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進行性心臓伝導障害の基礎と臨床

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進行性心臓伝導障害の基礎と臨床
進行性心臓伝導障害の基礎と臨床
蒔田直昌
本稿では,先天的な CCD を中心に概説する(図 1).
Ⅰ.は じ め に
Ⅱ.活動電位の形成異常
心臓刺激伝導障害(cardiac conduction disturbance:CCD)は,活動電位の形成異常と His-Purkinje
洞結節が自動能を発揮するのは,静止膜電位が浅
系の伝導ブロックに大別される.CCD の多くは虚
く拡張期緩徐脱分極が起こるためである.拡張期緩
血,
加齢,
薬物の副作用など後天的な要因によって発
徐脱分極を形成する機序は,外向き K 電流と様々
症するが,
遺伝的要因によって発症するものもある.
な内向き電流のバランスによって形成される「膜電
HCN4
+
SCN10A
SCN5A
NCX
SCN1B
LMNA
EMD
ANKB
+
Na
2+
Ca
Sarcomere
RYR2
NKX2−5
TBX5
Cx40
2+
Ca
ATP
Mitochondria
ADP
CASQ2
PRKAG2
Nucleus
Glycogen
BMPR1A
Sarcoplasmic
Reticulum
KCNJ2
BMP2
図1
心臓刺激伝導系細胞
心臓伝導障害の疾患遺伝子を示している.
〔文献 27)より引用改変〕
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科分子生理学
S-3-34
JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 33 SUPPL. 3 2013
2+
位クロック」と,筋小胞体からの Ca 遊離を介した
2+
性徐脈性不整脈である.PCCD は,His 束以下の伝
「Ca クロック」というふたつのクロックである.
導 障 害 の た め QRS 幅 の 延 長 を 示 す type Ⅰ
膜電位クロックに関与する内向き電流には,バック
(PFHB1)と,房室結節に限局した伝導障害のため
+
2+
グラウンド Na 感受性電流(IbNa)
,L 型・T 型 Ca
正常 QRS 幅にとどまる type Ⅱ(PFHB2,OMIM
電流(ICa,L,ICa,T)
,持続性内向き電流(Ist),過分極作
140400)に分類される.歴史的には,南アフリカの
+
動 性 電 流(If)な ど が あ る.心 筋 Na チ ャ ネ ル
1)
2)
常染色体優性の PCCD 家系の連鎖解析によって,
6)
(SCN5A) ,ペースメーカチャネル(HCN4) の遺
最初の遺伝子座が染色体 19q13 に同定された .
伝子異常は膜電位クロックを傷害し,先天性洞不全
Type Ⅰ は さ ら に,type 1A(PFHB1A,OMIM
症 候 群(sick sinus syndrome:SSS)を き た す.
113900)と type 1B(PFHB1B,OMIM 604559)に分
SCN5A は洞結節の中心部には発現しないが,その
類される.
+
周囲に発現しており,Na チャネルの機能低下は洞
結節中心部を過分極側にシフトさせ,進出ブロック
3)
2+
をきたす .また,Ca クロックは,筋小胞体からの
2+
+
.心筋 Na チャネル
Schott は,染色体 19q13 に連鎖を示さないフラン
+
スとオランダの PCCD 家系に,心筋 Na チャネル a
2+
サブユニット遺伝子(SCN5A)のふたつの変異を同
の上昇は Na -Ca 交換系を刺激し,Ca 1 分子を
定 し た(type 1A,PFHB1A,OMIM 113900).
Ca 遊離をトリガーとして作動する.細胞内 Ca
+
2+
2+
+
細胞外に放出するのと交換に Na 3 分子を細胞内に
SCN5A は,3 型 QT 延長症候群(LQT3)や Bru-
流入させるため,ネットで内向き電流を生じ,洞結
gada 症候群の原因遺伝子としても知られているが,
節は拡張期に緩徐に脱分極する.カテコラミン誘発
PCCD に同定される SCN5A は Brugada 症候群と
性多形性心室頻拍(catecholaminergic polymorphic
同様,機能低下型の変異である.PCCD では加齢と
VT:CPVT)の原因遺伝子であるリアノジン受容体
ともに伝導障害が進行するが,scn5a
(RYR2)
,カルセクエストリン 2(CASQ2)と,4 型
QT 延長症候群(LQT4)の原因遺伝子であるアンキ
2+
+/−
ヘテロノッ
クアウトマウスでも心筋の線維化が観察される.
scn5a
+/−
加齢マウスの心筋の線維化の程度は若年マ
リン B(ANKB)は,いずれも Ca クロックに強く
ウスに比べて極めて強く,このような加齢変化は正
かかわる遺伝子で,これらの遺伝子異常は高率に洞
常マウスに見られなかったため,SCN5A 変異とい
機能不全を合併する.
う遺伝的素因に加齢という要素が組み合わさること
7)
によって伝導障害が進行するものと考えられる .
Ⅲ.伝導ブロック
一方,scn5a 変異 1798insD のノックインマウスで
も伝導障害が出現するが,その程度は用いるマウス
.歴史的背景
伝導ブロックは部位によって,洞房ブロック,房
の種によって異なる.心筋 RNA の網羅的解析から,
+
室ブロック,His 束下部ブロック,脚ブロックに区
伝導障害の強い種は Na チャネル b4 サブユニット
分される.伝導ブロックのなかで遺伝性が顕著なも
(SCN4B)の発現量が低いことが判明した .このこ
ののひとつに,進行性心臓伝導障害(progressive
とから,SCN4B は心臓伝導障害における遺伝的修
cardiac conduction defect:PCCD)がある.PCCD
飾要因であると示唆される.ただし,SCN4B は QT
は,家族性心臓伝導障害(progressive familial heart
延長症候群に変異が同定されているが,PCCD の変
4),5)
block:PFHB)もしくは Lenegre-Lev 病
8)
とも呼
異 は 見 つ か っ て い な い.Watanabe ら は 最 近,
ばれ,進行性の房室ブロック・脚ブロックという心
PCCD 家系(Brugada 合併・非合併例)において,
電図所見を特徴とし,心臓刺激伝導系の線維変性に
Na チャネル b1 サブユニット遺伝子(SCN1B)の
よって失神やペースメーカ植込みの原因となる遺伝
変異を同定した .このように,心筋 Na チャネル
JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 33 SUPPL. 3 2013
+
9)
+
S-3-35
A
Ⅰ
aVR
V1
V4
Ⅱ
aVL
V2
V5
Ⅲ
aVF
V3
V6
B
C
Ⅰ
ND
71
69
61
37
39
SCD(30)
56
D
V4
Ⅱ
V5
30
Ⅲ
SCD6(11)
図2
V4
4
27
V5
V6
V6
本邦重症 PCCD 家系に同定された Connexin 40 遺伝子(GJA5)変異
A:発端者(家系図 B の矢印)6 歳の心電図.完全左脚ブロックと Advanced AV ブロック.
B:家系図.●■:キャリア,○□:非キャリア,ND:未検査,SCD:心臓突然死,
(
):死亡時年齢.
C,D:C は母親(第 2 子分娩後突然死),D は妹の心電図.母・妹ともに左脚ブロック.
〔文献 12)より引用改変〕
10)
の a,b1,b4 サブユニットは,PCCD の原因遺伝子
1B,PFHB1B,OMIM 604559) .TRPM4 は刺激伝
または修飾遺伝子として心臓伝導障害に強く関与し
導系,特に Purkinje 線維で強く発現するが,変異
ている.筆者らは,本邦の PCCD の実態調査と遺伝
TRPM4 タンパクはエンドサイトシスの異常をきた
子解析を目的に,厚生労働省難治性疾患克服研究事
し,細胞膜上で発現が亢進する.TRPM4 は Bru-
業において本邦の臨床・基礎研究者とともに PCCD
gada 症候群の 6%に見られ,伝導障害を合併するこ
を登録集積し,その臨床経過と遺伝子解析を行って
とが多いとの報告もある .
11)
いる.現時点での登録数は 47 家系で,そのうち
また,前述の本邦 PCCD 47 家系の臨床・遺伝子解
SCN5A 変 異 は 9 家 系(19%)と 最 多 で あ っ た
析研究で,1 家系に心房と刺激伝導系に強く発現す
SCN1B,SCN4B 変異は認めなかった(未発表).
るギャップジャンクション(GJ),connexin40(Cx40)
+
�.Na チャネル以外の遺伝子
12)
の遺伝子 GJA5 の変異を同定した(図 2) .この遺
染色体 19q13 に遺伝子座が同定されていた南ア
伝子変異 Q58L は,細胞間でコネクソン同士が結合
フリカの PCCD 家系の原因遺伝子は長らく同定さ
する細胞外ドメインに存在しているため,細胞間で
2+
れていなかったが,最近,Ca 活性化非選択性カチ
の GJ プラーク形成が障害され,Cx40 のコンダクタ
オンチャネル TRPM4 であることが判明した(type
ンスは 1/40 に低下していた(図 3) .臨床的には
S-3-36
12)
JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 33 SUPPL. 3 2013
A
Q58L
intercellular
1
2
3
4
cytoplasmic
NH2 COOH
B
C
D
+20 mV
−40 mV
(pA)
1,500
cell 1
1,000
1,000
Cx40
cell 2
N2A cells
WT
500
Q58L
500
0
0
0
0
−500
−500
−1,000
−1,000
−1,500
図3
+20 mV
−40 mV
(pA)
1,500
1 sec
1 sec
−1,500
Cx40 変異 Q58L の電気生理学的異常
A:Cx40 の推定 2 次構造.変異 Q58L は Cx40 の細胞外ループに存在するが,それはコネク
ソン(コネキシンの 6 量体)同士が細胞間で結合する部位と推測される.
B:内在性ギャップジャンクションのない N2A 細胞に transfection し,double patch clamp
で細胞間コンダクタンスを測定した.
C:正常(WT),D(Q58L)の細胞ペアから測定した全細胞電流記録.Q58L のコンダクタ
ンス(矢印の振幅に相当)は WT の 1/40 に激減している.
〔文献 12)より引用改変〕
左脚ブロックが若年性から進行する稀有な家系で,
には非家族性であるが,一部の家族性 WPW 症候群
同様の心電図を示す 3 人のうち 2 人が突然死する極
家 系 に AMP 活 性 化 キ ナ ー ゼ g2 サ ブ ユ ニ ッ ト
めて重症な PCCD であった.GAJ5 の遺伝子変異と
(PRKAG2)の変異が同定された .この変異は
しては,心房細動患者の心房筋ゲノムに同定された
PRKAG2 を常時活性化させ,グリコーゲンの蓄積
13)
15)
体細胞変異が報告されているが ,心筋 GJ の生殖
によって空胞変性した心筋細胞が線維輪周囲に集積
細胞変異,心室性致死性不整脈の原因としては本症
したものである.また,WPW 症候群の別の原因遺
例が最初の報告である.海外の PCCD 120 家系の解
伝子として,Bone morphogenic protein-2(Bmp2)
析でも,GJA5 変異は同定されなかった.
遺伝子の微小欠損も報告されている.
KCNJ2 は Andersen-Tawil 症候群の原因遺伝子
+
で,
静止膜電位を形成する K チャネル Kir2.1 をコー
ドする.
本症候群では IK1 電流が低下し,QT 延長と
14)
ともに房室結節とその末梢の伝導障害をきたす .
Ⅳ.副伝導路症候群
WPW(Wolff-Parkinson-White)症候群は一般的
JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 33 SUPPL. 3 2013
Ⅴ.刺激伝導系の発生分化異常
心臓は発生・分化の過程で,作業心筋系と別に刺
激伝導系細胞が部位特異的に現れてくるが,その過
程で最も大きな役割を果たしているのが,T-box と
ホメオボックス因子を代表とする様々な転写因子で
28)
ある(図 4) .重症な四肢と心臓の奇形,伝導障害
S-3-37
洞結節
A
+/+
−/−
LeadⅠ
房室結節
房室束
房室輪
R′
LeadⅡ
心室筋
PQ
脚・Purkinje線維
図4
QRS
QT
B
心臓刺激伝導系の発生に必要な転写因子
+/+
10ms
−/−
RA
LA
6
(ms)
5
刺激伝導系の細胞を部位特異的に発現させるために必要な
4
RV
LV
転写因子をリストしている.
QRS
3
2
〔文献 28)より引用改変〕
1
RA
を特徴とする Holt-Oram 症候群では,T-box 転写
RV
因子のひとつである TBX5 の変異が知られてい
LV
16)
る .また,Nkx2.5 は刺激伝導系の発生に中心的な
役わりを果たすホメオボックス転写因子で,その変
異は心房中隔欠損・心室中隔欠損をはじめとする
図5
Irx3 ノックアウトマウスの心電図と心臓伝
導の光学マッピング
17)
様々な心奇形と AV ブロックを合併する .さらに,
A:健常マウス(Irx3
別のホメオボックス遺伝子 Irx3 のノックアウトマ
(Irx3
B:光学マッピング.赤が最も早く脱分極する部位で,心
尖部から心基部に脱分極波が伝導している.Irx3
18)
(図 5) .なお,ヒトではまだ Irx3 遺伝子変異の報
.ラミン・エメリン
−/−
の心臓は重篤な伝導遅延を認める.
告はない.
Ⅵ.神経筋疾患に合併した心臓伝導障害
)に比してノックアウトマウス
)では,QRS 時間の延長と R 波のノッチ(R�
)
を認める.
ウスは,Cx40 の発現抑制と Cx43 の異所性発現亢
進によって心室内伝導障害をきたすことが判明した
+/+
−/−
〔文献 18)より引用改変〕
房室ブロックなどの心臓の異常を呈することが多
19),20)
い
.前述の本邦 PCCD 47 家系の遺伝子解析で
神経筋疾患には心疾患の合併が多く,そのほとん
は,7 家系に LMNA 変異を同定した.これらの症例
どは肥大型・拡張型をはじめとする心筋症や房室伝
は,器質的心疾患のない房室ブロックとして登録さ
導障害,心房・心室不整脈などの不整脈である.ラ
れており,登録時には心不全の合併はなかった.し
ミンは細胞核内で構造の維持と転写の調節を行う線
かし,経過とともに急速に拡張型心筋症に伴う心不
維状核膜タンパク質で,エメリンはクロマチンと細
全を合併し,うち 2 例は治療抵抗性で死亡している.
胞骨格を結合する核膜タンパク質である.ラミン
房室ブロックは必ずしも予後不良とはいえないが,
A/C 遺伝子(LMNA)
,エメリン遺伝子(EMD)の
LMNA 変異を有する一群は極めて予後が悪く,十
変異は,それぞれ X 染色体性・常染色体優性 Em-
分な管理を要する.ラミン心筋症は 40 歳代までは
ery-Dreifuss 筋ジストロフィーの原因で,10 歳代
軽微な伝導障害しか示さないことが多く,家族歴な
に骨格筋の異常を発症し,20 歳代に拡張型心筋症や
どを詳細に聴取しないと,その後急速に進行する伝
S-3-38
JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 33 SUPPL. 3 2013
SCN5A−SCN10A
−log10
(P−value)
60
40
ARHGAP24
20
CAV2−CAV1
ATP6V0E1−C5orf41
BNIP1−NKX2−5
MEIS1
TBX5−TBX3
SOX5−C12orf67
WNT11
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13 14 15 16 17 18 19 20 2122
Chromosome
図6
心電図 PR 時間に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)
GWAS に用いられた SNP の染色体上の部位(横軸)と p 値(縦軸,−対数表示)を示すマン
−8
ハッタンプロット.閾値 5×10 が横線で示されており,代表的な遺伝子名も記載されてい
る.染色体 3 の SCN5A-SCN10A の近傍は最も p 値が高く,PR 時間を規定する感受性遺伝
子がこの領域に存在することを表している.
〔文献 23)より引用改変〕
導障害,心不全および重症不整脈を見逃してしまう
His 束以下の進行性 AV ブロックである.ミトコン
可能性があり,注意を要する.
ドリア DNA は母系遺伝するのにもかかわらず孤発
.筋緊張性ミオトニア
例が多く,未解明の部分が山積している.
筋緊張性ミオトニア type 1(DM1,Steinert 病)
は成人に最も多い筋ジストロフィーで,ミオトニア,
Ⅶ.伝導障害の関連遺伝子
耐糖能異常,進行性骨格筋脱力,白内障,心臓伝導
未知の多遺伝子疾患関連遺伝子を同定するための
障害を特徴とする.症例の 70%で洞性徐脈,房室ブ
強 力 な 方 法 の ひ と つ は,ゲ ノ ム ワ イ ド 関 連 解 析
ロック,心室内伝導遅延などの心臓伝導障害が見ら
(Genome-wide association study:GWAS)である.
れる.DM1 の分子病態は,dystrophia myotonia-
これは,全ゲノムに分布しているハプロタイプ(ひ
protein kinase(DMPK)遺伝子の 3�非翻訳領域に
と固まりとなって遺伝される SNP の集団)を網羅
存在する,3 塩基(CTG)の長い繰り返し配列であ
的にタイピングし,それを表現型と統計的に比較検
る.この DMPK の 3�
非翻訳領域を緑色蛍光タンパ
討することによって,疾患関連遺伝子のゲノム上の
クにつなげ,誘導可能にしたトランスジェニックマ
部位を同定するという手法である.
ウスでは,トランスジーンを外部から誘導すると,
最近,心拍数,PR 時間,QRS 時間を規定する
PR 時間の延長,完全房室ブロック,突然死をきた
common variant を求めるための研究が相次いで発
したほか,伝導障害が増悪した.誘導を中止すると,
表された
Ⅱ度房室ブロック以前の異常は可逆的に戻ったが,
として a ミオシン重鎖(MYH6)が明らかにされた.
21)
22)〜25)
.心拍数をコントロールする variant
Ⅱ度以上の伝導障害は元に戻らなかった .
また,PR 時間に対しては転写因子(TBX5)
,テト
.Kearns-Sayre 症候群
ロドトキシン感受性神経 Na チャネル(SCN10A),
+
Kearns-Sayre 症候群は,進行性外眼筋麻痺と網
カベオリン 1(CAV1)などの 4 つの遺伝子座が同
膜色素沈着,心臓伝導障害を特徴とする.ミトコン
定された.さらに QRS をコントロールする遺伝子
ドリア DNA の欠損が見られる.心臓伝導障害は
領域として TBX5,SCN10A を含めた 4 つの遺伝
JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 33 SUPPL. 3 2013
S-3-39
24)
子座が示された .別の研究では,PR 時間と関連す
る遺伝子座として SCN5A,NKX2.5,TBX5A を含
23)
25)
む 8 つの領域(図 6) と SCN10A が同定された .
これらの研究では,SCN10A が心臓の伝導に影響を
与えることが共通の結論として得られている.しか
し,scn10a
−/−
ノックアウトマウスは伝導障害など
の心電図異常は示さないことがすでに報告されてお
り,逆に Chambers らは scn10a
−/−
1970;42:409〜425
�) Brink PA, Ferreira A, Moolman JC, Weymar HW, van
der Merwe PL, Corfield VA:Gene for progressive
familial heart block type Ⅰ maps to chromosome 19q13.
Circulation, 1995;91:1633〜1640
�) Royer A, van Veen TA, Le Bouter S, Marionneau C,
Griol-Charhbili V, Léoni AL, Steenman M, van Rijen
HV, Demolombe S, Goddard CA, Richer C, Escoubet B,
Jarry-Guichard T, Colledge WH, Gros D, de Bakker JM,
マウスの PR 時
Grace AA, Escande D, Charpentier F:Mouse model of
間が,短縮していることを示した.SCN10A の SNP
SCN5A-linked hereditary Lenegreʼs disease. Age-relat-
rs6795970 はアミノ酸置換(A1073V)を伴うため,
gain-of-function の機能異常をもたらすと推測して
ed conduction slowing and myocardial fibrosis. Circulation, 2005;111:1738〜1746
�) Remme CA, Scicluna BP, Verkerk AO, Amin AS, van
いる.さらに最近,SCN5A/SCN10A という隣り
Brunschot S, Beekman L, Deneer VH, Chevalier C,
合った遺伝子に存在するエンハンサー領域が明らか
Oyama F, Miyazaki H, Nukina N, Wilders R, Escande D,
にされ,T-box 転写因子の TBX3・TBX5 がこの部
Houlgatte R, Wilde AA, Tan HL, Veldkamp MW, de
Bakker JM, Bezzina CR:Genetically determined differ-
位を介して SCN5A/SCN10A の転写レベルを調整
ences in sodium current characteristics modulate
していることも明らかになった.したがって,伝導
conduction disease severity in mice with cardiac sodium
+
障害に Na チャネルの転写調節が関与している可
26)
能性が示された .今後のさらなる研究推進によっ
channelopathy. Circ Res, 2009;104:1283〜1292
�) Watanabe H, Koopmann TT, Le Scouarnec S, Yang T,
Ingram CR, Schott JJ, Demolombe S, Probst V, Anselme
て,心臓伝導障害の遺伝的素因が詳細に解明される
F, Escande D, Wiesfeld AC, Pfeufer A, Kääb S,
ことが期待される.
Wichmann HE, Hasdemir C, Aizawa Y, Wilde AA,
Roden DM, Bezzina CR:Sodium channel beta1 subunit
mutations associated with Brugada syndrome and
cardiac conduction disease in humans. J Clin Invest,
〔文
献〕
�) Benson DW, Wang DW, Dyment M, Knilans TK, Fish
FA, Strieper MJ, Rhodes TH, George AL Jr:Congenital
sick sinus syndrome caused by recessive mutations in
the cardiac sodium channel gene(SCN5A). J Clin Invest,
2003;112:1019〜1028
�) Schulze-Bahr E, Neu A, Friederich P, Kaupp UB,
Breithardt G, Pongs O, Isbrandt D:Pacemaker channel
dysfunction in a patient with sinus node disease. J Clin
Invest, 2003;111:1537〜1545
�) Seul KH, Tadros PN, Beyer EC:Mouse connexin40:
gene structure and promoter analysis. Genomics, 1997;
46:120〜126
�) Lenegre J:Etiology and pathology of bilateral bundle
branch block in relation to complete heart block. Prog
Cardiovasc Dis, 1964;6:409〜444
�) Lev M, Kinare SG, Pick A:The pathogenesis of
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S-3-40
2008;118:2260〜2268
10) Kruse M, Schulze-Bahr E, Corfield V, Beckmann A,
Stallmeyer B, Kurtbay G, Ohmert I, Schulze-Bahr E,
Brink P, Pongs O:Impaired endocytosis of the ion
channel TRPM4 is associated with human progressive
familial heart block type Ⅰ. J Clin Invest, 2009;119:
2737〜2744
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JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 33 SUPPL. 3 2013
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Shao Q, Liu X, Veinot JP, Tang AS, Stewart AF, Tesson
G, Johnson W, McDonough B:Missense mutations in
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22) Smith JG, Lowe JK, Kovvali S, Maller JB, Salit J, Daly
MJ, Stoffel M, Altshuler DM, Friedman JM, Breslow JL,
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