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リズム体操を取り入れた体力向上プログラムの効果

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リズム体操を取り入れた体力向上プログラムの効果
リズム体操を取り入れた体力向上プログラムの効果
U07B133C 日野憲一
Abstract
The purpose of this study is to examine what kind of effect Rhythmical Gymnastics have as a physical strength
improvement program at an elementary school. Specifically, it is examining whether it being possible to develop
Rhythmical Gymnastics into improvement of physical strength, and comparing the feature of Rhythmical
Gymnastics and running exercise. By these, value of Rhythmical Gymnastics is clarified.
The effect of Rhythmical Gymnastics as a physical strength improvement program were as follows.
1) It is possible to make it tackle actively and improvement in a motion, and pleasure and a sense of fulfillment
are induced; and to improve dynamic pliability; and to make it tackle very enthusiastically as a subject of the
gymnastics of the summer vacation which tends to become lack of exercise, and it is useful for the
compensation for lack of exercise.
2) Rhythmical Gymnastics have effects as exercise for increasing aerobic capacity and giving the consciousness
which improves a motion will increase physical strength synthetically.
はじめに
体操と走る運動の特長を比較検討し、リズム体操の価
子供の体力低下の傾向、また、基本的な動きができ
値を明らかにすることである。これらを今後、学校教育で
ない子供の増加が指摘されている。現在では、体力向
リズム体操を指導する際の一つの指針として生かすこと
上の取組として、持久走や体操などを、それぞれの学
を目的とした。
校で工夫して行っているところである。
研究内容
「リズム体操」は子供の体つくり、動きつくりをねらいと
して行い、音楽と一体となって楽しく行うことができる運
1.体力向上プログラムの作成
(1)リズム体操
動である。学校現場において、子供たちは音楽を使っ
小学生を対象とした、はずみや振りを中心とした全身
て体を動かすことを好み、喜んで取り組んでいる姿に数
運動を構成した。校歌を編集した音楽を使用する。運
多く出会っている。
動時間はおよそ3分 30 秒。
本研究は、長期休業中および学校体育における体
(2)なわ・走運動
力アッププログラムとして、リズム体操や 5 分間走がどの
跳び方や走るペースは無理なく続けられる範囲で自
ような効果があるかを検討しようとするものである。具体
由とした。明るい雰囲気の音楽を使用する。運動時間
的には、リズム体操を生活に取り入れて体力づくりにつ
はおよそ 3 分 30 秒。
なげることが可能であるかを検討すること、また、リズム
2.体力向上プログラムの実施
表 2
(1)対象・期間
男子
N
○新潟県 G 市立 G 小学校 第 5 学年児童
(男子 25 名 女子 28 名)
○平成20年4月~7月、10 月~11 月
PWC170
M
SD
女子
N
20mSR
M
SD
PWC170
M
SD
上位群
8
90.57
11.37
94.92
17.91
9
62.89
6.83
98.87
23.45
中位群
10
59.90
5.07
90.09
16.65
11
45.64
3.47
77.10
21.81
下位群
7
41.14
10.07
74.75
9.07
8
32.63
6.61
76.15
18.12
平均心拍数は、対象児童を持久的能力によって3群
に分類した。各群の平均値は表 2 の通り。自転車型エ
(2)実施方法
表 1
20mSR
M
SD
持久的能力測定結果
体力向上プログラムの実施方法
運動プログラムを提示し、実践させた。
○夏休みの課題として 内容は、学級ごとに異なるようにした(リズム体
操群、なわ・走運動群)。
○体育授業として
リズム体操と5分間走の2つを全員に実施させ
た。
3.研究の方法
(1)持久的能力の測定
自転車型エルゴメーターによる負荷―心拍応答より
ルゴメーターによって測定した仕事量と 20m シャトルラ
ンの記録には1%水準で有意な相関が認められた。
2.夏休み体力向上プログラム
(1)実施回数
リズム体操群となわ・走運動群の平均取組回数に統
計的な有意差は認められなかった(表 3)。どちらの学級
もほぼ同じように「体力アッププログラム」に取り組んで
仕事量を算出した。
いたといえる。長期休業に運動を行うと、児童が意欲的
(2)アンケート調査
に取り組み、動きの向上や楽しさ・充実感を得ることが
夏休みおよび授業における体力アッププログラムに
対する「意欲・関心」「成果」「自分の動き」「楽しさの内
できる効果的な教材となる。
表 3
体力アッププログラム実施回数
N
容」に関わる20の質問項目についてアンケート調査を
行った。5 段階尺度で回答し、得点化した。
(3)柔軟性の測定
児童の柔軟性を検討するため、前曲げ・後反り・横曲
M
SD
リズム体操群
26 25.73
7.25
なわ・走運動群
27 27.48
7.23
(2)アンケート調査
「成果」「取り組み方」「自分の動き」に関する項目に
げの3つの柔軟運動の動作を行わせ、デジタルスチル
ついてはいずれの質問項目もリズム体操群が高かった。
カメラで撮影し、腰角度を測定した。
リズム体操を夏休みの課題としてくり返し行うことでリズム
(4)運動実施中の心拍応答性の測定
体操の本質に関わる「大きな動き」を感じることができた
被験者に心拍計を装着させ、授業中におけるリズム
と考えられる。また、動きの変化に富んだリズム体操は、
体操と5分間走実施中の心拍数変動を測定した。
比較的単調になりやすいなわ・走運動よりも充実感を感
結果と考察
じることができたと考えられる。リズム体操は多くの動きを
1.持久的能力の測定
含む運動であり、一つ一つの動きを熟練させようと取り
組む姿勢が自由記述からも読み取れた。音楽に合わせ
て体を動かすリズム体操をすることで、自分自身の動き
と音楽が調和しているように感じることができたと考えら
しい行い方ができなくなってしまったためであると考えら
れる。リズム体操がねらいとしている「動きの全身性」や
れる。一方、継続的にリズム体操を行うことによって正し
「リズム」「楽しさ」「充実感」に高い値が示されたことにな
い行い方が定着するといえる。
る。これらの結果から、リズム体操群の児童は意欲的に
3.体育授業での体力アッププログラム
課題に取り組んでいることや自分の動きに目を向けるこ
(1)アンケート調査
リズム体操、5分間走ともに全ての質問項目で、持久
とができているといえる。
的能力上位群が最も高い得点を示した。本研究の対象
(3)柔軟性の測定
撮影は夏休み前後の2回行った。撮影した画像から、
児童の実態から、持久的能力の高い児童は全般的な
横曲げの行い方によって3つのタイプに分類された(図
運動能力も高いといえる。従って、持久的能力の高い
1)。
児童は運動に対する意欲や取り組む意識が高く、運動
タイプ1
タイプ2
タイプ3
を肯定的にとらえる姿勢があり、喜んで運動に取り組ん
でいるということが示唆された。「関心・意欲」に関する質
問項目の多くで、リズム体操が高い値を示した。リズム
体操は体力向上プログラムとして児童に高い関心・意欲
全身曲げタイプ
上体曲げタイプ
腰折れタイプ
腰から全身的に曲げている
上体だけが曲がっている
腰から折って上体が起きている
図1
をもって取り組ませることができる運動であるといえる。
「成果」「動き」は体の動かし方に関する内容である。音
横曲げ姿勢の分類
体操では、体の中心から動く全身的な動きが求めら
れ、タイプ1を中心に指導している。
楽に合わせて体を動かすことは思い切り体を動かそうと
する意識を引き出していると推察される。音楽に合わせ
リズム体操群は、タイプ1「全身曲げ」の人数は夏休
て体を動かすリズム体操によって気持ちを高揚させて運
み前後で変動はみられなかった。一方、なわ・走運動群
動することができたと感じていると考えられる。また、運
は「全身曲げ」の人数が若干減少している(図 2)。
動による満足感も高いと考えられる。
上位群と下位群との間で「大きな動き」に関する項目
100%
90%
3
6
6
4
に差がみられた。下位群は自分が「大きく動けない」と
80%
70%
60%
10
9
13
10
タイプ3
50%
タイプ2
40%
タイプ1
自覚しているが、他の項目は高い得点を示していること
から、できないからあきらめるということではなく、「大きく
30%
13
20%
10
9
9
動こう」とする前向きな気持ちであることが推察される。
10%
0%
前
後
リズム体操群
前
後
そこには、理想の自分の姿、「ありたい自分」がイメージ
なわ・走運動群
できていると推察される。
図2
横曲げ姿勢のタイプ別人数
これは、なわ・走運動群の児童が、もともとできていた正
解消に役立つ。
(2)心拍応答性の測定
心拍数[bpm ]
22 0
心拍数[bp m ]
22 0
20 0
20 0
18 0
18 0
16 0
16 0
14 0
14 0
12 0
12 0
10 0
10 0
80
80
60
(2) 体育授業における体力アッププログラムとしての
一連のリズム体操と5分間走の効果
60
40
40
20
20
12 1 bp m
0
0: 00 :00
0: 01 :00
0: 02 :00
0: 03:00
0: 04 :00
0: 05 :00
0: 06 :00
0: 07 :00
0: 08 :00
時間
カーソル値:
時間: 0 : 0 0 : 0 0
心拍数: 9 5 b p m
カロ リ ーレート: 0 kc al / 6 0 mi n
図 3
リズム体操実施時の心拍数変動
心拍数[bpm ]
22 0
①一連のリズム体操は有酸素能力を高めるための運動
としての効果がある。小学生にとって5分間走はペー
心拍数[bp m ]
22 0
20 0
20 0
18 0
18 0
16 0
16 0
14 0
14 0
12 0
12 0
10 0
10 0
80
スが速すぎると無酸素系の運動となる。
80
60
②持久性の一つである心拍の応答性を高める必要があ
60
40
40
20
20
1 7 7 bp m
0
0: 00 :00
0: 01 :00
0: 02 :00
0: 03:00
0: 04 :00
0: 05 :00
0: 06 :00
0: 07 :00
0: 08 :00
時間
カーソル値:
時間: 0 : 0 0 : 0 0
心拍数: 9 3 b p m
カロ リ ーレート: 0 kc al / 6 0 mi n
図 4
る児童は、一連のリズム体操のような有酸素的な運動
5 分間走実施時の心拍数変動
リズム体操は運動強度が全体に低く、また一定では
による効果が期待できる。
なく上下している。一方、5分間走は短時間に高いレベ
③一連のリズム体操は体力向上プログラムとして児童に
ルの心拍数に達し、そのまま一定の高いレベルを保っ
高い関心・意欲をもって取り組ませることができ、記録
ている。リズム体操実施時の心拍数は持久的な運動の
や他との競争とは違った充実感も高い。
範囲内にあり、5分間走は解糖系すなわち運動強度の
高い範囲内にある(図3、図4)。つまり両者は異なった
平均心拍数は5分間走が高い値を示し(表4)、統計
つ有効に活用していくことが必要である。本研究では、
運動時の平均・最大心拍数
リズム体操
5分間走
リズム体操
最大心拍数
5分間走
リズム体操の生理学的な効果や情意面への影響が認
められたことから、学校現場においてはこれらを適切か
的な有意差が認められた。
平均心拍数
を高めることにつながる。
おわりに
性質の運動とみなすことができる。
表 4
④動きをよくする意識をもたせることが、総合的に体力
M
129.9
173.0
148.7
190.0
SD
19.11
19.72
18.29
17.74
p
0.0000
**
0.0000
**
表5の手順・内容で実践した。
表 5
体力向上プログラムの実施手順
① 対象児童の実態を把握する。
② 高めたい体力と、それを高めるための運動を検討し、テーマを決める。
結論
③ 基本的な動きを選び、発展させながらまとめる。
(1) 長期休業中における体力アッププログラムとして
の一連のリズム体操の効果
①主体的に取り組ませることが可能であり、動きの向上
や楽しさ・充実感を誘発する。
②継続的に行うことで、動きの中で高められる動的柔軟
性を高めることができる。
③運動不足になりがちな長期休業中の体育の課題とし
て意欲的に取り組ませることが可能であり、運動不足
④ 楽しい音楽を選び、運動と組み合わせて一連のリズム体操を構成する。
これを学校現場で体力向上プログラムとして提案し、活
用することができると考える。
参考・引用文献
滝澤かほる,“体操の学習指導”,不昧堂,1997
山地啓司,“運動処方のための心拍数の科学”,大修
館書店,1981
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