things)時代の本格的な到来に向けた国際的なロボット開発競 争を勝ち抜くために、 「ロボットによる新たな産業革命」の実現を目指す「ロボット新戦略」を打ち出しまし た。我々は、知的財産の専門家として、特許データから見た、ロボット産業の今後向かうべき姿を提案しま す。その中で事例を挙げながら標準規格を視野に入れた知財活動を分かり易く説明します。 1.ロボット技術と知的財産 アイボやアシモのような技術開発や用途等の可能性探 索、アニメや小説・映画のようなアミューズメント及び 工場設備の分野に留まっていたロボットが、介護用ロボ ット「HAL」 、掃除用ロボット「ルンバ」 、防犯・監視 用ロボット「セコムロボットX」 、人工知能を搭載した接 客用人型ロボット「ペッパー」等が話題として取り上げ られ、広く紹介されて実用化に向けて進んでいます。そ れに伴い、センサーやネットワーク及びインターネット などに接続されたデバイスなどにも飛躍的な進化がみら れます。このような状況において、ロボットを取り巻く 技術を特許情報等を基に鳥瞰するとともに、 特許や意匠、 商標などの知的財産を活用して、開発した技術やデザイ ン及びフラッグシップを自社の権利として守りながら普 及・発展させていくかが重要になります。 2.標準化と知的財産 技術を普及・発展させるための手段として“標準化” があります。標準化とは、製品の大きさや形などを標準 (決めごと)に従って統一することといえます。ロボッ トは、様々な製品(部品)技術が組み合わさって複雑な 作業を可能とするものが多く、その技術の複雑さから標 準化を考慮した技術開発が重要となってきます。特に、 WTO/TBT協定では、国際規格を基礎とした国内規 格策定の原則について定められており、WTO加盟国で あるわが国において国際競争力を向上させるためには、 国際規格を見据えた標準化が重要であるといえます。一 方、前述した知的財産権の一つである特許権は、特許権 者に発明の実施をする権利を独占させ、他者による真似 を防止するものであり、自らの独占実施や他社への実施 許諾によるライセンス料などによって企業利益を確保す るものです。したがって、特許技術を技術標準に適切に 組み込ませることで、 特許による企業利益を確保しつつ、 標準化によるメリット (互換性確保などによる市場拡大、 品質等確保のためのコストダウン、差別化など)を享受 することができます。 3.知的財産権と技術標準を併存させるための考え これまで説明してきたように、知的財産権の中で技術 等を保護する特許権の効力は、独自の技術等が他人に真 似されるのを防止できるというものです。 これによって、 企業は、当該技術等を特徴とする事業の収益を確保でき ます。一方、技術標準のメリットの1つとして、多くの 企業が同一の技術を利用できるようになり、製品の互換 性等を高めることができるというものがあります。これ によって、その製品の用途が増え市場を拡大できる等の メリットがあります。しかし、本来であれば、技術の独 占と技術の一般化とはあいまみえるものではありません。 そのために、技術標準では、特許権のライセンスを規定 するパテントポリシーや一括したライセンスを可能にす るパテントプール等の方策を取り入れ、独占された技術 を多くの企業が円滑に利用できるようにしています。例 えば、パテントプールには、デジタル動画圧縮技術に関 するMPEG2パテントプール、移動体通信技術に関連 する3G Licensing(W-CDMA)パテント プールがあります。ロボット産業においてもその市場拡 大には多くの企業の参画が必要になる一方、特許と技術 標準をどのように戦略的に取り入れていくかが課題にな ると考えます。 1AM-A02 平成27年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 災害対応ヒューマノイドロボットの研究開発 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 金広 文男 1. はじめに 産業技術総合研究所は設立後一貫してヒューマノイド ロボットの研究開発を行っている。 1998 年〜2003 年に実 施された「人間協調・共存型ロボットシステムの研究開 発」ではヒューマノイドロボット HRP-2 を開発し、屋外 での人との共同作業の実現可能性を模索した。その後、 実際の現場で活動可能な防塵・防滴処理が施されたモデ ルとして HRP-3、人らしい外観と人らしい動きによって エンターテイメント分野への応用を目指す HRP-4C を開 発してきている。3.11 以降は通常人が活動している場所 が災害の発生等によって人が入れなくなってしまった場 合に人に変わって活動できる災害対応ヒューマノイドの 研究開発を行っている。本稿ではこの災害対応ヒューマ ノイドロボットの研究開発状況について紹介する。 2. 災害現場でのヒューマノイドロボットの活用 3.11 以降、福島第一原発には PackBot や Quince 等の クローラタイプのロボットが多数内部に入って状況調査 等を行っている。しかし福島第一原発内部にはこれらの ロボットでは状況を確認できない部分が数多く存在する。 例えば原発内部には垂直梯子が多数あり、梯子を登って みないとその先の状況が確認できない。このような場所 は、事故が発生するまでは人間の作業員が活動していた 現場であり、人型がその内部全域を調査できる形態の一 つであることは間違いない。従って人と似た形態を持つ ヒューマノイドロボットは全域を調査できる潜在能力を 持っているといえる。にもかかわらず今日ヒューマノイ ドロボットが福島第一原発において一体足りとも使用さ れていないのは、その技術レベルがまだまだ未熟なため である。ヒューマノイドロボットはクローラタイプのロ ボットに対して関節の数が格段に多いために制御が複雑 であり、人と同じ様に二足歩行を行うものの、そのロバ スト性は大きく人に劣る上に、転倒してしまった場合に 自力で起き上がって活動を継続することもできないとい うのが現状である。これでは高い信頼性が求められる現 場で使ってもらうことはできない。実用化に向けた技術 開発を急ぐ必要がある。 3. DARPA Robotics Challenge(DRC) 災害現場でのロボット活用を目指し、米 DARPA が災害 対応ロボットの競技会、DARPA Robotics Challenge(DRC) の決勝戦を2015年6月に米カリフォルニア州で開催した。 この競技会には全世界から 23 のチームが参加し、1 時間 で 8 つのタスクに連続して挑み、できるだけ多くのタス クを短時間で達成する能力を競った。この競技会はヒュ ーマノイドのみを対象としたものではなく、4 脚タイプ や脚と車輪を併用したタイプ等、様々な形態のロボット が参加した。その結果をまとめたものが次表である。 表 1 : DRC Finals の 競 技 結 果 、 産 総 研 は 10 位 TEAM KAIST TEAM IHMC ROBOTICS 8 8 44:28:00 2脚/車輪 50:26:00 2脚 DRC-HUBO ATLAS TARTAN RESCUE TEAM NIMBRO RESCUE TEAM ROBOSIMIAN 8 7 7 55:15:00 4脚/クローラ 34:00:00 4脚/車輪 47:59:00 4脚/車輪 独自 独自 独自 TEAM MIT TEAM WPI-CMU TEAM DRC-HUBO AT UNLV TEAM TRAC LABS 7 7 6 5 50:25:00 56:06:00 57:41:00 49:00:00 2脚 2脚 2脚/車輪 2脚 ATLAS ATLAS DRC-HUBO ATLAS TEAM AIST-NEDO TEAM NEDO-JSK TEAM SNU TEAM THOR 5 4 4 3 52:30:00 58:39:00 59:33:00 27:47:00 2脚 2脚 2脚 2脚 HRP-2 独自 ROBOTIS ROBOTIS TEAM HRP2-TOKYO TEAM ROBOTIS TEAM VIGIR TEAM WALK-MAN 3 3 3 2 30:06:00 30:23:00 48:49:00 36:35:00 2脚 2脚 2脚 2脚 HRP-2 ROBOTIS ATLAS 独自 TEAM TROOPER TEAM HECTOR TEAM VALOR TEAM AERO TEAM GRIT TEAM HKU 2 1 0 0 0 0 42:32:00 2:44 0:00 0:00 0:00 0:00 2脚 2脚 2脚 4脚 4脚 2脚 ATLAS ROBOTIS 独自 独自 独自 ATLAS 多くの二足歩行ロボットが転倒したのに対し、車輪な どを併用した移動手段は安定性高く移動することができ たために上位を占めている。 産総研も NEDO の支援を受け て、HRP-2 をこの競技会用に改造した HRP-2 改というモ デルをもってこの競技会に参加したが、2 度の競技で 2 度とも転倒してしまい、競技時間の最後まで競技を継続 することができなかった。転倒が不可避となった場合に 防御姿勢をとって被害を最小化するような運動制御技術、 転倒した場合でも壊れづらいハードウェア技術の開発が 急務である。 図 1:HRP-2 改の競技の模様(©DARPA) 4. おわりに 本稿では産総研での災害対応ヒューマノイドロボット 開発に関する取り組みを紹介した。ヒューマノイドロボ ットは未だ技術課題が多くあるものの、求められる現場 があることも事実であり、一日も早くこれらの間にある ギャップを埋め、過酷な災害現場等から人を解放するこ とを目指して技術開発を継続していく。 謝辞 本研究の一部は,NEDO「環境・医療分野の国際研究開発・ 実証プロジェクト/ロボット分野の国際研究開発・実証 事業/災害対応ヒューマノイドロボット HRP-2 改の研 究開発」の一環として実施された。ご助力いただいた関 係者の皆様に謝意を表する。 1PM-A03 平成27年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 機能性ハプティックアクチュエータ 横浜国立大学 工学研究院 神奈川科学技術アカデミー ○下野 誠通 溝口 貴弘 概要 超高齢社会を迎える我が国では、QOL(Quality Of Life)向上に直接寄与することが可能な手術支援ロボットやリ ハビリテーションロボットなど、国産の医療福祉ロボットの開発と実用化が強く望まれている。しかし、既存の医療 福祉ロボットは本質的には工作機械や産業ロボットの延長に留まっており、 精密な位置決め動作は可能であるものの、 人体を含む環境との柔らかい接触動作を実現することは極めて難しい。そのため、生命の安全を預けるに足る柔軟性 と多機能性を十分に獲得しているとは言い難い。これは、従来のロボットの運動が硬い位置制御を基本としており、 物体との柔らかい接触を実現する力制御(本質的には反作用力の制御)を有していないことに起因する。したがって、 世界的に普及しつつある米国製の低侵襲性外科手術支援ロボット“Da Vinci”であっても、婦人科手術や前立腺手術 など極めて局所的な用途に限られており、脆弱な組織を対象とした微妙な力加減を要する一般外科には適用すること が困難なままであるのが現実である。そこで、本研究では力の感覚を有する次世代の医療福祉ロボットの実現を目指 し、手術やリハビリテーションにおいて望まれる柔らかい運動を可能にする、力触覚技術を応用した様々なアクチュ エータ(機能性ハプティックアクチュエータ)を開発する。 機能性ハプティックアクチュエータとは、高い力触覚伝達特性を有し、かつ医療福祉ロボットに要する特定の運動 機能に特化したアクチュエータである。本研究では、高出力化機能を有するハプティックアクチュエータ、運動多様 化機能を有するハプティックアクチュエータ、多自由度化機能を有するハプティックアクチュエータの三つを主な開 発対象とし、それぞれをモジュール化し力触覚機能を実装する。そして、これらの機能性ハプティックアクチュエー タをシステム統合することで、力触覚機能を有する医療デバイス、リハビリテーションロボット、手術ロボット等を 実現する。 講演では、まず上記の本研究の概要について説明する(図 1) 。そして、機能性ハプティックアクチュエータの開発 研究の進捗について報告し、試作機を用いた実証実験結果を示す。最後に、次世代医療福祉ロボットの実現に向けた 将来展望について議論する。 謝辞 本研究は、公益財団法人神奈川科学技術アカデミー戦略的研究シーズ育成事業「機能性ハプティックアクチュエー タの創製」によって行われたことを記すと共に、関係者各位に謝意を表す。 図 1 研究開発の概要 1PM-A04 平成27年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 高出力ソフトアクチュエータの開発 ○小島明寛,後藤将斗,寺嶋隆史,宮山哲也 中村太郎 1. はじめに 空気圧ゴム人工筋肉は,ゴム等の弾性媒体材に空気等 の流体を注入して動力を得るアクチュエータのひとつで ある.このアクチュエータは,モータやシリンダなどの 従来の金属製のアクチュエータと比較して,軽量で出力 密度が高く,柔軟であるという特徴がある.これらの特 徴から,人間との協調性の高いアクチュエータとして注 目されている. 現在, 広く利用されている空気圧ゴム人工筋肉として, McKibben 型人工筋肉が挙げられる.本人工筋肉は,ゴ ムチューブが互い違いに角度をつけて粗く編みこんだ繊 維コードで覆われた構造となっている.その収縮のメカ ニズムは,空気圧の供給によって膨張したゴムチューブ が,繊維コードの初期角度を変化させる.この角度の変 化により繊維コードが半径方向に膨張し,それにより軸 方向への収縮を行うというものである.しかしながら, 本人工筋肉は,収縮率が 20%程度と人間の筋肉の収縮率 に比べて小さい.また,ゴムチューブとスリーブが擦れ ることによってゴム自体が摩耗する為,寿命が短い等の 欠点があった. そこで中村らは,これらの欠点を克服する為,高出力 ソフトアクチュエータ(軸方向繊維強化型人工筋肉)を開 発した 1).著者らは,この人工筋肉のゴムチューブを実 用配合とし,特性評価及び各種用途への展開を行ってい る.本報告では,開発した人工筋肉の構造,特徴及びそ の応用例を紹介する. 2. 軸方向繊維強化型人工筋肉について 2.1 構造及び材料 図 1 に軸方向繊維強化型の構造を示す.本人工筋肉は 一方向にひき揃えた強化繊維をゴムチューブに内包した 構造となっている.そのため,本人工筋肉は,強化繊維 をゴムチューブの軸方向に直接拘束し流体の圧力を直接 アクチュエータの収縮力として伝達することができる. また,本人工筋肉の収縮のメカニズムは,空気圧の供給 によって,チューブの内圧が軸方向ではなく,半径方向 にのみ伝達される.したがって,ゴムチューブは半径方 向に大きく膨張し, その結果軸方向への収縮が得られる. 本開発では,公称ひずみ 500%以下での応力-ひずみ特 性が天然ゴムラテックスと同等となるよう配合設計を行 った.また,中村らがゴムチューブの材料として用いて いる天然ゴムラテックスを実用ゴム配合に変更すること で,耐候性,耐液性等を改善させ長寿命化を図った. 加硫ゴム ターミナル 繊維 図 1 軸方向繊維強化型人工筋肉の構造 2.2 人工筋肉の特性 図2 に同一寸法のMcKibben 型人工筋肉及び軸方向繊 維強化型人工筋肉の圧力と収縮率の特性を示す. ここで, 収縮率とは人工筋肉の軸方向の初期長さと収縮時の軸方 向の長さの差(収縮量)と軸方向の初期長さとの比率とす る. 軸方向繊維強化型人工筋肉は同圧印加時の McKibben 型人工筋肉よりも高い収縮率が得られた.さらに最大収 縮率は,McKibben 型人工筋肉が 25%程度であるのに対 して,軸方向繊維強化型人工筋肉では 40%近い値を示し ている.また,実用配合で作製した人工筋肉は中村らの 作製したものと同等の収縮率を得た. 50 McKibben型 軸方向繊維強化型ラテックス 40 収縮率[%] 株式会社明治ゴム化成 中央大学 理工学部 軸方向繊維強化型実用 30 20 10 0 0.0 0.1 0.2 印加圧力[MPa] 0.3 0.4 図 2 圧力-収縮率特性 3. 今後の展開 軸方向繊維強化型人工筋肉は単に長軸方向の収縮力を 利用したリニアアクチュエータとしての用途にとどまら ない.その膨張形状を利用することにより,配管検査ロ ボットや搬送ポンプ等多様な応用展開を検討している. 参考文献 1) 中村太郎,空気圧ゴム人工筋肉とロボットシステムへ の応用,MATERIAL STAGE,Vol.13,No.7,2013, pp.25-29. 1PM-A05 平成27年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 マルチローター機への高電圧給電技術 電子技術部 生産システムチーム 三 岩 幸 夫 飛行時間の制約をなくすためにマルチローター機を有線給電する場合,高電圧を用いると細いケーブルを使える. 対象となるマルチローターは電圧 DC24 V,電流 90 A,消費電力 2160 W が必要なため,高電圧を DC24 V に変換 する降圧コンバータをマルチローター機に内蔵する必要がある.市販の 2 kW 級の電源は重量があり,マルチロー ター機の飛行に支障があるので,軽量かつ小型の降圧コンバータを開発することにより,実用的なマルチローター 機への高電圧給電技術を確立した. キーワード:マルチローター機,高電圧有線給電,降圧コンバータ,軽量化 1. はじめに 一般的なマルチローター機は,バッテリを搭載し飛行す るが,飛行時間が短いことが問題である.それを解決する ために地上から電源を供給したいが,従来のバッテリと同 様の電圧で送電するとケーブルの質量が大きくなり,高度 高電圧有線給電 降圧コンバータ DC24 V 出力 地上設置 安定化電源 DC360 V 出力 ローター 24 V/90 A 2160 W マルチローター機(空中) 図 1 マルチローター機への高電圧有線給電 や距離など飛行範囲が大きく制約される.送電する電圧を 高くすると細いケーブルを選定でき,飛行範囲の制約を小 さくすることができる. スイッチング衝撃を抑えることができた. その結果,スイッチング半導体で,1 次側の MOSFET のヒートシンクは約 52 g,2 次側の整流ダイオードのヒー 2. 高電圧有線給電の検討 マルチローター機への高電圧有線給電は,図 1 のよう トシンクは約 88 g に低減することができた. DCDC コンバータで最大の重量を占めるのが,電源ト ランスのフェライトコアで,概ねフェライトコアの重量と なシステムとなり,受電する側の空中のマルチローター機 扱える電力が比例し,物理的にその小型化は不可能である. のローターは DC24 V,15 A で 6 台搭載するので,電流 フェライトコアは飽和磁束密度が 350~500 mT であり, は 90A,消費電力は 2160 W となる. 市販の安定化電源,例えば,TDK 製 HWS1000-24 は 実際に推奨される最大磁束密度は 200 mT とされる. そこで,飽和磁束密度が 1200 mT のファインメットを DC24 V,46 A 供給可能で,2 台を並列運転で 90 A の電 用いて,最大 800 mT の飽和磁束密度で使うことにより, 流が供給可能となる.HWS1000-24 の重量は 3.2 kg で 2 約 1/4 の重量低減を実現することができ,ファインメット 台では計 6.2 kg となり,マルチローター機内蔵電源とし のコアの重量を 128 g に低減することができた. ては実用に程遠いので,重量 1.5 kg 以下を目指して,降 圧コンバータの軽量化に取り組むことにした. 試作した降圧コンバータは制御用電源回路やコントロー ラ回路を含めて 774 g の重量で DC24 V 出力,定格電流 90 A,定格電力 2160 W を実現することができた. 3. 降圧コンバータの軽量化 DCDC コンバータは,スイッチング半導体を放熱する ヒートシンクと電源トランスが重量の大半を占める. ヒートシンクの小型化は,スナバーレススイッチング回 路でスイッチング損失の低減によるヒートシンクの小型化 を実現したが,スイッチング衝撃の拡大が発生した. これに対しては,UHF 帯無線通信回路の高周波実装技 術の経験を活用して,プリント基板の回路実装技術により 4. おわりに 今回,降圧コンバータの大幅な軽量化を実現でき,マル チローター機への高電圧給電技術の基礎を確立できた. 現状では,ソフトスタートや電流制限など安全機構や電 圧安定化機能がないので,これらを追加していきたい.