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コンピテンス職業

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コンピテンス職業
21 世紀スキルとしての問題解決力と
国際的な評価の枠組み
○星 千枝
(教育テスト研究センターCRET)
1
21 世紀の職業人に求められる力
人間の情報処理の多様性…・右に行くほどコンピュータ化しにくい
演繹的にルール化しや
帰納的にパターン認識
テクノロジーの進化やグローバル化が進む現代で
すい仕事
しやすい仕事
は,マニュアルに従って処理するようなルーチンワ
Rules-Based Logic
Pattern Recognition
ークはコンピュータに代替され,人間に求められる
例)算数・数学、発券処
例)債務不履行の予測、
理
声の認識処理
力が高度化してきている.必要とされるのは包括的
なスキル,すなわちジェネリックスキルである1) .
臨機応変に判断したり,ルールが明確に認識できな
図 1: 仕事の分類
かったりする類の仕事はコンピュータ化されにくい.
それは,初めての状況での問題解決力なども該当する(図1参照)
.
2
ルール化できない仕事
Pure Pattern Recognition
例)法律文書執筆、運転
手の状況判断
評価の枠組み
このように急速に変化する社会で必要とされる能力とは一体何なのか.また,それらの中で測定可能なも
のは何なのか.OECDやEUなどがまとめた能力の枠組みについて,発表順に述べる.
2.1 OECD DeSeCo キーコンピテンシー
2002 年に発表されたのが,OECD の DeSeCo
(Definition and Selection of Competencies,
能力の定義と選択)の枠組みである(表 1 参照)
2) 3).これは,教育研究者や政策立案者などが
プロジェクトを組んで定めた枠組みで,1997
年の PISA 調査計画 4)と同時に始まった.PISA
など OECD の国際調査の根本の枠組みとして
参照されている.
表 1: DeSeCo キーコンピテンシー(2002)
相互作用的に道
具を用いる
異質な集団で交
流する
自律的に活動す
る
1
言語、シンボル、テクストを相互作用的に用いる
2
知識や情報を相互作用的に用いる
3
技術を相互作用的に用いる
4
他者とうまく関わる
5
協働する
6
紛争を処理し、解決する
7
大きな展望の中で活動する
8
人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する
9
自らの権利、利害、限界やニーズを表明する
2.2 EU 生涯教育のためのキーコンピテンシー
EU では,2006 年,加盟 27 か国のひとりひと
りが,急速に変化する世界に柔軟に対応するために
必要な能力として,8 つのキーコンピテンシーを定
めた(表 2 参照)5).DeSeCo の枠組みも参照しな
がら作成したものである.学び方の学び(Learning
to Learn)が特徴的である.Education & Training
2010 という教育目標を掲げ,2 年ごとに EU 各国
が政策レポートを EU に提出したが,理数と技術で
少し成果が表れた程度だった.2020 年に向けての
戦略は EU2020 6)としてスタートする.
2.3 アメリカ Partnership for 21st Century Skills
表 2: EU キーコンピテンシー(2006)
1
母国語でのコミュニケーション
2
外国語でのコミュニケーション
3
数学と基礎的な科学と工学
4
デジタルコンピテンシー
5
学び方の学び
6
社会的、市民的コンピテンシー
7
率先力、起業家精神
8
異文化理解と表現
2009 年,アメリカ連邦教育省や 40 の企業が関わる
Partnership for 21st Century Skills (P21)という組織が,21 世紀スキルとして 25 の能力を提案した
(表 3 参照)7).
表 3: P21 21 世紀スキル枠組み(2009)
2.4 国際プロジェクト ATC21S
2010 年には,ATC21S という国際
プロジェクトが 21 世紀に必要な 10
個の能力を示した(表 4 参照)8).
これは 2011 年までの 3 年間のプロ
ジェクトで,オーストラリアのメル
ボルン大学を事務局として,アメリ
カの IT 企業3社が支援し,OECD
など国際機関や各国の教育研究者
が集まって成果を出そうとするも
のである.DeSeCo や EU の枠組み
の他,諸外国の関連文献を参照して
枠組みを作成した.
コア科目と
21世紀テーマ
国際調査における測定能力の変
遷
言語スキル(読解・文章力)
外国語スキル
芸術
数学
経済
科学
地理
歴史
政府と市民性
グローバルな意識
ファイナンシャル、経済、事業、起業家精神のリテラシー
市民性リテラシー
ヘルスリテラシー
環境リテラシー
15 創造性と革新性
16 批判的思考と問題解決
イノベーションのスキル 17 コミュニケーションとチームワーク
学習および
情報、メディア、
3
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
テクノロジースキル
生活と職業スキル
18 情報リテラシー(情報検索と活用)
19 メディアリテラシー
20 ICTリテラシー(テクノロジーを道具として使う)
21
22
23
24
25
柔軟性・適応性
自発性・自立性
社会的及び異文化交流スキル
生産性・倫理観
リーダーシップ及び責任感
このような枠組みを背景に,
OECDが実
施する国際調査でも,測定する能力に変化
が見られる.16~65歳を調査対象とする
表 4: ATC21S 21 世紀スキル枠組み(2010)
大人のリテラシー調査では,2002年に国
際調査で初めて「問題解決」が現れ,2011
1
年にはインターネットなどのテクノロジ
考え方
創造性と革新性
2
批判的思考、問題解決、意志決定★
ーを使った問題解決力の測定が予定され
3
学び方の学び、メタ認知(認知プロセスの知識)
ている.15 歳対象のPISA2012 では,
4
仕事のしかた
コミュニケーション
PISA2003のものとは異なる内容の問題
5
協働(チームワーク)★
解決力の測定が予定されている.22~26
6
仕事の道具
情報リテラシー
歳対象のAHELOという,いわば高等教育
7
情報とコミュニケーションテクノロジー(ITC)リテラシー★
版のPISAも計画中で,ジェネリックスキ
8
世界に生きる
シチズンシップ―地域とグローバル
ル,工学,経済の力が問われる予定である
9
生活とキャリア
9).ジェネリックスキルとは,問題解決力
10 個人と社会的責任(文化素養とコンピテンスを含む)
のほか,批判的思考力,コミュニケーショ
ン力など汎用的な力の一般名称として使
われる.ATC21Sでも,個人およびチームでの問題解決とデジタルリテラシーを優先的にとらえ(表4に★
表示)
,テスト問題の研究開発が進められており,国際調査への影響が注目されている.測定できる新しい
能力として「問題解決力」の評価と育成が最近の教育動向といえるだろう.
参考文献
1) F. Levy, Department of Urban Studies and Planning, MIT, R. J. Murnane, Graduate School of
Education, How Computerized Work and Globalization Shape Human Skill Demand (2006)
2) OECD, THE DEFINITION AND SELECTION OF KEY COMPETENCIES Executive Summary
(2005)
3) 国立教育政策研究所, http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div03-shogai-lnk1.html
4) PISA(Programme for International Student Assessment ) http://www.pisa.oecd.org/
5) EU, RECOMMENDATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 18
December 2006 on key competences for lifelong learning (2006)
6) EU, EUROPE2020, A European strategy for smart, sustainable and inclusive growth (2010)
7) P21 http://www.p21.org/index.php?option=com_content&task=view&id=254&Itemid=120
8) ATC21S(Assessment & Teaching of 21st Century Skills) http://www.atc21s.org/home/
9) AHELO(Assessment of Higher Education Learning Outcomes)
http://www.oecd.org/document/22/0,3343,en_2649_35961291_40624662_1_1_1_1,00.html
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