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ドーハ通信5(2012 年 12 月 7 日 カタール・ドーハ)

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ドーハ通信5(2012 年 12 月 7 日 カタール・ドーハ)
ドーハ通信5 (2012 年 12 月 7 日
12 月 5 日
カタール・ドーハ)
日本は今 COP 二度目の化石賞に選ばれました
(写真:CASA)
停滞する交渉
COP18 も最終日になりました。しかし、出てきている文書については、多くの国が
まだ懸念を持っており、今日中に終了する目処は全くたっていません。
議定書AWG(京都議定書の下での 先進国の更なる約束に関する特別作業部会)
議定書 AWG は、昨日(12 月 6 日)午後にその作業を終え、閉会総会を開催しました
が、京都議定書の締約国会合(CMP)に送られた決定案は、いくつものオプションと各
国の提案が並列的に並べられた括弧だらけの文書で、第 2 約束期間の長さ、余剰排出
量の繰り越し問題、第 2 約束期間の削減数値目標を持たない国の京都メカニズムの利
用、第 2 約束期間との法的空白をどう埋めるかなどの論点は、何も解決されていませ
ん。
条約 AWG(条約の下での長期協力行動に関する特別作業部会)
条約 AWG については、12 月 7 日に決定案が出ましたが、肝心の資金の項目は空白の
ままです。モルディブとスイスの大臣が中心となり、閣僚級の調整が続けられていま
す。12 月 7 日午前 4 時半に出された閣僚級の交渉のドラフトは以下のような内容にな
っています。
気候資金を、2020 年に毎年 1,000 億ドルにスケールアップする長期資金の作業
を 2013 年中も継続し、その作業の結果を COP19 に報告する。
すべての先進国に、2013 年以降の気候資金をスケールアップすることを確約す
ることを強く要請する。
先進国に 2012 年のレベルから、2020 年に毎年少なくとも 1,000 億ドルに到達す
る資金源と実行可能な経路についての提案を、COP19 に提出するよう要請する。
気候資金は、緩和と適応についてのバランスをとるべきことを強調し、適応行
動についてはその多くを公的資金によって支援することに合意する。
COP19 までのできるだけ早い時期に、閣僚級の会合を開催し、長期資金の作業計
画について討議することを決定する。
夕方から条約 AWG の閉会総会が開催されましたが、提出された文書は採択されず、
文書はそのまま COP 総会に持ち込まれることになりました。
ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)
ADP の閉会総会については、条約 AWG の結果待ちで、スケジュール表でも条約 AWG
の結果が出てから開催するとされています。
残念ながら、議定書 AWG、条約 AWG、及び ADP の現時点での最新文書では、全く削減
の野心レベルを引き上げる議論になっていません。
損失と損害(loss and damage) * 1
気候変動の影響による「損失及び損害(loss and damage)」はカンクン(COP16)に
おいて小島嶼国より提案され、どのように対処すべきかについて検討する作業計画を
策定することに合意しました。ダーバン(COP17)では、①異常気象などによる損害・
損失リスクの評価、②これに対応するアプローチ、③条約の役割、の 3 項目が議論さ
れ、これらのテーマに関する専門家会合を含む作業計画を採択しています。この 1 年
はこれに沿って、リスクに関する専門家会合及び地域ごとのワークショップが開催さ
れました。ここドーハでは、作業計画の結果に基づいて、損失及び損害への対応に関
する条約の役割を定め、どのような要素を損失及び損害として取り扱っていくのかに
ついて議論を前に進めていくことが求められています。
気候変動の悪影響による損失及び損害は、排出削減の野心レベルを上げる議論と表
裏一体です。これまで適応策が進まず、排出削減量の野心レベルも上げられない状況
の中では、深刻な損失や損害の危険性に直面することになります。また、昨年 IPCC が
発表した「気候変動への適応推進に向けた極端現象及び災害のリスク管理」という特
別報告書では、気候変動への対処を怠れば、「1980~2000 年では 20 年に一度の割合で
発生していた熱波が、今後は世紀末まで 2 年に一度の頻度で発生する危険性がある」
と警告しており、今後異常気象は増加かつ深刻化していくことが予測されています。
野心の引き上げを放棄することは、気候変動の悪影響による損失及び損害の規模を拡
大することに直結するとの認識は、実はあまり浸透していません。
現時点で、多くの人々が泣き寝入りしなければならない状況の中、国際社会がこれ
に対してどう対応していくか注目されています。特に COP18 では、これまでの作業に
基づいて、損失及び損害に対して国際的に対応するメカニズム及び制度が必要である
ことを認識し、今後作業を継続して内容をつめていく必要があります。気候変動枠組
条約は、首尾一貫して損失及び損害に国際的に対処していく上で重要な役割を果たせ
ると言えます。
会議では、途上国は国際的な損失と損害のメカニズムの実施及び制度の確立を求め
ているのに対し、先進国、特にアメリカは既存の作業の中でできるとし、懐疑的です。
日本は、25%削減目標を引き下げ、今後の適応への確固たる資金規模も示さず、現実
問題として起こっている損失及び損害に対して前向きな対応を示さないのでは、国際
的責任を果たしているとは言えません。深刻な影響を受ける国々に対し、国際的な対
応策を検討する必要があります。
*1
損失と損害には、異常気象及び徐々に起こる変化(海面・気温上昇、海水の酸
化、氷河の後退、塩化現象、土壌・森林侵食、生態系の損失、砂漠化)が含まれるとさ
れています。
日本、今 COP 二度目の化石賞
12 月 5 日、長浜博行環境大臣が閣僚級会合で演説を行いました。気温上昇を 2℃未
満に抑えるために、温室効果ガス排出削減に関する野心的なレベル引き上げの議論を
重ねるなか、国連総会で鳩山首相(当時)が 25%削減目標を表明し世界から喝さいを浴
びた日本がどんな発言をするか、また交渉の主要なテーマになっている資金問題でど
のような発言をするのかが注目されました。しかし長浜環境大臣の発言は、25%削減
目標には触れず、資金についても明確な約束はなく、参加者を落胆させました。
この大臣発言で日本は、今 COP 二度目の化石賞受賞となりました。受賞理由は、3
つの「欠如(No)」によるものです。
「削減約束の欠如(No Pledge)」;野心レベルの引き上げを真剣に議論している
各国の足を引っ張る役割しか果たさなかった。
「緊急性の欠如(No Urgency)
」;気温上昇を 2℃未満に抑えるためには、排出
のピークを 2015 年よりも手前に持ってこなければならないという緊急性に対し
て何ら行動をしようとしなかった。
「資金の欠如(No Money)」;途上国に対する 2013 年以降の資金に関する約束を
COP の場に何ら用意してこなかった。
12 月 6 日、日本から COP18 に参加して
いる NGO は、気候変動問題に取り組む世界
の NGO のネットワークである CAN のメンバ
ーと、長浜大臣との懇談を行いました。海
外 NGO からは野心の引き上げや資金の分
野 で 日 本 が リー ダ ー シ ッ プ を 発 揮 して ほ
し い と い う 期待 や 日 本 政 府 と し て の考 え
について質問が出ていました。
長浜大臣は、12 月 6 日深夜にドーハを
離れて日本への帰国の途についた
海外・国内 NGO と長浜環境大臣との
意見交換の様子(写真:CASA)
そうです。12 月 6 日からは最終日の 12 月 7 日に向けて、会議の成否を決める閣僚級の
最終調整が佳境に入っています。このもっとも大事な段階で大臣が帰国してしまうの
では、大臣はドーハまで何をしにきたのかと思わざるを得ません。せめて 2013 年以降
の資金について、これまでと同等程度の資金供与を続けると発言すれば、交渉を大き
く前に動かすことになったのにと残念でなりません。それができるのは、大臣しかな
かったはずです。
日本よ、どの道をゆく?(12/05 付
ECO より)
ECO は、日本が 2020 年までの温室効果ガス排出を 1990 年比で 25%削減するとした
約束を反故にし、その代わりに 1990 年比 5%~9%にまで引き下げることを真剣に検討し
ていると聞き、心配している。
もちろん、日本は京都議定書第 2 約束期間への不参加を表明したことで、すでに温
暖化防止国際交渉の推進を妨げている。もしここで日本がカンクン合意の下で掲げた
自主的な削減目標を引き下げるなら、日本の野心レベルも、国際社会から寄せられる
日本への信頼も低下させることになる。ECO は、日本の発言はこの先真剣に聞いてもら
えなくなるのではないかと心配している。
この 2 年間に、日本はすでにある程度信頼を失ってきている。今こそ、日本の閣僚
が壇上に上がり、日本が 25%目標を掲げその目標を達成するためにあらゆる行動をとる
つもりであると表明するときだ。また、2013~2015 年の資金調達を約束するべきであ
る。これが、気候変動問題を解決しようとする世界の前向きな努力に、日本が積極的
で建設的な役割を果たせる唯一の道だ。
会議場から
COP18 も最終日を迎えています。条約 AWG の閉会総会は議長が提案した決定案が採
択できないまま閉会してしまいました。COP13 から交渉を続けてきた条約 AWG が決定案
を採択できなかったことは残念なことです。18 時 45 分から COP/CMP 議長の中間報告の
総会が始まっていますが、この後、ADP の閉会総会が開催されることになっていますが、
何時、ADP の閉会総会が開催されるかのアナウンスはありません。ADP の閉会総会の後
に、COP18 と CMP8 の閉会総会が開催されることになります。
参加者は今日(12 月 7 日)中には終わらないことは覚悟のうえで、関心は、明日
土曜日のうちに終われるかどうかです。昨年、ダーバンで開催された COP17 は、終了
したのは日曜日朝 5 時頃でした。
今日は長い一日になりそうです。
発行:地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
〒540-0026 大阪市中央区内本町 2-1-19 内本町松屋ビル 10-470 号室
TEL: 06-6910-6301 FAX: 06-6910-6302
早川光俊、大久保ゆり、土田道代
現地連絡先:
早川光俊 +81 9070961688、[email protected]
大久保ゆり +974 66673213、[email protected]
#これまでの通信は、以下のサイトをご覧ください
http://www.bnet.jp/casa/cop/cop.htm
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